(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ソフトキャンディの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
A23G3/34 101
(21)【出願番号】P 2017135122
(22)【出願日】2017-07-11
【審査請求日】2020-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】393029974
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】初田 幸穂
(72)【発明者】
【氏名】石田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】宮部 文子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 理恵
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 和広
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3129541(JP,U)
【文献】特開2018-046788(JP,A)
【文献】特開2007-075060(JP,A)
【文献】特開2009-171961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全工程を100℃未満で行うソフトキャンディの製造方法であって、
未加水の粉末糖質甘味料とゼラチン溶液との混練後に、
加水することなく油脂及び乳化剤をそれぞれ個別に添加してソフトキャンディ生地を調製する工程を含むことを特徴とするソフトキャンディの製造方法。
【請求項2】
下記(1)~(5)の工程を備える請求項1記載のソフトキャンディの製造方法。
(1)ゼラチンを水性媒体で溶解しゼラチン溶液を調製する工程
(2)
未加水の粉末糖質甘味料を混練機に投入し加温する工程
(3)上記加温した
未加水の粉末糖質甘味料に、
加水することなく、上記ゼラチン溶液を添加後、混練する工程
(4)更に、油脂及び乳化剤をそれぞれ個別に添加後、混練してソフトキャンディ生地を調製する工程
(5)上記ソフトキャンディ生地を押出し成形する工程
【請求項3】
(1)工程のゼラチン溶液を品温60~80℃に維持したまま、4時間以内に(3)工程の
未加水の粉末糖質甘味料に添加する請求項2記載のソフトキャンディの製造方法。
【請求項4】
(2)工程の混練機がニーダーである請求項2又は3記載のソフトキャンディの製造方法。
【請求項5】
品温25℃でソフトキャンディをレオメーターで測定したときの物性値が下記2条件を満たす請求項1乃至4のいずれか1項に記載のソフトキャンディの製造方法。
(X)前記ソフトキャンディ(横10mm×縦20mm×厚み5mm)の縦側両端を上下位置で固定し、下方向に300mm/minの速度で引張したときにちぎれるまでの引張距離が16~20mm
(Y)前記ソフトキャンディ(横20mm×縦20mm×厚み5mm)に対し円柱型5mmφのプランジャーをセットし、厚み上方向から垂直に3mm、60mm/minの速度で連続して2回圧縮し、
圧縮1回目の圧縮開始からプランジャー停止までの応力曲線の面積(A1)と圧縮2回目の圧縮開始からプランジャー停止までの応力曲線の面積(A2)の比率(A2/A1)を弾力値とするとき、該弾力値が0.60~0.63
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のソフトキャンディの製造方法で製造したソフトキャンディであって、
品温25℃でソフトキャンディをレオメーターで測定したときの物性値が下記2条件を満たすソフトキャンディ。
(X)前記ソフトキャンディ(横10mm×縦20mm×厚み5mm)の縦側両端を上下位置で固定し、下方向に300mm/minの速度で引張したときにちぎれるまでの引張距離が16~20mm
(Y)前記ソフトキャンディ(横20mm×縦20mm×厚み5mm)に対し円柱型5mmφのプランジャーをセットし、厚み上方向から垂直に3mm、60mm/minの速度で連続して2回圧縮し、
圧縮1回目の圧縮開始からプランジャー停止までの応力曲線の面積(A1)と圧縮2回目の圧縮開始からプランジャー停止までの応力曲線の面積(A2)の比率(A2/A1)を弾力値とするとき、該弾力値が0.60~0.63
