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特許6993657駐車場内車両スタック防止方法および円板状補強具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】駐車場内車両スタック防止方法および円板状補強具
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/24 20060101AFI20220105BHJP
   E01C 5/14 20060101ALI20220105BHJP
   B60B 39/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
E01C11/24
E01C5/14
B60B39/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021106662
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2021-06-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318008716
【氏名又は名称】株式会社スペース二十四インフォメーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107674
【弁理士】
【氏名又は名称】来栖 和則
(72)【発明者】
【氏名】吉川 明宏
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-102604(JP,U)
【文献】特開2008-261112(JP,A)
【文献】特開2014-163069(JP,A)
【文献】特開平08-218305(JP,A)
【文献】実開昭52-081730(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第109594812(CN,A)
【文献】特開昭64-066302(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0012358(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0122914(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/24
E01C 5/14
B60B 39/02
E04H 6/00
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場の地盤の表層部を部分的にかつ可逆的に補強することによって前記駐車場内で車両がスタックすることを防止する方法であって、
複数の円板状補強具を準備する準備工程と、
それら準備された円板状補強具を前記駐車場の地盤の表面に、複数の敷設条件を満たすように敷設する敷設工程と
を含み、
前記複数の敷設条件は、
(a)前記複数の円板状補強具が、前記車両に想定される左タイヤ軌跡および右タイヤ軌跡に沿ってそれぞれ、離散的に一列を成すように配列されるという条件と、
(b)前記複数の円板状補強具が、前記左右のタイヤ軌跡の間で互い違いとなるように配列されるという条件と
(c)前記複数の円板状補強具が、前記左タイヤ軌跡および右タイヤ軌跡に沿ってそれぞれ、前後方向に隙間なく並ぶか、または、円板状補強具の直径の約50%に匹敵する寸法、約30%以上約50%未満に匹敵する寸法もしくは約10%以上約30%未満に匹敵する寸法を有する隙間を隔てて並ぶという条件と
を含む駐車場内車両スタック防止方法。
【請求項2】
前記複数の敷設条件は、さらに、
(d)各円板状補強具が、それの概して平坦な上側部において露出する一方、それの下側部において前記地盤に係留させられるという条件と、
(e)各円板状補強具が、それに上向きの外力が作用すると、前記地盤から離脱可能であるという条件と
のうちの少なくとも一方を含む請求項1に記載の駐車場内車両スタック防止方法。
【請求項3】
前記敷設工程は、前記複数の円板状補強具を前記駐車場の地盤の表面に、それら円板状補強具を真横から見た場合に、それら円板状補強具が互い違いに隙間なく並ぶか、または、隙間を隔てて並ぶように敷設する工程を含む請求項1または2に記載の駐車場内車両スタック防止方法。
【請求項4】
駐車場内の地盤の表層部を部分的にかつ可逆的に補強することによって前記駐車場内で車両がスタックすることを防止するために前記地盤の表面に敷設される円板状補強具であって、
上面と下面とを有する円板部と、
その円板部を前記表層部に係留させるための係留具と
を含み、
前記係留具は、前記円板部の下面から軸方向に突出するが、前記円板部を軸方向に投影して得られるシルエットから半径方向外向きに突出しない形状を有し、
