(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】最適な骨形成のための血清リンの効果的かつ効率的な制御
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220127BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20220127BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220127BHJP
C07K 16/22 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZMD
A61P5/00
A61P19/08
C07K16/22 ZNA
(21)【出願番号】P 2020204298
(22)【出願日】2020-12-09
(62)【分割の表示】P 2016569651の分割
【原出願日】2015-05-29
【審査請求日】2021-01-05
(32)【優先日】2014-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516134291
【氏名又は名称】ウルトラジェニクス ファーマシューティカル インク.
【氏名又は名称原語表記】ULTRAGENYX PHARMACEUTICAL INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】000001029
【氏名又は名称】協和キリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】カッキス エミル
(72)【発明者】
【氏名】サンマーティン ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】須藤 友浩
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/099969(WO,A1)
【文献】特表2004-504063(JP,A)
【文献】The Journal of Clinical Investigation,2014年04月,Vol.124, No.4,p.1587-1597
【文献】臨床薬理,2010年07月,Vol.41, No.4,p.155-158
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常なFGF23レベル及び/又は活性に関連する低リン酸血症性疾患の治療用の医薬の製造のための、抗FGF23
抗体の使
用であって、
前記抗FGF23抗体が、そのような治療を必要とする被験者
に2週間ごとに投
与され、
前記抗FGF23抗体が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のCDR配列を含み、前記抗FGF23抗体が皮下投与される、前記
抗FGF23抗体の使用。
【請求項2】
低リン酸血症性疾患が、常染色体優性低リン酸血症性くる病(ADHR)、X染色体連鎖低リン血症(XLH)、常染色体劣性低リン酸血症性くる病(ARHR)、線維性骨異形成症(FD)、線維性骨異形成症(MAS/FD)を合併したマックキューン-オールブライト症候群、Jansen骨幹端軟骨形成不全症(Jansen症候群)、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)、腫瘍性骨軟化症(TIO)、及び慢性代謝性アシドーシスからなる群から選択される、請求項1に記載の抗FGF23抗体の使用。
【請求項3】
低リン酸血症性疾患がXLHである、請求項1又は2に記載の抗FGF23抗体の使用。
【請求項4】
抗FGF23抗体の重鎖が配列番号7の配列を含む、請求項1~3のいずれかに記載の抗FGF23抗体の使用。
【請求項5】
抗FGF23抗体の軽鎖が配列番号8の配列を含む、請求項1~4のいずれかに記載の抗FGF23抗体の使用。
【請求項6】
抗FGF23抗体の重鎖が配列番号7の配列を含み、前記抗FGF23抗体の軽鎖が配列番号8の配列を含む、請求項1~5のいずれかに記載の抗FGF23抗体の使用。
【請求項7】
抗FGF23抗体が、薬学的に許容される担体とともに投与される、請求項1~6のいずれかに記載の抗FGF23抗体の使用。
【請求項8】
被験者がヒトである、請求項1~7のいずれかに記載の抗FGF23抗体の使用。
【請求項9】
被験者が小児被験者である、請求項8に記載の抗FGF23抗体の使用。
【請求項10】
抗FGF23抗体が0.8mg/kgの用量で投与される、請求項1~9のいずれかに記載の抗FGF23抗体の使用。
【請求項11】
抗FGF23抗体が1.0mg/kgの用量で投与される、請求項1~9のいずれかに記載の抗FGF23抗体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年6月9日出願の米国特許仮出願番号第62/009,474号に基づく優先権を主張するものであり、この開示の全体が、全ての目的について参照として本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、骨形成を調節する有効成分を含む組成物、及び該組成物を使用する方法に関する。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイル、すなわち、コンピューター読み取り可能な形式による配列表の副本(ファイル名:ULPI_022_01WO_SeqList_ST25.txt、記録日:2015年5月15日、ファイルサイズ31キロバイト)の内容は、その全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0004】
線維芽細胞増殖因子-23(FGF23またはFGF-23)は、腎臓からのリン酸塩の再吸収の作用を介してリン酸塩レベルを調節するホルモンである。FGF23は、FGF15との配列相同性を用いたデータベース検索から導出された配列に基づいて、PCR法を用いて最初にマウスからクローニングした。ヒトFGF23は、マウスFGF23との配列相同性を用いることでクローニングした(Yamashita,T.ら, Biochem. Biophy. Res. Commun., 277: 494-498, 2000)。
【0005】
最近の研究により、リン酸塩代謝の理解に新たな光明を投じている。リン酸塩は、体内で重要な機能を有しており、いくつかの機序は、ビタミンD、副甲状腺ホルモン、及びフォスファトニン(例えば、FGF23)を含むリン酸塩バランスを調節するために進化してきた。低及び高リン酸塩血症につながるリン酸塩ホメオスタシスの疾患は、一般的であり、臨床的及び生化学的な結果を有する。
【0006】
先の知見にもかかわらず、異常なFGF23シグナル伝達に関する疾患などの異常なリン酸塩代謝に関する疾患を治療するためのより効果的な方法や、治療の有効性を評価するためのより効果的な方法の必要性が依然として残っている。本発明は、このニーズを満たし、そのような疾患を効果的に治療するための組成物及び方法を提供する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、抗FGF23リガンドの投与計画が、慢性投与中の投与サイクル内におけるFGF23のリン酸塩レベルと調節レベルとの関係への理解に基づいて決定することができるという発見に、部分的には基づいている。そのため、本発明は、抗FGF23リガンドの投与計画を決定するための方法を提供する。本発明はまた、FGF23に関連する状態または疾患を治療するための方法を提供する。抗FGF23リガンドは、種々の疾患を治療するために使用することができる。いくつかの他の実施形態では、疾患は、そのような治療を必要とする被験者中の異常なFGF23シグナル伝達に関連する。いくつかの他の実施形態では、疾患は、そのような治療を必要とする被験者中の異常なFGF23活性に関連する。いくつかの他の実施形態では、疾患は、そのような治療を必要とする被験者中の異常に高いFGF23活性に関連する。いくつかの他の実施形態では、疾患は、常染色体優性低リン酸血症性くる病/骨軟化症(ADHR)、X染色体連鎖低リン血症(XL
H)、常染色体劣性低リン酸血症性くる病(ARHR)、線維性骨異形成症(FD)、線維性骨異形成症(MAS/FD)を合併したマックキューン-オールブライト症候群、Jansen骨幹端軟骨形成不全症(Jansen症候群)、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)、腫瘍性骨軟化症(TIO)、慢性代謝性アシドーシス、及び異所性石灰化からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、疾患は、XLHである。いくつかの実施形態では、本方法は、そのような治療を必要とする被験者に抗FGF23リガンドを投与することを含む。いくつかの実施形態では、有効量の抗FGF23リガンドを被験者に投与する。
【0008】
本発明の一態様によれば、抗FGF23リガンドの投与計画は、被験者中の抗FGF23リガンドの1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定することができる。
【0009】
抗FGF23リガンドのPDパラメーターとしては、血清リン(例えば、AUC血清リン(投与間隔内のAUC血清リンなど)、またはピーク値とトラフ値の血清リン)、Tmp/GFR、血清1,25-ジヒドロキシビタミンD、及び血清25-ヒドロキシビタミンDが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドは、抗FGF23抗体、FGF23アンチセンスオリゴヌクレオチド、FGF23の小分子阻害剤、FGF23アンタゴニスト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドは、抗FGF23抗体である。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6から選択される1つまたは複数のCDR配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドの投与計画は、投与サイクルにわたってリン酸塩の十分な増加または所定の産生をもたらす。いくつかの実施形態では、投与計画は、リン酸塩の所定の範囲内でリン酸塩の安定的な増加をもたらす。いくつかの実施形態では、投与計画は、リン酸塩のベースラインレベルを上回る約0.5~約1.5mg/dLの血清リンの安定的な増加をもたらす。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドの投与計画は、慢性の抗FGF23リガンド療法中に結合FGF23レベルを増加させるのに十分な結合剤をもたらす。
【0014】
いくつかの実施形態では、投与計画は、すなわち、投与サイクル中にNaPi輸送体活性を低下させることなくNaPi輸送体への持続的な効果をもたらす投与頻度を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、投与計画は、2週間ごとに(すなわち、Q2W)抗FGF23リガンドを投与することなど、月1回の投与計画よりも頻繁に抗FGF23リガンドを投与することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、投与計画は、骨再形成の増加をもたらす。
【0017】
さらにいくつかの他の実施形態では、本発明は、そのような治療を必要とする被験者に有効量の抗FGF23リガンドを約2週間ごとに投与することによって、疾患を治療及び/または予防するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、投与は、疾患を治療するための統計的に有意な治療効果をもたらす。いくつかの実施形態では、被験者は、常染色体優性低リン酸血症性くる病/骨軟化症(ADHR)、X染色体連鎖低リン血症(XLH)、常染色体劣性低リン酸血症性くる病(ARHR)、線維性骨異形成症(FD)、
線維性骨異形成症(MAS/FD)を合併したマックキューン-オールブライト症候群、Jansen骨幹端軟骨形成不全症(Jansen症候群)、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)、腫瘍性骨軟化症(TIO)、慢性代謝性アシドーシス、及び異所性石灰化からなる群から選択される疾患を有する。いくつかの実施形態では、疾患は、異所性石灰化である。
【0018】
本発明の別の態様によれば、FGF23に関連する状態または疾患を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、抗FGF23リガンドの1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定される投与計画に従って、1つまたは複数の抗FGF23リガンドを投与することを含む。
【0019】
本発明のさらに別の態様によれば、骨再形成を増加させる方法も提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、そのような治療を必要とする被験者に有効量の抗FGF23リガンドを投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドは、マーカーの増加を引き起こす。いくつかの実施形態では、マーカーは、血清1型プロコラーゲン/N末端(P1NP)、カルボキシ末端コラーゲン架橋(CTX)、オステオカルシン、BALP、及び血清CTx並びに尿NTX/クレアチニン比からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、被験者は、常染色体優性低リン酸血症性くる病/骨軟化症(ADHR)、X染色体連鎖低リン血症(XLH)、常染色体劣性低リン酸血症性くる病(ARHR)、線維性骨異形成症(FD)、線維性骨異形成症(MAS/FD)を合併したマックキューン-オールブライト症候群、Jansen骨幹端軟骨形成不全症(Jansen症候群)、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)、腫瘍性骨軟化症(TIO)、慢性代謝性アシドーシス、及び異所性石灰化からなる群から選択される疾患を有する。いくつかの実施形態では、被験者は、XLHを有する。いくつかの他の実施形態では、本方法は、異常なFGF23、例えば、高いFGF23活性及び/またはレベルにより引き起こされた1つまたは複数の状態に関連する骨再形成を増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1フェーズI/II臨床試験中の有効性分析において、KRN23で治療した被験者全員についての治験日による平均(±SD)の血清リン値を示す。
【
図2】第1フェーズI/II臨床試験中の有効性分析において、KRN23で治療した被験者全員についての治験日による平均(±SD)のTmP/GFRレベルを示す。
【
図3】第1フェーズI/II臨床試験中の有効性分析において、KRN23で治療した患者における血清リンのAUC
last(左パネル)及びAUC
n(右パネル)対TmP/GFRのAUC
last(左パネル)及びAUC
n(右パネル)の散布図を示す。
【
図4】第1フェーズI/II臨床試験中の有効性分析において、KRN23で治療した被験者全員についてノモグラムから算出したTmP/GFR対ノモグラムから手作業で読み取ったTmP/GFRの散布図を示す。
【
図5】第1フェーズI/II臨床試験中の有効性分析において、KRN23で治療した被験者全員について4回の投与間隔の経時的な平均(±SD)の1,25(OH)
2Dレベル(pg/mL)を示す。
【
図6】第1フェーズI/II臨床試験中の有効性分析において、経時的な平均(±SD)の総FGF23及び未結合FGF23値を示す。
【
図7】第1フェーズI/II臨床試験中の薬物動態分析について、経時的な(4回の投与間隔中の)平均(±SD)のKRN23濃度を示す。
【
図8】第1フェーズI/II臨床試験中の有効性分析において、ベースラインからの血清リン変化のAUC対血清KRN23 AUCの散布図を示す。
【
図9】第1フェーズI/II臨床試験中の薬物動態分析において、ベースラインからのTMP/GFR変化のAUC対血清KRN23 AUCの散布図を示す。
【
図10】第1フェーズI/II臨床試験中の薬物動態分析において、ベースラインからの血清1,25-ジヒドロキシビタミンD変化のAUC対血清KRN23 AUCの散布図を示す。
【
図11】第1フェーズI/II臨床試験中の薬物動態分析において、集団PK-PDモデル予測からのKRN23で治療したXLHを有する成人被験者におけるKRN23濃度と血清リンのベースラインからの変化との関係を示す。
【
図12】第2フェーズI/II臨床試験中の有効性分析について、KRN23で治療した被験者全員の経時的な平均(±SD)の血清リン値を示す。
【
図13】第2フェーズI/II臨床試験中の有効性分析について、KRN23で治療した被験者全員の経時的な平均(±SD)のTmP/GFRレベルを示す。
【
図14】第2フェーズI/II臨床試験中の有効性分析について、KRN23で治療した被験者全員の経時的な平均(±SD)の1,25(OH)
2Dレベルを示す。
【
図15A】第2フェーズI/II臨床試験中の有効性分析について、経時的な平均(±SD)の総インタクトFGF23値を示す。
【
図15B】第2フェーズI/II臨床試験中の有効性分析について、経時的な平均(±SD)の総未結合インタクトFGF23値を示す。
【
図16】X染色体連鎖低リン血症病態生理学、及び抗FGF23抗体KRN23による治療の提案モデルを示す。
【
図17】提案されたフェーズ2治験設計の概略図を示す。
【
図18】抗FGF23抗体KRN23のQ2W投与計画で治療した小児患者における血清リンレベルを示す。
【
図19】抗FGF23抗体KRN23のQ4W投与計画で治療した小児患者における血清リンレベルを示す。
【
図20】Q2W投与計画またはQ4W投与計画で、抗FGF23抗体KRN23で治療した小児患者における血清リンレベルの並列比較を示す。
【
図21】抗FGF23抗体KRN23のQ2W投与計画で治療した小児患者におけるTmP/GRFレベルを示す。
【
図22】抗FGF23抗体KRN23のQ4W投与計画で治療した小児患者におけるTmP/GRFレベルを示す。
【
図23】Q2W投与計画またはQ4W投与計画で、抗FGF23抗体KRN23で治療した小児患者におけるTmP/GRFレベルの並列比較を示す。
【
図24】Q2W投与計画またはQ4W投与計画で、抗FGF23抗体KRN23で治療した小児患者における血清アルカリホスファターゼ(ALP)レベルの並列比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合の動詞「を含む」及びその活用形は、この単語に続くものが含まれるが、具体的に言及されていないものが除外されないことを意味するよう、その非限定的な意義で使用される。
【0022】
「a」または「an」という用語は、その実体の1つまたは複数を指す;例えば、「遺伝子(a gene)」は、1つまたは複数の遺伝子または少なくとも1つの遺伝子を指
す。従って、「a」(または「an」)、「1つまたは複数の」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書において互換的に使用される。加えて、文脈が、唯一の要素が存在することを明らかに要求するのでない限り、不定冠詞「a」または「an」による「要素(anelement)」の言及は、1つよりも多くの要素が存在する可能性を除
外しない。
【0023】
本発明は、単離された、キメラ、組換え、または合成ポリヌクレオチド配列を提供する。本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」、「核酸断片」、及び「単離された核酸断片」という用語は、本明細書において互換的に使用され、DNA、RNA、cDNAを包含し、一本鎖または二本鎖並びにその化
学修飾があろうとなかろうと包含する。これらの用語は、ヌクレオチド配列などを包含する。ポリヌクレオチドは、合成、非天然または改変ヌクレオチド塩基が含有されていてもよい、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAのポリマーであってもよい。DNAポリマーの形態のポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、またはそれらの混合物の1つまたは複数のセグメントを含んでなってもよい。ヌクレオチド(通常、それらの5’-一リン酸の形態で見られる)は、次のような一文字名によって言及される。「A」は、アデニル酸またはデオキシアデニル酸(それぞれRNAまたはDNA)、「C」は、シチジル酸またはデオキシシチジル酸、「G」は、グアニル酸またはデオキシグアニル酸、「U」は、ウリジル酸、「T」は、デオキシチミジル酸、「R」は、プリン(AまたはG)、「Y」は、ピリミジン(CまたはT)、「K」は、GまたはT、「H」は、AまたはCまたはT、「I」は、イノシン、及び「N」は、任意のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、単離されたもの、キメラ、組換え、または合成ポリヌクレオチド配列は、本発明の遺伝子マーカーから導出される。
【0024】
本発明はまた、タンパク質またはポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは、単離されたもの、精製されたもの、キメラ、組換え、または合成である。本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸ポリマーを指す。ポリマーは、直鎖状または分枝状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されてもよい。また、この用語には、天然にまたは介入によって、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションによって修飾されたアミノ酸ポリマーも包含される。また、この定義には、例えば、1つまたは複数のアミノ酸の類似体(例えば、非天然アミノ酸などが含まれる)、並びに当該技術分野で公知の他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。ポリペプチドは、単鎖または会合した鎖として存在できる。本発明のポリペプチドは、種々の形態(例えば、天然、融合、グリコシル化、非グリコシル化、脂質化、非脂質化、リン酸化、非リン酸化、ミリストイル化、非ミリストイル化、単量体、多量体、微粒子、変性など)を取ることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質またはポリペプチドの配列は、本発明の遺伝子マーカーから導出される。
【0025】
本明細書で使用される単一文字のアミノ酸略語は、当該技術分野で標準的な意味を有し、本明細書で記載される全てのペプチド配列は、N末端が左方に、C末端が右方で慣習に従って書かれている。
【0026】
本明細書で使用する場合、「FGF23シグナル伝達経路における成分」という用語は、FGF23、またはFGF23の活性を直接的または間接的に調節することができる他の成分、またはFGF23によって直接的または間接的に調節することができる成分を指す。そのような成分としては、Sapir-Korenand Livshitsに記載されるもの(Bone mineralization and regulation of phosphate homeostasis,IBMS BoneKEy, 8:2
86-300, (2011))、Quarles(FGF23, PHEX, and MEPE regulation of phosphate homeostasisan
d skeletal mineralization, American Journal of Physiology-Endocrinology andMetabolism Published 1 July 2003, Vol. 285, no. E1-E9)、及びMartin and Quarles(Evidencefor Fgf23
Involvement in a Bone-Kidney Axis Regulating Bone Mineralization and SystemicPhosph
ate and Vitamin D Homeostasis, Endocrine FGFs and Klothos, Springer Scienceand Busine
ss Media, LLC, landers Bioscience)が挙げられるが、これらに限定されない、これらの開示の各々の全体が、全ての目的について参照として本明細書中に援用される。
【0027】
本明細書で使用する場合、「線維芽細胞増殖因子受容体」または「FGFR」という用語は、一般には、細胞外リガンド結合ドメイン、単一膜貫通ヘリックス、及びチロシンキナーゼ活性を有する細胞質ドメインを含む、FGFによって及ぼされたシグナルを細胞内部へ伝達するのに必要なFGFに特異的な受容体を指す。FGFR細胞外ドメインは、3種類の免疫グロブリン様(Ig様)ドメイン(D1、D2、及びD3)、ヘパリン結合ドメイン並びに酸性ボックスからなる。
【0028】
「抗原」という用語は、本明細書で使用する場合、抗体によって認識することが可能な分子を指す。抗原は、例えば、ペプチドまたはその修飾形態であってもよい。抗原は、1つまたは複数のエピトープを含み得る。
【0029】
「エピトープ」という用語は、本明細書で使用する場合、抗体によって特異的に認識される抗原の一部である。エピトープは、例えば、ペプチド(例えば、本発明のペプチド)の一部を含み得る、またはからなり得る。エピトープは、直鎖エピトープ、連続エピトープ、またはコンフォメーションエピトープであってもよい。
【0030】
本明細書で使用する場合、「抗FGF23リガンド」という用語」は、FGF23の活性を直接的または間接的に阻害する分子を指す。阻害は、DNAレベル、転写レベル、転写後レベル、翻訳レベル、及び/または翻訳後レベルで起こり得る。そのような分子としては、抗FGF23抗体、FGF23アンチセンスオリゴヌクレオチド、FGF23の小分子阻害剤、FGF23アンタゴニスト、並びにFGF23シグナル伝達経路の1つまたは複数の成分と相互作用することで、FGF23を間接的に阻害する任意の分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、本明細書で使用する場合、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を含み、ヒト抗原結合ドメインを含む任意の免疫学的結合剤または分子を広く指す。重鎖の定常ドメインのタイプに応じて、全抗体は、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのうちの1つに割り当てられ、本発明の抗体は、これらのクラスのうちのいずれか1つであってもよい。これらのいくつかは、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのようなサブクラスまたはアイソタイプにさらに分けられる。免疫グロブリンの種々のクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、及びμと称される。免疫グロブリンの種々のクラスのサブユニット構造及び3次元構成は周知である。いくつかの実施形態では、IgG及び/またはIgMが使用される。「抗体(antibodyまたはantibodies)」という用語を使用する場合、これは、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(mAb)などのインタクト抗体、並びにFabまたはF(ab’)2断片などのそのタンパク質分解断片を含むことを意図すると理解すべきである。キメラ抗体;ヒト及びヒト化抗体;組換え及び操作された抗体、並びにそれらの断片が本発明の範囲にさらに含まれる。さらに、抗体の可変領域をコードするDNAを、他の抗体をコードするDNAに挿入してキメラ抗体を産生することができる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。単鎖抗体も本発明の範囲内である。
【0032】
「単鎖可変断片(scFv)」という用語によって、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域が短鎖(通常、セリン、グリシン)リンカーによって一緒に連結された融合体を意図する。単鎖抗体は、抗原結合能を有し、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖の可変領域に相同または相似なアミノ酸配列を含む単鎖複合ポリペプチドであり得る(連結VH-VL
または単鎖Fv(scFv))。VHとVLがともに、天然モノクローナル抗体の配列をコピーしてもよく、該鎖の一方または両方が、米国特許第5,091,513号(その全内容は引用により本明細書に組み込まれる)に記載の型のCDR-FR構築物を含むものであってもよい。軽鎖及び重鎖の可変領域に相似な個々のポリペプチドは、ポリペプチドリンカーによって一緒に保持されている。そのような単鎖抗体の作製方法は、特に、VH鎖とVL鎖のポリペプチド構造をコードするDNAが既知である場合、例えば、米国特許第4,946,778号、同第5,091,513号、及び同第5,096,815号(各々の全内容は引用により本明細書に組み込まれる)に記載の方法に従って達成され得る。
【0033】
「軽鎖」という用語は、完全長の軽鎖及び結合特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有するその断片を含む。完全長の軽鎖は、可変領域ドメイン、VL、及び定常領域ドメイン、CLを含む。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端に位置する。軽鎖は、κ鎖及びλ鎖を含む。
【0034】
「重鎖」という用語は、完全長の重鎖及び結合特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有するその断片を含む。完全長の重鎖は、可変領域ドメイン、VH、及び3つの定常領域ドメインCH1、CH2、及びCH3を含む。VHドメインは、ポリペプチドのアミノ末端に、CHドメインは、カルボキシル末端に位置し、CH3が、ポリペプチドのカルボキシ末端に最も近い。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4サブタイプを含む)、IgA(IgA1及びIgA2サブタイプを含む)、IgM及びIgEを含む任意のアイソタイプのものであり得る。
【0035】
3つの相補性決定領域が、重鎖可変領域に存在し、それらは、第1相補性決定領域(CDR1)、第2相補性決定領域(CDR2)、及び第3相補性決定領域(CDR3)である。重鎖可変領域における3つの相補性決定領域は、重鎖相補性決定領域と総称する。同様に、3つの相補性決定領域が軽鎖可変領域に存在し、それらは、第1相補性決定領域(CDR1)、第2相補性決定領域(CDR2)、及び第3相補性決定領域(CDR3)である。軽鎖可変領域における3つの相補性決定領域は、軽鎖相補性決定領域と総称する。これらのCDRの配列は、Sequencesof Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services(1991)などに記載の方法を用いることで決定することができ
る。
【0036】
抗原結合タンパク質、例えば、抗体または免疫グロブリン鎖(重鎖または軽鎖)の「免疫学的に機能的な断片」(または単に「断片」)という用語は、本明細書で使用する場合、完全長の鎖中に存在する少なくともいくつかのアミノ酸を欠いているが抗原と特異的に結合することが可能な抗体の一部(その部分がどのように入手されたかまたは合成されたかにかかわらず)を含む、抗原結合タンパク質である。そのような断片は、特異的に標的抗原と結合し、所定のエピトープに対する特異的結合において、インタクト抗体を含む他の抗原結合タンパク質と競合するという点において、生物学的に活性である。一態様では、そのような断片は、完全長の軽鎖または重鎖に存在する少なくとも1つのCDRを保持し、いくつかの実施形態では、単一の重鎖及び/または軽鎖またはその部分を含む。これらの生物学的に活性な断片は、組換えDNA技術により作製することができ、またはインタクト抗体を含む抗原結合タンパク質の酵素的または化学的開裂により作製することができる。免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片には、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体、及び単鎖抗体が含まれ、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ラクダ類、またはウサギを含むいずれの哺乳類起源に由来してもよい。本明細書に開示される抗原結合タンパク質の機能性部分、例えば、1つまたは複数のCDRを、第2のタンパク質または小分子と共有結合させることにより、二機能性の治療特
性を有するかまたは延長された血清半減期を有する、体内の特定の標的を被験者とする治療薬を作製し得るということが、さらに考慮される。
