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特許6993650豚コレラワクチン用組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】豚コレラワクチン用組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/106 20060101AFI20220105BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 39/385 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220105BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61K39/106 ZNA
A61P31/04 171
A61K39/385
A61K47/68
A61K48/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020521575
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 KR2019011915
(87)【国際公開番号】W WO2020060117
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0112445
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519142114
【氏名又は名称】バイオアプリケーションズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOAPPLICATIONS INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】520130373
【氏名又は名称】リパブリック オブ コリア(アニマル アンド プラント クオレンティン エージェンシー)
【氏名又は名称原語表記】REPUBLIC OF KOREA(ANIMAL AND PLANT QUARANTINE AGENCY)
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨンジク
(72)【発明者】
【氏名】アン、ドン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、セ ウン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジェ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、イン-ス
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106519041(CN,A)
【文献】韓国公開特許第2010-1732624(KR,A)
【文献】NCBI GenBank Accession No.BAM75542.1,2013年01月12日
【文献】NCBI GenBank Accession No.BAM66310.1,2012年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 47/00-47/69
A61K 48/00
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4で表される豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質を有効成分として含む、豚コレラ予防用ワクチン組成物。
【請求項2】
前記E2タンパク質は、配列番号18で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
前記E2タンパク質は、Fc断片と融合することによってセルフ免疫増強反応(self-adjuvanting)効果および増加した溶解性を有することを特徴とする 請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
配列番号4で表される豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質を有効成分として含む、豚コレラ予防用飼料組成物。
【請求項5】
配列番号4で表される豚のFc断片をコードするポリヌクレオチドおよび豚コレラ抗原E2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、Fc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質生産用組み換えベクター。
【請求項6】
前記E2タンパク質は、配列番号18で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項5に記載の組み換えベクター。
【請求項7】
前記組み換えベクターは、プロモーター遺伝子、豚コレラ抗原E2タンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびFc断片をコードするポリヌクレオチドが順次に連結されていることを特徴とする 請求項5に記載の組み換えベクター。
【請求項8】
前記プロモーターは、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)由来35Sプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)由来19S RNAプロモーター、植物のアクチンタンパク質プロモーター、ユビキチンタンパク質プロモーター、CMV(Cytomegalovirus)プロモーター、SV40(Simian virus 40)プロモーター、RSV(Respiratory syncytial virus)プロモーター、pEMUプロモーター、MASプロモーター、ヒストンプロモーター、ClpプロモーターおよびEF-1a(Elongation factor-1 alpha)プロモーターよりなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項7に記載の組み換えベクター。
【請求項9】
前記組み換えベクターは、BiP(Chaperone binding protein)をコードするポリヌクレオチドをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の組み換えベクター。
【請求項10】
前記組み換えベクターは、HDEL(His-Asp-Glu-Leu)ペプチドをコードする遺伝子をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の組み換えベクター。
