(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】耐熱性ワイヤーハーネス用コルゲートチューブ
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20220106BHJP
F16L 11/11 20060101ALI20220106BHJP
B29D 23/18 20060101ALI20220106BHJP
B05D 1/16 20060101ALI20220106BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20220106BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20220106BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20220106BHJP
H01B 13/22 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H02G3/04 068
F16L11/11
B29D23/18
B05D1/16
B05D5/00 E
B05D7/00 K
B05D7/02
H01B13/22 Z
(21)【出願番号】P 2016085725
(22)【出願日】2016-04-22
【審査請求日】2019-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】396002611
【氏名又は名称】株式会社ニッセイ エコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098556
【氏名又は名称】佐々 紘造
(72)【発明者】
【氏名】稲村 道雄
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-139692(JP,A)
【文献】実開昭56-071014(JP,U)
【文献】実開平05-025237(JP,U)
【文献】特開2004-312838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
F16L 11/11
B29D 23/18
B05D 1/16
B05D 5/00
B05D 7/00
B05D 7/02
H01B 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポ
リプロピレン製コルゲートチューブの外表面若しくは内部又は両者の全長にわたり全面に植毛することを特徴とする自動車のワイヤーハーネス用コルゲートチューブへの耐熱性付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤーハーネス用コルゲートチューブに関する。さらに詳しくは、耐熱性にすぐれたワイヤーハーネス用コルゲートチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のワイヤーハーネス外装にはコルゲートチューブが多く用いられている。自動車用コルゲートチューブはプラスチック製の蛇腹チューブで、他の自動車部品同様耐熱性が要求される。コルゲートチューブは、性能とコストのバランスからポリプロピレン製やポリアミド製が多く用いられるが、さらに耐熱性の優れたものが求められている。
コルゲートチューブの耐熱性の向上手段としては、従来は材料となる樹脂の耐熱性を向上させる方法が大部分である(例えば特許文献1、2)。しかしながら、耐熱性樹脂は一般には成形性が悪く、コルゲートチューブを製造するのは容易ではなかった。また、材料コストや成形コストが高いという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-162039
【文献】特開2011-202069
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特別な耐熱性樹脂を用いず、従来使用されているポリプロピレンのような汎用樹脂製のコルゲートチューブの耐熱性を向上させる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、コルゲートチューブの耐熱性を向上させる方法について種々検討した結果、コルゲートチューブに植毛することにより、驚くべきことに実用的耐熱性が飛躍的に向上することを見出し、本発明に到達した
即ち、本発明は以下のとおりである。
1.その外表面及び/又は内部の全長にわたり全面に植毛されてなるコルゲートチューブ。
2.材料がポリプロピレン製又はポリアミド製である前記1のコルゲートチューブ。
3.コルゲートチューブの外表面及び/又は内部の全長にわたり全面に植毛することを特徴とする耐熱性コルゲートチューブの製造方法。
4.コルゲートチューブの外表面及び/又は内部の全長にわたり全面に植毛することを特徴とするコルゲートチューブへの耐熱性付与方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の植毛されたコルゲートチューブは、植毛されてないものに比較して飛躍的に耐熱性が向上する。また、外表面に植毛した場合は副次的な効果としてコルゲートチューブと車両部材の接触により発生する騒音が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の難燃ポリプロピレン製コルゲートチューブと従来のコルゲートチューブを170℃の乾燥機で30分処理した後の写真である。
【
図2】本発明の難燃ポリプロピレン製コルゲートチューブと従来のコルゲートチューブを150℃の乾燥機で78.5時間処理した後の写真である。
【
図3】本発明の難燃ポリアミド製コルゲートチューブと従来のコルゲートチューブを200℃の乾燥機で97.5時間処理した後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を説明する。
