(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】電磁誘導を用いたプランジャの位置の検出と伝達
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20220105BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20220105BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61M5/168
A61M5/315 510
A61M5/168 550
A61M5/31 530
(21)【出願番号】P 2020102221
(22)【出願日】2020-06-12
(62)【分割の表示】P 2019564947の分割
【原出願日】2018-05-25
【審査請求日】2020-06-15
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】フォート・ステイシー
(72)【発明者】
【氏名】サントス・ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】クロウ・ダグ・オーウェン
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05782814(US,A)
【文献】国際公開第2016/102407(WO,A1)
【文献】特表2010-538799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0243088(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0174342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/178-5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単独で、または、自動注射器もしくは装着型投薬装置の一部として使用される注射器システムであって、
マイクロコントローラ、
電池、および、
前記マイクロコントローラと前記電池とに接続されたコイル
を含むプランジャと、
長軸があり、基端、先端、および周壁を有するシリンダと、
前記シリンダの上を、または、前記シリンダの近傍に位置する前記自動注射器もしくは前記装着型投薬装置の要素の上を、前記長軸に対して平行ではない方向へ伸びている1以上の導電性箔と
を備え、
前記シリンダの周壁は、前記基端と前記先端との間を長手方向に伸びており、外面を含み、内部空間を仕切っており、
前記プランジャは、前記シリンダの内部空間の中を前記シリンダに対して前記長軸に沿って移動可能であり、
前記マイクロコントローラは、
前記導電性箔が前記コイルに誘導する渦電流の変化に伴う前記コイル
と前記導電性箔とを含む回路のインダクタンス
の変化に基づいて
、前記導電性箔に対する前記プランジャの位置を求めるように構成されている
ことを特徴とする注射器システム。
【請求項2】
前記導電性箔は、前記長軸のまわりを周方向に伸びている環状である、請求項1に記載の注射器システム。
【請求項3】
無線通信インタフェースを更に備え、前記マイクロコントローラは、プランジャの位置データを前記無線通信インタフェース経由で外部装置へ送信するように構成されている、請求項1に記載の注射器システム。
【請求項4】
前記プランジャの位置データは前記プランジャの中のメモリに書き込まれる、請求項3に記載の注射器システム。
【請求項5】
前記メモリは前記電池によって駆動される、
請求項4に記載の注射器システム。
【請求項6】
前記外部装置は、前記プランジャの位置が所定の距離を超えて移動したことを前記マイクロコントローラが検出したら、ユーザーに警報を出すように構成されている、請求項3に記載の注射器システム。
【請求項7】
前記マイクロコントローラは、前記電池に電流を前記コイルへ所定の周期で供給させるように構成されている、請求項1に記載の注射器システム。
【請求項8】
針を更に備え、
前記プランジャは、前記シリンダの中の薬剤が前記針を通して投与されるように前記シリンダ内に圧力を加えるように構成されている、
請求項1に記載の注射器システム。
【請求項9】
前記プランジャは印刷回路基板(PCB)を更に含み、前記マイクロコントローラは前記PCBに実装されている、請求項1に記載の注射器システム。
