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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】プラズマアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20220105BHJP
   F02B 31/00 20060101ALI20220105BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
F02M35/10 311Z
F02B31/00 540Z
H05H1/24
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017122893
(22)【出願日】2017-06-23
(65)【公開番号】P2019007397
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】秋元 雅翔
(72)【発明者】
【氏名】木村 元昭
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-293925(JP,A)
【文献】特開2012-180799(JP,A)
【文献】特開2013-131488(JP,A)
【文献】特開2016-076350(JP,A)
【文献】特開2016-138468(JP,A)
【文献】特表2009-511360(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 27/00 - 31/08
F02M 35/10
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、
前記電極の間に配置される誘電体と、
前記電極に電圧を印加する電圧印加装置と、
前記電圧印加装置による前記電極への電圧の印加を制御する電圧制御部と、
を備え、
前記電圧制御部は、
前記電極に電圧を印加する第1状態と、前記電極に電圧を印加しない、又は前記第1状態において前記電極に印加する電圧より低い電圧を前記電極に印加する第2状態とを所定の印加周期によって繰り返して前記電極への電圧の印加を制御するものであって、
1つの前記印加周期において、前記第1状態の制御を行うことにより誘起流を生じさせる第1印加期間と、前記第1印加期間の後に前記第1印加期間において発生される気流に当該気流どうしの速度差が比較的大きい場合において気流に加わるせん断力によって生じる、当該気流が互いに分離した状態であるせん断が生じない時間だけ前記第2状態の制御を行う第1非印加期間と、前記第1印加期間より短い時間だけ前記第1状態の制御を行う第2印加期間と、前記第2状態の制御を行う第2非印加期間とを繰り返す、
プラズマアクチュエータ。
【請求項2】
前記電圧制御部は、
1つの前記印加周期において、前記第1印加期間と、前記第1非印加期間と、前記第2印加期間と、前記第2非印加期間とに加え、前記第2印加期間以下の時間だけ前記第1状態の制御を行う第3印加期間と、前記第2状態の制御を行う第3非印加期間との繰り返しにより、前記電極への電圧の印加を制御する、
請求項に記載のプラズマアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1状態の制御を行う期間と、前記第2状態の制御を行う期間とは、前記気流のレイノルズ数が低い場合、前記気流のレイノルズ数が高い場合と比較して、低い周波数によって繰り返される
請求項1または請求項のいずれか一項に記載のプラズマアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体が流通する内燃機関の吸気通路内にプラズマアクチュエータを配置し、吸気通路の気体の流れを加速または増速させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-180799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、内燃機関において燃焼室の燃焼効率を上げるには、混合気が燃焼室内に適切に拡散することが好ましい。