【請求項11】
前記組み換えベクターは、M17の5′UTR(untranslational region)部位遺伝子をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の組み換えベクター。
【請求項12】
前記組み換えベクターは、Fc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質の発現量を増加させることを特徴とする請求項5に記載の組み換えベクター。
【請求項13】
請求項5~12のいずれかに記載の組み換えベクターで形質転換された、形質転換体。
【請求項14】
(a)請求項13に記載の形質転換体を培養する段階と;と
(b)前記形質転換体または培養液からFc断片が融合した豚コレラ抗原E2タンパク質を分離および精製する段階と;を含む、セルフ免疫増強効果を有するFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質の生産方法。
【請求項15】
配列番号4で表される豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質を有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含む豚コレラの予防または治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質生産用発現ベクター、前記発現ベクターで形質転換された形質転換体、前記形質転換体から分離した豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質およびその用途などに関する。
【背景技術】
【0002】
豚コレラとは、古典的な豚コレラウイルス(classical swine fever virus;CSFV)が原因病原体である疾病であって、ヒトや豚以外の他の動物には感染しないが、豚と野生のイノシシでは、一旦発病してしまうと、伝搬性が非常に高く、治療法がなく、感染した豚は、大部分が斃死する致死率が非常に高い伝染病である。豚コレラは、世界動物保健機構(OIE)で非常に重要疾病と分類されており、韓国内でも、家畜伝染病予防法で第1種の家畜伝染病と分類される疾病であって、斃死率と罹患率が非常に高くて、豚コレラの根絶なしには養豚産業の未来を保障できないというほどに予防が重要な問題と認識される伝染病である。韓国では、疾病対策として弱毒生ウイルスであるLOM strainで製造した生ワクチンで予防接種を実施しているが、専門家および第一線の養豚従事者は、絶えずLOMワクチンの病原性および安全性に対する問題を提起してきた(韓国特許登録10-1642727)。
【0003】
LOMワクチン株の安全性に対する問題が提起された代表的な事件は、2002年に豚コレラ清浄化宣言をし、非ワクチン政策をしたが、2002年と2003年に全国的に豚コレラが再発生して、2004年からは、再び全国のすべての豚にLOMワクチン接種を再開したが、この際、妊娠母豚接種で流死産の事例が多く発生してイシュー化になった事件がある。また、1999年から豚コレラ非ワクチン地域である済州島では、2004年に飼料の添加剤に使用する血粉製剤の製品に豚コレラLOMワクチン株が非意図的に汚染されて流通したが、済州島の300個の農家のうち150個の農家のワクチン株感染豚において豚コレラと非常に類似した症状が発生し、豚の剖検時にも実質臓器に特異的な病変症状を示したこともある。最近、2014年度には、済州島で豚コレラLOMワクチン株が間違って流通して妊娠母豚に接種されることによって、流死産と胎児にLOMワクチン株が垂直感染したことが確認されて、ワクチンの安全性に関する問題が再度提起されており、これを代替する効果的なワクチンが要求されるのが現況である。したがって、安定的に豚コレラを効果的に予防できる新規のワクチンの必要性が提起されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記のような従来技術上の問題点を解決するために導き出されたものであって、豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質、これを含むワクチン組成物、およびその製造方法などを提供することをその目的とする。
【0005】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、配列番号4で表される豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質を有効成分として含む豚コレラ予防用ワクチン組成物を提供する。
【0007】
本発明の一具体例において、前記E2タンパク質は、配列番号18で表されるアミノ酸配列を含むことができるが、豚コレラ抗原の種類なら、これに制限されない。
【0008】
本発明の他の具体例において、前記E2タンパク質は、Fc断片と融合することによって、セルフ免疫増強反応(self-adjuvanting)効果および増加した溶解性を有することを特徴とする。前記融合は、Fc断片のN末端またはC末端に抗原がペプチド結合で連結された形態でありうるが、Fc断片と抗原が結合されている形態であれば、これに制限されない。
【0009】
また、本発明は、配列番号4で表される豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質を有効成分として含む豚コレラ予防用飼料組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、配列番号4で表される豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質を有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含む豚コレラの予防または治療方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、配列番号4で表される豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質を有効成分として含む組成物の豚コレラの予防または治療用途を提供する。
【0012】
また、本発明は、配列番号4で表される豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質の豚コレラの予防に用いられる薬剤を生産するための用途を提供する。
【0013】
また、本発明は、配列番号4で表される豚のFc断片をコードするポリヌクレオチドおよび豚コレラ抗原E2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質生産用組み換え発現ベクターを提供する。
