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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/42 20200101AFI20220214BHJP
   D06F 33/36 20200101ALI20220214BHJP
   D06F 33/38 20200101ALI20220214BHJP
   D06F 39/04 20060101ALI20220214BHJP
   D06F 58/34 20200101ALI20220214BHJP
   D06F 33/56 20200101ALI20220214BHJP
   D06F 33/58 20200101ALI20220214BHJP
   D06F 33/62 20200101ALI20220214BHJP
   D06F 105/28 20200101ALN20220214BHJP
   D06F 105/12 20200101ALN20220214BHJP
   D06F 105/14 20200101ALN20220214BHJP
【FI】
D06F33/42
D06F33/36
D06F33/38
D06F39/04 Z
D06F58/34
D06F33/56
D06F33/58
D06F33/62
D06F105:28
D06F105:12
D06F105:14
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020170895
(22)【出願日】2020-10-09
(62)【分割の表示】P 2020039514の分割
【原出願日】2017-04-13
(65)【公開番号】P2021000570
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 裕之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 光
(72)【発明者】
【氏名】曽我 丈
(72)【発明者】
【氏名】菅原 道太
(72)【発明者】
【氏名】綿引 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高田 健太郎
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-346131(JP,A)
【文献】特開2015-196027(JP,A)
【文献】特開2016-137094(JP,A)
【文献】特開2006-000172(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0059881(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/00-34/34,39/04,58/30-58/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に支持され内部に洗濯水を溜める外槽と、
前記外槽内に回転自在に支持され洗濯物を収容する洗濯槽と、
前記洗濯槽の底部に回転可能に設置した回転翼と、
前記洗濯槽及び前記回転翼を駆動する駆動手段と、
前記洗濯槽内に空気を送出する送風手段と、
前記送風手段で送出された空気を加熱する加熱手段と、
前記洗濯槽内に水を給水する給水手段と、
前記洗濯槽内に水のミストを散布するミスト散布手段と、
前記駆動手段、前記送風手段、前記加熱手段及び前記給水手段を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、洗い工程時又はすすぎ工程時の前記給水手段による給水を実施する前に、前記洗濯槽内に温風を供給するとともに前記洗濯槽内にミストを散布する加熱加湿処理を実行し、前記加熱加湿処理実行後、且つ前記洗濯槽を静止させた状態で前記回転翼を回転させる動作をした後に、排水を実施する、ことを特徴とする、洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛布や布団などの洗濯が行える洗濯乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直接人の肌に接する機会が多い毛布や布団を清潔にするため、洗濯や天日干し、掃除機で吸い取るなどを行うのが一般的である。洗濯や掃除によりダニの糞や死骸を除去することは可能であるが、洗濯や天日干しでダニを死滅させることは容易ではなく、また、厚みのある毛布や布団の繊維にしがみついているダニを吸い取ることも容易ではない。
