(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ホームドア制御システム
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20220105BHJP
B61L 23/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B61B1/02
B61L23/00 Z
(21)【出願番号】P 2018004404
(22)【出願日】2018-01-15
【審査請求日】2020-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2017008277
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017120187
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017133379
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(73)【特許権者】
【識別番号】395007277
【氏名又は名称】東京都
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 学
(72)【発明者】
【氏名】鴻巣 光司
(72)【発明者】
【氏名】原 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】牛嶋 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕
(72)【発明者】
【氏名】神戸 陽介
(72)【発明者】
【氏名】岡本 誠司
(72)【発明者】
【氏名】久保 実
(72)【発明者】
【氏名】岩田 洋明
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-264013(JP,A)
【文献】特開2001-010485(JP,A)
【文献】特開2015-174468(JP,A)
【文献】特開2004-291742(JP,A)
【文献】特開2011-186778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
B61L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅のホームに配置されたホームドアを制御するホームドア制御システムであって、
少なくとも鉄道車両の外部から撮像可能な部位に設けられる識別表示と、
前記識別表示を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段による前記識別表示の撮像結果に基づいて前記鉄道車両の動作状態を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知される前記鉄道車両の動作状態に基づいて前記ホームドアを制御する制御手段と、
を備え
、
前記識別表示は、光学的に読み取り可能な情報コードであって、前記鉄道車両の複数の車両ドアのうちの少なくとも一部に設けられ、
前記鉄道車両の動作状態には、前記車両ドアの開動作、開状態、閉動作及び閉状態の少なくとも1つを含む当該車両ドアの動作状態が含まれ、
前記検知手段は、前記撮像手段により連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される前記識別表示の位置の変化をパラメータとして考慮して前記鉄道車両の動作状態を検知することを特徴とするホームドア制御システム。
【請求項2】
前記識別表示は、前記車両ドアが閉状態である場合に前記撮像手段により撮像されて、前記車両ドアが開状態である場合に前記撮像手段により少なくとも一部が撮像されないように配置されることを特徴とする請求項1に記載のホームドア制御システム。
【請求項3】
前記撮像手段は、前記車両ドアが閉状態であるときの前記識別表示が撮像視野内に位置し、前記車両ドアが開状態であるときの前記識別表示の少なくとも一部が撮像視野外に位置するように設置されることを特徴とする請求項1または2に記載のホームドア制御システム。
【請求項4】
前記検知手段は、前記撮像手段により撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される前記識別表示の移動方向を考慮して前記車両ドアの動作状態を検知することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項5】
前記検知手段は、前記撮像手段により連続して移動するように撮像されていた前記識別表示が撮像されなくなり、前回撮像された前記識別表示が撮像画像のうち縁部よりも中央側にて撮像されている場合に、前記車両ドアの開状態を検知することを特徴とする請求項4に記載のホームドア制御システム。
【請求項6】
前記検知手段は、前回まで連続して撮像されていなかった前記識別表示が撮像画像のうち縁部よりも中央側にて移動するように撮像される場合に、前記車両ドアの閉動作を検知することを特徴とする請求項4または5に記載のホームドア制御システム。
【請求項7】
前記検知手段は、連続して撮像されている前記識別表示の移動方向が逆方向に変化する場合に、前記車両ドアの再開閉動作を検知することを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項8】
前記識別表示は、複数の特定パターンを有し所定の情報が光学的に読み取り可能に記録された情報コードであって、前記車両ドアが開状態である場合に撮像されないように配置され、
前記検知手段は、前記撮像手段により連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される前記特定パターンの検出数の変化を考慮して前記車両ドアの動作状態を検知することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項9】
前記検知手段は、前記撮像手段により連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される前記識別表示の移動量を考慮して前記車両ドアの動作状態を検知することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項10】
前記検知手段は、前記撮像手段により連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される前記識別表示の移動量が前記車両ドアの開閉動作時の移動距離に基づいて設定される所定の移動量閾値以上になる場合に、前記鉄道車両の移動を検知することを特徴とする請求項9に記載のホームドア制御システム。
【請求項11】
前記検知手段は、前記識別表示の位置の時間変化が第1閾値以上であるとき、前記鉄道車両の動作状態が変化していると検知することを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項12】
前記検知手段は、前記識別表示の位置の時間変化に基づいて、当該識別表示が移動していないとみなされる状態が所定時間以上維持される場合に、前記車両ドアの閉状態または前記鉄道車両の停車状態を検知することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項13】
前記検知手段は、前記識別表示の位置の時間変化に基づいて、前記車両ドアの閉状態が検知される状態から前記識別表示の移動量が第2閾値以上となると、前記車両ドアの開動作を検知することを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項14】
前記検知手段は、前記識別表示の位置の時間変化に基づいて、前記車両ドアの開動作が検知される状態から前記識別表示が前記撮像手段により撮像されなくなった状態が所定時間以上維持される場合に、前記車両ドアの開状態を検知することを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項15】
前記検知手段は、前記識別表示の位置の時間変化に基づいて、前記車両ドアの閉動作の検知後に前記識別表示が停止したときの位置が前回の当該識別表示の停止位置に一致するとみなされる場合に、前記車両ドアの閉状態を検知することを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項16】
前記検知手段は、前記識別表示の位置の時間変化に基づいて、前記車両ドアの開動作の際に進入側に移動する前記識別表示が前記鉄道車両の停車時に前記撮像手段の撮像視野の進入側縁部に位置している場合には、前記鉄道車両の動作状態を検知しないことを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項17】
前記検知手段は、前記識別表示の位置の時間変化に基づいて、前記車両ドアの開動作の際に退出側に移動する前記識別表示が前記鉄道車両の停車時に前記撮像手段の撮像視野の退出側縁部に位置している場合には、前記鉄道車両の動作状態を検知しないことを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項18】
前記識別表示は、当該識別表示を設けた前記車両ドアの開閉方向に関する情報が光学的に読み取り可能に記録された情報コードであることを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項19】
前記識別表示は、前記鉄道車両の動作状態を検知する際に前記パラメータと比較される閾値を鉄道事業者毎または車種毎に変化させるための情報が光学的に読み取り可能に記録された情報コードであることを特徴とする請求項1~18のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項20】
前記撮像手段は、前記識別表示が設けられる複数の前記車両ドアに向けて1つずつ設けられ、
前記検知手段は、同時期に複数の前記撮像手段のうちの一部にて前記識別表示が一定時間継続して認識される撮像結果が得られ、残部にて前記識別表示が一定時間継続して認識されない撮像結果が得られる場合に、前記残部の前記撮像手段による撮像結果を前記鉄道車両の動作状態の検知のために利用しないことを特徴とする請求項1~19のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項21】
前記鉄道車両の動作状態を、前記撮像手段による前記識別表示の撮像結果に基づく検知と異なる構成で検知する第2検知手段を備えることを特徴とする請求項1~20のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項22】
前記車両ドアは、一方のドアと他方のドアを有する両開き式として構成され、
前記識別表示が設けられる前記複数の車両ドアのうち、一部の車両ドアには前記一方のドアのみに前記識別表示が設けられ、前記一部の車両ドアとは異なる一部の車両ドアには前記他方のドアのみに前記識別表示が設けられることを特徴とする請求項1~21のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項23】
前記車両ドアは、一方のドアと他方のドアを有する両開き式として構成され、
前記識別表示は、閉状態の前記一方のドアおよび前記他方のドアの双方に跨るように設けられることを特徴とする請求項1~21のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項24】
前記識別表示は、前記車両ドアを囲って当該車両ドアとともに移動しない部位と閉状態の前記車両ドアとの双方に跨るように設けられることを特徴とする請求項1~21
のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項25】
前記識別表示は、1つの前記車両ドアに対して複数設けられ、
前記検知手段は、前記複数の識別表示の前記撮像手段による撮像結果に基づいて前記車両ドアの動作状態を検知することを特徴とする請求項1~24のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項26】
前記車両ドアは、一方のドアと他方のドアを有する両開き式として構成され、
1つの前記車両ドアに対して、前記複数の識別表示のうちの一部は、前記一方のドアに設けられ、前記複数の識別表示のうちの他の一部は、前記他方のドアに設けられることを特徴とする請求項25に記載のホームドア制御システム。
【請求項27】
前記識別表示は、矩形状のコード領域のうちの三隅に当該コード領域の特定に利用可能な位置検出パターンが設けられる二次元コードであって、
1つの前記車両ドアに対して、前記一方のドアに設けられる二次元コード及び前記他方のドアに設けられる二次元コードは、2つの前記位置検出パターンが互いに近づくように配置されることを特徴とする請求項26に記載のホームドア制御システム。
【請求項28】
前記識別表示は、二次元コードであって、
1つの前記車両ドアに対して、前記一方のドアに設けられる二次元コードと前記他方のドアに設けられる二次元コードとは、ミラー反転した関係にて同じ情報が記録されるように構成されることを特徴とする請求項26または27に記載のホームドア制御システム。
【請求項29】
前記検知手段は、前記撮像手段により撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される前記複数の識別表示のそれぞれの移動方向を考慮して前記鉄道車両の動作状態を検知することを特徴とする請求項26~28のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項30】
前記検知手段は、前記撮像手段により撮像された前記複数の識別表示の全てが同じ方向に移動している場合に、前記鉄道車両が移動中であることを検知することを特徴とする請求項29に記載のホームドア制御システム。
【請求項31】
前記検知手段は、前記撮像手段により撮像された前記複数の識別表示のうち一部の移動方向と他の一部の移動方向とが近づく方向である場合に、前記車両ドアの閉動作を検知することを特徴とする請求項29または30に記載のホームドア制御システム。
【請求項32】
前記検知手段は、前記撮像手段により撮像された前記複数の識別表示のうち一部の移動方向と他の一部の移動方向とが遠ざかる方向である場合に、前記車両ドアの開動作を検知することを特徴とする請求項29~31のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項33】
前記複数の識別表示には、前記車両ドアを囲って当該車両ドアとともに移動しない部位に設けられる他の識別表示が含まれることを特徴とする請求項25~32のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項34】
前記検知手段は、前記撮像手段により撮像された前記複数の識別表示のうち前記他の識別表示を除く識別表示が移動している場合に、前記鉄道車両の停車状態であって前記車両ドアが開閉動作中であることを検知することを特徴とする請求項33に記載のホームドア制御システム。
【請求項35】
前記検知手段は、前記撮像手段により撮像された前記複数の識別表示の全てが所定時間移動していない場合に、前記鉄道車両の停車状態であって前記車両ドアの閉状態を検知することを特徴とする請求項25~34のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項36】
前記撮像手段による撮像画像から撮像された前記複数の識別表示の相対位置を検出する相対位置検出手段を備え、
前記検知手段は、前記相対位置検出手段により検出された前記複数の識別表示の相対位置の変化を考慮して前記車両ドアの動作状態を検知することを特徴とする請求項25~35のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項37】
前記識別表示は、前記鉄道車両の複数の車両ドアのそれぞれに設けられ、
前記制御手段は、前記検知手段により検知される前記複数の車両ドアのそれぞれの動作状態に基づいて、対応する前記ホームドアの開閉箇所を個々に制御することを特徴とする請求項1~36のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項38】
前記制御手段は、前記検知手段により検知される前記鉄道車両の動作状態に基づいて、前記ホームドアの全ての開閉箇所を同じ動作状態に制御することを特徴とする請求項1~36のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項39】
前記検知手段は、前記撮像手段による前記識別表示の撮像結果から複数の車両ドアの動作状態をそれぞれ求めて多数決を利用することで、全ての前記車両ドアに関して統一された前記車両ドアの動作状態を検知することを特徴とする請求項38に記載のホームドア制御システム。
【請求項40】
前記撮像手段は、前記識別表示が設けられる1つの前記車両ドアに向けて複数設けられることを特徴とする請求項1~39のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項41】
前記複数の撮像手段は、互いに撮像視野の一部が重なるようにそれぞれ配置されることを特徴とする請求項40に記載のホームドア制御システム。
【請求項42】
前記複数の撮像手段は、少なくとも前記識別表示が撮像される可能性がある範囲について互いに撮像視野が重なるようにそれぞれ配置されることを特徴とする請求項41に記載のホームドア制御システム。
【請求項43】
前記検知手段は、前記鉄道車両の停車時に2つの前記撮像手段によって同じ前記識別表示が撮像された場合に、当該識別表示の移動方向が中央側となる撮像画像に基づいて前記車両ドアの動作状態を検知することを特徴とする請求項40~42のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項44】
前記検知手段は、前記識別表示が設けられる前記車両ドアごとに1つ配置されるように複数設けられ、
前記制御手段は、前記複数の検知手段によるそれぞれの検知結果に基づいて前記ホームドアを制御することを特徴とする請求項40~43のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項45】
1つの前記車両ドアに対して設けられる前記複数の撮像手段のいずれか1つは、自ら撮像した撮像画像と残りの撮像手段から取得した撮像画像とから前記車両ドアの動作状態を検知可能にする前記検知手段として機能するように構成されることを特徴とする請求項40~44のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項46】
前記撮像手段は、前記識別表示が設けられる1つの前記車両ドアに向けて前記鉄道車両の移動方向に沿い3つ設けられ、
前記3つの撮像手段のうち前記鉄道車両の移動方向にて中央に設けられる撮像手段が、自ら撮像した撮像画像と残りの撮像手段から取得した撮像画像とから前記車両ドアの動作状態を検知可能にする前記検知手段として機能するように構成されることを特徴とする請求項45に記載のホームドア制御システム。
【請求項47】
1つの前記車両ドアに対して設けられる前記複数の撮像手段は、前記識別表示を認識する際に取得した情報を他の撮像手段と共用することを特徴とする請求項40~46のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項48】
前記識別表示は、誤り訂正機能を有し所定の情報が記録される情報コードであり、
前記情報コードを読み取る際に誤り訂正される訂正度合いが所定値以上になると前記情報コードの劣化を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1~47のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【請求項49】
前記識別表示は、矩形状のコード領域のうちの三隅に当該コード領域の特定に利用可能な位置検出パターンが設けられる二次元コードであって、
前記二次元コードは、3つの前記位置検出パターンのうちの2つが下方となるように配置されることを特徴とする請求項1~48のいずれか一項に記載のホームドア制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームに設置されたホームドアを制御するホームドア制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、駅のホームからの落下事故防止等の観点から、鉄道車両の車両ドアの開閉と連動するように開閉させるホームドアをホームに設置している駅が増えてきている。このようなホームドアを車両ドアの閉状態に連動させて自動的に閉状態に制御する技術として、例えば、下記特許文献1に開示されるホーム柵開閉システムが知られている。このホーム柵開閉システムは、1系統の無線通信を用いてドア開閉動作の情報を確実に伝送する目的で、列車に設置される車両ドア操作装置および車上無線機と、ホームに設置される地上無線機およびホーム柵制御装置とを備えるように構成されている。そして、低出力モードの車上無線機と低出力モードの地上無線機との間での通信の確立によって列車とホームを関連づけた後、車両ドア操作装置とホーム柵制御装置とは、高出力モードの車上無線機と高出力モードの地上無線機との間の通信によって車両ドアとホームドアとのドア開閉動作を連動させて制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示されるように鉄道車両(列車)に車上無線機等を設置する構成では、そのホームを利用する全ての鉄道車両に同等の無線通信機能を有する無線機等を設置するため、ホームドアの設置に合わせて鉄道車両の工事・改造等が必要となる。特に、複数の鉄道会社の鉄道車両が同じホームに乗り入れる場合には全ての鉄道車両に既定の無線機等を設置するための工事・改造等が必要となるだけでなく、一部の鉄道車両の仕様によってはその鉄道車両に上記既定の無線機等を設置することが困難な場合も想定される。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、無線通信を利用することなく、鉄道車両の動作状態に連動させてホームドアを自動的に制御し得るホームドア制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、
駅のホームに配置されたホームドアを制御するホームドア制御システムであって、
少なくとも鉄道車両の外部から撮像可能な部位に設けられる識別表示と、
前記識別表示を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段による前記識別表示の撮像結果に基づいて前記鉄道車両の動作状態を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知される前記鉄道車両の動作状態に基づいて前記ホームドアを制御する制御手段と、
を備え、
前記識別表示は、光学的に読み取り可能な情報コードであって、前記鉄道車両の複数の車両ドアのうちの少なくとも一部に設けられ、
前記鉄道車両の動作状態には、前記車両ドアの開動作、開状態、閉動作及び閉状態の少なくとも1つを含む当該車両ドアの動作状態が含まれ、
前記検知手段は、前記撮像手段により連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される前記識別表示の位置の変化をパラメータとして考慮して前記鉄道車両の動作状態を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、撮像手段による識別表示の撮像結果に基づいて鉄道車両の動作状態が検知手段により検知され、この検知された鉄道車両の動作状態に基づいてホームドアが制御手段により制御される。車両ドアの開閉や鉄道車両の停車・発車等、鉄道車両の動作状態が変化することで撮像される識別表示の位置等も変化するため、識別表示の撮像結果に基づいて鉄道車両の動作状態を検知でき、無線通信を利用することなく、検知した鉄道車両の動作状態に連動させてホームドアを自動的に制御することができる。
【0008】
特に、識別表示は、鉄道車両の複数の車両ドアのうちの少なくとも一部に設けられ、鉄道車両の動作状態には、車両ドアの開動作、開状態、閉動作及び閉状態の少なくとも1つを含む当該車両ドアの動作状態が含まれる。これにより、車両ドアが開閉することで撮像される識別表示の位置等も変化するため、識別表示の撮像結果に基づいて車両ドアの動作状態を検知でき、無線通信を利用することなく、検知した車両ドアの動作状態に連動させてホームドアを自動的に制御することができる。
そして、識別表示は、光学的に読み取り可能な情報コードである。情報コードは、その目的上、撮像画像から認識しやすく生成されるため、誤認され難くなり、識別表示の認識精度を向上させることができる。特に、その情報コードに、例えば、車両ドアの開動作における情報コードの移動方向や閉動作における情報コードの移動方向に関する情報を記録することで、その情報コードの読み取りに応じて車両ドアの開動作や閉動作を正確に検知することができる。
さらに、検知手段は、撮像手段により連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される識別表示の位置の変化をパラメータとして考慮して鉄道車両の動作状態を検知する。鉄道車両の動作状態に応じて検出される識別表示の位置が変化するので、この識別表示の位置の変化をパラメータとして考慮することで鉄道車両の動作状態を検知することができる。
【0009】
請求項2の発明では、識別表示は、車両ドアが閉状態である場合に撮像手段により撮像されて、車両ドアが開状態である場合に撮像手段により少なくとも一部が撮像されないように配置されるため、識別表示の撮像結果に基づいて車両ドアの閉状態や開状態を含めた動作状態を容易に検知することができる。
【0010】
請求項3の発明では、撮像手段は、車両ドアが閉状態であるときの識別表示が撮像視野内に位置し、車両ドアが開状態であるときの識別表示の少なくとも一部が撮像視野外に位置するように設置されるため、識別表示の撮像結果に基づいて車両ドアの閉状態や開状態を含めた動作状態を容易に検知することができる。
【0011】
請求項4の発明では、検知手段は、撮像手段により撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される識別表示の移動方向を考慮して車両ドアの動作状態を検知する。これにより、車両ドアが開状態になる前の開動作や閉状態になる前の閉動作を迅速に検知でき、車両ドアの動作状態の検知に関する処理時間を短縮することができる。
【0013】
請求項5の発明では、検知手段は、撮像手段により連続して移動するように撮像されていた識別表示が撮像されなくなり、前回撮像された識別表示が撮像画像のうち縁部よりも中央側にて撮像されている場合に、車両ドアの開状態を検知する。鉄道車両が移動中であることから識別表示が撮像手段の撮像視野を通過していれば、最後に撮像された識別表示が撮像画像のうち中央側ではなく縁部にて撮像されるはずなので、鉄道車両が移動中である場合に車両ドアの開状態であると誤検知されることを抑制することができる。
【0014】
請求項6の発明では、検知手段は、前回まで連続して撮像されていなかった識別表示が撮像画像のうち縁部よりも中央側にて移動するように撮像される場合に、車両ドアの閉動作を検知する。鉄道車両が移動中であることから識別表示が撮像手段の撮像視野を通過していれば、前回まで連続して撮像されていなかった識別表示が撮像画像のうち中央側ではなく縁部から移動するように撮像されるはずなので、鉄道車両が移動中である場合に車両ドアの閉動作であると誤検知されることを抑制することができる。
【0015】
請求項7の発明では、検知手段は、連続して撮像されている識別表示の移動方向が逆方向に変化する場合に、車両ドアの再開閉動作を検知する。車両ドアでの挟み込み防止等のために、車両ドアが閉動作している途中で開動作する場合や開動作している途中で閉動作する場合のような車両ドアの再開閉動作時には、撮像されている識別表示の移動方向が逆方向に変化するので、このような逆方向への識別表示の移動を検知することで、車両ドアの再開閉動作を検知することができる。
【0016】
請求項8の発明では、識別表示は、複数の特定パターンを有し所定の情報が光学的に読み取り可能に記録された情報コードであって、車両ドアが開状態である場合に撮像されないように配置される。そして、検知手段は、撮像手段により連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される特定パターンの検出数の変化を考慮して車両ドアの動作状態を検知する。これにより、車両ドアが開状態になる際、例えば、まずその開動作時における移動方向側の特定パターンが撮像されなくなった後に残りの特定パターンが撮像されなくなるように撮像される特定パターンの検出数が変化するので、このような特定パターンの検出数の変化を考慮して車両ドアの動作状態を検知することができる。
【0018】
請求項9の発明では、検知手段は、撮像手段により連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される識別表示の移動量を考慮して車両ドアの動作状態を検知する。正常な車両ドアの開閉動作時の識別表示の移動量はほぼ一定なので、識別表示の移動量を考慮して車両ドアの動作状態を検知することができる。
【0019】
請求項10の発明では、検知手段は、撮像手段により連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される識別表示の移動量が車両ドアの開閉動作時の移動距離に基づいて設定される所定の移動量閾値以上になる場合に、鉄道車両の移動を検知する。車両ドアの開閉動作である場合には識別表示の移動量が上記所定の移動量閾値未満になることで、識別表示の移動量が上記所定の移動量閾値以上となる場合には、車両ドアの開閉動作ではなく鉄道車両の移動であると検知することができる。
