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特許6993847超音波撮像装置、超音波プローブ、および、送信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】超音波撮像装置、超音波プローブ、および、送信装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017214908
(22)【出願日】2017-11-07
(65)【公開番号】P2019084070
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】網野 和宏
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-265945(JP,A)
【文献】特開2006-101997(JP,A)
【文献】米国特許第9380993(US,B2)
【文献】社団法人日本電子機械工業会,改訂医用超音波機器ハンドブック,日本,コロナ社,1997年01月20日,p.38
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信する複数の振動子と、前記複数の振動子にそれぞれ駆動信号を供給する送信部とを有し、
前記送信部は、振幅制御電圧生成部と、送信回路部とを含み、前記振幅制御電圧生成部と前記送信回路部は、共通の電圧電源に接続され、
前記振幅制御電圧生成部は、前記電圧電源の出力電圧と、前記駆動信号の重み付けのために前記振動子ごとの前記駆動信号の減衰度合を指示する減衰度合設定信号とを受け取って、前記電圧電源の出力電圧を前記減衰度合で減衰させた振幅制御電圧を生成し、
前記送信回路部は、前記電圧電源の出力電圧の絶対値を前記振幅制御電圧に対応する値まで低下させ、低下後の電圧を振幅とする所定の波形の駆動信号を前記振動子ごとに生成し、
前記振幅制御電圧生成部は、前記電圧電源の出力電圧を低下させた基準電圧Vを生成する基準電圧生成回路と、前記基準電圧Vの値に線形な関係の値を有する基準電流Iを生成する電圧電流変換回路と、前記基準電流Iを前記減衰度合設定信号に応じた電流I'に変化させる電流制御回路と、前記電圧電源の出力電圧を前記電流I'に応じて低減させて前記振幅制御電圧を生成する電流電圧変換回路とを備え
前記電流制御回路は、増幅率の異なる複数の電流増幅回路と、前記複数の電流増幅回路にそれぞれ接続されたスイッチとを含み、
前記スイッチは、前記減衰度合設定信号により1以上が選択的にオンにされ、オンにされたスイッチに接続された前記電流増幅回路は、それぞれ前記基準電流I を増幅して出力した後、出力した電流を束ねることにより、オンにされたスイッチに接続されている前記電流増幅回路の増幅率の和により前記基準電流I を増幅した電流I 'を生成することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、前記電圧電源の出力電圧は可変であり、撮像モードによって変更されることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、前記送信回路部と前記振幅制御電圧生成部は、前記振動子ごとに配置されていることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、前記振動子ごとに前記減衰度合設定信号を生成し、前記振幅制御電圧生成部へ出力する送信制御部をさらに有することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、前記電圧電源は、正の電圧と負の電圧をそれぞれ出力し、
前記振幅制御電圧生成部は、前記振幅制御電圧として、正側の振幅制御電圧と負側の振幅制御電圧の2種類を生成し、
前記送信回路部は、前記電圧電源が出力する前記正の電圧の絶対値を、前記正側の振幅制御電圧に対応する値まで低下させ、前記負の電圧の絶対値を、前記負側の振幅制御電圧に対応する値まで低下させ、低下後の前記正の電圧を正側の振幅とし、低下後の前記負の電圧を負側の振幅とする前記駆動信号を生成することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項6】
請求項に記載の超音波撮像装置であって、前記電流制御回路の出力する電流に、前記送信回路部で生じるオフセット電圧をキャンセルするための電流を加算する電流源をさらに有することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波撮像装置であって、装置本体と、前記装置本体に対してケーブルで接続された超音波プローブとを有し、前記振動子、前記送信回路部および前記振幅制御電圧生成部は、前記超音波プローブ内に配置されていることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項8】
超音波を送信する複数の振動子と、前記複数の振動子にそれぞれ駆動信号を供給する送信部とを有し、
前記送信部は、振幅制御電圧生成部と、送信回路部とを含み、前記振幅制御電圧生成部と前記送信回路部は、共通の電圧電源に接続され、
前記振幅制御電圧生成部は、前記電圧電源の出力電圧と、前記駆動信号の重み付けのために前記振動子ごとの前記駆動信号の減衰度合を指示する減衰度合設定信号とを受け取って、前記電圧電源の出力電圧を前記減衰度合で減衰させた振幅制御電圧を生成し、
前記送信回路部は、前記電圧電源の出力電圧の絶対値を前記振幅制御電圧に対応する値まで低下させ、低下後の電圧を振幅とする所定の波形の駆動信号を前記振動子ごとに生成し、
前記振幅制御電圧生成部は、前記電圧電源の出力電圧を低下させた基準電圧Vを生成する基準電圧生成回路と、前記基準電圧Vの値に線形な関係の値を有する基準電流Iを生成する電圧電流変換回路と、前記基準電流Iを前記減衰度合設定信号に応じた電流I'に変化させる電流制御回路と、前記電圧電源の出力電圧を前記電流I'に応じて低減させて前記振幅制御電圧を生成する電流電圧変換回路とを備え
前記電流制御回路は、増幅率の異なる複数の電流増幅回路と、前記複数の電流増幅回路にそれぞれ接続されたスイッチとを含み、
前記スイッチは、前記減衰度合設定信号により1以上が選択的にオンにされ、オンにされたスイッチに接続された前記電流増幅回路は、それぞれ前記基準電流I を増幅して出力した後、出力した電流を束ねることにより、オンにされたスイッチに接続されている前記電流増幅回路の増幅率の和により前記基準電流I を増幅した電流I 'を生成することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項9】
