(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
H01L21/308 B
H01L21/308 D
(21)【出願番号】P 2018004531
(22)【出願日】2018-01-15
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根来 世
(72)【発明者】
【氏名】小林 健司
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-254898(JP,A)
【文献】特開2013-258391(JP,A)
【文献】特開2009-238798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/304
C23F 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面のエッチング量の要求値を表す要求エッチング量に基づいて、エッチング液の溶存酸素濃度の設定値を表す設定溶存酸素濃度と、前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接する雰囲気中の酸素濃度の設定値を表す設定雰囲気酸素濃度と、の一方を決定する第1酸素濃度決定工程と、
前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方とに基づいて、前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の他方を決定する第2酸素濃度決定工程と、
前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定雰囲気酸素濃度に一致するまたは近づけられており、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素ガスを、前記基板を収容するチャンバー内に流入させる低酸素ガス供給工程と、
前記低酸素ガス供給工程で前記チャンバー内に流入した前記低酸素ガスを前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接触させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素を減少させた前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面全域に供給することにより、前記基板の主面をエッチングするエッチング工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記第1酸素濃度決定工程および第2酸素濃度決定工程の一方は、前記設定溶存酸素濃度として設定可能な数値範囲の最小値よりも大きい値を前記設定溶存酸素濃度として決定する工程と、前記設定雰囲気酸素濃度として設定可能な数値範囲の最小値よりも大きい値を前記設定雰囲気酸素濃度として決定する工程と、の一方を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記エッチング工程は、液吐出口から吐出された前記エッチング液が前記基板の主面に最初に接触する着液位置を、前記エッチング液の吐出が開始されてから前記エッチング液の吐出が停止されるまで、前記基板の主面中央部に位置させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素が低減された前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面に向けて、前記液吐出口に吐出させる液吐出工程を含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第2酸素濃度決定工程は、前記基板の主面にわたるエッチング量の分布が円錐状または倒立円錐状となるように、前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方とに基づいて、前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の他方を決定する工程である、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1酸素濃度決定工程は、前記要求エッチング量に基づいて、前記設定溶存酸素濃度を決定する工程であり、
前記第2酸素濃度決定工程は、前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度とに基づいて、前記設定雰囲気酸素濃度を決定する工程である、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記低酸素ガス供給工程は、前記チャンバー内で移動可能な対向部材の対向面を前記基板の主面に対向させながら、前記対向面に設けられた開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記低酸素ガス供給工程は、前記対向部材の対向面に設けられており、前記基板の主面中央部に対向する中央開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程と、前記対向部材の対向面に設けられており、前記基板の主面中央部以外の前記基板の主面の一部に対向する外側開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程とを含む、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記低酸素ガス供給工程は、前記チャンバー内のガスを前記チャンバーの下端部から排出しながら、前記チャンバーの上端部から前記低酸素ガスを前記チャンバー内に流入させる工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記基板処理方法は、溶存酸素を減少させることにより、第1タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を第1溶存酸素濃度まで低下させる第1溶存酸素濃度調整工程と、溶存酸素を減少させることにより、第2タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を、前記第1溶存酸素濃度とは異なる第2溶存酸素濃度まで低下させる第2溶存酸素濃度調整工程とを含み、
前記エッチング工程は、前記第1タンクおよび第2タンクのうち前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に近い方の溶存酸素濃度を有する前記エッチング液を貯留しているタンクを選択する選択工程と、前記選択工程で選択された前記タンク内の前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面に向けて吐出する液吐出工程とを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記エッチング工程は、前記低酸素ガス供給工程で前記チャンバー内に流入した前記低酸素ガスを前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接触させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素を減少させた前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面全域に供給することにより、前記基板の主面に形成されたポリシリコン膜をエッチングする工程である、請求項1~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持されている前記基板の主面に溶存酸素を減少させたエッチング液を供給するエッチング液供給手段と、