【0024】
請求項11の発明では、検知手段は、識別表示の位置の時間変化が第1閾値以上であるとき、鉄道車両の動作状態が変化していると検知する。これにより、識別表示の位置の時間変化が第1閾値未満となるような状態、例えば、鉄道車両が単に揺れている状態等の場合に、鉄道車両が動作していると誤検知されることもないので、鉄道車両の動作状態の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0025】
請求項12の発明では、検知手段は、識別表示の位置の時間変化に基づいて、当該識別表示が移動していないとみなされる状態が所定時間以上維持される場合に、車両ドアの閉状態または鉄道車両の停車状態を検知する。これにより、識別表示が移動していないことを確実に検知でき、車両ドアの閉状態または鉄道車両の停車状態の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0026】
請求項13の発明では、検知手段は、識別表示の位置の時間変化に基づいて、車両ドアの閉状態が検知される状態から識別表示の移動量が第2閾値以上となると、車両ドアの開動作を検知する。これにより、識別表示の移動量が第2閾値未満となるような場合、例えば、鉄道車両が単に揺れている状態等の場合に、車両ドアが開動作していると誤検知されることもないので、車両ドアの開動作の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0028】
請求項14の発明では、検知手段は、識別表示の位置の時間変化に基づいて、車両ドアの開動作が検知される状態から識別表示が撮像手段により撮像されなくなった状態が所定時間以上維持される場合に、車両ドアの開状態を検知する。これにより、開動作している車両ドアの識別表示が乗客等により隠されて撮像されなくなったことで直ちに車両ドアの開状態と誤検知されることもないので、車両ドアの開状態の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0033】
請求項15の発明では、検知手段は、識別表示の位置の時間変化に基づいて、車両ドアの閉動作の検知後に識別表示が停止したときの位置が前回の当該識別表示の停止位置に一致するとみなされる場合に、車両ドアの閉状態を検知する。これにより、仮に識別表示が停止するように撮像されたとしても直ちに車両ドアが閉状態であると誤検知されることもないので、車両ドアの閉状態の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0035】
請求項16の発明では、検知手段は、識別表示の位置の時間変化に基づいて、車両ドアの開動作の際に進入側に移動する識別表示が鉄道車両の停車時に撮像手段の撮像視野の進入側縁部に位置している場合には、鉄道車両の動作状態を検知しない。これにより、車両ドアの開動作の途中で撮像視野外となるような識別表示に基づいて鉄道車両の動作状態が検知されることもないので、鉄道車両の動作状態に関する誤検知を抑制することができる。
【0036】
請求項17の発明では、検知手段は、識別表示の位置の時間変化に基づいて、車両ドアの開動作の際に退出側に移動する識別表示が鉄道車両の停車時に撮像手段の撮像視野の退出側縁部に位置している場合には、鉄道車両の動作状態を検知しない。これにより、車両ドアの開動作の途中で撮像視野外となるような識別表示に基づいて鉄道車両の動作状態が検知されることもないので、鉄道車両の動作状態に関する誤検知を抑制することができる。
【0037】
請求項18の発明では、識別表示は、当該識別表示を設けた車両ドアの開閉方向に関する情報が光学的に読み取り可能に記録された情報コードである。これにより、識別表示として設けられた情報コードを光学的に読み取ることで、その識別表示の移動方向から車両ドアの開閉動作を容易に検知することができる。
【0038】
請求項19の発明では、識別表示は、鉄道車両の動作状態を検知する際にパラメータと比較される閾値を鉄道事業者毎または車種毎に変化させるための情報が光学的に読み取り可能に記録された情報コードである。これにより、識別表示として設けられた情報コードを光学的に読み取ることで得られた情報に基づいて閾値を都度変更することで、車両ドアの開閉タイミング等が鉄道事業者毎または車種毎に異なる場合でも、その識別表示が設けられた鉄道車両の動作状態を検知するために適した閾値を容易に設定することができる。
【0039】
請求項20の発明では、検知手段は、同時期に複数の撮像手段のうちの一部にて識別表示が一定時間継続して認識される撮像結果が得られ、残部にて識別表示が一定時間継続して認識されない撮像結果が得られる場合に、残部の撮像手段による撮像結果を鉄道車両の動作状態の検知のために利用しない。仮に複数の識別表示のうちの1つが認識不能に劣化等している場合でも、この識別表示を撮像している撮像手段の結果が鉄道車両の動作状態の検知のために利用されることもないので、識別表示の劣化等に起因する検知精度の低下を抑制することができる。また、例えば、1つの車両に3つの車両ドアが設けられることを前提に撮像手段がそれぞれ配置される場合に、1つの車両に2つの車両ドアが設けられる鉄道車両の動作状態を検知する場合でも、撮像可能な識別表示がその撮像視野に存在し得ない撮像手段の結果が鉄道車両の動作状態の検知のために利用されることもなく、検知精度の低下を抑制することができる。
【0040】
請求項21の発明では、鉄道車両の動作状態を、撮像手段による識別表示の撮像結果に基づく検知と異なる構成で検知する第2検知手段を備える。これにより、この第2検知手段による検知結果と上述した検知手段による検知結果との双方を考慮することで、鉄道車両の動作状態の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0041】
請求項22の発明では、識別表示が設けられる複数の両開き式の車両ドアのうち、一部の車両ドアには一方のドアのみに識別表示が設けられ、この一部の車両ドアとは異なる一部の車両ドアには他方のドアのみに識別表示が設けられる。これにより、鉄道車両が移動している場合には全ての識別表示が同じ方向に移動し、車両ドアが開閉動作している場合には一部の識別表示の移動方向と異なる一部の識別表示の移動方向とが逆方向となるので、各識別表示のそれぞれの移動方向に応じて鉄道車両の移動か車両ドアの開閉動作かを容易に検知することができる。
【0042】
請求項23の発明では、識別表示は、閉状態の一方のドアおよび他方のドアの双方に跨るように設けられるため、車両ドアが閉状態とならなければ識別表示を認識できないので、開状態の車両ドアが閉状態であると誤検知されることを確実に抑制することができる。
【0043】
請求項24の発明では、識別表示は、車両ドアを囲って当該車両ドアとともに移動しない部位と閉状態の車両ドアとの双方に跨るように設けられるため、車両ドアが閉状態とならなければ識別表示を認識できないので、開状態の車両ドアが閉状態であると誤検知されることを確実に抑制することができる。
【0044】
請求項25の発明では、識別表示は、1つの車両ドアに対して複数設けられ、検知手段は、複数の識別表示の撮像手段による撮像結果に基づいて車両ドアの動作状態を検知する。これにより、一部の識別表示が乗客の荷物等により隠されて撮像されない場合でも残部の識別表示が撮像されることで、その車両ドアの動作状態をより確実に検知することができる。
【0045】
請求項26の発明のように、一方のドアと他方のドアを有する両開き式として構成される車両ドアに対して、複数の識別表示のうちの一部が一方のドアに設けられ他の一部が他方のドアに設けられてもよい。
【0046】
請求項27の発明では、識別表示は、矩形状のコード領域のうちの三隅に当該コード領域の特定に利用可能な位置検出パターンが設けられる二次元コードであって、1つの車両ドアに対して、一方のドアに設けられる二次元コード及び他方のドアに設けられる二次元コードは、2つの位置検出パターンが互いに近づくように配置される。これにより、車両ドアの閉動作開始時には、二次元コードの全体が撮像される前に2つの位置検出パターンが撮像されて検知されることで車両ドアの閉動作を検知して、その後の二次元コードのデコードの成否に応じてその閉動作の確認を行うことで、二次元コードのデコードの成否に応じてその閉動作を検知する場合と比較して、車両ドアの閉動作を迅速かつ正確に検知することができる。
【0047】
請求項28の発明では、識別表示は、二次元コードであって、1つの車両ドアに対して、一方のドアに設けられる二次元コードと他方のドアに設けられる二次元コードとは、ミラー反転した関係にて同じ情報が記録されるように構成される。これにより、例えば、ミラー反転していない二次元コードを一方のドアに設け、この二次元コードがミラー反転されて構成される二次元コードを他方のドアに設けることで、デコード時にミラー反転処理を要しない二次元コードは一方のドアに設けられる二次元コードであり、ミラー反転処理を要する二次元コードは他方のドアに設けられる二次元コードであると判別することができる。このため、その二次元コードが一方のドアと他方のドアとのいずれに設けられているかを示す情報を当該二次元コードに記録する必要がないため、二次元コードに記録すべき情報量を削減することができる。すなわち、二次元コードに記録される情報を変えずに一方のドア及び他方のドアのいずれに設けられた二次元コードであるかを判別することができる。
【0048】
請求項29の発明では、検知手段は、撮像手段により撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される複数の識別表示のそれぞれの移動方向を考慮して鉄道車両の動作状態を検知する。車両ドアの開閉動作や鉄道車両の移動・停車等に応じて複数の識別表示のそれぞれの移動方向が変化するため、このように変化する各識別表示の移動方向に応じて鉄道車両の動作状態を検知することができる。
【0049】
請求項30の発明では、検知手段は、撮像手段により撮像された複数の識別表示の全てが同じ方向に移動している場合に、鉄道車両が移動中であることを検知する。車両ドアが開閉動作する場合には、一方のドアに設けられる識別表示と他方のドアに設けられる識別表示との移動方向が逆方向になり、鉄道車両が移動する場合には、全ての識別表示が同じ方向に移動するため、車両ドアの開閉動作と誤検知されることなく鉄道車両が移動中であることを検知することができる。
【0050】
請求項31の発明では、検知手段は、撮像手段により撮像された複数の識別表示の一部の移動方向と他の一部の移動方向とが近づく方向である場合に、車両ドアの閉動作を検知する。車両ドアの閉動作時には、複数の識別表示のうち一方のドアに設けられる一部の移動方向と他方のドアに設けられる他の一部の移動方向とが近づく方向となるため、このような近づく方向への各識別表示の移動を検知することで、車両ドアの閉動作を検知することができる。
【0051】
請求項32の発明では、検知手段は、撮像手段により撮像された複数の識別表示の一部の移動方向と他の一部の移動方向とが遠ざかる方向である場合に、車両ドアの開動作を検知する。車両ドアの開動作時には、複数の識別表示のうち一方のドアに設けられる一部の移動方向と他方のドアに設けられる他の一部の移動方向とが遠ざかる方向となるため、このような遠ざかる方向への各識別表示の移動を検知することで、車両ドアの開動作を検知することができる。
【0053】
請求項33の発明のように、複数の識別表示には、車両ドアを囲って当該車両ドアとともに移動しない部位に設けられる他の識別表示が含まれてもよい。
【0054】
請求項34の発明では、検知手段は、撮像手段により撮像された複数の識別表示のうち他の識別表示を除く識別表示が移動している場合に、鉄道車両の停車状態であって車両ドアが開閉動作中であることを検知する。鉄道車両が移動している場合には他の識別表示も含めて全ての識別表示が移動し、車両ドアが開閉動作中である場合には他の識別表示は移動しないため、鉄道車両の移動と車両ドアの開閉動作とを容易に区別して検知でき、他の識別表示を除く識別表示が移動している場合に、鉄道車両の停車状態であって車両ドアが開閉動作中であることを検知することができる。
【0055】
請求項35の発明では、検知手段は、撮像手段により撮像された複数の識別表示の全てが所定時間移動していない場合に、鉄道車両の停車状態であって車両ドアの閉状態を検知する。鉄道車両が停車している各車両ドアが閉状態であれば全ての識別表示の全てが所定時間移動していないため、このような全ての識別表示の全てが所定時間移動しない場合には鉄道車両の停車状態であって車両ドアの閉状態を検知することができる。
【0056】
請求項36の発明では、検知手段は、相対位置検出手段により検出された複数の識別表示の相対位置の変化を考慮して車両ドアの動作状態を検知する。これにより、例えば、相対位置検出手段により検出された複数の識別表示の相対位置が車両ドアの閉状態時に対応する既定の位置関係となっていない場合には、車両ドアが物体を挟み込んで完全に閉まっていない状態を想定できるので、車両ドアが閉状態であることを検知できるだけでなく、車両ドアが完全に閉まっていない状態であることも検知することができる。
【0058】
請求項37の発明では、識別表示は、鉄道車両の複数の車両ドアのそれぞれに設けられ、制御手段は、検知手段により検知される複数の車両ドアのそれぞれの動作状態に基づいて、対応するホームドアの開閉箇所を個々に制御する。このようにホームドアの開閉箇所を個々に制御することで、ホームドアの一部分だけを再開閉する等、より細かなホームドアの制御を行うことができ、その利便性を高めることができる。
【0059】
請求項38の発明では、制御手段は、検知手段により検知される鉄道車両の動作状態に基づいて、ホームドアの全ての開閉箇所を同じ動作状態に制御する。これにより、検知手段により一部の車両ドアの動作状態が検知できれば残部の車両ドアの動作状態が検知できなくてもその検知結果に基づいてホームドアを一括制御できるので、車両ドアの動作状態の検知に関して冗長性(ロバスト性)を向上させることができる。
【0060】
請求項39の発明では、検知手段は、撮像手段による識別表示の撮像結果から複数の車両ドアの動作状態をそれぞれ求めて多数決を利用することで、全ての車両ドアに関して統一された車両ドアの動作状態を検知する。これにより、検知された一部の車両ドアの動作状態を利用してホームドアの一括制御を行う場合でも、その検知結果の信頼性を向上させることができる。特に、撮像手段による識別表示の撮像結果から奇数個の検知結果を取得して多数決を利用することで、多数決によって得られた検知結果の信頼性をさらに向上させることができる。
【0062】
請求項40の発明では、撮像手段は、識別表示が設けられる1つの車両ドアに向けて複数設けられる。これにより、ホームに設けられる柱や壁などの設置物のために1つの撮像手段を識別表示に対して撮像しやすい位置に設置し難い設置環境や鉄道車両の停車位置のずれが大きくなるような環境等であっても、複数の撮像手段を利用することで識別表示の撮像に関して必要な撮像視野を容易に確保でき、各撮像手段の設置容易性も向上させることができる。
【0063】
請求項41の発明では、複数の撮像手段は、互いに撮像視野の一部が重なるようにそれぞれ配置されるため、識別表示を撮像するための撮像視野を、1つの撮像手段を用いる場合と比較して広くすることができる。
【0064】
請求項42の発明では、複数の撮像手段は、少なくとも識別表示が撮像される可能性がある範囲について互いに撮像視野が重なるようにそれぞれ配置される。これにより、閉状態の車両ドアの識別表示が複数の撮像手段のうちの1つで撮像されなくても他の撮像手段で撮像されることで、その車両ドアに対する識別表示の撮像に関して冗長性(ロバスト性)を確保することができる。
【0065】
請求項43の発明では、検知手段は、鉄道車両の停車時に2つの撮像手段によって同じ識別表示が撮像された場合に、当該識別表示の移動方向が中央側となる撮像画像に基づいて車両ドアの動作状態を検知する。撮像された識別表示の移動方向が中央側となる撮像画像の方が、撮像された識別表示の移動方向が縁部側となる撮像画像よりも、車両ドアが閉状態となるまで識別表示を継続して撮像しやすくなるので、2つの撮像画像のうちの一方を利用する場合でも車両ドアの動作状態を確実に検知することができる。
【0069】
請求項44の発明では、検知手段は、識別表示が設けられる車両ドアごとに1つ配置されるように複数設けられ、制御手段は、複数の検知手段によるそれぞれの検知結果に基づいてホームドアを制御する。これにより、車両ドアごとに検知結果が集約されるので、車両ドアごとにその動作状態を容易に把握することができる。
【0070】
請求項45の発明では、1つの車両ドアに対して設けられる複数の撮像手段のいずれか1つは、自ら撮像した撮像画像と残りの撮像手段から取得した撮像画像とから車両ドアの動作状態を検知可能にする検知手段として機能するように構成される。これにより、検知手段としての機能を兼備する1つの撮像手段をマスター機、他の撮像手段をスレーブ機として構成することができ、制御手段はマスター機からそれぞれ検知結果を取得できるので、各撮像手段と制御手段との通信構成を簡素化することができる。
【0071】
請求項46の発明では、撮像手段は、識別表示が設けられる1つの車両ドアに向けて鉄道車両の移動方向に沿い3つ設けられ、3つの撮像手段のうち鉄道車両の移動方向にて中央に設けられる撮像手段が、自ら撮像した撮像画像と残りの撮像手段から取得した撮像画像とから車両ドアの動作状態を検知可能にする検知手段として機能するように構成される。これにより、例えば、マスター機とスレーブ機とで情報の共有等を行う場合、2つのスレーブ機がマスター機よりも進行方向側に配置されていると、マスター機は2つのスレーブ機のそれぞれと通信する必要があるが、3つの中央にマスター機が配置されていると、マスター機は進行方向側のスレーブ機と通信するだけで共有すべき情報を取得できる。これにより、マスター機とスレーブ機との間の通信量を削減することができる。
【0072】
請求項47の発明では、1つの車両ドアに対して設けられる複数の撮像手段は、識別表示を認識する際に取得した情報を他の撮像手段と共用する。識別表示を認識する際に取得した情報として、例えば、認識に適した明るさに関する情報を採用することができる。この構成では、1つの車両ドアに対して各撮像手段が撮像する範囲の明るさはほぼ変わらないため、他の撮像手段での認識率を高めることができる。また、識別表示を認識する際に取得した情報として、例えば、識別表示が写り込む範囲やタイミングを採用することができる。この構成では、1つの車両ドアに対する各撮像手段の位置関係は既知であるため、進入側に位置する1つの撮像手段の撮像結果に基づいて、他の撮像手段にて識別表示が写り込む範囲及びタイミングを推定することができる。
【0073】
請求項48の発明では、識別表示は、誤り訂正機能を有し所定の情報が記録される情報コードであり、情報コードを読み取る際に誤り訂正される訂正度合いが所定値以上になると情報コードの劣化を報知する報知手段を備える。これにより、報知手段による報知を受けた者は識別表示としての情報コードの劣化を容易に把握できるので、情報コードの劣化を解消しやすくなり読取保証を実現することができる。
【0091】
請求項49の発明では、識別表示は、矩形状のコード領域のうちの三隅に当該コード領域の特定に利用可能な位置検出パターンが設けられる二次元コードであって、この二次元コードは、3つの位置検出パターンのうちの2つが下方となるように配置される。コード領域のうち位置検出パターンが設けられない隅部側には、読み取るべきデータを記録したデータ記録領域が配置され、2つの位置検出パターンが下方となるように配置されることで、データ記録領域は、上方となるように配置される。このようにデータ記録領域が上方となるように配置されることで、二次元コードを構成するコード領域のうちの下方が乗客の荷物等により隠される場合でも、データ記録領域が隠され難くなり、3つの位置検出パターンのうちの2つが上方となるように配置される場合と比較して、二次元コードに記録されるデータの読取成功率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】第1実施形態に係るホームドア制御システムの概要を示す説明図である。
【
図2】車両ドアとホームドアとの位置関係を説明する概略斜視図である。
【
図3】車両ドアとホームドアとの位置関係を説明する概略正面図である。
【
図4】ホームドア制御装置の電気的構成を例示するブロック図である。
【
図5】第1実施形態においてホームドア制御装置の制御部により実行される開閉処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】車両ドアの開閉状態と識別表示の位置との関係を示す説明図であり、
図6(A)は、車両ドアが開状態であるときの識別表示の位置を示し、
図6(B)は、車両ドアが開閉途中での識別表示の位置を示し、
図6(C)は、車両ドアが閉状態であるときの識別表示の位置を示す。
【
図7】第1実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図8】第2実施形態においてホームドア制御装置の制御部により実行される開閉処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】第3実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す概略断面図である。
【
図10】第3実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す概略断面図であり、
図10(A)は、第1変形例における窓の断面を示し、
図10(B)は、第2変形例における窓の断面を示す。
【
図11】第4実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図11(A)は、車両ドアが閉状態であるときの識別表示の状態を示し、
図11(B)は、車両ドアが開閉途中での識別表示の状態を示す。
【
図12】第4実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図12(A)は、車両ドアが閉状態であるときの識別表示の状態を示し、
図12(B)は、車両ドアが開閉途中での識別表示の状態を示す。
【
図13】第5実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図13(A)は、車両ドアが閉状態であるときの各識別表示の状態を示し、
図13(B)は、車両ドアが開閉途中での各識別表示の状態を示す。
【
図14】第5実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図14(A)は、車両ドアが閉状態であるときの各識別表示の状態を示し、
図14(B)は、車両ドアが開閉途中での各識別表示の状態を示す。
【
図15】第6実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図15(A)は、車両ドアが閉状態であるときの識別表示の状態を示し、
図15(B)は、車両ドアが開閉途中での識別表示の状態を示す。
【
図16】第6実施形態においてホームドア制御装置の制御部により実行される開閉処理の流れを示すフローチャートである。
【
図17】第6実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図17(A)は、車両ドアが閉状態であるときの識別表示の状態を示し、
図17(B)は、車両ドアが開閉途中での識別表示の状態を示す。
【
図18】第7実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図18(A)は、識別表示が被覆部により覆われた状態を示し、
図18(B)は、被覆部を取り除いた状態を示す。
【
図19】第7実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図19(A)は、第1変形例における被覆部の状態を示し、
図19(B)は、第2変形例における被覆部の状態を示す。
【
図20】第8実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図20(A)は、車両ドアが閉状態であるときの識別表示の状態を示し、
図20(B)は、車両ドアの開動作開始直後での識別表示の状態を示す。
【
図21】第9実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図21(A)は、鉄道車両が移動しているときの識別表示の状態を示し、
図21(B)は、停車している鉄道車両の車両ドアが閉状態であるときの識別表示の状態を示す。
【
図22】第9実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図22(A)は、車両ドアが開動作しているときの識別表示の状態を示し、
図22(B)は、車両ドアが閉動作しているときの識別表示の状態を示す。
【
図23】第9実施形態においてホームドア制御装置の制御部により実行される開閉処理の流れを示すフローチャートである。
【
図24】第9実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図25】第10実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図25(A)は、鉄道車両が移動しているときの識別表示の状態を示し、
図25(B)は、停車している鉄道車両の車両ドアが閉状態であるときの識別表示の状態を示す。
【
図26】第10実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図26(A)は、車両ドアが開動作しているときの識別表示の状態を示し、
図26(B)は、車両ドアが閉動作しているときの識別表示の状態を示す。
【
図27】第10実施形態においてホームドア制御装置の制御部により実行される開閉処理の流れを示すフローチャートである。
【
図28】ホームの柱がカメラの設置を阻害する状態を例示する説明図である。
【
図29】第12実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図30】第12実施形態の第1変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図31】第12実施形態の第2変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図32】第12実施形態の第3変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図33】第12実施形態の第4変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図33(A)はカメラ30aの撮像画像に基づいて車両ドアの動作状態を検知する場合を示し、
図33(B)はカメラ30bの撮像画像に基づいて車両ドアの動作状態を検知する場合を示す。
【
図34】第12実施形態の第5変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図34(A)は、カメラ30aの撮像画像を示し、
図34(B)は、カメラ30bの撮像画像を示し、
図34(C)は、
図34(A)の撮像画像と
図34(B)の撮像画像とを結合した結合画像を示す。
【
図35】第12実施形態の第6変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図35(A)は、カメラ30aの撮像画像を示し、
図35(B)は、カメラ30bの撮像画像を示し、
図35(C)は、
図35(A)の撮像画像と
図35(B)の撮像画像とを結合した結合画像を示す。
【
図36】第12実施形態の第7変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図36(A)は、カメラ30aの撮像画像を示し、
図36(B)は、カメラ30bの撮像画像を示し、
図36(C)は、垂直方向に配列される位置検出パターンを規準に
図36(A)の撮像画像と
図36(B)の撮像画像とを結合した結合画像を示す。
【
図37】第12実施形態の第7変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図37(A)は、カメラ30aの撮像画像を示し、
図37(B)は、カメラ30bの撮像画像を示し、
図37(C)は、水平方向に配列される位置検出パターンを規準に
図37(A)の撮像画像と
図37(B)の撮像画像とを結合した結合画像を示す。
【
図38】第13実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図39】第13実施形態の第1変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図40】第13実施形態の第2変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図41】第14実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図42】第14実施形態の第1変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図43】第1実施形態において各車両ドアに対してカメラが向けられている状態を示す説明図である。
【
図44】第1実施形態において高身長の乗客が乗り込む場合でも天井に設置されたカメラにより車両ドアに貼付されたQRコードが撮像される状態を説明する説明図である。
【
図45】第15実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図46】第17実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図47】第18実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図47(A)は、閉状態での撮像画像を示し、
図47(B)は開動作時の撮像画像を示し、
図47(C)は、開状態での撮像画像を示す。
【