【0003】
屋内で最も多いチリダニ科のダニは、熱に弱く50℃以上の温度を20分間保持することで100%死滅するという実験結果が公表されている。
【0004】
このような熱によりダニを死滅させる機能を備えた洗濯機が特許文献1に記載されている。この特許文献1には、「洗濯物を収納し洗浄する洗濯槽と、この洗濯槽へ蒸気を供給する蒸気発生手段または熱水供給手段とを備え、蒸気発生手段または熱水供給手段は、洗濯槽内へ衣類を投入した後給水が行われるまでの間に作動し、洗濯槽上方から蒸気または熱水を衣類へ供給し、その後通常の洗濯行程を開始する殺菌・殺ダニ機能付洗濯機。」と記載されている。
【0005】
また、毛布や布団の洗濯が行える機能を備えた洗濯機が特許文献2に記載されている。この特許文献2には、「外枠内に防振支持された外槽と、前記外槽内に配置した洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽内に配置した回転翼、前記外枠の上部に操作部及び表示部を配置した脱水洗濯機において、前記操作部で布団を洗うコースを選択した場合、給水される水位は定格容量の洗濯物を洗う高水位よりも高い水位まで前記洗濯兼脱水槽内に給水を行い、前記表示部では定格容量の洗濯物を洗う高水位を表示し、前記洗濯兼脱水槽と前記回転翼とを一体として一方向に断続的に回転して洗濯することを特徴とする脱水洗濯機。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2639045号公報
【文献】特許第3232892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
蒸気や熱水による殺菌・殺ダニを目的としているが、折り重なった毛布や布団の内部や下方部分では蒸気の浸透効果がほとんど期待できないものであった。
【0008】
また、従来、タテ型洗濯機の毛布を洗うコースは、毛布が浸かる水位まで水を給水し、洗濯兼脱水槽と回転翼を一体として一方向に回転することにより、毛布や布団を洗濯するものであり、毛布や布団に作用する機械力が小さいため、ダニの死骸を十分に除去することが期待できないものであった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、熱に弱い毛布などの洗濯物を加熱してダニを死滅させるとともに、死滅させたダニを洗濯物から効率的に除去することを可能とする洗濯乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の洗濯乾燥機は、筐体と、前記筐体内に支持され内部に洗濯水を溜める外槽と、前記外槽内に回転自在に支持され洗濯物を収容する洗濯槽と、前記洗濯槽の底部に回転可能に設置した回転翼と、前記洗濯槽及び前記回転翼を駆動する駆動手段と、前記洗濯槽内に空気を送出する送風手段と、前記送風手段で送出された空気を加熱する加熱手段と、前記洗濯槽内に水を給水する給水手段と、前記洗濯槽内に水のミストを散布するミスト散布手段と、前記駆動手段、前記送風手段、前記加熱手段及び前記給水手段を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、洗い工程時又はすすぎ工程時の前記給水手段による給水を実施する前に、前記洗濯槽内に温風を供給するとともに前記洗濯槽内にミストを散布する加熱加湿処理を実行し、前記加熱加湿処理実行後、且つ前記洗濯槽を静止させた状態で前記回転翼を回転させる動作をした後に、排水を実施する、構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱に弱い毛布などの洗濯物を加熱してダニを死滅させる場合、ダニを死滅させた後に実行する洗い工程またはすすぎ工程時に、洗濯物に機械力を与えることで、ダニの死骸を効率的に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態による洗濯乾燥機の構造を示す縦断面図
