IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤倉化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-目地用テープおよび目地部の処理方法 図1
  • 特許-目地用テープおよび目地部の処理方法 図2
  • 特許-目地用テープおよび目地部の処理方法 図3
  • 特許-目地用テープおよび目地部の処理方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】目地用テープおよび目地部の処理方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20220106BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20220106BHJP
   E04F 19/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
E04F13/08 Y
E04F13/07 G
E04F19/02 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017081962
(22)【出願日】2017-04-18
(65)【公開番号】P2018178607
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-02-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 一
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-102607(JP,A)
【文献】特開2005-021804(JP,A)
【文献】特開2013-078946(JP,A)
【文献】特開2012-106206(JP,A)
【文献】米国特許第06308486(US,B1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2009-0011755(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
E04F 17/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の壁材が並設され、前記複数の壁材それぞれの表面に加飾層が設けられ、隣り合う壁材間の目地部に目地材が充填され、前記目地材が露出している構造物において、前記目地材上に貼着されるテープであって、
前記加飾層が、第一の塗料の塗膜であり、前記第一の塗料の塗膜が、着色塗料がゲル化膜で包まれたゲル状着色粒子を1色または2色以上含む単色または多彩模様の塗膜であり、前記第一の塗料の塗膜の表面に凹凸があり、
前記テープが、第二の塗料の塗膜のみからなり、前記第二の塗料の塗膜が、着色塗料がゲル化膜で包まれたゲル状着色粒子を1色または2色以上含む単色または多彩模様の塗膜であり、前記第二の塗料の塗膜の表面に凹凸があり、前記第二の塗料の塗膜の外観が、前記第一の塗料の塗膜の外観と略同一である、目地用テープ。
【請求項2】
複数の壁材が並設され、前記複数の壁材それぞれの表面に加飾層が設けられ、隣り合う壁材間の目地部に目地材が充填され、前記目地材が露出している構造物において、前記目地材上に目地用テープを貼着する工程を有し、
前記加飾層が、第一の塗料の塗膜であり、前記第一の塗料の塗膜が、着色塗料がゲル化膜で包まれたゲル状着色粒子を1色または2色以上含む単色または多彩模様の塗膜であり、前記第一の塗料の塗膜の表面に凹凸があり、
前記目地用テープが、第二の塗料の塗膜のみからなり、前記第二の塗料の塗膜が、着色塗料がゲル化膜で包まれたゲル状着色粒子を1色または2色以上含む単色または多彩模様の塗膜であり、前記第二の塗料の塗膜の表面に凹凸があり、前記第二の塗料の塗膜の外観が、前記第一の塗料の塗膜の外観と略同一である、目地部の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地用テープおよび目地部の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁面においては、外壁ボード等の壁材が複数並設されていることが多い。また、壁材の表面が塗装、印刷等により加飾されていることがある。
壁材が複数並設された壁面においては、地震、寒暖差等によって隣り合う壁材間の間隔が変化することがある。このような壁材間の間隔の変化に対応するため、壁材の間の目地部に目地材(コーキング材、シーリング材等)を充填することが行われている。目地材としては、柔軟性のある樹脂材料が一般的である。