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、100℃未満で製造するソフトキャンディの製造方法に関し、更に詳しくは、さっくりした食感と弾力のある食感とのふたつの食感をバランスよく備え、かつ1年という長期間冷蔵乃至常温(1~25℃)で個包装せずに保存しても、変形したり、ソフトキャンディ同士が付着することのない、保形性及び付着防止性の両方において良好な保存耐久性を有するソフトキャンディの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ソフトキャンディを製造、流通する際の問題点に、製造装置、包装体、又は歯に付着するような高い粘着性や付着性が挙げられる。その改善策のひとつに、100℃に満たない加熱によってソフトキャンディ生地を調製後、成形して製造することが提案されている。
【0003】
例えば、結晶性糖質、油脂、乳化剤、およびゼラチンを非加熱下で混練して得た練り生地を、所定形状に成形する練り菓子の製法が知られている(例えば、特許文献1参照)。該製法では、加熱によって煮詰められていないため、長期にわたる品質安定性(=経日安定性)に優れるとされている。更に、該油脂と該乳化剤とを混合・均質化したなじみ成分を事前に調製してから他の原料と混練することで、練り生地中のどの部分の水分も充分に乳化されているため、組織が安定しており、長期保存後も品質が安定した構造を維持するとされている。
【0004】
しかしながら、該練り菓子は、ゼラチンを最後に添加混合する工程であることから、ゼラチンを練り生地全体に分散するために添加できるゼラチン量には制限を生じ、弾力のある食感を付与するために濃度が高く粘性のあるゼラチン水溶液を添加することはできなかった。
【0005】
他には、チューイング性のある食感を有し、かつ、歯に対する付着性が防止されたソフトキャンディが知られている(例えば、特許文献2参照)。該ソフトキャンディは、液体ポリデキストロースや液体難消化性デキストリンのようなある程度の高い粘性を持つ液体原料が必要であり、該液体原料を使用することにより、高温で加熱することなく甘味料等の粉末素材を一塊に結着させることができ、歯につきにくい食感になるとされている。
【0006】
また、製造方法として、高温で加熱しないために生地調製時から水分含有量を制限する必要があり、増粘多糖類や水あめとキャラメルパウダーが固結したようなつぶつぶの固形物が発生することなく、滑らかなソフトキャンディが得られるように、糖類等の粉末素材に対し、液体原料を粘性の低い順に加える方法が有効であることを開示している。すなわち、まず、粉末素材に添加する粘性の最も低い液体原料として、油脂に乳化剤を添加して温めたものを投入している。これは、油脂及び乳化剤をソフトキャンディ生地中に満遍なく分散し、乳化剤のカット刃への生地の付着抑制効果を最も有効に発揮させるためであることが推察される。
【0007】
この製造方法では、粘性の最も高い増粘多糖類を最後に投入して撹拌混合することから、該増粘多糖類をソフトキャンディ生地全体に分散するためには、上記練り菓子と同様に、添加できる増粘多糖類量に制限を生じることになる。すなわち、チューイング性のある食感を付与することはできても、弾力のある食感とするために、増粘多糖類量を増やすことは均一分散性の点で困難であった。
【0008】
他方、砂糖、糖アルコール等の結晶性糖類、ゼラチン及び油脂をベースとする、引き裂き可能な特性を有するグミキャンディ様菓子が知られている。(例えば、特許文献3参照)。該グミキャンディ様菓子は、まず加温された液状の油脂に、結晶性糖類を混合し、次に乳化剤を添加した分散液に、加熱処理ゼラチン溶液を混合・攪拌し、得られた生地に引き飴処理を施した後、所望の型に充填して冷却・固化して製造される。なお、該加熱処理ゼラチン溶液とは、膨潤後に60~90℃、詳細には60~70℃では12~24時間、70~80℃では5~12時間、80~90℃では1~5時間熱処理しゼラチン溶液の粘度が変化した、いわゆる「へたれた状態」のゼラチンを指す。
【0009】
上記のような製法で製造された該グミキャンディ様菓子は、まず液状の油脂と結晶性糖類を混合すること、更に加熱処理ゼラチン溶液を用いることで、得られるグミキャンディ様菓子が餅様のねちっとした、粘性の伴う粘弾性食感が付与されるため弾力を感じにくく、さらに保存耐久性の点でやや問題があった。
【0010】
