(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】電気音響ドライバ
(51)【国際特許分類】
H04R 9/02 20060101AFI20220105BHJP
H04R 7/20 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H04R9/02 101C
H04R7/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020073414
(22)【出願日】2020-04-16
(62)【分割の表示】P 2018565280の分割
【原出願日】2017-06-13
【審査請求日】2020-04-23
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィット・ブッシュコ
(72)【発明者】
【氏名】ブロック・ジャコバイツ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ジョン・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】マレク・カウカ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ランデメーン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ディー・ムンロ
(72)【発明者】
【氏名】プラテーク・ナート
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エー・ペア
(72)【発明者】
【氏名】アダム・シアーズ
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/046355(WO,A1)
【文献】特開昭55-068795(JP,A)
【文献】実開昭57-078193(JP,U)
【文献】特開昭58-157295(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0311093(US,A1)
【文献】国際公開第2007/034781(WO,A1)
【文献】特開2006-080938(JP,A)
【文献】特開2009-164676(JP,A)
【文献】特開2009-017524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/02
H04R 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状、ハウジング軸、及び約4.5mm未満の外径を有するハウジングと、
前記ハウジング軸と実質的に同軸のボビン軸を有し、前記ハウジングの内部に配置され、前記ボビン軸に沿って移動するように構成されているボビンと、
前記ボビンに固定された音響振動板
であって、前記ボビンの外径と略等しい直径を有しかつ補剛要素によって補剛される内側領域と、前記内側領域を取り囲む外側領域を有する音響振動板と、
前記音響振動板の前記外側領域である、前記音響振動板及び前記ハウジングに固定されたコンプライアントサスペンションと、を備える、
電気音響ドライバ。
【請求項2】
前記ボビンの内部に配置された磁石アセンブリを更に備える、請求項1に記載の電気音響ドライバ。
【請求項3】
前記ボビンに固定されたコイルアセンブリを更に備える、請求項1に記載の電気音響ドライバ。
【請求項4】
前記音響振動板及び前記コンプライアントサスペンションが、静止時に実質的に平面である、請求項1に記載の電気音響ドライバ。
【請求項5】
前記音響振動板及び前記コンプライアントサスペンションが、コンプライアント材料のメンブレンから形成され、
前記補剛要素は、前記メンブレンの
前記内側領域に固定され
る、請求項1に記載の電気音響ドライバ。
【請求項6】
前記内側領域が、前記コンプライアントサスペンションと同心の円形領域である、請求項5に記載の電気音響ドライバ。
【請求項7】
前記補剛要素が接着剤の硬化層である、請求項5に記載の電気音響ドライバ。
【請求項8】
前記補剛要素が剛性物体である、請求項5に記載の電気音響ドライバ。
【請求項9】
前記ボビンが、前記メンブレンの前記内側領域に固定された実質的に平坦な表面を含む、請求項5に記載の電気音響ドライバ。
【請求項10】
前記ハウジングの前記外径が、約3.0mm~4.5mmである、請求項1に記載の電気音響ドライバ。
【請求項11】
前記ハウジングの前記外径が、約3.3mm~4.2mmである、請求項1に記載の電気音響ドライバ。
