(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】コイル整形装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
H02K15/04 F
H02K15/04 E
(21)【出願番号】P 2018010233
(22)【出願日】2018-01-25
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000145736
【氏名又は名称】株式会社小田原エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100123881
【氏名又は名称】大澤 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100080931
【氏名又は名称】大澤 敬
(72)【発明者】
【氏名】岩本 知巳
(72)【発明者】
【氏名】石塚 優
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 寛和
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-184359(JP,A)
【文献】特開2004-064819(JP,A)
【文献】特許第2548787(JP,B2)
【文献】特開2004-194379(JP,A)
【文献】特公昭54-043161(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のコアの軸方向端部の外側に露出するコイルの折り返し部分を整形するコイル整形装置であって、
前記折り返し部分の前記コアの径方向外側に配置される外側押圧部材と、
前記コアの径方向内側において周方向に放射状に配置されるとともに前記径方向に移動可能に設けられ、前記外側押圧部材との間で前記折り返し部分を挟んで押圧する複数の内側押圧部材と、
前記周方向における前記複数の内側押圧部材間に配置されるとともに前記径方向に移動可能に設けられ、前記外側押圧部材との間で前記折り返し部分を挟んで押圧する複数の補助押圧部材と、
前記複数の内側押圧部材と前記複数の補助押圧部材とを前記径方向に移動させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、前記補助押圧部材を、前記内側押圧部材が前記径方向外側に移動することにより前記各内側押圧部材間に形成される前記周方向の隙間に進入するように移動させることを特徴とするコイル整形装置。
【請求項2】
前記駆動機構が、前記軸方向に移動して前記複数の内側押圧部材と前記複数の補助押圧部材とを前記径方向外側に押圧して移動させるカム部材と、該カム部材を移動させる第1のカム駆動源と、を備え、
前記カム部材は、前記内側押圧部材と前記補助押圧部材とをタイミングをずらして前記径方向外側に移動させる駆動カム面を有していることを特徴とする請求項1に記載のコイル整形装置。
【請求項3】
前記複数の内側押圧部材と前記複数の補助押圧部材とを前記径方向内側へ戻るように付勢して前記駆動カム面に当接させる付勢部材を有していることを特徴とする請求項2に記載のコイル整形装置。
【請求項4】
前記内側押圧部材間に前記補助押圧部材を収容する収容部が形成され、前記各内側押圧部材が前記径方向外側に移動する前は前記収容部の前記径方向外側は前記周方向に連接していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のコイル整形装置。
【請求項5】
前記外側押圧部材が前記周方向に複数放射状に配置されているとともに前記径方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のコイル整形装置。
【請求項6】
前記各補助押圧部材を、前記内側押圧部材が前記径方向内側へ戻る前に前記径方向内側へ戻す補助押圧部材戻し機構を有していることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のコイル整形装置。
【請求項7】
前記補助押圧部材戻し機構が、前記各補助押圧部材に形成された傾斜面と、前記軸方向に移動して前記傾斜面を前記径方向内側へ押圧する戻し用カム部材と、該戻し用カム部材を移動させる第2のカム駆動源とを有していることを特徴とする請求項6に記載のコイル整形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータや発電機又はトランス等の電磁機器のコアに取り付けられるコイルを整形するコイル整形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モータや発電機等の回転電機のステータのコアに取り付けられるコイルは、円筒状のコアの内溝内に装着される磁極形成部分と、コアの軸方向外側に膨らんだ状態で露出する折り返し部分とからなる。