また、包装紙への付着、キャンディ外観等の経日耐久性の良好なソフトキャンディが知られている(例えば、特許文献4参照)。該ソフトキャンディの物性は、砂糖等の結晶性糖類を含む粉体原料粒子が、水分により表面が微融解した状態で、ゼラチン等のつなぎ成分と油脂等の結着抑制成分とを含む連続層中に分散し、且つつなぎ成分と結着抑制成分とを介して相互結着させることで得られる。そのためには、非加熱条件下で、まず粉体原料と油脂とを混合する。その後、ゼラチンと、水飴、還元水飴等の非結晶性糖類とを添加混合して調製されるソフトキャンディ生地を成形する製法によって得られる。
【0011】
しかしながら、まず粉体原料と油脂とを混合する該製法で得られたソフトキャンディは、ソフトキャンディ特有の滑らかで粘性のある食感であることから、弾力がありながらさっくりした食感を訴求したソフトキャンディを製造するためには改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2013-226093号公報
【文献】特開2015-100291号公報
【文献】特開2012-115222号公報
【文献】特開平9-23819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、100℃未満で製造するソフトキャンディの製造方法を提供することにある。更に詳しくは、さっくりした食感と弾力のある食感とのふたつの食感をバランスよく備え、かつ1年という長期間冷蔵乃至常温(1~25℃)で個包装せずに保存しても、変形したり、ソフトキャンディ同士が付着することのない、保形性及び付着防止性の両方において良好な保存耐久性を有するソフトキャンディの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、全工程を100℃未満で行うソフトキャンディの製造方法であって、糖質甘味料とゼラチン溶液との混練後に、油脂及び乳化剤をそれぞれ個別に添加してソフトキャンディ生地を調製する工程を含むことを特徴とするソフトキャンディの製造方法により上記目的を達成する。
【0015】
好ましくは、下記(1)~(5)の工程を備える。
(1)ゼラチンを水性媒体で溶解しゼラチン溶液を調製する工程
(2)糖質甘味料を混練機に投入し加温する工程
(3)上記加温した糖質甘味料に、上記ゼラチン溶液を添加後、混練する工程
(4)更に、油脂及び乳化剤をそれぞれ個別に添加後、混練してソフトキャンディ生地を調製する工程
(5)上記ソフトキャンディ生地を押出し成形する工程
【0016】
好ましくは、(1)工程のゼラチン溶液を品温が60~80℃に維持したまま、4時間以内に(3)工程の糖質甘味料に添加することが好適であり、また、(2)工程の混練機がニーダーであることが更に好適である。
【0017】
更に好ましくは、得られるソフトキャンディの引張距離が16~20mmで、かつ弾力値が0.60~0.63であることが望ましい。
【0018】
また、本発明は、上記製造方法を用いたソフトキャンディであって、引張距離が16~20mmで、かつ弾力値が0.60~0.63であるソフトキャンディを提供する。
【0019】
すなわち、従来、高い粘着性や付着性を改善するために、ソフトキャンディ生地を煮詰めず100℃未満で調製することは有効な方法であったが、弾力がありながらさっくりした食感のソフトキャンディとするためにゼラチンを比較的多く含有する場合、好ましくはゼラチンを5重量%以上含有する場合、従来の100℃未満で行うソフトキャンディ生地の調製方法だけでは、完全に解消できていなかった。
【0020】
そこで、調製温度以外の製造条件に注目し鋭意検討したところ、驚くべきことに、原料の混合順序を変更することで、得られるソフトキャンディの物性を変化させることができることを見出した。すなわち、ゼラチン溶液を、原料を混合する初期段階に投入することで、具体的には、まず糖質甘味料と溶解したゼラチン溶液とを混練した後に油脂や乳化剤をそれぞれ個別に添加すると、さっくりした食感に加え、ゼラチン特有のほどよい弾力のある食感をバランスよく備えることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法によって得られるソフトキャンディは、さっくりした食感と弾力のある食感とのふたつの食感をバランスよく備える。なお、本発明において、さっくりした食感とは、咀嚼する際、歯が入るとすっと噛み切れるような、粘つきがなく、かつ歯つきのない歯切れのよい食感を意味する。また、本発明において、弾力のある食感とは、咀嚼する際、歯があたった瞬間に程よい抵抗力を感じる様子を指し、チューイング性(粘りと伸びのある弾性)のあるソフトキャンディよりも抵抗力があり撥ね返る感じを有する。
【0022】
