(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】SGLT-2阻害剤とアンジオテンシン受容体拮抗薬を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4178 20060101AFI20220105BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20220105BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220105BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220105BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220105BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220105BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61K31/4178
A61K31/351
A61P9/12
A61P43/00 121
A61K9/20
A61P3/10
A61P43/00 111
A61K45/06
(21)【出願番号】P 2020517135
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(86)【国際出願番号】 KR2018010110
(87)【国際公開番号】W WO2019059557
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-03-26
(31)【優先権主張番号】10-2017-0120311
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0075025
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520095603
【氏名又は名称】オートテリック バイオ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】キム、タエ-フン
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/034842(WO,A1)
【文献】Cardiovasc Diabetol.,15,142,p.1-13
【文献】Arq Bras Cardiol.,2008年,91(3),p.168-176
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SGLT-2阻害剤
であるダパグリフロジンまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物、及びアンジオテンシン受容体拮抗薬
であるオルメサルタンまたはその薬学的に許容される塩またはその薬学的に許容されるエステルを含む
、高血圧治療剤である医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物は、高血圧および糖尿病治療剤であることを特徴とする第
1項記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物は、高血圧の患者又は高血圧及び糖尿病の両方を持っている患者に投与されることを特徴とする第
1項記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物は、固形製剤であることを特徴とする第
1項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SGLT-2阻害剤のような糖尿病治療薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬のような高血圧治療薬を含む医薬組成物に関するものである。本発明によれば、糖尿病治療薬と高血圧治療薬を一つの医薬組成物にして、血圧降下効果を向上させ、患者の服薬コンプライアンスを高めることができる。
【背景技術】
【0002】
現在、高血圧治療薬としては、利尿剤、交感神経抑制薬、カルシウムチャンネル封鎖剤(CCB:calcium channel blocker)、アンジオテンシン変換酵素(ACE:angiotensin converting enzyme)阻害剤、アンジオテンシン受容体封鎖剤(ARB:angiotensin receptor blocker)、レーニン阻害剤、血管拡張剤などが使用されている。
【0003】
