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特許6993679潤滑油センサヘッド、及びセンサシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】潤滑油センサヘッド、及びセンサシステム
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/26 20220101AFI20220105BHJP
   F01M 11/12 20060101ALI20220105BHJP
   F16N 29/00 20060101ALI20220105BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01F23/26 A
F01M11/12 Z
F16N29/00 E
F16N29/00 H
G01N27/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017224990
(22)【出願日】2017-11-22
(65)【公開番号】P2019095301
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】518450061
【氏名又は名称】センスプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正隼
(72)【発明者】
【氏名】淺川 恭輝
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021001(JP,A)
【文献】特開平02-310428(JP,A)
【文献】特開2014-081257(JP,A)
【文献】特開2014-238312(JP,A)
【文献】特開2014-122801(JP,A)
【文献】特開2005-351688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0186033(US,A1)
【文献】特開2006-105953(JP,A)
【文献】特開2014-066617(JP,A)
【文献】国際公開第2013/009251(WO,A1)
【文献】米国特許第5051921(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/26
F01M 11/12
F16N 29/00
G01N 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向の両側に第一面及び第二面を有する基板と、
前記基板を囲む収容部を含む、金属製の筐体と、
を備え、
前記収容部の少なくとも一部は、潤滑油が貯められる貯油空間内に位置し、
前記基板は、前記第一面に第一電極を有し、
前記筐体は、前記収容部のうち前記第一電極と対向する一部に、第二電極を有し、
前記第二電極は、前記貯油空間につながる対象空間を介して前記第一電極と対向し、
前記第一電極と前記第二電極との間の静電容量に基づいて、前記貯油空間内の潤滑油の液位を検出し、
前記基板は、前記第二面に第三電極及び第四電極を有し、
前記第三電極及び前記第四電極は、前記第二面に沿う平面内で間隔をあけて互いに対向し、
前記第三電極及び前記第四電極でインピーダンスを測定することにより、前記貯油空間内の潤滑油の液質を検出する、
潤滑油センサヘッド。
【請求項2】
前記筐体は、前記貯油空間と前記対象空間とをつなぐ少なくとも1つの貫通孔を前記収容部に有する、
請求項に記載の潤滑油センサヘッド。
【請求項3】
前記第一面は、互いに直交する第二方向及び第三方向に沿って配置され、
前記貫通孔は、前記収容部のうち、前記第二方向の両側に、少なくとも1つずつ配置されている
請求項に記載の潤滑油センサヘッド。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記第三方向に沿って複数配置されている
請求項に記載の潤滑油センサヘッド。
【請求項5】
前記第一面は、互いに直交する第二方向及び第三方向に沿って配置され、
前記筐体は、取付対象物の取付部に対して結合可能なねじ部を含み、
前記ねじ部は、前記第三方向まわりで、前記取付部に対し回転することにより、前記取付部に結合される、
請求項1からのいずれか一項に記載の潤滑油センサヘッド。
【請求項6】
前記基板と前記筐体とを連結する配線部を更に備え、