【請求項12】
前記ハウジングの前記外径が、約3.6mm~3.9mmである、請求項1に記載の電気音響ドライバ。
【請求項13】
前記磁石アセンブリが少なくとも1つの磁石片を含み、前記磁石片が約1.5mm~4.5mmの直径を有する、請求項2に記載の電気音響ドライバ。
【請求項14】
前記磁石アセンブリが少なくとも1つの磁石片を含み、前記磁石片が約2.0mm~4.0mmの直径を有する、請求項2に記載の電気音響ドライバ。
【請求項15】
前記磁石アセンブリが少なくとも1つの磁石片を含み、前記磁石片が約2.5mm~3.5mmの直径を有する、請求項2に記載の電気音響ドライバ。
【請求項16】
前記ドライバの総断面積に対する前記ドライバの放射面積の比が、約0.7である、請求項1に記載の電気音響ドライバ。
【請求項17】
前記ドライバの総断面積に対する前記ドライバの放射面積の比が約0.57~0.7、である、請求項1に記載の電気音響ドライバ。
【請求項18】
前記ドライバの総断面積に対する前記ドライバの放射面積の比が約0.6~0.67、である、請求項1に記載の電気音響ドライバ。
【請求項19】
前記ドライバの総断面積に対する前記ドライバの放射面積の比が約0.62~0.65である、請求項1に記載の電気音響ドライバ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は電気音響装置に関する。
【発明の概要】
【0002】
一般に、1つの態様において、電気音響ドライバは、コンプライアント材料で形成され、外周部、前面、背面、内側領域及び、外周部と内側領域の間の外側領域、並びに振動板が静止しているときに実質的に平坦な形状を有する振動板を含む。ボビンは内側表面、外側表面及びボビン軸を有する。ボビンは、電気導体の巻線を外側表面で保持するように構成されている。ハウジングは、端部及びボビン軸と実質的に同軸のハウジング軸を有する。振動板の外周部はハウジングの端部に固定される。補剛要素が、振動板の内側領域で前面及び背面のうちの1つ以上に固定される。ボビン軸に沿ったボビンの動きにより、振動板の内側領域の動きが生じて、振動板の前面から伝播する音響信号を生成する。ボビンは、ボビン軸に垂直であり、かつ内側領域で振動板の背面に固定された実質的に平坦な表面をボビンの端部に更に含む。補剛要素は、ボビンの実質的に平坦な表面を含む。ボビンは、(a)外側表面から実質的に平坦な表面に延びる脚部、及び(b)実質的に平坦な表面の複数の貫通孔、のうちの1つ以上を含む。
【0003】
実装形態は、以下の1つ以上を任意の組み合わせで含むことができる。実質的に平坦な表面は、振動板の背面に直接固定される。ドライバは、内側領域でボビンの実質的に平坦な表面を振動板の背面に固定するための接着剤層を更に含む。ボビンは外径を有し、振動板の内側領域は、ボビンの外径と実質的に等しい直径を有する。外側領域は円環状である。ボビンは、(a)外側表面から実質的に平坦な表面へ延びる脚部、及び(b)実質的に平坦な表面の複数の貫通孔の両方を含む。ボビンは、外側表面から実質的に平坦な表面に延びる4つの脚部を含む。
【0004】
一般に、別の態様では、電気音響ドライバは、円筒形状及びハウジング軸を有するハウジング含む。ボビンは、外側表面、ボビンの端部の実質的に平坦な表面、及びハウジング軸と実質的に同軸のボビン軸を有する。ボビンは、ハウジング内に配置され、ボビン軸に沿って移動するよう構成されている。音響振動板は、ボビンの端部の実質的に平坦な表面に固定される。
コンプライアントサスペンションは、音響振動板を取り囲み、音響振動板及びハウジングに固定される。ボビンは、(a)外側表面から実質的に平坦な表面へ延びる脚部、及び(b)実質的に平坦な表面の複数の貫通孔のうちの1つ以上を含む。
【0005】
実装形態は、上記のパラグラフ12の特徴のうちの1つ以上を、任意の組み合わせで含むことができる。
【0006】
一般に、更に別の態様において、電気音響ドライバ用のボビンは、外側表面、ボビンの端部の実質的に平坦な表面、及びハウジング軸と実質的に同軸なボビン軸を含む。ボビンは、ハウジング内で使用可能であり、ボビン軸に沿って移動するよう構成されている。ボビンの端部の実質的に平坦な表面は、音響振動板に固定可能である。ボビンは、(a)外側表面から実質的に平坦な表面へ延びる脚部、(b)平坦な表面の実質的に外周部のすべてにわたって延びる壁、及び(c)実質的に平坦な表面の複数の貫通孔のうちの1つ以上を含む。
【0007】
