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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】廃棄物処理能力取引システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20220106BHJP
【FI】
G06Q10/00 400
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021094503
(22)【出願日】2021-06-04
【審査請求日】2021-06-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521244950
【氏名又は名称】株式会社TOWALO
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石渡 正佳
【審査官】萩島 豪
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-163423(JP,A)
【文献】特許第6792274(JP,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0003493(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、
コンピュータ装置が、
所有者または管理者が異なる複数の廃棄物の処理施設のそれぞれが所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの処理可能量に基づいて、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計を特定する合計処理可能量特定手段と、
廃棄物の品目ごとに、特定した合計処理可能量の範囲内で、所定の期間における廃棄物の排出者による廃棄物の品目ごとの必要処理量に応じた量に配分を可能にした合計処理可能量と、該排出者を特定する情報とを関連付けて、廃棄物の品目ごとの処理可能量に関する取引情報を生成する排出者関連付け手段と
を備える、廃棄物処理能力取引システム。
【請求項2】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、
廃棄物の処理施設が、該処理施設で所定の期間において処理可能な廃棄物の品目ごとの処理可能量に関する許可証情報を有し、
コンピュータ装置が、
処理施設が所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの処理可能量として、該処理施設が過去の所定の期間において実際に処理した処理量を、許可証に関連付けられた廃棄物の品目ごとの処理可能量である許可処理可能量で除することで廃棄物の品目ごとの過去の所定の期間における処理時間である仮想処理時間を算出し、許可証に関連付けられた廃棄物の全ての品目についての仮想処理時間の合計における、廃棄物の品目ごとの仮想処理時間の構成比率を、前記許可証に関連付けられた廃棄物の品目ごとの許可処理可能量に乗じることで、廃棄物の品目ごとの許可処理可能量の重複を取り除いた正味処理可能量を特定する正味処理可能量特定手段を備える、請求項1に記載の廃棄物処理能力取引システム。
【請求項3】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、
コンピュータ装置が、
合計処理可能量特定手段により特定された、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計に、過去の所定の期間における廃棄物の品目ごとの実際の処理量を、過去の所定の期間における廃棄物の品目ごとの処理可能量で除することで算出した値である廃棄物の処理施設の処理稼働率を乗じることで、廃棄物の品目ごとの所定の期間における廃棄物の予定処理可能量の合計を特定する合計予定処理可能量特定手段と、
廃棄物の品目ごとに、特定した合計予定処理可能量の範囲内で、所定の期間における廃棄物の排出者による予定処理量に応じた量に配分を可能にした合計予定処理可能量と、該排出者を特定する情報とを関連付けて、廃棄物の品目ごとの予定処理可能量に関する取引情報を生成する予定排出者関連付け手段と
を備える、請求項1又は2に記載の廃棄物処理能力取引システム。
【請求項4】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、
コンピュータ装置が、
廃棄物の品目ごとに、以下の式(1):
(理論余剰処理可能量)=(処理可能量)×{1-(処理施設の稼働率)}・・・式(1)
で求められる理論余剰処理可能量の合計を特定する理論余剰処理可能量特定手段
を備え、
第一排出者関連付け手段が、
廃棄物の品目ごとに、特定した理論余剰処理可能量の合計の範囲内で、所定の期間における廃棄物の排出者による必要処理量に応じた量と、該排出者を特定する情報とを関連付ける、請求項1~3のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム。
【請求項5】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、
コンピュータ装置が、
廃棄物の品目ごとに、以下の式(2):
(現実余剰処理可能量)=(処理可能量)×{(処理施設の目標稼働率)-(処理施設の稼働率)・・・式(2)
で求められる現実余剰処理可能量の合計を特定する現実余剰処理可能量特定手段
を備え、
第一排出者関連付け手段が、
廃棄物の品目ごとに、特定した現実余剰処理可能量の合計の範囲内で、所定の期間における廃棄物の排出者による必要処理量に応じた量と、該排出者を特定する情報とを関連付ける、請求項1~4のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム。
【請求項6】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、
コンピュータ装置が、
合計処理可能量特定手段により特定された、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計に、廃棄物の品目ごとの廃棄物から生産される再生資源の割合である歩留まり率を乗じることで、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の生産可能量の合計を特定する合計生産可能量特定手段と、
再生資源の品目ごとに、特定した生産可能量の合計の範囲内で、所定の期間における再生資源の購入者による必要購入量に応じた量と、該購入者を特定する情報とを関連付けて取引情報を生成する購入者関連付け手段と
を備える、請求項1~5のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム。
【請求項7】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、
コンピュータ装置が、
合計処理可能量特定手段により特定された、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計に、廃棄物の品目ごとの廃棄物から生産される再生資源の割合である歩留まり率を乗じることで、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の生産可能量の合計を特定する合計生産可能量特定手段と、
合計生産可能量特定手段により特定された、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の生産可能量の合計に、過去の所定の期間における再生資源の品目ごとの実際の生産量を、過去の所定の期間における再生資源の品目ごとの生産可能量で除することで算出した値である廃棄物の処理施設の生産稼働率を乗じることで、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の予定生産量の合計を特定する合計予定生産量特定手段と、
再生資源の品目ごとに、特定した予定生産量の合計の範囲内で、所定の期間における再生資源の購入者による必要購入量に応じた量と、該購入者を特定する情報とを関連付けて取引情報を生成する予定購入者関連付け手段と
を備える、請求項1~6のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム。
【請求項8】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、
コンピュータ装置が、
廃棄物の品目ごとに、特定した処理可能量の合計の範囲内で、所定の期間における廃棄物の運搬者による廃棄物の品目ごとの運搬可能量に応じた量と、該運搬者を特定する情報とを関連付けて、廃棄物の品目ごとの運搬可能量に関する取引情報を生成する運搬者関連付け手段と
を備える、請求項1~7のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム。
【請求項9】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、
コンピュータ装置が、
廃棄物の運搬者の有する車両による過去の所定の期間における実際の廃棄物の運搬回数を、該車両による過去の所定の期間における実際に廃棄物を運搬した運搬日数で除することで車両の車両標準回転数を算出し、運搬者の有する車両による過去の所定の期間における実際の廃棄物の積載量を、該車両の車検証等に記載された最大積載量で除することで車両の車両標準積載効率を算出し、該車両の積載量に車両の車両標準回転数、及び車両標準積載効率を乗じることで、運搬者による所定の期間における運搬可能量の合計を特定する合計運搬可能量特定手段と、
運搬者が所定の期間において運搬可能な、廃棄物の品目ごとの運搬可能量として、運搬者が過去の所定の期間において実際に運搬した廃棄物の運搬量の合計における、廃棄物の品目ごとの運搬量の構成比率を、運搬者による過去の所定の期間における運搬可能量の合計に乗じることで得られる、廃棄物の品目ごとの正味運搬可能量を特定する正味運搬可能量特定手段とを備える、請求項1~8のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム。
【請求項10】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、
コンピュータ装置が、
廃棄物の品目ごとに、廃棄物の保管施設に最大で保管可能な最大保管量から、現時点において廃棄物を保管している保管量を差し引いて、廃棄物の品目ごとの保管可能量を算出する保管可能量算出手段と、
廃棄物の品目ごとに、運搬者が所定の期間において運搬可能な、廃棄物の品目ごとの運搬可能量の範囲内で、保管施設における保管可能量に応じた量と、該運搬者を特定する情報及び該保管施設を特定する情報とを関連付けて、廃棄物の品目ごとの保管量に関する取引情報を生成する保管施設関連付け手段と
を備える、請求項1~9のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム。
【請求項11】
廃棄物の排出施設、処理施設、運搬施設、及び/又は保管施設において、廃棄物の管理状況を監視する所定のセンサと、制御装置と、端末装置と、所定のセンサ、制御装置及び端末装置と通信接続が可能なサーバ装置とを備える廃棄物処理能力取引システムであって、
サーバ装置が、
センサにより取得した情報を取得する情報取得手段を備え、
端末装置が、
情報取得手段により取得した情報を表示する表示手段と
排出施設、処理施設、運搬施設、及び/又は保管施設のそれぞれの所有者、廃棄物の排出者、再生資源の購入者、又は、前記所有者、前記排出者、及び前記購入者とは異なる他の利害関係者のいずれかによる操作入力を受け付ける操作入力受付手段と
を備え、
制御装置が、
前記所有者、前記排出者、前記購入者、及び/又は前記他の利害関係者による端末装置への操作入力に応じて、廃棄物の排出施設、処理施設、運搬施設、及び/又は保管施設のそれぞれに備えられた機能のいずれかを制御可能である、請求項1~10のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム。
【請求項12】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、
コンピュータ装置が、
再生資源の生産者による、過去における再生資源の品目ごとの再生資源の生産量をもとに、再生資源の品目ごとに、再生資源の将来の所定の期間における予測生産量を特定する予測生産量特定手段と、
特定した予測生産量の範囲内で、将来の所定の期間における前記生産者による生産予定量を含む生産予約情報と、該生産者を特定する情報とを受け付ける生産予約受付手段と、
前記生産者を含む複数の再生資源の取引者のうち、少なくとも1の取引者による再生資源の販売可能量を含む販売予約情報を受け付ける販売予約受付手段と、
前記少なくとも1の取引者による再生資源の購入予定量を含む購入予約情報を受け付ける購入予約受付手段と、
前記少なくとも1の取引者と関連付けて、受け付けた再生資源の生産予定量及び/又は販売可能量を記憶する生産予約情報記憶手段と、
前記少なくとも1の取引者と関連付けて、受け付けた再生資源の購入予定量を記憶する購入予約情報記憶手段と、
前記少なくとも1の取引者と第一の他の取引者による、前記生産予約情報及び/又は前記販売予約情報に対応する再生資源の売買が成立した場合に、生産予約情報記憶手段に記憶された生産予定量及び/又は販売可能量について、前記少なくとも1の取引者から第一の他の取引者へ販売した販売量を差し引くことで更新する生産予約情報更新手段と、
前記少なくとも1の取引者と第二の他の取引者による、前記購入予約情報に対応する再生資源の売買が成立した場合に、購入予約情報記憶手段に記憶された購入予定量について、第二の他の取引者から前記少なくとも1の取引者が購入した購入量を差し引くことで更新する購入予約情報更新手段と
を備える、請求項1~11のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム。
【請求項13】
制御部と記憶部を有するコンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムにおいて実現される廃棄物処理能力取引方法であって、
制御部において、所有者または管理者が異なる複数の廃棄物の処理施設のそれぞれが所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの処理可能量に基づいて、廃棄物の品目ごとの所定の期間における合計処理可能量を特定する合計処理可能量特定ステップと、
制御部において、廃棄物の品目ごとに、特定した処理可能量の合計の範囲内で、所定の期間における廃棄物の排出者による必要処理量に応じた量に配分を可能にした合計処理可能量と、該排出者を特定する情報とを関連付けて、廃棄物の品目ごとの処理可能量に関する取引情報を生成する第一排出者関連付けステップと
を有する、廃棄物処理能力取引方法。