その係留具のうち軸方向に延びる中心部は、前記地盤の土壌に対して食い込んで投錨効果を発揮する中空部材として構成される円板状補強具。
【請求項5】
前記円板部は、軸方向に貫通する貫通穴を有しており、
前記係留具は、
前記貫通穴の内径と同径またはそれより小径の外径を有するとともに前記円板部の厚さ寸法より長い長さ寸法を有する円筒部と、
その円筒部の一端において半径方向外向きに張り出すフランジと
を含み、
前記円筒部が前記円板部の上面から前記貫通穴内に、前記フランジが前記円板部の上面に突き当たるまで挿入されることによって前記係留具が前記円板部に組み付けられ、それにより、前記円筒部のうちの先端部が前記円板部の下面から突出し、
前記円筒部のうち、その突出する部分が前記地盤内に進入し、それにより、前記円板状補強具が前記地盤に係留させられる請求項4に記載の円板状補強具。
【請求項6】
前記円板部は、前記上面および下面と、外周面と、前記上面と前記外周面との間の上側円周縁と、前記下面と前記外周面との間の下側円周縁とを含み、
前記上側円周縁および下側円周縁は、いずれも、面取りされている請求項4または5に記載の円板状補強具。
【請求項7】
前記円板部は、外周面を有し、その外周面は、半径方向外向きに凸となる曲面を成している請求項4または5に記載の円板状補強具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場内で車両がスタックすることを防止する技術に関し、特に、駐車場の地盤を補強する技術の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーナによって所有される土地が売却される可能性があるかまたはその予定があるとき、その売却までの間、その土地は遊休地または空地となる。そこで、オーナは、その売却までの間、その土地を駐車場としてユーザに貸し出して賃料収入を得るために、その土地を利用して暫定的に駐車場を経営する場合がある。この場合、その駐車場経営は、土地オーナが個人で行う場合もあれば専門の運営業者に委託する場合もある。
【0003】
駐車場経営の形態の種類の如何を問わず、土地オーナが、遊休地を更地(例えば、地面が土のままである未舗装の土地)のまま駐車場として利用することを希望し、砂利舗装、コンクリート舗装、アスファルト舗装などの整地を行ったうえで駐車場として利用することに消極的である場合がある。
【0004】
この場合、その駐車場の原地盤が軟弱であるとかその地盤の水はけが不良であると、降雨、降雪などの悪天候中またはその後に、地盤表層に少なくとも局所的に水溜りができてその場所がぬかるむ(泥化する)という不都合が発生する可能性がある。
【0005】
このように、駐車場にぬかるみが発生すると、その駐車場に車両が入場する際にもその駐車場から退場する際にも、車両のタイヤが地盤面に対してグリップ力を失い、タイヤがスリップしてやがて空転し、その結果、車両が駐車場内において立ち往生(車両が身動きできないこと)すなわちスタックしてしまう可能性がある。
【0006】
ところで、駐車場の地盤面をスリップし難くする対策として、セメント系固化材、砕石や砂利を原地盤の土壌改良材(土壌補強材、土壌強化材)として地表に散布するという対策が存在する。
【0007】
しかし、土地オーナは、駐車場を完全に更地として利用することに固執し、そのため、そのような対策を採用することについてすら消極的である場合もある。
【0008】
一方、車両のスタックに関連する技術として、従来から、車両がスタックしてしまうことを防止ないしは予防する技術(例えば、特許文献1および2参照。)と、車両がスタックしたときにそのスタックから車両が脱出することを支援する技術(例えば、特許文献3および4参照。)とが存在する。
【0009】
具体的には、特許文献1は、傾斜路でも車両がスリップすることを防止するために、駐車場スペースなどの地盤を良好なものとして確保するために軟弱地盤に一面に敷鉄板(連続体)を敷設する技術を開示している。
【0010】
特許文献2は、車両のスリップを防止するために、軟弱地盤上にロードマットを敷設する技術を開示している。
【0011】
特許文献3は、悪路上での走行中に車両がスタックしたときに、その車両のタイヤと路面との間にバンド(連続体)状の脱輪脱出具を挿入する技術を開示している。
【0012】
特許文献4は、砂利道、泥道、ぬかるみ、雪道等の軟弱地盤において車両がスタックしたときに、その車両のタイヤと軟弱地盤の表面との間にバンド(連続体)状のタイヤ脱出具を挿入する技術を開示している。
【0013】
それら特許文献1-4は、いずれも、車両のスタックを防止または解消するために、タイヤと接地面との間に、連続体を、車両の走行軌跡またはタイヤの走行軌跡に沿って介在させてタイヤのグリック力を回復させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2016-14260号公報
