(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】シート材の裁断装置及び裁断方法
(51)【国際特許分類】
B26D 5/00 20060101AFI20220105BHJP
D06H 7/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B26D5/00 B
B26D5/00 F
D06H7/00
(21)【出願番号】P 2017015647
(22)【出願日】2017-01-31
【審査請求日】2019-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000132954
【氏名又は名称】株式会社タカトリ
(72)【発明者】
【氏名】北川 昇平
(72)【発明者】
【氏名】西川 政輝
(72)【発明者】
【氏名】新谷 善英
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特許第2538514(JP,B2)
【文献】特開2012-136811(JP,A)
【文献】特開平07-024785(JP,A)
【文献】特開平06-192959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0002416(US,A1)
【文献】佐藤隆三 ほか,生地の自動柄合せ裁断システム,日立評論,第73巻第3号,日立評論社,1991年03月,85-90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/00
D06H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断するシート材を載置して保持する裁断テーブルと、
前記シート材を裁断する裁断刃と、
前記裁断刃を昇降可能に支持し、予め設定された裁断パターン形状に前記裁断刃を移動させる裁断ヘッドと、
前記裁断パターンを記憶すると共に前記裁断パターンを前記シート材上に仮想的に配置する制御部とを備えるシート材の裁断装置であって、
前記シート材に設定された少なくとも2つの柄合わせポイントと、
前記裁断パターン毎に設定された少なくとも2つの仮想基準ポイントと、を有し、
前記柄合わせポイントは、少なくとも第1柄合わせポイントと、第2柄合わせポイントが設定され、
前記仮想基準ポイントは、基点側となる第1仮想基準ポイントと、移動側となる第2柄合わせポイントが設定され、
前記裁断ヘッドは、前記シート材の柄合わせポイントを撮影するカメラを備え、
前記カメラは、前記裁断パターン毎に仮想基準ポイントを前記シート材の柄合わせポイントに合わせるように裁断ヘッドと一体に移動自在に構成され、
前記制御部は、前記カメラで認識したシート材の第1柄合わせポイントと第1仮想基準ポイントとを裁断パターンを移動させて位置合わせし、続いて前記カメラを移動させて第2の柄合わせポイントを認識し、前記第2柄合わせポイントを位置合わせするように第1仮想基準ポイントを基点に仮想上の裁断パターンを回転させて第2柄合わせポイントと第2仮想基準ポイントとを位置合わせすることで裁断パターンをシート材に配置するように構成され、
前記シート材上に少なくとも3つの柄合わせポイントを設定しておき、前記第1仮想基準ポイントを基点に仮想上の裁断パターンを回転させ、第2柄合わせポイントと、前記第2柄合わせポイントと対応する第2仮想基準ポイントを位置合わせした際に、裁断パターン内の他の仮想基準ポイントが、対応する柄合わせポイントと位置がずれると認識した場
合、しわや伸び等によるシート材の変形があると判断して、裁断を開始しないようにするシート材の裁断装置。
【請求項2】
裁断ヘッドの移動に同期させて非通気性のカバーを裁断パーツ上に被せるようにする請求項1記載のシート材の裁断装置。
【請求項3】
前記柄合わせポイント毎に位置合わせの移動方向に制限を設定し、前記仮想基準ポイントを対応する柄合わせポイントに位置合わせする際に、制限された移動方向に従って位置合わせする請求項1に記載のシート材の裁断装置。
【請求項4】
裁断テーブル上に裁断するシート材を載置して保持し、
前記シート材上に裁断パターンを予め設計された裁断パターンを仮想的に配置し、
裁断ヘッドに昇降可能に支持された裁断刃を前記裁断パターンに沿って移動させることで前記シート材を裁断するシート材の裁断方法であって、
前記シート材に少なくとも2 つの柄合わせポイントを設定し、
前記裁断パターン毎に少なくとも2 つの仮想基準ポイントを設定し、
前記柄合わせポイントとして第1 柄合わせポイントと第2 柄合わせポイントを設定し、
