(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】グラフィックシート、保護フィルム付きグラフィックシート、その製造方法及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
G09F 3/02 20060101AFI20220106BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220106BHJP
B60R 13/10 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G09F3/02 F
G09F3/02 B
B32B27/00 E
B60R13/10
(21)【出願番号】P 2021122725
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2020132422
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000158817
【氏名又は名称】紀和化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】前川 一平
(72)【発明者】
【氏名】前田 幸広
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】辻岡 創
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特許第6598343(JP,B1)
【文献】特開2015-108677(JP,A)
【文献】特開2004-268479(JP,A)
【文献】特開平6-246881(JP,A)
【文献】特開2015-148070(JP,A)
【文献】特表2018-524638(JP,A)
【文献】特開2005-298694(JP,A)
【文献】特開2018-165326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/02
B32B 27/00
B60R 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的印刷層を含むグラフィックシートであって、
透明樹脂表面層と、前記透明樹脂表面層の裏面側の部分的印刷層と、インク下地層と、粘着層とをこの順に含み、
前記インク下地層は、アルキド樹脂に、メラミン成分を含まない硬化剤を加えて硬化されている樹脂であることを特徴とするグラフィックシート。
【請求項2】
前記メラミン成分を含まない硬化剤が、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤及びアジリジン系硬化剤から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のグラフィックシート。
【請求項3】
前記透明樹脂表面層は、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、及び塩化ビニル樹脂から選ばれる少なくとも一つである請求項1又は2に記載のグラフィックシート。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂は、水系のウレタン樹脂である請求項3に記載のグラフィックシート。
【請求項5】
前記水系のウレタン樹脂は、水系のポリカーボネート系ウレタン樹脂、水系のポリエーテル系ウレタン樹脂及び水系のポリエステル系ウレタン樹脂から選ばれる1つである請求項4に記載のグラフィックシート。
【請求項6】
前記透明樹脂表面層には硬化剤が含まれている請求項1~5のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項7】
前記透明樹脂表面層に含まれている硬化剤が、メラミン系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤から選ばれる少なくとも1つである請求項6に記載のグラフィックシート。
【請求項8】
前記透明樹脂表面層に、ホルマリン捕捉剤が含まれている請求項1~7のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項9】
前記透明樹脂表面層に含まれているホルマリン捕捉剤が、アミノ基及びアミド基の少なくとも1つを有する化合物である請求項8に記載のグラフィックシート。
【請求項10】
前記透明樹脂表面層に含まれているホルマリン捕捉剤であるアミノ基及びアミド基のすくなくとも1つを有する化合物が、尿素、エチレン尿素、チオ尿素及びメラミンから選ばれる少なくとも1つである請求項9に記載のグラフィックシート。
【請求項11】
前記透明樹脂表面層に青色系顔料及び紫色系顔料から選ばれる少なくとも1つが含まれている請求項1~10のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項12】
前記インク下地層に青色系顔料及び紫色系顔料から選ばれる少なくとも1つが含まれている請求項1~11のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項13】
前記インク下地層の厚さは10~50μmである請求項1~12のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項14】
前記グラフィックシートの厚さは100μm以下である請求項1~13のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項15】
前記部分的印刷層は、インクジェット印刷により形成されている請求項1~14のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項16】
前記粘着層は、アクリル系樹脂をベースポリマーとし、芳香族の成分を含まない硬化剤で硬化されている請求項1~15のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項17】
前記粘着層に含まれている芳香族の成分を含まない硬化剤は、芳香族の成分を含まないイソシアネート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤から選ばれる少なくとも1つである請求項16に記載のグラフィックシート。
【請求項18】
前記インク下地層及び前記粘着層から選ばれる少なくとも1つは、着色されている請求項1~17のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項19】
前記インク下地層及び前記粘着層から選ばれる少なくとも1つは、白色に着色されている請求項1~18のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項20】
前記グラフィックシートは、基材に貼り付けた後に剥がすと、伸びる又は破損することにより、再利用し難い性質を有する請求項1~19のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項21】
前記グラフィックシートは、車両のナンバープレート用シートである請求項1~20のいずれか1項に記載のグラフィックシート。
【請求項22】
請求項1~21のいずれかに記載のグラフィックシートにおいて、前記透明樹脂表面層の外面には保護フィルムが貼り付けられており、前記粘着層の外面には離型フィルムが貼り付けられている保護フィルム付きグラフィックシート。
【請求項23】
請求項22に記載の保護フィルム付きグラフィックシートの製造方法であって、
工程用基材フィルム表面に透明樹脂表面層をキャスト法により形成する工程と、