そして、本発明に係るソフトキャンディは、通常なら相反するように感じる2つの食感、すなわち、歯切れのよいさっくりした食感と、撥ね返るような程よい抵抗力を感じる心地良い弾力のある食感の両方を、咀嚼の際、同時にバランスよく感じることができ、この両食感のバランスのよさが豊かな咀嚼感を与える。
【0023】
更に、本発明の製造方法によって得られるソフトキャンディは、製造中や製造直後だけでなく、1年という長期間冷蔵乃至常温(1~25℃)で保存しても、1粒ずつ個包装しなくても、変形したりソフトキャンディ同士が付着することなく、保形性及び付着防止性の両方において良好な保存耐久性を有する。したがって、ソフトキャンディ粒を裸のまま、複数粒収容密封した包装形態とすることができ、また、手でつまんだ時にべたつかないので、開封した時の連食簡便性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を詳しく説明する。
本発明のソフトキャンディの製造方法では、全工程を100℃未満で行うことが、さっくりした食感及び保存時の付着防止性の点で重要である。すなわち、全工程を100℃未満で行うと、得られるソフトキャンディ中の糖質甘味料が主に結晶状態を維持することから、ソフトキャンディ生地中に非溶解の糖質甘味料が分散した状態となり、目的の食感及び保存時の付着防止性が付与される。他に、製造中の保形性や、歯への付着防止性も良好となる。
【0025】
好ましくは、全工程のうち、原料を添加、混練するソフトキャンディ生地を調製する工程を35~80℃で行うと、ソフトキャンディ中に、非溶解の糖質甘味料が分散すると共にゼラチンもまた均一に分散することから、さっくりした食感と弾力のある食感とのふたつの食感をバランスよく付与する点で好適である。
【0026】
また、本発明のソフトキャンディの製造方法は、ソフトキャンディ生地を調製する工程を含むものであるが、その際、まず糖質甘味料とゼラチン溶液とを混練し、その後に油脂及び乳化剤をそれぞれ個別に添加して調製することが、本発明の目的の食感及び保存耐久性(保形性、付着防止性のいずれか)の点で重要である。すなわち、ソフトキャンディ生地を調製する一連の工程のうち、最初の段階で糖質甘味料とゼラチン溶液を混練することで、ゼラチン及び水分を均一に分散させ、安定したソフトキャンディ組織構造を形成することができる。さらに、油脂よりも先にゼラチン溶液を添加すると、糖質甘味料の吸水性が高まりソフトキャンディ内部に水分が閉じ込められて、ソフトキャンディ表面がべたつかず、保存時のソフトキャンディ同士の付着性を抑制することができる。例えば、従来技術にあるように、油脂と乳化剤とを予め混合して乳化油脂として添加すると、硬くしまったより抵抗力のある弾力食感として感じてしまう。
【0027】
上述に準ずるソフトキャンディの製造方法として、好ましくは、例えば、下記(1)~(5)の工程を備える製造方法を挙げることができる。
(1)ゼラチンを水性媒体で溶解しゼラチン溶液を調製する工程
(2)糖質甘味料を混練機に投入し加温する工程
(3)上記加温した糖質甘味料に、上記ゼラチン溶液を添加後、混練する工程
(4)更に、油脂及び乳化剤をそれぞれ個別に添加後、混練してソフトキャンディ生地を調製する工程
(5)上記ソフトキャンディ生地を押出し成形する工程
【0028】
以下、各工程について詳しく説明する。
(1)工程について
まず、ゼラチンを水性媒体で溶解しゼラチン溶液を調製する。該ゼラチンは、由来、原料処理方法は特に問わず、牛、豚、鳥、魚等から得られたもの、酸処理、アルカリ処理されたもの等いずれを用いてもよいが、好ましくは、比較的高ブルーム(250ブルーム以上)のものが、心地良い弾力のある食感、及び保存時の付着防止性を付与する点で好適である。他に、豚由来の酸処理ゼラチンは、得られるソフトキャンディの色調及び風味を良好にすることから好適に用いられる。
【0029】
上記水性媒体としては、特に限定するものではなく、上水道水、シロップ等の各種水溶液等が挙げられる。
【0030】
なお、ゼラチン含有量及び水分含有量を、好ましくは、ソフトキャンディ全体重量中5~10重量%(ゼラチン)及び10~15重量%(水分)となるように設計すると、さっくりした食感と弾力のある食感とのふたつの食感をバランスよく備える点で好適である。
ゼラチンを10重量%より多く含有すると、また水分を15重量%より多く含有すると、弾力のある食感が強くなる傾向があり、さっくりした食感を感じにくくなる。また、ゼラチンが5重量%未満の場合はやわらかく、さっくりした食感が弱くなり、弾力のある食感が強くなる傾向があり、水分が10重量%未満の場合はさっくりした食感が強く、硬くなる傾向がある。
