(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物及び加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20220105BHJP
C08K 5/34 20060101ALI20220105BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20220105BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220105BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K5/34
C08L83/06
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
C08L83/05
(21)【出願番号】P 2019144104
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2018149032
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151367
【氏名又は名称】柴 大介
(72)【発明者】
【氏名】木野 祐次
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-249570(JP,A)
【文献】特開2015-129274(JP,A)
【文献】特開平07-145322(JP,A)
【文献】特開2017-206678(JP,A)
【文献】特開昭51-139854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297951(US,A1)
【文献】国際公開第2015/163352(WO,A1)
【文献】米国特許第05492969(US,A)
【文献】特開2016-216606(JP,A)
【文献】特開平02-049475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/07
C08K 5/34
C08L 83/06
C08J 5/18
C08L 83/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル基を有するシロキサン化合物及びヒドロシリル基を有するシロキサン化合物の混合化合物、並びに/又は、ビニル基及びヒドロシリル基を有するシロキサン化合物(化合物A)を含む、少なくともヒドロシリル化反応を利用する熱硬化性樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂組成物は、さらに、
アリル基を有する含窒素複素環化合物(化合物B)を含み、
前記熱硬化性樹脂組成物の硬化体層が樹脂ワニス硬化フィルムと接触して積層する硬化後積層体を構成
した後に、前記硬化後積層体を構成する前記熱硬化性樹脂組成物の硬化体層から前記樹脂ワニス硬化フィルムを剥離するために使用され、
前記樹脂ワニス硬化フィルムがポリイミドワニス硬化フィルムである熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アリル基を有する含窒素複素環化合物がグリコールウリル誘導体である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、フッ素系界面活性剤(化合物C)を含む請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、分子末端がアルコキシシリル基で封鎖されアルコキシ基が形成された反応性シロキサン化合物(化合物D)を含む請求項1~3のいずれか1項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、ヒドロシリル化反応用触媒(化合物E)を含む請求項1~4のいずれか1項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、希釈用溶剤(化合物F)を含む請求項1~5のいずれか1項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂ワニス硬化フィルムが精密素子配置用基板である請求項1~6のいずれか1項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記硬化体層から剥離される前記樹脂ワニス硬化フィルムが、精密素子が配置された精密素子配置基板である請求項1~7のいずれか1項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造方法であって、
支持基板の表面に請求項1~8のいずれか1項記載の熱硬化性樹脂組成物が接触してなる熱硬化性樹脂組成物層を形成して、100~300℃環境下で前記熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化して支持基板と熱硬化性樹脂組成物硬化体層とが積層する硬化後積層体1を得る工程1、
前記硬化後積層体1において、前記熱硬化性樹脂組成物硬化体層の前記支持基板と接触していない面上に、樹脂ワニスを塗布して樹脂ワニス薄液層を形成して、前記樹脂ワニス薄液層を加熱することにより樹脂ワニス硬化フィルムを形成して、前記支持基板、前記熱硬化性樹脂組成物硬化体層及び前記樹脂ワニス硬化フィルムが積層された硬化後積層体2を得る工程2、
前記工程2の後に、前記硬化後積層体2を構成する前記樹脂ワニス硬化フィルムを加工して加工樹脂ワニス硬化フィルムを形成する工程3、及び、
前記硬化後積層体2から前記加工樹脂ワニス硬化フィルムを剥離する工程4を有する加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記工程3において200~550℃の環境下で前記樹脂ワニス硬化フィルムを加工する請求項9記載の加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及び当該熱硬化性樹脂組成物を使用した加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部品を使用する製品の薄型化、フレキシブル化に伴い、光学部品の薄型化、小型化が検討されており、例えば、液晶ディスプレイや有機発光ダイオードには、軽さやフレキシブルなどの観点から、ポリイミドフィルムのような耐熱性樹脂からなるプラスチック基板の開発が進められている。
【0003】
プラスチック基板は基板自体が柔軟なため、基板上に表示素子等の回路素子を構成した回路を形成する長期高温プロセス下で生じる、プラスチック基板の変形による回路の損傷等の種々課題を解決するため、PIワニスを支持体に塗布し、加熱硬化させることでプラスチック基板とすることが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、PIワニス熱硬化体層は、支持体から剥離し難いため、支持体から基板を剥離する方法として、例えばPIワニス熱硬化体層を用いてレーザースキャニングすることが提案されている。
しかし、レーザースキャニングには時間がかかり、形成したプラスチック基板にダメージを与えることや糊残りが生じることから歩留まりが悪く、また剥離工程に必要な装置やランニングコストが非常に高価であることが課題となっている。
【0006】
本発明は、樹脂ワニス硬化フィルム表面に精密素子を配置する等の長期高温プロセスを伴う加工をするために、樹脂ワニス硬化フィルムを支持基板上に固定するための熱硬化性樹脂組成物であって、長期高温プロセス下であっても、熱硬化性樹脂組成物の硬化体層の形態安定性及び樹脂ワニスの塗工安定性を確保し、かつ加工樹脂ワニス硬化フィルムを熱硬化性樹脂組成物の硬化体層から容易に剥離できる熱硬化性樹脂組成物と加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
〔1〕ビニル基を有するシロキサン化合物及びヒドロシリル基を有するシロキサン化合物の混合化合物、並びに/又は、ビニル基及びヒドロシリル基を有するシロキサン化合物(化合物A)を含む、少なくともヒドロシリル化反応を利用する熱硬化性樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂組成物は、さらに、
アリル基を有する含窒素複素環化合物(化合物B)を含み、
前記熱硬化性樹脂組成物の硬化体層が樹脂ワニス硬化フィルムと接触して積層する硬化後積層体を構成するために使用され、
前記樹脂ワニス硬化フィルムは、前記硬化体層の温度が25℃において前記樹脂ワニス硬化フィルムを前記硬化体層から剥離できる熱硬化性樹脂組成物(以下「本発明1」ともいう)、及び、
〔2〕加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造方法であって、