【請求項14】
制御部と記憶部を有するコンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムにおいて実現される廃棄物処理能力取引方法であって、
コンピュータ装置が、
制御部において、再生資源の生産者による、過去における再生資源の品目ごとの再生資源の生産量をもとに、再生資源の品目ごとに、再生資源の将来の所定の期間における予測生産量を特定する予測生産量特定ステップと、
制御部において、特定した予測生産量の範囲内で、将来の所定の期間における前記生産者による生産予定量を含む生産予約情報と、該生産者を特定する情報とを受け付ける生産予約受付ステップと、
制御部において、前記生産者を含む複数の再生資源の取引者のうち、少なくとも1の取引者による再生資源の販売可能量を含む販売予約情報を受け付ける販売予約受付ステップと、
制御部において、前記少なくとも1の取引者による再生資源の購入予定量を含む購入予約情報を受け付ける購入予約受付ステップと、
記憶部において、前記少なくとも1の取引者と関連付けて、受け付けた再生資源の生産予定量及び/又は販売可能量を記憶する生産予約情報記憶ステップと、
記憶部において、前記少なくとも1の取引者と関連付けて、受け付けた再生資源の購入予定量を記憶する購入予約情報記憶ステップと、
前記少なくとも1の取引者と第一の他の取引者による、前記生産予約情報及び/又は前記販売予約情報に対応する再生資源の売買が成立した場合に、記憶部において、生産予約情報記憶ステップで記憶された生産予定量及び/又は販売可能量について、前記少なくとも1の取引者から第一の他の取引者へ販売した販売量を差し引くことで更新する生産予約情報更新ステップと、
前記少なくとも1の取引者と第二の他の取引者による、前記購入予約情報に対応する再生資源の売買が成立した場合に、記憶部において、購入予約情報記憶ステップで記憶された購入予定量について、第二の他の取引者から前記少なくとも1の取引者が購入した購入量を差し引くことで更新する第一の購入予約情報更新ステップと
を有する、請求項13に記載の廃棄物処理能力取引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の処理施設おける廃棄物の処理能力を取引することが可能な廃棄物処理能力取引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の国際的な動向として、環境汚染を防ぐために廃棄物の処理が適切に行われたかどうかを検証し、廃棄物の処理責任を適切な事業主体に課すことが重要視されるようになっている。廃棄物の処理責任としてまず思い浮かぶのは、廃棄物の処理者の責任(処理者責任)である。しかし、近年においては、廃棄物の処理者責任だけでなく、廃棄物の排出者の責任(排出者責任)についても問われることが多い。また、廃棄物発生の原因である使用済になった製品に関連して、製品の製造を行った製造業者や、製品の加工を行った加工業者、輸入を行った輸入業者の責任(製造物責任、拡大生産者責任)、さらには、製品の原料となる素材や薬品等の製造を行う事業者、あるいは、該素材や該薬品等を輸入する輸入業者の責任(レスポンシブル・ケア)についても、問われる機会が増えている。
【0003】
我が国では、廃棄物を規制する法律である、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「法」という。)において、事業活動に伴って生じた廃棄物の処理責任は、廃棄物を排出する事業者、すなわち排出者にあると定めている(法第3条第1項)。また、我が国では、排出者が廃棄物の処理を処理業者に委託した後の処理過程においても、廃棄物の収集運搬、中間処理及び最終処分の終了まで、排出者に確認を行う義務を課している(法第12条第7項)。すなわち、廃棄物は、排出者から処理者に処理が委託されることで排出者の手元から離れるにもかかわらず、形式的には、排出者がなおも廃棄物を所有又は占有するとともに、管理責任を継続して負っている状態である。
【0004】
また、上記の法によって、廃棄物の処理者である処理業者が、排出者から受託した廃棄物の処理を他の処理業者との間で融通し合う「再委託」は、不法投棄を防止する観点から、原則として禁止されている。再委託する場合には、排出者から書面による承諾を得ることが必要である(法第14条第16項、同第14条の4第16項、法施行令第6条の12、同第6条の15)。このような意味でも、排出者は、廃棄物の処理を処理業者に委託した後も、排出者による廃棄物の形式的な所有又は占有と、廃棄物に対する管理責任とを継続していると言える。
【0005】
しかし一方で、廃棄物の処理施設及び廃棄物の処理能力は、処理業者が所有し管理するものであって、排出者自身は、実際の処理施設や処理能力を所有も占有もしていない。そのため、排出者にとっては、処理過程における廃棄物の管理は難しい。また、処理業者が法で許可された条件に反して自身の保有する処理施設の処理能力を超えて廃棄物の処理を受注したり、法に反して処理能力を超過した量の廃棄物を、排出者に無断で他の処理業者に再委託したりすることを、排出者は防止することができない。以上のような理由により、我が国では、廃棄物が無許可の処理業者や劣悪な処理業者へと流出し、ひいては不法投棄される原因となっている。
【0006】
仮に、排出者が廃棄物の排出量に見合う分だけ、処理業者から廃棄物の処理能力を所有又は占有する権利として取得することができれば、排出者は、処理を委託した廃棄物の処理が確実かつ適切に行われるように、処理業者の処理能力に対して直接的に権利行使することができるようになる。また、排出者は、処理能力を権利として取得することで、法に定められた廃棄物処理の排出者責任を十全に果たせると同時に、廃棄物の不適切処理や不法投棄による環境汚染を拡散しないという、国際法の要請に叶ったかたちでの事業推進ができるようになる。
【0007】
一方、処理業者は、処理施設の有する処理能力を取引可能な権利として他の事業主体に移転できるようになれば、廃棄物の処理を排出者から受託するという従来からの処理事業に代えて、処理能力を排出者にシェアリングやリースという形で販売したり、将来における廃棄物の処理を排出者と事前に専用契約又は独占契約したりするという、新しい事業展開が可能になる。
【0008】
ところで、処理業者は、廃棄物を処理することで再利用可能なリサイクル資源(以下、再生資源ともいう。)を生産する、再生資源の再生業者でもある。同様に、廃棄物の処理施設は、再生資源の再生施設でもある。再生業者によって再生施設で生産された再生資源は、これを新たな製品を製造する際の原料として利用する再生資源の需要者や、再生業者と前記需要者との間の取引を仲介する商社等に販売される。
【0009】
しかし、再生資源の再生施設、及び再生施設における再生資源の再生能力は、再生業者が所有し、管理するものである。よって、前記需要者や前記商社等の再生資源の購入者が、自身の希望に沿うような形で再生業者の所有する再生能力を利用したり、管理したりすることはできない。したがって、購入者が事前に購入を予約した再生資源が、契約通りの納期までに確実に生産され、確実に購入者に引き渡されるという保証はない。
【0010】
再生資源の購入者が、将来の再生資源の購入契約と同時に、契約した購入量に見合う再生業者の再生能力を所有又は占有する権利として取得できれば、購入した将来における再生資源の生産及び引き渡しをより確実に行われるようにすることができる。また、購入者が、再生能力の取得を通じて再生業者の再生能力を直接的に管理することができれば、購入者の希望に沿ったかたちで再生資源の品質及び安全性を確実に満たすように、再生処理の工程を管理することも可能になる。
【0011】
さらに、再生業者は、再生施設の有する再生能力を取引可能な権利として他の事業主体に移転できるようになれば、再生資源に代えて再生能力を購入者にシェアリングやリースという形で販売する、あるいは将来における再生資源の販売を購入者との間で事前に専用契約又は独占契約する、という新しい事業展開が可能になる。
【0012】
また、再生能力を再生資源の購入者や利用者などの利害関係者(ステークホルダー)に移転可能であれば、再生業者は、製造物責任法や拡大生産者責任制度(リサイクル法等)によって定められた再生資源の製造者、あるいは、再生資源の生産者としての管理責任を十全に果たすことが可能になる。同時に、再生資源の取引の活性化によって社会における資源の循環を促進できるようになるため、持続可能な社会の発展を促すという、廃棄物の再生事業に寄せられる国際社会からの要請や、リサイクル推進に関する国際的な枠組みや法制度からの要請にも応えることができるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、新規な廃棄物処理能力取引システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、上記課題は、
[1] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、コンピュータ装置が、所有者または管理者が異なる複数の廃棄物の処理施設のそれぞれが所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの処理可能量に基づいて、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計を特定する合計処理可能量特定手段と、廃棄物の品目ごとに、特定した合計処理可能量の範囲内で、所定の期間における廃棄物の排出者による廃棄物の品目ごとの必要処理量に応じた量に配分を可能にした合計処理可能量と、該排出者を特定する情報とを関連付けて、廃棄物の品目ごとの処理可能量に関する取引情報を生成する排出者関連付け手段とを備える、廃棄物処理能力取引システム;
[2] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、廃棄物の処理施設が、該処理施設で所定の期間において処理可能な廃棄物の品目ごとの処理可能量に関する許可証情報を有し、コンピュータ装置が、処理施設が所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの処理可能量として、該処理施設が過去の所定の期間において実際に処理した処理量を、許可証に関連付けられた廃棄物の品目ごとの処理可能量である許可処理可能量で除することで廃棄物の品目ごとの過去の所定の期間における処理時間である仮想処理時間を算出し、許可証に関連付けられた廃棄物の全ての品目についての仮想処理時間の合計における、廃棄物の品目ごとの仮想処理時間の構成比率を、前記許可証に関連付けられた廃棄物の品目ごとの許可処理可能量に乗じることで、廃棄物の品目ごとの許可処理可能量の重複を取り除いた正味処理可能量を特定する正味処理可能量特定手段を備える、[1]に記載の廃棄物処理能力取引システム;
[3] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、コンピュータ装置が、合計処理可能量特定手段により特定された、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計に、過去の所定の期間における廃棄物の品目ごとの実際の処理量を、過去の所定の期間における廃棄物の品目ごとの処理可能量で除することで算出した値である廃棄物の処理施設の処理稼働率を乗じることで、廃棄物の品目ごとの所定の期間における廃棄物の予定処理可能量の合計を特定する合計予定処理可能量特定手段と、廃棄物の品目ごとに、特定した合計予定処理可能量の範囲内で、所定の期間における廃棄物の排出者による予定処理量に応じた量に配分を可能にした合計予定処理可能量と、該排出者を特定する情報とを関連付けて、廃棄物の品目ごとの予定処理可能量に関する取引情報を生成する予定排出者関連付け手段とを備える、[1]又は[2]に記載の廃棄物処理能力取引システム;
[4] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、コンピュータ装置が、廃棄物の品目ごとに、以下の式(1):
(理論余剰処理可能量)=(処理可能量)×{1-(処理施設の稼働率)}・・・式(1)
で求められる理論余剰処理可能量の合計を特定する理論余剰処理可能量特定手段を備え、第一排出者関連付け手段が、廃棄物の品目ごとに、特定した理論余剰処理可能量の合計の範囲内で、所定の期間における廃棄物の排出者による必要処理量に応じた量と、該排出者を特定する情報とを関連付ける、[1]~[3]のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム;
[5] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、コンピュータ装置が、廃棄物の品目ごとに、以下の式(2):
(現実余剰処理可能量)=(処理可能量)×{(処理施設の目標稼働率)-(処理施設の稼働率)・・・式(2)
で求められる現実余剰処理可能量の合計を特定する現実余剰処理可能量特定手段を備え、第一排出者関連付け手段が、廃棄物の品目ごとに、特定した現実余剰処理可能量の合計の範囲内で、所定の期間における廃棄物の排出者による必要処理量に応じた量と、該排出者を特定する情報とを関連付ける、[1]~[4]のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム;
[6] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、コンピュータ装置が、合計処理可能量特定手段により特定された、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計に、廃棄物の品目ごとの廃棄物から生産される再生資源の割合である歩留まり率を乗じることで、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の生産可能量の合計を特定する合計生産可能量特定手段と、再生資源の品目ごとに、特定した生産可能量の合計の範囲内で、所定の期間における再生資源の購入者による必要購入量に応じた量と、該購入者を特定する情報とを関連付けて取引情報を生成する購入者関連付け手段とを備える、[1]~[5]のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム;
[7] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、コンピュータ装置が、合計処理可能量特定手段により特定された、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計に、廃棄物の品目ごとの廃棄物から生産される再生資源の割合である歩留まり率を乗じることで、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の生産可能量の合計を特定する合計生産可能量特定手段と、合計生産可能量特定手段により特定された、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の生産可能量の合計に、過去の所定の期間における再生資源の品目ごとの実際の生産量を、過去の所定の期間における再生資源の品目ごとの生産可能量で除することで算出した値である廃棄物の処理施設の生産稼働率を乗じることで、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の予定生産量の合計を特定する合計予定生産量特定手段と、再生資源の品目ごとに、特定した予定生産量の合計の範囲内で、所定の期間における再生資源の購入者による必要購入量に応じた量と、該購入者を特定する情報とを関連付けて取引情報を生成する予定購入者関連付け手段とを備える、[1]~[6]のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム;
