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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ツールホルダ
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/12 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
B23Q3/12 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019207794
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2020138316
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】108106708
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】108116994
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】503295932
【氏名又は名称】張 新添
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】張 新添
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-005547(JP,U)
【文献】実開昭63-144107(JP,U)
【文献】特開平01-295704(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005015787(DE,A1)
【文献】特開2007-038362(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2000-0062944(KR,A)
【文献】特開2018-099756(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109226797(CN,A)
【文献】特開平09-136204(JP,A)
【文献】特表2005-509532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00-33/00
B23Q 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通した通孔が設けられ、前記通孔の一端の内側にテーパ内孔が設けられ、一端の外側に外ネジ部が設けられたシャンクと、
軸方向の一端に前記シャンクの前記テーパ内孔と対応するテーパ部が設けられ、前記テーパ部の一端にセットボルトを固定するために第一内ネジ孔が設けられ、他端に第二内ネジ孔が設けられ、前記テーパ部に隣接する箇所には軸方向に直交する向きに貫通した位置決め孔である定位孔が設けられ、前記定位孔の両端には円柱孔が形成され、前記二個の円柱孔の間にはボトルネック孔が形成され、前記ボトルネック孔の両端の内壁は前記二個の円柱孔の内壁に連続する連結シャフトと、
軸方向の一端に第三内ネジ孔が設けられ、他端に貫通した軸孔が設けられ、径方向に貫通したザグリ孔および第四内ネジ孔が設けられ、前記軸孔側の端面を基準とした軸方向位置を高度位置と定義すると、前記ザグリ孔の中心と前記第四内ネジ孔の中心との間に高度位置の差による偏心を有し、前記第四内ネジ孔の中心の高度位置は前記ザグリ孔の中心の高度位置より高いナットと、
前記ザグリ孔に挿入され前記第四内ネジ孔に固定されるボルトと、
を含み、
前記連結シャフトは前記ナット内に嵌入し、且つ前記定位孔は前記ナットの前記ザグリ孔および前記第四内ネジ孔と対応し、前記ボルトで締められ、
前記ボルトが前記第四内ネジ孔に締まっていく時、前記ボルトが上向きに前記連結シャフトの前記ボトルネック孔を押し上げ、前記連結シャフトを上向きに押して移動させ、
前記ナットを前記シャンクの前記外ネジ部に合わせて締めると、前記シャンクの前記テーパ内孔で前記連結シャフトが上向きに押されて前記シャンクと結合し、
二重ロックが達成されることを特徴とするツールホルダ。
【請求項2】
前記連結シャフトの前記定位孔の両端に形成された前記二個の円柱孔の直径は、前記ボルトの軸径より20%大きいことを特徴とする請求項1記載のツールホルダ。
【請求項3】
前記ボトルネック孔の中段位置に形成された縮小孔の直径は、前記ボルトの軸径よりも0.1mm以下の長さだけ大きいことを特徴とする請求項1記載のツールホルダ。
【請求項4】
前記ボトルネック孔は、前記ボルトを径方向に位置決めする円柱状の孔であることを特徴とする請求項1記載のツールホルダ。