前記透明樹脂表面層の表面にインクジェット印刷により部分的印刷層を形成する工程と、
前記透明樹脂表面層及び前記部分的印刷層の表面にメラミン成分を含まない硬化剤で硬化されたアルキド樹脂を含むインク下地層をキャスト法により形成する工程と、
別途準備した離型フィルムの表面に粘着層をキャスト法により形成する工程と、
前記インク下地層の表面に前記粘着層を貼り合わせる工程と、
前記工程用基材フィルムを剥がして保護フィルムを前記透明樹脂表面層に積層する工程を含むことを特徴とする保護フィルム付きグラフィックシートの製造方法。
【請求項24】
請求項22に記載の保護フィルム付きグラフィックシートの使用方法であって、
ベースプレートの上に前記保護フィルム付きグラフィックシートを貼り合わせ、
エンボス又はデボス加工により記号を作成し、
保護フィルムを剥離し、
その後、前記記号の上に記号用インク層をのせてグラフィックシートを貼りつけたナンバープレートとすることを特徴とするグラフィックシートの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的印刷層が内包されたグラフィックシート、保護フィルム付きグラフィックシート、その製造方法及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の自動車のナンバープレートは、一般的にエンボス加工により白色ペイントをコーティングしたアルミニウム板に地名、数字などの形状を有する凸部を形成し、その凸部の上に緑色などのインクを用いて着色層を印刷している。他国では、車両識別性以外に、グラフィックシート、再帰性反射シートなどが用いられているナンバープレートが使用されている例もある。このようなナンバープレートは、グラフィックシート、再帰性反射シートなどをベースプレートに積層して形成されている。
【0003】
特許文献1には、白色度の高いライセンスプレート用グラフィックフィルムを提案されており、エンボス加工時及び経時でフィルムの破断、浮きなどの欠陥の発生を抑制することが提案されている。すなわち、グラフィックフィルム内のベースフィルム層はポリ塩化ビニルフィルム層であり、ベースフィルム層上にグラフィック印刷層があり、そのグラフィック印刷層の作成後、粘着層を介して表面保護層を貼り合わせている。また、本出願人は特許文献2において、視認側(EY)から透明樹脂表面層と、透明樹脂表面層の裏面側の部分的印刷層と、インク下地層と、粘着層とを順に含み、透明樹脂表面層はポリカーボネート系ウレタン樹脂であり、特にインク下地層はアルキドメラミン系樹脂を使用したグラフィックシートを提案した。このような構成により、エンボス加工適性は良くなり、耐候性が高く、インク層との密着性も良好となった。さらにアフタークリヤーコートやオーバーラミネートも不要であり、ナンバープレート用ベースプレート等の基材に貼り付けた後でも、無傷の状態のままでは剥がし難く、セキュリティ性の高いグラフィックシートを得られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-215672号公報
【文献】特許第6598343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1では、凸部の上に形成した記号用インク層を保護するためにアフタークリヤーコートやオーバーラミネートが必要であり、ナンバープレート用ベースプレート等の基材に貼り付けた後、無傷のまま剥がし易いためセキュリティ性に劣るなどの問題があった。前記特許文献2では、確かにアフタークリヤーコートやオーバーラミネートは不要となり、無傷の状態のままで剥がすことは困難であり、セキュリティ性の問題は解決できたが、従来の透明樹脂表面層に使われているポリカーボネート系ウレタン樹脂・インク下地層(アルキドメラミン系樹脂)では、高温の焼き付け(約160℃)ではグラフィックシートが黄変するという問題がある。
【0006】
本発明は、前記の熱黄変の問題を解決させたうえ、エンボス加工適性を有し、耐候性が高く、インク層との密着性も良好であるグラフィックシートである。アフタークリヤーコートやオーバーラミネートは不要となり、セキュリティ性も備えた保護フィルム付きグラフィックシートであり、その製造方法及びその使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のグラフィックシートは、部分的印刷層を含むグラフィックシートであって、透明樹脂表面層と、前記透明樹脂表面層の裏面側の部分的印刷層と、インク下地層と、粘着層とをこの順に含み、前記インク下地層は、アルキド樹脂に、メラミン成分を含まない硬化剤を加えて硬化されている樹脂であることを特徴とする。
【0008】
本発明の保護フィルム付きグラフィックシートは、前記透明樹脂表面層の外面には保護フィルムが貼り付けられており、前記粘着層の外面には離型フィルムが貼り付けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の保護フィルム付きグラフィックシートの製造方法は、
(1)工程用基材フィルム表面に透明樹脂表面層をキャスト法により形成する工程と、
(2)前記透明樹脂表面層の表面にインクジェット印刷により部分的印刷層を形成する工程と、
(3)前記透明樹脂表面層及び前記部分的印刷層の表面にメラミン成分を含まない硬化剤を加えて硬化されたアルキド樹脂を含むインク下地層をキャスト法により形成する工程と、
(4)別途準備した離型フィルムの表面に粘着層をキャスト法により形成し、前記インク下地層の表面に前記粘着層を貼り合わせる工程と、
(5)前記工程用基材フィルムを剥がして保護フィルムを前記透明樹脂表面層に積層する工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の保護フィルム付きグラフィックシートの使用方法は、ベースプレートの上に前記保護フィルム付きグラフィックシートを貼り合わせ、エンボス又はデボス加工により記号を作成し、保護フィルムを剥離し、その後、前記記号の上に記号用インク層をのせて焼き付け、グラフィックシートを貼りつけたナンバープレートとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のグラフィックシートは、透明樹脂表面層と、前記透明樹脂表面層の裏面側の部分的印刷層と、インク下地層と、粘着層とをこの順に含み、前記インク下地層は、アルキド樹脂に、メラミン成分を含まない硬化剤を加えて硬化されている樹脂であることにより、熱黄変の問題を解決したうえ、エンボス加工適性を有し、耐候性が高く、インク層との密着性も良好であるグラフィックシートである。アフタークリヤーコートやオーバーラミネートは不要となり、セキュリティ性も備えた保護フィルム付きグラフィックシートであり、その製造方法及びその使用方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態におけるグラフィックシートの模式的断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のグラフィックシートに保護フィルムと離型フィルムを貼り合わせた、保護フィルム付きグラフィックシートの模式的断面図である。
【
図3】
図3A-Fは、
図2の保護フィルム付きグラフィックシートの製造工程を示す模式的断面図である。
【
図4】
図4は、保護フィルム付きグラフィックシートを車両用のベースプレートに貼り付け、エンボス加工した後、保護フィルムを剥離し、凸部表面に記号用インク層を形成し製造されたナンバープレートの模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