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、噴流を適切に拡散するプラズマアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、一対の電極と、前記電極の間に配置される誘電体と、前記電極に電圧を印加する電圧印加装置と、前記電圧印加装置による前記電極への電圧の印加を制御する電圧制御部と、を備え、前記電圧制御部は、前記電極に電圧を印加する第1状態と、前記電極に電圧を印加しない、又は前記第1状態において前記電極に印加する電圧より低い電圧を前記電極に印加する第2状態とを所定の印加周期によって繰り返して前記電極への電圧の印加を制御するものであって、1つの前記印加周期において、前記第1状態の制御を行うことにより誘起流を生じさせる第1印加期間と、前記第1印加期間の後に前記第1印加期間において発生される気流に当該気流どうしの速度差が比較的大きい場合において気流に加わるせん断力によって生じる、当該気流が互いに分離した状態であるせん断が生じない時間だけ前記第2状態の制御を行う第1非印加期間と、前記第1印加期間より短い時間だけ前記第1状態の制御を行う第2印加期間と、前記第2状態の制御を行う第2非印加期間とを繰り返す、プラズマアクチュエータである。
【0007】
また、本発明の一態様のプラズマアクチュエータにおいて、前記電圧制御部は、1つの前記印加周期において、前記第1印加期間と、前記第1非印加期間と、前記第2印加期間と、前記第2非印加期間と、前記第2印加期間以下の時間だけ前記第1状態の制御を行う第3印加期間と、前記第2状態の制御を行う第3非印加期間との繰り返しにより、前記電極への電圧の印加を制御する。
【0009】
また、本発明の一態様のプラズマアクチュエータにおいて、前記第1状態の制御を行う期間と、前記第2状態の制御を行う期間とは、前記気流のレイノルズ数が低い場合、前記気流のレイノルズ数が高い場合と比較して、低い周波数によって繰り返される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、噴流を効率よく拡散するプラズマアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】プラズマアクチュエータの動作原理示す図である。
図2】本実施形態に係るノズルの形状の一例を示す図である。
図3図2に示すノズルのC-C方向の断面図である。
図4】本実施形態に係るノズルのプラズマ領域の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係るプラズマアクチュエータの構成の一例を示す図である。
図6】本実施形態に係る電圧の印加周期を示す図である。
図7】本実施形態に係る電圧印加装置の動作の一例を示す流れ図である。
図8】本実施形態に係るプラズマアクチュエータの制御結果取得環境の一例を示す図である。
図9】本実施形態のプラズマアクチュエータによって制御された噴流の流速と、ノズルからの距離との関係を示すグラフである。
図10】本実施形態に係る条件1の噴流の画像である。
図11】本実施形態に係る条件2の噴流の画像である。
図12】本実施形態に係る条件3の噴流の画像である。
図13】本実施形態に係る条件4の噴流の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
以下、図を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0013】
[プラズマアクチュエータの原理]
まず、図を参照してプラズマアクチュエータの動作原理について説明する。
図1は、プラズマアクチュエータの動作原理示す図である。
プラズマアクチュエータは、一対の電極11(内側電極11-1と、外側電極11-2)と、誘電体12と、電圧印加装置20とを備える。内側電極11-1と、外側電極11-2との間には、誘電体12が配置される。換言すると、誘電体12は、内側電極11-1と、外側電極11-2とに挟まれる位置に配置される。
【0014】
また、以降の説明において、プラズマアクチュエータの各部構成を説明する際、XYZ直交座標系を用いることがある。このXYZ直交座標系のうち、Y軸は、各部構成の縦方向を示し、X軸は、各部構成の横方向を示し、Z軸は、各部構成の奥行方向を示す。また、以降の説明において、Y軸の正の方向を上、又は上方向と記載し、Y軸の負の方向を下、又は下方向と記載し、X軸の正の方向を右、又は右方向と記載し、X軸の負の方向を左、又は左方向と記載する。
【0015】
電極11には、電圧印加装置20から電圧が印加される。電圧印加装置20とは、例えば、印加する電圧の強度、交流周波数、電圧印加時間、及び電圧印加周期等を設定可能な安定化電源である。ここで、電圧印加装置20によって電極11に交流高電圧を印加することにより、内側電極11-1と、外側電極11-2との間に誘電体バリア放電(プラズマ)が発生する(図示するプラズマ領域200)。電圧印加装置20が印加する交流高電圧とは、交流周波数が7kHz程度であって、0Vを中心とした+8kVと、-8kVとの16kVのピーク・トゥ・ピーク電圧(図示する電圧Vpp)を印加する。プラズマ領域200では、プラズマによって気体の電離が生じ、正イオンと、負イオンとが発生する。