支持基板の表面に前項〔1〕記載の熱硬化性樹脂組成物が接触してなる熱硬化性樹脂組成物層を形成して、150~300℃環境下で前記熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化して支持基板と熱硬化性樹脂組成物硬化体層とが積層する硬化後積層体1を得る工程1、
前記硬化後積層体1において、前記熱硬化性樹脂組成物硬化体層の前記支持基板と接触していない面上に、樹脂ワニスを塗布して樹脂ワニス薄液層を形成して、前記樹脂ワニス薄液層を加熱することにより樹脂ワニス硬化フィルムを形成して、前記支持基板、前記熱硬化性樹脂組成物硬化体層及び前記樹脂ワニス硬化フィルムが積層された硬化後積層体2を得る工程2、
前記工程2の後に、前記硬化後積層体2を構成する前記樹脂ワニス硬化フィルムを加工して加工樹脂ワニス硬化フィルムを形成する工程3、及び、
前記硬化後積層体2から前記加工樹脂ワニス硬化フィルムを剥離する工程4を有する加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造方法(以下「本発明2」ともいう)。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂ワニス硬化フィルム表面に精密素子を配置する等の長期高温プロセスを伴う加工をするために、樹脂ワニス熱硬化体層を支持基板上に固定するための熱硬化性樹脂組成物であって、長期高温プロセス下であっても、熱硬化性樹脂組成物の硬化体層の形態安定性及び樹脂ワニスの塗工安定性を確保し、かつ加工樹脂ワニス硬化フィルムを熱硬化性樹脂組成物の硬化体層から容易に剥離できる熱硬化性樹脂組成物と加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔本発明1〕
本発明1は、化合物A及び化合物Bを含むことによって、樹脂ワニス硬化フィルムを加工するための長期高温プロセス下であっても、本発明1の硬化体層の形態安定性及び樹脂ワニスの塗工安定性を確保し、樹脂ワニス硬化フィルムが本発明1の硬化体層に密着し、かつ樹脂ワニス硬化フィルムを加工工程後に加工樹脂ワニス硬化フィルムを本発明1の硬化体層から容易に剥離できるという効果を奏する。
【0010】
本発明1の硬化体層の形態安定性(以下「形態安定性」という)は、例えば、後述する実施例における評価条件に記載される、シュリンクが2mm以下で、ハジキが2mm以下であるような程度である。
【0011】
本発明1の硬化体層の樹脂ワニスの塗工安定性(以下「塗工安定性」という)は、例えば、後述する実施例における評価条件に記載される、シュリンクが2mm以下で、ハジキが2mm以下であるような程度である。
【0012】
樹脂ワニス硬化フィルムが本発明1の硬化体層に浮き剥がれがない状態で密着し(以下「密着性」という)かつ樹脂ワニス硬化フィルムを加工工程後に加工樹脂ワニス硬化フィルムを本発明1の硬化体層から容易に剥離できる(以下「剥離性」という)。
【0013】
本発明1の剥離性は、剥離強度で判断する。
後述する実施例における加熱加工された硬化後積層体2を構成する加工樹脂ワニス硬化体フィルムを25℃の環境下で2時間静置した後、加工樹脂ワニス硬化フィルムの上に幅25mmのスコッチテープを貼り補強し、ガラス支持基板を固定して、加工樹脂ワニス硬化フィルムの長さ方向の一端のエッジを剥離強度測定装置で摘み、ガラス支持基板の面方向に対して90°方向に、加工樹脂ワニス硬化フィルムを本発明1硬化体層から剥離した際の強度を剥離強度とする。
【0014】
加工樹脂ワニス硬化フィルムを剥離する際に、例えば精密素子である硬化体層に加わる物理的負荷を軽減する観点と、加工樹脂ワニス硬化フィルムの振動等のあまりに軽い応力によって剥離してしまわないようにする観点とから、剥離強度は好ましくは0.001~0.2N/mmであり、より好ましくは0.002~0.1N/mmであり、更に好ましくは0.002~0.07N/mmである。
【0015】
(化合物A)
本発明1における化合物Aは、ビニル基を有するシロキサン化合物及びヒドロシリル基を有するシロキサン化合物の混合化合物、並びに/又は、ビニル基及びヒドロシリル基を有するシロキサン化合物であり、熱硬化性樹脂の高温安定性、樹脂ワニス硬化フィルム密着性及び剥離性の観点から、ビニル基及びヒドロシリル基以外の反応性基を有さないことが好ましい。
【0016】
(1)ビニル基を有するシロキサン化合物
ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物との反応性、熱硬化性樹脂の高温安定性、樹脂ワニス硬化フィルム密着性及び剥離性の観点から、ビニル基を有するシロキサン化合物として、好ましくは、例えば、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する下記一般式(1);
R4-nSiOn/2 (1)
(式(2)中、Rは、ケイ素原子に結合した置換又は非置換の一価炭化水素基であり、好ましくは不飽和炭化水素基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基;及びベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基及びヘプテニル基等のアルケニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の不飽和炭化水素基であり、更に好ましくは炭素原子数が1~12、更に好ましくは炭素原子数が1~8のもの不飽和炭化水素基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基、アリル基であり、nは1以上4以下の整数であり、好ましくはn=3である)で表される分岐構造を有するオルガノポリシロキサンである。
【0017】
(2)ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物
ビニル基を有するシロキサン化合物との反応性、熱硬化性樹脂の高温安定性、樹脂ワニス硬化フィルム密着性及び剥離性の観点から、ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物として、好ましくはヒドロシリル基を有する環状シロキサン及び/又は直鎖状ポリシロキサンである。
【0018】
同様の観点から、ヒドロシリル基を有する直鎖状ポリシロキサンとして、好ましくは、
ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられ、より好ましくは、
ジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリシロキサン、さらにはジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリジメチルシロキサンを好適に用いることができ、具体的に例えば、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンが挙げられる。
【0019】
同様の観点から、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとして、好ましくは、
1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-プロピル-3,5,7-トリハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジハイドロジェン-3,7-ジヘキシル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5-トリハイドロジェン-1,3,5-トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタハイドロジェン-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11-ヘキサハイドロジェン-1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロシロキサン等が挙げられ、より好ましくは、
1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。
【0020】
(3)ビニル基及びヒドロシリル基を有するシロキサン化合物
化合物Aは、ビニル基及びヒドロシリル基を有するシロキサン化合物であってもよく、例えば、下記式(2):
【0021】
【0022】
(式(2)中、R5~R8は、それぞれ独立に、水素原子、ビニル基、アルケニル基、フェニル基、メチル基であり、少なくとも水素原子及びビニル基(好ましくは、さらにアルケニル基)が含まれ、好ましくは、R5~R7の合計中、2モル%が水素原子及びビニル基(好ましくは、水素原子、ビニル基及びアルケニル基)であり、nは好ましくは1~400、より好ましくは1~200、更に好ましくは1~100、更に好ましくは1~50の数である)で表されるシロキサン化合物が好ましい。