グラフィックデザインを有するナンバープレートは、グラフィックシートをアルミ等の金属プレート表面に貼り合わせ、登録番号の形状にエンボス又はデボス加工し、凹面又は凸面を形成し、その表面にインク塗装し、焼き付け処理を行って作製される。この焼き付け処理ではナンバープレートに高熱がかかるため、耐熱性に乏しいグラフィックシートでは熱黄変が引き起こされることがある。このような熱黄変現象はグラフィックシートの外観上好ましくない。従来の透明樹脂表面層に使われているポリカーボネート系ウレタン樹脂・インク下地層(アルキドメラミン系樹脂)では、高温の焼き付け(約160℃)でグラフィックシートが黄変するという問題がある。この黄変の問題を解決するため、本発明はインク下地層としてアルキド樹脂にメラミン成分を含まない硬化剤を加えて硬化された樹脂層を採用した。
【0014】
本発明は、透明樹脂表面層の裏面側に部分的印刷層が形成され、さらにインク下地層と粘着層とがこの順番に形成されている。部分的印刷層は透明樹脂表面層とインク下地層に封入されているため、傷つくことはない。部分的印刷層は透明樹脂表面層を介して外部から見える。
【0015】
透明樹脂表面層はウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、及び塩化ビニル樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂であり、インク下地層はアルキド樹脂にメラミン成分を含まない硬化剤を加えて硬化された樹脂層としたことにより、グラフィックシート自体の耐候性が高く、インク層との密着性も良好である。インク層との密着性は、部分的印刷層と、車両のナンバープレートにする際のエンボス後の凸部又は凹部表面に付与する文字、数字、記号等の記号用インク層との両方を示す。透明樹脂表面層がウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、及び塩化ビニル樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂であることにより、車両のナンバープレートにする際のエンボス後に付与する文字、数字、記号等の記号用インク層との密着性も良いことから、記号用インク層表面へのアフタークリヤーコートは不要であり、これにより溶剤は不要であり、臭気も出さず、人に対しても環境に対しても負荷を低減できる。また、インク下地層がメラミン成分を含まない硬化剤を加えて硬化されたアルキド樹脂であることにより、透明表面樹脂層及び部分的印刷層とも密着性が良好である。またグラフィックシート全体の厚みを薄くできるので、ベースプレート等の基材に貼り付けた後、剥がし難く、セキュリティ性の高いグラフィックシートとすることができる。さらに加工適性、特に1~5℃の低温エンボス性にも優れる。
【0016】
以下、各樹脂について説明する。
<インク下地層>
インク下地層にはアルキド樹脂が、メラミン成分を含まない硬化剤で硬化された樹脂を使用する。硬化剤としては、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤及びアジリジン系硬化剤から選ばれる少なくとも1つが好ましい。これにより、高温の焼き付けでグラフィックシートの黄変を防止できる。アルキド樹脂をイソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤及びアジリジン系硬化剤で硬化した樹脂はそれぞれ、アルキドイソシアネート系樹脂、アルキドエポキシ系樹脂、アルキドオキサゾリン系樹脂、アルキドカルボジイミド系樹脂及びアルキドアジリジン系樹脂という。
【0017】
イソシアネート系硬化剤はポリイソシアネートを指し、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物である。ポリイソシアネートとしては、メチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、トルエンジイソシアネート、メチレンビスフェニルジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、及び前記ポリイソシアネート類のアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体、前記ポリイソシアネート類のイソシアネート基をブロック剤で保護したブロックイソシアネート、加えて前記ポリイソシアネート類の変性体などが挙げられる。前記ポリイソシアネート類の変性体としては、前記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ウレア結合、ウレトジオン結合などにより変性したポリイソシアネート変性体が挙げられる。前記イソシアネート系硬化剤としては、耐熱黄変性、耐候性等がすぐれる点で脂肪族及び脂環式ポリイソシアネート類が好ましい。市販品のイソシアネート系硬化剤としては、DIC(株)製“バーノック”シリーズや東ソー(株)製“コロネート”シリーズ、旭化成(株)製“デュラネート”シリーズなどがある。
【0018】
エポキシ系硬化剤はエポキシ樹脂を指し、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する化合物である。エポキシ樹脂としては、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコールのグリシジルエーテル化物および、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸のグリシジルエステル化物である脂肪族エポキシ樹脂。ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、リモネンジオキサイド等の脂環式エポキシ樹脂類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ノボラック等の芳香族多価アルコールのグリシジルエーテル化物および、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸のグリシジルエステル化物である芳香族エポキシ樹脂類等が挙げられる。前記エポキシ系硬化剤としては、耐熱黄変性、耐候性等がすぐれる点で脂肪族及び脂環式エポキシ樹脂類が好ましい。市販品のエポキシ系硬化剤としては、DIC(株)製“エピクロン”シリーズや三菱ガス化学(株)製“TETRAD”シリーズ、(株)ADEKA“アデカレジン EP”シリーズなどがある。
【0019】
オキサゾリン系硬化剤は、1分子中に2個以上のオキサゾリン基を含有する化合物である。オキサゾリン系硬化剤としては、2,2’-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-メチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-(1,4-フェニレン)-ビス(2-オキサゾリン)等の多価オキサゾリンや、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマーからなる共重合体が挙げられる。オキサゾリン基含有モノマーはそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。また、オキサゾリン基を含有するモノマーと含有しないモノマーの共重合体でもよい。市販品のオキサゾリン系硬化剤としては、(株)日本触媒製“エポクロス”シリーズなどがある。
【0020】
カルボジイミド系硬化剤は、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を含有する化合物である。カルボジイミド系硬化剤としては、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)などが挙げられる。市販品のカルボジイミド系硬化剤としては、日清紡ケミカル(株)製“カルボジライト”シリーズなどがある。
