(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ分散液及びその製造方法、並びに、カーボンナノチューブ配向膜の製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C01B 32/174 20170101AFI20220106BHJP
【FI】
C01B32/174
(21)【出願番号】P 2021502863
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 CN2018110464
(87)【国際公開番号】W WO2020051970
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】201811073606.2
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516082763
【氏名又は名称】中国科学院蘇州納米技術与納米▲ファン▼生研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】高 冰
(72)【発明者】
【氏名】邱 松
(72)【発明者】
【氏名】金 赫華
(72)【発明者】
【氏名】李 清文
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-515779(JP,A)
【文献】国際公開第2005/108482(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104576744(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0104652(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108490120(CN,A)
【文献】Alexander B. Artyukhin et al.,Layer-by-Layer Electrostatic Self-Assembly of Polyelectrolyte Nanoshells on Individual Carbon Nanotube Templates,Langmuir,2004年,20,1442-1448.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/174
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択されたカーボンナノチューブと、
前記選択されたカーボンナノチューブに特異的に結合するカーボンナノチューブ分散剤としてのポリマーと、
前記選択されたカーボンナノチューブに結合し、前記選択されたカーボンナノチューブの表面に同種の電荷を持たせる芳香族分子と、
少なくとも分散液の残りの成分と配合して均一な分散液を形成する有機溶媒と、を含む、
ことを特徴とするカーボンナノチューブ分散液。
【請求項2】
前記ポリマーは、
前記選択されたカーボンナノチューブに非共有結合している、
ことを特徴とする請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記ポリマーは共役ポリマーから選択される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項4】
前記ポリマーは、ポリカルバゾール、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンエチレンの少なくとも1つのホモポリマー又はコポリマーを含み、前記コポリマーの共重合単位が、ベンゼン、チオフェン、ピリジン、トリアリールアミン、ベンゾチアジアゾールのうちのいずれか1種、又はいずれか1種のアルキル化誘導体を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の分散液。
【請求項5】
前記選択されたカーボンナノチューブは半導体型単層カーボンナノチューブである、
ことを特徴とする請求項1に記載の分散液。
【請求項6】
前記芳香族分子の構造式が、式(I)~式(V)のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の分散液。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(ここで、Xは、SO
4
2-、SO
3
2-、CO
3
2-、NO
3
-又はCl
-を含み、YはClを含み、ZはNa
+又はK
+を含む。)
【請求項7】
前記芳香族分子は、次のうちのいずれか1種の化合物を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の分散液。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項8】
前記有機溶媒は、ハロゲン化アルカン、芳香族炭化水素及びハロゲン化芳香族炭化水素のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含み、又は、前記ハロゲン化アルカンは、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンのうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含み、又は、前記芳香族炭化水素は、トルエン及び/又はキシレンを含み、又は、前記ハロゲン化芳香族炭化水素は、クロロベンゼン及び/又はジクロロベンゼンを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の分散液。
【請求項9】
前記分散液中の
前記選択されたカーボンナノチューブの含有量が0.5μg/mL以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の分散液。
【請求項10】
前記選択されたカーボンナノチューブの平均長さが100~3000nmである、
ことを特徴とする請求項1又は9に記載の分散液。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブと前記ポリマーとの質量比が1:0.001~1:100、又は1:0.01~1:50、又は1:0.1~1:10である、
ことを特徴とする請求項1に記載の分散液。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブと前記芳香族分子との質量比が1:0.005~1:50、又は1:0.05~1:20、又は1:0.1~1:10である、
ことを特徴とする請求項1に記載の分散液。
【請求項13】
少なくとも、カーボンナノチューブ粉体原料と、
前記カーボンナノチューブ分散剤としての
前記ポリマーと、溶媒とを混合して第1の分散液を形成し、前記ポリマーと前記選択されたカーボンナノチューブとを特異的に結合させた後、
前記表面に
前記ポリマーが結合した
前記カーボンナノチューブを前記第1の分散液から分離するステップと、
少なくとも前記表面に
前記ポリマーが結合した
前記カーボンナノチューブ、
前記芳香族分子、及び、溶媒を混合して第2の分散液を形成し、前記芳香族分子と前記選択されたカーボンナノチューブを結合させ、前記選択されたカーボンナノチューブの
前記表面に同種の電荷を持たせた後、
前記表面に
前記ポリマー及び
前記芳香族分子が結合した
前記カーボンナノチューブを前記第2の分散液から分離するステップと、
前記表面に
前記ポリマー及び
前記芳香族分子が結合した
前記カーボンナノチューブを
前記有機溶媒に分散させて、前記カーボンナノチューブ分散液を形成するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
【請求項14】
前記第1の分散液から分離された、
前記表面に
前記ポリマーが結合した
前記カーボンナノチューブを洗浄して、遊離ポリマーを除去するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第2の分散液から分離された、
前記表面に
前記ポリマー及び
前記芳香族分子が結合した
前記カーボンナノチューブを洗浄して、遊離芳香族分子を除去するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
前記カーボンナノチューブ粉体原料は、アーク放電法、プラズマ放電法、レーザーアブレーション法又は化学気相堆積法により製造されたカーボンナノチューブ粉体を含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項17】
水と相溶しない請求項1~12のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ分散液を提供するステップと、
前記カーボンナノチューブ分散液を有機相とし、前記有機相上に水相層を導入し、
前記水相層と有機相層からなる2層液相系を形成するステップと、
基底を前記2層液相系に部分的又は完全に挿入した後、前記基底を
前記2層液相系から引き上げ、前記基底の表面にカーボンナノチューブ配向膜を形成するステップと、を含む、
ことを特徴とするカーボンナノチューブ配向膜の製造方法。
【請求項18】
前記2層液相系における
前記水相層と
前記有機相層との界面線が直線に近い、
ことを特徴とする請求項
17に記載の製造方法。
【請求項19】
200~2000μm/s、又は500~1500μm/s、又は800~1000μm/sの速度で前記基底を前記2層液相系に挿入するステップを含む、
ことを特徴とする請求項
17に記載の製造方法。
【請求項20】
1~5000μm/s、又は50~1000μm/s、又は200~500μm/sの速度で前記基底を前記2層液相系から引き上げるステップを含む、
ことを特徴とする請求項
17に記載の製造方法。
【請求項21】
前記水相層は純水又は水溶液を含み、又は、前記水溶液は無機塩及び/又は有機溶媒をさらに含む、
ことを特徴とする請求項
17に記載の製造方法。
【請求項22】
前記水相層の厚さが1~15mmである、
ことを特徴とする請求項
17に記載の製造方法。
【請求項23】
前記基底の材質は、剛性材料及び/又は可撓性材料を含み、又は、前記剛性材料は、酸化シリコンウェハ、石英ウェハ、又はサファイア基板を含み、又は、前記可撓性材料は、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート又はポリイミドを含む、
ことを特徴とする請求項
17~
22のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
電子デバイス、光電子デバイス又はセンサデバイスの製造における、請求項
17~
23のいずれか1項に記載の
カーボンナノチューブ配向膜の製造方法により製造されたカーボンナノチューブ配向膜
の使用。
【請求項25】
前記
カーボンナノチューブ配向膜は、連続的に均一に配向して配列されたカーボンナノチューブ膜である、
ことを特徴とする請求項
24に記載のカーボンナノチューブ配向膜
の使用。
【請求項26】
前記カーボンナノチューブ
配向膜中の
前記カーボンナノチューブの配向配列方向が引き上げ方向と一致している、
ことを特徴とする請求項
24又は
25に記載のカーボンナノチューブ配向膜
の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ナノ炭素材料、特にカーボンナノチューブ配向膜、その製造方法及び使用に関し、カーボンナノ材料の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(crabon nanotubes、CNTs)は、優れた力学的特性、光学的特性、電気的特性などから広く注目されており、光電子デバイス、電子デバイス、力学材料、導電材料や複合材料などの分野で利用されてきた。しかしながら、CNTsは管状のナノ材料であり、アスペクト比と比表面積が非常に大きいと同時に、CNTs間のファンデルワールス力が強いので、絡み合って凝集するなどの現象が極めて起こりやすく、その結果、マトリックス中に分散しにくくなり、製品の性能を大きく制限している。したがって、CNTsの優れた性能を引き出すためには、いかにCNTsを均一かつ安的定に分散させるかは重要な課題である。
【0003】
近年、有機溶媒などの分散媒中でのCNTsの分散性を高めるために、化学変性法と物理吸着法に分類できる様々な方法が提案されている。これらのうち、化学変性法は、酸化剤として強酸を用い、反応中にCNTsの管壁又は末端に酸素含有官能基を形成し、CNTsを数百メートルの短いCNTsに切断し、官能基化したCNTsを水溶液やさまざまな有機溶媒に効率的に分散し、共有結合を利用して長鎖有機分子をグラフトすることでCNTsの分散性を高めるものであるが、表面変性の過程でCNTsのsp2構造や長さが破壊され、CNTs本来の性質が低下し、応用効果には役立たない。一方、物理吸着法は、非共有結合変性法としても知られており、界面活性剤を分散剤として利用したり、特定の分子構造を有する高分子(例えば共役ポリマー)をCNTs表面に結合させたりすることにより、カーボンナノチューブを分散媒中に安定的に分散させる。物理吸着法は化学変性法のいくつかの欠点を克服することができるが、使用される高分子のほとんどは電荷を持たない電気的に中性な分子であり、単分散後のCNTsの間には反発力の作用がなく、ファンデルワールス力による絡みやラップが発生しやすい。外力が作用して配向を誘導する過程で、電気的に中性なCNTsは再配列や密集化の過程でファンデルワールス力による絡み合いや密積現象が起こりやすく、これはCNTsの配向配列には不利であるが、大規模な電界効果トランジスタの高性能集積回路を実現するためには、デバイス間の性能のムラを小さくするためにカーボンナノチューブ膜の配向性をどのように制御するかは、薄膜デバイスの製造において解決すべき別の重要な課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の主な目的は、従来技術の欠点を克服したカーボンナノチューブ配向膜、その製造方法及び使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の発明目的を達成するために、本願で採用される技術案は、次のものを含む。
【0006】
本願の実施例は、
選択されたカーボンナノチューブと、
前記選択されたカーボンナノチューブに特異的に結合するカーボンナノチューブ分散剤としてのポリマーと、
前記選択されたカーボンナノチューブに結合し、前記選択されたカーボンナノチューブの表面に同種の電荷を持たせる芳香族分子と、
少なくとも分散液の残りの成分と配合して均一な分散液を形成する有機溶媒と、を含む、カーボンナノチューブ分散液を提供する。
【0007】
本願の実施例は、
少なくともカーボンナノチューブ粉体原料、カーボンナノチューブ分散剤としてのポリマー、及び、溶媒を混合して第1の分散液を形成し、前記ポリマーを選択されたカーボンナノチューブに特異的に結合させた後、前記表面にポリマーが結合したカーボンナノチューブを前記第1の分散液から分離するステップと、
少なくとも前記表面にポリマーが結合したカーボンナノチューブ、芳香族分子、及び、溶媒を混合して第2の分散液を形成し、前記芳香族分子を前記選択されたカーボンナノチューブに結合させ、前記選択されたカーボンナノチューブの表面に同種の電荷を持たせた後、表面にポリマー及び芳香族分子が結合したカーボンナノチューブを前記第2の分散液から分離するステップと、
前記表面にポリマー及び芳香族分子が結合したカーボンナノチューブを有機溶媒に分散させて、前記カーボンナノチューブ分散液を形成するステップと、を含む、前記カーボンナノチューブ分散液の製造方法をさらに提供する。
【0008】
本願の実施例は、
選択されたカーボンナノチューブと、
カーボンナノチューブ分散剤として使用され、前記選択されたカーボンナノチューブに特異的に結合するポリマーと、
前記選択されたカーボンナノチューブに結合し、前記選択されたカーボンナノチューブの表面に同種の電荷を持たせる芳香族分子と、を含む、粉体材料をさらに提供する。
【0009】
本願の実施例は、
水と相溶しない上記のいずれか1種のカーボンナノチューブ分散液を提供するステップと、
前記カーボンナノチューブ分散液を有機相とし、前記有機相上に水相層を導入し、水相層と有機相層からなる2層液相系を形成するステップと、
基底を前記2層液相系に部分的又は完全に挿入した後、前記基底を2層液相系から引き上げ、前記基底の表面にカーボンナノチューブ配向膜を形成するステップと、を含む、カーボンナノチューブ配向膜の製造方法をさらに提供する。
【0010】
さらに、前記2層液相系における水相層と有機相層との界面線が直線に近い。
【0011】
本願の実施例は、上記方法により製造されたカーボンナノチューブ配向膜をさらに提供する。
【0012】
さらに、前記膜は連続的に均一配向したカーボンナノチューブ膜である。
【0013】
本願の実施例は、電子デバイス、光電デバイス又はセンサデバイスなどの製造における、前記カーボンナノチューブ配向膜の使用をさらに提供する。
【0014】
本願の実施例は、前記カーボンナノチューブ配向膜を備える装置をさらに提供する。
【発明の効果】
【0015】
従来技術と比較して、本願の有益な効果は少なくとも次のことである。
1)本願によるカーボンナノチューブ配向膜の製造方法では、共役ポリマー分子で分散させた高純度カーボンナノチューブの表面に電荷を帯びた芳香族分子を吸着させることにより、チューブ間に静電反発力を導入することで、外力による配向集合誘導の過程による密集化や再配列に生じる密集堆積や絡み合いの現象に抵抗する。
2)本願では、上記高純度カーボンナノチューブを二液層浸漬引き上げ法を用いて配向配列し、水相層は下層の有機相に対して一定の液封作用を果たし、有機相の揮発速度を遅くすることにより、空気-有機相界面のメニスカスにおけるカーボンナノチューブの自己集合時間を長くすることができ、それにより、空気-有機相界面線におけるカーボンナノチューブの再配列及び秩序化配列を実現し、引き上げ方向に整合的に配列させたカーボンナノチューブ配向膜を得ることができる。
3)本願の製造方法は、簡単で効率的であるだけでなく、大面積の配向性カーボンナノチューブ膜を容易に拡大して製造することができ、カーボンナノチューブ膜をベースとした電子デバイス分野への応用のために材料を十分に保証する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本願の実施例又は従来技術の技術案をより明確に説明するために、以下では、実施例又は従来技術の説明において必要な図面について簡単に説明するが、明らかなように、以下の説明における図面は、本願に記載された一部の実施例にすぎず、当業者にとっては、創造的な努力を必要とせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0017】
【
図1】本願の典型的な実施形態における高純度半導体型単層カーボンナノチューブのチューブ間に静電反発力を導入し、大面積の連続配向性カーボンナノチューブ膜を製造するための製造プロセスのフローチャートである。
【
図2】本願の典型的な実施形態における大面積の連続配向性CNTs膜を製造するための二液層浸漬引き上げ法の過程の模式図である。
【
図3】(a)~(i)は、本願の典型的な実施形態で得られた高純度半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の走査型電子顕微鏡像である。
【
図4】(a)、(b)は、本願の典型的な実施形態において共役ポリマーで分散させた高純度半導体型単層カーボンナノチューブの表面にPFSの異なる芳香族分子が吸着された場合の蛍光曲線の変化の状況の模式図である。
【
図5】(a)、(b)は、本願の典型的な実施形態において配向配列させた半導体型単層カーボンナノチューブ膜の配向性を特徴付ける偏光ラマンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記したように、従来技術の欠陥に鑑み、本発明者は長期にわたる研及び多くの実践を経て、本願の技術案を提案した。以下、本願の技術案を明確かつ完全に説明するが、明らかなように、説明する実施例は本願の一部の実施例であり、すべての実施例ではない。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力を必要とせずに取得した他のすべての実施例は、本願の特許範囲に属する。
【0019】
本願の実施例の一態様によるカーボンナノチューブの分散液は、
選択されたカーボンナノチューブと、
前記選択されたカーボンナノチューブに特異的に結合する、カーボンナノチューブ分散剤としてのポリマーと、
前記選択されたカーボンナノチューブに結合し、前記選択されたカーボンナノチューブの表面に同種の電荷を持たせる芳香族分子と、
少なくとも分散液の残りの成分と配合して均一な分散液を形成する有機溶媒と、を含む。
【0020】