前記配線部は、可撓性を有する、
請求項1からのいずれか一項に記載の潤滑油センサヘッド。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の潤滑油センサヘッドと、
前記基板及び前記第二電極と電気的に接続されている回路ユニットと、
を備える、
センサシステム。
【請求項8】
前記センサシステムは、前記筐体とは異なる第二筐体を備え、
前記回路ユニットが、前記第二筐体内に収められている、
請求項に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記回路ユニットは、無線通信機能を有する、
請求項又はに記載のセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、潤滑油センサヘッド及びセンサシステムに関する。詳細には、潤滑油が貯められる貯油空間に挿入される潤滑油センサヘッドと、この潤滑油センサヘッドを備えるセンサシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車、建築機械及び航空機等の機械には、種々の潤滑油が使用される。潤滑油は、通常、オイルパン内に貯められる。またオイルパン内の潤滑油には、適当な液位が求められる。
【0003】
潤滑油の液位はオイルゲージで確認することができるが、オイルゲージでは液位の連続的な変化を検出することはできない。このため近年では、潤滑油の液位を連続的に測定するためのセンサをオイルパンに設置することが行われている。例えば、特許文献1には、オイルレベル測定管を備えるオイルレベルセンサを、オイルパン内に設置したオイルレベル検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-293734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のオイルレベル検出装置では、オイルレベルセンサが大型になりやすいという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、小型でありながら、潤滑油の液位を連続して測定できる潤滑油センサヘッド及びセンサシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る潤滑油センサヘッドは、厚み方向の両側に第一面及び第二面を有する基板と、前記基板を囲む収容部を含む、金属製の筐体と、を備える。前記収容部の少なくとも一部は、潤滑油が貯められる貯油空間内に位置する。前記基板は、前記第一面に第一電極を有する。前記筐体は、前記収容部のうち前記第一電極と対向する一部に、第二電極を有する。前記第二電極は、前記貯油空間につながる対象空間を介して前記第一電極と対向する。
【0008】
本開示の一態様に係るセンサシステムは、前記潤滑油センサヘッドと、前記基板及び前記第二電極と電気的に接続されている回路ユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、小型でありながら、潤滑油の液位を連続して測定できる潤滑油センサヘッド及びセンサシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは、第一実施形態に係る潤滑油センサヘッドを示す概略の斜視図である。図1Bは、図1Aに示す潤滑油センサヘッドをX-X線に沿って切断した場合の概略の断面図である。
図2図2Aは、第一実施形態に係る潤滑油センサヘッドが備える基板の概略の斜視図である。図2Bは、図2Aに示す基板を示す概略の背面図である。
図3図3は、第一実施形態に係るセンサシステムが取り付けられたオイルパンを示す概略の断面図である。
図4図4は、第二実施形態に係るセンサシステムを示す概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第一実施形態
図3に示すように、センサシステム100は、取付対象物に取り付けられる。本実施形態のセンサシステム100は、取付対象物の一例であるオイルパン7に取り付けられている。センサシステム100は、潤滑油センサヘッド1と、回路ユニット6とを備える。潤滑油センサヘッド1と回路ユニット6とは第二配線部8を介して接続される。潤滑油センサヘッド1は、貯油空間70内の潤滑油の液位を連続的に検知できるように構成されている。潤滑油センサヘッド1は、その少なくとも一部がオイルパン7内の貯油空間70内に位置した状態で使用される。貯油空間70内には潤滑油が貯められることから、潤滑油センサヘッド1は、その少なくとも一部が潤滑油に浸かった状態で使用される。このため、センサシステム100によって、貯油空間70内の潤滑油の液位を測定することができる。