前記仮想基準ポイントとして第1 仮想基準ポイントと第2 仮想基準ポイントを設定し、
前記裁断ヘッドを駆動してカメラでシート材の第1柄合わせポイントを認識し、前記第1柄合わせポイントを前記第1 仮想基準ポイントと位置合わせし、続いて前記裁断ヘッドを駆動して前記カメラで前記第2 柄合わせポイントを認識して、前記第2 柄合わせポイントを前記第2 仮想基準ポイントに位置合わせするように前記第1 仮想基準ポイントを基準に仮想上の前記裁断パターンを回転させて前記第2柄合わせポイントと前記第2 仮想基準ポイントとを位置合わせすることで前記裁断パターンをシート材に配置するようにし、
前記シート材上に少なくとも3つの柄合わせポイントを設定しておき、前記第1仮想基準ポイントを基点に仮想上の裁断パターンを回転させ、第2柄合わせポイントと、前記第2柄合わせポイントと対応する第2仮想基準ポイントを位置合わせした際に、裁断パターン内の他の仮想基準ポイントが、対応する柄合わせポイントと位置がずれると認識した場
合、しわや伸び等によるシート材の変形があると判断して、裁断を開始しないようにするシート材の裁断方法。
【請求項5】
裁断ヘッドの移動に同期させて非通気性のカバーを裁断パーツ上に被せるようにする請求項4記載のシート材の裁断方法。
【請求項6】
前記柄合わせポイント毎に位置合わせの移動方向に制限を設定し、前記仮想基準ポイントを対応する柄合わせポイントに位置合わせする際に、制限された移動方向に従って位置合わせする請求項4に記載のシート材の裁断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材の裁断装置及び裁断方法に関する。さらに詳しくは、シート材に形成された柄と裁断パターンに配置される柄とを精度良く合わせるシート材の裁断装置及び裁断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種繊維材料で形成されたシート材を裁断テーブル上に保持して裁断する裁断装置が知られている。前記裁断装置においては、予め設定された裁断パターンに従って、裁断刃が制御され、シート材が各種の形状に裁断される。
【0003】
前記裁断パターンは、予めCADで設計されたものを、裁断テーブル上に保持されたシート材上に効率が良いように自動配置され、前記裁断パターンに従って、裁断されるようになっている。
【0004】
また、前記裁断装置において、柄物のシート材を裁断することも行われている。このような柄物のシート材の裁断では、裁断を行う前にシート材に形成された柄と裁断パターンに配置される柄との柄合わせが行われている。
【0005】
前記シート材の柄と裁断パターンに配置される柄を合わせる柄合わせに当たり、裁断パターンの形状の型紙を目視にてシート材の柄に合わせ、型紙に沿って裁断することが行われている。この手動での柄合わせは、予めシート材に設定された柄合わせポイントを型紙の基準点や基準線と合わせることで行われている。
【0006】
しかし、柄もののシート材の場合、縫製段階で柄を合わせることは困難であることから、型紙を柄に合わせてシート材上に配置し、前記型紙をCCDカメラによって輪郭を抽出して裁断データに変換し、前記裁断データに基づいてシート材を裁断することが行われている(例えば特許文献1)。
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記特許文献1の裁断装置での柄合わせ(例えばストライプ柄やチェック柄)は、目視で型紙をシート材の柄に合わせて配置し、型紙の輪郭を抽出して裁断データを得ているので、型紙の輪郭に精度が出ていないと、裁断が精度良く行えない問題がある。
【0009】
また、シート材の投入角度がずれて裁断テーブル上に斜めに延反された場合やシート材の歪みの補正ができない問題がある。また、シート材を裁断テーブルに載置保持した際にしわや歪みが許容範囲を超えて異常である場合であっても、その判断が行えない問題もある。
【0010】
さらに、特許文献1の裁断装置では、柄合わせした後に型紙の輪郭を抽出して裁断パターンを形成しているため、型紙の色彩とシート材の柄の色彩に差がないと型紙の輪郭が抽出できない問題がある。特に通気性のあるシート材で、柄の色彩と型紙の色彩で区別がつき難い場合は、シート材に被せる非通気性シートに着色した透明な特殊なシートを用いなければ、裁断パターンの輪郭を抽出できない問題がある。また、型紙が透明ではないので、型紙を透過して柄合わせポイントを確認できないため、型紙の外周に沿って柄合わせポイントを設定しなければならないという制限がある。また、型紙をシート材上に配置した場合、型紙がずれる場合があり、精度の良い裁断が行えない問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、
