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特許6993818ポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなる発泡成形品及びその製造方法
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  • 特許-ポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなる発泡成形品及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなる発泡成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20220106BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20220106BHJP
   B29C 51/14 20060101ALI20220106BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20220106BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220106BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20220106BHJP
   B65D 1/34 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B32B27/30 B
B32B5/18
B29C51/14
B29C51/10
B65D65/40 D
B65D1/00 111
B65D1/34
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017170173
(22)【出願日】2017-09-05
(65)【公開番号】P2019043076
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】396000422
【氏名又は名称】リスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 武士
(72)【発明者】
【氏名】社本 譲
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-046951(JP,A)
【文献】特開2006-272799(JP,A)
【文献】特開平02-151430(JP,A)
【文献】特開平09-099506(JP,A)
【文献】特開2005-111888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 51/14
B29C 51/10
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側表面層を構成するポリスチレン系樹脂発泡シート層と、該ポリスチレン系樹脂発泡シート層の片面に積層され、内側表面層を構成する無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層と、を有する発泡シートの成形品であって、
前記無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層側の表面の光沢度が70%以上であることを特徴とする、発泡成形品。
【請求項2】
ポリスチレン系樹脂発泡シート層と、該ポリスチレン系樹脂発泡シート層の片面に積層されたポリスチレン系樹脂層と、ポリスチレン系樹脂フィルム層と、内側表面層を構成する無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層とがこの順に積層された発泡シートの成形品であって、
前記無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層側の表面の光沢度が70%以上であり、且つ前記無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層と前記ポリスチレン系樹脂フィルム層との接着強度が2.5N/10mm以上であることを特徴とする、発泡成形品。
【請求項3】
前記発泡成形品が発泡容器であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の発泡成形品。
【請求項4】
熱ロール温度165~175℃で、ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面側に、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層させる工程を含むことを特徴とする、発泡シートの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法により得られた発泡シートを、シート表面温度が110℃以上で熱成形することにより、発泡成形品を製造する工程を含むことを特徴とする、発泡成形品の製造方法。
【請求項6】
前記発泡成形品が発泡容器であることを特徴とする、請求項5に記載の発泡成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなり、光沢性に優れる発泡成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は、一般に透明性、剛性が高く、また、シート加工性、発泡特性、真空成形性等の加工特性に優れ、成形品を容易且つ大量に生産できる材料である。そのため、スチレン系樹脂は、包装材料、雑貨、食品容器等の様々な用途に用いられている。成形品は通常、ポリスチレン系樹脂発泡シート(PSPシート)を真空成形等の熱成形することにより製造される。
【0003】
成形品の諸性質を改善するために、発泡シートに他の樹脂フィルム層を積層した積層発泡シートが用いられている。例えば、意匠性及び耐油性を改善するために、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)をPSPシートに積層した積層発泡シートを用いることが知られている。
【0004】
