(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】逆走防止構造
(51)【国際特許分類】
E01F 9/529 20160101AFI20220106BHJP
E01F 9/553 20160101ALI20220106BHJP
E01C 23/00 20060101ALI20220106BHJP
E01C 1/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
E01F9/529
E01F9/553
E01C23/00 Z
E01C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2017229006
(22)【出願日】2017-11-29
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 恒
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-106150(JP,A)
【文献】実開昭57-059735(JP,U)
【文献】特開2017-107559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/529
E01F 9/553
E01C 23/00
E01C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の路面に形成された逆走防止構造であって、
順走及び逆走方向に対して斜めに延在するとともに、前記順走及び逆走方向に間隔を空けて設けられた複数の突条部を備え、
各前記突条部が、前記逆走方向から見て手前側に位置する第1傾斜面を有し、
前記道路を逆走する移動体が、前記第1傾斜面により、前記各突条部の延在方向に誘導されるように構成され
、
前記各突条部が、前記逆走方向から見て、左の奥から右の手前に向けて斜めに延在形成され、
前記各突条部が、前記順走及び逆走方向に対して異なる角を成して延在する第1部位及び第2部位を有し、
前記第1部位は、前記逆走方向から見て、前記第2部位より前記右の手前側に位置し、
前記順走及び逆走方向に延在する仮想線と前記第1部位との成す角である第1角が、前記仮想線と前記第2部位との成す角である第2角より小さいことを特徴とする逆走防止構造。
【請求項2】
前記各突条部が、前記第1傾斜面より前記逆走方向の奥側に位置する第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜面の前記路面に対する第1傾斜角が、前記第2傾斜面の前記路面に対する第2傾斜角より大きいことを特徴とする請求項1に記載の逆走防止構造。
【請求項3】
前記道路は、前記逆走方向から見て前記各突条部が奥に位置する側の路肩に退避領域を有することを特徴とする請求項1
または2に記載の逆走防止構造。
【請求項4】
前記各突条部は、前記退避領域まで延在形成されていることを特徴とする請求項
3に記載の逆走防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の逆走防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、逆走ではないと思い込んでいる逆走車のドライバーに対して逆走である事実を気付かせることができる逆走防止システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に開示された従来の逆走防止システムは、高規格幹線道路等の出口通路に設置された逆走車検知装置と、逆走車検知装置が逆走車を検知した場合に前記出口通路に沿って所定長にわたって逆走車のドライバーが視認継続可能に配置される強力ライトと、を有して構成されている。従来の逆走防止システムは、強力ライトで異常なまでの光を正面から当てることにより、心理的に怖気づかせるという心理面に対するアプローチにより、逆走であることを運転者に認識させる。これにより、逆走ではないと思い込んでいる逆走車のドライバーに対して逆走である事実を気付かせていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の逆走防止システムには、逆走車を検知する逆走検知装置が用いられている。このため、逆走検知装置に電力を供給するための設備が必要であるとともに、逆走検知装置を定期的にメンテナンスする必要があり、コスト高を招く可能性があった。
