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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】キャリアテープの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 15/04 20060101AFI20220106BHJP
   B26F 1/00 20060101ALI20220106BHJP
   B65D 85/86 20060101ALI20220106BHJP
   B29C 51/08 20060101ALI20220106BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20220106BHJP
   B26D 7/08 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B65B15/04 P
B26F1/00 H
B65D85/86
B29C51/08
B23K26/53
B26D7/08 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017211594
(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公開番号】P2019085114
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】島田 誠二
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227205(JP,A)
【文献】特開平10-139900(JP,A)
【文献】特開2014-009337(JP,A)
【文献】特開2005-335730(JP,A)
【文献】特開2005-306418(JP,A)
【文献】特開平05-185260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 15/04
B26F 1/00
B65D 85/86
B29C 51/08
B23K 26/53
B26D 7/08
C08J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のテープ本体と、このテープ本体に形成される収納エンボスとを含み、これらテープ本体と収納エンボスのうち、少なくともテープ本体に貫通孔を形成するキャリアテープの製造方法であって、
テープ本体と収納エンボスとは、ポリスチレン製の中間樹脂層と、この中間樹脂層に積層される導電カーボン製の表面層と、この表面層との間に中間樹脂層を挟む導電カーボン製の裏面層とを含み、
少なくともテープ本体の側部における貫通孔形成予定部分の中間樹脂層に、内部吸収型のレーザ照射装置からレーザ光線を照射して改質領域を形成し、この改質領域の形成されたテープ本体の側部における貫通孔形成予定部分に貫通孔を打ち抜き形成することを特徴とするキャリアテープの製造方法。
【請求項2】
収納エンボスの底部における貫通孔形成予定部分の中間樹脂層に、内部吸収型のレーザ照射装置からレーザ光線を照射して改質領域を形成し、この改質領域の形成された収納エンボスの底部の貫通孔形成予定部分に貫通孔を打ち抜き形成する請求項1記載のキャリアテープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路素子や半導体パッケージ等の電子部品の収納、供給、保管、在庫管理、輸送等に用いられるキャリアテープの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における電子部品用のキャリアテープは、図示しないが、巻取リールに巻回されるテープ本体と、このテープ本体に並設される電子部品用の収納エンボスとを備え、製造メーカで所定の成形法により製造され、製造メーカから部品メーカに出荷されて収納エンボスに電子部品が収納されるとともに、収納エンボスの開口がトップテープで封止された状態で所定の長さ分巻取リールに巻き取られ、その後、部品メーカからアッセンブリメーカに輸送されて電子部品の表面実装に使用される(特許文献1、2参照)。