【0016】
電圧印加装置20によって印加される交流高電圧の1周期のうち、電圧の負勾配変化時は、内側電極11-1から外側電極11-2に向けて電子が放出され、外側電極11-2の上部、つまり誘電体12表面に電子が帯電される。また、電圧の負勾配変化時において負イオンは、電子と同様に外側電極11-2に移動する。また、電圧印加装置20によって印加される交流高電圧の1周期のうち、電圧の正勾配変化時において、電圧の負勾配変化時に誘電体12表面に帯電された電子は、内側電極11-1に移動する。また、電圧の正勾配変化時において、正イオンは、外側電極11-2側に移動する。上述した、電圧の負勾配変化時、及び電圧の正勾配変化時において、正イオン、及び負イオンは、電離されない中性粒子と衝突することにより運動量が移送され、体積力(以下、誘起流250)が生じる。この誘起流250によって、誘電体12の周囲に存在する気流に速度変化が生じる。
【0017】
本実施形態のプラズマアクチュエータ1は、電極11が配置される噴流の吹き出し口(以下、ノズル10)と、電圧印加装置20とを備える。プラズマアクチュエータ1は、電圧印加装置20が電極11に印加する電圧を制御することに伴って噴流の流速を制御し、噴流を効率よく拡散する。以下、プラズマアクチュエータ1の具体的な構成について説明する。まず、ノズル10の詳細について説明し、次に電圧印加装置20の詳細について説明する。
【0018】
[ノズルについて]
以下、図を参照してノズル10の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るノズル10の形状の一例を示す図である。具体的には、図2(a)は、ノズル10を上方から示した図である。また、図2(b)は、ノズル10を下方から示した図である。本実施形態において、ノズル10は、内側電極11-1と、外側電極11-2と、誘電体12とを備える。図2に示す通り、本実施形態の一例では、誘電体12は、円筒部と、当該円筒部の底面に円径外側方向に向かって延在されたつば部とを有する形状である。外側電極11-2は、誘電体12の円筒部の側面に配置される。また、内側電極11-1は、誘電体12のつば部の底面に、円状に配置される。
【0019】
図3は、図2に示すノズル10のC-C方向の断面図である。C-C方向の断面は、誘電体12の円筒部の円中心を通り、Y軸と平行な軸(図示する中心軸AX)を有する面であって、XY平面と平行な面である。
図3に示す通り、誘電体12は、内側電極11-1、及び外側電極11-2に挟まれる位置に配置される。本実施形態の一例では、ノズル10は、つば部を底面として水平面に配置される。
【0020】
図4は、本実施形態に係るノズル10のプラズマ領域200の一例を示す図である。ノズル10には、噴流を供給するコンパレータ(不図示)が当該ノズル10の底面に接続される。ノズル10は、コンパレータから供給される噴流(以下、噴流900)を、ノズル10を介して鉛直方向上方に噴出する。また、電圧印加装置20が電極11に電圧を印加した場合、鉛直方向上方(Y軸の正の方向)に誘起流250が生じる。
【0021】
[電圧印加装置について]
以下、図を参照して電圧印加装置20の構成について説明する。
図5は、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ1の構成の一例を示す図である。
図5に示す通り、ノズル10(電極11)と、電圧印加装置20とは接続される。電圧印加装置20は、電源供給部21と、操作部22と、制御部23と、記憶部25とをその機能部として備える。記憶部25には、印加期間情報25-1が記憶される。印加期間情報25-1とは、電極11に電圧を印加する期間(以下、印加期間)、及び電極11への電圧の印加を停止する期間(以下、非印加期間)を示す情報である。本実施形態の一例では、印加期間情報25-1は、印加期間、及び非印加期間を示す情報と、噴流900の特性やノズル10の口径等を示す環境情報とが対応付けられた情報である。
【0022】
電源供給部21は、制御部23の制御に基づいて、電極11に交流高電圧を印加する。操作部22には、プラズマアクチュエータ1のユーザ等によって、環境情報が入力される。制御部23は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが記憶部25に記憶されたプログラムを実行し、電源供給部21を制御する機能部を実現する。制御部23は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。制御部23は、操作部22から環境情報を取得する。制御部23は、操作部22から取得した環境情報に基づいて、当該環境情報が対応付けられた印加期間情報25-1を記憶部25から読み出す。制御部23は、読み出した印加期間情報25-1に基づいて、電源供給部21を制御する。
