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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】流体バランサおよび工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/72 20060101AFI20220105BHJP
   F16C 29/02 20060101ALI20220105BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B23Q1/72 A
F16C29/02
F16J15/10 C
F16J15/10 T
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021553273
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2021022029
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2020103631
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 裕也
(72)【発明者】
【氏名】見波 弘志
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-082245(JP,A)
【文献】特開2006-297504(JP,A)
【文献】特開2018-062037(JP,A)
【文献】特開2002-254265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0158174(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0242959(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0104783(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0070124(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/72
F16C 29/02
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力方向および重力方向とは逆方向に延びるガイド軸(14)に沿って移動可能に設けられたスライダ(16)の重量を圧縮流体により軽減する流体バランサ(18)であって、
前記ガイド軸に沿って設けられるシャフト(30)と、
前記シャフトが挿入されるシリンダ(34)と、
前記シャフトが挿通する貫通孔(32O)を有し、前記シリンダが固定されるベース部材(32)と、
前記シャフトと前記ベース部材との間に設けられ、前記シャフトに対向する表面に、前記シャフトの軸方向に沿って延びる溝(52)が、前記シャフトの周方向に間隔をあけて複数形成されるスペーサ(50)と、
弾性を有し、かつ、前記ベース部材に対して前記スペーサを支持する弾性支持部(60)と、
を備え、
前記シャフトまたは前記シリンダは、前記スライダと連結される、流体バランサ。
【請求項2】
請求項1に記載の流体バランサであって、
前記弾性支持部は、
前記スペーサの前記重力方向とは逆方向における前記スペーサとの隙間に設けられる第1シール部材(62)と、
前記スペーサの前記重力方向における前記スペーサとの隙間に設けられる第2シール部材(64)と、
を有する、流体バランサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体バランサであって、
前記弾性支持部は、前記シャフトと交差する方向に沿った前記スペーサと前記ベース部材との間の隙間に設けられる弾性部材(66)を有する、流体バランサ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の流体バランサであって、
前記シャフトは、基台(12)に固定され、
前記シリンダは、前記スライダと連結される、流体バランサ。
【請求項5】
請求項4に記載の流体バランサであって、
前記シリンダは、前記ベース部材を介して前記スライダと連結される、流体バランサ。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の流体バランサであって、
前記シリンダは、基台に固定され、
