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特許6993622ロープテスタ用装着具、ロープテスタ、エレベータ用ロープの診断システム、及びエレベータ用ロープの診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ロープテスタ用装着具、ロープテスタ、エレベータ用ロープの診断システム、及びエレベータ用ロープの診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/83 20060101AFI20220105BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01N27/83
B66B5/02 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019205421
(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公開番号】P2021076546
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2019-11-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田平 尚己
(72)【発明者】
【氏名】平田 智之
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-041933(JP,A)
【文献】特開2010-111456(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163362(WO,A1)
【文献】特開平09-184824(JP,A)
【文献】特開2015-166697(JP,A)
【文献】特開平09-210968(JP,A)
【文献】特開2009-091127(JP,A)
【文献】米国特許第5828213(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-27/9093
B66B 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の対象ロープが直線状に延びる延び方向に離れる第1磁石部及び第2磁石部によって前記対象ロープを磁化させて磁束を検出するロープテスタ本体と、
前記ロープテスタ本体に着脱可能なロープテスタ用装着具と、を備え、
前記ロープテスタ本体は、前記対象ロープを案内する対象ロープ案内部を備え、
前記対象ロープ案内部は、少なくとも前記第1磁石部の位置から前記第2磁石部の位置まで、前記延び方向に沿って直線状に延び、
前記ロープテスタ用装着具は、
前記対象ロープに隣接する非検査対象の非対象ロープが前記対象ロープに近づくことを規制するために、前記非対象ロープと接触可能な規制部と、
前記非対象ロープを案内する非対象ロープ案内部と、を備え、
前記規制部は、前記非対象ロープ案内部の少なくとも一部を構成し、
前記非対象ロープ案内部は、少なくとも前記第1磁石部の位置から前記第2磁石部の位置まで、前記非対象ロープが連続して接するように前記延び方向に沿って直線状に延び、
前記対象ロープ案内部及び前記非対象ロープ案内部は、前記対象ロープ及び前記非対象ロープが並ぶ並び方向に、並べられ、
前記対象ロープ案内部は、一部が開放された凹状面に形成されることによって、前記対象ロープ案内部の前記並び方向の両側は、閉塞され、前記対象ロープ案内部の、前記延び方向及び前記並び方向にそれぞれ直交する直交方向の一方側は、閉塞され、前記対象ロープ案内部の前記直交方向の他方側は、開放され、
前記非対象ロープ案内部は、一部が開放された凹状面に形成されることによって、前記非対象ロープ案内部の前記並び方向の両側は、閉塞され、前記非対象ロープ案内部の前記直交方向の一方側は、閉塞され、前記非対象ロープ案内部の前記直交方向の他方側は、開放され、
前記ロープテスタ本体と前記ロープテスタ用装着具とが互いに向かい合う面は、それぞれ前記延び方向に沿って平面状に形成される、ロープテスタ。
【請求項2】
前記ロープテスタ本体は、検査対象の対象ロープを磁化させる磁化部と、前記対象ロープに起因する磁束を検出する磁束検出部と、を備え
記磁化部は、前記延び方向に離れる第1磁石部及び第2磁石部を備える、請求項1に記載のロープテスタ。
【請求項3】
前記規制部は、前記対象ロープ及び前記非対象ロープ間の中心よりも、前記非対象ロープ側に配置される、請求項1又は2に記載のロープテスタ。
【請求項4】