前記基板保持手段に保持されている前記基板を収容するチャンバーと、
空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素ガスを、前記基板を収容する前記チャンバー内に流入させることにより、前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接する雰囲気中の酸素濃度を調整する低酸素ガス供給手段と、
前記エッチング液供給手段によって前記基板に供給される前記エッチング液の溶存酸素濃度を変更する溶存酸素濃度変更手段と、
前記低酸素ガス供給手段によって調整される雰囲気中の酸素濃度を変更する雰囲気酸素濃度変更手段と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記基板の主面のエッチング量の要求値を表す要求エッチング量に基づいて、前記エッチング液の溶存酸素濃度の設定値を表す設定溶存酸素濃度と、前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接する雰囲気中の酸素濃度の設定値を表す設定雰囲気酸素濃度と、の一方を決定する第1酸素濃度決定工程と、
前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方とに基づいて、前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の他方を決定する第2酸素濃度決定工程と、
前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定雰囲気酸素濃度に一致するまたは近づけられており、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する前記低酸素ガスを、前記基板を収容する前記チャンバー内に流入させる低酸素ガス供給工程と、
前記低酸素ガス供給工程で前記チャンバー内に流入した前記低酸素ガスを前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接触させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素を減少させた前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面全域に供給することにより、前記基板の主面をエッチングするエッチング工程と、を実行する、基板処理装置。
【請求項12】
前記第1酸素濃度決定工程および第2酸素濃度決定工程の一方は、前記設定溶存酸素濃度として設定可能な数値範囲の最小値よりも大きい値を前記設定溶存酸素濃度として決定する工程と、前記設定雰囲気酸素濃度として設定可能な数値範囲の最小値よりも大きい値を前記設定雰囲気酸素濃度として決定する工程と、の一方を含む、請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記エッチング液供給手段は、前記基板保持手段に保持されている前記基板の主面に向けて前記エッチング液を吐出する液吐出口を含み、
前記エッチング工程は、前記液吐出口から吐出された前記エッチング液が前記基板の主面に最初に接触する着液位置を、前記エッチング液の吐出が開始されてから前記エッチング液の吐出が停止されるまで、前記基板の主面中央部に位置させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素が低減された前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面に向けて、前記液吐出口に吐出させる液吐出工程を含む、請求項11または12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第2酸素濃度決定工程は、前記基板の主面にわたるエッチング量の分布が円錐状または倒立円錐状となるように、前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方とに基づいて、前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の他方を決定する工程である、請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記第1酸素濃度決定工程は、前記要求エッチング量に基づいて、前記設定溶存酸素濃度を決定する工程であり、
前記第2酸素濃度決定工程は、前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度とに基づいて、前記設定雰囲気酸素濃度を決定する工程である、請求項11~14のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記基板処理装置は、前記基板保持手段に保持されている前記基板の主面に対向する対向面と、前記対向面に設けられた開口と、を含み、前記チャンバー内で移動可能な対向部材をさらに備え、
前記低酸素ガス供給工程は、前記チャンバー内で移動可能な前記対向部材の対向面を前記基板の主面に対向させながら、前記対向面に設けられた前記開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記対向部材の開口は、前記対向部材の対向面に設けられており、前記基板の主面中央部に対向する中央開口と、前記対向部材の対向面に設けられており、前記基板の主面中央部以外の前記基板の主面の一部に対向する外側開口と、を含み、
前記低酸素ガス供給工程は、前記中央開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程と、前記外側開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程とを含む、請求項16に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記低酸素ガス供給は、前記チャンバーの上端部から前記低酸素ガスを前記チャンバー内に流入させるファンユニットと、前記チャンバー内のガスを前記チャンバーの下端部から排出する排気ダクトとを含み、
前記低酸素ガス供給工程は、前記チャンバー内のガスを前記チャンバーの下端部から排出しながら、前記チャンバーの上端部から前記低酸素ガスを前記チャンバー内に流入させる工程を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記エッチング液供給手段は、前記エッチング液を貯留する第1タンクと、前記エッチング液を貯留する第2タンクと、前記第1タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を低下させる第1溶存酸素濃度変更手段と、前記第2タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を低下させる第2溶存酸素濃度変更手段と、を含み、