【0006】
本発明は、低コスト化を図りつつ、道路を逆走する移動体を効果的に減少させる逆走防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の逆走防止構造は、道路の路面に形成された逆走防止構造であって、順走及び逆走方向に対して斜めに延在するとともに、前記順走及び逆走方向に間隔を空けて設けられた複数の突条部を備え、各前記突条部が、前記逆走方向から見て手前側に位置する第1傾斜面を有し、前記道路を逆走する移動体が、前記第1傾斜面により、前記各突条部の延在方向に誘導されるように構成され、前記各突条部が、前記逆走方向から見て、左の奥から右の手前に向けて斜めに延在形成され、前記各突条部が、前記順走及び逆走方向に対して異なる角を成して延在する第1部位及び第2部位を有し、前記第1部位は、前記逆走方向から見て、前記第2部位より前記右の手前側に位置し、前記順走及び逆走方向に延在する仮想線と前記第1部位との成す角である第1角が、前記仮想線と前記第2部位との成す角である第2角より小さいことを特徴とする。
【0008】
以上のような本発明によれば、道路を逆走する移動体は、各突条部の第1傾斜面により、各突条部が延在する方向に誘導される。即ち、路面に各突条部を形成することで、道路を逆走する移動体を、各突条部の延在方向へ誘導することができるから、従来技術の如く、逆走検知装置に電力を供給するための設備を必要とせず、メンテナンスの必要もほとんどないため、低コスト化を図りつつ、移動体を各突条部が延在する方向に誘導することができる。また、誘導に応じて道路を逆走する移動体を運転する運転者に対して逆走している事実を気付く機会を与えることができる。従って、道路を逆走する移動体を効果的に減少させることができる。
【0009】
また、各突条部が、第1傾斜面より逆走方向の奥側に位置する第2傾斜面を有し、第1傾斜面の路面に対する第1傾斜角が、第2傾斜面の路面に対する第2傾斜角より大きいことが好ましい。これによれば、道路を順走する移動体は各突条部の第1傾斜面より傾斜角が小さい第2傾斜面を乗り上げ、道路を逆走する移動体は各突条部の第2傾斜面より傾斜角が大きい第1傾斜面を乗り上げる。即ち、逆走防止構造は、道路を順走する移動体に対して各突条部が段差として機能し、道路を逆走する移動体に対しては、逆走方向への進行を阻み、各突条部の延在方向へ誘導するように機能する。従って、逆走防止構造を有する道路は、順走する移動体に対しては進行を妨げることなく通行させ、道路を逆走する移動体に対してのみ進行を阻みつつ移動体を各突条部の延在方向へ誘導するように、一方通行のみを許容する道路とすることができる。
【0010】
また、各突条部が、逆走方向から見て、左の奥から右の手前に向けて斜めに延在形成されていることが好ましい。左側通行の我が国では、右側より左側へ誘導される方が運転者に不安感を与えづらい。
【0011】
また、各突条部が、順走及び逆走方向に対して異なる角を成して延在する第1部位及び第2部位を有し、第1部位は、第2部位より右側に位置し、順走及び逆走方向に延在する仮想線と第1部位との成す角である第1角が、仮想線と第2部位との成す角である第2角より小さいことが好ましい。これによれば、移動体の前方右側の車輪が第1部位に当接し、そのまま走行し続けた場合に、前方左側の車輪が第2部位に当接する。この際、第2部位は、第1部位に比して、移動体の順走及び逆走方向に対する角度が大きいため、移動体は、第2部位に沿って、逆走方向の左側に誘導され易い。従って、逆走車を各突条部が延在する方向により一層誘導し易くすることができる。
【0012】
また、道路は、逆走方向から見て各突条部が奥に位置する側の路肩に退避領域を有することが好ましい。これによれば、移動体が各突条部により退避領域に誘導されることで、逆走車の安全を保ちつつ、道路を順走する移動体の通行を妨げることが抑制される。
【0013】
また、各突条部は、退避領域まで延在形成されていることが好ましい。これによれば、より高い確率で、移動体を退避領域に誘導することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の逆走防止構造によれば、低コスト化を図りつつ、道路を逆走する移動体を効果的に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る逆走防止構造が形成された路面を示す斜視図である。