図48】第18実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図48(A)は、開状態での撮像画像を示し、
図48(B)は閉動作時の撮像画像を示す。
【
図49】第19実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図49(A)は、全ての位置検出パターンが撮像された撮像画像を示し、
図49(B)は一部の位置検出パターンが撮像された撮像画像を示し、
図49(C)は、全ての位置検出パターンが撮像されていない撮像画像を示す。
【
図50】第19実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図51】第20実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図であり、
図51(A)は、閉状態での撮像画像を示し、
図51(B)は、QRコードが進入側縁部にて撮像された撮像画像を示し、
図51(C)は、QRコードが撮像されなくなった撮像画像を示す。
【
図52】第21実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図53】第22実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図54】ホームドアの可動扉の開閉による開閉箇所を変更した状態を説明する説明図である。
【
図55】第24実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図56】第25実施形態の第1変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図57】第26実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部であって、進入方向側から鉄道車両が進入したときの各撮像画像を示す説明図である。
【
図58】第26実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部であって、進入方向側から進入した鉄道車両が停車したときの各撮像画像を示す説明図である。
【
図59】第26実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部であって、鉄道車両がオーバーランしたときの各撮像画像を示す説明図である。
【
図60】第26実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部であって、鉄道車両がオーバーラン後に戻って停車したときの各撮像画像を示す説明図である。
【
図61】第26実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部であって、目標停車位置範囲外での停車の際に車両ドアが開動作したときの各撮像画像を示す説明図である。
【
図62】第27実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部であって、鉄道車両が発車する際の各撮像画像を示す説明図である。
【
図65】回送車両が目標停車位置範囲からずれて停車したときのホームドアの閉状態を説明する説明図である。
【
図66】識別表示の表示切替を説明する説明図であって、
図66(A)は識別表示の表示状態を示し、
図66(B)は識別表示の非表示状態を示す。
【
図67】停車検知後に撮像画像全体から検知範囲を狭めて開閉処理を行う状態を説明する説明図である。
【
図68】第28実施形態において撮像画像内でのQRコードの位置の時間変化を説明する説明図である。
【
図69】第28実施形態においてホームドア制御装置の制御部により実行される動作状態検知処理の流れを示すフローチャートの一部である。
【
図70】第28実施形態においてホームドア制御装置の制御部により実行される動作状態検知処理の流れを示すフローチャートの一部である。
【
図71】車両ドアが再開閉する際の撮像画像内でのQRコードの位置の時間変化を説明する説明図である。
【
図72】鉄道車両が通過する際の撮像画像内でのQRコードの位置の時間変化を説明する説明図である。
【
図73】停車時に撮像視野の進入側縁部に位置し開動作時に進入側に移動して撮像されなくなるQRコードの位置の時間変化を説明する説明図である。
【
図74】停車時に撮像視野の退出側縁部に位置し開動作時に退出側に移動して撮像されなくなるQRコードの位置の時間変化を説明する説明図である。
【
図75】第29実施形態に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図76】
図76(A)は、2つの位置検出パターンが下方となるように配置されたときの撮像状態を例示する説明図であり、
図76(B)は、2つの位置検出パターンが上方となるように配置されたときの撮像状態を例示する説明図である。
【
図77】第29実施形態の変形例に係るホームドア制御システムの要部を示す説明図である。
【
図78】2つの位置検出パターンが互いに近づくように一方のドアと他方のドアとにQRコードを設けた状態を例示する説明図である。
【
図79】一方のドアと他方のドアとにミラー反転状態となるようにそれぞれQRコードを設けた状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
[第1実施形態]
以下、本発明のホームドア制御システムを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1および
図2に示すホームドア制御システム1は、駅のホーム2に配置されたホームドア20を制御するためのシステムであり、鉄道車両10の外部から撮像可能な部位に設けられる識別表示を撮像する複数のカメラ30と、各カメラ30の撮像結果に基づいて鉄道車両10の動作状態を検知してホームドア20を制御するホームドア制御装置40(
図4参照)とを備えている。
【0094】
本実施形態では、鉄道車両10の外部から撮像可能な部位に設けられる識別表示として、QRコード(登録商標)50が採用されており、このQRコード50は、乗降口11に設けられる車両ドア12に貼付されている。すなわち、乗降口11(車両ドア12)ごとにQRコード50が設けられる。このため、本実施形態では、QRコード50は、当該QRコード50が設けられる鉄道車両10および乗降口11(車両ドア12)等を特定するための車両番号やドア番号等の情報(以下、乗降口特定情報ともいう)が光学的に読み取り可能に記録されるように生成されている。
【0095】
車両ドア12は、一方のドア13と他方のドア14とを有する両開き式のスライドドアであって、一方のドア13および他方のドア14は、枠体となるドア本体の上部中央に透明のガラス窓が保持されるようにそれぞれ構成されている。QRコード50は、
図3に示すように、一方のドア13のガラス窓13aのうち上部であって他方のドア14に近接する位置に、車外側から貼付されている。このため、QRコード50は、車両ドア12が開状態となる場合に、一方のドア13が収容される車体部11aに覆われて隠蔽されることで外部から撮像できない状態となる。また、QRコード50は、車両ドア12が閉状態であるときに乗客が邪魔してカメラ30により撮像されない状態を防止するため、ガラス窓13aのうち上部に貼付される。
【0096】
なお、
図3に示すように、鉄道車両10が目標停車位置に停車しており車両ドア12が閉状態であるときのQRコード50の位置を、停車基準位置ともいう。また、本実施形態では、鉄道車両10は、自動で目標停車位置に停車するための停止装置等を備えているものとする。
【0097】
ホームドア20は、ホーム2の縁2aの延伸方向(以下、開閉方向ともいう)に沿って防護壁を形成するように配置されており、鉄道車両10の各乗降口11に対応して複数の可動扉21および扉駆動部22を備えるように構成されている。各扉駆動部22は、ホームドア制御装置40からの開指示または閉指示に応じて可動扉21を開閉方向に沿うように移動させることで、ホームドア20を開状態または閉状態に切り替える機能を有するもので、目標停車位置での各乗降口11に対応してそれぞれ配置されている。すなわち、各扉駆動部22は、目標停車位置での各乗降口11に対して、上記開指示の入力に応じて、可動扉21の少なくとも一部を収容して乗降口11を露出させる開動作を行う。また、各扉駆動部22は、上記閉指示の入力に応じて、
図3に示すように、開閉方向にて対向する他の扉駆動部22により移動される可動扉21に対して狭い隙間を介して対向するか接触する位置(以下、通行遮断位置ともいう)まで可動扉21を移動させることで、乗降口11への通行を遮断する閉動作を行う。
【0098】
各カメラ30は、受光センサ(例えば、C-MOSエリアセンサ、CCDエリアセンサ等)を備えた撮像手段として機能し、目標停車位置の乗降口11ごとに、車両ドア12が閉状態であるときのQRコード50を読取可能に撮像するようにホーム2の天井2bにそれぞれ設けられている。カメラ30は、LAN等の所定のネットワークを介してホームドア制御装置40に接続されており、ホームドア制御装置40からの撮像指示を受けてその撮像画像をホームドア制御装置40に送信するように構成されている。
【0099】
特に、カメラ30は、
図3に示すように、その撮像視野31が、停車基準位置のQRコード50から一方のドア13の開方向(
図3の右方向)に位置する車体部11aの縁までを含む範囲となるように設置されている。これは、閉まり始めた車両ドア12のQRコード50を迅速に撮像して認識するためであり、車両ドア12が開状態であるときのQRコード50が撮像視野31外に位置することを前提に撮像視野31を開閉方向に沿い可能な範囲で広げている。これにより、カメラ30は、車両ドア12が閉状態であるときのQRコード50が撮像視野31内に位置し、車両ドア12が開状態であるときのQRコード50が撮像視野31外に位置するように設置される。
【0100】
ホームドア制御装置40は、各カメラ30から受信した撮像画像に基づく鉄道車両10の動作状態、より具体的には、車両ドア12の動作状態等の検知結果に基づいて各扉駆動部22に対して開指示または閉指示を送信することで、ホームドア20の開閉状態を制御する制御手段として機能する装置である。ホームドア制御装置40は、ホームドア20近傍に設置されてもよいし、ホームドア20内に組み込まれるように設置されてもよい。このホームドア制御装置40は、
図4に示すように、CPUからなる制御部41、ROM,RAM、不揮発性メモリなどからなる記憶部42、各種操作ボタンや操作キー(図示略)によって構成される操作部43や通信部44などを備えている。
【0101】
制御部41は、後述する開閉処理を実行することで、車両ドア12の閉状態を検知した後、この車両ドア12の閉状態に連動させてホームドア20を自動的に閉状態に制御するように機能する。記憶部42には、上記開閉処理を実行するための所定のプログラム等が制御部41により実行可能に予め格納されている。操作部43は、制御部41に対して操作信号を与える構成をなしており、制御部41は、この操作信号を受けて操作信号の内容に応じた動作を行う。特に、操作部43のうち上記開閉処理を開始する際に操作される開操作ボタン(図示略)は、鉄道車両10の車掌等が操作しやすい位置、例えば、目標停車位置での車掌室近傍に位置するホームドア20の上面等に配置されている。通信部44は、LAN等の所定のネットワークを介して有線通信または無線通信を行う公知の通信インタフェースとして構成されており、制御部41と協働して各カメラ30や各扉駆動部22等の外部機器と通信を行うように機能する。
【0102】
次に、本実施形態において、ホームドア20の開閉時にホームドア制御装置40の制御部41にて行われる開閉処理について、
図5に示すフローチャートを参照して説明する。
鉄道車両10がホーム2に入る前では、ホームドア20は各扉駆動部22が上記閉動作を行っていることで閉状態となっている。その後、ホーム2に入った鉄道車両10が目標停車位置に停車したことで車両ドア12が開状態となる際、車掌等により操作部43の開操作ボタンが操作される。これにより、制御部41にて開閉処理が開始されて、
図5のステップS101に示す開指示送信処理がなされ、各扉駆動部22に対して上記開指示が送信される。
【0103】
各扉駆動部22は、ホームドア制御装置40から上記開指示を受信すると、可動扉21の少なくとも一部を収容する上記開動作をそれぞれ行う。これにより、車両ドア12が開状態となった乗降口11を介して鉄道車両10での乗り降りが可能な状態となる。このとき、
図6(A)に示すように、QRコード50は、一方のドア13が収容される車体部11aに覆われることで外部から撮像できない状態となっている。
【0104】
上述のように開指示を送信してから所定時間(車両ドア12が開状態となっていることが想定される時間)が経過した後、ステップS103に示す撮像処理がなされ、各カメラ30にて撮像された画像がそれぞれ取得される。次に、ステップS105に示すデコード処理がなされ、撮像した各撮像画像からQRコード50を含めた情報コードを解読するための公知のデコード処理が撮像画像ごとになされる。続いて、ステップS107に示す判定処理にて、各カメラ30からそれぞれ取得した撮像画像において識別表示がそれぞれ認識(撮像)されるか否かについて判定される。
【0105】
本実施形態では、識別表示が認識手段として機能する制御部41により認識されるか否かの判定は、上記デコード処理により上記乗降口特定情報が読み取れるか否かに基づいてなされ、各カメラ30にてそれぞれQRコード50が撮像されている場合には、各QRコード50のデコードにより全ての乗降口11(車両ドア12)に対応する乗降口特定情報が読み取られることとなる。このため、車両ドア12が開状態となっているためにQRコード50が車体部11aに覆われて撮像されない状態では、QRコード50をデコードできないため、上記ステップS107にてNoと判定されて、上記ステップS103からの処理が繰り返される。
【0106】
乗降口11を介した乗客の乗り降りが終わると、車掌による所定の操作等に応じて、各車両ドア12を閉状態とするために一方のドア13および他方のドア14が閉方向にそれぞれ移動し始める。この移動に伴い、
図6(B)に示すように、各QRコード50がカメラ30の撮像視野31内までそれぞれ移動すると、各カメラ30によりQRコード50がそれぞれ撮像される(S103)。これにより、撮像された各QRコード50のデコードが成功し、全ての乗降口11に対応する乗降口特定情報が読み取られることで(S105)、識別表示が認識されたことで車両ドア12の閉動作又は閉状態が検知されてステップS107にてYesと判定される。なお、QRコード50と異なる情報コードが撮像されてデコードされる場合には、乗降口特定情報と異なる情報が読み取られるので、識別表示が認識されないとして(S107でNo)、上記ステップS103からの処理が繰り返される。また、車両ドア12の動作状態として、車両ドア12の閉動作、閉状態等を検知する制御部41およびホームドア制御装置40は、「検知手段」の一例に相当し得る。
【0107】
続いて、ステップS109に示す閉指示送信処理がなされ、各扉駆動部22に対して上記閉指示が送信されて、本開閉処理が終了する。
【0108】
各扉駆動部22は、ホームドア制御装置40から上記閉指示を受信すると、可動扉21を閉方向に移動させる上記閉動作をそれぞれ行う。これにより、
図3に示すように、各可動扉21が上記通行遮断位置まで閉方向に移動することで、各乗降口11への通行がそれぞれ遮断される。また、このとき、各車両ドア12は、
図6(C)に示すように、閉状態となっている。
【0109】
以上説明したように、本実施形態に係るホームドア制御システム1では、鉄道車両10の車両ドア12に識別表示として設けられるQRコード50は、車両ドア12が閉状態である場合にカメラ30による撮像画像から制御部41のデコード処理により認識されるように配置される。そして、ホームドア制御装置40は、その制御部41による開閉処理により、カメラ30によるQRコード50の撮像結果に基づいて車両ドア12の動作状態を検知し、このように検知される車両ドア12の動作状態に基づいてホームドア20を制御する。
【0110】
これにより、撮像された撮像画像からQRコード50のデコードが成功することで識別表示としてのQRコード50が認識される場合には、車両ドア12が閉状態であると検知されて、この場合にホームドア制御装置40によりホームドア20を閉状態に制御することで、無線通信を利用することなく、鉄道車両10の車両ドア12の閉状態に連動させてホームドア20を自動的に閉状態に制御することができる。
【0111】
また、カメラ30は、車両ドア12が閉状態であるときのQRコード50が撮像視野31内に位置し、車両ドア12が開状態であるときのQRコード50が撮像視野31外に位置するように設置される。これにより、車両ドア12が開状態であるときにはQRコード50が撮像(認識)されないので、開状態の車両ドア12が閉状態であると誤検知されることを抑制することができる。
【0112】
特に、本実施形態では、車両ドア12が開状態であるときのQRコード50が撮像視野31外に位置することを前提に撮像視野31を可能な範囲で広げているので、閉まり始めた車両ドア12のQRコード50を迅速に認識することができ(
図6(B)参照)、車両ドア12が閉まり始めるタイミングに対するホームドア20が閉まり始めるタイミングの遅れを小さくすることができる。このため、ホームドア20を設けたことで延長される鉄道車両10のホーム停車時間を短縮することができる。
【0113】
また、QRコード50は、車両ドア12が開状態であるときにカメラ30により撮像されないように車体部11aにて隠蔽される位置に設けられるため、車両ドア12が開状態であるときにはQRコード50が撮像されて認識されることもないので、開状態の車両ドア12が閉状態であると誤検知されることを確実に抑制することができる。なお、QRコード50は、車両ドア12が開状態であるときに、全てが車体部11aにて隠蔽される位置に設けられることに限らず、誤り訂正機能を用いてもデコードできないことを前提に少なくとも一部が車体部11aにて隠蔽される位置に設けられてもよい。
【0114】
そして、本実施形態では、識別表示は、所定の情報として乗降口特定情報が光学的に読み取り可能に記録されたQRコード50として生成される。QRコードは、他の種別の情報コードと同様に、その目的上、撮像画像から認識しやすく生成されるため、誤認され難くなり、識別表示の認識精度を向上させることができる。
【0115】
特に、上記ステップS107に示す判定処理では、各カメラ30によって撮像されたQRコード50から乗降口特定情報を読み取った場合に、識別表示を認識する。このように、QRコード50に記録される情報まで確認して認識することで、より一層誤認され難くなり、識別表示の認識精度をさらに向上させることができる。なお、上記ステップS107に示す判定処理では、車両ドア12が閉まり始めるタイミングに対するホームドア20が閉まり始めるタイミングの遅れをさらに小さくするために、読み取った情報が乗降口特定情報であるか否かを判定することなく、撮像視野31での撮像画像において公知のデコード処理により何らかの情報が読み取られることで、識別表示を認識してもよい。
【0116】
また、QRコード50は車両ドア12のガラス窓13aに設けられるため、QRコード50がドア本体13b(
図3参照)に設けられる場合と比較して、QRコード50を容易に大きく表示でき、識別表示の認識精度を向上させることができる。
【0117】
本実施形態の変形例として、鉄道車両10は、自動で目標停車位置に停車するための停止装置等を備えていなくてもよい。この場合には、鉄道車両10の停車位置が目標停車位置に対して所定の距離だけずれて停車する可能性が高くなる。このため、
図7に示すように、停車位置ずれが生じない場合に必要な撮像視野の開閉方向長さL1に対して、想定される停車位置ずれL2分だけ撮像視野31が開閉方向に沿い広くなるようにカメラ30を設置する。すなわち、カメラ30は、鉄道車両10の停車位置のずれを考慮して、車両ドア12が閉状態であるときのQRコード50が撮像視野31内に位置し、車両ドア12が開状態であるときのQRコード50が撮像視野31外に位置するように設置される。
【0118】
これにより、鉄道車両10の停車位置がずれたとしても、閉状態の車両ドア12のQRコード50が確実に撮像視野31内に位置するので、閉状態の車両ドア12が開状態であると誤検知されることを抑制することができる。そして、鉄道車両10の停車位置がずれたとしても、車両ドア12が開状態であるときにはQRコード50が認識されないので、開状態の車両ドア12が閉状態であると誤検知されることを確実に抑制することができる。なお、上記開閉方向長さL1は、例えば、一方のドア13のドア幅Ldに等しくなるように650mmに設定されており、この場合、上記停車位置ずれL2は、例えば、700mmに設定される。
【0119】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るホームドア制御システムについて、
図8を用いて説明する。
本第2実施形態では、検知される車両ドアの動作状態にはさらに車両ドアの開動作、開状態が含まれ、鉄道車両10の車両ドア12の開閉状態に連動させてホームドア20を自動的に開閉する点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0120】
本実施形態では、車両ドア12に設けられる識別表示を利用して車両ドア12の開状態を検知することで、車掌等による開操作ボタンの手動操作によることなく、ホームドア20を自動的に開状態に制御する。
【0121】
以下、本実施形態において、ホームドア20の開閉時にホームドア制御装置40の制御部41にて行われる開閉処理について、
図8に示すフローチャートを参照して説明する。
ホーム2に入ってくる鉄道車両10が目標停車位置に停車する前から制御部41にて開閉処理が開始されており、まず、
図8のステップS201に示す判定処理にて鉄道車両10が停車しているか否かについて判定される。この判定処理は、前回カメラ30により撮像された撮像画像との比較により、鉄道車両10が停車しているか否かを判定する処理であり、鉄道車両10が停車するまで上記ステップS201にてNoとの判定が繰り返される。なお、上記ステップS201の判定処理では、例えば、車両ドア12に設けられるQRコード50(識別表示)を基準に、鉄道車両10が停車しているか否かを判定してもよいし、車両ドア12自体を基準に、鉄道車両10が停車しているか否かを判定してもよい。
【0122】
ホーム2に入ってきた鉄道車両10が目標停車位置に停車することで、ステップS201にてYesと判定されると、ステップS203に示す撮像処理がなされ、各カメラ30にて撮像された画像がそれぞれ取得される。次に、ステップS205に示すデコード処理がなされ、撮像した各撮像画像からQRコード50を含めた情報コードを解読するための公知のデコード処理が撮像画像ごとになされる。続いて、ステップS207に示す判定処理にて、各カメラ30からそれぞれ取得した撮像画像において識別表示がそれぞれ認識(撮像)されるか否かについて判定される。
【0123】
鉄道車両10が目標停車位置に停車した直後であり各車両ドア12が閉状態である場合には、撮像視野31内にQRコード50が位置しているため(
図6(C)参照)、各カメラ30によりQRコード50がそれぞれ撮像されて乗降口特定情報が読み取られる。このため、識別表示が認識されたことで車両ドア12の閉状態が検知されてステップS207にてYesと判定されて、上記ステップS203からの処理が繰り返される。
【0124】
上記繰り返し処理中に車両ドア12が開き始めて一方のドア13が開方向に移動する際でも、QRコード50が撮像視野31内に位置している間(
図6(B)参照)、上記ステップS207にてYesと判定されて、上記ステップS203からの処理が繰り返される。そして、車両ドア12が開状態となり、QRコード50が車体部11aに覆われて撮像視野31外に位置すると(
図6(A)参照)、デコードが失敗して識別表示が認識されないことで車両ドア12の開状態又は開動作が検知されてステップS207にてNoと判定される。この場合には、ステップS209に示す開指示送信処理がなされ、各扉駆動部22に対して上記開指示が送信される。なお、車両ドア12の動作状態として、車両ドア12の開状態、開動作等を検知する制御部41およびホームドア制御装置40は、「検知手段」の一例に相当し得る。
【0125】
各扉駆動部22は、ホームドア制御装置40から上記開指示を受信すると、可動扉21の少なくとも一部を収容する上記開動作をそれぞれ行う。これにより、車両ドア12が開状態となった乗降口11を介して鉄道車両10での乗り降りが可能な状態となる。
【0126】
上記第1実施形態と同様に、上記開指示を送信してから所定時間が経過した後、ステップS211に示す撮像処理がなされ、各カメラ30にて撮像された画像がそれぞれ取得される。次に、ステップS213に示すデコード処理がなされ、撮像した各撮像画像からQRコード50を含めた情報コードを解読するための公知のデコード処理が撮像画像ごとになされる。続いて、ステップS215に示す判定処理にて、各カメラ30からそれぞれ取得した撮像画像において識別表示がそれぞれ認識(撮像)されるか否かについて判定される。
【0127】
車両ドア12が開状態となっているためにQRコード50が車体部11aに覆われて撮像されない状態では、QRコード50としてのQRコードをデコードできないため、上記ステップS215にてNoと判定されて、上記ステップS211からの処理が繰り返される。
【0128】
乗降口11を介した乗客の乗り降りが終わり一方のドア13が閉方向にそれぞれ移動し始めることで、
図6(B)に示すように、各QRコード50がカメラ30の撮像視野31内までそれぞれ移動して撮像される(S211)。これにより、撮像された各QRコード50のデコードが成功し、全ての乗降口11に対応する乗降口特定情報が読み取られることで(S213)、識別表示が認識されたことで車両ドア12の閉動作又は閉状態が検知されてステップS215にてYesと判定される。そして、ステップS217に示す閉指示送信処理がなされ、各扉駆動部22に対して上記閉指示が送信されて、本開閉処理が終了する。
【0129】
以上説明したように、本実施形態に係るホームドア制御システム1では、鉄道車両10の車両ドア12に識別表示として設けられるQRコード50は、車両ドア12が閉状態である場合にカメラ30による撮像画像から制御部41のデコード処理により認識されて、車両ドア12が開状態である場合にカメラ30による撮像画像から認識されないように配置される。これにより、上記第1実施形態と同様に、無線通信を利用することなく、鉄道車両10の車両ドア12の閉状態に連動させてホームドア20を自動的に閉状態に制御することができる。また、鉄道車両10がホーム2に存在するにも関わらず、撮像された撮像画像からQRコード50が認識されない場合には車両ドア12が開状態であると検知されて、この場合にホームドア制御装置40によりホームドア20を開状態に制御することで、無線通信を利用することなく、鉄道車両10の車両ドア12の開状態に連動させてホームドア20を自動的に開状態に制御することができる。すなわち、無線通信を利用することなく、鉄道車両10の車両ドア12の開閉状態に連動させてホームドア20を自動的に開閉することができる。
【0130】
本実施形態の変形例として、上記ステップS207では、各QRコード50がそれぞれデコード成功していた状態から失敗することで、上記ステップS209以降の処理がなされることに限らず、デコード成功していた各QRコード50の移動が移動していると認識される場合に、上記ステップS209以降の処理がなされてもよい。すなわち、停止しているQRコード50(識別表示)が認識された後に当該QRコード50が移動していると認識される場合に、車両ドア12の開動作が検知されて、ホームドア20がホームドア制御装置40により開状態に制御される。
【0131】
これにより、車両ドア12が開状態となることでQRコード50(識別表示)が移動して撮像(認識)されなくなる前に車両ドア12の開動作を検知してホームドア20を開状態に制御できるので、車両ドア12が開き始めるタイミングに対するホームドア20が開き始めるタイミングの遅れを小さくすることができる。このため、ホームドア20を設けたことで延長される鉄道車両10のホーム停車時間を短縮することができる。
【0132】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るホームドア制御システムについて、
図9を用いて説明する。
本第3実施形態では、
図9に示すように、鉄道車両10に識別表示として設けられるQRコード50が、ガラス窓13aの車内側に貼付される車内用の広告15に対して裏面側となるように当該ガラス窓13aの車外側に貼付される点が主に上記第1実施形態と異なる。これにより、QRコード50(識別表示)を大きく表示したとしても、そのQRコード50が広告15の邪魔にならずガラス窓13aを介した景観等を遮ることもないので、効率的なQRコード50の配置を実現することができる。
【0133】
本実施形態の第1変形例として、
図10(A)に示すように、鉄道車両10に識別表示として設けられるQRコード50は、車両ドア12のガラス窓13aに対して車内側から貼付されてもよい。このため、QRコード50が車外側から貼付される場合と比較して、QRコード50に対する汚れの付着や剥がれ、損傷等を抑制でき、識別表示としてのQRコード50の認識精度をさらに向上させることができる。
【0134】
また、本実施形態の第2変形例として、
図10(B)に示すように、車両ドア12のガラス窓13a(14a)は、外側ガラス16aおよび内側ガラス16bを有する二重ガラスとして構成され、鉄道車両10に識別表示として設けられるQRコード50は、ガラス窓13aの2つのガラス16a,16bの間にて貼付されてもよい。これにより、QRコード50に対する汚れの付着や剥がれ、損傷等を確実に抑制でき、識別表示としてのQRコード50の認識精度をより一層向上させることができる。
【0135】
