(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 135/18 20060101AFI20220214BHJP
C10M 141/10 20060101ALI20220214BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20220214BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20220214BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20220214BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220214BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
C10M135/18
C10M141/10
C10M137/10 A
C10N10:12
C10N10:04
C10N30:06
C10N40:25
(21)【出願番号】P 2021040657
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2021-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517436615
【氏名又は名称】シェルルブリカンツジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 久美子
(72)【発明者】
【氏名】羽生田 清志
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-059935(JP,A)
【文献】特開2018-090714(JP,A)
【文献】特表2015-527480(JP,A)
【文献】特表2018-520246(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0119601(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M,C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と、ジチオカルバミン酸モリブデンと、金属系清浄剤と、を含む潤滑油組成物であって、
前記潤滑油組成物全量に対する、前記ジチオカルバミン酸モリブデンのモリブデン原子換算の含有量C
Moが200ppm超2000ppm以下であり、
前記潤滑油組成物全量を基準とした硫酸灰分が0.85質量%未満であ
り、
アルミ及び/又はアルミ合金を含む摺動面の潤滑用である
ことを特徴とする、潤滑油組成物。
【請求項2】
前記金属系清浄剤が、カルシウム系清浄剤及びマグネシウム系清浄剤を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記潤滑油組成物全量に対する、前記カルシウム系清浄剤のカルシウム原子換算の含有量C
Caが100~2000ppmであり、
前記潤滑油組成物全量に対する、前記マグネシウム系清浄剤のマグネシウム原子換算の含有量C
Mgが50~1000ppmであり、
(C
Mg+C
Mo/2)/C
Caが0.4~1.2である、請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛を更に含む、請求項1~3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
石油資源枯渇の懸念、資源保護対策等の観点から、自動車における省燃費化が求められている。特に、自動車の軽量化、エネルギー効率を向上させるエンジンの改良、駆動力の伝達効率の向上等から、優れた性能を有する潤滑油組成物が求められている。
【0002】
例えば、先行技術文献1においては、内燃機関用潤滑油に対してジアルキルジチオリン酸亜鉛等の耐摩耗剤を添加することで、内燃機関における鉄材に対する、耐摩耗性を向上させることが行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】添加剤の種類と性能(1)耐摩耗剤・極圧剤、R.J.ハートレイ、他、トライボロジスト、第40巻、4号、326頁、1995年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の潤滑油組成物は、エンジンの主要な材料であるアルミ及び/又はアルミ合金に適用した場合の耐摩耗性について十分に検討されていなかった。特に、近年のエンジンのダウンサイジング等を考慮すると、摩擦面を構成する材質による耐摩耗性への影響が非常に大きく、鉄系材料等に対する耐摩耗性が高い場合でも、必ずしもアルミ及び/又はアルミ合金等に対する優れた耐摩耗性が得られないことがわかった。
【0005】