本願では、前記「選択されたカーボンナノチューブ」は、「前記ポリマー」に対応する。例えば、ポリビニルピロリドン、高分岐ポリマー、アニリンオリゴマーなどのポリマーの場合、前記「選択されたカーボンナノチューブ」は、単層カーボンナノチューブ、少層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブなどであってもよい。また、例えば、カルバゾリル基、フルオレニル基、チエニル基に基づく共役ホモポリマー又はホモポリマーなどのポリマーの場合、前記「選択されたカーボンナノチューブ」は、半導体型単層カーボンナノチューブであってもよい。
【0021】
本願では、前記ポリマーは、カーボンナノチューブ分散剤として、複数のカーボンナノチューブの少なくとも一部を個々の大きさ(直径0.4~100nm)に分離し、有機溶媒などの分散媒中に「孤立分散」した状態で(凝集することなく)安定的に分散させることができる。本願に記載の「孤立分散」とは、カーボンナノチューブが相互の凝集力によって塊状、束状、紐状になっておらず、カーボンナノチューブが1本ずつ孤立して分散媒中に分散して存在している状態をいう。
【0022】
本願では、異なるタイプのカーボンナノチューブについて、それぞれ異なるポリマーをカーボンナノチューブ分散剤として選択することができる。
【0023】
例えば、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等については、ポリビニルピロリドン、トリアリールアミン構造を分岐点とする高分岐ポリマー等の高分岐ポリマー、アニリンオリゴマー及びその誘導体等を対応するカーボンナノチューブ分散剤として使用することができる。具体的には、JP200044216A、JP2005162877A、JP200824522A、WO2008/139839A、CN102695557B、CN101578237B、CN105645388B、CN105645387A、CN105642184B、CN106061894A等の文献を参照することができる。
特に半導体型カーボンナノチューブの場合、カーボンナノチューブ分散剤として好適なポリマーとしては、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン及び/又はポリフルオレン誘導体、ポリm-フェニルアセチレン誘導体など、カルバゾリル基、フルオレニル基、チエニル基などに基づく共役ホモポリマー又はホモポリマーや、樹状共役ポリマーなどの他の構造のポリマーなどが挙げられる。より具体的には、半導体型単層カーボンナノチューブの分散剤として、ポリカルバゾール、ポリフルオレン及びポリチオフェン、カルバゾール系直鎖型コポリマー(PCz)などが特に好適である。これらのポリマーは、π-π作用などの物理的作用により、半導体型単層カーボンナノチューブに特異的に結合し、有機溶媒などの分散媒中で半導体型単層カーボンナノチューブを安定的に「孤立分散」させることができる。さらに、これらのポリマーの選択については、CN103112840B、CN105585000B、CN107456918A、CN106823983A、CN106478927A、CN105611986B等を参照することができる。
【0024】
本願では、前記芳香族分子は、表面にポリマーが特異的に結合したカーボンナノチューブに結合し、同一分散系中の各カーボンナノチューブの表面に同種の電荷(正電荷又は負電荷)を持たせることにより、各カーボンナノチューブ間に静電反発力を形成し、外力によるカーボンナノチューブ配向集合誘導の過程による密集化や再配列による密集堆積や絡み合いの現象に抵抗する。
【0025】
本願のいくつかの実施例では、前記選択されたカーボンナノチューブは、半導体型単層カーボンナノチューブであり、これに合わせるカーボンナノチューブ分散剤は、カルバゾリル基、フルオレニル基、チエニル基に基づく共役ホモポリマー又はホモポリマー等の共役ポリマー、具体的には、ポリカルバゾール、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等の少なくとも1つのホモポリマー又はコポリマーであってもよく、前記ポリマーの共重合単位が、ベンゼン、チオフェン、ピリジン、トリアリールアミン、ベンゾチアジアゾールのうちのいずれか1種又はいずれか1種のアルキル化誘導体又は複数の組み合わせを含み、好ましくはカルバゾール系直鎖型コポリマー(PCz)等からのものであるが、これに限定されない。
【0026】
本願のいくつかの実施例では、前記芳香族分子は、縮合環芳香共役構造(π-πスタッキングを介して半導体型単層カーボンナノチューブと相互作用することができる)と、正又は負の電荷を帯びた原子又は置換基(半導体型単層カーボンナノチューブの表面に電荷を持たせてチューブ間の静電反発力を導入する)と、を有することが好ましい。
【0027】
さらに、前記芳香族分子の構造式は、下記式(I)~(v)のうちの少なくとも1種を含む。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(ここで、XはSO
4
2-、SO
3
2-、CO
3
2-、NO
3
-又はCl
-を含み、YはClを含み、ZはNa
+又はK
+を含む。)
【0028】
さらに、芳香族分子の代表的な構造は、下記式(1)~(6)のうちのいずれか1種を参照できるが、これらに限定されない。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0029】
本願のいくつかの実施例では、好ましい態様として、正電荷を帯びた染料芳香小分子の1つ、すなわち、式(1)のヘミ硫酸プロフラビン(PFS)分子が挙げられる。
【0030】
上記の半導体型単層カーボンナノチューブ(s-SWCNTs)は、超アスペクト比、大比表面積、及び調整可能なバンドギャップ、優れた電子と正孔の移動度(真性キャリアの移動度が70000cm2V-1s-1)に達する)などの独特な構造的特性や電子特性を備えており、次世代電界効果薄膜、RFトランジスタの最も将来性のある材料の1つと考えられている。単本s-SWCNTsは、一次元特性により、電気、光学、力学や磁気などの性能では極めて顕著な異方性を示している。
【0031】
従来技術では、溶液法で分離して得られたs-SWCNTs溶液に基づいて、異なる方法で大面積、無秩序なネットワーク状カーボンナノチューブ膜を製造することができる。しかし、ネットワーク状膜中にランダムに分布したカーボンナノチューブには明らかな絡み合いやラップの現象が存在し、チューブ間の接触抵抗が増大し、キャリアの移動度を大幅に低下させ、単本のカーボンナノチューブが持つ優れた性能を十分に発揮することができず、高性能集積回路の実現にも不利である。
【0032】
どのようにカーボンナノチューブの構造を制御し、単本のカーボンナノチューブの優れた性能を有効に保持するかについては、現在の主要な解決手段の1つは大面積で配向配列させたs-SWCNTs膜を製造することである。カーボンナノチューブの配向配列を実現する方法は主に2つに分類され、1つは化学気相堆積によりカーボンナノチューブの配向配列を直接成長させることであり、もう1つは溶液中で予め分離されたカーボンナノチューブの配向配列である。直接成長法で得られるのは金属型と半導体型のカーボンナノチューブの混合物であり、金属型単層カーボンナノチューブの存在はカーボンナノチューブ薄膜トランジスタデバイスの性能に深刻な影響を与えるため、直接成長で得られる半導体型カーボンナノチューブの純度をさらに最適化する必要がある。単層カーボンナノチューブの特定の物理的及び電子的構造に基づいて、水溶液や有機溶液中で後処理を行って半導体型カーボンナノチューブを分離する方法が様々に開発されているが、具体的には上記の文献を参照することができる。さらに、溶液法により分離された高純度s-SWCNTsの半導体電子デバイスへの応用の利点を十分に活用するために、研究者は、溶液法に基づいて半導体カーボンナノチューブの集合、配向配列を実現する方法、例えば剪断力誘導、蒸発駆動自己集合、スピンコート法、化学自己集合、真空ろ過法、電磁界誘導、テンプレート法、インクジェット印刷技術などを発展させた。例えば、CN107963610Aは、機能化された疎水性基底上にインクジェット印刷を採用することにより、配向性カーボンナノチューブ膜の位置、配向密度及びパターン化の正確な制御を実現し、密度が均一で配向が一致した、異なるパターンのカーボンナノチューブ膜を配列させたが、この方法は界面活性剤系のカーボンナノチューブの配向配列にしか適用できず、界面活性剤系におけるs-SWCNTsの配向配列技術固有の欠点を解決できず、例えば、界面活性剤が分散したs-SWCNTsの純度が十分でない一方、s-SWCNTsの表面に過剰な残留界面活性剤が被覆されて凝集し、電荷の輸送を著しく阻害し、デバイスの性能を著しく低下させる。また例えば、CN106061894Aは、ポリフルオレン誘導体で分散させたs-SWCNTsの有機分散液によりs-SWCNTs膜を堆積させ、s-SWCNTsの有機分散液の薄層が水性媒体の表面上に広がり、固体基材と接触した際に蒸発自己集合を誘導する。この方法を用いて、一定の配向度を有する半導体単層カーボンナノチューブの高密度膜を製造することができる。上記したように、この技術で使用されているポリフルオレン誘導体は電荷を持たない電気的に中性な分子であり、s-SWCNTs同士の間にファンデルワールス力による絡み合いやラップが発生し、外力作用による配向誘導の過程では、s-SWCNTsの再配列や密集化の過程で通常絡み合いや密集堆積の現象が発生することは避けられず、s-SWCNTsの配向配列に不利である。また、浸漬引き上げ法は、基底をs-SWCNTs懸濁液から引き上げる過程で有機溶媒を急速に揮発させることにより、大面積で均一なs-SWCNTsネットワーク膜を得ることができ、高品質、大面積、高均一性のs-SWCNTs膜を迅速で制御可能に製造できる。しかし、上記したこれらの従来技術の共通の問題の1つは、s-SWCNTsの配向配列をうまく実現できないことである。
【0033】
本願のいくつかの実施例では、有機系中の共役ポリマー分子等から分離された高純度半導体型単層カーボンナノチューブの表面に、電荷を帯びた芳香族分子がπ-πスタッキング作用により吸着され、それにより、半導体型単層カーボンナノチューブの表面に電荷を持たせてチューブ間に静電反発力が導入され、半導体型単層カーボンナノチューブ間の反発力が微量で安定性に優れた高純度半導体型単層カーボンナノチューブ分散液が得られ、導入されたチューブ間の静電反発力は、配向過程における半導体単層カーボンナノチューブの自己集合過程による絡み合いや密堆積に抵抗し、s-SWCNTsを効率的かつ均一に、大面積で配向配列させることができる。
【0034】
本願のいくつかの実施例では、前記分散液中のカーボンナノチューブと前記ポリマーとの質量比は、1:0.001~1:100、好ましくは1:0.01~1:50、特に好ましくは1:0.1~1:10である。