【請求項10】
前記プランジャに取り付けられたピストンを更に備えている、請求項1に記載の注射器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2017年5月25日を出願日とする米国特許仮出願第62/511,086号に対する優先権主張を伴うものであり、その内容全体がここには参照によって組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
急成長を遂げている健康管理システムでは、患者が薬を正しく服用すると出資者の出資額に影響が及ぶことが知られている。薬剤充填済み注射器のような低価格の医療器具に拘る努力は、接続性の面で、他の複雑な投薬システムよりも遅れている。これは主に通信機器の費用による。これらの通信機器の多くは、医療器具そのものよりも高額である。
【0003】
薬剤充填済み注射器には時に、輸送中にプランジャが不要な動きを示すという問題が生じる。空輸の間に、および/または異なる高度を移動する間に、たとえば温度または気圧の変化に伴う内外の圧力差の変化がプランジャを動かしてしまうことがある。プランジャのこの動きは、医療器具の無菌性に影響しうる。潜在する他の溶液が侵襲するという問題もある。薬剤充填済み注射器のような低価格の注射器具には、シリンダおよびプランジャのサイズ、形、材質の変更に関する極めて厳格な製造規格がある。
【発明の概要】
【0004】
以下に開示される技術の実施形態の一例は、注射器システムである。この注射器システムはプランジャを備えている。このプランジャは、マイクロコントローラ、電池、およびコイルを含む。このコイルは、複数の導線でマイクロコントローラと電池とに接続されている。注射器のシリンダは、基端、先端、および周壁を含む。この周壁は長軸を定め、基端と先端との間を長手方向に伸びている。周壁は外面を持ち、内部空間を仕切っている。プランジャはシリンダの基端と先端との間に位置し、シリンダの内部空間の中をシリンダに対して長手方向に移動可能である。シリンダは更にラベルを含む。このラベルは周壁に配置されており、少なくとも2枚の導電性箔で形成されている。これらの導電性箔は、シリンダの長軸に対して平行ではない方向に伸びていて、固有の長さを持つ。マイクロコントローラは、少なくとも2枚の導電性箔がコイルに誘導する電流を測定することにより、シリンダに対するプランジャの位置を求めるように構成されている。
【0005】
注射器システムのある実施形態では、プランジャがヘッド部を含む。このヘッド部は少なくとも一部がシリンダの外側に広がっている。このヘッド部の中に、電池とマイクロコントローラとは配置されている。
【0006】
ある実施形態では、注射器システムは温度センサを更に含む。この温度センサは、注射器システムの温度を表す信号をマイクロコントローラへ出力するように構成されている。
【0007】
ある実施形態では、注射器システムは無線通信インタフェースを更に含む。マイクロコントローラは、温度センサから受信した温度データを、無線通信インタフェース経由でコンピュータ制御装置へ送信するように構成されている。
【0008】
ある実施形態では、注射器システムは無線通信インタフェースを更に含む。マイクロコントローラは、プランジャの位置データを無線通信インタフェース経由で外部装置へ送信するように構成されている。
【0009】
ある実施形態では、外部装置は、プランジャの位置が所定の距離を超えて移動したことをマイクロコントローラが検出したら、ユーザーに警報を出すように構成されている。
【0010】
ある実施形態では、マイクロコントローラは、電池に電流をコイルへ所定の周期で供給させるように構成されている。
【0011】
ある実施形態では、少なくとも2枚の導電性箔は透明である。
【0012】
ある実施形態では、少なくとも2枚の導電性箔は、シリンダの周壁上に、長手方向において互いに間隔を置いて配置され、周方向の長さに応じた順序で配置されている。
【0013】