前記シャフトは、前記スライダと連結される、流体バランサ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の流体バランサと、
前記ガイド軸と、
前記スライダと、
前記スライダを前記ガイド軸に沿って移動させるためのモータ(20)と、
を備える工作機械(10)。
【請求項8】
請求項7に記載の工作機械であって、
前記モータは、リニアモータである、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド軸に沿って移動可能に設けられたスライダの重量を、圧縮流体により軽減する流体バランサおよび工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械のスライダには、工具を着脱可能な主軸を支持する主軸ヘッド、或いは、加工対象物を搭載するためのテーブル等が取り付けられる。したがって、スライダの重量が大きくなる傾向にある。このため、スライダの重量を軽減する流体バランサが工作機械に設けられる場合がある。
【0003】
例えば、特開2018-062037号公報の工作機械は、固定シャフトと、可動シリンダとを有する流体バランサ(エアバランス機構)を備えている。固定シャフトは、垂直軸に沿って直立する。可動シリンダは、固定シャフトに対して相対移動する。可動シリンダは、架橋フレームを介して主軸機構と連結され、その主軸機構と連動して上下動する。
【発明の概要】
【0004】
しかし、特開2018-062037号公報の固定シャフトは、垂直軸に対して傾いた状態で固定される場合がある。垂直軸に対して僅かにでも固定シャフトが傾くと、固定シャフトの外周面と可動シリンダの内周面との間における、シャフトの周方向の隙間が不均一となる。この結果、スライダが滑らかに移動しなくなることが懸念される。特に、相対的に高い加工精度で加工対象物を加工する精密工作機械では、スライダを滑らかに移動させることは重要となる。
【0005】
そこで、本発明は、スライダを滑らかに移動させ得る流体バランサおよび工作機械を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の第1態様は、
重力方向および重力方向とは逆方向に延びるガイド軸に沿って移動可能に設けられたスライダの重量を圧縮流体により軽減する流体バランサであって、
前記ガイド軸に沿って設けられるシャフトと、
前記シャフトが挿入されるシリンダと、
前記シャフトが挿通する貫通孔を有し、前記シリンダが固定されるベース部材と、
前記シャフトと前記ベース部材との間に設けられ、前記シャフトに対向する表面に、前記シャフトの軸方向に沿って延びる溝が、前記シャフトの周方向に間隔をあけて複数形成されるスペーサと、
弾性を有し、かつ、前記ベース部材に対して前記スペーサを支持する弾性支持部と、を備え、
前記シャフトまたは前記シリンダは、前記スライダと連結される。
【0007】
本発明の第2態様は、
工作機械であって、
上記の流体バランサと、
前記ガイド軸と、
前記スライダと、
前記スライダを前記ガイド軸に沿って移動させるためのモータと、
を備える。
【0008】
本発明の態様によれば、スペーサとシャフトとの間の隙間の不均一の程度を小さくすることができる。すなわち、予め決められた規定位置からシャフトの軸芯が傾いても、スペーサに形成された複数の溝を流れる圧縮流体によってスペーサを支持する弾性支持部が変形することで、シャフトの軸芯に沿うようにスペーサが移動することができる。このため、スペーサとシャフトとの間の隙間の不均一の程度を小さくすることができ、この結果、スライダを滑らかに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】工作機械を示す模式図である。
図2図1のII-II線矢視断面図である。
図3図2のスペーサおよび弾性支持部を含む周辺を示す図である。
図4】シャフトの軸方向に沿ったスペーサの断面を示す断面図である。
図5】シャフトの径方向に沿ったスペーサの断面を示す断面図である。
図6】変形例1の流体バランサを図3と同様の視点で示す図である。
図7】変形例2の流体バランサを図2と同様の視点で示す図である。
図8】変形例3の流体バランサを図2と同様の視点で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について、好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0011】
〔実施形態〕
図1は、工作機械10を示す模式図である。図1では上下方向が示されている。なお、下方向は、重力が働く方向であり、上方向は、重力が働く方向とは逆方向である。工作機械10は、基台12、ガイド軸14、スライダ16および流体バランサ18を有する。