【0023】
[電圧印加周期について]
以下、制御部23の制御に基づいて、電源供給部21が電極11に印加する電圧の詳細について説明する。
図6は、本実施形態に係る電圧の印加周期を示す図である。
図6の縦軸には、電源供給部21が印加する電圧が示され、横軸には、時間が示される。制御部23は、電源供給部21を制御し、印加期間と、非印加期間とを繰り返し、誘起流250を生じさせる。以降の説明において、制御部23の制御に伴い、電源供給部21が印加期間と、非印加期間とを繰り返す周期を、印加周期と記載する。また、印加周期の逆数を印加周波数と記載する。
【0024】
本実施形態の一例では、印加期間情報25-1が示す印加周期には、第1印加期間(図示する期間Δt11)、第1非印加期間(図示する期間Δt12)、第2印加期間(図示する期間Δt13)、第2非印加期間(図示する期間Δt14)、第3印加期間(図示する期間Δt15)、及び第3非印加期間(図示する期間Δt16)が、記載の順に含まれる。第1印加期間、第2印加期間、及び第3印加期間は、制御部23の制御に基づいて、電源供給部21が電極11に電圧を印加する期間である。第1非印加期間、第2非印加期間、及び第3非印加期間は、制御部23の制御に基づいて、電源供給部21が電極11への電圧の印加を停止する期間である。
【0025】
ここで、第1印加期間と、第2印加期間、及び第3印加期間とは、電源供給部21が電極11に電圧を印加する期間の長さが異なる。具体的には、第1印加期間と、第2印加期間、及び第3印加期間とでは、第2印加期間、及び第3印加期間の方が短い時間である。
また、第3印加期間は、第2印加期間以下の時間である。
【0026】
第1非印加期間は、第1印加期間において発生された誘起流250によって流速が変化した噴流900にせん断が生じない時間だけ、電極11への電圧の印加が停止される期間である。第2非印加期間は、第2印加期間において発生された誘起流250によって流速が変化した噴流900にせん断が生じない時間だけ、電極11への電圧の印加が停止される期間である。第3非印加期間は、第3印加期間において発生された誘起流250によって流速が変化した噴流900にせん断が生じない時間だけ、電極11への電圧の印加が停止される期間である。また、第2印加期間、及び第3印加期間は、第1非印加期間より短い時間である。
【0027】
電源供給部21は、制御部23の制御に基づいて、0Vを中心としたピーク・トゥ・ピーク電圧(図示する電圧Vpp)の交流高電圧を印加する。本実施形態の一例において、電源供給部21は、例えば、制御部23の制御に基づいて、交流周波数が7kHzであって、0Vを中心とした+8kVと、-8kVとの16kVのピーク・トゥ・ピーク電圧を電極11に印加する。
【0028】
上述したように、期間Δt11~期間Δt16は、印加期間情報25-1によって定められる。噴流900のレイノルズ数が2000である場合、印加周期は、例えば、14msec(つまり、印加周波数が、おおよそ周波数70Hz)程度である。また、噴流900のレイノルズ数が2000である場合、期間Δt11は印加周期の39%程度の期間、期間Δt12は印加周期の10%程度の期間、期間Δt13は印加周期の13%程度の期間、期間Δt14は印加周期の6%程度の期間、期間Δt15は印加周期の9%程度の期間、期間Δt16は、印加周期の23%程度の期間である。
また、噴流900のレイノルズ数が5000である場合、印加周期は、例えば、5msec(つまり、印加周波数が、周波数200Hz)程度である。また、噴流900のレイノルズ数が5000である場合、期間Δt11は印加周期の35%程度の期間、期間Δt12は印加周期の11%程度の期間、期間Δt13は印加周期の9%程度の期間、期間Δt14は印加周期の14%程度の期間、期間Δt15は印加周期の9%程度の期間、期間Δt16は印加周期の22%程度の期間である。
【0029】
[レイノルズ数と印加周期の相関について]
ここで、噴流900は、レイノルズ数が上がると流速が速くなる。これに伴い、レイノルズ数が上がると、制御部23が制御する印加周期が短く(周波数が高く)なる。また、レイノルズ数が上がると、制御部23が制御する印加周期のうち、非印加期間(この一例では、第1非印加期間、第2非印加期間、及び第3非印加期間)の割合は、長くなる。
【0030】