【0031】
また、ゼラチンの溶解方法としては、例えば、膨潤溶解法及び直接溶解法が挙げられ、どちらを採用してもよい。
【0032】
上記膨潤溶解法とは、ゼラチンに予め室温程度の水性媒体を十分に吸水させて膨潤し、次に加温して溶解する方法である。例えば、1~25℃の水性媒体にゼラチンを加えて吸水膨潤し、次に品温60~80℃に加温して溶解することでゼラチン溶液を調製する方法が挙げられる。
【0033】
上記直接溶解法とは、ゼラチンを、加温した水性媒体に、攪拌しながら直接投入して溶解する方法である。なお、水性媒体の加温は、直接ゼラチンを投入して溶解できる、かつゼラチン投入後の品温が60℃~80℃となるように温度設定すればよく、例えば、90℃以上100℃未満が挙げられる。
【0034】
また、ゼラチン溶液の品温60~80℃の維持時間は、好ましくは4時間以内、更に好ましくは1時間以内とすることが望ましい。この時間内に後述する(3)工程の糖質甘味料にゼラチン溶液を添加すると、ゼラチンに対し熱による過剰な負荷がかからないため、ゼラチンの物性劣化を抑制でき、ゼラチン本来の粘弾性を有し、本発明に係るソフトキャンディに弾力のある食感を付与することができる点で好適である。なお、この4時間には、膨潤溶解法で行うように、ゼラチンの溶解のための60~80℃の加温処理時間も含むものである。
【0035】
(2)工程について
次に、糖質甘味料を混練機に投入し加温する。該糖質甘味料としては、例えば、単糖類(ブドウ糖、果糖、キシロース等)、二糖類以上の多糖類(ショ糖(上白糖、グラニュー糖、粉糖等)、乳糖、麦芽糖、異性化乳糖、トレハロース、オリゴ糖、デキストリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水飴等)、糖アルコール(キシリトール、マルチトール、還元パラチノース(パラチニット)、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、還元乳糖、還元水飴等)等が挙げられ、単独でも複数組み合せて用いてもよい。また好ましくは、糖質甘味料は粉末であることが、ゼラチンを溶解するための水性媒体を充分に配合できる点、後述する糖質甘味料の吸水性を保持する点で好適である。
【0036】
これらの中でも、好ましくは、粉糖は保存耐久性(保形性及び付着防止性)、加えて風味、及び保存時の両食感の安定性の点で好適に用いられる。また、デキストリンはさっくりした食感及び弾力のある食感のバランス調整、保存時の保形性を付与する点で好適であり、加えて安定した成形性の点で好適に用いられる。
【0037】
なお、上述のとおり、上記糖質甘味料の加温温度は100℃未満で行うことが、さっくりした食感と弾力のある食感のふたつの目的の食感を付与する点で重要である。すなわち、この後のゼラチン溶液を添加する(3)工程において、ゼラチン溶液の急激な温度低下を抑制し、ソフトキャンディ中のゼラチンの均一分散性を促すことで、目的の食感が得られる。好ましくは、加温温度を35~60℃にすると、さっくりした食感と弾力のある食感とのふたつの食感をバランスよく付与する点で好適である。なお、一般的なソフトキャンディの製造方法で用いられる煮詰め工程のように、糖質甘味料に過剰の水を加え加熱溶解後濃縮する煮詰め工程は行わない。
【0038】
また、上記混練機としては、粘性の高いゼラチン溶液を糖質甘味料に均一に分散させることができる点で、ニーダーが好適に用いられる。
【0039】
(3)工程について
次に、上記加温した糖質甘味料に、上記ゼラチン溶液を添加後、混練する。上述のとおり、(1)工程で調製したゼラチン溶液の品温60~80℃の維持時間が4時間以内に添加することは、ゼラチンの物性劣化を抑制し弾力ある食感を付与できる点で望ましい。なお、この4時間には、膨潤溶解法で行うように、ゼラチンの溶解のための60~80℃の加温処理時間も含むものである。
【0040】
(4)工程について
次に、油脂及び乳化剤をそれぞれ個別に添加後、混練してソフトキャンディ生地を調製する。好ましくは、油脂添加後に乳化剤を添加することが、本発明の目的の食感及び保存耐久性(保形性、付着防止性のいずれか)の点で望ましい。
【0041】
上記油脂としては、常温で固体の食用の油脂であればよく、植物性、動物性の何れでもよい。油脂としては、例えば、マーガリン、カカオバター、菜種油、コーン油、パーム硬化油、パーム核油等の植物性油脂、バター、ラード、卵油等の動物性油脂、カカオ代替油、中鎖トリグリセリド等の加工油脂等が挙げられ、単独でも複数組み合せて用いてもよい。さらに、融点が35℃以上であると、良好な保存耐久性(保形性及び付着防止性)を付与できる点で好適である。