【0012】
基台12は、ガイド軸14および流体バランサ18を設置するための台である。基台12は、設置面12Fを有する。なお、ガイド軸14が設置される設置面12Fと、流体バランサ18が設置される設置面12Fとは同じ面上であってもよく、上下方向にずれていてもよい。また、基台12は、第1基台と、第2基台とを備えてもよい。この場合は、第1基台と第2基台とは連結される。第1基台と第2基台とは分離可能である。第1基台にはガイド軸14が設置される。第2基台には流体バランサ18が設置される。
【0013】
ガイド軸14は、スライダ16をガイドする軸である。ガイド軸14は、基台12の設置面12F上に設置される。ガイド軸14は、基台12に固定され、上下方向に延びている。なお、ガイド軸14は、鉛直線と平行であってもよいし、鉛直線に対して傾斜してもよい。また、ガイド軸14は、1つであっても複数であってもよい。ガイド軸14が複数である場合、複数のガイド軸14は平行に設けられる。本実施形態では、ガイド軸14の数は2つである。
【0014】
スライダ16は、ガイド軸14に沿って移動可能である。スライダ16は、モータ20から与えられる動力に基づいて上方向または下方向に移動する。モータ20は、スライダ16に対して動力を与える限り、特に限定されない。モータ20は、リニアモータであってもよく、サーボモータであってもよい。本実施形態では、モータ20は、リニアモータである。モータ20の磁石20Aは、2つのガイド軸14の各々に1つずつ設けられる。2つのガイド軸14の各々に設けられる磁石52Aは、互いに向き合う。各磁石52Aは、ガイド軸14に沿って配置される。モータ20のコイル(図示せず)は、互いに向き合う磁石20Aの間に配置される。モータ20のコイルは、スライダ16に固定される。モータ20のコイルに出力される駆動電流に応じて発生する磁界によりスライダ16が上方向または下方向に移動する。
【0015】
なお、スライダ16には、工具を着脱可能な主軸を回転可能に支持する主軸頭、或いは、加工対象物が固定されるテーブル等の機械部品が取り付けられてもよい。
【0016】
流体バランサ18は、スライダ16の重量を軽減する。スライダ16に機械部品が取り付けられていない場合、スライダ16の重量は、スライダ16の自重である。スライダ16に機械部品が取り付けられている場合、スライダ16の重量は、スライダ16の自重と機械部品の自重とを合算した合算値である。
【0017】
流体バランサ18は、1つであっても複数であってもよい。本実施形態では、流体バランサ18の数は2つである。2つの流体バランサ18の間に、2つのガイド軸14が配置される。2つの流体バランサ18の構造は互いに同じであるため、以下は、1つの流体バランサ18の構造について説明する。図2は、図1のII-II線矢視断面図である。流体バランサ18は、シャフト30、ベース部材32、シリンダ34およびレギュレータ36を有する。
【0018】
シャフト30は、基台12の設置面12F上に設置される。シャフト30は、基台12に固定される。シャフト30は、ガイド軸14と離間して配置される(図1参照)。
【0019】
ベース部材32は、本実施形態では、スライダ16に固定される。例えば、ベース部材32は、スライダ16の下端部に固定される。ベース部材32は、シャフト30に向かって略水平方向に延びる板状に形成される。ベース部材32は、スライダ16と一緒に移動する。ベース部材32には貫通孔32Oが形成される。貫通孔32Oにはシャフト30が挿通する。
【0020】
シリンダ34は、ベース部材32に固定される。シリンダ34は、ベース部材32に形成された貫通孔32Oの一方の開口側に配置される。ベース部材32はスライダ16と一緒に移動するため、当該ベース部材32に固定されるシリンダ34もスライダ16と一緒に移動する。シリンダ34の内部には、貫通孔32Oの一方の開口側から突出するシャフト30が挿入される。シリンダ34は、スライダ16の上昇に応じてシャフト30に対して離れるように相対移動する。シリンダ34は、スライダ16の下降に応じてシャフト30に対して近づくように相対移動する。
【0021】
レギュレータ36は、流体室38の圧力を調整する。流体室38は、シャフト30とシリンダ34との間に形成される。レギュレータ36は、2つの流体バランサ18の各流体室38の圧力を一括して調整してもよい。また、レギュレータ36は、2つの流体バランサ18の各々に1つずつ設けられてもよい。2つの流体バランサ18の各々に設けられたレギュレータ36は、対応する流体バランサ18の流体室38の圧力を個別に調整する。