【0035】
本願のいくつかの実施例では、分散液中のカーボンナノチューブと前記芳香族分子との質量比は、1:0.005~1:50、好ましくは1:0.05~1:20、特に好ましくは1:0.1~1:10である。
【0036】
さらに、前記分散液中のカーボンナノチューブの含有量が0.5μg/mL以上である。
【0037】
さらに、前記分散液中のカーボンナノチューブの平均長さが100~3000nmである。
【0038】
さらに、前記有機溶媒は、ハロゲン化アルカン、芳香族炭化水素、及びハロゲン化芳香族炭化水素等のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0039】
さらに、前記ハロゲン化アルカンはクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等から選択されるいずれか1種又は2種以上の組み合わせであってもよく、前記芳香族炭化水素はトルエン、キシレン等から選択されてもよく、前記ハロゲン化芳香族炭化水素はクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等から選択されてもよいが、これらに限定されない。
【0040】
本願の実施例の別の態様は、
少なくともカーボンナノチューブ粉体原料、カーボンナノチューブ分散剤としてのポリマー、及び、溶媒を混合して第1の分散液を形成し、前記ポリマーを前記選択されたカーボンナノチューブに特異的に結合させた後、前記表面にポリマーが結合したカーボンナノチューブを前記第1の分散液から分離するステップと、
少なくとも前記表面にポリマーが結合したカーボンナノチューブ、芳香族分子、及び、溶媒を混合して第2の分散液を形成し、前記芳香族分子を前記選択されたカーボンナノチューブに結合させ、前記選択されたカーボンナノチューブの表面に同種の電荷を持たせた後、表面にポリマー及び芳香族分子が結合したカーボンナノチューブを前記第2の分散液から分離するステップと、
表面にポリマー及び芳香族分子が結合したカーボンナノチューブを有機溶媒に分散させて前記カーボンナノチューブ分散液を形成するステップと、を含む上記のカーボンナノチューブ分散液の製造方法を提供する。
【0041】
いくつかのより具体的な実施形態では、前記製造方法は、具体的には、
共役ポリマーを用いて単層カーボンナノチューブ粉体原料を選択的に分散して半導体型単層カーボンナノチューブ分散液を得、この分散液を濾過洗浄処理して遊離の共役ポリマーを除去し、表面に残存する共役ポリマーが含まれた半導体型単層カーボンナノチューブ粉体、すなわち第1の粉体を得るステップと、
得られた第1の粉体、芳香族分子及び有機溶媒を混合して分散液を形成した後、ろ過処理により半導体型単層カーボンナノチューブに結合していない芳香族分子を除去して第2の粉体を得るステップと、
前記第2の粉末を有機溶媒に分散させて、前記半導体型単層カーボンナノチューブ分散液を形成するステップと、を含む。
【0042】
さらに、前記単層カーボンナノチューブ粉体原料は、原単層カーボンナノチューブから選択され、アーク放電法、プラズマ放電法、レーザーアブレーション法又は化学気相堆積法により製造されるが、これらに限定されない。
【0043】
本願のいくつかの実施例では、前記製造方法は、共役ポリマーと原単層カーボンナノチューブとを混合して超音波分散させた後、濾過洗浄して、半導体型単層カーボンナノチューブの表面に被覆された共役ポリマー分子を除去し、純度99.9%以上の半導体型単層カーボンナノチューブを得るステップを含む。
【0044】
さらに、前記製造方法は、有機系中の共役ポリマーを用いて純度99.9%の半導体型単層カーボンナノチューブを選択的に分散させ、その後、真空濾過洗浄により、表面に共役ポリマーの残存量が少なく、単分散性に優れた半導体型単層カーボンナノチューブ固体粉末を得、洗浄後の半導体型単層カーボンナノチューブの再単分散性を確保しつつ、高純度半導体型単層カーボンナノチューブをさらに精製するステップを含んでもよい。
【0045】
本願のいくつかのより具体的な実施例では、半導体型単層カーボンナノチューブ分散液の製造方法の1つは、以下のステップを含むことができる。
【0046】
1)超音波、遠心分離
それぞれ一定の質量の共役ポリマーと原単層カーボンナノチューブを一定の割合で正確に秤量し、一定の体積のキシレン(又はトルエン)溶媒に混合した後、水浴超音波でポリマーを十分に溶解した後、超音波粉砕装置を用いて超音波分散を行う。分散させたカーボンナノチューブ溶液を低回転速度で予備分離して上清を得た後、高回転速度で遠心分離することにより、表面に過剰なポリマー分子が被覆された高純度半導体型単層カーボンナノチューブのキシレン(又はトルエン)分散液となる上清を得る。
【0047】
2)真空抽出ろ過、有機溶媒洗浄
ステップ1)で得られた、表面に過剰なポリマー分子が被覆された高純度半導体型単層カーボンナノチューブのキシレン(又はトルエン)分散液を漏斗に注入して真空吸引ろ過し、分離された高純度半導体型単層カーボンナノチューブ固体をろ過膜上に残し、その後、ろ過膜を大量の有機溶媒(テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタンなど)で洗浄し、半導体型単層カーボンナノチューブの表面に被覆された過剰なポリマー分子を除去し、表面に少量のポリマー分子が残存した半導体型単層カーボンナノチューブ固体粉末(すなわち前記第1の粉体)を得る。
【0048】
より好ましいいくつかの実施例では、前記製造方法は、具体的には、上記で得られた半導体型単層カーボンナノチューブ固体粉末を縮合環芳香族小分子の有機溶液に再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入された高純度半導体型単層カーボンナノチューブの有機分散液を得るステップを含んでもよい。
【0049】
さらに、前記製造方法は、さらに、チューブ間に静電反発力が導入された高純度半導体型単層カーボンナノチューブのクロロホルム分散液を真空抽出ろ過し、表面に静電反発力が導入された半導体型単層カーボンナノチューブ固体をろ過膜上に残し、その後、ろ過膜を大量の有機溶媒で洗浄し、遊離縮合環芳香族小分子を、この小分子の吸収ピークがろ過液中に現れなくなるまで洗浄する。最後に、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離縮合環芳香族分子が除去された高純度半導体型単層カーボンナノチューブ固体粉末(すなわち、前記第2の粉体)を得て、これを有機溶媒に再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離縮合環芳香族小分子が除去された高純度半導体型単層カーボンナノチューブの分散液を得る。
【0050】
本願の実施例の別の態様は、
選択されたカーボンナノチューブと、
カーボンナノチューブ分散剤として使用され、前記選択されたカーボンナノチューブに特異的に結合するポリマーと、
前記選択されたカーボンナノチューブに結合し、前記選択されたカーボンナノチューブの表面に同種の電荷を持たせる芳香族分子と、を含む粉体材料をさらに提供する。
【0051】
本願のいくつかの実施例では、前記芳香族分子は、縮合環芳香族分子共役構造(π-πスタッキングを介して半導体型単層カーボンナノチューブと相互作用する)と、正又は負の電荷を帯びた原子又は置換基(半導体型単層カーボンナノチューブの表面に電荷を持たせてチューブ間静電反発力を導入する)と、を有することが好ましく、その構造式は、式(I)~式(v)の少なくとも1種を含み、代表的な構造は、式(1)~(6)のうちのいずれか1種を参照できるが、これに限定されない。
【0052】
本願のいくつかの実施例では、好ましい態様として、正電荷を帯びた染料芳香小分子の1つ、すなわち、式(1)のヘミ硫酸プロフラビン(PFS)分子が挙げられる。
【0053】
実施例では、前記共役ポリマーは、カルバゾリル基、フルオレニル基、チエニル基に基づく共役ホモポリマー又はホモポリマー、例えば、ポリカルバゾール、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどの少なくとも1つのホモポリマー又はコポリマーであり、前記コポリマーの共重合単位が、ベンゼン、チオフェン、ピリジン、トリアリールアミン、ベンゾチアジアゾールから選択されるいずれか1種又はいずれか1種のアルキル化誘導体、又はそれらの複数の組み合わせである。例えば、前記共役ポリマーは、好ましくはカルバゾール系直鎖型コポリマー(PCz)から選択されるが、これに限定されない。
【0054】
さらに、いくつかの実施例では、前記共役ポリマーは、CN107298436Aを参照して、複合アセン系小分子分散剤などに置換されてもよい。
【0055】
本願のいくつかの実施例では、前記粉体材料中のカーボンナノチューブとポリマーとの質量比は、1:0.001~1:100、好ましくは1:0.01~1:50、特に好ましくは1:0.1~1:10である。
【0056】
本願のいくつかの実施例では、前記粉体材料中のカーボンナノチューブと芳香族分子との質量比は、1:0.005~1:50、好ましくは1:0.05~1:20、特に好ましくは1:0.1~1:10である。
【0057】
さらに、前記粉体材料中の半導体型単層カーボンナノチューブの平均長さは100~3000nmである。
【0058】
本願の実施例の別の態様は、
水と相溶しない上記のいずれか1種のカーボンナノチューブ分散液を提供するステップと、
前記カーボンナノチューブ分散液を有機相とし、前記有機相上に水相層を導入し、水相層と有機相層からなる2層液相系を形成するステップと、
基底を部分的又は完全に2層液相系に挿入した後、前記基底を2層液相系から引き上げ、前記基底の表面にカーボンナノチューブ配向膜を形成するステップと、を含む半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の製造方法をさらに提供する。
【0059】
本願のいくつかの実施例では、前記製造方法は、具体的には、前記カーボンナノチューブ分散液の上方に水相層を設けた後、二液層浸漬引き上げ法を用いて、水相層と有機相層の二相界面を経て前記カーボンナノチューブ分散液から基底を引き上げ、引き上げ方向に整合的に配列させたカーボンナノチューブ配向膜を得るステップを含む。水相層は下層の有機相に対して一定の液封作用を果たし、有機相の揮発速度を遅くすることにより、空気-有機相界面でのメニスカスにおけるカーボンナノチューブの自己集合時間を長くすることができ、それにより、空気-有機相界面線におけるカーボンナノチューブの再配列及び秩序化配列を実現することができる。