【0003】
目地部に目地材を充填した場合、壁面の外観品質の向上のため、目地材の上にテープを貼着し、その上に壁用塗料を塗装することがある。
表面が加飾されていない壁材を壁面に設置し、その後、壁用塗料を塗装して壁材の表面を加飾する場合には、壁材の塗装と同時に目地材上のテープの塗装も実施できる。
しかし、予め工場等で塗装や印刷等により表面が加飾された壁材を壁面に設置する場合、目地材上のテープを塗装することは、現場の作業に塗装工程が追加されることになる。
【0004】
塗装工程の追加を避けるため、なるべく壁材の色合いと似た色合いの目地材を使用するか、なるべく壁材の色合いと似た色合いの化粧テープを目地材上に貼着することが行われている。
特許文献1では、パネルの固定具が打たれた目地部に化粧テープを貼着した目地構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2805842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の化粧テープを目地材上に貼着した場合、化粧テープの色合いが壁材の色合いと似ていても、外観上、違和感がある。この違和感は、時間がたつにつれて大きくなる。また、壁材が多彩模様塗料で加飾されている場合にも違和感が大きい。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、既に加飾された壁材間の目地部に、塗装することなく違和感のない装飾を加えることができる目地用テープおよび目地部の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕複数の壁材が並設され、前記複数の壁材それぞれの表面に加飾層が設けられ、隣り合う壁材間の目地部に目地材が充填され、前記目地材が露出している構造物において、前記目地材上に貼着されるテープであって、
前記加飾層の外観と略同一の外観を有する、目地用テープ。
〔2〕前記加飾層が、第一の塗料の塗膜であり、
前記目地用テープが、基材と、基材上に設けられた第二の塗料の塗膜とを備え、
前記第二の塗料の塗膜の外観が、前記第一の塗料の塗膜の外観と略同一である、〔1〕の目地用テープ。
〔3〕前記加飾層が、前記壁材に塗装された第一の塗料の塗膜であり、
前記目地用テープが、第二の塗料の塗膜からなり、
前記第二の塗料の塗膜の外観が、前記第一の塗料の塗膜の外観と略同一である、〔1〕の目地用テープ。
〔4〕前記第一の塗料の塗膜および前記第二の塗料の塗膜がそれぞれ、着色塗料がゲル化膜で包まれたゲル状着色粒子を1色または2色以上含む単色または多彩模様の塗膜である、〔2〕または〔3〕の目地用テープ。
〔5〕複数の壁材が並設され、前記複数の壁材それぞれの表面に加飾層が設けられ、隣り合う壁材間の目地部に目地材が充填され、前記目地材が露出している構造物において、前記目地材上に目地用テープを貼着する工程を有し、
前記目地用テープが、前記加飾層の外観と略同一の外観を有する、目地部の処理方法。
〔6〕前記加飾層が、第一の塗料の塗膜であり、
前記目地用テープが、基材と、基材上に設けられた第二の塗料の塗膜とを備え、
前記第二の塗料の塗膜の外観が、前記第一の塗料の塗膜の外観と略同一である、〔5〕の目地部の処理方法。
〔7〕前記加飾層が、前記壁材に塗装された第一の塗料の塗膜であり、
前記目地用テープが、第二の塗料の塗膜からなり、
前記第二の塗料の塗膜の外観が、前記第一の塗料の塗膜の外観と略同一である、〔5〕の目地部の処理方法。
〔8〕前記第一の塗料の塗膜および前記第二の塗料の塗膜がそれぞれ、着色塗料がゲル化膜で包まれたゲル状着色粒子を1色または2色以上含む単色または多彩模様の塗膜である、〔6〕または〔7〕の目地部の処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の目地用テープおよび目地部の処理方法によれば、既に加飾された壁材間の目地部に、塗装することなく違和感のない装飾を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態の目地用テープの模式断面図である。
図2】第1実施形態の目地用テープを用いた目地部の処理方法によって処理された目地部およびその近傍を示す模式断面図である。
図3】本発明の第2実施形態の目地用テープの模式断面図である。
図4】第2実施形態の目地用テープを用いた目地部の処理方法によって処理された目地部およびその近傍を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を用い、実施形態を示して本発明を説明する。
なお、以下に示す図面における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0012】
