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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】慣性計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5776 20120101AFI20220106BHJP
   G01P 21/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01C19/5776
G01P21/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017020820
(22)【出願日】2017-02-08
(65)【公開番号】P2017142249
(43)【公開日】2017-08-17
【審査請求日】2019-08-09
(31)【優先権主張番号】1602202.2
(32)【優先日】2016-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508296554
【氏名又は名称】アトランティック・イナーシャル・システムズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Atlantic Inertial Systems Limited
【住所又は居所原語表記】Clittaford Road, Southway, Plymouth, PL6 6DE, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エム.グレゴリー
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-279324(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0208225(US,A1)
【文献】特開2016-197017(JP,A)
【文献】特開2009-150655(JP,A)
【文献】特開2009-168542(JP,A)
【文献】特開2005-257623(JP,A)
【文献】特開2005-172672(JP,A)
【文献】特開2002-277251(JP,A)
【文献】米国特許第09217639(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/5776
G01P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性計測装置であって、
慣性計測値を出力するように配置された少なくとも一つのMEMSベースの慣性センサと、各MEMSベースの慣性センサに空間的に関連する一次温度センサであって、前記各MEMSベースの慣性センサに隣接して位置づけられた、物理的に分離された温度センサである、または、慣性センサそれ自体によって形成された、一次温度センサと、前記一次温度センサと異なる空間的位置をその各々が有するとともに、前記各MEMSベースの慣性センサの周囲の互いに異なる空間的位置にその各々が配置された、複数の二次温度センサと、を備えており、前記一次温度センサ及び二次温度センサの各々が、異なる温度計測値を出力するように配置されており、前記異なる温度計測値を処理して空間的温度勾配出力を決定するように構成されたプロセッサを備え、前記プロセッサが、さらに、前記空間的温度勾配出力に基づいて、慣性計測値のための補正または関連するパラメトリック誤差を決定するように構成され、
前記少なくとも一つのMEMSベースの慣性センサが、MEMS基板を備え、少なくとも一つの二次温度センサが、前記MEMS基板に位置付けられており、
さらに、
前記少なくとも一つのMEMSベースの慣性センサが、集積回路を備えており、少なくとも一つの二次温度センサが、前記集積回路の一部を形成する、または、
前記プロセッサが、プリント回路基板に位置付けられており、少なくとも一つの二次温度センサが、同一のプリント回路基板上に位置付けられる、または、
少なくとも一つの二次温度センサが、ホストシステムのための電気コネクタにまたはそこに接触して位置付けられる、
ことを備えた、慣性計測装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つのMEMSベースの慣性センサが、共振周波数で共振するように駆動される振動構造ジャイロスコープを備えており、前記一次温度センサが、前記共振周波数に基づいて温度計測値を出力するように配置された、請求項1に記載の慣性計測装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つのMEMSベースの慣性センサが、加速度計を備えており、前記一次温度センサが、前記加速度計の空間的位置におけるまたはその付近の温度を計測するように配置された、請求項1または2に記載の慣性計測装置。