裁断するシート材を載置して保持する裁断テーブルと、
前記シート材を裁断する裁断刃と、
前記裁断刃を昇降可能に支持し、予め設定された裁断パターン形状に前記裁断刃を移動させる裁断ヘッドと、
前記裁断パターンを記憶すると共に前記裁断パターンを前記シート材上に仮想的に配置する制御部とを備えるシート材の裁断装置であって、
前記シート材に設定された少なくとも2つの柄合わせポイントと、
前記裁断パターン毎に設定された少なくとも2つの仮想基準ポイントと、を有し、
前記柄合わせポイントは、少なくとも第1柄合わせポイントと、第2柄合わせポイントが設定され、
前記仮想基準ポイントは、基点側となる第1仮想基準ポイントと、移動側となる第2柄合わせポイントが設定され、
前記裁断ヘッドは、前記シート材の柄合わせポイントを撮影するカメラを備え、
前記カメラは、前記裁断パターン毎に仮想基準ポイントを前記シート材の柄合わせポイントに合わせるように裁断ヘッドと一体に移動自在に構成され、
前記制御部は、前記カメラで認識したシート材の第1柄合わせポイントと第1仮想基準ポイントとを裁断パターンを移動させて位置合わせし、続いて前記カメラを移動させて第2の柄合わせポイントを認識し、前記第2柄合わせポイントを位置合わせするように第1仮想基準ポイントを基点に仮想上の裁断パターンを回転させて第2柄合わせポイントと第2仮想基準ポイントとを位置合わせすることで裁断パターンをシート材に配置するように構成され、
前記シート材上に少なくとも3つの柄合わせポイントを設定しておき、前記第1仮想基準ポイントを基点に仮想上の裁断パターンを回転させ、第2柄合わせポイントと、前記第2柄合わせポイントと対応する第2仮想基準ポイントを位置合わせした際に、裁断パターン内の他の仮想基準ポイントが、対応する柄合わせポイントと位置がずれると認識した場合、しわや伸び等によるシート材の変形があると判断して、裁断を開始しないようにする構成を採用するシート材の裁断装置である。
【0012】
請求項2の発明は、
裁断ヘッドの移動に同期させて非通気性のカバーを裁断パーツ上に被せるようにする請求項1記載の構成を採用するシート材の裁断装置である。
【0013】
請求項3の発明は、
前記柄合わせポイント毎に位置合わせの移動方向に制限を設定し、前記仮想基準ポイントを対応する柄合わせポイントに位置合わせする際に、制限された移動方向に従って位置合わせする請求項1記載の構成を採用するシート材の裁断装置である。
【0014】
請求項4の発明は、
裁断テーブル上に裁断するシート材を載置して保持し、
前記シート材上に裁断パターンを予め設計された裁断パターンを仮想的に配置し、
裁断ヘッドに昇降可能に支持された裁断刃を前記裁断パターンに沿って移動させることで前記シート材を裁断するシート材の裁断方法であって、
前記シート材に少なくとも2 つの柄合わせポイントを設定し、
前記裁断パターン毎に少なくとも2 つの仮想基準ポイントを設定し、
前記柄合わせポイントとして第1 柄合わせポイントと第2柄合わせポイントを設定し、
前記仮想基準ポイントとして第1 仮想基準ポイントと第2仮想基準ポイントを設定し、
前記裁断ヘッドを駆動してカメラでシート材の第1 柄合わせポイントを認識し、前記第1 柄合わせポイントを前記第1仮想基準ポイントと位置合わせし、続いて前記裁断ヘッドを駆動して前記カメラで前記第2柄合わせポイントを認識して、前記第2 柄合わせポイントを前記第2仮想基準ポイントに位置合わせするように前記第1 仮想基準ポイントを基準に仮想上の前記裁断パターンを回転させて前記第2 柄合わせポイントと前記第2仮想基準ポイントとを位置合わせすることで前記裁断パターンをシート材に配置するようにし、
前記シート材上に少なくとも3つの柄合わせポイントを設定しておき、前記第1仮想基準ポイントを基点に仮想上の裁断パターンを回転させ、第2柄合わせポイントと、前記第2柄合わせポイントと対応する第2仮想基準ポイントを位置合わせした際に、裁断パターン内の他の仮想基準ポイントが、対応する柄合わせポイントと位置がずれると認識した場合、しわや伸び等によるシート材の変形があると判断して、裁断を開始しないようにするシート材の裁断方法である。
【0015】
請求項5の発明は、
裁断ヘッドの移動に同期させて非通気性のカバーを裁断パーツ上に被せるようにする請求項4記載の構成を採用するシート材の裁断方法である。
【0016】
請求項6の発明は、