【文献】実用新案登録第3166375号公報
【文献】特開2000-16008号公報
【文献】特許第3016068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者は、前述のように、土地オーナが駐車場を更地として利用することを希望する場合に、その駐車場の原地盤が軟弱であっても、そのことが原因でその駐車場内において車両がスタックしてしまうことを防止することを可能にする対策について研究した。
【0016】
その結果、本発明者は、駐車場の設営段階において、土壌改良剤に代えて簡単な道具を簡単な作業で駐車場の地盤表面に敷設することにより、駐車場の解体撤去段階において、簡単な作業でありながら駐車場の地盤を完全に現状回復できる(前記道具が使命を終えて撤去されたならば地盤においてその道具の補強効果が消滅する)ように、すなわち、駐車場の地盤を可逆的に補強することが重要であることに気が付いた。
【0017】
以上説明した事情を背景とし、本発明は、駐車場内で車両がスタックすることを防止する技術であって、ある土地が駐車場としての使用を終えるとその土地を使用前の状態に復元することが容易であることを条件に、駐車場の地盤を補強する技術を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
その課題を解決するために、本発明の第1の側面によれば、駐車場の地盤の表層部を部分的にかつ可逆的に補強することによって前記駐車場内で車両がスタックすることを防止する方法であって、
複数の円板状補強具を準備する準備工程と、
それら準備された円板状補強具を前記駐車場の地盤の表面に、複数の敷設条件を満たすように敷設する敷設工程と
を含み、
前記複数の敷設条件は、
(a)前記複数の円板状補強具が、前記車両に想定される左タイヤ軌跡および右タイヤ軌跡に沿ってそれぞれ、離散的に一列を成すように配列されるという条件と、
(b)前記複数の円板状補強具が、前記左右のタイヤ軌跡の間で互い違いとなるように配列されるという条件と、
(c)前記複数の円板状補強具が、前記左タイヤ軌跡および右タイヤ軌跡に沿ってそれぞれ、前後方向に隙間なく並ぶか、または、円板状補強具の直径の約50%に匹敵する寸法、約30%以上約50%未満に匹敵する寸法もしくは約10%以上約30%未満に匹敵する寸法を有する隙間を隔てて並ぶという条件と
を含む駐車場内車両スタック防止方法が提供される。
また、本発明の第2の側面によれば、駐車場内の地盤の表層部を部分的にかつ可逆的に補強することによって前記駐車場内で車両がスタックすることを防止するために前記地盤の表面に敷設される円板状補強具であって、
上面と下面とを有する円板部と、
その円板部を前記表層部に係留させるための係留具と
を含み、
前記係留具は、前記円板部の下面から軸方向に突出するが、前記円板部を軸方向に投影して得られるシルエットから半径方向外向きに突出しない形状を有し、
その係留具のうち軸方向に延びる中心部は、前記地盤の土壌に対して食い込んで投錨効果を発揮する中空部材として構成される円板状補強具が提供される。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
【0019】
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
【0020】
(1) 駐車場の地盤の表層部を部分的にかつ可逆的に補強することによって前記駐車場内で車両がスタックすることを防止する方法であって、
複数の円板状補強具を準備する準備工程と、
それら準備された円板状補強具を前記駐車場の地盤の表面に、複数の敷設条件を満たすように敷設する敷設工程と
を含み、
前記複数の敷設条件は、
(a)前記複数の円板状補強具が、前記車両に想定される左タイヤ軌跡および右タイヤ軌跡に沿ってそれぞれ、離散的に一列を成すように配列されるという条件と、
(b)前記複数の円板状補強具が、前記左右のタイヤ軌跡の間で互い違いとなるように配列されるという条件と
を含む駐車場内車両スタック防止方法。
【0021】
(2) 前記複数の敷設条件は、さらに、
(c)各円板状補強具が、それの概して平坦な上側部において露出する一方、それの下側部において前記地盤に係留させられるという条件と、
(d)各円板状補強具が、それに上向きの外力が作用すると、前記地盤から離脱可能であるという条件と
のうちの少なくとも一方を含む(1)項に記載の駐車場内車両スタック防止方法。
【0022】
(3) 前記敷設工程は、前記複数の円板状補強具を前記駐車場の地盤の表面に、それら円板状補強具を真横から見た場合に、それら円板状補強具が互い違いに隙間なく並ぶか、または、隙間を隔てて並ぶように敷設する工程を含む(1)または(2)項に記載の駐車場内車両スタック防止方法。