【請求項4】
MEMSベースの慣性計測装置における熱勾配の補正方法であって、
少なくとも一つのMEMSベースの慣性センサによる慣性計測出力を受信することと、
各MEMSベースの慣性センサに空間的に関連する一次温度センサによる温度計測出力を受信することであって、前記各MEMSベースの慣性センサに隣接して位置づけられた、物理的に分離された温度センサである、または、慣性センサそれ自体によって形成された、一次温度センサによる温度計測出力を受信することと、
前記一次温度センサと異なる空間的位置をその各々が有するとともに、前記各MEMSベースの慣性センサの周囲の互いに異なる空間的位置にその各々が配置された複数の二次温度センサによる異なる温度計測出力を受信することと、
前記異なる温度計測を処理して空間的温度勾配出力を決定することと、
前記空間的温度勾配出力に基づいて、慣性計測値のための補正または関連するパラメトリック誤差を決定することと、
を備え、
前記少なくとも一つのMEMSベースの慣性センサが、MEMS基板を備え、少なくとも一つの二次温度センサが、前記MEMS基板に位置付けられており、
さらに、
前記少なくとも一つのMEMSベースの慣性センサが、集積回路を備えており、少なくとも一つの二次温度センサが、前記集積回路の一部を形成する、または、
ロセッサが、プリント回路基板に位置付けられており、少なくとも一つの二次温度センサが、同一のプリント回路基板上に位置付けられる、または、
少なくとも一つの二次温度センサが、ホストシステムのための電気コネクタにまたはそこに接触して位置付けられる、
ことを備えた、慣性計測装置における熱勾配の補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、慣性計測装置(IMU)及び慣性計測装置における熱勾配の補正方法に関する。特に、排他的ではないが、本開示の実施例は、熱傾斜補正スキームを使用するIMUに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、慣性計測装置(inertial measurement unit)(IMU)は、例えば、一つ以上の加速軸及び/または角速度を計測するための加速度計及び/またはジャイロスコープなどの複数の慣性センサを備える。例えば、6自由度の検出システムを提供するIMUは、三つの直交加速度計軸及び三つのジャイロスコープを備え得る。小型の高性能IMUは、普通、約50mmのみの寸法を有するパッケージに統合された高度MEMS(微小電気機械システム)ジャイロスコープ及び加速度計を備える。そのようなIMUは、-40℃~+85℃の温度範囲にわたって動作することが期待される。
【0003】
複数の検出システムにおける各検出軸は、MEMSリング共振器ジャイロスコープなどの慣性センサそれ自体と、離散コンポーネントを備えるASICまたはアナログ/デジタルループ電子回路などの、センサを駆動するのに使用される制御電子回路と、サーミスタまたはセンサそれ自体、例えば、ジャイロスコープ共鳴周波数からの出力などの温度センサと、を備える。従来の較正及び試験中では、慣性システムは、安定的な熱環境における温度範囲にさらされ、この安定的な熱状態において、バイアス誤差及びスケール因子誤差などのパラメトリック誤差が観測されることがある。それ故に、動作及び試験中のそのような誤差を除去するために、補正を適用することができる。
従来、下記特許文献1,2に開示されるように、ジャイロスコープの温度勾配の補正が行われる。
IMUにおける慣性センサは、大抵、それらの動作温度範囲にわたって較正されるが、通常、熱勾配に起因するウォームアップ性能ドリフト誤差及びヒステリシスを受ける。検出構造における温度勾配は、バイアス及びスケール因子などの性能パラメータに影響を与える応力/ひずみ特性を招く。検出要素と、制御電子回路と、温度検出要素との間の温度差は、較正及び試験中には小さくあり得、または一貫性があり得、特定の熱環境条件及び起動ルーチンを満たすときには、最小誤差しか観測されない。しかしながら、大きな自己発熱効果を伴う不安定的な熱環境または急速起動シナリオにおける動作中では、コンポーネント間の温度の相違は、慣性センサ性能において準最適な熱補正及び関連するパラメトリック誤差を招く。そのような誤差は、多くの場合、スイッチオンから定常状態熱動作へのジャイロスコープまたは加速度計のバイアスシフトについての「ウォームアップドリフト」、または熱チャンバまたはより高いレベルの動作システムにおいて熱的に傾斜したときの出力の「ヒステリシス」として特徴づけられる。