【0021】
アジリジン系硬化剤は、1分子中に2個以上のアジリジン基を含有する化合物である。アジリジン系硬化剤としては、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]や4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタンなどが挙げられる。市販品のアジリジン系硬化剤としては、(株)日本触媒製“ケミタイト”シリーズなどがある。
【0022】
メラミン成分を含まない硬化剤の添加割合は、アルキド樹脂100重量部に対して、硬化剤は5~50重量部、好ましくは5~30重量部、より好ましくは10~20重量部添加する。
アルキド樹脂は多塩基酸又は脂肪酸(又は脂肪油)と多価アルコール類との縮重合によって作られる合成樹脂である。多塩基酸としてはフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、安息香酸などが挙げられる。脂肪酸としては例えば大豆油、ヤシ油、アマニ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油、トール油、パーム核油、などが挙げられる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどがある。
前記の原料からなるアルキド樹脂を、アクリル、ウレタン、エポキシ、フェノール、シリコン等の樹脂と変性させることもある。
【0023】
<透明樹脂表面層>
透明樹脂表面層には、特に制限するものではないが、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、及び塩化ビニル樹脂から選ばれる少なくとも一つが好ましい。
ウレタン樹脂はポリイソシアネートとポリオールとの反応等によって生成される、ウレタン結合を含有する高分子化合物である。ポリイソシアネートとしては、メチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、トルエンジイソシアネート、メチレンビスフェニルジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、及び前記ポリイソシアネート類のアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体、前記ポリイソシアネート類のイソシアネート基をブロック剤で保護したブロックイソシアネート、加えて前記ポリイソシアネート類の変性体などが挙げられる。前記ポリイソシアネート類の変性体としては、前記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ウレア結合、ウレトジオン結合、カルボジイミド結合などにより変性したポリイソシアネート変性体が挙げられる。ポリオールは、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステル系ポリオールなどが挙げられ、それぞれから合成されるウレタン樹脂をポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂及びポリエステル系ウレタン樹脂という。透明樹脂表面層は、耐候性、耐熱性、耐薬品性に優れていることから水系のポリカーボネート系ウレタン樹脂が好ましい。水系であれば、製造時も使用時も安全であり、環境にもやさしく、においの問題もない。市販品の水系のポリカーボネート系ウレタン樹脂、水系のポリエーテル系ウレタン樹脂及び水系のポリエステル系ウレタン樹脂としては、大日精化工業(株)製“レザミン”シリーズ、東ソー(株)製“ニッポラン”シリーズなどがある。
【0024】
アルキド樹脂は、インク下地層で使用しているアルキド樹脂と同様のものが使用可能である。
【0025】
アクリル樹脂は、アクリルモノマーを重合して得られる高分子化合物およびその誘導体である。アクリルモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸メトキシブチル等のアクリル酸およびメタクリル酸誘導体やアクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。アクリルモノマーはそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。また、アクリルモノマーとスチレン、ブタジエン、酢酸ビニル等の他のモノマーとの共重合体でもよい。市販品のアクリル樹脂としては、DIC社(株)製“アクリディック”シリーズなどがある。
【0026】
塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルモノマーを重合して得られる高分子化合物およびその誘導体である。塩化ビニルモノマーは単独で用いてもよいが、エチレン、酢酸ビニル等の他のモノマーとの共重合体でも良い。市販品の塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂に日信化学工業(株)製“SOLBIN”シリーズなどがある。
【0027】
透明樹脂表面層の厚さは10~50μmが好ましく、さらに好ましくは15~45μmである。インク下地層の厚さは10~50μmが好ましく、さらに好ましくは15~45μmである。粘着層の厚さは15~60μmが好ましく、さらに好ましくは20~55μmである。グラフィックシートの厚さは100μm以下が好ましく、さらに好ましくは50~100μmである。この厚さであれば、ベースプレート等の基材に貼り付けた後、剥がし難く、セキュリティ性の高いグラフィックシートとすることができる。さらに低温エンボス性にも優れる。グラフィックシートの厚さが100μmを超えると、エンボス又はデボス性、セキュリティ性、耐熱黄変性に支障が出る。
【0028】
透明樹脂表面層には硬化剤が含まれていることが好ましい。これにより、前記透明樹脂表面層に良好な耐溶剤性を持たせることができる。透明樹脂表面層に加える硬化剤は、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等があるが、メラミン系が好ましい。透明樹脂表面層には、ホルマリン捕捉剤を加えることが好ましい。メラミン系硬化剤を透明樹脂表面層に添加すると、メラミン系硬化剤の熱分解によって生じるホルムアルデヒドが透明樹脂表面層と反応し黄変を引き起こす問題があるが、透明樹脂表面層にホルマリン捕捉剤を加えることで改善できる。ホルマリン捕捉剤としては、尿素、エチレン尿素、チオ尿素及びメラミン等の分子内にアミノ基、アミド基を有する化合物から選ばれる少なくとも一つが好ましい。前記化合物を含む市販品としては、窒素系ホルムアルデヒド捕捉剤である「ファインテックスFC-KP」(商品名)〔DIC(株)製〕等が挙げられる。
ホルマリン捕捉剤は、透明樹脂表面層100重量部に対して0.01~10重量部加えるのが好ましく、より好ましくは0.1~5重量部であり、さらに好ましくは0.1~2重量部である。
【0029】
透明樹脂表面層及び/又はインク下地層には、青色系顔料及び紫色系顔料から選ばれる少なくとも一つを加えるのが好ましい。これにより、各層の耐候性を向上させるために含まれる紫外線吸収剤等の影響により、わずかではあるがグラフィックシートが黄色味を帯びるという問題があるが、黄色の補色として青色系顔料及び紫色系顔料から選ばれる少なくとも1つを加えることでグラフィックシートの黄味色を打ち消すことができる。前記顔料の添加量は、透明樹脂表面層及びインク下地層の各層を100重量部としたとき、0.001~1重量部加えるのが好ましく、より好ましくは0.01~0.1重量部であり、さらに好ましくは0.01~0.05重量部である。
【0030】