【0060】
本願では、チューブ間に静電反発力が存在するカーボンナノチューブを溶解した有機相を用いてカーボンナノチューブ配向膜を堆積し、チューブ間に静電反発力が存在するカーボンナノチューブの有機相の上方に一定の厚さの水相層を加え、有機相から有機-水の2液相界面を経て固体基底を引き上げる。
【0061】
本願のいくつかの実施例では、前記2層液相系における水相層と有機相層との界面線が直線に近い。
【0062】
本願のいくつかの実施例では、前記製造方法は、200~2000μm/s(好ましくは500~1500μm/s、特に好ましくは800~1000μm/s)の降下速度で前記基底を2層液相系に挿入するステップを含む。
【0063】
いくつかのより好ましい実施例では、前記製造方法は、前記基底の大部分をカーボンナノチューブの分散液に浸漬するステップをさらに含む。
【0064】
本願のいくつかの実施例では、前記製造方法は、引き上げ速度で前記基底を前記2層液相系から引き上げるステップを含んでもよい。この過程により、水-有機相界面線を通過し、水相層による液封作用により、空気-有機相二相界面のメニスカスにおける半導体型単層カーボンナノチューブの自己集合時間を長くすることにより、カーボンナノチューブの再配列及び秩序化配列を実現する。
【0065】
さらに、前記基底の引き上げ速度を、低速と高速の2種類の引き上げ速度に分ける。いくつかの好ましい実施例では、前記製造方法は、1~5000μm/s、好ましくは50~1000μm/s、より好ましくは200~500μm/sの間の速度で前記基底を2層液相系から引き上げるステップを含んでもよい。
【0066】
さらに、前記水相層は、純水又は水溶液を含む。ここで、前記水溶液は、無機塩、有機溶媒等をさらに含んでもよく、少なくとも2層液相系の粘度及び張力を調整することに用いる。
【0067】
さらに、前記水相層の厚さは1~15mmである。
【0068】
さらに、前記基底は疎水性表面を有する。例えば、前記基底の材質は、酸化シリコンウェハ、石英ウェハ、サファイア基板等を含む剛性材料、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)等を含む可撓性材料等であってもよいが、これらに限定されない。
【0069】
本願の実施例の別の態様は、上記方法により製造されたカーボンナノチューブ配向膜をさらに提供する。
【0070】
いくつかの実施例では、前記膜は、複数本の配向配列させれたカーボンナノチューブを含み、前記膜は、連続的に均一に配向配列させたカーボンナノチューブ膜である。
【0071】
いくつかの実施例では、前記膜の厚さは2~5nmである。
【0072】
いくつかの好ましい実施例では、前記基底の表面のエッジ領域を除いて、前記基底の表面の有効成膜領域に、大面積で連続的且つ均一に配向させたカーボンナノチューブを実現することができる。
【0073】
さらに、前記カーボンナノチューブ膜中のカーボンナノチューブの配向配列方向が引き上げ方向と一致させる。
【0074】
本願の実施例の別の態様は、電子デバイス、光電子デバイス、センサデバイスなどの分野における上記半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の用途をさらに提供する。
【0075】
本願の実施例の別の態様は、上記半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜を備える装置をさらに提供する。
【0076】
例えば、前記装置は、薄膜トランジスタ、電界効果トランジスタ、メモリ、集積回路デバイス等の電子デバイスであってもよく、光起電力デバイス、光検出器等の光電子デバイスであってもよく、化学センサ、バイオセンサ等のセンサデバイスのうちのいずれか1種であってもよいが、これらに限定されない。
【0077】
前記のように、本願の製造方法は、簡単で効率的であるだけでなく、カーボンナノチューブの純度が低く、外力による配向誘導過程におけるカーボンナノチューブの絡み合いや堆積、及びカーボンナノチューブの有効配向面積が小さい等、従来技術に存在する問題を効果的に解決できる。
【0078】
上記技術案によれば、本願の製造方法は、簡単で効率的であるだけでなく、大面積の連続性配向性カーボンナノチューブ膜を容易に拡大して製造することができ、カーボンナノチューブ膜をベースとした電子デバイス分野への応用のために材料を十分に保証する。
【0079】
以下では、いくつかのより具体的な実施例及び図面を参照しながら、本願の技術案をより詳細に説明する。
【0080】
本願のいくつかのより具体的な実施例は、半導体型単層カーボンナノチューブの分散液、粉体、及び配向膜(以下、単にs-SWCNTsと称する)の製造方法に関するものであり、
図1に示すように、具体的には、以下の一般的なステップを含むことができる。
【0081】
1 半導体型単層カーボンナノチューブ分散液及び粉体の製造方法
【0082】
1.1 超音波、遠心分離
それぞれ共役ポリマーと単層カーボンナノチューブ原料粉末とを一定の割合で正確に秤量し、有機溶媒に混合した後、水浴超音波でポリマーを十分に溶解した後、超音波粉砕装置を用いて超音波分散を行う。分散させたカーボンナノチューブ溶液を低回転速度で予備分離して上清を得た後、高回転速度で遠心分離することにより、上清、すなわちポリマーで分散させて抽出した、表面に過剰なポリマー分子が被覆された高純度s-SWCNTs分散液を得る。
【0083】
1.2 真空吸引ろ過、有機溶媒洗浄
ステップ1.1で得られた、表面に過剰なポリマー分子が被覆された高純度s-SWCNTs分散液を漏斗に注入して真空抽出ろ過し、分離された高純度s-SWCNTs固体をろ過膜上に残し、その後、ろ過膜を大量の溶媒で洗浄し、s-SWCNTsの表面に被覆された過剰なポリマー分子を除去し、表面に少量のポリマー分子が残存するs-SWCNTs固体粉末(すなわち第1の粉体)を得る。
【0084】
1.3 芳香族分子の有機溶液への再分散
ステップ1.2で得られたs-SWCNTs固体粉末を芳香族分子の有機溶液に再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入された高純度s-SWCNTs分散液を得る。
【0085】
1.4 真空吸引ろ過、エタノール洗浄
ステップ1.3の終了後、チューブ間に静電反発力が導入された高純度s-SWCNTs分散液を真空吸引ろ過し、表面に静電反発力が導入されたs-SWCNTs固体をろ過膜上に残し、その後、ろ過膜を大量の溶媒で洗浄し、遊離芳香族分子を、芳香族分子の吸収ピークがろ過液中に現れなくなるまで洗浄する。最後に、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離芳香族分子が除去された高純度s-SWCNTs固体粉末(すなわち第2の粉体)を得る。
【0086】
1.5 クロロホルムへの再分散
ステップ1.4で得られたs-SWCNTs固体粉末を有機溶媒に再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離芳香族分子が除去された高純度s-SWCNTs有機分散液を得る。
【0087】
2 半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の製造方法(二液層浸漬引き上げ配向法(
図2参照))
具体的な操作ステップは、次の通りである。
【0088】
2.1 有機腐食耐性角型石英キュベットに、ステップ1.5で得られたs-SWCNTsの有機分散液を一定体積で添加する。その後、この分散液の上層に一定体積の脱イオン水を添加して、水相層と有機層との間の二相界面線がほぼ一直線に近くなるように、一定の厚さの水相層を形成する。これにより、液液二相界面線が安定化した二液層が形成される。
【0089】
2.2 一定の降下速度(すなわちv1)で疎水性基底を、上層水相層を経てs-SWCNTsの有機分散液に挿入し、疎水性基底の大部分をs-SWCNTsの有機分散液に浸漬する。
【0090】
2.3 一定の引き上げ速度(つまりv2)で、チューブ間に反発力が存在する高純度s-SWCNTsを溶解した有機分散液から疎水性基底を引き上げる。この過程により、水-有機界面線を通過し、水相層による液封作用により、空気-有機二相界面のメニスカスにおけるs-SWCNTsの自己集合時間を長くすることにより、s-SWCNTsの再配列及び秩序化配列を実現する。
【0091】
以下の実施例の方法は、特に明記されていない限り、いずれも当該分野における従来の方法である。
【0092】
(実施例1)
1)一般的なステップ1.1に基づき、CN108017049Aを参照して、カルバゾール系直鎖型コポリマー(PCz)と単層カーボンナノチューブ原料(市販入手、アーク放電法により製造)の投入比を1:1(以下、特に明記されていない限り質量比)に調整し、分散剤としてトルエンを使用した。超音波分散、遠心処理により、ポリマーで分散させた高純度s-SWCNTsのトルエン分散液を得た。
2)一般的なステップ1.2を参照して、第1の粉体を得た。
3)ステップ2)で得られた第1の粉体をヘミ硫酸プロフラビン(PFS)のクロロホルム溶液に質量濃度0.02mg/mLで再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入された高純度s-SWCNTsのクロロホルム分散液を得た。
4)一般的なステップ1.4を参照して、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離硫酸プレフラビン(PFS)分子が除去された高純度s-SWCNTs固体粉末(すなわち第2の粉体)を得た。
5)ステップ4)で得られた第2の粉体をクロロホルム溶媒に再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離ヘミ硫酸プロフラビン(PFS)分子が除去された高純度s-SWCNTsのクロロホルム分散液であって、s-SWCNTsの含有量が0.5μg/mL以上、s-SWCNTsの平均長さが100~3000nm、s-SWCNTsと共役ポリマーとの質量比が1:0.001、s-SWCNTsとヘミ硫酸プロフラビン(PFS)分子との質量比が1:0.005であるクロロホルム分散液を得た。
図4(a)に示すように、ヘミ硫酸プロフラビン(PFS)分子自体は蛍光染料分子として、π-πスタッキングにより高純度s-SWCNTs表面に吸着すると、その蛍光がs-SWCNTsによってクエンチングされ、それに応じて蛍光強度が著しく低下した。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、s-SWCNTs表面に残存する少量の共役ポリマーPCz分子は、芳香族分子の蛍光強度に顕著な影響を与えなかった。