【0012】
1-1.潤滑油センサヘッド
以下、本実施形態の潤滑油センサヘッド1について、更に詳しく説明する。図1A及び図1Bに示すように、潤滑油センサヘッド1は基板2及び筐体3を備える。
【0013】
1-1-1.基板
図2Aに示すように、基板2は、矩形の板状の部材である。基板2の材質は、特に限定されないが、例えばフッ素樹脂等の樹脂である。
【0014】
基板2は、厚み方向の両側に第一面21及び第二面22を有する。以下、基板2の厚み方向を第一方向、基板2の短手方向を第二方向、基板2の長手方向を第三方向という。すなわち第一面21は、互いに直交する第二方向及び第三方向に沿って配置されている。
【0015】
基板2は、第一面21に第一電極210を有する。また基板2は、第二面22に第三電極221及び第四電極222を有する(図2B参照)。
【0016】
第一電極210は、第一面21の一定の領域において、略均一に、面状に形成された電極である。すなわち第一電極210は、所謂、ベタ電極である。第一電極210は、静電容量を測定するための電極である。
【0017】
第三電極221及び第四電極222は、第二面22に沿う平面内で間隔をあけて互いに対向している。すなわち、第三電極221及び第四電極222の各々は、櫛歯状の電極である。第三電極221及び第四電極222は、インピーダンスを測定するための電極である。第三電極221及び第四電極222でインピーダンスを測定することにより、貯油空間70内の潤滑油の液質を検出することができる。その理由は以下の通りである。潤滑油の使用に伴い、潤滑油の酸化、潤滑油への不純物の混入といった潤滑油の液質の変化が生じる。潤滑油の液質が変化すると、潤滑油のインピーダンスも変化する。第三電極221及び第四電極222が潤滑油に浸かった状態で、第三電極221及び第四電極222に所定周波数の交流信号を印加し、所定周波数に対する第三電極221及び第四電極222間のインピーダンスを測定する。これにより、潤滑油の液質の変化を検出することができる。このため、本実施形態の潤滑油センサヘッド1を備えるセンサシステム100は、貯油空間70に貯められた潤滑油の液質を連続的に測定することができる。
【0018】
図2Aに示すように、基板2には複数の貫通孔23が設けられている。本実施形態では、基板2に3つの貫通孔23が設けられており、それぞれ第一電極210、第三電極221、及び第四電極222と接続されている。
【0019】
潤滑油センサヘッド1は、配線部4を備える。配線部4は、複数の配線40を備える。本実施形態の配線部4は、3つの配線40を備える。各配線40は、基板2に設けられた貫通孔23に接続されている。このため、3つの配線40は、3つの貫通孔23を介して、それぞれ第一電極210、第三電極221、及び第四電極222と接続されている。すなわち、基板2と配線部4とは接続されている。さらに潤滑油センサヘッド1は、第二基板5を備える。第二基板5は、複数の貫通孔50を備える。本実施形態の第二基板5は、3つの貫通孔50を備える。3つの貫通孔50には、それぞれ配線40が接続されている。このため、第二基板5と配線部4とは接続されている。したがって、基板2と第二基板5とは配線部4を介して間接的に接続されている。この第二基板5は、図示されていないが、後述の筐体3と接続される。よって配線部4は、基板2と筐体3とを連結している。本実施形態では、配線部4が可撓性を有することが好ましい。潤滑油の温度は種々に変化し、かつ、潤滑油センサヘッド1はその一部が潤滑油に浸かった状態で使用される。このため、潤滑油センサヘッド1の温度も種々に変化する。潤滑油センサヘッド1では、基板2及び筐体3はそれぞれ異なる材料で形成されているため、基板2及び筐体3はそれぞれ熱膨張係数が異なる。このような潤滑油センサヘッド1の温度が変化すると、基板2及び筐体3の熱膨張係数差によって応力が生じる。配線部4が可撓性を有することにより、この応力を緩和することができる。これにより、潤滑油センサヘッド1の破損を抑制することができる。例えば、配線部4を構成する配線40が可撓性を有することにより、配線部4に可撓性を付与できる。この配線40は、可撓性を有していれば特に限定されないが、例えば、編組線であってもよく、電線であってもよい。特に配線40が、弾性を有する板バネ状であることが好ましい。さらに配線部4は、樹脂41によって覆われていることが好ましい。すなわち、配線40が樹脂封止されていることが好ましい。この場合、配線部4と筐体3とを絶縁することができると共に、配線部4の強度を向上させることができる。