以下に開示される技術の実施形態の別例は、注射器システムを利用する方法である。この注射器システムはプランジャを含む。このプランジャは、マイクロコントローラ、電池、およびコイルを含む。このコイルは、複数の導線でマイクロコントローラと電池とに接続されている。この注射器システムはシリンダとラベルとを更に含む。シリンダは長軸を持ち、プランジャを受け入れる。ラベルはシリンダの周壁に配置されており、少なくとも2枚の導電性箔を含む。これらの導電性箔は、シリンダの長軸に対して平行ではない方向に伸びていて、固有の長さを持つ。この注射器システムを利用する方法は、マイクロコントローラが電池に電流をコイルへ、複数の導線経由で供給させることによってコイルに渦電流を発生させるステップを含む。発生した渦電流の振幅は、ラベルの導電性箔のそれぞれに対してコイルがシリンダの長手方向においてどこに位置するかに依存する。この方法は更に、マイクロコントローラが、コイルに発生した渦電流を複数の導線経由で測定するステップと、マイクロコントローラが、測定された渦電流に基づいて、シリンダに対するプランジャの位置を求めるステップとを有する。
【0014】
ある実施形態では、この方法は更に、マイクロコントローラが、求められたプランジャの位置に関するデータを、無線通信インタフェース経由で外部装置へ送信するステップを有してもよい。
【0015】
ある実施形態では、この方法は更に、外部装置がプランジャの位置に関するデータに基づいて1以上の警報を出すステップを有してもよい。
【0016】
ある実施形態では、この方法は更に、温度センサが注射器システムの温度の測定値に基づいて温度データを生成するステップと、マイクロコントローラがその温度データを、無線通信インタフェース経由で外部装置へ送信するステップとを有してもよい。
【0017】
ある実施形態では、この方法は更に、外部装置が温度データに基づいて1以上の警報を出すステップを有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付された図面に関連付けて、開示される技術の様々な側面が説明される。例示を目的として図面には、現時点で望ましい実施形態が示されている。しかし、本発明は、図示された配置と手段との詳細には限定されないことが理解されるべきである。
【0019】
【
図1】本発明の望ましい実施形態による注射器システムの特徴を表すブロック図である。
【
図2】本発明の望ましい実施形態による注射器システム用のプランジャの斜視図である。
【
図3】本発明の望ましい実施形態による注射器システム用のシリンダの斜視図である。
【
図4】本発明の望ましい実施形態による注射器システムの一部として一つに組み合わされた、
図2のプランジャと
図3のシリンダとの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の記述では、単に便宜上、ある種の用語が使われるが、限定的なものではない。「右」、「左」、「下」、「上」という語は、参照される図面において方向を示す。「内側へ」と「外側へ」という語はそれぞれ、装置およびその特定の部品群の幾何学的中心へ向かう方向と、その中心から離れる方向とを意味する。これらの列挙された語、それらの派生語、および類義語が用語には含まれる。その他に、「ある」、「一つの」という語は、請求の範囲と、それに対応する明細書の部分とに使われている場合、「少なくとも一つの」を意味する。
【0021】
以下に開示される技術は、使い捨ての注射器システム100等の投薬装置に対し、電磁誘導を利用して電気的に通信する方法である。この方法は手頃な価格であって、拡張が可能である。
図1は、この注射器システムの特徴を、以下に記述される観点に従って表しているブロック図である。注射器システム100は好ましくは、少なくとも、プランジャ101とシリンダ102とを含む。プランジャ101は手動または自動で操作可能であり、シリンダ102内の薬剤(図示せず。)が針301等の開口部を通して投与され得る程度に、シリンダ102の内部に圧力を加える。注射器システム100は好ましくは、状態情報(たとえば、注射の完了、プランジャ101の動き、温度情報)をコンピュータ制御装置等の外部装置103へ、ブルートゥース(登録商標)低エネルギー(BLE)またはその他の無線プロトコルに従って無線通信インタフェース104経由で通信可能である。外部装置には、スマートフォン、タブレット、パソコン、その他のデジタル医療システムが含まれる。プランジャ101の位置に関する情報は好ましくは、マイクロコントローラ105により、誘導コイル108に生じる電磁誘導を利用して生成される。このコイル108はプランジャ101に巻かれ、またはその中に収められている。マイクロコントローラ105は、ある観点では、Cypress PSoC 6 32ビットIoTマイクロコントローラ等であり、好ましくはプランジャ101に埋め込まれている。
【0022】