しかし、CPPフィルムをPSPシートに積層した積層発泡シートを熱成形すると、成形品の表面光沢が低下するという問題がある。この問題を解決するため、CPPフィルムに替えて、光沢性のある二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)をPSPシートに積層した樹脂発泡シートを用いることが提案されている(特許文献1~4参照)。また、特許文献5には、特定の厚さのポリスチレンフィルム(PSフィルム)及び接着層を介して、PSPシートにCPPフィルムを積層したポリスチレン系樹脂積層発泡シートが光沢性及び層間の接着性の両方を満足させたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-123797号公報
【文献】特開平8-85192号公報
【文献】特開2007-160700号公報
【文献】特開2007-23091号公報
【文献】特開2010-46951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂発泡シートを熱成形することにより得られる成形品において、光沢性は重要である。一方、特許文献1~4に記載のOPPフィルムをPSPシートに積層した樹脂積層発泡シートを用いる場合、OPPフィルムはCPPフィルムと比べて、熱成形時にドローダウン性が改良できるものの、フィルムの状態で既に延伸しているため伸びにくく、特に深絞り容器では金型の密着性が良くないという問題がある。また、特許文献5では、光沢度が高くなりすぎると、内面検査時等で誤作動が生じ、光沢が油分付着のように見えて印象が悪いため、むしろ逆に光沢度を低くすることが望まれる旨を開示している。
【0007】
本発明は、熱成形を行っても光沢性が失われないポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなる成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の発泡成形品は、ポリスチレン系樹脂発泡シート層と、該ポリスチレン系樹脂発泡シート層の片面に積層され、内側表面層を構成する無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層と、を有する発泡シートの成形品であって、前記無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層側の表面の光沢度が50%以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の発泡成形品は、ポリスチレン系樹脂発泡シート層と、該ポリスチレン系樹脂発泡シート層の片面に積層されたポリスチレン系樹脂層と、ポリスチレン系樹脂フィルム層と、内側表面層を構成する無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層とがこの順に積層された発泡シートの成形品であって、前記無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層側の表面の光沢度が50%以上であり、且つ前記無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層と前記ポリスチレン系樹脂フィルム層との接着強度が2.5N/10mm以上であることを特徴とする。
【0010】
本発明の発泡シートの製造方法は、熱ロール温度160~175℃で、ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面側に、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層させる工程を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の発泡成形品の製造方法は、本発明の発泡シートの製造方法により得られた発泡シートを、シート表面温度が110℃以上で加熱賦形することにより、発泡成形品を製造する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡成形品は、CPPフィルム等の無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層したPSPシートを熱成形しても、光沢性に優れる。特に、本発明の第2の発泡成形品は、光沢性に優れると共に、層間の接着性に優れる。よって、本発明の発泡成形品は、外観性に優れることが求められる用途に好適に用いることができる。本発明の発泡シートの製造方法及び発泡成形品の製造方法によれば、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層及びPSPシート層を備え、光沢性に優れる発泡成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例の発泡容器(A)~(C)の層構造及び製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、必要に応じて図面を参酌して以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(1)発泡成形品
本発明の第1の発泡成形品の実施形態の一例を図1(A)に示す。該発泡成形品は、PSPシート層11と、該PSPシート層の片面に積層されたPSフィルム層13と、該PSフィルム層13の反対側面(PSフィルム層表面のうち、PSPシート層11が積層された表面の反対側の面)に積層された、内側表面層を構成するCPPフィルム層(無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層の一例)12と、からなるポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなる。前記「内側表面層」は、発泡成形品の内側表面(容器であれば、物を収容する内面側表面)を構成する層である。
【0016】
本発明の第1の発泡成形品の実施形態の他の例を図1(B)に示す。該発泡成形品は、PSPシート層11と、PSPシート層11の片面に積層され、内側表面層を構成する無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)層(無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層の一例)12と、からなるポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなる。前記「内側表面層」の定義は上記の通りである。
【0017】
