(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】クッションフレーム及び乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
B60N2/68
(21)【出願番号】P 2017103645
(22)【出願日】2017-05-25
【審査請求日】2020-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】卜部 洋平
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-189729(JP,U)
【文献】実開昭63-185739(JP,U)
【文献】特開2008-238931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
A47C 7/00 - 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートを構成して、ベース部材に取り付けられるクッションフレームであって、
前記ベース部材上に配設された第1フレーム部材と、
前記ベース部材上に配設され、前記第1フレーム部材に固定された第2フレーム部材と、を備え、
前記第1フレーム部材は、シートベルト構成部材が取り付けられるシートベルトブラケットであり、
前記第2フレーム部材は、前記シートベルトブラケットよりもシート幅方向内側にあるインナーブラケットであり、
前記第1フレーム部材の下面には、前記ベース部材との間に隙間を形成するように上方に窪んで形成された凹部が形成されており、
前記第1フレーム部材の前記凹部において、前記第1フレーム部材と前記第2フレーム部材とが溶接されていることを特徴とするクッションフレーム。
【請求項2】
前記シートベルトブラケットの下面に形成された前記凹部は第1の凹部であり
、
前記インナーブラケットの下面には、前記ベース部材との間に隙間を形成するように上方に窪んで形成された第2の凹部が形成されており、
前記シートベルトブラケットの前記第1の凹部と、前記インナーブラケットの前記第2の凹部とが溶接されていることを特徴とする請求項1に記載のクッションフレーム。
【請求項3】
前記シートベルトブラケットと前記インナーブラケットとは、前記第1の凹部と前記第2の凹部とが上下に重ねられた状態で溶接されていることを特徴とする請求項2に記載のクッションフレーム。
【請求項4】
前記凹部は、前記シートベルト構成部材が取り付けられる被取付部よりも後方に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のクッションフレーム。
【請求項5】
前記第1フレーム部材は、下側に形成された底壁と、後側端部に形成され前記底壁に交差する方向に形成された立壁フランジと、を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のクッションフレーム。
【請求項6】
前記凹部は、前記第1フレーム部材の下面中央部に形成されており、
前記第1フレーム部材及び前記第2フレーム部材の少なくとも一方には、前記ベース部材にボルトによって取り付けられており、
前記第1フレーム部材及び前記第2フレーム部材の少なくとも一方における前記凹部よりも前側及び後ろ側に、前記ボルトを通す通し穴が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のクッションフレーム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のクッションフレームを備えることを特徴とする乗物用シート。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のクッションフレームと、
前記クッションフレームの後端部に設けられたリクライニング機構と、
前記リクライニング機構と連結し、着座者の背部を支持する背もたれ部を構成して骨格部分を成すシートバックフレームと、
前記クッションフレームの下部に設けられ、フロアに対して摺動可能に連結するスライドレールと、
前記シートバックフレームの上部に設けられ、着座者の頭部を支持するヘッドレストと、を備え、
前記クッションフレーム及び前記シートバックフレームから構成されるシートフレームの上にクッション材を載置した上で、表皮材により被覆することにより構成されることを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッションフレーム及び乗物用シートに係り、特に、溶接されたフレーム部材を備えるクッションフレーム及び乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートは、事故等が起きたときの着座者の移動を制限するためのシートベルトが設けられているものが一般的である。シートベルトは、帯状のウェビング、ウェビングに摺動可能に取り付けられたタング、タングに係合するバックル、及びウェビングの端部を固定するアンカー等から構成される。また、乗物用シートには、シートベルト構成部材であるバックルがシートベルトブラケットを介してベース部材(スライドレールやフロア)に取り付けられるものがある。