実装形態は、以下の諸特徴及び上記のパラグラフ12の特徴のうちの1つ以上を、任意の組み合わせで含むことができる。壁は平坦な表面から約2~15ミクロン盛り上がっている。壁は約5ミクロン~約35ミクロンの厚さを有する。壁は、実質的に円環形状である。ボビンは、(a)外側表面から実質的に平坦な表面へ延びる脚部、(b)壁、及び(c)実質的に平坦な表面の複数の貫通孔のうちのすべてを含む。
【0008】
1つの態様において、電気音響ドライバは、振動板、ボビン、ハウジング及び補剛要素を含む。振動板は、コンプライアント材料で形成され、外周部、前面、背面、内側領域及び、外周部と内側領域の間の外側領域、並びに振動板が静止しているときに実質的に平坦な形状を有する。ボビンは、内側表面、外側表面及びボビン軸を有する。ボビンは、電気導体の巻線を外側表面に保持するように構成されている。ハウジングは、端部及びボビン軸と実質的に同軸のハウジング軸を有する。振動板の外周部は、ハウジングの端部に固定される。補剛要素は、振動板の内側領域で前面又は背面に固定される。ボビン軸に沿ったボビンの動きにより、振動板の内側領域の動きが生じて、振動板の前面から伝播する音響信号を生成する。
【0009】
実施例は、以下の諸機能の1つ以上を含むことができる。
【0010】
補剛要素は、ボビンの内側に配置され、内側領域において振動板の前面又は背面に固定された剛性物体を含むことができる。剛性物体は、薄いフィルムディスクであってもよい。薄いフィルムディスクは、ポリイミド薄膜を含んでもよい。接合剤を、剛性物体表面と振動板の前面又は背面の間に配置することができる。
【0011】
補剛要素を接着剤の硬化層にしてもよい。
【0012】
ボビンは、実質的に平坦な表面がボビン軸に対して垂直であり、かつ内側領域において振動板の背面に固定されるように、ボビンの端部に実質的に平坦な表面を更に含んでもよい。補剛要素には、ボビンの実質的に平坦な表面が含まれる。実質的に平坦な表面は、振動板の背面に直接固定することができる。代替的に、接着剤層は、ボビンの実質的に平坦な表面を内側領域で振動板の背面に固定する。
【0013】
振動板の内側領域は、ボビンの外径と実質的に等しい直径を有していてもよく、外側領域は、円環状であってもよい。
【0014】
別の態様によれば、電気音響ドライバは、ハウジング、ボビン、音響振動板及びコンプライアントサスペンションを含む。ハウジングは円筒形状、ハウジング軸及び約4.5mm未満の外径を有する。ボビンは、ハウジング軸と実質的に同軸のボビン軸を有する。ボビンは、ハウジングの内部に配置され、ボビン軸に沿って移動するように構成されている。音響振動板は、ボビンに固定され、コンプライアントサスペンションは音響振動板を取り囲み、音響振動板及びハウジングに固定される。
【0015】
実施例は、以下の諸機能の1つ以上を含むことができる。
【0016】
電気音響ドライバは、ボビンの内部に配置された磁石アセンブリを更に含むことができる。
【0017】
電気音響ドライバは、ボビンに固定されたコイルアセンブリを更に含むことができる。
【0018】
音響振動板及びコンプライアントサスペンションは、静止時に実質的に平面であってもよい。
【0019】
音響振動板及びコンプライアントサスペンションは、コンプライアント材料のメンブレンから形成することができ、電気音響ドライバは、メンブレンの内側領域に固定された補剛要素を更に含むことができる。内側領域は、コンプライアントサスペンションと同心の円形領域であってもよい。補剛要素は、接着剤又は剛性物体の硬化層であってもよい。ボビンは、メンブレンの内側領域に固定された実質的に平坦な表面を含むことができる。
【0020】
ハウジングの外径は、約3.0mm~4.5mm、約3.3mm~4.2mm、又は約3.6mm~3.9mmとすることができる。
【0021】
磁石アセンブリは少なくとも1つの磁石片を含むことができ、磁石片は約1.5mm~4.5mm、約2.0mm~4.0mm、又は約2.5mm~3.5mmの直径を有していてもよい。
【0022】
ドライバの総断面積に対するドライバの放射面積の比は、約0.7、約0.57~0.7、約0.6~0.67又は約0.62~0.65の値とすることができる。
【0023】
別の態様によれば、電気音響ドライバ用の振動板は、コンプライアントメンブレン及び補剛要素を含む。コンプライアントメンブレンは、外周部、前面、背面、内側領域、外周部と内側領域の間の外側領域、及び振動板が静止しているときに実質的に平坦な形状を有する。補剛要素は、内側領域においてコンプライアントメンブレンの前面及び背面の一方に固定される。
【0024】
実施例は、以下の諸機能の1つ以上を含むことができる。
【0025】
補剛要素は、剛性物体を含むことができる。
【0026】