6)一般的なステップ2を参照して、引き上げに用いたクロロホルム分散液の濃度を5μg/mLとした。その後、この分散液の上層に脱イオン水を加え、厚さ1mmの水相層を形成した。1000μm/sの降下速度(v
1)で酸化シリコンウェハをクロロホルム分散液に挿入し、次に、200μm/sの引き上げ速度(v
2)で酸化シリコンウェハを引き上げた。
試験の結果、本実施例で製造された半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の走査型電子顕微鏡像は
図3(a)に示され、半導体型単層カーボンナノチューブは基底の引き上げ方向に大面積で連続的な配向配列を示している。
【0093】
(実施例2)
1)一般的なステップ1.1に基づき、CN105819425Aを参照して、ポリカルバゾール誘導体と単層カーボンナノチューブ原料(市販入手、プラズマ放電法により製造)の投入比を2:1に調整し、分散剤としてキシレンを使用した。超音波分散、遠心処理により、ポリマーで分散させた高純度s-SWCNTsのキシレン分散液を得た。
2)一般的なステップ1.2を参照して、第1の粉体を得た。
3)ステップ2)で得られた第1の粉体をニュートラルレッド(NR)のジクロロメタン溶液に質量濃度0.01mg/mLで再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入された高純度s-SWCNTsのジクロロメタン分散液を得た。
4)一般的なステップ1.4を参照して、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離ニュートラルレッド(NR)分子が除去された高純度s-SWCNTs固体粉末(すなわち第2の粉体)を得た。
5)ステップ4)で得られた第2の粉体をジクロロメタン溶媒に再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離ニュートラルレッド(NR)分子が除去された高純度s-SWCNTsのジクロロメタン分散液であって、s-SWCNTsの含有量が0.5μg/mL以上、s-SWCNTsと共役ポリマーとの質量比が1:0.01、s-SWCNTsとニュートラルレッド(NR)分子との質量比が1:0.05であるジクロロメタン分散液を得た。
図4(b)に示すように、ニュートラルレッド(NR)分子自体は蛍光分子としてπ-πスタッキングにより高純度s-SWCNTs表面に吸着すると、その蛍光がs-SWCNTsによってクエンチングされ、それに応じて蛍光強度が著しく低下した。
6)一般的なステップ2を参照して、引き上げに用いたジクロロメタン分散液の濃度を3μg/mLとし、その後、この分散液の上層に脱イオン水を加え、厚さ2mmの水相層を形成した。1500μm/sの降下速度(v
1)で酸化シリコンウェハをジクロロメタン分散液に挿入し、次に、50μm/sの引き上げ速度(v
2)で酸化シリコンウェハを引き上げた。
試験の結果、本実施例で製造された半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の走査型電子顕微鏡像は
図3(b)に示され、半導体型単層カーボンナノチューブは基底の引き上げ方向に大面積で連続的な配向配列を示している。
【0094】
(実施例3)
1)一般的なステップ1.1に基づき、CN107456918Aを参照して、3次元樹状共役化合物と単層カーボンナノチューブ原料(市販入手、レーザーアブレーション法により製造)の投入比を3:1に調整し、分散剤としてトルエンを使用した。超音波分散、遠心処理により、ポリマーで分散させた高純度s-SWCNTsのトルエン分散液を得た。
2)一般的なステップ1.2を参照して、第1の粉体を得た。
3)ステップ2)で得られた第1の粉体をヘミ硫酸プロフラビン(PFS)のジクロロメタン溶液に質量濃度0.005mg/mLで再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入された高純度s-SWCNTsのジクロロメタン分散液を得た。
4)一般的なステップ1.4を参照して、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離硫酸プレフラビン(PFS)分子が除去された高純度s-SWCNTs固体粉末(すなわち第2の粉体)を得た。
5)ステップ4)で得られた第2の粉体をジクロロメタン溶媒に再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離ヘミ硫酸プロフラビン(PFS)分子が除去された高純度s-SWCNTsのジクロロメタン分散液であって、s-SWCNTsの含有量が0.5μg/mL以上、s-SWCNTsと共役ポリマーとの質量比が1:0.1、s-SWCNTsとヘミ硫酸プロフラビン(PFS)分子との質量比が1:0.1であるジクロロメタン分散液を得た。
6)一般的なステップ2を参照して、引き上げに用いたジクロロメタン分散液の濃度を4μg/mLとし、その後、この分散液の上層に脱イオン水と無機塩の混合溶液を加え、厚さ5mmの水相層を形成した。900μm/sの降下速度(v
1)で疎水性基底をジクロロメタン分散液に挿入し、次に、100μm/sの引き上げ速度(v
2)で基底を引き上げた。
試験の結果、本実施例で製造された半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の走査型電子顕微鏡像は
図3(c)に示され、半導体型単層カーボンナノチューブは、基底引き上げ方向に大面積で連続的な配向配列を示している。
【0095】
(実施例4)
1)一般的なステップ1.1に基づき、CN106823983Aを参照して、三次元樹状共役化合物と単層カーボンナノチューブ原料(市販入手、化学気相堆積法により製造)投入比を1:2に調整し、分散剤としてキシレンを使用した。超音波分散、遠心処理により、ポリマーで分散させた高純度s-SWCNTsのキシレン分散液を得た。
2)一般的なステップ1.2を参照して、第1の粉体を得た。
3)ステップ2)で得られた第1の粉体をアクリジンオレンジ(AO)のクロロホルム溶液に質量濃度0.02mg/mLで再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入された高純度s-SWCNTsのクロロホルム分散液を得た。
4)一般的なステップ1.4を参照して、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離アクリジンオレンジ(AO)分子が除去された高純度s-SWCNTs固体粉末(すなわち第2の粉体)を得た。
5)ステップ4)で得られた第2の粉体をクロロホルム溶媒に再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離アクリジンオレンジ(AO)分子が除去された高純度s-SWCNTsのクロロホルム分散液であって、s-SWCNTsの含有量が0.5μg/mL以上、s-SWCNTsと共役ポリマーとの質量比が1:10、s-SWCNTsとアクリジンオレンジ(AO)との質量比が1:10であるクロロホルム分散液を得た。
6)一般的なステップ2を参照して、引き上げに用いた分散液はステップ5)で得られたs-SWCNTsのクロロホルム分散液であり、濃度6μg/mLとし、その後、この分散液の上層に脱イオン水を加え、厚さ15mmの水相層を形成した。基底の降下速度(v
2)を1200μm/sに調整し、引き上げ速度(v
2)を300μm/sに調整した。
試験の結果、本実施例で製造された半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の走査型電子顕微鏡像は
図3(d)に示される。
【0096】
(実施例5)
1)一般的なステップ1.1に基づき、CN106478927Aを参照して、非線形共役ポリマーと単層カーボンナノチューブ原料(市販入手、アーク放電法により製造)の投入比を10:1に調整し、分散剤としてキシレンを使用した。超音波分散、遠心処理により、ポリマーで分散させた高純度s-SWCNTsのキシレン分散液を得た。
2)一般的なステップ1.2を参照して、第1の粉体を得た。
3)ステップ2)で得られた第1の粉体をアリザリンレッド(AR)のジクロロメタン溶液に質量濃度0.05mg/mLで再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入された高純度s-SWCNTsのジクロロメタン分散液を得た。
4)一般的なステップ1.4を参照して、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離アリザリンレッド(AR)分子が除去された高純度s-SWCNTs固体粉末(すなわち第2の粉体)を得た。
5)ステップ4)で得られた第2の粉体をクロロホルム溶媒に再分散させ、静電反発力が導入され、遊離アリザリンレッド(AR)分子が除去された高純度s-SWCNsクロロホルム分散液であって、s-SWCNsの含有量が0.5μg/mL以上、s-SWCNsと共役ポリマーとの質量比が1:50、s-SWCNsとアリザリンレッド(AR)分子との質量比が1:20であるs-SWCNsクロロホルム分散液を得た。
6)一般的なステップ2を参照して、引き上げに用いた分散液は、ステップ5)で得られたs-SWCNTsのクロロホルム分散液であり、濃度10μg/mLとし、その後、この分散液の上層に脱イオン水を加え、厚さ10mmの水相層を形成した。基底の降下速度(v
1)を500μm/sに調整し、引き上げ速度(v
2)を400μm/sに調整した。
試験の結果、本実施例で製造された半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の走査電子顕微鏡像は
図3(e)に示される。
【0097】
(実施例6)
1)一般的なステップ1.1に基づき、ポリフルオレン系共役ポリマー(CN101591219B参照)と単層カーボンナノチューブ原料(市販入手、アーク放電法により製造)の投入比を5:1に調整し、分散剤としてトルエンを使用した。超音波分散、遠心処理により、ポリマーで分散させた高純度s-SWCNTsのトルエン分散液を得た。
2)一般的なステップ1.2を参照して、第1の粉体を得た。
3)ステップ2)で得られた第1の粉体をヘミ硫酸プロフラビン(PFS)のジクロロメタン溶液に質量濃度0.03mg/mLで再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入された高純度s-SWCNTsのジクロロメタン分散液を得た。