【0020】
1-1-2.筐体
筐体3は金属製である。詳細には、筐体3は導電性を有する金属製である。筐体3の材質の例として、アルミニウムが挙げられる。筐体3は、例えば、溶融した金属を金型に圧入すること(ダイカスト)によって製造することができる。この場合、筐体3の量産性を向上させることができる。
【0021】
筐体3の表面は、例えば、ニッケルめっきが施されていてもよく、フッ素樹脂でコーティングされていてもよい。この場合、筐体3の耐食性を向上させることができる。また筐体3の材質がアルミニウムである場合には、筐体3の表面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されていることも好ましい。この場合、筐体3の耐食性を向上させることができ、かつ、筐体3の強度を向上させることができる。
【0022】
図1Aに示すように、筐体3は、頭部30、ねじ部31、及び収容部32を含む。
【0023】
潤滑油センサヘッド1がオイルパン7に設置されると、頭部30はオイルパン7の外側に配置される(図3参照)。通常オイルパン7は車両の下部に設置されることから、オイルパン7には飛び石、障害物等が当たることがある。上述の通り、筐体3をアルマイト処理すると筐体3の強度を向上させることができ、頭部30に飛び石、障害物等が当たることによる潤滑油センサヘッド1の損傷を抑制することができる。
【0024】
頭部30の形状は、その内部に第二基板5を収容することができれば、特に限定されない。例えば頭部30の形状が、六角ボルトの頭部と同形状であることが好ましい。この場合、オイルパン7に潤滑油センサヘッド1を設置しやすい。
【0025】
本実施形態の頭部30は補強部302を備える。補強部302によって、頭部30に飛び石、障害物等が当たることによる潤滑油センサヘッド1の損傷を更に抑制することができる。補強部302は、鉄製であってもよく、アルミ製であってもよく、その他の金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。
【0026】
本実施形態の頭部30は、コネクタ301を備える。コネクタ301は、回路ユニット6と潤滑油センサヘッド1とを接続するための部材である。コネクタ301は、その内部において、第二基板5と接続されている。このため、コネクタ301は、第一電極210、第二電極320、第三電極221、及び第四電極222と接続されている。
【0027】
ねじ部31は、取付対象物の取付部に結合可能である。本実施形態の取付対象物はオイルパン7であることから、ねじ部31はオイルパン7の取付部73に結合可能である。取付部73は、貯油空間70と通じる貫通孔であり、その内側にねじ山が設けられている。またねじ部31の表面にもねじ山が設けられている。本実施形態では、ねじ部31が雄ねじであって、取付部73が雌ねじである。ねじ部31の頭部30との境界付近には、Oリング等のシール材を設けても良い。この場合、ねじ部31と取付部73とを結合した場合の密閉性を確保することができる。ねじ部31は、第三方向まわりで、取付部73に対して回転することにより、取付部73に結合される。本実施形態においては、第三方向はねじ部31の軸と沿う方向である。このため、ねじ部31を軸方向まわりで回転することによって、取付部73とねじ部31とが結合されるともいえる。取付部73とねじ部31とを結合することにより、筐体3をオイルパン7に固定することができ、オイルパン7に潤滑油センサヘッド1を取り付けることができる。取付部73は、例えばドレインボルト又はオイルゲージの取付孔である。この場合のねじ部31は、ドレインボルト又はオイルゲージの取付孔に結合可能である。すなわち、自動車等が備える既存のドレインボルト又はオイルゲージの代わりに、潤滑油センサヘッド1を取り付けることができる。これにより、取付対象物に潤滑油センサヘッド1を取り付けるための加工等を不要とすることができる。
【0028】