部分的印刷層はデザイン等のグラフィックを印刷したものであり、転写印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の各種印刷法により印刷できるが、インクジェット印刷により形成されているのが好ましい。インクジェット印刷であれば、鮮明な画像を形成でき、顧客の希望に応じたデザインを形成できる。また、ナンバープレート本来の用途としての視認性を損なわない範囲でデザインを形成することが好ましい。
【0031】
前記粘着層は、アクリル系樹脂をベースポリマーとし、芳香族の成分を含まない硬化剤で硬化するのが好ましい。黄変の原因の一つに粘着層の黄変がある。従来の粘着層は、アクリル系樹脂をベースポリマーとし、芳香族を含むイソシアネート系硬化剤により形成されている。このような芳香族イソシアネート系硬化剤は、芳香環が可視域の光を吸収しやすいため、黄色に呈色する原因となることがある。そこで、芳香族を含まないイソシアネート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤を添加することで、耐熱黄変性に優れたグラフィックシートとすることができる。エポキシ系硬化剤としては、インク下地層で使用しているエポキシ系硬化剤と同様のものが使用可能である。芳香族を含まないイソシアネート系硬化剤及びエポキシ系硬化剤の添加量は、アクリル系樹脂を100重量部としたとき、0.001~1重量部が好ましく、より好ましくは0.001~0.1重量部であり、さらに好ましくは0.005~0.01重量部である。
【0032】
粘着層は、アクリル系樹脂や天然ゴム、合成ゴム等のゴム系樹脂等の樹脂を含むことができるが、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。アクリル系樹脂は粘着力が高く、耐候性も高い。
アクリル系樹脂としては、アクリル酸エステル共重合体及びアクリル系プレポリマーの少なくとも1種を主成分として含有する高分子系のアクリル系樹脂又は前記アクリル系樹脂中にさらに粘着付与剤及び凝集力を付与するモノマーを添加した変性アクリル系樹脂が好適である。
【0033】
インク下地層及び粘着層の少なくとも1つは、任意の色に着色できる。例えば、白色、緑色、黄色、赤色、青色、紫色、黒色等である。この中でも白色に着色されているのが好ましい。とくに、インク下地層及び粘着層が白色に着色されていることが好ましい。インク下地層と粘着層により、隠ぺい性が高く、薄くても基材が見えることはない。着色剤の添加量は、インク下地層又は粘着層を100重量部としたとき、1~50重量部が好ましく、より好ましくは5~30重量部であり、さらに好ましくは5~10重量部である。
【0034】
透明樹脂表面層の外面には保護フィルムが貼り付けられており、粘着層の外面には離型フィルムが貼り付けられているのが製品形態として好ましい。透明樹脂表面層の外面に保護フィルムが貼り付けられていれば内層を保護することができ、粘着層の外面に離型フィルムが貼り付けられていれば、ベースプレートに貼り付ける際に便利である。
【0035】
保護フィルムは、例えば厚さ30~90μmの各種市販の表面保護フィルムを使用でき、輸送や加工などの際の表面の傷付き防止のために使用されるものであり、グラフィックシートを車両用のベースプレートに貼り付け、エンボス加工した後、凸部表面に記号用インク層を形成する前に剥離される。したがって、エンボス加工時にはグラフィックシートに追従することが必要である。
離型フィルムは、例えば厚さ25~50μmのポリエステル(PET)フィルムを使用できる。
【0036】
グラフィックシートは、基材に貼り付けた後に剥がすと、伸びる又は破損する等、再利用し難い性質を有するのが好ましい。これにより、グラフィックシートの盗難防止になり、部分的にエンブレムなどのデザイン部分が切り取られるという盗難防止にもなる。
グラフィックシートは、車両のナンバープレート用シートであるのが好ましい。車両のナンバープレートにグラフィックシートを使うのは、美的効果以外にも国際的スポーツ大会や各種催しものの宣伝効果にも役立つ。
【0037】
本発明の保護フィルム付きグラフィックシートの製造方法は、下記の工程を含む。
(1)工程用基材フィルム表面にポリカーボネート系ウレタン透明樹脂表面層をキャスト法により形成する工程。
工程用基材フィルムは、例えば厚さ25~100μmのポリエステル(PET)フィルムを使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)上に、前記ポリカーボネート系ウレタン透明樹脂溶液を塗布し、70~140℃で3分間加熱乾燥して厚さ約25μmのポリカーボネート系ウレタン透明樹脂表面層を形成する。
(2)前記透明樹脂表面層の表面にインクジェット印刷により部分的印刷層を形成する工程。
(3)前記透明樹脂表面層及び前記部分的印刷層の表面にアルキドイソシアネート系樹脂を含むインク下地層をキャスト法により形成する工程。
例えば、前記部分的印刷層としてグラフィック印刷を行った、ポリカーボネート系ウレタン透明樹脂表面層の上に、前記アルキドイソシアネート系樹脂溶液を塗布し、70~140℃で4分間加熱乾燥して厚さ約20μmのアルキドイソシアネート系樹脂層を形成する。
(4)別途準備した離型フィルムの表面に粘着層をキャスト法により形成する工程。
例えば、別途準備した離型PET上に粘着剤溶液を塗布し、70℃~100℃で2~3分間加熱乾燥して厚さ約33μmの粘着層を形成する。
(5)前記インク下地層の表面に前記粘着層を貼り合わせる工程。
前記アルキドイソシアネート系樹脂層と前記粘着層とを貼り合わせ、グラフィックシート本体を得る。
(6)前記工程用基材フィルムを剥がして保護フィルムを前記透明樹脂表面層に積層する工程。
例えば、グラフィックシート本体のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)を剥離し、グラフィックシートの保護及びエンボス加工時のグラフィックシートへの追従を目的として保護フィルムを貼り合わせることで保護フィルム付きグラフィックシートを得る。
透明樹脂表面層とインク下地層と粘着層はキャスト法によって形成するため、層間の密着性が高く、全体の厚みを薄くでき、無傷のままでは剥がし難く、セキュリティ性の高いグラフィックシートとすることができる。
尚、粘着層の形成工程に関して、ここでは離型PET上に粘着層を形成した後、前記インク下地層の表面に前記粘着層を貼り合わせる工程を記載したが、前記インク下地層の表面に粘着層を形成した後、粘着層上に離型PETフィルムを貼り合わせてもよい。
【0038】
本発明の保護フィルム付きグラフィックシートの使用方法は、
(1)ベースプレートの上に前記保護フィルム付きグラフィックシートを貼り合わせ、
(2)エンボス又はデボス加工により記号を作成し、
(3)保護フィルムを剥離し、
(4)その後、前記記号の上に記号用インク層をのせて焼き付け、グラフィックシートを貼りつけたナンバープレートとする。グラフィックシートを貼りつけたナンバープレートには撥水・撥油・防汚スプレーをかけてもよい。焼き付け温度は、一例として、およそ125℃~160℃ぐらいが可能である。
【0039】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。
図1は本発明の一実施形態におけるグラフィックシート1の模式的断面図である。このグラフィックシート1は、透明樹脂表面層2と、透明樹脂表面層2の裏面側の部分的印刷層3と、インク下地層4と、粘着層5とをこの順に含む。透明樹脂表面層2はポリカーボネート系ウレタン樹脂であり、インク下地層4はアルキドイソシアネート系樹脂である。矢印EYは人の見る方向である(以下同)。
【0040】