シリンダ102は好ましくはラベル106を含む。ラベル106はシリンダ102に、好ましくはシリンダ102の外面上に形成され、または貼り付けられている。ラベル106はシリンダ102の外周面に置かれても、その内周面に置かれてもよい。ラベル106はまた、シリンダ102の材料の中に埋め込まれていてもよい。ラベル106は好ましくは、様々な量の導電性の基板を含む。この基板は、ラベル106の長手方向に沿って、シリンダ102の長手方向に伸びている。好ましい実施形態では、ラベル106は好ましくは複数の導電性箔303(
図3参照。)を含む。これらの導電性箔303はそれぞれ、シリンダ102の周壁304の上を周方向(シリンダ102の長軸に対して平行ではない方向を含んでもよい。)に伸びている。導電性箔303のうち、少なくとも2枚が固有の長さを持つ。好ましくは、導電性箔303はそれぞれが固有の長さを持つ。図示されない別の実施形態では、導電性箔303は傾斜していてもよい。導電性箔303それぞれの傾斜は同じ角度であっても、異なる角度であってもよい。これらの実施形態では、導電性箔303はそれぞれ、固有の有効長を持っていてもよい。有効長は、導電性箔303の横方向における長さ(すなわち、長軸に対する傾斜角の余弦に、導電性箔303の全長を乗じた値)である。したがって、導電性箔は全長が等しくても、異なる角度で配置されることにより、それぞれが固有の有効長を持つ箔の列を成すことができる。
図3に示されている実施形態では、導電性箔それぞれの全長が、それぞれに固有の有効長に等しい。その結果、「固有の長さ」という用語は、以下で使われるように、固有の有効長をも意味する。導電性箔303は、好ましくは、シリンダ102の長手方向において互いに離されている。導電性箔303は、周方向の長さに応じた順序で配置されていてもよい(たとえば、最長の箔がシリンダ102の一端に近く、最短の箔が他端に近くてもよい)。導電性箔303の材料は、炭素、銀、または銅のインク等を含んでいてもよいが、これらには限られない。ある観点では、1以上の導電性箔303が、透明な導電性物質を使って印刷されていてもよい。他の実施形態では、導電性箔がそれぞれワイヤで構成されていてもよい。
【0023】
他の観点では、ラベル106は、注射器の付属品のケース、自動注射器、または装着型投薬装置等、近くにある他の要素(図示せず。)に設置されてもよい。その要素が、プランジャ101に置かれた誘導コイル108に渦電流を誘導させるのに十分な程度に、そのコイルに近ければよい。更なる詳細については後述するが、シリンダ102に対するプランジャ101の位置、特にラベル106に対するコイル108の位置に応じて異なる渦電流を、好ましくは、マイクロコントローラ105が測定する。この渦電流は、ラベル106の特定の位置に有る導電性箔303がプランジャ101のコイル108に生じさせる電磁誘導がもたらすものであり、一つには、その導電性箔303の横方向の長さの和に依存する。
【0024】
検出された位置は、好ましくは、プランジャ101内のメモリ107に書き込まれ、たとえば、輸送中におけるプランジャ101の意図しない動きが記録される。メモリ107は好ましくは無電力型である。その他に、電池202(
図2参照。)またはその他の電源によって電力が供給されるものであってもよい。マイクロコントローラ105はまた、内蔵の温度センサ109を使ってプランジャ101の温度を検出してもよく、所定の周期で温度データをメモリ107に書き込んでもよい。これにより、注射器システム100の温度履歴が追跡され、流通時に低温状態が正しく維持されていることを保証することができる。ある観点では、注射器システム100は、保存温度が正しい状態から外れたことについて、たとえば外部装置103を通してユーザーに警報を出してもよい。この機能はまた、薬剤が、流通時の低温保存から脱した後、注射に適した温度に達したことをユーザーに通知するのにも利用されてもよい。さらに、プランジャ101の位置検出により、一回分の薬剤がいつ、どれだけ投与されたかがユーザーにわかるようにして、薬剤投与が正しく守られていることの保証に役立てることもできる。
【0025】
本発明の観点に従ってマイクロコントローラ105と誘導センサ110とを使用することは、必要な部品数を減らすことにより、プランジャ追跡システムの費用を他の可能な手段に比べて削減するのに役立つ。また、輸送中にプランジャ101の動きを追跡することもできる。たとえば、低エネルギー型のマイクロコントローラ105がプランジャ101の位置を所定の周期でサンプリングして、その位置に変化があったか否かを検出してもよい。ある実施形態では、その周期が1秒以下であってもよい。プランジャ101の位置に変化があれば、マイクロコントローラ105がデータの記録を開始し、無線通信インタフェース104を通して接続されたコンピュータ制御装置103に送信してもよい。コンピュータ制御装置103は、プランジャ101の変位が検出されたことをユーザーに警告してもよい。