【0022】
レギュレータ36は、流体室38と流体供給源とを連通する流路40を流れる圧縮流体の流量または流速を変化させることで、流体室38の圧力を調整する。レギュレータ36は、スライダ16の重量に応じて、流路40を流れる圧縮流体の流量または流速を変化させてもよい。或いは、レギュレータ36は、モータ20に出力される駆動電流が目標値となるように、流路40を流れる圧縮流体の流量または流速を変化させてもよい。なお、図2に示す例では、流路40の一部は、シャフト30および基台12に形成されている。
【0023】
流体供給源から流体室38に供給される圧縮流体によって、ベース部材32を介してシリンダ34と連結されるスライダ16が支持される。その結果、スライダ16の重量が軽減される。流体室38に供給された圧縮流体の一部はシャフト30とシリンダ34との間の隙間を通じて、ベース部材32の貫通孔32Oから排出される。なお、圧縮流体は、圧縮された流体である。流体として、空気或いは窒素等の気体、或いは、油等の液体が挙げられる。
【0024】
流体バランサ18は、シャフト30、ベース部材32、シリンダ34およびレギュレータ36に加えて、スペーサ50および弾性支持部60をさらに有する。図3は、図2のスペーサ50および弾性支持部60を含む周辺を示す図である。
【0025】
スペーサ50は、シャフト30とベース部材32との間に設けられる。スペーサ50は、弾性支持部60によりベース部材32に支持される。スペーサ50は、環状に形成されていてもよい。なお、図2および図3は、スペーサ50が環状に形成されている場合を示している。
【0026】
シャフト30の軸方向と交差する方向に沿ったスペーサ50とシャフト30との間の隙間GP1は、シャフト30の軸方向と交差する方向に沿ったシャフト30とシリンダ34との隙間GP2よりも狭い。つまり、スペーサ50が設けられることで、シャフト30との間が圧縮流体を排出する側で狭くなる。なお、隙間GP1は、5μm~10μmの範囲内にあることが好ましい。
【0027】
弾性支持部60は、弾性を有し、かつ、ベース部材32に対してスペーサ50を支持する。弾性支持部60は、第1シール部材62、第2シール部材64および弾性部材66を有する。第1シール部材62および第2シール部材64の具体例として、Oリングが挙げられる。弾性部材66の具体例として、Oリング、或いは、ばね等が挙げられる。なお、第1シール部材62と第2シール部材64との形状および材料は同じであってもよい。或いは、第1シール部材62と第2シール部材64との形状および材料の少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0028】
第1シール部材62は、スペーサ50と、シャフト30の一端側(上側)のシリンダ34との間の隙間に設けられる。第1シール部材62の一部は、収容溝62Gに収容されていてもよい。収容溝62Gは、スペーサ50の表面、および、シリンダ34の表面の少なくとも一方に形成される。収容溝62Gがスペーサ50の表面に形成される場合、収容溝62Gは、シリンダ34に向くスペーサ50の表面(シャフト30の一端側(上側)のスペーサ50の表面)に形成される。収容溝62Gがシリンダ34の表面に形成される場合、スペーサ50に向くシリンダ34の表面(シャフト30の一端側(上側)のシリンダ34の表面)に形成される。なお、図3は、スペーサ50におけるシャフト30の一端側(上側)の表面に収容溝62Gが形成されている場合を示している。
【0029】
第2シール部材64は、スペーサ50と、シャフト30の他端側(下側)のベース部材32との間の隙間に設けられる。第2シール部材64の一部は、収容溝64Gに収容されていてもよい。収容溝64Gは、スペーサ50の表面、および、ベース部材32の表面の少なくとも一方に形成される。収容溝64Gがスペーサ50の表面に形成される場合、収容溝64Gは、ベース部材32に向くスペーサ50の表面(シャフト30の他端側(下側)のスペーサ50の表面)に形成される。収容溝64Gがベース部材32の表面に形成される場合、収容溝64Gは、スペーサ50に向くベース部材32の表面(シャフト30の他端側(下側)のベース部材32の表面)に形成される。なお、図3は、スペーサ50におけるシャフト30の他端側(下側)の表面に収容溝64Gが形成されている場合を示している。
【0030】
弾性部材66は、スペーサ50とベース部材32との間の隙間に設けられる。この隙間は、シャフト30と交差する方向に沿っている。弾性部材66の一部は、収容溝66Gに収容されていてもよい。収容溝66Gは、ベース部材32に向くスペーサ50の表面、および、スペーサ50に向くベース部材32の表面の少なくとも一方に形成される。なお、図3は、スペーサ50とベース部材32との双方の表面に収容溝66Gが形成されている場合を示している。