PSPシート層11を構成するPSPシートは、通常、基材樹脂であるスチレン系樹脂と発泡剤とを溶融混練し、押出成形することにより得ることができる。前記PSPシートの発泡倍率には特に限定はなく、必要に応じて適宜設定することができる。該発泡倍率は、例えば、発泡剤の種類及び基材樹脂の種類を考慮して、発泡剤の添加量を増減することにより調整することができる。前記発泡倍率は通常、2~20倍程度である。
【0018】
前記スチレン系樹脂として具体的には、例えば、スチレン単独重合体若しくはスチレンを主成分とするスチレン系共重合体、又はこれらの混合物、或いは上記スチレン単独重合体及びスチレン系共重合体の群から選択される1種又は2種以上を主成分とし、これに他の樹脂やゴムを副成分として混合した混合樹脂が挙げられる。前記スチレン系共重合体として具体的には、例えば、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体が挙げられる。前記副成分として混合される樹脂やゴムとして具体的には、例えば、ポリフェニレンオキシド、ブタジエンゴム、ブタジエン-スチレン共重合体ゴムが挙げられる。
【0019】
前記発泡剤として具体的には、例えば、プロパン、n-ブタン、i-ブタン、n-ブタンとi-ブタンとの混合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素;及びトリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジフルオロ-1-クロロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素;並びにこれらの混合物等の低沸点の有機化合物が挙げられる。前記発泡剤として、ブタン及びブタンと他の脂肪族炭化水素(例えば、イソブタン)との混合物が好ましい。
【0020】
発泡シートの形成において、発泡剤と共に気泡調整剤を併用することができる。該気泡調整剤として具体的には、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末;多価カルボン酸の酸性塩;及び多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムとの反応混合物が挙げられる。
【0021】
無延伸ポリオレフィンフィルムは、エチレン又はプロピレンを主成分とするポリオレフィン類からなるフィルムをいう。前記無延伸ポリオレフィンフィルムとして具体的には、例えば、1-ブテンを含む直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニルランダム共重合体、エチレン-アクリル酸エステルランダム共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、又は、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体からなるフィルムが挙げられる。前記無延伸ポリオレフィンフィルムとして好ましくは、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)である。
【0022】
図1(A)に示す発泡成形品は、PSフィルム層13を有する。CPPフィルム層12に前記PSフィルム層13を積層させることにより、層間の接着性を向上させることができる。その結果、熱成形の際に成形品の外観性の低下を抑制することができるので好ましい。PSフィルム層13を構成するPSフィルムとしては、例えば、上記スチレン系樹脂の項で列挙されている重合体を用いることができる。
【0023】
本発明の第2の発泡成形品の実施形態の一例を図1(C)に示す。該発泡成形品は、PSPシート層11と、該PSPシート層の片面に積層されたPS層14(押出ラミネートしたPS層及びPSフィルム層を総括して指す)と、PSフィルム層13と、内側表面層を構成するCPPフィルム層(無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層の一例)12とがこの順に積層されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなる。PSPシート11は発泡している為に表面に微細な凹凸があるが、PS層14を積層することで表面の平滑性が良くなり、本発明の第1の発泡成形品よりも更に光沢性に優れると共に、層間の接着性に優れる。
【0024】
前記PSPシート層、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層、PSフィルム層、及びPS層の厚さには特に限定はない。また、本発明の発泡成形品を構成する前記発泡シートの厚さにも特に限定はない。これらの層の厚さは、必要に応じて適宜決定することができる。前記発泡シートの厚さは通常1~3mmである。また、前記無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層の厚さは通常10~30μmであり、前記PSフィルム層の厚さは通常10~40μmである。
【0025】
前記PSPシート層、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層、PSフィルム層及びPS層を積層する方法には特に限定はない。該方法として具体的には、例えば、熱融着、押出しラミネート及びドライラミネートが挙げられる。詳細は後述する。
【0026】
図1に示すCPPフィルム層12は通常、接着剤によりPSPシート層11又はPSフィルム層13に積層されている。前記接着剤は、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層とPSPシート層又はPSフィルム層とを接着させることができる限り特に限定はない。前記接着剤として具体的には、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、アクリル系、酢酸ビニル系の接着剤が挙げられる。
【0027】
本発明の発泡成形品では、前記無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層の表面(成形品が容器の場合は、内容物を収容する容器内側の表面)の光沢度が50%以上である。本発明の発泡成形品では、熱成形によっても優れた光沢性を維持することができる。前記光沢度は50%以上、好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。前記光沢度は、JIS Z8741に記載の方法により測定された値を意味する。即ち、光沢計を用いて、入射角60℃で前記無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層表面を幅方向に5点測定し、その平均値である。