【0037】
「Fc」または「Fc領域」は、1つまたは2つの重鎖断片を含み、抗体のCH2及び/またはCH3ドメインを含んでもよい。2つの重鎖断片が存在する場合、2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合及びCH3ドメインの疎水性の相互作用により連結されている。Fc領域は、天然由来(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgAなどに由来するFc領域)であってもよく、または天然由来の重鎖断片またはFc配列を構成する断片に導入された、1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20など)変異、欠失、または挿入を含む操作された配列であってもよい。
【0038】
「Fab’断片」は、2つのFab’断片の2つの重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合が形成され、F(ab’)2分子を形成し得るように、1つの軽鎖と、VHドメイン及びCH1ドメイン、さらにCH1及びCH2ドメイン間の領域を含む1つの重鎖の一部とを含む。
【0039】
「F(ab’)2断片」は、2つの重鎖間に鎖間ジスルフィド結合が形成されるように、2つの軽鎖と、CH1及びCH2ドメイン間の定常領域の一部を含む2つの重鎖とを含む。従って、F(ab’)2断片は、2つの重鎖間のジスルフィド結合により連結されている2つのFab’断片からなる。
【0040】
「Fv領域」は、重鎖及び軽鎖の両方に由来する可変領域を含むが、定常領域を欠いている。
【0041】
当業者によって理解されるように、「抗体」という用語によって包含される免疫学的結合試薬は、全抗体、二量体、三量体、及び多量体抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、組換え及び操作された抗体、並びにそれらの断片を含む、全ての抗体及びそれらの抗原結合断片に及ぶ。従って、「抗体」という用語を用いて、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子を指し、本用語は、Fab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(DAB)、TandAb二量体、Fv、scFv(一本鎖Fv)、dsFv、ds-scFv、Fd、直鎖状抗体、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体断片、バイボディ、トリボディ(それぞれ、scFv-Fab融合、二重特異性または三重特異性)、sc-ダイアボディ、カッパ(ラムダ)ボディ(scFv-CL融合)、二重特異性T細胞結びつけ(BiTE)(T細胞を誘引するためのscFv-scFvタンデム型)、双対可変ドメイン(DVD)-Ig(二重特異性形式)、小免疫タンパク質(SIP)(ミニボディの一種)、SMIP(「小モジュール免疫薬理学的」)scFv-Fc二量体、DART(ds安定化ダイアボディ「二重親和性再標的化」)、1つまたは複数のCDRを含む小抗体模倣物などの抗原結合ドメインを含む抗体断片を含む。様々な抗体に基づく構築物及び断片を調製及び使用するための技術は、当該技術分野で周知である(参照により明確に本明細書に組み込まれる、Kabatら,1991を参照されたい)。ダイアボディは、具体的には、欧州特許第404,097号明細書及び国際公開第93/11161号明細書にさらに説明され、一方で、直鎖状抗体は、Zapataら(1995)にさらに説明される。
【0042】
抗体は、従来の技術を使用して断片化することができる。例えば、F(ab’)2断片は、抗体をペプシンで処理することによって生成することができる。得られたF(ab’)2断片を処理し、ジスルフィド架橋を還元し、Fab’断片を産生することができる。パパイン消化は、Fab断片の形成につながり得る。Fab、Fab’、及びF(ab’)2、scFv、Fv、dsFv、Fd、dAb、TandAb、ds-scFv、二量
体、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体断片、並びに他の断片を、組換え技術によって合成するか、あるいは化学的に合成することもできる。抗体断片を産生するための技術が当該技術分野で周知であり、説明されている。例えば、Beckmanら,2006、Holliger& Hudson,2005、Le Gallら,2004、Re
ff & Heard,2001、Reiterら,1996、及びYoungら,1995の各々は、効果的な抗体断片の産生をさらに説明し、それを可能にする。
【0043】
抗体または抗体断片を、天然に産生するか、あるいは完全に、または部分的に合成的に産生することができる。従って、抗体は、任意の適切な供給源、例えば、組換え供給源由来であってもよく、及び/またはトランスジェニック動物、もしくはトランスジェニック植物で、またはIgY技術を使用することにより、卵子で産生することができる。従って、抗体分子は、インビトロまたはインビボで産生することができる。いくつかの実施形態では、抗体または抗体断片は、3つのCDRドメインを含む抗体軽鎖可変領域(VL)と、3つのCDRドメインを含む抗体重鎖可変領域(VH)とを含む。前記VL及びVHは、概して、抗原結合部位を形成する。
【0044】
本明細書で使用する場合、「Fv」断片は、完全な抗原認識及び結合部位を含有する、最小の抗体断片である。この領域は、密接した非共有結合会合で、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体を有する。各々の可変ドメインの3つの超可変領域(CDR)が相互作用し、VH-VL二量体の表面上で抗原結合部位を画定するのは、この配置内である。集合的に、6つの超可変領域(CDR)は、抗原結合特異性を抗体に付与する。しかしながら、抗体の軽鎖可変ドメインからの3つのCDRと、重鎖可変ドメインからの3つのCDRの存在は、抗原結合に必ずしも必要ではないことは、当該技術分野で十分に立証されている。従って、上述の古典的な抗体断片よりも小さい構築物が有効であることが知られている。例えば、ラクダ抗体(Hamers-Castermanら,1993;ArbabiGhahroudiら,1997)は、広範囲に及ぶ抗原結
合レパートリーを有するが、軽鎖を欠いている。また、VHドメインのみ(Wardら,1989、Davies and Riechmann,1995)またはVLドメインのみ(vanden Beuckenら,2001)を含む単一ドメイン抗体での結果は、これらのドメインが、許容される高親和性で抗原に結合できることを示す。従って、3つのCDRは、効果的に抗原に結合することができる。
【0045】
単一のCDR、または2つのCDRが効果的に抗原を結合することも知られている。第1の例として、GFPなどの異種タンパク質内に挿入されるVH CDR3領域が、異種
タンパク質上に抗原結合能を付与することを示すことで例示されるように、単一のCDRを、異種タンパク質内に挿入し、異種タンパク質上に抗原結合能を付与することができる(Kissら,2006;Nicaiseら,2004)。2つのCDRが効果的に抗原に結合し、親抗体が保有するよりも優れた特性をさらに付与することができることが、さらになお知られている。例えば、親抗体由来の2つのCDR(VHCDR1及びVL CDR3領域)は、親分子の抗原認識特性を保持するが、腫瘍に浸透する優れた能力を有することが示された(Qiuら,2007)。天然の親抗体に類似する様式で、CDRを配向するために、これらのCDRドメインを適切なリンカー配列(例えば、VHFR2由
来)と結合することは、さらに良好な抗原認識を産生した。従って、適切なフレームワーク領域が親抗体に見出される立体配座を維持するための手段によって配向される、2つのCDRドメイン(例えば、1つはVHドメイン由来、及び1つはVLドメイン由来、例えば、2つのCDRドメインのうちの1つがCDR3ドメインである)を含む抗原結合抗体模倣物を構築することが可能であることは、当該技術分野において既知である。従って、本発明のいくつかの抗体は、6つのCDR領域(3つは軽鎖由来、及び3つは重鎖由来)を含み得るが、6つのCDR領域より少ない、または1つもしくは2つ程度のCDR領域を有する抗体も、本明細書によって包含される。加えて、重鎖または軽鎖のみからのCD
Rを有する抗体も企図される。
【0046】
特定の重鎖CDR領域とともに使用するための軽鎖CDR領域は、本明細書の他の箇所に記載されている。しかしながら、本発明の重鎖可変領域とともに使用するための3つのCDRを含む他の軽鎖可変領域も企図される。本発明の重鎖可変領域とともに使用することができ、かつFGF23に結合する抗体を生み出す適切な軽鎖可変領域を、当業者は容易に同定することができる。例えば、本発明の重鎖可変領域を、単一軽鎖可変領域、または軽鎖可変領域のレパートリーと組み合わせ、得られた抗体をFGF23への結合に関して試験することができる。本発明の重鎖可変領域の異なる軽鎖可変領域との相当な数のそのような組み合わせが、FGF23に結合する能力を保持するであろうことが予測されるであろう。
【0047】
同様の方法を用いて、本発明の軽鎖可変領域と組み合わせて使用するための代替的な重鎖可変領域を同定することができる。特定の実施形態において、抗体または抗体断片は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgE、IgM、またはIgD定常領域などの重鎖定常領域の全てまたは一部を含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、IgG1重鎖定常領域、またはその一部である。さらに、抗体または抗体断片は、カッパ軽鎖定常領域、もしくはラムダ軽鎖定量領域の全てまたは一部、あるいはそれらの一部を含むことができる。そのような定常領域の全てまたは一部は、天然に産生されるか、または完全に、もしくは部分的に合成であり得る。そのような定常領域における適切な配列は、当該技術分野において周知であり、立証されている。重鎖及び軽鎖由来の定常領域の全ての補体が、本発明の抗体に含まれる場合、そのような抗体は、典型的には、「全長」抗体、または「全」抗体と本明細書で称される。
【0048】
「機能的断片」は、抗体の一部(部分断片)であり、抗体の抗原への1つまたは複数の作用を有する。言い換えれば、機能的断片とは、抗原への結合能、抗原への反応性、または抗原の認識能を保持した断片を指す。例としては、Fv、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、単鎖Fv(scFv)、及びこれらのポリマーなどが挙げられる。より具体的に述べれば、例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、ダイアボディ、dsFv、及びCDRを含むペプチドが挙げられる(D.J. King., App
lications and Engineering of Monoclonal An
tibodies., 1998 T. J. International Ltd)。
【0049】
本発明の抗体は、本発明のFGF23に対する抗体または抗体の機能的断片に放射性同位元素、低分子の作用物質、高分子の作用物質、タンパク質などを化学的あるいは遺伝子工学的に結合させた誘導体などの抗体の誘導体を包含する。本発明の抗体の誘導体は、本発明のFGF23に対する抗体もしくは抗体の機能的断片のH鎖(重鎖)あるいはL鎖(軽鎖)のアミノ末端側あるいはカルボキシ末端側、抗体もしくは抗体の機能的断片中の適当な置換基または側鎖、さらには抗体または抗体の機能的断片中の糖鎖などに放射性同位元素、低分子の作用物質、高分子の作用物質、タンパク質などを化学的手法(抗体工学入門、金光修著、地人書館、1994)などにより結合させることにより製造することができる。加えて、タンパク質を結合させた抗体の誘導体は、本発明のFGF23に対する抗体及び抗体の機能的断片をコードするDNAと、結合させたいタンパク質をコードするDNAを連結させて発現用ベクターに挿入し、該発現ベクターを適当な宿主細胞へ導入し、発現させることにより製造される。
【0050】
本発明では、「ヒト抗体」とは、ヒト由来の抗体遺伝子の発現産物である抗体として定義する。ヒト抗体は、後述のように、ヒト抗体遺伝子座を導入し、ヒト抗体を産生する能力を有するトランスジェニック動物に抗原を投与することにより得ることができる。これらのトランスジェニック動物としては、マウスが挙げられる。ヒト抗体を産生し得るマウ
スの作出方法は、例えば、国際公開第WO2002/43478号に記載されている。
【0051】
ポリペプチドの「変異体」は、別のポリペプチド配列と比較して、1つまたは複数のアミノ酸残基が、アミノ酸配列に挿入、該アミノ酸配列から欠失、及び/または該アミノ酸配列に置換されたアミノ酸配列を含む。変異体には、融合タンパク質が含まれる。
【0052】
ポリペプチドの「誘導体」とは、挿入、欠失、または置換変異体とは性質が異なる何らかの方法で化学的に修飾されている、例えば、別の化学的部分への結合を介して修飾されているポリペプチドである。
【0053】
本明細書を通して、ポリペプチド、核酸、宿主細胞などの生物材料との関連において使用される「天然由来の」という用語は、天然で見られる材料を指す。
【0054】
「同一性」という用語は、配列のアライメント及び比較によって判断される、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子間の配列の関係を指す。「同一性パーセント」とは、比較される分子中のアミノ酸間またはヌクレオチド間の同一の残基の割合(%)を指し、比較される分子の最小のサイズのものに基づいて算出される。これらの算出においては、アライメント中のギャップ(存在する場合)を、特定の数理モデルまたはコンピュータープログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって扱わなければならない。整列された核酸またはポリペプチドの同一性を算出するために使用し得る方法としては、ComputationalMolecular Biology, (Lesk, A.
M.編), (1988) New York: Oxford University P
ress; Biocomputing Informatics and Genome
Projects, (Smith, D. W.編), 1993, New York:
Academic Press; Computer Analysis of Seque
nce Data, Part I, (Griffin, A. M., and Griffin, H. G.編), 1994, New Jersey:Humana Press
; von Heinje, G., (1987) Sequence Analysis
in Molecular Biology, New York: Academic Press; Sequence Analysis Primer,(Gribskov,
M. and Devereux, J.編), 1991, New York: M. Stockton Press; and Carilloら, (1988)SIAM I.
Applied Math. 48:1073に記載されるものが挙げられる。
【0055】
同一性パーセントの算出においては、比較される配列を、配列間において最適に一致が得られるように整列させる。同一性パーセントを決定するために使用されるコンピュータープログラムは、例えば、GCGプログラムパッケージであってもよく、それには、GAP(Devereuxら,(1984) Nucl. Acid Res. 12:387
; Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)が含まれる。コンピューターアルゴリズムGAPが、配列同一性パーセントを決定しようとする2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドを整列させるために使用される。配列は、それらそれぞれのアミノ酸またはヌクレオチドの最大の一致(アルゴリズムによって判断される「一致スパン」)をもたらすように整列させる。ギャップ開始ペナルティ(平均値対角の3倍で算出され、「平均値対角」は、使用される比較マトリックスの対角の平均値である;「対角」は、特定の比較マトリックスによって、それぞれの完全なアミノ酸一致に割り当てられるスコアまたは数字である)及びギャップ伸長ペナルティ(通常、ギャップ開始ペナルティの1/10倍である)、並びにPAM250またはBLOSUM 62などの比較マトリックスが、アルゴリズムとともに使用される。特定の実施形態において、標準の比較マトリックス(PAM
250比較マトリックスに関してはDayhoffら, (1978) Atlas of
Protein Sequence and Structure 5:345-352;
BLOSUM 62比較マトリックスに関してはHenikoffら,(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:10915-10919
を参照されたい)は、アルゴリズムによっても使用される。
【0056】
GAPプログラムを使用してポリペプチドまたはヌクレオチド配列の同一性パーセントを決定するための推奨パラメーターは、以下の通りである:
アルゴリズム:Needlemanら, 1970年, J.Mol.Biol.48:443~453
比較マトリックス:上記のHenikoffら, 1992年からの、BLOSUM 62;
ギャップペナルティ:12(しかし末端ギャップについてはゼロペナルティ)
ギャップ長ペナルティ:4
類似性の閾値:0
【0057】
2つのアミノ酸配列を整列させるためのあるアライメントスキームは、2つの配列の短い領域のみの一致をもたらすこともあり、この小さなアライメント領域は、2つの完全長の配列間に有意な関係がなくても、非常に高い配列同一性を有し得る。そのため、所望により、標的ポリペプチドの少なくとも50個の隣接するアミノ酸にわたるアライメントをもたらすように、選択されたアライメントの方法(例えば、GAPプログラム)を調節することができる。
【0058】
「治療すること」及び「治療」という用語は、本明細書で使用する場合、臨床結果を含む有益または所望の結果を得るためのアプローチを指し、治療する疾病または状態の1つまたは複数の測定可能なマーカーにおけるわずかな変化または改善も包含し得る。治療とは、通常、状態、疾病、疾患、損傷、または損害の少なくとも1つの症状を減らすのに効果的である。臨床改善のマーカーの例は、当業者には明らかであろう。例としては、以下のうちの1つまたは複数:疾病がもたらす1つまたは複数の症状の重症度及び/または頻度の低下、疾病の程度の低減、疾病の安定(例えば、疾病の悪化の防止または遅延)、疾病の進行の遅延または速度低下、疾病状態の緩和、疾病を治療するのに必要とされる1つまたは複数の他の薬物の用量の減少、及び/または生活の質の増加などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
「予防法(Prophylaxis)」または「予防的治療(prophylactic treatment)」、または「予防的治療(preventivetreatment)」とは、1つまたは複数の症状及び/またはそれらの根本原因の発生または重症度を予防または減らすこと、例えば、疾病または状態を発症しやすい被験者における疾病または状態の予防を指す(例えば、危険性の高い、遺伝性素因、環境要因、素因疾病または疾患などの結果として)。
【0060】
本明細書で同義に使用される「疾患」または「疾病」という用語は、身体またはその臓器及び/または組織のうちの1つの状態における、臓器機能及び/または組織機能の働きを妨害するか、または乱し(例えば、臓器機能不全を引き起こす)、及び/または疾病に苦しむ被験者に不快感、機能不全、苦痛などの症状、またはさらには死を引き起こす、任意の変化を指す。
【0061】
「薬学的に許容される」とは、生物学的ではない物質、またはさもなければ望ましくない物質を意味し、すなわち、その物質は、任意の有意な望ましくない生物学的作用を引き起こすことなく、または有害な様式でそれが含有される組成物の他の成分のうちのいずれとも相互作用することなく、患者に投与される医薬組成物に組み込まれ得る。薬学的担体
または賦形剤を指すために「薬学的に許容される」という用語が使用される場合、担体または賦形剤が、毒物学的試験及び製造試験の必要な基準を満たしていること、またはアメリカ食品医薬品局によって作成された非活性成分ガイド(InactiveIngre
dient Guide)に含まれることを示唆する。
【0062】
「有効量」という用語は、所望の治療結果をもたらす1つまたは複数の化合物の量を指す。有効量は、1つまたは複数の用量内に含むことができ、すなわち、単回投与または複数回投与が、所望の治療エンドポイントを達成するのに必要とされ得る。
【0063】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、著しく悪いまたは有害な副作用を必要に応じて引き起こすことなく、状態を治療する、または損傷もしくは損害を減らすもしくは予防するのに必要な1つまたは複数の作用物質のレベルまたは量を指す。
【0064】
「予防有効量」とは、疾病または状態を発症しやすい及び/または疾病または状態を発症し得る被験者に投与した場合に、将来の疾病または状態の重症度を予防または減らすのに十分な作用物質の量を指す。
【0065】
本発明の方法によれば、「被験者」という用語及びその変形語は、本明細書で使用する場合、疾病または状態を有する、有すると疑われる、または発症する危険性のある任意の被験者を含む。適当な被験者(または患者)としては、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、またはモルモット)、牧畜、家畜、またはペット(例えば、ネコ、イヌ)が含まれる。非ヒト霊長類、及び好ましくはヒト患者が含まれる。「危険性のある」被験者は、検出可能な疾病を有する場合もあり、または有さない場合もあり、本明細書に記載の診断法または治療法の前に検出可能な疾病を呈しているかもしれず、または呈していないかもしれない。「危険性のある」とは、被験者が本明細書に記載される状態の発症と相関する測定可能なパラメーター(それらは、本明細書に記載される)である1つまたは複数のいわゆる危険因子を有することを示す。これらの危険因子のうちの1つまたは複数を有する被験者は、これらの危険因子(複数を含む)を有しない被験者よりも本明細書に記載される状態を発症する可能性が高い。そのような危険因子の一例は、臨床的に正常な試料と比較して本発明のバイオマーカーの増加または減少である。
【0066】
特定の実施形態において、治療のパラメーターまたは他の指標を測定する場合、「増加した」または「減少した」量またはレベルは、「統計的に有意な」量を含み得る。ある結果が、偶然生じた可能性の低いものであれば、通常、それは統計的に有意であると言う。試験または結果の有意性のレベルは、伝統的には、事象が偶然生じた可能性が低いことを受け入れるのに必要なエビデンスの量に関する。場合によっては、統計的有意性は、帰無仮説が実際には真であるのに帰無仮説を棄却する判断を下す(第一種過誤または「偽陽性判定」として知られる判断)確率であると定義され得る。この判断は、p値を用いて行われる場合が多く、p値が有意なレベル未満であれば帰無仮説は棄却される。p値が小さいほど結果の有意性は高い。また、統計的有意性を判定するためにベイズ因子が利用される場合もある(例えば、GoodmanS., Ann Intern Med 130:1
005-13, 1999を参照されたい)。いくつかの実施形態では、「増加した」ま
たは「減少した」量またはレベルは、所定の標準量、または以前または早期の時点と比べて決定された時点の量の約1.1×、1.2×、1.3×、1.4×、1.5×、2×、2.5×、3×、3.5×、4×、4.5×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、15×、20×、25×、30×、40×、または50×以上または以下である。
【0067】
本発明の組成物によって治療されるヒト被験者は、完全応答または部分応答を示し得る。完全応答(CR)とは、本明細書で使用する場合、別段の指示がない限り、全ての測定可能及び測定不可能な症状の消失、及び治療中の患者において新たな症状が現れないこと
を指す。部分応答(PR)とは、本明細書で使用する場合、別段の指示がない限り、少なくとも1つの測定可能な及び測定不可能な症状が著しく減少する、または治療中の患者において新たな症状が現れないことを指す。
【0068】
「リン酸塩」は、身体の軟組織に無機形態または有機形態で分散される。非骨リン酸塩は、全身含有量の20%未満を含む。残りは、骨基質中に保存される。従って、骨格は、リン酸塩の主要な蓄積である。成人における血清リンの正常な範囲は、約2.5~約4.5mg/dLであり、子供は高く、年齢で変化し、例えば、5~12歳の子供における血清リンの正常な範囲は、約2.9~約5.7mg/dLである(Greenbergら,血清無機リンの正常な範囲、及び先天性の低リン酸血症の診断における判別としてのその利用。JClin Endocrinol Metab 1960;20:364-379;Burrittら,健康な子供における19個の生物学的変数の小児の基準間隔。MayoClin Proc 1990;65:329-336、その全体を参照により本明細書に組み込まれる)。血清リンが減少すると、PTH及びビタミンDの活性を介して骨から再吸収される。腎臓は、リン酸塩ホメオスタシスを調節する主要な臓器である。濾過されたリン酸は、腎臓内に再吸収され、NaPi-2A及びNaPi-2Cの助けを借りて腎近位尿細管細胞を横切って輸送される。
【0069】
「副甲状腺ホルモン」(PTH)は、血清カルシウム濃度及び血清リン濃度の調節因子である。低カルシウム血症は、PTHの産生を刺激し、ビタミンD、1,25(OH)2ビタミンDの活性型を合成する酵素である近位尿細管25(OH)ビタミンD 1-α-ヒドロキシラーゼの発現を増加させ得る。1,25(OH)2ビタミンDは、腎遠位曲尿細管におけるカルシウム再吸収を増加させる。また、骨から細胞外液へのカルシウムの放出は、増加した破骨細胞骨吸収を介してPTHによって刺激される。1,25(OH)2ビタミンDは、腸管でのカルシウム及びリン酸吸収を増加させ、破骨細胞活性を増加させることによって、骨からのリン酸塩の可動化を増加させる。PTH及びビタミンD両方の産生は、負のフィードバックループにおける線維芽細胞増殖因子(FGF)23の影響を受ける。
【0070】
「FGF23」は、リン酸塩ホメオスタシスの内分泌調節因子であり、ホスフェート消耗疾患である「常染色体優性低リン酸血症性くる病(ADHR)」を罹患している患者の変異遺伝子として最初に同定された(Anonymous.,「Autosomal Dominant Hypophosphataemic Rickets is Associated with Mutations in FGF23」,Nat Genet 2
6(3):345-348(2000))。FGF23は、先端刷子縁膜におけるII型ナトリウム依存性リン酸輸送体NaPi-2A及びNaPi-2Cの産物量を減らすことによって、腎近位尿細管におけるリン酸塩の再吸収を阻害する(Baumら,「Eff
ect of Fibroblast Growth Factor-23 on Phosphate Transport in Proximal Tubules」,Kidne
y Int 68(3):1148-1153(2005);Perwadら, 「Fib
roblast Growth Factor 23 Impairs Phosphoru
s and Vitamin D Metabolism In Vivo and Suppresses 25-hydroxyvitamin D-1alpha-hydroxylaseExpression In Vitro」, Am J Physiol Rena
l Physiol 293(5):F1577-1583(2007);Larssonら, 「Transgenic mice expressing fibroblast
growth factor 23 under the control of the alpha1(I) collagen promoter exhibitgrowth r
etardation, osteomalacia, and disturbed phosphate homeostasis」, Endocrinology145(7
):3087-3094(2004))。FGF23のリン酸塩尿活性は、不活性N末端断片(Y25~R179)及びC末端断片(S180~I251)を産生する、FGF23アミノ酸配列の177位及び178位にそれぞれ対応する176RXXR179(配列番号11)モチーフ(ここで、「XX」は、「HT」として定義する)でのタンパク質切断によってダウンレギュレートされる(Goetzら,「Molecular Insights into the Klotho-dependent, Endocrine
Mode of Action of Fibroblast Growth Factor
19 Subfamily Members」, Mol Cell Biol 27(9):3417-3428(2007))。FGF受容体(FGFR)1は、FGF23のリン酸塩尿作用の主要なメディエーターである(Liuら,「FGFR3 and FGFR
4 do not Mediate Renal Effects of FGF23」, J
Am Soc Nephrol 19(12):2342-2350(2008));Ga
ttineniら, 「FGF23 Decreases Renal NaPi-2a a
nd NaPi-2c Expression and Induces Hypophos
phatemia in vivo Predominantly via FGF Receptor 1」, Am J Physiol 297(2):F282-F291(200
9))。加えて、クロソ、老化抑制剤として最初に説明したタンパク質(Kuro-oら, 「Mutation of the Mouse Klotho GeneLeads to a Syndrome Resembling Aging」, Nature 390(6655):45-51(1997))は、そのリン酸塩尿活性を及ぼすために、その標的組織中でFGF23による共受容体として必要とされる(Kurosuら,「Reg
ulation of Fibroblast Growth Factor-23 Sig
naling by Klotho」, J Biol Chem 281(10):6120-6123(2006));Urakawaら, 「KlothoConverts C
anonical FGF Receptor into a Specific Receptor for FGF23」, Nature 444(7120):770-774(2006);及びGoetzR,ら(Isolated C-terminal tail of FGF23 alleviates hypophosphatemia by in
hibiting FGF23-FGFR-Klotho complexes form
ation. Proc Natl Acad Sci USA. 2009.)。クロソは、FGF23の同族FGFRに構成的に結合し、FGFR-クロソ二元複合体は、FGF23への結合親和性の増強を示す((Kurosuら,「Regulation of F
ibroblast Growth Factor-23 Signaling by Kl
otho」, J Biol Chem 281(10):6120-6123(2006);Urakawaら, 「Klotho Converts CanonicalFGF
Receptor into a Specific Receptor for FGF23」, Nature 444(7120):770-774(2006))。免疫共沈降研究において、タンパク質切断(Y25~R179)の不活性N末端断片は、FGFR-クロソ二元複合体に結合しないが、FGF23(Y25~I251)の成熟した完全長形態は、FGFR-クロソ二元複合体に結合することが実証された(Goetzら,「Mo
lecular Insights into the Klotho-dependent, Endocrine Mode of Action of FibroblastGr
owth Factor 19 Subfamily Members」, Mol Cell
Biol 27(9):3417-3428(2007))。KL及びFGFR1cが共発現されると、インビトロでの高レベルなFGF23シグナル伝達が発生し、この活性は、FGFR-FGF23-KL会合を分断する抗FGF23抗体によって遮断することができる(UrakawaI,ら Klotho converts canonical
FGF receptor into a specific receptor for F
GF23. Nature 2006;444:770-774;Aono Y,ら Therapeutic Effects of Anti-FGF23Antibodies
in Hypophosphatemic Rickets/Osteomalacia.