本発明のコルゲートチューブは、従来よく用いられているポリプロピレンに代表される汎用プラスチック製等のコルゲートチューブの全長について外表面及び/又は内部全面にわたり植毛されてなる。もちろん、ポリアミドのようなある程度の耐熱性を有する樹脂製のコルゲートチューブでも差し支えない。植毛はコルゲートチューブの外側若しくは内側又は両面の全長にわたり全面になされている必要がある。植毛されていない部分が一部あると、製品の耐熱性はその部分の耐熱性で決まってしまうので、実用的な耐熱性の製品とならない。
【0009】
コルゲートチューブの製法は常法により成形される。例えば、押出成形により、コルゲート用の成形金型を用いて連続的に製造することができる。
植毛は、静電植毛で行うのが一般的である。静電植毛は数万ボルトの静電気を利用して、パイルという短繊維を、表面に飛翔させて植え付ける技術で、プラスチックの表面改質としてよく行われており、本発明においてもこのような方法を適用することができる。
【0010】
外表面に植毛するには、例えば、まずコルゲートチューブの表面全面に接着剤を塗布する。塗布方法は特に制限はないが、コルゲートチューブは凹凸があるので、スプレーコートが一般的である。接着剤は、コルゲートチューブ本体材料や使用するフロックに合わせて、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系等が適宜選択される。使用するパイルは、ナイロン、レーヨン、ポリエステル等で特に制限はないが、耐熱性に優れたナイロンが好ましい。表面にパイルが均一に付着するように、コルゲートチューブを回転させつつ植毛してもよい。所望量のパイルが付着したら、乾燥したのち、余分のパイルを除毛し、本発明の植毛コルゲートチューブを得ることができる。
【0011】
コルゲートチューブの成形と植毛は別々の工程として、分離して行ってもよいが、インラインで連続して行ってもよい。この場合は接着剤素使用せずに樹脂が溶融状態で植毛することができる。
コルゲートチューブ内部に植毛するときも、このようなインラインで植毛できる。例えば押出し成形時においてチューブを膨らますために内部に送る空気にパイルを混入させて植毛する。
【0012】
本発明の植毛されてなるコルゲートチューブは、耐熱性が優れており、主として自動車のハーネスの外装用として用いられる。自動車のハーネスは目につかない個所に広く張り巡らされており、耐熱性が要求されるが、植毛によりコルゲートチューブの耐熱性が一段と向上する。また、近年急速に伸びているハイブリッド車や、さらには電気自動車、燃料電池車等は従来のガソリンエンジン車に比してエンジン音が著しく軽減されているが、逆に今までエンジン音にかき消されていた音が顕在化し、耳障りになってきている。その一つに、コルゲートチューブがドアや床と接触することにより生じる雑音があるが、本発明の外表面に植毛したコルゲートチューブを用いるとそのような音が軽減される。
【0013】
また、ワイヤーハーネス外装用コルゲートチューブは、配線しやすくなるように色分けされることがあるが、色の異なるコルゲートチューブを製造するには、押出機の樹脂替えをしなければならない。しかしながら押出機は連続的に運転されるため、完全に樹脂を置き換えるのには長時間要し、その間生産されるものは製品とならず廃棄される。しかし、植毛であれば使用するパイルの色を変えるだけであり、簡単に各種色のコルゲートチューブを製造できる。
本発明の植毛コルゲートチューブは、植毛していないものに比べて、耐熱性が格段に向上する。例えばポリプロピレン製のコルゲートチューブの場合、170℃、30分の雰囲気下で、植毛していない従来のものは著しく変形するが、本発明の植毛コルゲートチューブは、殆ど変形が見られない。
【実施例1】
【0014】
難燃ポリプロピレン製の黒色コルゲートチューブを押出成形により製造した。このコルゲートチューブに、ナイロンパイルを全長にわたり全外表面に静電植毛した。
得られた本発明の植毛コルゲートチューブと比較のために植毛しないコルゲートチューブを170℃の乾燥機で30分処理した。結果を
図1に写真で示す。図中、実施例Aは本発明の植毛コルゲートチューブ、比較例aは非植毛コルゲートチューブで、実施例Aは殆ど変形しなかったが、比較例aは熱により管の形状をとどめず、板状に変形した。
【0015】
実施例2
難燃性ポリプロピレン製コルゲートチューブに、色の異なるナイロンパイルを実施例1と同様に全長、全外表面に植毛した。得られた本発明の植毛コルゲートチューブと比較のために植毛しないコルゲートチューブを150℃の乾燥機で78.5時間処理した。結果を
図2に写真で示す。比較例bは非植毛、実施例B1は黄色の植毛、実施例B2は赤の植毛、実施例B3は黒の植毛である。
図2の左上は処理前の写真、右上は処理後の写真、下は同じく処理後を斜めから撮った写真である。本発明の植毛コルゲートチューブはいずれも色の変化は認められたが、殆ど変形しなかった。これに対し、植毛しないコルゲートチューブは熱劣化により破壊された。
【0016】
実施例3
難燃性ポリアミド製コルゲートチューブに、色の異なるナイロンパイルを実施例1と同様に全長、全外表面に植毛した。得られた本発明の植毛コルゲートチューブと比較のために植毛しないコルゲートチューブを200℃の乾燥機で97.5時間処理した。結果を
図3に写真で示す。比較例cは非植毛、実施例C1は黄色の植毛、実施例C2は赤の植毛である。
図3の左上は処理前の写真、右上は処理後の写真、下は同じく処理後を斜めから撮った写真である。本発明の植毛コルゲートチューブはいずれも色の変化は認められたが、殆ど変形しなかった。これに対し、植毛しないコルゲートチューブは熱劣化により破壊された。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の植毛されてなるコルゲートチューブは耐熱性が格段に優れ、ワイヤーハーネス用外装材として好適である。