【0023】
化合物Aは、市販品を使用することができ、市販品として、例えば、
X-40-2667A(ビニル基及びヒドロシリル基含有メチル・フェニル置換型シロキサン化合物、信越化学工業社)、X-40-2756(ビニル基及びヒドロシリル基含有メチル・フェニル置換型シロキサン化合物、信越化学工業社)、HPM-502(45-50モル% 水素末端メチルヒドロシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマー、Gelest.Inc社)が挙げられる。
【0024】
(化合物B)
本発明1における化合物Bは、アリル基を有する含窒素複素環化合物である。
【0025】
化合物Bとしては、
アリル基を有するグリコールウリル誘導体化合物、
アリル基を有するイソシアヌル誘導体化合物、
アリル基を有するナジイミド誘導体化合物等が挙げられる。
【0026】
アリル基を有するグリコールウリル誘導体化合物としては、例えば下記式(3-1)~(3-2)で表される化合物(但し式(3-2)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基又はフェニル基を示し、R3とR4はそれぞれ独立にアリル基又はグリシジル基を示す)が挙げられる。
【0027】
【0028】
【0029】
アリル基を有するイソシアヌル誘導体化合物としては、例えば下記式(4-1)~(4-4)で表される化合物(但し式(4-3)中、Rはメチル又はアリル基を示す)が挙げられる。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
アリル基を有するナジイミド誘導体化合物としては、例えば下記式(4-5)
【0035】
【化8】
で表せる化合物(但し式(4-5)中、Rは下記式(4-5-1)又は(4-5-2)で表される基である)が挙げられる。
【0036】
【0037】
【0038】
化合物Bは、化合物Aと共に配合することで、本発明1の形態安定性及び塗工安定性を確保し、かつ、長期高温プロセス下であっても、密着性及び剥離性を奏する。
【0039】
化合物Bは、本発明1の形態安定性、塗工安定性及び密着性及び剥離性の観点から、アリル基を有するグリコールウリル誘導体化合物が好ましく、式(3-1)で示される化合物がより好ましい。
【0040】
(化合物C)
本発明1における化合物Cは、フッ素系界面活性剤である。
【0041】
化合物Cは、化合物Aと共に配合することで、本発明2における本発明1の支持基板に対する硬化前後の形態安定性及び塗工安定性を確保できる。
【0042】
化合物Cとしては、重合性単量体の重合体構造を有する主鎖(a)と、下記式(5):
【0043】
【化11】
(式(5)中、
R
1、R
2及びR
3はそれぞれ水素原子または炭素原子数1~18の有機基であり、
R
4はフッ素化アルキル基またはポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖であり、
Y
1は酸素原子または硫黄原子である)で表される官能基を有する側鎖(b)とを有し、前記主鎖(a)が、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート及び2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる群から選ばれる一種以上の重合性単量体の重合体構造を有するフッ素系界面活性剤(化合物C1)が好ましい。
【0044】
本発明1の形態安定性、塗工安定性及び密着性及び剥離性の観点から、
式(5)で表される官能基を有する側鎖(b)において、R1、R2およびR3がそれぞれ水素原子のものが好ましく、
R4は、フッ素原子が直接結合した好ましくは炭素原子の数が1~6、より好ましくは4~6、更に好ましくは6のフッ素化アルキル基である。
【0045】
式(5)で表される官能基を有する好適な側鎖(b)としては、例えば、
下記式(5-1):
【0046】
【0047】
及び/又は、下記式(5-2):
【0048】
【0049】
で表されるものが挙げられる。
【0050】
化合物C1は、本発明1の効果を損なわない範囲で式(5)以外の側鎖(c)を含有していても良く、例えば、下記式(6):
【0051】
【0052】
(式(6)中、R11、R21及びR31はそれぞれ水素原子または炭素原子数1~18の有機基、R41は炭素原子数1~18の有機基であって、R31とR41はたがいに結合してY11をヘテロ原子とする複素環を形成していてもよく、Y11は酸素原子又は硫黄原子である)で表される側鎖が挙げられる。
【0053】
式(6)で表される官能基を有する側鎖(c)は、後述するブロック化されたカルボキシル基と復活したカルボキシル基の極性の差が大きいため塗工安定性及び密着性及び剥離性の両立が可能という観点から、R11、R21およびR31がそれぞれ水素原子で、R41が炭素原子数1~18の有機基で、Y11が酸素原子または硫黄原子であるものがより好ましく、下記式(6-1):
【0054】
【0055】
で表される側鎖が更に好ましい。
【0056】
本発明1の形態安定性、塗工安定性及び密着性及び剥離性の観点から、
化合物C1としては、カルボキシル基を有する重合性単量体(α)と下記式(7):
【0057】
【0058】
(式(7)中、
R1、R2及びR3はそれぞれ水素原子または炭素原子数1~18の有機基であり、
R4はフッ素化アルキル基またはポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖であり、
Y1は酸素原子または硫黄原子である)で表されるビニルエーテル化合物との反応物である、ブロック化されたカルボキシル基を有する重合性単量体を構成要素とする化合物であることが好ましい。
【0059】
前記カルボキシル基を有する重合性単量体(α)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸等を好ましく例示できる。中でも、安価で取り扱いが容易であることから(メタ)アクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
【0060】
式(7)で表されるビニルエーテル化合物としては、重合性単量体(α)を用いて得られる重合体との反応が容易に進み、且つ、加熱前後での極性差が大きく、塗工安定性及び密着性及び剥離性の両立が可能という観点から、例えば、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-ビニルオキシオクタン、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-1-ビニルオキシヘキサンが好ましく、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-ビニルオキシオクタンがより好ましい。
【0061】
化合物C1を含む本発明1は、フッ素原子を含有する化合物C1が、本発明1の硬化体層表面に偏析した状態でフッ素化アルキル基やポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖が脱離し、揮発することで硬化体層表面の撥水性と撥油性が低下してリコートしやすい樹脂ワニスの液層膜が得られ、結果として塗工安定性及び密着性及び剥離性の両立を図ることができると考えられる。
【0062】
化合物C1の数平均分子量(Mn)は、本発明1の硬化体層表面に樹脂ワニス硬化フィルムを形成する際の相溶性を向上すると考えられる観点から、好ましくは1000~50000、より好ましくは1500~20000、更に好ましくは2000~8000であり、重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000~100000、より好ましくは5000~70000である。
【0063】
なお、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」という)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0064】
(1)測定装置
東ソー社「HLC-8220 GPC」、
(2)カラム
東ソー社ガードカラム「HHR-H」(6.0mmI.D.×4cm)
+東ソー社「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー社「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー社「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー社「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
(3)検出器
ELSD(オルテック社「ELSD2000」)
(4)データ処理
東ソー社「GPC-8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