【
図4】前記逆走防止構造の作用効果を説明するための図である。
【
図5】本発明の変形例に係る逆走防止構造を示す平面図である。
【
図6】本発明の他の変形例に係る逆走防止構造を示す平面図である。
【
図7】本発明のさらに他の変形例に係る逆走防止構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る逆走防止構造1が形成された道路10(路面1A)を、
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る逆走防止構造1が形成された路面1Aを示す斜視図であり、
図2は、
図1中のI-I線に沿う断面図であり、
図3は、
図1を上方から見た平面図である。
【0017】
本実施形態の逆走防止構造1は、一方通行路の出口部分に形成されて、一方通行路を逆走する四輪自動車C(移動体)を運転する運転者に対して逆走している事実を気付かせつつ、移動体を各突条部2が延在する方向に誘導するために形成されたものである。なお、本実施形態において、一方通行路の出口部分とは、高規格幹線道路や都市高速道路から一般道に出る際の一方通行路である出口通路の出口部分のことである。または、サービスエリアやパーキングエリア等の休憩施設に入る際の一方通行路である入口通路の出口部分であってもよく、一般道の一方通行路の出口部分であってもよい。
【0018】
逆走防止構造1は、
図1、2に示すように、道路10の順走方向Y1及び逆走方向Y2に所定の等間隔L(
図2に示す)を空けて形成された複数の突条部2を備えて構成されている。以下では、路面1Aにおいて、順走方向Y1及び逆走方向Y2に直交する方向を「道幅方向W」と記す場合がある。
【0019】
各突条部2は、路面1Aから凸でかつ、逆走方向Y2から見て左の奥から右の手前に向かうように、順走方向Y1及び逆走方向Y2に対して斜めに直線状に延在形成されている。即ち、各突条部2は、該突条部2を構成する第1傾斜面S1及び第2傾斜面S2の境界に位置する頂部Tが、順走方向Y1及び逆走方向Y2に対して斜めに延在形成されている。各突条部2は、
図2に示すように、断面が三角形状となるように、第1傾斜面S1及び第2傾斜面S2を有し、第1傾斜面S1と第2傾斜面S2が所定角を成すように形成されている。なお、本発明にいう「路面」とは、本発明の「逆走防止構造」が形成されなかった場合(形成する前の状態、あるいは、舗装と同時に作り込んで形成する場合には、形成せずに舗装した状態)における道路の面を指し、図面上、符号1Aで示す仮想線で表される面である。例えば坂道であれば、その坂道の勾配を有する面が、「路面」に相当する。
【0020】
図2に示すように、第1傾斜面S1は逆走方向Y2の手前側に位置する傾斜面であり、第2傾斜面S2はその奥側に位置する傾斜面である。また、路面1Aから第1傾斜面S1と第2傾斜面S2とが交わる点(頂部T)までの高さT1(路面1Aに直交する高さ寸法)が40mmとなるように形成されている。ここで、「維持管理基準(案)の概要」(国交省HP)において、舗装の補修は、「わだち掘れ量が40mm以上の区間について実施する」との記載があり、当該記載から、40mm以上の段差で運転に影響を及ぼすことがわかる。このため、本実施形態では、路面1Aから頂部Tまでの高さT1は、40mmとなるように形成されているが、高さT1が40mm以上となるように形成されていてもよい。
【0021】
また、第1傾斜面S1の路面1Aに対する第1傾斜角θ1は45度となるように形成され、第2傾斜面S2の路面1Aに対する第2傾斜角θ2は5度となるように形成されている。即ち、第1傾斜角θ1は、第2傾斜角θ2より大きくなるように形成されている。
【0022】
このように本実施形態では、第1傾斜角θ1が45度となるように形成されているが、本発明はこれに限定されない。第1傾斜角が、45度より小さい場合には、四輪自動車Cが乗り越え易く、45度より大きい場合には乗り越え難くなる。また、90度より大きい場合において、第1傾斜面S1と第2傾斜面S2とが交わる点(頂部T)で車輪がグリップすれば、逆に乗り越え易くなる。本実施形態の如く、第1傾斜角θ1を45度程度となるように形成すれば、四輪自動車Cの車輪が、第1傾斜面S1を乗り越えられずに滑り落ち易く、または、第1傾斜面S1に留まり易くなる。