超音波を送信する複数の振動子にそれぞれ駆動信号を供給する送信装置であって、
振幅制御電圧生成部と、送信回路部とを含み、前記振幅制御電圧生成部と前記送信回路部は、共通の電圧電源に接続され、
前記振幅制御電圧生成部は、前記電圧電源の出力電圧と、前記駆動信号の重み付けのために前記振動子ごとの前記駆動信号の減衰度合を指示する減衰度合設定信号とを受け取って、前記電圧電源の出力電圧を前記減衰度合で減衰させた振幅制御電圧を生成し、
前記送信回路部は、前記電圧電源の出力電圧の絶対値を前記振幅制御電圧に対応する値まで低下させ、低下後の電圧を振幅とする所定の波形の駆動信号を前記振動子ごとに生成し、
前記振幅制御電圧生成部は、前記電圧電源の出力電圧を低下させた基準電圧Vを生成する基準電圧生成回路と、前記基準電圧Vの値に線形な関係の値を有する基準電流Iを生成する電圧電流変換回路と、前記基準電流Iを前記減衰度合設定信号に応じた電流I'に変化させる電流制御回路と、前記電圧電源の出力電圧を前記電流I'に応じて低減させて前記振幅制御電圧を生成する電流電圧変換回路とを備え
前記電流制御回路は、増幅率の異なる複数の電流増幅回路と、前記複数の電流増幅回路にそれぞれ接続されたスイッチとを含み、
前記スイッチは、前記減衰度合設定信号により1以上が選択的にオンにされ、オンにされたスイッチに接続された前記電流増幅回路は、それぞれ前記基準電流I を増幅して出力した後、出力した電流を束ねることにより、オンにされたスイッチに接続されている前記電流増幅回路の増幅率の和により前記基準電流I を増幅した電流I 'を生成することを特徴とする送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動信号の振幅を重み付け可能な超音波撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、非侵襲かつリアルタイムに観察することができる医療診断装置として広く利用されている。さらに、近年においては、従来の2次元画像に加え、3次元の立体画像なども表示できるようになり、用途は拡大の一途をたどっている。一方、画質についてはX線CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と比較すると低解像度のため、従来にも増した高画質化が求められている。
【0003】
超音波診断装置は、1次元または2次元に配列された複数の振動子を内蔵する超音波プローブから被検体に対して超音波ビームを送信し、被検体からのエコーを複数の超音波素子で受信し、得られた受信信号に基づいて超音波画像を生成する構成である。
【0004】
特許文献1には、超音波ビームに含まれる高調波成分を低減して、ハーモニックエコー法により得られる画像の画質を向上させるために、振幅が時間軸方向に正弦波形状に変化する超音波パルスを送信させる構造が開示されている。具体的には、振動子にはそれぞれパルス発生回路が接続され、パルス発生回路は、電圧が異なる複数の電源にそれぞれ接続された複数のスイッチング素子を順にオンオフすることにより段階的に振幅を変化させ、包絡線が正弦波形状のパルス信号を生成して、超音波素子に供給する。
【0005】
特許文献2には、振動子に振幅を設定した駆動信号を供給する送波回路を振動子ごとに備えた装置が開示されている。送波回路は、超音波プローブ内に配置され、装置本体から受け取った振幅設定信号の信号強度に応じて駆動信号の大きさを変化させる。
【0006】
また、超音波診断装置は、人体への照射可能な超音波エネルギーに制限があるため、Bモード画像を撮像する場合と、同じ位置に複数回の超音波パルスを送信する必要のあるカラードプラー画像を撮影する場合とで、超音波パルスの振幅を変更するのが一般的である。また、超音波パルスの振幅は、診断領域の広さや深度によっても変化させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-234202号公報
【文献】国際公開第2015/186234号(特に、段落0044~0050)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
超音波診断装置では、高画質な超音波画像を得るために、超音波ビームのメインローブの両脇に現れるサイドローブを低減することが望ましい。サイドローブ低減のためには、メインローブの中心の位置にある振動子の送信振幅を100%とした場合、送信中心から離れるにつれ振動子の送信振幅を80%、40%と徐々に低減させるように、振動子ごとの駆動信号の振幅を重み付け(アポダイゼーション)することが望まれる。また、サイドローブ低減のために振動子の位置に応じて振幅を低減するだけでなく、グレーティングローブの発生を避けるために、振動子の配置に応じた重み付けも必要になる。
【0009】
サイドローブ低減のための振幅の重み付けを行いながら、超音波ビームを走査する場合、メインローブの位置または方向をずらすたびに各振動子の駆動信号の振幅の重み付けを変更する必要がある。
【0010】
さらに、Bモード撮像とカラードプラー撮像との切り換えのために超音波パルスの振幅を変更する場合、超音波パルスの位置が変わらなければ、重み付けの割合自体は変更する必要はないが、超音波パルスの振幅自体が変更になるため、各振動子の駆動信号の振幅を変更する必要がある。特に、Bモード撮像とカラードプラー撮像用の超音波ビームを1秒間に複数回交互に送信し、両画像を同時に表示する撮像方法の場合には、1秒間に何回も同一の振動子の送信振幅を変更する必要がある。
【0011】
振動子ごとの駆動信号の振幅の重み付けをするための構成としては、例えば、特許文献1のように、電源電圧を複数種類用意して、電源電圧を選択する技術を応用することが考えられる。しかしながら、この技術は、振動子ごとに、複数種類の電源電圧を接続する配線と、重み付け後の振幅に応じて複数種類の電源電圧のいずれかを選択するスイッチが電源電圧ごとに必要になる。そのため、駆動信号の発生回路の回路規模が増大する。さらに、超音波ビームの送信のたびに、重み付け後の振幅を振動子ごとに算出する演算部や、どの電源電圧を選択すべきかを決定して、そのスイッチをオンにする制御部も必要になる。
【0012】