(5)測定条件
カラム温度:40℃ 展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF) 流速:1.0ml/分
(6)試料
樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
(7)標準試料
「GPC-8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(8)単分散ポリスチレン
東ソー社「A-500」「A-1000」「A-2500」「A-5000」「F-1」「F-2」「F-4」「F-10」「F-20」「F-40」「F-80」「F-128」「F-288」「F-550」
【0065】
化合物C1として、例えば、200℃以上に加熱すると含フッ素基が脱離するオリゴマー型フッ素系界面活性剤(例えば、メガファックDS-21(DIC社)が市販されている。
【0066】
(化合物D)
本発明1は、形態安定性、塗工安定性及び密着性及び剥離性の観点から、さらに化合物Dである分子末端がアルコキシシリル基で封鎖されアルコキシ基が形成された反応性シロキサン化合物を含むことが好ましい。
【0067】
化合物Dとしては、形態安定性、塗工安定性及び密着性及び剥離性の観点から、
好ましくは、アルコキシシリル基を有し、メチル基やフェニル基の有機官能基、並びに/又は、反応性官能基を有するシロキサン化合物であり、
より好ましくは、分子末端がアルコキシシリル基で封鎖されアルコキシ基が形成されたたシロキサン化合物であり、さらに好ましくは、以下の一般式(8):
【0068】
【化17】
(式中、Xはメチル基、フェニル基、又は反応性官能基であり互いに異なってよく、ORはアルコキシシル基で互いに異なってよい)で表されるシロキサン化合物である。
【0069】
分子末端のアルコキシ基としては、メトキシ基及び/又はエトキシ基が好ましい。
【0070】
化合物Cは、形態安定性、塗工安定性及び密着性及び剥離性の観点から、重量平均分子量が好ましくは300~2000であり、より好ましくは300~1500であり、更に好ましくは500~1200である。
【0071】
重量平均分子量は、GPCに基づいて測定されたものであり、好ましくは、以下の条件で測定される:
測定装置:島津製作所社製GPCシステム;
カラムの種類:有機溶媒系SECカラム(東ソー社製);
溶剤の種類:テトラヒドロフラン(THF)
【0072】
化合物Dは、市販品を使用することができ、市販品として、例えば、
KR-511(組成:メトキシ基、ビニル基含有フェニル置換型シロキサン化合物、信越化学工業社);
KR-513(組成:メトキシ基、アクリル基含有メチル置換型シロキサン化合物、信越化学工業社);
KR-213(組成:メトキシ基含有メチル・フェニル置換型シロキサン化合物、信越化学工業社);
X-40-9296(組成:メトキシ基、メタクリル基含有メチル置換型シロキサン化合物、信越化学工業社);
X-41-1053(組成:メトキシ基、エトキシ基およびエポキシ基含有シロキサン化合物、信越化学工業社);
KR-9218(組成:メトキシ基含有メチル・フェニル置換型シロキサン化合物、信越化学工業社)などが挙げられる。
【0073】
(化合物E)
本発明1は、化合物Aの有するビニル基ヒドロシリル基のヒドロシリル化反応を利用して熱硬化するが、ヒドロシリル化反応をより円滑に進行させるためには、通常ヒドロシリル化反応用触媒である化合物Eを使用する。
【0074】
化合物Eは、化合物A及びBを含有する本発明1に別途添加して、本発明1と化合物Eの混合物を熱硬化させてもよいし、本発明1の成分として予め化合物A、B、又はその他のシロキサン化合物と共に配合させる等して、本発明1を化合物A、B及びEの混合物としておいてこれを熱硬化させてもよいが、ハンドリング性の観点から、本発明1を化合物A、B及びDの混合物としておくことが好ましい。
【0075】
本発明1の形態安定性及び密着性及び剥離性の観点から、化合物Eとしては、
遷移金属系では、白金系、パラジウム系、ロジウム系、ルテニウム系等が好ましく、
非遷移金属系では、C5H5-Fe-CH3(CO)2で示される鉄錯体化合物、鉄またはコバルトのカルボン酸塩とイソシアニドの混合物を挙げることができるが、
反応効率の観点から白金系触媒がより好ましい。
【0076】
(化合物F)
本発明1は、熱硬化性樹脂を薄く均一に塗布することが容易であるという理由から、さらに化合物Fである溶剤を含むことが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ブチロラクトン等のケトン類;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、メトキシプロパノール、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコ-ル、tert-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;
【0077】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノールプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコールエーテル類;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピル、2-オキシプロピオン酸ブチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類;
【0078】
セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;ジエチレルグリコールモノメチルエーテル、ジエチレルグリコールモノエチルエーテル、ジエチレルグリコールジメチルエーテル、ジエチレルグリコールジエチルエーテル、ジエチレルグリコールメチルエチルエーテル等のジエチレングリコール類;トリクロロエチレン、フロン溶剤、HCFC、HFC等のハロゲン化炭化水素類;パーフロロオクタンの様な完全フッ素化溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族類;ジメチルアセチアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の極性溶剤など、成書「溶剤ポケットハンドブック」(有機合成化学協会編、オ-ム社)に記載されている溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0079】
なお、本発明1を構成する化合物が溶剤に溶解又は分散する等して、溶剤と共に配合される場合は、当該溶剤は化合物Fとして扱う。
【0080】
(その他の任意化合物)
本発明1は、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、任意にその他の化合物、例えば、化合物A及びC以外のシロキサン化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、離型剤等の各化合物を含むことができる。
【0081】
(熱硬化性樹脂組成物)
本発明1は化合物A及びBを含むが、熱硬化性樹脂の形態安定性、塗工安定性及び密着性及び剥離性の観点から、化合物A100質量部に対して、化合物Bは、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.2~20質量部、更に好ましくは0.5~10質量部、更に好ましくは0.5~5質量部である。
【0082】
本発明1が、化合物A及びBと、さらに化合物Cを含む場合、熱硬化性樹脂の形態安定性、塗工安定性及び密着性及び剥離性の観点から、化合物A100質量部に対して、化合物Cは、好ましくは0.001~30質量部、より好ましくは0.01~20質量部、更に好ましくは0.05~10質量部、更に好ましくは0.1~5質量部である。
【0083】
本発明1が、化合物A及びBと、さらに化合物Dを含む場合、熱硬化性樹脂の形態安定性、塗工安定性及び密着性及び剥離性の観点から、化合物A100質量部に対して、化合物Dは、好ましくは0.1~50質量部、より好ましくは0.2~20質量部、更に好ましくは0.5~10質量部、更に好ましくは0.5~5質量部である。
【0084】
本発明1が、化合物A及びBと、さらに化合物Eを含む場合、ヒドロシリル化反応を円滑に進行させる観点から、化合物Eは、化合物Aと化合物Bとの合計量に対し、重量換算で0.1~1,000ppm、好ましくは0.5~500ppmである。
【0085】
本発明1が、化合物A及びBと、さらに化合物Fを含む場合、剥離性を向上する観点から、化合物Fは、化合物Aと化合物Bとの合計に対し、好ましくは10~300質量部、より好ましくは20~200質量部、更に好ましくは50~150質量部、更に好ましくは80~120質量部である。
【0086】