【0031】
第1シール部材62、第2シール部材64および弾性部材66の各々の個数は、1個であってもよく、複数個であってもよい。なお、図2および図3は、第1シール部材62、第2シール部材64および弾性部材66の各々の個数が1個である場合を示している。
【0032】
図4はシャフト30の軸方向に沿ったスペーサ50の断面を示す断面図である。図5はシャフト30の径方向に沿ったスペーサ50の断面を示す断面図である。シャフト30に向くスペーサ50の表面には、複数の溝52が形成される。複数の溝52は、シャフト30の周方向に間隔をあけて配置される。複数の溝52の各々は、シャフト30の軸方向に沿って延びている。溝52の個数は、10個~20個の範囲内にあることが好ましい。また、溝52の深さは、100μm~200μmの範囲内にあることが好ましい。また、溝52の幅は、50μm~100μmの範囲内にあることが好ましい。
【0033】
複数の溝52の各々には、流体室38(図2)に供給された圧縮流体の一部が上側から下側に向かって流れる。複数の溝52の各々に圧縮流体が流れると、スペーサ50に圧力が加わる。これにより、スペーサ50を支持する弾性支持部60が変形する。したがって、シャフト30の軸芯がガイド軸14に対して傾いている場合、弾性支持部60は、その軸芯に沿うようにスペーサ50を移動させることができる。つまり、弾性支持部60は、圧縮流体に応じて変形することで、シャフト30の軸方向と交差する方向にスペーサ50を移動させる。これにより、スペーサ50は、シャフト30の向きに応じて移動することができる。このため、シャフト30の軸芯がガイド軸14に対して傾いていても、スペーサ50とシャフト30との間の隙間GP1(図3)の不均一の程度を小さくすることができる。その結果、スライダ16を滑らかに移動させることができる。
【0034】
なお、弾性支持部60の第1シール部材62の一部が収容溝62Gに収容される場合、スペーサ50に圧力が加わることで、第1シール部材62の位置がずれることを抑止することができる。弾性支持部60の第2シール部材64の一部が収容溝64Gに収容されている場合、および、弾性支持部60の弾性部材66の一部が収容溝66Gに収容されている場合についても同様である。
【0035】
〔変形例〕
上記の実施形態は、下記のように変形されてもよい。
【0036】
(変形例1)
図6は、変形例1の流体バランサ18を図3と同様の視点で示す図である。図6では、実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は適宜省略する。
【0037】
実施形態では、ベース部材32とシリンダ34との間にスペーサ50が配置される。これに対し、本変形例では、凹部32Rの上側のベース部材32と、凹部32Rの下側のベース部材32との間にスペーサ50が配置される。凹部32Rは、シャフト30に向くベース部材32の表面に設けられる。凹部32Rは、シャフト30の軸方向と交差する方向に凹む。
【0038】
また、実施形態では、スペーサ50とシリンダ34との間の隙間に第1シール部材62が設けられる。これに対し、本変形例では、スペーサ50とベース部材32との間の隙間に第1シール部材62が設けられる。
【0039】
このように、スペーサ50および第1シール部材62の配置態様が変わっても、弾性支持部60は、実施形態と同様に、圧縮流体に応じてシャフト30の軸芯に沿うようにスペーサ50を移動させることができる。
【0040】
(変形例2)
図7は、変形例2の流体バランサ18を図2と同様の視点で示す図である。図7では、実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は適宜省略する。
【0041】
実施形態では、基台12にシャフト30が固定される。これに対し、本変形例では、基台12にシリンダ34が固定される。本変形例のシャフト30には流路40が非形成である。本変形例では、基台12に形成されている流路40と、基台12に固定されたシリンダ34内の流体室38とが連通される。
【0042】
また、実施形態では、ベース部材32を介してスライダ16にシリンダ34が連結される。これに対し、本変形例では、連結部材70を介してスライダ16にシャフト30が連結される。連結部材70を介してスライダ16にシャフト30が連結される場合、ベース部材32は、スライダ16と非接触である。この場合、ベース部材32は、環状に形成されていてもよい。なお、図7は、ベース部材32が環状に形成されている場合を示している。