また、特許文献2に記載の送波回路のように、装置本体から受け取った振幅設定信号の大きさに応じて駆動信号の大きさを変化させる技術を応用して、振動子ごとの駆動信号の振幅の重み付けをすることも考えられる。しかしながら、この技術を応用する場合も、Bモード撮像とカラードプラー撮像とが切り替わるたびに、また、超音波ビームを走査するたびに、適切に重み付けされた振幅の大きさを振動子ごとに算出し、それを信号強度とする振幅設定信号を生成して、各振動子の送波回路に出力する演算部が必要となる。
【0013】
このように特許文献1の技術を応用してサイドローブ低減のために振動子ごとの駆動信号の重み付けをしようとすると、スイッチや配線等の回路規模が増大する。また、特許文献1、2はいずれも、重み付け後の振幅を振動子ごとに算出する演算部や、制御部等が必要になり、演算処理部の規模も増大する。このため、超音波撮像装置が大型化するという問題が生じる。
【0014】
本発明の目的は、超音波ビームの強度を変化させる場合であっても、振動子ごとの駆動信号の振幅の再演算を行うことなく、振動子ごとの駆動信号の重み付けを行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明では、以下のような超音波撮像装置を提供する。すなわち、本発明の超音波撮像装置は、超音波を送信する複数の振動子と、複数の振動子にそれぞれ駆動信号を供給する送信部とを有する。送信部は、振幅制御電圧生成部と、送信回路部とを含む。振幅制御電圧生成部と送信回路部は、共通の電圧電源に接続されている。振幅制御電圧生成部は、電圧電源の出力電圧と、駆動信号の重み付けのために振動子ごとの駆動信号の減衰度合を指示する減衰度合設定信号とを受け取って、電圧電源の出力電圧を減衰度合で減衰させた電圧に対応する振幅制御電圧を生成する。送信回路部は、電圧電源の出力電圧の絶対値を振幅制御電圧に対応する値まで低下させ、低下後の電圧を振幅とする所定の波形の駆動信号を前記振動子ごとに生成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、超音波ビームの強度を変化させる場合であっても、振動子ごとの駆動信号の振幅の再演算を行うことなく、振動子ごとの重み付けを行うことができる。
【0017】
上記した以外の課題、構成、および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態の超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
図2図1の超音波撮像装置の送信部120の構成を示すブロック図である。
図3図2の送信部120のさらに詳しい構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態の超音波撮像装置の振幅制御電圧生成部100の回路図である。
図5】第1の実施形態の超音波撮像装置の送信回路部102の回路図である。
図6】第2の実施形態の超音波撮像装置の送信部120の構成を示すブロック図である。
図7】第2の実施形態の超音波撮像装置の振幅制御電圧生成部100の回路図である。
図8】第2の実施形態の超音波撮像装置の送信回路部102の回路図である。
図9】本発明の第3の実施形態の超音波撮像装置の送信部120の構成を示すブロック図である。
図10】第3の実施形態の超音波撮像装置の振幅制御電圧生成部100の構成を示す回路図である。
図11】本発明の第4の実施の形態に係る超音波診断装置の外観を示したブロック図である。
図12】本発明の第5の実施の形態に係る超音波診断装置の外観を示したブロック図である。
図13】第4および第5の実施形態の振動子103に接続されるアナログフロントエンド回路41の配置を示した説明図である。
図14】(a)および(b)は、第4および第5の実施形態の振動子103の送信信号レベル(振幅)の分布を時間t1およびt2についてそれぞれ示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0020】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0021】
以下、実施の形態の超音波撮像装置を図面に基づいて説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の構成には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
図1に、本実施形態の超音波撮像装置の概略構成の一例を、図2に送信部120の構成を示す。図1および図2に示すように、本実施形態の超音波撮像装置300は、超音波を送信する複数の振動子103と、複数の振動子103にそれぞれ駆動信号を供給する送信部120とを有する。送信部120は、振幅制御電圧生成部100と送信回路部102とを有する。振幅制御電圧生成部100と送信回路部102は、共通の電圧電源121に接続されている。
【0023】
振幅制御電圧生成部100は、電圧電源121の出力電圧と、振動子103ごとの駆動信号の重み付けのための駆動信号の減衰度合を指示する減衰度合設定信号とを受け取って、電圧電源121の出力電圧を減衰度合設定信号が示す減衰度合で減衰させた電圧に対応する振幅制御電圧を生成する。
【0024】
送信回路部102は、電圧電源121の出力電圧の絶対値を振幅制御電圧に対応する値まで低下させ、低下後の電圧を振幅とする所定の波形の駆動信号を振動子ごとに生成する。生成した駆動信号は、各振動子103に出力される。
【0025】
このように、本実施形態では、減衰度合設定信号の示す振動子ごとの減衰度合を受け取って、電圧電源121の出力電圧を減衰度合で減衰させた電圧に対応する振幅制御電圧を振動子ごとに生成して駆動信号の振幅の重み付けをすることができる。よって、例えば超音波ビームの中心の振動子は減衰させず、中心の振動子から離れるにつれて徐々に減衰度合を大きくする等、振動子の位置に応じて減衰度合を設定しておくことにより、電圧電源121の出力電圧を変更するだけで、超音波ビームの出力全体を低下または増大させつつ、振動子の位置に応じた駆動信号の振幅の重み付けをすることができる。
【0026】
これにより、撮像モードの変更等に応じて、超音波ビームの出力を変更しながら、各振動子の出力を超音波ビームの中心から離れるにつれ徐々に低減する等の重み付けができるため、超音波ビームのサイドローブを抑制することができる。
【0027】
本実施形態では、1秒間に複数回、撮像モードを変更して超音波ビームの強度を変更する場合であっても、従来技術のように減衰(重み付け)後の振幅電圧を変更のたびに算出して、振幅設定信号として設定する必要がなく、電源電圧を変更するだけでよい。よって、演算回路および制御回路の規模およびケーブルの本数を低減でき、小型で簡素な構成の超音波撮像装置を提供できる。