[8] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、コンピュータ装置が、廃棄物の品目ごとに、特定した処理可能量の合計の範囲内で、所定の期間における廃棄物の運搬者による廃棄物の品目ごとの運搬可能量に応じた量と、該運搬者を特定する情報とを関連付けて、廃棄物の品目ごとの運搬可能量に関する取引情報を生成する運搬者関連付け手段とを備える、[1]~[7]のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム;
[9] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、コンピュータ装置が、廃棄物の運搬者の有する車両による過去の所定の期間における実際の廃棄物の運搬回数を、該車両による過去の所定の期間における実際に廃棄物を運搬した運搬日数で除することで車両の車両標準回転数を算出し、運搬者の有する車両による過去の所定の期間における実際の廃棄物の積載量を、該車両の車検証等に記載された最大積載量で除することで車両の車両標準積載効率を算出し、該車両の積載量に車両の車両標準回転数、及び車両標準積載効率を乗じることで、運搬者による所定の期間における運搬可能量の合計を特定する合計運搬可能量特定手段と、運搬者が所定の期間において運搬可能な、廃棄物の品目ごとの運搬可能量として、運搬者が過去の所定の期間において実際に運搬した廃棄物の運搬量の合計における、廃棄物の品目ごとの運搬量の構成比率を、運搬者による過去の所定の期間における運搬可能量の合計に乗じることで得られる、廃棄物の品目ごとの正味運搬可能量を特定する正味運搬可能量特定手段とを備える、[1]~[8]のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム;
[10] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、コンピュータ装置が、廃棄物の品目ごとに、廃棄物の保管施設に最大で保管可能な最大保管量から、現時点において廃棄物を保管している保管量を差し引いて、廃棄物の品目ごとの保管可能量を算出する保管可能量算出手段と、廃棄物の品目ごとに、運搬者が所定の期間において運搬可能な、廃棄物の品目ごとの運搬可能量の範囲内で、保管施設における保管可能量に応じた量と、該運搬者を特定する情報及び該保管施設を特定する情報とを関連付けて、廃棄物の品目ごとの保管量に関する取引情報を生成する保管施設関連付け手段とを備える、[1]~[9]のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム;
[11] 廃棄物の排出施設、処理施設、運搬施設、及び/又は保管施設において、廃棄物の管理状況を監視する所定のセンサと、制御装置と、端末装置と、所定のセンサ、制御装置及び端末装置と通信接続が可能なサーバ装置とを備える廃棄物処理能力取引システムであって、サーバ装置が、センサにより取得した情報を取得する情報取得手段を備え、端末装置が、情報取得手段により取得した情報を表示する表示手段と排出施設、処理施設、運搬施設、及び/又は保管施設のそれぞれの所有者、廃棄物の排出者、再生資源の購入者、又は、前記所有者、前記排出者、及び前記購入者とは異なる他の利害関係者のいずれかによる操作入力を受け付ける操作入力受付手段とを備え、制御装置が、前記所有者、前記排出者、前記購入者、及び/又は前記他の利害関係者による端末装置への操作入力に応じて、廃棄物の排出施設、処理施設、運搬施設、及び/又は保管施設のそれぞれに備えられた機能のいずれかを制御可能である、[1]~[10]のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム;
[12] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、コンピュータ装置が、再生資源の生産者による、過去における再生資源の品目ごとの再生資源の生産量をもとに、再生資源の品目ごとに、再生資源の将来の所定の期間における予測生産量を特定する予測生産量特定手段と、特定した予測生産量の範囲内で、将来の所定の期間における前記生産者による生産予定量を含む生産予約情報と、該生産者を特定する情報とを受け付ける生産予約受付手段と、前記生産者を含む複数の再生資源の取引者のうち、少なくとも1の取引者による再生資源の販売可能量を含む販売予約情報を受け付ける販売予約受付手段と、前記少なくとも1の取引者による再生資源の購入予定量を含む購入予約情報を受け付ける購入予約受付手段と、前記少なくとも1の取引者と関連付けて、受け付けた再生資源の生産予定量及び/又は販売可能量を記憶する生産予約情報記憶手段と、前記少なくとも1の取引者と関連付けて、受け付けた再生資源の購入予定量を記憶する購入予約情報記憶手段と、前記少なくとも1の取引者と第一の他の取引者による、前記生産予約情報及び/又は前記販売予約情報に対応する再生資源の売買が成立した場合に、生産予約情報記憶手段に記憶された生産予定量及び/又は販売可能量について、前記少なくとも1の取引者から第一の他の取引者へ販売した販売量を差し引くことで更新する生産予約情報更新手段と、前記少なくとも1の取引者と第二の他の取引者による、前記購入予約情報に対応する再生資源の売買が成立した場合に、購入予約情報記憶手段に記憶された購入予定量について、第二の他の取引者から前記少なくとも1の取引者が購入した購入量を差し引くことで更新する購入予約情報更新手段とを備える[1]~[11]のいずれかに記載の廃棄物処理能力取引システム;
[13] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムにおいて実現される廃棄物処理能力取引方法であって、所有者または管理者が異なる複数の廃棄物の処理施設のそれぞれが所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの処理可能量に基づいて、廃棄物の品目ごとの所定の期間における合計処理可能量を特定する合計処理可能量特定ステップと、廃棄物の品目ごとに、特定した処理可能量の合計の範囲内で、所定の期間における廃棄物の排出者による必要処理量に応じた量に配分を可能にした合計処理可能量と、該排出者を特定する情報とを関連付けて、廃棄物の品目ごとの処理可能量に関する取引情報を生成する第一排出者関連付けステップとを有する、廃棄物処理能力取引方法;
[14] コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムにおいて実現される廃棄物処理能力取引方法であって、コンピュータ装置が、再生資源の生産者による、過去における再生資源の品目ごとの再生資源の生産量をもとに、再生資源の品目ごとに、再生資源の将来の所定の期間における予測生産量を特定する予測生産量特定ステップと、特定した予測生産量の範囲内で、将来の所定の期間における前記生産者による生産予定量を含む生産予約情報と、該生産者を特定する情報とを受け付ける生産予約受付ステップと、前記生産者を含む複数の再生資源の取引者のうち、少なくとも1の取引者による再生資源の販売可能量を含む販売予約情報を受け付ける販売予約受付ステップと、前記少なくとも1の取引者による再生資源の購入予定量を含む購入予約情報を受け付ける購入予約受付ステップと、前記少なくとも1の取引者と関連付けて、受け付けた再生資源の生産予定量及び/又は販売可能量を記憶する生産予約情報記憶ステップと、前記少なくとも1の取引者と関連付けて、受け付けた再生資源の購入予定量を記憶する購入予約情報記憶ステップと、前記少なくとも1の取引者と第一の他の取引者による、前記生産予約情報及び/又は前記販売予約情報に対応する再生資源の売買が成立した場合に、生産予約情報記憶ステップで記憶された生産予定量及び/又は販売可能量について、前記少なくとも1の取引者から第一の他の取引者へ販売した販売量を差し引くことで更新する生産予約情報更新ステップと、前記少なくとも1の取引者と第二の他の取引者による、前記購入予約情報に対応する再生資源の売買が成立した場合に、購入予約情報記憶ステップで記憶された購入予定量について、第二の他の取引者から前記少なくとも1の取引者が購入した購入量を差し引くことで更新する第一の購入予約情報更新ステップとを有する、[13]に記載の廃棄物処理能力取引方法:
を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、新規な廃棄物処理能力取引システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態にかかる、廃棄物処理能力取引システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる、端末装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態にかかる、コンピュータ装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施の形態にかかる、処理能力のタスクフォース化の概要を示す概要図である。
図5】本発明の実施の形態にかかる、処理能力の排出者への関連付けを説明する図である。
図6】本発明の実施の形態にかかる、処理能力のタスクフォース化と排出者への関連付けの実行処理のフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態にかかる、廃棄物の処理施設における廃棄物の品目ごとの正味処理可能量の算出表である。
図8】本発明の実施の形態にかかる、廃棄物の処理能力の再生資源の再生能力への転換の概要を示す概要図である。
図9】本発明の実施の形態にかかる、仮想取引ロットの作成と、該仮想取引ロットの取引の概要を示す概要図である。
図10】本発明の実施の形態にかかる、仮想取引ロットの作成と、該仮想取引ロットの取引における実行処理のフローチャートを表す図である。
図11】本発明の実施の形態にかかる、廃棄物処理能力取引システムをプラットホームとする仮想IoTの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面等を用いて本発明の実施の形態について説明をするが、本発明の趣旨に反しない限り、本発明は以下の実施の形態に限定されない。また、本明細書において説明するフローチャートを構成する各処理の順序は、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で順不同である。
【0018】
なお、以下の説明において、「タスクフォース」とは、廃棄物処理事業に関連する事業を行う事業主体の事業活動能力を該事業主体から切り離し、形式的に取引及び他の事業主体による占有が可能であり、かつ、各種の条件に応じて統合または分割可能に構成されたものを意味する。また、以下の説明においては、「処理能力のタスクフォース」とは、例えば、廃棄物の処理施設における廃棄物の処理能力を廃棄物の処理可能量で換算し、タスクフォースとして構成したものを含む。また、以下の説明においては、「再生能力のタスクフォース」とは、例えば、廃棄物の処理施設における再生資源の再生能力を再生資源の生産可能量で換算し、タスクフォースとして構成したものを含む。また、以下の説明においては、「運搬能力のタスクフォース」とは、例えば、廃棄物又は再生資源の運搬者による廃棄物又は再生資源の運搬能力を運搬可能量で換算し、タスクフォースとして構成したものを含む。また、以下の説明においては、「保管能力のタスクフォース」とは、例えば、廃棄物又は再生資源の保管施設における廃棄物又は再生資源の保管能力を廃棄物又は再生資源の保管可能量で換算し、タスクフォースとして構成したものを含む。
【0019】
[処理能力のタスクフォース化と取引]
以下、本発明の廃棄物処理能力取引システムにおける、処理能力のタスクフォース化、及び、該タスクフォース化した処理能力の取引について説明をする。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態にかかる、廃棄物処理能力取引システムの構成を示すブロック図である。廃棄物処理能力取引システムは、廃棄物の排出者が操作する端末装置1と、廃棄物の処理者であり、かつ、再生資源の生産者である処理事業者が操作する端末装置2と、再生資源の購入者が操作する端末装置3と、コンピュータ装置4と、通信ネットワーク5とを少なくとも備える。
【0021】
端末装置1は、廃棄物の排出者の操作する端末である。端末装置1は、排出者の事業所に設置されていてもよいし、該排出者が携帯するものであってもよい。
【0022】
端末装置2は、廃棄物の処理者であり、かつ、再生資源の生産者でもある処理事業者の操作する端末である。端末装置3は、再生資源の購入者が操作する端末である。端末装置2及び端末装置3は、端末装置1と同様に、処理事業者及び/又は購入者の事業所に設置されていてもよいし、処理事業者及び/又は購入者が作業時に携帯するものであってもよい。
【0023】
コンピュータ装置4は、廃棄物の処理施設における、廃棄物の品目ごとの処理可能量に基づいて、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計を特定するとともに、特定した処理可能量の合計の範囲内で、所定の期間における排出事業者の廃棄物の品目ごとの必要処理量に応じた量と、該排出事業者を特定する情報とを関連付け、廃棄物の処理能力の取引を行うプラットホームとして機能する。コンピュータ装置4は、サーバの所在を特定しないクラウドコンピューティングシステムによって代替されてもよい。端末装置1、端末装置2及び端末装置3は、通信ネットワーク5を介してコンピュータ装置4と接続されている。端末装置1、端末装置2及び端末装置3は、コンピュータ装置4と常時接続されていることが好ましいが、必要に応じて、接続が可能であればよい。
【0024】
なお、コンピュータ装置4は、後述するように、廃棄物の処理能力だけでなく、再生資源を生産する能力である再生能力や、あるいは、再生資源の仮想取引ロットを、廃棄物の排出者、廃棄物の処理者、再生資源の購入者、あるいは、前記3者とは異なる他の廃棄物/再生資源の取引者を特定する情報と関連付ける機能を備え、前記排出者、前記処理者、前記購入者、あるいは、前記取引者のそれぞれが、相互に前記再生能力や前記仮想取引ロットを取引可能に構成されている。
【0025】