図2は、前記グラフィックシート1の透明樹脂表面層2の外側に保護フィルム6を貼り付け、粘着層5の外側に離型フィルム7を貼り合わせた保護フィルム付きグラフィックシート10の模式的断面図である。製品形態はこのようになる。
【0041】
図3A-Fは、前記保護フィルム付きグラフィックシート10の製造工程を示す模式的断面図である。
図3Aは、工程用基材フィルム8の表面にポリカーボネート系ウレタン透明樹脂表面層2をキャスト法により形成する工程である。
図3Bは、透明樹脂表面層2の表面にインクジェット印刷により部分的印刷層3を形成する工程である。
図3Cは、透明樹脂表面層2及び部分的印刷層3の表面にアルキドイソシアネート系樹脂を含むインク下地層4をキャスト法により形成する工程である。
図3Dは、別途準備した離型フィルム7の表面に粘着層5をキャスト法により形成する工程である。
図3Eは、前記インク下地層4の表面に前記粘着層5を貼り合わせる工程である。
図3Fは、工程用基材フィルム8を剥がして保護フィルム6を透明樹脂表面層2に積層する工程である。
【0042】
図4は、前記保護フィルム付きグラフィックシート10を車両用のベースプレートに貼り付け、エンボス加工した後、保護フィルムを剥離し、凸部表面に記号用インク層を形成し製造されたナンバープレート9の模式的正面図である。部分的印刷層として、富士山及び桜の花のグラフィック印刷を行ったものであり、中央の富士山のデザインは数字の邪魔にならない位置に移動させてもよい。また、右上の桜の花のデザインは、各種エンブレムのデザインにすることもできる。
【0043】
図5は、
図4の模式的部分断面図である。まず、ベースプレート11の上に保護フィルム付きグラフィックシート10を貼り合わせ、エンボス加工して
図4の「静岡123ね34-56」の記号を作成し、保護フィルムを剥離した後、この記号の上に記号用インク層12をのせる。その後、インクを焼き付ける。焼き付け温度は、一例として、およそ125℃~160℃ぐらいが可能である。これによりセキュリティ性の高いグラフィックシートを貼りつけたナンバープレートとすることができる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、下記実施例において“部”は特に断らない限り“重量部”を、また“%”は特に断らない限り“重量%”を示す。また、以下の表の硬化剤の配合量(添加量)は固形分換算の重量部で表している。
【0045】
<ポリカーボネート系ウレタン透明樹脂溶液>の組成
(1)脂肪族ポリカーボネート系ウレタン樹脂溶液「レザミンD-6300」(商品名)〔大日精化工業(株)製〕(固形分30%)80.0部
(2)高分子系紫外線吸収剤「XL07-0016」(商品名)〔ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕(固形分32%)20部
(3)ウレタン系樹脂「SNシックナーA-812」(商品名)〔サンノプコ(株)製〕(固形分100%)0.2部
(4)シリコン系樹脂「オルフィンE-1004」(商品名)〔日信化学工業(株)製〕(固形分100%)0.5部
<塩化ビニル樹脂溶液>の組成
(1)塩化ビニル樹脂溶液(エチレン・塩化ビニルコポリマー、ガラス転移温度81℃、固形分17%)80部
(2)エチレンアクリル酸エステル系三元共重合樹脂溶液(固形分25%)12部
(3)ウレタン系樹脂「バーノック D7-821-50」(商品名)〔DIC株式会社製〕(固形分50%)3.8部
(4)ポリエステル系可塑剤「ポリサイザーW-360-ELS」(商品名)〔DIC株式会社製〕(固形分100%)1.1部
(5)Ba/Zn系塩ビ用安定剤「アデカスタブAC-118」(商品名)〔株式会社ADEKA〕0.5部
(6)Ba系塩ビ用安定剤「アデカスタブCPL-37」(商品名)〔株式会社ADEKA〕0.06部
(7)紫外線吸収剤「Tinuvin326」(商品名)〔BASFジャパン株式会社製〕0.3部
(8)酸化防止剤「スミライザーGA-80」(商品名)〔住友化学株式会社〕0.2部
(9)光安定剤「SUNSORB LS-292」(商品名)〔SIN HUN CHEMICAL CO., LTD.〕0.06部
(10)紫外線吸収剤「Uvinul3039」(商品名)〔BASFジャパン株式会社製〕0.6部
<アルキド透明樹脂溶液>の組成
(1)アルキド樹脂溶液「ベッコライトCF-743-50」(商品名)〔DIC(株)製〕(固形分50%)46部
(2)塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂溶液(固形分25%)27部
(3)レベリング剤(固形分0.05%)0.06部
(4)可塑剤「ポリサイザーW-2310」(商品名)〔DIC(株)製〕(固形分99%)1.3部
(5)脂肪酸グリセライドのエポキシ化物「A-130P」(商品名)〔(株)ADEKA製〕(固形分100%)0.3部
(6)酸化防止剤「EVERNOX-10」(商品名)〔EVERSPRING CHEMICAL CO.,LTD.製〕(固形分100%)0.15部
(7)紫外線吸収剤「ジスライザーE」(商品名)〔三協化成(株)製〕(固形分100%)1.1部
<アルキドメラミン系白色樹脂溶液>の組成
(1)アルキド樹脂溶液「ベッコライトCF-743-50」(商品名)〔DIC(株)製〕(固形分50%)46部
(2)塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂溶液(固形分25%)27部
(3)レベリング剤(固形分0.05%)0.06部
(4)酸化チタンペースト(固形分75%)4.0部
(5)可塑剤「ポリサイザーW-2310」(商品名)〔DIC(株)製〕(固形分99%)1.3部
(6)脂肪酸グリセライドのエポキシ化物「アデカサイザーO-130P」(商品名)〔(株)ADEKA製〕(固形分100%)0.3部
(7)酸化防止剤「EVERNOX-10」(商品名)〔EVERSPRING CHEMICAL CO.,LTD.製〕(固形分100%)0.15部
(8)紫外線吸収剤「ジスライザーE」(商品名)〔三協化成(株)製〕(固形分100%)1.1部
(9)メチル化メラミン樹脂(固形分60%)8.4部
(10)ブチル化メラミン樹脂(固形分60%)4.2部
(11)触媒としてアルキル酸性リン酸エステル(固形分60%)0.15部
<白色粘着剤溶液A>の組成
(1)アクリル系樹脂「アクリセットAST-8207」(商品名)〔(株)日本触媒製〕(固形分35%)100部
(2)溶剤として酢酸エチル10部
(3)トルエン20部
(4)白色着色剤として酸化チタン「チタンペーストE」(商品名)〔(株)日本触媒製〕10部
(5)硬化剤として脂環式エポキシ樹脂硬化剤「TETRAD-C」(商品名)〔三菱ガス化学(株)製〕0.01部
<白色粘着剤溶液B>の組成
(1)アクリル系樹脂「アクリセットAST-8207」(商品名)〔(株)日本触媒製〕(固形分35%)100部
(2)溶剤として酢酸エチル10部
(3)トルエン20部
(4)白色着色剤として酸化チタン「チタンペーストE」(商品名)〔(株)日本触媒製〕10部
(5)硬化剤として芳香族変性ポリイソシアネート樹脂「コロネートL-55E」(商品名)〔東ソー(株)製〕1.5部
【0046】
(実施例1)
<透明樹脂表面層>
<ポリカーボネート系ウレタン透明樹脂溶液>を工程用基材フィルムである厚さ50μmのポリエステルフィルム「CM50」(商品名)〔中本パックス(株)製〕上に乾燥後の厚さは25μmとなるように塗布し、常圧下、70℃で50秒、100℃で50秒、120℃で1分40秒、100℃で50秒の順に加熱乾燥し透明樹脂表面層を形成した。
<部分的印刷層>
前記透明樹脂表面層の上にインクジェット印刷により部分的印刷層を形成した。
<インク下地層>
