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特許6993662フレキシブルプリント配線板と、そのカバーレイフィルムおよびベースフィルム
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  • 特許-フレキシブルプリント配線板と、そのカバーレイフィルムおよびベースフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板と、そのカバーレイフィルムおよびベースフィルム
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20220105BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H05K3/28 C
H05K1/02 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017024832
(22)【出願日】2017-02-14
(65)【公開番号】P2018133389
(43)【公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】508191411
【氏名又は名称】ワイエステクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 周市
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大藪 康典
【審査官】赤穂 州一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-189267(JP,A)
【文献】特開2009-253170(JP,A)
【文献】特開2005-235948(JP,A)
【文献】特開2010-084026(JP,A)
【文献】特開2006-299209(JP,A)
【文献】特開2015-012098(JP,A)
【文献】特開2007-165436(JP,A)
【文献】特開2001-167642(JP,A)
【文献】特開平07-122855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド織布またはカーボングラファイトを、一方の面に接着剤層が設けられた合成樹脂層の反対側の面に、接着剤を介して貼着することにより、カバーレイフィルムを製造し、
ベースフィルムの上に、配線パターンを形成し、
前記カバーレイフィルムを、前記配線パターンの上に、前記接着剤層を前記配線パターンに直接接触させて貼着する
ことを特徴とする、フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
アラミド織布またはカーボングラファイトを、二枚の合成樹脂層の間に埋設して内包させることにより、ベースフィルムを製造し、
前記ベースフィルムの上に、銅箔を積層し、
前記銅箔をエッチングすることにより、配線パターンを形成し、
カバーレイフィルムを、前記配線パターンの上に貼着する
ことを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記アラミド織布またはカーボングラファイトの厚さが、100μm以下であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記アラミド織布またはカーボングラファイトが厚さ50μm以下であるとともに金属メッキされたものであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
カーボングラファイトを、カバーレイ層の内部に埋設して内包させたこと、
を特徴とするフレキシブルプリント配線板用カバーレイフィルム。
【請求項6】
カーボングラファイトをベースフィルム層の内部に埋設して内包させたこと、
を特徴とするフレキシブルプリント配線板用ベースフィルム。
【請求項7】
請求項に記載のカバーレイフィルム、若しくは、請求項に記載のベースフィルムのいずれか1項に記載のものを有して構成されてなること、
を特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
カーボングラファイトの厚さが、100μm以下であること、
を特徴とする請求項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項9】
カーボングラファイトが厚さ50μm以下であるとともに金属メッキされたものであること、
を特徴とする請求項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板(FPC)と、そのカバーレイフィルムおよびベースフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルプリント配線板(FPC)は、図4に示すように、ポリイミド(PI)またはポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂を材料としたベースフィルムの層11と、銅箔をエッチングして配線パターンを形成した層12と、配線パターンを外部から保護するために設けられた、ポリイミドまたはポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を材料としたカバーレイ層13とで構成されている(参考文献として、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-32799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板をケーブルとして使用するフレキシブルフラットケーブル(FFC)などの薄い回路では、機械的強度(引張や引き裂きなど)に欠け、長いケーブル用途や細い製品などには使用に限界がある。従来は、補強フィルム(ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなど)で補強をしていたが、強度的には限界があり、屈曲性とデザインの自由度は、完全には解決できていない。フレキシブルプリント配線板上の電子部品が発熱することで温度上昇し、電子部品が損傷したり本来の性能が出せない、特にLED照明が高温化し損傷の恐れがある。本発明に係るフレキシブルプリント配線板と、そのカバーレイフィルムおよびベースフィルムは、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るカバーレイフィルムの上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、 アラミド織布またはカーボングラファイトを、カバーレイ層における回路層側の内面と反対側の外面に接着剤を介して貼着したことである。
【0006】
本発明に係るカバーレイフィルムの上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、アラミド織布またはカーボングラファイトを、カバーレイ層の内部に埋設して内包させたことである。
【0007】
本発明に係るベースフィルムの上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、アラミド織布またはカーボングラファイトをベースフィルム層の内部に埋設して内包させたことである。
【0008】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、上記カバーレイフィルム、若しくは、上記ベースフィルムのいずれかを有して構成されてなることである。
【0009】
前記アラミド織布またはカーボングラファイトの厚ささが、100μm以下であることを含む。
