(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】壁面圧力計測構造及び風洞試験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 9/04 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
G01M9/04
(21)【出願番号】P 2017207779
(22)【出願日】2017-10-27
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】三友 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】高谷 亮太
(72)【発明者】
【氏名】牧野 好和
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-016843(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0230837(US,A1)
【文献】特開平06-026983(JP,A)
【文献】特開平05-107256(JP,A)
【文献】特開昭63-095335(JP,A)
【文献】米国特許第05457630(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 9/00- 9/08
G01L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクト内部の壁面圧力を計測する壁面圧力計測構造であって、
前記ダクトの壁面のうち、当該ダクトの延在方向と直交する検査面における互いに異なる周方向位置に、複数の計測孔が形成され、
前記複数の計測孔と前記ダクトの外周との間に、前記複数の計測孔の各々と連通された一の圧力室が設けられ、
前記一の圧力室が圧力計と一の圧力配管で接続されていることを特徴とする壁面圧力計測構造。
【請求項2】
前記ダクトが、航空機の模型に設けられたインテークダクトであることを特徴とする請求項1に記載の壁面圧力計測構造。
【請求項3】
風洞と、
前記風洞内に気流を発生させる送風機と、
請求項2に記載の壁面圧力計測構造と、
を備え、
前記風洞内で気流を受けたときの前記模型のインテークダクト内部の壁面圧力を計測することを特徴とする風洞試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト内部の壁面圧力の平均値を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機に作用する気流の影響を模擬した風洞試験は、機体を模した模型周りの流れや、模型に作用する空気力などを調べるために行われる(例えば、特許文献1参照)。
このような風洞試験において、模型に作用する外部荷重を算出する場合、模型全体に作用する荷重計測値から、気流によるインテークダクト(空気取り入れ口)内部の空力荷重を除外する必要がある。インテークダクトの内部荷重は、ダクト出口付近の総圧および壁面圧力の計測値から算出される。
【0003】
この壁面圧力には、周方向の分布を加味するために、ダクト出口付近の検査面における平均値が用いられる。具体的には、
図5に示すように、検査面内に設けられた複数の計測孔が圧力配管を介して個別に圧力計に接続されており、各計測孔での圧力が計測されて、その平均値が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この壁面圧力の平均値をより正確に計測・算出するためには、できるだけ計測点数(計測孔)を増やす必要がある。
しかしながら、単純に計測点数を増加させると、それに伴って圧力配管数も増えるため、圧力配管に作用する荷重が計測値に含まれることに起因して、計測精度の低下を招いてしまう。そこで従来は、圧力配管による過度の干渉荷重の増加を招かないように、3点程度の少ない計測点数に抑えざるを得なかった。そのため、周方向の圧力分布を精度良く計測することが難しく、ダクト内部の流れが複雑な場合には適用が困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ダクト内部の流れが複雑な場合であっても、好適に壁面圧力の平均値を計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ダクト内部の壁面圧力を計測する壁面圧力計測構造であって、
前記ダクトの壁面のうち、当該ダクトの延在方向と直交する検査面における互いに異なる周方向位置に、複数の計測孔が形成され、
前記複数の計測孔と前記ダクトの外周との間に、前記複数の計測孔の各々と連通された一の圧力室が設けられ、
前記一の圧力室が圧力計と一の圧力配管で接続されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の壁面圧力計測構造において、
前記ダクトが、航空機の模型に設けられたインテークダクトであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、風洞試験装置であって、
風洞と、
前記風洞内に気流を発生させる送風機と、
請求項2に記載の壁面圧力計測構造と、
を備え、
前記風洞内で気流を受けたときの前記模型のインテークダクト内部の壁面圧力を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の計測孔の各々と連通された一の圧力室内で圧力が平均化され、この平均化された圧力が一の圧力配管を通じて圧力計で計測される。