【0023】
また、本実施形態では、第2傾斜角θ2が5度となるように形成されているが、本発明はこれに限定されない。第2傾斜角θ2は、四輪自動車Cの運転に影響を及ぼさない程度の傾斜であればよく、45度以下の範囲内で適宜選択される。
【0024】
また、
図3に示すように、本実施形態では、各突条部2は、順走方向Y1及び逆走方向Y2に対して45度(符号θ3を付与する)だけ斜めになるように形成されているが、本発明はこれに限定されない。各突条部は、順走方向Y1及び逆走方向Y2との成す角が90度より小さければ、順走方向Y1及び逆走方向Y2との成す角が45度より大きくても小さくてもよい。各突条部は、順走方向Y1及び逆走方向Y2との成す角が45度より大きく、90度より小さくなるように形成されていれば、四輪自動車Cの車輪が、各突条部を容易には乗り越え難くなる。
【0025】
また、本実施形態では、順走方向Y1及び逆走方向Y2に隣接する突条部2の間隔Lは4.2mとなるように形成されている。ここで、普通乗用車のトレッド寸法LA(
図3に示す)を1.5m(車輪FL-車輪FR間の寸法)、ホイールベース寸法LB(
図3に示す、車輪FL-車輪BL間の寸法)を2.7m、角θ3が45度として、式(間隔L=ホイールベース寸法LB+トレッド寸法LA/tanθ3)を用いて、
図3の状態(右側前方の車輪FRと左側後方の車輪BLが隣接する2つの突条部に略同時に当接する状態)となる間隔Lとして算出されたものである。
【0026】
図4に示すように、間隔Lは、まず、四輪自動車Cの右側前方の車輪FRが突条部2
1に当接し、ハンドルが取られた後、ハンドルを戻す間もなく、他の車輪が、次々に突条部に当接するような寸法であるのがよい。即ち、間隔Lは、四輪自動車Cの右側前方の車輪FRと、左側後方の車輪BLが隣接する突条部2に略同時に当接するような寸法であるが、当該間隔Lを狭くして、車輪が当接する頻度が高くなるようにしてもよく、逆に、間隔Lを広くして、車輪FR、車輪FL、車輪BR、車輪BLの順で、突条部2に当接するようにしてもよい。
【0027】
さらに、逆走防止構造1が形成された道路10(路面1A)は、道幅方向Wに並んで形成された車道Rと退避領域を含む路肩Eとを有している。路肩Eは、逆走方向Y2から見て、車道Rより左側に位置している。各突条部2は路肩Eまで延在形成されている。
【0028】
このような逆走防止構造1が形成された道路10において、道路10を逆走する四輪自動車C(移動体)は、
図4において実線で示すように、四輪自動車Cの右側前方の車輪FRが突条部2
1の第1傾斜面S1に当接し、ハンドルが取られつつ、第1傾斜面S1を乗り上げて乗り越える。この際、四輪自動車Cは突条部2
1が延在する方向の奥側に誘導される。
【0029】
ここで、運転者が道路10を逆走している事実に気付かずに或いは気付く間もなく走行し続けた場合には、四輪自動車C(
図4において破線で示す)の左側前方の車輪FLが突条部2
1の第1傾斜面S1に当接する。運転者は再びハンドルが取られる。さらに、運転者が走行し続けた場合には、左側前方の車輪FLが第1傾斜面S1を乗り上げて乗り越える。さらに、運転者が走行し続けた場合には、右側後方の車輪BRが第1傾斜面S1を乗り上げて乗り越える。さらに走行し続けた場合には、左側後方の車輪BLが第1傾斜面S1を乗り上げて乗り越える。これと略同時に、四輪自動車Cは、右側前方の車輪FRが、逆走方向Y2の2つ目(前方)の突条部2
2の第1傾斜面S1に当接する。即ち、車輪FR、車輪BLが、間を置かずに続けて、突条部2に当接する。この際、運転者は、ハンドルが取られ、ハンドルを戻す時間も余裕もない。このようにして、四輪自動車Cは、突条部2
1、2
2が延在する方向の奥側に誘導される。各突条部2
1、2
2が延在する方向の奥側には路肩Eが形成されているから、四輪自動車Cは退避領域である路肩Eに誘導される。
【0030】