次に、端末装置及びコンピュータ装置の構成について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態にかかる、端末装置の構成を示すブロック図である。端末装置1は、制御部11、RAM(Random Access Memory)12、ストレージ部13、グラフィックス処理部14、表示部15(例えば、表示部15は、表示画面16、タッチ入力部17a等を備える)、入力部17、通信インタフェース18、及びインタフェース部19を少なくとも備え、それぞれ内部バスにより接続されている。
【0026】
制御部11は、CPUやROMから構成される。制御部11は、ストレージ部13に格納されたプログラムを実行し、端末装置1の制御を行う。RAM12は、制御部11のワークエリアである。ストレージ部13は、プログラムやデータを保存するための記憶領域である。
【0027】
制御部11は、プログラム及びデータをRAM12から読み出して処理を行う。制御部11は、RAM12にロードされたプログラムやデータを処理することで、描画命令をグラフィックス処理部14に出力する。
【0028】
グラフィックス処理部14は、表示部15に接続されている。表示部15は、表示画面16を有している。制御部11が描画命令をグラフィックス処理部14に出力すると、グラフィックス処理部14は、表示画面16上に画像を表示するためのビデオ信号を出力する。ここで、表示部15は、タッチ入力部17aを備えるタッチパネルの画面であってもよい。
【0029】
通信インタフェース18は、無線又は有線により通信ネットワーク5に接続が可能であり、通信ネットワーク5を介してサーバ装置4と情報の送受信を行う。通信インタフェース18を介して受信したデータは、RAM12にロードされ、制御部11により演算処理が行われる。
【0030】
インタフェース部19には、入力部17(例えば、マウスやキーボード等)が接続されうる。端末装置1のユーザによる入力部17からの入力情報はRAM12に格納され、制御部11は入力情報をもとに各種の演算処理を実行する。また、タッチパネルを備えた表示部15のタッチ入力部17aによって入力部17を代替することもできる。
【0031】
端末装置2及び端末装置3の構成については、図2に示す構成を必要な範囲で採用することができる。
【0032】
図3は、本発明の実施の形態にかかる、コンピュータ装置の構成を示すブロック図である。コンピュータ装置4は、制御部41、RAM(Random Access Memory)42、ストレージ部43、通信インタフェース44を少なくとも備え、それぞれ内部バスにより接続されている。
【0033】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)等から構成され、ストレージ部43に格納されたプログラムを実行し、コンピュータ装置4の制御を行う。また、制御部41は時間を計時する内部タイマを備えている。RAM42は、制御部41のワークエリアである。ストレージ部43は、プログラムやデータを保存するための記憶領域である。制御部41は、プログラム及びデータをRAM42から読み出し、事前に登録された情報や各端末装置から受信した情報をもとに、廃棄物処理能力取引のためのプログラムの実行処理を行う。
【0034】
通信インタフェース44は、無線又は有線により通信ネットワーク5に接続が可能であり、通信ネットワーク5を介して各端末装置との間で情報の送受信を行う。通信ネットワーク5を介して受信したデータは、例えば、RAM42にロードされ、制御部41により演算処理が行われる。
【0035】
[処理能力のタスクフォース化の流れ]
次に、本発明の実施の形態にかかる、コンピュータ装置におけるプログラムの実行処理について説明をする。図4は、本発明の実施の形態にかかる、処理能力のタスクフォース化の概要を示す概要図である。また、図5は、本発明の実施の形態にかかる、処理能力の排出者への関連付けを説明する図である。また、図6は、本発明の実施の形態にかかる、処理能力のタスクフォース化と排出者への関連付けの実行処理のフローチャートである。
【0036】
図4を用いて、処理能力のタスクフォース化の概要を説明する。図4において、処理者20a及び処理者20bは廃棄物の処理者であり、処理者20aは処理施設として処理施設A1及びA2、処理者20bは処理施設として処理施設B1及び処理施設B2を所有している。また、処理施設A1、A2、B1、B2はそれぞれが廃棄物の品目ごとの処理能力を有しており、処理施設A1では廃棄物の品目C1及びC2が、処理施設A2では品目C3及びC4が、処理施設B1では品目C3及びC4が、処理施設B2では品目C5及びC6が処理可能である。
【0037】
本発明の廃棄物処理能力取引システムにおいては、処理施設A1、A2、B1、B2のそれぞれが保有する品目ごとの処理能力を本システム上において処理施設から仮想的に分離し、廃棄物の品目ごとに、分離した処理能力を処理能力のタスクフォースとして統合する。本システム上で仮想的に分離され、及び/又は仮想的に統合された品目ごとの処理能力のタスクフォースが、図4におけるTF品目tf1、TF品目tf2、TF品目tf3、TF品目tf4、TF品目tf5、TF品目tf6である。ここで、TF品目tf1、TF品目tf2は、処理施設A1から分離された処理能力、TF品目tf5、TF品目tf6は、処理施設B2から分離された処理能力である。また、TF品目tf3及びTF品目tf4は、処理施設A2及びB1のそれぞれから分離された品目C3及びC4についての処理能力を、仮想的に処理能力のタスクフォースとして統合したものである。
【0038】
[処理能力の排出者への関連付け]
次に、図5を用いて、タスクフォース化した廃棄物の処理能力の廃棄物の排出者への関連付け、及び占有移転について説明する。図5において、排出者10a、排出者10b及び排出者10cは廃棄物の排出者である。排出者10aは、将来の所定の期間における処理が必要な廃棄物について、品目C1の処理能力としてTF1を、品目C3の処理能力としてTF3を、品目C5の処理能力としてTF5を、それぞれ利用したいと考えているものとする。この場合、排出者10aは、端末装置1に、所定の期間における廃棄物の品目C1、品目C3、及び品目C5の必要処理量を入力し、コンピュータ装置4に送信する。
【0039】
コンピュータ装置4は、端末装置1から品目C1、品目C3、及び品目C5の必要処理量を受信すると、排出者10aの品目C1、品目C3、及び品目C5のそれぞれの必要処理量に合わせて、処理能力のタスクフォースの品目ごとの合計であるTF品目tf1の処理能力の50%をタスクフォースTF1として、TF品目tf3の処理能力の100%をタスクフォースTF3として、TF品目tf5の処理能力の20%をタスクフォースTF5として、それぞれを排出者10aに関連付ける。そして、関連付けたTF1、TF3、及びTF5を、実際の処理施設の処理能力を保有する処理者20a及び処理者20bと、排出者20aとのタスクフォースごとの廃棄物処理契約に還元する。
【0040】
次に、図6を用いて、処理能力のタスクフォース化と排出者への関連付けについて説明する。まず、廃棄物の処理者は、該処理者が所有する処理施設について、所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの処理可能量を、該処理施設の廃棄物の処理能力の情報として端末装置2に入力する(ステップS101)。端末装置2は、処理者により入力された廃棄物の品目ごとの処理可能量を、前記処理施設の処理能力に関する処理能力情報としてコンピュータ装置4に送信する(ステップS102)。コンピュータ装置4は、端末装置2から処理能力情報を受信する(ステップS103)と、該処理能力情報を、ストレージ部43に登録する(ステップS104)。コンピュータ装置4は、所有者または管理者が異なる、複数の処理施設について、それぞれの処理施設の処理能力情報を、ストレージ部43に登録する。
【0041】
ここで、処理能力情報のコンピュータ装置4への登録は、処理者によりコンピュータ装置4と通信可能な端末装置2に入力され、端末装置2からコンピュータ装置4に送信されるものに限定されない。登録方法としては、例えば、処理者が事前に処理能力情報が記載された書面を、郵送等によってコンピュータ装置4を管理・運用する団体に連絡し、登録されるものであってもよいし、該処理者が前記団体に電話等のインターネット通信以外の通信方法により連絡することで登録されるものであってもよい。また、登録する処理能力情報としては、処理者が端末装置2からコンピュータ装置4に送信したもののみに限らず、例えば、許可証を交付する行政庁が公表する情報を用いてもよいし、処理能力情報をデータベース化している企業や団体が公表する情報を用いてもよい。
【0042】
次に、コンピュータ装置4は、ステップS104においてストレージ部43に登録された複数の処理能力情報に基づいて、該複数の処理能力情報に含まれる複数の処理可能量から、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計を、品目ごとに合計処理可能量として特定する(ステップS105)。そして、特定した合計処理可能量をもとに、複数の処理施設の廃棄物の品目ごとの処理可能量を、排出業者に関連付け可能な処理能力の母集団として統合し、処理能力のタスクフォースに変換する(ステップS106)。
【0043】
次に、排出者は、所定の期間において排出する廃棄物について、廃棄物の品目ごとの必要処理量を端末装置1に入力(ステップS107)し、コンピュータ装置4に送信する(ステップS108)。
【0044】
コンピュータ装置4は、端末装置1から、所定の期間における廃棄物の品目ごとの必要処理量を受信する(ステップS109)。コンピュータ装置4は、ステップS109において前記品目ごとの必要処理量を受信すると、今度は、ステップS105で特定された合計処理可能量の範囲内で、廃棄物の品目ごとに、必要処理量に応じた量の処理可能量を、前記必要処理量とともに、該排出者を特定する情報に関連付ける(ステップS110)。そして、コンピュータ装置4は、前記処理可能量、前記必要処理量、及び前記排出者を特定する情報を関連付けた排出者関連付け情報を、ストレージ部43に登録する(ステップS111)。
【0045】
コンピュータ装置4において、第一排出者関連付け情報がストレージ部43に登録されることで、処理施設の有する処理能力が処理者及び処理施設から分離され、品目ごとの統合処理能力のタスクフォースとして統合された後、排出者ごとに、所定の期間における廃棄物の品目ごとの必要処理量に応じた処理能力のタスクフォースとして割り当てられ、実行処理を完了する。
【0046】
上記の実行処理において、廃棄物の処理者により登録される処理可能量、及び、廃棄物の排出者により入力される必要処理量に対応する所定の期間としては、特に限定されないが、1日あたり、1週あたり、1月あたり等、廃棄物の処理者及び廃棄物の排出者の事業サイクルに適合するものであることが好ましい。また、所定の期間の代わりに、排出者による廃棄物の排出日、処理者による廃棄物の処理可能日、排出者と処理者との間での廃棄物の受渡日等、所定の日時及び/又は該日時までの期間を特定するようにしてもよい。なお、所定の期間及び所定の日時が同時に特定されることが、より好ましい。
【0047】
[合計処理可能量の算出]
ここで、本発明の実施の形態における、合計処理可能量の算出方法について、詳しく説明する。
【0048】
一般的に、処理施設における廃棄物の処理能力と言う場合には、処理施設ごとに公的機関により許可された所定の期間(例えば1日、1時間、8時間等)における廃棄物の処理可能量、例えば、公的機関により発行された、処理施設の許可証に記載された廃棄物の処理可能量(処理能力)のことを指す。我が国においては、例えば、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)第15条第1項による産業廃棄物処理施設設置許可証、法第14条第6項による産業廃棄物処分業許可証、又は法第14条の4第6項による特別管理産業廃棄物処分業許可証に表示された品目別処理能力(以下、品目別表示処理能力ともいう。)が、それに該当する。
【0049】
しかし、我が国においては、公的機関により発行された許可証に記載された廃棄物の処理可能量は、前記処理施設が処理可能な廃棄物の複数の品目のうち、単一の品目の処理のみを行い、他の品目の処理は行わない場合の、該単一の品目に関する設計上の処理可能量であることが通例となっている。しかし、現実の処理施設における廃棄物の処理においては、廃棄物の複数の品目を同時に、あるいは、廃棄物の複数の品目を同日中に処理する場合が大半であるため、許可証に記載された廃棄物の処理能力は、実際の処理施設の総合的な処理能力と一致しているとは言えない。
【0050】
図7は、本発明の実施の形態にかかる、廃棄物の処理施設における廃棄物の品目ごとの正味処理可能量の算出表である。以下では、図7を用いて、許可証に記載された廃棄物の品目ごとの処理可能量が、処理施設において単一の品目の処理のみを行う際の設計上の処理可能量であった場合に、該処理施設が所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの正味処理可能量の算定方法について説明する。
【0051】
図7において、正味処理可能量の算出表21には、廃棄物の品目21a、許可処理可能量21b、実際処理量21c、仮想処理時間21d、品目ごとの仮想処理時間の構成比率21e、正味処理可能量21f、処理施設の稼働率21gが記載されている。
【0052】
廃棄物の品目21aは、処理施設において処理可能な、廃棄物の品目である。また、許可処理可能量21bは、許可証に記載された廃棄物の品目ごとの処理可能量であり、処理施設において単一の品目の廃棄物の処理のみを行う際の、所定の期間における廃棄物の品目ごとの処理可能量が記載されている。また、実際処理量21cは、処理施設が過去の所定の期間において実際に処理した廃棄物の品目ごとの処理量である。また、仮想処理時間21dは、許可処理可能量21bと実際処理量21cから算出した、処理施設による過去の所定の期間における廃棄物の品目ごとの計算上の処理時間である。また、品目ごとの仮想処理時間の構成比率21eは、処理施設において処理可能な廃棄物の全品目についての仮想処理時間21dの合計における、廃棄物の品目ごとの仮想処理時間の構成比率である。また、正味処理可能量21fは、処理施設による所定の期間における廃棄物の品目ごとの正味処理可能量である。また、稼働率21gは、所定の期間における廃棄物の品目ごとの正味処理可能量と実際に処理した品目ごとの処理量の割合である。
【0053】
ここで、図7において、仮に許可証に記載された廃棄物の品目ごとの処理可能量である許可処理可能量21bの数値を全ての品目について合計すると、450トン/日になるが、これは無意味な値である。なぜなら、先述のように、許可処理可能量21bには、処理施設において単一の品目の廃棄物の処理のみを行う際の、廃棄物の品目ごとの処理可能量が記載されている。すなわち、許可処理可能量21bとして表示された処理能力は、許可証に記載されている廃棄物の複数の品目のうち、いずれか1品目のみについて処理する場合の処理可能量の最大値を、廃棄物の品目ごとに表示している。よって、一の処理施設において、複数の品目を同時に、又は同日中に処理する場合における実際の廃棄物の処理能力は、許可処理可能量21bの数値を全ての品目について合計した量である450トン/日よりもずっと小さい。