図2】本発明の実施形態による洗濯乾燥機の機能構成図
図3】本発明の実施形態によるダニ対策コースの基本的な制御フローチャート
図4】本発明の別の実施形態によるダニ対策コースの基本的な制御フローチャート
図5】本発明の実施形態による加熱加湿処理の制御フローチャート
図6】本発明の実施形態による毛布温度分布
図7】本発明の実施形態による動作と駆動モードの説明図
図8】本発明の別の実施形態による洗濯乾燥機の構造を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による洗濯乾燥機について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の一実施例を図1図2図3図4図5図6図7に沿って説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態による洗濯乾燥機の構造を示す縦断面図であり、図2は、本発明の実施形態による洗濯乾燥機の機能構成図である。
【0016】
洗濯乾燥機の外枠1内には、洗濯水を溜める外槽2が外枠1の上端四隅部から垂下させた4本の吊り部材(図示せず)で防振支持され、外枠1内の中心部に縦向きに配置されている。外槽2内に配置される洗濯槽3は、ステンレス鋼板を用いて、軸方向に長い有底円筒形状に形成されている。洗濯槽3の周壁には、通水及び通風のための貫通穴7が形成される。
【0017】
洗濯槽3内の内底面部の中央には、洗濯物を撹拌して洗い運転、すすぎ運転、乾燥運転などを行う回転翼6が回転自在に設けられている。回転翼6は、駆動装置8によって回転駆動され、正回転/逆回転を繰り返して洗い運転、すすぎ運転、乾燥運転などを行う。脱水運転時には、洗濯槽3と回転翼6は一体的に高速回転し、洗濯物に含まれる水分が脱水される。
【0018】
駆動装置8は、可逆回転型のコンデンサ分相単相誘導電動機、インバータ駆動電動機などを使用した駆動電動機と電磁操作クラッチ機構と遊星歯車減速機構を内蔵し、駆動電動機と電磁操作クラッチ機構を制御することによって、洗濯槽3を静止させた状態で回転翼6を繰り返し正逆(往復)回転させる撹拌駆動モード(第1駆動形態)と、洗濯槽3と回転翼6を一体的に同一方向に回転させる脱水駆動モード(第2駆動形態)と、洗濯槽3と撹拌翼6を結合せず、撹拌翼6を回転させるとその反動により洗濯槽3が逆方向に回転する中立駆動モード(第3駆動形態)を選択的に実行する駆動機能を有する。
【0019】
外枠1内の後側部には、排気接続部24により外槽2と接続された循環ダクト18が設置されており、循環ダクト18の風路内には、乾燥工程において洗濯物から蒸発した水分を含む温風を、冷却水で冷却して除湿するための水冷除湿板20が設置され、循環している温風に含まれる糸くずなどを除去する糸屑フィルタ(図示せず)が着脱可能に設置されている。温風の流れは、白抜き矢印で示すように、外槽2から排気接続部24を通り、循環ダクト18の下から上方向に向かい、その先には送風機19と、冷却されて除湿した後の循環温風を加熱するためのヒータ17とが設けられている。ヒータ17により加熱された空気は送風ダクト26を通り洗濯槽3に温風を供給する。洗濯槽3に供給される温風の供給口には、金属細線を略半球の網状に織り上げてなるミストメッシュ28が装着されている。ミストメッシュ28の上方には、送風ダクト26内にミストノズル27が下方に向かって突出している。ミストノズル27に水道水が供給されると、ミストノズル27から下方に向かって噴射された水道水がミストメッシュ28に衝突し、水道水が微細化(ミスト化)して洗濯槽3内に散布される。
【0020】
ミストメッシュ28の網の目は、給水ホース接続口10の内部に設けられた給水フィルタ(図示せず)よりも粗くしておくことが望ましい。これにより、水道水中のゴミによってミストメッシュ28が目詰まりすることを防止できる。また、ミストノズル27の下方にミストメッシュ28を配置したことにより、ミストノズル27から噴射された水は、重力加速度によって加速された上でミストメッシュ28に衝突するため、水の微細化を一層促進することができる。
【0021】