≪第1実施形態≫
図1は、本発明の第1実施形態の目地用テープの模式断面図である。図2は、本実施形態の目地用テープを用いた目地部の処理方法によって処理された目地部およびその近傍を示す模式断面図である。
本実施形態の目地用テープ10は、複数の壁材41が並設され、複数の壁材41それぞれの表面41aに第一の塗料の塗膜43(加飾層)が設けられ、隣り合う壁材41間の目地部45に目地材47が充填され、目地材47が露出している構造物40において、目地材47上に貼着されるテープである。
【0013】
<構造物>
構造物40は、並設された複数の壁材41を備える。このような構造物40としては、例えば建築物の外壁、内壁等が挙げられる。
壁材41としては、特に限定されず、構造物40に応じたものを適宜選定でき、例えば外壁ボード等が挙げられる。
壁材41の材質としては、例えば、窯業系サイディング、軽量気泡コンクリート等が挙げられる。
【0014】
隣り合う壁材41の間には目地部45が設けられている。目地部45は、隣り合う壁材41間の隙間である。
本実施形態において壁材41は、第一の塗料の塗膜43が設けられる表面41aと、表面41aの両側縁から壁材41の裏面側に延出する側面41bとを有する。隣り合う壁材41は、側面41b同士を離間させて下地(図示略)上に配置されており、各壁材41の側面41bによって目地部45が形成されている。
【0015】
目地部45には目地材47が充填されている。目地材47は、構造物40の防水性、気密性等の向上のために用いられる。目地材47としては、特に限定されず、コーキング材、シーリング材等の公知の目地材から適宜選定できる。
【0016】
壁材41の表面41aには第一の塗料の塗膜43が設けられている。
一方、目地材47は露出している。つまり構造物40を表側(第一の塗料の塗膜43側)から見たときに目地材47が視認される状態である。したがって、目地材47の上には第一の塗料の塗膜43は設けられていない。
このような構造物40は、典型的には、構造物40を構築する現場において複数の壁材41を併設する際、予め工場等で第一の塗料を表面41aに塗装した壁材41を用い、その後、壁材41間の目地部45に目地材47を充填することにより構築されたものである。
【0017】
第一の塗料の塗膜43は、加飾層であり、通常、何らかの柄(模様)を有する。
柄としては、例えば、多彩模様塗料から形成される散らし模様等が挙げられる。
第一の塗料としては、所望の柄を有する塗膜を形成できればよく、従来、壁材の加飾等に用いられている塗料のなかから適宜選定できる。
第一の塗料は、通常、樹脂成分を含む。樹脂成分としては、例えばアクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル重合体、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)重合体、天然または合成ゴム、それら樹脂を形成する単量体の2種以上の共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、樹脂エマルションの形態であってもよい。
【0018】
第一の塗料の塗膜43としては、着色塗料がゲル化膜で包まれたゲル状着色粒子を1色または2色以上含む単色または多彩模様の塗膜(以下、「模様塗膜」ともいう。)が好ましい。模様塗膜は、細かいゲル状着色粒子が複雑に入り組んだ複雑な模様を有しており、また表面に微細な凹凸があり、意匠性に優れる。
ゲル状着色粒子を1色含む模様塗膜は単色の塗膜であり、ゲル状着色粒子を2色以上含む模様塗膜は複色(すなわち多彩模様)の塗膜である。
模様塗膜は、ゲル状着色粒子を1色または2色以上含む塗料より形成される。
模様塗膜については後で詳しく説明する。
【0019】
第一の塗料の塗膜43の単位面積あたりの質量は、特に限定されない。
【0020】
<目地用テープ>
本実施形態の目地用テープ10は、基材1と、基材1上に設けられた第二の塗料の塗膜3とを備える。
【0021】
(基材)
基材1は、目地用テープ10に強度を付与するために用いられる。
基材1の材質としては、第二の塗料の塗膜3が付着可能なものであればよく、特に限定されない。好ましい例としては、セロファン、ナイロン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐候性の点で、アクリル樹脂が好ましい。
基材1の厚さは、特に限定されない。
【0022】
(第二の塗料の塗膜)
第二の塗料の塗膜3の外観は、第一の塗料の塗膜43の外観と略同一である。例えば第一の塗料の塗膜43が柄を有する場合、その柄と略同一の柄を第二の塗料の塗膜3が有する。したがって、目地用テープ10は、第一の塗料の塗膜43の外観と略同一の外観を有する。