【0026】
注射器システム100はまた、搭載した温度センサ109に加え、マイクロコントローラ105の内部時計(図示せず。)を利用して、自身の温度と、シリンダ102に薬剤が詰められた時点からの経過時間とを追跡して記録することも可能であってもよい。温度センサ109は、温度を所定の周期で測定するのに利用されてもよい。マイクロコントローラ105は、自身のデューティサイクルが「アクティブ」である間、温度データをメモリ107に書き込んでもよい。
【0027】
ある観点では、開示されたこの技術に利用される電子機器が、充填済み注射器およびその他の注射器具の上で使用されるのに十分な低価格、かつ小型であってもよい。また、より大きな装置に適合する規模であってもよい。マイクロコントローラ105の電力削減量は、以前に製造されたシステムを超えるものであってもよい。これは、超低電力ブートサイクルと「インアクティブ」の長いデューティサイクル(電池の消耗とアイドルタイムとを最小化できる。)との使用を通して実現される。
【0028】
図2は、注射器システム100の実施形態に使用されているプランジャ101の斜視図である。プランジャ101は(CR1220等の)電池202を、コイル108、マイクロコントローラ105、および/または他の要素への電力供給に利用してもよい。ある観点では、電池202は充電可能であってもよい。プランジャ101は電池202を、プランジャ101の一端に位置するヘッド部201の中に収めていてもよい。ヘッド部201はまた、マイクロコントローラ105(
図2には示されていない。)を収容していてもよい。マイクロコントローラ105は印刷回路基板203に実装されていてもよい。好ましくは、複数の導線204がヘッド部201内のマイクロコントローラ105からプランジャ101のシャフト205を通して伸びている。導線204の接続先は、ヘッド部201とは反対側に位置するプランジャ101の先端にあるコイル108であり、そことの間で電気信号をやりとりする。電池202とマイクロコントローラ105とはプランジャ101の頂上に位置してもよく、導線204がマイクロコントローラ105からピストン206まで伸びていてもよい。ピストン206は投薬システム用のロック機構(図示せず。)を包含していてもよい。
【0029】
好ましい実施形態では、電池202は導線204を通してコイル108へ電流を周期的に供給する。コイル108へ電流が供給されることにより、コイル108には誘導電磁場が生成される。この電磁場が、シリンダ102に配置されたラベル106上にある導電性箔303(
図3参照。)と相互作用するので、コイル108に1以上の渦電流を誘導するのに導電性箔303を利用することができる。コイル108に誘導される渦電流の振幅の少なくとも一部は、電池202による電流の供給時にコイル108が、ラベル106内の導電性箔303のそれぞれに対して、シリンダ102の長手方向においてどの位置にあるかに依存する。渦電流は、電池202が電流を供給する際にコイル108に最も近い1以上の導電性箔303から影響を受ける。その導電性箔303の固有の長さに応じて、コイル108の相対位置に依存する渦電流の大きさが区別される。マイクロコントローラ105は導線204を通して、誘導された渦電流を測定し、その測定値を調べて、プランジャ101の位置を表すデータに変換する。ある実施形態では、マイクロコントローラ105は電池202に電流をコイル108へ、所定の周期で供給させるように構成されている。たとえば、電池202は電流を1秒ごとに、5秒ごとに、1分ごとに、または他の周期で供給してもよい。このような実施形態では、マイクロコントローラ105が同じサンプリング周期でプランジャの位置を求めてもよい。
【0030】
図3は、以下に開示される観点に従った注射器システム100用のシリンダ102を示す。ある実施形態では、シリンダ102はラベル106を備えていてもよい。ラベル106は1以上の導電性箔303を含む。これらはサイズが様々であり、小さい順に、または大きい順に並んでいる。ある観点では、小さい導電性箔303ほどコイルの誘導電力が小さく、大きい導電性箔303ほどコイルの誘導電力が大きい。ラベル106に印刷された金属の分布には、いくつかの形があり得る。