前記制御装置は、溶存酸素を減少させることにより、前記第1タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を第1溶存酸素濃度まで低下させる第1溶存酸素濃度調整工程と、溶存酸素を減少させることにより、前記第2タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を、前記第1溶存酸素濃度とは異なる第2溶存酸素濃度まで低下させる第2溶存酸素濃度調整工程とをさらに実行し、
前記エッチング工程は、前記第1タンクおよび第2タンクのうち前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に近い方の溶存酸素濃度を有する前記エッチング液を貯留しているタンクを選択する選択工程と、前記選択工程で選択された前記タンク内の前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面に向けて吐出する液吐出工程とを含む、請求項11~18のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記エッチング工程は、前記低酸素ガス供給工程で前記チャンバー内に流入した前記低酸素ガスを前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接触させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素を減少させた前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面全域に供給することにより、前記基板の主面に形成されたポリシリコン膜をエッチングする工程である、請求項11~19のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象の基板には、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を処理する基板処理装置が用いられる。特許文献1には、雰囲気中の酸素濃度が低い状態で溶存酸素濃度が低い処理液を基板に供給する枚葉式の基板処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、従来は、処理液の溶存酸素濃度および雰囲気中の酸素濃度は可能な限り低いことが好ましいと考えられていた。しかしながら、本発明者らの研究によると、処理液を用いて基板をエッチングする場合、処理液の溶存酸素濃度および雰囲気中の酸素濃度だけでなく、両者の差が、エッチングの結果に影響を及ぼしうることが分かった。
【0005】
例えば、処理液の溶存酸素濃度に対して雰囲気中の酸素濃度が低すぎると、エッチングの均一性が悪化してしまう場合があることが分かった。したがって、処理液の溶存酸素濃度および雰囲気中の酸素濃度は、必ずしも低ければ良いわけではない。また、処理液の溶存酸素濃度および雰囲気中の酸素濃度だけでなく、両者の差をコントロールすることで、基板の表面または裏面の全域におけるエッチング量の分布を変化させることができることも分かった。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、雰囲気中の酸素濃度が低い状態で溶存酸素濃度が低いエッチング液を基板の主面全域に供給することにより、エッチング量の分布をコントロールしながら基板の主面をエッチングできる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板の主面のエッチング量の要求値を表す要求エッチング量に基づいて、エッチング液の溶存酸素濃度の設定値を表す設定溶存酸素濃度と、前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接する雰囲気中の酸素濃度の設定値を表す設定雰囲気酸素濃度と、の一方を決定する第1酸素濃度決定工程と、前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方とに基づいて、前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の他方を決定する第2酸素濃度決定工程と、前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定雰囲気酸素濃度に一致するまたは近づけられており、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素ガスを、前記基板を収容するチャンバー内に流入させる低酸素ガス供給工程と、前記低酸素ガス供給工程で前記チャンバー内に流入した前記低酸素ガスを前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接触させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素を減少させた前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面全域に供給することにより、前記基板の主面をエッチングするエッチング工程と、を含む、基板処理方法である。
【0008】
この方法によれば、雰囲気中の酸素濃度を低下させた状態で、溶存酸素濃度が低いエッチング液を基板の主面に供給する。これにより、基板に保持されているエッチング液に溶け込む酸素の量をコントロールしながら、基板の主面全域にエッチング液を供給できる。基板の主面に供給されたエッチング液の実際の溶存酸素濃度は、設定溶存酸素濃度に一致しているもしくは近づけられている。同様に、基板の主面に保持されているエッチング液に接する雰囲気中の実際の酸素濃度は、設定雰囲気酸素濃度に一致しているもしくは近づけられている。
【0009】
設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度は、要求エッチング量に基づいてそれぞれ独自に設定されるのではなく、互いに関連付けられる。具体的には、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方は、要求エッチング量に基づいて決定される。そして、決定された値(設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方)と要求エッチング量に基づいて、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の他方が決定される。言い換えると、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度だけでなく、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の差もコントロールされる。
【0010】