【0054】
許可証に記載された廃棄物の品目ごとの許可処理可能量21bを、直接、他の事業者に、例えば、廃棄物の排出者等に、関連付け可能な処理能力のタスクフォースとして利用しようとすると、他の事業者に関連付けられた処理施設の処理可能量が、処理施設における廃棄物の品目ごとの実際の処理能力を超えてしまう可能性がある。これは、許可証に記載された廃棄物の品目ごとの許可処理可能量21bには、処理施設が所定の期間において処理可能な、廃棄物の一の品目の処理可能量の中に、他の品目の処理可能量が重複して含まれてしまっているからである。そのため、許可処理可能量21bは、廃棄物の品目ごとの処理能力をタスクフォース化して廃棄物の品目ごとに合計したり、廃棄物の排出者が入力した必要処理量に応じて排出者に振り分けたりする際の、他の事業者に関連付けが可能な廃棄物の処理能力の特定に用いるには適さない。すなわち、複数の処理施設について、廃棄物の品目ごとの許可処理可能量21bを廃棄物の品目ごとに単純に合計するだけでは、算出された合計処理可能量を、廃棄物の排出者や、あるいは、後述する再生資源の購入者、排出者や購入者、処理者とも異なる取引者(第三者)に関連付けるためのタスクフォースのベースとして利用できない。
【0055】
そこで、廃棄物の一の品目についての処理可能量の中に、他の異なる品目の処理可能量が重複して含まれていない、廃棄物の品目ごとの正味処理可能量の合計を、廃棄物の処理能力のタスクフォースとして他者に関連付けることが可能な、廃棄物の品目ごとの合計処理可能量として特定することが重要である。
【0056】
複数の処理施設について、廃棄物の品目ごとの正味処理可能量の合計を、廃棄物の品目ごとの合計処理可能量として特定するためには、処理施設が所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの正味処理可能量を特定する必要がある。
【0057】
以下に、廃棄物の品目ごとの正味処理可能量21fの算出方法を、順を追って説明する。まず、廃棄物の品目21aごとに、処理施設が過去の所定の期間において実際に処理した廃棄物の処理量の合計である実際処理量21cを、許可証に記載された廃棄物の品目ごとの許可処理可能量21bで除することで、処理施設が過去の所定の期間において実際処理量21cの処理に要した、過去の所定の期間おける前記品目ごとの仮想処理時間21dを算出する。例えば、図7において、廃棄物の品目21aが「廃プラスチック類」である場合には、過去の所定の期間における廃プラスチック類の実際処理量21cの値2050トンを、許可証に記載された廃プラスチック類についての許可処理可能量21bの値50トン/日で除する。この計算により、廃プラスチック類の仮想処理時間21dとして、41日が算定される。
【0058】
次に、先ほど算出した仮想処理時間21dについて、該処理施設が過去の所定の期間において処理した、廃棄物のすべての品目についての仮想処理時間21dを合算する。これにより、該処理施設が過去の所定の期間において、廃棄物の品目ごとの実際処理量21cの合計である9000トンの廃棄物をすべて処理するのに要した仮想処理時間21dの合計を特定する。ここで例えば、図7の正味処理可能量の算出表においては、1年間の施設の稼働日数である年間稼働日数として想定又は測定した、過去の所定の期間である300日間のうち、廃棄物をすべて処理するのに要した正味の処理日数である仮想処理時間21dの合計は、120日間と特定される。
【0059】
さらに、前記の過去の所定の期間おける廃棄物の品目ごとの仮想処理時間21dを、前記の過去の所定の期間における廃棄物の品目ごと仮想処理時間21dの、すべての品目についての合計で除することで、過去の所定の期間において廃棄物をすべて処理するのに要した仮想処理時間21dの合計を1とした場合の、廃棄物の品目ごとの仮想処理時間21dが、仮想処理時間21dの合計に占める期間占有率を、廃棄物の品目ごとの仮想処理時間の構成比率21eとして算出する。例えば、図7において、「廃プラスチック類」についての品目ごとの仮想処理時間の構成比率21eは、0.34である。
【0060】
そして、許可証に記載された廃棄物の品目ごとの許可処理可能量21bに、廃棄物の品目ごとの仮想処理時間の構成比率21eを乗ずることで、該処理施設が所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの正味処理可能量21fを特定する。例えば、図7において、「廃プラスチック類」についての正味処理可能量21fは、17.1トン/日である。このようにして特定された廃棄物の正味処理可能量は、処理施設における所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの純粋な処理可能量であり、同じく該処理施設で処理可能な廃棄物の他の品目の処理可能量との重複が無いものとして、処理能力のタスクフォースのベースとして利用することが可能である。
【0061】
最後に、処理施設が所定の期間において処理可能な、品目ごとの許可処理可能量21bを、コンピュータ装置4のストレージ部43に登録された複数の処理施設について、品目ごとに合計することで、廃棄物の品目ごとに廃棄物の他の品目との処理可能量の重複が無い、処理能力のタスクフォースのベースとして利用可能な正味処理可能量をもとにした合計処理可能量を特定する。
【0062】
上述の正味処理可能量の算出方法においては、過去の所定の期間における品目ごとの実際処理量を許可証に記載の品目ごとの許可処理可能量で除して算出された値を、全品目について合計することで過去の所定の期間における廃棄物の仮想処理時間を算出し、該廃棄物の仮想処理時間における品目ごとの構成比率を特定したうえで、許可証に記載された品目ごとの許可処理可能量に前記品目ごとの構成比率を乗ずることで、品目ごとの正味処理可能量を特定しているが、上記の算出方法または算出式により得られる稼働率21g(処理施設の稼働率の計算方法については後述する。)は、各品目、各品目の合計ともに同じになるため、過去の所定の期間dにおける品目ごとの実際処理量21cを、過去の所定の期間dで除して、単位期間(例えば1日)の平均実際処理量を求め、これを各品目の合計の稼働率21gで除することにより得られる量と同じであるため、算出過程を簡略化することが可能である。
【0063】
本発明の廃棄物処理能力取引システムによれば、上述のように、正味処理可能量を算出したうえで合計処理可能量を特定することで、廃棄物の品目ごとに他の品目との処理可能量の重複の無い、処理能力のタスクフォースのベースとして利用可能な合計処理可能量を特定することができる。
【0064】
また、本発明の廃棄物処理能力取引システムにおいては、上述の正味処理可能量を算定した上で合計処理可能量を特定する方法「以外」の方法により、廃棄物の品目ごとの合計処理可能量を特定することも可能である。上述した、品目別表示処理能力に品目仮想処理時間(廃棄物の品目ごとの仮想処理時間)の構成比率を乗ずることによって正味処理可能量を算定する方法以外の方法としては、例えば、コンピュータ装置に登録された複数の処理施設について、処理施設が所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの処理可能量を特定する際に、該処理施設が過去の所定の期間において実際に処理した処理量、処理した品目ごとの廃棄物の性質(硬度、炭素含有量など)、処理による負荷(電力消費量、酸素消費量など)の計測結果等に基づいて、該品目ごとの処理可能量を工学的に算定することが可能である。過去の所定の期間における実際に処理した処理量を将来の所定の期間における処理可能量として特定する場合、後述する仮想IoTを使用するなどして、処理した品目ごとの廃棄物の量、処理した品目ごとの廃棄物の性質や状態、処理による処理施設への負荷等の計測精度を高められれば、正味処理可能量を算定する場合と比較して、より実際の事業規模やビジネスの実態に則したかたちで、所定の期間における前記品目ごとの処理可能量を特定することが可能になる。また、複数の方法を併用して処理可能量を特定することによって、さらに特定の正確性や特定の有用性を高めることもできる。
【0065】
また、本発明の実施の形態によれば、例えば、処理施設における処理可能量と、過去の所定の期間における処理施設の稼働率とを用いて、該処理施設における処理可能量のうち、普段は活用されていない処理能力にあたる余剰処理能力を余剰処理可能量として特定し、特定した余剰処理可能量を廃棄物の排出者に関連付けることが可能である。
【0066】
具体的には、まず、過去の所定の期間のうち処理施設が廃棄物の処理に要した時間である仮想処理時間または処理日数が、該過去の所定の期間においてどのくらいの割合を占めるかを、処理施設の稼働率として特定する。次に、過去の所定の期間と、処理施設がフル稼働した場合の仮想処理時間または処理日数とが一致すると仮定した場合の該所定の期間を1として、1から先ほど算出した処理施設の稼働率を減ずることで、該過去の所定の期間における、処理施設が廃棄物の処理を行っていない時間または日数の割合を、処理能力余剰率として特定する。そして、処理施設の処理可能量に先ほど特定した処理能力余剰率を乗ずることで、該処理施設の理論余剰処理可能量を特定する。例えば、図7に示すように、所定の期間(例えば、処理施設の1年間の稼働日数)を300日間とした場合、該処理施設において所定の期間において廃棄物をすべて処理するのに要した処理日数である仮想処理時間21dの合計は120日間と特定されているため、処理施設の稼働率は40%となる。また、このとき、排出者に関連付けることが可能な該処理施設の理論余剰処理可能量は、例えば廃プラスチック類では10.26トン/日となる。
【0067】
理論余剰処理可能量の算出式は、以下のようになる。
【0068】
(理論余剰処理可能量)=(処理可能量)×{1-(処理施設の稼働率)}
【0069】
このように構成することで、廃棄物の処理施設は、普段の該処理施設における廃棄物処理事業のビジネス実態では使用されずに持て余している処理能力についても、余剰処理能力として取引することが可能になる。廃棄物の処理者は、余剰処理能力が取引可能になることで余剰処理能力に応じた廃棄物の処理を更に受注することができるため、廃棄物処理におけるより多様なニーズに答えることができるようになると同時に、所有する処理施設の稼働率を高め、費用対効果の改善や利益の拡大、単位処理量あたりの電力消費量や二酸化炭素排出量の削減ができるようになる。
【0070】
理論余剰処理能力を活かすには、実際には廃棄物の運搬能力の増強、作業員の増員などが必要になり、現実的に実現可能ではない場合がある。そこで、本発明の実施の形態においては、例えば、上記の余剰処理可能量の特定において、廃棄物の処理者が、所有する処理施設について、所定の期間における処理施設の現実的に実現可能な目標稼働率を任意に設定し、該目標稼働率から前記処理施設の稼働率を減じた値に該処理施設における処理可能量を乗じることで、該処理施設における廃棄物の現実余剰処理可能量を特定することが可能である。
【0071】
現実余剰処理可能量の算出式は、以下のようになる。
【0072】
(現実余剰処理可能量)=(処理可能量)×{(処理施設の目標稼働率)-(処理施設の稼働率)}
【0073】
このように構成することで、廃棄物の処理者が、所有する処理施設について、よりビジネス実態に即した形で該処理施設の処理能力を取引することが可能になる。産業廃棄物処理業界における廃棄物の処理施設の平均施設稼働率は30%程度であるとも言われ、他の業界に比して著しく低いので、理論余剰処理可能量として特定した余剰処理能力の大きさでは大き過ぎて取引できないことが想定され得る。廃棄物の処理者により処理施設の目標稼働率を任意に設定できるようにすることで、該処理者による無理のない事業計画の策定や景況に合わせた柔軟な処理施設の運営が可能になる。
【0074】
本発明の実施の形態によれば、廃棄物の処理施設において普段は活用されていない処理能力にあたる余剰処理能力を余剰処理可能量として特定し、本廃棄物処理能力取引システム上で取引可能にすることで、処理施設における稼働率を高めることができる。また、活用されていない余剰処理能力を活用可能な処理能力に転換することで、処理施設を増設せずとも、廃棄物の排出需要に対して安定的に、かつ低リスク・低コストに処理能力を供給することが可能になる。
【0075】
本発明にかかる廃棄物処理能力取引システムによれば、例えば、廃棄物の処理施設の処理能力を本システムで仮想的にタスクフォース化し、廃棄物の排出者に対して、所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの処理可能量として該排出者を特定する情報と関連付けることができる。その結果、排出者に必要処理量の廃棄物を処理するための廃棄物の処理能力を、仮想的に占有可能に付与することが可能となる。
【0076】
本発明の実施の形態においては、廃棄物の排出者による必要処理量に応じた量と関連付けることが可能な、所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの処理可能量としては、廃棄物の品目ごとの正味処理可能量、及び廃棄物の品目ごとの余剰処理可能量の両方が含まれる。
【0077】
[廃棄物の処理能力から再生資源の再生能力への転換]
次に、処理能力のタスクフォースの再生資源の再生能力のタスクフォースへの転換方法について説明する。図8は、本発明の実施の形態にかかる、廃棄物の処理能力の再生資源の再生能力への転換の概要を示す概要図である。
【0078】
図8において、購入者30a及び購入者30bは、廃棄物を処理することで生じる、再生資源の購入者である。また、TF品目tf1、TF品目tf2、TF品目tf3、TF品目tf4、TF品目tf5、TF品目tf6は、本発明にかかる廃棄物処理能力取引システムにより作成した、廃棄物の品目ごとのタスクフォースである。また、図7において、TF再生rc1、TF再生rc2、TF再生rc3、TF再生rc4、TF再生rc5、TF再生rc6は、処理能力のタスクフォースを、廃棄物の品目ごとに再生資源の生産力に転換したものである、再生能力のタスクフォースである。また、資源D1、資源D2、資源D3、資源D4、資源D5、資源D6は、再生能力のタスクフォースを、さらに、将来の所定の期間における再生資源の生産量の取引ロットに転換したものである、再生資源の仮想取引ロットである。
【0079】
廃棄物処理能力取引システムは、タスクフォース化した廃棄物の処理能力を、再生資源生産に関する、再生能力のタスクフォースへ転換することができる。処理能力のタスクフォースを再生能力のタスクフォースに転換する場合、コンピュータ装置は、廃棄物の処理能力のタスクフォース化において特定した、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計である合計処理可能量に、今度は、前記品目ごとの所定の期間における合計処理可能量に「歩留まり率」を乗じる。コンピュータ装置は、このような演算を行うことで、処理施設における廃棄物の処理能力を表す処理可能量から、再生資源の再生能力である、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の生産可能量の合計を、合計生産可能量として特定する。