そこで本発明は、アルミ及び/又はアルミ合金に適用した場合でも優れた耐摩耗性を有する、新規な潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の成分を特定量含む潤滑油組成物によって、前記課題を解消可能なことを見出した。即ち、本発明は以下の通りである。
【0007】
本発明は、
基油と、ジチオカルバミン酸モリブデンと、金属系清浄剤と、を含む潤滑油組成物であって、
前記潤滑油組成物全量に対する、前記ジチオカルバミン酸モリブデンのモリブデン原子換算の含有量CMoが200ppm超2000ppm以下であり、
前記潤滑油組成物全量を基準とした硫酸灰分が0.85質量%未満である
ことを特徴とする、潤滑油組成物である。
前記金属系清浄剤が、カルシウム系清浄剤及びマグネシウム系清浄剤を含んでいてもよい。
前記潤滑油組成物全量に対する、前記カルシウム系清浄剤のカルシウム原子換算の含有量CCaが100~2000ppmであってもよい。
前記潤滑油組成物全量に対する、前記マグネシウム系清浄剤のマグネシウム原子換算の含有量CMgが50~1000ppmであってもよい。
(CMg+CMo/2)/CCaが0.4~1.2であってもよい。
潤滑油組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を更に含んでもよい。
潤滑油組成物は、アルミ及び/又はアルミ合金を含む摺動面の潤滑用であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
アルミ及び/又はアルミ合金に適用した場合でも優れた耐摩耗性を有する、新規な潤滑油組成物を提供することができる。
【0009】
以下、本発明に係る潤滑油組成物の、成分、各成分の含有量、物性/性質、製造方法、用途等について説明する。
【0010】
以下において、ある数値範囲の上限値と下限値とが別々に記載されている場合、それらを組み合わせた全ての数値範囲が開示されているものとする。また、以下において、「数値A~数値B」とは、「数値A以上数値B以下」であることを示す。更に、以下において、「以上」、「以下」と記載されている数値範囲を、各々、「超」、「未満」に読み替えることができる。
【0011】
本発明における動粘度は、JIS K2283:2000に準じて測定された値である。
【0012】
<<<成分>>>
潤滑油組成物は、基油、金属系清浄剤、及び、ジチオカルバミン酸モリブデンを含む。また、潤滑油組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むことが好ましい。潤滑油組成物は、その他の成分を含んでいてもよい。
【0013】
<<基油>>
基油は、特に限定されず、通常の潤滑油組成物に使用される鉱油、合成油、動植物油、これらの混合油を適宜使用することができる。具体例としては、API(American Petroleum Institute;米国石油協会)基油カテゴリーでグループ1、グループ2、グループ3、グループ4等に属する基油を、単独又は混合物として使用してもよい。
【0014】
グループ1基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、溶剤精製、水素化精製、脱ろう等の精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られるパラフィン系鉱油がある。
【0015】
グループ2基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろう等の精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油がある。
【0016】
グループ3基油及びグループ2プラス基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油や、脱ろうプロセスにて生成されるワックスをイソパラフィンに変換・脱ろうするISODEWAXプロセスにより精製された基油や、天然ガスの液体燃料化技術のフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)により得られたGTL基油があり、これらも本形態において好適に用いることができる。GTL基油は、原油から精製された鉱油基油と比較して、硫黄分や芳香族分が極めて低く、パラフィン構成比率が極めて高いため、酸化安定性と低温における粘度特性に優れ、本形態の基油として特に好適に用いることができる。
【0017】
合成油としては、例えば、ポリオレフィン、二塩基酸のジエステル、トリメリット酸のトリエステル、ポリオールエステル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、含フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等)、シリコーン等が挙げられる。上記ポリオレフィンには、各種オレフィンの重合物又はこれらの水素化物が含まれる。オレフィンとしては任意のものが用いられるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、炭素数5以上のα-オレフィン等が挙げられる。ポリオレフィンの製造にあたっては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特にポリ-α-オレフィン(PAO)と呼ばれているポリオレフィンが好適であり、これはグループ4基油である。