J Bone Miner Res. 2009)。
【0071】
FGF23は、腎ビタミンD1-α-ヒドロキシラーゼの発現を減少させ、異化25(OH)D-24-ヒドロキシラーゼの発現を増加させることで、血中1,25(OH)2D濃度を減少させることによって、近位尿細管におけるリン酸再吸収を減少させる機能を有する。FGF23のインビボ過剰発現は、ADHR、X染色体連鎖低リン血症(XLH)、及び腫瘍性骨軟化症(TIO)を罹患している患者と同様に、低リン酸血症、くる病/骨軟化症をもたらす(LarssonT,ら Transgenic mice expressing fibroblast growth factor 23 under the control ofthe alpha1(I) collagen promoter exhibit growth retardation, osteomalacia, and disturbedphosphate homeostasis. En
docrinology 2004;145:3087-3094;Shimada T,ら FGF-23 transgenic mice demonstratehypop
hosphatemic rickets with reduced expression of sodium phosphate cotransportertype IIa. Biochem Biophys Res Commun 2004;314:409
-414.)。一方、1,25(OH)2Dは、FGF23プロモーターのインビトロ活性及びインビボ産生を刺激し(Kolek OI,ら1alpha, 25-Dihyd
roxyvitamin D3 upregulates FGF23 gene expr
ession in bone: the final link in a renal-gastrointestinal-skeletal axisthat control
s phosphate transport. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 2005;289:G1036-G1042;
Liu S,ら Novel regulators of Fgf23 expression and mineralization in Hyp bone.Mol Endoc
rinol 2009;23:1505-1508;Shimada T,ら FGF-2
3 is a potent regulator of vitamin D metabolism and phosphate homeostasis.J Bone Miner
Res 2004;19:429-435)、これは、負のフィードバックプロセスが腎臓と骨の間にあることを示唆している。
【0072】
「クロソ」タンパク質は、腎臓で主に発現される130-kDaの1回膜貫通タンパク質である(Matsumaraら, 「Identificationof the human klotho gene and its two transcripts enc
oding membrane and secreted klotho protein
」, Biochem Biophys Res Commun 242(3):626-6
30(1998)、その全体を参照により本明細書に組み込まれる)。クロソの膜結合アイソフォームに加えて、代替的なスプライシング及びタンパク質切断は、血液循環で見られるクロソの2つの可溶性アイソフォームを生じさせる(Imuraら,「Secre
ted Klotho protein in sera and CSF: implica
tion for post-translational cleavage in re
lease of Klotho protein from cell membrane」, FEBS Lett 565(1-3):143-147(2004);Kurosu
ら, 「Suppression of aging in mice by the hormone Klotho」, Science 309(5742):1829-1833(
2005);Matsumuraら, 「Identification of the human klotho gene and its two transcriptsen
coding membrane and secreted klotho protei
n」, Biochem Biophys Res Commun 242(3):626-
630(1998);Shiraki-Iidaら, 「Structure of th
e mouse klotho gene and its two transcripts encoding membrane and secretedprotein」, F
EBS Lett 424(1-2):6-10(1998)、それら全体を参照により本明細書に組み込まれる)。クロソ遺伝子は、老化抑制遺伝子として機能することが、観察により示唆される。
【0073】
FGFR1、転写物変異体1は、メンバー間及び進化を通じて高度に保存される線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)ファミリーのメンバーである。完全長の代表的なタンパク質は、3つの免疫グロブリン様ドメイン、単一疎水性膜貫通セグメント、及び細胞質チロシンキナーゼドメインから構成される細胞外領域からなる。タンパク質の細胞外部分は、線維芽細胞成長因子と相互作用し、下流シグナルのカスケードを作動させて、最終的に、有糸分裂誘発及び分化に影響を及ぼす。この特定のファミリーメンバーは、酸性及び塩基性の両方の線維芽細胞成長因子に結合し、肢誘導に関与する。この遺伝子の突然変異は、プファイファー症候群、ジャクソン-ウェイス症候群、アントレー・ビクスラー症候群、骨空洞性異形成症、及び常染色体優性カルマン症候群に関連している。Itohら,
「The Complete Amino Acid Sequence of the Sh
orter Form of Human Basic Fibroblast Growth
Factor Receptor Deduced from its cDNA」, Bi
ochem Biophys Res Commun 169(2): 680-685(1
990);Dodeら, 「Kallmann Syndrome: Fibroblas
t Growth Factor Signaling Insufficiency?」,
J Mol Med 82(11):725-34(2004);Coumoulら, 「
Roles of FGF Receptors in Mammalian Development and Congenital Diseases」,Birth Defec
ts Res C Embryo Today 69(4):286-304(2003)を
参照されたい。それら全体を参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、異なるタンパク質アイソフォームをコードするスプライス変異体について記載している;しかしながら、全ての変異体が完全に特徴付けられてはいない。
【0074】
「ヒトFGF23」は、配列番号12の配列を有し、マウスFGF23は、配列番号13の配列を有する。FGF23は、スブチリシン様前駆体タンパク質変換酵素(SPC)部位R176HTR179/S180(配列番号14)にて、細胞内タンパク質分解を介して不活性化される。いくつかのFGF23変異体、例えば、R176Q、R179Q、及びR179Wは、この部位を破壊し、タンパク質の完全長活性型を安定化し、ADHR症状をもたらす。ヒトクロソは、配列番号15の配列を有する。
【0075】
哺乳類において、FGFは、4つのFGF受容体(FGFR1~4、例えば、FGFR1c、FGFR2c、FGFR3c、及びFGFR4などの多重スプライス変異体で同様に発現される)のセットを介して、その活性を調整する。各FGF受容体は、リガンド結合により活性化され、MAPK(Erk1/2)、RAF1、AKT1、及びSTATを含む下流シグナル伝達経路をもたらす細胞内チロシンキナーゼドメインを含有する(Kharitonenkovら,(2008) BioDrugs 22:37-44)。F
GFR1~3の「c」レポータースプライス変異体は、β-クロソに特異的な親和性を示し、FGF21に対する内在性受容体として働くことが、いくつかの報告書において提示されている(Kurosuら,(2007) J. Biol. Chem. 282:2
6687-26695、Ogawaら, (2007) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:7432-7437、Kharitonenkovら,(2008) J. Cell Physiol. 215:1-7)。β-クロソ、及びFG
FR4の両方が豊富に発現している肝臓では、FGF21は、β-クロソとFGFR4の複合体にFGF21が強く結合するにもかかわらず、MAPKのリン酸化を誘導しない。3T3-L1細胞、及び白色脂肪組織において、FGFR1は、最も豊富にある受容体であり、それゆえ、この組織におけるFGF21のメインの機能性受容体は、β-クロソとFGFR1cの複合体である可能性が最も高い。FGFR遺伝子の代替スプライシングは、多数のFGFRアイソフォームを産生する。
【0076】
「高リン血症」は、血中のリン酸塩レベルが異常に上昇する電解質障害である。カルシウムレベルは、組織中のカルシウムとリン酸塩の沈殿により低下する(低カルシウム血症)ことが多い。平均のリンレベルは、約0.81mmol/L~約1.45mmol/Lの間であるべきである。兆候及び症状としては、異所性石灰化、二次性副甲状腺機能亢進症、及び腎性骨異栄養症が挙げられるが、これらに限定されない。高リン血症は、腎臓のリン酸塩排出障害及び/または巨大な細胞外液リン酸塩負荷により引き起こされ得る。リン酸塩排出障害は、副甲状腺機能低下症(例えば、発達性、自己免疫、手術後または放射線療法後、またはカルシウムセンシング受容体の活性化突然変異)、副甲状腺抑制(例えば、副甲状腺非依存性高カルシウム血症、ビタミンDまたはビタミンA中毒、サルコイドーシス、他の肉芽腫性疾患、固定化、骨融解性転移、ミルク・アルカリ症候群、または重篤な高マグネシウム血症または低マグネシウム血症)、偽性副甲状腺機能低下症、末端肥大症、腫瘍状石灰化症、またはヘパリン療法によるものであり得る。巨大な細胞外液リン酸塩負荷は、外因性リン酸塩の急速投与、広範な細胞障害または壊死(例えば、圧挫損傷、横紋筋融解症、異常高熱、劇症肝炎、細胞障害性療法、または重篤な溶血性貧血)、または細胞透過性リン酸塩シフトによるものであり得る。
【0077】
これに対して、低リン酸血症は、正常な範囲の2.2~4.9mg/dlを下回る血清リン濃度を指す(Dwyerら, 「Severe hypophosphatemia
in postoperative patients, 「Nutr Clin Prac
t 7(6):279-283(1992);Alonら, 「Calcimimtetics as an adjuvant treatment forfamilial hy
pophosphatemic rickets」, Clin J Am Soc Nephrol 3(3):658-664(2008)、それら全体を参照により本明細書に組
み込まれる)。
【0078】
低リン酸血症は、腎リン酸消耗(常染色体優性低リン酸血症性くる病(ADHR)、X染色体連鎖低リン血症(XLH)、常染色体劣性低リン酸血症性くる病(ARHR)、線維性骨異形成症(FD)、線維性骨異形成症(MAS/FD)を合併したマックキューン-オールブライト症候群、Jansen骨幹端軟骨形成不全症(Jansen症候群)、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)、腫瘍性骨軟化症(TIO)、及び慢性代謝性アシドーシスなど)、他の遺伝性または後天性腎リン酸消耗疾患、アルコール性及び糖尿病性ケトアシドーシス、急性喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、COPDの薬物療法、敗血症、臓器(特に、腎臓)移植からの回復、非経口鉄投与、サリチル酸塩中毒、重篤な外傷、スクラルファート及び/または制酸薬による慢性治療、機械的人工換気法、摂食障害(神経性無食欲症及び神経性過食症など)、またはリフィーディング症候群によるものであり得る。
【0079】
「腎リン酸消耗」は、リン酸の腎尿細管再吸収が損傷している遺伝性または後天性の状態を指す。腎リン酸消耗は、マックキューン-オールブライト症候群(MAS)及び骨の線維性骨異形成症(FD)を罹患している患者のおよそ50%で発生する。FGF23の血清レベルは、正常な年齢一致対照と比較してFD/MAS患者で増加し、腎リン酸消耗を罹患していないものと比較してリン酸消耗を罹患しているFD/MAS患者で著しく高く、かつ、疾患活性を評価するのに一般に使用される骨代謝疾患の指標と相関しているこ
とが報告されている(Riminucciら, FGF-23 in fibrous dysplasia of bone and its relationshipto ren
al phosphate wasting, J. Clin. Invest. 112:683-692(2003))。
【0080】
方法
本発明によれば、治療を受けている被験者における抗FGF23リガンドの1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて、抗FGF23リガンドを使用する方法、特に、抗FGF23リガンドの投与計画を決定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の抗FGF23リガンドは、FGF23に関連する状態、例えば、FGF23が正常レベルよりも高い状態の治療に使用される。例えば、いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドを用いて、常染色体優性低リン酸血症性くる病/骨軟化症(ADHR)、X染色体連鎖低リン血症(XLH)、常染色体劣性低リン酸血症性くる病(ARHR)、線維性骨異形成症(FD)、線維性骨異形成症(MAS/FD)を合併したマックキューン-オールブライト症候群、Jansen骨幹端軟骨形成不全症(Jansen症候群)、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)、腫瘍性骨軟化症(TIO)、慢性代謝性アシドーシス、及び異所性石灰化を治療する。
【0081】
いくつかの他の実施形態では、抗FGF23リガンドを用いて、低リン酸血症または腎リン酸消耗に関連する疾患または状態を治療する。
【0082】
本発明によれば、抗FGF23リガンドは、FGF23活性及び/またはFGF23シグナル伝達経路における1つまたは複数の成分を調節する、例えば、ダウンレギュレートすることで、FGF23の活性をダウンレギュレートすることができる任意の有効成分または活性物質を含み得る。いくつかの実施形態では、活性物質は、小分子である。いくつかの実施形態では、活性物質は、抗体などのポリペプチドである。いくつかの実施形態では、活性物質は、siRNAなどのポリヌクレオチドである。本明細書で使用する場合、「活性」という用語は、ゲノムDNAレベル、転写レベル、転写後レベル、翻訳レベル、翻訳後レベルで所与の標的の活性を指し、遺伝子コピー数、mRNA転写速度、mRNA量、mRNA安定性、タンパク質翻訳速度、タンパク質安定性、タンパク質修飾、タンパク質活性、タンパク質複合体活性などを含むが、これらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施形態では、活性物質は、FGF23の活性を調節する。いくつかの実施形態では、活性物質は、FGF23シグナル伝達経路における成分の遺伝子コピー数を調節する。いくつかの実施形態では、活性物質は、治療前の遺伝子コピー数と比較した場合に、遺伝子コピー数を0.5×、1.0×、1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、100×、1000×、10000×またはそれ以上に増やすかまたは減らすことができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、活性物質は、FGF23シグナル伝達経路における成分のmRNA量を調節する。いくつかの実施形態では、活性物質は、治療前のmRNA量と比較した場合に、mRNA量を0.5×、1.0×、1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、100×、1000×、10000×またはそれ以上に増やすかまたは減らすことができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、活性物質は、FGF23シグナル伝達経路における成分のタンパク質レベルを調節する。いくつかの実施形態では、活性物質は、治療前のタンパク質レベルと比較した場合に、タンパク質レベルを0.5×、1.0×、1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、100×、1000×、10000×またはそれ以上に増やすかまたは減らすことができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、活性物質は、FGF23シグナル伝達経路における成分のmRNA及び/またはタンパク質活性または安定性を調節する。いくつかの実施形態では、活性物質は、治療前の安定性と比較した場合に、活性または安定性を増やすかまたは減らすことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、活性物質は、FGF23シグナル伝達経路における成分の酵素活性を調節する。いくつかの実施形態では、活性物質は、治療前の安定性と比較した場合に、酵素活性を増やすかまたは減らすことができる。
【0088】
FGF23シグナル伝達経路における成分の活性は、当業者に公知の任意の適当な方法によって決定することができる。いくつかの実施形態では、生体試料は、被験者から採取し、分析される。いくつかの実施形態では、生体試料は、次いで、FGF23シグナル伝達経路における成分、例えば、遺伝子増幅数、RNA、mRNA、cDNA、cRNA、タンパク質などの活性について評価される。
【0089】
いくつかの実施形態では、生体試料由来のmRNAは、活性のレベルを決定するために直接使用される。いくつかの実施形態では、レベルは、ハイブリダイゼーションによって判断される。いくつかの実施形態では、RNAは、当該技術分野で公知の方法を用いてcDNA(相補的DNA)コピーに変換される。いくつかの特定の実施形態において、cDNAは、蛍光標識または他の検出可能な標識で標識される。次いで、cDNAを、複数の被験者プローブを含有する基質にハイブリダイズする。被験者プローブは、一般には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で遺伝子署名の少なくとも1つのDNA配列にハイブリダイズする。特定の実施形態において、複数のプローブは、ハイブリダイゼーション条件下で遺伝子バイオマーカー由来の配列にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、条件は、65℃で6×SSC(0.9M NaCl、0.09Mクエン酸ナトリウム、pH7.4)を用いることを含む。プローブは、核酸を含んでもよい。「核酸」という用語は、合成、天然に存在し、及び非天然に存在し、参照核酸と同様の結合特性を有し、かつ参照ヌクレオチドと同様に代謝される公知のヌクレオチド類似体または改変された骨格残基もしくはリンケージを包含する。そのような類似体の例としては、限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホナート、キラルメチルホスホナート、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。検出方法には、RT-PCR、ノーザンブロット分析、遺伝子発現分析、マイクロアレイ分析、遺伝子発現チップ分析、ハイブリダイゼーション技術(FISHを含む)、発現ビードチップアレイ、及びクロマトグラフィー、並びに当該技術分野で公知の任意の他の技術が含まれ得るが、これらに限定されない。DNAを検出する方法には、PCR、リアルタイムPCR、デジタルPCR、ハイブリダイゼーション(FISHを含む)、マイクロアレイ分析、SNP検出アッセイ、SNP遺伝子型決定アッセイ、及びクロマトグラフィー、並びに当該技術分野で公知の任意の他の技術が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態では、タンパク質発現レベルは、活性のレベルを決定するために使用される。FGF23シグナル伝達経路における成分のタンパク質発現レベルは、当業者に公知の任意の適当な方法によって決定することができる。タンパク質を検出、量子化、及び比較するための任意の適当な方法は、Tschesche(Methodsin Protein Biochemistry, ISBN Walter de Gruyte
r, 2011, ISBN 3110252368、9783110252361)、G
oluchら(Chip-based detection of protein cancer markers, ProQuest, 2007, ISBN05494634
53、9780549463450)、Speicher(Proteome Anal
ysis: Interpreting the Genome, Elsevier, 2
004, ISBN 0080515304、9780080515304)、Albalaら(Protein Arrays, Biochips andProteomics, CRC Press, 2003, ISBN 0203911121、9780203
911129)、Walker(The Protein Protocols Hand
book, Springer, 2002, ISBN 0896039404、9780896039407)、Fung(Protein Arrays:Methods a
nd Protocols, Springer, 2004, ISBN 1592597
599、9781592597598)、及びBienvenut(Acceleration and Improvement of Protein Identificat
ion by Mass Spectrometry, Springer, 2005, ISBN 1402033184、9781402033186)に記載のものなどを使用
することができる。これらの各々は、それら全体を全ての目的について参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、免疫組織化学(IHC)、ウェスタンブロット法、タンパク質免疫染色法、タンパク質免疫沈降法、免疫電気泳動、免疫ブロット法、BCAアッセイ、分光測光法、質量分析法または酵素アッセイ、またはそれらの組み合わせによって検出され、測定される。バイオマーカーレベルの検出、定量化、及び比較に関するさらなる方法については、例えば、CurrentProtocols in Molecular Biology編、Ausubel, Frederick M.(2010);Current Protocol
s in Protein Science Last編、Coligan, John E.,ら(2010);Current Protocols inNucleic Acid
Chemistry編、Egli, Martin(2010);Current Pr
otocols in Bioinformatics編、Baxevanis, And
reas D.(2010);及びMolecular Cloning: A Laboratory Manual、第3編、Sambrook, Joseph(2001)を参照されたい。これらの全ては、それら全体を参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
いくつかの実施形態では、FGF23シグナル伝達経路における成分に向けられる抗体は、活性物質として使用することができる。いくつかの実施形態では、FGF23を正に制御するFGF23シグナル伝達経路における成分に向けられる抗体、またはFGF23によって正に制御されるFGF23シグナル伝達経路における成分に向けられる抗体は、活性物質として使用することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、活性物質は、ヒト被験者におけるFGF23活性を直接減らすことができる。いくつかの実施形態では、活性物質は、シグナル伝達経路における1つまたは複数の上流または下流成分の活性を調節することにより、ヒト被験者におけるFGF23活性を間接的に減少させることができる。いくつかの実施形態では、活性物質は、FGF23を正に調節する1つまたは複数の上流成分の活性を減少させる、またはFGF23を負に調節するシグナル伝達経路における1つまたは複数の上流成分の活性を増加させることができる。いくつかの実施形態では、活性物質は、FGF23によって正に調節される1つまたは複数の下流成分の活性を減少させる、またはFGF23によって負に調節されるシグナル伝達経路における1つまたは複数の下流成分の活性を増加させることができる。
【0093】
任意の特定の理論に束縛されることを望むわけではないが、本発明の作用物質は、1つまたは複数の機序を介して作用することができる。そのような機序としては、(1)FGF23活性の阻害;(2)FGF23-クロソ-FGF受容体複合体活性の阻害;(3)近位尿細管におけるリン酸再吸収の増加;(4)腎ビタミンD1-α-ヒドロキシラーゼの活性の増加;(5)異化25(OH)D-24-ヒドロキシラーゼの活性の減少;及び/または(6)1,25(OH)2D濃度の増加が挙げられるが、これらに限定されない
。
【0094】
活性物質は、化学化合物または組成物、生体分子、またはそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、活性物質は、小分子である。本明細書で使用する場合、「小分子」という用語は、500MW未満の分子量を有する分子を指し、薬物は、非ペプチジルまたはペプチド物質である。いくつかの実施形態では、活性物質は、抗体である。いくつかの実施形態では、活性物質は、抗体である。いくつかの実施形態では、活性物質は、siRNAなどのポリヌクレオチドである。
【0095】
いくつかの実施形態では、活性物質は、FGF23を正に調節する、またはFGF23によって正に調節されるFGF23シグナル伝達経路における成分の活性を減少する、阻害する、または遅延することができる1つまたは複数の抗体を含有する。いくつかの実施形態では、成分は、FGF23-クロソ-FGF受容体複合体のメンバーであってもよい。いくつかの実施形態では、成分は、FGF23である。いくつかの実施形態では、作用物質は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書で記載される抗体である。いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドは、配列番号1~6のものなどの1つまたは複数の抗FGF23 CDRを含む活性物質である。
【0096】
いくつかの実施形態では、活性物質は、配列番号1のアミノ酸配列で示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2のアミノ酸配列で示されるCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列で示されるCDR3のいずれか1つを有する重鎖可変領域、または3つの重鎖CDRの少なくとも2つまたは全てを有する重鎖可変領域を含む、ヒトFGF23に対する抗体またはその機能的断片である。
【0097】
いくつかの実施形態では、ヒトFGF23に対する抗体またはその機能的断片は、配列番号4のアミノ酸配列で示されるCDR1、配列番号5のアミノ酸配列で示されるCDR2、配列番号6のアミノ酸配列で示されるCDR3のいずれか1つを有する軽鎖可変領域、または3つの軽鎖CDRの少なくとも2つまたは全てを有する軽鎖可変領域を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、FGF23抗体は、配列番号1、2、3、4、5、及び/または6のアミノ酸配列を有するCDRを含有する。いくつかの実施形態では、FGF23抗体は、配列番号16を含む重鎖可変領域と配列番号17を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、FGF23抗体は、配列番号7の重鎖と配列番号8の軽鎖とを有するKRN23である。いくつかの実施形態では、FGF23抗体は、配列番号9の重鎖と配列番号10の軽鎖とを有するC10である。
【0099】
本発明の抗体のCDR配列は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、任意の1つまたは複数のCDR、より好ましくは、重鎖の3つのCDR、さらにより好ましくは、配列番号1~6で表されるCDR配列の6つのCDRを含む抗体である。CDR以外のアミノ酸配列は、特に限定されない。いくつかの他の実施形態では、抗FGF23抗体は、いわゆるCDR移植抗体を含み、CDR以外のアミノ酸配列は、他の抗体、特に、他の種の抗体由来である。これらのうちで、ヒト化抗体またはヒト抗体(ここで、CDR以外のアミノ酸配列は、ヒト由来である)が好ましい。1つまたは複数のアミノ酸残基の付加、欠失、置換及び/または挿入を、必要に応じてFRに導入することができる。公然知られた方法を、ヒト化抗体またはヒト抗体を作製するための方法として適用することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、FGF23に対する抗体は、米国特許第7314618号、同第7223563号、同第7745406号、同第7947810号、同第7223563号、同第7745406号、または同第7947810号、または米国特許出願公開
第20120064544号または同第20110182913号に記載のもののいずれか1つであり、これらの各々は、それら全体を全ての目的について参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
いくつかの実施形態では、活性物質は、siRNAである。例えば、アンチセンスRNA、リボザイム、dsRNAi、RNA干渉(RNAi)技術は、FGF23シグナル伝達経路における1つまたは複数の成分のRNA転写物を標的にするために本発明で使用することができる。アンチセンスRNA技術は、細胞内の特定のmRNAにおいて見い出される配列に対して相補的か、もしくはアンチセンスであるRNA分子(またはRNA誘導体)を細胞内に発現すること、または導入することを含む。mRNAと会合することによって、アンチセンスRNAは、コードされた遺伝子産物の翻訳を阻害することができる。
【0102】
RNA干渉(RNAi)は、サイレンシングされる遺伝子と配列が相同な二本鎖RNA(dsRNA)により開始される、動物及び植物における配列特異的、転写後遺伝子サイレンシングまたは転写遺伝子サイレンシングのプロセスである。RNAi技術は、例えば、Elibashir,ら,Methods Enzymol. 26: 199 (20
02); McManus & Sharp, Nature Rev. Genetics
3: 737 (2002);PCT出願国際公開公報第01/75164号;Martinezら, Cell 110:563 (2002); Elbashirら,前記; Lagos-Quintanaら, Curr. Biol. 12:735 (2002);