4)一般的なステップ1.4を参照して、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離硫酸プレフラビン(PFS)分子が除去された高純度s-SWCNTs固体粉末(すなわち第2の粉体)を得た。
5)ステップ4)で得られた第2の粉体をジクロロメタン溶媒に再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離ヘミ硫酸プロフラビン(PFS)分子が除去された高純度s-SWCNTsのジクロロメタン分散液であって、s-SWCNTsの含有量が0.5μg/mL以上、s-SWCNTsと共役ポリマーとの質量比が1:100、s-SWCNTsとヘミ硫酸プロフラビン(PFS)分子との質量比が1:50であるジクロロメタン分散液を得た。
6)一般的なステップ2を参照して、引き上げに用いた分散液はステップ5)で得られたs-SWCNTsのジクロロメタン分散液であり、濃度4.5μg/mLとし、その後、この分散液の上層に脱イオン水と有機溶媒の混合溶液を加え、厚さ12mmの水相層を形成した。基底の降下速度(v
1)を800μm/sに調整し、引き上げ速度(v
2)を1000μm/sに調整した。
試験の結果、本実施例で製造された半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の走査型電子顕微鏡像は
図3(f)に示され、本実施例で得られた半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の配向性を偏光ラマンスペクトルで特徴付けた結果を
図5(a)及び
図5(b)に示す。
【0098】
(実施例7)
1)一般的なステップ1.1に基づき、ポリチオフェン系共役ポリマーと単層カーボンナノチューブ原料(市販、アーク放電法により製造)の投入比を4:3に調整し、分散剤としてキシレンを使用した。超音波分散、遠心処理により、ポリマーで分散させた高純度s-SWCNTsのキシレン分散液を得た。
2)一般的なステップ1.2を参照して、第1の粉体を得た。
3)ステップ2)で得られた第1の粉体を芳香族分子Pryene+のクロロホルム溶液に質量濃度0.018mg/mLで再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入された高純度s-SWCNTsのクロロホルム分散液を得た。
4)一般的なステップ1.4を参照し、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離芳香族分子Pryene+が除去された高純度s-SWCNTs固体粉末(すなわち第2の粉体)を得た。
5)ステップ4)で得られた第2の粉体をジクロロベンゼンに再分散させ、静電反発力がチューブ間に導入され、遊離芳香族分子Pryene+が除去された高純度s-SWCNsのジクロロベンゼン分散液であって、s-SWCNsの含有量が0.5μg/mL以上、s-SWCNsと共役ポリマーとの質量比が1:10、s-SWCNsと芳香族分子Pryene+との質量比が1:20であるジクロロベンゼン分散液を得た。
6)一般的なステップ2を参照して、引き上げに用いた分散液は、ステップ5)で得られたs-SWCNTsのジクロロベンゼン分散液であり、濃度5.3μg/mLとし、その後、この分散液の上層に脱イオン水と有機溶媒の混合溶液を加え、厚さ8mmの水相層を形成した。基底の降下速度(v
1)を1100μm/sに調整し、引き上げ速度(v
2)を500μm/sに調整した。
試験の結果、本実施例で製造された半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の走査電子顕微鏡像は
図3(g)に示される。
【0099】
(実施例8)
1)一般的なステップ1.1に基づき、ポリフェニレンエチレン系共役ポリマーと単層カーボンナノチューブ原料(市販入手、アーク放電法により製造)の投入比を4:3に調整し、分散剤としてキシレンを使用した。超音波分散、遠心処理により、ポリマーで分散させた高純度s-SWCNTsのキシレン分散液を得た。
2)一般ステップ1.2を参照して、第1の粉体を得た。
3)ステップ2)で得られた第1の粉体をオレンジGのクロロホルム溶液に質量濃度0.018mg/mLで再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入された高純度s-SWCNTsのクロロホルム分散液を得た。
4)一般的なステップ1.4を参照して、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離オレンジG分子が除去された高純度s-SWCNTs固体粉末(すなわち第2の粉体)を得た。
5)ステップ4)で得られた第2の粉体をジクロロエタン溶媒に再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離オレンジG分子が除去された高純度s-SWCNTsのジクロロエタン分散液であって、s-SWCNTsの含有量が0.5μg/mL以上、s-SWCNTsと共役ポリマーとの質量比が1:10、s-SWCNTsとオレンジG分子との質量比が1:20であるジクロロエタン分散液を得た。
6)一般的なステップ2を参照して、引き上げに用いた分散液はステップ5)で得られたs-SWCNTsのジクロロエタン分散液であり、濃度5.5μg/mLとした。その後、この分散液の上層に脱イオン水と無機塩の混合溶液を加え、厚さ6mmの水相層を形成した。基底の降下速度(v
1)を200μm/sに調整し、引き上げ速度(v
2)を1μm/sに調整した。
試験の結果、本実施例で製造された半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の走査型電子顕微鏡像は
図3(h)に示される。
【0100】
(実施例9)
1)一般的なステップ1.1に基づき、CN105883749Aを参照して、主鎖にねじれ構造を有する共役ポリマーと単層カーボンナノチューブ原料(市販入手、アーク放電法により製造)の投入比を4:3に調整し、分散剤としてキシレンを使用した。超音波分散、遠心処理により、ポリマーで分散させた高純度s-SWCNTsのキシレン分散液を得た。
2)一般的なステップ1.2を参照して、第1の粉体を得た。
3)ステップ2)で得られた第1の粉体をアクリジンオレンジ(AO)のクロロホルム溶液に質量濃度0.018mg/mLで再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入された高純度s-SWCNTsのクロロホルム分散液を得た。
4)一般的なステップ1.4を参照して、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離アクリジンオレンジ(AO)分子が除去された高純度s-SWCNTs固体粉末(すなわち第2の粉体)を得た。
5)ステップ4)で得られた第2の粉体をクロロベンゼンに再分散させ、チューブ間に静電反発力が導入され、遊離アクリジンオレンジ(AO)分子が除去された高純度s-SWCNTsのクロロベンゼン分散液であって、s-SWCNTsの含有量が0.5μg/mL以上、s-SWCNTsと共役ポリマーとの質量比が1:0.1、s-SWCNTsとアクリジンオレンジ(AO)分子との質量比が1:0.05であるクロロベンゼン分散液を得た。
6)一般的なステップ2を参照して、引き上げに用いた分散液はステップ5)で得られたs-SWCNTsのクロロベンゼン分散液であり、濃度6.3μg/mLとした。その後、この分散液の上層に脱イオン水を加え、厚さ10mmの水相層を形成した。基底の降下速度(v
1)を2000μm/sに調整し、引き上げ速度(v
2)を5000μm/sに調整した。
試験の結果、本実施例で製造された半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜の走査型電子顕微鏡像は
図3(i)に示される。
【0101】
また、本発明者は、実施例1~実施例9の方式を参照して、本明細書に記載された他の原料及び条件等で試験を行ったところ、引き上げ方向に整合的に配列させたカーボンナノチューブ配向膜を製造した。
【0102】
本願の上記実施例により製造された半導体型単層カーボンナノチューブ配向膜を用いて、薄膜トランジスタ、電界効果トランジスタ、メモリ、集積回路デバイス等の電子デバイス、光起電力デバイス、光検出器等の光電デバイス、化学センサ、バイオセンサ等のセンサデバイスを製造することができる。対応するデバイス製造方法はいずれも業界で知られているものであってもよい。これらのデバイスはいずれも改善された光、電気性能などを示している。
【0103】
なお、以上の前記実施例の各技術的特徴は任意に組み合わせることができ、説明の便宜上、上記実施例における各技術的特徴のすべての可能な組み合わせについて説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、すべて本明細書に記載された範囲であると考えられる。
【0104】
前記実施例は、本願のいくつかの実施形態のみを表しており、その説明はより具体的かつ詳細であるが、本願の範囲を限定するものとして理解することはできない。なお、当業者にとっては、本願の構想を逸脱することなく、いくつかの変形及び改良を行うことができ、これらはすべて本願の特許範囲に属する。したがって、本願の特許の特許範囲は、添付の特許請求の範囲に準じなければならない。
【0105】
(付記)
(付記1)
選択されたカーボンナノチューブと、
前記選択されたカーボンナノチューブに特異的に結合するカーボンナノチューブ分散剤としてのポリマーと、
前記選択されたカーボンナノチューブに結合し、前記選択されたカーボンナノチューブの表面に同種の電荷を持たせる芳香族分子と、
少なくとも分散液の残りの成分と配合して均一な分散液を形成する有機溶媒と、を含む、
ことを特徴とするカーボンナノチューブ分散液。
【0106】
(付記2)
前記ポリマーは、選択されたカーボンナノチューブに非共有結合している、
ことを特徴とする付記1に記載の分散液。
【0107】
(付記3)
前記ポリマーは共役ポリマーから選択される、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の分散液。
【0108】
(付記4)
前記ポリマーは、ポリカルバゾール、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンエチレンの少なくとも1つのホモポリマー又はコポリマーを含み、前記コポリマーの共重合単位が、ベンゼン、チオフェン、ピリジン、トリアリールアミン、ベンゾチアジアゾールのうちのいずれか1種、又はいずれか1種のアルキル化誘導体を含む、
ことを特徴とする付記3に記載の分散液。