表1に示すように<アルキド樹脂溶液>75.9重量部に対してイソシアネート系硬化剤として「バーノックDN-950」(商品名)〔DIC(株)製〕(固形分75%)を11.3重量部加えて混合し、アルキドイソシアネート系樹脂溶液を調整した。この樹脂溶液を上述した透明樹脂表面層の上に、乾燥後の厚さが19μmとなるよう塗布し、常圧下、70℃で2分10秒、100℃で1分5秒、130℃で2分10秒の順に加熱乾燥しインク下地層を形成した。
<粘着層>
<白色粘着剤溶液A>を、厚さ38μmのポリエステルフィルム(「エステルフィルム E7002 #38」東洋紡(株)製)の離型処理面上に、乾燥後の厚さが33μmとなるように塗布し、常圧下、70℃で1分、100℃で2分の順に加熱乾燥し粘着層を作製した。
<積層貼り合わせ>
この粘着層粘着面とインク下地層とを貼り合わせた。透明樹脂表面層から工程用基材フィルムを剥離した後、透明樹脂表面層に保護フィルムを貼り合わせグラフィックシート本体を得た。
【0047】
(実施例2)
インク下地層の<アルキド樹脂溶液>75.9重量部に対して、イソシアネート系硬化剤を使用せず、カルボジイミド系硬化剤として「カルボジライトV-04PF」(商品名)〔日清紡ケミカル(株)製〕(固形分100%)を5.92重量部加えた以外は、実施例1と同様に実施した。
【0048】
(実施例3)
インク下地層の<アルキド樹脂溶液>75.9重量部に対して、イソシアネート系硬化剤を使用せず、アジリジン系硬化剤として「ケミタイトPZ-33」(商品名)〔(株)日本触媒製〕(固形分100%)を5.92重量部加えた以外は、実施例1と同様に実施した。
【0049】
(実施例4)
<塩化ビニル樹脂溶液>を使用して透明樹脂表面層を形成している以外は、実施例1と同様に実施した。
【0050】
(実施例5)
透明樹脂表面層のポリカーボネート系ウレタン樹脂100重量部に対して、メラミン系硬化剤として「アミディアJ-101」(商品名)〔DIC(株)製〕(固形分70%)を1.07重量部加えた以外は、実施例1と同様に実施した。
【0051】
(実施例6)
透明樹脂表面層のポリカーボネート系ウレタン樹脂100重量部に対して、メラミン系硬化剤として「スミマールM-100C」(商品名)〔住友化学(株)製〕(固形分100%)を5.35重量部加えた以外は、実施例1と同様に実施した。
【0052】
(実施例7)
透明樹脂表面層のポリカーボネート系ウレタン樹脂100重量部に対して、オキサゾリン系硬化剤として「エポクロスWS-700」(商品名)〔(株)日本触媒製〕を3.21重量部加えた以外は、実施例1と同様に実施した。
【0053】
(実施例8)
透明樹脂表面層のポリカーボネート系ウレタン樹脂100重量部に対して、カルボジイミド系硬化剤として「レザミンD-52」(商品名)〔大日精化工業(株)製〕(固形分40%)を3.21重量部加えた以外は、実施例1と同様に実施した。
【0054】
(実施例9)
透明樹脂表面層のポリカーボネート系ウレタン樹脂100重量部に対して、ホルマリン捕捉剤として尿素を0.40重量部加えた以外は、実施例5と同様に実施した。
【0055】
(実施例10)
透明樹脂表面層のポリカーボネート系ウレタン樹脂100重量部に対して、ホルマリン捕捉剤としてメラミンを0.30重量部加えた以外は、実施例5と同様に実施した。
【0056】
(実施例11)
透明樹脂表面層のポリカーボネート系ウレタン樹脂100重量部に対して、ホルマリン捕捉剤として窒素系ホルムアルデヒド捕捉剤である「ファインテックスFC-KP」(商品名)〔DIC(株)製〕(固形分30%)を1.07重量部加えた以外は、実施例5と同様に実施した。
【0057】
(実施例12)
インク下地層のアルキドイソシアネート系樹脂溶液100重量部に対して、青色顔料0.0027重量部、紫色顔料0.0090重量部加えた以外は、実施例9と同様に実施した。
【0058】
(比較例1)
インク下地層として<アルキドメラミン系白色樹脂溶液>を使用し、粘着層として<白色粘着剤溶液B>を使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0059】
(比較例2)
インク下地層として<アルキドメラミン系白色樹脂溶液>を使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
以上の条件と結果を表1-3にまとめて示す。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
実施例及び比較例で行った試験の方法は下記の通りである。なお、各試験について、各グラフィックシートをベースプレートである厚さ1mmの白色カラーアルミニウム板((株)UACJ製)へ貼り付けたものを試験片とした。
(1)エンボス加工時のヒビ・割れ・浮きの有無
本発明のグラフィックシートは主にナンバープレート用途であり、エンボス加工は必須であるため、エンボス加工時におけるグラフィックシートの加工耐久性は重要である。そのため、本試験を実施した。
試験片を、23℃及び3℃の温度でエンボスプレス機にてエンボスを施したのち、保護フィルムを剥離し、記号用インク層の乾燥条件である125℃で10分間加熱処理を行った。ピーク・スケール・ルーペ(倍率:18倍、東海産業製)を用いて、エンボス部のヒビ・割れ及び立ち上がり部分の浮きの有無を確認した。
評価基準
A:エンボス部のヒビ・割れ及び立ち上がり部分の浮き等が認められない。
B:エンボス部のヒビ・割れ及び立ち上がり部分の浮き等が認められる。
(2)層間密着性
本発明のグラフィックシートは主にナンバープレート用途であり、文字部へインク塗装がなされるため、インク層を含むグラフィックシート内の層間密着性は重要である。そのため、本試験を実施した。
試験片から保護フィルムを剥離し、記号用インク層の乾燥条件である125℃で10分間加熱処理を行った。JIS K 5600-5-6:1999 塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第6節:付着性(クロスカット法)により、試験片のグラフィックシート部分を貫通してベースプレートに達する切り傷をそれぞれ付け、JIS Z 1522に規定する幅24mmのテープ(ニチバン(株)CT24)を指で強く押しながら貼り付け、テープを付着して5分以内にテープを引きはがし、できるだけ60°に近い角度でテープの端をつかみ、0.5秒から1.0秒で確実に引き離すようにした。テープを引きはがした後に、表面の状態を目視により確認・評価した。評価基準はJIS K 5600-5-6:1999 塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第6節:付着性(クロスカット法)表1を用いた。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大はがれを生じており,及び/又は目のいろいろな部分が,部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に15%を超えるが35 %を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大はがれを生じており,及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に35%を上回ることはない。
分類5:分類4でも分類できないはがれ程度のいずれか。
評価基準
A:分類0である。
B:分類1~2である。
C:分類3~5である。
(3)接着力
本発明のグラフィックシートは主にナンバープレート用途であり、容易にグラフィックシートが剥がされてはいけないため、グラフィックシートとベースプレートとの接着力は重要である。そのため、本試験を実施した。
試験片から保護フィルムを剥離し、記号用インク層の乾燥条件である125℃で10分間加熱処理を行った。試験片を用いて、グラフィックシート部分のみを幅25mm、長さ150mmにカットし、23℃の環境下で24時間養生し、引張圧縮試験機((株)今田製作所製)を使用して、300mm/minの速度で90度剥離した際の接着力を測定した。