記ロープテスタ本体と前記ロープテスタ用装着具とが互いに向かい合う面同士間に挿入されることによって、前記ロープテスタ本体に対する前記ロープテスタ用装着具の位置を変更する変更部を備える、請求項1~3の何れか1項に記載のロープテスタ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のロープテスタと、
前記ロープテスタが検出する磁束値から、記憶される前記非対象ロープに起因する磁束値を除くことによって、前記対象ロープに起因する磁束値を演算する演算部と、を備える、エレベータ用ロープの診断システム。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載のロープテスタで磁束を検出することと、
前記ロープテスタが検出する磁束値から、記憶される前記非対象ロープに起因する磁束値を除くことによって、前記対象ロープに起因する磁束値を演算することと、を含む、エレベータ用ロープの診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ロープテスタ用装着具、ロープテスタ、エレベータ用ロープの診断システム、及びエレベータ用ロープの診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ロープテスタは、複数並べられるエレベータ用ロープのうち、一つのロープを検査するために、検査対象の対象ロープを磁化させる磁化部と、対象ロープに起因する磁束を検出する磁束検出部とを備えている(例えば、特許文献1)。ところで、対象ロープに隣接する非検査対象の非対象ロープが、対象ロープに近づくと、磁束検出部は、対象ロープに起因する磁束だけでなく、非対象ロープに起因する磁束も検出する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-181792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、第1の課題は、非対象ロープが対象ロープに近づくことを規制することができるロープテスタ用装着具及びロープテスタを提供することである。
【0005】
また、第2の課題は、対象ロープに起因する磁束値を正確に測定することができるエレベータ用ロープの診断システム及び診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ロープテスタ用装着具は、検査対象の対象ロープを磁化させて磁束を検出するロープテスタ本体に着脱可能なロープテスタ用装着具であって、前記対象ロープに隣接する非検査対象の非対象ロープが前記対象ロープに近づくことを規制するために、前記非対象ロープと接触可能な規制部を備える。
【0007】
また、ロープテスタ用装着具は、前記非対象ロープを案内する非対象ロープ案内部を備え、前記規制部は、前記非対象ロープ案内部の少なくとも一部を構成する、という構成でもよい。
【0008】
また、ロープテスタは、検査対象の対象ロープを磁化させる磁化部と、前記対象ロープに起因する磁束を検出する磁束検出部と、前記対象ロープに隣接する非検査対象の非対象ロープが前記対象ロープに近づくことを規制するために、前記非対象ロープと接触可能な規制部と、を備える。
【0009】
また、ロープテスタにおいては、前記規制部は、前記対象ロープ及び前記非対象ロープ間の中心よりも、前記非対象ロープ側に配置される、という構成でもよい。
【0010】
また、ロープテスタは、前記対象ロープを案内する対象ロープ案内部と、前記非対象ロープを案内する非対象ロープ案内部と、を備え、前記規制部は、前記非対象ロープ案内部の少なくとも一部を構成する、という構成でもよい。
【0011】
また、エレベータ用ロープの診断システムは、前記のロープテスタと、前記ロープテスタが検出する磁束値と前記非対象ロープに起因する磁束値とに基づいて、磁束値を演算する演算部と、を備える。
【0012】
また、エレベータ用ロープの診断方法は、前記のロープテスタで磁束を検出することと、前記ロープテスタが検出する磁束値と前記非対象ロープに起因する磁束値とに基づいて、磁束値を演算することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係るロープテスタの全体斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係るロープテスタの全体分解斜視図である。
図3図3は、同実施形態に係るロープテスタ本体の全体側面図であって、一部を縦断面で示す図である。
図4図4は、同実施形態に係るロープテスタの要部平面図である。
図5図5は、同実施形態に係る診断システムの制御ブロック図である。
図6図6は、同実施形態に係る診断方法のフロー図である。