【0023】
(4) 駐車場内の地盤の表層部を部分的にかつ可逆的に補強することによって前記駐車場内で車両がスタックすることを防止するために前記地盤の表面に敷設される円板状補強具であって、
上面と下面とを有する円板部と、
その円板部を前記表層部に係留させるための係留具と
を含み、
前記係留具は、前記円板部の下面から軸方向に突出するが、前記円板部を軸方向に投影して得られるシルエットから半径方向外向きに突出しない形状を有する円板状補強具。
【0024】
(5) 前記円板部は、軸方向に貫通する貫通穴を有しており、
前記係留具は、
前記貫通穴の内径と同径またはそれより小径の外径を有するとともに前記円板部の厚さ寸法より長い長さ寸法を有する円筒部と、
その円筒部の一端において半径方向外向きに張り出すフランジと
を含み、
前記円筒部が前記円板部の上面から前記貫通穴内に、前記フランジが前記円板部の上面に突き当たるまで挿入されることによって前記係留具が前記円板部に組み付けられ、それにより、前記円筒部のうちの先端部が前記円板部の下面から突出し、
前記円筒部のうち、その突出する部分が前記地盤内に進入し、それにより、前記円板状補強具が前記地盤に係留させられる(4)項に記載の円板状補強具。
【0025】
(6) 前記円板部は、前記上面および下面と、外周面と、前記上面と前記外周面との間の上側円周縁と、前記下面と前記外周面との間の下側円周縁とを含み、
前記上側円周縁および下側円周縁は、いずれも、面取りされている(4)または(5)項に記載の円板状補強具。
【0026】
(7) 前記円板部は、外周面を有し、その外周面は、半径方向外向きに凸となる曲面を成している(4)または(5)項に記載の円板状補強具。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の例示的な一実施形態に従う駐車場内車両スタック防止方法が実施された例示的な駐車場を例示的な複数の円板状補強具と共に示す斜視図である。
図2図2は、図1における複数の円板状補強具のうちの一つを代表的に示す斜視図である。
図3図3(a)は、図2に示す円板状補強具を示す断面図であり、同図(b)は、図2に示す円板状補強具を、図1に示す駐車場の原地盤に部分的に埋設された使用状態で示す側面図である。
図4図4(a)は、図1に示す駐車場において、車両のタイヤがある瞬間に円板状補強具の中心近傍部に位置するためにその円板状補強具が傾斜しない様子を説明するための側面図であり、同図(b)は、そのタイヤがある瞬間に円板状補強具の外形線隣接部に位置するためにその円板状補強具が傾斜してしまう様子を説明するための側面図である。
図5図5(a)は、図1に示す複数の円板状補強具が駐車場の地盤面上に例示的な第1のパターンで配列される様子を説明するための平面図であり、同図(b)は、例示的な第2のパターンで配列される様子を説明するための平面図である。
図6図6は、図1に示す駐車場の例示的な設営工事および解体撤去工事を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のさらに具体的な例示的な一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
<概略説明>
【0030】
図1には、本実施形態に従う駐車場内車両スタック防止方法(以下、「スタック防止方法」と略称する。)が実施された例示的な駐車場10が、例示的な複数の円板状補強具20と共に斜視図で示されている。駐車場10の地盤面上に複数本の境界ロープ12が張られ、それにより、駐車場10の地盤面上の敷地が複数の車室14に仕切られている。
【0031】
このスタック防止方法は、駐車場10の地盤の表層部(図3(b)参照)を部分的にかつ可逆的に補強して駐車場10内で車両がスタックすることを防止する方法である。ここに、「可逆的に」という字句は、円板状補強具20が補強前の地盤面上に敷設されれば、その地盤面が補強され、その後、円板状補強具20が地盤面から撤去回収されれば、その地盤面が、補強前の地盤面に復元するという意味を有する。
【0032】
概略的には、このスタック防止方法は、複数の円板状補強具20を準備する準備工程と、それら準備された円板状補強具20を駐車場10の地盤の表面に敷設する敷設工程とを有する。
【0033】
図1に示すように、このスタック防止方法が実施されると、複数の円板状補強具20が駐車場10の地盤面上に、各車室14ごとに、車両40(図4参照)に想定される左タイヤ軌跡および右タイヤ軌跡に沿ってそれぞれ、離散的に一列を成して配列されるように、敷設される。
【0034】
<駐車場10の説明>
【0035】
1.駐車場10の立地条件
【0036】