これらの高血圧治療薬の中で、アンジオテンシン受容体封鎖剤(以下、「ARB」と称する)は、血圧降下効果だけでなく、心室機能の保全、繊維化防止や予防などの効果があるので、高血圧治療薬としての使用が徐々に拡大している。ARB薬にはロサルタン(losartan)が開発された後に、バルサルタン(valsartan)、カンデサルタン(candesartan)、イルベサルタン(irbesartan)、テルミサルタン(telmisartan)、エプロサルタン(eprosartan)、オルメサルタン(olmesartan)などが開発されて、血圧降下剤として使用されている。
【0004】
一方、代謝異常疾患である糖尿病の治療薬としては、インシュリン注射のほか、経口用血糖降下剤が使用され、AMP-依存性タンパク質キナーゼ(AMPK:AMP-activated protein kinase)活性化剤(例えば、メトホルミンなど)、DPP(dipeptidyl peptidase)-4阻害剤(例えば、シタグリプチン、リナグリプチン、サキサグリプチン、ビルダグリプチンなど)、SGLT(sodium-dependent glucose cotransporter)-2阻害剤(例えば、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジンなど)などの薬物が経口用血糖降下剤として使用されている。
しかし、SGLT-2阻害剤またはSGLT-2阻害剤とARB薬物の併用投与による血圧降下効果については、報告されたところがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、糖尿病治療薬であるSGLT-2阻害剤および高血圧治療剤であるARBを併用投与することにより、高血圧の治療効果を向上させ、患者の服薬コンプライアンスを高めるためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本発明の医薬組成物は、糖尿病治療薬であるSGLT-2阻害剤と高血圧治療薬であるARBを含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、SGLT-2阻害剤とARBが互いに相乗作用をして、血圧降下効果を増大させ、患者の服薬コンプライアンスを向上させる。
糖尿病と高血圧は患者に一緒に現れる場合が多く、また、高血圧の患者には、高血圧治療剤としてお互いに異なる機序の高血圧治療薬を併用投与する場合が多い。これにより、高血圧患者や高血圧や糖尿病を両方とも持っている患者には服用すべき薬剤が多いので、服薬コンプライアンスの問題が発生することになる。
特に、高血圧または糖尿病患者は、高血圧治療薬および/または糖尿病治療薬を長期間にわたって継続的に服用しなければならないので、服用すべき薬剤が多くて生じる服薬コンプライアンスの問題は、高血圧や糖尿病の患者には真剣に検討すべき要素である。
本発明では、糖尿病治療薬と高血圧治療薬を一つの組成物にして、血圧降下効果を現すようにすることにより、高血圧患者や高血圧と糖尿病を一緒に持っている患者の服薬コンプライアンスを大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実験例1で、さまざまな種類のARB薬を単独で投与した群及び対照群での測定血圧をグラフに示したものである。
【
図2】
図2は、実験例1で、さまざまな種類のARB薬とSGLT-2阻害剤の薬物を併用投与した群および対照群での測定血圧をグラフに示したものである。
【
図3】
図3は、実験例1の各実験群からの血圧降下の結果をグラフで示したものである。
【
図4】
図4は、実験例2の各実験群からの収縮期血圧降下の結果をグラフで示したものである。
【
図5】
図5は、実験例2の各実験群からの拡張期血圧降下の結果をグラフで示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、糖尿病治療薬であるSGLT-2阻害剤および高血圧治療剤であるアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を有効成分として含む医薬組成物に関するものである。
本発明でSGLT-2阻害剤としてはダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジンなどを使用することができ、この中でダパグリフロジンを使用することが望ましい。
本発明において、ARBとしてはロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、テルミサルタン、エプロサルタン、オルメサルタンなどが使用されることができ、この中でオルメサルタンを使用することが望ましい。
【0010】