【0080】
ここで「歩留まり率」とは、処理施設において廃棄物から生産される再生資源の割合である。歩留まり率は、例えば、コンピュータ装置に処理能力情報が登録された複数の処理施設における、過去の所定の期間における再生資源の品目ごとの実際の生産量(例えば、現在の時点から週単位で換算した過去数週間、あるいは、一か月単位で換算した過去数か月間における、複数週又は複数月の移動平均で算出した週ごと、又は月ごとの生産量)を、同じく、該複数の処理施設における過去の所定の期間における廃棄物の品目ごとの実際の処理量(例えば、前記生産量と同様に、移動平均で算出した処理量)で除することによって算出することができる。
【0081】
廃棄物の合計処理可能量に歩留まり率を乗じることで特定された、再生資源の品目ごとの合計生産可能量とは、処理能力のタスクフォースを再生能力のタスクフォースに変換したものであり、処理能力のタスクフォースと同様に、再生資源を生産する能力を有する処理施設から再生能力のタスクフォースを本システム上で仮想的に分離し、再生資源の品目ごとに、特定した合計生産可能量の範囲内で、所定の期間における再生資源の購入者による必要購入量に応じた量と、該購入者を特定する情報とに関連付けることができる。
【0082】
本発明の廃棄物処理能力取引システムにおいては、このように構成することで、再生資源の購入者が、廃棄物の処理施設の有する再生資源の生産力である再生能力の取得を通じて、将来の所定の期間における再生資源の生産量に応じた、処理施設における再生資源の再生能力を取得し、占有することができる
【0083】
[再生資源の再生能力からの再生資源の仮想取引ロットの作成]
さらに、図8を用いて、再生資源の再生能力のタスクフォースからの、再生資源の仮想取引ロットの作成方法について説明する。図8において、資源D1、資源D2、資源D3、資源D4、資源D5、資源D6は、再生能力のタスクフォースを、さらに、将来の所定の期間における再生資源の生産量の取引ロットに転換したものである、再生資源の仮想取引ロットである。
【0084】
コンピュータ装置4は、廃棄物の品目ごとの所定の期間における再生可能量の合計である合計再生可能量を特定すると、さらに、前記品目ごとの所定の期間における合計再生可能量に、廃棄物の処理施設の「生産稼働率」を乗じることで、処理施設における再生資源の再生能力である生産可能量から、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の予定生産量の合計を、合計予定生産量として特定する。ここで、再生資源の予定生産量とは、再生資源の再生能力ではなく、将来の所定の期間における、再生資源の実際の生産量を意味する。
【0085】
ここで合計予定生産量の算出に用いる「生産稼働率」としては、処理施設の再生資源の品目ごとの再生能力に対する、実際に生産される再生資源の生産量の割合を採用することが好ましい。生産稼働率は、例えば、前記複数の処理施設における、過去の所定の期間における再生資源の品目ごとの実際の生産量(例えば、過去の複数週又は複数月の移動平均で算出した週ごと、又は月ごとの生産量)を、該複数の処理施設における、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の生産可能量(例えば、該複数の処理施設における、再生資源の品目ごとの所定の期間における再生資源の生産可能量の平均値)で除することによって算出することができる。
【0086】
合計予定生産量に生産稼働率を乗じることで特定された、再生資源の品目ごとの合計予定生産量は、再生資源の品目ごとに、特定した予定生産量の合計の範囲内で、所定の期間における再生資源の購入者による必要購入量に応じた量と、該購入者を特定する情報とに関連付けることが可能である。
【0087】
本発明にかかる廃棄物処理能力取引システムにおいては、所定の期間における再生資源の生産可能量は、再生資源の再生能力のタスクフォースとして、商社等の再生資源の購入者に、オークション等による取引を通じて、予め決められた所定の期間において占有可能な権利として移譲又は移転させることが可能である。また、再生能力のタスクフォースに生産稼働率を乗じることで作成した、再生資源の仮想取引ロットは、再生能力のタスクフォースとは別途、オークション等の取引によって、再生資源の購入者により購入予約することが可能である。
【0088】
すなわち、本発明においては、処理能力のタスクフォースから再生資源の仮想取引ロットを作成するまでの過程において、再生能力のタスクフォースのオークションと、再生資源の仮想取引ロットのオークションという、2つの取引を行うことを想定している。再生能力のタスクフォースの落札者と、再生資源の仮想取引ロットの落札者とは一致していなくてもよいが、再生能力のタスクフォースの購入者には、該再生能力のタスクフォースをもとに生産される再生資源の仮想取引ロットを、優先的に購入できるようにすることが好ましい。
【0089】
本発明においては、このように構成することで、再生資源の購入者が、将来の再生資源の購入契約を行うと同時に、購入契約した再生資源の購入量に応じた再生資源の生産者の再生能力を、占有可能な権利として取得可能にすることができる。これによって、購入契約が履行される際に、該購入者が購入契約した購入量に応じた再生資源の生産及び引き渡しを、より確実に行うことができる。
【0090】
また、本発明においては、このように構成することで、該購入者が、再生資源の再生能力の取得を通じて、再生資源の生産者の有する再生能力を占有することができるため、購入者の希望に沿った品質及び安全性を満たすことができるように、購入者により廃棄物の処理と再生資源の生産の工程を直接管理できるよう構成することも可能である。
【0091】
[廃棄物の処理能力からの廃棄物の仮想取引ロットの作成]
本発明にかかる廃棄物処理能力取引システムは、さらに、処理施設の廃棄物の品目ごとの処理能力のタスクフォースをもとに、廃棄物の仮想取引ロットを作成することができる。ここで、廃棄物の仮想取引ロットとは、廃棄物の処理委託契約において処理する廃棄物の処理量を、廃棄物の処理能力ではなく、将来における実際の廃棄物の処理量である予定処理可能量として取引することを目的として作成されるものである。以下では、処理能力のタスクフォースをもとにした、廃棄物の仮想取引ロットの作成について説明する。
【0092】
処理能力のタスクフォースをもとに、廃棄物の仮想取引ロットを作成する場合、コンピュータ装置4は、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計である合計処理可能量を特定すると、今度は、前記品目ごとの所定の期間における合計処理可能量に、廃棄物の処理施設の「処理稼働率」を乗じることで、廃棄物の品目ごとの所定の期間における廃棄物の予定処理可能量の合計を、合計予定処理可能量として特定する。これにより、処理施設の廃棄物の処理能力である処理可能量から、廃棄物の仮想取引ロットの作成のベースとなる、廃棄物の品目ごとの所定の期間における合計予定処理可能量が算出可能になる。したがって、処理施設における廃棄物の処理能力のタスクフォースを、廃棄物の品目ごとの仮想取引ロットに変換することが可能になる。
【0093】
ここで合計予定処理可能量の算出に用いる「処理稼働率」は、再生能力のタスクフォースから再生資源の仮想取引ロットを作成した際の生産稼働率とは異なり、処理施設における廃棄物の処理能力に対する、実際に処理した廃棄物の処理量の割合を、廃棄物の品目ごとに該品目ごとの処理能力のタスクフォースに乗ずることが好ましい。あるいは、処理稼働率は、処理施設における廃棄物の入荷ベースの稼働率、生産稼働率は処理施設における再生資源の出荷ベースの稼働率であると解することができる。したがって、合計予定処理可能量を特定するための処理稼働率は、例えば、複数の処理施設における、過去の所定の期間における廃棄物の品目ごとの実際の処理量(例えば、過去数か月間における、複数週又は複数月の移動平均で算出した週ごと、又は月ごとの該品目ごとの処理量)を、該複数の処理施設における廃棄物の品目ごとの、所定の期間における廃棄物の処理可能量(例えば、該複数の処理施設における廃棄物の品目ごとの、所定の期間における廃棄物の処理可能量の平均値)で除することによって算出することができる。
【0094】
そして、廃棄物の品目ごとの合計処理可能量に前記処理稼働率を乗じることで特定された、廃棄物の品目ごとの合計予定処理可能量は、廃棄物の品目ごとに、特定した合計予定処理可能量の範囲内で、将来の所定の期間における廃棄物の排出者による予定処理量に応じた量と、該排出者を特定する情報とに関連付ける。
【0095】
本発明においては、処理施設における廃棄物の処理能力のタスクフォースを、所定の期間における廃棄物の処理可能量として、廃棄物の排出者にオークション等による取引を通じて購入させることにより、将来の所定の期間において占有可能な権利として移譲又は移転させることが可能であると同時に、前記廃棄物の品目ごとの合計処理可能量に処理稼働率を乗じることで、廃棄物の予定処理可能量を含む廃棄物の仮想取引ロットを作成し、処理能力のタスクフォースと同様にオークション等を通じて取引することが可能である。
【0096】
このように構成することで、廃棄物の排出者が、将来の所定の期間において処理が必要な廃棄物の必要排出量について、廃棄物の予定処理量を定めて処理委託契約を結ぶと同時に、契約した予定処理量に応じた廃棄物の処理能力を占有可能な権利として取得可能にすることができる。よって、処理者が自身の保有する処理施設の処理能力を超えて廃棄物の処理を受託したり、処理能力を超過した量の廃棄物を、排出者に無断で他の処理者に再委託しないように処理能力及び予定処理量を管理したりすることが可能となる。
【0097】
本発明の廃棄物処理能力取引システムによれば、廃棄物の処理施設から処理能力をタスクフォースとして分離し、占有可能な権利として、取得または移転可能にすることができる。
【0098】
本発明の廃棄物処理能力取引システムによれば、複数の処理施設がそれぞれに有している廃棄物の処理可能量を、品目ごとに量的に調整可能にし、廃棄物の排出者のニーズや再生資源の購入者や利用者のニーズに合うように組み替えることが可能になる。
【0099】
[運搬能力のタスクフォース化]
本発明にかかる廃棄物処理能力取引システムでは、廃棄物を排出して処理施設に運び込むまでの、廃棄物の運搬の段階において、廃棄物の運搬者の有する廃棄物の運搬能力をタスクフォース化し、排出者の必要処理量及び/又は処理施設の処理可能量に応じた運搬能力を、占有可能な権利として取引できるようにすることも可能である。
【0100】
廃棄物の運搬能力のタスクフォース化について、より具体的には、例えば、運搬者が過去の所定の期間において実際に運搬した廃棄物の運搬量に基づいて、運搬者が将来の所定の期間において運搬可能な、廃棄物の品目ごとの運搬可能量を特定する。この場合、運搬能力として特定する運搬可能量としては、過去の所定の期間、例えば、過去数週間、あるいは、一か月単位で換算した過去数か月間における、複数週又は複数月の移動平均で算出した週ごと、又は月ごとの、廃棄物の品目ごとの運搬量の実績等を用いることが好ましい。
【0101】
また、例えば、運搬者の運搬能力を、運搬者が廃棄物の運搬に使用する車両の積載量に、所定の期間における車両の車両標準回転数(過去の所定の期間における該車両による実際の廃棄物の運搬回数を、過去の所定の期間における該車両により実際に廃棄物を運搬した運搬日数で除することで算出する値)、及び車両標準積載効率(過去の所定の期間における該車両に実際の運搬1回あたりの積載量の平均値を、車検証等に記載された該車両の最大積載量で除することで算出する値)を乗じて、算出された値を運搬者の運搬可能量の合計として特定してもよい。この場合、前記車両の積載量に前記車両の車両標準回転数、及び車両標準積載効率を乗じて算出した値である運搬可能量の合計を、過去の所定の期間についての実際の廃棄物の運搬量における廃棄物の品目ごとの構成割合で按分することで、所定の期間における廃棄物の品目ごとの正味運搬可能量を特定し、運搬者が所定の期間において運搬可能な、廃棄物の品目ごとの運搬可能量としてもよい。
【0102】
このようにして特定された運搬可能量は、コンピュータ装置4において、処理能力のタスクフォース化の際に特定された廃棄物の品目ごとの所定の期間における合計処理可能量の範囲内で、該運搬可能量に応じた量の処理可能量と、前記運搬者を特定する情報とに関連付けられる。そして、廃棄物の排出者による必要処理量に応じて、運搬能力のタスクフォースとして取得または取引可能にすることができる。
【0103】
[保管能力のタスクフォース化]
本実施の形態においては、廃棄物の保管施設における廃棄物の保管能力についてもタスクフォース化することで、排出者の必要処理量及び/又は処理者の処理可能量に応じて、占有可能な権利として取引できるようにすることができる。廃棄物の保管施設における廃棄物の保管能力とは、例えば、排出者が廃棄物を排出して処理者の有する処理施設に運び込むまでの廃棄物の運搬の過程において、第一の運搬者による廃棄物の運搬の後、廃棄物の保管施設に廃棄物を一時的に保管し、第二の運搬者の車両等に廃棄物を積替えて運搬するようなケースを想定した場合の該保管施設における廃棄物の保管可能量のことを言う。なお、保管施設としては、再生された資源を物流業者や倉庫業者が保管する施設を想定してもよいが、ここでは廃棄物の保管施設を想定することにする。
【0104】
まず、廃棄物の保管施設における廃棄物の保管能力を、廃棄物の排出者、運搬者、あるいは、廃棄物の処理者により取引可能及び/又は占有可能な権利としてタスクフォース化するための、保管可能量の算出方法について説明する。保管能力のタスクフォース化のベースとなる保管可能量を算出する場合、コンピュータ装置4は、予め、複数の廃棄物の保管施設と、該保管施設に保管可能な廃棄物の最大保管量に関する情報を登録する。
【0105】
次に、廃棄物の保管者は、該保管者が有する保管施設に備え付けられた端末装置、または、該保管者の所持する端末装置(以下、保管者端末ともいう)に、現時点において保管している廃棄物の保管量に関する情報を入力し、コンピュータ装置4に該保管量に関する情報を送信する。コンピュータ装置4は、該保管量に関する情報を保管者端末から受信すると、廃棄物の品目ごとに、廃棄物の保管施設に最大で保管可能な最大保管量から、現時点において廃棄物を保管している廃棄物の品目ごとの保管量を差し引いて、保管施設における廃棄物の保管可能量を算出する。
【0106】
そして、コンピュータ装置4は、廃棄物の品目ごとに、前記運搬者による前記運搬可能量の範囲内で、保管施設における保管可能量に応じた量と、該運搬者を特定する情報及び該保管施設を特定する情報とを関連付ける。
【0107】
本実施の形態においては、保管施設の保管能力を廃棄物の保管可能量に基づいてタスクフォース化することで、廃棄物の排出者の必要処理量、廃棄物の運搬者による運搬可能量、あるいは、廃棄物の処理施設における処理可能量等に応じて、保管可能量の範囲内で、排出者、運搬者、あるいは、処理者により、取得または取引可能にすることができる。