なお、車両ドア12のガラス窓13a(14a)に対して上述のようにQRコード50(識別表示)を配置する等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0136】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係るホームドア制御システムについて、
図11を用いて説明する。
本第4実施形態では、鉄道車両10に識別表示として設けられるQRコード51が、閉状態の一方のドア13および他方のドア14の双方に跨るように構成される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0137】
本実施形態では、
図11(A)に示すように、QRコード51の右側部51aが一方のドア13のドア本体13bにおける他方のドア14側の上縁部に設けられ、QRコード51の左側部51bが他方のドア14のドア本体14bにおける一方のドア13側の上縁部に設けられる。このため、車両ドア12が閉状態とならなければQRコード51がデコード可能に撮像されず、
図11(B)に示すように、車両ドア12が完全に閉まっていない状態では、QRコード51が右側部51aと左側部51bとに分割されてしまいデコードされないので、上記開閉処理ではステップS109以降の処理がなされることもない。
【0138】
このように、車両ドア12が閉状態とならなければ識別表示として設けられるQRコード51を認識できないので、開状態の車両ドア12が閉状態であると誤検知されることを確実に抑制することができる。
【0139】
本実施形態の変形例として、識別表示は、車両ドア12を囲い、当該車両ドア12とともに移動しない周辺部位と閉状態の車両ドア12との双方に跨るように設けられてもよい。具体的には、例えば、
図12(A)に例示するQRコード52を識別表示として鉄道車両10に設けることができ、このQRコード52は、QRコード52の下側部52aが一方のドア13のドア本体13bにおける上縁部に設けられ、QRコード52の上側部52bが乗降口11の上縁を構成する車体部11bに設けられる。
【0140】
このようにしても、車両ドア12が閉状態とならなければQRコード52がデコード可能に撮像されず、
図12(B)に例示するように、車両ドア12が完全に閉まっていない状態では、QRコード52が下側部52aと上側部52bとに分割されてしまいデコードされないので、上記開閉処理ではステップS109以降の処理がなされることもない。これにより、車両ドア12が閉状態とならなければ識別表示として設けられるQRコード52を認識できないので、開状態の車両ドア12が閉状態であると誤検知されることを確実に抑制することができる。
【0141】
なお、上述した識別表示が相対移動する2つの物体(一方のドア13および他方のドア14や、一方のドア13および車体部11b)に跨るように設けられる等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0142】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係るホームドア制御システムについて、
図13を用いて説明する。
本第5実施形態では、鉄道車両10に複数の識別表示が設けられてこれら複数の識別表示の撮像結果に基づいて車両ドア12の動作状態を検知する点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0143】
本実施形態では、複数の識別表示として、
図13(A)に例示するように、上記QRコード50に加えて、QRコード53が、他方のドア14のガラス窓14aのうち上部であって一方のドア13に近接する位置に、車外側から貼付されている。そして、カメラ30は、
図13(A)に示すように、その撮像視野31が、停車基準位置のQRコード50とQRコード53とを含まれることを前提に開閉方向に狭い範囲となるように設置されている。
【0144】
そして、上記開閉処理におけるステップS107の判定処理では、QRコード50およびQRコード53の全てがデコードされて認識される場合にYesと判定されて、上記ステップS109以降の処理がなされる。
【0145】
このため、車両ドア12が閉状態とならなければQRコード50およびQRコード53の双方が同時にデコード可能に撮像されず、
図13(B)に例示するように、車両ドア12が完全に閉まっていない状態では、QRコード50およびQRコード53が撮像視野31外に位置してデコードされないので、上記ステップS109以降の処理がなされることもない。
【0146】
すなわち、複数の識別表示のうちの一部だけが認識されても全ての識別表示が認識されない限りホームドア20が閉状態に制御されることもないので、仮に複数の識別表示のうちの一部に似ている表示(例えば、QRコード50に似ている表示のみ)が認識されたとしても、開状態の車両ドア12が閉状態であると誤検知されることを確実に抑制することができる。
【0147】
本実施形態の第1変形例として、複数の識別表示には、車両ドア12を囲い、当該車両ドア12とともに移動しない周辺部位に設けられる他の識別表示が含まれてもよい。具体的には、例えば、
図14(A)に例示するQRコード54を識別表示として鉄道車両10に設けることができ、このQRコード54は、一方のドア13のドア本体13bにおける上縁部であって、QRコード50の直上となる車体部11bに設けられる。この場合には、カメラ30は、
図14(A)に示すように、その撮像視野31が、停車基準位置のQRコード50とQRコード54とを含まれることを前提に開閉方向に狭い範囲となるように設置される。
【0148】
このようにしても、車両ドア12が閉状態とならなければQRコード50およびQRコード54の双方が同時にデコード可能に撮像されず、
図14(B)に例示するように、車両ドア12が完全に閉まっていない状態では、QRコード50が撮像視野31外に位置してデコードされないので、上記ステップS109以降の処理がなされることもない。これにより、開状態の車両ドア12が閉状態であると誤検知されることを確実に抑制することができる。
【0149】
なお、複数の識別表示には、QRコード50に加えて、QRコード53またはQRコード54が含まれることに限らず、QRコード53およびQRコード54の双方が含まれてもよいし、さらに他のQRコード(識別表示)が含まれてもよい。
【0150】
本実施形態の第2変形例として、複数の識別表示として複数の情報コードを採用する構成では、各情報コードは、記録される所定の情報が互いに関連するように生成されてもよい。例えば、
図13に示す例では、QRコード50およびQRコード53は、同じ情報が記録されるように生成されてもよいし、連番となる情報が記録されるように生成されてもよい。
【0151】
これにより、予め決められた所定数の情報コードから情報をそれぞれ読み取れたとしても、それらが関連していなければ識別表示として認識されることはないので、識別表示を誤認し難くなり、識別表示の認識精度を向上させることができる。
【0152】
なお、上述した複数の識別表示の全てが認識される場合にホームドア20を閉状態に制御する等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0153】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係るホームドア制御システムについて、
図15および
図16を用いて説明する。
本第6実施形態では、認識された複数の識別表示の相対位置が既定の位置関係となる場合に、ホームドア20が閉状態に制御される点が主に上記第5実施形態と異なる。このため、第5実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0154】
本実施形態では、車両ドア12が閉状態であるか否かを正確に判定するため、車両ドア12の開閉時に相対移動する少なくとも2つの識別表示(QRコード50およびQRコード53)を用意している。そして、車両ドア12が閉状態時の2つの識別表示の開閉方向での相対距離が、
図15(A)に示すように規定距離Xoとして予め測定されて、既定の位置関係に関する情報として記憶部42に記憶されている。
【0155】
そして、ホームドア制御装置40の制御部41にて行われる開閉処理において、撮像画像から各識別表示を認識した後にその撮像画像に基づいて各識別表示の相対位置を検出し、この検出された相対位置が既定の位置関係となる場合に、車両ドア12が閉状態であると検知する。具体的には、撮像画像から検出されるQRコード50とQRコード53との開閉方向での相対距離Xaと記憶部42に記憶される規定距離Xoとの差が所定の閾値Xth以下となる場合に、車両ドア12が閉状態であると検知する。車両ドア12が完全に閉まっていないと、識別表示同士が規定距離Xoよりも離れた状態で撮像されるため、検出された相対位置が既定の位置関係を満たさないからである。なお、本実施形態では、上記所定の閾値Xthは、車両ドア12が閉状態とみなすことができる相対距離に応じて設定され、例えば、ほぼ0(ゼロ)の近い数値に設定することができる。また、カメラ30による撮像画像から撮像された複数の識別表示の相対位置を検出する制御部41は、「検出手段」の一例に相当し得る。
【0156】
以下、本実施形態において、ホームドア20の開閉時にホームドア制御装置40の制御部41にて行われる開閉処理について、
図16に示すフローチャートを参照して説明する。
車掌等により操作部43の開操作ボタンが操作されることで制御部41にて開閉処理が開始されると、各扉駆動部22に対して上記開指示が送信されて(
図16のS101)、各車両ドア12が開状態となる。そして、上記第1実施形態と同様に、上記開指示を送信してから所定時間が経過した後、ステップS103に示す撮像処理がなされ、各カメラ30にて撮像された画像がそれぞれ取得される。次に、ステップS105に示すデコード処理がなされ、撮像した各撮像画像からQRコード50を含めた情報コードを解読するための公知のデコード処理が撮像画像ごとになされる。続いて、ステップS107に示す判定処理にて、各カメラ30からそれぞれ取得した撮像画像において識別表示がそれぞれ認識(撮像)されるか否かについて判定される。
【0157】
車両ドア12が開状態となっているためにQRコード50,53が車体部11aに覆われて撮像されない状態では、QRコード50,53をデコードできないため、上記ステップS107にてNoと判定されて、上記ステップS103からの処理が繰り返される。
【0158】
乗降口11を介した乗客の乗り降りが終わり一方のドア13が閉方向にそれぞれ移動し始めることで、各QRコード50,53がカメラ30の撮像視野31内までそれぞれ移動して撮像される(S103)。これにより、撮像された各QRコード50,53のデコードが成功し、全ての乗降口11に対応する乗降口特定情報が読み取られることで(S105)、識別表示が認識されたとしてステップS107にてYesと判定される。
【0159】
続いて、ステップS108に示す判定処理において、認識された複数の識別表示の相対位置が既定の位置関係であるか否かについて判定される。具体的には、上述したように、撮像画像から検出されるQRコード50とQRコード53との相対距離Xaと記憶部42に記憶される規定距離Xoとの差が所定の閾値Xth以下であるか否かに基づいて判定される。
【0160】
ここで、
図15(A)に例示するように、各車両ドア12が閉状態となっているために、QRコード50とQRコード53との相対距離Xaと記憶部42に記憶される規定距離Xoとが車両ドア12ごとに等しくなっている場合には、相対距離Xaと規定距離Xoとの差がそれぞれ所定の閾値Xth以下となるので、認識された複数の識別表示の相対位置が既定の位置関係であるとして車両ドア12の閉状態が検知されて、ステップS108にてYesと判定される。この場合には、ステップS109に示す閉指示送信処理がなされ、各扉駆動部22に対して上記閉指示が送信されて、本開閉処理が終了する。
【0161】
一方、
図15(B)に例示するように、少なくともいずれかの車両ドア12が完全に閉まっていないために、QRコード50とQRコード53との相対距離Xaと記憶部42に記憶される規定距離Xoとの差が所定の閾値Xthよりも大きくなると、認識された複数の識別表示の相対位置が既定の位置関係でないとして、ステップS108にてNoと判定される。この場合には、全ての車両ドア12において、相対距離Xaと規定距離Xoとの差が所定の閾値Xth以下となり認識された複数の識別表示の相対位置が既定の位置関係であると判定されるまで、上記ステップS103からの処理が繰り返される。
【0162】
なお、上記ステップS108にてNoとの判定が想定される時間よりも長く継続される場合には、車両ドア12が物体を挟み込んで完全に閉まっていない状態であることを外部に報知してもよい。特に、各車両ドア12について相対距離Xaをそれぞれ検出していることから、各車両ドア12のうちいずれが完全に閉まっていない状態であるか把握することができる。このため、その完全に閉まっていない車両ドア12に関して、例えば対向している可動扉21および扉駆動部22に設けられる発光部の発光等により特定可能に報知してもよいし、当該車両ドア12を特定する情報を外部に送信することで報知してもよい。
【0163】
以上説明したように、本実施形態に係るホームドア制御システム1では、複数の識別表示が全て認識されるとともに(S107でYes)、検出された複数の識別表示の相対位置が既定の位置関係となる場合に(S108でYes)、車両ドア12の閉状態が検知されてホームドア20がホームドア制御装置40により閉状態に制御される。これにより、検出された複数の識別表示の相対位置が既定の位置関係となっていない場合には、車両ドア12が物体を挟み込んで完全に閉まっていない状態を想定できるので、車両ドア12が閉状態であることを単に検知できるだけでなく、車両ドア12が完全に閉まっていない状態であることも検知することができる。
【0164】
本実施形態の第1変形例として、複数の識別表示には、車両ドア12を囲い、当該車両ドア12とともに移動しない周辺部位に設けられる他の識別表示が含まれてもよい。具体的には、例えば、
図17(A)に例示するQRコード54を識別表示として鉄道車両10に設けることができ、このQRコード54は、一方のドア13のドア本体13bにおける上縁部であって、QRコード50の直上となる車体部11bに設けられる。特に、QRコード54は、
図17(A)に示すように、車両ドア12が閉状態時における開閉方向でのQRコード50との規定距離が0(ゼロ)となるように配置される。
【0165】
そして、上記開閉処理では、QRコード50およびQRコード54が認識された撮像画像からQRコード50とQRコード54との開閉方向での相対距離Xbが検出されて、この検出された相対距離Xbが所定の閾値Xth以下となる場合には、認識された複数の識別表示の相対位置が既定の位置関係であるとして(S108でYes)、車両ドア12の閉状態が検知されて、上記ステップS109以降の処理がなされる。一方、
図17(B)に例示するように、少なくともいずれかの車両ドア12が完全に閉まっていないために、QRコード50とQRコード54との相対距離Xbが所定の閾値Xthよりも大きくなると、認識された複数の識別表示の相対位置が既定の位置関係でないとして、ステップS108にてNoと判定され、上記ステップS103からの処理がなされる。
【0166】
このようにしても、検出された複数の識別表示の相対位置が既定の位置関係となっていない場合には、車両ドア12が物体を挟み込んで完全に閉まっていない状態を想定できるので、車両ドア12が閉状態であることを単に検知できるだけでなく、車両ドア12が完全に閉まっていない状態であることも検知することができる。特に、QRコード54は、車両ドア12とともに移動しない部位に設けられるので、互いに移動する場合と比較して、相対距離Xbの検出精度を高めることができる。
【0167】
なお、車両ドア12が閉状態時に同時に撮像される複数の識別表示には、QRコード50に加えて、QRコード53またはQRコード54が含まれることに限らず、QRコード53およびQRコード54の双方が含まれてもよいし、さらに他のQRコード(識別表示)が含まれてもよい。すなわち、3つ以上の識別表示について相対位置関係が既定の位置関係となる場合に、車両ドア12の閉状態を検知してホームドア20を閉状態に制御してもよい。
【0168】
なお、認識された複数の識別表示の相対位置が既定の位置関係となる場合に車両ドア12の閉状態を検知してホームドア20を閉状態に制御する等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0169】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態に係るホームドア制御システムについて、
図18を用いて説明する。
本第7実施形態では、識別表示が認識困難に設けられる点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0170】
本実施形態では、識別表示は、可視光と異なる所定の波長帯の光が照射されたときに所定の反射特性を示すように設けられ、識別表示の少なくとも一部は、所定の波長帯の光を透過させて可視光の透過を妨げる被覆部により被覆される。具体的には、識別表示として設けられるQRコード50は、一般的に使用される通常の塗料等を塗布して構成され、被覆部60は、上記所定の波長帯の光が照射されたときにQRコード50からの反射光を透過させ、可視光の透過を妨げるような塗料等を塗布して構成されている。本実施形態では、上記所定の波長帯の光として、例えば、赤外線の波長帯の光(赤外光)を想定しており、被覆部60は、例えば、赤外線透過塗料等を塗布して構成される。特に、被覆部60は、
図18(A)に示すように、QRコード50の全てを覆うように配置されている。なお、
図18(A)では、便宜上、被覆部60に対してハッチングを付している。
【0171】
そして、カメラ30は、上記所定の波長帯の光である赤外光をその撮像視野31を含めた範囲に対して照射可能な照明光源(図示略)を備えており、この照明光源から赤外光を照射した状態で撮像視野31を撮像することで、
図18(B)に例示するように、被覆部60が取り除かれた状態のQRコード50を撮像可能に構成されている。
【0172】
このように被覆部60により全体が覆われるQRコード50は、赤外光が照射されることで、被覆部60が取り除かれた状態で撮像可能となるので、赤外光を照射できる照明光源を備えるカメラ30を用意することで、QRコード50を認識可能に撮像できる。一方、上述のような照明光源が無ければ被覆部60により妨げられてQRコード50を完全に撮像できないことから、当該QRコード50を認識できなくなる。このため、第三者では識別表示として設けられるQRコード50自体を正確に認識し難くなり、QRコード50と類似する識別表示を偽造する等の不正行為を抑制することができる。
【0173】
なお、被覆部60は、識別表示として設けられるQRコード50の全てを覆うことなく、当該QRコード50が誤り訂正機能を用いても読み取り不能となる程度の部分、例えば、位置検出パターン等の特定のパターンと異なる部分を覆うように配置されてもよい。このようにしても、QRコード50を完全に撮像できないことから、当該QRコード50を認識できなくなり、上記不正行為を抑制することができる。
【0174】
本実施形態の第1変形例として、
図19(A)に例示するような被覆部61を採用してもよい。本実施形態の第1変形例では、識別表示として設けられるQRコード50は、一方のドア13のドア本体13bに設けられ、被覆部61は、QRコード50の全てを覆い、当該QRコード50が設けられる周囲のドア本体13bの色に対して同色となるように設けられる。これにより、QRコード50(識別表示)だけでなく被覆部60をも視認困難となるので、上記不正行為をより抑制することができる。
【0175】
本実施形態の第2変形例として、
図19(B)に例示するような被覆部62を採用してもよい。この被覆部62は、形状、模様や色彩を変化させた任意の図形として構成されて、識別表示として設けられるQRコード50の全てを覆うように配置される。このように被覆部62が任意の図形から構成されても、この被覆部62が上記所定の波長帯の光の照射に応じたQRコード50からの反射光を透過させるので、上記不正行為を抑制するとともに被覆部62に関してデザイン性を高めることができる。
【0176】
なお、被覆部60~62を利用することで識別表示が認識困難に設けられる等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0177】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態に係るホームドア制御システムについて、
図20を用いて説明する。
本第8実施形態では、鉄道車両10に識別表示として設けられるQRコード50が、閉状態の車両ドア12が開動作の開始直後から開状態となるまでカメラ30により撮像されないように隠蔽される位置に設けられる点が主に上記第1実施形態と異なる。
【0178】
具体的には、
図20(A)に示すように、QRコード50は、一方のドア13におけるドア本体13bのうち車体部11aの縁の近傍の上隅部に貼付されている。
【0179】
このため、撮像視野31が車両ドア12およびその周辺を含むようにカメラ30が配置される場合でも、
図20(B)に示すように、車両ドア12が開動作を開始すると、閉動作が完了するまでQRコード50がカメラ30により認識されなくなる。これにより、車両ドア12の開動作開始から閉動作完了までを容易に把握することができる。
【0180】
なお、QRコード50等の識別表示を、閉状態の車両ドア12が開動作の開始直後から開状態となるまでカメラ30により撮像されないように隠蔽される位置に設ける等の本実施形態の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0181】
[第9実施形態]
次に、本発明の第9実施形態に係るホームドア制御システムについて、
図21~
図23を用いて説明する。
本第9実施形態では、車両ドア12に設けられる複数の識別表示を利用することで、撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される複数の識別表示のそれぞれの移動方向を考慮して鉄道車両10の動作状態を検知し、車両ドア12の開閉状態に連動させてホームドア20を自動的に開閉する点が主に上記第2実施形態と異なる。このため、第2実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0182】
本実施形態では、
図21および
図22に示すように、上記QRコード50に加えて、QRコード53が、他方のドア14のガラス窓14aのうち上部であって一方のドア13に近接する位置に、車外側から貼付されている。そして、カメラ30は、その撮像視野31が、目標停車位置での車両ドア12およびその周辺を撮像可能な範囲(以下、車両ドア周辺範囲ともいう)となるように設置されている。
【0183】
以下、本実施形態において、ホームドア20の開閉時にホームドア制御装置40の制御部41にて行われる開閉処理について、
図23に示すフローチャートを参照して説明する。
ホーム2に入ってくる鉄道車両10が目標停車位置に停車する前から制御部41にて開閉処理が開始されており、まず、
図23のステップS301の撮像処理にて車両ドア周辺範囲の撮像が開始された後、ステップS303に示す判定処理にて、前回カメラ30により撮像された撮像画像との差分(比較)により、識別表示として機能する各情報コードが同じ方向に移動しているか否かについて判定される。ここで、鉄道車両10がホーム2に入っていない状態ではステップS303にてNoと判定されて、上記ステップS301からの処理が繰り返される。なお、ステップS303および後述するステップS307,S311,S317,S321を実行する制御部41は、移動判定手段として機能する。
【0184】
そして、ホーム2に入ってきた鉄道車両10が減速して目標停車位置手前までくることで、前回カメラ30により撮像された撮像画像との差分により、同じ方向に移動しているQRコード50およびQRコード53が撮像されると(
図21(A)の矢印F1a,F1b参照)、鉄道車両10が移動中であると検知されて、ステップS303にてYesと判定される。続いて、ステップS305の撮像処理にて車両ドア周辺範囲が撮像されている状態で、ステップS307に示す判定処理にて各情報コードが停止しているか否かについて判定される。ここで、鉄道車両10が停車するまで移動しているQRコード50およびQRコード53が撮像されるため、ステップS307にてNoと判定されて、上記ステップS305からの処理が繰り返される。
【0185】
そして、鉄道車両10が目標停車位置に停車することでQRコード50およびQRコード53が所定時間移動していない場合には(
図21(B)参照)、車両ドア12の閉状態であって鉄道車両10の停車が検知されて、ステップS307にてYesと判定される。なお、本実施形態では、上記所定時間は、各車両ドア12にて共通の値が予め設定されている。
【0186】
続いて、ステップS309の撮像処理にて車両ドア周辺範囲が撮像されている状態で、ステップS311に示す判定処理にてQRコード50とQRコード53とが遠ざかる方向に移動しているか否かについて判定される。ここで、車両ドア12が開動作を開始していない場合には、QRコード50およびQRコード53は停止した状態であるため、ステップS311にてNoと判定されて、上記ステップS309からの処理が繰り返される。
【0187】
そして、目標停車位置に停車した鉄道車両10の各車両ドア12が開動作を開始すると、QRコード50とQRコード53とが遠ざかる方向に移動することから(
図22(A)の矢印F2a,F2b参照)、車両ドア12の開動作が検知されて、ステップS311にてYesと判定される。続いて、ステップS313に示す開指示送信処理がなされ、各扉駆動部22に対して上記開指示が送信される。
【0188】
続いて、ステップS315の撮像処理にて車両ドア周辺範囲が撮像されている状態で、ステップS317に示す判定処理にてQRコード50とQRコード53とが近づく方向に移動しているか否かについて判定される。ここで、車両ドア12が開動作中か開状態(停止中)であり、車両ドア12が閉動作を開始していない場合には、QRコード50およびQRコード53は近づく方向に移動していないため、ステップS317にてNoと判定されて、上記ステップS315からの処理が繰り返される。
【0189】
そして、各車両ドア12が閉動作を開始すると、QRコード50とQRコード53とが近づく方向に移動することから(
図22(B)の矢印F3a,F3b参照)、車両ドア12の閉動作が検知されて、ステップS317にてYesと判定される。続いて、ステップS319の撮像処理にて車両ドア周辺範囲が撮像されている状態で、ステップS321に示す判定処理にて各情報コードが停止しているか否かについて判定される。ここで、車両ドア12が閉動作中であり、車両ドア12が閉状態(停止)でない場合には、ステップS321にてNoと判定されて、上記ステップS319からの処理が繰り返される。
【0190】
そして、車両ドア12が閉状態となることでQRコード50およびQRコード53が所定時間移動していない場合には(
図21(B)参照)、車両ドア12の閉状態が検知されて、ステップS321にてYesと判定される。続いて、ステップS323に示す閉指示送信処理がなされ、各扉駆動部22に対して上記閉指示が送信されて、本開閉処理が終了する。
【0191】
以上説明したように、本実施形態に係るホームドア制御システム1では、カメラ30により撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて複数の識別表示として機能するQRコード50およびQRコード53が移動しているか否かについて判定される。そして、QRコード50およびQRコード53を撮像した撮像画像に対するデコード処理によって識別表示を認識する認識結果に加えてQRコード50およびQRコード53の移動に関する判定結果に基づいて車両ドア12の動作状態や鉄道車両10の動作状態が検知されて、ホームドア20が制御部41により制御される。これにより、識別表示が移動しているか否かに基づいて車両ドア12が開閉動作中であるか否かを把握したうえでホームドア20を制御できるので、ホームドア20の開閉タイミングと車両ドア12の開閉タイミングとの差を容易に調整することができる。
【0192】
また、カメラ30により識別表示として撮像されたQRコード50およびQRコード53の全てが同じ方向に移動していると判定される場合に(S303でYes)、鉄道車両10が移動中であると検知されてホームドア20が上記開指示の待ち状態として制御される。車両ドア12が開閉動作する場合には、一方のドア13に設けられるQRコード50と他方のドア14に設けられるQRコード53との移動方向が逆方向になり、鉄道車両10が移動する場合には、全てのQRコード50,53が同じ方向に移動するため、車両ドア12の開閉動作と誤検知されることなく鉄道車両10が移動中であることを検知することができる。すなわち、鉄道車両10が移動中である場合には全ての識別表示が同じ方向に移動するため、この全ての識別表示が同じ方向へ移動しているとの判定に応じて鉄道車両10が移動中であると判断でき、鉄道車両10の移動にともない車両ドア12が移動してもその車両ドア12が開閉動作しているとの誤認を抑制することができる。
【0193】
さらに、一方のドア13に設けられるQRコード50の移動方向と他方のドア14に設けられるQRコード53の移動方向とが近づく方向であると判定される場合に(S317でYes)、車両ドア12の閉動作が検知されて、ホームドア20が閉状態に制御される。車両ドア12の閉動作時には、一方のドア13に設けられるQRコード50の移動方向と他方のドア14に設けられるQRコード53の移動方向とが近づく方向となるため、このような近づく方向への各QRコードの移動を検知することで、車両ドア12の閉動作を検知することができる。すなわち、一方のドア13と他方のドア14とが近づく方向に移動している場合には車両ドア12が閉動作していると判断できるので、この場合にホームドア20を閉状態に制御する場合には、車両ドア12が閉まり始めるタイミングに対するホームドア20が閉まり始めるタイミングの遅れを小さくすることができる。