化合物Fがこの程度の含有量である場合は、本発明1を、粘度が、好ましくは100mPa・s超500000mPa・s以下、500~100000mPa・s、更に好ましくは1000~50000mPa・sの範囲で使用される高粘度スリットコーター、線・点等の細密パターン用ディスペンス塗工、スクリーン印刷等による高粘度塗布工程で使用することが好ましい。
【0087】
本発明1が、化合物A及びBと、さらに化合物Fを含む場合、本発明1の塗工性と剥離性を向上する観点から、化合物Fは、化合物Aと化合物Bとの合計質量部量に対し、好ましくは100~50000質量部、より好ましくは1000~30000質量部、更に好ましくは2000~15000質量部である。
【0088】
化合物Fがこの程度の含有量である場合、本発明1を、粘度が、好ましくは1~100mPa・s、より好ましくは2~50mPa・s、更に好ましくは3~10mPa・s、更に好ましくは3~5mPa・s、の範囲で使用される低粘度スリットコーター、バーコーター、フレキソ印刷等による低粘度塗布工程で使用することが好ましい。
【0089】
熱硬化性樹脂の形態安定性、塗工安定性及び密着性及び剥離性の観点から、化合物Fを除く熱硬化性樹脂組成物中、化合物A~Eの合計質量%は、好ましくは5~100質量%、より好ましくは10~100質量%、更に好ましくは20~100質量%、更に好ましくは50~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、更に好ましくは90~100質量%である。
【0090】
(本発明1の硬化体層の密着性及び剥離性)
本発明1は、熱硬化性樹脂組成物の硬化体層が樹脂ワニス硬化フィルム表面と接触して積層する硬化後積層体を構成するために使用され、樹脂ワニス硬化フィルムは、25℃環境下でも、熱硬化性樹脂組成物の硬化体層から容易に剥離できる。
【0091】
本発明1の硬化体層の密着性及び剥離性は、例えば、以下のように評価できる。
【0092】
(1)手順1:スピンコーター上で、支持基板上に本発明1を5g滴下してスピンコート(6000rpm×60秒、溶剤を50重量%以上含む場合は500rpm×30秒)して支持基板上に本発明1薄液層を形成した後、本発明1薄液層と支持基板の硬化前積層体1をオーブンに入れ、150℃×30分の加熱後、さらに230℃×30分の加熱を行い、本発明1硬化体層と支持基板とが積層する硬化後積層体1を製造する。
【0093】
(2)手順2:
硬化後積層体1の本発明1硬化体層の上に、樹脂ワニスを5g滴下し、スピンコート(500rpm×30秒+3000rpm×1秒)して活性化硬化後積層体1上に樹脂ワニス薄液層を形成した後、支持基板、本発明1硬化体層及び樹脂ワニス薄液層が積層した硬化前積層体2をオーブンに入れ、120℃×60分の加熱後、さらに200℃×10分の加熱を行い、樹脂ワニス硬化フィルム層、本発明1硬化体層及び支持基板が積層した硬化後積層体2を得る。
なお、PIワニス以外の樹脂ワニスを用いて硬化後積層体2を得る場合は、上記加熱条件を調整し、好ましくは100~200℃×10~30分の間で調整して、当該樹脂ワニスに適切な加熱をして樹脂ワニス硬化フィルム層を形成する。
【0094】
(3)手順3:硬化後積層体2を真空ガス置換炉に入れ30℃から250℃まで5℃/分で昇温し、その後250℃×60分保持、250℃から400℃まで5℃/分で昇温し、400℃×30分保持した後、25℃の環境下で2時間静置し、その後、30℃から400℃まで5℃/分で昇温し400℃で30分間加熱加工して加工樹脂ワニス硬化体フィルムを製造する。
【0095】
(4)手順4:加工樹脂ワニス硬化体フィルムを25℃の環境下で2時間静置した後、加工樹脂ワニス硬化フィルムの上に幅26mmのスコッチテープを貼り補強し、ガラス支持基板を固定して、加工樹脂ワニス硬化フィルムの長さ方向の一端のエッジを剥離強度測定装置で摘み、スライドガラス支持基板の面方向に対して90°方向に、加工樹脂ワニス硬化フィルムを本発明1硬化体層から剥離した際の強度が0.3N/mm以下であること、本発明1硬化体層の構成樹脂の付着及び本発明1硬化体層の支持基板からの剥離を伴わないことを確認する。
【0096】
なお、上記手順1~4には以下の機器及び材料を使用できる:
(1)支持基板:無アルカリガラス(イーグルXG(縦100mm、横100mm、厚み0.7mm)、コーニング社))
(2)樹脂ワニス:Pyre-m.L PC-5019(ポリイミドの濃度15wt%、N-メチルピロリドン(溶剤)溶液、IST社)
(3)スピンコーター:スピンコーター1H-DX2(ミカサ社)
(4)オーブン:LC113(ESPEC社)
(5)真空ガス置換炉(KDF-900GL(デンケンハイデンタル社))
(6)剥離強度測定装置:デジタルフォースゲージZP-50N/電動測定スタンドMX-500N-L550-E(イマダ社)
(7)スコッチテープ:313(スリーエム)
【0097】
なお、無アルカリガラス支持基板を他の素材の支持基板に置き換え、樹脂ワニスをポリイミドワニス以外の他の樹脂ワニスに置き換えて手順1~4を行い、手順4で樹脂ワニス硬化フィルムが剥離できる場合も本発明1はその支持基盤及び樹脂ワニス硬化フィルムに対して密着固定性を有するという。
【0098】
本発明1は密着固定性を有するので、支持基板が少なくとも無アルカリガラスで、樹脂ワニスが少なくともポリイミドワニスの場合に、熱硬化性樹脂組成物硬化体層が支持基板表面及びポリイミドワニス硬化フィルム表面と接触して、支持基板、熱硬化性樹脂組成物硬化体層及びポリイミドワニス硬化フィルムが積層する硬化後積層体2を構成すると、熱硬化性樹脂組成物硬化体層は支持基板に強く接着し、ポリイミドワニス硬化フィルムに対しても密着固定しているため、薄く柔らかいためにポリイミドワニス硬化フィルムだけを加工することが困難な場合でも、ポリイミドワニス硬化フィルムを、熱硬化性樹脂組成物硬化体層を介して支持基板上に安定に密着固定させた上で、高温環境下でも種々加工をすることが可能となり、加工終了後は、加工された加工ポリイミドワニス硬化フィルムを、熱硬化性樹脂組成物の硬化体層を残したまま支持基板から剥離して、所望の用途に使用することができる。
【0099】
さらに、本発明1を使用した硬化後積層体2に対する高温環境下でのポリイミドワニス硬化フィルムの加工を通じて、熱硬化性樹脂組成物硬化体層は支持基板に対するシュリンク及び樹脂ワニスと塗工時のシュリンク及びハジキが生じ難いという高温安定性を有している。
【0100】
本発明1は、化合物A及びBを主成分として、樹脂ワニス硬化フィルムに対して密着性及び剥離性を有するように構成することができる。
【0101】
その他の、樹脂ワニスとして、樹脂ワニス硬化フィルムが高温下での加工に対して耐熱性を有するものを選択することが好ましい。
【0102】
なお、樹脂ワニスとは、反応性の無い樹脂(高分子、ポリマー)を溶剤で希釈したものや、反応性を有する樹脂(高分子前躯体、プレポリマー)を溶剤で希釈したもので、樹脂ワニス液層を加熱(焼成)して耐熱性の高い樹脂ワニス硬化フィルムを形成できるもので、
樹脂ワニスの粘度の好適範囲は、本発明1硬化体上の塗工性の観点から好ましくは10mPa・s~20000mPa・s、より好ましくは20mPa・s~10000mPa・s、更に好ましくは30mPa・s~10000mPa・sであり、
上記の好適粘度範囲に調整するためには、
好適な希釈溶剤は、樹脂の溶解性に応じて選択することが必要であるが、単独で用いることも2種以上併用することもでき、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ブチロラクトンなどのケトン類、メトキシプロパノール、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブエステル類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、n-ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類及びN-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどのアミド類からなる群から少なくとも1種以上の溶剤であることが好ましく、
樹脂ワニスの固形分濃度は、2~50質量%であることが好ましい。
【0103】
耐熱性の高さの指標として、樹脂ワニス硬化フィルムのアウトガス量が、少なくとも200℃、好ましくは300℃で、より好ましくは350℃で、更に好ましくは400℃で、更に好ましくは450℃で、更に好ましくは500℃1時間で、フィルム質量に対して、好ましくは、1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0104】
樹脂ワニス硬化フィルムの温度T℃でのアウトガス量は以下の条件で測定する。
フィルムを2mm×2mm程度の大きさに複数枚切りとり、それらをTGA測定専用のアルミパンの中に約10mgとなるように入れて蓋をする。これをTGA(METTLER TOLEDO社製、TGA/DSC1)に入れてから、10℃/minで昇温しT℃で1時間保持後の減量を測定、減量率を計算する。