駐車場10は、屋外駐車場であり、降雨時、降雪時(雪解け時を含む)には、駐車場10の地盤が雨、雪の影響を受ける可能性がある。
【0037】
2.駐車場10の地盤(土質)条件
【0038】
駐車場10は、地面が土(小石混じり、砂混じりなど)のままである非舗装の駐車場である。この駐車場10の地盤は、舗装面より地盤より軟弱であり、水はけが悪い(透水性が低い)。よって、この駐車場10においては、雨天時、降雪時に、土壌が水分を含んで泥化したり、地盤表層に水溜りが発生する可能性がある。
【0039】
3.駐車場10の運営条件
【0040】
駐車場10は、オーナによって所有される土地が売却される可能性があるかまたはその予定があるとき、その売却までの間、ユーザに貸し出される駐車場である。これに代えて、駐車場10は、恒久的に駐車場として使用される運営されるものであってもよい。
【0041】
図2には、複数の円板状補強具20のうちの一つが代表的に斜視図で示されている。
【0042】
<円板状補強具20の説明>
【0043】
1.部品構成
【0044】
円板状補強具20は、円板部30と、その円板部30を駐車場10の地盤の表層部に係留させるための係留具32とを有する。
【0045】
2.円板状補強具20の材料に関する特性
【0046】
円板部30は、例えば、木製であり、それの上面60が平滑ではなく凹凸を有し、それにより、図4に示すように、円板部30の上面60に車両40のタイヤ42が接触すると、そのタイヤ42が円板部30上でグリップ力を平滑面より確保し易い。
【0047】
これに対し、係留具32は、金属製または合成樹脂製である。係留具32が金属製または合成樹脂製である場合には、木製である場合より、係留具32の素材を、図2に例示するように軸線に沿って複数の断面を有するというようにやや複雑な目標形状(最終形状)に加工する作業の単純化が容易となる。ただし、係留具32は、木製であってもよい。
【0048】
3.円板状補強具20の形状に関する特性
【0049】
円板部30は、平面視において、概して円形、楕円形、長円などを成す外形線を有している。いずれにしても、円板部30は、外形線が、それの平面視において、急変部(例えば、角部)を有しないように、1本または複数本の曲線で定義されるものであればよい。すなわち、円板部30は、外形曲線性を有するのである。
【0050】
ところで、円板状補強具20が駐車場10の地盤面上に敷設されて使用される場合には、図4(a)に示すように、タイヤ42が、ある瞬間に、円板状補強具20上にそれの中心近傍部に位置する可能性と、同図(b)に示すように、タイヤ42が、ある瞬間に、円板状補強具20上にそれの外形線隣接部(円板状補強具20の各側面のうち、その円板状補強具20の外形線に隣接する環状領域)に位置する可能性とがある。
【0051】
タイヤ42が円板状補強具20の中心近傍部に位置する場合には、タイヤ42から円板状補強具20に偏荷重が実質的に作用せず、その結果、円板状補強具20にそれを傾斜させるモーメントが実質的に発生しない。この場合、同図(a)に示すように、円板状補強具20が水平姿勢に維持される。
【0052】
これに対し、タイヤ42が円板状補強具20の外形線隣接部に位置する場合には、タイヤ42から円板状補強具20に偏荷重が作用し、その結果、円板状補強具20にそれを傾斜させる向きの偏荷重モーメントが発生する。その偏荷重モーメントが、円板状補強具20が地盤に係留する力に基づくカウンターモーメント(対抗モーメント)に打ち勝つと、同図(b)に示すように、円板状補強具20が地盤面に対して予定外に傾斜する傾斜姿勢に遷移する。
【0053】
円板状補強具20の予定外の傾斜角が過大である(許容値より大きい)と、傾斜している円板状補強具20の円板部30の上端部が車両40のボディまたはシャシーの下面(外面、外板など)に局部的に接触してしまう可能性がある。そのため、そのときの接触力が過大である(許容値より大きい)と、車両40が円板部30によって損傷してしまう可能性がある。
【0054】
このような事態を回避するために、本実施形態においては、円板部30が、前述のように、外形曲線性を有する。このおかげで、円板部30の縁部が車両40のボディまたはシャシーの下面に局部的に接触しても、当該縁部に、円板部30の面直視において、鋭利な部分が存在しないため、その部分が存在する場合(例えば、円板部30の外形線が、4つの角部を有する矩形を成す場合)に比べ、車両40の外面の損傷度が軽減される。
【0055】
3(a)に示すように、円板部30は、軸方向に貫通する貫通穴50を有している。一方、係留具32は、円筒部52と、その円筒部52の一端において半径方向外向きに張り出すフランジ54とを有する。円筒部52は、貫通穴50の内径と同径またはそれより小径の外径を有するとともに円板部30の厚さ寸法より長い長さ寸法を有する。