送風ダクト26内には、加熱した温風の温度を検出する温風温度センサ21が設置されており、ヒータ17の加熱を制御するために利用する。また、風路内には循環空気の湿度に感応する湿度センサ(図示せず)が設置される。
【0022】
循環ダクト18には洗濯槽3から排出され循環ダクト18内を循環する温風の温度を検出する循環温度センサ22を設置し、排気接続部24には冷却水の流れる位置に排水温度センサ23を設置し、冷却して凝縮回収された結露水を含む冷却水の温度を検出する。
【0023】
洗濯運転時は、循環温度センサ22、または、排水温度センサ23により、洗濯水、または、すすぎ水の水温を検出し、検出した水温により洗い工程や、すすぎ工程の制御内容を変更することに利用することも可能である。
【0024】
制御部9は、マイクロコンピューター37を中心に構成される。
【0025】
マイクロコンピューター37は、表示パネル16と、給水ユニット11、排水弁14を制御する機能を有する。また、モータ駆動回路31を介して駆動装置8のモータ32を駆動制御し、クラッチ駆動回路33を介してクラッチ機構34を切り替え、ヒータスイッチ35のON/OFFを制御することによりヒータ17の通電を制御し、強/弱/オフを制御し、ファン駆動回路36を介して送風機19を制御する機能を有する。
【0026】
図3は、制御部9内のマイクロコンピューター37が実行する本発明の実施形態によるダニ対策コースの基本的な制御フローチャートである。
【0027】
図7は、制御部9内のマイクロコンピューター37がクラッチ機構34を制御する駆動モードの説明図である。
【0028】
マイクロコンピューター37は、電源スイッチ(図示せず)が投入されると次のような制御処理を実行する。
【0029】
ステップS01
電源が投入されると、制御処理系の初期化処理を行った後にクラッチ機構34を洗濯開始時の位置に制御し、排水弁14が閉じていなかったら閉じる制御を行う。
【0030】
ステップS02
洗濯槽3に洗濯物、ここでは毛布や布団を投入し、操作スイッチ30のコース選択ボタン(図示せず)を操作して初期設定を行い、スタートボタンスイッチが押されると、運転制御処理を実行する。ここの初期設定では、本発明の実施形態であるダニ対策のコースを選択して設定する。
【0031】
ステップS03
給水ユニット11の主給水電磁弁(図示せず)を開いて水道水の給水を開始する。この洗い給水は設定された水量まで給水を行うが、クラッチ機構34を脱水の位置に制御して、洗濯槽3と回転翼6を一体的に同一方向に低速で回転させて洗濯物である毛布や布団を早く吸水させる制御を行う。
【0032】
ステップS04
垂直軸を中心に回転する洗濯槽3を有する洗濯乾燥機では、設定された水量まで給水された水道水は、洗濯するのに好ましい洗剤濃度まで洗剤を希釈しており、この洗濯液に洗濯物である毛布や布団は浸された状態となる。この状態で、駆動装置8を制御し、クラッチ機構34を脱水駆動モードにして、洗濯槽3と回転翼6を一体的に回転させる槽回転洗いや、クラッチ機構34を中立駆動モードにして、回転翼6を回転させた反動により、洗濯槽3を逆回転させる槽翼洗いを選択して実行する。
【0033】
槽回転洗いは、毛布や布団を傷めずに洗濯するのに適しているが、毛布や布団に与える機械的な洗浄力は少ない。
【0034】
槽翼洗いは、槽回転洗いと撹拌洗いの両方の利点を併せ持っており、毛布や布団を傷めずに適度な機械的な洗浄力を与えることができる。
【0035】
水平軸または傾斜軸を中心に回転する洗濯槽3を有するいわゆるドラム式の洗濯乾燥機では、洗濯物である毛布や布団が浸るまで水道水を給水せず、洗濯槽3を正転/逆転させて、洗濯物である毛布や布団を上部に持ち上げ落下させるたたき洗い行う。
【0036】
ステップS05
排水弁14を開いて洗濯液を機外に排水する。この洗い排水運転では、排水の途中または終了後にクラッチ機構34を脱水駆動モードに制御する。
【0037】
ステップS06
排水が終了した後、洗濯槽3と回転翼6を一体的に一方向に高速回転させることにより、洗濯物である毛布や布団に含まれる洗濯液を遠心脱水する。
【0038】
ステップS07
排水弁14を閉じ、給水ユニット11の主給水電磁弁を開いて水道水を設定水量まで給水する。
【0039】
ステップS08
駆動装置8を制御してすすぎ1運転を実行する。場合により、運転時間を短縮するためにすすぎ1運転をスキップすることもある。