【0042】
上記乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられ、単独でも複数組み合せて用いてもよい。
【0043】
本発明に係るソフトキャンディには、上述の原料以外に、本発明の目的を損なわない範囲であれば、適宜選択した副原料を用いてもよい。例えば、酸味料(クエン酸、酒石酸等)、高甘味度甘味料(アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム等)、安定剤、着色料、香料、乾燥果実、種実類、各種風味原料(乳製品、茶類、コーヒー、ココア、ハーブ類、蜂蜜、果汁、調味料、エキス)、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維、美肌成分(コラーゲン、ヒアルロン酸等)、グリセリン、増粘多糖類、澱粉等が挙げられる。これらは、単独でも、複数組み合せて用いてもよく、形態が液状のものはそのまま、あるいは粉末化したものを適宜用いればよく、好ましくは、ゼラチンを溶解するための水性媒体を充分に配合できることから、粉末形態が用いられる。また、該副原料は、乳化剤の後に添加し、100℃未満で混練すればよい。
【0044】
なお、上記のようにして調製したソフトキャンディ生地は、好ましくは、エージングすると、ソフトキャンディ生地内の糖質甘味料の結晶状態が安定化し、良好な保存耐久性(保形性及び付着防止性)が得られる点で好適である。加えて、後述する成形工程において、安定した成形性が得られる点で好適である。
【0045】
以上の(1)~(4)工程がソフトキャンディ生地を調製する工程であり、このような順序でソフトキャンディ生地を調製することで、得られるソフトキャンディ中にゼラチン及び水分を均一に分散させ、安定したソフトキャンディ組織構造を形成し目的の食感が得られ、さらに、糖質甘味料の吸水性が高まりソフトキャンディ内部に水分が閉じ込められて、ソフトキャンディ表面がべたつかず、保存時のソフトキャンディ同士の付着性を抑制することができる。
【0046】
(5)工程について
最後に、上記ソフトキャンディ生地を押出し成形する。成形方法は、押出し成形であれば特に限定することはないが、例えば、エクストルーダーを用いてソフトキャンディ生地をロープ状に押出した後、所定間隔で切断することにより粒状に成形する、あるいは球断機によって球状に球断成形するなどが挙げられる。他には、押出し直後に切断し成形物を得る方法を採用してもよい。
【0047】
上記(1)~(5)の工程を経て製造されるソフトキャンディは、さっくりした食感と弾力のある食感とのふたつの食感をバランスよく備え、さらに、製造中や製造直後だけでなく、1年という長期間冷蔵乃至室温(1~25℃)で個包装せずに保存しても、変形したり、ソフトキャンディ同士が付着することなく、保形性及び付着防止性の両方において良好な保存耐久性を有する。
【0048】
また、上記ソフトキャンディを製品化する際には、適宜包装体で包装すればよい。なお、本発明に係るソフトキャンディは、保形性及び付着防止性の両方において良好な保存耐久性を有し、変形したりソフトキャンディ同士の付着がないことから、1粒ずつ個包装せずにそのまま複数粒収容密封した包装形態とすることができる。
【0049】
また、本発明に係るソフトキャンディのさっくりした食感と弾力のある食感は、上述のように定義されるものであるが、両食感は、レオメーター測定により次のような指標で示すことができる。
【0050】
<さっくりした食感>
装置;レオメーターCR-500DX(株式会社サン科学製)
試料;ソフトキャンディ(横10mm×縦20mm×厚み5mm)
測定条件
プランジャー;引張
測定速度;300mm/min
最長引張距離;25mm
測定品温;25℃
【0051】
さっくりした食感は、ソフトキャンディの縦側両端を上下位置で固定し、下方向に引張したときにちぎれるまでの距離(以下、「引張距離」という。)を指標とする。すなわち、さっくりした食感であるほど引張距離が短く、一方、チューインング性が強くなるとちぎれにくく伸び続ける傾向となる。好ましくは、引張距離が16mm以上20mm以下でちぎれることが、本発明が目的とする良好なさっくりした食感を有し、かつ弾力のある食感が共存しても同時に両者をバランスよく感じ得る食感となる。16mm未満でちぎれる場合はさっくりした食感が強すぎる傾向があり、20mmを超えてちぎれる、或いは25mm(最長引張距離)でもちぎれない場合は、チューイング性のある食感となる傾向がある。