コアの軸方向両端側に存在する折り返し部分は製造上コアの径方向に膨らむことを避けられないため、回転電機の外部を覆う外枠やコア内への回転子挿入時の支障とならないように、外形形状(輪郭)を整形する必要がある。トランス等においてもコイルの省スペース化の観点から整形が必要となる。
【0003】
この種の整形装置としては、コイルの折り返し部分のコアの径方向外側をリング状の押え部材で支持した状態で、径方向内側に放射状に配置された複数の押圧片を径方向外側に同時に移動させて折り返し部分の内側を押圧し、複数の押圧片とリング状の押え部材との間で折り返し部分をプレスして整形する構成が従来より知られている。
その各押圧片は、径方向内側中心をコアの軸方向に移動する柱状カムの外面(駆動カム面)で押圧されることにより、径方向に同時移動するようになっている。
【0004】
しかしながらこの方法では、複数の押圧片が径方向外側に移動したときに周方向において押圧片間に隙間ができ、コイルの折り返し部分を押圧できない部分が周方向で間欠的に生じることを避けられなかった。
このため、押圧されなかった部分をプラスチックハンマー等で叩いて整形するなどの後処理が必要であり、面倒であるとともに整形作業の効率低下を来していた。また、手作業による後処理のために整形品質の均一性が得られなかった。
【0005】
この問題に対処すべく、特許文献1には、押圧片に周方向に突出する凸部を形成するとともに、隣り合う押圧片に該凸部に嵌合する凹部を形成して周方向で押圧片同士が嵌合した構成とし、複数の押圧片が径方向外側に移動したときに、周方向でコイルの折り返し部分を押す部分が途切れることがないようにしたコイル整形装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、コイルの折り返し部分を周方向で押圧する部分が途切れることはないものの、周方向における押圧片間の隙間でのプレスを補完する凸部の軸方向の幅は、押圧片の本来の軸方向の幅よりも大幅に小さく、コイルの折り返し部分を局所的に押圧しているに過ぎない。
このため、整形機能の観点からは極めて不十分であった。即ち、コアの軸方向においてコイルの折り返し部分の押圧むらが生じることを避けられなかった。
【0008】
本発明は、このような現状に鑑みて創案されたもので、コアの周方向において、押圧片間に生じる隙間でのコイルの折り返し部分の押圧(プレス)を、コアの軸方向における折り返し部分全体に亘って実施でき、後処理の必要がなく且つ押圧むらのない高精度の整形が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のコイル整形装置は、円筒状のコアの軸方向端部の外側に露出するコイルの折り返し部分を整形するコイル整形装置であって、前記折り返し部分の前記コアの径方向外側に配置される外側押圧部材と、前記コアの径方向内側において周方向に放射状に配置されるとともに前記径方向に移動可能に設けられ、前記外側押圧部材との間で前記折り返し部分を挟んで押圧する複数の内側押圧部材と、前記周方向における前記複数の内側押圧部材間に配置されるとともに前記径方向に移動可能に設けられ、前記外側押圧部材との間で前記折り返し部分を挟んで押圧する複数の補助押圧部材と、前記複数の内側押圧部材と前記複数の補助押圧部材とを前記径方向に移動させる駆動機構と、を備え、前記駆動機構は、前記補助押圧部材を、前記内側押圧部材が前記径方向外側に移動することにより前記各内側押圧部材間に形成される前記周方向の隙間に進入するように移動させるものである。
【0010】
前記駆動機構が、前記軸方向に移動して前記複数の内側押圧部材と前記複数の補助押圧部材とを前記径方向外側に押圧して移動させるカム部材と、該カム部材を移動させる第1のカム駆動源と、を備え、前記カム部材は、前記内側押圧部材と前記補助押圧部材とをタイミングをずらして前記径方向外側に移動させる駆動カム面を有している構成としてもよい。
【0011】
また、前記複数の内側押圧部材と前記複数の補助押圧部材とを前記径方向内側へ戻るように付勢して前記駆動カム面に当接させる付勢部材を有している構成としてもよい。
【0012】