【0194】
さらに、一方のドア13に設けられるQRコード50の移動方向と他方のドア14に設けられるQRコード53の移動方向とが遠ざかる方向であると判定される場合に(S311でYes)、車両ドア12の開動作が検知されて、ホームドア20が開状態に制御される。車両ドア12の開動作時には、一方のドア13に設けられるQRコード50の移動方向と他方のドア14に設けられるQRコード53の移動方向とが遠ざかる方向となるため、このような遠ざかる方向への各QRコードの移動を検知することで、車両ドア12の開動作を検知することができる。すなわち、一方のドア13と他方のドア14とが遠ざかる方向に移動している場合には車両ドア12が開動作していると判断できるので、この場合にホームドア20を開状態に制御することで、車両ドア12が開き始めるタイミングに対するホームドア20が開き始めるタイミングの遅れを小さくすることができる。
【0195】
特に、カメラ30により複数の識別表示として撮像されたQRコード50およびQRコード53の全てが所定時間移動していないと判定される場合に(S307でYes,S321でYes)、車両ドア12の停止が検知されてホームドア20が上記開指示または上記閉指示の待ち状態として制御される。これにより、車両ドア12が停止(移動)しているか否かを容易に把握できるので、車両ドア12の閉動作中または開動作中に当該車両ドア12が閉動作完了(閉状態)または開動作完了(開状態)であると誤検知されることを抑制することができる。
【0196】
さらに、車両ドア12の閉動作を検出した直後に(S317でYes)、QRコード50およびQRコード53の全てが所定時間移動していないと判定される場合に(S321でYes)、車両ドア12の閉状態が検知されて、ホームドア20が閉状態に制御される。これにより、乗客の荷物等が車両ドア12に挟まったために車両ドア12が再び開動作するような場合であっても、ホームドア20が閉状態に制御されることもないので、不要なホームドア20の閉動作を抑制することができる。
【0197】
また、鉄道車両10の移動を検出した直後に(S303でYes)、複数の識別表示として機能するQRコード50およびQRコード53の全てが所定時間移動していないと判定される場合に(S307でYes)、車両ドア12が開状態となる直前での車両ドア12の閉状態であって鉄道車両10の停車状態であると検知されてホームドア20が制御される。鉄道車両10の移動検出直後に複数の識別表示の全てが所定時間移動していないと判定される場合には、車両ドア12が開状態となる直前の鉄道車両10の停車状態であると判断できるので、ホームドア20を円滑に開動作するように制御することができる。
【0198】
なお、識別表示として機能するQRコード50およびQRコード53は、少なくとも上記所定時間に関する情報を含めた情報が光学的に読み取り可能に記録されるように生成されてもよい。これにより、鉄道車両10ごとまたは識別表示が設けられる車両ドア12ごとに車両ドア12の開閉タイミングが異なる場合であっても、その識別表示が設けられる車両ドア12の開閉に関して適した時間を上記所定時間として容易に設定することができる。
【0199】
また、車両ドア12に設けられる複数の識別表示を利用することで、鉄道車両10の車両ドア12の開閉状態に連動させてホームドア20を自動的に開閉する等の本実施形態の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0200】
なお、鉄道車両10の停車時に撮像された複数の識別表示のそれぞれの移動方向に基づいて車両ドア12の動作状態を検知することに限らず、撮像された複数の識別表示のうち1つの移動方向に基づいて車両ドア12の動作状態を検知してもよい。例えば、
図24に例示する撮像画像Pのように、鉄道車両10の停車時に2つのQRコード50,53が撮像されている場合に、最も撮像画像の中央側に位置しているQRコード50の移動方向に基づいて車両ドア12の動作状態を検知する。これにより、車両ドア12が開閉動作する場合でも検知基準となる識別表示が撮像視野の中央から離れにくくなるので、カメラ30にて検知基準となる識別表示を撮像する際に必要な撮像視野を狭くすることができる。
【0201】
[第10実施形態]
次に、本発明の第10実施形態に係るホームドア制御システムについて、
図25~
図27を用いて説明する。
本第10実施形態では、複数の識別表示には、車両ドア12を囲い、当該車両ドア12とともに移動しない周辺部位に設けられる他の識別表示が含まれる点が主に上記第9実施形態と異なる。このため、第9実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0202】
本実施形態では、
図25および
図26に示すように、上記QRコード50に加えて、QRコード54が、車両ドア12とともに移動しない部位に設けられる他の識別表示として、QRコード50の直上となる車体部11bに設けられている。このため、車両ドア12の開閉時には、QRコード50のみが移動し、QRコード54は移動しない。
【0203】
また、本実施形態では、QRコード50は、一方のドア13に設けられているため、車両ドア12の閉動作時には鉄道車両10の進行方向に移動し、車両ドア12の開動作時には鉄道車両10の進行方向に対して逆方向に移動する。この車両ドア12の開閉方向と当該車両ドア12に設けられるQRコード50の移動方向とに関する情報は、記憶手段として機能する記憶部42に予め記憶されている。このため、QRコード50の移動方向を検出することで、車両ドア12が開動作および閉動作のいずれの状態であるかを把握することができる。
【0204】
以下、本実施形態において、ホームドア20の開閉時にホームドア制御装置40の制御部41にて行われる開閉処理について、
図27に示すフローチャートを参照して説明する。
上記第9実施形態と同様に、ホーム2に入ってくる鉄道車両10が目標停車位置に停車する前から制御部41にて開閉処理が開始されており、まず、
図27のステップS301の撮像処理にて車両ドア周辺範囲の撮像が開始された後、ステップS303に示す判定処理にて各情報コードが同じ方向に移動しているか否かについて判定される。そして、ホーム2に入ってきた鉄道車両10が減速して目標停車位置手前までくることで、同じ方向に移動しているQRコード50およびQRコード54が撮像されると(
図25(A)の矢印F4a,F4b参照)、鉄道車両10が移動中であると検知されて、ステップS303にてYesと判定される。続いて、ステップS305の撮像処理にて車両ドア周辺範囲が撮像されている状態で、ステップS307に示す判定処理にて各情報コードが停止しているか否かについて判定され、鉄道車両10が目標停車位置に停車することでQRコード50およびQRコード54が所定時間移動していない場合には(
図25(B)参照)、車両ドア12の閉状態であって鉄道車両10の停車が検知されて、ステップS307にてYesと判定される。
【0205】
続いて、ステップS309の撮像処理にて車両ドア周辺範囲が撮像されている状態で、ステップS311aに示す判定処理にてQRコード54を除きQRコード50が開方向(鉄道車両10の進行方向に対して逆方向)に移動しているか否かについて判定される。ここで、車両ドア12が開動作を開始していない場合には、QRコード50は停止した状態であるため、ステップS311aにてNoと判定されて、上記ステップS309からの処理が繰り返される。
【0206】
そして、目標停車位置に停車した鉄道車両10の各車両ドア12が開動作を開始すると、QRコード54は停止したままでQRコード50が鉄道車両10の進行方向に対して逆方向(開方向)に移動することから(
図26(A)の矢印F5参照)、車両ドア12の開動作が検知されて、ステップS311aにてYesと判定される。続いて、ステップS313に示す開指示送信処理がなされ、各扉駆動部22に対して上記開指示が送信される。
【0207】
続いて、ステップS315の撮像処理にて車両ドア周辺範囲が撮像されている状態で、ステップS317aに示す判定処理にてQRコード54を除きQRコード50が閉方向(鉄道車両10の進行方向)に移動しているか否かについて判定される。ここで、車両ドア12が開動作中か開状態(停止中)であり、車両ドア12が閉動作を開始していない場合には、QRコード50は鉄道車両10の進行方向に移動していないため、ステップS317aにてNoと判定されて、上記ステップS315からの処理が繰り返される。
【0208】
そして、各車両ドア12が閉動作を開始すると、QRコード54は停止したままでQRコード50が鉄道車両10の進行方向(閉方向)に移動することから(
図26(B)の矢印F6参照)、車両ドア12の閉動作が検知されて、ステップS317aにてYesと判定される。続いて、ステップS319の撮像処理にて車両ドア周辺範囲が撮像されている状態で、ステップS321に示す判定処理にて各情報コードが停止しているか否かについて判定され、車両ドア12が閉状態となることでQRコード50が所定時間移動していない場合には(
図25(B)参照)、車両ドア12の閉状態が検知されて、ステップS321にてYesと判定される。続いて、ステップS323に示す閉指示送信処理がなされ、各扉駆動部22に対して上記閉指示が送信されて、本開閉処理が終了する。
【0209】
以上説明したように、本実施形態に係るホームドア制御システム1では、カメラ30により撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて複数の識別表示として機能するQRコード50およびQRコード54が移動しているか否かについて判定される。そして、QRコード50およびQRコード54を撮像した撮像画像に対するデコード処理によって識別表示を認識する認識結果に加えてQRコード50およびQRコード54の移動に関する判定結果に基づいて車両ドア12の動作状態や鉄道車両10の動作状態が検知されて、ホームドア20が制御部41により制御される。このようにしても、上記第9実施形態と同様に、識別表示が移動しているか否かに基づいて車両ドア12が開閉動作中であるか否かを把握したうえでホームドア20を制御できるので、ホームドア20の開閉タイミングと車両ドア12の開閉タイミングとの差を容易に調整することができる。
【0210】
また、カメラ30により識別表示として撮像されたQRコード50およびQRコード54の全てが移動していると判定される場合に(S303でYes)、鉄道車両10が移動中である検知されてホームドア20が上記開指示の待ち状態として制御される。このため、上記第9実施形態と同様に、鉄道車両10の移動にともない車両ドア12が移動してもその車両ドア12が開閉動作しているとの誤検知を抑制することができる。
【0211】
特に、カメラ30により撮像された複数の識別表示のうちQRコード54(他の識別表示)を除くQRコード50が移動していると判定される場合に、車両ドア12が閉動作中または開動作中であると検知されてホームドア20が制御される。複数の識別表示のうちQRコード54を除きQRコード50が移動している場合には車両ドア12が閉動作または開動作していると判断できるので、車両ドア12の閉動作中または開動作中に当該車両ドア12が閉動作完了(閉状態)または開動作完了(開状態)であると誤検知されることを抑制することができる。
【0212】
なお、QRコード50には、上述した車両ドア12の開閉方向と当該車両ドア12に設けられるQRコード50の移動方向とに関する情報が記録されてもよい。すなわち、識別表示は、少なくとも車両ドア12の開閉時における当該識別表示の移動方向に関する情報が光学的に読み取り可能に記録された情報コードとして構成されてもよい。これにより、撮像した情報コードから移動方向に関する情報を解読して取得することで、当該情報を記憶部42に予め記憶することなく、移動している情報コードが設けられた車両ドア12が閉動作状態および開動作状態のどちらの状態であるかを容易に検知することができる。
【0213】
また、車両ドア12とともに移動しない部位に他の識別表示を設ける等の本実施形態の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0214】
[第11実施形態]
次に、本発明の第11実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第11実施形態では、カメラ30は、車両ドア12の開状態時および閉状態時を含む停止時を除き、車両ドア12の開閉動作時に撮像画像から識別表示を認識不能なシャッタ速度に設定される点が主に上記第1実施形態と異なる。
【0215】
具体的には、車両ドア12の開閉動作時に上記ステップS103にて撮像されたQRコード50がぼけてしまい、ステップS105のデコード処理にて解読できない程度に、カメラ30のシャッタ速度が設定される。このため、車両ドア12の閉動作時では、撮像画像から識別表示が認識されないために上記ステップS107にてNoと判定され、上記閉指示が送信されることもない。
【0216】
このように、車両ドア12の開閉動作時に識別表示として撮像されたQRコード50はぼけてしまって認識されないことから、識別表示が認識可能に撮像されているか否かに基づいて車両ドア12が開閉動作中であるか否かを容易に検知でき、車両ドア12が開閉動作中であるか否かを検知したうえでホームドア20を制御することができる。
【0217】
なお、QRコード50には、上記シャッタ速度に関する情報、例えば、上記シャッタ速度や当該シャッタ速度を算出するための情報等が記録されてもよい。すなわち、識別表示は、少なくとも上記シャッタ速度に関する情報を含めた情報が光学的に読み取り可能に記録された情報コードとして構成されてもよい。これにより、鉄道車両10ごとまたは情報コードが設けられる車両ドア12ごとに車両ドア12の開閉速度が異なる場合であっても、撮像した情報コードから上記シャッタ速度に関する情報を解読して取得することで、情報コードごとに車両ドア12の開閉動作中の認識不能なシャッタ速度をカメラ30にて設定することができる。
【0218】
また、車両ドア12の開閉動作時に撮像画像から識別表示を認識不能にカメラ30のシャッタ速度が設定される等の本実施形態の特徴的構成は、識別表示の移動方向を判定する場合等を除き、他の実施形態等にも適用することができる。
【0219】
[第12実施形態]
次に、本発明の第12実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第12実施形態では、撮像手段は、識別表示が設けられる1つの車両ドアに向けて複数設けられる点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0220】
ホーム2には、柱や壁などの設置物が設置されており、この設置物の設置場所によっては、車両ドア12に貼付されたQRコード50に対して撮像しやすい位置にカメラ30を設置し難い場合がある。例えば、
図28に例示するように、QRコード50に対して撮像しやすい位置に柱3が設置されていると、この柱3がカメラ30の設置を阻害してしまう可能性がある。また、目標停車位置に対する鉄道車両10の停車位置のずれが大きくなるような環境等では、1つのカメラ30では、鉄道車両10が目標停車位置から大きくずれて停車した際、本来撮像されるべきQRコード50が撮像されなくなる可能性がある。
【0221】
そこで、本実施形態では、識別表示が設けられる1つの車両ドアに向けて撮像手段を複数設けている。具体的には、
図29に示すように、1つの車両ドア12に向けて2つの撮像手段として、カメラ30a,30bが設けられている。すなわち、各車両ドア12には、それぞれ一対のカメラ30a,30bが向けられている。カメラ30aおよびカメラ30bは、それぞれの撮像視野31a,31bの一部が重なるように配置されて、それぞれの撮像画像をホームドア制御装置40に送信するように構成されている。
【0222】
より具体的には、カメラ30aは、目標停車位置に対して進行方向と逆方向へのずれが最も大きくなるとき(例えば、ずれが700mm)のQRコード50(
図29の下段X3参照)と目標停車位置でのQRコード50(
図29の中段X2参照)との双方が撮像視野31aに含まれるように設置されている。また、カメラ30bは、目標停車位置に対して進行方向へのずれが最も大きくなるとき(例えば、ずれが700mm)のQRコード50(
図29の上段X1参照)と目標停車位置でのQRコード50との双方が撮像視野31bに含まれるように設置されている。
【0223】
そして、制御部41により実行される開閉処理では、車両ドア12ごとにカメラ30aおよびカメラ30bによる撮像がそれぞれなされて(S103)、各撮像画像についてデコード処理がなされる(S105)。そして、各車両ドア12において、カメラ30aおよびカメラ30bによる撮像画像に対するデコード処理により少なくとも一方にて乗降口特定情報がそれぞれ読み取られることで識別表示が認識されると(S107でYes)、各扉駆動部22に対して上記閉指示が送信される(S109)。
【0224】
以上説明したように、本実施形態に係るホームドア制御システム1では、撮像手段は、QRコード50(識別表示)が設けられる1つの車両ドア12に向けて複数設けられる。これにより、ホーム2に設けられる柱3や壁などの設置物のために1つの撮像手段を識別表示に対して撮像しやすい位置に設置し難い設置環境や鉄道車両10の停車位置のずれが大きくなるような環境等であっても、複数の撮像手段を利用することで識別表示の撮像に関して必要な撮像視野(31a,31b)を容易に確保でき、各撮像手段の設置容易性も向上させることができる。
【0225】
特に、複数の撮像手段(30a,30b)は、互いに撮像視野(31a,31b)の一部が重なるようにそれぞれ配置されるため、識別表示を撮像するための撮像視野を、1つの撮像手段を用いる場合と比較して広くすることができる。
【0226】
なお、カメラ30aおよびカメラ30bは、
図29に例示するように撮像視野31aと撮像視野31bとの重なる範囲が大きくなるように配置されることに限らず、その利用環境等に適した範囲となるように設置されてもよい。例えば、本実施形態の第1変形例として、複数の撮像手段による撮像視野をより広くするため、
図30に例示するように、撮像視野31aと撮像視野31bとの重なる範囲が目標停車位置でのQRコード50を撮像可能な最小の範囲となるように配置されてもよい。また、ホーム2での設置環境等によっては、各車両ドア12の少なくとも一部に向けられるカメラ30aおよびカメラ30bは、撮像視野31aと撮像視野31bが重ならないように配置されてもよい。
【0227】
また、撮像手段は、QRコード50等の識別表示が設けられる1つの車両ドア12に向けて2つ設けられることに限らず、3つ以上設けられてもよい。具体的には、例えば、本実施形態の第2変形例として、
図31に例示するように、1つの車両ドア12に向けて3つの撮像手段として機能するカメラ30a~30cを、撮像視野31aと撮像視野31bとが一部重なるとともに撮像視野31bと撮像視野31cとが一部重なって配置されるように設けてもよい。また、車両ドア12ごとに撮像手段の個数が異なってもよい。
【0228】
また、複数の撮像手段は、少なくとも一部が互いに光軸が平行とならないようにそれぞれ配置されてもよい。具体的には、本実施形態の第3変形例として、
図32に例示するように、水平面に投影したカメラ30aの光軸32aとカメラ30bの光軸32bとが交わるように、カメラ30aとカメラ30bとを配置することができる。これにより、撮像視野を広げるためにそれぞれの光軸が平行となるように各撮像手段が配置される場合と比較して、カメラ30aおよびカメラ30b(各撮像手段)の設置容易性を向上させることができる。
【0229】
また、本実施形態の第4変形例として、制御部41により実行される開閉処理では、1つの車両ドア12について、カメラ30aおよびカメラ30bのいずれか1つによる撮像画像についてQRコード50等の識別表示を認識して車両ドア12の動作状態を検知するための処理を行ってもよい。この場合、予め設定された条件等に基づいてカメラ30aおよびカメラ30bのいずれか1つが選択されてもよいし、その撮像環境等に応じてカメラ30aおよびカメラ30bのいずれか1つが都度選択されてもよい。これにより、複数の撮像手段による全ての撮像結果を常に考慮しなくてもよいため、識別表示の認識判定、すなわち、車両ドア12の動作状態に関する検知を単純化することができる。
【0230】
例えば、鉄道車両10の停車時にカメラ30aおよびカメラ30bによって同じ識別表示が撮像された場合に、当該識別表示の移動方向が中央側となる撮像画像に基づいて車両ドア12の動作状態を検知することができる。
図33(A)のように撮像されている場合には、QRコード50が一方のドア13に設けられているため、カメラ30aによる撮像画像ではQRコード50の移動方向が中央側となり、カメラ30bによる撮像画像ではQRコード50の移動方向が縁部側となるので、カメラ30aの撮像画像に基づいて車両ドア12の動作状態が検知される。
図33(B)のように撮像されている場合には、QRコード53が他方のドア14に設けられているため、カメラ30aによる撮像画像ではQRコード53の移動方向が縁部側となり、カメラ30bによる撮像画像ではQRコード53の移動方向が中央側となるので、カメラ30bの撮像画像に基づいて車両ドア12の動作状態が検知される。このように、撮像された識別表示の停車時からの移動方向が中央側となる撮像画像の方が、撮像された識別表示の停車時からの移動方向が縁部側となる撮像画像よりも、車両ドア12が閉状態となるまで識別表示を継続して撮像しやすくなるので、2つの撮像画像のうちの一方を利用する場合でも車両ドア12の動作状態を確実に検知することができる。
【0231】
また、本実施形態の第5変形例として、複数の撮像手段により同時に撮像された複数の撮像画像を撮像視野が重なる領域を規準に結合した結合画像に基づいて車両ドア12の動作状態を検知してもよい。具体的には、例えば、
図34(A)に示すようにカメラ30aにて撮像された撮像画像Paと
図34(B)に示すようにカメラ30bにて撮像された撮像画像Paとを、
図34(C)に示すように、それらの撮像視野が重なる領域Pcを規準に結合して結合画像Pjを生成し、この結合画像に基づいて車両ドア12の動作状態を検知する。これにより、識別表示を撮像するための撮像視野を、1つの撮像手段を用いる場合と比較して広くすることができる。
【0232】
また、本実施形態の第6変形例として、複数の撮像手段によりそれぞれ同じ識別表示が同時に撮像された場合に、複数の撮像手段により撮像された複数の撮像画像を識別表示を規準に結合した結合画像に基づいて車両ドア12の動作状態を検知してもよい。具体的には、例えば、
図35(A)に示すようにカメラ30aにてQRコード50が撮像された撮像画像Paと
図35(B)に示すようにカメラ30bにてQRコード50が撮像された撮像画像Pbとを、
図35(C)に示すように、QRコード50を規準に結合して結合画像Pjを生成する。この場合、例えば、撮像画像PaでのQRコード50の基準点(例えば左上隅)の座標が(100,200)、撮像画像PbでのQRコード50の同じ基準点の座標が(1000,180)である場合には、オフセット補正値(900,-20)を利用して撮像画像Paと撮像画像Pbとを結合して結合画像Pjを生成し、この結合画像Pjに基づいて車両ドア12の動作状態を検知する。これにより、結合画像を生成する際の基準が明確となり、精度良く結合画像を生成することができる。
【0233】
また、本実施形態の第7変形例として、識別表示が複数の特定パターンを有し所定の情報を光学的に読み取り可能に記録した情報コードである場合に、各特定パターンの少なくとも一部の位置を規準に結合して結合画像を生成してもよい。具体的には、例えば、上記特定パターンは、QRコードの各位置検出パターン(ファインダパターン)であり、これら各位置検出パターンの位置を規準に結合して結合画像を生成することができる。この場合、一方の撮像画像にて一部の位置検出パターンが撮像されない場合でも、撮像された位置検出パターンを利用して結合画像を生成することができる。
【0234】
例えば、
図36(A)に例示する撮像画像Paのように、カメラ30aにて全ての位置検出パターンFP1~FP3が撮像され、
図36(B)に例示する撮像画像Pbのように、各検出パターンの一部として撮像画像に対して垂直方向に配列される位置検出パターンFP1,FP2のみがカメラ30bにて撮像される場合、これら位置検出パターンFP1,FP2を規準に、
図36(C)に例示するように、結合画像Pjを生成する。
【0235】
また、
図37(A)に例示する撮像画像Paのように、カメラ30aにて全ての位置検出パターンFP1~FP3が撮像され、
図37(B)に例示する撮像画像Pbのように、各検出パターンの一部として撮像画像に対して水平方向に配列される位置検出パターンFP1,FP3のみがカメラ30bにて撮像される場合、これら位置検出パターンFP1,FP3を規準に、
図37(C)に例示するように、結合画像Pjを生成する。なお、
図36および
図37では、便宜上、車両ドア12等の図示を省略し、QRコードおよびその位置検出パターンの外形を図示して各セルの図示を省略している。
【0236】
このように、情報コードを構成する上で撮像画像から認識しやすい特定パターン(位置検出パターン)の少なくとも一部を結合画像の生成時の基準とすることができ、さらに精度良く結合画像を生成することができる。
【0237】
なお、識別表示が設けられる1つの車両ドアに向けて撮像手段が複数設けられる等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。例えば、上述した第2実施形態や第9実施形態等において制御部41により実行される開閉処理では、鉄道車両10の停車後に複数の撮像手段のうち最初に識別表示を認識可能に撮像した撮像手段を用いて識別表示を認識するための処理を行ってもよい。
【0238】
[第13実施形態]
次に、本発明の第13実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第13実施形態では、複数の撮像手段は、少なくとも識別表示が撮像される可能性がある範囲について互いに撮像視野が重なるようにそれぞれ配置される点が主に上記第12実施形態と異なる。
【0239】
具体的には、
図38に示すように、カメラ30aは、目標停車位置でのQRコード50(
図38の中段X2参照)だけでなく、目標停車位置に対して進行方向と逆方向へのずれが最も大きくなるときのQRコード50(
図38の下段X3参照)と目標停車位置に対して進行方向へのずれが最も大きくなるときのQRコード50(
図38の上段X1参照)との双方がその撮像視野31aに含まれるように設置されている。同様に、カメラ30bは、目標停車位置でのQRコード50だけでなく、目標停車位置に対して進行方向と逆方向へのずれが最も大きくなるときのQRコード50と目標停車位置に対して進行方向へのずれが最も大きくなるときのQRコード50との双方がその撮像視野31bに含まれるように設置されている。
【0240】
このように、QRコード50が撮像される可能性がある範囲について互いに撮像視野31a,31bが重なるようにカメラ30a,30bがそれぞれ配置されるため、例えば、閉状態の車両ドア12のQRコード50がカメラ30aで撮像されなくてもカメラ30bで撮像されることで、QRコード50が認識される。これにより、その車両ドア12に対する識別表示(QRコード50)の撮像に関して冗長性(ロバスト性)を確保することができる。
【0241】
なお、識別表示が撮像される可能性がある範囲について互いに撮像視野が重なるように複数の撮像手段がそれぞれ配置される構成では、各撮像手段のうち一部の撮像周期と少なくとも他の一部の撮像周期とを、識別表示に照射される照明光の照明周期の半周期分ずらすことができる。具体的には、本実施形態の第1変形例として、
図39に例示するように、識別表示に照射される照明光Lsの照明周期Tに対して、カメラ30aの撮像周期とカメラ30bの撮像周期とを照明光Lsの照明周期Tの半周期分に相当するT/2だけずらす。
【0242】
これにより、識別表示に照射される照明光Lsの明るさが周期的に変化する場合でも、カメラ30a(一部の撮像手段)にて撮像される識別表示とカメラ30b(他の一部の撮像手段)にて撮像される識別表示との双方が同時に暗い状態で撮像されることもないので、フリッカーの影響を回避することができる。
【0243】
なお、各カメラ30a,30bは、その撮像周期が、本ホームドア制御システム1の設置時に取得された照明光Lsの照明周期Tに関する情報に基づいて予め設定されてもよい。また、各カメラ30a,30bは、その撮像周期が、ホームドア制御装置40からの指示に応じて変更可能に構成されてもよく、この場合、照明光Lsの照明周期Tに関する情報は、本ホームドア制御システム1の設置時に予め取得されて記憶部42等に記憶されてもよいし、設置後等に外部からの情報入力に応じて取得されてもよい。
【0244】
また、複数の撮像手段は、少なくとも一部が互いに光軸が平行とならないようにそれぞれ配置されてもよい。具体的には、本実施形態の第2変形例として、
図40に例示するように、水平面に投影したカメラ30aの光軸32aとカメラ30bの光軸32bとが交わるように、カメラ30aとカメラ30bとを配置することができる。これにより、撮像視野を広げるためにそれぞれの光軸が平行となるように各撮像手段が配置される場合と比較して、カメラ30aおよびカメラ30b(各撮像手段)の設置容易性を向上させることができる。特に、例えば、あるタイミングにてカメラ30a(一部の撮像手段)が太陽光の西日やスポットライト、鏡面反射等の影響を受けるような状況であってもカメラ30b(他の撮像手段)がその影響を受け難くなることから、1つの車両ドア12に対する識別表示の撮像に関して冗長性(ロバスト性)を向上させることができる。
【0245】
なお、少なくとも識別表示が撮像される可能性がある範囲について互いに撮像視野が重なるように複数の撮像手段がそれぞれ配置される等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0246】
[第14実施形態]