Tuschlら, Nature Biothechnol. 20:446 (2002
); Tuschl, Chembiochem. 2: 239 (2001); Harborthら, J. Cell Sci. 114: 4557(2001);ら, EMB
O J. 20:6877 (2001); Lagos-Quintanaら, Scie
nce. 294: 8538 (2001); Hutvagnerら, loc cit,
834; Elbashirら, Nature. 411:494 (2001)におい
て論議される。
【0103】
「dsRNA」または「dsRNA分子」または「二本鎖RNAエフェクター分子」という用語は、二本鎖高次構造である少なくとも約19ヌクレオチドまたはそれより長いヌクレオチドの領域を含有する少なくとも部分的に二本鎖のリボ核酸分子を指す。二本鎖RNAエフェクター分子は、2本の別々のRNA鎖から形成された二重鎖の二本鎖RNAであり得る、または少なくとも部分的に二本鎖のヘアピン高次構造(すなわち、ヘアピンdsRNAまたはステムループdsRNA)を採ることができる自己相補性領域を有する単一RNA鎖であり得る。種々の実施形態では、dsRNAは、リボヌクレオチドから完全になる、またはRNA/DNAハイブリッドなどのリボヌクレオチド及びデオキシヌクレオチドの混合物からなる。dsRNAは、分子のある1セグメントにおけるヌクレオチドが、分子の別の1セグメントにおけるヌクレオチドと塩基対形成するように、自己相補性領域を有する単一の分子であり得る。一態様では、自己相補性領域同士は、分子の別の部分に対する相補性を欠き、よって一本鎖を維持する、少なくとも約3~4ヌクレオチドまたは約5、6、7、9~15ヌクレオチドもしくはそれより長い領域(すなわち、「ループ領域」)によって連結される。そのような分子は、短い一本鎖5’及び/または3’末端を場合によって有する、部分的に二本鎖のステムループ構造をとる。一態様では、ヘアピンdsRNAの自己相補性領域または二重鎖dsRNAの二本鎖領域は、エフェクター配列及びエフェクター相補体(例えば、ヘアピンdsRNAにおける一本鎖ループ領域によって連結された)を含む。エフェクター配列またはエフェクター鎖は、RISCに組み入れられるまたはこれと会合する二本鎖領域または二重鎖の鎖である。一態様では、二本鎖RNAエフェクター分子は、標的遺伝子のRNAに対する逆向きの相補体、または逆鎖複製中間体、または標的遺伝子の抗ゲノムプラス鎖または非mRNAプラス鎖配列である、少なくとも19連続したヌクレオチドエフェクター配列、好ましくは、19~29、1
9~27もしくは19~21ヌクレオチドを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明のdsRNAエフェクター分子は、「ヘアピンdsRNA」、「dsRNAヘアピン」、「短ヘアピンRNA」、または「shRNA」、すなわち、少なくとも15~100ヌクレオチド(nt)(例えば、17~50nt、19~29nt)の少なくとも1つのストレッチが、同じRNA分子(単一RNA鎖)に位置する相補配列と塩基対形成し、前記配列及び相補配列が、少なくとも約4~7ヌクレオチド(または約9~約15nt、約15~約100nt、約100~約1000nt)の不対領域により離間されている、およそ400~500ヌクレオチド未満または100~200nt未満のRNA分子であり、これは、塩基相補性の2領域により作製されるステム構造の上に一本鎖ループを形成する。shRNA分子は、阻害しようとする標的配列と相同かつ相補的な約17~約100bp;約17~約50bp;約40~約100bp;約18~約40bp;または約19~約29bpの二本鎖ステム領域と、塩基相補性の2つの領域により作製されたステム構造の上に一本鎖ループを形成する少なくとも約4~7ヌクレオチドまたは約9~約15ヌクレオチド、約15~約100nt、約100~約1000ntの不対ループ領域とを含む、少なくとも1つのステムループ構造を含む。しかしながら、ある配列とその直後にその逆向きの相補体を含むRNA分子は、無意味な「スタッファー(stuffer)」配列により離間していなくてもステムループ高次構造を採る傾向があるため、「ループ領域」または「ループ配列」を含むことが厳密には必要とされないことが認識されるであろう。
【0105】
さらに他の実施形態では、本発明で使用される抗FGF23リガンドは、本発明で使用される1つまたは複数の活性物質と、人工膜小胞(リポソーム、脂質ミセルなどを含む)、微粒子またはマイクロカプセルなどのビヒクルとを含む医薬組成物で提供することができる。
【0106】
経口使用を意図した組成物は、固体または流体のいずれの単位剤形で調製してもよい。流体の単位剤形は、当該技術分野で公知の医薬組成物の製造手順に従って調製することができ、そのような組成物は、薬学的に洗練された、口当たりの良い製剤を提供するため、甘味料、香味料、着色剤、及び保存料からなる群から選択される1つまたは複数の作用物質を含有してもよい。エリキシル剤は、糖及びサッカリンなどの適当な甘味料を含む含水アルコール(例えば、エタノール)ビヒクルを、芳香族香味料と共に使用して調製される。懸濁液は、水性ビヒクルを、アラビアゴム、トラガカントゴム、メチルセルロースなどの懸濁化剤の助けを借りて調製することができる。
【0107】
錠剤などの固形製剤は、有効成分を、錠剤の製造に適当な、非毒性かつ薬学的に許容される賦形剤との混合物として含有する。これらの賦形剤には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸などの造粒剤及び崩壊剤;例えば、デンプン、ゼラチン、またはアラビアゴムなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、または滑石のような潤滑剤;並びに、リン酸二カルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、硫酸カルシウム、デンプン、ラクトース、メチルセルロース、及び機能的に類似した材料など、他の従来の成分が含まれ得る。錠剤はコーティングしなくてもよいし、あるいは、公知の技術によってコーティングを施し、胃腸管における崩壊と吸収を遅延させ、これにより、より長期間にわたる持続的作用を与えてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質を使用してもよい。
【0108】
経口使用のための製剤は、有効成分が不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合されている硬ゼラチンカプセルとして、あるいは
、有効成分が水または油性媒質(例えば、ラッカセイ油、流動パラフィン、またはオリーブ油)と混合されている軟ゼラチンカプセルとして提供してもよい。軟ゼラチンカプセルは、該化合物のスラリーを、許容可能な植物油、軽流動ワセリン、または他の不活性油で、機械によりカプセル封入することにより調製される。
【0109】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適当な賦形剤と混合した活性物質を含有する。そのような賦形剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアラビアゴムのような懸濁化剤であり;分散剤または湿潤剤は、天然由来のホスファチド、例えば、レシチン、または脂肪酸とアルキレンオキシドとの縮合物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、または長鎖脂肪アルコールとエチレンオキシドとの縮合物、例えば、ヘプタ-デカエチレンオキシセタノール、または脂肪酸とヘキシトールとから誘導される部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または脂肪酸とヘキシトール無水物とから誘導される部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタンなどであってもよい。水性懸濁液はまた、1つまたは複数の保存料、例えば、エチルもしくはn-プロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、1つまたは複数の着色剤、1つまたは複数の香味料、またはスクロースもしくはサッカリンなどの1つまたは複数の甘味料を含有してもよい。
【0110】
油性懸濁液は、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはヤシ油などの植物油、または流動パラフィンのような鉱物油に有効成分を懸濁することにより調製してもよい。油性懸濁液は、例えば、蜜ろう、固形パラフィン、またはセチルアルコールのような増粘剤を含有してもよい。上述のような甘味料、及び香味料を添加し、口当たりのよい経口製剤を提供してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤を添加して保存してもよい。
【0111】
水の添加による水性懸濁液の調製に適当な分散性粉末及び顆粒は、有効成分を、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁化剤、及び1つまたは複数の保存料との混合物の形態で提供する。適当な分散剤もしくは湿潤剤及び懸濁化剤の例としては、上述のものが挙げられる。追加の賦形剤、例えば、甘味料、香味料、及び着色剤を含有させてもよい。
【0112】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルションの形態としてもよい。油相は、例えば、オリーブ油もしくはラッカセイ油のような植物油、または、例えば、流動パラフィンのような鉱物油、あるいはこれらの混合物としてもよい。適当な乳化剤は、天然由来のゴム、例えば、アラビアゴムまたはトラガカントゴム;天然由来のホスファチド、例えば、ダイズ、レシチン;並びに、脂肪酸及びヘキシトールに由来するエステルもしくは部分エステル、無水物、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、及びエチレンオキシドと前記部分エステルとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであってもよい。エマルションは、甘味料及び香味料を含有してもよい。
【0113】
医薬組成物は、滅菌注射用の水性または油性懸濁液の形態としてもよい。この懸濁液は、前述のような適当な分散剤もしくは湿潤剤と懸濁化剤とを使用して、公知の技術に従って調製してもよい。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液としてもよく、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液としてもよい。使用してもよい許容可能なビヒクル及び溶媒として、水、リンゲル液、及び等張食塩水が挙げられる。加えて、滅菌された固定油が、溶媒または懸濁媒として従来使用されている。この目的のために、合成のモノまたはジグリセリドを含むあらゆる無刺激性固定油を使用してもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も、注射剤の製剤に使用できる。局所麻酔薬、保存料、及び緩衝剤などの補助剤を、注射用溶液または懸濁液に
含有させることもできる。
【0114】
いくつかの実施形態では、適当な送達システムには、時間放出、遅延放出、持続放出、または制御放出送達システムを含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、持続放出マトリックスなどの制御放出システムで送達することができる。持続放出マトリックスの非限定例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langerら,198
1, J. Biomed. Mater. Res., 15: 167-277及びLanger, 1982, Chem. Tech., 12:98-105に記載のようなポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート))、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号,EP58,481)、L-グルタミン酸
及びガンマエチル-L-グルタメートのコポリマー(Sidmanら, 1983, Biopolymers, 22:547-556)、非分解性エチレン-酢酸ビニル(La
ngerら,上記)、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマ
ー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能な微小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内注入、埋め込み式浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与方式を使用して投与することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer,前出;Sefton,CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201(1987);Buchwaldら, Surgery 88:507(1980);Saudekら,N. Engl. J. Med. 321:574(1989)を参照されたい)。別の実施形態では、
ポリマー材料を使用することができる。さらに別の実施形態では、制御放出システムは、治療標的、例えば、肝臓の近傍に配置することができ、このため、全身用量の一部だけが必要とされる(例えば、Goodson、「MedicalApplication of Controlled Release」、前出、2巻、115~138頁(1984)を参照されたい)。他の制御放出システムは、Langer(Science249
:1527-1533(1990))による総説において論じられている。いくつかの実施形態では、組成物は、皮下注射を介して投与することができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、組成物の放出は、破裂において生じる。放出が破裂において生じるシステムの例としては、例えば、組成物がポリマー性マトリックス中に封入されるリポソーム中に捕捉されるシステム、特定の刺激(例えば、温度、pH、光、または分解酵素)に対して感受性であるリポソーム、及び組成物がマイクロカプセルコア分解酵素と一緒に、イオン的にコートされたマイクロカプセルによって封入されるシステムが挙げられる。
【0116】
いくつかの実施形態では、組成物の放出は、緩徐/持続的である。阻害剤の放出が緩徐でありかつ持続的であるシステムの例としては、例えば、組成物がマトリックス内にある形態で含まれる浸食システム、及び組成物が、例えば、ポリマーによって制御された速度で放出される浸出システムが挙げられる。そのような持続放出システムは、例えば、ペレット、またはカプセルの形態であり得る。
【0117】
本発明に従って投与される組成物の他の実施形態は、非経口、経肺、経鼻、及び経口を含む種々の投与経路に対する、微粒子形態、保護コーティング、プロテアーゼ阻害剤、または透過促進剤を組み込む。
【0118】
本発明の医薬組成物は、単独で、または他の医薬組成物と併用して使用することができる。本発明の医薬組成物は、薬物の直腸投与のための座薬の形態で、一緒または別々に投与してもよい。これらの組成物は、薬物と、常温では固体であるが、直腸温度では液体であり、それ故に直腸で融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤を混合して調製する
ことができる。このような物質としては、カカオバター及びポリエチレングリコールが挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、異常なリン状況、FGF23シグナル伝達、または骨形成に関連する疾患を治療するのに適当な追加の医薬組成物と一緒に被験者に投与することができる。
【0119】
他の医薬組成物及び医薬組成物の調製方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、「Remington:The Science and Practiceof Phar
macy」(以前の「Remingtons Pharmaceutical Sciences」);Gennaro, A., Lippincott, Williams&
Wilkins, Philadelphia, Pa.(2000)に記載されている。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物の投与は、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内滴下、埋め込み、腔内または膀胱内滴下、耳内、動脈内、病巣内、経皮、または粘膜への塗布で行ってもよい。阻害剤は、薬学的に許容される担体とともに投与してもよい。
【0121】
投与される用量は、一定の制約を受けるものではないが、通常は有効量であろう。それは、通常、その所望の薬理学的及び生理学的効果を達成するために、活性遊離薬物の代謝による放出を基にして用量処方物から生成される薬理学的に活性な遊離形態のモル基準での等量であろう。組成物は、単位剤形で製剤化してもよい。「単位剤形」という用語は、ヒト被験者及び他の哺乳類に対する単一用量として適切な身体的に個別の単位を指し、各単位は、適切な薬学的賦形剤と関連して、所望の治療効果をもたらすように算出された所定量の活性物質を含有する。
【0122】
本発明によれば、抗FGF23リガンドの投与計画は、抗FGF23リガンドの1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドの投与計画には、一回用量当たりの量、投与頻度(例えば、毎日、毎週、または毎月)、投与サイクル当たりの総量、投与間隔、投与変動、投与サイクル当たりのパターンまたは改変、最大累積用量、またはウォームアップ用量、または任意のそれらの組み合わせが挙げられるが、限定されるものではない。いくつかの他の実施形態では、抗FGF23リガンドの投与計画は、投与頻度、例えば、毎月を含む。
【0123】
さらにいくつかの他の実施形態では、投与計画は、そのような用量の頻度と組み合わせて、一回用量当たりの所定量または固定量を含む。例えば、抗FGF23抗体の投与計画は、被験者に投与されている抗体のそのような用量の頻度と組み合わせて、一回用量当たりの抗FGF23抗体の固定量を含む。いくつかの実施形態では、一回用量当たりの抗FGF23抗体の固定量には、限定するものではないが、約0.001mg/体重kg、約0.002mg/体重kg、約0.003mg/体重kg、約0.004mg/体重kg、約0.005mg/体重kg、約0.006mg/体重kg、約0.007mg/体重kg、約0.008mg/体重kg、約0.009mg/体重kg、約0.01mg/体重kg、約0.02mg/体重kg、約0.03mg/体重kg、約0.04mg/体重kg、約0.05mg/体重kg、約0.06mg/体重kg、約0.07mg/体重kg、約0.08mg/体重kg、約0.09mg/体重kg、約0.1mg/体重kg、約0.2mg/体重kg、約0.3mg/体重kg、約0.4mg/体重kg、約0.5mg/体重kg、約0.6mg/体重kg、約0.7mg/体重kg、約0.8mg/体重kg、約0.9mg/体重kg、約1mg/体重kg、約2mg/体重kg、約3mg/体重kg、約4mg/体重kg、約5mg/体重kg、約6mg/体重kg、約7mg/体重kg、約8mg/体重kg、約9mg/体重kg、約10mg/体重kg、約15mg/体重kg、約20mg/体重kg、約30mg/体重kg、約35mg/体重kg、約40mg/体重kg、約45mg/体重kg、約50mg/体重kg、約60mg/
体重kg、約70mg/体重kg、約80mg/体重kg、約90mg/体重kg、約100mg/体重kg、約200mg/体重kg、約300mg/体重kg、約400mg/体重kg、約500mg/体重kgまたはそれ以上を含む。
【0124】
いくつかの他の実施形態では、一回用量当たりの抗FGF23抗体の固定量は、限定するものではないが、約0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、または1.0mg/kgまたは2.0mg/kgを含み、例えば、皮下投与される。
【0125】
本発明によれば、抗FGF23リガンドの投与計画は、抗FGF23リガンドの1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドの投与計画は、抗FGF23リガンドで治療した被験者の集団において、抗FGF23リガンドの1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定される。いくつかの他の実施形態では、集団サイズは、少なくとも20、30、40、50、またはそれ以上の被験者を含む。いくつかの他の実施形態では、集団サイズは、1つまたは複数のPDパラメーターの分析の統計的有意性を提供する。いくつかの他の実施形態では、抗FGF23リガンドの投与計画は、抗FGF23リガンドで治療した単一被験者における抗FGF23リガンドの1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定される。例えば、1つまたは複数のPDパラメーターは、抗FGF23リガンドで治療した被験者中で一定時間測定した後、被験者の投与計画は、測定された被験者のPDパラメーターに基づいて修正することができる。言い換えれば、1つまたは複数のPDパラメーターを用いて、抗FGF23リガンドでの治療下で被験者の投与計画を「調整する(tailor)」ことができる。
【0126】
いくつかの他の実施形態では、抗FGF23リガンドの投与計画は、1つまたは複数のPDパラメーターの所定レベルまたは活性に基づいて決定される。例えば、そのような所定レベルまたは活性は、患者集団を抗FGF23リガンドで治療し、1つまたは複数のPDパラメーターの所望または標準のレベルまたは活性を決定することを介して得ることができる。
【0127】
一般に、薬力学(PD)は、身体または微生物もしくは体内または体上の寄生生物における薬物の生化学的及び生理学的効果、薬物作用の機序、及び薬物濃度と効果の関係の研究である。薬力学は、薬物が身体に及ぼすことの研究として要約されることが多い。本発明の活性物質の効果は、治療に関連する1つまたは複数のPDパラメーターの変化をモニタリングすることによって決定することができ、活性物質の効果的な投与計画を決定することができる。いくつかの実施形態では、投与計画は、1つまたは複数のPKパラメーターからの任意の入力せずに、または1つまたは複数のPKパラメーターを考慮せずに決定される。いくつかの他の実施形態では、投与計画は、1つまたは複数のPKパラメーターが、投与計画がすでに十分であるかまたは適切であるかを示す場合であっても修正される。
【0128】
本発明の活性物質の投与計画を決定するために本発明で使用することができるPDパラメーターとしては、血清リン、TmP/GFR(リン酸塩の糸球体濾過量に対する腎細管最大再吸収率)、最大TmP/GFR、血清1,25-ジヒドロキシビタミンD、及び血清25-ヒドロキシビタミンDが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、血清リンは、AUC血清リン、例えば、AUClast、AUCinf、または投与間隔内のAUCnまたはピーク値とトラフ値の血清リンを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明の活性物質の投与計画は、慢性抗FGF23リガンド療法中にFGF23レベルの任意の変化に対して十分な結合剤を提供するように、1つま
たは複数のPDパラメーターに基づいて決定される。いくつかの他の実施形態では、本発明の活性物質の投与計画は、例えば、成人または子供の正常なFGF23レベルまたは活性の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、または95%、98%、100%、105%、110%、115%、または120%以内にFGF23レベルまたは活性をもたらすように、1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定される。いくつかの他の実施形態では、本発明の活性物質の投与計画は、例えば、正常なFGF23レベルまたは活性の2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、または30%を超えて正常なFGF23レベルまたは活性から逸脱しないFGF23の安定レベルまたは活性を維持するように、1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定される。
【0130】
いくつかの実施形態では、投与計画は、1つまたは複数のPDパラメーターの正常化または安定化を達成するために、1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、投与計画は、1つまたは複数のPDパラメーターが、任意の毒性の問題を起こすことなく、出来る限り長く及び/または出来る限り安定的にベースラインレベルを出来る限り上回ることを保つように決定される。例えば、投与計画は、血清リンを、例えば、最小または許容可能な変動性でベースラインを上回って安定レベルで保つように決定される。さらにいくつかの他の実施形態では、投与計画は、1つまたは複数のPDパラメーターを所定レベルあたり、例えば、所定の標準レベルに保つように決定される。例えば、一実施形態では、投与計画は、血清リンを所定の標準レベルで、例えば、ベースラインを上回って約0.5~1.5mg/dLの安定的な増加を保つように決定される。別の実施形態では、投与計画は、血清リンを所定の標準レベルで、例えば、ベースラインを上回って約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3mg/dLの安定的な増加を保つように決定される。
【0131】
いくつかの実施形態では、投与計画は、例えば、投与サイクル中にNaPi輸送体活性を実質的に低下させることなくNaPi輸送体の持続的な効果をもたらすように決定される。いくつかの実施形態では、投与計画は、安定なNaPi輸送体レベルまたは活性、例えば、正常なNaPi輸送体レベルまたは活性の、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、または30%を超えて正常なNaPi輸送体レベルまたは活性から逸脱しないNaPi輸送体レベルまたは活性をもたらすように決定される。いくつかの実施形態では、投与計画は、骨再形成の増加をもたらすように決定される。
【0132】
本明細書で使用する場合、PDパラメーターのレベルが所定の標準レベルのレベルに向かう場合、正常化と呼ばれる。本明細書で使用する場合、PDパラメーターのレベルが所定の標準レベルのレベルからの変動が減少する場合、安定化と呼ばれる。
【0133】
本明細書で使用する場合、「所定の標準レベル」という用語は、被験者の特定の集団における特定の抗FGF23リガンド療法に対して効果的な投与計画をもたらす1つまたは複数のPDパラメーターの平均値、代表的な特性、または特徴を表す基準化されたデータまたはデータセットから得られたレベルを指す。そのような特性または特徴は、転写物量、転写物の安定性、転写速度、翻訳速度、翻訳後修飾、タンパク質産物量、タンパク質安定性、及び/またはタンパク質酵素活性、などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、被験者の特定の集団は、約5、約10、約20、約50、約100、約200、約300、約400、約500、約1000、約5000、約10,000、またはそれ以上の個別の被験者からなる。所定の活性プロファイルは、被験者の特定の集団が全て薬剤に曝される前、最中、後に収集された基準化されたデータセットまた
はデータセットであることができる。いくつかの実施形態では、特定の集団は、抗FGF23リガンドの効果的な投与計画下における被験者からなる。
【0134】
いくつかの実施形態では、PDパラメーターは、血清リンである。いくつかの実施形態では、投与計画は、血清リンの曲線下面積(AUC)に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、AUCは、AUClast、AUCinf、またはAUCnである。いくつかの実施形態では、PDパラメーターは、投与間隔内の血清リンのAUCである。いくつかの実施形態では、PDパラメーターは、ピーク値とトラフ値の血清リンである。いくつかの実施形態では、投与計画は、所定の血清リンレベルに近いまたは該レベルを上回る治療中に血清リンレベルを維持するように決定される。いくつかの実施形態では、投与計画は、患者におけるベースラインレベルと比較した場合に、投与サイクル中の患者におけるリンの適切で安定的な増加をもたらすように決定される。いくつかの実施形態では、投与計画は、患者におけるベースラインレベルを上回る比較的安定的な血清リンレベルを維持するように決定される。例えば、いくつかの実施形態では、約0.5~約1.5mg/dLの血清リンの安定的な増加は、十分である可能性が高い。
【0135】
いくつかの実施形態では、患者が成人である場合、ベースライン血清リンレベルは、約2.5~約4.5mg/dLである。いくつかの実施形態では、患者が5~12歳の子供である場合、ベースライン血清リンレベルは、約2.9~約5.7mg/dLである。いくつかの実施形態では、患者が成人である場合、所定の血清リンレベルは、ベースライン、例えば、約2.5~約4.5mg/dLよりも約0.5mg~1.5mg/dL高い。いくつかの実施形態では、患者が5~12歳の子供である場合、所定の血清リンレベルは、約2.9~約5.7mg/dLのベースラインよりも約0.5mg~1.5mg/dL高い。いくつかの実施形態では、患者の年齢に応じて、所定の血清リンレベルは、約2.5mg/dL、約2.6mg/dL、約2.7mg/dL、約2.8mg/dL、約2.9mg/dL、約3.0mg/dL、約3.1mg/dL、約3.2mg/dL、約3.3mg/dL、約3.4mg/dL、約3.5mg/dL、約3.6mg/dL、約3.7mg/dL、約3.8mg/dL、約3.9mg/dL、約4.0mg/dL、約4.1mg/dL、約4.2mg/dL、約4.3mg/dL、約4.4mg/dL、約4.5mg/dL、約4.6mg/dL、約4.7mg/dL、約4.8mg/dL、約4.9mg/dL、約5.0mg/dL、約5.1mg/dL、約5.2mg/dL、約5.3mg/dL、約5.4mg/dL、約5.5mg/dL、約5.6mg/dL、約5.7mg/dL、約5.8mg/dL、約5.9mg/dL、約6.0mg/dL、約6.1mg/dL、約6.2mg/dL、約6.3mg/dL、約6.4mg/dL、約6.5mg/dL、約6.6mg/dL、約6.7mg/dL、約6.8mg/dL、約6.9mg/dL、約7.0mg/dL、約7.1mg/dL、約7.2mg/dL、約7.3mg/dL、約7.4mg/dL、約7.5mg/dL、約7.6mg/dL、約7.7mg/dL、約7.8mg/dL、約7.9mg/dL、またはそれ以上である。いくつかの他の実施形態では、本発明の活性物質の投与計画は、例えば、成人または子供の正常な血清リンレベルまたは活性の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、または95%、98%、100%、105%、110%、115%、または120%以内に血清リンレベルまたは活性をもたらすように、1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定される。いくつかの他の実施形態では、本発明の活性物質の投与計画は、例えば、正常な血清リンレベルまたは活性の2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、または30%を超えて正常な血清リンレベルまたは活性から逸脱しない血清リンの安定レベルまたは活性を維持するように、1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定される。