【0043】
また、実施形態では、スペーサ50の上方向にシリンダ34が配置され、スペーサ50とシリンダ34との間に第1シール部材62が設けられる。これに対し、本変形例では、スペーサ50の上方向にベース部材32が配置され、スペーサ50とベース部材32との間に第1シール部材62が設けられる。本変形例の第1シール部材62は、スペーサ50と、シャフト30の上端側のベース部材32との間の隙間に設けられる。
【0044】
また、実施形態では、スペーサ50の下方向にベース部材32が配置され、スペーサ50とベース部材32との間に第2シール部材64が設けられる。これに対し、本変形例では、スペーサ50の下方向にシリンダ34が配置され、スペーサ50とシリンダ34との間に第2シール部材64が設けられる。本変形例の第2シール部材64は、スペーサ50と、シャフト30の下端側のシリンダ34との間の隙間に設けられる。
【0045】
このように、本変形例では、流体バランサ18が実施形態の上下と逆さまである。本変形例の流体バランサ18では、スライダ16にシャフト30が連結され、スライダ16の移動に応じてシャフト30が相対移動する。このようにしても、弾性支持部60は、実施形態と同様に、圧縮流体に応じてシャフト30の軸芯に沿うようにスペーサ50を移動させることができる。
【0046】
なお、図示しないが、本変形例のベース部材32に、変形例1の凹部32Rが設けられてもよい。本変形例のベース部材32に凹部32Rが設けられた場合、第1シール部材62は、スペーサ50と凹部32Rの上側のベース部材32との間の隙間に設けられる。また、第2シール部材64は、スペーサ50と凹部32Rの下側のベース部材32との間の隙間に設けられる。
【0047】
(変形例3)
図8は、変形例3の流体バランサ18を図2と同様の視点で示す図である。図8では、実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は適宜省略する。
【0048】
実施形態では、基台12およびシャフト30を経由する流路40によって流体供給源と流体室38とが連通された。これに対し、本変形例では、基台12およびシャフト30を非経由の流路40によって流体供給源と流体室38とが連通される。
【0049】
このように、流路40が基台12およびシャフト30を非経由であっても、実施形態と同様に、レギュレータ36は、流路40を流れる圧縮流体の流量または流速を可変して流体室38の圧力を調整することができる。
【0050】
なお、図示しないが、変形例2の流路40が、本変形例と同様に、基台12を非経由であってもよい。
【0051】
(変形例4)
実施形態のベース部材32は、変形例2のベース部材32(図7)のように、スライダ16と非接触であってもよい。実施形態のベース部材32がスライダ16と非接触である場合、スライダ16とシリンダ34とを連結する連結部材が設けられる。このようにしても、実施形態と同様に、圧縮流体に応じてシャフト30の軸芯に沿うようにスペーサ50を移動させることができる。
【0052】
(変形例5)
実施形態または変形例2の弾性部材66は省かれてもよい。弾性部材66が省かれても、第1シール部材62および第2シール部材64が、実施形態と同様に、圧縮流体に応じて、シャフト30の軸芯に沿ってスペーサ50を移動させることができる。但し、弾性部材66を設けた場合、圧縮流体に応じてスペーサ50を柔軟に移動させることができる。
【0053】
(変形例6)
実施形態または変形例2の第1シール部材62および第2シール部材64は省かれてもよい。第1シール部材62および第2シール部材64が省かれる場合、弾性部材66は、Oリング等のシール性を有する。このようにすれば、弾性部材66が、スペーサ50とベース部材32との間の隙間のシール性を保持しながら、圧縮流体に応じてシャフト30の軸芯に沿ってスペーサ50を移動させることができる。但し、第1シール部材62および第2シール部材64を設けた場合、圧縮流体の乱流を抑制することができる。
【0054】
(変形例7)
上記の実施形態および変形例は、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0055】
〔実施形態から得られる発明〕
以上の記載に基づいて把握しうる発明として、以下に、第1発明および第2発明を記載する。
【0056】
(第1発明)