なお、上述では、電源供給部21が電極11に印加する交流高電圧の交流周波数が7kHzである場合について説明したが、これに限られない。電源供給部21が電極11に供給する交流高電圧の交流周波数は、7kHz以外の値であってもよい。ここで、交流周波数は、高い周波数である場合、上述した構成により、正イオン、及び負イオンの移動が活発に生じる。つまり、交流周波数は、高い周波数である場合、誘起流250が生じやすい。したがって、電源供給部21が電極11に印加する交流高電圧の交流周波数は、高い周波数であることが好ましい。
【0031】
[電圧印加装置の動作について]
以下、図を参照し、電圧印加装置20の動作の詳細について説明する。
図7は、本実施形態に係る電圧印加装置20の動作の一例を示す流れ図である。
制御部23は、操作部22に入力される環境情報を取得する(ステップS110)。制御部23は、取得した環境情報に基づいて、記憶部25から当該環境情報が対応付けられた印加期間情報25-1を読み出す(ステップS120)。制御部23は、読み出した印加期間情報25-1に基づいて、電源供給部21の動作を制御する(ステップS130)。具体的には、制御部23は、読み出した印加期間情報25-1が示す印加期間、非印加期間、及び印加周期に基づいて、電源供給部21の動作を制御する。
【0032】
[印加周期が開始期間について]
なお、上述では、印加周期が第1印加期間から始まる場合について説明したが、これに限られない。印加周期は、第1印加期間、第1非印加期間、第2印加期間、第2非印加期間、第3印加期間、及び第3非印加期間の繰り返しの一部を1周期とすれば、いずれの期間から開始されてもよい。例えば、印加周期は、第1非印加期間から開始されてもよく、第2印加期間から開始されてもよく、第2非印加期間から開始されてもよく、第3印加期間から開始されてもよく、第3非印加期間から開始されてもよい。
【0033】
[印加周期の特徴について]
また、上述では、印加周期には、第3印加期間、及び第3非印加期間が含まれる場合について説明したが、これに限られない。印加周期には、電源供給部21が電極11に電圧を印加する期間であって、長さが異なる期間が少なくとも2つ含まれていればよい。印加周期は、例えば、第1印加期間と、第2印加期間とが含まれていればよく、それに伴い第1非印加期間と、第2非印加期間とが含まれていればよい。また、印加周期には、3つ以上の印加期間が含まれ、かつ印加期間の数に応じた非印加期間が含まれていてもよい。
【0034】
[プラズマアクチュエータの制御結果について]
以下、プラズマアクチュエータ1によって制御された誘起流250(噴流900)の制御結果について説明する。
図8は、本実施形態に係るプラズマアクチュエータ1の制御結果取得環境の一例を示す図である。
図8に示す通り、プラズマアクチュエータ1(ノズル10、及び電圧印加装置20)によって制御された噴流900を確認する際、測定装置40と、撮像装置41と、レーザ装置50と、コンパレータ(以下、コンパレータ90)とが用いられる。本実施形態の一例において、コンパレータ90から供給される噴流900には、トレーサが含まれる。トレーサとは、例えば、直径1マイクロメートル程度のシード粒子(例えば、オンジナオイル)である。レーザ装置50は、ノズル10を介して噴出される噴流900に対してレーザ光を照射する。撮像装置41は、レーザ装置50によってレーザ光が照射された噴流900(トレーサ)を撮像する。測定装置40は、撮像装置41が撮像した噴流900を示す画像に基づいて、当該噴流900の速度を測定する。
【0035】
図9は、本実施形態のプラズマアクチュエータ1によって制御された噴流900の流速と、ノズル10からの距離との関係を示すグラフである。図9の横軸は、ノズル10の噴出口(ノズル10の上部)からの距離(以下、距離x)と、誘電体12の円筒部の円直径(以下、直径d)との比を示す。具体的には、横軸は、距離xを直径dによって除した値(以下、口径距離比)を示す。本実施形態の一例では、ノズル10の直径dが、10mmである。したがって、横軸の目盛りは、ノズル10の噴出口から5mm~40mmまでを示す。また、図9の縦軸は、距離xを直径dによって除した値が0.5、つまり、ノズル10の噴出口から5mm離れた位置における噴流900の速度(以下、基準速度U0)と、各位置における噴流900の速度(以下、噴流速度U)との比を示す。具体的には、縦軸は、噴流速度Uを基準速度U0で除した値(以下、噴流速度比)を示す。
【0036】