【0028】
なお、超音波ビームを走査する場合等、振動子の位置に応じて重み分布を変更する際には、振動子ごとの減衰度合を指示する減衰度合設定信号を変更すればよく、減衰後の振幅電圧まで算出する必要はない。
【0029】
送信回路部102と振幅制御電圧生成部100は、振動子103ごとに配置する構成とすることができる。
【0030】
また、振動子103ごとの減衰度合設定信号を生成し、振幅制御電圧生成部100へ出力する送信制御部101を送信部120内に配置してもよい。
【0031】
以下、本実施形態の超音波撮像装置についてさらに詳しく説明する。
【0032】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態の超音波撮像装置について、具体的に説明する。
【0033】
図1のように、第1の実施形態の超音波撮像装置300は、上述した複数の振動子103と送信部120と電圧電源121の他に、受信部105と、送受分離部104と、制御部122と、画像処理部106とを備えて構成される。電圧電源121は、出力する電圧を変更可能な可変電圧電源である。
【0034】
送信部121は、その構成をこの後詳しく説明するように、可変電圧電源121から供給される電圧から、振動子103ごとに重み付けされた駆動信号を生成して、振動子103に出力して、振動子103から被検体(不図示)の撮像領域に超音波ビームを送信させる。超音波ビームの強度は、撮像モードによって変化させる。撮像モードがBモードとカラードプラーの同時撮像である場合には、それぞれの撮像用に設定された強度の超音波ビームを交互に照射する。超音波ビームは、被検体組織によって反射等されてエコーを生じ、探触子130の各振動子103によって受信される。制御部122は、送信部120および可変電圧電源12を制御する。
【0035】
受信部105は、撮像モードがBモードである場合には、各振動子103が出力する受信信号を遅延させた後加算する処理(受信ビームフォーミング)を行うことにより撮像領域に設定された複数の受信焦点についての焦点データを生成する。また、受信部105は、撮像モードがカラードプラーである場合には、血流情報を得るため、複数回の超音波の送受信で得た信号を用いてドプラー周波数を受信焦点ごとに算出する。画像処理部106は、撮像モードがBモードである場合には、受信焦点の焦点データの値をその受信焦点の位置の画素の画素値とすることにより、撮像領域のBモード画像を生成する。また、撮像モードがカラードプラーである場合には、画像処理部106は、受信焦点の位置の画素にドプラー周波数に応じた色を割り当て、カラードプラー画像を生成する。撮像モードがBモードとカラードプラーの両方である場合には、両画像をそれぞれ生成する。生成された画像は、画像処理部106に接続されている表示部107に表示される。
【0036】
送受分離部104は、送信部121から振動子103に出力される駆動信号と、振動子103が出力する受信信号を分離する。
【0037】
送信部120についてさらに詳しく説明する。図2に示すように、送信部120は、上述した振幅制御電圧を生成する振幅制御電圧生成部100および送信回路部102に加えて、送信制御部101を備えている。振幅制御電圧生成部100および送信回路部102は、振動子103ごとに配置されている。振幅制御電圧生成部100と送信回路部102はいずれも、共通の可変電圧電源121に接続されている。送信制御部101は、減衰度合設定信号および送信制御信号をそれぞれ生成し、振幅制御電圧生成部100および送信回路部102に出力する。
【0038】
図3に、振幅制御電圧生成部100および送信回路部102の構造を示す。
【0039】
振幅制御電圧生成部100は、電圧電源121の出力電圧から基準電圧を生成する基準電圧生成部1と、基準電圧を電流に変換する電圧電流変換部2と、電圧電流変換回路2が変換した電流を減衰度合設定信号にしたがって設定する電流制御部3と、電流制御部3が設定した電流を電圧に変換することにより振幅制御電圧を生成する電流電圧変換部4とを有する。送信回路部102は、可変電圧電源の出力電圧を振幅制御電圧に対応する電圧まで低下させる振幅制御部5と、低下後の電圧を振幅とする所定のパルス波形の駆動信号を生成する駆動回路6とを有する。このとき、振幅制御電圧は、可変電圧電源121の電圧を変動させた場合でも、減衰度合設定信号の示す減衰度合で電源電圧を減衰させた、電源電圧に比例した電圧となるため、電源電圧の大きさと減衰度合(重み付け)を反映した振幅制御が可能となる。上記各部1~6は、本実施形態では一例としてアナログ回路によって構成されている。
【0040】
振幅制御電圧生成部100の具体的な回路構成例を図4に示す。
【0041】
基準電圧生成部1は、抵抗値Rの抵抗10と抵抗値Rの抵抗11を直列に接続し、抵抗10と抵抗11の間の配線に出力端子が接続された構成である。抵抗10は、可変電圧電源121に接続されている。可変電圧電源121の電圧をHVDDで表すと、下式(1)のように、電源電圧HVDDが抵抗分割された基準電圧Vが出力端子から出力される。
【0042】
=HVDD×R/(R+R) ・・・(1)
【0043】
電圧電流変換部2は、オペアンプ(OPAMP)12、N型MOS(NMOS)トランジスタ13、および、抵抗値Rref’の基準抵抗14を備えて構成される。OPAMP12のプラス端子には、基準電圧生成部1の出力する基準電圧Vが入力される。OPAMP12の出力は、NMOSトランジスタ13のゲート端子に接続される。NMOSトランジスタ13のソース端子は、基準抵抗14およびOPAMP12のマイナス端子に接続され、フィードバックループを形成している。基準抵抗14のもう一方の端子は接地されている。このような回路構成の電圧電流変換部2の出力は、NMOSトランジスタ13のドレイン端子となる。
【0044】
上記フィードバックループにより、OPAMP12のマイナス端子の電圧V’は、プラス端子の入力信号である基準電圧Vと等しくなる。電圧V’は、基準抵抗14にも接続されているので、基準抵抗14に流れる電流Iは、I=V’/Rref’となる。したがって、電流Iは、式(2)により表され、NMOSトランジスタ13のドレイン端子から、電圧電流変換部2の出力として出力される。
【0045】
=V/Rref’ ・・・(2)
【0046】