評価基準
A:15.0N/25mm以上である。
B:10.0~15.0N/25mmである。
C:10.0N/25mm未満である。
(4)グラフィックシートのセキュリティ性の有無
本発明のグラフィックシートは主にナンバープレート用途であり、グラフィックシートが剥がされ再利用されてはいけないため、剥がされた際にグラフィックシートが伸びやすい又は破損しやすいことは重要である。そのため、本試験を実施した。
試験片から保護フィルムを剥離し、記号用インク層の乾燥条件である125℃で10分間加熱処理を行った。試験片を用いて、グラフィックシート部分のみに幅25mm、長さ150mmのカットを入れ、長さ5cmのマーキングを行った。その後、23℃の環境下で24時間養生し、手で90度剥離した際のマーキングの長さを測定し、伸び率を算出した。
評価基準
A:伸び率が150%以上である。
B:伸び率が125~150%未満である。
C:伸び率が110~125%未満である。
D:伸び率が110%未満である。
(5)促進耐候性試験によるグラフィックシートの耐候性の確認
本発明のグラフィックシートは主にナンバープレート用途であり、屋外での使用が主となるため、屋外使用時におけるグラフィックシートの耐候性は重要である。そのため、本試験を実施した。
試験片から保護フィルムを剥離し、記号用インク層の乾燥条件である125℃で10分間加熱処理を行った。JIS H 4001:2006 アルミニウム及びアルミニウム合金の焼付け塗装板及び条7.9促進耐候性により、試験片をサンシャインカーボン促進耐候性試験機で500時間照射後取り出し、表面がぬれているときは水分を振り切り、直後に目視で外観を点検し、JIS K 5600-8-6:2014 塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-欠陥の量,大きさ及び外観の変化に関する表示-第6節:白亜化の等級(テープ法)により、白亜化の程度を確認・評価した。評価基準はJIS K 5600-8-1:2014 塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-欠陥の量,大きさ及び外観の変化に関する表示-第1節:一般原則及び等級 表1を用いた。
等級0:無変化(すなわち、認められるような変化がない。)
等級1:極めて僅か(すなわち、かろうじて認められる程度の変化。)
等級2:僅か(すなわち、明らかに認められる変化。)
等級3:中程度(すなわち、非常にはっきりと認められる変化。)
等級4:重大(すなわち、相当な変化。)
等級5:非常に著しい変化。
評価基準
A:著しい変色及び光沢低下がなく、白亜化の等級が0~3である。
B:著しい変色及び光沢低下があり、白亜化の等級が4である。
C:著しい変色及び光沢低下があり、白亜化の等級が5である。
(6)耐溶剤性
本発明のグラフィックシートは主にナンバープレート用途であり、主に溶剤が使用される塗装に対する耐久性が必要であり、また実際の使用にはアルコール類程度での清掃がなされることも考えられるため、溶剤に対する耐久性は重要である。そのため、本試験を実施した。
試験片から保護フィルムを剥離し、記号用インク層の乾燥条件である125℃で10分間加熱処理を行った。試験片をイソプロピルアルコールに顔料系インク朱(シャチハタ)で着色した0.5wt%着色液に10分浸漬後、取り出して、イソプロピルアルコールを染み込ませたウエス等で着色液を拭き取った後、直ちに外観を確認し、500gf程度の荷重の親指で表面を擦り、軟化の有無を確認した。また、グラフィックシート部に対する着色がないこと、着色があった場合には、着色部を拡大し亀裂の有無を確認した。
評価基準
A:亀裂及び著しい軟化が見られない。
B:亀裂あるいは著しい軟化が見られる。
(7)印刷適性
本発明のグラフィックシートは主にナンバープレート用途であり、透明樹脂表面層の裏面側に形成される部分的印刷層が、インクの滲み及び濃度ムラがなく鮮やかであることは重要である。そのため、本試験を実施した。
工程基材フィルム上に形成された透明樹脂表面層の上に、印刷機として(株)ミマキエンジニアリング製インクジェットプリンター「JV300」を使用し、溶剤系インクとして(株)ミマキエンジニアリング製ソルベントインク「SS21」を使用して、シアン、マゼンタ、イエローの各単色及び、これらのインクの混色であるレッド、グリーン、ブルーの計6色をベタ印刷して部分的印刷層を形成した。部分的印刷層に対するインクの滲み及び濃度ムラの有無を確認した。
評価基準
A:著しいインクの滲み及び濃度ムラが見られない。
B:著しいインクの滲み及び濃度ムラが見られる。
(8)耐熱黄変性 b値(Hunter)
本発明のグラフィックシートは主にナンバープレート用途であり、ナンバープレートへの加工工程において、記号用インク層の焼き付け処理によって高温に晒されてもグラフィックシートが黄変しないことは重要である。そのため、本試験を実施した。
試験片から保護フィルムを剥離し、記号用インク層の乾燥条件で、高温である160℃で10分間加熱処理を行った。プレートが十分に冷めた後、分光測色計(コニカミノルタ(株)製、型式「CM-5」)を用いて、D65光源、測定径8mm、SCE(正反射光除去)方式でHunter Lab値のb値を測定した。
評価基準
A:b値が5未満である。
B:b値が5以上10未満である。
C:b値が10以上である。
【0064】
各試験の結果を以下にまとめて記載する。
(1)実施例1-9は、インク下地層がアルキド樹脂にメラミン成分を含まない硬化剤を加えて硬化された樹脂であったので、耐熱黄変性に優れ、23℃及び3℃のエンボス部のヒビ・割れ・浮きがなく、層間密着性、接着力、セキュリティ性、サンシャイン促進耐候性試験、耐溶剤性はいずれも高かった。また、印刷適性も良かった。
(2)これに対して比較例1-2は、インク下地層がアルキド樹脂をメラミン系硬化剤で硬化された樹脂であったため、耐熱黄変性は劣っていた。
(3)以上から、本発明のグラフィックシートである各実施例は、耐熱黄変性に優れることが確認でき、耐候性が高く、低温エンボス性も良好で、伸び率が高く、剥離後の再利用がされにくいため、無傷のままでは剥がし難く、よりセキュリティ性に優れたグラフィックシートであることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のグラフィックシートは、車両のナンバープレートとして利用できる他、看板、自動車、建築物の装飾フィルム又はシートなどとして使用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 グラフィックシート
2 透明樹脂表面層
3 部分的印刷層
4 インク下地層
5 粘着層
6 保護フィルム
7 離型フィルム
8 工程用基材フィルム
9 ナンバープレート
10 保護フィルム付きグラフィックシート
11 ベースプレート
12 記号用インク層
EY 人の見る方向
【要約】
【課題】従来の熱黄変の問題を解決させたうえ、エンボス加工適性を有し、耐候性が高く、インク層との密着性も良好であり、アフタークリヤーコートやオーバーラミネートは不要となり、セキュリティ性も備えた保護フィルム付きグラフィックシートであり、その製造方法及びその使用方法を提供する。
【解決手段】部分的印刷層3を含むグラフィックシート1であって、透明樹脂表面層2と、透明樹脂表面層2の裏面側の部分的印刷層3と、インク下地層4と、粘着層5とをこの順に含み、インク下地層4は、アルキド樹脂に、メラミン成分を含まない硬化剤を加えて硬化されている樹脂である。保護フィルム付きグラフィックシートは、透明樹脂表面層2の外面には保護フィルムが貼り付けられており、粘着層5の外面には離型フィルムが貼り付けられている。
【選択図】
図1