【請求項5】
前記ボトルネック孔の内壁は、軸方向断面において径内方向に突出する円弧形状であることを特徴とする請求項1記載のツールホルダ。
【請求項6】
前記ザグリ孔の中心と前記第四内ネジ孔の中心との間の偏心距離は、0.05~0.1mmの間であことを特徴とする請求項1記載のツールホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールホルダの挟持構造に関し、特にツールホルダがツールを挟持するサイズの限界を改善し、固定強度が高く、且つ同一シャンクに異なるサイズのツールヘッドを交換できるツールホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
一般公知のコレットチャックを有するツールホルダとして、図10および図11に示すとおり、ERストレートコレットチャックツールホルダが知られている。それは主に加工機の動力タレットもしくは加工機に設置する主軸上で使用される。ツールホルダ8は主にシャンク81を有し、シャンク81の一端には挟持構造が設けられる。挟持構造はシャンク81の一端にテーパ内孔811を有する。テーパ内孔811の内部にはコレットチャック82が設置され、コレットチャック82内にはストレートのツール6(例としてフライスツール、ドリル、タップツール…等)が設置される。そしてナット83で固定し、ナット83でコレットチャック82を押してツール6を収縮挟持させる。
【0003】
ツール6をスピーディに着脱するため、図11に示すとおり、例としてER16コレットチャックは、ツール6のシャンク直径サイズ範囲が1~10mmで挟持できる。各種規格のコレットチャック82が挟持できる収縮範囲は有限であり、挟持できるシャンクサイズはコレットチャックの制限を受け、且つこのコレット構造の最大挟持サイズは10mmまでである。そのため、単一のコレットチャック82の適用範囲は有限であり、加工形態が複雑になればなるほど、そして多樣化する加工環境であるほど、ユーザは大量のサイズのコレットチャック82を購入して日々の進歩や多様化する製品加工に対応しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知のコレットチャック82を有するツールホルダ8は、その一端のコレット構造が主にコレットチャック82を主な挟持機構となり、さらにナット83でツール6のシャンク81を固定する。しかしながら、各種規格のコレットチャック82は挟持できる収縮範囲は制限があり、ユーザは大量のサイズのコレットチャック82を購入しなければならないのでコストが増えてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のツールホルダは、シャンク、連結シャフトおよびナットを有する。シャンクは、貫通した通孔が設けられ、通孔の一端の内側にはテーパ内孔が設けられ、一端の外側には外ネジ部が設けられている。
【0006】
連結シャフトは、軸方向の一端にシャンクのテーパ内孔と対応するテーパ部が設けられる。テーパ部の一端にはセットボルトを固定するために第一内ネジ孔が設けられる。連結シャフトの他端には第二内ネジ孔が設けられる。連結シャフトは、テーパ部に隣接する箇所に、軸方向に直交する向きに貫通した位置決め孔である定位孔が設けられる。定位孔の両端には円柱孔が形成され、二個の円柱孔の間にはボトルネック孔が形成される。ボトルネック孔の両端の内壁は円柱孔の内壁に連続する。例えばボトルネック孔の内壁は、軸方向断面において径内方向に突出する円弧形状である。或いは、ボトルネック孔は、ボルトを径方向に位置決めする円柱状の孔でもよい。
【0007】
ナットは、軸方向の一端に第三内ネジ孔が設けられ、他端に貫通した軸孔が設けられる。更にナットには径方向に貫通したザグリ孔および第四内ネジ孔が設けられる。軸孔側の端面を基準とした軸方向位置を「高度位置」と定義すると、ナットは、ザグリ孔の中心と第四内ネジ孔の中心との間に、高度位置の差による偏心を有する。第四内ネジ孔の中心の高度位置は前記ザグリ孔の中心の高度位置より高い。偏心距離は0.05~0.1mmの間である。ボルトは、ザグリ孔に挿入され第四内ネジ孔に固定される。
【0008】
連結シャフトはナット内に嵌入し、且つ定位孔はナットのザグリ孔および第四内ネジ孔と対応し、ボルトで締められる。ボルトが第四内ネジ孔に締まっていく時、ボルトが上向きに連結シャフトのボトルネック孔を押し上げ、連結シャフトを上向きに押して移動させる。ナットをシャンクの外ネジ部に合わせて締めると、シャンクのテーパ内孔で連結シャフトが上向きに押されてシャンクと結合する。これにより、二重ロックが達成される。
【0009】