また、図9には、波形W1~W4が示される。第1波形W1は、上述した印加周期によって制御部23が電源供給部21を制御した場合(以下、条件1)の噴流速度比と、口径距離比との関係を示す波形である。第2波形W2は、電圧印加装置20が電極11に電圧を印加しなかった場合(以下、条件2)の噴流速度比と、口径距離比との関係を示す波形である。第3波形W3は、電圧印加装置20によって電極11に電圧を印加し続けた場合(以下、条件3)の噴流速度比と、口径距離比との関係を示す波形である。第4波形W4は、印加周期と同じ長さの周期であって、当該周期の50%の期間だけ電極11に電圧を印加し、他の50%の期間だけ電極11に電圧を印加しない場合(以下、条件4)の噴流速度比と、口径距離比との関係を示す波形である。
【0037】
図9に示す通り、第1波形W1は、ノズル10の噴出口からの距離が40mm(口径距離比が「4」)の位置における噴流速度比が、他の場合より小さい値を示す。換言すると、印加周期によって誘起流250を生じさせた場合(条件1)、ノズル10の噴出口から遠い位置における噴流速度Uが最も遅くなる。また、第2波形W2は、ノズル10の噴出口からの距離が40mmの位置における噴流速度比が、他の場合より大きい値を示す。換言すると、電極11に電圧を印加しなかった場合(条件2)、ノズル10の噴出口から遠い位置における噴流速度Uが最も速くなる。
【0038】
また、第3波形W3、及び第4波形W4は、ノズル10の噴出口からの距離が40mmの位置における噴流速度比が、第1波形W1より大きい値を示し、第2波形W2より小さい値を示す。換言すると、条件3、又は条件4の場合、ノズル10の噴出口から遠い位置における噴流速度Uが、印加周期によって制御した場合よりも速くなり、電圧を印加しなかった場合よりも遅くなる。
【0039】
図10は、本実施形態に係る条件1の噴流900の画像である。具体的には、電圧印加装置20が印加周期において電極11に電圧を印加、及び停止した際に、撮像装置41が噴流900を撮像した画像である。この場合、図10に示す通り、噴流900には、定期的に渦が生じている。また、ノズル10の噴出口から遠い位置(口径距離比が「4」)において、噴流900が拡散されている。
【0040】
図11は、本実施形態に係る条件2の噴流900の画像である。具体的には、電圧印加装置20が電極11に電圧を印加しなかった際に、撮像装置41が噴流900を撮像した画像である。この場合、図11に示す通り、噴流900には、定期的に渦が生じているが、ノズル10の噴出口から遠い位置(口径距離比が「4」)においても、噴流900が拡散していない。
【0041】
図12は、本実施形態に係る条件3の噴流900の画像である。具体的には、電圧印加装置20が電極11に電圧を印加し続けた際に、撮像装置41が噴流900を撮像した画像である。この場合、図12が示す噴流900は、図11が示す噴流900よりも拡散しているが、図10が示す噴流900のように渦が生じていない。このため、図10が示す噴流900よりも、ノズル10の噴出口から遠い位置(口径距離比が「4」)において、噴流900が拡散されていない。
【0042】
図13は、本実施形態に係る条件4の噴流900の画像である。具体的には、印加周期と同じ長さの周期であって当該周期の50%の期間だけ電極11に電圧を印加し、当該周期の50%の期間、電極11に電圧を印加しない制御をした際に、撮像装置41が噴流900を撮像した画像である。この場合、図13が示す噴流900は、図11が示す噴流900よりも拡散し、かつ図10が示す噴流900のように渦が生じている。しかし、図10が示す噴流900よりも、ノズル10の噴出口から遠い位置(口径距離比が「4」)において、噴流900が拡散されていない。
【0043】
なお、本実施形態の一例において、制御部23とは、電圧制御部の一例である。
また、本実施形態の一例において、第1印加期間とは、印加期間の一例である。また、第1非印加期間とは、限定非印加期間の一例である。また、第2印加期間、及び第3印加期間とは、短印加期間の一例である。また、第2非印加期間と、第3非印加期間とは、非印加期間の一例である。
【0044】
また、本実施形態の一例において、制御部23は、第1印加期間、第2印加期間、及び第3印加期間において、第1状態の制御を行う。また、制御部23は、第1非印加期間、第2非印加期間、及び第3非印加期間において、第2状態の制御を行う。ここで、各印加期間において、制御部23の制御に基づいて、電源供給部21が電極11に印加する電圧の電圧値は、それぞれ異なる電圧値であってもよい。
【0045】
本実施形態の一例では、印加周期に複数の短印加期間(この一例では、第2印加期間、及び第3印加期間)と、印加期間の数に対応する数の非印加期間(この一例では、第2非印加期間、及び第3非印加期間)が含まれる場合について説明したが、これに限られない。印加周期には、少なくとも1つの短印加期間(例えば、第2印加期間)が含まれる構成であってもよい。また、印加周期には、印加周期に対応する数(この場合、1つ)の非印加期間(例えば、第2非印加期間)が含まれる。