図7図7は、同実施形態に係る診断方法を説明する図であって、ロープ位置と磁束との関係を示す図である。
図8図8は、他の実施形態に係るロープテスタの要部平面図である。
図9図9は、さらに他の実施形態に係るロープテスタの要部平面図である。
図10図10は、さらに他の実施形態に係るロープテスタの要部平面図である。
図11図11は、さらに他の実施形態に係るロープテスタの要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ロープテスタ用装着具、ロープテスタ、エレベータ用ロープの診断システム、及びエレベータ用ロープの診断方法における一実施形態について、図1図7を参照しながら説明する。なお、各図(図8図11も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0015】
図1に示すように、ロープテスタ1は、エレベータ用ロープX1を診断するために用いられる。なお、エレベータ用ロープX1~X3は、第1方向D1に複数(個数は、特に限定されない)並べられている。特に限定されないが、ロープX1~X3間の隙間は、例えば、ロープX1~X3の外径の30%~100%としてもよい。また、特に限定されないが、例えば、ロープX1~X3の外径は、8mm~16mmとしてもよく、ロープX1~X3間の隙間は、2.4mm~16mmとしてもよい。
【0016】
各図において、第1方向D1は、ロープX1~X3が並ぶ並び方向D1といい、第2方向D2は、ロープX1~X3が延びる延び方向D2といい、第3方向D3は、並び方向D1及び延び方向D2にそれぞれ直交する直交方向D3という。また、ロープテスタ1が各方向D1~D3を用いて説明されている場合は、特に記載がない限り、各方向D1~D3は、ロープテスタ1がロープX1~X3を検査している際の方向D1~D3である。
【0017】
図1及び図2に示すように、ロープテスタ1は、検査対象の対象ロープX1を磁化させて磁束を検出するロープテスタ本体(以下、単に「テスタ本体」ともいう)2と、テスタ本体2に着脱可能なロープテスタ用装着具(以下、単に「装着具」ともいう)7を備えている。また、ロープテスタ1は、装着具7をテスタ本体2に固定する固定具1aを備えている。
【0018】
なお、特に限定されないが、本実施形態においては、装着具7は、一対備えられている。そして、一対の装着具7,7は、テスタ本体2を並び方向D1で挟むように、配置されている。また、特に限定されないが、本実施形態においては、固定具1aは、雄ネジ材(例えば、ボルト)としている。そして、雄ネジ材が装着具7の挿通孔7aに挿入され、そして、雄ネジ材がテスタ本体2の雌ネジ部2aと螺合することによって、装着具7は、テスタ本体2に固定される。
【0019】
図2及び図3に示すように、テスタ本体2は、ベース部3と、ベース部3に連結され、対象ロープX1を検査する検査部4と、対象ロープX1に対する変位量を検出する変位検出部5とを備えている。なお、ベース部3は、検査員に把持される把持部3aを備えている。
【0020】
変位検出部5は、外周が対象ロープX1に接することで回転する回転部5aと、回転部5aの回転量を検出する回転検出部5bと、回転部5aとベース部3とを接続する接続部5cと、回転部5aが対象ロープX1に加圧して接するために、加力する加力部5d(図3のみに図示している)とを備えている。特に限定されないが、回転検出部5bは、例えば、回転部5aの回転量を検出する各種センサ(例えば、エンコーダ)としてもよい。
【0021】
検査部4は、ケース部4aと、対象ロープX1を案内する対象ロープ案内部(以下、「第1案内部」ともいう)4bとを備えている。また、検査部4は、対象ロープX1を磁化させる磁化部4cと、対象ロープX1に起因する磁束を検出する磁束検出部4d,4eとを備えている。
【0022】
ケース部4aの直交方向D3の一方側(図の矢印方向側。以下同様。)は、ベース部3に連結されており、ケース部4aの直交方向D3の他方側(図の矢印方向と反対方向側。以下同様。)は、第1案内部4bに連結されている。また、ケース部4aは、磁化部4c及び磁束検出部4d,4eを内部に収容している。
【0023】
また、特に限定されないが、本実施形態においては、第1案内部4bは、延び方向D2に沿って連続して延びている。なお、第1案内部4bは、例えば、延び方向D2に複数並べられている、即ち、延び方向D2に沿って断続して延びている、という構成でもよい。
【0024】
図4に示すように、第1案内部4bは、一部が開放された凹状面に形成されている。具体的には、第1案内部4bの並び方向D1の両側は、閉塞され、第1案内部4bの直交方向D3の一方側は、閉塞され、第1案内部4bの直交方向D3の他方側は、開放されている。
【0025】