このように、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の差をコントロールしながら、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度を低下させるので、基板の主面に対するエッチング液の着液位置を移動させることなく、基板の主面にわたるエッチング量の分布を変化させることができる。例えば、基板の主面全域を一定のエッチング量で均一にエッチングしたり、エッチング量の分布が円錐状または倒立円錐状となるように基板の主面をエッチングしたりすることができる。したがって、エッチング量の分布をコントロールしながら基板の主面をエッチングできる。
【0011】
基板の主面は、基板の表面(デバイス形成面)および裏面(非デバイス形成面)のいずれかを意味する。基板が水平に保持されている場合、基板の上面または下面が基板の主面に相当する。基板の主面は、基板の表面および裏面のいずれであってもよい。また、低酸素ガスは、空気中の酸素濃度(約21vol%)よりも低い酸素濃度を有するガスを意味する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記第1酸素濃度決定工程および第2酸素濃度決定工程の一方は、前記設定溶存酸素濃度として設定可能な数値範囲の最小値よりも大きい値を前記設定溶存酸素濃度として決定する工程と、前記設定雰囲気酸素濃度として設定可能な数値範囲の最小値よりも大きい値を前記設定雰囲気酸素濃度として決定する工程と、の一方を含む、請求項1に記載の基板処理方法である。
【0013】
この方法によれば、設定溶存酸素濃度または設定雰囲気酸素濃度として設定可能な数値範囲の最小値よりも大きい値が、設定溶存酸素濃度または設定雰囲気酸素濃度として設定される。言い換えると、従来のように、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度を可能な限り低下させるのではなく、両者の差もコントロールする。これにより、エッチング量の分布をコントロールしながら基板の主面をエッチングできる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記エッチング工程は、液吐出口から吐出された前記エッチング液が前記基板の主面に最初に接触する着液位置を、前記エッチング液の吐出が開始されてから前記エッチング液の吐出が停止されるまで、前記基板の主面中央部に位置させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素が低減された前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面に向けて、前記液吐出口に吐出させる液吐出工程を含む、請求項1または2に記載の基板処理方法である。
【0015】
この方法によれば、エッチング液の着液位置を吐出開始から吐出停止まで基板の主面中央部に位置させる。このような場合でも、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃の差をコントロールすることにより、エッチング量の分布をコントロールすることができる。したがって、エッチング量の分布をコントロールするために、基板の主面に対するエッチング液の着液位置を移動させたり、基板の主面に向けてエッチング液を吐出する複数の液吐出口を設けたりしなくてもよい。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記第2酸素濃度決定工程は、前記基板の主面にわたるエッチング量の分布が円錐状または倒立円錐状となるように、前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方とに基づいて、前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の他方を決定する工程である、請求項3に記載の基板処理方法である。
【0017】
この方法によれば、基板の主面にわたるエッチング量の分布が円錐状または倒立円錐状となるように、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度が設定される。エッチング前の基板の主面が円錐状であれば、基板の主面にわたるエッチング量の分布が円錐状になるように基板の主面をエッチングすれば、エッチング後の基板の主面の平坦度を高めることができる。同様に、エッチング前の基板の主面が倒立円錐状であれば、基板の主面にわたるエッチング量の分布が倒立円錐状になるように基板の主面をエッチングすれば、エッチング後の基板の主面の平坦度を高めることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記第1酸素濃度決定工程は、前記要求エッチング量に基づいて、前記設定溶存酸素濃度を決定する工程であり、前記第2酸素濃度決定工程は、前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度とに基づいて、前記設定雰囲気酸素濃度を決定する工程である、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
【0019】
この方法によれば、設定溶存酸素濃度を決めてから、設定雰囲気酸素濃度を決める。着液位置でのエッチングレートは、エッチング液の溶存酸素濃度に依存する。言い換えると、設定雰囲気酸素濃度は、着液位置でのエッチングレートに大きく影響しない。その代わりに、エッチングレートの傾き、つまり、着液位置でのエッチングレートと基板の主面内の任意の位置でのエッチングレートとを結ぶ直線の傾きは、エッチング液の溶存酸素濃度と雰囲気中の酸素濃度とに依存する。したがって、設定溶存酸素濃度を先に決めれば、着液位置でのエッチングレートとエッチングレートの傾きとを比較的に容易に設定できる。
【0020】
これに対して、設定雰囲気酸素濃度が先に決まっている場合は、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度以外の条件も変更する必要が生じうる。例えば、設定雰囲気酸素濃度が先に決まっている場合、意図するエッチングレートの傾きを得るために、設定溶存酸素濃度が大幅に制限される。決定された設定溶存酸素濃度では意図するエッチングレートが得られない場合は、エッチング液の供給時間や濃度などの別の条件も変更する必要が生じうる。したがって、設定溶存酸素濃度を先に決めることにより、着液位置でのエッチングレートとエッチングレートの傾きとを比較的に容易に設定できる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、前記低酸素ガス供給工程は、前記チャンバー内で移動可能な対向部材の対向面を前記基板の主面に対向させながら、前記対向面に設けられた開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素ガスが、対向部材の対向面に設けられた開口から流れ出て、基板の主面と対向部材の対向面との間の空間に流入する。これにより、基板と対向部材との間の空間が低酸素ガスで満たされ、雰囲気中の酸素濃度が低下する。したがって、チャンバーの内部空間の全体で酸素濃度を低下させる場合に比べて、低酸素ガスの使用量を減らすことができ、短時間で酸素濃度を変化させることができる。
【0022】