【0003】
テープ本体は、樹脂テープにより、長尺の帯形に形成されてその長手方向には、複数の収納エンボスが所定の間隔で並設され、両側部の長手方向には、複数の貫通孔がスプロケット孔として所定の間隔でそれぞれ打ち抜き形成されており、平坦な表面には、電子部品である半導体パッケージを封止するトップテープが加熱融着される。このテープ本体は、単層構造あるいは多層構造に形成されるが、機能性を向上させる観点から、多層構造に形成されるのが一般的である。
【0004】
各収納エンボスは、所定の深さのポケット形に形成され、底板の中央部に、丸い貫通孔が電子部品用の検査孔として打ち抜き形成されている。このような収納エンボスは、開口から周壁内に電子部品である半導体パッケージを収納する。
【0005】
上記構成において、電子部品用のキャリアテープを製造メーカが所定の成形法により製造する場合には、用意した長尺のテープ本体を予熱して専用の金型にセットし、この金型により、テープ本体に複数の収納エンボスを一定の間隔でプレス成形あるいは真空成形し、テープ本体の両側部長手方向に、複数の貫通孔をスプロケット孔として打ち抜くとともに、各収納エンボスの底板中央部に、貫通孔を半導体パッケージ用の検査孔として打ち抜く。テープ本体に複数の収納エンボスをプレス成形したら、テープ本体を所定の時間放置して冷却した後、冷却したテープ本体を用意した巻取リールに巻き取れば、電子部品用のキャリアテープを製造することができる。
【0006】
製造された電子部品用のキャリアテープに半導体パッケージを部品メーカが収納する場合には、巻取リールに巻回されたキャリアテープを繰り出し、繰り出したテープ本体の複数の収納エンボスに半導体パッケージを順次収納し、テープ本体の平坦な表面にトップテープを加熱融着した後、巻取リールに所定の長さのキャリアテープを巻き取れば、電子部品用のキャリアテープに半導体パッケージを収納することができる。
【0007】
ところで、電子部品用のキャリアテープを製造する場合には、テープ本体の両側部に複数の貫通孔をスプロケット孔として打ち抜くとともに、収納エンボスの底板中央部に貫通孔を検査孔として打ち抜くが、これらの打ち抜きの際、テープ本体や収納エンボスが伸びやすい樹脂材料である関係上、貫通孔60に微細な薄い凹凸、換言すれば、バリ(カエシともいう)61が発生する(図8参照)。このバリ61としては、図8(a)、(b)に示すように、貫通孔60の裏面周縁部から下方に伸びる微細な小突起61aや貫通孔60の周面から中心部方向に屈曲しながら伸びる糸バリ61b等があげられる。
【0008】
このようなバリ61が発生すると、テーピング時に異物としてテーピングマシンのガイド部の汚染を蓄積させたり、実装時にショート等のトラブルを招くという問題が生じる。この問題は、テープ本体が多層構造の場合、層と層との境界間付近でバリ61が非常に発生しやすいので深刻となる。したがって、キャリアテープを製造する場合には、バリ61の発生を有効に防止する必要がある。
【0009】
この問題に鑑み、従来においては、(1)専用の金型を研磨したり、クリアランスを管理してバリ61の発生を防止する方法、(2)専用の金型で貫通孔を打ち抜き形成する前にテープ本体を圧縮し、バリ61の発生を防止する方法が開発され、提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平10‐138326号公報
【文献】特開平10‐272684号公報
【文献】特開2014‐227205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、(1)の方法の場合には、バリ61の発生を有効に防ぐため、金型の研磨やクリアランスの管理が要求されるが、これらの作業には、時間と高い精度が要求されるので、作業が非常に煩雑化するという大きな問題が新たに生じることとなる。また、(2)の方法の場合には、所定の効果が期待できるものの、テープ本体の材料固有の特性により、完全な破断が期待できないことがあり、不完全な破断のときには、バリ61の発生を有効に防止できないおそれがある。
【0012】