上述した実施形態によれば、四輪自動車Cの車輪FR、車輪FL、車輪BR、車輪BLが順に突条部2の第1傾斜面S1に当接することで、四輪自動車Cを4回、退避領域である路肩Eに誘導することができる。また、路面1Aには、複数の突条部2が形成されているから、突条部2の数の4倍(車輪の数)の回数だけ、四輪自動車Cを退避領域である路肩Eに誘導することができる。さらに、本実施形態では、順走方向Y1及び逆走方向Y2に隣接する突条部2の間隔Lが4.2mとなるように形成されている。例えば、間隔Lが4.2m以上である場合において、四輪自動車Cの車輪が突条部2に当接し、ハンドルが取られたとしても、突条部2を乗り越えた後、運転者がハンドルを戻す余裕があっては、車輪が次の突条部2に当接するまでに、効果は減じてしまう。本実施形態において、間隔Lは、四輪自動車Cの右側前方の車輪FRが突条部22に当接した後、運転者がハンドルを戻す間もなく左側後方の車輪BLが、後方の突条部21に当接するような寸法であるから、四輪自動車Cを退避領域である路肩Eに効率よく誘導することができる。
【0031】
また、道路10の路面1Aに各突条部2を形成することで、低コスト化を図るとともに、道路を逆走する四輪自動車Cを運転する運転者に対して逆走している事実を気付かせつつ、四輪自動車Cを各突条部2が延在する方向に誘導することができる。また、誘導に応じて道路10を逆走する四輪自動車Cを運転する運転者に対して逆走している事実を気付く機会を与えることができる。従って、道路10を逆走する四輪自動車Cを効果的に減少させることができる。
【0032】
また、各突条部2が、第1傾斜面S1より逆走方向Y2の奥側に位置する第2傾斜面S2を有し、第1傾斜面S1の路面1Aに対する第1傾斜角θ1が、第2傾斜面S2の路面1Aに対する第2傾斜角θ2より大きくなるように形成されている。これによれば、道路10を順走する四輪自動車C(移動体)は各突条部2の第1傾斜面S1より傾斜角が小さい第2傾斜面S2を乗り上げ、道路10を逆走する四輪自動車Cは各突条部2の第2傾斜面S2より傾斜角が大きい第1傾斜面S1を乗り上げる。即ち、逆走防止構造1は、道路10を順走する四輪自動車Cに対して各突条部2が段差として機能し、道路10を逆走する四輪自動車Cに対しては、逆走方向Y2への進行を阻み、各突条部2の延在方向へ誘導するように機能する。従って、逆走防止構造1を有する道路10は、順走する四輪自動車Cに対しては進行を妨げることなく通行させ、道路10を逆走する四輪自動車Cに対してのみ進行を阻みつつ四輪自動車Cを各突条部2の延在方向へ誘導するように、一方通行のみを許容する道路とすることができる。
【0033】
また、各突条部2が、逆走方向Y2から見て、左の奥から右の手前に向けて斜めに延在形成されている。左側通行の我が国では、右側より左側へ誘導される方が運転者に不安感を与えづらい。
【0034】
また、道路10は、逆走方向Y2から見て各突条部2が奥に位置する側の路肩Eに退避領域を有している。これによれば、四輪自動車C(移動体)が各突条部2により退避領域に誘導されることで、逆走車の安全を保ちつつ、道路10を順走する四輪自動車Cの通行を妨げることが抑制される。
【0035】
また、各突条部2は、退避領域まで延在形成されている。これによれば、より高い確率で、四輪自動車C(移動体)を退避領域に誘導することができる。
【0036】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形例も本発明に含まれる。
【0037】
前記実施形態では、各突条部2は、路面1Aから凸でかつ、逆走方向Y2から見て左の奥から右の手前に向かうように、順走方向Y1及び逆走方向Y2に対して斜めに直線状に延在形成されている。即ち、各突条部2の延在方向の一端から他端まで、何れの位置においても、当該突条部2と順走方向Y1及び逆走方向Y2との成す角θ3が等しくなるように形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、各突条部12が、順走方向Y1及び逆走方向Y2対して異なる角を成して延在する第1直線部2A(第1部位)及び第2直線部2B(第2部位)を有していてもよい。その場合には、第1直線部2Aは、第2直線部2Bより逆走方向Y2の右側に位置し、順走方向Y1及び逆走方向Y2に延在する仮想線Vと第1直線部2Aとの成す角である第1角θ3Aが、仮想線Vと第2直線部2Bとの成す角である第2角θ3Bより小さくなるように形成されていてもよい。または、
図6に示すように、各突条部22は、路面1Aから凸でかつ、逆走方向Y2から見て左の奥から右の手前に向かうように、順走方向Y1及び逆走方向Y2に対して斜めに曲線状に延在形成されていてもよい。その場合において、第1角θ3A及び第2角θ3Bは、仮想線Vと曲線状に延在する各突条部22の接線(第1部位2A´、第2部位2B´)との成す角を意味する。