【0014】
本発明の一具体例において、前記組み換え発現ベクターは、プロモーター遺伝子、E2抗原をコードするポリヌクレオチド、およびFc断片をコードするポリヌクレオチドの順に、またはプロモーター遺伝子、Fc断片をコードするポリヌクレオチドおよびE2抗原をコードするポリヌクレオチドの順に作動可能に順次に連結され得る。
【0015】
本発明の他の具体例において、前記プロモーターは、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)由来35Sプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)由来19S RNAプロモーター、植物のアクチンタンパク質プロモーター、ユビキチンタンパク質プロモーター、CMV(Cytomegalovirus)プロモーター、SV40(Simian virus 40)プロモーター、RSV(Respiratory syncytial virus)プロモーター、EF-1a(Elongation factor-1 alpha)プロモーター、pEMUプロモーター、MASプロモーター、ヒストンプロモーター、Clpプロモーターなどであるが、これに制限されない。
【0016】
本発明のさらに他の具体例において、前記組み換え発現ベクターは、BiP(Chaperone binding protein)をコードするポリヌクレオチド、HDEL(His-Asp-Glu-Leu)ペプチドをコードする遺伝子、M17の5′UTR(untranslational region)部位遺伝子などをさらに含むことができる。
【0017】
本発明のさらに他の具体例において、前記組み換え発現ベクターは、Fc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質の発現量を増加させ、Fc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質は、セルフ免疫増強効果および増加した溶解性を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記組み換え発現ベクターで形質転換された形質転換体を提供する。
【0019】
本発明の一具体例において、前記形質転換体は、大腸菌、バシルス、サルモネラ、酵母などのような微生物、昆虫細胞、ヒトを含む動物細胞、マウス、ラット、犬、猿、豚、馬、牛などのような動物、アグロバクテリウムツメファシエンス、植物などであってもよく、前記植物は、稲、小麦、麦、とうもろこし、豆、ジャガイモ、小豆、燕麦、およびモロコシを含む食糧作物類;シロイヌナズナ、ハクサイ、ダイコン、唐辛子、イチゴ、トマト、スイカ、キュウリ、キャベツ、マクワウリ、カボチャ、ネギ、タマネギ、およびニンジンを含む野菜作物類;高麗人参、タバコ、木花、ゴマ、サトウキビ、テンサイ、エゴマ、ピーナッツ、およびアブラナを含む特用作物類;およびリンゴの木、梨の木、ナツメの木、桃、ブドウ、ミカン、柿、スモモ、あんず、およびバナナを含む果樹類;およびバラ、カーネーション、菊、ユリ、およびチューリップを含む草花類などであってもよいが、本発明の組み換え発現ベクターで形質転換され得る生命体であれば、これに制限されない。
【0020】
また、本発明は、(a)前記形質転換体を培養する段階と;(b)前記形質転換体または培養液からFc断片が融合した豚コレラ抗原E2タンパク質を分離および精製する段階と;を含むセルフ免疫増強効果を有するFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質の生産方法を提供する。前記形質転換体は、好ましくは細胞自体、または細胞を含む培養物であり得、前記培養液は、好ましくは細胞を培養した後、細胞を除去した培養液でありうるが、本発明の組み換え抗原を含んでいると、これに制限されない。
【発明の効果】
【0021】
本発明による豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質は、セルフ免疫増強効果を有するので、更なる免疫抗原補強剤を使用することなく、少量のワクチン組成物をもって効果的な豚コレラの予防効果を示すことができると共に、抗原の溶解性および安定性を増加させて、抗原の分離および保管が容易である。また、本発明による発現ベクターを利用することによって、E2タンパク質の生産量を顕著に増加させることができるので、ワクチンの高効率生産を可能にするものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施例によるpCAMBIA1300ベクターマップを示す図である。
図2図2は、本発明の一実施例によるpFc融合VP1組み換えタンパク質の発現のための遺伝子の配列を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施例によるpFc融合VP1組み換えタンパク質の発現量をウェスタンブロッティングで確認した結果を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施例によるpFc融合VP1組み換えタンパク質の安定性をウェスタンブロッティングで確認した結果を示す図である。
図5図5は、本発明の一実施例によるpFc融合VP1組み換えタンパク質の溶解性をウェスタンブロッティングで確認した結果を示す図である。
図6図6は、本発明の一実施例によるpFc融合GP5組み換え抗原の溶解性をウェスタンブロッティングで確認した結果を示す図である。
図7図7は、本発明の一実施例によるpFc融合PCV2組み換えタンパク質の溶解性および生産性をウェスタンブロッティングで確認した結果を示す図である。
図8図8は、本発明の一実施例によるpFc融合E2組み換え抗原の生産量を確認した結果を示す図である。
図9図9は、本発明の一実施例によるpFc融合E2組み換え抗原を1回投与し、免疫原性を確認した結果を示す図である。
図10図10は、本発明の一実施例によるpFc融合E2組み換え抗原を2回投与し、免疫原性を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、豚の免疫グロブリンFc断片と豚コレラ抗原E2を結合させる場合、前記断片により抗原の発現量および生産性が増加すると共に、溶解性および安定性が増加することを確認し、前記豚のFc断片と融合した抗原E2、前記豚のFc断片をコードするポリヌクレオチドおよびE2をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび前記発現ベクターを利用した組み換え抗原の生産方法を提供することを目的とする。
【0024】