本発明は上記に鑑みなされたもので、金型の研磨期間や寿命を長くするとともに、クリアランスの管理作業の頻度を低減することができ、テープ本体の材料特性に左右されることなく、バリの発生を有効に低減することのできるキャリアテープの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明においては上記課題を解決するため、長尺のテープ本体と、このテープ本体に形成される収納エンボスとを含み、これらテープ本体と収納エンボスのうち、少なくともテープ本体に貫通孔を形成するキャリアテープの製造方法であって、
テープ本体と収納エンボスとは、ポリスチレン製の中間樹脂層と、この中間樹脂層に積層される導電カーボン製の表面層と、この表面層との間に中間樹脂層を挟む導電カーボン製の裏面層とを含み、
少なくともテープ本体の側部における貫通孔形成予定部分の中間樹脂層に、内部吸収型のレーザ照射装置からレーザ光線を照射して改質領域を形成し、この改質領域の形成されたテープ本体の側部における貫通孔形成予定部分に貫通孔を打ち抜き形成することを特徴としている。
【0014】
なお、収納エンボスの底部における貫通孔形成予定部分の中間樹脂層に、内部吸収型のレーザ照射装置からレーザ光線を照射して改質領域を形成し、この改質領域の形成された収納エンボスの底部の貫通孔形成予定部分に貫通孔を打ち抜き形成することができる。
【0017】
ここで、特許請求の範囲におけるテープ本体は、単層構造、二層構造、三層等の多層構造でも良い。このテープ本体の側部には、テープ本体の一側部と、テープ本体の両側部のいずれもが含まれる。テープ本体の中間樹脂層は、単層構造、二層構造、多層構造でも良い。また、収納エンボスは、テープ本体に必要数がプレス成形や真空成形等により形成され、各種の部品(半導体パッケージ、抵抗素子、キャパシタ等)を収納する。この収納エンボスの大きさや形は、収納する部品の大きさに応じて変更される。したがって、収納エンボスは、貫通孔よりも大きくても良いし、小さくても良い。
【0018】
貫通孔は、複数の場合、同じ大きさでも良いし、異なる大きさでも良い。さらに、収納エンボスの形成、改質領域の形成、及び貫通孔の打ち抜き形成は、(1)収納エンボスの形成、改質領域の形成、貫通孔の打ち抜き形成の順、(2)改質領域の形成、収納エンボスの形成、貫通孔の打ち抜き形成の順、(3)改質領域の形成、貫通孔の打ち抜き形成、収納エンボスの形成の順のいずれでも良い。
【0019】
本発明によれば、貫通孔形成予定部分に改質領域を形成してその分子量を低下させるとともに、改質領域に亀裂を生じさせ、貫通孔の打ち抜き形成時におけるせん断応力を小さくするようにするので、キャリアテープの製造時に貫通孔にバリが発生するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、テープ本体の貫通孔形成予定部分に改質領域を形成してその分子量を低下させ、亀裂を生じさせて打ち抜き時のせん断応力を小さくするようにするので、貫通孔に微細なバリが発生するのを有効に防止することができるという効果がある。したがって、テーピング時にバリが異物としてテーピングマシンのガイド部の汚染を蓄積させたり、実装時にショート等のトラブルを招くおそれを排除することができる。この効果は、テープ本体が多層構造の場合、物性差を有する中間樹脂層と表面層又は裏面層との境界付近でバリが発生しやすいので、有意義となる。また、テープ本体の表面層と裏面層とが導電カーボン製なので、静電気の発生を防止することができる。また、バリの発生を防ぐための金型研磨作業の間隔を長くすることができたり、クリアランス管理作業を簡略化することができるので、作業の煩雑化を防止したり、製造作業の迅速化を図ることが可能になる。また、テープ本体の材料固有の特性に拘わらず、完全な破断が期待できるので、バリの発生防止が期待できる。また、打ち抜き時のせん断応力を小さくするので、金型の打ち抜きピンの摩耗防止も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るキャリアテープの製造方法の実施形態におけるキャリアテープを模式的に示す平面説明図である。
図2】本発明に係るキャリアテープの製造方法の実施形態におけるテープ本体を模式的に示す断面説明図である。