【0056】
4.円板状補強具20のサイズに関する特性
【0057】
一例においては、円板部30の直径が、普通乗用車用の車室14について、約300-約500mmである。円板部30の直径は、普通乗用車用の車室14と軽自動車用の車室14とで互いに異なるように設定してもよい。
【0058】
別の例においては、円板部30が、図5に示すように、平面視において、車両40に想定されるタイヤのトレッド幅より長い直径を有する。トレッド幅は、軽自動車については、例えば、約145-約175mmであり、また、普通乗用車については、例えば、約185-約235mmである。
【0059】
別の例においては、円板部30が、図示しないが、平面視において、車両40に想定されるタイヤのトレッド幅より短い直径を有する。このとき、円板部30の直径は、例えば、トレッド幅の約80%以上約100%未満の寸法、約60%以上約80%未満の寸法、約40%以上約60%未満の寸法、または約50%以上約100%未満の寸法を有する。
【0060】
5.円板状補強具20の個別(単体)設置方法
【0061】
図3(b)に側面図で示すように、各円板状補強具20は、単体では、駐車場10の原地盤(当初の地盤。工事に取り掛かる前の手を加えない自然の地盤)に部分的に埋設されるように設置され、その状態で使用される。
【0062】
一例においては、同図(b)に示すように、各円板状補強具20が、円板部30の略下半分が駐車場10の地盤内に埋設される深さで地盤面に沿って設置される。
【0063】
別の例においては、図示しないが、各円板状補強具20が、円板部30の上面60から露出しているフランジ54の上面のみが地盤面から露出する深さで地盤面に沿って設置される。
【0064】
それら例においては、いずれも、少なくとも各円板状補強具20の円板部30の一部であって下面62を含むものと係留部32の全体とが地中に埋設され、それにより、各円板状補強具20が地盤に係留される。
【0065】
それら例においては、いずれも、各円板状補強具20のうちの少なくとも一部(少なくともフランジ54の上面)が地盤面から露出する。その露出部は、車室14に想定されたタイヤ軌跡の目印として、車両40の運転者によって視認可能であるから、運転者は、運転中、車室14に想定されたタイヤ軌跡を想像しながらそれに沿って車両40を操舵することを支援される。
【0066】
一例においては、同図(b)に示すように、各円板状補強具20の係留具32が、原地盤のうちの表層部の土壌内に埋設されるか、または、その表層部を貫通してそれより硬質の層内に進入するように、各円板状補強具20が地盤面上に敷設される。
【0067】
6.円板状補強具20の係留力に関する特性
【0068】
円筒部52は、中実部材に置換してもよいが、本実施形態におけるように、中空部材であれば、円筒部52の軽量化と、円板状補強具20の係留力向上とが同時に達成される。
【0069】
その係留力向上という効果が得られる理由を説明するに、円板状補強具20が地盤面上に敷設される際に、図3(b)に例示するように、その円板状補強具20の円筒部52が地盤の土壌内に食い込んで投錨効果を発揮するが、そのとき、円筒部52が土壌と接触する面積が中実部材を用いる場合より増加し、それにより、円板状補強具20と土壌との間の粘着力が増加し、ひいては、円板状補強具20の投錨効果が増加するからである。
【0070】
図2に示すように、係留具32は、円板部30の下面62から軸方向に突出するが、円板部30を軸方向に投影して得られるシルエットから半径方向外向きに突出しない形状を有する。一例においては、係留具32は、円板部30の外径より小さい外径を有する。
【0071】
図3(a)に示すように、円板部30は、上面60および下面62と、外周面70と、上面60と外周面70との間の上側円周縁72と、下面62と外周面70との間の下側円周縁74とを有する。本実施形態においては、上側円周縁72および下側円周縁74が、いずれも、面取り(R面取りまたはC面取り)されている。
【0072】
上側円周縁72が面取りされていない場合には、円板部30が傾斜したときに、上側円周縁72は、それの断面視(側面視)において急変部(例えば、鋭利な角部、直角の角部)となる部分で局部的に車両40の外板に接触する可能性がある。
【0073】
これに対し、本実施形態におけるように、上側円周縁72および下側円周縁74のうち少なくとも上側円周縁72が面取りされている場合には、円板部30が傾斜したときに、上側円周縁72が局部的に車両40の外面に接触しても、その車両40が損傷する程度が軽減される。
【0074】
一例においては、車両40の損傷可能性をさらに軽減するために、外周面70の断面形状が半径方向外向きに凸となる曲面を成している。
【0075】
<スタック防止方法>
【0076】