【0004】
【文献】米国特許第5416585号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2574879号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイアス及びスケール因子などの性能パラメータに熱勾配が影響を及ぼし得るような不安定的な熱環境でさえも信頼的に動作することができるIMUに対する要求が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一の態様に従い、慣性計測値を出力するように配置された少なくとも一つの慣性センサと、各慣性センサに空間的に関連し、温度計測値を出力するように配置された一次温度センサと、出力を受信するプロセッサと、を備えた慣性計測装置が提供される。プロセッサは、温度計測値を時間に関して微分して時間的温度勾配出力を決定するように配置される。
【0007】
それ故に、この開示に従い、既存の温度センサ(複数可)を使用して、絶対温度のみならず、慣性計測装置(IMU)の性能をさらに改善するための熱勾配も観測することができる。この手法は、慣性センサ及びIMUに採用される従来の較正手法とは異なる。つまり、デバイスにおける温度センサ(複数可)が、温度出力だけではなく、時間的温度勾配を決定するのにも使用される。そのいずれかまたは両方は、パラメトリック補正に使用することができる。
【0008】
少なくともいくつかの実施例では、プロセッサは、微分した温度計測値をフィルタリング及び/または平滑化して、時間的温度勾配出力を決定するように配置される。例えば、微分した温度計測値に適切なフィルタを適用して、この出力を、補正アルゴリズムへの時間的温度勾配入力として使用することができる。例えば、微分した温度計測値に適切な平滑化動作を適用して、この出力を、補正アルゴリズムへの時間的温度勾配入力として使用してもよい。
【0009】
さらに、熱勾配観測についての空間的手法を適用して、所与のIMUが経験する温度勾配により良い洞察を与えることができる。それ故に、好ましい実施例では、慣性計測装置は、一次温度センサと異なる空間的位置をその各々が有し、異なる温度計測値を出力するように配置された一つ以上の二次温度センサをさらに備える。プロセッサは、異なる温度計測値を処理して空間的温度勾配出力を決定するように配置される。この手法は、較正中に使用されて、IMUにおける熱勾配によって特異的に誘発されるパラメトリック誤差を決定することができる追加の空間的温度勾配出力を提供する。
【0010】
さらに、好ましい実施例では、プロセッサは、さらに、時間的温度勾配出力及び/または空間的温度勾配出力に基づいて、慣性計測値のための補正または関連するパラメトリック誤差を決定するように配置される。関連するパラメトリック誤差は、バイアス誤差及びスケール因子誤差を含む一つ以上のパラメトリック誤差を包含し得る。バイアス誤差が、加速または回転のないときの慣性センサによる慣性計測出力であることが理解される。スケール因子誤差が、真の入力(例えば、加速または回転)の変化に対する、慣性計測出力の変化の比であることが理解される。
【0011】
時間的及び空間的手法の両方が、較正中に使用されて、好ましくは、従来の温度出力に関連して、熱勾配によって特異的に誘発されるパラメトリック誤差を決定することができる温度勾配出力を提供する。
【0012】
空間的手法をそれ自体で使用できることも認識される。それ故に、本開示の第二の態様に従い、慣性計測値を出力するように配置された少なくとも一つの慣性センサと、各慣性センサに空間的に関連する一次温度センサと、一次温度センサと異なる空間的位置をその各々が有する一つ以上の二次温度センサと、を備えた慣性計測装置が提供される。一次温度センサ及び二次温度センサの各々は、異なる温度計測値を出力するように配置されており、プロセッサは、異なる温度計測値を処理して空間的温度勾配出力を決定するように配置される。
【0013】
それ故に、この開示に従い、複数の(例えば、一次及び一つ以上の二次)温度センサからの瞬間的な出力を観測して、それらの間の熱勾配を推測することができる。この手法は、理想的には、観測された温度と、このデータをシステムのすべての部分において推測された温度とリンクする方法についてのより深い理解とを関連づけるために、例えば、熱モデリングを通じて、IMUシステム設計の理解と結び付けられる。
【0014】
この開示の任意の態様のさまざまな実施例において、少なくとも一つの慣性センサは、MEMSベースの慣性センサを備え得る。
【0015】