【0003】
特許文献1には、板材を折り曲げ形状に形成して成るシートベルトブラケット(同文献には、支持フレームと記載。)が開示されている。同文献に開示されたシートベルトブラケットによれば、板材を折り曲げ形状に形成して、立体的な形状を一体部品として形成できることで、部品点数を削減できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のシートベルトブラケットは、板材を折り曲げ形状に形成された一体部品であるため、一部のみ厚みを異ならせるようにする等、複雑な形状とすることは困難であった。
一方で、シートベルトブラケットを複数部品とすると、ベース部材への組付箇所が多くなるため、その組付作業が困難となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複雑な形状のシートベルトブラケットその他のフレーム部材を形成可能としつつ、フレーム部材のベース部材への組付作業性を向上できるクッションフレーム及び乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明のクッションフレームによれば、乗物用シートを構成して、ベース部材に取り付けられるクッションフレームであって、前記ベース部材上に配設された第1フレーム部材と、前記ベース部材上に配設され、前記第1フレーム部材に固定された第2フレーム部材と、を備え、前記第1フレーム部材は、シートベルト構成部材が取り付けられるシートベルトブラケットであり、前記第2フレーム部材は、前記シートベルトブラケットよりもシート幅方向内側にあるインナーブラケットであり、前記第1フレーム部材の下面には、前記ベース部材との間に隙間を形成するように上方に窪んで形成された凹部が形成されており、前記第1フレーム部材の前記凹部において、前記第1フレーム部材と前記第2フレーム部材とが溶接されている、ことにより解決される。
上記構成によれば、第1フレーム部材と第2フレーム部材との接続に別個の接続部材が必要にならないため重量増加を抑制することができ、第1フレーム部材近傍の剛性を向上できる。第1フレーム部材に凹部が形成されていることで、溶接ビードがベース部材に干渉することを回避し、コンパクトなクッションフレームとすることができる。また、凹部において溶接を施すことで、位置決めが容易となり溶接ビードを所定の位置に形成しやすいため溶接作業性が良好となる。さらに、2部品を溶接することによって、複雑な形状のフレーム部材を形成することができ、ベース部材への組付作業性を向上させることができる。
【0008】
また、前記シートベルトブラケットの下面に形成された前記凹部は第1の凹部であり、前記インナーブラケットの下面には、前記ベース部材との間に隙間を形成するように上方に窪んで形成された第2の凹部が形成されており、前記シートベルトブラケットの前記第1の凹部と、前記インナーブラケットの前記第2の凹部とが溶接されていると好ましい。
上記構成によれば、凹部同士が溶接されるため、溶接の位置決めがしやすくなり、組付作業性を向上させることができる。また、シートベルトブラケットの第1の凹部とインナーブラケットの第2の凹部とに溶接ビードが収まりやすくなる。
【0009】
また、前記シートベルトブラケットと前記インナーブラケットとは、前記第1の凹部と前記第2の凹部とが上下に重ねられた状態で溶接されていてもよい。
上記構成によれば、第1の凹部と第2の凹部とが上下に重ねられた状態で溶接されていることで、シートベルトブラケットとインナーブラケットとの剛性及び接合強度を高めることができる。
【0010】
また、前記凹部は、前記シートベルト構成部材が取り付けられる被取付部よりも後方に設けられていると好ましい。
上記構成によれば、後部衝突等の入力に対して剛性を向上させることができる。
【0011】
また、前記第1フレーム部材は、下側に形成された底壁と、後側端部に形成され前記底壁に交差する方向に形成された立壁フランジと、を有すると好ましい。
上記構成によれば、シートベルトブラケットが底壁と立壁フランジとを有することで、シートベルトブラケットの剛性が高められる。
【0012】
また、前記凹部は、前記第1フレーム部材の下面中央部に形成されており、前記第1フレーム部材及び前記第2フレーム部材の少なくとも一方には、前記ベース部材にボルトによって取り付けられており、前記第1フレーム部材及び前記第2フレーム部材の少なくとも一方における前記凹部よりも前側及び後ろ側に、前記ボルトを通す通し穴が形成されていてもよい。