電圧電流変換部2と電流制御部3との間には、PMOSトランジスタ15、16が配置されている。PMOSトランジスタ15、16は、カレントミラー回路を構成しており、電圧電流変換回路2の出力電流Iの向きを変換して次段の電流制御部3に伝達する。
【0047】
電流制御部3は、NMOSトランジスタ17と、複数のNMOSトランジスタ18a~18nとで構成されるカレントミラー回路、および、NMOSトランジスタ18a~18nにそれぞれ接続されたスイッチ19a~19nで構成される。図4の回路構成では、同じゲート電圧が印加された場合に、NMOSトランジスタ18a~18nは、NMOSトランジスタ17と同じ大きさ(増幅率1)の電流が流れるNMOSトランジスタ18a、2倍(増幅率2)の電流が流れるNMOSトランジスタ18b、・・・、および、N倍(増幅率N)の電流が流れるNMOSトランジスタ18nによって構成されている。よって、送信制御部101は、減衰量設定信号によってスイッチ19a~19bのうち、1以上のスイッチを選択的にオンにすることにより、1以上のNMOSトランジスタ18a~18nがオンになり、オンになったNMOSトランジスタを流れる電流を合計した電流I’が、電流制御部3の出力として、NMOSトランジスタ18a~18nから出力される。したがって、電流制御部3への入力信号である電流Iは、電流I’に増幅されて出力される。減衰量設定信号によりオンにされる1以上のスイッチに接続されているNMOSトランジスタ18a~18nの増幅率の和をnとすると、増幅後の電流I’は、下式(3)で表される。
【0048】
’=n×I ・・・(3)
【0049】
電流電圧変換部4は、可変電圧電源121に接続された抵抗値Rrefの基準抵抗21と、高圧NMOSトランジスタ20とを直列に接続した回路構成であり、入力電流I’は、NMOSトランジスタ20のソース端子に入力される。基準抵抗21とNMOSトランジスタ20の間の配線に、振幅制御電圧の出力端子が接続されている。高圧NMOSトランジスタ20は電流制御部3の保護用レベルシフタである。可変電圧電源121の出力電圧HVDDは、入力電流I’に応じて低下し、下式(4)で表される振幅制御電圧VAMPが、電流電圧変換部4から出力される。
【0050】
AMP=HVDD-Rref×I’ ・・・(4)
【0051】
式(4)に、式(1)~(3)を代入すると、式(5)で表される。
【0052】
AMP=HVDD(1-Rref/Rref’×n×R/(R+R)) ・・・(5)
【0053】
式(5)において、Rref=Rref’である場合、式(5)は、下式(6)で表される。
【0054】
AMP=HVDD(1-n×R/(R+R)) ・・・(6)
【0055】
式(6)から明らかなように、振幅制御電圧VAMPは、減衰量設定信号によりオンにされる1以上のスイッチに接続されているNMOSトランジスタ18a~18nの増幅率の和nに比例する割合(n×R/(R+R))で、可変電圧電源121の出力電圧HVDDを減衰させた電圧値であり、可変電圧電源121の出力電圧HVDDが変動しても、減衰の割合(n×R/(R+R))は変わらない。例えば、図4の回路において、例えば、Rを10kΩ、Rを90kΩとすると、式(6)は、下式(7)となる。
【0056】
AMP=HVDD(1-0.1n) ・・・(7)
【0057】
式(7)において、nを1とすると、VAMP=0.9HVDDとなり、nを2とするとVAMP=0.8HVDDとなり、振幅制御電圧VAMPの減衰割合が大きくなる。また、電源電圧HVDDが変化しても、減衰度合設定信号により設定する増幅率の和nを変化させない限り減衰割合は変わらず、変動する電源電圧HVDDを、設定された減衰度合で減衰させた振幅制御電圧VAMPが生成可能となる。
【0058】
次に送信回路部102の回路構成例を図5を用いて説明する。図5のように、送信回路部102は、振幅制御部5と、駆動回路部6とを有する。
【0059】
振幅制御部5は、高電圧NMOSトランジスタからなり、ゲート端子には振幅制御電圧VAMPが入力される。
【0060】
駆動回路部6は、カレントミラー回路を構成するPMOSトランジスタ30および高電圧PMOSトランジスタ31と、PMOSトランジスタ30のソース端子に接続された高電圧NMOSトランジスタ32とを有する。高電圧NMOSトランジスタ32のソース端子には、ゼロと所定の駆動電流Ibの2値を交互にとる電流信号を出力する電流源33が接続されている。高電圧PMOSトランジスタ31のドレイン端子には、振動子103と負荷抵抗34が接続されている。高電圧NMOSトランジスタ32は、電流信号33の耐圧保護のために配置されている。
【0061】
送信制御部101の出力する送信制御信号は電流源33に加えられ、送信制御信号が加えられた場合には電流源33は駆動電流Ibを出力する。駆動回路部6は、電流源33の出力する電流信号を駆動電流として、振動子103に出力し、振動子103をドライブする。負荷抵抗34は、振動子103の電圧がVOUTになり、駆動電流がゼロになったときに、振動子103の電荷を放電し、振動子103の電位を接地レベルまで変化させる。
【0062】
駆動回路部6の振動子103への出力信号VOUTのHighレベルの電圧値は、振幅制御電圧VAMPと連動して変化する。振幅制御電圧VAMPは、電源電圧HVDDを設定された減衰度合で減衰させた電圧であるため、振動子103への出力信号VOUTも振幅制御電圧VAMPに対応した振幅を有する。これにより、振動子103から出力される超音波信号は、振幅制御電圧VAMPに対応した強度を有するため、所定の減衰度合で駆動信号VOUTを減衰させることにより重み付けした強度となる。
【0063】
なお、超音波ビームを送信焦点に集束させるために、送信焦点の位置に応じて振動子103ごとの駆動信号を遅延させる必要がある。そのため、送信制御部101は、送信焦点の位置に応じて遅延させたタイミングで送信制御信号を出力する。
【0064】
したがって、複数の振動子103から送信する超音波ビームの強度を変化させる場合には、電源電圧HVDDを変化させるだけで、振動子ごとの駆動信号の振幅の演算を行うことなく、振動子ごとの重み付けを行うことができる。例えば、超音波ビームの中心に位置する振動子の出力は100%とし、中心から離れるにつれ振動子の出力を低減することにより、サイドローブを低減した超音波ビームを送信することができる。
【0065】