収容部32は、内部に空間を有する板状の部材である。収容部32は、その少なくとも一部が潤滑油が貯められる貯油空間70内に位置した状態で使用される(図3参照)。図1Bに示すように、収容部32の内部には基板2が収められている。言い換えると収容部32は、基板2を囲んでいる。基板2と収容部32との間には隙間があいており、この隙間を対象空間34ともいう。この対象空間34は、後述の貫通孔33を介して貯油空間70とつなっがている。収容部32における第一電極210と対向する部分が、第二電極320となる。すなわち、筐体3は、収容部32のうち第一電極210と対向する一部に、第二電極320を有する。また第二電極320は、対象空間34を介して第一電極210と対向している。第一電極210と第二電極320との間の静電容量を測定することにより、貯油空間70内の潤滑油の液位を検出することができる。その理由は以下の通りである。第一電極210と第二電極320との間に潤滑油が流入し、第一電極210と第二電極320との間の誘電率が変化することで、静電容量が変化する。このため、第一電極210と第二電極320との間の静電容量を測定することにより、潤滑油の液位の変化を検出することができる。本実施形態の潤滑油センサヘッド1では、潤滑油の液位を検出するための対向電極の一方を、筐体3で構成することができる。このため、潤滑油センサヘッド1を小型化することができる。
【0029】
筐体3は、収容部32に少なくとも一つの貫通孔33を有する。貫通孔33は、対象空間34及び貯油空間70とを繋いでいる。このため、貯油空間70内に貯められた潤滑油が、貫通孔33を通って、対象空間34内に流入することができる。本実施形態の貫通孔33の開口部の形状は、矩形であるが、円形であってもよく、五角形、六角形等の多角形であってもよい。
【0030】
本実施形態の収容部32には、複数の貫通孔33が設けれている。貫通孔33は、収容部32のうち、第二方向の両側に、少なくとも一つずつ配置されていることが好ましい。例えば貫通孔33が収容部32の先端に設けられていると、基板2の先端部分に集中的に潤滑油が流入したり、対象空間34内に過剰に潤滑油が流入することがあり、潤滑油の液位を正確に検知できないことがある。これに対して、収容部32の第二方向の両側に貫通孔33が少なくとも一つずつ配置されることによって、貯油空間70から対象空間34内に潤滑油が効率よく流入するとができる。また図1Bに示すように、基板2を挟んで対向するように一対の貫通孔33が設けれている。一対の貫通孔33、33のうち、一方の貫通孔33は基板2の一方の側面と対向するように設けられ、他方の貫通孔33は基板2の他方の側面と対向するように設けられている。この場合、基板2の第一面21上及び第二面22上に、均等に潤滑油を流入させることができる。これにより、第一電極210及び第二電極320による静電容量の検出と、第三電極221及び第四電極222によるインピーダンスの検出との両方を確実に行うことができる。
【0031】
貫通孔33は、第三方向に沿って複数配置されていることが好ましい。この場合、貯油空間70から対象空間34内に潤滑油が効率よく流入することができると共に、収容部32の強度を確保することができる。本実施形態では、収容部32の第二方向の両側に、第三方向に沿って複数の貫通孔33が配置されていることが特に好ましい。この場合、貯油空間70から対象空間34内に特に効率よく潤滑油が流入することができる。これにより、貯油空間70内の潤滑油の液位と、対象空間34内の潤滑油の液位とが追随しやすくなり、潤滑油センサヘッド1が潤滑油の液位を正確に測定することができる。収容部32の表面積に対する、貫通孔33の開口部の面積の合計値の割合は、30%以上50%以下であることが好ましい。この場合、対象空間34内への潤滑油油の流入量を好適にすることができると共に、収容部32の強度を確保することができる。
【0032】
1-2.センサシステム
センサシステム100は、上述の通り、潤滑油センサヘッド1と、回路ユニット6とを備える(図3参照)。さらにセンサシステム100は、第二配線部8を備える。本実施形態のセンサシステム100は、オイルパン7に取り付けられている。
【0033】
オイルパン7は、その下部に位置する底部71と、底部71から上方に立ち上がる側面72とを備える。オイルパン7内部には、底部71と対向する蓋が設けられている。この蓋と、底部71と、側面72とによって、貯油空間70が構成されている。底部71と側面72との境界部分には、取付部73が設けられている。取付部73は貫通孔であり、その内側に、ねじ山が設けられている。取付部73は、例えば、自動車のドレインボルトの取付孔である。