【0108】
このように構成することで、排出者による廃棄物の排出状況や、処理施設における廃棄物の処理状況等を踏まえつつ、前記保管施設の有する廃棄物の保管能力を、廃棄物の保管期間や保管量等の保管条件と、運搬者による保管施設からの廃棄物の搬出時期や搬出量等の搬出条件に合わせて、柔軟かつ効率的に活用することができるようになる。
【0109】
[仮想取引ロットの作成、及び、仮想取引ロットの取引における実行処理]
次に、本発明の実施の形態における、仮想取引ロットの作成と、該仮想取引ロットの取引における実行処理について説明する。
【0110】
廃棄物処理委託契約にかかる、電子マニフェスト情報等の廃棄物処理に関する情報をもとに、廃棄物の品目ごとの処理量や再生資源の品目ごとの生産量を特定し、売買等の取引が可能な再生資源の仮想取引ロットを作成する場合、該仮想取引ロットには、将来の処理後廃棄物の生産量に応じた、又は将来の再生資源の実際の生産量に応じた数量の廃棄物の処理量を超えて再生資源の仮想取引ロットを作成し、将来の廃棄物や再生資源の現物の引き渡しを前提に取引することはできない、という制約がある。同様に、該仮想取引ロットには、締結された廃棄物処理委託契約や、それに基づく電子マニフェスト情報等で定められた処理委託数量の所定の期間における合計に応じた数量の廃棄物の処理量を超えて仮想取引ロットを作成し、将来の廃棄物や再生資源の現物の引き渡しを前提に取引することはできない。
【0111】
しかし、将来の所定の期間における再生資源の生産量を、複数の再生資源の生産者による、過去の所定の期間における廃棄物の処理実績に基づいて統計的に解析することで、将来の所定の期間における再生資源の予測生産量を特定し、特定した予測生産量に基づいて再生資源の仮想取引ロットを作成した場合、作成された再生資源の仮想取引ロットは、該仮想取引ロット作成時に、将来における再生資源の実際の生産量や取引量には直接的に関連付けられていない。
【0112】
そのため、廃棄物処理委託契約や、それに基づく電子マニフェスト情報に基づく廃棄物の処理量に応じた再生資源の量を上回る量の再生資源の予測生産量が特定された場合についても、再生資源の仮想生産量として、超過分も含めて仮想取引ロットを取引することができる。
【0113】
以下では、再生資源の予測生産量に基づいて作成された再生資源の仮想取引ロットとその取引について、図示しながら説明する。図9は、本発明の実施の形態にかかる、仮想取引ロットの作成と、該仮想取引ロットの取引の概要を示す概要図である。また、図10は、本発明の実施の形態にかかる、仮想取引ロットの作成と、該仮想取引ロットの取引における実行処理のフローチャートを表す図である。
【0114】
まず、図9を用いて、仮想取引ロットの作成、及び、仮想取引ロットの取引の概要について説明する。図9の「再生資源の需給予測」に図示するように、本発明の廃棄物処理能力取引システムでは、仮想取引ロットの作成において、最初に、過去の所定の期間における再生資源の生産者と再生資源の購入者による再生資源の生産及び取引の実績から、将来の所定の期間における、再生資源の予測生産量を統計的に予測する。
【0115】
次に、該予測生産量に基づいて、取引が可能な期間と取引を終了する期日を定めたうえで仮想取引ロットを作成し、図9の「仮想取引ロットの取引」に図示するように、再生資源の生産者、再生資源の購入者、あるいは、後述する再生資源の取引者が参加して、前記仮想取引ロットについて、再生資源の生産予約や購入予約、あるいは、取引契約が仮成立した生産予約や購入予約を対象とした反対売買等の取引を行う。
【0116】
そして、取引を終了する期日の到来に合わせて、図9の「現引き」において図示するように、仮想取引ロットを再生資源の現物ロットに変換し、生産者は生産予約に基づいて購入者に再生資源の現物を引き渡し、購入者は現物の受け取りの対価として、購入予約に基づいて生産者に再生資源の購入代金を支払うことで、仮想取引ロットの取引を終了する。
【0117】
次に、図10を用いて、仮想取引ロットの作成と、該仮想取引ロットの取引における実行処理について説明する。仮想取引ロットの作成及び該仮想取引ロットの取引において、まず、コンピュータ装置4は、後述するように、仮想取引ロットの取引を自由に行うことが可能な、所定の期間を設定し、該仮想取引ロットで定められた再生資源の現物の取引と仮想取引ロットの手仕舞いとを行う期日を特定し、該仮想取引ロットに設定する(ステップS201)。次に、コンピュータ装置4は、先ほど仮想取引ロットに設定した所定の期間における、再生資源の予測生産量を特定する(ステップS202)。続けて、コンピュータ装置4は、特定した該予測生産量をもとに、該予測生産量に対応する再生資源の仮想生産量を設定し、該仮想生産量を含む再生資源の仮想取引情報を有する、1以上の再生資源の仮想取引ロットを生成し、ストレージ部43に登録する(ステップS203)。そして、該仮想取引ロットの取引が可能な所定の期間を測定するために、計時を開始する(ステップS204)。
【0118】
前記の仮想取引ロットについて、計時が開始されると、複数の再生資源の生産者G、H、・・・、Nは、端末装置2g、2h、・・・、2nに各々の所定の期間における再生資源の生産予定量を含む生産予約情報を、前記仮想取引ロットにおける再生資源の販売条件として入力し(ステップS205)、端末装置2g、2h、・・・、2nからコンピュータ装置4に向けて送信する(ステップS206)。
【0119】
コンピュータ装置4は、複数の端末装置2g、2h、・・・、2nから生産予定量を含む生産予約情報を該販売条件として受信すると(ステップS207)、受信した生産予約情報をストレージ部43に記憶する。次に、コンピュータ装置4は、記録した複数の生産予約情報から、該複数の生産予約情報にかかる複数の前記生産予定量を特定し、合計したうえで(ステップS208)、複数の生産予定量の合計がステップS203で設定した仮想生産量の範囲内かどうかを判定する(ステップS209)。
【0120】
複数の生産予定量の合計が仮想生産量の範囲内である場合(ステップS209でYes)、コンピュータ装置4は、複数の前記生産予約情報と、複数の前記生産予約情報を入力した複数の前記生産者を特定する情報とを、仮想生産量に関連付けて(ステップS210)、仮想取引ロットについての生産予約を仮成立させる(ステップS211)。
【0121】
コンピュータ装置4に記録された生産予定量の合計が仮想生産量よりも多い場合(ステップS209でNo)、コンピュータ装置4は、仮想生産量の範囲内で、複数の前記生産予約情報と、複数の前記生産予約情報を入力した該複数の前記生産者を特定する情報とを、仮想生産量に関連付けて(ステップS212)、仮想取引ロットについての生産予約を仮成立させる(ステップS213)。
【0122】
次に、複数の再生資源の購入者P、Q、・・・、Zは、端末装置3p、3q、・・・、3zから、各々の所定の期間における再生資源の購入予定量を含む購入予約情報を、前記仮想取引ロットにおける再生資源の購入条件として入力し(ステップS214)、端末装置3p、3q、・・・、3zからコンピュータ装置4に向けて送信する(ステップS215)。
【0123】
コンピュータ装置4は、複数の端末装置3p、3q、・・・、3zから購入予定量を含む購入予約情報を該購入条件として受信すると(ステップS216)、受信した購入予約情報をストレージ部43に記憶する。次に、コンピュータ装置4は、ストレージ部43に記憶した複数の購入予約情報から、該複数の購入予約情報にかかる複数の前記購入予定量を特定し、合計したうえで(ステップS217)、ストレージ部43に先ほど記憶した複数の購入予定量の合計がステップS203で設定した仮想生産量の範囲内かどうかを判定する(ステップS218)。
【0124】
複数の購入予定量の合計が仮想生産量の範囲内である場合(ステップS218でYes)、コンピュータ装置4は、複数の前記購入予約情報と、前記購入予約情報を入力した複数の前記購入者を特定する情報とを、仮想生産量に関連付けて(ステップS219)、仮想取引ロットについての購入予約を仮成立させる(ステップS220)。
【0125】
コンピュータ装置4に記憶した購入予定量の合計が仮想生産量よりも多い場合(ステップS218でNo)、コンピュータ装置4は、仮想生産量の範囲内で、複数の前記購入予約情報と、前記購入予約情報を入力した複数の前記購入者を特定する情報とを、仮想生産量に関連付けて(ステップS221)、仮想取引ロットについての購入予約を仮成立させる(ステップS222)。
【0126】
そして、所定の期間が経過し、ステップS201で予め定めた期日が到来した段階で、計時を停止し(ステップS223)、生産予約が仮成立している生産予約情報に含まれる生産予定量と、購入予約が仮成立している購入予約情報に含まれる購入予定量とが一致するように仮想取引ロットについての生産予約と購入予約を正式に再生資源の取引契約として成立させ(ステップS224)、該仮想取引ロットで定められた再生資源の現物取引及び仮想取引ロットの手仕舞いを行って(ステップS225)、仮想取引ロットの作成と取引についての実行処理を終了する。
【0127】
ここで、ステップS224において、生産予約が仮成立している生産予約と、購入予約が仮成立している購入予約とで取引契約を成立させるための条件を設定し、条件を満たした場合のみ、正式な取引契約として成立するように構成してもよい。例えば、生産者は生産予約情報の入力時に販売条件として再生資源の販売希望価格を、購入者は購入予約情報の入力時に購入条件として再生資源の購入希望価格をそれぞれ入力する。そして、仮成立したすべての生産予約に関する販売希望価格の合計と、仮成立したすべての購入予約に関する購入希望価格の合計を比較した場合に、購入希望価格の合計が販売希望価格の合計を上回っているか、又は販売希望価格の合計と購入希望価格の合計が一致する場合にのみ、取引契約が成立するように条件を設定してもよい。
【0128】
また、ステップS224において、生産予約が仮成立している生産予約と、購入予約が仮成立している購入予約とで取引契約を成立させる際に、何らかの優先順位に基づいて順番に生産予約と購入予約とがマッチングされるように構成してもよい。例えば、生産者が生産予約情報の入力時に販売条件の一部として再生資源の販売希望価格を入力し、取引契約を成立させる際に、前記入力された販売希望価格が安い価格の生産予約から、購入予約とマッチングされるように構成することができる。また、例えば、購入者が購入予約情報の入力時に購入条件の一部として再生資源の購入希望価格を入力し、取引契約を成立させる際に、前記入力された購入希望価格が高い価格の購入予約から、生産予約とマッチングされるように構成することができる。
【0129】
また、ステップS205において生産予約情報を入力する際に生産者に対して、及びステップS214において購入予約情報を入力する際に購入者に対して、それぞれ、販売希望価格及び購入希望価格の一定割合について、保証金を担保として納付することを、取引への参加の条件として設定してもよい。この場合、ステップS225において、コンピュータ装置4は、生産者に対しては再生資源の現物引渡しを条件に担保の保証金を返還し、購入者に対しては再生資源の購入価格と保証金の差額を決済のために追加で納付するよう指示することができるように構成することが好ましい。
【0130】
本実施の形態では、仮想取引ロットの取引において、再生資源の取引者として、廃棄物の排出者、再生資源の生産者、再生資源の購入者に加えて、コモディティやデリバティブなどの金融商品の売買を行う投資家や商社が取引に参加できるように構成してもよい。以下では、再生資源の生産者、再生資源の購入者、及び、再生資源の再生能力や保管能力を有していない第三者のうちのいずれか、又は複数、あるいは、その全てを再生資源の取引者として含む場合の構成について、説明する。
【0131】
このように構成する場合、まず、コンピュータ装置4において、前記取引者に対して、再生資源の取引が可能なように、取引に参加するための識別情報を付与し、ストレージ部43に記憶する。
【0132】
次に、コンピュータ装置4において、識別情報を付与した複数の取引者から、再生資源の購入予定量を含む購入予約情報を受け付ける。また、同様に、コンピュータ装置4において、識別情報を付与した複数の取引者から、再生資源の販売可能量を含む販売予約情報を受け付ける。次に、コンピュータ装置4において、複数の取引者から受け付けた複数の購入予約情報と複数の販売予約情報のそれぞれについて、取引者ごとに識別情報と関連付けてストレージ部43に記憶する。この時、購入予約情報と販売予約情報のそれぞれについての取引契約は、まだ仮成立の状態である。
【0133】
そして、コンピュータ装置4において、先ほどストレージ部43に記憶した複数の購入予約情報と複数の販売予約情報の中から、特定の購入予約情報と特定の販売予約情報とをそれぞれ抽出してマッチングさせ、再生資源の取引契約を成立させる。ここで、例えば、取引者Xの購入予約情報と取引者Yの販売予約情報のマッチングにより、再生資源の取引契約を成立させた場合を想定する。このとき、取引者Xの購入予約情報については、マッチングした取引者Yの販売予約情報に含まれる販売可能量を、取引者Xによる取引者Yからの再生資源の購入量として、該購入量と同じ数量の購入予定量を、コンピュータ装置4に記憶された取引者Xの購入予定量から差し引いて、取引者Xの購入予定量を更新する。一方、取引者Yの販売予約情報については、マッチングした取引者Xの購入予約情報に含まれる購入予定量を、取引者Yによる取引者Xへの再生資源の販売量として、該販売量と同じ数量の販売可能量を、コンピュータ装置4に記憶された取引者Yの販売可能量から差し引いて、取引者Yの販売可能量を更新する。
【0134】
この時、取引者Xの購入予定量と、取引者Yの販売可能量とは、一致していても良いし、異なっていても良い。取引契約が成立した購入予約情報の購入予定量と販売予約情報の販売可能量とが一致する場合は、ストレージ部43に記憶された両方の契約情報についての、取引契約の仮成立分の数量がゼロとなる。購入予定量と販売可能量のどちらか一方が他方より小さい場合は、購入予約情報と販売予約情報のうち、数量の小さいほうの予約情報の数量は全て取引契約が成立したことになる。一方、数量の大きいほうの予約情報については、取引契約が仮成立分の数量を更新して、実行処理を終了する。
【0135】
このように構成する場合、仮成立の状態の購入予約情報と、仮成立の状態の販売予約情報とをマッチングさせ、取引契約として成立させるタイミングについては、所定の期間内であれば、任意に設定することができる。
【0136】
また、このように構成する場合、再生資源の取引者が再生資源の生産者である場合は、該生産者による生産予約情報に含まれる生産予定量についても、販売予約情報に含まれる販売可能量、及び購入予約情報に含まれる購入予定量と同様に構成してもよい。
【0137】