このとき、制御部122は、超音波ビームの位置を必要に応じて、送信のたびに走査(移動)させる。これにより、超音波ビームの中心の振動子103の位置がずれるため、減衰度合設定信号を振動子の減衰度合に応じて設定する必要がある。送信制御部101は、超音波ビームの中心位置と、その時の各振動子103の減衰度合を定めた情報を、予め制御部122から受け取り、内蔵するメモリ101aに格納している。送信制御部101aは、制御部122から超音波ビームの中心位置の走査(移動)の指示を受け取った場合には、メモリ101aから振動子103ごとの減衰度合を読み出して、その減衰度合を示す減衰度合設定信号を生成し、各振動子103の振幅制御電圧生成部100に設定する。
【0066】
また、制御部122は、Bモードとカラードプラーのように撮像モードを切り替える場合には、可変電圧電源121を制御し、電圧HVDDを撮像モードに応じて変動させる。具体的には、例えば、Bモード撮像用の電圧からカラードプラー撮像用の電圧に切り替える。Bモード画像とカラードプラー画像を同時に撮像する場合には、1秒間に複数回電圧HVDDをBモード撮像用の電圧からカラードプラー撮像用の電圧に切り替える。
【0067】
これにより、撮像モードに応じて強度が異なり、しかも、適切に重み付けされた超音波ビームを複数の振動子103から被検体に送信することができる。
【0068】
送信のたびに被検体内で生じる超音波ビームのエコーは、複数の振動子103により受信される。受信信号は、送受分離部104を介して受信部105に受け渡され、撮像モードに応じて、受信ビームフォーミング処理やドプラー周波数を求める処理が施される。これにより、複数の受信焦点について焦点データやドプラー周波数データが生成される。画像処理部106においてデータを用いてBモード画像やカラードプラー画像が撮像モードに応じて生成される。生成された画像は、表示部107に表示される。
【0069】
なお、上記構成では、計算の簡略化のため、基準抵抗14の抵抗値Rref’と、基準抵抗21の抵抗値Rrefが等しい(Rref=Rref’)場合を例に説明したが、両抵抗値は、異なっていてもよい。
【0070】
また、電流制御部3は、スイッチ19a~19nのうちオンにするNMOSトランジスタ18a~18nの増幅率nの和によって、振幅制御電圧の減衰度合を制御しているが、基準抵抗14や基準電圧生成部1の抵抗11や抵抗10の抵抗値を可変にしても同様の効果を得ることが可能となる。
【0071】
さらに、上記実施回路例はあくまでも一つの実施例を示しただけで、電源電圧と線形な関係となる基準電流から振幅制御電圧が生成できれば上記の限りではない。
【0072】
上述してきた構成では、送信回路部102および送受分離部104は複数の超音波振動子103と同じ数が配置されている。振幅制御電圧生成部100は、送信回路部102と同数配置してもよいし、複数の振動子103を同一振幅で駆動する場合は複数の送信回路部102に対して一つ配置してもよい。
【0073】
また、送信部120を超音波プローブ側に配置するか、本体側に配置するかについては、第4および第5の実施形態において説明する。
【0074】
[第2の実施の形態]
第2の実施形態の超音波撮像装置について説明する。上述した第1の実施形態では、電圧波形が、ゼロと、正の電圧Voutの間で変化する駆動信号を生成したが、第2の実施形態では、電圧波形が、負の電圧VOUTLと、正の電圧VOUTHとゼロレベルの3値で変化する駆動信号を生成する。これにより、正負対称な波形を生成可能になり、パルスインバージョンを用いたTHI撮像が可能となる。
【0075】
第2の実施形態の超音波撮像装置において第1の実施形態の超音波撮像装置と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、第1の実施形態とは異なる構成について以下説明する。
第2の実施形態では、可変電圧電源121は、正の電圧と負の電圧をそれぞれ出力する。振幅制御電圧生成部100は、振幅制御電圧として、正側の振幅制御電圧と負側の振幅制御電圧の2種類を生成する。送信回路部102は、可変電圧電源121が出力する正の電圧の絶対値を、正側の振幅制御電圧に対応する値まで低下させ、負の電圧の絶対値を、負側の振幅制御電圧に対応する値まで低下させ、低下後の正の電圧を正側の振幅とし、低下後の負の電圧を負側の振幅とする駆動信号を生成する。
【0076】
図6に、第2の実施形態の超音波撮像装置の送信部120の具体的な構成を示す。送信部120は、第1の実施形態と同様に、振幅制御電圧生成部100と、送信回路部102とを備える。また、可変電圧電源121として、正の電圧を供給する可変電圧電源121aと負の電圧を供給する可変電圧電源121bとを備えている。
【0077】
振幅制御電圧生成部100は、第1の実施形態と同様の基準電圧生成部1と、電圧電流変換部2と、正側の振幅制御を行う電流制御部3aおよび正側の電流電圧変換部4aと、負側の振幅制御を行う電流制御部3bおよび負側の電流電圧変換部4bとを備えている。正側の電流制御部3aおよび正側の電流電圧変換部4aは、第1の実施形態の電流制御部3および電流電圧変換部4と同じ構成であり、正側の振幅制御電圧を生成する。負側の電流制御部3bおよび負側の電流電圧変換部4bは、第1の実施形態の電流制御部3および電流電圧変換部4とほぼ同様の構成であるが、負側の振幅制御電圧を生成する。
【0078】
すなわち、振幅制御電圧生成部100は、電圧電流変換部2の出力を正側の振幅制御を行う電流制御部3aと負側の振幅制御を行う電流制御部3bに分離して、正側の振幅と負側の振幅を個別に電流電圧変換部4a、4bで生成する。ここでは、基準電圧生成部1と電圧電流変換部2は、正負の区別なく共通に配置され、負側の電流制御部3bは、正側と同じ基準電流Iを用いて負側の振幅制御電圧を生成する。
【0079】
送信回路部102は、正側の振幅制御部5aおよび駆動回路6aに加え、負の可変電圧電源121bに接続された負側の振幅制御部5bおよび駆動回路6bを備えている。正側の振幅制御部5aおよび負側の振幅制御部5bには、それぞれ正側の振幅制御電圧および負側の振幅制御電圧がそれぞれ独立に入力される。正側および負側の駆動回路部6a、6bからそれぞれ出力された正の駆動電圧VOUTHの信号と負の駆動電圧VOUTLの信号は、パルスのピーク位置の位相をずらして共通の信号線に入力されることにより、波形が、負の電圧VOUTLと正の電圧VOUTHとの間で変化する駆動信号を生成する。この駆動信号は、振動子103に供給され、振動子103を駆動させる。これにより、正負非対称な振幅制御も可能となり、複雑な波形の駆動信号を生成することができる。
【0080】