本発明の医薬組成物が含有することができる糖尿病治療薬と高血圧治療剤は、その活性を現す化合物の遊離塩基形態、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物の形態またはその薬学的に許容されるエステルの形で医薬組成物に含まれることができる。
例えば、本発明のSGLT-2阻害剤としてダパグリフロジンまたはその薬学的に許容される塩または溶媒和物が使用できることを通常の技術者は、理解することができる。また、例えば、高血圧治療薬としてオルメサルタンまたはその薬学的に許容される塩またはその薬学的に許容されるエステル(例えば、オルメサルタンメドキソミル、オルメサルタンシレキセチル(cilexetil)など)が使用できることを通常の技術者は、理解することができる。
【0011】
本発明に係る医薬組成物は、実施例で確認されているように、血圧降下効果を上昇させる効果がある。したがって、本発明の医薬組成物は、高血圧治療薬として有用に使用することができる。
特に、SGLT-2阻害剤は、本来、糖尿病の治療のために使用されているので、本発明の医薬組成物は、高血圧の治療だけでなく、糖尿病の治療にも効果がある。したがって、本発明の医薬組成物は、高血圧および糖尿病を一緒に治療することができ、したがって、本発明の医薬組成物は、高血圧の患者だけでなく、高血圧や糖尿病の両方を持っている患者に有用に投与されることができる。
【0012】
一般的に、糖尿病や高血圧は患者に一緒に現れる場合が多く、また、高血圧の患者には、高血圧治療剤としてお互いに異なる機序の高血圧治療薬を併用投与する場合が多い。これにより、高血圧患者や高血圧と糖尿病の両方を持っている患者には服用すべき薬剤が多いので、服薬コンプライアンスの問題が発生することになる。また、高血圧や糖尿病患者は、高血圧治療薬および/または糖尿病治療薬を長期間にわたって継続的に服用しなければならないので、服用すべき薬剤が多くて生じる服薬コンプライアンスの問題は、高血圧や糖尿病の患者には真剣に検討すべき要素である。
本発明では、糖尿病治療薬と高血圧治療薬を一つの組成物にして、血圧降下効果を示すようにすることにより、高血圧患者や高血圧と糖尿病を一緒に持っている患者の服薬コンプライアンスを大幅に向上させることができる。
【0013】
本発明の医薬組成物は、様々な形態の経口剤形に製剤化することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、液剤、顆粒剤、散剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤などの固形製剤または液状製剤などの様々な経口形態に製剤化することができ、好ましくは錠剤に製剤化することができる。
本発明の医薬組成物は、様々な薬物放出プロファイルを提供することができるように、遅延放出型製剤や腸溶性製剤として製剤化することができ、単層錠剤や、2階以上の多層錠、有核錠などの様々な形態に製剤化することができる。
【0014】
本発明に係る錠剤形態の医薬組成物は、通常使用される添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤などを使用して錠剤に打錠することができる。使用可能な添加剤としては、例えば、賦形剤(希釈剤)としては、乳糖、デンプン、白糖、マンニトール、ソルビトール、無機塩、結晶セルロースなどが使用されることができる。結合剤としては、例えば、白糖、グルコース、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アラビアゴム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが使用されることができる。崩壊剤としては、例えば、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、ポリビニルピロリドンなどが使用されることができる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルクなどが使用されることができる。
【0015】
錠剤の製造の時には、製剤学の分野で一般的に使用される方法、例えば、直接粉末打錠法、湿式顆粒圧縮法、乾式顆粒圧縮法などの方法で、通常の技術者が容易に製造することができる。
本発明の各活性成分の投与量は、それぞれの活性成分の公知の投与量で決定されることができる。しかし、本発明のふたつの活性成分が互いに相乗効果を現すことを考慮すると、それぞれの投与量は、単独で投与される時よりも減ることができる。
本発明の組成物は、例えば、成人患者に対して1日にSGLT-2阻害剤を0.1~200mg投与し、ARB薬物は、1~200mg投与するのに適合するように製剤化することができる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものだけであり、本発明の思想や保護範囲が実施例により限定されるものではない。