前記柄合わせポイント毎に位置合わせの移動方向に制限を設定し、前記仮想基準ポイントを対応する柄合わせポイントに位置合わせする際に、制限された移動方向に従って位置合わせする請求項4記載の構成を採用するシート材の裁断装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1及び請求項4の発明によれば、シート材に複数の柄合わせポイントを設定し、第1柄合わせポイントと裁断パターンに設定された第1仮想基準ポイントを合わせた後、裁断パターンを回転させて第2柄合わせポイントと第2仮想基準ポイントとを合わせるようにしたので、型紙を用いずとも裁断パターンをシート材の柄に合わせて容易に精度良く配置できる。
【0018】
また、ストライプ柄やチェック柄でなくとも、柄パターンに複数の柄合わせポイントを設定することで、複雑な線柄、文字、各種図形の柄パターンであっても柄合わせを行うことができる。
また、シート材上に少なくとも3つの柄合わせポイントを設定しておき、第1仮想基準ポイントを基点に仮想上の裁断パターンを回転させ、第2柄合わせポイントと、第2柄合わせポイントと対応する第2仮想基準ポイントを位置合わせした際に、裁断パターン内の他の仮想基準ポイントが、対応する柄合わせポイントと位置がずれると認識した場合、しわや伸び等によるシート材の変形があると判断して、裁断を開始しないようにしたので、シート材を無駄にせず、加工ロスも発生しない。
【0019】
また、請求項2及び請求項5の発明によれば、裁断ヘッドの移動に同期させて非通気性のカバーを裁断パーツ上に被せるようにしたので、裁断テーブルの吸引力を保持できる。
【0020】
また、請求項3及び請求項6の発明によれば、柄合わせポイント毎に位置合わせの移動方向に制限を設定し、仮想基準ポイントを対応する柄合わせポイントに位置合わせする際に、制限された移動方向に従って位置合わせするようにしたので、特定の柄パターンに合わせて柔軟な柄合わせを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】は、本発明のシート材裁断装置の全体斜視図である。
【
図2】は、
図1の裁断ヘッド部の一部省略拡大図である。
【
図3】(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態を表す柄合わせ動作の説明図である。
【
図4】(a)及び(b)は、
図3の要部拡大説明図である。
【
図5】(a)及び(b)は、本発明の第2実施形態を表す柄合わせ動作の説明図である。
【
図7】(a)及び(b)は、本発明の第3実施形態を表す柄合わせ動作の説明図である。
【
図8】(a)及び(b)は、本発明の第4実施形態を表す柄合わせ動作の説明図である。
【
図9】は、本発明の第1実施形態を表す柄合わせ動作のフローチャートである。
【
図10】は、本発明の第2実施形態を表す柄合わせ動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1乃至
図2に基づき、本発明の一実施形態についての詳細を説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るシート材裁断装置1の全体斜視図である。前記シート材裁断装置1は、矩形状の本体フレーム2と、該本体フレーム2上に水平に設けられた裁断テーブル3と、該裁断テーブル3上を図示X方向に移動自在に懸架されたYビーム5と、該Yビーム5に沿ってY方向に移動自在な裁断ヘッド6と、シート材Sの柄を撮影するカメラ12と、裁断パターンPの入力などを行うデータ処理装置13と、前記裁断パターンPのデータに従って前記シート材裁断装置1を制御する制御部16などを備えて構成されている。
【0024】
前記本体フレーム2は、図示しない吸引ボックスが形成され、該吸引ボックスにはブロアなどが接続されて、前記裁断テーブル3上に吸引力を発生させるようになっている。前記裁断テーブル3は、剛毛3aが敷設されてテーブル面を形成しており、該テーブル面上に裁断すべきシート材Sが積層載置され、前記ブロアを作動させることで前記シート材Sが裁断テーブル3上に吸着保持されるようになっている。また、シート材Sが通気性の材料である場合は、
図1のようにシート材S上にナイロンシート8が被せられ、裁断テーブル3の吸引力を保持するようになっている。なお、必要により、裁断ヘッド6の移動に同期させて非通気性のカバーを裁断パーツP上に被せるようにしても良い。また、裁断テーブル3の端部には、裁断パーツPを排出する際に巻き込みを防止するピックアップ爪7が設けられている。
【0025】
前記裁断テーブル3のX方向に沿った両側には適宜な駆動源によりX方向に沿って移動自在な移動枠4、4が立設され、両移動枠4、4間にYビーム5が懸架されている。前記Yビーム5は、両移動枠4、4を図示しない適宜の駆動源によって駆動することでX方向に沿って移動するようになっている。