【0034】
潤滑油センサヘッド1は、取付部73を通って、貯油空間70内に挿入されている。このため、筐体3の収容部32も貯油空間70内に配置されている。また取付部73のねじ山と、筐体3のねじ部31のねじ山とが噛み合うことによって、ねじ部31と取付部73とが結合されている。これにより、潤滑油センサヘッド1(筐体3)が、オイルパン7に固定される。潤滑油センサヘッド1がオイルパン7に設置された状態においては、頭部30がオイルパン7の外側に配置されている。
【0035】
頭部30が有するコネクタ301には、第二配線部8が接続されている。第二配線部8は、回路ユニット6とも接続されている。このため、コネクタ301と回路ユニット6とは、第二配線部8を介して接続されている。上述の通り、コネクタ301は、第一電極210、第二電極320、第三電極221、及び第四電極222と接続されているため、第二配線部8によって、回路ユニット6と、第一電極210、第二電極320、第三電極221、及び第四電極222とを電気的に接続することができる。また第一電極210、第三電極221、及び第四電極222は基板2に設けられているため、回路ユニット6は、基板2と第二電極320と電気的に接続されている。第二配線部8は、例えばワイヤハーネスである。
【0036】
本実施形態の回路ユニット6は、貯油空間70内に貯められた潤滑油の液位及び液質を検出するための検出回路を備える。この検出回路は、第一電極210及び第二電極320で検知された静電容量に基づいて、潤滑油の液位を連続的に測定することができる。また検出回路は、第三電極221及び第四電極222で検知されたインピーダンスに基づいて、潤滑油の液質を連続的に測定することができる。したがって、本実施形態のセンサシステム100は、貯油空間70内に貯められた潤滑油の液位を連続的に測定することができる。またセンサシステム100は、貯油空間70内に貯められた潤滑油の液質を連続的に測定することができる。
【0037】
本実施形態の回路ユニット6は、第二筐体60内に収められ、この第二筐体60がオイルパン7の側面72に取り付けられている。このためセンサシステム100は、第二筐体60を備える。第二筐体60は、筐体3とは異なる部材である。この場合、潤滑油センサヘッド1と回路ユニット6とはオイルパン7のそれぞれ異なる箇所に設置される。このため回路ユニット6を設置しやすく、また回路ユニット6の故障時には、潤滑油センサヘッド1をオイルパン7に固定したまま、回路ユニット6のみを取り外すことができる。
【0038】
本実施形態の回路ユニット6は無線通信機能を有する。この場合、回路ユニット6は、潤滑油の液位及び液質の測定結果を、無線通信で送信することができる。潤滑油の液位及び液質の測定結果の送信先は特に限定されない。例えばセンサシステム100を自動車に適用する場合に、自動車が備えるコンピュータに、液位及び液質の測定結果を送っても良い。
【0039】
2.第二実施形態
第一実施形態と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0040】
図4に示すように、第二実施形態に係る潤滑油センサヘッド1は、頭部30内に回路ユニット6が内蔵されている。このため、第二実施形態に係るセンサシステム100では、潤滑油センサヘッド1と回路ユニット6とが一体化している。この場合、回路ユニット6と、潤滑油センサヘッド1を別々に設置する必要がないため、センサシステム100を小型化することができる。
【0041】
また第二実施形態に係るセンサシステム100は、第二筐体60、第二配線部8、及びコネクタ301を備えていない。このため、回路ユニット6と第二基板5とが、第二配線部8及びコネクタ301を介さずに、直接接続されている。
【0042】
第二実施形態に係るセンサシステム100では、頭部30内に回路ユニット6が内蔵されているため、筐体3の補強部302によって、回路ユニット6を保護することができる。このため、頭部30に飛び石、障害物等が当たることによる、回路ユニット6の損傷を抑制することができる。
【0043】
3.変形例
本開示に係る潤滑油センサヘッド及びセンサシステムの構成は、上述の第一実施形態及び第二実施形態の構成に限定されない。
【0044】