【0017】
実施例
実験例1。薬物による2週間の血圧降下効果を確認
イ。実験方法
実験動物として、高血圧疾患モデルであるSHR(Spontaneously Hypertensive Rat)先天性高血圧ラット10週齢を使用した。 SHRラットは、血圧が正常であるウィスター京都ラット(Wistar Kyoto Rat:WKY rat)から分離された系統であって、どのような人為的処置もなしで老化し、高血圧が自然に発症する系統である。SHR先天性高血圧ラットは、収縮期血圧が約200mmHg以上発生する人間の一次性高血圧(本態性高血圧)の最適な動物モデルである。
実験動物の血圧測定は、非侵襲性の血圧測定装置(NIBP:non-invasive blood pressure)であるCODA-6装置(Kent Scientific Corp.)を用いて測定した。高血圧ラットを固定枠に入れ、15分間安定化させた後、6回血圧を測定し、その平均値を血圧測定値とした。本実験の前に、各実験動物に対して尾からの血圧を測定し、収縮期血圧が190mmHg以上の高血圧ラットだけを本実験に使用した。
【0018】
投与する薬剤の種類別に、実験群は総7群にし、各群当たりラット5匹を無作為に割り付けた。各薬物投与群は、以下の通りである。
(1)薬物を投与していない対照群
(2)オルメサルタンメドキソミル1mg/kg/dayの単独投与群
(3)バルサルタン4mg/kg/dayの単独投与群
(4)テルミサルタン4mg/kg/dayの単独投与群
(5)オルメサルタンメドキソミル1mg/kg/day + ダパグリフロジン1mg/kg/dayの混合投与群
(6)バルサルタン4mg/kg/day + ダパグリフロジン1mg/kg/dayの混合投与群
(7)テルミサルタン4mg/kg/day + ダパグリフロジン1mg/kgの混合投与群
(*本実施例で、実際にはダパグリフロジン1mgに相当するダパグリフロジンプロピレングリコール水和物を投与する)
【0019】
薬物投与は、毎日午前の同じ時間に、各薬剤の所定の容量に応じて1日1回ラットに経口投与した。抗高血圧治療薬の投与量は、人に使用する常用量がお互いに異なる点を考慮して、各薬物に応じて異なる容量を投与した。
薬物は、1日1回2週(14日)の間反復投与し、血圧測定は毎日薬物投与後2時間経過時に測定した。
【0020】
ロ。血圧測定の結果
高血圧治療薬の単独投与群に対して薬物投与前と、高血圧治療薬を単独投与した後3日、7日、14日目の血圧を6回測定して平均値を出して、各群ごとに5匹の平均値を算出し、
図1に示した。
また、高血圧治療薬とダパグリフロジンを併用投与した群に対して薬物投与前、併用投与した後3日、7日、14日目の血圧を6回測定して平均値を出して、各群ごとに5匹の平均値を算出し、
図2に示した。
図3は、各実験群で薬物投与14日目に血圧を測定し、これを初期血圧と対比して、血圧降下の結果を図示したものである。
【0021】
図1に示すように、薬物を投与していない対照群(Cont)は、血圧降下効果がほとんどないのに対し、高血圧治療薬の単独投与群では、血圧降下の結果が出た。
図2に示すように、ダパグリフロジンと高血圧治療薬を併用投与した場合には、時間の経過に応じて、高血圧治療薬の単独投与群より血圧が全体的にもっと下降したことが分かった。
つまり、オルメサルタンメドキソミル、バルサルタン及びテルミサルタンを単独で14日間投与する場合には、薬物投与前に比べて投与後14日目に、それぞれ39mmHg、30mmHg及び35mmHgの血圧降下効果があったが、オルメサルタンメドキソミル、バルサルタン及びテルミサルタンをダパグリフロジンとともに14日間投与した場合には、薬物投与前に比べて投与後14日目に、それぞれ50mmHg、37mmHg及び42mmHgの顕著な血圧降下効果を現した。
下記の表1は、各群の投与直前の血圧および投与後14日目の収縮期血圧の測定値を示したものである。
【0022】
【0023】
図3は、14日間の薬物投与後の血圧測定値を薬物投与直前の初期血圧と対比して、血圧降下効果を各群別に示したものである。比較の結果、ARB薬物を単独で投与したときよりもダパグリフロジンとともに投与した場合に、血圧降下効果がさらに大きくなったことが分かった。
特に、オルメサルタンメドキソミルとダパグリフロジンを併用投与した場合には、同一機序の他の高血圧治療薬(すなわち、バルサルタン、テルミサルタン)とダパグリフロジンを併用投与した場合と対比時、より著しく血圧降下効果が増加したことが分かった。
【0024】
つまり、経口投与可能な高血圧治療薬であるARB薬物と糖尿病治療薬であるSGLT-2阻害剤を併用投与した場合、ARBを単独で投与した場合に比べて、血圧降下効果が大きい。特に、ARB薬物の中でもオルメサルタンメドキソミルを経口投与可能な糖尿病治療薬であるダパグリフロジンと併用投与したとき、高血圧の治療において、より大きな血圧降下効果を現すことができる。