具体的な、振幅制御電圧生成部100の具体的な回路構成例を図7に示す。基準電圧生成部1、電圧電流変換部2、正側の電流制御部3a、正側の電流電圧変換部4aおよび、電圧電流変換部2と正側の電流制御部3aを接続して基準電流Iを供給するカレントミラー回路(15,16)の各回路構成は、第1の実施形態の図4の基準電圧生成部1、電圧電流変換部2、電流制御部3、電流電圧変換部4およびカレントミラー回路(15,16)と同じである。
【0081】
負側の電流制御部3bは、複数のPMOSトランジスタ18a~18nにより構成されており、PMOSトランジスタ15とカレントミラーを構成している。よって負側の電流制御部3bは、NMOSトランジスタ17と、サイズの異なる複数のNMOSトランジスタ18a~18nとで構成される正側の電流制御部3aと、トランジスタの半導体型は異なるが、同様の回路構成である。
【0082】
負側の電流電圧変換部4bは、高耐圧PMOSトランジスタ24と基準抵抗25とを直列接続し、基準抵抗25には負側の可変電圧電源121bを接続した構成である。よって、負側の電流電圧変換部4bは、高耐圧NMOSトランジスタ20と基準抵抗21とを接続した正側の電流電圧変換部4aと、トランジスタの半導体型は異なるが、同様の回路構成である。
【0083】
負側の電流制御部3bのPMOSトランジスタ22a~22nは、スイッチ23a~23nを送信制御部101が出力した減衰度合設定信号によってオン・オフされると、オンになったPMOSトランジスタを流れる電流の合計した電流I’’が、電流制御部3の出力として、PMOSトランジスタ22a~22nから出力される。したがって、電流制御部3bへの入力信号である電流Iは、電流I’に増幅されて出力される。減衰量設定信号によりオンにされる1以上のスイッチに接続されているPMOSトランジスタ22a~22nの増幅率の和をmとすると、負側の可変電圧電源121bの電圧をHVSSすると、負側振幅制御電圧VAMPLは式(8)で表される。ただし、式(8)は、一例として、負側の電圧HVSSが、正側の可変電圧電源HVDDと絶対値が等しいとしている。
【0084】
AMPL=HVSS(1-m×R/(R+R)) ・・・(8)
【0085】
正負の電圧が出力可能となる送信回路部102の回路構成例を図8に示す。正側の振幅制御部5aおよび駆動回路6aは、第1の実施形態の図5の振幅制御部5および駆動回路6の回路構成と同じである。負側の振幅制御部5bは、高電圧PMOSトランジスタ5bで構成され、駆動回路部6bは、電圧レベルを変換する高耐圧PMOSトランジスタ36と、NMOSトランジスタ38と、高耐圧NMOSトランジスタ35で構成される。
【0086】
送信制御部101の出力する送信制御信号は電流源33、37に加えられ、Hレベルを出力するときは電流源33を、Lレベルを出力するときは電流源37をオンして、これを交互に繰り返すことで、超音波振動子103に対してHレベルのVOUTH、LレベルのVOUTLで駆動可能となる。また、電流源33,37が両方ともオフのときは負荷抵抗34によりゼロレベルが出力される。このときのVOUTHおよびVOUTL信号レベルは、正負の振幅制御電圧VAMPH、VAMPLと連動して変化する。振幅制御電圧VAMPHは、電源電圧HVDDを設定された減衰度合で減衰させた電圧であり、振幅制御電圧VAMPLは、電源電圧HVSSを設定された減衰度合で減衰させた電圧であるため、振動子103への出力信号VOUTH、VOUTLも振幅制御電圧VAMPH、VAMPLにそれぞれ対応した振幅を有する。振幅制御電圧VAMPH、VAMPLは、可変電圧電源121a,121bの電圧を変動させた場合でも、減衰度合設定信号の示す減衰度合で電源電圧を減衰させた、電源電圧HVDD、HVSSに比例した電圧となるため、電源電圧の大きさと減衰度合(重み付け)を反映した振幅制御が可能となる。
【0087】
なお、上述の説明では、正側の電源電圧HVDDと負側の電源電圧HVSSの大きさが等しいとしたが、異なる電圧の場合は、基準電圧生成部1と電圧電流変換部2を正負それぞれ独立に配置すればよい。正側電源HVDDと負側電源HVSSが異なっても減衰度合が一定である送信回路が提供可能である。
【0088】
[第3の実施の形態]
続いて、第3の実施の形態について説明する。第1の実施形態において、振幅制御電圧VAMPは、式(6)のように可変電圧電源121の出力電圧HVDDを設定された減衰度合で減衰させた電圧値となる。しかしながら、超音波振動子103に印加される電圧VOUTは、送信回路部102の振幅制御部5で発生するオフセット電圧により、振幅制御電圧VAMPと異なる場合がある。例えば、図5に示した送信回路部102においては、出力電圧VOUTのHレベルVOUTHは、High区間において振幅制御部5にも電流源33の電流が流れるため、振幅制御部5のNMOSトランジスタのゲート端子とソース端子に電位差が発生する。そのため、このゲート・ソース間電圧をVGSとすると、VOUTHとVAMPの関係は式(9)のようになる。
【0089】
OUTH=VAMP-VGS ・・・(9)
【0090】
GS5は、可変電圧電源の電圧HVDDによらない一定の電圧になるため、送信回路部102の電源電圧HVDDが小さい場合や、減衰度合を大きく設定した場合などには、VGS5が無視できず、設定した減衰量からの誤差となって出力される。そこで、第3の実施形態では、図9に示すように、振幅制御電圧生成部100に固定電流生成部7を設けて、オフセット電圧VGS5に相当する電流を電流制御部3からの出力電流に加算することで、オフセット電圧VGS5分の誤差をキャンセルする。
【0091】
図10に具体的な構成例を示す。図4の振幅制御電圧生成部100の同様の回路構成において、電流制御部3のスイッチ19a~19nと電流電圧変換部4の高耐圧NMOSトランジスタ20のソース間に、可変電圧電源121の電源電圧HVDDに依存しない固定のオフセット電流源26を接続し、オフセット電流Ioffを供給する。この回路構成により、振幅制御電圧VAMPは式(10)、出力電圧VOUTHは式(11)で表される。
【0092】
AMP=HVDD(1-n×R/(R+R))+R×Ioff ・・・(10)
OUTH=HVDD(1-n×R/(R+R))+R×Ioff-VGS ・・・(11)
【0093】
よって、VGS=R×Ioffとなるようにオフセット電流Ioffの大きさを設定すれば、出力電圧VOUTHは、
OUTH=HVDD(1-n×R/(R+R))
となり、送信回路部102の出力電圧を、設定された減衰度合に応じて、より正確に減衰させることができる。