次に、本発明の第14実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第14実施形態では、車両ドアごとに識別表示の検知結果を集約する点が主に上記第12実施形態と異なる。
【0247】
具体的には、
図41に示すように、カメラ30aからの撮像画像とカメラ30bからの撮像画像とを取得してQRコード50を公知のデコード処理等を用いて認識するための処理を行う集約機器70が車両ドア12ごとに設けられており、各集約機器70によるQRコード50の認識結果がホームドア制御装置40に送信される。すなわち、各集約機器70は、複数の撮像手段(30a,30b)を利用して対応する車両ドア12に設けられる識別表示(50)をそれぞれ認識することで車両ドア12の閉状態等の車両ドア12の動作状態を検知する検知手段として機能し、その検知結果をホームドア制御装置40に送信する。
【0248】
ホームドア制御装置40の制御部41にて行われる開閉処理では、上述したステップS103,S105の処理が省略されて、全ての集約機器70から識別表示を認識して車両ドア12が閉状態(閉動作)であるとの検知結果を受信すると、ステップS107にてYesと判定されて、各扉駆動部22に対して上記閉指示が送信される(S109)。
【0249】
このように、検知手段として機能する集約機器70が車両ドア12ごとに1つ配置されるように複数設けられ、ホームドア制御装置40は、各集約機器70によるそれぞれの検知結果に基づいてホームドア20を制御する。これにより、車両ドア12ごとに検知結果が集約されるので、車両ドア12ごとに閉状態等を容易に把握することができる。
【0250】
なお、上述した集約機器70に代えて、複数の撮像手段の1つに集約機器70の機能を持たせてマスター機とし、他の撮像手段をスレーブ機として構成してもよい。すなわち、複数の撮像手段のいずれか1つは、自ら撮像した撮像画像と残りの撮像手段から取得した撮像画像とから識別表示を認識して検知可能に検知手段として機能するように構成される。例えば、
図42に例示するように、カメラ30aに集約機器70の機能を持たせてマスター機とし、カメラ30bをスレーブ機として構成することができる。
【0251】
このように、検知手段としての機能を兼備するカメラ30aをマスター機、カメラ30bをスレーブ機として構成することで、ホームドア制御装置40はマスター機であるカメラ30aからそれぞれ検知結果を取得できるので、各カメラ30a,30bとホームドア制御装置40との通信構成を簡素化することができる。
【0252】
なお、車両ドアごとに識別表示の検知結果を集約する等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。例えば、上述した第2実施形態等において制御部41により実行される開閉処理では、車両ドア12の開状態や開動作、鉄道車両10の動作状態等の検知結果をカメラが向けられる車両ドア12ごとに集約してホームドア制御装置40に送信することができる。
【0253】
[第15実施形態]
次に、本発明の第15実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第15実施形態では、取得した複数の撮像画像のうちの一部について識別表示を認識するための処理を行う点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0254】
上記第1実施形態では、上述したように、鉄道車両10の全ての車両ドア12にQRコード50等の識別表示がそれぞれ設けられおり、各車両ドア12に向けて閉状態での識別表示を撮像可能にカメラ30がそれぞれ設けられている(
図43参照)。各カメラ30は、高身長の乗客が乗り込む場合や乗客が背の高い手荷物等を持って乗り込む場合等でもQRコード50等が認識可能(デコード可能)に撮像されるように配置されている。具体的には、
図44に例示するように、ホーム2の床面からH1(例えば、1350mm)の高さにQRコード50が貼付され、車両ドア12からの距離Z(例えば、400mm)の位置に高身長(例えば、H2=2000mm)の乗客が立っていても、カメラ30の光軸が水平面に対してθ(例えば、60°)となるようにカメラ30がホーム2の天井2bに設置されることで、このカメラ30によりQRコード50等が認識可能に撮像される。
【0255】
そして、ホームドア制御装置40の制御部41にて行われる開閉処理では、全ての車両ドア12についてQRコード50等の識別表示を認識するための処理がなされる。より具体的には、全ての撮像画像においてQRコード50等の識別表示が認識されない撮像状態から識別表示が認識される撮像状態に変化することで、各車両ドア12が閉状態であると検知され、これにより、複数の車両ドア12のそれぞれの閉状態等を考慮してホームドア20が制御されるので、より実状に即したホームドア20の自動制御を行うことができる。
【0256】
これに対して、本実施形態では、各車両ドア12の一部に向けて閉状態での識別表示を撮像可能にカメラ30がそれぞれ設けられる。例えば、1車両につき4つの車両ドア12がある場合には、これら4つの車両ドア12のうちの1つの車両ドア12についてカメラ30が向けられて配置される。そして、制御部41にて行われる開閉処理では、全ての撮像画像のうちの一部においてQRコード50等の識別表示が認識されない撮像状態から識別表示が認識される撮像状態に変化することで、各車両ドア12が閉状態であると検知される。
【0257】
これにより、複数の車両ドア12のうちの一部の閉状態等の検知結果に応じてホームドア20の全ての開閉箇所を同じ動作状態に自動制御でき、全ての車両ドア12の閉状態等を把握しないため、ホームドア20の自動制御に関して冗長性(ロバスト性)を確保することができる。例えば、閉状態の車両ドア12の1つについて乗客の手荷物等のためにQRコード50等の識別表示が撮像されない場合でも、他の閉状態の車両ドア12についてQRコード50等の識別表示が撮像されて認識されることで、ホームドア20を閉状態に自動制御することができる。
【0258】
なお、全ての車両ドア12に向けて閉状態での識別表示を撮像可能にカメラ30がそれぞれ設けられてもよく、その場合でも、全ての撮像画像のうちの一部においてQRコード50等の識別表示が認識されない撮像状態から識別表示が認識される撮像状態に変化することで、各車両ドア12が閉状態であると検知することができる。また、各扉駆動部22は、対応する車両ドア12の開閉状態等を鉄道車両側の面に設けたセンサ等で検知した検知結果に応じて、鉄道車両10とホームドア20との間の人の挟み込み等を防止するため、ホームドア制御装置40からの閉指示等と異なるように可動扉21を個々に移動させてもよい。
【0259】
なお、識別表示が設けられる車両ドア12の数を3以上としてこれら識別表示が設けられる車両ドア12に向けてそれぞれカメラ30を配置し、各カメラ30による識別表示の撮像結果から複数の車両ドア12の動作状態をそれぞれ求めて多数決を利用することで、全ての車両ドア12に関して統一された車両ドア12の動作状態を検知してもよい。例えば、3つの車両ドア12に対してそれぞれ識別表示を設け、2つのカメラ30の撮像結果から車両ドア12の閉状態が検知されて、残りの1つのカメラ30の撮像結果から車両ドア12の開状態が検知されると、多数決を利用して、各車両ドア12が閉状態であると検知する。これにより、検知された一部の車両ドア12の動作状態を利用してホームドア20の一括制御を行う場合でも、その検知結果の信頼性を向上させることができる。特に、各カメラ30による識別表示の撮像結果から奇数個の検知結果を取得して多数決を利用することで、多数決によって得られた検知結果の信頼性をさらに向上させることができる。
【0260】
このように、一部の車両ドア12の動作状態の検知結果に応じてホームドア20の全ての開閉箇所を同じ動作状態に制御する構成では、各カメラ30を、
図45に例示するように、一部の車両ドア12に対する撮像視野のずれ方向と残部の車両ドア12に対する撮像視野のずれ方向とを鉄道車両10の進行方向に関して異なるように配置してもよい。これにより、鉄道車両10が目標停車位置からずれて停車したとしても、上記一部の車両ドア12に向けられたカメラ30と上記残部の車両ドア12に向けられたカメラ30とのいずれかの撮像視野に識別表示が入りやすくなるため、1つの車両ドア12に対して複数のカメラ30を向ける必要もないので、撮像手段の構成を簡素化することができる。
【0261】
なお、取得した複数の撮像画像のうちの一部について識別表示の認識結果から車両ドア12の動作状態を検知するための処理を行う等の本実施形態や変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。例えば、上記第2実施形態において制御部41により実行される開閉処理では、全ての撮像画像のうちの一部においてQRコード50等の識別表示が認識される撮像状態から識別表示が認識されない撮像状態に変化することで、各車両ドア12が開状態であると検知されてもよい。このようにしても、全ての車両ドア12の開状態等を把握しないため、ホームドア20の自動制御に関して冗長性(ロバスト性)を確保することができる。また、上記第9実施形態において制御部41により実行される開閉処理では、全ての撮像画像のうちの一部においてQRコード50等の識別表示の移動が認識される場合にその移動に応じた判定を行ってもよい。このようにしても、全ての車両ドア12の移動状態等を把握しないため、ホームドア20の自動制御に関して冗長性(ロバスト性)を確保することができる。
【0262】
[第16実施形態]
次に、本発明の第16実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第16実施形態では、識別表示は、鉄道車両10の複数の車両ドア12のそれぞれに設けられ、ホームドア制御装置40は、検知される複数の車両ドア12のそれぞれの動作状態に基づいて、対応するホームドア20の開閉箇所を個々に制御する。このため、ホームドア制御装置40は、例えば、閉状態と検知された車両ドア12に対応する扉駆動部22を制御して可動扉21を閉状態とし、開状態と検知された車両ドア12に対応する扉駆動部22を制御して可動扉21を開状態とする。
【0263】
このようにホームドア20の開閉箇所を個々に制御することで、ホームドア20の一部分だけを再開閉する等、より細かなホームドア20の制御を行うことができ、その利便性を高めることができる。なお、ホームドア20の開閉箇所を個々に制御する等の本実施形態の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0264】
[第17実施形態]
次に、本発明の第17実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第17実施形態では、識別表示が設けられる複数の車両ドアのうちの一部に向けて撮像手段がそれぞれ設けられる点が主に上記第12実施形態と異なる。
【0265】
本実施形態では、上記第12実施形態と同様に、鉄道車両10の全ての車両ドア12にQRコード50等の識別表示がそれぞれ設けられる一方で、上記第12実施形態と異なり、各車両ドア12のうちの一部に向けてカメラ30a,30bがそれぞれ設けられている。特に、本実施形態では、カメラ30a,30bが向けられる車両ドア12は、駅によって異なっている。
【0266】
具体的には、例えば、
図46に示すように、3両編成の鉄道車両10における複数の車両ドアを先頭側から順に12a~12lとするとき、駅Aでは、車両ドア12d,12h,12kに向けてカメラ30a,30bがそれぞれ設けられる。また、駅Bでは、車両ドア12b,12g,12jに向けてカメラ30a,30bがそれぞれ設けられ、駅Cでは、車両ドア12c,12f,12kに向けてカメラ30a,30bがそれぞれ設けられる。なお、
図46では、便宜上、QRコード50等の識別表示の図示を省略している。
【0267】
そして、制御部41にて行われる開閉処理では、カメラ30a,30bでの撮像画像においてQRコード50等の識別表示が認識されない撮像状態から識別表示が認識される撮像状態に変化することで、各車両ドア12が閉状態であると検知される。例えば、駅Aでは、車両ドア12d,12h,12kでの撮像画像においてQRコード50等の識別表示が認識されない撮像状態から識別表示が認識される撮像状態に変化することで、各車両ドア12が閉状態であると検知される。また、駅Bでは、車両ドア12b,12g,12jでの撮像画像においてQRコード50等の識別表示が認識されない撮像状態から識別表示が認識される撮像状態に変化することで、各車両ドア12が閉状態であると検知される。また、駅Cでは、車両ドア12c,12f,12kでの撮像画像においてQRコード50等の識別表示が認識されない撮像状態から識別表示が認識される撮像状態に変化することで、各車両ドア12が閉状態であると検知される。
【0268】
このように、QRコード50等の識別表示が設けられる複数の車両ドア12のうちの一部に向けてカメラ30a,30b等の撮像手段がそれぞれ設けられるようにすることで、
図46に例示するように、鉄道車両10が停車する駅のホーム2ごとに柱3や壁4等のために撮像手段の設置場所が制約等されて撮像対象となる車両ドア12が異なる場合であっても、ホームドア20の自動制御を行うことができる。
【0269】
特に、QRコード50等の識別表示は、鉄道車両10の全ての車両ドア12にそれぞれ設けられるため、鉄道車両10が停車するホーム2ごとに撮像対象となる車両ドア12が異なる場合であっても、どの撮像手段でも閉状態の車両ドア12であれば識別表示が認識可能に撮像されるので、撮像手段の設置場所の制約等に影響されることなくホームドア20の自動制御を行うことができる。
【0270】
なお、識別表示が設けられる複数の車両ドアのうちの少なくとも一部に向けて撮像手段がそれぞれ設けられる等の本実施形態の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。例えば、識別表示が設けられる複数の車両ドア12のうちの一部に向けて向けられる撮像手段は、2つのカメラ30a,30bに限らず、1つのカメラ30であってもよいし3つ以上のカメラ30a~30cであってもよい。また、車両ドア12ごとに撮像手段の個数が異なってもよい。
【0271】
また、上記第2実施形態において制御部41により実行される開閉処理では、駅Aの例では、車両ドア12d,12h,12kでの撮像画像においてQRコード50等の識別表示が認識される撮像状態から識別表示が認識されない撮像状態に変化することで、各車両ドア12が開状態であると検知されてもよい。また、上記第9実施形態において制御部41により実行される開閉処理では、駅Aの例では、車両ドア12d,12h,12kでの撮像画像においてQRコード50等の識別表示の移動が認識される場合にその移動に応じた検知を行ってもよい。
【0272】
また、制御部41により実行される開閉処理では、上記第15実施形態のように、ホームドア20の自動制御に関して冗長性(ロバスト性)を確保するため、取得した複数の撮像画像のうちの一部について識別表示を認識するための処理を行ってもよい。例えば、駅Aの例では、車両ドア12dでの撮像画像において識別表示が認識されなくても、車両ドア12h,12kでの撮像画像において識別表示が認識されない撮像状態から識別表示が認識される撮像状態に変化することで、各車両ドア12が閉状態であると検知してもよい。
【0273】
[第18実施形態]
次に、本発明の第18実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第18実施形態では、撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される識別表示の移動方向を考慮して車両ドアの動作状態を検知する点が主に上記第1実施形態と異なる。
【0274】
本実施形態では、連続して識別表示が撮像される複数の撮像画像の差分からその識別表示が移動しているか否かを判断し、移動している場合にその識別表示の移動方向に応じて車両ドア12の動作状態を検知する。これにより、車両ドア12が開状態になる前の開動作や閉状態になる前の閉動作を迅速に検知でき、車両ドア12の動作状態の検知に関する処理時間を短縮することができる。
【0275】
具体的には、例えば、
図47(A)に示す撮像画像Pから
図47(B)に示す撮像画像Pまで連続して移動するように撮像されていたQRコード50が、
図47(C)に例示するように撮像されなくなり、
図47(B)に例示するように前回撮像されたQRコード50が撮像画像Pのうち縁部よりも中央側にて撮像されている場合に、車両ドア12の開動作後の開状態を検知する。
【0276】
鉄道車両10が移動中であることからQRコード50がカメラ30の撮像視野31を通過していれば、最後に撮像されたQRコード50が撮像画像のうち中央側ではなく縁部にて撮像されるはずなので、鉄道車両10が移動中である場合に車両ドア12の開動作であると誤検知されることを抑制することができる。
【0277】
また、例えば、
図48(A)に例示するように前回まで連続して撮像されていなかったQRコード50が、
図48(B)に例示するように撮像画像のうち縁部よりも中央側にて移動するように撮像される場合に、車両ドア12の閉動作を検知する。
【0278】
鉄道車両10が移動中であることからQRコード50がカメラ30の撮像視野31を通過していれば、前回まで連続して撮像されていなかったQRコード50が撮像画像のうち中央側ではなく縁部から移動するように撮像されるはずなので、鉄道車両10が移動中である場合に車両ドア12の閉動作であると誤検知されることを抑制することができる。
【0279】
また、例えば、連続して撮像されている識別表示の移動方向が逆方向に変化する場合に、車両ドア12の再開閉動作を検知する。車両ドア12での挟み込み防止等のために、車両ドア12が閉動作している途中で開動作する場合や開動作している途中で閉動作する場合のような車両ドア12の再開閉動作時には、撮像されている識別表示の移動方向が逆方向に変化するので、このような逆方向への識別表示の移動を検知することで、車両ドア12の再開閉動作を検知することができる。
【0280】
特に、QRコード50に、車両ドア12の開動作における当該QRコード50の移動方向や閉動作における当該QRコード50の移動方向など、車両ドア12の開閉時における当該QRコード50の移動方向に関する情報を光学的に読み取り可能に記録することができる。これにより、識別表示として撮像されたQRコード50を読み取ることでそのQRコード50の移動方向に関する情報を取得できるので、車両ドア12の開動作や閉動作を正確に検知することができる。
【0281】
なお、識別表示の移動方向を考慮して車両ドア12の動作状態を検知する等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0282】
[第19実施形態]
次に、本発明の第19実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第19実施形態では、識別表示の特定パターンを考慮して車両ドアの動作状態を検知する点が主に上記第1実施形態と異なる。
【0283】
本実施形態では、カメラ30によりQRコード50を連続して撮像した際の複数の撮像画像の差分に基づいてQRコード50の各位置検出パターンFP1~FP3の検出数を求め、この検出数の変化を考慮して車両ドア12の動作状態を検知する。
【0284】
具体的には、例えば、車両ドア12の開動作時に、
図49(A)に例示するように、全ての位置検出パターンFP1~FP3が撮像されていることで検出数が3である場合に、
図49(B)に例示するように、位置検出パターンFP1,FP2が撮像されて検出数が2となりその検出数が減少することで車両ドア12の開動作を検知する。その後、
図49(C)に例示するように、位置検出パターンの検出数が0となると、車両ドア12の開動作後の開状態を検知する。
【0285】
また、例えば、車両ドア12の閉動作時に、
図49(C)に例示するように、全ての位置検出パターンが撮像されていないことで検出数が0である場合に、
図49(B)に例示するように、位置検出パターンFP1,FP2が撮像されて検出数が2となりその検出数が増加することで車両ドア12の閉動作を検知する。
【0286】
このように、車両ドア12の開閉動作に応じて位置検出パターン(特定パターン)の検出数が変化するので、このような位置検出パターンの検出数の変化を考慮することで車両ドア12の動作状態を検知することができる。
【0287】
なお、撮像画像から情報コードを読み取れなくても複数の特定パターンの少なくとも1つを検出する場合に、車両ドア12が開状態でないと検知することができる。これにより、
図50に例示するように、閉状態時の車両ドア12のQRコード50の一部が位置検出パターンFP2とともに乗客の荷物Ba等により隠されるためにQRコード50が読み取れない場合でも、位置検出パターンFP1,FP3が撮像されて検出されることで車両ドア12が開状態でないと検知されるので、車両ドア12の開状態であると誤検知されることを抑制することができる。
【0288】
また、複数の特定パターンの検出数の変化に限らず、情報コードを解読することなく各特定パターンの移動方向や移動量等を考慮することで、車両ドア12の動作状態を検知してもよい。ここで、情報コードの特定パターンとしては、QRコードの位置検出パターンに限らず、例えば、マキシコードにおける中央の同心円形状や、バーコードにおけるスタートキャラクタおよびストップキャラクタ、データマトリックスコードにおけるアライメントパターン等を利用することができる。
【0289】
なお、特定パターンを考慮して車両ドアの動作状態を検知する等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0290】
[第20実施形態]
次に、本発明の第20実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第20実施形態では、識別表示の移動量を考慮して車両ドアの動作状態を検知する点が主に上記第1実施形態と異なる。
【0291】
本実施形態では、連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される識別表示の移動量を考慮して車両ドア12の動作状態を検知する。正常な車両ドア12の開閉動作時の識別表示の移動量はほぼ一定なので、識別表示の移動量を考慮して車両ドア12の動作状態を検知することができる。
【0292】
具体的には、例えば、車両ドア12の閉状態時に撮像されるQRコード50が車両ドア12の開動作に応じて移動し車体部11aに覆われて隠蔽されるまでの移動距離よりも僅かに大きくなるように所定の移動量閾値を画素数に応じて設定して記憶部42に予め記憶する。このため、各撮像画像の差分に基づいて検出されるQRコード50の移動量が上記所定の移動量閾値以上になる場合には、車両ドア12の開閉動作ではなく鉄道車両10の移動であると検知することができる。
【0293】
また、例えば、連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出されるQRコード50の移動量が上記所定の移動量閾値に達することなく当該QRコード50が撮像されなくなり、前回撮像されたQRコード50が撮像画像の縁部にて撮像されている場合に、鉄道車両10の目標停車位置範囲外での停車を検知する。この場合には、想定外の停車であることから、車両ドア12の動作状態を検知しないこともできる。
【0294】
具体的には、目標停車位置範囲よりも手前で停車していることから、
図51(A)に例示するように、閉状態の車両ドア12のQRコード50が進入側縁部(
図51の右側の縁部)よりもわずかに中央側にて撮像されている場合、車両ドア12が開動作すると、QRコード50は、進入側縁部方向(
図51での右方向)に移動する。そして、QRコード50は、
図51(B)に例示するように進入側縁部にて撮像された後、
図51(C)に例示するように、その移動量が上記所定の移動量閾値に達することなく撮像されなくなる。
【0295】
目標停車位置範囲からずれて停車した鉄道車両10の車両ドア12の識別表示が撮像された状態ではその車両ドア12の移動方向によっては識別表示が移動後すぐに撮像視野外となり撮像されなくなる場合がある。このため、識別表示の移動量が上記所定の移動量閾値に達することなく当該識別表示が最後に撮像画像の縁部にて撮像される場合には、鉄道車両10の目標停車位置範囲外での停車として検知することができる。また、この場合に車両ドア12の動作状態を検知しないことで、不要な検知処理を抑制することができる。
【0296】
なお、上記所定の移動量閾値を予め計測して記憶部42に記憶することなく、学習して補正した所定の移動量閾値を記憶部42に記憶するようにしてもよい。すなわち、車両ドア12の移動が検知される際の識別表示の移動量を順次記録しこのように記録されている移動量に基づいて記憶部42に記憶される所定の移動量閾値を補正する。これにより、複数種類の車両ドア12が撮像対象となる場合でも、車両ドア12の移動が検知されるごとにその際の識別表示の移動量が学習されて、上記所定の移動量閾値を補正してその設置環境に応じた範囲を有するように最適化できるので、車両ドア12の動作状態の検知に関する検知精度を高めることができる。なお、制御部41により行われる補正処理により、車両ドア12の移動が検知される際の識別表示の移動量に基づいて記憶部42に記憶される所定の移動量閾値が補正されるもので、制御部41は、「補正手段」の一例に相当し得る。
【0297】
また、QRコード50は、上記所定の移動量閾値が光学的に読み取り可能に記録されるように生成されてもよい。これにより、識別表示として撮像されたQRコード50を読み取ることで、その車両ドア12に適した上記所定の移動量閾値を容易に取得することができる。
【0298】
なお、識別表示の移動量等を考慮して車両ドアの動作状態を検知する等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0299】
[第21実施形態]
次に、本発明の第21実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第21実施形態では、一方のドア及び他方のドアのいずれかに一方に識別表示が設けられる点が主に上記第1実施形態と異なる。
【0300】
本実施形態では、
図52に例示するように、識別表示としてQRコードが設けられる複数の車両ドア12のうち、一部の車両ドア12には一方のドア13のみにQRコード50が設けられ、この一部の車両ドアとは異なる一部の車両ドア12には他方のドア14のみにQRコード53が設けられる。
【0301】
これにより、鉄道車両10が移動している場合には全てのQRコード50,53が同じ方向に移動し、車両ドア12が開閉動作している場合にはQRコード50の移動方向とQRコード53の移動方向とが逆方向となるので、QRコード50及びQRコード53のそれぞれの移動方向に応じて鉄道車両10の移動か車両ドア12の開閉動作かを容易に検知することができる。例えば、4号車の車両ドア12の5号車側となる一方のドア13にQRコード50が設けられ、5号車の車両ドア12の4号車側となる他方のドア14にQRコード53が設けられる場合には、車両ドア12の開動作時には、QRコード50の移動方向とQRコード53の移動方向とが近づく方向となり、車両ドア12の閉動作時には、QRコード50の移動方向とQRコード53の移動方向とが遠ざかる方向となる。
【0302】
なお、一方のドア13及び他方のドア14のいずれかに一方に識別表示が設けられる等の本実施形態の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0303】
[第22実施形態]
次に、本発明の第22実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第22実施形態では、識別表示として機能する情報コードにホームドアにおいて開状態にすべき場所に関する情報が記録される点が主に上記第1実施形態と異なる。
【0304】
本実施形態では、編成の車両数やドアの位置等が異なる様々な鉄道車両10がホーム2に停車する場合を想定し、その停車する鉄道車両10に応じてホームドア20の開閉箇所を変更するため、QRコード50にホームドア20において開状態にすべき場所に関する情報(以下、開状態位置情報ともいう)が光学的に読み取り可能に記録されている。
【0305】
本実施形態では、開状態位置情報として、例えば、
図53に例示する項目(会社名、路線名、号車番号、ドア番号、車両数、ドア数、海山)に対応する情報がQRコード50に記録されている。具体的には、QRコード50には、会社名および路線名として、想定される会社名のそれぞれをコード化した番号や想定される路線名のそれぞれをコード化した番号や、号車番号、ドア番号および車両数を特定する番号が記録される。このため、QRコード50を読み取って
図53に例示する開状態位置情報を取得した場合には、そのQRコード50が設けられる鉄道車両10を運行する会社名や路線名を取得できるだけでなく、その鉄道車両10が8両編成であり、3つの車両ドア12を有する5両目において2番目の車両ドア12に設けられるQRコード50を読み取っていることがわかる。なお、海山情報は、QRコード50が設けられる側面が海側(1)か山側(2)を示す情報であって、進行方向左右のどちら側面にQRコード50が設けられているかを把握するための情報である。
【0306】
そして、制御部41は、上記開閉処理の実行により読み取ったQRコード50ごとに開状態位置情報をそれぞれ取得すると、このように取得した各開状態位置情報に基づく開閉箇所に対応する扉駆動部22の制御を行う。特に、
図54のように、ホームドア20が扉駆動部22の移動等に応じて可動扉21の開閉による開閉箇所を変更可能な構成であれば、取得した各開状態位置情報に対応するように可動扉21の開閉による開閉箇所を変更させてその開閉制御を行うことができる。
【0307】
このように、ホームドア20を利用する鉄道車両10の各車両ドア12の位置等がその鉄道車両10の種別等によって異なる場合でも、その種別等に応じてホームドア20において開状態にすべき場所に関する情報を識別表示として機能するQRコード50等の情報コードに記録することで、ホームドア制御装置40は、情報コードを読み取ることで得た情報に基づいてホームドア20において開状態にすべき場所をその種別等ごとに区別して制御することができる。