本明細書において、「Fc断片(Fc fragment)」とは、免疫グロブリンがパパイン(papain)により消化されたとき、重鎖(heavy chain;H chain)部分だけがS-S結合で連結され、抗原結合部位を有しない部分をFc断片と言い、本発明のFc断片は、好ましくは豚のFc断片であり、より好ましくは配列番号4で表される豚のFc断片であるが、目的抗原と融合したとき、目的抗原の発現量および溶解性を増加させるFc断片であれば、これに制限されない。また、本発明のFc断片は、配列番号4の変異体が本発明の範囲に含まれる。具体的に、前記遺伝子は、配列番号4の塩基配列と90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の配列相同性を有する塩基配列を含むことができる。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、最適に配列された配列と比較領域を比較することによって確認され、比較領域でポリヌクレオチド配列の一部は、さらに、配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べて追加または削除(すなわち、ギャップ)を含むことができる。
【0025】
本明細書において、「抗原(antigen)」とは、体内で免疫反応を起こすすべての物質を総称し、好ましくはウイルス、化合物質、細菌、花粉、癌細胞、エビなどまたはこれらの一部のペプチドまたはタンパク質であるが、体内で免疫反応を起こすことができる物質であれば、これに制限されない。
【0026】
本明細書において、「豚コレラウイルス(classical swine fever virus)」は、Pestivirusに属する約12.3~12.5kb大きさのenvelope-associated glycoprotein(E protein)の一種であるE2 glycoproteinに抗原決定部位を有していて、豚コレラウイルスのE2タンパク質は、ウイルス中和抗体反応を誘発し、免疫学的に豚コレラの防御機作に重要な役割をするものと知られている。前記豚コレラウイルスのE2タンパク質は、gp55とも称し、好ましくは配列番号18のアミノ酸配列で表される。また、本発明のE2タンパク質は、配列番号17の変異体が本発明の範囲に含まれる。具体的に、前記遺伝子は、配列番号17の塩基配列と70%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上の配列相同性を有する塩基配列を含むことができる。
【0027】
本明細書において、「ワクチン(vaccine)」とは、生体に免疫反応を起こす抗原を含有する生物学的な製剤であって、感染症の予防のためにヒトや動物に注射したり、経口投与することによって、生体に免疫ができるようにする免疫源をいう。前記動物は、ヒトまたは非ヒト動物であって、前記非ヒト動物は、豚、牛、馬、犬、山羊、羊などを指すが、これに制限されない。
【0028】
本明細書において、「目的タンパク質(target protein)」とは、本発明による遺伝工学的方法で生産しようとするタンパク質を言うものであり、好ましくは商業的用途に用いられている大量で生産される必要があるタンパク質であり、より好ましくは抗原、抗体、抗体の断片、構造タンパク質、調節タンパク質、転写因子、毒素タンパク質、ホルモン、ホルモン類似体、サイトカイン、酵素、酵素の断片、酵素阻害剤、輸送タンパク質、受容体(receptor)、受容体の断片、生体防御誘導物質、貯蔵タンパク質、移動タンパク質(movement protein)、エックスプロイティブタンパク質(exploitive protein)、レポータータンパク質などであるが、本発明の組み換え発現ベクターで製造され得るタンパク質であれば、これに制限されない。
【0029】
本明細書において、「組み換えベクター(recombinant vector)」とは、ベクター内に挿入された異種の核酸によりコードされるペプチドまたはタンパク質を発現できるベクターを示すものであり、好ましくは豚のFc断片が融合した目的抗原を発現できるように製造されたベクターを意味する。前記「ベクター」は、試験管内、生体外または生体内で宿主細胞へ塩基の導入および/または転移のための任意の媒介物を言い、他のDNA断片が結合して結合された断片の複製をもたらすことができる複製単位(replicon)であってもよく、「複製単位」とは、生体内でDNA複製の自家ユニットとして機能する、すなわち、自らの調節により複製可能な、任意の遺伝的単位(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルスなど)を言う。本発明の組み換え発現ベクターは、好ましくはRNA重合酵素が結合する転写開始因子であるプロモーター(promoter)、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適合したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列と転写および解読の終結を調節する配列、ターミネータなどを含むことができ、より好ましくはタンパク質の合成量を増加させるためのM17の5′UTR部位遺伝子、目的タンパク質を小胞体に移動させるためのBiP遺伝子、タンパク質が小胞体内で安定的に維持され得るようにタンパク質の分解を最小化するためのHDEL遺伝子などをさらに含むことができ、より好ましくは組み換えタンパク質を容易に分離するためのタグ用遺伝子、形質転換体を選別するための抗生剤耐性遺伝子などの選別用マーカー遺伝子などをさらに含むことができる。
【0030】
前記タグ用遺伝子は、本発明のタグタンパク質であるFc断片以外にさらに容易な分離のために含まれるものであって、代表的にAviタグ、Calmodulinタグ、polyglutamateタグ、Eタグ、FLAGタグ、HAタグ、Hisタグ、Mycタグ、Sタグ、SBPタグ、IgG-Fcタグ、CTBタグ、Softag 1タグ、Softag 3タグ、Strepタグ、TCタグ、V5タグ、VSVタグ、Xpressタグなどが含まれ得、前記選別用マーカー遺伝子には、代表的にグリホサート(glyphosate)またはホスフィノスリシン(phosphinothricin)のような除草剤抵抗性遺伝子、カナマイシン(kanamycin)、G418、ブレオマイシン(Bleomycin)、ハイグロマイシン(hygromycin)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)のような抗生剤耐性遺伝子、aadA遺伝子などが含まれ得、前記プロモーターには、代表的にpEMUプロモーター、MASプロモーター、ヒストンプロモーター、Clpプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)由来35Sプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)由来19S RNAプロモーター、植物のアクチンタンパク質プロモーター、ユビキチンタンパク質プロモーター、CMV(Cytomegalovirus)プロモーター、SV40(Simian virus 40)プロモーター、RSV(Respiratory syncytial virus)プロモーター、EF-1α(Elongation factor-1 alpha)プロモーターなどが含まれ得、前記ターミネータは、代表的にノパリンシンターゼ(NOS)、稲アミラーゼRAmy1 Aターミネータ、パセオリンターミネータ、アグロバクテリウムツメファシエンスのオクトパイン(Octopine)遺伝子のターミネータ、大腸菌のrrnB1/B2ターミネータなどであるが、前記例は、例示に過ぎず、これに制限されない。