【0046】
[実施形態のまとめ]
以上説明したように、プラズマアクチュエータ1は、ノズル10と、電圧印加装置20とを備える。電圧印加装置20は、ノズル10に配置される電極11に対して印加周期によって電圧を印加、及び停止することにより、誘起流250を生じさせる。
ここで、ノズル10の噴出口から遠い位置において噴流速度比の値が小さい(例えば、第1波形W1)とは、噴流900の速度が遅くなっていることを示す。噴流900の速度が遅くなる場合、噴流900が拡散していくことを示す。本実施形態のプラズマアクチュエータ1は、電圧印加装置20が印加周期によって誘起流250を生じさせることにより、噴流900を効率的に拡散することができる。
【0047】
また、本実施形態のプラズマアクチュエータ1は、印加周期に応じて誘起流250を生じさせ、第1印加期間によって生じた誘起流250と、第2印加期間によって生じた誘起流250と、第3印加期間によって生じた誘起流250とによって、それぞれ噴流900に渦を生じさせる。また、この渦は、ノズル10の噴出口から遠い位置(例えば、口径距離比が「4」の位置)においてペアリングされる。これにより、本実施形態のプラズマアクチュエータ1は、渦同士がペアリングすることにより、より大きな渦が生成され、効率的に噴流900を拡散することができる。
例えば、本実施形態のプラズマアクチュエータ1を、内燃機関の燃焼室に混合気を拡散させる仕組みに用いることにより、燃焼室内に効率的に混合気を拡散させることができる。
【0048】
なお、本実施形態のプラズマアクチュエータ1の制御対象の噴流900が、特定の特徴を有する噴流900である場合、記憶部25には、当該特定の特徴に対応する印加期間情報25-1が記憶される構成であってもよい。また、この場合、電圧印加装置20は、操作部22を備えていなくてもよい。
【0049】
また、上述では、誘電体12が円筒部と、当該円筒部の底面に円径外側方向に向かって延在されたつば部とを有する形状である場合について説明したが、これに限られない。プラズマアクチュエータ1は、誘電体12を挟んだ電極11に電圧を印加し、誘起流250を発生させることができれば、いずれの形であってもよい。プラズマアクチュエータ1は、例えば、図1に示す板状の形状であってもよい。
【0050】
[非印加期間の他の例について]
また、上述では、非印加期間は、制御部23の制御に基づいて、電源供給部21が電極11への電圧の印加を停止する期間である場合について説明したが、これに限られない。非印加期間は、例えば、制御部23の制御に基づいて、電源供給部21が印加期間よりも低い電圧を電極11に印加する期間であってもよい。ここで、電源供給部21が非印加期間に印加する電圧は、プラズマが発生させない、又は誘起流250を生じさせるまでのプラズマが発生しない程度の低電圧である。電源供給部21が非印加期間に印加する低電圧の電圧値は、誘電体12の形状、及び材質に基づく電圧値である。また、電源供給部21が、非印加期間において電極11に電圧を印加する場合、当該電圧の電圧値は、いずれの非印加期間において合致する電圧値であってもよく、非印加期間毎に異なる電圧値であってもよい。
【0051】
なお、上記の各実施形態における電圧印加装置20が備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0052】
なお、電圧印加装置20が備える各部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、電圧印加装置20が備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0053】
また、電圧印加装置20が備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0054】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0055】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…プラズマアクチュエータ、10…ノズル、11…電極、11-1…内側電極、11-2…外側電極、12…誘電体、20…電圧印加装置、21…電源供給部、22…操作部、23…制御部、25…記憶部、25-1…印加期間情報、40…測定装置、41…撮像装置、50…レーザ装置、90…コンパレータ、200…プラズマ領域、250…誘起流、900…噴流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図13