「略同一」とは、同一であるか、近似していることを示す。近似しているとは、目地用テープ10を用いた目地部の処理方法によって処理された目地部およびその近傍を目視で観察したときに、目地用テープ10と第一の塗料の塗膜43との間で、外観の違いによる違和感がない範囲で外観が異なることを示す。
【0023】
第二の塗料としては、第一の塗料の塗膜43の外観と略同一の外観の塗膜を形成できればよく、第一の塗料と同様に、従来、壁材の加飾等に用いられている塗料のなかから適宜選定できる。
第二の塗料は、通常、第一の塗料と同様に、樹脂成分を含む。樹脂成分としては、前記と同様のものが挙げられる。
第二の塗料は、形成される塗膜の外観が略同一である限り、第一の塗料と同一の塗料であってもよく、第一の塗料と異なる塗料であってもよい。例えば略同一の外観を得やすい点では、第一の塗料と同一の塗料であるか、または柄の形成に寄与する成分(例えば前述のゲル状着色粒子)が同一で、その成分の含有量が近似する塗料であることが好ましい。
【0024】
第一の塗料の塗膜43が模様塗膜である場合、第二の塗料の塗膜3も模様塗膜であることが好ましい。従来の化粧テープは一般的に、基材に印刷を施したものである。模様塗膜は、前述のように、細かいゲル状着色粒子が複雑に入り組んだ複雑な模様を有しており、また表面に微細な凹凸があるため、印刷で模様塗膜の外観と略同一の外観を再現することは難しい。そのため、従来の化粧テープで目地部を処理したときに違和感を与えやすい。第二の塗料の塗膜3を模様塗膜とすることで、目地部を処理したときの違和感を低減する効果が大きい。
【0025】
第一の塗料の塗膜43、第二の塗料の塗膜3がともに模様塗膜である場合、第二の塗料の塗膜3に含まれる1色または2色以上のゲル状着色粒子は、第一の塗料の塗膜43に含まれるゲル状着色粒子と同一であることが好ましい。ゲル状着色粒子が2色以上である場合、各ゲル状着色粒子の比率も同一であることが好ましい。
第一の塗料の塗膜43、第二の塗料の塗膜3それぞれの間のゲル状着色粒子の含有量の差は、外観の観点では、少ないほど好ましく、0質量%であってもよい。ゲル状着色粒子の含有量は、塗膜の総質量に対するゲル状着色粒子の質量の割合である。
【0026】
第二の塗料の塗膜3の単位面積あたりの質量は、特に規定されないが、外観的に十分であれば、塗膜に孔が開き、開口部分ができる程度の薄さであることが好ましい。塗膜に開口部ができると貼着時に空気だまりができにくい。孔が開いていても貼着時に使用される第一の塗料と同様の樹脂成分により接着剤によってふさがれるため問題ない。
【0027】
(目地用テープの伸縮性)
目地用テープ10は、伸縮性を有することが好ましい。目地部45においては、地震、気温変化等によって一時的に目地部45の幅が広がり、目地材47が伸びることがある。目地材47上に貼着された目地用テープ10が伸縮性を有していれば、目地材47が伸びたときに、目地用テープ10が追従し、目地用テープ10の両脇と壁材41の表面41aの両側縁との間に目地材47が露出することを抑制でき、露出したとしても細い隙間が発生するだけに留めることができる。また、目地部45の幅が元に戻ったときに、目地用テープ10の幅が元に戻ることで、シワ等のない良好な外観を維持できる。
【0028】
(目地用テープの製造方法)
目地用テープ10は、基材1上に第二の塗料を塗装することで得られる。
第二の塗料の塗装は、公知の方法により行うことができる。例えば、基材1上に第二の塗料を塗布し、乾燥すればよい。
塗布方法としては、特に制限されず、例えば刷毛、こて、ローラー、スプレー等の公知の塗布方法を用いることができる。乾燥は、常温乾燥でもよく加熱乾燥でもよい。
【0029】
<目地部の処理方法>
目地用テープ10を用いた目地部45の処理方法は、目地部45に充填された目地材47上に目地用テープ10を貼着する工程を有する。
目地用テープ10は、壁材41表面の加飾層43の外観と略同一の外観を有するため、目地用テープ10を目地材47上に貼着することで、塗装することなく、壁材41間の目地部に、加飾層43との間に違和感のない装飾を加えることができる。
【0030】
本実施形態において、目地材47上への目地用テープ10の貼着は、接着層50を介して行われる。
接着層50は、通常、樹脂成分を含む。接着層50に含まれる樹脂成分は、第二の塗料の塗膜3に含まれる樹脂成分と同種の樹脂であることが好ましい。例えば第二の塗料の塗膜3に含まれる樹脂成分がアクリル樹脂である場合は、接着層50に含まれる樹脂成分もアクリル樹脂であることが好ましい。
【0031】
<作用効果>