したがって、高血圧や糖尿病を同時に持っている患者に同時に2つの薬物を組み合わせて、配合剤として投与する場合には、糖尿病の治療と高血圧の治療が同時に可能なだけでなく、高血圧の治療効果も大幅に増加する。
また、患者は、他の高血圧治療薬をさらに併用して投与しなくても、糖尿病治療剤と高血圧症治療剤を併用投与することにより、さらに上昇した血圧降下効果を見ることができる。
【0025】
実験例2:4週間の血圧降下効果を確認
イ。実験方法
実験動物として、SHRラット6週齢の雄を使用した(ただし、正常対照群としては、WKYラットを使用した)。
血圧測定方法は以下の通りである:各測定日において、測定の約30分前に賦形剤(0.5%メチルセルロース水溶液)または薬物を投与し(正常対照群と陰性対照群は、賦形剤のみを投与した)、血圧測定前に動物が入っている補正枠(retainer)を赤外線ランプと温熱マットで約10分間加温した。上記補正枠を血圧計の動物加温ユニット(animal heating unit)に位置させて、動物が安定したと判断されると、非侵襲的血圧測定器で尾での血圧を3~5回測定し、平均値に決定した。
【0026】
投与する薬物の種類別に、実験群は総7群にし、各群にラット8匹を無作為に割り付けた。各薬物投与群は、以下の通りである。
(1)正常対照群(G1):正常の動物群
(2)陰性対照群(G2):薬物を投与していない対照群
(3)試験物質1投与群(G3):オルメサルタンメドキソミル2mg/kg/day + ダパグリフロジン1 mg/kg/dayの混合投与群
(4)試験物質2投与群(G4):オルメサルタンメドキソミル2mg/kg/day + ダパグリフロジン3 mg/kg/dayの混合投与群
(5)比較物質1投与群(G5):オルメサルタンメドキソミル2 mg/kg/day単独投与群
(6)比較物質2投与群1(G6):ダパグリフロジン1mg/kg/day単独投与群
(7)比較物質2投与群2(G7):ダパグリフロジン3mg/kg/day単独投与群
(*本実験例では、ダパグリフロジンを溶媒和物の形態ではなく、無水物の形態で投与する)
【0027】
薬物投与は、毎日同じ時間に各薬物の所定の容量に応じて1日1回経口投与用ゾンデ(oral zonde)を取り付けた使い捨て注射器でラットの胃内に強制的に投与した。試験物質としては、オルメサルタンメドキソミルを投与した後、すぐにダパグリフロジンを投与した。高血圧治療薬と糖尿病治療薬物の投与量は、臨床適用予定の容量を考慮して設定した。
薬物は、1日1回4週間の間(総29回)反復投与し、血圧測定は週1回行った。
【0028】
ロ。収縮期血圧の測定結果
各群の収縮期(systolic)血圧の測定値を
図4および表2に示した。
【0029】
【0030】
正常対照群(G1)は、平均変動範囲が113~130mmHgであった。
陰性対照群(G2)は、平均変動範囲が171~228mmHgであり、時間推移的に増加する傾向を示した。正常対照群(G1)と比較すると、すべての測定時点で血圧が有意に増加した(p <0.01)。
オルメサルタンメドキソミルとダパグリフロジンの2:1混合投与群(G3)と2:3混合投与群(G4)の平均変動範囲は、それぞれ160~179 mmHgと156~177mmHgになっており、それぞれを陰性対照群(G2)と比較する時、統計学的に有意に低いことが明らかになった(p <0.01:投与後1週目、2週目、3週目、4週目)。
【0031】
オルメサルタンメドキソミル2mg/kg/day容量の単独投与群(G5)の平均変動範囲は、159~190mmHgになっており、陰性対照群(G2)と比較する時、統計学的に有意に低いことが明らかになった(p <0.01 :投与後1週目、2週目、3週目、4週目)。
オルメサルタンメドキソミルとダパグリフロジンの2:1混合投与群(G3)の平均変動範囲は、オルメサルタンメドキソミル2mg/kg/day容量の単独投与群(G5)と比較する時、統計学的に有意に低いことが明らかになった(p <0.05:投与後4週目)。
オルメサルタンメドキソミルとダパグリフロジンの2:3混合投与群(G4)の平均変動範囲は、オルメサルタンメドキソミル2mg/kg/day容量の単独投与群(G5)と比較する時、統計学的に有意に低いことが明らかになった(p <0.01:投与後2週目、4週目)。
【0032】
オルメサルタンメドキソミルとダパグリフロジンの2:1混合投与群(G3)の平均変動範囲は、ダパグリフロジン1mg/kg/day容量の単独投与群(G6)と比較する時、統計学的に有意に低いことが明らかになった(p <0.05:投与後3週目、p <0.01:投与後1週目、2週目、4週目)。