【0136】
いくつかの実施形態では、PDパラメーターは、Tmp/GFR(リン酸塩の糸球体濾過量に対する腎細管最大再吸収率、Barthら, Ann ClinBiochem 2
000;37: 79-81を参照されたい)である。いくつかの実施形態では、PDパ
ラメーターは、ピーク値とトラフ値のTmp/GFRである。いくつかの実施形態では、投与計画は、所定のTmp/GFRに近いまたは該Tmp/GFRを上回る治療中にTmp/GFRを維持するように決定される。いくつかの実施形態では、投与計画は、患者におけるベースラインレベルと比較した場合に、投与サイクル中の患者におけるTmp/GFRの適切な増加をもたらすように決定される。いくつかの実施形態では、投与計画は、患者におけるベースラインレベルを上回る比較的安定的なTmp/GFRを維持するように決定される。いくつかの実施形態では、所定のTmp/GFRは、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、またはそれ以上である。
【0137】
いくつかの実施形態では、PDパラメーターは、血清1,25-ジヒドロキシビタミンDである。いくつかの実施形態では、PDパラメーターは、ピーク値とトラフ値の血清1,25-ジヒドロキシビタミンDである。いくつかの実施形態では、投与計画は、所定の血清1,25-ジヒドロキシビタミンDに近い、同様である、または上回る治療中に血清1,25-ジヒドロキシビタミンDを維持する目的で決定される。いくつかの実施形態では、投与計画は、患者におけるベースラインレベルと比較した場合に、投与サイクル中の患者における血清1,25-ジヒドロキシビタミンDの適切な増加をもたらすように決定される。いくつかの実施形態では、投与計画は、患者におけるベースラインレベルを上回る比較的安定的な血清1,25-ジヒドロキシビタミンDを維持するように決定される。いくつかの実施形態では、所定の血清1,25-ジヒドロキシビタミンDは、約40pg/ML、約45pg/ML、約50pg/ML、約55pg/ML、約60pg/ML、約65pg/ML、約70pg/ML、約75pg/ML、約80pg/ML、約85pg/ML、約90pg/ML、約95pg/ML、約100pg/ML、約105pg/ML、約110pg/ML、約115pg/ML、約120pg/ML、約125pg/ML、約130pg/ML、約135pg/ML、約140pg/ML、約145pg/ML、約150pg/ML、約155pg/ML、約160pg/ML、約165pg/ML、約170pg/ML、約175pg/ML、約180pg/ML、約185pg/ML、約190pg/ML、約195pg/ML、約200pg/ML、またはそれ以上である。
【0138】
いくつかの実施形態では、PDパラメーターは、血清25-ヒドロキシビタミンDである。いくつかの実施形態では、PDパラメーターは、ピーク値とトラフ値の血清25-ヒドロキシビタミンDである。いくつかの実施形態では、投与計画は、所定の血清25-ヒドロキシビタミンDに近い、同様である、または上回る治療中に血清25-ヒドロキシビタミンDを維持する目的で決定される。いくつかの実施形態では、投与計画は、患者におけるベースラインレベルと比較した場合に、投与サイクル中の患者における血清25-ヒドロキシビタミンDの適切な増加をもたらすように決定される。いくつかの実施形態では、投与計画は、患者におけるベースラインレベルを上回る比較的安定的な血清25-ヒドロキシビタミンDを維持するように決定される。いくつかの実施形態では、所定の血清25-ヒドロキシビタミンDは、約25nmol/L、約26nmol/L、約27nmol/L、約28nmol/L、約29nmol/L、約30nmol/L、約31nmol/L、約32nmol/L、約33nmol/L、約34nmol/L、約35nmol/L、約36nmol/L、約37nmol/L、約38nmol/L、約39nmol/L、約40nmol/L、約41nmol/L、約42nmol/L、約43nmol/L、約44nmol/L、約45nmol/L、約46nmol/L、約47nmol/L、約48nmol/L、約49nmol/L、約50nmol/L、約51nmol/L、約42nmol/L、約53nmol/L、約54nmol/L、約55nmo
l/L、約56nmol/L、約57nmol/L、約58nmol/L、約59nmol/L、約60nmol/L、約61nmol/L、約62nmol/L、約63nmol/L、約64nmol/L、約65nmol/L、約66nmol/L、約67nmol/L、約68nmol/L、約69nmol/L、約70nmol/L、約71nmol/L、約72nmol/L、約73nmol/L、約74nmol/L、約45nmol/L、約76nmol/L、約77nmol/L、約78nmol/L、約79nmol/L、約80nmol/L、またはそれ以上である。
【0139】
いくつかの実施形態では、投与計画は、1つまたは複数のPKパラメーターに基づいて決定された投与計画よりも頻繁に抗FGF23リガンドを投与することを含む。いくつかの他の実施形態では、投与計画は、月1回の投与計画よりも頻繁に抗FGF23リガンド、例えば、抗FGF23抗体を投与することを含む。例えば、投与計画は、約3日ごと、約5日ごと、約毎週、約10日ごと、約2週間ごと、約17日ごと、約3週間ごと、約25日ごとまたはそれ以上に抗FGF23リガンド、例えば、抗FGF23抗体を投与することを含む。
【0140】
本発明の別の態様によれば、1つまたは複数のPDパラメーターに基づいて決定された投与計画に従って、1つまたは複数の抗FGF23リガンドを投与することを介してFGF23関連疾患を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、FGF23関連疾患は、FGF23またはFGF23シグナル伝達経路の1つまたは複数の成分に直接的または間接的に関する任意の状態または疾患を含む。例えば、一実施形態では、FGF23関連疾患は、XLHまたはTIOである。いくつかの他の実施形態では、投与計画は、月2回、例えば、固定用量で抗FGF23抗体を使用することを含む。
【0141】
本発明はまた、例えば、骨再形成の増加を介してFGF23関連疾患を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、疾患は、骨疾患である。いくつかの実施形態では、本方法は、治療を必要とする患者において骨再形成を誘導することを含む。いくつかの実施形態では、骨再形成は、抗FGF23抗体などの抗FGF23リガンドによって誘導される。いくつかの実施形態では、投与は、疾患を治療するための統計的に有意な治療効果を提供する。いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドは、マーカーのベースラインレベルと比較して、患者におけるマーカーの増加を引き起こす。いくつかの実施形態では、マーカーは、血清1型プロコラーゲン/N末端(P1NP)、カルボキシ末端コラーゲン架橋(CTX)、オステオカルシン、BALP、血清CTx及び尿NTX/クレアチニン比からなる群から選択される。
【0142】
一般に、骨再形成は、間葉性骨芽細胞系と造血性破骨細胞系との相互作用に依存する一連の高度に調節されたステップを伴う。最初の「活性化」ステージは、大きな多核化破骨細胞の分化、移動、及び融合をもたらす破骨細胞と骨芽細胞前駆細胞との相互作用を伴う。骨再形成は、PTH、1,25-ジヒドロキシビタミンD、及びカルシトニンを含むホルモンと、成長ホルモン、グルココルチコイド、及びエストロゲンなどのいくつかの他の全身ホルモンとによって全身的に調節される。骨再形成の局所的調節因子としては、サイトカイン(IL-1、TNF、LI-6、IL-11、ODF、IL-4、IL-13、IL-18、IFN、OPG、及びIL-1ra)、プロスタグランジン、破骨細胞分化因子、コロニー刺激因子(例えば、M-CSF及びGM-CSF)、ロイコトリエン、一酸化窒素、及び成長因子(例えば、IGF、TGFβ、FGF、PDGF、及びPTHrP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
本発明はまた、月1回の投与計画よりも頻繁な投与計画、例えば、2週間ごとの投与計画で、有効量の抗FGF23リガンドをそのような治療を必要とする被験者に投与することによって、FGF23関連疾患を治療及び/または予防するための方法を提供する。い
くつかの実施形態では、抗FGF23リガンドは、約1、1.5、2、2.5、3、または3.5週ごとに被験者に投与する。いくつかの実施形態では、被験者は、異常なFGF23シグナル伝達に関連する疾患、例えば、常染色体優性低リン酸血症性くる病/骨軟化症(ADHR)、X染色体連鎖低リン血症(XLH)、常染色体劣性低リン酸血症性くる病(ARHR)、線維性骨異形成症(FD)、線維性骨異形成症(MAS/FD)を合併したマックキューン-オールブライト症候群、Jansen骨幹端軟骨形成不全症(Jansen症候群)、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)、腫瘍性骨軟化症(TIO)、慢性代謝性アシドーシス、及び異所性石灰化からなる群から選択される疾患を有する。いくつかの実施形態では、疾患は、異所性石灰化である。
【0144】
本発明はまた、血清リンレベルを制御する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、抗FGF23リガンドをそのような治療を必要とする被験者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、月1回の投与計画よりも頻繁な投与計画、例えば、2週間ごとの投与計画で、抗FGF23リガンドを被験者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗FGF23リガンドは、約1週ごと、約1.5週ごと、約2週ごと、約2.5週ごと、約3週ごと、または約3.5週ごとに被験者に投与する。いくつかの実施形態では、本方法は、被験者中の血清リンレベルを安定化または正常化する。いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、血清リンレベルを所定レベル近くに保つように血清リンレベルの揺れを最小限にする。
【0145】
以下の実施例は、本発明の種々の態様を例証する。実施例は、当然のことながら本発明の特定の実施形態のみの単なる説明に過ぎず、本発明の範囲に対する制限を設けるものではないことを理解すべきである。
【実施例】
【0146】
実施例1-X染色体連鎖低リン血症を有する成人被験者におけるKRN23の第1フェーズI/II、非盲検、反復投与、用量漸増治験
概要:
治験責任医師及び研究センター:全部で32人の被験者を、米国及びカナダで6つのサイトに登録した。
【0147】
開発の臨床フェーズ:フェーズ1/2。
【0148】
主要目的:本治験の主要目的は、X染色体連鎖低リン血症(XLH)を有する成人被験者におけるKRN23皮下(SC)投与の反復投与の安全性及び有効性を評価することであった。
【0149】
副次的目的:本治験の副次的目的は、薬力学(PD)、薬物動態(PK)、免疫原性、及び生活の質(QoL)におけるKRN23 SC投与の反復投与の効果を評価することであった。
【0150】
骨サブスタディの目的:骨ミネラル密度及び骨質におけるプラセボと比較して、KRN23 SC投与の反復投与の効果を評価すること。
【0151】
治験設計及び方法論:これは、XLHを有する成人被験者におけるKRN23のフェーズI/II、非盲検、用量漸増、及び多施設治験であった。治験設計は、3つの期間:スクリーニング期、治療期、及び追跡調査期から構成した。スクリーニング期中、被験者全員は、スクリーニング来診をした(スクリーニング期の最長期間は、30日であった)。スクリーニング来診(来診1)後、全ての適格な被験者を、ベースライン(0日目)で治療期に登録し、KRN23の初回用量0.05mg/kg SCを投与した。被験者は、
0.05mg/kg→0.1mg/kg→0.3mg/kg→0.6mg/kgの段階的用量漸増を用いて、KRN23の最大で4回投与(28日ごとに1回投与)で治療した。被験者内の用量漸増は、用量漸増アルゴリズムで導かれた血清リンレベルと、他の安全性観察(すなわち、有害事象[AE]モニタリング、安全性研究所パラメーター、免疫原性、及び理学的検査所見)とに基づいた。治療期の完了時に、被験者は、追跡調査期(最大10日)中に病院で最終評価を受けた。
【0152】
骨サブスタディは、種々の骨パラメーターにおける単盲検KRN23対プラセボの効果を評価するために、被験者の一部で計画した。被験者は、このサブスタディ、及びベースライン時及び治験終了時(120日目)の末梢骨定量的コンピューター断層撮影法(pQCT)及び二重エネルギーX線吸収法(DXA)スキャンを含む追加の臨床的評価に参加するための追加の適格性基準の評価を受けた。腸骨稜の生検は、延長治験(第2フェーズI/II臨床試験)に入った、サブスタディにおける被験者に対して行った。出資者は、見越し額低迷のため骨サブスタディを中止した。
【0153】
診断:XLHの臨床診断が裏付けられ、かつ、インタクト線維芽細胞成長因子23(FGF23)レベル>30pg/mL、リン酸塩の糸球体濾過量に対する腎細管最大再吸収率(TmP/GFR)<2.0mg/dL、eGFR≧60mL/分(コッククロフト・ゴールト式を用いて)、及び補正血清カルシウムレベル<10.8mg/dL(血清アルブミンが<4.0g/dLである場合)の少なくとも18歳の男性及び女性の被験者。
【0154】
(計画及び分析した)被験者数:およそ42人の被験者を計画し;33人の被験者をスクリーニングして、登録し(治験の非盲検部分に30人;骨サブスタディに3人);骨サブスタディでスクリーニングした3人の被験者のうちの1人は、適格性基準を満たさず、治療の割付前に治験を中止した。
【0155】
【0156】
試験製品、用量及び投与方式、バッチ番号:
SC注射用のKRN23:KRN23を0.05、0.1、0.3、または0.6mg/kgで腹部に皮下投与した。
非盲検部分:5mL単回使用バイアル(バッチ番号:YU008B)で10mg/mL。骨サブスタディ:5mL単回使用バイアル(バッチ番号:YU008E)で10mg/mL。
【0157】
比較薬剤、用量、及び投与方式、バッチ番号:
非盲検部分:無
骨サブスタディ:腹部へのSC投与用のKRN23プラセボ(バッチ番号:PYU120413A)。
【0158】
治療期:治療期は、最長で110日であった。治験の全期間は、延長治験に入った被験者ではおよそ150日であり、延長治験に入っなかった被験者では195日を計画した。
【0159】
エンドポイント:
有効性:主要な有効性エンドポイントは、投与後の血清リンレベルが、≦2.5mg/dL;>2.5mg/dLであるが≦3.5mg/dL、>3.5mg/dLであるが≦4.5mg/dL;及び>4.5mg/dLである被験者の数及びパーセントであった。
薬力学:副次的PDエンドポイントは、以下におけるベースラインからの変化を含めた:
・血清リン;ベースラインからの血中濃度時間曲線下面積(AUC);血清リンレベルが>2.5mg/dLである時間間隔。
・TmP/GFR及び血清1,25-ジヒドロキシビタミンD[1,25(OH)2D]。
・血清25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]、総カルシウム、イオン化カルシウム、カルシトニン、インタクト副甲状腺ホルモン(iPTH);リン酸塩の尿細管再吸収の2時間尿中測定(TRP)、カルシウム/クレアチニン比、カルシウム排泄分画(FECa);及びリン、カルシウム、クレアチニンの24時間尿中測定、及びカルシウム/クレアチニン比。
・性ホルモン:エストラジオール、テストステロン、遊離テストステロン、及び性ホルモン結合グロブリン(SHBG)。
・骨形成バイオマーカー(骨アルカリホスファターゼ[BALP]、1型プロコラーゲンのN-プロペプチド[P1NP]、及びオステオカルシン)及び骨吸収バイオマーカー(1型コラーゲンのカルボキシ末端架橋テロペプチド[CTx])及びオステオカルシン及び1型コラーゲンのアミノ末端架橋テロペプチド(尿中NTx)。
薬物動態:
・SC投与の複数回投与後のKRN23のPKパラメーターの特徴付け。
・累積用量からKRN23用量レベルの集団PKの特徴付け。
生活の質:
・スタディ36項目簡易健康調査バージョン2(SF-36v2)及びウェスタンオンタリオ及びマクマスター大学変形性関節症指数(WOMAC)に基づいて、患者報告アウトカム(PRO)におけるベースラインからの変化。
安全性:安全性には、治験薬への重症度及び関係、及び臨床検査室評価(血液学、化学、及び尿検査)におけるベースラインからの臨床的に有意な変化、バイタルサイン、身体及び脳神経検査、心臓コンピューター断層撮影(CT)/冠動脈カルシウムスコアリング及び大動脈カルシウムスコアリング、腎臓超音波検査、心電図(ECG);及び抗KRN23抗体評価による、有害事象を有する被験者の数及びパーセントを含めた。加えて、pQCTにより測定された前腕及び脛骨における骨パラメーターの変化、及びDXAスキャンにより測定された腰椎及び大腿近位部における骨ミネラル密度及び他の骨パラメーターの変化について骨サブスタディで評価した。
【0160】
統計方法:観察回数、平均、標準偏差、中央値、最小値及び最大値を含む、継続的なデータのベースラインからの絶対値変化を記述的にまとめた。頻度カウント及びパーセントを用いてカテゴリー変数をまとめた。全てのデータ概要は、以下の治療群:非盲検治療(KRN23)、骨サブスタディ(KRN23及びプラセボ)における単盲検治療、及び総KRN23について提示した。測定した薬力学的パラメーターには、他の生化学的パラメーターと共に、血清リンレベル、TmP/GFR、及び血清1,25(OH)2Dを含めた。これらの薬力学的パラメーターにおけるベースラインからの変化の曲線下面積は、120日間の治療、または離脱前ぎりぎりに測定した時点(AUClast)、及び4回の投与間隔(AUC1、AUC2、AUC3、及びAUC4)の各々について算出し、AUCnは、投与間隔「n」のベースライン(すなわち、初回投与前)からのAUCであった。治療中に発生した有害事象(TEAE)を報告した被験者の数及びパーセントを、治療群別に評価した。
【0161】
薬物動態及びPK-PD法:血清KRN23濃度データ及びPKパラメーターについて記述統計学を使用した。血清KRN23試料は、非コンパートメント法を用いて分析した。PKパラメーター(ゼロから最後に測定した濃度[AUClast]の血清濃度時間曲線下面積、ゼロから無限大[AUCinf]の血清濃度時間曲線下面積、見かけの分布容積[V/F]、見かけのクリアランス[CL/F]、及び4回目の投与間隔後の最終消失半減期[t1/2])は、1日目~120日目の全ての累積用量の被験者血清濃度を用いて推定した。加えて、各投与間隔n中に、n回目の投与間隔[AUCn]の血清濃度時間曲線下面積、最大血清濃度[Cmax,n]、投与前血清濃度(Cmin,n)、及び最高血漿中濃度到達時間[tmax,n]を推定した。散布図を生成して、PK及びPD測定値のAUCn及びAUClastを用いたPK-PD相関を検証した。濃度(血清KRN23)と効果(ベースラインからの血清リン増加)の関係を経験的Emaxモデルによって記述した。
【0162】
全体治験設計及び計画:このフェーズI/II、非盲検、用量漸増多施設治験を計画し、XLHを有するおよそ42人の男性及び女性の成人被験者を登録した。42人の被験者のうち、18人は、骨サブスタディを行うように計画した。本治験の非盲検部分に参加している被験者は、120日の期間にわたって28日ごとに皮下(SC)投与した最大で4回のKRN23の投与(0.05、0.1、0.3、及び0.6mg/kg)を受けた。全被験者は、KRN23の初回用量0.05mg/kg SCを受けた。KRN23の被験者内段階的用量漸増は、用量漸増アルゴリズム及び安全性評価(すなわち、AEモニタリング、安全性研究所パラメーター、免疫原性、及び理学的検査所見)で導かれた血清リンレベルに基づいた。骨サブスタディに参加している被験者は、単盲検KRN23またはプラセボのいずれかに無作為化され、120日の期間にわたって28日ごとに皮下投与した最大で4回のKRN23の投与(0.05、0.1、0.3、及び0.6mg/kg)を受けた。
【0163】
治験薬投与:被験者は、0.05mg/kg→0.1mg/kg→0.3mg/kg→0.6mg/kgの段階的用量漸増を用いて、投与日:0日目、28日目、56日目、及び84日目に腹部(臍孔を取り巻く1インチ半径は避ける)にSC注射(複数を含む)を介してKRN23を受けた。被験者は、予定された臨床、検査室、PK及びPD評価のために各投与サイクル(4回の投与サイクル)の3日目、7日目、12日目、18日目、及び26日目に帰宅した。全ての来診は、治験来診前に少なくとも8時間は絶食状態(すなわち、水以外の飲食を控えて)で行った。
【0164】
ベースラインでの疾患の特徴:有効性分析における被験者について、有効性分析セットにおける被験者全員の血清リン、TmP/GFR、1,25(OH)2D、及びインタクトFGF23のレベルを含むベースライン疾病特徴を以下の表に示す。全体として、ベースラインでの平均の血清リン及びTmP/GFRレベルは、正常な参照範囲の下限値を下回っていた。ベースラインでは、全体の平均1,25(OH)2Dレベルは、被験者全員について正常な参照範囲内であった。ベースラインのFGF23レベルは、52.8~4620pg/mLの範囲であった。
【0165】
【0166】
薬物動態/薬力学試料採取:KRN23のPKを評価するための血液試料は、以下の表3に示す試料採取計画に従って、被験者全員から採取した。血清試料は、有効な生物学的
分析法を用いてKRN23濃度について分析した。
【0167】
【0168】
PDパラメーターを評価するための試料は、投与日(0日目、28日目、56日目、及び84日目)、各投与サイクルの3日目、7日目、12日目、18日目、及び26日目、並びに120日目(追跡来診/早期離脱)に採取した。加えて、骨バイオマーカーを測定するための血液試料は、ベースライン時(0日目)、各投与サイクルの投与前時間(28日目、56日目、及び84日目)及び追跡来診(120日目)時に採取した。
【0169】
薬物濃度測定:血清試料は、有効なサンドイッチ酵素結合免疫吸着(ELISA)法を用いて、Kyowa Hakko Kirin California,Inc.(KKC)(以前は、Kirin Pharma USA, Inc.)でKRN23について分析
した。KRN23アッセイの定量下限(LLOQ)は、50ng/mLであった。標準曲
線は、KRN23について50~3000ng/mLの範囲を有した。PDパラメーターのための全ての血液と尿試料は、市販のアッセイキット及び/または有効なアッセイ法を用いて、中央検査室で分析した。
【0170】
結果の概要
暴露:全部で28人の被験者をKRN23で治療し(本治験の非盲検部分に27人、骨サブスタディに1人)、1人の被験者を骨サブスタディにおいてプラセボで治療した。投与したKRN23の平均の総用量は、投与間隔1、2、3、及び4中で、それぞれ、0.05±0.00mg/kg、0.10±0.01mg/kg、0.28±0.06mg/kg、及び0.48±0.16mg/kgであった。骨サブスタディにおけるプラセボ群の1人の被験者は、プラセボの4回の投与を全て受けた。
【0171】
治験母集団:KRN23で治療した28人の被験者のうち、年齢の中央値は、41.9歳(範囲:19~66歳)であり;過半数(67.9%;19/28)は、女性であり、及び大半(96.4%;27/28)は、白人/コーカサス人であり、1人は、黒人/アフリカ系アメリカ人/アフリカ系カリブ人であった。KRN23で治療した被験者の身長の中央値は、149.7cm(範囲:121.9~170.2cm)であり、体重の中央値は、70.1kg(範囲:46.4~121.9kg)であった。KRN23で治療した被験者の肥満度指数の中央値は、30.7kg/m2(範囲:19.7~67.6kg/m2)であった。全体として、ベースラインでの平均の血清リン及びTmP/GFRレベルは、正常な参照範囲の下限値を下回っていた。ベースラインでは、全体の平均1,25(OH)2Dレベルは、KRN23で治療した被験者の正常な参照範囲内であった。ベースラインのFGF23レベルは、KRN23で治療した被験者について52.8~4620.0pg/mLの範囲であった。
【0172】
有効性結果:血清リンレベルが>2.5~≦3.5mg/dLであった、KRN23で治療した被験者の一部は、1回目、2回目、3回目、及び4回目の投与間隔で、それぞれ、7日目(最大効果の時間)に、ベースライン時(1回目の投与間隔での0日目)の3.7%から14.8%、37.0%、74.1%、及び70.4%に増加した。血清リンレベルは、任意の時点で、任意の被験者で4.5mg/dLを超えなかった。
【0173】
薬力学的分析:実際の試料採取時間を使用して、PKパラメーターを算出した。各投与サイクルのPKパラメーターは、全ての用量のサイクル及びPKパラメーターを、4回の投与サイクル中に受けた総用量に基づいて推定した観察PKプロファイルに基づいて推定した。以下のPKパラメーターは、非コンパートメント分析法によって血清濃度-時間データからKRN23について決定した:
パラメーター 定義
AUClast 線形台形則を用いて決定した全投与サイクル(120日目または早期離脱)にわたる時間0から最後に測定可能な濃度の時間までの血中濃度時間曲線下面積
AUCinf 線形台形則を用いて決定した全投与サイクルにわたる時間0から無限大までの血中濃度時間曲線下面積
AUCn n回目の投与サイクル中の血中濃度時間曲線下面積
AUC%Extrap 外挿に基づくAUCinfのパーセント
Cmax,n n回目の投与サイクル中の最大観察血清濃度
Cmin,n n回目の投与サイクル終了時の投与前に観察された血清濃度
tmax,n n回目の投与サイクル中の最大観察血清濃度の時間
t1/2 ln2/λzとして算出した4回目の投与サイクル後の最終消失半減期、ここで、λzは、排出相に関連する速度定数である
CL/F 120日間の治療/AUCinf中の総用量として算出した見かけの血清クリアランス
Vz//F 4回目の投与サイクル後にCL/F/λzとして算出した最終排出相に基づく見かけの分布容積
AUC演算目的で、欠落している血清レベルは、隣接点間の補間のせいではなかった。アッセイの定量下限を下回る全ての血清濃度は、ゼロとして扱った。
AUC1、AUC2、AUC3、及びAUC4は、それぞれ、投与サイクル1(0日目~28日目)、投与サイクル2(28日目~56日目)、投与サイクル3(56日目~84日目)、及び投与サイクル4(84日目~120日目)に推定した。
血清KRN23濃度のPK分析は、Phoenix(商標)WinNonlin(登録商標)(バージョン6.3、Pharsight-A Certara(商標)Comp
any、Mountain View、CA)によって非コンパートメント分析法を用い
て行った。グラフィカル表示は、SigmaPlot(登録商標)(Systat So
ftware, Inc.、Point Richmond、CA)で生成した。
【0174】
薬力学的結果:
・平均のKRN23用量は、初回投与(プロトコル当たりの初回投与)の0.05mg/kg SCから4回目の投与の0.48±0.16mg/kgまで各連続投与で増加した。
・平均の血清リンは、各投与後の7日目までに最大レベルに達成した後、減少し、後続投与前に投与前レベルには到達しなかった。血清リンの増加は、特に、3回目及び4回目の投与の後に、大きさで臨床的に意義あるものであった。
・ピーク値とトラフ値の(投与前)平均の血清リンレベル並びにAUCnは、連続投与と共に増加した。平均の最大血清リンレベルは、初回投与後の2.21±0.33mg/dLから4回目の投与後の3.03±0.42mg/dLに増加した。
・TmP/GFR結果は、血清リンで観察されたものと同じパターンをたどった。初回投与後の平均の最大TmP/GFRは、1.93±0.45mg/dLであり;これは、4回目の投与後に2.97±0.67mg/dLに増加した。TmP/GFRの増加の大きさは、血清リンのものと同様であり、臨床的に意義あるものであった。
・平均の血清1,25(OH)2Dレベルは、各投与後の3日目~7日目に最大レベルに増加した後、次の投与前にベースラインレベル近くに戻った。あるいは、観察されたパターンは、血清リン及びTmP/GFRで見られたものと同じであった。
・FGF23と血清リンのベースラインレベル間の相関はなかった。同様に、血清リンの増加は、ベースラインのFGF23レベルと相関しなかった。
・KRN23治療の意義ある効果は、他の血清と尿PDパラメーターのベースラインからの平均変化で観察されなかった。他の血清と尿PDパラメーターの平均値は、ベースラインと比較して、KRN23投与後に変化しなかった。血清パラメーターには、25(OH)D、総カルシウム、イオン化カルシウム、カルシトニン、iPTH、エストラジオール、遊離テストステロン、総テストステロン、及びSHBGが含まれた。尿マーカーには、TRP、カルシウム/クレアチニン比、及びFECaの2時間測定値、及びリン、カルシウム、クレアチニン、及びカルシウム/クレアチニン比の24時間測定値が含まれた。
・骨形成(BALP、P1NP、及びオステオカルシン)及び骨吸収(CTx及びNTx/クレアチニン)の血清マーカーは、KRN23投与後に増加する傾向があった。
【0175】
薬力学的分析:簡単に言えば、ベースラインからの変化に対する曲線下面積(AUC)は、120日間の治療、または離脱前ぎりぎりに測定した時点(AUClast)、及び4回の投与間隔(AUC1、AUC2、AUC3、及びAUC4)の各々について、以下のPDパラメーターごとに算出した。
・カルシウムホメオスタシス:アルブミン、イオン化カルシウム、補正カルシウム
・PDパラメーター:カルシトニン、インタクトPTH、血清クレアチニン、血清リン、血清総カルシウム
・ビタミンD:1,25-ジヒドロキシビタミンD(1,25(OH2)D)、25-
ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)
・骨バイオマーカー:骨アルカリホスファターゼ、c-テロペプチド(CTX)、n-テロペプチド(NTX)、NTX/クレアチニン比、オステオカルシン、プロコラーゲン1(P1NP)
・性ホルモン:エストラジオール、テストステロン、遊離テストステロン及び性ホルモン結合グロブリン(SHBG)
・24時間尿:カルシウム、カルシウム/クレアチニン比、クレアチニン、リン酸塩
・2時間尿:クレアチニン、ランダムカルシウム、カルシウム/クレアチニン比、カルシウム排泄分画(FECa)、リン、リン酸の腎尿細管再吸収(TRP)、Tmp/GFRを算出した。
PDパラメーターについて、AUC1、AUC2、AUC3、及びAUC4は、それぞれ、投与サイクル1(0日目~28日目)、投与サイクル2(28日目~56日目)、投与サイクル3(56日目~84日目)、及び投与サイクル4(84日目~120日目)に推定した。血清PD AUClastは、0日目~120日目または早期離脱から推定した。投与前試料がn回目の投与間隔で採取されなかった場合、前の投与間隔からの最後の試料を投与前試料として使用した。
【0176】
薬物動態及びPK-PD関係:
・PK暴露(Cmax,n、Cmin,n、AUCn値)は、4回の投与間隔にわたって平均のtmax値と同様に用量に比例した増加した。4回目の投与間隔後に推定した終末半減期は、16.4±5.8日であった。
・血清KRN23及びリン濃度は、各投与後のおよそ同じ時点(およそ7日目)で最大レベルに到達し、それらの濃度は、平行して増減し、経験的Emaxモデルによって記述される直接的なPK-PD関係を支持した。血清リンレベルの増加に伴うKRN23の最大効果(Emax)は、1.788mg/dLであり、Emaxの50%(EC50)に到達するKRN23濃度は、2742ng/mLであった。
・血清リン、TmP/GFR、及び1,25(OH)2Dにおけるベースラインからの変化のAUCnまたはAUClastは、KRN23 PK暴露(AUCnまたはAUClast)の増加と共に直線的に増加した。
・KRN23治療の意義ある効果は、他のPDパラメーター(血清アルブミン、イオン化カルシウム、補正カルシウム、カルシトニン、iPTH、クレアチニン、総カルシウム、25(OH)D、エストラジオール、遊離テストステロン、総テストステロン、SHBG;及び2時間尿中TRP、カルシウム/クレアチニン比、及びFECa;及び24時間尿中カルシウム、カルシウム/クレアチニン比、クレアチニン、及びリン酸塩)のベースラインからの変化のAUCnまたはAUClastで観察されなかった。
・ベースラインからの骨形成マーカー(BALP、P1NP、及びオステオカルシン)及び骨吸収マーカー(CTx及びNTx/クレアチニン比)変化のAUC対KRN23 AUCは、KRN23治療後に正のトレンドの増加を示した。
【0177】
生活の質:2台のPRO機器(SF-36v2及びWOMAC)を用いて、KRN23治療は、XLHを有する被験者の健康状態に意義ある改善をもたらした:
・10個全てのSF-36v2測定値は、ベースラインと比較して治療終了時に改善を示し、統計的に有意な改善が、3つの測定値(身体の健康[RP]、肉体的苦痛[BP]、及び身体的構成要素の概略[PCS]による役割制限;p<0.05)について観察された。多重度について補正した場合、RPのみが、統計的に有意であった(pm<0.05)。
・3つ全てのWOMAC測定値は、ベースラインと比較して治療終了時に改善を示し、統計的に有意な改善が、2つの測定値(身体機能及びこわばり;p<0.05)について観察された。
・一般的な米国母集団と比較して、治験母集団は、ベースラインBP、身体機能(PF
)、RP、及びPCSスコアにおいて大きな欠陥を示した。治験終了時に、RPの欠陥を除去し(p<0.05)、PF、BP、及びPCSの欠陥を低くした。他の全てのスコアは、健康増進(社会機能[SF]、情緒的問題[RE]、バイタリティ[VT]、精神衛生[MH]、精神的構成要素概観[MCS]、及び全身の健康[GH]による役割制限)の方に改善を示した。
・変形性関節症を有する患者と比較して、治験母集団に対する疾病測定値のベースライン負荷は、8つのスケール(RP、RE、BP、PF、PCS、VT、MH、及びMCS)で同じようであり、GH及びSFで著しく良好であった。治験終了時に、全てのスコアは、変形性関節症を有する患者と比較して、治験母集団のRPで観察された統計的に有意な(p<0.05及びpm<0.05)改善と共に改善した。
・QoLスコアの変化は、以下の臨床測定値と中程度の相関(相関に対して0.3の閾値)があった:
-BP、GH、及びこわばりスコアにおけるベースラインからの変化は、KRN23 PK暴露(AUClast)と中程度の相関があった;
-BP及びREスコアにおけるベースラインからの変化は、ベースラインからの血清リン及びTmP/GFR変化(AUClast)と中程度の相関があった;
-疼痛スコアにおけるベースラインからの変化は、ベースラインからの1,25(OH)2D変化(AUClast)と中程度の相関があった。
【0178】
安全性結果:
・KRN23は、この被験者集団における4回の用量漸増のSC投与で耐容性良好であった。
・死亡またはSAEの報告は無かった。1人の被験者は、TEAE(注射部位の蕁麻疹)のため治験から離脱した。この事象は、KRN23の3回目の投与後の57日目に確認され、中程度の強さで、恐らく治験薬と関連していると考えられた。被験者は、プレドニゾン及びジフェンヒドラミンで治療した。
・ほぼ被験者全員(25人の被験者(89.3%)は、KRN23で治療し、1人の被験者は、プラセボで治療した)は、治験中に少なくとも1人がTEAEを有した。KRN23で治療した被験者の最も一般的な(少なくとも5人の被験者に対して報告された)TEAEは、鼻咽頭炎(8人の被験者、28.6%、それぞれ)、関節痛(7人の被験者、25.0%)、及び下痢、背部痛、及びレストレスレッグス症候群(5人の被験者、17.9%、それぞれ)であった。
・治療関連TEAEは、KRN23で治療した10人の被験者(35.7%)に対して報告され;未治療関連TEAEは、プラセボ群における1人の被験者に対して報告された。下痢は、KRN23で治療した1人以上の被験者(2人の被験者、7.1%)に対して報告された唯一の治療関連TEAEであった。全てのTEAEは、KRN23で治療した2人の被験者(1人は、重篤な筋肉痛を有し、1人は、重篤な外傷後疼痛を有した)を除いて、軽度または中程度の強さであると考えられた。生命に関わるまたは致命的なTEAEは、報告されなかった。
・治験中の検査値異常の観察可能なパターンは存在しなかった。3人の被験者は、TEAE(好中球数減少、鉄欠乏性貧血、血液クレアチンホスホキナーゼ増大)であると治験責任医師によって見なされた検査値異常を有した;しかしながら、これらは、臨床的に有意であるとは見なされず、治療を必要とはせず、被験者の治験からの中止をもたらさなかった。
・治療効果を示唆した、得られた他の安全性パラメーター(バイタルサイン、身体及び脳神経検査所見、心臓CTスキャン、腎臓超音波検査、及び心電図)のパターンに変化は観察されなかった。
・投与後に抗KRN23抗体を発症した被験者はいなかった。注射部位反応(蕁麻疹)を経験した1人の被験者に対して、陽性抗KRN23抗体は検出されなかった。他の被験者は、任意の過敏反応を経験しなかった。
・KRN23治療後の血清カルシウム濃度、カルシウムの尿中排泄、腎石灰沈着症、または冠動脈カルシウムスコアの増加は認められなかった。
【0179】
結論:全体として、本治験においてXLHを有する患者における、KRN23の血清リンへの持続的な効果、投与間隔中のTmP/GFR及び血清1,25(OH)2Dレベル;4回の投与後のQoLスコアの改善;血清リンレベルにおける血清KRN23濃度及び増加の直接的なPK-PD関係;及び良好な安全性プロファイルは、XLHを有する患者におけるKRN23の潜在的な有用性を示唆する。
【0180】
X染色体連鎖低リン血症を有する成人被験者におけるKRN23の有効性、薬力学、及び薬物動態パラメーターの分析
主要な有効性-血清リンレベル
被験者は、≦2.5mg/dL、>2.5~≦3.5mg/dL、>3.5~≦4.5mg/dL、または>4.5mg/dLの最大血清リンレベルを有する。ベースライン(1回目の投与間隔の0日目)で、KRN23で治療した被験者の大半(26人の被験者、96.3%)は、2.5mg/dLを下回る血清リンレベルを有し;1人の被験者は、>2.5~≦3.5mg/dLのレベルを有した:
【0181】
【0182】
治験の最初の120日間中に、KRN23で治療した被験者の血清リンレベルが>2.5mg/dLであった平均総時間は、27.8±17.9日であった。骨サブスタディにおいてプラセボで治療した1人の被験者について、血清リンレベルは、治験終了(来診26)(2.0mg/dL)までベースライン(1.6mg/dL)から本質的に変化しないままであり、投与後レベルは、1.5~2.1mg/dLの範囲であった。
【0183】
各投与間隔中に、最大血清リンレベルは、7日目に達成した:
【0184】
【表5】
7日目の血清リンレベルが>2.5~≦3.5mg/dLの、KRN23で治療した被験者の割合は、投与間隔1の14.8%から投与間隔2、3、及び4に、それぞれ、37.0%、74.1%、及び70.4%に増加した。
【0185】
91日目(4回の投与間隔の7日目)に、KRN23で治療した被験者の過半数(19人の被験者、70.4%)は、>2.5~≦3.5mg/dLの血清リンレベルを有し;3人の被験者(11.1%)は、2.5mg/dLを下回るレベルを有し、4人(14.8%)は、>3.5~≦4.5mg/dLのレベルを有した。110日目(4回の投与間隔の26日目)までに、12人(44.4%)の被験者は、>2.5~≦3.5mg/dLの血清リンレベルを有し、14人(51.9%)は、2.5mg/dLを下回るレベルを有した。血清リンレベルは、任意の被験者において任意の時点で4.5mg/dLを超えなかった。
【0186】
要約すれば、KRN23の平均の最大効果は、4回目の投与間隔後の7日目に起きた。全部で23人の被験者(85.2%)は、>2.5mg/dL及び≦4.5mg/dLの血清リンレベルを有した。
【0187】
薬力学的結果
血清リン
平均の血清リンレベルを以下の表6にまとめ、
図1にグラフで示す。
【0188】
【0189】
平均のKRN23用量は、投与間隔1、2、3、及び4で、それぞれ、0.05±0.0、0.10±0.01、0.28±0.06、及び0.48±0.16mg/kgであった。4回の各投与間隔中に、平均血清リン濃度は、7日目までに最大濃度に増加した後、次の投与前に減少した;投与前及び投与後の両方のレベルは、投与回数が120日の治療期中に増すにつれて増加した。用量が1回目の投与間隔から4回目の投与間隔に増加するにつれて、最大平均血清リン濃度は、2.21±0.33mg/dLから3.03±0.42mg/dLに増加し、各投与前の平均血清リン濃度は、1.89±0.33から2.27±0.32mg/dLに増加し、平均AUCnは、5.68±5.04から28.20±12.43mg 日/dLに増加した。
【0190】
血清リンのピーク値とトラフ値の変動は、各投与間隔中は少なかった。4回の投与間隔で、平均血清リン濃度は、ピーク値(3.03±0.42mg/dL)とトラフ値(2.27±0.32mg/dL)の間で0.76mg/dLの差(33%)で変動した。被験者間の変動もまた、血清リン濃度で少なかった。4回目の投与間隔で、血清リンレベルの被験者間の変動は、トラフ値及びピーク値の両方の濃度(=SD/平均×100%;0.42/3.03×100%)でたった14%であった。
【0191】
リン酸塩の糸球体濾過量に対する腎細管最大再吸収率
KRN23の複数回投与で治療した被験者の平均のTmP/GFR値を以下の表7にまとめ、
図2にグラフで示す。
【0192】
【0193】
4回の各投与間隔中に、平均TmP/GFRは、7日目までに最大レベルに増加した後
、次の投与前に減少した;投与前及び投与後の両方のレベルは、投与回数が120日の治療期中に増すにつれて増加した。用量が1回目の投与間隔から4回目の投与間隔に増加するにつれて、最大平均TmP/GFRは、1.93±0.45mg/dLから2.97±0.67mg/dLに増加し、各投与前の平均TmP/GFRは、1.60±0.36から2.05±0.34mg/dLに増加し、平均AUCnは、5.23±6.12mg・日/dLから28.55±13.40mg・日/dLに増加した。
【0194】
血清リンのAUC
last及びAUC
n対TmP/GFRのAUC
lastの散布図を
図3に示す。血清リンとTmP/GFRは、直線的に相関していた(ピアソン相関は、それぞれ、0.828及び0.900)。
【0195】
ベースラインからの血清リン変化のAUClast(63.59±31.58mg・日/dL)とベースラインからのTmP/GFR変化のAUClast(68.42±37.96mg・日/dL)は、同様であった。
【0196】
文献で報告された方程式を用いて算出した平均TmP/GFR値対ノモグラムから手作業で読み取った平均TmP/GFR値を
図4に示す。高い相関係数(ピアソン相関=0.9963)は、算出したTmP/GFRの使用が、ノモグラムから手作業で読み取ったTmP/GFRに匹敵することを示している。従って、算出したTmP/GFR値をこの報告書に示す。骨サブスタディにおいてプラセボで治療した1人の被験者について、TmP/GRFレベルは、治験終了(来診26)(1.6mg/dL)までベースライン(1.3mg/dL)から本質的に変化しないままであり、投与後レベルは、1.3~1.8mg/dLの範囲であった。
【0197】
1,25-ジヒドロキシビタミンD
KRN23で治療した被験者の平均の血清1,25(OH)2Dレベルを
図5にグラフで示す。
【0198】
4回の各投与間隔中に、平均の血清1,25(OH)2Dレベルは、3日目または7日目までに最大濃度に増加した後、次の投与前にベースラインレベル近くに戻った;投与前及び投与後の両方のレベルは、投与回数が120日の治療期中に増すにつれて増加した。用量が1回目の投与間隔から4回目の投与間隔に増加するにつれて、最大平均血清1,25(OH)2Dレベルは、53.1±25.44から94.1±45.99pg/mLに増加し、各投与前の平均血清1,25(OH)2Dレベルは、36.6±14.25から43.8±13.72pg/mLに増加し、平均AUCnは、144.81±209.12から1015.61±483.10pg・日/mLに増加した。表8を参照されたい:
【0199】
【0200】
骨サブスタディにおいてプラセボで治療した1人の被験者について、1,25(OH)2Dレベルは、治験終了(来診26)(53.0pg/mL)までベースライン(67pg/mL)から本質的に変化しないままであり、投与後レベルは、46~70pg/mLの範囲であった。
【0201】
他の薬力学的結果
ベースラインでの血清インタクトFGF23レベルにおける平均値を以下の表9にまとめる。個々のリン濃度対ベースラインでのインタクトFGF23レベルの散布図を生成し、これら2つのベースラインパラメーター間の相関は観察されなかった(データ不図示)。
【0202】
【0203】
KRN23で治療した被験者の経時的な平均の血清全レベルと未結合FGF23レベルとを以下の表10及び11にそれぞれまとめる。
【0204】
総FGF23の投与前濃度は、KRN23の投与回数と共に増加し、4回目の投与間隔後(110日目、最後の投与後の26日目)に最大レベルに到達した。従って、減少傾向が、治験終了(120日目、最後の投与後の36日目)まで観察された(
図6)。総FGF23は、ベースラインで120.2±93.9pg/mLであり、110日目に122446±79450pg/mLに増加した。未結合FGF23の投与前濃度は、総FGF23と同様のパターンに従い、同じスケールでプロットした場合に、総FGF23と比較して無視できる程度であった(
図6)。未結合FGF23は、ベースラインで100±58pg/mLであり、110日目に7024±5035pg/mLに増加した。未結合FGF23はKRN23投与後に増加したが、総FGF23のわずかごく一部であった(110日目に5.74%)。
【0205】
プラセボ群における1人の被験者については予想した通り、未結合FGF23は、投与前(62.7pg/mL)から治験終了(59.8pg/mL)まで本質的にとどまり、59.8~90.5pg/mLの範囲であった。
【0206】
ベースラインからの血清リン変化のAUClast対ベースラインのインタクトFGF23の散布図を生成し、血清リンのAUClastとベースラインのインタクトFGF23の間に相関はなかった(ピアソン相関=0.0943)。
【0207】
以下のPDパラメーター:血清中の25(OH)D、総カルシウム)、イオン化カルシウム、カルシトニン、及びiPTH、または尿中の他のPDパラメーター、例えば、2時間尿中TRP、2時間尿中カルシウム/クレアチニン比、2時間尿中FECa、24時間尿中リン、24時間尿中カルシウム、24時間尿中クレアチニン、24時間尿中カルシウム/クレアチニン比について、KRN23で治療した被験者の経時的な平均値にトレンドは見られなかった。
【0208】
経時的に平均のエストラジオール、テストステロン、遊離テストステロン、及びSHBGが観察された。これらのパラメーターにおける経時的な平均値にトレンドは見られなかった。
【0209】
【0210】
【0211】
骨形成パラメーター
経時的に平均の血清BALP、P1NP、及びオステオカルシン値も観察された。平均のP1NPレベルは、0日目の64.1±30.7ng/mLから治験終了時(120日目)に123.0±75.1ng/mLに増加した。数値の増加は、血清オステオカルシン(0日目の29.3±17.7ng/mLから治験終了時の120日目に42.3±25.7ng/mL)及びBALP(0日目の28.3±12.8mcg/Lから治験終了時の120日目に38.1±23.3mcg/L)でも見られた。
【0212】
骨サブスタディにおいてプラセボで治療した1人の被験者について、血清BALP及びP1NPの平均値は、経時的には本質的に変化しないままであった(BALPは、0日目に20.7mcg/L、治験終了時の120日目に20.6mcg/Lであり;オステオカルシンは、0日目に17.1ng/mL、治験終了時の120日目に19.4ng/mLであった)。数値の低下は、平均血清P1NPレベルで確認された(0日目の91.0ng/mLから治験終了時の120日目に60.0ng/mL)。
【0213】
骨吸収パラメーター
経時的に平均の血清CTx及びNTx/クレアチニン比値が観察された。数値の増加は、血清CTx(0日目の752.0±389.5pg/mLから治験終了時の120日目に947.3±504.7pg/mL)及びNTx/クレアチニン比(0日目の41.8±20.3nmoL・BCE/mmoLから治験終了時の120日目に56.9±34.0nmoL・BCE/mmoL)で確認された。
【0214】
骨サブスタディにおいてプラセボで治療した1人の被験者について、CTxは、経時的には本質的に変化しないままであった(0日目に613.0pg/mL、治験終了時の120日目に570.0pg/mL)。数値の増加は、NTx/クレアチニン比で確認された(0日目の25.0nmoL・BCE/mmoLから治験終了時の120日目に40.0nmoL・BCE/mmoL)。
【0215】
薬物動態結果
非コンパートメント分析
各投与間隔で投与した総用量の概要を以下の表12に示す。
【0216】
【0217】
KRN23の平均血清濃度を
図7にグラフで示す。KRN23のPKパラメーターの概要を以下の表13及び表14に示す。
【0218】
【0219】
【0220】
平均のtmax値は、4回の投与間隔にわたって同様であり、7.00~8.50日の範囲であった。個々のtmax値は、全投与間隔にわたって1.96~19.9日の範囲であった。平均のCmax,n、Cmin,n、及びAUCn値は、投与間隔1~4における用量の増加に比例して増加した。AUClastの被験者間の変動は、30%であった。Cmax,n及びCmin,nの被験者間の変動は、4回全ての投与間隔にわたって、それぞれ、32%~38%及び36%~56%の範囲であった。投与間隔4における最後の投与後のKRN23の平均t1/2値は、16.4±5.8日であった(個々の値は、5.58~29.5日の範囲であった)。4つ全ての間隔で算出したKRN23の平均のCL/F及びVz/Fは、それぞれ、0.186±0.078mL/hr/kg及び98.3±34.6mL/kgであった。
【0221】
薬物動態及び薬力学的関係
血清リンのPK-PD相関:ベースラインからの血清リン変化のAUC
n及びAUC
last対KRN23のAUC
n及びAUC
lastのプロットを
図8にそれぞれ示す。ベースラインからの血清リン変化のAUCnは、KRN23のAUCnの増加と共に直線的に増加した(r=0.612)。ベースラインからの血清リン変化のAUClastは、KRN23のAUClastの増加と共に直線的に増加した(r=0.680)。
【0222】
TmP/GFRのPK-PD相関:ベースラインからのTmP/GFR変化のAUCn及びAUClast対KRN23のAUCn及びAUClastのプロットを
図9にそれぞれ示す。ベースラインからのTmP/GFR変化のAUCnは、KRN23のAUCnの増加と共に直線的に増加した(r=0.810)。ベースラインからの血清リン変化のAUClastは、KRN23のAUClastの増加と共に直線的に増加した(r=0.698)。
【0223】
1,25-ジヒドロキシビタミンDのPK-PD相関:ベースラインからの1,25(OH)
2D変化のAUCn及びAUClast対KRN23のAUCn及びAUClastのプロットを
図10にそれぞれ示す。ベースラインからの1,25(OH)
2D変化のAUCnは、KRN23のAUCnの増加と共に直線的に増加した(r=0.417)。ベースラインからの1,25(OH)
2D変化のAUClastは、KRN23のAUClastの増加と共に直線的に増加した(r=0.272)。
【0224】
他のPDマーカーのPK-PD相関:他のPDパラメーターの個々のAUC対KRN23のAUCのプロットは、相関を示さなかった;これらには、アルブミン、イオン化カルシウム、補正カルシウム、カルシトニン、iPTH、クレアチニン、総カルシウム、25(OH)D、NTx、エストラジオール、遊離テストステロン、総テストステロン、SHBGの血清測定値;カルシウム、カルシウム/クレアチニン比、クレアチニン、リン酸塩の24時間尿中測定値;及びクレアチニン、ランダムカルシウム、カルシウム/クレアチニン比、FECa;リン、及びTRPの2時間尿中測定値が含まれた。これらの結果は、KRN23の複数回投与がこれらのPDパラメーターのいずれにも影響を及ぼさなかったことを示唆している。
【0225】
骨マーカーのPK-PD相関:ベースラインからの骨形成マーカー(BALP、P1NP、及びオステオカルシン)及び骨吸収マーカー(CTx及びNTx/クレアチニン比)変化のAUC対KRN23のAUCの散布図は、KRN23治療後に増加する正の傾向を示した。さらなる詳細をPK-PD報告書で提示する。
【0226】
リン濃度とKRN23濃度におけるベースラインからの変化間の母集団PK-PD分析の結果を以下の表15及び
図11にまとめる。
【0227】
【0228】
血清KRN23濃度と血清リンレベルの増加とのPK-PD関係をEmaxモデルによって記述した。Emaxモデルは、低MOFで示されるように、線形モデルよりも良好なものを示すものと思われた。血清リンレベルの最大効果の増加は、1.788mg/dL(Emax)であった。最大効果の50%に到達するKRN23濃度(EC50)は、2742ng/mLであった。
【0229】
各投与サイクルにおけるKRN23用量と投与した総用量の概要を以下の表16に示す。
【0230】
【0231】
KRN23の平均血清濃度を
図7に示す。KRN23のPKパラメーターの概要を表1
3~表14に示す。単位変換によるPKパラメーターの概要を表17に示す。
【0232】
【0233】
27人の被験者全員は、投与サイクル1中に0.05mg/kgのKRN23開始用量を受けた;27人の被験者のうち26人は、投与サイクル2で0.1mg/kg用量を受け;27人の被験者のうち25人は、投与サイクル3で0.3mg/kgのKRN23用量を受けた。投与サイクル4中に、26人の被験者のうち16人は、0.6mg/kgのKRN23用量を受け、26人の被験者のうち9人は、0.3mg/kg用量を受け、26人の被験者のうち1人は、0.1mg/kg用量を受けた。投与した平均値±SDのKRN23用量は、投与サイクル1、2、3、及び4中で、それぞれ、0.05±0.00mg/kg、0.10±0.01mg/kg、0.28±0.06mg/kg、及び0.48±0.16mg/kgであった。4回の投与サイクルにわたる総用量の平均値±SDは、0.89±0.22mg/kgであった。
【0234】
平均のtmax値は、4回の投与サイクルにわたって同様であり、7.00~8.50日の範囲であった。個々のtmax値は、全投与サイクルにわたって1.96~19.9日の範囲であった。平均のCmax,n、Cmin,n、及びAUCn値は、投与サイクル1~4における用量の増加に比例して増加した。AUClastの被験者間の変動は、30%であった。Cmax,n及びCmin,nの被験者間の変動は、4回全ての投与サイクルにわたって、それぞれ、32%~38%及び36%~56%の範囲であった。
【0235】
投与サイクル4における最後の投与後のKRN23のt1/2値の平均値±SDは、16.4±5.83日であった(個々の値は、5.58~29.5日の範囲であった)。4つ全てのサイクルで算出したKRN23のCL/F及びVz/Fの平均値±SDは、それぞれ、4.48±1.87mL/日/kg及び98.3±34.6mL/kgであった。
【0236】
薬物動態結論:
・KRN23(Cmax,n、Cmin,n、AUCn値で評価)へのPK暴露は、用量比例的に用量の増加と共に増加した。
・KRN23の平均の終末半減期は、16.4日(範囲:5.58~29.5日)であ
った。
・平均のtmax値は、4回の投与サイクルにわたって同様であり、7.00~8.50日(範囲:1.96~19.9日)の範囲であった。
【0237】
PK-PD相関結論:
・血清リンにおけるベースラインからの変化のAUCnまたはAUClastは、KRN23のPK暴露(AUCnまたはAUClast)の増加と共に直線的に増加した。
・TmP/GFRにおけるベースラインからの変化のAUCnまたはAUClastは、KRN23のPK暴露(AUCnまたはAUClast)の増加と共に直線的に増加した。
・1,25-ジヒドロキシビタミンDにおけるベースラインからの変化のAUCnまたはAUClastは、KRN23のPK暴露(AUCnまたはAUClast)の増加と共に直線的に増加した。
・KRN23治療の意義ある効果は、ほとんどのPDパラメーター(アルブミン、イオン化カルシウム、補正カルシウム、カルシトニン、インタクトPTH、クレアチニン、総カルシウム、25-ヒドロキシビタミンD、NTX、エストラジオール、遊離テストステロン、総テストステロン、血清中SHBG;カルシウム、カルシウム/クレアチニン比;クレアチニン、24時間尿中リン酸塩;クレアチニン、ランダムカルシウム、カルシウム/クレアチニン比、FECa、リン、2時間尿中TRP)のベースラインからの変化のAUCnまたはAUClastにおいて観察されなかった。
・骨アルカリホスファターゼ、CTX、NTX/クレアチニン比、オステオカルシン、P1NPの増加は、KRN23治療後に観察されたが、KRN23暴露との相関は、弱かった。
【0238】
実施例2:第2フェーズI/II臨床治験
治験設計及び方法論:これは、上述の第1フェーズI/II臨床治験から適格なXLH被験者からなる拡張フェーズI/IIの非盲検、単一群、反復投与、多施設長期延長治験である。治験設計は、2つの期間:治療期と追跡調査期からなる。ベースラインでは、被験者は、本治験への適格性について評価した。本治験のKRN23非盲検部分に登録した全ての適格な被験者は、用量漸増アルゴリズムと安全性評価で導かれた、第1フェーズI/II治験の治験終了の来診(来診26、120日目)からの血清リンレベルに基づいて、KRN23の初回用量を受けた。治療期中、各被験者は、28日ごとに1回(最大で12回投与)、非盲検のKRN23皮下投与を受ける。次の被験者内の用量漸増は、治験及び安全性評価のための用量漸増アルゴリズムで導かれた血清リンレベルに基づく。治療期中、被験者は、来診1~48の合計で48回の予定された臨床評価を受ける。これらの定期評価のうちの少なくとも12回は、病院来診を必要とするが、残りの36回の来診は、病院で、及び/または在宅医療従事者が行うことができる。治療期の完了時に、被験者は、治験終了の来診(来診49)、及び追跡調査期中に追加の往診または病院来診(来診50)を受ける。被験者は、合計でおよそ13.5カ月間:治療期中はおよそ11カ月(48週間/336日)と追跡調査期中のおよそ2.5カ月に参加する。第1フェーズI/IIの骨サブスタディからの適格な被験者は、このサブスタディの拡張部分に参加していてもよい。被験者は、第1フェーズI/II治験で受けた同じレジメンを継続することであった。骨サブスタディは、見越し額低迷により2013年8月に閉鎖し;最初に提案された分析はできない場合もある。治験用の安全性評価には、治療中に発生した有害事象(TEAE)モニタリング、安全性研究所パラメーター、免疫原性、及び理学的検査所見が含まれる。
【0239】
両方の治験開始基準を申し分なく満たした被験者は、適格であった。治験母集団には、XLHの臨床診断が裏付けられ、かつ、インタクト線維芽細胞成長因子23(FGF23)レベル>30pg/mL、リン酸塩の糸球体濾過量に対する腎細管最大再吸収率(Tm
P/GFR)<2.0mg/dL、(eGFR)≧60mL/分(コッククロフト・ゴールト式を用いて)、及び補正血清カルシウムレベル<10.8mg/dL(血清アルブミンが<4.0g/dLである場合)の少なくとも18歳の男性及び女性の被験者が含まれた。
【0240】
(計画及び分析した)被験者数:最大で35人の被験者を計画し;23人の被験者をスクリーニングして、登録し(治験の非盲検部分に21人;骨サブスタディに2人);被験者全員は、適格性基準を満たし、治験に登録した。
【0241】
試験製品、用量及び投与方式、バッチ番号:骨サブスタディにおける非盲検KRN23及びKRN23治療:SC注射用のKRN23を、0.05、0.10、0.30、0.60、または1.0mg/kgで腹部に28日ごとに一回SC注射で投与した(バッチ番号:YU008B、YU008E、YU008F、YU009A、YU009B、YU011A、及びYU011B)。被験者は、必要に応じて0.03mg/kgに減少させてもよい。
【0242】
比較薬剤、用量、及び投与方式、バッチ番号:骨サブスタディ:SC注射用のKRN23プラセボを、腹部に28日ごとに一回SC注射で投与した(バッチ番号:PYU090908C及びPYU120413A)。
【0243】
治療期:本治験の治療期は、最長でおよそ11カ月(48週間/336日)の治療期と、2.5カ月の追跡調査期で、合計でおよそ13.5カ月であった。
【0244】
エンドポイント:
一次:主要なエンドポイントは、以下の評価を介してKRN23 SC投与の反復投与の安全性及び有効性を評価するように設計された:
・治験薬への重症度及び関係による有害事象(AE)の数及び%
・バイタルサイン、検査室試験、身体検査、心電図(ECG)、腎臓超音波検査及び心臓コンピューター断層撮影(CT)/冠動脈カルシウムスコアリング(CCS)及び大動脈カルシウムスコアリング(ACS)における臨床的に有意な変化の数
・投与後の血清リンレベルが、≦2.5mg/dL;>2.5mg/dLであるが≦3.5mg/dL、>3.5mg/dLであるが≦4.5mg/dL;及び>4.5mg/dLである被験者の数及び%
・抗KRN23抗体を発症する被験者の数
二次:副次的PDエンドポイントは、治療群による以下のパラメーターを評価するために設計された;変化は、(来診2、第1フェーズI/II臨床試験の0日目)から算出した:
・血清リンレベルの変化
・カルシウムホメオスタシス:1,25(OH)2D(1,25-ジヒドロキシビタミンD)、25(OH)D(25-ヒドロキシビタミンD)、総カルシウム、イオン化カルシウム、カルシトニン、及びiPTH(インタクト副甲状腺ホルモン)の変化
・2時間尿から測定した際の、TmP/GFR比、リン酸の腎尿細管再吸収(TRP)、尿カルシウム/クレアチニン比、及びカルシウム排泄分画(FECa)の変化
・24時間尿から測定した際の、尿中リン酸塩、カルシウム、クレアチニン、及び尿カルシウム/クレアチニン比の変化
・骨バイオマーカー:血清BALP(骨アルカリホスファターゼ)、P1NP(1型プロコラーゲンのN-プロペプチド)、CTx(1型コラーゲンのカルボキシ末端架橋テロペプチド)、及びオステオカルシン、及び尿中NTx(1型コラーゲンのアミノ末端架橋テロペプチド)の変化
・性ホルモン:エストラジオール、テストステロン、遊離テストステロン、及び性ホル
モン結合グロブリン(SHBG)の変化
・第1及び第2フェーズI/II臨床試験の両方の治験にわたる累積用量からKRN23の集団PKの特徴付け
・SF-36v2(アウトカム・スタディ36項目簡易健康調査バージョン2)及びWOMAC(ウェスタンオンタリオ及びマクマスター大学変形性関節症指数)におけるQoL評価の変化