本発明のツールホルダは、ER16コレットチャック規格の10mmシャンクを使用する。連結シャフトはツールヘッドサイズの最大ツール直径が16mmまで交換して固定できる。拠って応用できるツールヘッドサイズ範囲は60%増える。もしくは定位孔の両端の円柱孔の間は円柱状の定位円柱孔に変更でき、且つボルトとしっかり合わさることで、強度を高め、使用できるツールヘッドサイズの最大ツール直径が30mmまで大きくなり、3倍に向上する。その他、連結シャフトの長さは変更でき、加工の応用範囲が広がり、加工は更に幅が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のツールホルダの斜視図である。
図2】本発明のツールホルダの組立断面図である。
図3】本発明の異なるナットの応用実施例の図である。
図4】本発明の連結シャフトのボトルネック孔の内壁が軸方向断面において円弧形状である実施例の組立断面図である。
図5】本発明において多種サイズのツールヘッドを固定する応用実施例図である。
図6】本発明の連結シャフトの応用実施例の図である。
図7】本発明の連結シャフトのボトルネック孔が円柱孔形状である実施例の分解状態の断面図である。
図8図7の実施例の組立断面図である。
図9】本発明において異なる形式のナットおよび多種の加工機能ツールヘッドをセットして固定した応用実施例の模式図である。
図10】公知のERストレートコレットチャックツールホルダの分解状態の部分断面図である。
図11】公知のERストレートコレットチャックツールホルダの組立状態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(一実施形態)
図1、2に示す本発明のツールホルダは、シャンク10、連結シャフト20およびナット30を有する。シャンク10は、例として市販のストレートシャンクもしくはテーパシャンクである。シャンク10は、貫通した通孔11が設けられ、通孔11の一端の内側にはテーパ内孔12が設けられ、一端の外側には外ネジ部13が設けられている。
【0012】
連結シャフト20の軸方向の一端にはシャンク10のテーパ内孔12と対応するテーパ部21が設けられている。テーパ部21の端にはセットボルト7を固定するために第一内ネジ孔211が設けられる。図5に示すように、連結シャフト20の他端にはフライスツールもしくはドリル等ツールのツールヘッド50を固定するための第二内ネジ孔22が設けられる。
【0013】
連結シャフト20にはテーパ部21に隣接した箇所に、軸方向に直交する向きに貫通した位置決め孔である定位孔23が設けられる。定位孔23の両端には円柱孔231が形成されている。円柱孔231の直径はボルト40の軸径よりも約20%大きいため、ボルト40が挿入された時に比較的大きな可動空間を有する。両端の円柱孔231の間にはボトルネック孔232が形成されており、ボトルネック孔232の中段位置の縮小孔の内径が最も小さい。縮小孔の直径はボルト40の軸径よりも約0.1mm以下の長さだけ大きい。ボトルネック孔232は、両端の内径が最大であり、且つボトルネック孔232の両端の内壁は円柱孔231の内壁に連続する。ボトルネック孔232の内壁は、軸方向断面において径内方向に突出する円弧形状である。
【0014】
ナット30の軸方向の一端は第三内ネジ孔31が設けられ、他端に貫通した軸孔32が設けられる。更にナット30には径方向に貫通したザグリ孔33および第四内ネジ孔34が設けられる。ザグリ孔33の中心と第四内ネジ孔34の中心との間には、わずかに距離のある偏心eを有する。以下、ナット30の軸孔32側の端面を基準とした軸方向位置を「高度位置」と定義する。本実施例では偏心eの距離はおよそ0.05~0.1mmの間であり、且つ第四内ネジ孔34の中心の高度位置はザグリ孔33の中心の高度位置より高い。
【0015】
図1に示すとおり、本発明のナット30は六角ナットを使用できる他に、異なる構造形状のナット30も使用できる。図3に示すとおり、ナット30の外側周辺環にはスパナ36でナット30を締めたり緩めたりするための複数個の槽孔35が設けられている。その他、ナット30に設けられるザグリ孔33および第四内ネジ孔34は一組以上であり、且つナット30の外周辺縁上に環状分布する。本実施例では三組設置されるが、異なる角度で使用することもできる。
【0016】
図2図4に示すとおり、本発明の連結シャフト20はナット30内に嵌入し、且つ定位孔23はナット30のザグリ孔33および第四内ネジ孔34と対応し、ボルト40で締められる。ナット30のザグリ孔33の中心と第四内ネジ孔34の中心との間にはわずかな高度位置の差による偏心eを有する。本実施例の偏心eの距離は約0.05~0.1mmの間であり、第四内ネジ孔34の中心の高度位置はザグリ孔33の中心の高度位置よりも高い。
【0017】