オルメサルタンメドキソミルとダパグリフロジンの2:3混合投与群(G4)の平均変動範囲は、ダパグリフロジン3mg/kg/day容量の単独投与群(G7)と比較する時、統計学的に有意に低いことが明らかになった(p <0.01:投与後1週目、2週目、3週目、4週目)。
【0033】
ハ。拡張期血圧の測定結果
各群の拡張期(diastolic)血圧の測定値を
図5及び表3に示した。
【0034】
【0035】
正常対照群(G1)は、平均変動範囲が81~107mmHgであった。
陰性対照群(G2)は、平均変動範囲が138~200mmHgであり、時間推移的に増加する傾向を示した。正常対照群(G1)と比較すると、すべての測定時点で血圧が有意に増加した(p <0.01)。
オルメサルタンメドキソミルとダパグリフロジンの2:1混合投与群(G3)と2:3混合投与群(G4)の平均変動範囲は、それぞれ134~156 mmHgおよび128~152mmHgになっており、それぞれを陰性対照群(G2)と比較する時、統計学的に有意に低いことが明らかになった(p <0.01:投与後1週目、2週目、3週目、4週目)。
【0036】
オルメサルタンメドキソミル2mg/kg/day容量の単独投与群(G5)の平均変動範囲は、127~172mmHgになっており、陰性対照群(G2)と比較する時、統計学的に有意に低いことが明らかになった(p <0.01 :投与後1週目、2週目、3週目、4週目)。
オルメサルタンメドキソミルとダパグリフロジンの2:1混合投与群(G3)と2:3混合投与群(G4)の平均変動範囲は、すべてオルメサルタンメドキソミル2mg/kg/day容量の単独投与群(G5 )と比較する時、統計学的に有意に低いことが明らかになった(p <0.01:投与後4週目)。
【0037】
オルメサルタンメドキソミルとダパグリフロジンの2:1混合投与群(G3)の平均変動範囲は、ダパグリフロジン1mg/kg/day容量の単独投与群(G6)と比較する時、統計学的に有意に低いことが明らかになった(p <0.05:投与後3週目、p <0.01:投与後1週目、2週目、4週目)。
オルメサルタンメドキソミルとダパグリフロジンの2:3混合投与群(G4)の平均変動範囲は、ダパグリフロジン3mg/kg/day容量の単独投与群(G7)と比較する時、統計学的に有意に低いことが明らかになった(p <0.01:投与後1週目、2週目、3週目、4週目)。
前記実験例の結果から、オルメサルタン薬物を単独で投与したときよりもダパグリフロジンとともに投与した場合に相乗効果を発揮して、血圧降下効果がさらに大きくなったことが分かった。
【0038】
製剤の製造例1:錠剤の製造
1錠中の含有量
ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物 6.15mg
オルメサルタンメドキソミル 40mg
微結晶セルロース 100mg
マンニトール 100mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 10mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム塩 10mg
ステアリン酸マグネシウム 3mg
【0039】
上記組成のように、ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、オルメサルタンメドキソミル、微結晶セルロース、およびマンニトールを混合し、ここにヒドロキシプロピルメチルセルロースをエタノールに溶かして結合剤として混合して湿式顆粒法で顆粒を製造し、ここにカルボキシメチルセルロースカルシウム塩とステアリン酸マグネシウムを混合して打錠して錠剤を得る。
【0040】
製剤の製造例2:錠剤の製造
1錠中の含有量
ダパグリフロジン無水物 10mg
オルメサルタンメドキソミル 40mg
微結晶セルロース 100mg
マンニトール 100mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 10mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム塩 10mg
ステアリン酸マグネシウム 3mg
【0041】
上記組成のように、ダパグリフロジン、オルメサルタンメドキソミル、微結晶セルロース、およびマンニトールを混合し、ここにヒドロキシプロピルメチルセルロースをエタノールに溶かして結合剤として混合して湿式顆粒法で顆粒を製造し、ここにカルボキシメチルセルロースカルシウム塩とステアリン酸マグネシウムを混合して打錠して錠剤を得る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、糖尿病治療薬と高血圧治療薬を一つの医薬組成物にして、血圧降下効果を向上させ、患者の服薬コンプライアンスを高めることができる。