また、前記内側押圧部材間に前記補助押圧部材を収容する収容部が形成され、前記各内側押圧部材が前記径方向外側に移動する前は前記収容部の前記径方向外側は前記周方向に連接している構成としてもよい。
【0013】
また、前記外側押圧部材が前記周方向に複数放射状に配置されているとともに前記径方向に移動可能に設けられている構成としてもよい。
【0014】
さらに、前記各補助押圧部材を、前記内側押圧部材が前記径方向内側へ戻る前に前記径方向内側へ戻す補助押圧部材戻し機構を有している構成としてもよい。
【0015】
この場合、前記補助押圧部材戻し機構が、前記各補助押圧部材に形成された傾斜面と、前記軸方向に移動して前記傾斜面を前記径方向内側へ押圧する戻し用カム部材と、該戻し用カム部材を移動させる第2のカム駆動源とを有している構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、周方向において押圧片間に生じる隙間でのコイル折り返し部分の押圧(プレス)を、コアの軸方向におけるコイル折り返し部分全体に亘って実施できる。
これにより、後処理の必要がなく整形作業の効率向上を図ることができるとともに、押圧むらのない高精度の整形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコイル整形装置の概要を示す縦断面図である。
【
図2】
図1で示したコイル整形装置の待機位置での概要を示す平面図である。
【
図3】
図1で示したコイル整形装置におけるカム支持体の構成を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は底面図、(c)は側面図である。
【
図4】
図1で示したコイル整形装置におけるカム部材の斜視図である。
【
図5】
図1で示したコイル整形装置における内側押圧部材の斜視図である。
【
図6】
図1で示したコイル整形装置における補助押圧部材の斜視図である。
【
図7】
図1で示したコイル整形装置の上部整形部の整形動作を示す概要断面図で、(a)は待機状態を示す図、(b)は内側押圧部材が所定のプレス位置に移動した状態を示す図、(c)は補助押圧部材が所定のプレス位置に移動した状態を示す図、(d)は可動支持体が移動してコイルの折り返し部分の上面がプレスされた状態を示す図である。
【
図8】
図1で示したコイル整形装置の整形完了後の動作を示す概要断面図で、(a)はカム部材が待機位置への移動を開始した状態を示す図、(b)は補助押圧部材が待機位置に戻った状態を示す図、(c)は内側押圧部材が待機位置に戻った状態を示す図である。
【
図9】
図1で示したコイル整形装置の内側押圧部材が所定のプレス位置に移動した状態を示す概要平面図及び部分拡大図である。
【
図10】
図9の状態から補助押圧部材が所定のプレス位置に移動した状態を示す概要平面図である。
【
図11】
図1で示したコイル整形装置の内側押圧部材間に形成される収容部と補助押圧部材との位置関係を示す要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るコイル整形装置2は、ステータ4が備えるコア6の上端部に一部を挿入して位置決めされた上部整形部2Aと、コア6の下端部に一部を挿入して位置決めされた下部整形部2Bとから構成されている。
ステータ4は、円筒状のコア6と、コア6の内溝を介して装着され、軸方向の両端部で折り返されたコイルとを備えている。
【0019】
コア6は、
図1に仮想線で示すワークセッティング装置10により、その軸方向が上下方向と平行となるように支持(位置固定)されている。
コア6内への上部整形部2Aと下部整形部2Bの挿入は、不図示のサーボモータ等の駆動源によってなされる。
ワークセッティング装置10の上下部間は、軸方向に延びる位置決めロッド45によって間隔を保持されている。
【0020】
なお、「上下方向」等の方向の限定は便宜上のものであり、これに限定される趣旨ではない(以下、同じ)。
コア6の上下端部には、仮想線(二点鎖線)で示すように、コイルの折り返し部分8A、8Bがコア6の軸方向端部の外側に膨らんだ状態で露出している。上部整形部2Aと下部整形部2Bは同じ構成であるため、以下では上部整形部2Aのみについて説明する。
【0021】
上部整形部2Aは、矩形プレート状のベース部材12、外側押圧部材14、複数の内側押圧部材16、複数の補助押圧部材18、内側押圧部材16と補助押圧部材18とを径方向外側に移動させる駆動機構20、筒状のカム支持体34、および可動支持体35等を有している。
外側押圧部材14は、ベース部材12上においてコイルの折り返し部分8Aのコア6の径方向外側に配置されている。