【0010】
前記アラミド織布またはカーボングラファイトが厚さ50μm以下であるとともに金属メッキされたものであることを含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフレキシブルプリント配線板と、そのカバーレイフィルムおよびベースフィルムによれば、機械的強度を十分に有するとともに柔軟性、耐熱性、難燃性のあるフレキシブルプリント配線板が得られる。更に、アラミド織布の厚さを100μm以下に、若しくは、50μmで金属メッキを施すことで、信号異常を防止して、薄型化と寸法安定性も確保できると言う優れた効果を奏するものである。また、アラミド織布の代わりにカーボングラファイトを用いることで、放熱特性が一層向上して良くなるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るフレキシブルプリント配線板1で、そのカバーレイフィルムにアラミド織布を貼着した状態の断面図である。
図2】同本発明の他の実施例に係かるフレキシブルプリント配線板1aで、そのカバーレイフィルムにアラミド織布を内包させた状態の断面図である。
図3】同本発明の他の実施例に係るフレキシブルプリント配線板1bで、そのベースフィルムにアラミド織布を内包させた状態の断面図である。
図4】従来のフレキシブルプリント配線板10の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板1~1bは、図1乃至図3に示すように、アラミド織布4を有する構造である。なお、従来例と同じ部品には従来例と同じ符号を付けて説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明に係るカバーレイフィルム2は、図1に示すように、アラミド織布4を、カバーレイ層13における回路層側の内面と反対側の外面に接着剤5を介して貼着したものである。前記アラミド織布4、接着剤5、カバーレイ層13とで、カバーレイフィルム2を構成する。
【0015】
前記アラミド織布4は、耐熱性・引張強度に優れたものである。破断強度(MPa)は、アラミド自体で480であり、例えば、ポリイミドの300、ポリエチレンテレフタレートの250と比較して、強いものである。更に、アラミド織布4の分解開始温度が500℃であって、耐熱性がある。一般には、防弾チョッキやヘルメット、宇宙服、消防服などに使用されている。
【実施例2】
【0016】
また、他の実施例として、図2に示すように、アラミド織布4を、合成樹脂6,6の間に挟み、接着剤5で回路層12に貼着して、カバーレイ層の内部に埋設して内包させたフレキシブルプリント配線板用カバーレイフィルム2aとするものである。前記カバーレイ層13の材質は、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などである。
【0017】
図1乃至図2に示すように、上記カバーレイフィルム2,2aを有するフレキシブルプリント配線板1,1aとすることで、柔軟性を有しつつ、機械的強度が有るフレキシブルプリント配線板ができるものである。また、前記フレキシブルプリント配線板1,1aは、従来と同じ製造方法で形成することができるものである。
【0018】
図2に示すように、フレキシブルプリント配線板1aでは、アラミド織布4がカバーレイフィルム2aに内包されていて埋設状態にあり、アラミド織布4を構成するアラミド繊維が切れて周囲に飛散するおそれが無い。
【0019】
前記アラミド繊維が、仮に、周囲に飛散すると、例えば、端子14に付着すると電子部品を端子14に半田付けする妨げとなってしまい、重大な品質問題となるが、前記フレキシブルプリント配線板1aでは、アラミド織布4が内包されているのでその心配が解消されるものである。
【0020】
更に、前記アラミド織布4の厚さtを、100μm以下(100μm≧t>0)にすることで、フレキシブルプリント配線板1aの柔軟性を保ちつつ、薄型化と寸法安定性も確保できる。また、前記アラミド織布4の厚さtを、50μm≧t>0として、金属メッキをすることが好ましい。
【0021】
これにより、細長い形状のフレキシブルプリント配線板、特にフレキシブルフラットケーブル(FFC)などの薄い回路では、信号線が長くなり外部からの電磁ノイズの影響を受けて、信号異常となりやすかった。本発明に係るフレキシブルプリント配線板1,1aでは、アラミド織布4を金属メッキすることで、金属メッキの電気的シールド効果で、外部から配線パターンの回路層12に届く電磁ノイズが小さくなり、信号異常は起こりにくくなる。
【0022】
更に、前記アラミド織布4を金属メッキする場合には、アラミド織布4の厚みtにメッキの厚みが追加されるので、前記tの厚さを50μm以下として、フレキシブルプリント配線板の柔軟性を保ち、且つ、薄型化を維持するものである。
【実施例3】
【0023】
図3に示すように、アラミド織布4をベースフィルム(PI、PETなど)3の層の内部に埋設して内包させたフレキシブルプリント配線板用ベースフィルム3とするものである。更に、このベースフィルム3を有したフレキシブルプリント配線板1bとするものである。従来と同様のフレキシブルプリント配線板製造方法で前記フレキシブルプリント配線板1bが形成されるものである。
【0024】
前記フレキシブルプリント配線板1,1aと同様に、前記アラミド織布4の高強度によって全体として強度の増したフレキシブルプリント配線板となり、かつ、フレキシブルプリント配線板本来の柔軟性を保つことができる。また、アラミド織布4が、ベースフィルム3に内包されているので、アラミド織布4の繊維が切れて飛散するおそれが無く、フレキシブルプリント配線板1aと同様の作用・効果を発揮するものである。
【0025】
前記アラミド織布4の厚さtを100μm以下(t>0)としたり、前記厚さtを、50μm以下(t>0)であるとともに金属メッキされたものとした場合も、前記フレキシブルプリント配線板1,1aと同様の作用・効果を奏するものである。
【0026】
また、フレキシブルプリント配線板のベースフィルムと言うとき、合成樹脂と接着剤だけでなく、銅箔まで含めて、ベースフィルムと称したり、または、接着剤が無く、合成樹脂に銅箔を直接貼った構成をベースフィルムと称することもあるが、本発明に係るベースフィルムと同意義であってその効果は同じである。
【0027】
また、上記実施例1,2,3ともにアラミド織布の代わりにカーボングラファイトを用いることで、放熱特性が更に良くなるという効果がある。カーボングラファイトは、放熱特性に優れたものである。熱伝導率(W/(m・k))は、カーボングラファイトで1000~2000であり、例えば、アルミニウムの240、銅の400と比較して、高いものである。このため100μm以下(t>0)の厚さのカーボングラファイトで電子部品の発熱を放熱できるため、柔軟性のある放熱性の高いフレキシブルプリント配線板が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係るフレキシブルプリント配線板1~1b、カバーレイフィルム2,2a、ベースフィルム3により、薄いフレキシブルプリント配線板に広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 フレキシブルプリント配線板、
1a 他の実施例に係るフレキシブルプリント配線板、
1b 他の実施例に係るフレキシブルプリント配線板、
2,2a カバーレイフィルム、
3 ベースフィルム、
4 アラミド織布、
5 接着剤、
6 合成樹脂、
10 フレキシブルプリント配線板、
11 ベースフィルム、 11a 合成樹脂、
11b 接着剤、
12 回路層、
13 カバーレイ層、 13a 合成樹脂、
13b 接着剤、
14 端子。
図1
図2
図3
図4