【0109】
(付記5)
前記選択されたカーボンナノチューブは半導体型単層カーボンナノチューブである、
ことを特徴とする付記1に記載の分散液。
【0110】
(付記6)
前記芳香族分子の構造式が、式(I)~式(V)のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする付記1に記載の分散液。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
(ここで、Xは、SO
4
2-、SO
3
2-、CO
3
2-、NO
3
-又はCl
-を含み、YはClを含み、ZはNa
+又はK
+を含む。)
【0111】
(付記7)
前記芳香族分子は、次のうちのいずれか1種の化合物を含む、
ことを特徴とする付記6に記載の分散液。
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【0112】
(付記8)
前記有機溶媒は、ハロゲン化アルカン、芳香族炭化水素及びハロゲン化芳香族炭化水素のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含み、好ましくは、前記ハロゲン化アルカンは、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンのうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含み、好ましくは、前記芳香族炭化水素は、トルエン及び/又はキシレンを含み、好ましくは、前記ハロゲン化芳香族炭化水素は、クロロベンゼン及び/又はジクロロベンゼンを含む、
ことを特徴とする付記1に記載の分散液。
【0113】
(付記9)
前記分散液中の選択されたカーボンナノチューブの含有量が0.5μg/mL以上である、
ことを特徴とする付記1に記載の分散液。
【0114】
(付記10)
前記選択されたカーボンナノチューブの平均長さが100~3000nmである、
ことを特徴とする付記1又は9に記載の分散液。
【0115】
(付記11)
前記カーボンナノチューブと前記ポリマーとの質量比が1:0.001~1:100、好ましくは1:0.01~1:50、特に好ましくは1:0.1~1:10である、
ことを特徴とする付記1に記載の分散液。
【0116】
(付記12)
前記カーボンナノチューブと前記芳香族分子との質量比が1:0.005~1:50、好ましくは1:0.05~1:20、特に好ましくは1:0.1~1:10である、
ことを特徴とする付記1に記載の分散液。
【0117】
(付記13)
少なくとも、カーボンナノチューブ粉体原料と、カーボンナノチューブ分散剤としてのポリマーと、溶媒とを混合して第1の分散液を形成し、前記ポリマーと前記選択されたカーボンナノチューブとを特異的に結合させた後、表面にポリマーが結合したカーボンナノチューブを前記第1の分散液から分離するステップと、
少なくとも前記表面にポリマーが結合したカーボンナノチューブ、芳香族分子、及び、溶媒を混合して第2の分散液を形成し、前記芳香族分子と前記選択されたカーボンナノチューブを結合させ、前記選択されたカーボンナノチューブの表面に同種の電荷を持たせた後、表面にポリマー及び芳香族分子が結合したカーボンナノチューブを前記第2の分散液から分離するステップと、
前記表面にポリマー及び芳香族分子が結合したカーボンナノチューブを有機溶媒に分散させて、前記カーボンナノチューブ分散液を形成するステップと、を含む、
ことを特徴とする付記1~12のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
【0118】
(付記14)
前記第1の分散液から分離された、表面にポリマーが結合したカーボンナノチューブを洗浄して、遊離ポリマーを除去するステップをさらに含む、
ことを特徴とする付記13に記載の製造方法。
【0119】
(付記15)
前記第2の分散液から分離された、表面にポリマー及び芳香族分子が結合したカーボンナノチューブを洗浄して、遊離芳香族分子を除去するステップをさらに含む、
ことを特徴とする付記13に記載の製造方法。
【0120】
(付記16)
前記カーボンナノチューブ粉体原料は、アーク放電法、プラズマ放電法、レーザーアブレーション法又は化学気相堆積法により製造されたカーボンナノチューブ粉体を含む、
ことを特徴とする付記13に記載の製造方法。
【0121】
(付記17)
選択されたカーボンナノチューブと、
カーボンナノチューブ分散剤のポリマーとして使用され、前記選択されたカーボンナノチューブに特異的に結合するポリマーと、
前記選択されたカーボンナノチューブに結合し、前記選択されたカーボンナノチューブの表面に同種の電荷を持たせる芳香族分子と、
を含むことを特徴とする粉体材料。
【0122】
(付記18)
前記ポリマーは、選択されたカーボンナノチューブに非共有結合している、
ことを特徴とする付記17に記載の粉体材料。
【0123】
(付記19)
前記ポリマーは共役ポリマーから選択される、
ことを特徴とする付記18に記載の粉体材料。
【0124】
(付記20)
前記ポリマーは、ポリカルバゾール、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンエチレンの少なくとも1種のホモポリマー又はコポリマーを含み、前記コポリマーの共重合単位が、ベンゼン、チオフェン、ピリジン、トリアリールアミン、ベンゾチアジアゾールから選択されるいずれか1種又は2種以上の組み合わせ及び/又はそのアルキル化誘導体である、
ことを特徴とする付記18に記載の粉体材料。
【0125】
(付記21)
前記選択されたカーボンナノチューブは、半導体型単層カーボンナノチューブである、
ことを特徴とする付記17に記載の粉体材料。
【0126】
(付記22)
前記芳香族分子の構造式は、式(I)~式(V)のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする付記17に記載の粉体材料。
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
(ここで、XはSO
4
2-、SO
3
2-、CO
3
2-、NO
3
-又はCl
-を含み、YはClを含み、ZはNa
+又はK
+を含む。)
【0127】
(付記23)
前記芳香族分子は、次のうちのいずれか1種の化合物を含む、
ことを特徴とする付記22に記載の粉体材料。
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【0128】
(付記24)
前記粉体材料中のカーボンナノチューブとポリマーとの質量比が1:0.001~1:100、好ましくは1:0.01~1:50、特に好ましくは1:0.1~1:10である、
ことを特徴とする付記17に記載の粉体材料。
【0129】
(付記25)
前記粉体材料中の選択されたカーボンナノチューブと芳香族分子との質量比が1:0.005~1:50、好ましくは1:0.05~1:20、特に好ましくは1:0.1~1:10である、
ことを特徴とする付記17に記載の粉体材料。
【0130】
(付記26)
前記選択されたカーボンナノチューブの平均長さが100~3000nmである、
ことを特徴とする付記17に記載の粉体材料。
【0131】
(付記27)
水と相溶しない付記1~12のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ分散液を提供するステップと、
前記カーボンナノチューブ分散液を有機相とし、前記有機相上に水相層を導入し、水相層と有機相層からなる2層液相系を形成するステップと、
基底を前記2層液相系に部分的又は完全に挿入した後、前記基底を2層液相系から引き上げ、前記基底の表面にカーボンナノチューブ配向膜を形成するステップと、を含む、
ことを特徴とするカーボンナノチューブ配向膜の製造方法。
【0132】
(付記28)
前記2層液相系における水相層と有機相層との界面線が直線に近い、
ことを特徴とする付記27に記載の製造方法。
【0133】
(付記29)
200~2000μm/s、好ましくは500~1500μm/s、特に好ましくは800~1000μm/sの速度で前記基底を前記2層液相系に挿入するステップを含む、
ことを特徴とする付記27に記載の製造方法。
【0134】
(付記30)
1~5000μm/s、好ましくは50~1000μm/s、特に好ましくは200~500μm/sの速度で前記基底を前記2層液相系から引き上げるステップを含む、
ことを特徴とする付記27に記載の製造方法。
【0135】
(付記31)
前記水相層は純水又は水溶液を含み、好ましくは、前記水溶液は無機塩及び/又は有機溶媒をさらに含む、
ことを特徴とする付記27に記載の製造方法。
【0136】
(付記32)
前記水相層の厚さが1~15mmである、
ことを特徴とする付記27に記載の製造方法。
【0137】
(付記33)
前記基底の材質は、剛性材料及び/又は可撓性材料を含み、好ましくは、前記剛性材料は、酸化シリコンウェハ、石英ウェハ、又はサファイア基板を含み、好ましくは、前記可撓性材料は、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート又はポリイミドを含む、
ことを特徴とする付記27~32のいずれか1つに記載の製造方法。
【0138】
(付記34)
付記27~32のいずれか1つに記載の方法により製造されたカーボンナノチューブ配向膜。
【0139】
(付記35)
前記膜は、連続的に均一に配向して配列されたカーボンナノチューブ膜である、
ことを特徴とする付記34に記載のカーボンナノチューブ配向膜。
【0140】
(付記36)
前記カーボンナノチューブ膜中のカーボンナノチューブの配向配列方向が引き上げ方向と一致している、
ことを特徴とする付記34又は35に記載のカーボンナノチューブ配向膜。
【0141】
(付記37)
電子デバイス、光電子デバイス又はセンサデバイスの製造における、付記34~36のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ配向膜の使用。
【0142】
(付記38)
付記34~36のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ配向膜を備える装置。
【0143】
(付記39)
前記装置は、電子デバイス、光電子デバイス又はセンサデバイスを含み、好ましくは、前記電子デバイスは、薄膜トランジスタ、電界効果トランジスタ、メモリ又は集積回路デバイスを含み、好ましくは、前記光電子デバイスは、光起電力デバイス又は光検出器を含み、好ましくは、前記センサは、化学センサ又はバイオセンサを含む、
付記38に記載の装置。