複数の内側押圧部材16は、コア6の径方向内側に配置されるとともに径方向に移動可能に設けられ、外側押圧部材14との間でコイルの折り返し部分8Aを挟んで押圧する。
【0022】
複数の補助押圧部材18は、周方向における内側押圧部材16間に配置されるとともに径方向に移動可能に設けられ、外側押圧部材14との間で、内側押圧部材16により押圧されないコイルの折り返し部分8Aを挟んで押圧する。
カム支持体34は、ベース部材12に固定され、駆動機構20を構成する後述のカム部材22の軸方向の移動を支持するとともに、内側押圧部材16と補助押圧部材18の径方向の移動をガイドする。
【0023】
可動支持体35は、ベース部材12に軸方向に移動可能に設けられ、内側押圧部材16と補助押圧部材18の径方向外側への移動を規制するとともに、これらの外側面を支持する。この可動支持体35はさらに、摺動ガイド36を介してベース部材12に対して軸方向に摺動可能となっている。また、駆動機構20で下方に押圧されて移動した後は、駆動機構20の押圧が解除されるに従い、コイルバネ38の付勢力で元の位置に戻るようになっている。
【0024】
各内側押圧部材16と各補助押圧部材18の上端部には、これらを常時径方向の内側へ戻るように、即ちカム部材22の駆動カム面(後述)に当接するように付勢する付勢部材としてのコイルバネ30a、30bが巻回されている。
具体的には、各内側押圧部材16を囲むようにコイルバネ30aが巻回され、これとは別個に各補助押圧部材18を囲むようにコイルバネ30bが巻回されている。
【0025】
各内側押圧部材16と各補助押圧部材18の下端部には、同様の目的でコイルバネ31a、31bが巻回されている。
具体的には、各内側押圧部材16を囲むようにコイルバネ31aが巻回され、これとは別個に各補助押圧部材18を囲むようにコイルバネ31bが巻回されている。
【0026】
図1は、コイルの折り返し部分8A、8Bがコイル整形装置2によって整形された後の状態(ハッチングで表示)を示している。二点鎖線で示す折り返し部分8A、8Bの形状は整形前の形状である。
折り返し部分8Aは、その外側面8A-1が外側押圧部材14によって押圧整形され、内側面8A-2が内側押圧部材16及び補助押圧部材18によって押圧整形される。また、折り返し部分8Aの上面8A-3は可動支持体35によって押圧整形される。
【0027】
図2に示すように、外側押圧部材14は、折り返し部分8Aの外側において周方向に複数(ここでは6個)放射状に配置され、且つ、径方向に移動可能に設けられている。各外側押圧部材14は、ベース部材12上で径方向にスライド可能に設けられており、任意の位置で位置固定できるようになっている。
内側押圧部材16と補助押圧部材18は折り返し部分8Aの内側において周方向に複数(ここでは6個)放射状に配置され、且つ、径方向に移動可能に設けられている。
【0028】
図1に示すように、駆動機構20は、内側押圧部材16を径方向外側に移動させるとともに、補助押圧部材18を、内側押圧部材16が径方向外側に移動することにより各内側押圧部材16間に形成される周方向の隙間に進入するように移動させるものである。
【0029】
駆動機構20は、軸方向(
図1の上下方向)に移動して内側押圧部材16と補助押圧部材18とを径方向外側に押圧して移動させる柱状のカム部材22と、カム部材22を軸方向に移動させる第1のカム駆動源としての不図示のサーボモータとを備えている。
カム部材22は、その外周面に、内側押圧部材16と補助押圧部材18とをタイミングをずらして径方向に移動させる駆動カム面を有している。駆動カム面の形状については後で詳細に説明する。
【0030】
カム部材22の上端部には段付溝22aが形成されており、カム部材22は段付溝22aに嵌合されたジョイント26を介して不図示のサーボモータで軸方向に移動可能となっている。
カム支持体34はベース部材12の中央部に固定されており、カム部材22は上端部をベース部材12とカム支持体34とに支持されて軸方向に摺動可能に設けられている。
カム支持体34の下端は、凹状の蓋部材37で着脱自在に覆われている。
【0031】
カム支持体34は、
図3に示すように、内部にカム部材22の挿通孔34aを有する円筒状に形成されており、側面には、内側押圧部材16の移動用溝34bと補助押圧部材18の移動用溝34cが周方向に交互に形成されている。
カム支持体34の上端部34dはフランジ状に形成されて、ネジ孔34eを介してベース部材12に固定可能となっている。カム支持体34の下端部34fには上記のように
図1に示した蓋部材37が固定される。