対向部材は、チャンバーで上下に移動可能であり、基板の上方に配置される遮断部材であってもよいし、鉛直な回転軸線まわりにチャンバー内で回転可能であり、基板の下方に配置されるスピンベースであってもよい。
請求項7に記載の発明は、前記低酸素ガス供給工程は、前記対向部材の対向面に設けられており、前記基板の主面中央部に対向する中央開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程と、前記対向部材の対向面に設けられており、前記基板の主面中央部以外の前記基板の主面の一部に対向する外側開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程とを含む、請求項6に記載の基板処理方法である。
【0023】
この方法によれば、中央開口と外側開口とが、対向部材の対向面に設けられている。中央開口は、基板の主面中央部に対向している。外側開口は、中央開口の外側に配置されている。中央開口から流れ出た低酸素ガスは、基板と対向部材との間の空間を外方に流れる。同様に、外側開口から流れ出た低酸素ガスは、基板と対向部材との間の空間を外方に流れる。したがって、外側開口が設けられていない場合に比べて、別のガスが基板と対向部材との間に流入し難い。これにより、基板と対向部材との間の空間における酸素濃度をより精密にコントロールできる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、前記低酸素ガス供給工程は、前記チャンバー内のガスを前記チャンバーの下端部から排出しながら、前記チャンバーの上端部から前記低酸素ガスを前記チャンバー内に流入させる工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、低酸素ガスが、チャンバーの上端部からチャンバーの内部に流入する。チャンバー内に流入した低酸素ガスは、チャンバーの下端部に向かって流れ、チャンバーの下端部からチャンバーの外に排出される。これにより、チャンバーの内部が低酸素ガスで満たされ、雰囲気中の酸素濃度が低下する。したがって、遮断部材などの基板の上方に配置される部材を設けることなく、雰囲気中の酸素濃度を低下させることができる。これにより、チャンバーを小型化できる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、前記基板処理方法は、溶存酸素を減少させることにより、第1タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を第1溶存酸素濃度まで低下させる第1溶存酸素濃度調整工程と、溶存酸素を減少させることにより、第2タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を、前記第1溶存酸素濃度とは異なる第2溶存酸素濃度まで低下させる第2溶存酸素濃度調整工程とを含み、前記エッチング工程は、前記第1タンクおよび第2タンクのうち前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に近い方の溶存酸素濃度を有する前記エッチング液を貯留しているタンクを選択する選択工程と、前記選択工程で選択された前記タンク内の前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面に向けて吐出する液吐出工程とを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
【0026】
この方法によれば、溶存酸素濃度が互いに異なるエッチング液が、第1タンクおよび第2タンクに貯留されている。決定された設定溶存酸素濃度は、第1タンク内のエッチング液の溶存酸素濃度を表す第1溶存酸素濃度および第2タンク内のエッチング液の溶存酸素濃度を表す第2溶存酸素濃度と比較される。第1溶存酸素濃度が決定された設定溶存酸素濃度に一致しているまたは近い場合は、第1タンク内のエッチング液が基板の主面に供給される。その一方で、第2溶存酸素濃度が決定された設定溶存酸素濃度に一致しているまたは近い場合は、第2タンク内のエッチング液が基板の主面に供給される。
【0027】
エッチング液の溶存酸素濃度は直ぐには変わり難い。したがって、同じタンク内のエッチング液の溶存酸素濃度を変える場合は、ある程度の時間がかかる。これに対して、溶存酸素濃度が互いに異なるエッチング液を第1タンクおよび第2タンクに貯留しておけば、基板の主面に供給されるエッチング液の溶存酸素濃度を即座に変えることができる。これにより、基板処理装置のダウンタイム(基板の処理を実行できない時間)を短縮でき、基板処理装置のスループット(単位時間あたりの基板の処理枚数)の減少量を減らすことができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、前記エッチング工程は、前記低酸素ガス供給工程で前記チャンバー内に流入した前記低酸素ガスを前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接触させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素を減少させた前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面全域に供給することにより、前記基板の主面に形成されたポリシリコン膜をエッチングする工程である、請求項1~9のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
【0029】
この方法によれば、雰囲気中の酸素濃度を低下させた状態で、ポリシリコン膜が露出した基板の主面に溶存酸素濃度が低いエッチング液を供給する。これにより、基板に保持されているエッチング液に溶け込む酸素の量をコントロールしながら、基板の主面に形成されたポリシリコン膜をエッチングできる。ポリシリコン膜は、エッチング液の溶存酸素濃度の影響を受ける薄膜の一例である。したがって、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度だけでなく、両者の差もコントロールすることにより、エッチング量の分布をコントロールしながらポリシリコン膜をエッチングできる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、基板を水平に保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持されている前記基板の主面に溶存酸素を減少させたエッチング液を供給するエッチング液供給手段と、前記基板保持手段に保持されている前記基板を収容するチャンバーと、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素ガスを、前記基板を収容する前記チャンバー内に流入させることにより、前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接する雰囲気中の酸素濃度を調整する低酸素ガス供給手段と、前記エッチング液供給手段によって前記基板に供給される前記エッチング液の溶存酸素濃度を変更する溶存酸素濃度変更手段と、前記低酸素ガス供給手段によって調整される雰囲気中の酸素濃度を変更する雰囲気酸素濃度変更手段と、制御装置と、を備える、基板処理装置である。