【0245】
結果の概要:この臨床治験概要は、2013年8月12日のデータ締切日時点で入手可能な予備データに基づいている。
【0246】
暴露:全部で22人の被験者をKRN23で治療し(本治験の非盲検部分に21人、骨サブスタディに1人)、1人の被験者を骨サブスタディにおいてプラセボで治療した。初回の投与間隔(投与間隔1)では、平均のKRN23用量は、0.541±0.2039mg/kgであった。次の投与間隔では、平均のKRN23用量は、増加し、狭い範囲(0.733±0.2817mg/kg~0.865±0.2618mg/kg)で変動した。KRN23で治療した被験者(19/22、86.4%)のほとんどは、データ締切日時点で12回全ての計画投与を受け;プラセボで治療した1人の被験者は、データ締切日時点でプラセボの3回の投与を受けた。
【0247】
治験母集団:KRN23で治療した22人の被験者のうち、年齢の中央値は、42.5歳(範囲:20~67歳)であり;過半数(13/22、59.1%)は、女性であり、及び大半(21/22、95.5%)は、白人/コーカサス人であり、1人(4.5%)は、黒人/アフリカ系アメリカ人/アフリカ系カリブ人であった。身長の中央値は、148.79cm(範囲:121.9~170.2cm)であり、体重の中央値は、75.30kg(範囲:51.3~124.3kg)であった。
【0248】
ベースラインでの血清リン及びTmP/GFRレベルは、被験者全員の正常な参照範囲の下限値を下回っていた。ベースラインでは、全体の平均1,25(OH)2Dレベルは、正常な参照範囲内であった。ベースラインの未結合インタクトFGF23レベルは、KRN23で治療した被験者について54~268pg/mLの範囲であった。
【0249】
有効性結果:
・治療前のベースラインでは、被験者全員は、<2.5mg/dLの血清リンレベルを有した。KRN23投与後、最大PD効果(ピーク)の時間は、7日目及び14日目に観察された。KRN23の初回投与後、被験者の77.1%(7日目)及び81.8%(14日目)は、>2.5~≦3.5mg/dLの標的範囲内で血清リンレベルが増加した。このピーク効果は、45.5%~81.8%の範囲で、治験を通じて比較的一致していた。標的範囲内の被験者のパーセントは、7日目と14日目で概ね同様であった。>4.5mg/dLの血清リンレベルは、治験中の任意の時点で、任意の被験者に対して報告されなかった。
【0250】
薬力学的結果:
・12回の各投与間隔中に、KRN23で治療した被験者の平均血清リン濃度は、7日目または14日目までに実質的に増加した後、減少したが、投与間隔の終了時にベースラインを上回ったままであった。全被験者は、全ての来診でベースラインからの増加を経験した。平均血清リン濃度は、治療前のベースライン時の1.85±0.282mg/dLから投与間隔1の14日目に最大レベルの2.87±0.392mg/dLに増加し、最大レベルは、治験を通じて2.71±0.428mg/dL~2.96±0.468mg/dLの範囲内のままであった。投与後25日目に、被験者の33%~57%は、標的範囲(>2.5~≦3.5mg/dL)内であり、投与間隔の終了時に、被験者の23.8
%~38.1%は、標的範囲(>2.5~≦3.5mg/dL)内のままであった。
・TmP/GFRは、過剰FGF23のKRN23介在阻害がリンレベルを増加させる提案された機序である。TmP/GFR結果は、血清リンで観察されたものと同じパターンをたどった。平均のTmP/GFRは、治療前のベースラインレベルの1.564±0.3012から、各投与間隔の14日目に最大範囲の2.408±0.7205mg/dL~2.921±0.5990mg/dLに増加した。TmP/GFRの増加の大きさは、臨床的に意義あるものであり、血清リンの増加と密接に相関している。
・12回の各投与間隔中に、平均血清1,25(OH)2Dレベルは、7日目までに最大レベルに増加した後、次の投与前にベースラインに匹敵するレベルに減少した。
・ベースラインと比較して、KRN23投与後の他の血清と尿PDパラメーターの経時的な平均値にトレンドは見られなかった。血清パラメーターには、25(OH)D、総カルシウム、イオン化カルシウム、カルシトニン及びiPTHが含まれた。尿マーカーには、TRP、カルシウム/クレアチニン比、及びFECaの2時間測定値、及びリン、カルシウム、クレアチニン、及びカルシウム/クレアチニン比の24時間測定値が含まれた。
・骨形成及び吸収のバイオマーカーは、治療効果を示すことができる。P1NPは、第1フェーズI/II臨床治験のベースライン時の69.6±29.86ng/mLから最大で170.4±100.79ng/mLに増加した。これは、148.1%のパーセント変化の増加を表す。増加は、全てのベースライン後の測定で観察された。平均の血清オステオカルシン及びBALPも増加したが、治験を通じてそれ程ではなかった。骨吸収パラメーター(Ctx及びNTx)におけるベースラインからの増加も観察された。
【0251】
PK及びPK-PD関係:母集団PK分析は、治験最終報告書に含まれるであろう。任意のPK-PD関係分析は、治験最終報告書に含まれるであろう。
【0252】
生活の質:第2フェーズI/II臨床治験中の被験者のQoL評価からのデータ分析は、本報告日の時点では入手できず、治験最終報告書に含まれるであろう。
【0253】
安全性結果:
・KRN23は、この被験者集団における最大で12回投与のSC投与で耐容性良好であった。
・治験で報告された死亡または生命に関わるTEAEは無かった。SAEは、KRN23で治療した3人の被験者に対して報告された(頸椎脊椎管狭窄症、乳癌、及び高血圧性クリーゼ;各々、1人の被験者)。KRN23で治療した2人の被験者は、KRN23に関連すると思われるTEAE:1人の被験者でDLTと見なされた重篤なまたは消耗性のレストレスレッグス症候群(RLS)と、DLTと見なされないが、他の被験者の中止をもたらす中程度の腎結石症とにより治験を中止した。
・TEAEは、治験中に、KRN23で治療した被験者のほとんど(20被験者、90.9%)、及びプラセボで治療した1人の被験者に対して報告された。KRN23治療群で、最も一般的なTEAE(少なくとも3人の被験者に対して報告された)は、注射部位反応、副鼻腔炎、及び関節痛(それぞれ、5人の被験者、22.7%);腹部不快感、背部痛、四肢疼痛及び目まい(dizziness)(それぞれ、4人の被験者、18.2%);及び目まい(vertigo)、倦怠感、ウイルス性胃腸炎、鼻咽頭炎、頭痛、及びRLS(それぞれ、3人の被験者、13.6%)。
・治療関連TEAEは、KRN23で治療した14人の被験者(63.6%)に対して報告された。注射部位反応(5人の被験者、22.7%);関節痛及びRLS(それぞれ、3人の被験者、13.6%);及び注射部位疼痛(2人の被験者、9.1%)は、KRN23で治療した2人以上の被験者に対して報告された治療関連として分類された唯一のTEAEであった。重篤なまたは障害を引き起こすTEAEは、KRN23で治療した5人の被験者(22.7%)に対して報告された:治験薬にはおそらく関連しない乳癌、治験薬におそらく関連するRLS、治験薬には関連しない筋肉痛及び高血圧性クリーゼ、治
験薬には関連しない頸椎脊椎管狭窄症、及び治験薬には関連しない外傷後疼痛及び四肢疼痛。
・治験中に臨床的に有意な検査値異常の目に見えるパターンは存在しなかった。4人の被験者は、治験責任医師によってTEAEであると見なされた検査値異常を有した:治験薬におそらく関連する中程度の好中球数減少及び白血球数減少;治験薬におそらく関連する軽度の血圧低下;治験薬には関連しない軽度の血中トリグリセリド増加;及び治験薬にはおそらく関連しない軽度のアラニンアミノトランスフェラーゼ増加及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、並びに治験薬におそらく関連する軽度の血中クレアチンホスホキナーゼ増加。これらの事象は、重篤または臨床的に有意であるとは見なされず、治療を必要とはせず、被験者の治験からの中止をもたらさなかった。
・関連性のある心臓への副作用は、心臓CTスキャンまたはECGで見られなかった。ECGの別々の独立した心臓専門医評価は、(第1または第2フェーズI/II臨床治験における)治療前ECGと第2フェーズI/II臨床治験における治療後ECGとを比較した場合、ESTES基準によるLVHの証拠または変化は示されなかった。
・腎臓への副作用は、腎臓超音波検査で見られなかった、iPTH、血清、及び24時間尿中カルシウムの治療関連の変化は見られなかった。臨床的に有意な異所性鉱質形成変化は観察されなかった。
・治療関連の副作用を示唆する他の安全性パラメーター(バイタルサイン、身体及び脳神経検査所見)のパターンに変化は観察されなかった。
・投与後に抗KRN23抗体を発症した、または過敏反応を発症した被験者はいなかった。
・腎臓を含む、治験した任意の骨外性組織における石灰化が増加した証拠はなかった。
【0254】
結論:
本治験からこれまでのデータは、KRN23がSC投与後にFGF23作用を遮断するモデルと一致しており、リン酸の腎尿細管再吸収(TmP/GFR)の増加により血清リンレベルの持続的な増加をもたらす。過剰なFGF23の阻害に基づいて、増加した1,25(OH)2Dも、予想通りに観察された。骨形成及び吸収マーカーの増加も観察された。まとめると、これらのバイオマーカーの変化は、KRN23が骨質の臨床改善をもたらし、くる病に関連する変化に拮抗し、XLHを有する患者の下肢の弯曲、疼痛、及び低背の特徴などの身体的な結果を最終的には改善するという仮説を支持する。
【0255】
28日ごとに皮下投与されたKRN23(ほとんどの場合、0.6または1.0mg/kg)が、ピークの血清リンレベルを、治療前の平均のベースラインレベルである1.85mg/dLから2.5~3.5mg/dLの範囲に改善することが、本治験からの入手可能なデータにより実証された。この改善は、48週間(336日)の期間及び12回のKRN23投与にわたって持続する。
【0256】
KRN23治療がTmP/GFRを改善し;その効果が各治療後にほぼ28日間にわたって持続し、48週間及び12回投与で維持されることが、データにより実証された。この結果は、KRN23が腎臓のリン酸ナトリウム共輸送体の低下に拮抗し、尿細管におけるリン酸再吸収の効率の実質的な増加をもたらすという概念と一致している。TmP/GFRの増加の大きさは、臨床的に意義あるものであり、血清リンと相関しており、過剰FGF23のKRN23介在阻害が所望の効果を達成するという推定機序を示唆している。
【0257】
KRN23治療が血清1,25(OH)2Dレベル増加させることも、本治験からのデータにより示されている。これは、KRN23が、血清25ヒドロキシビタミンDを、腸内でのリン酸吸収を能動的に刺激する1,25ジヒドロキシ形態に変換するのに必要な1-アルファヒドロキシラーゼの発現低下に拮抗するという概念と一致している。骨形成及び吸収のバイオマーカーの改善は、骨再形成の増加を示唆している。これらの改善、さら
に、血清リンの増加は、XLHを有する患者における骨質を改善する機序であると予想される。
【0258】
KRN23は、最大で1.0mg/kgで皮下投与した最大で12回の薬剤投与による48週間の期間にわたってXLH成人被験者で耐容性良好であった。死亡または生命に関わるTEAEは発生しなかった。治療関連TEAEには、注射部位反応;関節痛及びRLS;及び注射部位疼痛が含まれた。(治療薬関連とは思われない、または、治療薬関連ではないと評価した)SAEは、3人の被験者に対して報告された。治療関連の副作用を示唆する検査値異常の目に見える臨床的に有意なトレンドは見られなかった。
【0259】
腎臓の石灰化は、KRN23治療前のベースライン時の被験者で頻繁に見られ、これは、リン酸塩療法前による可能性が高い。KRN23のこれまでの臨床データ(本治験では、腎臓超音波検査及び超高速心臓CTスキャンを使用するものを含む)は、これら最も高感受性の2つの臓器における石灰化の著しい新規出現または任意の増加は同定されなかった。加えて、血清または尿中カルシウムまたはPTHの増加は観察されず、リンレベルは正常の上限を決して超えなかったため、異所性鉱質形成に通常関連する主要な生化学的パラメーターは、この長期観察治験にわたってKRN23投与で発生しなかった。
【0260】
結論として、KRN23治療は、耐容性良好であり、48週間の治療を通じて各投与間隔で血清リン、TmP/GFR、及び血清1,25(OH)2Dレベルを増加させた。的外れの効果は観察されなかった。これらの臨床的に意義あるものは、薬力学的及び生化学的マーカーで増加し、XLHを有する成人被験者における良好な安全性プロファイルは、XLHを有する患者に対するKRN23治療の潜在的な有用性を示唆する。
【0261】
有効性評価
ベースラインの疾患特徴
有効性分析セットにおける被験者の血清リン、TmP/GFR、1,25(OH)2D、及び未結合インタクトFGF23のレベルを含むベースラインの疾病特徴を以下の表18に示す。ベースラインでの血清リン及びTmP/GFRレベルは、被験者全員の正常な参照範囲の下限値を下回っていた。ベースラインでは、全体の平均1,25(OH)2Dレベルは、正常な参照範囲内であった(Kratz 2012)。ベースラインの未結合インタクトFGF23レベルは、KRN23で治療した被験者について54~268pg/mLの範囲であった。
【0262】
【0263】
主要な有効性-血清リンレベル
治療前のベースライン(来診2、第1フェーズI/II臨床治験の0日目)で、KRN23で治療した22人の被験者(100%)全てと、プラセボで治療した1人の被験者は、<2.5mg/dLの血清リンレベルを有した。28日の各投与間隔中に、最大血清リンレベル(ピーク値)は、7日目または14日目に達成した(表19)。最初のKRN23治療(投与間隔1)後の7日目及び14日目に、大多数の被験者(17~18人の被験者、77.3%~81.8%)の血清リンレベルは、<2.5mg/dLから、>2.5~≦3.5mg/dLの標的範囲に増加した。このピーク効果は、45.5%~81.8%の範囲で、治験を通じて比較的一致していた。標的範囲内の被験者のパーセントは、治験期を通じて7日目と14日目の両方で概ね同様であった。7日目または14日目のピーク血清リンレベルは、治験を通じて、KRN23で治療した0~3人の被験者(0~13.6%)で>3.5~≦4.5mg/dLの範囲に増加したが、>4.5mg/dLの血清リンレベルは、任意の時点で、任意の被験者に対して報告されなかった。
【0264】
【0265】
データの各行は、その来診/時点で入手可能なデータを示し、各来診での被験者の総数(及び関連パーセント)は、データが欠けている場合には、最大で22人(または100%)まで追加しなくてもよいことに留意されたい。血清リンが各時点で標的範囲(>2.5~≦3.5mg/dL)内のままであった被験者のパーセントは、その時点でこれらの被験者全員について得られたかどうかにかかわらず、任意のKRN23投与回数を受けた22人全員の被験者に基づいた分母で算出した。データ締切日時点で、3人の被験者は、計画されたKRN23投与の全てを受けず(1人の被験者は、1回の投与を受け、中止した;1人の被験者は、5回の投与を受け、1人の被験者は、7回の投与を受け、治験にとどまった)、いくつかの時点で、血清リンデータは、治療され、治験にとどまった被験者全員について入手可能ではなかった。従って、場合によっては、算出したパーセントは、>2.5mg/dLの血清リンを達成した被験者の応答率を過小評価している場合がある
。
【0266】
骨サブスタディにおいてプラセボで治療した1人の被験者について、血清リンレベルは、ベースライン(1.60mg/dL)から本質的に変化しないままであり、投与後レベルは、1.70~2.00mg/dLの範囲であった。
【0267】
要約すれば、KRN23は、ピーク値またはトラフ値のいずれかで、ほぼ全てのデータポイントで被験者全員におけるベースラインからの血清リンレベルを増加させ、治療したほとんどの被験者は、目的の治療目標(>2.5~≦3.5mg/dL)を達成した。この効果は、最長で48週間維持した。
【0268】
薬力学的結果
血清リン:平均の血清リンレベルを
図12にグラフで示す。
【0269】
用量は、ピーク値とトラフ値のリンレベル及び予め定められた調整レジメンに基づいて調整されるので、KRN23用量は、被験者ごと、及び治験の期間を通じて変動する。平均のKRN23用量は、治験において0.541±0.2039mg/kg~0.865±0.2618mg/kgの範囲であった。
【0270】
12回の各投与間隔中に、平均血清リン濃度は、7日目または14日目までに臨床的に意義ある最大レベルに増加した後、減少したが、次の投与前に投与前レベルには戻らなかった。全被験者は、全ての来診でベースラインからの増加を経験した。これらの被験者の平均血清リン濃度は、治療前のベースライン時(第1フェーズI/II臨床治験0日目)の1.85±0.282mg/dLから投与間隔1の14日目に最大レベルの2.87±0.392mg/dLに増加し、最大レベルは、治験を通じて2.71±0.428mg/dL~2.96±0.468mg/dLの範囲内のままであった。血清リンにおけるベースラインからの最大平均変化は、治験を通じて0.87±0.444mg/dL~1.10±0.412mg/dLの範囲内のままであった(表20)。投与間隔の終了時(0日目)の平均血清リン濃度は、ベースラインを上回ったままであり、その範囲は、2.25±0.353mg/dL~2.52±0.436mg/dLであった。
【0271】
【0272】
投与間隔の7日目または14日目の最大平均血清リン値から以下の投与間隔の0日目の最小値までのピーク値とトラフ値の変動は、治験を通じて少なかった。例えば、2.96±0.468mg/dL(来診10、投与間隔3、7日目)の最大平均ピーク値は、2.42±0.396mg/dL(来診13、投与間隔4、0日目)のトラフ値に、0.54mg/dLの差(22.3%)で続いた。2.25±0.353mg/dL(来診5、投与間隔2、0日目)及び2.25±0.301(来診45、投与間隔12、0日目)の最小平均トラフ値は、2.87±0.392mg/dL(来診3、投与間隔1、14日目)及び2.71±0.428mg/dL(来診42、投与間隔11、7日目)の前の投与間隔のピーク値に、それぞれ、0.62mg/dL(27.6%)及び0.46mg/dLの差(20.4%)で続いた。入手可能なピーク値-トラフ値の11対のうちの10個の差は、17.9%~27.6%の範囲内であり;経時的に一貫したPD効果を示した。被験者間の変動も、血清リン濃度について比較的少なかった。例えば、投与後血清リンレベルの被験者間変動(SD/平均×100%)は、治験開始時(投与間隔1~2)及び治験終了時(投与間隔11~12)の両方のトラフ値及びピーク値の対の濃度について13.4%~15.8%の範囲内であった。これらの結果は、最小の変動と一貫したPD効果を強調するものである。
【0273】
リン酸塩/糸球体濾過量の腎細管最大再吸収率
各投与間隔での各KRN23投与後の14日目及び25日目に採取した2時間尿サンプルを使用して、TmP/GFRを算出した。平均のTmP/GFR値を
図13にグラフで示す。
【0274】
TmP/GFRは、過剰FGF23のKRN23介在阻害がリンレベルを増加させる提案された機序である。TmP/GFRは、血清リンと同じパターンをたどり、KRN23治療後に増加した血清リンレベルが、主に、腎近位尿細管からのリン再吸収の増加によるものであることを示唆した。全投与間隔及び被験者全員において、平均のTmP/GFRは、ベースライン(来診2、本治験の0日目)と比較して、14日目に臨床的に有意な量まで増加した後、次の投与前に投与前レベルに向かって減少した(表21)。平均のTmP/GFRは、各投与間隔の14日目に、ベースラインレベルの1.564±0.3012から、2.408±0.7205mg/dL~2.921±0.5990mg/dLの範囲内のレベルに増加し;ベースラインからの14日目の変化は、0.849±0.7665~1.352±0.5892の範囲であった。25日目のTmP/GFRレベルは、2.195±0.3819mg/dL~2.551±0.6538mg/dLの範囲であり、ベースラインからの変化は、0.636±0.3085~1.004±0.6777の範囲であった。
【0275】
【0276】
骨サブスタディにおいてプラセボで治療した1人の被験者について、TmP/GFRレベルは、データ締切日時点(来診8、投与間隔2、25日目)に完了した最終評価(1.650mg/dL)までベースライン(1.250mg/dL)からほとんど変化しないままであり、投与後レベルは、1.550~2.000mg/dLの範囲であった。
【0277】
1,25-ジヒドロキシビタミンD
KRN23で治療した被験者の平均血清1,25(OH)
2Dレベルを
図14にグラフで示す。
【0278】
12回の各投与間隔中に、平均血清1,25(OH)2Dレベルは、7日目までに最大レベルに増加した後、次の投与前にベースラインに匹敵するレベルに減少した。1,25(OH)2Dのピークレベルが最初から最後の投与間隔まで経時的に減少する傾向がある(表22)。ベースライン(来診2、第1フェーズI/II臨床治験の0日目)の平均血清1,25(OH)2Dレベルは、36.4±12.64であり、各投与間隔の7日目に、53.1±20.28pg/mL~92.0±43.21pg/mLの範囲内で最大に増加した。血清1,25(OH)2Dレベルにおけるベースラインからの7日目の最大変化は、治験を通じて19.6±15.91pg/mL~63.4±35.52pg/mLの範囲内のままであった。
【0279】
骨サブスタディにおいてプラセボで治療した1人の被験者について、1,25(OH)2Dレベルは、データ締切日時点(来診10、投与間隔3、7日目)に完了した最終評価(50.0pg/mL)までベースライン(67.0pg/mL)からほとんど変化しないままであり、投与後レベルは、34.0~72.0pg/mLの範囲であった。
【0280】
【0281】
他の薬力学的結果
ベースラインでの全ての血清インタクトFGF23レベルの平均値を記録した。全てのFGF23 ECLAアッセイは、血清中で錯体化または未結合であるかどうか、KRN23の存在下で内因性FGF23を測定する。標準(組換えヒトFGF23[rhFGF23])及び試料を緩衝マトリクス中で過剰量のKRN23でインキュベートした後、アッセイで検出する。アッセイは、試料中の全ての内因性FGF23を表すKRN23/FGF23複合体を測定する。血清中の内因性FGF23/KRN23複合体は、rhFGF23/KRN23複合体標準曲線に対して平行な線形応答を生じないため、アッセイは制限される。そのため、ECLAを用いた総FGF23の全ての結果は、標準曲線に対するものであり、内因性FGF23濃度の増加または減少のトレンドを記述することにしか使用できない。
【0282】
第1フェーズI/II臨床試験においてKRN23で治療すべきであった被験者について、平均の血清総インタクトFGF23レベルは、KRN23での任意の治療前に、ベースライン(来診2、第1フェーズI/II臨床試験の0日目)で94.7±105.19pg/mLであった。本治験でKRN23治療を完了後、この値は、第2フェーズI/II臨床試験(来診1、投与間隔1、0日目)における最初の来診時に42100.0±31524.88pg/mLに増加した。平均の血清総インタクトFGF23は、一般的に、第2フェーズI/II臨床試験におけるKRN23投与回数の増加と共にさらに増加し、来診45(投与間隔12、0日目)(
図15A)で最大の510818.8±354649.07pg/mLに到達した。
【0283】
未結合FGF23のアッセイは、多量の結合FGF23の存在下で行うことが困難であり、遊離FGF23のレベルが、循環で実際に遊離しているか、またはアッセイで単に解離しているのかを確信するのは困難である。開発したようにアッセイを用いることで、未結合インタクトFGF23の平均レベルは、KRN23で治療した被験者において来診33を通じて総インタクトFGF23のものと同様のパターンをたどった後;未結合形態の平均値は、来診37、41、及び45で減少し、来診49で再び上昇した(
図15B)。平均の未結合インタクトFGF23レベルは、ベースラインで103.5±62.77pg/mLであり、来診33で25283.3±33810.42pg/mLに増加し、来診49で25657.9±13461.86pg/mLに増加した。未結合インタクトFGF23はKRN23投与後に増加したが、総インタクトFGF23のごく一部のみを表し;未結合形態の平均ピーク値は、総インタクトFGF23のものの5%である。従って、これがこの文脈において正確であるかどうかを判断するのは難しい。
【0284】
KRN23治療は、総インタクト及び未結合インタクトFGF23の見かけの増加にかかわらず、血清リンレベルの増加をもたらし、これは、遊離かどうかにかかわらず、見かけの遊離FGF23が、この文脈ではインビボで活性しなかったことを示唆するであろう。
【0285】
血清リン及びTmP/GFRにおけるKRN23治療の効果とは異なり、以下のPDパラメーター:血清中の25(OH)D、総カルシウム、イオン化カルシウム、カルシトニン、及びiPTH、または尿中の他のPDパラメーター、例えば、2時間尿中TRP、2時間尿中カルシウム/クレアチニン比、2時間尿中FECa、24時間尿中リン、24時間尿中カルシウム、24時間尿中クレアチニン、24時間尿中カルシウム/クレアチニン比について、KRN23で治療した被験者の経時的な平均値にトレンドは見られなかった。
【0286】
KRN23で治療した被験者の経時的に平均のエストラジオール、テストステロン、遊
離テストステロン、及びSHBGについても計測した。これらのパラメーターにおける経時的な平均値にトレンドは見られなかった。
【0287】
骨バイオマーカー
骨形成パラメーター:骨形成及び吸収のバイオマーカーは、治療効果を示す指標となり得る。経時的な平均の血清BALP、P1NP、及びオステオカルシン値を測定した。P1NPは、第1フェーズI/II臨床治験のベースライン時の69.6±29.86ng/mLから来診17に最大で170.4±100.79ng/mLに増加した。これは、148.1%のパーセント変化の増加を表す。値は、来診33/投与間隔9/0日目に155.2±75.95ng/mLに上昇したままだった。血清オステオカルシン及びBALPも増加したが、治験を通じてそれ程ではなかった。これらのデータは、KRN23が骨形成を増加させ、骨質を改善し、くる病の変化に拮抗し、骨の形状を回復させる機序になり得ることを示唆している。
【0288】
骨吸収パラメーター:経時的な平均の血清CTx及びNTx値を測定した。KRN23で治療した被験者について、血清CTxにおいて(来診1/投与間隔1/0日目の845.1±345.77pg/mLから、来診17/投与間隔5/0日目の1090.5±570.55pg/mL、及び来診33/投与間隔9/0日目の1157.2±542.25pg/mLに)数値の増加が見られた。これらのCTXの変化は、ベースラインからおよそ73%の変化程度である。NTxも(来診1/投与間隔1/0日目の246.2±578.65nmの骨コラーゲン相当量[BCE]/mLから、来診17/投与間隔5/0日目の346.5±611.50nm BCE、及び来診33/投与間隔9/0日目の344.6±566.55nm BCEに)増加した。
【0289】
これらのデータは、KRN23が骨吸収並びに骨形成を増加させることを示し、この骨再形成及び代謝回転の増加、さらには、血清リンレベルの正常化は、KRN23が骨質を改善させる重要な生理学的機序であると思われる。
【0290】
有効性結論
・本治験では、血清リンは、有効性エンドポイント及び重要なPDパラメーターと考える。治療前のベースラインでは、被験者全員は、<2.5mg/dLの血清リンレベルを有した。KRN23投与後、最大PD効果(ピーク)の時間は、7日目及び14日目に観察された。KRN23の初回投与後、被験者の77.1%(7日目)及び81.8%(14日目)は、>2.5~≦3.5mg/dLの標的範囲内で血清リンレベルが増加した。このピーク効果は、45.5%~81.8%の範囲で、治験を通じて比較的一致していた。標的範囲内の被験者のパーセントは、7日目と14日目で概ね同様であった。>4.5mg/dLの血清リンレベルは、治験中の任意の時点で、任意の被験者に対して報告されなかった。
【0291】
薬力学
・TmP/GFRは、過剰FGF23のKRN23介在阻害がリンレベルを増加させる提案された機序である。KRN23は、TmP/GFRを増加させ;TmP/GFRの増加の大きさは、臨床的に意義あるものであり、血清リンの増加と密接に相関している。観察されたPD効果は、リン再吸収及び遠位尿細管のレベル血清リンを増加させることで所望の臨床効果を達成するKRN23作用の推定機序を強調するものである。
・12回の各投与間隔中に、平均血清1,25(OH)2Dレベルは、7日目までに最大レベルに増加した後、次の投与前にベースラインに匹敵するレベルに減少した。1,25ビタミンDは、KRN23の作用機序に密接に関連した別のPDパラメーターであり、同じ時間プロファイルに従って増加し:投与後に急速に増加し、7日目にピークに達し、投与間隔の終了時にベースラインレベルの方に戻った。
・全ての他の代謝パラメーター:25(OH)D、総カルシウム、イオン化カルシウム、カルシトニン及びiPTH;TRP、カルシウム/クレアチニン比、及びFECaの尿中測定値、及びリン、カルシウム、クレアチニン、及びカルシウム/クレアチニン比の24時間尿中測定値は、著しく変化しなかった。従って、的外れの効果は観察されなかった;的確なPDパラメーター、本質的には、血清リン及び1,25(OH)2Dの変化は、カルシウム及びPTHの代謝を変化させないように思われた。
・骨形成のマーカーは、特に、P1NPを著しく増加させ、骨吸収のマーカー、CTx及びNTxは、少ない程度ではありながらも増加した。これらの結果は、KRN23が骨再形成を増加させ、XLHを有する患者の骨質に改善をもたらし得ることを示す。
【0292】
骨石灰化の最大の正味産生には、XLHの治療における投与サイクルにわたって一貫して十分なレベルのリン酸塩を必要とする。本発明は、総結合FGF23レベルの変化がKRN23による治療中に発生し、適切なKRN23薬物PKとまだ残っているPD効果にもかかわらず、各月1回サイクルの後半中に治療効果が減退する典型的なパターンを持つ複雑なPK/PD関係をもたらすという観察に部分的に基づいている。
【0293】
FGF23産生は、先行データによって予測し得ない方法でPK/PDの管理の恩恵を受けることができる抗FGF23作用物質による治療中に増加する。KRN23モノクローナル抗体薬物PKデータは、月1回の注射が適切な療法であり得ると示しているが、増加したレベルの血漿結合FGF23レベルは、血清リン促進活性の低下をもたらし得る。血清リンプールは、全身リン酸塩のたった1%しか含まず、1カ月サイクルの後半中に降下し始めると思われ、投与サイクルの後半中に正味の骨形成活性が低下する可能性につながる。リン酸塩レベルは、リン酸塩レベルの低下をサポートするために身体で誘導された骨のリン酸塩回復のパターンが変化しているため、身体の正味のリン酸塩バランスの影響を理解するのに十分なほど減少しないかもしれない。月1回投与し、月2回の投与を使用しないことを教示するための予測されたPK予測計画にもかからわず、反復投与にわたってリン酸塩の低下が増すことと、より高い結合FGF23産生とを示すPDデータにより、抗FGF23作用物質の潜在的に最適な投与は、q2週の投与になる。これは、子供に特に有利であり得る。
【0294】