【0026】
前記Yビーム5のY方向に沿ってレール9が敷設され、前記レール9に摺動可能に裁断ヘッド6が設けられている。前記裁断ヘッド6は、図示しない適宜の駆動源により前記レール9に沿って移動自在になっている。
【0027】
前記裁断ヘッド6は、図示しない駆動源によって上下運動が付与される裁断刃10と、前記裁断刃10の周囲のシート材Sを押さえ付けるシート押え11と、シート材Sの柄を撮影するカメラ12などが設けられている。
【0028】
前記裁断刃10は、裁断テーブル3上に延反されたシート材Sを貫通し、上下運動しながら、裁断ヘッド6の移動と共に予め設定された裁断パターンPに沿って前記シート材Sを裁断するようになっている。
【0029】
前記データ処理装置13は、前記シート材裁断装置1の制御部16に接続されており、予め設計された裁断パターンPのデータが入力されると、前記制御部16へデータが転送される。前記制御部16は、転送された裁断パターンPのデータをシート材S上に前記裁断パターンPを配置し、配置された裁断パターンPに従って、前記シート材裁断装置1を制御するようになっている。
【0030】
前記データ処理装置13は、ディスプレイ13aが接続され、前記カメラ12で撮影されたシート材Sの柄20を表示するようになっている。前記ディスプレイ13aは、前記シート材Sの柄を表示すると共に、前記裁断パターンPの一部または全体を重ねて表示するようになっている。
【0031】
前記カメラ12は、裁断ヘッド6のベース板14に保持枠15を介して固定されており、裁断ヘッド6と一体に移動するようになっている。前記カメラ12は、前記裁断テーブル3に載置されたシート材Sを撮影するものであり、前記裁断ヘッド6を移動させることにより、前記シート材Sの部分画像を撮影できる。
【0032】
撮影された画像は、前記カメラ12の位置情報と共に前記データ処理装置13に転送され、ディスプレイ13aの画面に表示されるようになっている。このとき、画像の中心に後述する仮想基準ポイント31が表示されるようになっている。前記カメラ12の位置情報は、前記裁断ヘッド6の位置情報と、前記カメラ12と裁断ヘッド6との位置関係から取得できる。
【0033】
次に、
図3、
図4及び
図9に基づいて、本発明のシート材裁断装置1を用いてシート材Sの柄20と裁断パターンPとを柄合わせし、前記シート材Sを裁断する裁断方法について説明する。
【0034】
図3(a)及び(b)は、シート材Sにストライプ柄が形成されている場合の本発明の第1実施形態に係る説明図である。また、
図4(a)及び(b)は、前記カメラ12で撮影した画像をディスプレイ13aに表示したものであり、
図3(a)及び(b)の裁断パターンP1の柄合わせポイント21a、21bの周辺を拡大したものである。また、
図9は、本発明の第1実施形態におけるシート材裁断装置1の動作を表すフローチャートである。
【0035】
まず、
図9のステップS1において、前記データ処理装置13に裁断パターンPのデータが入力され、入力された裁断パターンPのデータが、シート材裁断装置1の制御部16に送られて記憶される。
【0036】
次にステップS2でシート材Sが裁断テーブル3上に載置されて保持されるとともにステップS3でシート材Sに複数の柄合わせポイント21a、21bが設定される。
【0037】
続いて、ステップS4で裁断パターンPをシート材S上に仮配置する。
【0038】
図3(a)は、シート材Sが裁断テーブル3に延反された状態を表し、図示している裁断パターンPは、仮想上の裁断データをシート材S上に重ね合わせて表したものである。また、シート材Sの柄15aは、ストライプ状であるが、図示では傾斜状態で裁断テーブル3上に載置されている。なお、理解が容易なようにシート材Sを大きく傾斜させて載置した状態で描いてある。また、理解が容易なように仮想上の裁断パターンPもシート材S上に3つ描いてある。
【0039】
前記シート材Sには、対応する裁断パターンP毎に作業者の目視またはカメラでの認識が可能な複数の柄合わせポイント21a、21bが設定されている。本実施形態においては、前記柄合わせポイント21aを第1柄合わせポイントとし、前記柄合わせポイント21bを第2柄合わせポイントとする。
【0040】
次にステップS5で、最初の裁断パターンP1の第1柄合わせポイント21a上にカメラ12を位置させる。このときの前記カメラ12の移動は、手動による目合わせで行っても、適宜設けたマーカーや前記柄合わせポイント21等を基準に自動で行っても良い。
【0041】
続いてステップS6で、前記カメラ12によって前記裁断パターンP1の第1柄合わせポイント21a周辺を撮影する。