【0028】
図1(A)及び(C)に示すCPP/PSラミフィルムは、前記PSフィルム層を有することにより、層間の接着性に優れる。特に図1(C)では、PSPシート/PS層積層体とCPP/PSラミフィルムの接着を強固にすることにより、前記無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層と前記ポリスチレン系樹脂フィルム層との接着強度は2.5N/10mm以上とすることができる。前記接着強度は、JIS Z0237に記載の方法で測定された値である。
【0029】
前記PSPシート層、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層、PSフィルム層及びPS層は、光沢性を著しく損なわない範囲で、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。該他の成分として具体的には、例えば、公知の発泡シートに用いられている添加剤が挙げられる。該添加剤として具体的には、例えば、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、及び抗菌剤が挙げられる。
【0030】
本発明の発泡成形品は、光沢性を著しく損なわない範囲で、必要に応じて前記PSPシート層、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層、PSフィルム層、及びPS層以外の他の層を有していてもよい。例えば、前記PSPシート層の反対側面(PSPシート層表面のうち、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム層又はPSフィルム層が積層された表面の反対側の面)に他の樹脂フィルムを積層してもよい。よって、本発明の発泡成形品において、外側表面層は前記PSPシート層でもよく、他の層でもよい。尚、前記「外側表面層」は、発泡成形品の外側表面(容器であれば、外部側表面)を構成する層である。
【0031】
本発明の発泡成形品の形状、寸法、及び具体的用途には特に限定はない。該発泡成形品の用途としては、包装用容器等の容器、例えば、飲食品包装用容器が挙げられる。尚、前記「容器」は、容器全体だけでなく、容器の一部も含む。例えば、前記「容器」には、容器の本体のみならず、容器の蓋体も含まれる。
【0032】
本発明の発泡成形品を得る方法には特に限定がない。本発明の発泡成形品は通常、後述する本発明の発泡成形品の製造方法により得ることができる。
【0033】
(2)発泡シートの製造方法
本発明の発泡シートの製造方法において、上記PSPシート及び無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムについては、上記発泡成形品の項における説明が妥当する。
【0034】
本方法では、PSPシートの片面側に無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムを重ね合わせ、次いで積層シートの上側の無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムと接する側に熱ロールを配置した、上下1対のロールを通すことにより、PSPシートに無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層させる。上記「熱ロール温度」は、発泡シートの上側ロール(上ラミロール)の温度を意味する。「上側」は、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムと接する側を意味し、「下側」は、PSPシートの反対側面を意味する。
【0035】
上記熱ロール温度は160~175℃、好ましくは165℃~175℃である。上記熱ロール温度が上記範囲であると、熱成形により得られる成形品の光沢性を向上させることができるので好ましい。
【0036】
本方法において、「PSPシートの片面側に無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層させる」とは、PSPシートの片面側に無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムが積層されていればよい。従って、「PSPシートの片面側に無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層させる」には、PSPシートの片面に無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムを直接積層する場合(図1(B)参照)だけでなく、PSPシートの片面に、他の層を介して無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層する場合(図1(A)及び(C)参照)も含まれる。
【0037】
本方法において、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムをPSPシートの片面側に接着させる具体的方法には特に限定はない。また、他の樹脂を介して無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムをPSPシートの片面側に接着させる場合、前記他の樹脂と無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム又はPSPシートとの間を接着させる方法にも特に限定はない。このような接着方法としては、例えば、熱融着、押出しラミネート及びドライラミネートが挙げられる。接着剤については、上記発泡成形品の項における説明が妥当する。
【0038】
図1(A)~(C)に基づいて、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムをPSPシートの片面側に接着して積層する実施態様を説明する。図1(B)は、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムをPSPシートの片面側に直接接着して積層する実施態様を示す。図1(B)では、接着剤層を介したドライラミネートにより、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムをPSPシートに接着させて、発泡シートを形成している。
【0039】