【0308】
なお、開状態位置情報は、
図53のような項目ごとの情報に限らず、ホームドア20において開状態にすべき場所そのものを特定する情報であってもよく、このように識別表示として機能する情報コードにホームドア20において開状態にすべき場所に関する情報が記録される等の本実施形態の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0309】
[第23実施形態]
次に、本発明の第23実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第23実施形態では、情報コードの誤り訂正を利用して読み取った情報コードの劣化を検知する点が主に上記第1実施形態と異なる。
【0310】
QRコード50等、誤り訂正機能を有する情報コードは、当該情報コードを構成する複数のセルの一部が汚れている場合や破損している場合でもそのセルを訂正するように復元することで記録された情報を読み取ることができる。すなわち、訂正されるセル数が多くなり、訂正度合いが高くなるほど、その解読できた情報コードの表示状態が劣化していることになる。
【0311】
このため、本実施形態では、制御部41は、情報コードを読み取る際に誤り訂正される訂正度合いが所定値以上になると情報コードの劣化を検知して、ホームドア制御装置40等に報知手段として設けられる表示部の表示や発光部の点灯等に応じてその劣化を報知する。さらに、その訂正度合い(訂正されるセル数等)に応じて劣化程度も報知することができる。
【0312】
これにより、上述のような報知を情報コードの張り替え時期の通知として利用でき、このような通知を受けた者は識別表示としての情報コードの劣化を容易に把握できるので、情報コードの劣化を解消しやすくなり、確実な読取保証を実現することができる。
【0313】
なお、本実施形態における識別表示は、QRコードに限らず、誤り訂正機能を有する情報コードであれば実現可能であり、このように誤り訂正を利用して識別表示(読み取った情報コード)の劣化を検知する等の本実施形態の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0314】
[第24実施形態]
次に、本発明の第24実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第24実施形態では、識別表示を利用して鉄道車両の動作状態を検知する点が主に上記第1実施形態と異なる。
【0315】
本実施形態では、
図55に示すように、車両ドア12に設けられるQRコード50ではなく車体部11b等の車両ドア12とともに移動しない部位に設けられるQRコード54を識別表示として利用し、制御部41にて行われる検知処理により鉄道車両10の動作状態を検知する。
【0316】
具体的には、検知処理では、各カメラ30により移動するように撮像されているQRコード54が停止した後に所定時間移動していない場合に、鉄道車両10の停止を検知する。この鉄道車両10の停止を検知した際に、撮像画像に占めるQRコード54の位置に応じて鉄道車両10の停車位置を検知する。その際、撮像画像において、目標停車位置範囲に対応する所定の範囲内にQRコード54が撮像されている場合に、鉄道車両10の目標停車位置範囲内での停車を検知する。これにより、鉄道車両10の停車位置だけでなく鉄道車両10が目標停車位置範囲内に停車しているか否かについて簡素な構成にて容易に判定することができる。
【0317】
なお、車体部11aや車両ドア12等、鉄道車両10の外部から撮像可能な部位に設けられるQRコード50等の識別表示を利用して鉄道車両10の動作状態を検知してもよく、このように識別表示を利用して鉄道車両の動作状態を検知する等の本実施形態の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0318】
[第25実施形態]
次に、本発明の第25実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第25実施形態では、鉄道車両の動作状態の検知に関して複数の検知モードが用意される点が主に上記第24実施形態と異なる。
【0319】
本実施形態では、車両ドア12に設けられるQRコード50の撮像結果を利用して鉄道車両10の目標停車位置範囲内での停車を検知すると、そのQRコード50を利用して車両ドア12の動作状態を検知する。このため、本実施形態では、ホームドア制御装置40の制御部41により行われる開閉処理では、車両ドア12の動作状態だけでなく鉄道車両の動作状態をも検知する。
【0320】
また、鉄道車両10の停車を検知する場合、鉄道車両10が停車する停車直前でのQRコード50が撮像視野に入るまで検知精度を高めるような撮像を行う必要もないので、車両ドア12の動作状態を検知する場合よりも、撮像間隔や検知間隔を長くして処理負荷の軽減や消費電力の低減が可能となる。このため、本実施形態では、鉄道車両10の停車を検知するための停車検知モードと車両ドア12の動作状態を検知するためのドア開閉検知モードとを用意し、停車検知モードでのカメラ30による撮像間隔をドア開閉検知モードよりも長くし、これに対応して停車検知モードでの制御部41による検知間隔をドア開閉検知モードよりも長くして車両ドア12の動作状態を検知しないことで、システム全体としての処理負荷の軽減や消費電力の低減等を図ることができる。
【0321】
そして、停車検知モードにて、上述したように鉄道車両10の目標停車位置範囲内での停車が検知されると、カメラ30やホームドア制御装置40は、停車検知モードからドア開閉検知モードに移行する。このように鉄道車両10の目標停車位置範囲内での停車の検知に応じて停車検知モードからドア開閉検知モードに移行することで、ドア開閉検知モードへの移行を適切なタイミングにて自動的に行うことができる。
【0322】
なお、ホームドア制御装置40の制御部41により行われる開閉処理では、QRコード50が撮像されることで鉄道車両10の目標停車位置範囲内での停車が検知されると、そのQRコード50の移動に基づく車両ドア12の開動作を検知することなくホームドア20を開状態に制御してもよい。このようにしても、鉄道車両10が停車する前や目標停車位置範囲外で停車する場合にホームドア20が開状態になることもないので、ホームドア20を安全かつ迅速に開動作させて開状態にすることができる。
【0323】
また、ホームドア制御装置40の制御部41により行われる開閉処理では、カメラ30により撮像されたQRコード50の移動速度が所定の速度閾値以上である場合に、鉄道車両10のオーバーラン(通過)を検知してもよい。鉄道車両10が目標停車位置範囲内で停車する場合、停車が検知される直前までのQRコード50の移動速度は、停車直前での鉄道車両10の移動速度に等しくなる。このため、上記所定の速度閾値を停車直前での鉄道車両10の移動速度に応じて設定することで、鉄道車両10がオーバーランする場合には、QRコード50の移動速度が上記所定の速度閾値以上となるので、オーバーランしている鉄道車両10が停車する前にそのオーバーランを検知することができる。
【0324】
また、ホームドア制御装置40の制御部41により行われる開閉処理では、
図56に示すように鉄道車両10の進行方向から撮像可能な部位となる前面11cに設けられるQRコード55等の識別表示をホーム2の縁2aの近傍等に設けたカメラ(図示略)で撮像し、この識別表示の撮像サイズに応じて鉄道車両10の停車位置を検知してもよい。前面11cに設けられるQRコード55のように、進行方向から撮像可能な部位に設けられる識別表示の撮像サイズは、目標停車位置手前で停車すると小さくなり、目標停車位置を通過すると大きくなるので、その識別表示の撮像サイズに応じて鉄道車両10の停車位置を検知することができる。特に、進行方向側に設けられる識別表示を撮像するので、側面に設けられる識別表示をカメラ30等で撮像する場合と比較して停止位置の位置ずれを考慮する必要がなく、確実に鉄道車両10の停車位置を検知することができる。
【0325】
また、ホーム2に配置されたレーザレーダ装置等(図示略)を利用して測定された鉄道車両10までの距離に基づいて、鉄道車両10の停止位置や目標停車位置範囲内に停車しているか否かについて検知してもよい。
【0326】
なお、本実施形態および変形例等の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0327】
[第26実施形態]
次に、本発明の第26実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第26実施形態では、撮像画像における識別表示の位置を考慮して鉄道車両の動作状態を検知する点が主に上記第25実施形態と異なる。
【0328】
本実施形態では、
図57(A)に示すように、カメラ30により撮像される撮像画像Pにおいて、鉄道車両10がその撮像視野31に進入する側の縁部に相当する進入側縁部Piと鉄道車両10が撮像視野から退出する側の縁部に相当する退出側縁部Poとが予め設定されている。そして、ホームドア制御装置40の制御部41により行われる開閉処理では、撮像画像Pにおける識別表示の位置と進入側縁部Piおよび退出側縁部Poとの関係や識別表示の移動方向等を考慮して鉄道車両10の動作状態を検知する。
【0329】
具体的には、
図57(B)に例示する撮像状態まで連続して識別表示が撮像されていない状態で、
図57(C)に例示するように識別表示としてQRコード50が撮像され、このQRコード50が撮像画像Pのうち進入側縁部Piにて撮像される場合に、鉄道車両10の進入を検知する。このように前回まで連続して撮像されていなかったQRコード50が撮像画像Pのうち進入側縁部Piにて撮像される場合には、車両ドア12の開閉動作と誤検知することなく、鉄道車両10の進入を検知することができる。すなわち、画像外の侵入方向からQRコード50がカメラ30の撮像視野31に入った場合には、鉄道車両10の進入を検知する。
【0330】
そして、
図58(A)に例示するように前回まで連続して撮像されていなかったQRコード50が、
図58(B)に例示するように撮像画像Pのうち進入側縁部Piにて撮像されてから移動した後、例えば
図58(C)に例示する位置にて所定時間移動していないことが撮像される場合に、車両ドア12の閉動作後の閉状態と誤検知することなく、鉄道車両10の停車状態を検知することができる。すなわち、画像外の侵入方向からQRコード50がカメラ30の撮像視野31に入り、所定時間停止した場合には、鉄道車両10の停車を検知する。
【0331】
また、前回まで連続して撮像されていなかったQRコード50が、
図59(A)に例示するように撮像画像Pのうち進入側縁部Piにて撮像されてから移動し
図59(B)に例示するように退出側縁部Poにて撮像された後に、
図59(C)に例示するように撮像されなくなる場合に、鉄道車両10の停車後の発車と誤検知することなく、鉄道車両10の通過(オーバーラン)を検知することができる。すなわち、画像外の侵入方向からQRコード50がカメラ30の撮像視野31に入り、その停止を検知することなく画像外の退出方向へ出て行った場合には、鉄道車両10の通過(オーバーラン)を検知する。
【0332】
また、
図60(A)に例示するように前回まで連続して撮像されていなかったQRコード50が、
図60(B)に例示するように撮像画像Pのうち退出側縁部Poにて撮像されてから移動した後、例えば
図60(C)に例示する位置にて所定時間移動していないことが撮像される場合に、オーバーラン後に鉄道車両10が進行方向逆側に移動して戻った後として、鉄道車両10の停車状態を検知することができる。すなわち、画像外の退出方向からQRコード50がカメラ30の撮像視野31に入り、所定時間停止した場合には、鉄道車両10のオーバーラン戻り後の停車を検知する。
【0333】
また、車両ドア12の閉状態時に撮像されるQRコード50が車両ドア12の開動作に応じて移動し車体部11aに覆われて隠蔽されるまでの移動距離よりも僅かに小さくなるように所定の移動量閾値を画素数に応じて設定して記憶部42に予め記憶することで、以下のような検知を行うことができる。例えば、
図61(A)に例示するように前回まで連続して撮像されていなかったQRコード50が、
図61(B)に例示するように撮像画像Pのうち退出側縁部Poにて撮像されてから、
図61(C)に例示するようにその移動量が上記所定の移動量閾値以上になることなく撮像されなくなると、鉄道車両10の目標停車位置範囲外での停車を検知することができる。すなわち、画像外の退出方向からQRコード50がカメラ30の撮像視野31に入り、上記所定の移動量閾値以上移動することなく読めなくなった場合には、目標停車位置範囲外での停車の際に開動作した車両ドア12のQRコード50が車体部11aに覆われて隠蔽されていることを検知する。
【0334】
[第27実施形態]
次に、本発明の第27実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第27実施形態では、識別表示を利用して鉄道車両の発車を検知する点が主に上記第25実施形態と異なる。
【0335】
本実施形態では、検知される鉄道車両10の動作状態として鉄道車両10の発車が想定されており、ドア開閉検知モードにて鉄道車両10の発車が検知されると、カメラ30やホームドア制御装置40は、ドア開閉検知モードからに停車検知モード移行する。このように鉄道車両10の発車の検知に応じてドア開閉検知モードから停車検知モードに移行することで、停車検知モードへの移行を適切なタイミングにて自動的に行うことができる。
【0336】
特に、本実施形態では、カメラ30によるQRコード50等の撮像結果に基づいて車両ドア12の開状態(開動作)を検知してから当該車両ドア12の閉状態(閉動作)を検知した後に、当該QRコード50等が一定量以上移動している場合に、鉄道車両10の発車を検知する。
【0337】
より具体的には、例えば、
図62(A)に示す状態にて車両ドア12の閉動作後の閉状態が検知され、
図62(B)に示すようにこの閉状態の検知に利用したQRコード50が移動して退出側縁部Poにて撮像された後に、
図62(C)に示すように撮像されなくなる場合に、鉄道車両10の発車を検知することができる。
【0338】
[第28実施形態]
次に、本発明の第28実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第28実施形態では、識別表示の位置の変化をパラメータとして考慮して鉄道車両の動作状態を検知する点が主に上記第1実施形態と異なる。
【0339】
本実施形態では、ホームドア制御装置40は、制御部41にて行われる動作状態検知処理により、連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出される識別表示の位置の変化をパラメータとして考慮して鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知する。
【0340】
例えば、
図68は、撮像画像内において、車両ドア12の開動作時に鉄道車両10の進行方向に対して逆方向に移動するQRコード50(一方のドア13に貼付されるQRコード50)について、そのQRコード50の位置(以下、コード位置Yともいう)の鉄道車両10の停車直前から発車後までの時間変化の一例を示しており、縦軸は鉄道車両10の進行方向に相当し、「1」が進入側(進入側縁部)での位置を示し「0」が退出側(退出側縁部)での位置を示す。
図68からわかるように、鉄道車両10の停車直前でカメラ30の撮像視野31内に入り込んだQRコード50が停車位置まで移動することで、コード位置Yが1からYaまで減少するように変化する。そして、車両ドア12の開動作時にコード位置YがYbまで増加するように変化したところでQRコード50が車体部11aに覆われて隠蔽されると、コード位置Yが計測不能となる(
図68のハッチング領域参照)。そして、車両ドア12が閉動作を開始すると、コード位置YがYbからYaまで減少するように変化し、その後、鉄道車両10が発車すると、コード位置YがYaから0まで減少するように変化する。なお、撮像画像内において、車両ドア12の開動作時に鉄道車両10の進行方向に移動するQRコード(他方のドア14に貼付されるQRコード)の位置の時間変化を測定する場合には、車両ドア12の開動作時にコード位置YがYaよりもさらに減少するように変化したところでQRコード50が車体部11aに覆われて隠蔽されると、コード位置Yが計測不能となる。そして、車両ドア12が閉動作を開始すると、コード位置YがYaまで増加するように変化する。また、鉄道車両10がそのホーム2にて折り返し運転する場合には、鉄道車両10が発車すると、コード位置YがYaから1まで増加するように変化する。
【0341】
すなわち、鉄道車両10や車両ドア12の動作状態に応じて識別表示として検出されるQRコード50のコード位置Yが変化するので、このコード位置Yの変化をパラメータとして考慮することで鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知することができる。これにより、ホームドア制御装置40は、動作状態検知処理により検知される鉄道車両10や車両ドア12の動作状態に基づいて、ホームドア20の開閉状態を制御することができる。
【0342】
以下、本実施形態において、QRコード50のコード位置Yの変化をパラメータとして考慮して鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知するため、ホームドア制御装置40の制御部41にて行われる動作状態検知処理について、
図69及び
図70に示すフローチャートを参照して詳述する。なお、動作状態検知処理では、各カメラ30によりそれぞれ撮像される全てのQRコード50についてそれぞれのコード位置Yの変化を考慮することでその動作状態を検知してもよいし、一部のQRコード50についてそれぞれのコード位置Yの変化を考慮することでその動作状態を検知してもよい。以下の説明では、各カメラ30によりそれぞれ撮像されるQRコード50のうち、車両ドア12の開動作時に鉄道車両10の進行方向に対して逆方向に移動するQRコード50(一方のドア13に貼付されるQRコード50)の1つについての処理を例にして詳述する。また、QRコード50には、上記乗降口特定情報など、当該QRコード50が付される鉄道車両10の鉄道事業者や車種を特定する情報(事業者コードや車種コード)や当該QRコード50を設けた車両ドア12の開閉方向に関する情報が記録されているものとする。
【0343】
制御部41により動作状態検知処理が開始されると、
図69のステップS401に示す撮像処理がなされ、カメラ30にて撮像された画像が取得される。次に、ステップS403に示すデコード処理がなされ、撮像した撮像画像からQRコード50を含めた情報コードを解読するための公知のデコード処理がなされる。続いて、ステップS405に示す判定処理にて、カメラ30から取得した撮像画像において識別表示としてQRコード50が認識(撮像)されるか否かについて判定され、鉄道車両10が停車直前となるまではQRコード50をデコード可能に撮像できないことを前提に、Noとの判定が繰り返される。
【0344】
そして、停車直前の鉄道車両10の一方のドア13に貼付されるQRコード50が撮像されてデコード成功すると、識別表示としてQRコード50が認識される(S405でYes)。続いて、ステップS407に示すコード位置計測処理にて、撮像画像に基づいて上述したコード位置Yが計測される。なお、コード位置Yは、撮像画像に占めるQRコード50の特定位置、例えば、QRコード50の中心位置や3つの位置検出パターンから求められる特定の位置等を基準に計測することができる。
【0345】
次に、ステップS409に示すコード移動量計測処理がなされ、前回計測されたコード位置Yとの差に基づいてコード位置Yの時間変化としてコード移動量ΔYが計測される。続いて、ステップS411に示す判定処理にて、コード移動量ΔYが第1閾値ΔY1以上であるか否かについて判定される。ここで、第1閾値ΔY1は、例えば、停車している鉄道車両10が揺れた際にQRコード50が移動する移動量よりも僅かに大きくなる程度の値に設定されており、鉄道車両10が停車しておらずに減速移動している場合には、ステップS411にてYesと判定されて、鉄道車両10の停車していないとして、上記ステップS407からの処理が繰り返される。
【0346】
そして、鉄道車両10がほぼ停車状態まで減速することでコード移動量ΔYが第1閾値ΔY1未満になると(S411でNo:
図68のt1参照)、ステップS413に示す判定処理にて、コード移動量ΔYが第1閾値ΔY1未満となる状態が所定時間Ta以上維持されているか否かについて判定される。ここで、コード移動量ΔYが第1閾値ΔY1未満になった直後であれば、ステップS413にてNoと判定されて、上記ステップS407からの処理が繰り返される。
【0347】
そして、コード移動量ΔYが第1閾値ΔY1未満となる状態、すなわち、QRコード50が移動していないとみなされる状態が所定時間Ta以上維持されると(
図68のt2参照)、ステップS413にてYesと判定されて、鉄道車両10の停車状態及び車両ドア12の閉状態が検知される(S415)。また、この停車状態でのコード位置Yが閉状態位置Yaとして設定される。
【0348】
続いて、継続して撮像される撮像画像からコード位置Yが計測されると(S417)、ステップS419に示す判定処理にて、現時点でのコード位置Yと閉状態位置Yaとの差の絶対値であるコード移動量ΔYaが第2閾値ΔY2以上であるか否かについて判定される。ここで、第2閾値ΔY2は、車両ドア12が閉状態から開動作を始めたときのQRコード50の移動量に応じた値に設定されており、コード移動量ΔYaが第2閾値ΔY2未満であれば、ステップS419にてNoと判定されて、車両ドア12が開動作し始めていないとして、上記ステップS415からの処理が繰り返される。なお、上記、ステップS419による判定結果に加えて、上記ステップS403でのデコード結果に含まれる開閉方向に関する情報とコード位置Yの変化方向とに基づいて、開動作状態であるか否かを検知してもよい。
【0349】
そして、車両ドア12が開動作し始め(
図68のt3参照)、コード移動量ΔYaが第2閾値ΔY2以上となると(
図68のt4参照)、ステップS419にてYesと判定されて、ステップS421に示す判定処理にて、閉状態の車両ドア12が移動し始めてからコード移動量ΔYaが第2閾値ΔY2以上となるまでの時間(t4-t3)が、所定時間Tb以下であるか否かについて判定される。ここで、上記所定時間Tbは、通常の車両ドア12の開動作開始時にコード移動量ΔYaが第2閾値ΔY2以上となるまでの時間に応じて設定されており、車両ドア12が閉状態から開動作を始めている場合には、上記ステップS421にてYesと判定されて、車両ドア12の開動作が検知される(S423)。
【0350】
続いて、継続して撮像される撮像画像からコード位置Yが計測された後(S425)、ステップS427に示す判定処理にて、QRコード50が撮像される状態が維持されているか否かについて判定される。ここで、QRコード50が車体部11aに覆われるまで移動しておらず開動作しているQRコード50が撮像される状態が維持されていると、ステップS427にてYesと判定されて、上記ステップS423からの処理が繰り返される。
【0351】
そして、開動作しているQRコード50が車体部11aに覆われて撮像されなくなると(
図68のt5参照)、ステップS427にてNoと判定されて、ステップS429に示す判定処理にて、QRコード50が撮像されていない状態が所定時間Tc以上維持されているか否かについて判定される。ここで、QRコード50が撮像されていない状態が所定時間Tc以上維持されていないと、QRコード50が乗客の荷物等により一時的に隠された可能性もあるため、ステップS429にてNoと判定されて、上記ステップS423からの処理が繰り返される。
【0352】
そして、QRコード50が撮像されていない状態が所定時間Tc以上維持されると(
図68のt6参照)、ステップS429にてYesと判定されて、QRコード50が最後に撮像されたときのコード位置Yが隠蔽開始位置Ybと設定される。次に、ステップS431に示す判定処理にて、隠蔽開始位置Ybと閉状態位置Yaとの差の絶対値であるコード移動量ΔYabが第3閾値ΔY3以上であるか否かについて判定される。ここで、第3閾値ΔY3は、通常での開動作時に撮像され得るQRコード50の移動量よりも小さな値に設定されており、開動作時のQRコード50を撮像している場合には、コード移動量ΔYabが第3閾値ΔY3以上となり、ステップS431にてYesと判定される。
【0353】
続いて、ステップS433に示す判定処理にて、コード移動量ΔYabが第4閾値ΔY4以下であるか否かについて判定される。ここで、第4閾値ΔY4は、開動作時に撮像され得るQRコード50の最大移動量よりも僅かに大きく、第3閾値ΔY3よりも大きな値に設定されており、開動作時のQRコード50を撮像している場合には、コード移動量ΔYabが第4閾値ΔY4以下となり、ステップS433にてYesと判定されて、車両ドア12の開状態が検知される(
図70のS435)。
【0354】
続いて、ステップS437に示す判定処理にて、QRコード50が撮像されない状態が維持されているか否かについて判定される。ここで、車両ドア12が閉動作をしておらずQRコード50が車体部11aに覆われた状態が維持されていると、ステップS437にてYesと判定されて、上記ステップS435からの処理が繰り返される。
【0355】
そして、車両ドア12が閉動作を開始することでQRコード50が撮像されると(
図68のt7参照)、ステップS437にてNoと判定されて、撮像画像からコード位置Yが計測される(S439)。続いて、ステップS441に示す判定処理にて、現時点でのコード位置Yと隠蔽開始位置Ybとの差の絶対値であるコード移動量ΔYbが第5閾値ΔY5以上であるか否かについて判定され、コード移動量ΔYbが第5閾値ΔY5未満であれば、ステップS441にてNoと判定されて、車両ドア12が閉動作し始めていないとして、上記ステップS439からの処理が繰り返される。なお、上記、ステップS441による判定結果に加えて、上記ステップS403でのデコード結果に含まれる開閉方向に関する情報とコード位置Yの変化方向とに基づいて、閉動作状態であるか否かを検知してもよい。
【0356】
そして、車両ドア12の閉動作に応じてQRコード50が閉方向にさらに移動することで、コード移動量ΔYbが第5閾値ΔY5以上となると(
図68のt8参照)、ステップS441にてYesと判定されて、ステップS443に示す判定処理にて、車両ドア12の開状態の検知後にQRコード50が撮像され始めてからコード移動量ΔYbが第5閾値ΔY5以上となるまでの時間(t8-t7)が、所定時間Td以下であるか否かについて判定される。ここで、上記所定時間Tdは、通常の車両ドア12の閉動作時にコード移動量ΔYbが第5閾値ΔY5以上となるまでの時間に応じて設定されており、車両ドア12が閉動作している場合には、上記ステップS443にてYesと判定されて、車両ドア12の閉動作が検知される(S445)。
【0357】
そして、QRコード50が撮像される状態が維持されている場合には(S447でYes)、コード位置Yが計測されるとともに(S449)、コード移動量ΔYが計測される(S451)。そして、ステップS453に示す判定処理にて、QRコード50が閉状態位置Yaで停止しているか否かについて判定され、車両ドア12が閉動作中でありQRコード50が停止していない場合にはNoと判定されて、上記ステップS445からの処理が繰り返される。
【0358】
そして、コード移動量ΔYが第1閾値ΔY1未満になり、現時点でのコード位置Yが閉状態位置Yaにほぼ一致すると、QRコード50が閉状態位置Yaで停止していると判定され(S453でYes:
図68のt9参照)、ステップS455に示す判定処理にて、コード移動量ΔYが第1閾値ΔY1未満となる状態が所定時間Te以上維持されているか否かについて判定される。ここで、コード移動量ΔYが第1閾値ΔY1未満になった直後であれば、ステップS455にてNoと判定されて、上記ステップS445からの処理が繰り返される。
【0359】
そして、コード移動量ΔYが第1閾値ΔY1未満となる状態、すなわち、QRコード50が閉状態位置Yaにて移動していないとみなされる状態が所定時間Te以上維持されると(
図68のt10参照)、ステップS455にてYesと判定されて、車両ドア12の閉状態が検知される(S457)。
【0360】
その後、コード移動量ΔYaが上述した第4閾値ΔY4を超えると、ステップS459の判定処理にてYesと判定されて、開動作時以上にQRコード50が移動しているとして、鉄道車両10の発車が検知される(S461)。
【0361】
そして、同時期に他のカメラ30にて撮像されている他のQRコード50のコード位置Yの変化についても同様に考慮されることで、それぞれ車両ドア12の動作状態や鉄道車両10の動作状態が検知される。制御部41は、それぞれ検知結果の多数決に基づいて車両ドア12の動作状態や鉄道車両10の動作状態を特定し、その結果に基づいてホームドア20の開閉状態を制御する。
【0362】
一方、閉状態の車両ドア12が移動し始めてからコード移動量ΔYaが第2閾値ΔY2以上となるまでの時間が所定時間Tbを超えると(S421でNo)、ステップS463に示すエラー処理がなされる。また、開動作しているQRコード50が撮像されなくなってからその撮像されていない状態が所定時間Tc以上維持された際、コード移動量ΔYabが第3閾値ΔY3未満であるか(S431でNo)、コード移動量ΔYabが第4閾値ΔY4を超えると(S433でNo)、ステップS463に示すエラー処理がなされる。また、車両ドア12の閉動作に応じて閉方向に移動しているQRコード50のコード移動量ΔYbが第5閾値ΔY5以上となるまでの時間が所定時間Tdを超えると(S443でNo)、ステップS463に示すエラー処理がなされる。ステップS463におけるエラー処理では、撮像されたQRコード50のコード位置Yが上記多数決に基づく鉄道車両10の動作状態又は車両ドア12の動作状態の検知に利用されずにエラーとされる。この場合には、同時期に他のカメラ30にて撮像されている他のQRコード50のコード位置Yの変化をパラメータとして考慮して、エラーとなった車両ドア12の動作状態が推測される。