図3に戻り、磁化部4cは、第1及び第2磁石部4f,4gと、第1磁石部4fと第2磁石部4gとを磁気的に接続する磁路部4hとを備えている。そして、第1及び第2磁石部4f,4gと磁路部4hとは、対象ロープX1と協働することによって、磁気回路を構成する。即ち、磁気回路は、第1磁石部4f、第2磁石部4g、磁路部4h、及び対象ロープX1によって構成される。
【0026】
なお、特に限定されないが、各磁石部4f,4gは、例えば、永久磁石としてもよく、また、例えば、電磁石としてもよい。また、特に限定されないが、磁路部4hは、高い透磁率を有しており、例えば、純鉄や低炭素鋼で形成されてもよい。
【0027】
磁束検出部4d,4eは、対象ロープX1から漏洩する磁束を検出する漏洩磁束検出部4dと、対象ロープX1の内部を通る磁束を検出する内部磁束検出部4eとを備えている。なお、特に限定されないが、各磁束検出部4d,4eは、磁束の大きさを電圧(電流)の大きさに変換する各種磁気センサ(ホール素子、コイル)としてもよい。
【0028】
内部磁束検出部4eは、全磁束法の診断のための磁束の検出を行っている。具体的には、内部磁束検出部4eは、磁路部4hの内部を通る磁束を検出することによって、対象ロープX1の内部を通る磁束を検出している。
【0029】
漏洩磁束検出部4dは、漏洩磁束法の診断のための磁束の検出を行っている。具体的には、漏洩磁束検出部4dは、第1及び第2磁石部4f,4gと磁路部4hとによって磁化される対象ロープX1から漏洩する磁束を検出している。
【0030】
また、検査部4は、対象ロープX1からの漏洩磁束を集めるために、対象ロープX1を覆うように配置される磁性部4iを備えており、漏洩磁束検出部4dは、磁性部4iの内部を通る磁束を検出している。なお、磁性部4iは、第1案内部4bの一部を構成している。具体的には、第1案内部4bは、磁性部4iと、磁性部4iの透磁率よりも低い透磁率を有する非磁性部4jとによって、構成されている。
【0031】
そして、磁性部4iと非磁性部4jとは、連接されている。特に限定されないが、磁性部4iは、高い透磁率を有しており、例えば、純鉄や低炭素鋼で形成されてもよい。また、特に限定されないが、非磁性部4jは、低い透磁率を有しており、例えば、青銅や硬質樹脂で形成されてもよい。
【0032】
また、特に限定されないが、磁性部4iの透磁率は、例えば、非磁性部4jの透磁率の100倍以上であることが好ましく、また、例えば、1000倍以上であることがより好ましい。また、特に限定されないが、磁性部4iの透磁率は、例えば、大気の透磁率の100倍以上であることが好ましく、また、例えば、1000倍以上であることがより好ましい。
【0033】
ところで、ロープテスタ1(テスタ本体2)のテスト対象ではないロープX2,X3のうち、対象ロープX1に隣接する非対象ロープX2が、振動等によって、対象ロープX1に近づく場合がある。そして、仮に、非対象ロープX2が、磁石部4f,4g及び磁路部4hと協働して磁気回路を構成してしまった場合には、磁束検出部4d,4eは、対象ロープX1に起因する磁束だけでなく、非対象ロープX2に起因する磁束も検出する可能性がある。
【0034】
そこで、図2及び図4に示すように、装着具7は、非対象ロープX2を案内する非対象ロープ案内部(以下、「第2案内部」ともいう)7bを備えている。特に限定されないが、本実施形態においては、第2案内部7bは、延び方向D2に沿って連続して延びている。なお、第2案内部7bは、例えば、延び方向D2に複数並べられている、即ち、延び方向D2に沿って断続して延びている、という構成でもよい。
【0035】
第2案内部7bは、一部が開放された凹状面に形成されている。具体的には、第2案内部7bの並び方向D1の両側は、閉塞され、第2案内部7bの直交方向D3の一方側は、閉塞され、第2案内部7bの直交方向D3の他方側は、開放されている。
【0036】
これにより、第2案内部7bのうち、並び方向D1の第1案内部4bに近い側は、非対象ロープX2が対象ロープX1に近づくことを規制するために、非対象ロープX2と接触可能な規制部7cを構成している。即ち、規制部7cは、第2案内部7bの一部を構成している。
【0037】
そして、規制部7cは、対象ロープX1及び非対象ロープX2間の並び方向D1の中心P1よりも、非対象ロープX2側に配置されている。これにより、規制部7cが非対象ロープX2と接触することによって、非対象ロープX2が対象ロープX1に近づくことを規制することができる。したがって、例えば、磁束検出部4d,4eが非対象ロープX2に起因する磁束を検出することを抑制することができる。
【0038】
次に、本実施形態に係るエレベータ用ロープX1の診断システム10の構成について、図5を参照しながら説明する。