例えば、第一実施形態及び第二実施形態の潤滑油センサヘッド1では、基板2の形状が矩形であって、第二方向が基板2の短手方向であって、第三方向が基板2の長手方向であるが、基板2の形状はこれに限定されない。例えば、第二方向が基板2の長手方向であって、第三方向が基板2の短手方向であってもよい。すなわち、基板2が第二方向に沿って長い形状であってもよい。例えば、基板2の第二方向の長さと、第三方向の長さが同じであってもよい。すなわち、基板2の平面視の形状が正方形であってもよい。
【0045】
例えば、第一実施形態及び第二実施形態に係るセンサシステム100が、温度補償用の温度検出部を備えていてもよい。上述の通り、第一電極210及び第二電極320で静電容量を測定し、第三電極221及び第四電極222でインピーダンスを測定しているが、静電容量及びインピーダンスは、潤滑油の温度に影響される。このため、潤滑油の温度によっては、静電容量及びインピーダンスの測定結果に誤差が生じることがある。この点、センサシステム100が温度検出部を備えることにより、潤滑油の温度を測定することができる。潤滑油の温度に応じて、静電容量及びインピーダンスの測定値を補正することにより、回路ユニット6は、潤滑油の液位及び液質をより正確に測定することができる。温度検出部は、潤滑油の温度を測定できれば特に限定されないが、例えば、サーミスタ(thermistor)が使用され得る。
【0046】
第一実施形態及び第二実施形態に係る潤滑油センサヘッド1は、第一電極210、第二電極320、第三電極221、及び第四電極222を備えているが、これに限定されない。例えば、潤滑油センサヘッド1が、第一電極210及び第二電極320を備え、第三電極221及び第四電極222を備えていなくてもよい。この場合の潤滑油センサヘッド1は、貯油空間70内の潤滑油の液位を測定することができるが、潤滑油の液質を測定することはできない。
【0047】
第一実施形態及び第二実施形態に係る潤滑油センサヘッド1では、貫通孔33が、収容部32のうち、第二方向の両側に、少なくとも一つずつ配置されているが、これに限定されない。例えば潤滑油センサヘッド1が、収容部32の先端部分に設けられていてもよい。また第一実施形態及び第二実施形態に係る潤滑油センサヘッド1では、貫通孔33が、第三方向に沿って複数配置されているが、これに限定されない。例えば、第三方向に沿うスリットが収容部32に設けられていてもよい。この場合、このスリットが貫通孔33となる。
【0048】
第一実施形態及び第二実施形態に係るセンサシステム100では、筐体3のネジ部31が雄ねじであって、取付対象物(オイルパン7)の取付部73が雌ねじであるが、これに限定されない。例えば、ネジ部31が雌ねじであって、取付部73が雄ねじであってもよい。
【0049】
第一実施形態及び第二実施形態に係るセンサシステム100は、回路ユニット6が無線通信機能を有しているが、これに限定されない。例えば、回路ユニット6が無線通信機能を有していなくてもよい。この場合、回路ユニット6は、有線通信によって、貯油空間70内に貯められた潤滑油の液位の測定結果を送信してもよい。
【0050】
4.本開示に係る態様
以上述べた実施形態から明らかなように、本開示の第一の態様に係る潤滑油センサヘッド(1)は、厚み方向の両側に第一面(21)及び第二面(22)を有する基板(2)と、基板(2)を囲む収容部(32)を含む、金属製の筐体(3)と、を備える。収容部(32)の少なくとも一部は、潤滑油が貯められる貯油空間(70)内に位置する。基板(2)は、第一面(21)に第一電極(210)を有する。筐体(3)は、収容部(32)のうち第一電極(210)と対向する一部に、第二電極(320)を有する。第二電極(320)は、貯油空間(70)につながる対象空間(34)を介して第一電極(210)と対向する。
【0051】
この構成によれば、対向する第一電極(210)及び第二電極(320)によって、貯油空間(70)内の潤滑油の液位を連続的に検出することができる。また潤滑の液位を検出するための対向電極の一方を、筐体(3)で構成することができるため、潤滑油センサヘッド(1)を小型化することができる。すなわち、小型でありながら、潤滑油の液位を連続的に測定することができる。
【0052】
本開示の第二の態様に係る潤滑油センサヘッド(1)は、第一の態様において、基板(2)は、第二面(22)に第三電極(221)及び第四電極(222)を有する。第三電極(221)及び第四電極(222)は、第二面(22)に沿う平面内で間隔をあけて互いに対向する。
【0053】
この構成によれば、第三電極(221)及び第四電極(222)によって、貯油空間(70)内の潤滑油の液位を連続的に検出することができる。