【0031】
前記制御装置は、前記基板の主面のエッチング量の要求値を表す要求エッチング量に基づいて、前記エッチング液の溶存酸素濃度の設定値を表す設定溶存酸素濃度と、前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接する雰囲気中の酸素濃度の設定値を表す設定雰囲気酸素濃度と、の一方を決定する第1酸素濃度決定工程と、前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方とに基づいて、前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の他方を決定する第2酸素濃度決定工程と、前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定雰囲気酸素濃度に一致するまたは近づけられており、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する前記低酸素ガスを、前記基板を収容する前記チャンバー内に流入させる低酸素ガス供給工程と、前記低酸素ガス供給工程で前記チャンバー内に流入した前記低酸素ガスを前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接触させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素を減少させた前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面全域に供給することにより、前記基板の主面をエッチングするエッチング工程と、を実行する。この構成によれば、前述の基板処理方法に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0032】
請求項12に記載の発明は、前記第1酸素濃度決定工程および第2酸素濃度決定工程の一方は、前記設定溶存酸素濃度として設定可能な数値範囲の最小値よりも大きい値を前記設定溶存酸素濃度として決定する工程と、前記設定雰囲気酸素濃度として設定可能な数値範囲の最小値よりも大きい値を前記設定雰囲気酸素濃度として決定する工程と、の一方を含む、請求項11に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の基板処理方法に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0033】
請求項13に記載の発明は、前記エッチング液供給手段は、前記基板保持手段に保持されている前記基板の主面に向けて前記エッチング液を吐出する液吐出口を含み、前記エッチング工程は、前記液吐出口から吐出された前記エッチング液が前記基板の主面に最初に接触する着液位置を、前記エッチング液の吐出が開始されてから前記エッチング液の吐出が停止されるまで、前記基板の主面中央部に位置させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素が低減された前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面に向けて、前記液吐出口に吐出させる液吐出工程を含む、請求項11または12に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の基板処理方法に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0034】
請求項14に記載の発明は、前記第2酸素濃度決定工程は、前記基板の主面にわたるエッチング量の分布が円錐状または倒立円錐状となるように、前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方とに基づいて、前記設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の他方を決定する工程である、請求項13に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の基板処理方法に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0035】
請求項15に記載の発明は、前記第1酸素濃度決定工程は、前記要求エッチング量に基づいて、前記設定溶存酸素濃度を決定する工程であり、前記第2酸素濃度決定工程は、前記要求エッチング量と前記第1酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度とに基づいて、前記設定雰囲気酸素濃度を決定する工程である、請求項11~14のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の基板処理方法に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0036】
請求項16に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記基板保持手段に保持されている前記基板の主面に対向する対向面と、前記対向面に設けられた開口と、を含み、前記チャンバー内で移動可能な対向部材をさらに備え、前記低酸素ガス供給工程は、前記チャンバー内で移動可能な前記対向部材の対向面を前記基板の主面に対向させながら、前記対向面に設けられた前記開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の基板処理方法に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0037】
請求項17に記載の発明は、前記対向部材の開口は、前記対向部材の対向面に設けられており、前記基板の主面中央部に対向する中央開口と、前記対向部材の対向面に設けられており、前記基板の主面中央部以外の前記基板の主面の一部に対向する外側開口と、を含み、前記低酸素ガス供給工程は、前記中央開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程と、前記外側開口から前記低酸素ガスを前記基板の主面と前記対向部材の対向面との間に流入させる工程とを含む、請求項16に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の基板処理方法に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0038】
請求項18に記載の発明は、前記低酸素ガス供給は、前記チャンバーの上端部から前記低酸素ガスを前記チャンバー内に流入させるファンユニットと、前記チャンバー内のガスを前記チャンバーの下端部から排出する排気ダクトとを含み、前記低酸素ガス供給工程は、前記チャンバー内のガスを前記チャンバーの下端部から排出しながら、前記チャンバーの上端部から前記低酸素ガスを前記チャンバー内に流入させる工程を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の基板処理方法に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0039】