図3に示された分布は一例に過ぎない。
【0031】
シリンダ102は、基端、先端、およびそれらの間を長手方向に伸びる周壁304を含む。周壁304は外面を持ち、内部空間を仕切っている。この内部空間の中に薬剤が保存可能である。シリンダの開口部302は、好ましくは、シリンダ102の先端に位置し、アンプル、バイアル等、薬剤の容器を受け入れるように構成されていてもよい。プランジャ101は、好ましくは、製造中および輸送中に開口部302の中へ挿入される。プランジャ101は、薬剤が投与される間、シリンダ102の内部空間の中を、シリンダ102に対して長手方向に移動可能である。薬剤は、シリンダ102の先端に位置する針301またはその他の伝達機構を通して投与されてもよい。
【0032】
図4は、以下に記述される観点に従って組み立てられた注射器システム100を示す。コイル108がラベル106と相互作用する程度に、プランジャ101がシリンダ102の中に挿入されているように描かれている。コイル108に生じた渦電流は導線204を通してマイクロコントローラ105(
図4には示されていない。)によって処理される。マイクロコントローラ105は回路基板203に実装され、プランジャ101のヘッド部201に位置する。ある観点では、安全カバー401が輸送中および使用前に、針301または投薬機構を覆うのに使われてもよい。
【0033】
注射器システム100は、好ましくは、健康管理システムの提供者に低価格注射器具の状態を自動的に監視させる。これにより、提供者は、投薬計画が遵守されているか、保存可能期間が過ぎていないか、輸送中にプランジャが動いていないか、流通時に低温状態が保たれているかについて、追跡することができる。
【0034】
この技術はまた、すでに無線通信機能を含んでいる、より複雑な注射器具に組み込まれていてもよい。可動式のプランジャ101とシリンダ102とを利用する自動注射器が、ここに説明されている開示技術の特徴を備えていてもよい。シリンダ102は、ポリマー、セラミックス、ある種の金属等、コイルが作る磁場とは相互作用しない物質から形成されていてもよい。身体表面に置かれる種類の、または装着型の注射器にも、ここに説明されている技術は適応可能である。さらに、この技術は、特に、安全システムを利用する注射器に適している。
【0035】
その上、注射器システム100はまた、病院環境の中で、病院の在庫管理システムと自動的に通信するのに使用されてもよい。これにより、注射器の使用がリアルタイムで追跡され、予め設定された在庫の量に基づいて注射器が自動的に再発注されるようにしてもよい。
【0036】
注射器システム100は、オーバーモールドまたはインサート成形によって製造されてもよい。マイクロコントローラ105、電池202、および導電体はプランジャ101の中に、この開示を通して説明されたように収められる。これは、一般的な射出成形工程の中で行われてもよい。
【0037】
ラベル106は、従来の注射器ラベリング設備を使って、シリンダ102に貼られてもよい。ピストン206にも、コイル108等、電気系統の素子が含まれてもよい。この場合、プランジャ101がピストン206に組み込まれることで、電気回路が完成してもよい。ある観点では、電気部品のいくつかが、注射器のフランジアダプタ(図示せず。)の内部に、または、自動注射器もしくは装着型投薬システムの周辺部品の中に含まれていてもよい。
【0038】
本発明の実施形態はまた、充填済み注射器のような既存の自己注射器具においても、同様な形式で使用されてもよい。プランジャ101の動き、および/または器具の温度がマイクロコントローラ105によって検出されてもよい。これらの情報をマイクロコントローラ105が読んで記録し、たとえばBLE通信を通してコンピュータ制御装置103へ送信してもよい。外部装置103は、注射器システム100からの情報を読み取り、記録し、表示する関連アプリケーションを備えていてもよい。この情報はまた、健康管理システムの提供者、およびその他の出資者へ伝達されてもよい。
【0039】
以上の観点は、限定的であることを意味しない。異なる注射器システムにおいては、回路の位置およびサイズが変わりうる。ここに開示された技術が、以上に特に示され、説明されている内容によって限定されないことは、当業者には高く評価されるであろう。むしろ、ここに開示された技術の範囲には、当業者が上記の説明を読んで思いつく、先行技術にはない修正および変形に加え、上記の様々な特徴の様々な組み合わせが含まれる。