図1(A)及び(C)は、他の層を介して、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムをPSPシートの片面側に接着する実施態様を示す。図1(A)では、接着剤層を介したドライラミネートにより、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムをPSフィルムにドライラミネートして、無延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム/PSラミフィルム(図1(A)では、CPP/PSラミフィルム)を形成し、これとPSPシートとを熱融着させることにより、発泡シートを形成している。また、図1(C)では、熱融着又は押出しラミネートにより、PSPシートの片面にPS層を接着させてPSPシート/PS層積層体を形成し、これとCPP/PSラミフィルムとを熱融着させて、発泡シートを形成している。
【0040】
(3)発泡成形品の製造方法
本発明の発泡成形品の製造方法では、シート表面温度が110℃以上で、本発明の発泡シートの製造方法により得られた発泡シートを熱成形することにより、発泡成形品を製造する。上記シート表面温度が110℃以上であると、発泡シートを十分に軟化させることができ、発泡シートの割れを発生することなく外観をきれいに保ちつつ熱成形を行なうことができるから好ましい。上記シート表面温度は、各層の材質等により適宜変更することができる。例えば、通常のPSPシートでは110℃以上とすることができ、耐熱PSPシートであれば、130℃以上とすることができる。
【0041】
上記熱成形の具体的方法には特に限定はない。上記熱成形は、樹脂成形品を得るのに一般に採用されている公知の熱成形方法、例えば真空成形により行うことができる。また、上記シート表面温度以外の成形条件についても特に限定はない。成形条件は必要に応じて適宜決定することができる。
【実施例
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、実施例に示す形態に限定されない。本発明の実施形態は、目的及び用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更することができる。
【0043】
(1)PSPシートの製造
ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製高耐熱性ポリスチレン「TFP」;ポリフェニレンエーテル(PPE)9%とスチレン-メタクリル酸共重合体(メタクリル酸8.5%、スチレン91.5%)91%とのアロイ)99.5質量%及びタルクパウダー0.5質量%を含む原料樹脂組成物100質量部に対し、発泡剤であるブタンガスを2~4質量部用いた。
【0044】
前記原料樹脂組成物及び発泡剤を押出成形することにより、PSPシート(坪量;130~280g/m、厚さ;1.4~2.2mm、発泡倍率;5~17倍、密度;0.059~0.200g/m)を製造した。押出成形は、公知のタンデム型押出機において、前記原料樹脂組成物及び発泡剤を、サーキュラーダイ(リップ径200φ)にて押出すことにより行った。タンデム押型押出機一段目(スクリュー径115φ)の温度は210~240℃に設定し、二段目(スクリュー径180φ)の温度は155~165℃に設定した。
【0045】
(2)発泡シート(A)~(C)の製造
上記方法により得られたPSPシートの片面に、CPP/PSラミフィルム(中本パックス社製の特注品;CPPフィルムの厚さは25μm、PSフィルムの厚さは20μm)を重ね合わせ、積層シートの上側に熱ロールを配置した1対のロールを通して熱融着させ、次いで冷却ロールを通過させて冷却することにより、発泡シート(A)を製造した(図1(A)参照)。
【0046】
また、上記CPP/PSラミフィルムに替えて、CPPラミフィルム(サントックス社製;厚さ25μm)を用いる他は、発泡シート(A)と同様の方法により、発泡シート(B)を製造した(図1(B)参照)。
【0047】
更に、上記方法により得られたPSPシートの片面にPSラミフィルム(厚さ15μm以上)を熱融着により接着させて積層シートを製造した。次いで、該積層シートのPSフィルム層側表面に、上記CPP/PSラミフィルムを重ね合わせ、発泡シート(A)と同様の方法により、発泡シート(C)を製造した。(図1(C)参照)。
【0048】
発泡シート(A)~(C)の製造におけるロールの温度(上ラミロール温度)を表1に併記する。
【0049】
(3)発泡容器(A)~(C)の製造
両面真空成形法(特公昭59-1184号公報参照)により、上記方法により得られた発泡シート(A)~(C)を熱成形して、発泡容器(A)~(C)(容器サイズ;200mm×100mm×30mm)を製造した。真空成形における上ヒータ温度及び下ヒータ温度を表1に併記する。
【0050】
(4)性能評価
上記方法により製造された発泡容器(A)及び(C)について、以下の方法により、光沢度(%)及び接着強度(N/10mm)を測定した。その結果を以下の表1に示す。尚、表1には発泡容器(B)の光沢度及び接着強度の測定結果は示していないが、発泡容器(A)と同等の測定結果であった。
【0051】
光沢度(%)は、JIS Z8741に記載の方法により測定した。具体的には、株式会社堀場製作所製のハンディ光沢度計「グロスチェッカIG331」を用いて、入射角60℃で発泡容器(A)及び(C)の容器底面内側を幅方向に5点測定し、その平均値を光沢度(%)とした。
【0052】
接着強度(N/10mm)は、JIS Z0237に準拠した方法で測定した。具体的には、発泡容器(A)及び(C)の容器底面から幅10mm×長さ50mmの試験片を切り出した。該試験片の片端を持って180℃折り返し、25mm剥がした。剥がした部分の片端を固定し、試験機を300mm/分で運転することにより、接着強度を求めた。
【0053】
【表1】
【0054】
表1より、上ラミロール温度が180℃(本発明の範囲外)であるポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなる発泡成形品は、光沢度が低い(発泡容器(A)で20~30%、発泡容器(C)で35~45%)。一方、ラミロール温度が本発明の範囲内であるポリスチレン系樹脂積層発泡シートからなる発泡成形品は、熱成形にもかかわらず、高い光沢度を維持している。また、発泡容器(A)でCPP/PSラミフィルムのPSフィルム層13とPSPシート層11との間で層間剥離が生じたが、発泡容器(C)でCPP/PSラミフィルムのCPPフィルム層12とPSフィルム層13の間で層間剥離が生じた。
図1