第1発明は、重力方向および重力方向とは逆方向に延びるガイド軸(14)に沿って移動可能に設けられたスライダ(16)の重量を圧縮流体により軽減する流体バランサ(18)である。流体バランサ(18)は、ガイド軸(14)に沿って設けられるシャフト(30)と、シャフト(30)が挿入されるシリンダ(34)と、シャフト(30)が挿通する貫通孔(32O)を有し、シリンダ(34)が固定されるベース部材(32)と、シャフト(30)とベース部材(32)との間に設けられ、シャフト(30)に対向する表面に、シャフト(30)の軸方向に沿って延びる溝(52)が、シャフト(30)の周方向に間隔をあけて複数形成されるスペーサ(50)と、弾性を有し、かつ、ベース部材(32)に対してスペーサ(50)を支持する弾性支持部(60)と、を備える。シャフト(30)またはシリンダ(34)は、スライダ(16)と連結される。
【0057】
これにより、予め決められた規定位置からシャフト(30)の軸芯が傾いても、スペーサ(50)に形成された複数の溝(52)を流れる圧縮流体によってスペーサ(50)を支持する弾性支持部(60)が変形することで、シャフト(30)の軸芯に沿うようにスペーサ(50)が移動することができる。このため、スペーサ(50)とシャフト(30)との間の隙間(GP1)の不均一の程度を小さくすることができ、この結果、スライダ(16)を滑らかに移動させることができる。
【0058】
弾性支持部(60)は、スペーサ(50)の重力方向とは逆方向におけるスペーサ(50)との隙間に設けられる第1シール部材(62)と、スペーサ(50)の重力方向におけるスペーサ(50)との隙間に設けられる第2シール部材(64)と、を有してもよい。これにより、スペーサ(50)に形成された複数の溝(52)を流れる圧縮流体の乱流を抑制しながら、圧縮流体に応じてシャフト(30)の軸芯に沿うようにスペーサ(50)を移動させることができる。
【0059】
弾性支持部(60)は、シャフト(30)と交差する方向に沿ったスペーサ(50)とベース部材(32)との間の隙間に設けられる弾性部材(66)を有してもよい。これにより、圧縮流体に応じてシャフト(30)の軸芯に沿うようにスペーサ(50)を移動させることができる。なお、第1シール部材(62)および第2シール部材(64)とともに弾性部材(66)が設けられた場合には、当該第1シール部材(62)および第2シール部材(64)がない場合に比べ、圧縮流体に応じてスペーサ(50)を柔軟に移動させることができる。
【0060】
シャフト(30)は、基台(12)に固定され、シリンダ(34)は、スライダ(16)と連結されてもよい。これにより、シリンダ(34)とスライダ(16)との間の流体室(38)に供給される圧縮流体によって、シリンダ(34)と連結されるスライダ(16)を支持し、当該スライダ(16)の重量を軽減することができる。
【0061】
シリンダ(34)は、ベース部材(32)を介してスライダ(16)と連結されてもよい。ベース部材(32)とは別の部材を介してシリンダ(34)がスライダ(16)と連結される場合に比べて部品点数を抑えることができる。
【0062】
シリンダ(34)は、基台(12)に固定され、シャフト(30)は、スライダ(16)と連結されてもよい。これにより、シリンダ(34)とスライダ(16)との間の流体室(38)に供給される圧縮流体によって、シャフト(30)と連結されるスライダ(16)を支持し、当該スライダ(16)の重量を軽減することができる。
【0063】
(第2の発明)
第2の発明は、工作機械(10)である。工作機械(10)は、上記の流体バランサ(18)と、ガイド軸(14)と、スライダ(16)と、スライダ(16)をガイド軸(14)に沿って移動させるためのモータ(20)と、を備える。上記の流体バランサ(18)が備えられているため、スライダ(16)を滑らかに移動させることができる。
【0064】
モータ(20)は、リニアモータであってもよい。ボールねじ等を含む動力伝達機構が不要となるため部品点数を抑えることができ、また動力伝達機構がある場合に比べて振動を抑えてスライダ(16)を滑らかに移動させることができる。
【要約】
スライダを滑らかに移動させ得る流体バランサおよび工作機械を提供する。流体バランサ(18)は、シャフト(30)と、シリンダ(34)と、シャフト(30)が挿通する貫通孔(32O)を有するベース部材(32)と、シャフト(30)とベース部材(32)との間に設けられ、シャフト(30)に対向する表面に、シャフト(30)の軸方向に沿って延びる溝(52)が、シャフト(30)の周方向に間隔をあけて複数形成されるスペーサ(50)と、ベース部材(32)に対してスペーサ(50)を支持する弾性支持部(60)と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8