そのため、平均化された壁面圧力を直接計測することにより、壁面圧力の平均値を高精度に計測することができる。また、計測孔と圧力計を個別の圧力配管で接続していた従来と異なり、計測点数に依らず一の圧力配管のみで計測を行えるため、圧力配管による干渉荷重を増加させることなく計測点数を増やすことができる。
したがって、ダクト内部の流れが複雑な場合であっても、好適に壁面圧力の平均値を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態における風洞試験装置の概略構成を示す図である。
【
図3】実施形態における模型のうち、インテークダクトの延在方向に沿った断面図である。
【
図4】実施形態におけるインテークダクトの検査面での断面図である。
【
図5】従来の壁面圧力計測構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る壁面圧力計測構造を風洞試験装置に適用した場合の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における風洞試験装置1の概略構成を示す図であり、
図2は、風洞試験装置1に設置される模型3の斜視図である。また、
図3は、模型3のうち、インテークダクト31の延在方向に沿った断面図であり、
図4は、後述する検査面Sでのインテークダクト31の断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態における風洞試験装置1は、航空機に作用する外部荷重等を測定するものであり、航空機を模した模型3と、模型3の機体前方から気流Fを発生させる送風機4とを、風洞2内に備えている。
【0015】
模型3は、風洞2内の測定部に立設された支持部材21から送風方向上流側に向けて突設されたスティング22の先端に、天秤23を介して取り付けられている。
天秤23は、
図2に示すように、模型3の胴体30内部に設けられており、模型3全体に作用する空気力を計測する。
【0016】
模型3に作用する外部荷重は、天秤23で計測される模型3全体に作用する空気力から、模型3のインテークダクト31内部に作用する空力荷重を除外することで算出される。インテークダクト31内部に作用する空力荷重は、実際の航空機では推力の一部と見做されるためである。
インテークダクト31内部に作用する空力荷重は、
図3に示すように、インテークダクト31の出口付近での総圧及び壁面圧力(静圧)から算出される。より詳しくは、インテークダクト31の延在方向と直交する検査面Sにおける総圧及び壁面圧力が計測され、これらの計測値から空力荷重が算出される。
【0017】
このうち、総圧は、多点計測可能なピトー管24によって計測される。このピトー管24は、各先端が検査面S上に位置するように、開口した後端からインテークダクト31内に挿し込まれた状態に配置され、スティング22に固定されている。
【0018】
一方、壁面圧力は、
図4に示すように、インテークダクト31の壁面のうち、検査面S上に形成された複数(本実施形態では8つ)の計測孔32における静圧の平均値として計測される。
具体的に、複数の計測孔32は、検査面Sにおける互いに異なる周方向位置に周上等配に形成されている。これら複数の計測孔32は、その外周側に設けられた環状のチャンバー33に全てが連通されている。そして、このチャンバー33が単一の圧力配管25を介して圧力計26と圧力計測可能に接続されている。
これにより、チャンバー33内で平均化された複数の計測孔32における静圧が圧力計26で計測される。
【0019】
以上のように、本実施形態によれば、複数の計測孔32の各々と連通されたチャンバー33内で圧力が平均化され、この平均化された圧力が一の圧力配管25を通じて圧力計26で計測される。
そのため、平均化された壁面圧力を直接計測することにより、壁面圧力の平均値を高精度に計測することができる。また、計測孔と圧力計を個別の圧力配管で接続していた従来と異なり、計測点数(計測孔32の数量)に依らず単一の圧力配管25のみで計測を行えるため、圧力配管25による干渉荷重を増加させることなく計測点数を増やすことができる。
したがって、インテークダクト31内部の流れが複雑な場合であっても、好適に壁面圧力の平均値を計測することができる。
【0020】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0021】
例えば、上記実施形態では、チャンバー33がインテークダクト31に設けられることとした。しかし、当該チャンバー33は、複数の計測孔32での圧力を好適に平均化させることができればその構成は特に限定されず、例えばインテークダクト31とは別体であってもよいし、環状に設けられていなくともよい。
【0022】
また、上記実施形態では、本発明に係る壁面圧力計測構造を風洞試験装置1に適用して、航空機の模型3におけるインテークダクト31の壁面圧力を計測する場合について説明した。しかし、本発明に係る壁面圧力計測構造は、このような計測例に限定されず、ダクト内部の壁面圧力の計測に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 風洞試験装置
2 風洞
25 圧力配管
26 圧力計
3 模型
30 胴体
31 インテークダクト
32 計測孔
33 チャンバー
4 送風機
F 気流
S 検査面