【0105】
耐熱性の高さの指標として、樹脂ワニス硬化フィルム素材のガラス転移点が150℃以上、好ましくは250°以上であることが挙げられる。
【0106】
樹脂ワニス硬化フィルムのアウトガス量が、少なくとも200℃1時間で、樹脂ワニス硬化フィルム質量に対して1質量%以下である素材としては、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられる。
【0107】
ガラス転移点が150℃以上である樹脂ワニス硬化フィルムとしては、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、シリコーン、イミド変性エポキシ、耐熱アルキッド、耐熱ポリエステル、エポキシ変成ポリエステルイミド、ポリアリレート等が挙げられる。
【0108】
以上のような耐熱性の高い樹脂ワニス硬化フィルムを構成すると、本発明1を使用した硬化後積層体2は、好ましくは200~550℃、より好ましくは250~500℃、更に好ましくは300~450℃の高温下での樹脂ワニス硬化フィルム加工をすることが可能となる。
【0109】
樹脂ワニス硬化フィルムに対して密着性及び剥離性を有するように本発明1を構成すると、樹脂ワニス硬化フィルムが少なくともポリイミドワニス硬化フィルムの場合、本発明1が使用される硬化後積層体2における支持基板として、無アルカリガラス以外のその他の無機素材支持基板を使用した場合でも、多くの場合に、樹脂ワニス硬化フィルムの密着性及び剥離性を奏することができる。
【0110】
樹脂ワニス硬化フィルムに対して密着性及び剥離性を有するように本発明1を構成すると、支持基板が少なくとも無アルカリガラス素材である場合、ポリイミドワニス硬化フィルム以外のアルミやステンレスなどの金属箔のようなその他の無機素材フィルムを使用した場合でも、フィルム剥離性及びフィルム密着固定性を奏することができる場合がある。
【0111】
その他の無機素材支持基板としては、無アルカリガラス以外のガラス、セラミックス、金属等が挙げられ、これらは、上述した高温下でのフィルム加工環境に対しても好適な支持基板となる。
ガラス以外のセラミックス、金属としては、Siを含む合金、Siを含むセラミックス粒子が好ましい。
【0112】
フィルム剥離性を有するように本発明1を構成し、支持基板としてガラス支持基板を使用して、ポリイミドフィルム以外のフィルムでもフィルム剥離性を有するようにフィルムを選択して本発明1が使用される硬化後積層体を構成した場合、さらにガラス支持基板以外の無機素材支持基板でもフィルム剥離性を有するように無機素材支持基板を選択することができる。
【0113】
本発明1が使用される硬化後積層体を構成した場合に、本発明1が樹脂ワニス硬化フィルムに対して密着性及び剥離性を奏することができる支持基板と樹脂ワニス硬化フィルムの組合せとしては、無アルカリガラス支持基板とポリイミドワニス硬化フィルムの組合せ以外には、
支持基板が無アルカリガラス、樹脂ワニス硬化フィルムがポリベンゾオキサゾールワニス硬化フィルムの場合、
支持基板が無アルカリガラス、樹脂ワニス硬化フィルムがポリアミドイミドワニス硬化フィルムの場合、
支持基板が無アルカリガラス、樹脂ワニス硬化フィルムがシリコーンワニス硬化フィルムの場合、
支持基板が無アルカリガラス、樹脂ワニス硬化フィルムがイミド変性エポキシ硬化フィルムの場合、
支持基板が無アルカリガラス、樹脂ワニス硬化フィルムが耐熱アルキッド硬化フィルムの場合、
支持基板が無アルカリガラス、樹脂ワニス硬化フィルムが耐熱ポリエステル硬化フィルムの場合、
支持基板が無アルカリガラス、樹脂ワニス硬化フィルムがエポキシ変性ポリエステルイミド硬化フィルムの場合、
支持基板が無アルカリガラス、樹脂ワニス硬化フィルムがポリアリレート硬化フィルムの場合、
支持基板が無アルカリガラス、樹脂ワニス硬化フィルムがアルミやステンレスなどの金属箔の場合、
支持基板がアルミやステンレスなどの金属、樹脂ワニス硬化フィルムがポリイミドワニス硬化フィルムの場合、
等が挙げられる。
【0114】
本発明1は、本発明1が使用される硬化後積層体2が高温下においても樹脂ワニス硬化フィルムに対して密着性及び剥離性を有するので、25℃近辺で行われる基材の薄膜化、フォトファブリケーション、例えば25~550℃、好ましくは200~550℃、より好ましくは250~500℃、更に好ましくは300~450℃の高温下で行われるエッチング加工、スパッタ膜の形成、微細精密素子の形成・配置、メッキ処理やメッキリフロー処理、半導体ウエハや半導体素子の運搬等において、精密素子配置用基板である被加工フィルムを支持体上に保持するために、更には精密素子が配置されて精密素子配置基板となった被加工フィルムを支持体上に保持するために、好ましくは仮固定用樹脂として使用することができる。
【0115】
本発明1は、上記以外にも、ウエハなどの様々な加工処理、例えば各種材料表面の微細化加工処理、各種表面実装の際に、キャリア用の部材や基材の仮固定用樹脂又は基材の表面被覆樹脂として好適に用いられ、本発明2の好適材料として使用することができる。
【0116】
〔本発明2〕
本発明2は、加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造方法であって、
支持基板の表面に本発明1の熱硬化性樹脂組成物が接触してなる熱硬化性樹脂組成物層を形成して、120~300℃環境下で熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化して熱硬化性樹脂組成物硬化体層と支持基板とが積層する硬化後積層体1を得る工程1、
硬化後積層体1において、熱硬化性樹脂組成物硬化体層の支持基板と接触していない面上に、樹脂ワニスを塗布して樹脂ワニス薄液層を形成して、前記樹脂ワニス薄液層を加熱することにより樹脂ワニス硬化フィルムを形成して、前記支持基板、熱硬化性樹脂組成物硬化体層及び前記樹脂ワニス硬化フィルムが積層された硬化後積層体2を得る工程2、
前記工程2の後に、硬化後積層体2を構成する樹脂ワニス硬化フィルムを加工して加工樹脂ワニス硬化フィルムを形成する工程3、及び、
硬化後積層体2から加工樹脂ワニス硬化フィルムを剥離する工程4を有する加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造方法である。
【0117】
工程1は、例えば、手順1における無アルカリガラス支持基板を工程1の支持基板に置き換え、支持基板として無アルカリガラス又は本発明1で好適とする素材による支持基板を使用して、その後の工程2~4を手順2~4にそれぞれ対応させて実施することができる。
【0118】
(工程1)
支持基板上に熱硬化性樹脂組成物層を形成する方法としては、手順1で挙げたような熱硬化性樹脂組成物をスピンコート法で塗工する以外にも、スリットコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法等で塗工することができる。スピンコート法では、例えば、回転速度が好ましくは500~6000rpm、より好ましくは2000~6000rpm、回転時間が好ましくは30~60秒という条件のもと、熱硬化性樹脂組成物層をスピンコーティングする方法が挙げられる。
【0119】
熱硬化性樹脂組成物に溶剤が含まれる場合は、熱硬化性樹脂組成物層を支持基板上に形成した後に、例えば、ホットプレート等で加熱して溶剤を蒸発させることができる。加熱の条件は、例えば、温度が通常50~350℃、好ましくは60~300℃であり、時間が通常2~90分、より好ましくは5~60分である。
【0120】
熱硬化性樹脂組成物層を形成するに際して、熱硬化性樹脂組成物層の面内への広がりを均一にするため、支持基板表面を予め表面処理することもできる。表面処理の方法としては、予め表面処理剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0121】
表面処理剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のカップリング剤が挙げられる。
【0122】
熱硬化性樹脂組成物層の熱硬化は、熱硬化性樹脂組成物層と支持基板の積層体を、例えば、オーブン中で、好ましくは100~300℃で5~120分、より好ましくは120~250℃で15~100分、更に好ましくは150~230℃で15~60分の加熱(熱養生)を行い、支持基板と熱硬化性樹脂組成物硬化体層との積層体である硬化後積層体1とする。なお、上記熱養生は複数回に分けて行ってもよく、上記熱養生の前に、例えば100~150℃で5~60分(より好ましくは10~45分、更に好ましくは15~30分)の予備的な加熱をしてもよい。
【0123】