図3】本発明に係るキャリアテープの製造方法の実施形態におけるテープ本体の貫通孔形成予定部分にレーザ光線を照射して改質領域を形成する状態を模式的に示す説明図である。
図4】本発明に係るキャリアテープの製造方法の実施形態におけるテープ本体の側部の貫通孔形成予定部分を模式的に示す平面説明図である。
図5】本発明に係るキャリアテープの製造方法の実施形態におけるテープ本体側部の貫通孔形成予定部分をスプロケット孔として打ち抜く状態を模式的に示す説明図である。
図6】本発明に係るキャリアテープの製造方法の実施例1を模式的に示す図で、(a)図はスプロケット孔である貫通孔の断面図、(b)図はスプロケット孔である貫通孔の平面図、(c)図はスプロケット孔である貫通孔の裏面図である。
図7】本発明に係るキャリアテープの製造方法の実施例2を模式的に示す図で、(a)図はスプロケット孔である貫通孔の断面図、(b)図はスプロケット孔である貫通孔の平面図、(c)図はスプロケット孔である貫通孔の裏面図である。
図8】キャリアテープの貫通孔とそのバリとを模式的に示す図で、(a)図は平面図、(b)図は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるキャリアテープの製造方法は、図1ないし図5に示すように、巻取リールに巻回される長尺のテープ本体1と、このテープ本体1に配列形成されて電子部品を収納する複数の収納エンボス10とを備え、これらテープ本体1と複数の収納エンボス10に貫通孔5・14をそれぞれ形成する製法であり、テープ本体1と各収納エンボス10の貫通孔形成予定部分20に、レーザ光線30をそれぞれ照射して改質領域40を形成し、その後、テープ本体1と各収納エンボス10の貫通孔形成予定部分20に貫通孔5・14をそれぞれ形成するようにしている。
【0023】
テープ本体1は、図2に示すように、可撓性を有する絶縁性の中間樹脂層2と、この中間樹脂層2の表面に積層される導電性の表面層3と、中間樹脂層2の裏面に積層されて表面層3との間に中間樹脂層2を挟持する導電性の裏面層4とを備えた細長い帯形に形成され、収納エンボス10と共に多層構造に形成される。このテープ本体1は、幅が規格化された4、8、12、16、24、32、44、56、72,200mm等のサイズに設定され、厚さが可撓性と強度とを両立させる観点から、0.17~0.50mm、好ましくは0.25~0.40mm、より好ましくは0.30mm前後の薄さとされる。
【0024】
中間樹脂層2の材料としては、特に限定されるものではないが、汎用性に優れる透明のポリスチレン、A‐PET、強度に優れるポリエチレンテレフタレート、耐薬品性に優れるポリプロピレン、機械的性質や成形性に優れるABS樹脂、耐衝撃性や寸法安定性に優れるポリカーボネート等の樹脂シートがあげられる。また、表面層3と裏面層4とは、例えば中間樹脂層2の表裏面にカーボンや帯電防止剤等がそれぞれ塗布されることで薄く積層形成され、静電気の発生を防止するよう機能する。
【0025】
テープ本体1の両側部の長手方向には図1に示すように、複数の貫通孔5がスプロケット孔として所定の間隔でそれぞれ打ち抜き形成され、各貫通孔5が平面円形に形成される。また、テープ本体1の平坦な表面には、電子部品である半導体パッケージを封止する図示しないトップテープが加熱融着される。
【0026】
トップテープは、特に限定されるものではないが、例えばポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム等の基材に、常温接着性の感圧式粘着層や熱融着性の感圧式粘着層が積層されたタイプが用いられる。このトップテープは、導電タイプ、帯電防止タイプ、透明タイプ等からなり、50~70μm、好ましくは55~65μm、より好ましくは56~60μm程度の厚さとされる。
【0027】
複数の収納エンボス10は、図1に示すように、テープ本体1の長手方向に所定の間隔で配列形成され、各収納エンボス10が平面矩形に形成されており、この収納エンボス10に電子部品である半導体パッケージが収納される。各収納エンボス10は、テープ本体1に所定の間隔で並べて形成される開口11と、この開口11の周縁部から裏面方向に傾斜しながら伸びて電子部品を包囲する包囲壁12と、この包囲壁12の下端部に設けられて電子部品を搭載する底板13とを備えた浅底のポケット形に形成され、薄い電子部品の収納を前提にテープ本体1に一体化される。