補剛要素を接着剤の硬化層にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の概念の実施例の上記及び更なる利点は、添付の図面と共に下記の記述を参照することによって一層よく理解できであろう。様々な図において同一の数字は同一の構造的要素及び機能を示す。図面は必ずしもスケーリングされておらず、むしろ、機能及び実施形態の原理を説明することに重点が置かれている。
【0028】
【
図1A】それぞれ電気音響ドライバの斜視図、切断図及び分解切断図である。
【
図1B】それぞれ電気音響ドライバの斜視図、切断図及び分解切断図である。
【
図1C】それぞれ電気音響ドライバの斜視図、切断図及び分解切断図である。
【
図3】振動板の内側領域が接着剤によって補強されている例による、
図1A~
図1Cのハウジング、ボビン及びコイルアセンブリの断面側面図である。
【
図4】振動板の内側領域を補強するために剛性物体を使用する一代替例である。
【
図5】ボビンが振動板の内側領域を補強するための平坦な表面を含む別の代替例である。
【
図6A】ボビンの別の代替例の斜視図、上面図及び側面図である。
【
図6B】ボビンの別の代替例の斜視図、上面図及び側面図である。
【
図6C】ボビンの別の代替例の斜視図、上面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
現代のインイヤ式ヘッドホン、又はイヤホンは通常、マイクロスピーカを含む。マイクロスピーカは、音響振動板に取り付けられたボビンに巻かれたコイルを含むことができる。コイルに設けられた電気信号による振動板の動きにより、電気信号に応答する音響信号が生成される。マイクロスピーカは、ボビン及びコイル、並びに磁気構造体を取り囲む、スリーブ又はチューブといったハウジングを含んでもよい。イヤホンのサイズが小さくなるにつれて、ボビン及びハウジングの一端部において、音響振動板及び周囲のサスペンションを製作することがますます困難になる。
【0030】
図1A、
図1B及び
図1Cは、小型イヤホンで使用可能な電気音響ドライバ10(例えばマイクロスピーカ)の一例の、それぞれ斜視図、切断斜視図及び分解切断図である。マイクロスピーカ10は、両端部に開口部を有する円筒形のハウジング12を有する。ハウジング12の内部には、名目上、形状が円筒形であり両端部が開いているボビン14がある。いくつかの例において、ハウジング12はステンレス鋼で製作されており、ボビン14はポリイミド(例えば、KAPTON(登録商標))又はポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)(例えば、MYLAR(登録商標))で製作されている。ハウジング12及びボビン14は、その開放端部の1つにおいて、エラストマーなどコンプライアント材料からなる振動板又はメンブレン16に固定される。コイルアセンブリ18は、ボビン14の外側表面上に巻かれる。コイルアセンブリ18は電気導体の巻線を含み、巻線を所望の形状に保持する、及び/又は、巻線をボビン14の外側表面に固定する構造を含んでもよい。磁石アセンブリ20は、振動板16とは反対側のハウジング12の端部のプラットフォーム22に固定される。磁石アセンブリ20は、2つの磁石片20A及び20Bを含み、それらは、例えばネオジム磁石、及び介在硬貨20Cとすることができる。磁石アセンブリ20は、ハウジング軸24(即ち、シリンダ軸線)に沿って延び、ボビン14の内側の開放領域に入る。ボビン14の軸線は、ハウジング軸24と実質的に同軸である。
【0031】
電気音響ドライバ10は、ハウジングの外径ΦH及び振動板16の直径ΦDが、約4.7mm未満となるように小型化してもよい。小さい寸法により、コンプライアントサラウンドによって支持される小型音響振動板を提供する方法を含む種々の製造上の問題が発生する。
【0032】
いくつかの例において、ハウジング12は約8mm未満の外径ΦHを有する。いくつかの例において、ハウジング12は約4.5mm未満の外径ΦHを有する。他の例では、ハウジング12は約3.0mm~4.5mmの外径ΦHを有する。他の例では、ハウジング12は約3.3mm~4.2mmの外径ΦHを有する。他の例では、ハウジング12は約3.6mm~3.9mmの外径ΦHを有する。いくつかの例において、磁石片20は約1.5mm~4.5mmの直径ΦDを有する。他の例では、磁石片20は約2.0mm~4.0mmの直径ΦDを有する。他の例では、磁石片20は約2.5mm~3.5mmの直径ΦDを有する。
【0033】
放射面積は、振動板16の非補剛部分(即ち、サラウンド)が破壊を開始する上方の比較的高い周波数について、以下で詳細に記載されている方法を含む様々な方法のうちの任意の1つで補強された、振動板16の内側(中央)領域の面積とほぼ等しい。サラウンドの約半分のより高い周波数の下方の比較的低い周波数についても、振動板の放射面積に寄与する。