【0018】
<<金属系清浄剤>>
金属系清浄剤としては、従来公知の成分を使用することができる。金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ金属系清浄剤(アルカリ金属スルホネート、アルカリ金属フェネート、及びアルカリ金属サリシレート)やアルカリ土類金属系清浄剤(アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、及びアルカリ土類金属サリシレート)等が挙げられる。金属系清浄剤は、これらの成分を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0019】
金属系清浄剤は、カルシウム系清浄剤及び/又はマグネシウム系清浄剤を含むことが好ましい。
カルシウム系清浄剤は、カルシウムサリシレートであることが特に好ましい。
マグネシウム系清浄剤は、マグネシウムスルホネートであることが特に好ましい。
【0020】
以下、金属系清浄剤の好ましい形態である、カルシウムサリシレート及びマグネシウムスルホネートを例にとり金属系清浄剤について詳述するが、金属系清浄剤はこれらに限定されない。
【0021】
<カルシウムサリシレート>
カルシウムサリシレートは、公知のものを使用することができ、例えば、下記式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0022】
【0023】
上記式中、Rは炭素数4~30の炭化水素基とすることができ、6~18の直鎖又は分枝アルキル基であることが好適である。
【0024】
<マグネシウムスルホネート>
マグネシウムスルホネートとしては、公知のものを使用することができ、例えば、下記式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0025】
【0026】
上記式中、Rは炭素数4~30の炭化水素基とすることができ、6~18の直鎖又は分枝アルキル基であることが好適である。
【0027】
<<ジチオカルバミン酸モリブデン>>
ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)としては、公知のものを使用することができ、例えば、下記式(3)で示される化合物が挙げられる。
【0028】
【0029】
上記式において、R1~R4はアルキル基を示し、X1~X4は酸素原子もしくは硫黄原子を表す。より具体的には、上記式において、アルキル基R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数2~30の親油基である。
【0030】
ここでジチオカルバミン酸モリブデンとしては、下記式(4)で示される化合物であることが好ましい。
【0031】
【0032】
上記式において、R1~R4はアルキル基を示す。より具体的には、アルキル基R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数2~30の親油基である。
【0033】
<<ジアルキルジチオリン酸亜鉛>>
ジアルキルジチオリン酸亜鉛としては、公知のものを使用することができ、典型的には下記式(5)で示される化合物である。
【0034】
【0035】
上記式中、Ra、Rb、Rc及びRdは、それぞれ別個に炭素数3~24の炭化水素基を示す。これら炭化水素基としては、炭素数3~24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3~24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5~13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6~18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基、及び炭素数7~19のアリールアルキル基等のいずれかであることが望ましい。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級及び第3級のいずれであってもよい。
【0036】