一次温度センサは、慣性センサに隣接して位置付けられた、それと物理的に分離された温度センサ(例えば、サーミスタ)であっても良いし、一次温度センサは、慣性センサそれ自体によって形成されても良い。特に、慣性センサの物理的特徴を観測することによって温度を計測することができる。例えば、振動構造ジャイロスコープを備えた慣性センサは、共振周波数の変化に基づいて温度計測値を出力する固有の能力を有する。それ故に、いくつかの実施例において、慣性センサは、共振するように駆動される振動構造ジャイロスコープを備えており、一次温度センサは、共振周波数に基づいて温度計測値を出力するように配置される。そのような振動構造ジャイロスコープは、リング共振器ジャイロスコープまたは音叉ジャイロスコープの形態をとってもよい。
【0016】
いくつかの他の実施例では、慣性センサは、加速度計を備えており、一次温度センサは、加速度計の空間的位置におけるまたはその付近の温度を計測するように配置される。例えば、一次温度センサは、加速度計に隣接して位置付けられたサーミスタを備え得る。
【0017】
複数の慣性センサを備えた慣性計測装置は、少なくとも一つの振動構造ジャイロスコープ及び少なくとも一つの加速度計を備え得る。慣性センサの各々は、空間的に関連するそれぞれの一次温度センサを有することができる。
【0018】
空間的温度勾配出力を決定することの利益を完全に実現するために、二次温度センサの適当な構成を、完全動作温度範囲にわたる(正及び負両方の)熱勾配の十分な観測が可能な較正プロセスと一緒にIMU設計に組み込んでよい。一つ以上の二次温度センサは、慣性計測装置のどこにでも、例えば、センサ構造内部の適切な位置、電子回路及び観測された熱勾配についての洞察を与える他の位置に、空間的に位置付け得る。
【0019】
少なくともいくつかの実施例では、少なくとも一つの慣性センサは、MEMS基板を備えており、少なくとも一つの二次温度センサは、MEMS基板に位置付けられる。例えば、二次温度センサは、MEMS基板の表面上の金属化されたトラッキングの形態のサーミスタを備え得る。そのような配置では、温度に伴う抵抗率変化の観測を通じて、温度を計測し得る。
【0020】
少なくともいくつかの実施例では、代替的にまたは追加的に、少なくとも一つの慣性センサは、集積回路を備えており、少なくとも一つの二次温度センサが、集積回路の一部を形成する。例えば、二次温度センサは、ピックオフ増幅器またはASIC(特定用途向け集積回路)の形成部分などの電子コンポーネント内部またはそれと並ぶサーミスタを備え得る。
【0021】
少なくともいくつかの実施例では、代替的にまたは追加的に、プロセッサは、プリント回路基板に位置付けられており、少なくとも一つの二次温度センサは、同一のプリント回路基板上に位置付けられる。
【0022】
少なくともいくつかの実施例では、代替的にまたは追加的に、慣性計測装置は、ホストシステムのための電気コネクタを備えてもよい。少なくとも一つの二次温度センサが、電気コネクタにまたはそこに接触して位置付けられる。例えば、二次温度センサは、ホストシステムとのピンコネクタに配置されたサーミスタを備え得る。
【0023】
複数の慣性センサを備えた慣性計測装置において、慣性センサの各々は、一つ以上の関連する二次温度センサのそれぞれのセットを有し得る。または、少なくともいくつかの二次温度センサは、二つ以上の慣性センサについての空間的温度勾配出力を決定するのに使用される温度計測値を出力し得る。
【0024】
本開示のさらなる態様に従い、慣性計測装置における熱勾配の補正方法が提供される。この方法は、少なくとも一つの慣性センサによる慣性計測出力を受信することと、各慣性センサに空間的に関連する一次温度センサによる温度計測出力を受信することと、及び温度計測を時間に関して微分して時間的温度勾配出力を決定することと、を含む。
【0025】
少なくともいくつかの実施例では、方法は、さらに、一次温度センサと異なる空間的位置をその各々が有する一つ以上の二次温度センサによる異なる温度計測出力を受信することと、及び異なる温度計測を処理して空間的温度勾配出力を決定することと、を含み得る。
【0026】
少なくともいくつかの実施例では、代替的にまたは追加的に、方法は、さらに、時間的温度勾配出力及び/または空間的温度勾配出力に基づいて、慣性計測のための補正または関連するパラメトリック誤差を決定することを含み得る。
【0027】
本開示のなおもさらなる態様に従い、慣性計測装置における熱勾配の補正方法が提供される。この方法は、少なくとも一つの慣性センサによる慣性計測出力を受信することと、各慣性センサに空間的に関連する一次温度センサによる温度計測出力を受信することと、一次温度センサと異なる空間的位置をその各々が有する一つ以上の二次温度センサによる異なる温度計測出力を受信することと、及び異なる温度計測を処理して空間的温度勾配出力を決定することと、を含む。