【0052】
<弾力のある食感>
装置;レオメーターCR-500DX(株式会社サン科学製)
試料;ソフトキャンディ(横20mm×縦20mm×厚み5mm)
測定条件
プランジャー;円柱型5mmφ
測定速度;60mm/min
圧縮距離;3mm
測定品温;25℃
【0053】
弾力のある食感は、ソフトキャンディに対しプランジャーをセットし、厚み上方向から垂直に連続して2回圧縮することで得られる応力曲線から、後述の式を用いて算出した弾力値を指標とする。この弾力値は数値が大きいほど弾力が強いことを意味する。さっくりした食感と弾力のある食感の両方の食感をバランスよく備えるためには、該弾力値が0.60~0.63であることが好適であり、0.60より低いと弾力を感じにくくさっくりした食感を強く感じ、0.63より高いと弾力のみが強調された食感となる傾向がある。
【0054】
弾力値=A2/A1
A1=圧縮1回目の圧縮開始からプランジャー停止までの応力曲線の面積
A2=圧縮2回目の圧縮開始からプランジャー停止までの応力曲線の面積
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0056】
<実施例1>
表1に示す組成で、下記(1)~(5)の工程を100℃未満で行い、ソフトキャンディを製造した。なお(5)の工程は、押出し直後に切断する押出し成形方法を採用した。(1)10℃の上水道水にゼラチンを加えて吸水膨潤し、次に品温65℃に加温して溶解することによりゼラチン溶液を調製した。なお、該ゼラチン溶液は、溶解処理にて品温が65℃達温後そのまま維持し1時間経過後に下記(3)工程に用いた。
(2)糖質甘味料をニーダーに投入し、40℃に加温した。
(3)上記加温した糖質甘味料に、上記ゼラチン溶液を添加後、混練した。
(4)更に、60℃に加温した油脂、乳化剤、副原料の順にそれぞれ個別に添加後、混練してソフトキャンディ生地を調製した。
(5)上記ソフトキャンディ生地を押出し成形し、ソフトキャンディ(約2.5g/粒)を得た。
【0057】
【0058】
<実施例2>
実施例1と同じ組成で、(1)工程において、溶解処理にて品温が65℃達温後そのまま維持し4時間経過後に(3)工程に用いる以外は実施例1と同様に行いソフトキャンディを製造した。
【0059】
<実施例3>
実施例1と同じ組成で、(1)工程を以下のように行う以外は実施例1と同様に行いソフトキャンディを製造した。
(1)ゼラチンを、90℃の上水道水に、攪拌しながら直接投入して溶解することによりゼラチン溶液を調製した。なお、ゼラチン投入後のゼラチン溶液の品温は65℃であった。該ゼラチン溶液は、ゼラチン溶液の品温が65℃達温から10分経過後に(3)工程に用いた。
【0060】
<比較例1>
実施例1と同じ組成で、(1)工程を以下のように行う以外は実施例1と同様に行いソフトキャンディを製造した。
(1)10℃の上水道水にゼラチンを加えて吸水膨潤し、次に品温65℃に加温して溶解することによりゼラチン溶液を調製した。なお、該ゼラチン溶液は、溶解処理にて品温が
65℃達温後そのまま維持し4時間経過後、更に80℃に加温して2時間経過したものを(3)工程に用いた。
【0061】
<比較例2>
実施例1と同じ組成で、下記(1)~(5)の工程を100℃未満で行い、ソフトキャンディを製造した。なお(5)の工程は、実施例1と同様に行った。
(1)10℃の上水道水にゼラチンを加えて吸水膨潤し、次に品温を65℃に加温して溶解することによりゼラチン溶液を調製した。なお、該ゼラチン溶液は、溶解処理にて品温が65℃達温後そのまま維持し1時間経過後に下記(4)工程に用いた。
(2)60℃に加温した油脂、及び糖質甘味料をニーダーに投入し、40℃で混合した。(3)更に、乳化剤を添加後混合した。
(4)次に、上記ゼラチン溶液を添加後混練し、次いで副原料を添加後混練してソフトキャンディ生地を調製した。
(5)上記ソフトキャンディ生地を押出し成形し、ソフトキャンディ(約2.5g/粒)を得た。
【0062】
<比較例3>
実施例1と同じ組成で、下記(1)~(5)の工程を100℃未満で行い、ソフトキャンディを製造した。なお(5)の工程は、実施例1と同様に行った。
(1)10℃の上水道水にゼラチンを加えて吸水膨潤し、次に品温を65℃に加温して溶解することによりゼラチン溶液を調製した。なお、該ゼラチン溶液は、溶解処理にて品温が65℃達温後そのまま維持し1時間経過後に下記(4)工程に用いた。