【0032】
挿通孔34aは下側が小径となっており、境界の傾斜面34gはカム部材22の下限を規制する規制面となっている。
符号34hは、カム支持体34の上端部34dに形成された、ベース部材12に対する位置決め用のU字状溝を、34iは蓋部材37を取り付けるためのネジ孔を示している。
【0033】
図4~
図6を参照して、カム部材22、内側押圧部材16及び補助押圧部材18の形状を詳細に説明する。
カム部材22は、
図4に示すように、取付部22Aと、カム面部22Bとを有し、カム面部22Bには、内側押圧部材16を押圧する広幅の駆動カム面24と、補助押圧部材18を押圧する細幅の駆動カム面25とが周方向に交互に形成されている。
【0034】
取付部22Aにはジョイント26が嵌合する段付溝22aが形成されているとともに、ベース部材12に間接的に固定されるガイド片28a(
図1参照)が嵌合するガイド溝22bが径方向で対向する位置に形成されている。ガイド溝22bは軸方向に沿って形成されている。
これにより、カム部材22は回り止めされた状態で軸方向に移動する。
図1に示したガイド片28aは、カム支持体34に固定されるリング部材28に一体に形成されている。カム支持体34にはリング部材28を固定するためのネジ孔34jが形成されている(
図3(a)参照)。
【0035】
図4に示すように、駆動カム面24は、下から上に向って、第1傾斜面24a、第1駆動カム面24b、第2傾斜面24c及び第2駆動カム面24dを有している。
駆動カム面25は、下から上に向って、第1傾斜面25a、第1駆動カム面25b、第2傾斜面25c及び第2駆動カム面25dを有している。
駆動カム面25の第1駆動カム面25b及び第2駆動カム面25dは、駆動カム面24の第1駆動カム面24b及び第2駆動カム面24dよりも上方に位置がずれており、これにより、カム部材22の軸方向下方への移動において、補助押圧部材18の径方向外側への移動は内側押圧部材16の同方向への移動に対してタイミングがずれる(遅れる)ことになる。
【0036】
図5に示すように、内側押圧部材16は水平断面T字状に形成されており、内側の被駆動部16Bには、上から下に向って、第1傾斜面16a、第1被駆動面16b、第2傾斜面16c及び第2被駆動面16dを有している。
内側押圧部材16の外側の押圧部16Aには、コイル押圧面16eと、
図1に示したコイルバネ30aのバネ座部16fと、コイルバネ31aのバネ座部16gとが設けられている。
【0037】
図6に示すように、補助押圧部材18はブレード形状(薄肉の板状)を有し、内側には、上から下に向って、第1傾斜面18a、第1被駆動面18b、第2傾斜面18c及び第2被駆動面18dを有している。
補助押圧部材18の外側には、コイル押圧面18eと、
図1に示したコイルバネ30bのバネ座部18fと、コイルバネ31bのバネ座部18gとが設けられている。
また、補助押圧部材18の外側の上端部には、後述する補助押圧部材戻し機構を構成する傾斜面18hが形成されている。
【0038】
図7及び
図8を参照して、
図1で説明しなかった構成及びカム部材22の移動による内側押圧部材16と補助押圧部材18による整形動作を説明する。
図7は待機位置から整形までの動作を示し、
図8は整形終了から待機位置への戻り動作を示している。分かり易くするために、カム支持体34と外側押圧部材14は表示を省略し、外側押圧部材14は所定の押圧位置に設定されているものとする。
【0039】
図7に示すように、カム部材22の上端部に嵌合されたジョイント26は、不図示のサーボモータの駆動軸に連結される連結部材40に一体に取り付けられている。連結部材40には可動支持体35を押圧する押圧リング42が一体に設けられている。
可動支持体35は、円筒部材44を有しており、内側押圧部材16と補助押圧部材18は円筒部材44の内周面44aによって径方向外側への所定以上の移動を制限されるとともに外側面を支持される。
【0040】
図7において、符号46は補助押圧部材18を強制的に径方向内側へ戻すための戻し部材を示している。
戻し部材46はベース部材12に軸方向に摺動可能に設けられており、下端側にはリング状の戻し用カム部材48を有している。戻し用カム部材48の内面には補助押圧部材18の上端部外面に形成された傾斜面18hを押圧する傾斜したカム面48aを有している。戻し部材46は不図示のエアシリンダ(第2のカム駆動源)で軸方向に移動される。
【0041】
戻し部材46と上記エアシリンダとにより、本実施形態における補助押圧部材戻し機構が構成されている。補助押圧部材戻し機構は、補助押圧部材18を、内側押圧部材16が径方向内側へ戻る前に径方向内側へ強制的に戻す役割を担っている。