【0039】
図5に示すように、診断システム10は、情報が入力される入力部11と、情報を処理する処理部12と、処理部12で処理された情報を出力する出力部13とを備えている。ロープテスタ1は、各検出部4d,4e,5で検出した情報を、有線又は無線によって、処理部12に向けて出力している。
【0040】
入力部11には、例えば、対象ロープX1の情報(例えば、対象ロープX1の外径等)及び診断に関する情報(例えば、診断開始の指示、設定値等)が、入力される。特に限定されないが、入力部11は、例えば、マウス、キーボード、各種スイッチとしてもよい。また、特に限定されないが、出力部13は、例えば、情報を表示する装置(例えば、モニタ)としてもよく、また、外部に向けて信号を出力する装置としてもよい。
【0041】
処理部12は、ロープテスタ1及び入力部11からの情報を取得する取得部12aと、各種情報を記憶する記憶部12bとを備えている。また、処理部12は、取得部12a及び記憶部12bの情報に基づいて、情報を演算する演算部12cと、演算部12cが演算した情報に基づいて、対象ロープX1を判定する判定部12dとを備えている。
【0042】
次に、本実施形態に係るエレベータ用ロープX1の診断方法について、図4図7を参照しながら説明する。
【0043】
図4に示すように、第1案内部4b及び第2案内部7bの同じ側、即ち、直交方向D3の他方側が、開放されている。これにより、ロープテスタ1を直交方向D3の他方側へ移動させることによって、対象ロープX1を第1案内部4bに挿入することができ、非対象ロープX2を第2案内部7bに挿入することができる。
【0044】
そして、ロープテスタ1をロープX1~X3に対して相対的に変位させる。このとき、例えば、静止しているロープテスタ1に対して、ロープX1~X3が動かされてもよく、また、例えば、静止しているロープX1~X3に対して、ロープテスタ1が動かされてもよい。
【0045】
これにより、漏洩磁束検出部4dは、対象ロープX1から漏洩する磁束を検出し、内部磁束検出部4eは、対象ロープX1の内部を通る磁束を検出する(磁束検出工程S1)。加えて、変位検出部5は、対象ロープX1に対するロープテスタ1の変位量を検出する(変位検出工程S2)。
【0046】
そして、磁束検出部4d,4eが検出した磁束値と変位検出部5が検出した変位量とに基づいて、図7(a)に示すように、演算部12cは、対象ロープX1の位置と磁束値との関係を演算する(第1演算工程S3)。なお、図7は、内部磁束検出部4eが検出した磁束値M1のみを図示している。
【0047】
ところで、図4に戻り、ロープテスタ1がロープX1~X3に対して変位する際に、第2案内部7bは、非対象ロープX2を案内する、即ち、連続して接している。これにより、対象ロープX1及び磁束検出部4d,4eに対する非対象ロープX2の位置が変わることを抑制することができる。したがって、例えば、仮に、磁束検出部4d,4eが非対象ロープX2に起因する磁束を検出した場合でも、検出する磁束の量を一定(同じだけでなく、検査に影響がない程度の略同じも含む)とすることができる。
【0048】
そこで、演算部12cは、磁束検出部4d,4eが検出する磁束値と非対象ロープX2に起因する磁束値とに基づいて、磁束値を演算する(第2演算工程S4)。具体的には、図7(b)に示すように、演算部12cは、磁束検出部4d,4eが検出した磁束値M1から、非対象ロープX2に起因する所定の磁束値M2を除くことによって、対象ロープX1に起因する磁束値M3を演算する。
【0049】
これにより、対象ロープX1に起因する磁束値M3を正確に測定することができる。なお、特に限定されないが、非対象ロープX2に起因する所定の磁束値M2は、例えば、ロープテスタ1で事前に検出されたり、また、例えば、理論値に基づいて入力部11に入力されたりすることによって、記憶部12bに記憶されていてもよい。
【0050】
そして、演算部12cが演算した磁束値M3に基づいて、判定部12dは、対象ロープX1の状態(正常、異常)を判定する(判定工程S5)。具体的には、演算部12cが演算した対象ロープX1に起因する磁束値M3と設定値M4とに基づいて、判定部12dは、対象ロープX1の状態を判定する。
【0051】
特に限定されないが、本実施形態においては、演算部12cが演算した磁束値M3が、設定値M4(例えば、初期の対象ロープX1の磁束値に対して所定割合(例えば、15%)だけ減少させた値)よりも低い位置P2がある場合に、判定部12dは、対象ロープX1を異常と判定する。また、内部磁束検出部4eが検出した磁束値M1だけでなく、漏洩磁束検出部4dが検出した磁束値に基づいて、同様に、対象ロープX1が診断されている。
【0052】