【0031】
本明細書において、「融合抗原(fusion antigen)」とは、豚のFc断片と目的抗原が融合した組み換え抗原を意味するものであり、好ましくは前記Fc断片と融合することによって溶解性が増加し、同時に免疫原性が増加した組み換えタンパク質を意味するが、本発明の豚のFc断片と結合した組み換え抗原であれば、これに制限されない。
【0032】
本明細書において、「形質転換(transformation)」とは、注入されたDNAにより生物の遺伝的な性質が変わることを総称し、「形質転換体(transgenic organism)」とは、分子遺伝学的方法で外部の遺伝子を注入して製造された生命体であって、好ましくは本発明の組み換え発現ベクターにより形質転換された生命体であり、前記生命体は、微生物、真核細胞、昆虫、動物、植物など生命がある生物であれば、制限がなく、好ましくは大腸菌、サルモネラ、バシルス、酵母、動物細胞、マウス、ラット(rat)、犬、猿、豚、馬、牛、アグロバクテリウムツメファシエンス、植物などであるが、これに制限されない。前記形質転換体は、形質転換(transformation)、形質感染(transfection)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)-媒介形質転換方法、パーティクルガン衝撃法(particle gun bombardment)、超音波処理法(sonication)、電気穿孔法(electroporation)およびPEG(Polyethylen glycol)-媒介形質転換方法などの方法で製造され得るが、本発明のベクターを注入できる方法であれば、制限がない。
【0033】
本明細書において、「溶解性(solubility)」とは、目的タンパク質またはペプチドが人体に投与するのに適した溶媒に溶解することができる程度を意味する。具体的には、特定の温度で所定の溶媒に対して溶質が飽和した程度を示すものでありうる。溶解性は、溶質の飽和濃度を決定することによって測定することができ、例えば溶媒に溶質を過量に添加し、これを撹拌し、濾過した後、濃度をUV分光器またはHPLCなどを使用して測定することができるが、これに制限されるものではなく、高い溶解性は、組み換えタンパク質の分離精製に有利であり、組み換えタンパク質の凝集が抑制されて、組み換えタンパク質の生理活性または薬理的な活性を維持するのに長所を有する。
【0034】
本明細書において、「予防(prevention)」とは、本発明によるワクチン組成物の投与によって豚コレラを抑制させたり、発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0035】
本明細書において、「治療(treatment)」とは、本発明による豚のFc断片と目的抗原が融合した組み換えタンパク質の投与によって豚コレラを抑制させたり、その疾患の程度を緩和させたり、治癒または治療するすべての行為を意味する。
【0036】
本明細書において、「個体(individual)」とは、本発明のワクチン組成物が投与され得る対象を言い、その対象には制限がない。
【0037】
本発明の「ワクチン組成物」は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用することができる。製剤化する場合には、普通使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製することができる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記レシチン類似乳化剤に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製することができる。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などを使用することができ、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水溶性製剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤が含まれる。非水溶性製剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどを使用することができる。また、さらに既存に知られている「免疫抗原補強剤(adjuvant)」をさらに含むことができる。前記補強剤は、当該技術分野に知られているものであれば、いずれのものでも制限なしに使用することができるが、例えばフロイント(Freund)の完全補助剤または不完全補助剤をさらに含んで、その免疫性を増加させることができる。
【0038】
本発明のワクチン組成物または薬学的組成物は、それぞれ、通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤または滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用することができる。
【0039】
本発明によるワクチン組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投与が好ましい。本願に使用される用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。また、本発明のワクチン組成物は、直腸投与のための坐剤の形態で投与され得る。
【0040】
本発明によるワクチン組成物または薬学的組成物の投与量は、個体の年齢、体重、性別、身体状態などを考慮して選択される。特別な副作用なしに個体に免疫保護反応を誘導するのに必要な量は、免疫原として使用された組み換えタンパク質および賦形剤の任意存在によって多様である。一般的にそれぞれの用量は、本発明の組み換えタンパク質の滅菌溶液ml当たり0.1~1,000μgのタンパク質、好ましくは0.1~100μgを含有する。ワクチン組成物の場合には、必要に応じて初期用量に引き続いて任意に繰り返された抗原刺激を行うことができる。