【0034】
いくつかの例では、ドライバ10の全断面積に対する放射面積の比は約0.7である。いくつかの例では、ドライバ10の全断面積に対する放射面積の比は、0.57~0.7である。いくつかの例では、ドライバ10の全断面積に対する放射面積の比は、0.6~0.67である。いくつかの例では、ドライバ10の全断面積に対する放射面積の比は、0.62~0.65である。
【0035】
図2も参照すると、振動板16が、様々な機能の識別を簡単にするために、その厚みtを誇張した状態で分離して示されている。振動板16は、所望の厚さtを可能とし、ボビン14の端部及びハウジング12の端部に接着するように硬化する液状シリコーンゴムなどエラストマー材料で形成することができる。振動板16は、外周部、即ち、半径Roの円周の外縁部、前面32及び背面34を有する。振動板16は、半径Riの丸い破線36の内側の内側領域、及び丸い破線36から外周部に延びる円環状形で画定される外側領域を含む。より小さな半径Riは、円筒形のボビン14の外径とほぼ等しく、より大きな半径Roは、ハウジング12の外径とほぼ等しい。非限定例として、振動板の厚さtは数十ミクロンから100μmを超え、直径Roは4.7mm未満であってもよい。
【0036】
ボビン14は、コイルアセンブリ18の巻線を通して伝えられる電流に応答して、ほぼボビン軸及びハウジング軸24に沿って動作する。この動作により、振動板16の内側領域が軸方向に移動して空気を変位させ、音響信号を発生させる。
【0037】
振動板16は、静止時、即ち、電気信号が音を発生させるためにコイルアセンブリ18の巻線に印加されていないときには、実質的に平坦な形状を有する。マイクロスピーカ10が電気信号によって駆動され、ボビン14をハウジング軸24に沿って移動させると、振動板16のコンプライアント性が変形する。振動板16の内側領域は、音響信号を生成するために使用される音響振動板として振る舞う。しかし、振動板16のヤング係数の値が低いため、内側領域はドラムヘッドと同様の振る舞いをすることがある。特に、内側領域は、ドライバ10の動作周波数帯域で不要な構造共振を示すことがあり、ドライバ効率の低下をもたらすことがある。
【0038】
以下に説明する様々な実例において、振動板16の内側領域を、補剛要素によって補強し、又は剛体化することにより、動作中の不要な共振を実質的に低減又は除去する。振動板16の外側領域は、補強された内側領域を囲むコンプライアントサスペンションである。1つの例において、補剛要素は、内側領域の上方の振動板16の背面34に固定され、かうボビン14の内側表面の隣接部分にも固定された、材料の剛性層である。あるいは、補剛要素は、内側領域内で振動板16の背面34に固定された剛性物体である。物体は、スタンドアロン構造体(例えば、個体ディスク)であってもよいし、ボビンの構造的特徴であってもよい。内側領域の補強の結果、不要な共振周波数を電気音響ドライバ10の動作帯域幅から変化させ、及び/又は、こうした共振周波数における音響板16の変位が実質的に低減される。これにより、より滑らかな音響周波数応答が可能となる。加えて、内側領域の補強は、電気音響ドライバの有効ピストン面積を増大させ、それによって特定のボビン変位量に対して出力される音圧を増大させるという付加的な利点を有する。
【0039】
図3は、振動板16の内側領域が補強された一例による、ハウジング12、ボビン14及びコイルアセンブリ18の断面側面図を示している。ボビン14及び振動板16によって画成される「カップ状」の構造体に少量の接着剤を分注して、カップを部分的に充填する。振動板16の内側領域が、接着剤層によって十分覆われることを確実にするために、十分な量の接着剤が使用される。次いで、接着剤が硬化して、ボビン14の内側表面42及び振動板16の背面34(
図2参照)の一部に接着する剛性層40を形成する。内壁に沿ってメニスカス44を形成し、ボビン14に対する接着力を向上させてもよい。
【0040】
図4は、振動板16の内側領域を補強するために剛性物体50(例えば、ディスク)を使用する代替例を示している。ディスク50は、ポリエーテルイミド(例えば、ULTEM(登録商標))など高強度熱可塑性薄膜としてよい。ディスク50をボビン14に挿入できるようにするために、ディスク50はボビン14の内径よりも小さい直径を有する。しかし、振動板16の内側領域との接触を最大にするために、直径の差は小さく保たれ続ける。ディスク50を振動板16の内側領域に接着するために、接合剤の薄い層、又は接着剤を使用してもよい。接合剤又は接着剤はまた、ボビン14の内筒面に接合するために使用することができる。代替的に、ディスク50を、振動板16を作成するために使用されるエラストマー材料(例えば、液状シリコーンゴム)の未硬化層上に載置してもよい。その後、エラストマー層が硬化することにより、振動板16がディスク50及びボビン14の端部に直接接合される。