なお、エレベータ用ロープX1の診断方法については、斯かる方法に限られない。例えば、磁束検出部4d,4eが非対象ロープX2に起因する磁束を検出していない、又は、当該磁束が診断に影響しない場合には、演算部12cは、第2演算工程S4を行わなくてもよい。また、例えば、演算部12cが演算した磁束値に基づいて、検査員が対象ロープX1の状態を判定してもよい。
【0053】
以上より、本実施形態に係るロープテスタ用装着具7は、検査対象の対象ロープX1を磁化させて磁束を検出するロープテスタ本体2に着脱可能なロープテスタ用装着具7であって、前記対象ロープX1に隣接する非検査対象の非対象ロープX2が前記対象ロープX1に近づくことを規制するために、前記非対象ロープX2と接触可能な規制部7cを備える。
【0054】
そして、本実施形態に係るロープテスタ1は、検査対象の対象ロープX1を磁化させる磁化部4cと、前記対象ロープX1に起因する磁束を検出する磁束検出部4d,4eと、前記対象ロープX1に隣接する非検査対象の非対象ロープX2が前記対象ロープX1に近づくことを規制するために、前記非対象ロープX2と接触可能な規制部7cと、を備える。
【0055】
斯かるロープテスタ用装着具7及びロープテスタ1によれば、規制部7cが、非対象ロープX2と接触することによって、非対象ロープX2が対象ロープX1に近づくことを規制することができる。
【0056】
また、本実施形態に係るロープテスタ用装着具7は、前記非対象ロープX2を案内する非対象ロープ案内部7bを備え、前記規制部7cは、前記非対象ロープ案内部7bの少なくとも一部を構成する、という構成である。
【0057】
そして、本実施形態に係るロープテスタ1は、前記対象ロープX1を案内する対象ロープ案内部4bと、前記非対象ロープX2を案内する非対象ロープ案内部7bと、を備え、前記規制部7cは、前記非対象ロープ案内部7bの少なくとも一部を構成する、という構成である。
【0058】
斯かるロープテスタ用装着具7及びロープテスタ1によれば、非対象ロープ案内部7bは、非対象ロープX2を案内する。そして、規制部7cが、非対象ロープ案内部7bの少なくとも一部を構成しているため、非対象ロープX2が対象ロープX1に近づくことを規制することができると共に、対象ロープX1及びロープテスタ1に対する非対象ロープX2の位置が変わることを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態に係るロープテスタ用装着具7及びロープテスタ1においては、前記規制部7cは、前記対象ロープX1及び前記非対象ロープX2間の中心P1よりも、前記非対象ロープX2側に配置される、という構成である。
【0060】
斯かるロープテスタ用装着具7及びロープテスタ1によれば、非対象ロープX2は、対象ロープX1及び非対象ロープX2間の中心P1よりも非対象ロープX2側で、規制部7cに接触される。
【0061】
また、本実施形態に係るエレベータ用ロープX1の診断システム10は、前記のロープテスタ1と、前記ロープテスタ1が検出する磁束値M1と前記非対象ロープX2に起因する磁束値M2とに基づいて、磁束値M3を演算する演算部12cと、を備える。
【0062】
そして、本実施形態に係るエレベータ用ロープX1の診断方法は、前記のロープテスタ1で磁束を検出することと、前記ロープテスタ1が検出する磁束値M1と前記非対象ロープX2に起因する磁束値M2とに基づいて、磁束値M3を演算することと、を含む。
【0063】
斯かるエレベータ用ロープX1の診断システム10及び診断方法によれば、ロープテスタ1が検出する磁束値M1と非対象ロープX2に起因する磁束値M2とに基づいて、磁束値M3が演算される。これにより、対象ロープX1に起因する磁束値M3を正確に測定することができる。
【0064】
なお、ロープテスタ用装着具7、ロープテスタ1、エレベータ用ロープX1の診断システム10及び診断方法は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、ロープテスタ用装着具7、ロープテスタ1、エレベータ用ロープX1の診断システム10及び診断方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0065】
(1)例えば、ロープテスタ1は、図8に示すように、ロープテスタ本体2に対する装着具7(非対象ロープ案内部7b、規制部7c)の位置を変更可能な変更部8を備える、という構成でもよい。斯かる構成によれば、ロープX1,X2の間隔に応じて、ロープテスタ本体2に対する非対象ロープ案内部7b及び規制部7cの位置を変更することができる。なお、特に限定されないが、図8に係る変更部8は、装着部7とロープテスタ本体2との間に挿入されるスペーサとしている。