【0040】
ステップS09
排水弁14を開いてすすぎ水を機外に排水する。このすすぎ1排水運転では、排水の途中でクラッチ機構34を脱水駆動モードに制御する。
【0041】
ステップS10
洗濯槽3と回転翼6を一体的に一方向に高速回転させることにより、洗濯物である毛布や布団に含まれるすすぎ水を遠心脱水する。
【0042】
ステップS11
排水弁14を閉じ、制御部9は、送風機19、ヒータ17、駆動装置8を制御して加熱加湿処理を実行する。
【0043】
具体的には、図5のフローチャートに示すように、駆動装置8を制御して洗濯槽3を低速回転する(ステップS501)。そして、制御部9は、ファン駆動回路36を制御し、送風機19を運転して洗濯槽3内に空気を供給する(ステップS502)。
【0044】
その後、制御部9は、ヒータスイッチ35をONに制御してヒータ17を強運転する(ステップS503)。送風ダクト26内に設置された温風温度センサ21により、温風温度が80℃以上になるまで、洗濯物である毛布や布団を加熱する(ステップS504)。温風温度センサ21により、温風温度が80℃を超えたと検出されると、制御部9は、給水ユニット11を制御して、水道水をミストノズル27から断続的に供給する(ステップS505)。
【0045】
給水ユニット11のミスト用給水電磁弁(図示せず)は、毎分0.2から0.5Lの水道水をミストノズル27に供給できるが、本実施例では、洗濯物である毛布や布団が熱により繊維自体が変形して風合いがごわごわしてしまうのを防ぎながら、ダニを死滅させる温度を保つ必要があるので、ミスト用給水電磁弁を10秒ONしたのち、170秒OFFする断続給水を行う。このON/OFFの時間配分は、一つの制御案であり、それぞれの洗濯乾燥機に合わせて設定することで、洗濯物である毛布や布団の温度が上がり過ぎるのを防ぐことが可能となる。
【0046】
循環ダクト18内に設置された循環温度センサ22により、循環ダクト18内を循環する温風の温度が50℃を超えるまで、断続的にミストを散布しながら、洗濯物である毛布や布団の加熱加湿を継続する(ステップS506)。
【0047】
循環温度センサ22により、循環温度が50℃を超えたと検出されると、制御部9は、給水ユニット11のミスト用給水電磁弁をOFFし、ミストの断続散布を停止する(ステップS507)。その後、制御部9は、ヒータスイッチ35を制御して、ヒータ17を弱運転する(ステップS508)。ヒータ17の弱運転を開始すると同時に、弱運転タイマーを起動し(ステップS509)、弱運転が30分経過するまで継続する(ステップS510)。これは、ダニを死滅させるために、洗濯物である毛布や布団を50℃以上の温度で20分間保持するための処理であり、垂直軸を中心に回転する洗濯槽3に投入された洗濯物である毛布や布団の下部の温度が上がりにくいことへの対応である。水平軸または傾斜軸を中心に回転する洗濯槽3を有する洗濯乾燥機では、洗濯物である毛布や布団は洗濯槽3を回転させて位置を変えることができるため、弱運転をスキップすることも可能である。弱運転タイマーが30分経過したら、制御部9は、ヒータスイッチ35をOFFしてヒータ17による加熱を停止する(ステップS511)。ヒータ17による加熱を停止すると同時に送風運転タイマーを起動する(ステップS512)。送風運転が15分経過するまで送風機19を運転し(ステップS513)、送風運転が15分経過したら、制御部9は、ファン駆動回路36を制御し、送風機19の運転を停止する(ステップS514)。
【0048】
送風運転を停止した後、制御部9は、駆動装置8を制御し、洗濯槽3の回転を停止する(ステップS515)。
【0049】
ステップS12
給水ユニット11の主給水電磁弁を開いて水道水を設定水量まで給水する。
【0050】
ステップS13
駆動装置8を制御してすすぎ2運転を実行する。
【0051】
すすぎ2運転では、死滅させたダニの死骸を除去するための機械力を洗濯物である毛布や布団に与えるため、クラッチ機構34を撹拌駆動モードにして、洗濯槽3を静止させた状態で回転翼6を正転/逆転させる撹拌洗いや、クラッチ機構34を中立駆動モードにして、回転翼6を回転させた反動により、洗濯槽3を逆回転させる槽翼洗いを選択して実行する。
【0052】