【0042】
前記カメラ12によって撮影された画像は、ステップS7でディスプレイ13aに表示される。
図4(a)は、
図3(a)の柄合わせポイント21a周辺の撮影画像をディスプレイ13aに表示したものである。前記カメラ12には、
図4(a)のように仮想上の裁断パターンPの一部が表示され、その画面の中央に第1仮想基準ポイント31a(図示、十字マーク)が表示される。なお、第1仮想基準ポイント31aの設定位置、裁断パターンPの大きさ、撮影倍率によっては、裁断パターンPが画面に表示されない場合や裁断パターンPの全体が画面に表示されることがある。
【0043】
次にステップS8で前記裁断ヘッド6を駆動して前記カメラ12を移動させ、前記カメラ12の中心(第1仮想基準ポイント31a)を裁断パターンP1の第1柄合わせポイント21a上に移動させて位置合わせする。この位置合わせは、前記カメラ12で認識できる柄合わせポイント21の場合は、自動で行うことができる。自動で認識が困難な柄合わせポイント21の場合は、目視で合わせればよい。また、シート材Sの柄20が定型のものである場合、延反位置を所定の位置に合わせるようにすれば、柄合わせポイント21近傍に前記カメラ12を自動で移動させることができる。
【0044】
次にステップS9で
図3(b)のように第1柄合わせポイント21aに位置合わせした第1仮想基準ポイント31aを基点にしながら、裁断パターンP1を任意の角度θ回転させて、第2仮想基準ポイント31bを第2柄合わせポイント21bに位置合わせする。
図4(b)は、前記第2柄合わせポイント21b周辺(第2仮想基準ポイント31b)を前記カメラ12で撮影し、ディスプレイ13aに表示したものである。なお、前記第1仮想基準ポイント31aと前記第2仮想基準ポイント31bは、制御部16で裁断パターンP1から座標認識しているので、前記第1仮想基準ポイント31aの位置から前記第2仮想基準ポイント31bへの前記カメラ12の移動は、自動的に行うことができる。
【0045】
図示のように前記第2仮想基準ポイント31bが、前記第1仮想基準ポイント31aを基点に回転されることで、前記第2仮想基準ポイント31bが前記第2柄合わせポイント21bに位置合わせされる。
【0046】
前記裁断パターンP1内の前記柄合わせポイント21a、21bと前記仮想基準ポイント31a、31bの位置合わせが完了すると、ステップS10として位置合わせが完了した裁断パターンP1を前記シート材S上に配置する。
【0047】
前記裁断パターンP1の位置合わせが完了すると、ステップS11で全ての柄合わせポイント21の位置合わせが完了したかどうか判断を行う。本実施形態では、裁断パターンPが3つあるため、ステップS5からステップS10を3回繰り返す。裁断パターンP1のシート材Sへの配置が完了すると、次の裁断パターンP2の位置合わせに移行し、裁断パターンP3まで完了すると、ステップ12で裁断が実行される。
【0048】
なお、複数の裁断パターンPをできるだけシート材Sの無駄を少なく配置したい場合は、裁断パターンPの位置合わせにおける移動量にオフセットを設け、オフセット量をしきい値とすることもできる。この場合、しきい値を超える移動が必要なときは、エラーメッセージを発するようにしても良い。上記のようにシート材Sへの裁断パターンPの配置時にオフセットを設定するようにすれば、柄合わせとシート材Sの残り代とのバランスを考慮して裁断パターンPを効率良くシート材S上に配置できる。
【0049】
次に本発明の第2実施形態について
図5、
図6及び
図10に基づいて説明する。
【0050】
図5(a)及び(b)は、裁断パターンPをシート材S上の柄20に位置合わせして配置する場合の説明図であり、シート材Sの柄20が裁断テーブル3上に載置される際に歪んで載置されて湾曲している状態を表したものである。なお、理解が容易なように湾曲を誇張して描いている。
【0051】
図6は、
図5(b)の二点鎖線部分の拡大図であり、
図10は、第2の実施形態における動作を表すフローチャートである。
【0052】
図10におけるステップ21からステップ28までは、第1実施形態の
図9におけるステップ1からステップ8と同様であるので説明を省略する。
【0053】
図5(a)及び(b)は、ステップ29における柄20と裁断パターンPを位置合わせする状態を表す説明図である。
【0054】
図5(a)は、第1柄合わせポイント21aと第1仮想基準ポイント31aとの位置合わせが完了した状態である。本実施形態においては、3点の柄合わせポイントが設定され、各柄合わせポイントとして第1柄合わせポイント21a、第2柄合わせポイント21b、第3柄合わせポイント21cが設定されている。