一旦ボルト40が徐々に高度位置が高い第四内ネジ孔34に締まっていく時、ボルト40は第四内ネジ孔34を支点として上向きに(および時計回りにわずかに偏向する)偏向する傾向があり、更にボルト40が徐々に上向きに連結シャフト20のボトルネック孔232を押し上げる。ボトルネック孔232の縮小孔形状は円弧形であるため、ボルト40は一点でボトルネック孔232と接触し、連結シャフト20を上向きに押して移動させ、ナット30をシャンク10の外ネジ部13に合わせて締め、シャンク10のテーパ内孔12から上向きに連結シャフト20を押してシャンク10と結合する。これにより、連結シャフト20はボルト40に押され、ナット30によって上向きに押されて固定されるため、二重ロックが達成される。
【0018】
図5に示すとおり、本実施例はツールホルダの構造型態を変える。連結シャフト20は異なるサイズのツールヘッド50と連結固定できる。本実施例に依ると、ER16コレットチャック規格に準拠したシャンク10を使用している。シャンク10はツールヘッドサイズψDの最大ツール直径サイズ範囲が16mmで固定連結でき、応用可能なツールヘッドサイズψD範囲は60%増加する。その他、図6に示すとおり、連結シャフト20の長さを変更でき、加工の応用範囲が広がる。
【0019】
前述した本実施例とER16シャンクコレットチャック規格のシャンク10はツールヘッドサイズψDの最大ツール直径サイズ範囲が16mmまで固定連結できる。主に連結シャフト20とナット30との固定強度において、ψDの最大ツール直径サイズ範囲を増やしたい場合、連結シャフト20とナット30とのロック強度を高めることができる。
【0020】
図7に示すとおり、連結シャフト20は、テーパ部21に隣接した箇所に、径方向に貫通した位置決め孔である定位孔23が設けられる。定位孔23の両端には直径がボルト40の直径ψd1よりやや大きい円柱孔231が形成され、二個の円柱孔231の間には口径ψd2が小さい定位円柱孔233が形成される。他に前述のボトルネック孔232が形成されている。定位円柱孔233の口径ψd2はボルト40の直径ψd1よりもやや大きく、口径の公差範囲は約0から0.05mmの間である。ボルト40と定位円柱孔233とはきつく接触し、定位円柱孔233とボルト40は密接に合わさる。
【0021】
図8に示すとおり、ボルト40をナット30の偏心設置された第四内ネジ孔34に螺設すると、ボルト40は定位円柱孔233の箇所で連結シャフト20を上向きに押し、連結シャフト20はシャンク10のテーパ内孔12と更にしっかりと合わさる。更に定位円柱孔233とボルト40との接触面積が更に大きくなる。
【0022】
図7に示すとおり、定位円柱孔233の長さLは、即ちボルト40との接触長さであり、接触長さLが長くなるほど更にしっかりと合わさる。拠って、連結シャフト20とシャンク10のテーパ内孔12との連結強度を高める。これにより、相対的にツールの切削強度を向上させ、ツールヘッドサイズψDの最大ツール直径サイズを上げる。実際の切削実験に基づき、ER16コレットチャック規格10mmのシャンク10を設置して使用した場合、シャンク10はツールヘッドサイズψDの最大ツール直径サイズ範囲を30mmまで広げて固定連結可能である。したがって、応用できるツールヘッドサイズψD範囲は三倍に増える。
【0023】
図9に示すとおり、本発明は、異なる形式のナット30と合わせてスパナ36で異なる加工機能シリーズのツールヘッド50を締めたり緩めたりできるので更に多くの応用組立ができ、更に実用性が向上する。
【0024】
上述のとおり、本発明のツールホルダは、従来使用されているコレットチャックがツールを挟持する技術を改善し、連結シャフトとナットとが内部で径方向に固定するボルト構造によって、固定強度が上がる。また、連結シャフトは異なるサイズのツールヘッドを交換して固定可能であり、1.6倍から3倍の範囲のツールヘッドのロック使用を向上させる。ユーザに対して、工具の加工条件および環境をスピーディに適応させて次々と変化させ、ツールの切削範囲を広げることで、産業利用性、実用性および進歩性を更に高める。
【符号の説明】
【0025】
10 シャンク
11 通孔
12 テーパ内孔
13 外ネジ部
20 連結シャフト
21 テーパ部
211 第一内ネジ孔
22 第二内ネジ孔
23 定位孔
231 円柱孔
232 ボトルネック孔
233 定位円柱孔
30 ナット
31 第三内ネジ孔
32 軸孔
33 ザグリ孔
34 第四内ネジ孔
35 槽孔
36 スパナ
40 ボルト
50 ツールヘッド
6 ツール
7 セットボルト
8 ツールホルダ
81 シャンク
811 テーパ内孔
82 コレットチャック
83 ナット
e 偏心
D ツールヘッドサイズ
d1 直径
d2 口径
L 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11