(2)60℃に加温した油脂、及び乳化剤とを事前混合してからニーダーに投入した。
(3)更に、糖質甘味料を添加後、40℃で混合した。
(4)次に、上記ゼラチン溶液を添加後混練し、次いで副原料を添加後混練してソフトキャンディ生地を調製した。
(5)上記ソフトキャンディ生地を押出し成形し、ソフトキャンディ(約2.5g/粒)を得た。
【0063】
<比較例4>
実施例1と同じ組成で、(4)工程を以下のように行う以外は実施例1と同様に行いソフトキャンディを製造した。
(4)更に、60℃に加温した油脂及び乳化剤とを事前混合してから添加後、副原料を添加し、混練して、ソフトキャンディ生地を調製した。
【0064】
以上のようにして得られた実施例及び比較例のソフトキャンディの食感及び保存耐久性(保形性及び付着防止性)を、専門パネラー10名により、次の基準で評価した。
【0065】
<食感>
食感は、以下の基準で評価した。
4 さっくりした食感と弾力のある食感とを同時にバランスよく感じる
3 さっくりした食感と弾力のある食感の両方の食感をもつが、バランスが偏り、いずれか片方を強く感じる
2 さっくりした食感と弾力のある食感の両方の食感をもつが、バランスの偏りに加え、何らかの課題が生じる
1 さっくりした食感のみ感じる、弾力のある食感のみ感じる、又はさっくりした食感と弾力のある食感のいずれも感じない
【0066】
保存耐久性は、得られたソフトキャンディ10粒を個包装せずにそのまま一緒にアルミ包材に収容密封し、25℃で1年間保存後開封し、目視で保形性と付着防止性を評価した
。なお、保存耐久性は、以下の基準で評価した。
【0067】
<保存耐久性-保形性>
3 保存前の形状が維持されていた
2 保存前の形状が多少変形した
1 激しく変形し、保存前の形状を留めていなかった
【0068】
<保存耐久性-付着防止性>
3 ソフトキャンディ表面にべたつきはなく、付着を生じなかった
2 ソフトキャンディ表面に多少べたつきはあるが、付着を生じなかった
1 ソフトキャンディ表面がべたつき、ソフトキャンディ同士が付着した
【0069】
また、得られた実施例及び比較例のソフトキャンディの食感に関し、上述したようにレオメーター測定を行い、さっくりした食感を「引張距離」、弾力のある食感を「弾力値」の指標で示した。
【0070】
上記のようにして得られた、食感、保存耐久性については専門パネラー10名の評価結果の平均値を、レオメーター測定については、両食感の指標を表2に示す。なお、専門パネラー10名の個別の評点を表3に示す。
【0071】
【0072】
【0073】
評価の結果、実施例1~3はいずれも遜色はなく、歯切れのよいさっくりとした食感と、撥ね返るような程よい抵抗力を感じる心地良い弾力のある食感の両方を同時にバランスよく感じ、噛み心地が大変良好であった。このことは、レオメーター測定結果とも一致していた。また、保存後であっても、変形したものはなく、ソフトキャンディ表面のべたつき、ソフトキャンディ同士の付着もなく、保形性及び付着防止性において大変良好な保存耐久性を示した。
【0074】
一方、比較例1は、さっくりした食感と弾力のある食感の両方の食感を感じたが、弾力が弱すぎて両食感のバランスが悪く、これはレオメーター測定結果の引張距離が16mm以下であること、弾力値が0.6未満である結果とも一致していた。さらに、ねちっとする食感もあり食感としては不良であり、他に歯付きを生じた。また、保存後に変形は生じなかったが、ソフトキャンディ表面がべたつき、ソフトキャンディ同士が付着しており、保存後の付着防止性が悪かった。
【0075】
比較例2は、さっくりした食感と弾力のある食感の両方の食感を感じたが弾力がやや弱く、さっくりした食感のほうが弾力のある食感よりも強調されており両食感のバランスが悪く、食感としては不良であり、この結果もレオメーター測定結果とも一致していた。他に歯付きも生じた。また、保存後に変形は生じなかったが、ソフトキャンディ表面に多少べたつきを生じ、保存後の付着防止性が悪かった。また、全体的に比較例1と似たような傾向を示した。
【0076】
比較例3は、保存耐久性は良好であったものの、食感が不良であった。具体的には、さっくりした食感と弾力のある食感の両方の食感を感じたが、硬くしまった食感が強調され、弾力が強く両食感のバランスは崩れていた。
【0077】
比較例4は、さっくりした食感と弾力のある食感の両方の食感を感じることはできるものの、弾力性よりも硬い食感が強調され、さっくりした食感と弾力のある食感のバランスが悪かった。保存耐久性は付着防止性は良好であったものの、保形性が悪く一部変形していた。