上記ジアルキルジチオリン酸亜鉛の好適な具体例としては、例えば、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ-sec-ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ-sec-ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ-n-ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ-sec-ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ-オクチルジチオリン酸亜鉛、ジ-2-エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ-n-デシルジチオリン酸亜鉛、ジ-n-ドデシルジチオリン酸亜鉛、ジイソトリデシルジチオリン酸亜鉛、及びこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。これらの耐摩耗剤は、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0037】
<<その他の成分>>
潤滑油組成物は、使用目的に応じて上述した成分以外の公知の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、分散剤、消泡剤、流動点降下剤、金属不活性剤、酸化防止剤などの添加剤と、粘度指数向上剤が挙げられる。また、前記成分以外の清浄剤や耐摩耗剤等を含んでいてもよい。
【0038】
<<<成分の含有量>>>
<<基油>>
潤滑油組成物全量に対する基油の含有量は、50~95質量%であることが好ましく、60~90質量%であることがより好ましく、70~85質量%であることが更に好ましい。
【0039】
<<金属系清浄剤>>
潤滑油組成物全量に対する含有量は、金属系清浄剤に含まれる金属の原子換算量を考慮して適宜決定すればよいが、例えば0.05~0.5質量%であることが好ましく、0.1~0.4質量%であることがより好ましく、0.13~0.25質量%であることが更に好ましい。
【0040】
以下においては、金属系清浄剤の好ましい形態であるカルシウムサリシレート及びマグネシウムスルホネートに関して、その具体的な含有量を説明する。
【0041】
<カルシウムサリシレート:CCa>
潤滑油組成物全量に対する、カルシウムサリシレートのカルシウム原子換算の含有量CCaは、100~2000ppmであることが好ましく、500~1800ppmであることがより好ましく、700~1500ppmであることがより好ましく、900~1400ppmであることが特に好ましい。
【0042】
<マグネシウムスルホネート:CMg>
潤滑油組成物全量に対する、マグネシウムスルホネートのマグネシウム原子換算の含有量CMgは、50~1000ppmであることが好ましく200~800ppmであることがより好ましく、300~600ppmであることが特に好ましい。
【0043】
<<ジチオカルバミン酸モリブデン:CMo>>
潤滑油組成物全量に対する、ジチオカルバミン酸モリブデンのモリブデン原子換算の含有量CMoは、200ppm超2000ppm以下であることが好ましく、250ppm~1700ppmであることが好ましく、300~1500ppmであることが更に好ましく、400~1200ppmであることが特に好ましい。ジチオカルバミン酸モリブデンの含有量をこのような範囲とすることで、優れた省燃費性を保持しながら、アルミ及び/又はアルミ合金の耐摩耗性を向上させることが可能となる。
【0044】
<<CCa、CMg、CMoの含有量比>>
ここで、上記成分において、(CMg+CMo/2)/CCaは、0.4~1.2(即ち、0.35以上1.25未満)であることが好ましく、0.4~0.9(即ち、0.35以上0.95未満)であることがより好ましい。
【0045】
<<CCa、CMg、CMoの合計含有量>>
上記成分において、CCa、CMg、CMoの合計(CCa+CMg+CMo)は、1000~4000ppmであることが好ましく、1500~3000ppmであることがより好ましく、1700~3000ppmであることが更に好ましく、1800~2750ppmであることが特に好ましい。
【0046】
<<ジアルキルジチオリン酸亜鉛:CZn>>
潤滑油組成物全量に対する、ジアルキルジチオリン酸亜鉛のリン原子換算の含有量CZnは、200~2000ppmであることが好ましく、300~1500ppmであることがより好ましく、500~1000ppmであることが特に好ましい。
【0047】
<<その他の成分>>
その他の成分は、上記成分の残部として配合すればよい。その他の成分の含有量は、例えば、潤滑油組成物全量に対して、1質量%以上、3質量%以上、又は、5質量%以上とすることができ、また、25質量%以下、20質量%以下、又は、15質量%以下とすることができる。
【0048】
<<<物性/性質>>>
<<硫酸灰分>>
潤滑油組成物全量を基準とした硫酸灰分は、0.85質量%未満、又は、0.84質量%以下であることが好ましい。硫酸灰分をこのような範囲とすることで、本発明の効果を高めつつ、排ガス規制に対応するエンジンに使用することも可能となる。下限値は特に限定されないが、0.1質量%、0.3質量%又は0.5質量%とすることができる。
【0049】
硫酸灰分は、JIS K 2272に規定される方法により測定することができる。