【0041】
本明細書において、「免疫抗原補強剤(adjuvant)」とは、一般的に抗原に対する体液および/または細胞免疫反応を増加させる任意の物質を示し、「セルフ免疫増強反応(self-adjuvanting)」とは、既存の抗原と比較して組み換え抗原自体が抗原に対する体液および/または細胞免疫反応を増加させる反応を意味し、好ましくは抗原に豚のFc断片を結合させることによって、抗原の免疫原性が増加したことを意味する。
【0042】
本発明の「飼料組成物」は、本発明の豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質を含む飼料であって、前記飼料としては、豚肉、牛肉、鶏肉などの副産物をはじめとして、とうもろこし、米、一般わら、野草、牧草、エンシレージ、乾草、山野草などがあるが、これに制限されるものではなく、家畜の飼育に使用される飼料であれば、制限がない。このような飼料に本発明のE2タンパク質を添加して配合する方法としては、機械的混合、吸着、吸藏などの方法があるが、これに制限されるものではない。
【実施例
【0043】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0044】
[実施例]
実施例1:pFc融合VP1組み換えタンパク質発現ベクターの製造
目的タンパク質の発現量を増加させると同時に、溶解性を改善して、分離精製効率を高めた組み換えタンパク質を製造するための発現ベクターを製造するために、豚の免疫グロブリンFc断片(porcine Fc fragment;pFc)のpFc1(配列番号1)、pFc2(配列番号3)、またはpFc3(配列番号5)を用いて発現ベクターを製作した。より詳しくは、図1および図2に示されたように、pCAMBIA1300ベクターのCaMV35Sプロモーター遺伝子とNOSターミネータ(terminator)との間にM17の5′UTR(untranslational region)部位遺伝子(配列番号7)、BiP(chaperone binding protein)タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号8)、口蹄疫ウイルス(Food-and-mouth disease virus;FMDV)のVP1遺伝子(配列番号9);pFc断片をコードするポリヌクレオチド;およびHDEL(His-Asp-Glu-Leu)タンパク質をコードするポリヌクレオチドを順にクローニングして、発現ベクターを製作した。pFc断片は、それぞれ、pFc1、pFc2、またはpFc3を挿入して、互いに異なる発現ベクターを製造した。
【0045】
実施例2:pFc融合VP1組み換えタンパク質の発現実験
2.1.pFc融合VP1組み換えタンパク質の発現量の確認実験
実施例1と同じ方法で製造されたpFc融合VP1組み換えタンパク質発現ベクターのタンパク質の発現量を確認するために、前記ベクターをシロイヌナズナの葉から分離した原形質体(protoplast)にPEG-媒介形質転換(PEG-mediated transformation)方法で導入して形質転換体を製造した後に、培養された原形質体を収集および溶解して、これから発現する組み換えタンパク質であるBiP:FMDV-VP1:pFc発現様相をpFcを認識するanti-pig secondary antibody(1:5,000,Abcam)を用いてウェスタンブロッティングで確認した。より詳しくは、細胞溶解液30μLをSDS試料バッファーと混合した後に加熱した。そして、10%SDS-PAGEゲルに電気泳動して、サイズ別にタンパク質を分離し、分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた後に、5%スキムミルク(skim milk)を用いてブロッキング段階を経た後に、抗体とタンパク質を結合させ、ECL溶液を製造社で提供する方法によって処理して、pFc融合組み換えタンパク質を確認した。その結果は、図3に示した。
【0046】
図3に示されたように、多様なpFc断片のうちpFc2断片を結合させた組み換えタンパク質の発現量が最も高いことを確認した。前記結果を通じて、同じ免疫グロブリン断片であるとしても、同じ効果を示さないことを確認することができた。
【0047】
2.2.pFc融合VP1組み換えタンパク質の安定性の確認実験
実施例1と同じ方法で製造されたpFc融合組み換えタンパク質発現ベクターのタンパク質安定性を確認するために、組み換えタンパク質を抽出した当時試料(0)と4℃で一時間の間保管した後の試料(1)をそれぞれ実施例2.1と同じ方法でウェスタンブロッティングを実施して確認した。その結果は、図4に示した。
【0048】
図4に示されたように、pFc2断片が結合した組み換えタンパク質の発現量が最も高く、安定性も高いことを確認した。
【0049】
2.3.pFc2融合VP1組み換えタンパク質の溶解性の確認実験
実施例1と同じ方法で製造されたpFc2融合組み換えタンパク質発現ベクターのタンパク質溶解性(solubility)を確認するために、前記ベクターで形質転換されたアグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)をタバコ植物(Nicotiana benthamiana)の葉に接種する一過性発現(transient expression)方式でpFc2融合組み換えタンパク質(BiP:FMDV-VP1:pFc2)を発現させた後に、植物の葉からタンパク質を抽出して遠心分離した後に、溶液に含まれている可溶性(soluble)形態(S)のタンパク質とペレット(pellet;P)部分にあるタンパク質を用いて実施例2.1と同じ方法でウェスタンブロッティングを実施した。対照群としては、既存に知られているセルロース結合モジュール(cellulose binding module;CBM3)をコードするポリヌクレオチド(配列番号13)をpFc断片の代わりに融合させた組み換えタンパク質を利用した。その結果は、図5に示した。
【0050】
図5に示されたように、pFc2融合組み換えタンパク質は、ペレット部分では観察されない反面、溶液内に含まれていることを確認した。しかしながら、セルロース結合ドメインを融合させた組み換えタンパク質の場合には、ペレット部分で組み換えタンパク質が相当数観察された。前記結果を通じて、pFc2融合組み換えタンパク質は、目的タンパク質とpFc2断片の結合による構造的変形を通じて溶解性が増加したことを確認することができ、これにより、pFc2融合組み換えタンパク質は、分離精製に有利であり、組み換えタンパク質の凝集が抑制されて、組み換えタンパク質の生理活性または薬理的な活性を維持するのに効果的であることを確認することができた。