請求項19に記載の発明は、前記エッチング液供給手段は、前記エッチング液を貯留する第1タンクと、前記エッチング液を貯留する第2タンクと、前記第1タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を低下させる第1溶存酸素濃度変更手段と、前記第2タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を低下させる第2溶存酸素濃度変更手段と、を含み、前記制御装置は、溶存酸素を減少させることにより、前記第1タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を第1溶存酸素濃度まで低下させる第1溶存酸素濃度調整工程と、溶存酸素を減少させることにより、前記第2タンク内の前記エッチング液の溶存酸素濃度を、前記第1溶存酸素濃度とは異なる第2溶存酸素濃度まで低下させる第2溶存酸素濃度調整工程とをさらに実行し、前記エッチング工程は、前記第1タンクおよび第2タンクのうち前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に近い方の溶存酸素濃度を有する前記エッチング液を貯留しているタンクを選択する選択工程と、前記選択工程で選択された前記タンク内の前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面に向けて吐出する液吐出工程とを含む、請求項11~18のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の基板処理方法に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0040】
請求項20に記載の発明は、前記エッチング工程は、前記低酸素ガス供給工程で前記チャンバー内に流入した前記低酸素ガスを前記基板の主面に保持されている前記エッチング液に接触させながら、溶存酸素濃度が前記第1酸素濃度決定工程または第2酸素濃度決定工程で決定された前記設定溶存酸素濃度に一致または近づくように溶存酸素を減少させた前記エッチング液を、水平に保持されている前記基板の主面全域に供給することにより、前記基板の主面に形成されたポリシリコン膜をエッチングする工程である、請求項11~19のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の基板処理方法に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置を上から見た模式図である。
【
図2】基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
【
図4】基板に供給される薬液を生成する薬液生成ユニットと、薬液の溶存酸素濃度を調整する溶存酸素濃度変更ユニットとを示す模式図である。
【
図5】制御装置のハードウェアを示すブロック図である。
【
図6】基板処理装置によって実行される基板の処理の一例について説明するための工程図である。
【
図7】ポリシリコン膜が露出した基板の上面にエッチング液を供給して、ポリシリコン膜をエッチングしたときのエッチングレートの分布を示す概念図である。
【
図8】制御装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る遮断部材の鉛直断面を示す模式図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る遮断部材の底面を示す模式図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る処理ユニットの内部を上から見た模式図である。
【
図13】第4実施形態に係る薬液生成ユニットおよび溶存酸素濃度変更ユニットを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、一つのロットを構成する1枚以上の基板Wを収容するキャリアCを保持するロードポートLPと、ロードポートLP上のキャリアCから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2と、ロードポートLP上のキャリアCと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを備えている。
【0043】
搬送ロボットは、ロードポートLP上のキャリアCに対して基板Wの搬入および搬出を行うインデクサロボットIRと、複数の処理ユニット2に対して基板Wの搬入および搬出を行うセンターロボットCRとを含む。インデクサロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送し、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRは、基板Wを支持するハンドH1、H2を含む。
【0044】
図2は、基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。
図3は、
図2の一部を拡大した拡大図である。
図2は、昇降フレーム32および遮断部材33が下位置に位置している状態を示しており、
図3は、昇降フレーム32および遮断部材33が上位置に位置している状態を示している。
処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー4と、チャンバー4内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック10と、回転軸線A1まわりにスピンチャック10を取り囲む筒状の処理カップ23とを含む。
【0045】
チャンバー4は、基板Wが通過する搬入搬出口6bが設けられた箱型の隔壁6と、搬入搬出口6bを開閉するシャッター7とを含む。チャンバー4は、さらに、隔壁6の天井面で開口する送風口6aの下方に配置された整流板8を含む。クリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送るFFU5(ファン・フィルター・ユニット)は、送風口6aの上に配置されている。チャンバー4内のガスを排出する排気ダクト9は、処理カップ23に接続されている。送風口6aは、チャンバー4の上端部に設けられており、排気ダクト9は、チャンバー4の下端部に配置されている。排気ダクト9の一部は、チャンバー4の外に配置されている。
【0046】
整流板8は、隔壁6の内部空間を整流板8の上方の上空間Suと整流板8の下方の下空間SLとに仕切っている。隔壁6の天井面と整流板8の上面との間の上空間Suは、クリーンエアーが拡散する拡散空間である。整流板8の下面と隔壁6の床面との間の下空間SLは、基板Wの処理が行われる処理空間である。スピンチャック10や処理カップ23は、下空間SLに配置されている。隔壁6の床面から整流板8の下面までの鉛直方向の距離は、整流板8の上面から隔壁6の天井面までの鉛直方向の距離よりも長い。
【0047】
FFU5は、送風口6aを介して上空間Suにクリーンエアーを送る。上空間Suに供給されたクリーンエアーは、整流板8に当たって上空間Suを拡散する。上空間Su内のクリーンエアーは、整流板8を上下に貫通する複数の貫通孔を通過し、整流板8の全域から下方に流れる。下空間SLに供給されたクリーンエアーは、処理カップ23内に吸い込まれ、排気ダクト9を通じてチャンバー4の下端部から排出される。これにより、整流板8から下方に流れる均一なクリーンエアーの下降流(ダウンフロー)が、下空間SLに形成される。基板Wの処理は、クリーンエアーの下降流が形成されている状態で行われる。