【0363】
また、同時期に複数のカメラ30のうちの一部にてQRコード50が鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知可能に一定時間継続して認識される撮像結果が得られ、残部のカメラ30にてQRコード50が鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知可能に一定時間継続して認識されない撮像結果が得られる場合に、その残部のカメラ30による撮像結果を上記多数決に基づく鉄道車両10や車両ドア12の動作状態の検知のために利用しない。
【0364】
また、
図71に示すように、再開閉のため、閉動作状態の車両ドア12が再び開動作を始めたことで(
図71のt11参照)、車両ドア12が閉状態となりQRコード50が撮像されなくなると(
図71のt12参照)、上記ステップS447にてNoと判定される。この場合には、車両ドア12の開状態が検知され(S435)、上記ステップS437以降の処理がなされる。なお、上記ステップS447の判定処理では、閉動作状態検知後に撮像されなくなった際に最後に撮像されたQRコード50のコード位置Yが隠蔽開始位置Ybに一致しているとみなされる場合にNoと判定されて、上記ステップS435以降の処理が行われてもよい。
【0365】
また、
図72に示すように、鉄道車両10が減速しつつ移動しており、QRコード50が撮像視野を進入側縁部から退出側縁部に向けて単に移動するように撮像される場合を想定し、上記ステップS411におけるYesとの繰り返し判定中にQRコード50が撮像されなくなると、本動作状態検知処理を終了してもよい。
【0366】
また、
図73に示すように、車両ドア12の開動作の際に進入側に移動するQRコード50が鉄道車両10の停車時に撮像視野の進入側縁部近傍に位置している場合には、開動作の途中で撮像視野外となるためにQRコード50が撮像されなくなることから、そのQRコード50に関して鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知することなく本動作状態検知処理を終了してもよい。具体的には、例えば、上記ステップS415にて鉄道車両10の停車状態及び車両ドア12の閉状態が検知された後、閉状態位置Yaを考慮して、1-Yaが第4閾値ΔY4未満であれば、そのQRコード50に関して鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知することなく本動作状態検知処理を終了する。これにより、車両ドア12の開動作の途中で撮像視野外となるようなQRコード50に基づいて鉄道車両10や車両ドア12の動作状態が検知されることもないので、鉄道車両10や車両ドア12の動作状態に関する誤検知を抑制することができる。
【0367】
また、
図74に示すように、車両ドア12の開動作の際に退出側に移動するQRコード50が鉄道車両10の停車時に撮像視野の退出側縁部近傍に位置している場合には、開動作の途中で撮像視野外となるためにQRコード50が撮像されなくなることから、そのQRコード50に関して鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知することなく本動作状態検知処理を終了してもよい。具体的には、例えば、上記ステップS415にて鉄道車両10の停車状態及び車両ドア12の閉状態が検知された後、閉状態位置Yaを考慮して、Yaが第4閾値ΔY4未満であれば、そのQRコード50に関して鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知することなく本動作状態検知処理を終了する。このようにしても、車両ドア12の開動作の途中で撮像視野外となるようなQRコード50に基づいて鉄道車両10や車両ドア12の動作状態が検知されることもないので、鉄道車両10や車両ドア12の動作状態に関する誤検知を抑制することができる。
【0368】
以上説明したように、本実施形態に係るホームドア制御システム1では、制御部41にて行われる動作状態検知処理において、各カメラ30により連続して撮像された複数の撮像画像の差分に基づいて検出されるQRコード50のコード位置Yの変化をパラメータとして考慮して鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知する。鉄道車両10や車両ドア12の動作状態に応じて検出されるQRコード50のコード位置Yが変化するので、このQRコード50のコード位置Yの変化をパラメータとして考慮することで鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知することができる。
【0369】
また、上記動作状態検知処理では、QRコード50のコード位置Yの時間変化を示すコード移動量ΔYが第1閾値ΔY1以上であるとき、鉄道車両10や車両ドア12の動作状態が変化していると検知する。これにより、コード移動量ΔYが第1閾値ΔY1未満となるような状態、例えば、鉄道車両10が単に揺れている状態等の場合に、鉄道車両10や車両ドア12が動作していると誤検知されることもないので、鉄道車両10や車両ドア12の動作状態の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0370】
また、上記動作状態検知処理では、QRコード50のコード位置Yの時間変化を示すコード移動量ΔYに基づいて、当該QRコード50が移動していないとみなされる状態が所定時間Ta以上維持される場合に(S413でYes)、車両ドア12の閉状態または鉄道車両10の停車状態を検知する。これにより、QRコード50が移動していないことを確実に検知でき、車両ドア12の閉状態または鉄道車両10の停車状態の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0371】
また、上記動作状態検知処理では、QRコード50のコード位置Yの時間変化に基づいて、現時点でのコード位置Yと閉状態位置Yaとの差の絶対値であるコード移動量ΔYa(車両ドア12の閉状態が検知される状態からのQRコード50の移動量)が第2閾値ΔY2以上となると、車両ドア12の開動作を検知する。これにより、コード移動量ΔYaが第2閾値ΔY2未満となるような場合、例えば、鉄道車両10が単に揺れている状態等の場合に、車両ドア12が開動作していると誤検知されることもないので、車両ドア12の開動作の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0372】
また、上記動作状態検知処理では、コード移動量ΔYaが第2閾値ΔY2以上となるまでの時間が所定時間Tb以下である場合に(S421でYes)、車両ドア12の開動作を検知する。これにより、コード移動量ΔYaが第2閾値ΔY2以上となるまでの時間が所定時間Tbを超える場合、例えば、QRコード50が車両ドアの開閉速度よりも明らかに遅い速度で移動しているように撮像される場合には(S421でNo)、車両ドア12が開動作していると誤検知されることもないので、車両ドア12の開動作の検知に関する検知精度をさらに高めることができる。
【0373】
また、上記動作状態検知処理では、QRコード50のコード位置Yの時間変化に基づいて、車両ドア12の開動作が検知される状態からQRコード50が撮像されなくなった状態が所定時間Tc以上維持される場合に、車両ドア12の開状態を検知する。これにより、開動作している車両ドア12のQRコード50が乗客等により隠されて撮像されなくなったことで直ちに車両ドア12の開状態と誤検知されることもないので、車両ドア12の開状態の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0374】
また、上記動作状態検知処理では、QRコード50のコード位置Yの時間変化に基づいて、隠蔽開始位置Ybと閉状態位置Yaとの差の絶対値であるコード移動量ΔYab(車両ドア12の開動作時におけるQRコード50の移動量)が第3閾値ΔY3以上となる場合に、車両ドア12の開状態を検知する。通常での車両ドア12の開動作時のQRコード50の移動量は決まっているため、この通常での車両ドア12の開動作時におけるQRコード50の移動量に応じて上記第3閾値ΔY3を設定することで、コード移動量ΔYabが第3閾値ΔY3未満となるような場合に車両ドア12の開状態と誤検知されることもないので(S431でNo)、車両ドア12の開状態の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0375】
また、上記動作状態検知処理では、QRコード50のコード位置Yの時間変化に基づいて、コード移動量ΔYabが第3閾値ΔY3よりも大きくなるように設定される第4閾値ΔY4以下となる場合に、車両ドア12の開状態を検知する。これにより、コード移動量ΔYabが第3閾値ΔY3未満となるような場合だけでなく、コード移動量ΔYabが第4閾値ΔY4を超えるような明らかに車両ドア12の開状態と異なる場合にまで車両ドア12の開状態と誤検知されることもないので(S433でNo)、車両ドア12の開状態の検知に関する検知精度をより高めることができる。
【0376】
また、上記動作状態検知処理では、QRコード50のコード位置Yの時間変化に基づいて、現時点でのコード位置Yと隠蔽開始位置Ybとの差の絶対値であるコード移動量ΔYb(車両ドア12の開状態の検知後にQRコード50が撮像され始めてからの当該QRコード50の移動量)が第5閾値ΔY5以上となると、車両ドア12の閉動作を検知する。これにより、コード移動量ΔYbが第5閾値ΔY5未満となるような場合、例えば、鉄道車両10が単に揺れている状態等の場合に、車両ドア12が閉動作していると誤検知されることもないので、車両ドア12の閉動作の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0377】
また、上記動作状態検知処理では、コード移動量ΔYbが第5閾値ΔY5以上となるまでの時間が所定時間Td以下である場合に(S443でYes)、車両ドア12の閉動作を検知する。これにより、QRコード50が車両ドア12の開閉速度よりも明らかに遅い速度で移動しているように撮像される場合であっても、車両ドア12が閉動作していると誤検知されることもないので(S443でNo)、車両ドア12の閉動作の検知に関する検知精度をさらに高めることができる。
【0378】
また、上記動作状態検知処理では、QRコード50のコード位置Yの時間変化に基づいて、車両ドア12の閉動作の検知後にQRコード50が停止したときのコード位置Yが前回の当該QRコード50の停止位置である閉状態位置Yaに一致するとみなされる場合に、車両ドア12の閉状態を検知する。これにより、仮にQRコード50が停止するように撮像されたとしても直ちに車両ドア12が閉状態であると誤検知されることもないので、車両ドア12の閉状態の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0379】
また、上記動作状態検知処理では、QRコード50のコード位置Yの時間変化に基づいて、車両ドア12の閉動作の検知後にQRコード50が撮像されなくなった際の最後に撮像された当該QRコード50のコード位置Yが、前回車両ドア12の開動作の検知後にQRコード50が撮像されなくなった際の最後に撮像された当該QRコード50のコード位置Yである隠蔽開始位置Ybに一致するとみなされる場合に、車両ドア12の開状態を検知する。これにより、閉動作している車両ドア12が再開閉する場合でもその車両ドア12の開状態を確実に検知することができる。
【0380】
また、QRコード50は、当該QRコード50を設けた車両ドア12の開閉方向に関する情報が光学的に読み取り可能に記録された情報コードである。これにより、識別表示として設けられたQRコード50を光学的に読み取ることで、そのQRコード50の移動方向から車両ドア12の開閉動作を容易に検知することができる。
【0381】
また、上記動作状態検知処理では、同時期に複数のカメラ30のうちの一部にてQRコード50が一定時間継続して認識される撮像結果が得られ、残部にてQRコード50が一定時間継続して認識されない撮像結果が得られる場合に、残部のカメラ30による撮像結果を上記多数決に基づく鉄道車両10や車両ドア12の動作状態の検知のために利用しない。仮に複数のQRコード50のうちの1つが認識不能に劣化等している場合でも、このQRコード50を撮像しているカメラ30の結果が鉄道車両10や車両ドア12の動作状態の検知のために利用されることもないので、QRコード50の劣化等に起因する検知精度の低下を抑制することができる。また、例えば、1つの車両に3つの車両ドア12が設けられることを前提にカメラ30がそれぞれ配置される場合に、1つの車両に2つの車両ドア12が設けられる鉄道車両10の動作状態を検知する場合でも、撮像可能なQRコード50がその撮像視野に存在し得ないカメラ30の結果が鉄道車両10や車両ドア12の動作状態の検知のために利用されることもなく、検知精度の低下を抑制することができる。
【0382】
本実施形態の第1変形例として、QRコード50には、鉄道車両10の鉄道事業者や車種を特定する情報(事業者コードや車種コード)が記録されているため、この情報の少なくとも一部を利用して、鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知する際にパラメータと比較される閾値(ΔY1~ΔY5等)を鉄道事業者毎または車種毎に変化させてもよい。すなわち、識別表示を、鉄道車両10の動作状態を検知する際にパラメータと比較される閾値を鉄道事業者毎または車種毎に変化させるための情報が光学的に読み取り可能に記録された情報コードとして構成してもよい。これにより、識別表示として設けられたQRコード50を光学的に読み取ることで得られた情報に基づいて閾値を都度変更することで、車両ドア12の開閉タイミング等が鉄道事業者毎または車種毎に異なる場合でも、そのQRコード50が設けられた鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知するために適した閾値を容易に設定することができる。
【0383】
本実施形態の第2変形例として、鉄道車両10の動作状態を、各カメラ30によるQRコード50等の識別表示の撮像結果に基づく検知と異なる構成で検知する第2検知手段、例えば、ホーム2に配置されたレーザレーダ装置等を備えるようにしてもよい。これにより、この第2検知手段による検知結果と上述したQRコード50等の識別表示の撮像結果に基づく検知結果との双方を考慮することで、例えば、鉄道車両10が車両ドア12を開状態にしたまま長時間停車するために識別表示が長時間撮像されないような場合でも鉄道車両10の停車を確認でき、鉄道車両10の動作状態の検知に関する検知精度を高めることができる。
【0384】
なお、識別表示の位置の変化をパラメータとして考慮して鉄道車両10や車両ドア12の動作状態を検知する等の本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0385】
[第29実施形態]
次に、本発明の第29実施形態に係るホームドア制御システムについて、以下に説明する。
本第29実施形態では、3つの位置検出パターンのうちの2つが下方となるように配置される二次元コードを識別表示として採用する点が主に上記第1実施形態と異なる。
【0386】
QRコードのように、矩形状のコード領域のうちの三隅に当該コード領域の特定に利用可能な位置検出パターンが設けられる二次元コードは、読み取るべきデータを記録したデータ記録領域が、主にコード領域のうち位置検出パターンが設けられない隅部側に配置される。このため、上記二次元コードを識別表示として車両ドア12又は車体部11aに対して3つの位置検出パターンのうちの2つが上方となるように貼付していると、データ記録領域がコード領域のうち下方に位置することになる。そうすると、
図76(B)に例示するQRコード90を撮像した撮像画像Pからわかるように、コード領域91のうちの下方が乗客の荷物Ba等により隠された状態で撮像される場合、誤り訂正可能な範囲を超えてデータ記録領域93が隠されていると、3つの位置検出パターン92a~92cのうち撮像されている2つの位置検出パターン92a,92bを利用してコード領域91を特定できたとしても、解読可能にデータ記録領域93が撮像されていないために、読み取るべきデータのデコードに失敗してしまう。
【0387】
そこで、本実施形態では、識別表示として採用する二次元コードを、車両ドア12又は車体部11aに対して、3つの位置検出パターンのうちの2つが下方となるように貼付する。具体的には、
図75に例示するQRコード80のように、矩形状のコード領域81が、2つの位置検出パターン82a,82cを下方とし、残りの位置検出パターン82bが左上、データ記録領域83が主に右上側(位置検出パターンが設けられない隅部側)となるように、一方のドア13のガラス窓13aに貼付する。
【0388】
このようにデータ記録領域83が上方となるように配置されることにより、
図76(A)に例示する撮像画像Pからわかるように、コード領域81のうちの下方が乗客の荷物Ba等により隠された状態で撮像される場合でも、データ記録領域83が誤り訂正可能な範囲を超えて隠されて難くなり、撮像されている位置検出パターン82b等を利用してコード領域81を特定することで、読み取るべきデータをデコードすることができる。すなわち、3つの位置検出パターンのうちの2つが上方となるように配置される場合と比較して、二次元コードに記録されるデータの読取成功率を高めることができる。
【0389】
なお、識別表示として採用する二次元コードは、データ記録領域83が主に右上側となるように貼付されることに限らず、
図77に例示するQRコード80aのように、データ記録領域83が主に左上側となるように貼付されてもよい。また、コード領域81が乗客の荷物等により隠され難くするため、車両ドア12又は車体部11aに対して貼付可能な範囲のうちできるだけ上方となる位置に上記二次元コードを貼付することが好ましい。
【0390】
なお、3つの位置検出パターンのうちの2つが下方となるように配置される二次元コードを識別表示として採用する本実施形態およびその変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0391】
なお、本発明は上記各実施形態および変形例に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。また、各実施形態及び変形例における特徴的構成の少なくとも一部を必要に応じて他の実施形態等にも適用することができる。
(1)車両ドア12等に設けられる識別表示は、QRコードであることに限らず、例えば、バーコード等の一次元コードやデータマトリックスコード、マキシコード等の二次元コードなどの他の種別の情報コードであってもよい。また、車両ドア12に設けられる識別表示は、例えば、
図63(A)に例示する表示56のように、所定の形状、模様や色彩からなる図形であってもよいし、
図63(B)に例示する表示57のように、番号表示であってもよい。なお、
図63(A)に例示する表示56は、QRコードの位置検出パターンの1つとなるように表示されている。また、
図63(B)に例示する表示57は、例えば、鉄道車両10および乗降口11(車両ドア12)等を特定するための車両番号およびドア番号となるように表示されている。
【0392】
特に、車両ドア12等に識別表示として設けられる情報コードは、所定の復号鍵を有しない第三者が読み取れないように、所定の情報を所定の暗号化方式に基づいて暗号化するように生成されてもよい。このため、第三者では情報コードに記録される情報を読み取ることができないため、識別表示(情報コード)を偽造する等の不正行為を抑制することができる。ここで、上記所定の暗号化方式に基づいて暗号化された情報コードとしては、例えば、公開領域と非公開領域とを有するように構成される一部非公開コードを採用することができる。なお、上記公開領域は、復号鍵を要しない情報が記録される領域であり、上記非公開領域は、復号鍵を用いて復号可能に暗号化された情報が記録される領域である。
【0393】
(2)車両ドア12は、一方のドア13と他方のドア14とを有する両開き式のスライドドアとして構成されることに限らず、
図64に例示するような1つのドア13を有する片開き式のスライドドアとして構成されてもよい。この場合、QRコード50等の識別表示は、上記各実施形態のような場所に設けることができる。また、ホームドア20は、1つの乗降口11に対して一対の可動扉21が配置されるように構成されることに限らず、1つの乗降口11に対して1つの可動扉21が配置されるように構成されてもよい。
【0394】
(3)カメラ30(30a~30c)は、ホーム2の天井2bに設けられることに限らず、車両ドア12に設けられる識別表示を撮像可能な位置、例えば、ホームドア20の上部や鉄道車両10側の側面等に設けられてもよい。この場合には、QRコード50等の識別表示とカメラ30(30a~30c)との間に乗客が入り込むこともないので、識別表示は、例えば、車両ドア12の下部に設けることもできる。また、カメラ30(30a~30c)は、無線通信を利用して撮像画像をホームドア制御装置40に送信するように構成されてもよい。
【0395】
(4)第25実施形態等における目標停車位置範囲内での停車検知でホームドア20を開状態に制御する場合において、乗客が乗り降りしない回送車両がホーム2に停車する際、その回送車両の外面等にQRコード50等の識別表示が設けられている場合、ホームドア制御装置40は、外部から運行情報(ダイヤ情報)を取得することで、ホーム2に停車している鉄道車両10が回送車両と判断される場合には、開閉処理を行わないようにすることができる。一方、
図65に例示するように、乗客が乗り降りする際の目標停車位置範囲に対して回送車両がずれて停車することでも、QRコード50等の識別表示が撮像されないことで、ホームドア制御装置40による開閉処理を行わないようにすることができる。また、QRコード50等の識別表示の表示状態および非表示状態を切り替え可能な表示部58を鉄道車両10の外部から撮像可能な部位、例えば、
図66に例示するように車両ドア12の一方のドア13に設け、運行用車両となる場合には
図66(A)に例示するように表示部58をQRコード50の表示状態とし、回送車両となる場合には
図66(B)に例示するようにQRコード50の非表示状態としてもよい。これにより、回送車両となるためにQRコード50が非表示状態となった鉄道車両10がホーム2に進入しても、QRコード50等の識別表示が撮像されないことで、ホームドア制御装置40による開閉処理を行わないようにすることができる。
【0396】
(5)鉄道車両10が停車するごとに、鉄道車両10の停車時に撮像された識別表示の位置を規準に撮像画像のうちの一部に検知範囲を狭めた状態で開閉処理を行ってもよい。例えば、鉄道車両10の停車検知前はカメラ30の撮像範囲の全体についてQRコード50を検知するための処理を行い、
図67(A)に示すように撮像画像Pにて鉄道車両10の停車を検知した場合に、QRコード50の位置とその開閉時の移動方向に応じて検知範囲33を設定して、
図67(B)(C)に示すように、その検知範囲33についてQRコード50を検知するための処理を行う。このように狭めた検知範囲33について開閉処理を行うことで、その処理速度を向上させることができる。
【0397】
(6)上記各実施形態では、ホーム2への停車時の鉄道車両10の移動方向(進入方向)とそのホーム2からの発車時の鉄道車両10の移動方向(退出方向)とが同じ場合について説明している。一方、終着駅及び始発駅になるホーム2や折り返し運転がなされるホーム2では、上述した進入方向と退出方向とが逆方向となる。この場合には、制御部41にてなされる開閉処理での発車検知の際に、停車検知での「進入側」と「退出側」とを入れ替えて検知処理を行うことができる。
【0398】
(7)降車側の各車両ドア12が開閉した後に反対側となる乗車側の各車両ドア12が開閉するようなホーム、すなわち、降車側に配置されるホームドア20と乗車側に配置されるホームドア20とが鉄道車両10を介して対向するようなホームでは、それぞれのホームドア20を共通のホームドア制御装置40により制御してもよい。そして、車体の一方の側面側(海側)に設けられてその一方の側面側に配置される情報等が記録される各識別表示と、車体の他方の側面側(山側)に設けられてその他方の側面側に配置される情報等が記録される各識別表示とを利用することで、一方の側面側の各車両ドア12の動作状態に応じた一方の側面側のホームドア20の制御や他方の側面側の各車両ドア12の動作状態に応じた他方の側面側のホームドア20の制御を個別に行ってもよい。
【0399】
(8)撮像手段それぞれがQRコード50等の情報コードを上述のような公知のデコード処理等を用いて認識するための処理を行う機能を兼備し、その認識結果をホームドア制御装置40に送信するように構成されてもよい。この構成では、1つの車両ドア12に対して複数の撮像手段が設けられる場合、情報コードを認識等する際に取得した情報を各撮像手段にて共用することができる。
【0400】
例えば、上述した
図31に示すように、3つのカメラ30a~30cが鉄道車両10の移動方向に沿って配置される場合、鉄道車両10の進入側に位置するカメラ30aが最初にQRコード50を撮像して認識することとなる。このため、その情報コード50を認識等する際にカメラ30aが取得した情報をカメラ30bやカメラ30cに送信して共有することができる。
【0401】
ここで、情報コード50を認識等する際にカメラ30aが取得した情報としては、例えば、QRコード50をデコード成功するために適した明るさ(例えば、明暗差を大きくするための条件や露光状態等)に関する情報を採用することができる。この場合には、3つのカメラ30a~30cが撮像する範囲の明るさはほぼ変わらないため、カメラ30bやカメラ30cでのデコード成功率を高めることができる。また、情報コード50を認識等する際にカメラ30aが取得した情報としては、例えば、情報コード50が写り込む範囲やタイミングを採用することができる。各カメラ30a~30cの位置関係は既知であるため、進入側に位置するカメラ30aの撮像結果に基づいて、情報コード50がカメラ30bに写り込む範囲及びタイミングやカメラ30cに写り込む範囲及びタイミングを推定することができるからである。この場合には、カメラ30bやカメラ30cでは、情報コード50が写り込む範囲及びタイミングが分かるので、情報コード50を撮像画像から見つけるために必要な処理負荷を軽減することができる。
【0402】
(9)上述した
図31に例示するように、鉄道車両10の移動方向に沿って3つの撮像手段が配置され、上述のように撮像手段それぞれが公知のデコード処理等を行う機能を兼備する場合、中央に位置する撮像手段(
図31の例ではカメラ30b)をマスター機、他の撮像手段(
図31の例ではカメラ30a,30c)をスレーブ機として構成することができる。
【0403】
上述のような情報の共有等を行う場合、2つのスレーブ機がマスター機よりも進行方向側に配置されていると、マスター機は2つのスレーブ機のそれぞれと通信する必要があるが、3つの中央にマスター機が配置されていると、マスター機は進行方向側のスレーブ機と通信するだけで共有すべき情報を取得できる。これにより、マスター機とスレーブ機との間の通信量を削減することができる。
【0404】
(10)一方のドア13と他方のドア14とに識別表示としてそれぞれ3つの位置検出パターンを有する二次元コードとしてQRコード50,53を設ける場合、
図78に例示するように、QRコード50及びQRコード53は、三隅に設けられる3つの位置検出パターンのうちの2つが互いに近づくように配置されてもよい。
【0405】
この構成では、車両ドア12の閉動作開始時には上記2つの位置検出パターンがQRコードを構成する他の領域よりも早く撮像され、車両ドア12の開動作時には上記2つの位置検出パターンがQRコードを構成する他の領域よりも長い時間撮像される。このため、車両ドア12の閉動作開始時には、二次元コードの全体が撮像される前に2つの位置検出パターンが撮像されて検知されることで車両ドア12の閉動作を検知して、その後の二次元コードのデコードの成否に応じてその閉動作の確認を行うことで、二次元コードのデコードの成否に応じてその閉動作を検知する場合と比較して、車両ドア12の閉動作を迅速かつ正確に検知することができる。
【0406】
(11)一方のドア13と他方のドア14とにそれぞれQRコードのような二次元コードを設ける場合、一方のドア13に設けられる二次元コードと他方のドア14に設けられる二次元コードとは、ミラー反転した関係にて同じ情報が記録されるように構成されてもよい。例えば、
図79に例示するように、2つの位置検出パターンが互いに近づく状態にて、一方のドア13に設けられる一方のQRコード50がミラー反転されて構成される他方のQRコード50aを、他方のドア14に設ける。
【0407】
これにより、二次元コードをデコードする場合に、ミラー反転処理を要しない二次元コードは一方のドア13に設けられる二次元コードであり、ミラー反転処理を要する二次元コードは他方のドア14に設けられる二次元コードであると判別することができる。このため、その二次元コードが一方のドア13と他方のドア14とのいずれに設けられているかを示す情報を当該二次元コードに記録する必要がないため、二次元コードに記録すべき情報量を削減することができる。すなわち、二次元コードに記録される情報を変えずに一方のドア13及び他方のドア14のいずれに設けられた二次元コードであるかを判別することができる。
【符号の説明】
【0408】
1…ホームドア制御システム
2…ホーム
10…鉄道車両
12,12a~12l…車両ドア
13…一方のドア
14…他方のドア
13a,14a…ガラス窓
20…ホームドア
21…可動扉
22…扉駆動部
30,30a~30c…カメラ(撮像手段)
31…撮像視野
40…ホームドア制御装置(制御手段)
41…制御部(検知手段,相対位置検出手段)
42…記憶部(記憶手段)
50~54…QRコード(識別表示)
70…集約機器(検知手段)