起こっている第2の変化は、投与サイクル中がリン酸再吸収の低下の可能性であり、これは、月1回投与サイクルの後半中にリン酸塩輸送体発現が少なくなったことによると思われる。輸送体発現が増加し、減少する循環パターンは、効率の低い循環産生をもたらした後、サイクルが輸送体発現を上昇させ、KRN23の落下効果中に輸送体を再び劣化させる際にNa Pi共輸送体の破壊をもたらす可能性がある。月2回のより頻繁な投与中には、FGF23のより効率的な一貫した捕捉が、FGF23の月1回の投与効果と不釣り合いな安定した輸送体発現の増加からリン酸再吸収の累積の正味の効果をもたらすであろうと予想される。2週間ごとに輸送体の破壊を引き起こさないことで、輸送体タンパク質自身のPKは、輸送体の累積効果とリン酸再吸収の不釣り合いな恩恵をもたらすかもしれない。従って、血清リンの比例するPD効果の代わりに、より頻繁な投与は、NaPi輸送体の累積を低下させることなく累積効果をもたらし、より高いリン酸塩レベルの達成が可能になるであろう。
【0295】
FGF23関連疾患を治療する既存の解決策は、月1回の投与が十分であると明確に示唆しているフェーズ1の固体PKデータに基づいたFGF23抗体(例えば、KRN23)の月1回投与であり、成人などの、特に、必要とするリン酸塩が少ない患者に効果的な用量であり得る。より高いリン酸塩を必要とする小児または患者では、結合FGF23の増加したレベル、及びリン酸塩の関連PD曲線は、月2回の投与間隔で最適に供給されるであろう。
【0296】
本発明は、月1回よりも月2回での予想外の投与効果への新たな見識である。これは、血清リンのAUC、かつ、骨治療の恩恵の可能性によって決定された月1回の投与効果に不釣り合いである同じ月1回の総用量に対してリン酸塩レベルが増加し、かつ、安定的であることを通じて現れるであろう。
【0297】
実施例3:KRN23によるFGF23の阻害が、骨再形成の増加をもたらす
本発明の発明者らは、成人及び子供においてXLHにより引き起こされた骨軟化症の病理学的変化の治療及び回復において、FGF23(例えば、KRN23)に対する抗体によるFGF23の阻害の特異的効果を観察した。KRN23による治療は、以前から知られるように、リン酸塩ホメオスタシスを矯正する。新規及び予想外のことは、FGF23の阻害が、P1NP(血清1型プロコラーゲン/N末端)及びオステオカルシンなどの骨形成のマーカーの増加や、骨再吸収CTX(カルボキシ末端コラーゲン架橋)のマーカーの増加も観察されると共に骨再形成の著しい増加を活性化している。以下の表23~26を参照されたい。低い骨再形成は、骨軟化症の組織病理学的変化の特徴、特に、石灰化した骨が無いことによる破骨細胞活性が欠けていることを説明する長い「石灰化」遅延時間や類骨及び類骨壁厚の増加を反映している。FGF23の遮断により、腎リン酸再吸収、1,25ビタミンD産生、及び増加した骨石灰化を変化させることが予測されるが、臨床データは、骨再形成(形成及び再吸収)の増加が、骨軟化症に拮抗し、骨構造、骨密度を回復させ、湾曲を防ぎながら骨質を改善し、骨格の正常な形成を可能にすることも示唆している。
【0298】
骨形成及び再吸収の増加は、XLHの基礎となる骨病理学、特に、骨軟化症が治癒され得る新規の追加の機序である。本発明は、骨形成及び再吸収のマーカーの測定が、骨の再生や、石灰化の低い骨の正常な層板に石灰化した骨への置換を監視する方法でもあり得ることも前提としている。これは能動的に管理され得るため、KRN23または同様のFGF23作用物質の投与は、骨治癒に関連するスコアとして骨吸収及び合成マーカーに基づいて調節してもよい。
【0299】
XLHの以前の治療は、経口リン酸塩及びカルシトリオールまたは他のビタミンD類似体による補充療法からなり、この治療は、XLH疾病のいくつかの側面を改善し得るが、骨再形成を増加させないため、この患者において骨軟化症を改善し得るのかどうか不明である。骨軟化症は、XLHを有する成人患者が、骨疼痛、微小及び疲労骨折、骨折治癒の遅延を有する理由である。XLHモデルマウスにFGF23抗体を投与する以前の研究での生検データは、骨軟化症から正常な骨への変化、及び骨再形成の組織形態計測の変化を示している。Aonoら(Therapeutic Effects of Anti-FGF23 Antibodies in Hypophosphatemic Rickets/Osteomalacia. J Bone Miner Res. 2009)を参照されたい。
【0300】
本発明は、これらの臨床的な合併症を改善するために、骨再形成を活性化する必要があることを示している。この効果は、現在の標準治療では決して観察されていない。従って、本発明は、骨再形成を活性化することによって、XLHなどの異常なFGF23シグナル伝達による疾患を治療するための新規方法を提供する。例えば、
図16によれば、XLH患者において、増加したFGF23ポリペプチドは、血清リン及び1,25(OH)
2Dの減少をもたらし、骨石灰化の減少(骨軟化症)をもたらす。骨軟化症は、次に、破骨細胞活性及び骨再形成の減少をもたらす。その結果、患者は、骨奇形、骨折、及び遅い骨折治癒などの弱い骨質や疼痛を経験する。KRN23などの抗FGF23リガンドの投与は、FGF23シグナル伝達を阻害し、血清リン及び1,25(OH)
2Dを正常化するため、骨石灰化の増加と骨軟化症の矯正をもたらす。その結果、破骨細胞及び骨芽細胞活性及び骨再形成は、上方調節され、質の悪い骨を正常な層板骨と置換し、最終的には、骨
の健康の回復及び骨折治癒をもたらす。
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
実施例4:X染色体連鎖低リン血症(XLH)を有する小児患者における抗FGF23抗体、KRN23の薬力学及び安全性を評価するための無作為化、非盲検、用量設定、フェーズ2治験
【0306】
論理的根拠:
X染色体連鎖低リン血症(XLH)は、腎リン酸消耗の疾患であり、くる病の最も一般的な遺伝性形態である。XLH患者において、高循環レベルの線維芽細胞成長因子23(FGF23)は、腎臓の正常なリン酸再吸収を損ねる。低リン酸血症及び低正常循環1,25-ジヒドロキシビタミンD(1,25(OH)2D)レベルは、典型的な生化学的所見である。低血清リンレベルは、骨の低石灰化や、くる病、下肢の弯曲、及び小人症を含む関連異常をもたらす。現在の標準治療(SOC)療法は、適切な用量の活性ビタミンD代謝産物と組み合わせた経口リン酸塩の複数回毎日投与からなる。SOC療法は、高い法令遵守及びモニタリングと共に行うと、骨疾患を改善できるが、骨異常及び成長異常に完全に対応しないことが多く、疾病の病態生理学的原因:高FGF23レベルによって誘導された腎リン酸消耗を標的にもしない。SOC療法は、腎石灰沈着症、高カルシウム尿症、及び副甲状腺機能亢進症などの潜在的なリスクを回避するために慎重なモニタリングも必要とする。より効果的で、安全かつ便利な治療が明確に必要とされている。
【0307】
KRN23は、結合してFGF23活性を阻害することによって正常なリン酸塩ホメオスタシスを回復させてXLHを治療するために開発されている組換え完全ヒトモノクローナルIgG1抗体である。3つの臨床試験を、XLHを有する成人に実施している。フェーズ1治験は、KRN23の薬物動態(PK)プロファイルを確立した。フェーズ1/2治験及び関連延長治験は、リン酸塩代謝におけるKRN23の薬力学(PD)、及びリン酸塩-カルシウム鉱物制御系の関連測定値を評価した。これらの治験からの安全性データは、最大で1.0mg/kgの単回投与及び月1回の反復投与におけるKRN23は、XLH成人被験者で耐容性良好であった。KRN23は、骨生理学、構造及び機能の改善が期待されるように、血清リンレベルを十分に増加させた。これらのデータは、XLHに関連する最も重篤な身体及び健康の症状を経験する子供においてKRN23の治療利益を評価するためにさらなる治験の開始を支持するものである。現在は、小児XLH患者において承認された治療はなく、未だ満たされない高い医療ニーズがある。
【0308】
XLHを有する成人及び子供は、同じ原因となる欠陥を有するが、異なるステージの疾患である。幼少期には、正常なリンレベルは骨形成を促進するためにより高いが、成人では、正常な範囲は、骨形成に対する需要が減少するのと同期してより低くなる。従って、プラトー状態にせずに治療効果を最大にし、血清リンレベルを正常な範囲近くにし、トラフ値を最小にするために、より少量で、より頻繁な投与が、小児低リン酸血症性患者には好ましい。このフェーズ2治験は、複数回投与で投与したKRN23のPD及び安全性、及び小児XLH患者の投与レジメンについて調べる。
【0309】
本治験は、2つの期間:16週の個別用量設定期と48週の治療期とからなる。KRN23の用量反応は、3つの初回用量レベルで評価する。月1回(Q4)及び週2回(すなわち、隔週;Q2)の投与計画についても比較する。KRN23投与は、血清リンレベルに従って、必要に応じて4週間ごとに個別に調整される。その目的は、カルシウム制御系の変化を最小にしながら、安定した血清リンレベルを標的範囲で達成することである。本治験で採取したデータは、投与戦略を確立し、XLHを有する子供においてフェーズ3臨床試験の設計及びエンドポイント選択の情報を提供する。
【0310】
目的
治験の目的は:
・安全性及びPD効果に基づいて、小児XLH患者のKRN23の用量及び投与計画を同定すること
・異所性鉱質形成リスク、心臓血管効果、及び免疫原性プロファイルを含む、XLHを有する子供を治療するためのKRN23の安全性プロファイルを確立すること
・小児XLH患者の月1回(Q4)及び週2回(Q2)投与レジメンで試験したKRN23用量のPK/PDを特徴付けること
・小児XLH患者の骨の健康のマーカーでKRN23治療のPD効果を決定すること
・骨の健康及び奇形、筋力、及び運動機能へのKRN23の臨床効果の予備評価を得ること
・小児XLH患者の疼痛、身体障害、及び生活の質を含む、患者報告アウトカムへのKRN23の効果の予備評価を得ること
【0311】
治験設計及び方法論:
本治験は、無作為化した、多施設、非盲検、用量設定、フェーズ2治験である。本治験は、XLHを有する5~12歳の思春期前の子供で実施し、合計で64週間の月1回(Q4、28日±3日)または週2回(Q2、14日±2日)の皮下(SC)注射を介して投与したKRN23のPD及び安全性を評価する。本治験は、16週の個別用量設定期と、それに続く48週の治療期とからなる。本治験は、XLHと骨疾病のX線写真の証拠とを有するおよそ30人の小児患者を登録する。被験者は、無作為化する前に、かつ治験期間を通じて経口リン酸塩及びビタミンD代謝産物療法を中断する必要がある。
【0312】
本治験では3つのコホートが存在する(n=コホート当たり10);各々は、Q4(n=5)及びQ2(n=5)投与群である。被験者は、各コホート内のQ4またはQ2投与計画に、1:1に無作為化し;無作為化は、被験者の性別で階層化する。性別バランスのレベルを維持するために、いずれかの性の20人未満の患者を本治験に登録することができる。コホートは、順次登録される。第1コホートは、最低用量(0.2mg/kg Q4及び0.1mg/kg Q2)を調べ、最初に登録される。この小児母集団における追加の予防測定として、第2コホート(0.4mg/kg Q4及び0.2mg/kg Q2)は、第1コホートの4番目の被験者が4週目の来診を完了するまで投与を開始できない。第3コホートは、最も高い初回用量(0.6mg/kg Q4及び0.3mg/kg
Q2)を投与する。
【0313】
最初の16週の用量設定期は、標的のピークPD効果を達成するのに必要なKRN23用量を同定することを目的とする。その目的は、血清リンレベルを標的範囲に維持する個別化されたKRN23用量を同定することであるが、用量レベルは、Q4レジメンの2.0mg/kg及びQ2レジメンの1.0mg/kgを超えるべきではない。本治験の標的とする空腹時血清リンの範囲は、KRN23のピークPD効果に基づいて、3.5~4.5mg/dL(1.13~1.45mmol/L)である。
【0314】
用量は、投与2週間後の(ピーク値)空腹時血清リンレベルに基づいて、必要に応じて4週間ごとに調整される。KRN23用量の用量設定スキーム(表27)は、ピークの空腹時血清リンレベルが標的範囲外であるべきであるガイドラインとして使用される。血清リンレベルは上昇しているが、用量設定期の終わりまでに許容可能な標的範囲にまだ到達していない場合、用量設定は、安全性に関する懸念がないならば、標的範囲に到達するまで治療期に継続することができる。
【0315】
【0316】
用量設定期の最後に、30人の被験者の集団は、本質的に、15人の被験者の2つの群からなり、各々は、Q4週間またはQ2週間の頻度のいずれかで、KRN23の投与を個別に最適化した。安全性の分析及びPDデータの選択について、用量設定期(16週目)の終了時に計画する。治療期の最初の24週間後(40週目)に第2分析を計画し、治療結果をベースライン(投与前)と比較する。
図17は、全体治験設計の概略図を提供する。
【0317】
被験者数:
およそ30人の小児被験者を本治験に登録する。治験から離脱するまたは治験から除外する被験者は、その都度置き換えてもよい。
【0318】
試験対象及び除外の診断及び基準:
本治験に参加する資格のある個人は、以下の基準の全てを満たさなければならない:
1)成長板が開いたものを含む5~12歳の男性または女性
2)乳房及び精巣発生(≧8歳の子供においてのみ評価した)に基づいてタナーステージ2以下
3)以下のうちの1つによって支持されたXLHの診断:
・適切なX連鎖遺伝を有する患者または直接関連する家族の一員のPHEX変異を確認
・Kainosアッセイによる血清iFGF23レベル≧30pg/mL
4)以下のものを含むXLHに関連する生化学的所見:
・血清リン≦2.8mg/dL(0.904mmol/L)*
・年齢調整された正常な範囲内の血清クレアチニン*
5)年齢及び性別の身長<25%百分率(CDC2000当たり)で定義された小人症
6)手首及び/または膝のくる病、及び/または大腿骨/脛骨の湾曲を含む、能動骨疾患のX線写真の証拠
7)歴史的成長、生化学的及び放射線データ、及び病歴を収集するための事前診療記録へのアクセスを自ら進んで提供する意思があること
8)治験の性質を説明した後、かつ、任意の研究関連の手順前に書面または口頭での同意(可能な場合)及び法的に権限のある代表者による書面によるインフォームド・コンセントを提供すること
9)治験責任医師の意見で、治験の全ての態様を完了すること、治験来診スケジュールを忠実に守ること、かつ評価を遵守することを自ら進んでできなければならない。
以下の除外基準のいずれかを満たす個人は、本治験に参加する資格がない:
1)スクリーニング来診2前の14日以内に薬理学的ビタミンD代謝産物または類似体(例えば、カルシトリオール、ドキセルカルシフェロール、及びパリカルシトール)を使用;スクリーニング期中に洗浄を行う
2)スクリーニング来診2前の7日以内に経口リン酸塩を使用;スクリーニング期中に洗浄を行う
3)スクリーニング来診1前の7日以内に水酸化アルミニウム制酸薬(例えば、Maalox(登録商標)及びMylanta(登録商標))、全身性コルチコステロイド、及びチアジドを使用
4)スクリーニング来診1前の1年以内に成長ホルモンを使用
5)スクリーニング来診1前の2年間に6カ月またはそれ以上にわたってビスホスホネートを使用
6)以下のスケールに基づいて、腎臓超音波検査グレード≧3の腎石灰沈着症の存在:
0=正常
1=延髄錐体のまわりにかすかな高エコー源性隔壁
2=錐体全体をぼんやりと満たすエコーを有するより強いエコー源性隔壁
3=錐体を通じて均一に強いエコー
4=石形成:錐体の先端でのエコーの孤立病巣
7)臨床試験期内に、ステープル、8つのプレートまたは骨切り術を含む、計画または推奨された整形外科手術
8)年齢調整された正常限界外の血清カルシウムレベルと定義された低カルシウム血症または高カルシウム血症*
9)治験責任医師によって判断された三次性副甲状腺機能亢進症の証拠
10)スクリーニング来診1前の2カ月以内にPTH(例えば、Sensipar(登録商標)、シナカルセット)を抑制する薬物を使用
11)治験責任医師の視点から、被験者の治療の遵守を低くするまたは治験を完了させないリスクが高い任意の状態の存在または履歴
12)治験参加に干渉するかまたは安全性に影響を及ぼす併発疾患または状態の存在
13)ヒト免疫不全ウイルス抗体、B型肝炎表面抗原、及び/またはC型肝炎抗体に対して陽性
14)反復感染歴または感染しやすい傾向、または公知の免疫不全歴または免疫不全になりやい傾向
15)スクリーニング来診1前の90日以内に治療モノクローナル抗体を使用、または、任意のモノクローナル抗体に対するアレルギーまたはアナフィラキシー反応歴
16)治験責任医師の判断において、被験者の副作用のリスクを高くするKRN23賦形剤に対しる任意の過敏症の存在または過敏症歴
17)スクリーニング前の30日以内に任意の治験薬または治験医療機器を使用、または、全ての予定された治験評価の完了前に任意の治験薬が必要である。
*スクリーニング来診2で採取した一晩空腹時(最低8時間)値に基づいて決定される基準
【0319】
治験薬、用量、及び投与方式:KRN23は、10mg/mLまたは30mg/mLの
濃度で1mLのKRN23を含有する単回使用5mLバイアル中の滅菌した、透明の、無色で、保存料無しの溶液である。被験者は、SC注射を介して腹部、上腕及び大腿部に治験薬を受け;注射部位は、注射ごとに回転させる。被験者は、最低用量群から始めたコホートに連続して登録され、投与計画(Q2またはQ4)(
図2.1)に無作為化した後、3.5~4.5mg/dL(1.13~1.45mmol/L)の範囲の標的一晩空腹時血清リンを達成するように個別に用量設定する。このプロトコルで許された最大用量は、Q4レジメンで2.0mg/kg、Q2レジメンで1.0mg/kgである。
【0320】
対照療法、用量及び投与方式:治験設計は非盲検で;被験者全員が治験薬を受ける。プラセボまたは対照療法は本治験で投与しない。
【0321】
治療期:本治験は、2つの期間:16週の個別用量設定期と、それに続く48週の治療期とからなる。本治験において計画した治療期間は、64週間である。
【0322】
評価の基準:
【0323】
薬力学*:
・血清リン
・血清1,25(OH)2D
・尿中リン
・リン酸再吸収:リン酸塩の糸球体濾過量に対する腎細管最大再吸収率(TmP/GFR)、及びリン酸の腎尿細管再吸収(TRP)
・骨バイオマーカー:1型プロコラーゲンのN-プロペプチド(P1NP)、1型コラーゲンのカルボキシ末端架橋テロペプチド(CTx)、及びアルカリホスファターゼ(ALP)
【0324】
血液及び尿は、投与計画当たり、8時間の最小一晩空腹時間後と、薬剤投与(該当する場合)前とに採取すべきである。
【0325】
有効性-骨の健康:
・成長:身長、座高、腕の長さ、及び脚の長さを測定する。身長に基づいた成長率は、病歴データが入手可能であれば、治療前及び治療後に得られる。
・くる病及び骨端(成長板)異常の重篤度:疾患特異的な定性的なX線画像所見の全般的変化(RGI-C)スコアリングシステム及び栄養性くる病のために開発した修正バージョンスケールを用いて、両側性の後前方向(PA)手/手首及び前後方向(AP)膝X線写真のセントラルリーディング
・顆頭間距離及び果間距離で評価された下肢変形。直立した長下肢の画像で観察された下肢変形及び湾曲に関する特定の異常についても、定性的なRGI-Cスコアリングシステムを用いて評価する
・前腕及び脛骨のXtremeCTで評価した(機器の利用可能性に応じて選択部位で行った)皮質及び骨梁小室での骨鉱物の密度または含有量
【0326】
有効性-臨床アウトカム:
・歩行能力:6分歩行試験(6MWT)の総距離及び予測正常パーセント
・粗大運動機能:走行速度、敏捷性、及び強度を評価するための、運動神経向上のBruininks-Oseretsky試験-第2版(BOT-2)サブテスト
・筋力:以下の筋肉群:胆大把持、膝屈曲、膝伸展、股関節屈筋、股関節伸展、及び股関節外転筋における両側性のハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)
・機能的障害及び疼痛:北米小児整形外科学会小児のアウトカムデータ収集器(POSNA PODCI)
・健康関連の生活の質:子供の健康調査用のSF-10(SF-10)
【0327】
薬物動態:
・血清KRN23(投与前レベル)
【0328】
安全性評価:安全性は、有害事象(AE)及び重篤な有害事象(SAE)の発生、頻度、及び重症度によって評価され、例えば、ベースラインから予定された時点までの臨床的に有意な変化である。一般的安全性の変数としては、
・バイタルサイン及び体重
・区間病歴及び身体検査
・GFR
・対象となる追加のKRN23/XLH生化学的パラメーター(血清25(OH)D、アミラーゼ、クレアチニン、及びiFGF23[合計、結合、及び非結合])を含む、化学、血液学、及び尿検査
・抗KRN23抗体試験及び用量制限毒性
・併用薬が挙げられる。
【0329】
異所性石灰化安全性評価としては、
・腎臓超音波
・ECHO及びECG
・血清カルシウム、リン及びiPTH;尿中カルシウム及びクレアチニンが挙げられる。
【0330】
データモニタリング委員会(DMC):代謝性骨疾患及び子供への臨床試験の実施における専門家を含む独立したDMCは、トライアルを通じて定期的に被験者の安全性を監視するために、アドバイザーの立場として行動する。DMCは、四半期データレビューの会合にも参加する。
【0331】
統計方法:統計評価の完全な説明については、統計解析計画書で提供される。
【0332】
試料サイズ:コホート当たり10の試料サイズは、0.05の両側有意水準で標準偏差を0.7mg/dL以下と想定すると、少なくとも0.8mg/dLのベースラインからの血清リン増加を検出するために少なくとも90%の検出力を提供する。加えて、30人の被験者(Q4またはQ2レジメン当たり15人の被験者)の総試料サイズは、0.4の標準偏差と0.05の両側有意水準を想定すると、2つの投与計画間の0.5mg/dLの差を検出するために少なくとも90%の検出力を提供する。リン酸塩及び鉱物制御は、KRN23によるこれまでの臨床経験に基づいて適切に検出される。骨の健康に対する検出力の程度は、未知の予想される作用程度に依る。しかしながら、適切なリン酸塩制御の検出力は、経口リン酸塩置換療法により以前の経験に基づいて、骨の健康が改善する可能性をもたらすべきである。
【0333】
薬力学的及び有効性分析:2つの投与計画を比較するPD及び有効性の分析は、ベースラインとして0週目とともに40週目及び64週目に行う。加えて、PD及び安全性データは、各コホートが用量設定期(16週目)を完了した後に、コホートごと、及びコホート内の投与レジメンごとにまとめる。記述統計学を使用して、データをまとめる。連続変数では、平均値、標準誤差、中央値、最小値、及び最大値を提供する。離散データでは、頻度及びパーセント分布を提供する。経時変化、及び有効性とPD変数との関連性をまとめ、評価する。
【0334】
安全性分析:任意の量の治験薬を受ける被験者全員が安全性分析に含まれる。各コホー
ト及びコホート内の各投与レジメンの安全性を評価する。
【0335】
実施例1の複数回投与の用量漸増フェーズ1/2治験は、XLH成人被験者で行った。KRN23は、28日に1回投与した4回の被験者内漸増用量(0.05mg/kg→0.1mg/kg→0.3mg/kg→0.6mg/kg)のSC投与後に耐容性良好であった。標的範囲(>2.5~≦3.5mg/dL)の血清リンレベルを有するKRN23で治療した被験者の割合は、KRN23用量レベルとともに増加したが、任意の時点で、任意の被験者で正常の上限(4.5mg/dL)を超えなかった。血清KRN23濃度と血清リンレベルとの直接的なPK-PD関係は、本治験で確認された。実施例2の関連延長治験において、月1回投与したKRN23の最大で1.0mg/kgの用量は、48週の期間にわたってXLH成人被験者で耐容性良好であった。
【0336】
XLHを有する成人及び子供は、同じ原因となる欠陥を有するが、異なるステージの疾患である。幼少期には、正常なリンレベルは骨形成を促進するためにより高いが、成人では、正常な範囲は、骨形成に対する需要が減少するのと同期してより低くなる。XLHの治療の成功には、血清リンレベルの持続的な増加が必要である(Carpenterら2011)。血清リンレベルを正常な範囲近くに維持することによって治療効果を最大にし、かつ、トラフ値を最小にするために、より少量で、より頻繁な投与が、小児低リン酸血症性患者には好ましい。従って、本治験の重要な目的は、小児XLH患者の両方の最適なKRN23投与計画を決定し、高カルシウム尿症、高カルシウム血症、及び副甲状腺機能亢進症を回避しながら、くる病の改善及び関連臨床的帰結を可能にする許容可能な用量を同定することである。
【0337】
本治験の用量設定目的は、血清リンレベルを標的範囲で維持する個別化されたKRN23用量を同定することである。用量設定は、3つの別個の投与コホートで漸進的に行われ、各々は、異なる初回用量レベルと投与レジメン(Q4またはQ2)を評価する。3つ全てのコホートの開始用量は、成人XLHで治験した最も高い用量(1mg/kgを月1回投与)を下回る。用量漸増は、血清リンのPD効果、安全性、及び忍容性に基づいて個別に用量設定される。投与は、段階的に開始し、かつ用量設定し、16週間にわたって制御し、年齢調整された正常の上限を下回る標的範囲で血清リンレベルを達成する。
【0338】
成長している子供におけるリンの必要量は成人よりも多いため、設計は、用量レベルをQ4レジメンでは2.0mg/kgに、Q2レジメンでは1.0mg/kgに増加させる提案を提供する。成人XLH患者におけるKRN23の以前の研究は、任意の「的外れ」効果について示していなかったため、安全性プロファイルは、PD効果、本質的に、増加した血清リンにのみ関連していると予測される。血清リンの標的範囲は、正常の上限をはるかに下回って定義されるため、用量関連の安全性の問題の可能性は低い。これらの以前の研究からのリン酸塩制御の有効性データは、リン酸塩代謝が明確に異なる小児患者の場合であっても、またはそうでなくても0.6~1.0mg/kgで有効なプラトー状態が存在することも示唆している。従って、成人データに基づいて予測された用量が、許容された安全範囲内で許容可能な血清リン増加を達成するのに不十分である場合には、プロトコルは、徐々により高い用量に適応するような柔軟性を制限することができる。
【0339】
本治験の標的の空腹時血清リン範囲は、投与後およそ14日目であるKRN23のピークPD効果に基づいて、3.5~4.5mg/dL(1.13~1.45mmol/L)である。標的範囲は、子供における正常値の低~中の範囲を表す。このレベルは、異所性鉱質形成のリスクを最小限にしながら、くる病及び他の骨欠陥を改善するのに十分である。用量は、以下に詳述する用量設定スキームに従って、投与2週間後の(ピーク値)空腹時血清リンレベルに基づいて、必要に応じて4週間ごとに調整される。用量設定スキーム(表28)は、ピークの空腹時血清リンレベルが標的範囲外であるべきである用量調節のガイドラインとして使用される。血清リンレベルは上昇しているが、用量設定期の終わりまでに許容可能な標的範囲にまだ到達していない場合、用量設定は、安全性に関する懸念がないならば、標的範囲に到達するまで治療期に継続することができる。
【0340】
【0341】
本治験において計画した治療期間は、64週間である。本治験は、2つの期間:16週の個別用量設定期と、それに続く48週の治療期とからなる。
【0342】
実施例5:小児フェーズ2治験からの予備結果
この実施例は、KRN23のQ2W投与が、血清リンレベルの安定かつ着実な増加をもたらすが、Q4W投与計画が、より大きな血清リンのピーク値及びトラフ値を生むことを示す。
【0343】
この実施例では、Q2W治療群に、3つのコホート:(1)0.1mg/kgの初回用量、(2)0.2mg/kgの初回用量、及び(3)0.3mg/kgの初回用量で、18人のXLH患者がいた。Q4W治療群に、3つのコホート:(1)0.2mg/kgの初回用量、(2)0.4mg/kgの初回用量、及び(3)0.6mg/kgの初回用量で、18人の患者もいた。患者は、5~12歳の年齢の範囲であり、平均年齢は8.2歳であった。
【0344】
実施例4で示したように、本治験において計画した治療期間は、64週間であり、2つの期間:16週の個別用量設定期と、それに続く48週の治療期とからなる。16週間の治療にわたるQ2W治療群の血清リンレベルを
図18に示し、これは、KRN23による16週間の治療中の血清リンレベルの比較的着実かつ安定な増加を示す。対照的に、Q4W治療群の血清リンレベルは、
図19に示すように、より大きなピーク値及びトラフ値を示した。全てのコホートにわたるQ2W治療群対Q4W治療群の血清リンレベルの並列比較を
図20に示す。24週間を通じたQ2W及びQ4W治療群の血清リンレベルの数字で示した例示を以下の表29に示す。
【0345】
【0346】
血清リンレベルによる観察と同様に、Q2W治療群のTmP/GFRレベルも、Q4W治療群と比較してより着実かつより安定したペースで増加した。16週間の治療を通じたQ2W治療群のTmP/GFRレベルを
図21に示すが、Q4W治療群のTmP/GFRレベルを
図22に示す。全てのコホートにわたるQ2W治療群対Q4W治療群のTmP/GFRレベルの並列比較を
図23に示す。24週間を通じたQ2W及びQ4W治療群のTmP/GFRレベルの数字で示した例示を以下の表30に示す。
【0347】
【0348】
1,25(OH)2Dのレベルは、血清リンと同様のプロファイルに従った。28週間を通じたQ2W及びQ4W治療群の1,25(OH)2Dレベルの数字で示した例示を以下の表31に示す。
【0349】
【0350】
骨バイオマーカー血清アルカリホスファターゼ(ALP)のレベルも測定し、
図24に示すように、両方の治療レジメンについて経時的な減少を示した。
【0351】
安全性の観点から、重篤な有害事象は、16週間の治療を通じて観察されず、中断につながる有害事象はなかった。これは、KRN23がQ2W及びQ4W投与計画の最初の16週間を通じて安全かつ耐容性良好であったことを示唆している。成人で観察されたものと同様に、血清及び尿中カルシウムレベルに観察可能な変化は存在せず、平均iPTHの変化は最小であった。最後に、FGF23レベルは、以下の表32に示すように、KRN23治療にわたって増加が見られた。
【0352】
【0353】
結論として、血清リンレベルの用量反応は、成人及び小児患者で同様であるように思われ、Q2Wレジメンでのはるかに着実かつより安定的な増加と比較して、Q4Wレジメンで顕著なピーク値及びトラフ値が観察された。この実施例での結果は、1mg/kgのKRN23治療薬に応答しておよそ1mg/dLの血清リンレベルの増加をさらに示している。さらに、TmP/GFR及び1,25(OH)2Dレベルは、一般的に、Q2W及びQ4W投与に応答した血清リンレベルと同じプロファイルに従い、Q2W投与治療群において経時的により安定かつ着実に増加した。
【0354】
本明細書で引用されたあらゆる特許、特許出願、及び刊行物の特許請求の範囲、図面、及び/または添付図面を含む開示は、それら全体を参照することで本明細書に組み込まれる。
【0355】
他に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野において当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で記載されるものと同様であるかまたは等しい任意の方法及び材料を本発明の実施において使用できるが、好ましい方法及び材料を本明細書に記載する。引用した全ての刊行物、特許、及び特許刊行物は、全ての目的において、それら全体を参照し、本明細書に組み込まれる。
【0356】
本明細書において考察される出版物は、本出願の出願日の前のその開示に関してのみ提供する。本明細書に記載するもののいずれも、以前の発明によりこのような出版物に先行するものとは本発明が見なされないことを受け入れるものとして解釈されるべきではない。
【0357】
本発明は、その特定の実施態様と関連付けて記載されているが、さらなる改変が可能であることを理解されたい。本出願は、一般に、本発明の原理に従って本発明の任意の改変、使用、または適合を包含するように意図され、それらには本発明が属する技術分野で公知のまたは慣例の実施の範囲内であり、そして添付の請求の範囲に従い本明細書中前記の本質的な特徴に適用され得るような本発明の開示からの逸脱が含まれる。
【配列表】