【0028】
以下の添付図面を参照して一つ以上の限定されない実施例をここに記述する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】IMUにおける時間的熱勾配補正スキームのための略ブロック図を提供する。
図2】例示のIMUにおける、時間に関する慣性センサ温度の変動を示す。
図3】慣性センサに空間的に関連する一次温度センサからの微分した温度計測値を示す。
図4】時間的温度勾配出力の平滑化を示す。
図5】IMUにおける空間的熱勾配補正スキームのための略ブロック図を提供する。
図6】6a~6cは、IMUにおける二次温度センサについてのいくつかの空間的位置の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
慣性計測値をIMUにおけるプロセッサ4に出力するように配置された慣性センサ2が図1に見られる。慣性センサ2に空間的に関連する一次温度センサ6が、温度計測値をプロセッサ4に出力するように配置される。ブロック8に図示するように、慣性計測値及び温度計測値を従来のパラメトリック補正スキームに使用して、安定的な較正及び試験条件に基づく動作中のパラメトリック誤差を決定し得る。本開示の実施例に従い、プロセッサ4は、一次温度センサ6による温度計測出力を使用して追加のステップを実行する。ブロック10において、温度計測値を時間に関して微分して時間的温度勾配出力を決定する。この時間的温度勾配出力は、ブロック12に送られ、ここで、「熱傾斜」パラメトリック補正スキームが、時間的温度勾配出力に基づいて、慣性計測値のための補正または関連するパラメトリック誤差を追加的に決定する。ブロック10は、任意選択的に、微分した温度計測値のフィルタリング及び/または平滑化を含んでよい。次に、プロセッサ4は、補正されたパラメトリック出力をブロック14に提供する。
【0031】
図2は、IMUにおける熱勾配効果に起因して、慣性センサ2の温度が経時的にどのように変動し得るかを示す。図3及び図4は、時間的温度勾配の生の計測値(図3)、または例えば、移動平均フィルタを使用した平滑化後の計測値(図4)として、ブロック10による微分した温度計測出力の実施例を提供する。
【0032】
慣性計測値をIMUにおけるプロセッサ4に出力するように配置された慣性センサ2が図5に見られる。慣性センサ2に空間的に関連する一次温度センサ6が、温度計測値をプロセッサ4に出力するように配置される。ブロック8に図示するように、慣性計測値及び温度計測値を従来のパラメトリック補正スキームに使用して、安定的な較正及び試験条件に基づく動作中のパラメトリック誤差を決定することができる。本開示の実施例に従い、IMUは、一次温度センサ6と異なる空間的位置、理想的には、互いに異なる空間的位置をその各々が有する二次温度センサ16a、16b、16cをさらに備える。二次温度センサ16a、16b、16cの各々は、プロセッサ4が空間的温度勾配出力を決定する場合に、異なる温度計測値をブロック18に出力するように配置される。ブロック18は、任意選択的に、異なる温度計測値のフィルタリングを含み得る。ブロック20において、プロセッサ4は、「熱傾斜」パラメトリック補正スキームを実行して、空間的温度勾配出力に基づいて、慣性計測値のための補正または関連するパラメトリック誤差を追加的に決定する。次に、プロセッサ4は、補正されたパラメトリック出力をブロック22に提供する。
【0033】
図6の6a~6cは、慣性計測装置(IMU)100の一側面に位置付けられた慣性センサ2を図示する。慣性センサ2は、MEMSベースの振動構造ジャイロスコープまたは加速度計であっても良く、同一の空間的位置を有する一次温度センサ6を備える。一次温度センサ6に加えて、三つの二次温度センサ16a、16b、16cが、慣性センサ2の周囲のさまざまな異なる空間的位置に位置する。例えば、二次温度センサ16a、16b、16cは、慣性センサ2が据え付けられたPCB上に配置することができる。図6の6cに見られるように、さらなる二次温度センサ16d、16eが、IMUの他の側面上の他の空間的位置に位置し得る。これらの位置は、通常、例えば、不安定的な環境における動作中にIMUに適用される熱勾配の観測に最大の支援を提供する既知の熱的経路上の位置から選ばれる。
【0034】
図1及び図5に見られる二つの熱傾斜補正スキームが、それぞれ、当然ながら、シングルプロセッサ4において組み合わすことができることが認識される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6