本実施形態にあっては、目地用テープ10を用いることで、既に加飾された壁材41間の目地部45に、塗装することなく違和感のない装飾を加えることができる。
すなわち、目地用テープ10は、壁材41表面に設けられた加飾層43と略同一の外観を有するため、目地材47上に目地用テープ10を貼着することで、塗装を行うことなく、目地部45の外観を、加飾層43と略同一の外観とすることができる。
【0032】
<模様塗膜>
模様塗膜は、着色塗料がゲル化膜で包まれたゲル状着色粒子を1色または2色以上含む。模様塗膜は、必要に応じて、ゲル状着色粒子以外の他の成分をさらに含んでもよい。
【0033】
(ゲル状着色粒子)
ゲル状着色粒子は、例えば、着色塗料(b)を分散媒(c)に分散させることにより得られる。
【0034】
「着色塗料(b)」
着色塗料(b)は、樹脂(b1)、着色顔料および親水性コロイド形成物質を含む。
樹脂(b1)としては、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル重合体、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)重合体、天然または合成ゴム、それら樹脂を形成する単量体の2種以上の共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、典型的には、樹脂エマルションの形態とされている。かかる樹脂エマルションとしては、一般に市販されている樹脂エマルションを使用できる。
樹脂(b1)としては、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂が好ましい。
樹脂(b1)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
着色顔料としては、例えばカーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、クロム酸鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の無機顔料;パール顔料、マイカ顔料、マイカコーティングパール顔料、アルミニウム粉、ステンレス粉等の光輝性顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド等の有機顔料等が挙げられる。
これら着色顔料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
親水性コロイド形成物質は、後述するゲル化剤と反応して着色塗料(b)をゲル化膜で包む(すなわち、着色塗料(b)をゲル化膜でカプセル化する)ものである。
親水性コロイド形成物質としては、例えばセルロース誘導体;ポリチレンオキサイド;ポリビニルアルコール;カゼイン、デンプン、ガラクトマンノン、グアルゴム、ローカストビーンゴム等の天然高分子等を含む水溶液が挙げられる。水溶液の濃度は0.5~5質量%が好ましく、1.0~3質量%がより好ましい。
これら親水性コロイド形成物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
模様塗膜に含まれるゲル状着色粒子のそれぞれにおいて、親水性コロイド形成物質の含有量は、そのゲル状着色粒子の製造に用いる着色塗料(b)に含まれる樹脂(b1)の固形分100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.1~3.0質量部がより好ましい。親水性コロイド形成物質の含有量を上記範囲内とすることにより、安定したゲル化膜が得られる。
【0038】
着色塗料(b)は、添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば体質顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤等が挙げられる。
体質顔料としては、例えば炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、含水ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。これら体質顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
分散剤としては、例えばアニオン性高分子分散剤等が挙げられる。
【0039】
着色塗料(b)は、例えば、樹脂(b1)に親水性コロイド形成物質を加え撹拌混合したものに、着色顔料と水と必要に応じて添加剤との混合溶液を加えさらに撹拌混合して得られる。
【0040】
「分散媒」
分散媒(c)は、ゲル化剤を含む水性の分散媒である。