上記構成によれば、溶接された第1フレーム部材と第2フレーム部材との前後方向の剛性のバランスを保つことができる。前後方向において溶接部位に干渉せずにボルトによって第1フレーム部材及び第2フレーム部材の少なくとも一方をベース部材に組み付けることができ、組立作業性を向上させることができる。
【0013】
また、前記クッションフレームを備える乗物用シートであってもよい。
上記構成により、乗物用シートにおいて上記の効果を奏し得ることとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、重量増加を抑制することができ、第1フレーム部材近傍の剛性を向上でき、溶接ビードがベース部材に干渉することを回避し、コンパクトなクッションフレームとすることができ、ベース部材への組付作業性を向上させることができる。
また、シートベルトブラケットとインナーブラケットに溶接ビードが収まりやすくなる。
また、シートベルトブラケットとインナーブラケットとの剛性及び接合強度を高めることができる。
さらに、後部衝突等の入力に対して剛性を向上させることができる。
また、溶接された第1フレーム部材と第2フレーム部材との前後方向の剛性のバランスを保つことができる。
また、乗物用シートにおいて上記の効果を奏し得ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【
図2】車両用シートの骨格を成すシートフレームの斜視図である。
【
図3】
図2に示すシートクッションフレームの一部に取付部材を介してバックルが取り付けられた状態を示す図であって、
図2のIII方向矢視の左側側面図である。
【
図4】インナーブラケット及びシートベルトブラケットについての他のクッションフレームを構成する部材への取付状態を示す平面図である。
【
図5】インナーブラケット及びシートベルトブラケットの斜視図である。
【
図6】インナーブラケット及びシートベルトブラケットの固定状態を示す、
図3のVI-VI断面における断面図である。
【
図7】インナーブラケット及びシートベルトブラケットのシートクッションフレームへの取付状態を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0017】
また、以下では、本実施形態に係る乗物用シートとして、車両用シートSを例に挙げて説明することとするが、車両用シートSは本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明に係るフレームカバーを備えるシートは、車両以外の乗り物にも適用可能であり、例えば、船舶や航空機、シート付きの産業用機械等にも適用可能である。
また、以下において、前後、左右、上下の各方向は、車両用シートSの着座者から見た各方向と一致することとする。
【0018】
<<全体構成について>>
まず、本発明のシートである本実施形態に係る車両用シートSの全体構成について、
図1を主に参照し、車両用シートSの骨格を成すシートフレームFについて
図2を主に参照して概説する。
図1は、車両用シートSの斜視図、
図2は、シートフレームFの斜視図である。
車両用シートSは、シートバックS1と、シートクッションS2と、シートベルト5と、から主に構成されている。また、車両用シートSは、骨格部分を成すシートフレームFの上にクッション材を載置した上で、表皮材により被覆することにより構成されている。また、車両用シートSは、フロア7に対して摺動可能とするスライドレール60を下部に備える。
【0019】
シートバックS1は、着座者の背部を支持する背もたれ部を構成し、骨格部分を成すシートバックフレーム1を有する。
シートクッションS2は、着座者の臀部を支持する座部を構成し、骨格部分を成すクッションフレームとしてのシートクッションフレーム2を有する。
シートクッションS2の後端部に、リクライニング機構4が設けられている。シートバックS1は、シートクッションS2に設けられたリクライニング機構4によって、シートクッションS2に対する相対的な傾斜度を調整可能にシートクッションS2に接続されている。
【0020】
シートフレームFは、
図2に示すように、シートバックフレーム1と、シートクッションフレーム2と、から主に構成されている。なお、
図2においては、シートバックフレーム1の上部は省略して示す。
シートクッションフレーム2は、本発明のクッションフレームに相当するものであり、左右の両側後端部に設けられた板フレーム25R,25Lと、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15と、パイプフレーム24と、を主に備える。シートクッションフレーム2は、スライドレール60上に取り付けられている。
【0021】
板フレーム25Rは、側面視略L字形状に形成されており、そのシート幅方向外側に、ブラケット6がボルト・ナットにより取り付けられている。ブラケット6には、シートベルト構成部材であるアンカー5cが固定される。