【0028】
開口11は、電子部品を収納可能な大きさの平面矩形、具体的には略正方形に形成される。また、包囲壁12は、下方に向かうにしたがい徐々に狭まる中空の略角錐台形に形成され、電子部品の周縁部に接触して位置決めするよう機能する。底板13は、平面矩形に形成され、必要に応じ、中央に丸い貫通孔14が検査孔として打ち抜き形成される。この貫通孔14は、検出センサにより、電子部品の有無を検出する場合に利用される。また、真空ポンプ等のバキューム装置の駆動に基づき、エアを収納エンボス10の内部から外部に排気し、電子部品の姿勢を適切に維持するよう機能する。
【0029】
貫通孔形成予定部分20は、図3図4に示すように、テープ本体1の両側部の場合には、複数の貫通孔5がスプロケット孔として打ち抜き形成されるテープ本体1の両側部における長手方向の所定の間隔とされる。また、収納エンボス10用の場合には、貫通孔14が検査孔として打ち抜き形成される底板13の中央部付近とされる。これらの貫通孔形成予定部分20は、製品の仕様、具体的には孔径やピッチ等に応じて設定することが可能である。
【0030】
レーザ光線30は、図3に示すように、レーザ照射装置31から下方のテープ本体1に貫通孔5・14の周縁を描くよう照射される。このレーザ光線30は、テープ本体1の劣化を促進させるのであれば、特に限定されるものではないが、例えば出力の大きいYAGレーザ、微細な加工が可能なエキシマレーザ、送り速度の速い加工が可能で安価なCOレーザ等が使用される。
【0031】
レーザ光学系の種類としては、最も基本的な集光系が使用されるが、特に支障を来さなければ、スキャニング光学系や特殊光学系でも良い。また、テープ本体1の中間樹脂層2にレーザ光線30を照射する場合には、内部吸収型のレーザ照射装置31が採用されるが、テープ本体1の表面層3と裏面層4とにレーザ光線30を照射する場合には、表面吸収型のレーザ照射装置31が採用される。
【0032】
改質領域40は、図3図4に示すように、テープ本体1と収納エンボス10の貫通孔形成予定部分20にレーザ光線30が円を描くよう照射され、エネルギーが加えられることで脆い破断層に形成される。この改質領域40は、樹脂製の貫通孔5・14からのバリ61を防止する観点から、テープ本体1や収納エンボス10の中間樹脂層2、表面層3、及び裏面層4のうち、少なくとも内部の中間樹脂層2に形成される。中間樹脂層2に形成されるのであれば、中間樹脂層2のみに限定されるものではなく、必要に応じ、(1)中間樹脂層2と表面層3、(2)中間樹脂層2と裏面層4、(3)中間樹脂層2、表面層3、及び裏面層4に形成される。
【0033】
上記構成において、電子部品用のキャリアテープを製造する場合には、先ず、キャリアテープに加工するための細長い平坦な帯形のテープ本体1を用意し、このテープ本体1をヒータ等により加熱軟化させて高い再現性や寸法精度が得られる専用のプレス成形装置の金型にセットし、この金型により予備加熱したテープ本体1をプレスして収納エンボス10を形成する。
【0034】
プレス成形装置の金型は、テープ本体1を上下方向から挟持する可動の上型と固定の下型とを備え、これら上型と下型とが平面視で僅かにオーバーラップするよう接離可能に対設される。この金型には図5に示すように、パンチである複数の打ち抜きピン50と、ダイである穴部51とが相対向するよう配設され、これら打ち抜きピン50と穴部51とが貫通孔5・14を後から形成する。
【0035】
金型の下型に上型を型締めして既に予備加熱したテープ本体1をプレス成形する際、金型の上型と下型を加熱してテープ本体1にさらに熱を加えても良いが、上型と下型のキャビティを加熱せずに常温以下とし、テープ本体1にさらに熱を加えることなく、塑性加工すれば、貫通孔5である複数のスプロケット孔の変形を確実に防止することができる。
【0036】