ゲル化剤としては、例えば、マグネシウムモンモリロナイト粘土、ナトリウムペンタクロロフェノール、ホウ酸塩、タンニン酸、乳酸チタン、塩化カルシウム等を含む水溶液が挙げられる。中でもホウ酸塩の水溶液が好ましい。水溶液の濃度は0.05~10質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましい。これらゲル化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ゲル化剤の含有量は、分散媒100質量%中、0.05~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましい。ゲル化剤の含有量を上記範囲内とすることにより、安定したゲル化膜が得られる。
【0041】
分散媒には、必要に応じて、体質顔料や水溶性高分子化合物が任意成分として含まれてもよい。
体質顔料としては、前記と同様のものが挙げられる。
体質顔料の含有量は、分散媒100質量%中、0.05~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0042】
水溶性高分子化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどを含有する水溶液が挙げられる。中でもカルボキシメチルセルロースの水溶液が好ましい。水溶液の濃度は0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。これら水溶性高分子化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
水溶性高分子化合物の含有量は、分散媒100質量%中、0.05~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。
【0043】
分散媒は、例えば、ゲル化剤を含む水溶液と、必要に応じて体質顔料を含む分散液、および水溶性高分子化合物を含む水溶液とを撹拌混合したものに、水を加え希釈することにより得られる。
【0044】
「ゲル状着色粒子の製造方法」
着色塗料(b)がゲル化膜で包まれたゲル状着色粒子は公知の技術で製造できる。具体例として、前記着色塗料(b)を前記分散媒中に混合し、ディソルバ等の分散機で撹拌しながら細分化して製造する。これにより、着色塗料(b)に含まれる親水性コロイド形成物質と、分散媒に含まれるゲル化剤とが作用して形成される三次元的網状組織の中に着色塗料(b)が閉じ込められ、さらに細分化することにより、着色塗料(b)がゲル化膜でカプセル化した(ゲル化膜で包まれた)ゲル状着色粒子が分散媒に分散した状態で得られる。
【0045】
着色塗料(b)の配合量は、分散媒100質量部に対して100~500質量部が好ましく、150~400質量部がより好ましい。着色塗料(b)の配合量が上記範囲内であると、形状が均一なゲル状着色粒子が得られやすくなる。
着色塗料(b)をゲル化膜で包む(カプセル化する)ことにより、ゲル状着色粒子が分散媒中で安定して分散することができる。
【0046】
模様塗膜に含まれるゲル状着色粒子のそれぞれにおいて、そのゲル状着色粒子に含まれる樹脂(b1)と着色顔料の質量比(樹脂(b1)/着色顔料)は57/43~70/30であり、60/40~65/35が好ましい。
なお、樹脂(b1)がエマルションの場合、前記質量比は固形分換算して求めた値である。
各ゲル状着色粒子における樹脂(b1)と着色顔料の質量比を上記範囲内とするには、各ゲル状着色粒子の製造に用いる各着色塗料(b)での質量比が上記範囲内となるように、各着色塗料(b)の配合を調整すればよい。
【0047】
ゲル状着色粒子の製造においては、2色以上の着色塗料(b)を別々に調製しておき、これらを混合してゲル状着色粒子を製造してもよい。
なお、2色以上の着色塗料(b)を混合してゲル状着色粒子を製造する場合、混合後の着色塗料(b)において、樹脂(b1)および着色顔料の質量比が上述した範囲内となれば、混合前の各着色塗料(b)の全てにおいて、樹脂(b1)および着色顔料の質量比と、遮熱性着色顔料の含有量が上述した範囲内とならなくてもよい。
【0048】
(他の成分)
模様塗膜に含まれてもよい他の成分としては、例えばバインダ樹脂、添加剤等が挙げられる。
バインダ樹脂としては、例えばアクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル重合体、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)重合体、天然または合成ゴム、それら樹脂を形成する単量体の2種以上の共重合体等が挙げられる。