【0066】
(2)また、上記実施形態に係る構成及び方法においては、非対象ロープ案内部7bが設けられ、非対象ロープX2が非対象ロープ案内部7bに案内されている。しかしながら、装着具7、ロープテスタ1、診断システム10及び診断方法は、これに限られない。例えば、図9に示すように、非対象ロープ案内部7bが設けられておらず、ロープテスタ1がロープX1~X3に対して変位する際に、非対象ロープX2がロープテスタ1(装着具7)から離れていてもよい。
【0067】
(3)また、例えば、装着具7及びロープテスタ1は、図10及び図11に示すように、直交方向D3の他方側へ移動する際に、対象ロープX1と非対象ロープX2との間に挿入される挿入部9を備えている。特に限定されないが、図10及び図11に係る挿入部9は、先端に向けて幅狭となるように形成されており、また、非対象ロープ案内部7bまで案内するように形成されている。
【0068】
(4)また、上記実施形態に係る構成及び方法においては、非対象ロープ案内部7bは、凹状面で形成されている。しかしながら、装着具7、ロープテスタ1、診断システム10及び診断方法は、これに限られない。例えば、図10及び図11に示すように、非対象ロープ案内部7bは、平面状に形成されていてもよい。
【0069】
(4-1)図10に係る構成においては、ロープテスタ1を直交方向D3の他方側へ移動させることによって、対象ロープX1を第1案内部4bに挿入することができ、且つ、非対象ロープX2を非対象ロープ案内部7bに押し当てることができる。このとき、非対象ロープX2においては、非対象ロープ案内部7bに案内される部分は、直交方向D3の他方側へ湾曲するように、変形する。
【0070】
(4-2)図11に係る構成においては、ロープテスタ1を直交方向D3の他方側へ移動させることによって、対象ロープX1を第1案内部4bに挿入することができ、且つ、非対象ロープX2を非対象ロープ案内部7bまで案内することができる。このとき、非対象ロープX2においては、非対象ロープ案内部7bに案内される部分は、直交方向D3の一方側へ湾曲するように、変形する。
【0071】
(5)また、上記実施形態に係る構成及び方法においては、対象ロープ案内部4bが設けられ、対象ロープX1が対象ロープ案内部4bに案内されている。しかしながら、ロープテスタ1、診断システム10及び診断方法は、これに限られない。例えば、対象ロープ案内部4bが設けられていなくてもよい。
【0072】
(6)また、上記実施形態に係る構成及び方法においては、磁束検出部4d,4eは、漏洩磁束検出部4d及び内部磁束検出部4eを備えている。しかしながら、ロープテスタ1、診断システム10及び診断方法は、これに限られない。例えば、磁束検出部4d,4eは、漏洩磁束検出部4d又は内部磁束検出部4eの何れか一方のみを備えてもよい。
【0073】
(7)また、上記実施形態に係る構成及び方法においては、規制部7cを有する装着具7は、磁束検出部4d,4eを有するテスタ本体2に着脱可能である。しかしながら、ロープテスタ1、診断システム10及び診断方法は、これに限られない。例えば、規制部7cを有する部分は、磁束検出部4d,4eを有する部分と着脱不能となるように、一体に構成されてもよい。
【0074】
(8)また、上記実施形態に係る構成及び方法においては、規制部7cは、対象ロープX1及び非対象ロープX2間の中心P1よりも、非対象ロープX2側に配置されている。しかしながら、装着具7、ロープテスタ1、診断システム10及び診断方法は、これに限られない。例えば、規制部7cは、対象ロープX1及び非対象ロープX2間の中心P1よりも、対象ロープX1側に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…ロープテスタ、1a…固定具、2…ロープテスタ本体、2a…雌ネジ部、3…ベース部、3a…把持部、4…検査部、4a…ケース部、4b…対象ロープ案内部(第1案内部)、4c…磁化部、4d…漏洩磁束検出部、4e…内部磁束検出部、4f…第1磁石部、4g…第2磁石部、4h…磁路部、4i…磁性部、4j…非磁性部、5…変位検出部、5a…回転部、5b…回転検出部、5c…接続部、5d…加力部、7…ロープテスタ用装着具、7a…挿通孔、7b…非対象ロープ案内部(第2案内部)、7c…規制部、8…変更部、9…挿入部、10…診断システム、11…入力部、12…処理部、12a…取得部、12b…記憶部、12c…演算部、12d…判定部、13…出力部、D1…並び方向、D2…延び方向、D3…直交方向、X1…対象ロープ、X2…非対象ロープ、X3…ロープ
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