硬化後積層体1中の熱硬化性樹脂組成物硬化体層の厚みは、熱硬化性樹脂組成物層の硬化物性及び樹脂ワニス硬化フィルムの密着性及び剥離性の観点から、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは1~20μm、更に好ましくは1~10μmとなるように調整することが好ましい。
【0124】
(工程2)
工程2では、まず、活性化硬化後積層体1において、熱硬化性樹脂組成物硬化体層の支持基板と接触していない面上に、樹脂ワニスを塗布して樹脂ワニス薄液層を形成する。
【0125】
樹脂ワニス薄液層の形成は、手順2で挙げたような樹脂ワニスをスピンコート法で塗工する以外にも、スリットコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法等で塗工することができる。スピンコート法では、例えば、回転速度が好ましくは200~6000rpm、より好ましくは300~3000rpm、回転時間が好ましくは10~60秒という条件のもと、樹脂ワニスをスピンコーティングする方法が挙げられる。
【0126】
樹脂ワニスに溶剤が含まれる場合は、樹脂ワニスを支持基板上に形成した後に、例えば、ホットプレート等で加熱して溶剤を蒸発させることができる。加熱の条件は、例えば、温度が通常50~350℃、好ましくは60~300℃であり、時間が通常2~90分、より好ましくは5~60分である。
【0127】
工程2では、次に、樹脂ワニス薄液層を加熱することにより樹脂ワニス硬化フィルムを形成して、支持基板、熱硬化性樹脂組成物硬化体層及び樹脂ワニス硬化フィルムが積層された硬化後積層体2を得る。
【0128】
硬化後積層体2中の樹脂ワニス硬化フィルムの厚みは、樹脂ワニス硬化フィルムの硬化物性及び密着性及び剥離性の観点から、好ましくは0.5~300μm、より好ましくは1~100μm、更に好ましくは5~50μmとなるように調整することが好ましい。
【0129】
硬化後積層体2を得るための加熱を行う間、硬化前の積層体の形態を安定に維持しておく観点から、硬化前の積層体を型枠で固定したり、プレートで挟みこんで適度に加圧したりしておいてもよい。
【0130】
(工程3)
工程3は、工程2の後におかれ、硬化後積層体2を構成する樹脂ワニス硬化フィルムを加工して加工樹脂ワニス硬化フィルムを形成することを内容とする。
【0131】
工程3で行われる樹脂ワニス硬化フィルムの加工は、硬化後積層体2に固定された樹脂ワニス硬化フィルムに対してなされ、樹脂ワニス硬化フィルムが耐熱性であれば、耐熱性の程度に応じた、好ましくは200~550℃、より好ましくは230~500℃、更に好ましくは250~450℃の高温下での加工も可能であり、例えば、裏面研削による樹脂ワニス硬化フィルムの薄膜化;エッチング加工、フォトリソ加工、スピンコートやスパッタ、CVDなどの膜形成;メッキ処理;インクジェット印刷;及びメッキリフローなどの加熱処理から選ばれる少なくとも1以上の処理を含むフォトファブリケーション;ならびにダイシング等が挙げられ、これらの作業の結果、樹脂ワニス硬化フィルム表面に精密素子が配置される場合もある。
【0132】
硬化後積層体を、所望の温度で(例えば200~550℃の高温で)加熱することも樹脂ワニス硬化フィルムの加工に含まれる。
【0133】
樹脂ワニス硬化フィルムが耐熱性及び気体透過性を有している場合であれば、熱硬化性樹脂組成物中の水分や未硬化物を事前に除去してアウトガスを樹脂ワニス硬化フィルムの加工時のアウトガスを低減して気泡の発生や積層体の剥がれを抑制する観点から、硬化後積層体に対して、例えば、200~450℃1時間程度の予備加熱を行ってもよい。
【0134】
工程2で製造された硬化後積層体2は、樹脂ワニス硬化フィルムが薄膜である場合でも、工程3において剪断力が熱硬化性樹脂組成物硬化体層にかかる加工に対して有効である。
【0135】
(工程4)
工程4は、工程1~3を経て形成された樹脂ワニス硬化フィルムが加工された硬化後積層体2から加工樹脂ワニス硬化フィルムを剥離する工程である。
【0136】
樹脂ワニス硬化フィルムを支持基板に固定された熱硬化性樹脂組成物硬化体層から剥離する場合、樹脂ワニス硬化フィルムの折れ曲がりにより樹脂ワニス硬化フィルム上に配置された例えば精密素子等に負荷が加わることを抑制する観点から、樹脂ワニス硬化フィルムの表面に平行な軸に対して、好ましくは0°超60°以下、より好ましくは5°~45°、更に好ましくは5°~30°、更に好ましくは5°~15°に、樹脂ワニス硬化フィルム又は支持基板、好ましくは樹脂ワニス硬化フィルムに力を付加することで、樹脂ワニス硬化フィルムを熱硬化性樹脂組成物硬化体層から剥離することが好ましい。
【0137】
樹脂ワニス硬化フィルム又は支持基板、好ましくは樹脂ワニス硬化フィルムに付加する力は、剥離を円滑に行い樹脂ワニス硬化フィルムに過剰の負荷を加えない観点から、好ましく0.0001~0.5N/mm、好ましくは0.0002~0.4N/mm、更に好ましくは0.0003~0.3N/mmである。
【0138】
剥離は、例えば、樹脂ワニス硬化フィルム又は支持基板、好ましくは樹脂ワニス硬化フィルムの周縁を持ち上げ(当該周縁の一部または全部を熱硬化性樹脂組成物硬化体層から剥離し)、樹脂ワニス硬化フィルムの表面に対してほぼ垂直方向に力を加えながら、樹脂ワニス硬化フィルム又は支持基板、好ましくは樹脂ワニス硬化フィルムの周縁から中心に向けて順に剥離する方法(フックプル方式)で行うことができる。
【0139】
剥離をする際、樹脂ワニス硬化フィルムの破損を防ぐため、支持基板の熱硬化性樹脂組成物硬化体層と反対の面にダイシングテープ等の補強テープを貼って、剥離してもよい。
【0140】
工程4は、本発明1を熱硬化性樹脂組成物層として使用すると、硬化後積層体の温度が好ましくは5~100℃、より好ましくは10~45℃、更に好ましくは15~30℃で行うことができる。
【0141】
加工樹脂ワニス硬化フィルムが剥離された支持基板と熱硬化性樹脂組成物硬化体層の積層体を、溶剤等の洗浄剤に浸漬したり(さらに超音波を加えたり)スプレーしたりして、熱硬化性樹脂組成物層硬化体層を支持基板から除去して、支持基板を上記工程1で再利用できる状態にしてもよい。
【0142】
洗浄液の温度は、洗浄性と支持基板のダメージを抑制する観点から、好ましくは10~80℃、より好ましくは20~50℃である。
【0143】
溶剤としては、例えば、リモネン、メシチレン、ジペンテン、ピネン、ビシクロヘキシ
ル、シクロドデセン、1-tert-ブチル-3,5-ジメチルベンゼン、ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N-ブチル、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ-ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類、N-メチル-2-ピロリジノン等のアミド/ラクタム類が挙げられる。
【実施例】
【0144】
〔化合物〕
(1)化合物A
化合物a1:X-40-2667A(ビニル基及びヒドロシリル基含有メチル・フェニル置換型シロキサン化合物、信越化学工業社)
【0145】
(2)化合物B
化合物b1:TA-G(式(3-1)で示されるアリル基を有するグリコールウリル誘導体化合物、四国化成社)
化合物b2:LDAIC(式(4-3)で示されるアリル基を有するイソシアヌル誘導体化合物、四国化成社)
【0146】
(3)化合物C
化合物c1:メガファックDS-21(DIC社)
【0147】
(4)化合物D
化合物d1:KR-511(ビニル/フェニル基含有オリゴメトキシカップリング剤、信越化学工業社)
化合物d2:KR-213(メチル/フェニル基含有メトキシカップリング剤、信越化学工業社)
【0148】
(5)化合物E
化合物e1:X-40-2667B(CAT-PH)(ビニル基及びヒドロシリル基を有さず非反応性のメチル・フェニル置換型シロキサン化合物中に白金系触媒が添加されている)、信越化学工業社)
【0149】
(6)化合物F
化合物f1:メトキシプロパノール(MMPG、1-メトキシ-2-プロパノール、ダイセル社)
化合物f2:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGMME、関東化学社)
【0150】
〔熱硬化性樹脂組成物(実施例1~6)及び比較熱硬化性樹脂組成物(比較例1)〕
表1記載のそれぞれの化合物について、化合物Aを50gとして、表1記載の質量部の割合で、容器(容量200ml、材質SUS)に投入し、撹拌温度は室温(25℃)、大気圧下にてスリーワンモーター(新東科学社製)を使用して200回転/分で30分~1時間攪拌して、実施例1~6の熱硬化性樹脂組成物及び比較例1の比較熱硬化性樹脂組成物を製造した。
【0151】
〔熱硬化性樹脂組成物(実施例7~10)〕
表1記載のそれぞれの化合物について、実施例6では化合物Aを25g、実施例7及び9では化合物Aを2.5g、実施例8及び10では化合物Aを0.5gとして、表1記載の質量部の割合で、容器(容量200ml、材質SUS)に投入し、撹拌温度は室温(25℃)、大気圧下にてスリーワンモーター(新東科学社製)を使用して200回転/分で30分~1時間攪拌して、実施例7~10の熱硬化性樹脂組成物を製造した。