添加剤としては、例えば増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤、難燃剤等が挙げられる。
【0049】
模様塗膜は、1色または2色以上のゲル状着色粒子および必要に応じて他の成分を含む塗料(以下、「模様塗料」ともいう。)より形成される。
模様塗料は、1色または2色以上のゲル状着色粒子および必要に応じて他の成分を、所望の配合量となるように水等の液状媒体に添加し、これを撹拌混合して得られる。
なお、模様塗膜がゲル状着色粒子を2色以上含む場合、各ゲル状着色粒子を別々に製造しておき、模様塗料を調製する際にこれらを混合してもよいし、1つの分散媒に色の異なる複数の着色塗料(b)を順次にまたは同時に添加して、2色以上のゲル状着色粒子を1つの分散媒中で製造してもよい。
【0050】
≪第2実施形態≫
図3は、本発明の第2実施形態の目地用テープの模式断面図である。図4は、本実施形態の目地用テープを用いた目地部の処理方法によって処理された目地部およびその近傍を示す模式断面図である。なお、以下に示す実施形態において、第一実施形態に対応する構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態の目地用テープ20は、第一実施形態の目地用テープ10と同様に、複数の壁材41が並設され、複数の壁材41それぞれの表面41aに第一の塗料の塗膜43(加飾層)が設けられ、隣り合う壁材41間の目地部45に目地材47が充填され、目地材47が露出している構造物40において、目地材47上に貼着されるテープである。
【0051】
<目地用テープ>
本実施形態の目地用テープ20は、第二の塗料の塗膜3Aからなる。
第二の塗料の塗膜3Aとしては、第二の塗料の塗膜3と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
ただし、目地用テープ20は基材1を有しないことから、第二の塗料の塗膜3Aは、単独で取扱い可能な強度(例えば目地材47上に貼着する際に破れない程度の強度)を有することが必要である。第二の塗料の塗膜3Aの強度は、例えば第二の塗料の塗膜3Aの単位面積あたりの質量等によって調整できる。
【0052】
(目地用テープの製造方法)
目地用テープ20は、剥離シート上に第二の塗料を塗装して第二の塗料の塗膜3Aを形成し、第二の塗料の塗膜3Aから剥離シートを剥離することで得られる。
第二の塗料の塗装は、第1実施形態と同様にして行うことができる。
剥離シートは、目地部を処理する際に現場で剥離してもよい。この場合、目地用テープ20は、目地用テープ20(第二の塗料の塗膜3A)の片面に剥離シートが積層された剥離シート付き目地用テープの状態で保管、輸送等を行うことができる。
【0053】
<目地部の処理方法>
目地用テープ20を用いた目地部45の処理方法は、目地用テープ10の代わりに目地用テープ20を用いる以外は、第1実施形態と同様にして行うことができる。
【0054】
<作用効果>
本実施形態にあっては、目地用テープ20を用いることで、第1実施形態と同様に、既に加飾された壁材41間の目地部45に、塗装することなく違和感のない装飾を加えることができる。
【0055】
以上、本発明について、実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、本発明の目地用テープは、目地用テープ10の第二の塗料の塗膜3の代わりに印刷層を備える目地用テープであってもよい。
第1~第2実施形態において、壁材の表面に設けられた加飾層が、第一の塗料の塗膜43である例を示したが、加飾層は、印刷層であってもよい。この場合、目地用テープとして目地用テープ10、20を用いてもよく、目地用テープ10の第二の塗料の塗膜3の代わりに印刷層を備える目地用テープを用いてもよい。
印刷層は、加飾層と略同一の外観を有する。
【0056】
第1~第2実施形態では、目地部45の幅と目地材47の幅と目地用テープ10、20の幅がほぼ同じである例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば目地用テープ10、20の幅が目地部45の幅や目地材47の幅より広くてもよい。目地材47の幅が目地部45の幅よりも狭くてもよい。目地用テープ10、20の幅が目地部45の幅より狭くてもよい。ただし、違和感のない装飾を加える観点から、目地用テープ10、20の幅は、目地材47の幅と同じかそれよりも広いことが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1 基材
3,3A 第二の塗料の塗膜
10 目地用テープ
20 目地用テープ
40 構造物
41 壁材
43 第一の塗料の塗膜(加飾層)
45 目地部
47 目地材
50 接着層
図1
図2
図3
図4