ステップS14
ステップS09と同様にすすぎ水を機外に排水する。
【0053】
ステップS15
ステップS10と同様に洗濯物である毛布や布団に含まれるすすぎ水を遠心脱水する。以下、同様にステップS16、ステップS17、ステップS18を実行するが、これらは、場合によっては省略することも可能である。
【0054】
ステップS19
十分なすすぎが終了した洗濯物である毛布や布団は、この最終脱水で十分に遠心脱水される。
【0055】
図4は、加熱加湿処理(ステップS11)を洗い給水(ステップS03)の前に実行する違いはあるものの、基本的な制御は図3のフローチャートと同様である。
【0056】
図6は、毛布の温度分布を簡略的に説明した図であり、この図を用いて、加熱加湿処理の冷却効果を説明する。
【0057】
(a)は、洗濯槽3内に微細化した水を断続的に供給しなかった場合の加熱処理を示し、(b)は微細化した水を断続的に供給して加熱加湿処理を実行した場合を示す。
【0058】
区間tAはヒータ17を強運転しており、区間tBはヒータ17を弱運転しており、区間tCはヒータ17をOFFした送風運転をしている。
【0059】
垂直軸を中心に回転する洗濯槽3に投入された洗濯物である毛布や布団は、温風が供給される場所に近い上面では温度変化T1のような温度変化となり、点Aで50℃を超える。
一方、洗濯槽3の下部では温度変化T2のような温度変化となり、50℃を超える点Bまでの加熱時間が長くなる。このため、温度変化T1は、点Aより更に加熱され続け、毛布に含まれる水分が少なくなるにつれて急激に温度が上昇し、点Cで最高温度となり、毛布の繊維が熱変形することになってしまう。
【0060】
本実施例による加熱加湿処理を実行すると、温風温度が80℃を超えると、ミストノズル27から断続的に水道水が給水される(線M)。これにより、温風が供給される場所に近い上面では50℃を超える点Aからの温度上昇は緩やかになる。また、洗濯槽3の下部では、温度変化T2は点Bで50℃を超え、その後も温度上昇を続ける。ヒータ17を弱運転している区間tBでは、温度変化T1はほぼ横ばいか緩やかな上昇をする。本実施例による加熱加湿処理では60℃を超えることはない。一方、温度変化T2は、弱運転の区間tBでも温度上昇を続け、更に、送風運転の区間tCでも緩やかな温度上昇を続け、50℃以上を20分間以上保持することが可能となる。
【0061】
以上本実施例によれば、洗濯物を適度に冷却および加湿することで、洗濯物の温度が上昇し過ぎるのを防ぐとともに、一定の温度を維持することでダニを効率的に死滅させることが可能となる。
【0062】
また、上記の冷却処理にミストを用いることで、温度が急激に下がることを抑制し、より適切に温度制御することが可能となる。
【実施例2】
【0063】
図8は、本発明の別の実施形態による洗濯乾燥機の構造を示す縦断面図であり、実施例2における加熱処理は、実施例1のように洗濯槽3内に温風を供給するかわりに、給水ユニット11から洗濯槽3内に給水する配管に給水用ヒータ38を設置し、洗濯槽3内に加熱した水を給水することにより、洗濯物である毛布や布団を50℃以上で20分間保持して、ダニを効率的に死滅させる点が異なる。
【0064】
水を加熱しながら給水するかわりに、外槽2と洗濯槽3の間に水を加熱するためのヒータ(図示せず)を設置し、給水した水を加熱し、洗濯物である毛布や布団を50℃以上で20分間保持することも可能である。
【0065】
なお、いわゆるタテ型洗濯乾燥機の場合では、洗濯物である毛布や布団を洗濯するための水量が多く、その水を加熱するための時間が長くなる、または、消費電力量が多くかかるため、洗濯物である毛布や布団が乾いている状態、もしくは、含水している水分を脱水してから、温風により加熱するほうがより有効となる。
【符号の説明】
【0066】
1 外枠(筐体)
2 外槽
3 洗濯槽
6 回転翼
8 駆動装置(駆動部)
9 制御部
17 ヒータ(加熱手段)
19 送風機(送風供給手段)
20 水冷除湿板(水冷除湿手段)
21 温風温度センサ
22 循環温度センサ
27 ミストノズル(ミスト散布手段)
28 ミストメッシュ(微細化部材、ミスト散布手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8