【0038】
これによれば、移動体としての四輪自動車Cの前方右側の車輪FRが、まず、第1直線部2A(
図6に示す第1部位2A´)に当接し、乗り上げて乗り越える。この後、運転者が道路10を逆走している事実に気付かずに走行し続けた場合には、前方左側の車輪FLが第2直線部2B(
図6に示す第2部位2B´)に当接し、乗り上げて乗り越える。この際、第2直線部2B(第2部位2B´)は、第1直線部2A(第1部位2A´)に比して、順走方向(逆走方向)に対する角度が大きいから、四輪自動車Cは、第2直線部2Bに沿って、逆走方向の左側に誘導され易い。従って、逆走車を各突条部2が延在する方向により一層誘導し易くすることができる。
【0039】
本実施形態では、移動体として、四輪自動車Cを一例として説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。移動体は、原動機付自転車、普通自動二輪や大型自動二輪車であっても構わない。
【0040】
また、本実施形態では、各突条部2は、断面が三角形状となるように、第1傾斜面S1及び第2傾斜面S2を有し、第1傾斜面S1と第2傾斜面S2が所定角を成すように形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。各突条部は、第1傾斜面S1と第2傾斜面S2が連続していなくともよい。例えば、
図7に示すように、各突条部32は、第1傾斜面S1と第2傾斜面S2との間に平坦面Fが設けられていてもよい。即ち、逆走防止構造1は、第1傾斜面S1を有していればよく、道路10を順走する移動体に対して各突条部が段差として機能し、道路10を逆走する移動体に対しては、逆走方向Y2への進行を阻み、各突条部の延在方向へ移動体を誘導するように構成されていれば、如何なる形状を有していてもよい。
【0041】
また、本実施形態において、第1傾斜角θ1、第2傾斜角θ2、路面1Aから頂部Tまでの高さT1、隣接する突条部2の間隔Lの各値はあくまでも一例であり、移動体の大きさによって最適な値が異なる。このため、最適な値は、対象とする移動体やその車輪の大きさ等を考慮して適宜決定すればよい。
【0042】
また、本実施形態では、各突条部2が、逆走方向から見て、左の奥から右の手前に向けて斜めに延在形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。各突条部が、逆走方向から見て、左の手前から右の奥に向けて斜めに延在形成されていてもよい。この場合には、退避領域を有する路肩は、逆走方向から見て、車道の右側に位置していてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、逆走防止構造1の突条部は、道路10の順走方向Y1及び逆走方向Y2に所定の等間隔を空けて形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。逆走防止構造の突条部は、道路10の順走方向Y1及び逆走方向Y2に所定の等間隔を空けて形成されていなくともよい。即ち、道路10の順走方向Y1及び逆走方向Y2の突条部の間隔は異なる間隔を有していても構わない。
【0044】
さらに、本実施形態では、逆走防止構造1の各突条部は、道路10の順走方向Y1及び逆走方向Y2に対する成す角が等しくなるように形成されているが、本発明においてはこれに限定されず、例えば、逆走方向から見て奥側の突条部ほど前記成す角が大きくなるようにしてもよい。
【0045】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び、目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 逆走防止構造
10 道路
1A 路面
2、12、22、32 突条部
2A 第1直線部(第1部位)
2A´ 第1部位
2B 第2直線部(第2部位)
2B´ 第2部位
S1 第1傾斜面
S2 第2傾斜面
θ1 第1傾斜角
θ2 第2傾斜角
θ3A 第1角
θ3B 第2角
C 四輪自動車(移動体)
E 路肩
L 間隔(LB+LA/tanθ3)
LA トレッド寸法
LB ホイールベース寸法
R 車道
T 頂部
V 仮想線
W 道幅方向
Y1 順走方向
Y2 逆走方向