【0055】
また、それぞれの柄合わせポイント21a、21b、21cと対応する仮想基準ポイントが裁断パターンP側に設定されており、それぞれ第1仮想基準ポイント31a、第2仮想基準ポイント31b、第3仮想基準ポイント31cが設定される。
【0056】
図5(a)のように、第2実施形態においては、第1柄合わせポイント21aとの位置合わせが完了した第1仮想基準ポイント31aを基点に裁断パターンPを任意の角度θ回転させることで、第2柄合わせポイント21bと第2仮想基準ポイント31bとを位置合わせする状態を表している。また、本実施形態においては、例えばシート材Sの載置状態が悪く、前記シート材Sの柄20が湾曲した状態を表している。
【0057】
なお、本実施形態においては、第1仮想基準ポイント31aを第1柄合わせポイント21aと合わせておき、第1仮想基準ポイント31aと間隔を空けて設定した第2仮想基準ポイント31bを第2柄合わせポイント21bと合わせることで、直線状の柄20(図示では、柄20を湾曲して描いてある。)と裁断パターンPを位置合わせすることを想定している。
【0058】
ここで、
図5(b)は、第2仮想基準ポイント31bと第2柄合わせポイント21bの位置合わせが完了した状態を表しているが、このとき第3仮想基準ポイント31cは、第3柄合わせポイント21cから離間している。
【0059】
図6は、
図5(b)の二点鎖線枠内を拡大したものであるが、図示のように第3仮想基準ポイント31cは、第3柄合わせポイント21cと距離dだけ離間している。すなわち、シート材Sの載置状態が悪く、しわや伸び等によって柄20が変形している状態を示唆している。
【0060】
続いて、ステップ30において、基準位置(本実施形態においては第1及び第2柄合わせポイント21a、21b)の位置合わせが完了したかどうかを判断する。基準位置の位置合わせが完了している場合は、ステップ31で前記カメラ12を移動させ、第3柄合わせポイント21c上に移動し、座標認識している第3仮想基準ポイント31cが第3柄合わせポイント21cと一致しているかどうかを確認する。前記確認は第1実施形態のときと同様に柄合わせポイント21が自動認識できる形態のものであるときは、自動で行えば良く、目視でしか確認できない柄合わせポイント21の場合は、目視で行うようにしても良い。
【0061】
前記ステップ31で第3仮想基準ポイント31cが第3柄合わせポイント21cと一致していない場合、ステップ32で例えばディスプレイ13aにエラー表示を行い、シート材裁断装置1の動作を停止する。エラー表示は、シグナル灯等、適宜の手段で行うことができる。
【0062】
前記ステップ30で第3仮想基準ポイント31cが第3柄合わせポイント21cと一致している場合は、ステップ31で裁断パターンPをシート材S上に配置する。
【0063】
続いて、ステップ33で全ての柄合わせポイント21(全ての裁断パターンP)の位置合わせが完了しているかどうかの判断を行い、完了している場合、ステップ34で制御部16の制御に従って裁断が実行される。前記ステップ33で全ての柄合わせポイント21(全ての裁断パターンP)の位置合わせが完了していない場合、ステップ25に戻って、上記の動作が繰り返し行われる。以上が、第2実施形態の動作の説明であり、第2実施形態においては、複数の柄合わせポイント21を設定することで、その内のいずれかがずれている場合にシート材Sに異常があると認識し、装置を停止できるので、シート材Sの無駄が削減できる。
【0064】
次に本発明の第3実施形態について
図7(a)及び(b)を参照して説明する。
【0065】
本実施形態においては、柄合わせの際に所定の方向にだけ裁断パターンPを移動させて、位置合わせを行う場合の発明について開示するものである。本発明の第3実施形態においては、シート材Sの柄20として格子柄のものを用いた場合を例に説明する。
【0066】
図7(a)のようにシート材Sに第1柄合わせポイント21a及び第2柄合わせポイント21bが設定され、裁断パターンPに第1仮想基準ポイント31a及び第2仮想基準ポイント31bが設定されている。
【0067】
まず、第1柄合わせポイント21aと第1仮想基準ポイント31aとを位置合わせするため、カメラ12を第1柄合わせポイント21a周辺に移動させる。このときの前記カメラ12の移動は、手動による目合わせで行っても、適宜設けたマーカーや柄合わせポイント21等を基準に自動で行っても良い。
【0068】