上述の、再生資源の取引者による再生資源の取引についての実行処理においては、いわゆる「反対売買」ができるように構成することが好ましい。反対売買とは、前記取引者が再生資源の購入予約または販売予約を行った場合に、再生資源の取引の期日の到来までの所定の期間内に、先ほど行った購入予約で生じた再生資源の現物の引き渡しの義務、又は、販売予約で生じた再生資源の現物の引き取りの権利又は義務を解消するために、すでに取引契約の成立した取引のポジションを解消するために行う取引のことである。
【0138】
本実施の形態においては「反対売買」ができるように構成することで、再生資源の取引者は、取引契約の成立した再生資源の販売予約と購入予約について、後述するように、仮想取引ロットによる再生資源の取引の期日の到来時に、再生資源の現物を引き渡したり、受け取ったりせずとも、あるいは、再生資源の再生能力や、購入後の再生資源の保管能力を有していない場合であっても、再生資源の取引に参加できるようになる。
【0139】
まず、「反対売買」の一例として、再生資源の取引者が、前記取引者の利用する端末装置への入力操作により、再生資源の購入予約情報をコンピュータ装置4に送信する際に、同時に、前記購入予約情報に含まれる購入予定量と同じ数量の再生資源の販売可能量を含む、再生資源の販売予約情報をコンピュータ装置4に送信し、反対売買予約ができるように構成する場合について説明する。
【0140】
仮想取引ロットによる再生資源の取引においては、取引契約の成立した再生資源の販売予約情報と購入予約情報は、仮想取引ロットに設定された所定の期間の最終日である期日の到来により、仮想取引ロットによる取引から再生資源の現物の取引に変換される。すなわち、仮想取引ロットによる再生資源の取引においては、期日に再生資源の現物の引き渡しと受け取りを実行することで取引の決済が行われ、仮想取引ロットの手じまいが行われる。
【0141】
このような場合、上述のように構成することで、前記取引者は、期日の到来に合わせて取引契約が成立する再生資源の販売予約情報を事前に反対売買予約としてコンピュータ装置4に送信し、コンピュータ装置4に記憶させておくことで、仮に、所定の期間において前記購入予約情報に対応する取引契約が成立したとしても、期日の到来時に、前記反対売買予約としての販売予約情報に含まれる販売可能量と、前記所定の期間において取引契約の成立した購入予約情報に含まれる購入予定量と相殺することが可能になる。
【0142】
このように構成することで、前記取引者は、再生資源の購入予約を行う際に、それに対応する反対売買予約としての販売予約を前記購入予約と同時に行うことで、期日の到来時に再生資源の現物を受け取らずとも、所定の期間における仮想取引ロットによる再生資源の自由取引に参加することができる。また、前記取引者が再生資源の販売予約を行う際に、それに対応する反対売買予約としての購入予約を同時にできるように構成する場合についても、期日の到来時に、所定の期間において取引契約の成立した販売予約情報に含まれる販売可能量と、反対売買予約として行った購入予約の購入予約情報に含まれる購入予定量とを相殺することで、再生資源の現物を引き渡すことなく、所定の期間における再生資源の自由取引が可能になる。
【0143】
次に、「反対売買」の一例として、再生資源の取引者が、前記反対売買予約を行わない場合に、所定の期間内に、該所定の期間において取引契約の成立した購入予約情報の転売ができるように構成する場合について説明する。前記取引者は、再生資源の購入予約情報の送信時に、該購入予約情報に対応する再生資源の反対売買予約を行っていない場合であっても、所定の期間内において、前記取引者の有する、取引契約の成立した購入予約情報を、前記取引者とは異なる他の取引者に転売することで、自分の有する取引契約の成立した購入予約についてのポジションを所定の期間内において解消することができる。
【0144】
上述のように構成する場合、本実施の形態にかかる廃棄物処理能力取引システムにおいては、例えば、前記取引者に関連付けて記憶された購入予定量の少なくとも一部を、他の取引者に関連付けて再生資源の購入予定量としてコンピュータ装置4のストレージ部43に記憶し、前記他の取引者に関連付けられた購入予定量と同じ数量の前記取引者の購入予定量を、ストレージ部43に記憶された前記取引者の購入予定量から差し引くことで更新できるように構成することが好ましい。
【0145】
このように構成することで、前記取引者は、所定の期間内に取引契約の成立した再生資源の購入予約情報について、所定の期間内に他の取引者に該購入予約情報を転売することが可能になる。また、このように構成することで、前記取引者は、自分に関連付けられた購入予約情報に対応する再生資源の売買について、転売により購入予約についてのポジションを解消することで、期日到来時に再生資源の現物を引き取る能力を有していなくとも、所定の期間における再生資源の取引に自由に参加することができる。
【0146】
取引契約の成立した販売予約情報を転売可能に構成する場合についても、購入予約情報を転売可能に構成する場合と同様に構成することができる。
【0147】
また、反対売買として販売予約情報や購入予約情報を転売可能に構成することで、再生資源の現物を生産する能力を有する再生資源の生産者や、再生資源の現物の購入能力を有する再生資源の購入者であっても、再生資源の取引者として、期日到来前の所定の期間において、任意のタイミングで、保有する取引契約の成立した販売予約/購入予約のポジションを解消することができる。また、再生資源の生産者による再生資源の生産予約についても、同様に構成することができる。
【0148】
また、「反対売買」の一例として、再生資源の生産者が、上述の再生資源の生産予定量に、該生産者が再生資源の取引者として有する購入予約情報に含まれる購入予定量を加算して、再生資源の販売可能量として扱う、あるいは、再生資源の生産予定量を含む生産予約情報と再生資源の販売可能量を含む販売予約情報とを同時にコンピュータ装置4において受け付けることができるように構成する場合について説明する。この場合、コンピュータ装置4において、再生資源の生産者による、過去における再生資源の生産量をもとに、将来の所定の期間における再生資源の予測生産量を特定し、該生産者による予測生産量と、該生産者が再生資源の取引者として有する再生資源の購入予定量との合計が、該生産者が再生資源の取引者である場合の販売可能量以上であることを条件に、該生産者から販売予約情報を受け付けるにように構成してもよい。
【0149】
このように構成することで、該生産者は、再生資源の再生能力に応じた生産予定量又は予測生産量の範囲においてだけでなく、前記所定の期間において取引契約の成立した、又は、仮成立の購入予約情報に対応する購入予定量ついても合算して、他の取引者に対して再生資源の販売予約を行うことができる。この場合、該生産者による、再生資源の販売可能量については、前記予測生産量及び前記購入予定量の合計を越えない範囲で、前記予測生産量の数量を超過してもよい。
【0150】
また、このように構成することで、本実施の形態にかかる廃棄物処理能力取引システムにおいては、再生資源の仮想取引ロットの作成において特定した、所定の期間における再生資源の予測生産量の範囲を超えて、再生資源の取引契約を成立させることが可能である。
【0151】
本実施の形態においては、期日の到来時までに反対売買による決済とポジションの解消の実行を確実に担保することができるなら、所定の期間における再生資源の予測生産量の範囲に再生資源の仮想取引ロットの取引量を制限する必要はない。
【0152】
最後に、再生資源の取引者は、所定の期間において、または期日の到来までに反対売買を行わず、所定の期間において取引契約の成立した購入予約及び/又は販売予約を解消することができなかった場合には、解消することができなかった前記購入予約及び/又は前記販売予約に対応する反対売買を、コンピュータ装置4において、期日の到来時に強制的に実行することで、強制的に前記購入予約及び/又は販売予約の決済を行い、期日到来時に前記取引者に関連付けられている再生資源の購入予定量と販売可能量についてのポジションの解消を行う。そして、決済を行った購入予約及び/又は販売予約に対応する再生資源の現物の購入費用及び/又は販売収益を相殺することで、差金決済を実行して終了する。ただし、廃棄物等に関する法令遵守を条件に、前記取引者が反対売買をせずに期日到来時に現引きする(再生資源の現物を引き取る)ことを許容することもできる。また、この時、前期取引者による現物の引き取りを形式的なものとし、現実には再生資源の生産者による占有が継続するようにすることもできる。
【0153】
このとき、前記取引者についても、生産予約情報/販売予約情報/購入予約情報を入力する際に、再生資源の販売希望価格及び購入希望価格の一定割合または全額についての保証金を担保として納付させるように構成し、購入者から受け取る収益と生産者へ支払う費用を相殺した際の差額を、納付させた保証金により決済できるようにすることが好ましい。
【0154】
[廃棄物処理能力取引システムを利用した仮想IoT]
本発明にかかる廃棄物処理能力取引システムでは、廃棄物の処理能力、再生資源の再生能力、運搬施設等における廃棄物の運搬能力、廃棄物の保管能力等を本システム上においてタスクフォース化し、タスクフォース化された各能力に関連付けられた各施設それぞれに備えられた設備の使用・制御権を、タスクフォースの取引を通じて取得または移転可能にすることで、廃棄物処理及び資源リサイクルに関する前記各施設を、仮想化された一つの巨大な廃棄物処理関連施設とみなして、タスクフォースを取得した排出者、処理者、購入者、取引者等のそれぞれの主体によりインターネットを介して利用・監視・制御可能に構成することができる。
【0155】
図11は、本発明の実施の形態にかかる、廃棄物処理能力取引システムをプラットホームとする仮想IoTの概要図である。本発明にかかる廃棄物処理能力取引システムをプラットホームとする仮想IoT80においては、例えば、廃棄物の排出施設70a、運搬施設70b、保管施設70c、処理施設70d、再生施設70e、及び/又は物流倉庫70fのそれぞれに、廃棄物の管理状況を監視する所定のセンサ60a、60b、60c、60d、60e、60fを設置し、センサ60a、60b、60c、60d、60e、60fにより取得した情報を無線又は有線による通信接続を介してサーバ装置40により取得し、取得した情報を、排出施設、処理施設、運搬施設、及び/又は保管施設のそれぞれの所有者、廃棄物の排出者、再生資源の購入者のいずれか、あるいは、前記の3者とは異なる、仮想IoT80におけるその他の利害関係者の所有する、端末装置の表示画面に表示できるように構成する。また、サーバ装置40と、排出施設70a、運搬施設70b、保管施設70c、処理施設70d、再生施設70e、及び/又は物流倉庫70fのそれぞれに備えられた制御装置50a、50b、50c、50d、50e、及び/又は50fとを通信接続が可能に構成し、さらに、排出施設、処理施設、運搬施設、及び/又は保管施設のそれぞれの所有者、廃棄物の排出者、再生資源の購入者のいずれか、またはその他の利害関係者による端末装置への操作入力により、制御装置50a、50b、50c、50d、50e、及び/又は50fが、排出施設70a、運搬施設70b、保管施設70c、処理施設70d、再生施設70e、及び/又は物流倉庫70fのそれぞれに備えられた機能のいずれかを制御可能に構成する。このように構成することで、廃棄物とリサイクル資源の排出、処理、再生、流通を包括的に監視・制御する、仮想化された統合IoTとして運用することが可能になる。また、このように構成することで、廃棄物の処理、及び、再生資源の生産における利害関係者である、排出施設、処理施設、運搬施設、及び/又は保管施設のそれぞれの所有者、廃棄物の排出者、再生資源の購入者、あるいは、その他の利害関係者が、廃棄物の排出から運搬、保管、処理を経て再生資源の生産に至るまでの工程を、利害関係者それぞれのニーズに即した形で遂行されるように、直接的に監視・制御・管理できるようになる。
【0156】
本発明にかかる廃棄物処理能力取引システムによれば、上記のように構成することで、例えば、廃棄物処理において廃棄物の運搬能力や処理能力に余剰がある運搬者や処理者と、前記運搬能力・処理能力が不足している排出者、運搬者、処理者、保管者等の間で、タスクフォースの取引を通じてそれぞれの能力を融通し合うことが可能になる。また、このように構成することで、常に、廃棄物処理の運搬施設、処理施設、再生施設等の廃棄物処理の関連施設における事業効率を最適化し、廃棄物の排出者、運搬者、処理者/再生者、あるいは、リサイクル資源の購入者の間において、それぞれのニーズに応じた、利便性の高いサービスを提供する事が可能になる。
【0157】
本発明にかかる廃棄物処理能力取引システムによれば、廃棄物の処理能力、再生資源の再生能力、廃棄物/再生資源の運搬能力、あるいは、廃棄物/再生資源の保管能力をタスクフォース化することで、廃棄物の処理施設やリサイクル資源の再生施設、運搬施設/運搬設備、あるいは、保管施設の所有を流動化し、処理施設の処理能力、再生施設の再生能力、運搬施設/運搬設備の運搬能力、あるいは、保管施設の保管能力を自由に合計又は自由に分割し、自由に取引することが可能になる。また、本発明にかかる廃棄物処理能力取引システムによれば、小規模に分散している処理施設または再生施設を、一つの大きな施設とみなして運用、あるいは、管理することができる。廃棄物の処理施設やリサイクル資源の再生施設の規模が小規模に、かつ、複数分散していると、処理業者に入荷する廃棄物や再生業者が出荷するリサイクル資源についても、入出荷時の数量が小規模に分散することになる。小規模に分散した個々の施設においては、稼働率やリサイクル資源のリサイクル率を最適化することは非常に難しく、社会全体としての廃棄物のリサイクル事業の最適化もできない。もし、小規模に分散している施設を、あたかも一つの施設とみなして仮想的に占有し、仮想的に管理することができれば、複数の処理施設同士の間において、余剰の処理能力と不足の処理能力を相互に融通することが可能になる。これによって、個々の施設における稼働率の向上や、再生資源のリサイクル率の最適化が可能になる。また、同時に、社会全体としても廃棄物処理とリサイクル資源の再生のサイクルを最適化することができるようになる。
【符号の説明】
【0158】
1 端末装置
2 端末装置
3 端末装置
4 コンピュータ装置
5 通信ネットワーク

【要約】
【課題】
新規な廃棄物処理能力取引システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
コンピュータ装置を備える廃棄物処理能力取引システムであって、コンピュータ装置が、所有者または管理者が異なる複数の廃棄物の処理施設のそれぞれが所定の期間において処理可能な、廃棄物の品目ごとの処理可能量に基づいて、廃棄物の品目ごとの所定の期間における処理可能量の合計を特定する合計処理可能量特定手段と、廃棄物の品目ごとに、特定した合計処理可能量の範囲内で、所定の期間における廃棄物の排出者による廃棄物の品目ごとの必要処理量に応じた量に配分を可能にした合計処理可能量と、該排出者を特定する情報とを関連付けて、廃棄物の品目ごとの処理可能量に関する取引情報を生成する排出者関連付け手段とを備える、廃棄物処理能力取引システムによる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11