次いで、テープ本体1に収納エンボス10を形成後、このテープ本体1の複数の貫通孔形成予定部分20にレーザ光線30をレーザ照射装置31によりそれぞれ照射し、各貫通孔形成予定部分20の少なくとも中間樹脂層2の分子量を低下させ、亀裂を生じさせて脆い改質領域40を形成する。貫通孔形成予定部分20に改質領域40を形成したら、テープ本体1の両側部長手方向に、複数の貫通孔5をスプロケット孔として打ち抜くとともに、収納エンボス10の底板13中央部に、貫通孔14を電子部品用の検査孔として打ち抜き(図5参照)、以下、上記一連の工程を繰り返すことで、長尺のキャリアテープを製造する。
【0037】
キャリアテープを製造したら、キャリアテープを所定の時間放置して冷却した後、冷却したキャリアテープを用意した巻取リールに巻き取れば、電子部品用のキャリアテープを製造することができる。
【0038】
次に、製造されたキャリアテープに電子部品を収納する場合には、巻取リールに巻回されたキャリアテープを繰り出し、繰り出したテープ本体1の複数の収納エンボス10に電子部品を順次収納し、その後、テープ本体1の表面にトップテープを積層して加熱融着する。こうしてテープ本体1にトップテープを加熱融着したら、巻取リールに所定の長さのキャリアテープを巻き取ることにより、キャリアテープに電子部品を収納することができる。
【0039】
上記によれば、貫通孔形成予定部分20に改質領域40を形成してその分子量を低下させ、亀裂を生じさせて打ち抜き時のせん断応力を小さくするようにするので、貫通孔5・14に微細なバリ61が発生するのを有効に防止することができる。したがって、テーピング時にバリ61が異物としてテーピングマシンのガイド部の汚染を蓄積させたり、実装時にショート等のトラブルを招くおそれを排除することができる。この効果は、テープ本体1が多層構造の場合、物性差を有する中間樹脂層2と表面層3との境界付近でバリ61が非常に発生しやすいので、きわめて有意義となる。
【0040】
また、バリ61の発生を防ぐための金型研磨作業の間隔を長くすることができたり、クリアランス管理作業を簡略化することができるので、作業の煩雑化を防止したり、製造作業の迅速化を図ることが可能になる。また、テープ本体1の材料固有の特性に拘わらず、完全な破断が期待できるので、バリ61の発生防止が大いに期待できる。さらに、打ち抜き時のせん断応力を小さくするので、金型の打ち抜きピン50の摩耗防止も大いに期待できる。
【0041】
なお、上記実施形態ではテープ本体1に収納エンボス10を形成した後、貫通孔5・14をそれぞれ打ち抜き形成したが、何らこれに限定されるものではなく、製造工程を以下のように変更しても良い。先ず、テープ本体1の複数の貫通孔形成予定部分20にレーザ光線30をレーザ照射装置31によりそれぞれ照射し、各貫通孔形成予定部分20の少なくとも中間樹脂層2の分子量を低下させ、亀裂を生じさせて脆い改質領域40を形成する。
【0042】
こうして貫通孔形成予定部分20に改質領域40を形成したら、テープ本体1の両側部長手方向に、複数の貫通孔5をスプロケット孔として打ち抜くとともに、収納エンボス10の底板13中央部に、貫通孔14を電子部品用の検査孔として打ち抜く。そしてその後、テープ本体1をヒータ等により加熱軟化させ、成形装置の金型にセットし、この金型によりテープ本体1に収納エンボス10を形成してキャリアテープを製造しても良い。こうした製造方法の場合、貫通孔5・14の形成と収納エンボス10の形成とを連続する工程で実施することができるし、別工程として不連続で実施することができる。
【0043】
また、テープ本体1の両側部のみに複数の貫通孔5をそれぞれ打ち抜き形成して貫通孔14を省略しても良いし、テープ本体1の一側部のみに複数の貫通孔5を打ち抜き形成して貫通孔14を省略しても良い。また、テープ本体1と収納エンボス10とは、可撓性を有する中間樹脂層2と、この中間樹脂層2の表面に積層される導電性の表面層3とを備えた二層構造でも良い。
【0044】
また、テープ本体1を加熱軟化させてプレス成形装置の金型にセットしたが、テープ本体1を加熱軟化させることなく、プレス成形装置の加熱された金型にセットしても良い。また、テープ本体1の中央部を凹ませ、この凹み部分に複数の収納エンボス10を一体形成することもできる。また、各収納エンボス10の底板13に、電子部品を浮かせて支持する平面略枠形の支持壁を立設することもできる。さらに、改質領域40は、平面略リング形の他、平面略枠形、円形、楕円形、矩形、多角形等に適宜形成することが可能である。