硫酸灰分は、金属系清浄剤等の含有量を変更することで調整することができる。
【0050】
<<耐摩耗性試験>>
耐摩耗性の評価については、合金鋼(AISI 4620)リング材と,アルミ合金(AC8A-T6)のブロックで、Falex ブロックオンリング摩擦試験機(LFW-1)を用いて実施する。試験条件は、リングの回転数1000rpm、荷重を200N、油温を80℃、200Nの荷重をかけてからの運転時間が15分である。試験後のブロックの摩耗幅(mm)を測定する。
【0051】
耐摩耗性は、試験後のブロック材の摩耗幅が5mm以下であることが好ましく、4.5mm以下であることがより好ましい。耐摩耗性をこのような範囲とすることで、ダウンサイジング化したエンジンでも十分な耐久性を示すことができる。
【0052】
<<<製造方法>>>
潤滑油組成物は、公知の方法に従って製造することができ、各成分を適宜混合すればよく、その混合順序は特に限定されるものではない。添加剤は、複数種が混合されたパッケージ品として添加されてもよい。
【0053】
<<<用途>>>
本発明に係る潤滑油組成物は、清浄性、省燃費性、耐摩耗性(特にアルミ及び/又はアルミ合金に対する耐摩耗性)等をバランスよく高めることが可能である。また、本発明に係る潤滑油組成物は、排ガス規制対策(GPF―gasoline particulate filter装備)を施したガソリンエンジンへの使用にも適しており、欧州におけるACEA C2,C3,C5 Mid SAPSカテゴリー(触媒、GPF/DPF装置に適合するガソリンエンジン車又はディーゼルエンジン車向けの低硫酸灰分エンジン油規格)と同程度の低硫酸灰分エンジン油が適合するガソリンエンジンに使用することができる。更に、本発明に係る潤滑油組成物は、SAE粘度グレード0W-20、0W-16、0W-8等の低粘度エンジン油で、省燃費性の高いエンジンに適合する。
【0054】
潤滑油組成物の用途は特に限定されず、各種機械の潤滑油として用いることができる。例えば、各種車両や産業機械の回転部材や摺動部材の潤滑に適用される。潤滑油組成物は、特に、アルミ及び/又はアルミ合金を含む部材の摺動面(これらの金属材料を部品中に含む内燃機関)用の潤滑剤として好ましく使用できる。
【実施例】
【0055】
以下の原料を、表に示す配合量(質量%)となるように配合し、各実施例及び各比較例に係る潤滑油組成物を製造した。
尚、各実施例のSAE粘度グレードは0W-20であった。
【0056】
<基油>
・GTL基油
<粘度指数向上剤>
・ポリメタクリレート
<金属系清浄剤A>
・カルシウム系清浄剤:過塩基性カルシウムサリシレート
<金属系清浄剤B>
・マグネシウム系清浄剤:過塩基性マグネシウムスルホネート
<耐摩耗剤>
・ジアルキルジチオリン酸亜鉛
<摩擦調整剤>
・ジチオカルバミン酸モリブデン
<無灰分散剤>
・ホウ素非含有分散剤:アルケニルコハク酸イミド
・ホウ素含有分散剤:アルケニルコハク酸イミド
<酸化防止剤>
・アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤の混合物
<消泡剤>
・ジメチルポリシロキサン(DCF)を3質量%含有する灯油溶液
【0057】
各潤滑油組成物における金属系清浄剤、摩擦調整剤の含有量については、潤滑油組成物の全量基準に対する、これらの構成金属成分であるカルシウム、マグネシウム、モリブデンの換算量(質量ppm)として表に示す。
【0058】
なお、それ以外の添加剤については一般的な添加量を参照して、潤滑油組成物の全量基準として、無灰分散剤は窒素換算量が500~1500ppm(ホウ素換算量が0~200ppm)となるようにし、耐摩耗剤は亜鉛換算量が500~1200ppmとなるようにし、消泡剤についてはケイ素換算量が3~20ppmとなるようにした。また、粘度指数向上剤については、20質量%以下となるように配合し、酸化防止剤については、5質量%以下となるように配合した。
【0059】
各成分の換算量の測定方法は、従来公知の方法に準じる。例えば、カルシウム、マグネシウム、モリブデンにおいてはJPI-5S-38、窒素においてはJIS K2609に準じる。
【0060】
各潤滑油組成物における硫酸灰分を表に示す。
【0061】
<<評価>>
前述した方法に基づき、耐摩耗性試験を実施した。試験後のブロックの摩耗幅(mm)を表に示す。評価基準として、摩耗幅が、4.5mm以下である場合を◎、5.0mm以下である場合を〇、5.0mm超である場合を×と評価した。
【0062】
【0063】
【要約】
【課題】 アルミ及び/又はアルミ合金に適用した場合でも優れた耐摩耗性を有する、新規な潤滑油組成物の提供。
【解決手段】 基油と、ジチオカルバミン酸モリブデンと、金属系清浄剤と、を含む潤滑油組成物であって、潤滑油組成物全量に対する、ジチオカルバミン酸モリブデンのモリブデン原子換算の含有量CMoが200ppm超2000ppm以下であり、潤滑油組成物全量を基準とした硫酸灰分が0.85質量%未満である、潤滑油組成物。
【選択図】なし