図示上方向(以下、Y方向という。)にカメラ12を移動させて第1柄合わせポイント21aに第1仮想基準ポイント31aを位置合わせする。なお、本実施形態においては、Y方向への移動だけで合わせることができる場合であるが、図示横方向(以下、X方向という。)への移動が必要な場合は、カメラ12のX方向への移動を行って位置合わせを行えば良い。斜め方向への移動が必要な場合は、X方向及びY方向の移動の組み合わせで行うようにすればよい。
【0069】
前記第1柄合わせポイント21aと第1仮想基準ポイント31aの位置合わせが完了すると、
図7(b)のようにX方向への移動のみを使用して第2柄合わせポイント21bと第2仮想基準ポイント31bとを位置合わせする。なお、このとき第1柄合わせポイント21aと第1仮想基準ポイント31aとは位置がずれることになる。
【0070】
上記のように第2柄合わせポイント21bと第2仮想基準ポイント31bとを位置合わせする際、第2仮想基準ポイント31bの移動をX方向のみとすることで、ある特定の柄20(本実施形態であれば、格子柄)を基準とした所定の位置合わせを行うことができる。このような位置合わせを行うことで、ストライプ柄で特定のストライプを基準に位置合わせを行う場合に単純な動作で効率的な位置合わせを行うことができる。
【0071】
次に本発明の第4実施形態について
図8(a)及び(b)を参照して説明する。
【0072】
図8(a)及び(b)のように本発明の第4実施形態においては、シート材Sの柄20にキャラクターがデザインされたものを用いている。
【0073】
まず、第1から第3実施形態と同様に前記シート材Sの第1柄合わせポイント21a及び第2柄合わせポイント21bを設定する。本発明の第4実施形態においては、柄20の三角形のキャラクターの頂点に第1柄合わせポイント21a及び第2柄合わせポイント21bが設定されている。
【0074】
次に
図8(a)のようにカメラ12を第1柄合わせポイント21aの周辺に移動させ、第1柄合わせポイント21aを撮影する。前記カメラ12の移動は、他の実施形態と同様に手動または自動で行われる。続いて、カメラ12をX方向(図示横方向)、Y方向(図示縦方向)に移動させて第1柄合わせポイント21aと第1仮想基準ポイント31aを位置合わせする(本実施形態においては、第1柄合わせポイント21aと第1仮想基準ポイント31aのずれがY方向のみであるため、位置合わせは裁断パターンPのY方向への移動のみで行なっている)。
【0075】
続いて
図8(b)のように第1仮想基準ポイント31aを基点に裁断パターンPを回転させて、前記第2柄合わせポイント21bと第2仮想基準ポイント31bとを位置合わせする。位置合わせが完了すると、裁断パターンPをシート材Sに配置し、次の裁断パターンPにおける柄合わせを上記同様に実施し、全ての裁断パターンPの配置が完了すれば、裁断を実行する。なお、第2実施形態と同様に3点以上の柄合わせポイント21を設定し、シート材Sのしわや湾曲等による異常を検出するようにしても良い。また、第3実施形態と同様に規則性のある柄20であれば、所定方向の移動のみで位置合わせするようにすることもできる。
【0076】
以上が、本発明の実施形態であるが、発明の範囲内で各種の変更を行うことができる。例えば、柄合わせポイント21を3点以上設定しても良いし、それぞれの柄合わせポイント21を機能分けし、特定の柄合わせポイント21が一致しないときは、異常があると判断して裁断を実行しないようにすることもできる。なお、仮想基準ポイント31は、前記第1から第4の実施形態においては、裁断パターンPの内部に設定されたが、裁断パターンPの輪郭上に設定してもよい。
【0077】
また、シート材Sの柄も各種のものを選定でき、意図的に柄合わせポイント21を認識し易いようにマーキングを施したり、フィルタをかけたときのみ認識できるようにしたりするようにしても良い。カメラ12での位置合わせも自動で行うことが好ましいが、認識し難い柄合わせポイント21の場合、手動操作によって目合わせで位置合わせするようにしても良い。
【符号の説明】
【0078】
S シート材
P 裁断パターン
P1 裁断パターン
P2 裁断パターン
P3 裁断パターン
1 シート材裁断装置
2 本体フレーム
3 裁断テーブル
3a 剛毛
4 移動枠
5 Yビーム
6 裁断ヘッド
7 ピックアップ爪
8 ナイロンシート
9 レール
10 裁断刃
11 シート押え
12 カメラ
13 データ処理装置
13a ディスプレイ
14 ベース板
15 保持枠
16 制御部
20 柄
21 柄合わせポイント
21a 柄合わせポイント(第1柄合わせポイント)
21b 柄合わせポイント(第2柄合わせポイント)
21c 柄合わせポイント(第3柄合わせポイント)
31a 仮想基準ポイント(第1仮想基準ポイント)
31b 仮想基準ポイント(第2仮想基準ポイント)
31c 仮想基準ポイント(第3仮想基準ポイント)