【0051】
実施例3:pFc2融合GP5組み換え抗原溶解性の確認実験
pFc2断片を豚繁殖・呼吸障害症候群(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome;PRRS)のGP5抗原タンパク質と融合させるために、豚GP5抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号11)を実施例1の組み換えベクター内に含まれている口蹄疫ウイルスのVP1遺伝子の代わりに挿入して、GP5:pFc2組み換え抗原を発現する組み換えベクターを製造した。そして、前記ベクターで形質転換されたアグロバクテリウムツメファシエンスをタバコ植物の葉に接種する一過性発現方式でpFc2融合GP5組み換え抗原(GP5:pFc2)を発現させた後に、植物の葉からタンパク質を抽出して遠心分離した後に、溶液に含まれている可溶性形態(S)のタンパク質とペレット(P)部分にあるタンパク質を用いて実施例2.1と同じ方法でウェスタンブロッティングを実施した。対照群としては、pFc断片の代わりにCBM3(配列番号14)が融合したGP5組み換え抗原を利用し、CBM3融合GP5組み換え抗原の場合には、ウェスタンブロッティングのためにHA抗体を用いて実験を進めた。その結果は、図6に示した。
【0052】
図6に示されたように、pFc2融合GP5組み換え抗原は、ペレット部分では若干のタンパク質が観察される反面、ほとんどが溶液内に含まれていることを確認した。しかしながら、CBM3を融合させたGP5組み換え抗原の場合には、ペレット部分で組み換えタンパク質が相当数観察された。前記結果を通じて、pFc2融合組み換えタンパク質は、タンパク質の種類に関係なく、溶解性が増加することを確認することができた。
【0053】
前記結果を通じて、豚の免疫グロブリンFc断片、特に、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むpFc2断片を目的タンパク質に融合させることによって、目的タンパク質の発現量を増加させると同時に、溶解性を増加させて、目的タンパク質を安定的に容易に分離および保管できることを確認することができた。
【0054】
実施例4:pFc2融合PCV2組み換えタンパク質の生産性および溶解性の確認実験
pFc2断片をブタサーコウイルス2型(Porcine circovirus Type 2;PCV2)タンパク質と融合させるために、ブタサーコウイルス2型タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号15)を実施例1の組み換えベクター内に含まれている口蹄疫ウイルスのVP1遺伝子の代わりに挿入して、PCV2:pFc2組み換えタンパク質を発現する組み換えベクターを製造した。そして、前記ベクターで形質転換されたアグロバクテリウムツメファシエンスをタバコ植物の葉に接種する一過性発現方式でpFc2融合PCV2組み換えタンパク質を発現させた後に、植物の葉からタンパク質を抽出して遠心分離した後に、溶液に含まれている可溶性形態(S)のタンパク質とペレット(P)部分にあるタンパク質を用いて実施例2.1と同じ方法でウェスタンブロッティングを実施した。対照群としては、pFc断片の代わりにHis tagが融合したPCV2組み換えタンパク質を利用し、His-tag融合PCV2組み換えタンパク質の場合には、ウェスタンブロッティングのためにanti-His抗体を用いて実験を進めた。その結果は、図7に示した。
【0055】
図7に示されたように、pFc2融合PCV2組み換えタンパク質の場合には、ほとんどが溶液内に含まれていると共に、His-tagが融合したPCV2組み換えタンパク質と比較して生産量が顕著に増加したことを確認した。
【0056】
実施例5:pFc2融合E2組み換えタンパク質の発現実験
5.1.pFc2融合抗原タンパク質の分離
pFc2断片を抗原タンパク質に融合して使用可能であるかを確認するために、豚コレラ抗原であるE2タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号17)を実施例1の組み換えベクター内に含まれている口蹄疫ウイルスのVP1遺伝子の代わりに挿入して、BiP:E2:pFc2組み換えタンパク質を発現する組み換えベクターを製造した。そして、製造された組み換えベクターをアグロバクテリウム-媒介形質転換方法でシロイヌナズナに形質転換させ、カナマイシンに対する耐性を有するシロイヌナズナを選別し、世代進展を通じてpFc2が融合したE2組み換えタンパク質の発現が安定したホモ種子を最終確保して、形質転換植物体を製造した。そして、タンパク質の抽出に普遍的に使用されるタンパク質抽出バッファーを用いて最終確保された形質転換植物体8gからタンパク質を分離し、protein A-sepharose columnを装着したAKTA prime(GE Healthcare)を用いてpFc融合E2組み換えタンパク質を分離した。そして、対照群としては、pFc断片の代わりに、セルロース結合ドメイン(配列番号19)を融合させたBiP:E2:CBD組み換えタンパク質を使用した。CBDが融合したE2組み換えタンパク質は、非結晶セルロース(amorphous cellulose;AMC)を使用して形質転換植物体5gから分離した。そして、分離した組み換えタンパク質は、リン酸緩衝溶液(phosphate buffered saline;PBS)を用いて透析後に遠心フィルターチューブ(Centrifugal filter tube)を使用して濃縮した。そして、分離した組み換えタンパク質の量を定量するために、SDS-PAGEを実施した後に、クマシブルー(coomassie blue)で染色した。この際、BSA(bovine serum albumin)を利用した標準曲線(standard curve)を用いて組み換えタンパク質を定量した。その結果は、図8に示した。
【0057】
図8に示されたように、セルロース結合ドメインが融合したE2組み換え抗原の場合には、植物体1g当たり約30μgが生産される反面、pFc2断片が融合したE2組み換え抗原の場合には、植物体1g当たり302μgが生産されることを確認した。前記結果を通じて、pFc2断片を用いて目的抗原の発現量を10倍以上増加させることができることを確認した。
【0058】
5.2.pFc2融合E2組み換え抗原の免疫原性およびウイルス中和能確認実験