板フレーム25Lは、側面視平行四辺形状に形成されており、その下端部において、インナーブラケット14がボルト19a,19c、ナット19bにより取り付けられている。インナーブラケット14とシートベルトブラケット15とは一体的に溶接されており、シートベルトブラケット15には、後述する取付部材5dを介してバックル5eが取り付けられる。
【0022】
インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15は、スライドレール60に取り付けられている。スライドレール60は、主要な構成として、左右のアッパーレール62、左右のロアレール63を備える。左右のアッパーレール62及び左右のロアレール63はそれぞれ、シート幅方向に離間して平行に配置されている。アッパーレール62は、ロアレール63に対して摺動可能に取り付けられている。
インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15は、スライドレール60のアッパーレール62に取り付けられている。なお、インナーブラケット14周りの詳細については後述する。
【0023】
パイプフレーム24は、
図2に示すように、上面視略U字状に形成されており、その右側後端部が板フレーム25Rに溶接されており、その左側後端部がインナーブラケット14に溶接されて構成されている。
【0024】
シートベルト5は、帯状のウェビング5aと、ウェビング5aに摺動可能に取り付けられたタング5bと、を備える。
ウェビング5aの一端は、シートクッションフレーム2のブラケット6に取り付けられたアンカー5cによって固定されている。
タング5bは、取付部材5dを介してシートクッションフレーム2に取り付けられたバックル5eによって保持されている。
特に、取付部材5dは、本発明に係るシートベルト構成部材に相当する。
【0025】
<<インナーブラケット及びシートブラケット周りの構成について>>
インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15周りの構成について、
図3~
図7を参照して説明する。
図3は、
図2に示すシートクッションフレーム2の一部に取付部材5dを介してバックル5eが取り付けられた状態を示す図であって、
図2のIII方向矢視の左側側面図である。
図4は、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15についての他のシートクッションフレーム2を構成する部材への取付状態を示す平面図、
図5は、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15の斜視図である。
図6は、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15の固定状態を示す、
図3のVI-VI断面における断面図、
図7は、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15のシートクッションフレーム2への取付状態を示す底面図である。
【0026】
インナーブラケット14は、第2フレーム部材に相当し、パイプフレーム24と板フレーム25Lとを連結する部材であり、
図5に示すように、底壁14gと、立壁14hと、保持部14iと、から主に構成されており、スライドレール60上に配設されている。
【0027】
底壁14gは、インナーブラケット14の下端部に形成されており、アッパーレール62及びシートベルトブラケット15と連結される部位である。
図3及び
図7に示すように、インナーブラケット14の下面中央部である底壁14gの下面中央部には、アッパーレール62との間に隙間を形成するように上方に窪んで形成された第2の凹部としての凹部14bが形成されている。
また、底壁14gには、凹部14bを挟んだ前後位置に、板厚方向に貫通する通し穴14e,14fが形成されている。通し穴14e,14fは、
図6に示すように、インナーブラケット14とアッパーレール62とを締結するためのボルト17aを通すための穴である。
【0028】
立壁14hは、板フレーム25Lと連結される部位であり、底壁14gのシート幅方向内側の縁から上方に立設している。立壁14hの中央部分及び後ろ側部分には、板フレーム25Lに接続するためのボルト19a,19c及びナット19bのうち、ボルト19a,19cを通すための通し穴14cが板厚方向に貫通して形成されている。
【0029】
保持部14iは、パイプフレーム24を保持する部位であり、立壁14hの前側に連続して形成されており、パイプフレーム24の一部を覆うように断面コの字状に形成されて、前後方向に延在している。
【0030】
シートベルトブラケット15は、第1フレーム部材に相当し、バックル5eの取付部材5dを取付対象となる部材であり、