【0054】
本開示の第三の態様に係る潤滑油センサヘッド(1)は、第一又は第二の態様において、筐体(3)は、貯油空間(70)と対象空間(34)とをつなぐ少なくとも1つの貫通孔(33)を収容部(32)に有する。
【0055】
この構成によれば、貯油空間(70)内に貯められた潤滑油が、貫通孔(33)を通って、対象空間(34)内に流入することができる。
【0056】
本開示の第四の態様にか係る潤滑油センサヘッド(1)は、第三の態様において、貫通孔(33)は、収容部(32)のうち、第一面(21)に沿う方向であって互いに直交する方向である第二方向及び第三方向における前記第二方向の両側に、少なくとも1つずつ配置されている。
【0057】
この構成によれば、貯油空間(70)から対象空間(34)内に潤滑油が効率よく流入するとができる。
【0058】
本開示の第五の態様に係る潤滑油センサヘッド(1)は、第四の態様において、貫通孔(33)は、前記第三方向に沿って複数配置されている。
【0059】
この構成によれば、貯油空間(70)から対象空間(34)内に潤滑油が効率よく流入することができると共に、収容部(32)の強度を確保することができる。
【0060】
本開示の第六の態様に係る潤滑油センサヘッド(1)は、第一から第五のいずれか一の態様において、筐体(3)は、取付対象物(オイルパン7)の取付部(73)に対して結合可能なねじ部(31)を含む。ねじ部(31)は、第一面(21)に沿う方向であって互いに直交する方向である第二方向及び第三方向における前記第三方向まわりで、取付部(73)に対し回転することにより、取付部(73)に結合される。
【0061】
この構成によれば、取付部(73)とねじ部(31)とを結合することにより、筐体(3)をオイルパン(7)に固定することができ、オイルパン(7)に潤滑油センサヘッド(1)を取り付けることができる。また取付部(73)がドレインボルト又はオイルゲージの取付孔である場合には、既存のドレインボルト又はオイルゲージの代わりに、潤滑油センサヘッド(1)を取り付けることができる。これにより、取付対象物に潤滑油センサヘッド(1)を取り付けるための加工等を不要とすることができる。
【0062】
本開示の第七の態様に係る潤滑油センサヘッド(1)は、第一から第六のいずれか一の態様において、基板(2)と筐体(3)とを連結する配線部(4)を更に備える。配線部(4)は、可撓性を有する。
【0063】
この構成によれば、潤滑油センサヘッド(1)の温度変化に伴う、基板(2)及び筐体(3)の熱膨張係数差による応力を緩和することができる。これにより、潤滑油センサヘッド(1)の破損を抑制することができる。
【0064】
本開示の第八の態様に係るセンサシステム(100)は、第一から第七のいずれか一の態様に係る潤滑油センサヘッド(1)と、基板(2)及び第二電極(320)と電気的に接続されている回路ユニット(6)と、を備える。
【0065】
この構成によれば、潤滑油センサヘッド(1)によって、貯油空間(70)内の潤滑油の液位を連続的に検出することができる。
【0066】
本開示の第九の態様に係るセンサシステム(100)は、第八の態様において、筐体(3)とは異なる第二筐体(60)を備える。回路ユニット(6)は、第二筐体(60)内に収められている。
【0067】
この構成によれば、潤滑油センサヘッド(1)と回路ユニット(6)とはオイルパン(7)のそれぞれ異なる箇所に設置される。このため回路ユニット(6)を設置しやすい。また回路ユニット(6)の故障時には、潤滑油センサヘッド(1)をオイルパン(7)に固定したまま、回路ユニット(6)のみを取り外すことができる。
【0068】
本開示の第十の態様係るセンサシステム(100)は、第八または第九の態様において、回路ユニット(6)は、無線通信機能を有する。
【0069】
この構成によれば、回路ユニット(6)は、潤滑油の液位及び液質の測定結果を、無線通信で送信することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 潤滑油センサヘッド
100 センサシステム
2 基板
21 第一面
22 第二面
210 第一電極
221 第三電極
222 第四電極
3 筐体
31 ねじ部
32 収容部
33 貫通孔
34 対象空間
4 配線部
6 回路ユニット
60 第二筐体
7 取付対象物(オイルパン)
70 貯油空間
73 取付部
図1
図2
図3
図4