pFc2融合E2組み換え抗原が生体内で抗体を誘導して免疫原性およびウイルス中和能を有するかを確認するために、6週齢の雄性C57BL/6Jマウスを用いて実験を進めた。より詳しくは、実験群マウスにpFc2融合E2組み換え抗原1μgを1回(6週齢)、または2回(6週齢および8週齢)投与し、陰性対照群のマウスには、リン酸塩緩衝溶液を投与した。そして、陽性対照群としては、セルロース結合ドメインが融合したE2組み換え抗原を実験群と同じ量で同じ時期に投与した。それぞれの抗原投与時には、同量のフロイント免疫抗原補強剤(Freund’s adjuvant)を混合して投与し、1回投与群には、補助剤(complete adjuvant)を、2回投与群には、1次には補助剤を、2次には不完全補助剤(incomplete adjuvant)を投与した。そして、実験を始める時点と抗原を投与してから1週間後から毎週採血して豚コレラウイルスに対する臨床診断用抗体キット(CSFV-ab ELISA Kit、MEDIAN Diagnostic)を用いて投与抗原に対する特異抗体の生成の有無および抗体の持続性を確認した。2回投与群は、2次投与をすべて完了した時点から1週間後に採血を始めた。それぞれの群ごとに5匹のマウスを用いて実験を進め、その結果は、表1、図9および図10に示した。表1のS/P値は、0.14以上の値である場合には、陽性と判定し、0.14未満の値である場合には、陰性と判定した。
【0059】
【表1】
【0060】
図9に示されたように、抗原を1回投与したとき、pFc2融合E2組み換え抗原の場合には、投与後1週間が経過した時点から高い反応性を示し、反応性が8週以上維持されることを確認した。他方で、セルロース結合ドメインが融合したE2組み換え抗原の場合には、陽性値を示すが、その反応性がpFc2融合E2組み換え抗原と比較して低いことを確認した。
【0061】
図10および表1に示されたように、抗原を2回投与したときは、セルロース結合ドメインが融合したE2組み換え抗原の場合にも、反応性が1回投与時と比較して増加したが、pFc2融合E2組み換え抗原と比較したときには、依然として反応性が低いことを確認した。
【0062】
また、同じマウスの血清試料は、農林畜産検疫本部に依頼して、ウイルス中和能を確認した。その結果は、表2に示した。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示されたように、セルロース結合ドメインが融合したE2組み換え抗原の場合には、抗原の1回投与時、一部のマウスでは陰性値を示すが、pFc2融合E2組み換え抗原の場合には、1回投与時や2回投与時にいずれも高い力価のウイルス中和能を示すことを確認した。
【0065】
5.3.pFc2融合E2組み換え抗原のウイルス中和能の確認実験
pFc2融合E2組み換え抗原が子豚(piglet)においても同一に高い力価のウイルス中和能を示すかを確認するために、豚コレラ抗体陰性の豚4頭を選別して、pFc2融合E2組み換え抗原を2回投与し、2週間隔で獲得された血清を農林畜産検疫本部に依頼して、ウイルス中和能を確認した。その結果は、表3に示した。
【0066】
【表3】
【0067】
表3に示されたように、実施例3.2のマウスを用いて進めた実験と同一に、すべての子豚において陽性値を示すことを確認した。
【0068】
前記結果を通じて、pFc2断片を融合して製造した組み換え抗原の場合には、既存のセルロース融合E2組み換え抗原と比較して抗原の生産性が増加し、組み換え抗原の免疫反応が速いと共に、反応性が顕著に増加することを確認することができた。前記結果を通じて、pFc2断片がセルフ免疫増強反応(self-adjuvanting)効果を示して、既存の抗原にpFc2断片を融合させることによって、セルフ免疫抗原補強剤(self-adjuvant)効果を示して、目的抗原の免疫原性を顕著に増加させることができると共に、生産性および安定性を増加させることができることを確認することができた。また、前記pFc2融合E2組み換え抗原を新規の豚コレラワクチン組成物として使用可能であることを確認することができた。
【0069】
以下、本発明の薬学的組成物および飼料組成物の製剤例を説明するが、これは、本発明を限定しようとするものではなく、ただ具体的に説明しようとするものである。
【0070】
製剤例1.薬学的組成物の製造
1.1.散剤の製造
pFc2融合E2組み換え抗原 20mg
乳糖 100mg
タルク 10mg
【0071】
前記の成分を混合し、気密袋に充填して、散剤を製造する。
【0072】
1.2.錠剤の製造
pFc2融合E2組み換え抗原 10mg
トウモロコシのでんぷん 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
【0073】
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法によって打錠して錠剤を製造する。
【0074】
1.3.カプセル剤の製造
pFc2融合E2組み換え抗原 10mg
結晶性セルロース 3mg
ラクトース 14.8mg
マグネシウムステアレート 0.2mg
【0075】
通常のカプセル剤の製造方法によって前記の成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填して、カプセル剤を製造する。
【0076】
1.4.注射剤の製造
pFc2融合E2組み換え抗原 10mg
マンニトール 180mg
注射用滅菌蒸留水 2,974mg
NaHPO2HO 26mg
【0077】
通常の注射剤の製造方法によって1アンプル当たり(2ml)前記の成分含量で製造する。
【0078】
1.5.液剤の製造
pFc2融合E2組み換え抗原 20mg
異性化糖 10g
マンニトール 5g
精製水 適量
【0079】
通常の液剤の製造方法によって精製水にそれぞれの成分を加えて溶解させ、レモン香を適正量加えた後、前記の成分を混合した後、精製水を加えて、全体を100mLに調節した後、茶色のビンに充填して、滅菌させて、液剤を製造する。
【0080】
製剤例2.飼料組成物の製造
pFc2融合E2組み換え抗原 100mg
ビタミンE 0.7mg
L-カルニチン 0.7mg
【0081】
通常の飼料の製造方法によって前記成分を混合して飼料を製造する。
【0082】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の豚のFc断片と融合した豚コレラ抗原E2タンパク質は、セルフ免疫増強効果を示すと共に、抗原の溶解性および安定性が増加してワクチンの安定性が増加すると共に、本発明による発現ベクターを利用することによって、豚コレラ抗原E2タンパク質の生産量を顕著に増加させることができるので、豚コレラワクチンの生産に効果的に使用され得るものと期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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