図5に示すように、断面略L字状に形成されてシート前後方向に延在して形成されている。シートベルトブラケット15は、底壁15gと、立壁15hと、立壁フランジ15dと、から主に構成されており、スライドレール60の上方に配設されている。
また、シートベルトブラケット15は、インナーブラケット14よりもシート幅方向外側にあり、インナーブラケット14の底壁14g上に載置されている。また、シートベルトブラケット15は、
図7に示すように、シートベルトブラケット15の下面である底壁15gの下面におけるインナーブラケット14の底壁14gの縁部分に重なる部分において、インナーブラケット14と溶接により一体的に接合されている。
【0031】
底壁15gは、アッパーレール62及びシートベルトブラケット15と連結される部位である。
図3及び
図7に示すように、シートベルトブラケット15の下面中央部である底壁15gの下面中央部には、インナーブラケット14の凹部14bに沿うように、上方に窪んで形成された第1の凹部としての凹部15bが形成されている。
【0032】
図6及び
図7に示すように、インナーブラケット14とシートベルトブラケット15とは、底壁14gと底壁15gとが重ねられた状態で、凹部14bと凹部15bとが重なる位置において、下側から溶接されている。このように、凹部14bと凹部14bとが、上下に重ねられた状態で溶接されていることで、インナーブラケット14とシートベルトブラケット15との剛性及び接合強度を高めることができる。
なお、底壁14gと底壁15gの上下関係、換言すると凹部14bと凹部15bの上下関係は逆であってもよい。
【0033】
また、底壁15gには、凹部15bを挟んだ前後位置であって通し穴14e,14fと連通する位置に、板厚方向に貫通する通し穴15e,15fが形成されている。通し穴15fは、
図6に示すように、シートベルトブラケット15とアッパーレール62とを締結するためのボルト17aを通すための穴である。
このように、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15には、凹部14b,15bよりも前側及び後ろ側に、通し穴14e,14f,15e,15fが形成されている。このように形成されていることで、溶接されたインナーブラケット14とシートベルトブラケット15との前後方向の剛性のバランスを保つことができる。また、前後方向において溶接ビード16に干渉せずに、ボルト17aによってインナーブラケット14及びシートベルトブラケット15をアッパーレール62に組み付けることができ、組立作業性を向上させることができる。
【0034】
立壁15hは、バックル5eの取付部材5dと連結される部位であり、底壁15gのシート幅方向外側の縁から上方に立設している。
図5に示すように、立壁15hの凹部15bよりも前側には、取付部材5dに接続するためのボルト18a及びナット18bのうち、ボルト18aを通すための被取付部としての通し穴15cが板厚方向に貫通して形成されている。
【0035】
また、立壁15hにおける、通し穴15cよりも前側、及び上側には、シート幅方向外側に折り返された折り片15aが形成されている。この折り片15aは、立壁15hに取付部材5dを介して連結されたバックル5eの回動軌跡上に配設されており、バックル5eの回動範囲を制限して、乗員のバックル5eの取扱いを容易にするものである。
【0036】
また、立壁フランジ15dは、底壁15gの後側端部及び立壁14hの後端部に連続し、かつ、シート幅方向に立設して両者の延在方向に交差する方向に延在している。シートベルトブラケット15は、立壁フランジ15dを有することにより、剛性が高められている。
【0037】
図3及び
図5に示すように、凹部14b,15bは、バックル5eを取り付ける取付部材5dが取り付けられるボルト18aが通される通し穴15cよりも後方に設けられている。このように構成されていることで、後方からの荷重入力に対してのインナーブラケット14及びシートベルトブラケット15の剛性を向上させることができる。つまり、乗り物に後部衝突等によって、後方からインナーブラケット14及びシートベルトブラケット15に荷重が加わったとしても、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15の変形を抑制することができる。
【0038】
上記実施形態に係るシートクッションフレーム2において、アッパーレール62とシートベルトブラケット15とが溶接によって接続されており、別個の接続部材によって接続されているわけではない。このため、別個の接続部材に依る重量増加を抑制することができ、シートベルトブラケット15近傍の剛性を向上させることができる。
【0039】