可動支持体35の円筒部材44の下面44bは折り返し部分8Aの上面8A-3に対する押圧面としてなる。
【0042】
図7(a)はカム部材22が待機位置(ホームポジション)にある状態を示している。この状態では折り返し部分8Aの内側面8A-2と上面8A-3は未だ所定形状にプレスされていない。
この状態から第1のカム駆動源としての不図示のサーボモータが動作してカム部材22が下方に移動すると、
図7(b)に示すように、まず内側押圧部材16の
図5に示した第1被駆動面16bと第2被駆動面16dが、カム部材22の
図4に示した駆動カム面24における第1駆動カム面24bと第2駆動カム面24dとで押圧され、内側押圧部材16が径方向外側に移動する。
【0043】
図9に示すように、各内側押圧部材16はカム部材22の移動に伴って同時に径方向外側に移動し、折り返し部分8Aの内側面8A-2を所定形状にプレスする。この時点では補助押圧部材18は移動しない。
一点鎖線の円Kの部位の拡大図から分かるように、周方向における内側押圧部材16間(隙間g)には押圧されない部分が内側へ突出した状態で残る。
【0044】
カム部材22がさらに下方に移動すると、
図7(c)に示すように、補助押圧部材18の
図6に示した第1被駆動面18bと第2被駆動面18dが、カム部材22の
図4に示した駆動カム面25における第1駆動カム面25bと第2駆動カム面25dとで押圧され、補助押圧部材18が径方向外側に移動する。
そして、
図10に示すように、各補助押圧部材18はカム部材22の移動に伴って同時に径方向外側に移動し、各内側押圧部材16間に形成される周方向の隙間g(
図9参照)に先端部が進入して、コイルの折り返し部分8Aの内側面8A-2における、内側押圧部材16でプレスされなかった部位を所定量プレスする。
【0045】
この補助押圧部材18によるプレス動作は、内側押圧部材16のプレスに引き続いて殆ど時間を置くことなく円滑に行われる。具体的には隙間gが形成されると同時に補助押圧部材18が隙間gに進入する。
上記補助押圧部材18の動作時には内側押圧部材16の径方向における位置変化はない。
【0046】
カム部材22がさらに下方に移動すると、
図7(d)に示すように、カム部材22と一体に移動する押圧リング42が可動支持体35を下方に押圧するため、可動支持体35の円筒部材44の下面44bがコイルの折り返し部分8Aの上面8A-3を所定量プレスする。
この動作において、内側押圧部材16と補助押圧部材18の径方向における位置変化はない。
図7(a)~
図7(d)の動作により、折り返し部分8Aの所定量の整形が完了する。即ち、コイルの折り返し部分8Aは丸く膨らんだ状態から、最終的に輪郭が矩形の折り返し部分8A―4に整形(矯正)される。
【0047】
これにより、コイルの折り返し部分8Aが、回転電機の外部を覆う外枠やコア6内への回転子挿入時の支障とならないようにすることができる。
また、押圧されなかった部分をプラスチックハンマー等で叩いて整形するなどの後処理が不要となるので、整形作業の効率を向上させることができるとともに、整形品質の均一化を図ることができる。
【0048】
折り返し部分8Aの整形が完了すると、
図8に示すように、カム部材22等のホームポジションへの復帰動作が開始される。
まず、
図8(a)に示すように、第1のカム駆動源としてのサーボモータの動作によりカム部材22が上方に移動すると、これに伴って、
図1に示した可動支持体35も、圧縮されているコイルバネ38の付勢力で上方に移動する。
【0049】
カム部材22がさらに上方に移動すると、
図8(b)に示すように、可動支持体35の円筒部材44の上面がベース部材12に当接し、可動支持体35と押圧リング42とが離れる。
また、傾斜面の位置の違いによって且つコイルバネ30a、30b、31a、31bの付勢力によって、補助押圧部材18が内側押圧部材16よりも早く径方向内側への移動を開始する。
【0050】
補助押圧部材18が所定量内側へ戻ったタイミング、換言すれば内側押圧部材16で補助押圧部材18が挟まれないタイミングで内側押圧部材16が内側への移動を開始する。その後、
図8(c)に示すように、カム部材22等の全ての部材が
図7(a)に示すホームポジションに復帰し、次の整形に備えられる。
【0051】
上記のように内側押圧部材16と補助押圧部材18は、カム部材22の中心に向かってコイルバネ30a、30b、31a、31bで常に付勢されているが、経時的な嵌合歪みやかじり、またはバネ定数の経時変化等の要因により、補助押圧部材18がスムーズに戻らない場合も想定される。