【0152】
〔加工樹脂ワニス硬化フィルムの製造〕
(製造実施例1)
(1)基材及び器具
(1-1)支持基板:無アルカリガラス(イーグルXG(縦100mm、横100mm、厚み0.7mm)、コーニング社))
(1-2)樹脂ワニス:Pyre-m.L PC-5019(IST社)
(1-3)コーター:スピンコーター1H-DX2(ミカサ社)
(1-4)オーブン:LC113(ESPEC社)
(1-5)真空ガス置換炉(KDF-900GL(デンケンハイデンタル社))
【0153】
(2)製造実施例1
実施例1の熱硬化性樹脂組成物を使用して、以下の条件で加工樹脂ワニス硬化フィルムを製造した。
【0154】
(2-1)工程1:スピンコーター上で、支持基板上に実施例1の熱硬化性樹脂組成物を5g滴下してスピンコート(6000rpm×60秒)して支持基板上に熱硬化性樹脂組成物薄液層を形成した後、熱硬化性樹脂組成物薄液層と支持基板の硬化前積層体1をオーブンに入れ、150℃×30分の加熱をした後、さらに230℃×30分の加熱を行い、熱硬化性樹脂組成物硬化体層と支持基板とが積層する硬化後積層体1を得た。
【0155】
(2-2)工程2:硬化後積層体1の熱硬化性樹脂組成物硬化体層の上に、樹脂ワニスを3g滴下し、スピンコート(500rpm×30秒+3000rpm×1秒)して硬化後積層体1上に樹脂ワニス薄液層を形成した後、樹脂ワニス薄液層、熱硬化性樹脂組成物硬化体層及び支持基板が積層した硬化前積層体2をオーブンに入れ、120℃×60分の加熱をし、さらに200℃10分の加熱をして、樹脂ワニス硬化フィルム、熱硬化性樹脂組成物硬化体層及び支持基板が積層した硬化後積層体2を得た。
【0156】
(2-3)工程3:硬化後積層体2を窒素置換して窒素雰囲気にある真空ガス置換炉に入れ30℃から250℃まで5℃/分で昇温し、その後250℃×60分保持、250℃から400℃まで5℃/分で昇温し、400℃×30分保持した後、25℃の環境下で2時間静置し、その後、30℃から400℃まで5℃/分で昇温し400℃で30分間の加熱加工をした。
【0157】
(2-4)工程4:加熱加工後の硬化後積層体2を25℃の環境下で2時間静置した後、加工樹脂ワニス硬化フィルムの上に幅26mmのスコッチテープを貼り補強し、ガラス支持基板を固定して、樹脂ワニス硬化フィルムの長さ方向の一端のエッジを剥離強度測定装置で摘み、スライドガラス支持基板の面方向に対して90°方向に、加工樹脂ワニス硬化フィルムを本発明1硬化体層から剥離した際の強度が0.3N/mm以下である加工樹脂ワニス硬化フィルムを得た。
【0158】
(製造実施例2~6、製造比較例1)
製造実施例1の熱硬化性樹脂組成物を、実施例2~6、比較例1の熱硬化性樹脂組成物に置き換えて同じ条件で工程1~4を行い、それぞれを製造実施例2~6、製造比較例1とした。
【0159】
但し、工程1でのスピンコート条件は、熱硬化性樹脂組成物が化合物Fを含まない場合は6000rpm×60秒、熱硬化性樹脂組成物が化合物Fを含む場合は500rpm×30秒とし、化合物Cを含まない場合、工程2は行わなかった。
【0160】
(製造実施例7)
(1)基材及び器具
(1-1)支持基板:無アルカリガラス(イーグルXG(縦100mm、横100mm、厚み0.7mm)、コーニング社))
(1-2)樹脂ワニス:Pyre-m.L PC-5019(IST社)
(1-3)コーター:A-Bar OSP-10(松尾産業社)
(1-4)オーブン:LC113(ESPEC社)
(1-5)真空ガス置換炉(KDF-900GL(デンケンハイデンタル社))
【0161】
(2)製造実施例7
実施例7の熱硬化性樹脂組成物を使用して、以下の条件で加工樹脂ワニス硬化フィルムを製造した。
【0162】
(2-1)工程1:支持基板上に実施例7の熱硬化性樹脂組成物を0.2g滴下してA-Barで掃引してレベリング後、オーブン内で100℃×10分間乾燥して溶剤を揮発させ、支持基板上に熱硬化性樹脂組成物薄液層を形成する。熱硬化性樹脂組成物薄液層と支持基板の硬化前積層体1をオーブンに入れ、150℃×30分の加熱をした後、さらに230℃×30分の加熱を行い、熱硬化性樹脂組成物硬化体層と支持基板とが積層する硬化後積層体1を得た。
【0163】
(2-2)工程2:硬化後積層体1の熱硬化性樹脂組成物硬化体層の上に、樹脂ワニスを3g滴下し、スピンコート(500rpm×30秒+3000rpm×1秒)して硬化後積層体1上に樹脂ワニス薄液層を形成した後、樹脂ワニス薄液層、熱硬化性樹脂組成物硬化体層及び支持基板が積層した硬化前積層体2をオーブンに入れ、120℃×60分の加熱をし、さらに200℃10分の加熱をして、樹脂ワニス硬化フィルム、熱硬化性樹脂組成物硬化体層及び支持基板が積層した硬化後積層体2を得た。
【0164】
(2-3)工程3:硬化後積層体2を窒素置換して窒素雰囲気にある真空ガス置換炉に入れ30℃から250℃まで5℃/分で昇温し、その後250℃×60分保持、250℃から400℃まで5℃/分で昇温し、400℃×30分保持した後、25℃の環境下で2時間静置し、その後、30℃から400℃まで5℃/分で昇温し400℃で30分間の加熱加工をした。
【0165】
(2-4)工程4:加熱加工後の硬化後積層体2を25℃の環境下で2時間静置した後、加工樹脂ワニス硬化フィルムの上に幅26mmのスコッチテープを貼り補強し、ガラス支持基板を固定して、樹脂ワニス硬化フィルムの長さ方向の一端のエッジを剥離強度測定装置で摘み、スライドガラス支持基板の面方向に対して90°方向に、加工樹脂ワニス硬化フィルムを本発明1硬化体層から剥離した際の強度が0.3N/mm以下である加工樹脂ワニス硬化フィルムを得た。
【0166】
(製造実施例8~10)
製造実施例7の熱硬化性樹脂組成物を、実施例8~10の熱硬化性樹脂組成物に置き換えて同じ条件で工程1~4を行い、それぞれを製造実施例8~10とした。
【0167】
〔評価条件〕
(1)熱硬化性樹脂組成物硬化体層の外観
工程1で得た熱硬化性樹脂組成物硬化体層の外観を目視して、以下を評価した。
(1-1)シュリンク:ガラス外周から熱硬化性樹脂組成物硬化体層までの距離の最大値(mm);
(1-2)ハジキ:熱硬化性樹脂組成物硬化体層中の熱硬化性樹脂組成物硬化体層で被覆されていないガラス面(クレーター状になっている場合が多い)の領域の面積を有する円の直径(mm)。
【0168】
(1-3)評価基準
シュリンクが2mm以下、ハジキが2mm以下の場合を〇
シュリンクが2mm超、またはハジキが2mm超の場合を×
【0169】
(2)硬化前積層体の樹脂ワニス薄液層の外観
工程2で得た樹脂ワニス薄液層の外観を目視して、以下を評価した。
(2-1)シュリンク:ガラス外周から樹脂ワニス薄液層までの距離の最大値(mm);
(2-2)ハジキ:樹脂ワニス薄液層中の樹脂ワニス薄液層で被覆されていないガラス面(クレーター状になっている場合が多い)の領域の面積を有する円の直径(mm)。
【0170】
(2-3)評価基準
シュリンクが2mm以下、ハジキが2mm以下の場合を〇
シュリンクが2mm超、またはハジキが2mm超の場合を×
【0171】
(3)硬化後積層体2の樹脂ワニス硬化フィルムの外観
工程3で得た樹脂ワニス硬化フィルムの外観を目視して、以下を評価した。
(3-1)シュリンク:ガラス外周から樹脂ワニス薄液層までの距離の最大値(mm);
(3-2)ハジキ:樹脂ワニス薄液層中の樹脂ワニス薄液層で被覆されていないガラス面(クレーター状になっている場合が多い)の領域の面積を有する円の直径(mm)。
【0172】
(3-3)評価基準
シュリンクが2mm以下、ハジキが2mm以下の場合を〇
シュリンクが2mm超、またはハジキが2mm超の場合を×
【0173】
(4)樹脂ワニス硬化フィルムの密着性
加熱加工後の硬化後積層体2を25℃の環境下で2時間静置し外観を目視で確認し、浮き剥がれが無いことを確認した。
【0174】
(5)樹脂ワニス硬化フィルムの剥離性
工程4において、樹脂ワニス硬化フィルムの剥離強度を測定した。
樹脂ワニス硬化フィルムを硬化体層から剥離する際に、実施例1~6及び7~10はいずれも、硬化体層の支剥離強度を測定している間に、硬化体層の構成樹脂の付着及び支持基板から浮き剥がれがなかった。
【0175】
なお、硬化性樹脂組成物硬化体層の表面に樹脂ワニスが塗布できず、又は塗付できてもシュリンク又はハジキが×のものは樹脂ワニス硬化フィルムを成形できないため「フィルム化不可」とした。
【0176】
(6)粘度
化合物Fを使用しないものは、粘度計1で1°34′R24ローターを使用して測定を行い、10回転2分値の値を粘度とした。
化合物Fを使用したものは、粘度計2で0.8°R24ローターを使用して測定を行い、100回転2分値の値を粘度とした。
粘度計1(化合物A~E):コーンプレート型粘度計 RE105U(東機産業社)
粘度計2(化合物A~F):コーンプレート型粘度計 TV-35(東機産業社)
【0177】
表1に結果を示す。
【0178】