【0094】
なお、上記説明では、正側のみ出力電圧VOUTHの動作を説明したが、第2の実施形態の出力電圧VOUTLも同様にオフセット電圧をキャンセルすることが可能である。
【0095】
また、オフセット電圧VGSが、NMOSトランジスタの温度特性や製造バラつきにより変動することもあるため、オフセット電流Ioffがオフセット電圧VGSの変動に連動して変化するような可変電流源26を用いると、さらに精度よくオフセット電圧VGSをキャンセルして、出力電圧の減衰度合の精度を向上させることができる。
【0096】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態として、超音波撮像装置の外観の一例を図11に示す。
【0097】
超音波診断装置は、メインフレーム(装置本体)201と、超音波プローブ203と、メインフレーム201と超音波プローブ203とを接続するケーブル202とを備えている。また、メインフレーム201には、画像表示部107が搭載され、接続されている。
【0098】
本実施形態では、超音波プローブ203に振動子103が配置され、メインフレーム201内部に送信部120が配置されている。送信部120と振動子103は、ケーブル202内部の配線を介して接続されている。したがって、振幅制御電圧生成部100および送信回路部102は、メインフレーム201内部に配置された構成である。
【0099】
本実施形態の送信部120の振動制御電圧生成部100および送信回路部102は、第1~第3の実施形態で述べたように、可変電圧電源121の電圧を変更した場合であっても、駆動信号の電圧値を演算により求める必要がなく、設定された減衰度合で減衰させることができる簡素な回路構成であり、回路規模が小さい。よって、メインフレーム201内に配置することにより、小型のメインフレームを実現できる。
【0100】
なお、この構成においては、複数の振動子103ごとに減衰させた駆動信号をメインフレーム201の送信回路部102から、ケーブル202を介して超音波プローブ203の振動子103に対して出力するため、ケーブル202としては、専用線が配置されていることが望ましい。
【0101】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態として、超音波撮像装置の外観の別の例を図11に示す。
【0102】
第5の実施形態の超音波診断装置は、メインフレーム(装置本体)201と、超音波プローブ203と、ケーブル202とを備えている。また、メインフレーム201には、画像表示部107が搭載され、接続されている。送信部120は、超音波プローブ203内に配置される。
【0103】
本実施形態の送信部120の振動制御電圧生成部100および送信回路部102は、第1~第3の実施形態で述べたように、可変電圧電源121の電圧を変更した場合であっても、駆動信号の電圧値を演算により求める必要がなく、設定された減衰度合で減衰させることができる簡素な回路構成であり、回路規模が小さい。よって、超音波プローブ203内に振動子103と配置することが可能であり、しかも、小型の超音波プローブ203を提供することができる。
【0104】
また、送信部120を超音波プローブ203に配置することにより、ケーブル202は、送信部120用としては、送信制御部101と制御部122の間の制御信号のためのケーブルと電源電圧の供給のためのケーブルがあればよく、ケーブル本数を低減することができ、ケーブル202の小型化が可能である。
【0105】
第4および第5の実施形態において、超音波プローブ203に配置される振動子103は、M×N個の2次元配列に並べてもよい。このとき、図13に示したように、振動子103それぞれに対して、アナログフロントエンド回路41として、送信回路部102と、受信部105の一部である遅延回路とを接続する。このように、振動子103を2次元に配列し、送信焦点および受信焦点を調節することにより、3次元の超音波画像が生成可能である。
【0106】
M×N個に配列された振動子103ごとのアナログフロントエンド回路41は、図13のように、同一の半導体基板上で形成され、受信部105の遅延制御部や、振幅制御電圧生成部100と共にビームフォーマLSI40として集積化した構成にすることができる。
【0107】
このとき、図13のように、振幅制御電圧生成部100は、M×N個のアナログフロントエンド回路41の列の端部に配置し、複数個の送信回路部102に対して振幅制御電圧を供給する構成としてもよい。
【0108】
送信信号の変化の一例を模式図として図14に示す。図14(a)の時刻t1から図14(b)の時刻t2とでは、送信する超音波ビームの中心位置が行方向にずれており、それに応じてアポダイゼーションによる振動子ごとの送信信号レベルも変化している。このように送信する超音波ビームの中心から離れるにつれ、振幅の減衰度合を徐々に大きく設定し、かつ、超音波ビームの中心位置を時間とともに移動させている。これにより、超音波ビームのサイドローブを低減しながら、超音波ビームを走査することができる。
【符号の説明】
【0109】
1:基準電圧生成部、2:電圧電流変換部、3:電流制御部、3a,3b:電流制御部、4:電流電圧変換部、4a,4b:電流電圧変換部、5:振幅制御部、5a,5b:振幅制御部、6:駆動回路部、6a,6b:駆動回路部、7:固定電流生成部、10、11:抵抗、12:オペアンプ(OPAMP)、13,17,18a~18n:N型MOS(NMOS)トランジスタ、14,21,25:基準抵抗、15,16,22a~22n:P型MOS(PMOS)トランジスタ、19a~19n,23a~23n:スイッチ、20:高耐圧NMOSトランジスタ、21:高耐圧PMOSトランジスタ、24:高耐圧PMOSトランジスタ24、26:固定電流源、30:PMOSトランジスタ、31,36:高耐圧PMOSトランジスタ、32,35:高耐圧NMOSトランジスタ、33,37:電流源、33:電流源、34:基準抵抗、38:NMOSトランジスタ、40:ビームフォーマIC、41:アナログフロントエンド回路、100:振幅制御電圧生成部、101:送信制御部、101a:メモリ、102:送信回路部、103:振動子、104:送受分離部、105:受信部、106:画像処理部、107:表示部、120:送信部、121:可変電圧電源、122:制御部、201:メインフレーム、202:ケーブル、203:超音波プローブ
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