【0041】
図5は、ボビン60が内側領域を補強するために使用される構造体を含む別の代替例を示す。ボビン60は、
図3及び
図4のボビン14と同様の筒状部60Aを有する。しかし、ボビン60はまた、一方の端部に端面60Bを含む。端面60Bは、筒状部60Aと一体として統合されてもよい。代替的な構成では、端面60Bは、独立して形成された後、円筒部60Aの端部に固定されてもよい。端面60Bは、接合剤又は接着剤を使用して、振動板16の背面34(
図2を参照)に内側領域に沿って固定されてもよい。代替的に、端面60Bを、振動板16を作成するために使用されるエラストマー材料の未硬化層内に配置し、その後、エラストマー材料が硬化して振動板16を表面60Bに接着させことができる。
【0042】
図6A~
図6Cは、内側表面64、外側表面66及びボビン軸68を有するボビン62の別の例を示す。ボビン62は、電気導体(図示せず)の巻線を連続した筒状部67の外側表面66上に保持するように構成されている。ボビン62は、ボビンの端部に実質的に平坦な表面70を有する。実質的に平坦な表面70は、ボビン軸68に対して実質的に垂直であり、内側領域で(上で説明したように)振動板の背面に固定することができる。上で説明した補剛要素を、ボビン62の実質的に平坦な表面70とすることができる。
【0043】
実質的に平坦な表面70、及びその上に表面70が存在するボビン62の部分は、その表面がわずかに凸又は凹になるように小さな半径を有することができる。この小半径は、この部分の厚みを低減することができる、ボビンこの部分の剛性を実質的に増加させて、ボビンの大きさを低減する。小さな凹凸により、ある程度平坦な表面を有することの利点(上述の振動板16など平らなエラストマーフィルム上に配置すること)、及び、曲面のいくつかの利点(例えば、剛性が増大する)が得られる。
【0044】
ボビン62は、外側表面66から実質的に平坦な表面70に延びる脚部72を含む。この例では、ボビンには4つの脚部があるが、脚部が十分な剛性をボビンに与えるのに十分広い場合には、わずか2つの脚部とすることができる。実質的に平坦な表面70には、複数の貫通孔74が設けられている。孔70は、(a)振動板がボビン62に固定されているときに空気の逃がし通路を提供し、(b)ボビンの全体の大きさを減少させる。ボビン62は、マイクロ射出成形法によって作成することができ、プラスチック製とするのが好ましい。
【0045】
ボビン62はまた、平坦な表面70のほとんど実質的にすべての外周部にわたって延びる壁(又はナイフエッジ)65を含む。壁65は、約2~15ミクロン平坦な表面70から盛り上がり、約5~35ミクロンの厚さを有するのが好ましい。この例では、壁は実質的に円環形状であるが、四角形、矩形、三角形又は五角形としてもよい。壁65の目的は、ボビン62を振動板に固定するために使用される接着剤層との接触を開始することである。壁65がない場合、又は、平坦な表面70から脚部72への転移が急激ではない場合、平坦な表面70に接触することになる接着剤の位置は、小さな位置エラーに対して比較的大きな変化を認識することができるため、それによりボビン軸68に関して変換器の対称性をもたらすことができる。
図6Bに示すように、この例ではボビン62は、2.77mmの外径、及び2.5mmの壁65の外側までの直径を有する。
図6Cに示すように、この例ではボビン62は、1.62mmのボビン軸68に沿った寸法を有する。
【0046】
いくつかの実装形態を説明してきた。それにもかかわらず、先の記述は、請求項の範囲によって定義されている本発明の概念の範囲を説明しようとするものであり、それらを制限しようとするものではないことが理解されよう。他の実施例は下記の特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0047】
10 電気音響ドライバ
12 ハウジング
14 ボビン
16 振動板
18 コイルアセンブリ
20 磁石アセンブリ
22 プラットフォーム
24 ハウジング軸
32 前面
34 背面
36 破線
40 剛性層
42 内側表面
44 メニスカス
50 剛性物体
62 ボビン
64 内側表面
65 壁
66 外側表面
67 筒状部
68 ボビン軸
70 表面
72 脚部
74 貫通孔