本実施形態に従うスタック防止方法は、次のように、次に例示する準備工程と敷設工程とがそれらの順に実施されるように実施される。
【0077】
1.準備工程
【0078】
この準備工程においては、作業者が、複数の円板状補強具20を準備する。一例においては、各円板状補強具20が次の工程で製作されることによって準備される。
【0079】
(1)円板部30を準備する工程
【0080】
円板部30は、例えば、素材から切り出すか、目標形状と同じ形状を有する市販品を購入するか、目標形状と同じ形状を有する使用済の部材を再利用するか、入手した素材に対して必要な後加工を加えるなどすることにより、準備される。
【0081】
(2)係留部32を準備する工程
【0082】
係留部32も、円板部30と同様にして準備される。
【0083】
(3)円板部30に係留部32を組み付ける工程
【0084】
円筒部52を円板部30の上面60から貫通穴50内に、フランジ54が円板部30の上面60に突き当たるまで挿入することによって係留具32を円板部30に組み付ける。それにより、円筒部52のうちの先端部が円板部30の下面62から突出する。円筒部52のうち、その突出する部分が地盤内に進入し、それにより、円板状補強具20が地盤に係留させられる。
【0085】
図2に示すように、円板状補強具20においては、円板部30および係留具32を結合して固定するために、締結具等の取付金具が使用されない。具体的には、例えば、円板部30に係留部32を組み付ける工程において、両者の結合固定のために、ボルト等の締結具が使用されず、それに代えて、圧入、ねじ込み、接着、溶接、溶着などが行われる。
【0086】
締結具等の取付金具が円板状補強具20に使用されると、円板状補強具20の使用中にその取付金具が意に反して緩んでしまい、その取付金具が円板状補強具20から突出したり離脱する可能性がある。その場合には、そのような予定外の挙動を示す取付金具が車両40の外板に接触してその車両40を損傷させるおそれがある。
【0087】
本実施形態においては、円板状補強具20が取付金具を使用しないから、その取付金具の予定外の挙動が原因で車両40が損傷せずに済む。
【0088】
2.敷設工程(全体設置工程)
【0089】
この敷設工程においては、上記作業者または別の作業者が、前記準備された複数の円板状補強具20を駐車場10の地盤面に次に例示列挙する複数の敷設条件が同時に満たされるように敷設する。
【0090】
(a)第1の敷設条件:複数の円板状補強具20が、車両40に想定される左タイヤ軌跡および右タイヤ軌跡に沿ってそれぞれ、離散的に一列を成すように配列されるという条件
【0091】
(b)第2の敷設条件:複数の円板状補強具20が、左右のタイヤ軌跡の間で互い違いとなるように(千鳥状に、または交互に)配列されるという条件
【0092】
なお、前記複数の敷設条件は、任意選択的に、さらに、(c)第3の敷設条件:各円板状補強具20が、それの概して平坦な上側部において露出する一方、それの下側部において駐車場10の地盤に係留させられるという条件と、(d)第4の敷設条件:各円板状補強具20が、それに上向きの外力が作用すると、駐車場10の地盤から離脱可能であるという条件とのうちの少なくとも一方を有してもよい。
【0093】
<複数の円板状補強具20を配列するパターン>
【0094】
1.例示的な第1の配列パターン
【0095】
図5(a)には、複数の円板状補強具20が駐車場10の地盤面上に例示的な第1のパターンで配列される様子が平面図で示されている。このパターンによれば、複数の円板状補強具20が駐車場10の地盤面に、それら円板状補強具20を真横から(左右方向に)見た場合に、それら円板状補強具20が隙間なく(横方向オーバーラップなしの状態で)並ぶように敷設される。
【0096】
2.例示的な第2の配列パターン
【0097】
同図(b)には、複数の円板状補強具20が駐車場10の地盤面上に例示的な第2のパターンで配列される様子が平面図で示されている。このパターンによれば、複数の円板状補強具20が駐車場10の地盤面に、それら円板状補強具20を真横から(左右方向に)見た場合に、それら円板状補強具20が隙間gを隔てて並ぶように敷設される。
【0098】
ここに、隙間gは、例えば、円板状補強具20の直径の約50%に匹敵する寸法、約30%以上約50%未満に匹敵する寸法、または、約10%以上約30%未満に匹敵する寸法を有してもよい。
【0099】
ところで、同図(b)に示すように、複数の円板状補強具20が、隙間gを隔てて並ぶとともに、左右のタイヤ軌跡の間で互い違いとなるように配列される例によれば、それら円板状補強具20が隙間なく並ぶ場合より、各車室14に設置することが必要な円板状補強具20が削減され、さらに、複数の円板状補強具20が左右のタイヤ軌跡の間で同位相となるように(互い違いにならないように)配列される場合より、円板状補強具20の所要数が削減される。