上記のように、インナーブラケット14の凹部14bと、シートベルトブラケット15の凹部15bとが溶接されていることで、インナーブラケット14とシートベルトブラケット15とは一体的に形成されている。このように、凹部14b,15b同士が溶接されるため、溶接の位置決めがしやすくなり、組付作業性を向上させることができる。また、インナーブラケット14の凹部14bとシートベルトブラケット15の凹部15bとに溶接ビード16が収まることで、溶接作業性が向上する。
【0040】
さらに、シートベルトブラケット15にも凹部15bが形成されていることで、溶接ビード16がアッパーレール62に配置的に干渉することを回避できるため、シートクッションフレーム2を全体としてコンパクトにすることができる。
また、凹部15bにおいて、シートベルトブラケット15と溶接ビード16とを溶接することで、位置決めが容易となり溶接ビード16を所定の位置に形成しやすいため溶接作業性が良好となる。
【0041】
また、インナーブラケット14とシートベルトブラケット15とが、一体物ではなく、分かれて2部品で構成されており、溶接によって一体的に形成されている。このように構成されていることで、複雑な形状のブラケットを形成することを可能としつつ、2部品をばらばらにアッパーレール62へ組み付けるよりも、組付作業性を向上させることができる。
【0042】
また、上記実施形態においては、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15の双方に通し穴14e,14f,15e,15fを形成してボルト17a・ナット17bによって、アッパーレール62に固定するものとして説明した。このようにすれば、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15の重なった部分がアッパーレール62に取り付けられるため、取付強度を高くすることができるため好ましい。
【0043】
しかしながら、本発明はこのような構成に限定されず、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15の少なくとも一方のみをアッパーレール62に取り付けるようにしてもよい。このように、いずれか一方のみをアッパーレール62に取り付けたとしても、インナーブラケット14とシートベルトブラケット15は溶接接合されて一体的に形成されているため、両部材ともにアッパーレール62に取り付けられることとなる。
【0044】
また、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15が取り付けられるベース部材は、アッパーレール62に限定されず、シートクッションフレーム2を構成する他の部位であってもよく、さらには、車両のフロア7であってもよい。
【0045】
さらに、シートベルトブラケットに溶接されるフレーム部材として、インナーブラケット14を例に説明したが、インナーブラケット14に限定されず、シートクッションフレーム2を構成する他の部材であってもよい。
【0046】
上記実施形態においては、車両用シートSの左側に設けられた、バックル5eを取り付ける取付部材5dが取り付けられるシートベルトブラケット15及びインナーブラケット14について説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
例えば、車両用シートSが、その右側において、アンカー5cが取り付けられるブラケットとインナーブラケットと、を備えるものとして、同様の構成にしてもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態においては、インナーブラケット14とシートベルトブラケット15との溶接部位について説明した。しかしながら、本願発明は、これらの部材の溶接に関するものに限定されるものではなく、シートクッションフレーム2を構成するフレーム部材に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートバック
S2 シートクッション
F シートフレーム
1 シートバックフレーム
2 シートクッションフレーム(クッションフレーム)
5 シートベルト
5a ウェビング
5b タング
5c アンカー(シートベルト構成部材)
5d 取付部材(シートベルト構成部材)
5e バックル
6 ブラケット
7 フロア(ベース部材)
14 インナーブラケット(第2フレーム部材、フレーム部材)
14b 凹部(第2の凹部)
14c 通し穴
14e,14f 通し穴
14g 底壁
14h 立壁
14i 保持部
15 シートベルトブラケット(第1フレーム部材、フレーム部材)
15a 折り片
15b 凹部(第1の凹部)
15c 通し穴(被取付部)
15d 立壁フランジ
15e,15f 通し穴
15g 底壁
15h 立壁
16 溶接ビード
17a,18a,19a,19c ボルト
17b,18b,19b ナット
24 パイプフレーム
25R,25L 板フレーム
60 スライドレール
62 アッパーレール(ベース部材)
63 ロアレール