【実施例
【0045】
以下、本発明に係るキャリアテープの製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、キャリアテープに加工するための細長い三層構造のテープ本体を用意し、このテープ本体側部の貫通孔形成予定部分にレーザ光線をレーザ照射装置により照射し、貫通孔形成予定部分に改質領域を形成した。
【0046】
テープ本体は、ポリスチレン製の中間樹脂層と、この中間樹脂層の表面に積層される導電カーボン製の表面層と、中間樹脂層の裏面に積層される導電カーボン製の裏面層とを備えた厚さ0.30mmの帯形とした。このテープ本体の表面層、中間樹脂層、及び裏面層は、1:9:1の層比に設定した。
レーザ光線は、テープ本体の表面層、中間樹脂層、及び裏面層にそれぞれ照射した。このレーザ光線を照射するレーザ照射装置は、中間樹脂層にレーザ光線を照射する場合には、内部吸収型の装置を用い、表面層と裏面層とにレーザ光線を照射する場合には、表面吸収型の装置を用いた。
【0047】
こうしてテープ本体側部の貫通孔形成予定部分に改質領域を形成したら、このテープ本体を金型にセットし、打ち抜き試験を実施してテープ本体の貫通孔形成予定部分に多数の貫通孔を形成し、各貫通孔のバリの有無等を観察・評価して図6(a)、(b)、(c)に誇張して図示するとともに、表1にまとめた。
金型のダイのクリアランスは10μmに設定した。また、貫通孔の評価は、100孔当たりのバリ発生数をカウントし、貫通孔周縁の表裏の面状態については、改質された幅の長さを測定することとした。
【0048】
〔実施例2〕
基本的には、実施例1と同様だが、テープ本体の貫通孔形成予定部分にレーザ光線を照射する際、テープ本体の中間樹脂層のみにレーザ光線を照射した。テープ本体側部の貫通孔形成予定部分に改質領域を形成したら、このテープ本体を金型にセットし、打ち抜き試験を実施してテープ本体の貫通孔形成予定部分に多数の貫通孔を形成し、各貫通孔のバリの有無等を観察・評価して図7(a)、(b)、(c)に図示するとともに、表1にまとめた。
【0050】
〔比較例〕
キャリアテープに加工するため、細長い三層構造のテープ本体を用意し、このテープ本体側部の貫通孔形成予定部分にレーザ光線することなく、テープ本体を金型にセットし、打ち抜き試験を実施してテープ本体の貫通孔形成予定部分に多数の貫通孔を形成し、各貫通孔のバリの有無等を観察・評価して表1に記載した。
【0051】
金型のダイのクリアランスは10μmに設定した。また、貫通孔の評価は、100孔当たりのバリ発生数をカウントし、貫通孔周縁の表裏の面状態については、改質された幅の長さを測定することとした。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1の場合、貫通孔100孔当たりのバリの有無を検査したが、バリは認められなかった。また、貫通孔周縁の表裏面の状態を検査したところ、ダレが認められたが、僅かなダレであり、実用上、問題ないのが判明した。
実施例2の場合、貫通孔100孔当たりのバリの有無を検査したが、バリは認められなかった。また、貫通孔周縁の表裏面の状態を検査したが、ダレも全く認められなかった。
【0055】
これに対し、比較例の場合、貫通孔100孔当たりのバリの有無を検査したところ、70孔で周縁バリや縦バリ等のバリを確認した。さらに、貫通孔周縁の表裏面の状態を検査したが、無視できない大きなダレが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るキャリアテープの製造方法は、小型の電子部品、半導体、携帯機器、情報機器、精密機器等の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0057】
1 テープ本体
2 中間樹脂層
3 表面層
4 裏面層
5 貫通孔
10 収納エンボス
13 底板(底部)
14 貫通孔
20 貫通孔形成予定部分
30 レーザ光線
40 改質領域
60 貫通孔
61 バリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8