補助押圧部材18が所定のタイミングで戻り動作を開始しないと、補助押圧部材18に遅れて径方向内側へ移動する内側押圧部材16間に補助押圧部材18が挟まってロックし、装置が緊急停止する事態を招くことになる。
この懸念を回避するための安全対策として補助押圧部材戻し機構が設けられている。
【0052】
上記のように、補助押圧部材戻し機構は、各補助押圧部材18の上端部に一体に形成された傾斜面18h(
図6参照)と、軸方向に移動して傾斜面18hを径方向内側へ押圧するリング状の戻し用カム部材48と、戻し用カム部材48を軸方向に移動させる第2のカム駆動源としての不図示のエアシリンダとを有している。
【0053】
図8(b)に示すように、補助押圧部材18が、カム部材22の
図1に示した駆動カム面25の第1傾斜面25aと第2傾斜面25cに沿って径方向内側への移動が始まるタイミングで、エアシリンダが戻し部材46を軸方向に移動させる。
これにより、補助押圧部材18の傾斜面18hと戻し用カム部材48のカム面48aとの間の当接で径方向内側への押圧力(分力)が発生し、補助押圧部材18は強制的に径方向内側へ移動して待機位置に戻る。
【0054】
内側押圧部材16が径方向内側へ戻るタイミングは、必ずしも補助押圧部材18が完全に待機位置に戻った後である必要はなく、上記のように補助押圧部材18の戻り動作中に内側押圧部材16間に補助押圧部材18を挟み込まないタイミングであればよい。即ち、内側押圧部材16と補助押圧部材18とが共に移動している期間があってもよい。
【0055】
図11を参照して、内側押圧部材16と補助押圧部材18の形状について説明する。
内側押圧部材16は周方向に延びる円弧状の押圧部16Aと、径方向に延びる被駆動部16Bとからなり、全体として水平断面がT字状となるように形成されている。
隣り合う内側押圧部材16の押圧部16A間には、補助押圧部材18を収容する凹状の収容部50が形成されている。
【0056】
収容部50は、隣り合う内側押圧部材16の押圧部16Aにそれぞれ形成された段差凹部16A-1が合わさって形成されており、収容部50の径方向外側は、押圧部16Aの外周縁に形成された周方向に突出する凸部16A-2同士が対向して接触することによって塞がれている。即ち周方向に連接している。
収容部50の周方向の幅は補助押圧部材18の同方向の幅よりも僅かに大きく設定されている。
【0057】
内側押圧部材16が押圧位置に移動すると凸部16A-2間が開き、その隙間g(
図9参照)に補助押圧部材18の先端部が入り込む。
収容部50を設けずに、周方向に開いた内側押圧部材16間の隙間を補助押圧部材18が移動する構成とすることもできるが、この場合には補助押圧部材18の押圧位置Pまでの移動ストロークがst1で示すように大きくなり、動作時間が長くなる。即ち、整形作業におけるダウンタイムが顕著となる。
【0058】
また、補助押圧部材18を移動させるカム部材22の駆動カム面の輪郭(プロファイル)が大きくなり、構造の大型化を来す可能性がある。
本実施形態の如く、待機状態において補助押圧部材18が収容部50を介して内側押圧部材16内に入り込んだ構造とすれば、補助押圧部材18の移動ストロークをst2で示すように短くでき、上記各問題を解消できる。
【0059】
上記では上部整形部2Aについて説明したが、下部整形部2Bについても説明中の方向が逆になるだけで構成、動作は全く同じである。このため、下部整形部2Bについての説明は省略する。
なお、上記実施形態では、外側押圧部材14、内側押圧部材16、補助押圧部材18の配置数を6個として例示したが、本発明はこれに限定される趣旨ではなく、さらに各部材の個数が異なっていてもよい。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形・変更が可能である。上述した本発明の構成は、一部のみ取り出して実施することもできるし、以上の説明の中で述べた変形は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて適用可能である。本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
2 コイル整形装置
4 ステータ
6 コア
8A、8B コイルの折り返し部分
14 外側押圧部材
16 内側押圧部材
18 補助押圧部材
18h 傾斜面
20 駆動機構
22 カム部材
24、25 駆動カム面
30a、30b、31a、31b 付勢部材としてのコイルバネ
48 戻し用カム部材
50 収容部