【0100】
また、同図(b)に示す例においては、車両40が車室14内で停止しているときに、1台の車両40の4個のタイヤ42がいずれも、いずれかの円板状補強具20に接触することは必ずしも保証されない。
【0101】
しかし、同図(b)に示す例においては、各車室14に駐車可能な種類の車両40のホイールベースの平均値(標準値)(約2,000-3,000mm)を見込んで、円板状補強具20のサイズ、および、同じタイヤ軌跡上における円板状補強具20間のピッチが、車両40の4個のタイヤ42がいずれも、いずれの円板状補強具20にも接触しないという事象が発生しないように設定される。
【0102】
なお、各車室14において、図示しない車止めが地盤面上に固定されて車両40の停止位置が一義的に決まるため、車両40の各タイヤ42の停止位置と、各円板状補強具20の設置位置との相対位置も一義的に決まる。
【0103】
そして、車両40のいずれかのタイヤ42でもいずれかの円板状補強具20に接触すれば、その車両40の少なくとも1個のタイヤ42のグリップ力が確保される。
【0104】
このグリップ力確保は、車両40が特に、差動制限型デファレンシャル(LSD)(例えば、ビスカスLSD,回転数感応式LSD)が搭載されている場合には、必ず起こり、車両40の発進が可能となる。
【0105】
とはいえ、そのような機能が装備されていない車両40である場合でも、いずれの円板状補強具20にも接触していないタイヤ42と原地盤との間にグリップ力が、たとえ小さくても、確保されれば、グリップ力確保は起こり、車両40の発進が可能となる。
【0106】
その結果、いずれの場合でも、円板状補強具20のおかげで、車両40が駐車場10内でスタックすることが防止される。
【0107】
同図(b)に示す例を採用すれば、駐車場10内での車両40のスタックを防止しつつ、駐車場10に設置される円板状補強具20の数を最小化することが容易となる。一方、円板状補強具20の数が少ないほど、円板状補強具20という設備のコストが安価で済むととも円板状補強具20を設置するために必要な工数および人件費が少なくて済む。
【0108】
<駐車場10の工事全般>
【0109】
図6には、駐車場10の例示的な設営工事および解体撤去工事が工程図で示されている。
【0110】
まず、駐車場10の例示的な設営工事においては、複数の円板状補強具20の部品(円板部30および係留部32)を調達する工程と、それら調達された部品を組み立てて複数の円板状補強具20を取得する工程と、それら取得された複数の円板状補強具20を駐車場10の地盤面上に敷設する工程とがそれらの順に実施される。
【0111】
その結果、駐車場10の地盤が部分的に(すなわち、各円板状補強部20が位置する部分に限り)、かつ、土壌改良剤を散布することなく、可逆的に補強される。
【0112】
次に、駐車場10の例示的な解体撤去工事においては、駐車場10の地盤面から複数の円板状補強具20を撤去してそれらを回収する撤去工程が実施される。
【0113】
前述のように、各円板状補強具20は、それに上向きの外力が作用すると、駐車場10の地盤から離脱可能であるようにその地盤面上に敷設されている。
【0114】
よって、作業者は、追加の作業を行うことなく、また、道具を使用することを必須とすることなく通常は素手で、各円板状補強具20を地盤面から引き揚げるかまたは引き抜くことにより、各円板状補強具20を地盤面から簡単に撤去することが可能である。
【0115】
その結果、駐車場10が簡単かつ完全に更地に復元し、当該土地のオーナは、例えば、その更地を別の目的で使用することが可能となる。
【0116】
以上、本発明の例示的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【要約】
【課題】駐車場内で車両がスタックすることを防止する技術であって、ある土地が駐車場としての使用を終えるとその土地を使用前の状態に復元することが容易であることを条件に、駐車場の地盤を補強する技術を提供する。
【解決手段】駐車場の地盤の表層部を部分的にかつ可逆的に補強することによって前記駐車場内で車両がスタックすることを防止する方法であって、複数の円板状補強具を準備する準備工程と、それら準備された円板状補強具を前記駐車場の地盤の表面に、複数の敷設条件を満たすように敷設する敷設工程とを含む。前記複数の敷設条件は、(a)前記複数の円板状補強具が、前記車両に想定される左タイヤ軌跡および右タイヤ軌跡に沿ってそれぞれ、離散的に一列を成すように配列されるという条件と、(b)前記複数の円板状補強具が、前記左右のタイヤ軌跡の間で互い違いとなるように配列されるという条件とを含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6