【0048】
スピンチャック10は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース12と、スピンベース12の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン11と、スピンベース12の中央部から下方に延びるスピン軸13と、スピン軸13を回転させることによりスピンベース12および複数のチャックピン11を回転させるスピンモータ14とを含む。スピンチャック10は、複数のチャックピン11を基板Wの外周面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース12の上面12uに吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0049】
スピンベース12は、基板Wの下方に配置される上面12uを含む。スピンベース12の上面12uは、基板Wの下面と平行である。スピンベース12の上面12uは、基板Wの下面に対向する対向面である。スピンベース12の上面12uは、回転軸線A1を取り囲む円環状である。スピンベース12の上面12uの外径は、基板Wの外径よりも大きい。チャックピン11は、スピンベース12の上面12uの外周部から上方に突出している。チャックピン11は、スピンベース12に保持されている。基板Wは、基板Wの下面がスピンベース12の上面12uから離れた状態で複数のチャックピン11に保持される。
【0050】
処理ユニット2は、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する下面ノズル15を含む。下面ノズル15は、スピンベース12の上面12uと基板Wの下面との間に配置されたノズル円板部と、ノズル円板部から下方に延びるノズル筒状部とを含む。下面ノズル15の液吐出口15pは、ノズル円板部の上面中央部で開口している。基板Wがスピンチャック10に保持されている状態では、下面ノズル15の液吐出口15pが、基板Wの下面中央部に上下に対向する。
【0051】
基板処理装置1は、下面ノズル15にリンス液を案内する下リンス液配管16と、下リンス液配管16に介装された下リンス液バルブ17とを含む。下リンス液バルブ17が開かれると、下リンス液配管16によって案内されたリンス液が、下面ノズル15から上方に吐出され、基板Wの下面中央部に供給される。下面ノズル15に供給されるリンス液は、純水(脱イオン水:DIW(Deionzied Water))である。下面ノズル15に供給されるリンス液は、純水に限らず、IPA(イソプロピルアルコール)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(例えば、1~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0052】
図示はしないが、下リンス液バルブ17は、液体が流れる内部流路と内部流路を取り囲む環状の弁座とが設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3は、アクチュエータを制御することにより、下リンス液バルブ17を開閉させる。
【0053】
下面ノズル15の外周面とスピンベース12の内周面は、上下に延びる下筒状通路19を形成している。下筒状通路19は、スピンベース12の上面12uの中央部で開口する下中央開口18を含む。下中央開口18は、下面ノズル15のノズル円板部の下方に配置されている。基板処理装置1は、下筒状通路19を介して下中央開口18に供給される不活性ガスを案内する下ガス配管20と、下ガス配管20に介装された下ガスバルブ21と、下ガス配管20から下筒状通路19に供給される不活性ガスの流量を変更する下ガス流量調整バルブ22とを備えている。
【0054】
下ガス配管20から下筒状通路19に供給される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、窒素ガスに限らず、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの他の不活性ガスであってもよい。これらの不活性ガスは、空気中の酸素濃度(約21vol%)よりも低い酸素濃度を有する低酸素ガスである。
下ガスバルブ21が開かれると、下ガス配管20から下筒状通路19に供給された窒素ガスが、下ガス流量調整バルブ22の開度に対応する流量で、下中央開口18から上方に吐出される。その後、窒素ガスは、基板Wの下面とスピンベース12の上面12uとの間をあらゆる方向に放射状に流れる。これにより、基板Wとスピンベース12との間の空間が窒素ガスで満たされ、雰囲気中の酸素濃度が低減される。基板Wとスピンベース12との間の空間の酸素濃度は、下ガスバルブ21および下ガス流量調整バルブ22の開度に応じて変更される。
【0055】
処理カップ23は、基板Wから外方に排出された液体を受け止める複数のガード25と、複数のガード25によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ26と、複数のガード25と複数のカップ26とを取り囲む円筒状の外壁部材24とを含む。
図2は、2つのガード25と2つのカップ26とが設けられている例を示している。
ガード25は、スピンチャック10を取り囲む円筒状のガード筒状部25bと、ガード筒状部25bの上端部から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円環状のガード天井部25aとを含む。複数のガード天井部25aは、上下に重なっており、複数のガード筒状部25bは、同心円状に配置されている。複数のカップ26は、それぞれ、複数のガード筒状部25bの下方に配置されている。カップ26は、上向きに開いた環状の受液溝を形成している。
【0056】
処理ユニット2は、複数のガード25を個別に昇降させるガード昇降ユニット27を含む。ガード昇降ユニット27は、上位置から下位置までの任意の位置にガード25を位置させる。上位置は、ガード25の上端25uがスピンチャック10に保持されている基板Wが配置される保持位置よりも上方に配置される位置である。下位置は、ガード25の上端25uが保持位置よりも下方に配置される位置である。ガード天井部25aの円環状の上端は、ガード25の上端25uに相当する。ガード25の上端25uは、平面視で基板Wおよびスピンベース12を取り囲んでいる。
【0057】
スピンチャック10が基板Wを回転させている状態で、処理液が基板Wに供給されると、基板Wに供給された処理液が基板Wの周囲に振り切られる。処理液が基板Wに供給されるとき、少なくとも一つのガード25の上端25uが、基板Wよりも上方に配置される。したがって、基板Wの周囲に排出された薬液やリンス液などの処理液は、いずれかのガード25に受け止められ、このガード25に対応するカップ26に案内される。
【0058】
図3に示すように、処理ユニット2は、スピンチャック10の上方に配置された昇降フレーム32と、昇降フレーム32から吊り下げられた遮断部材33と、遮断部材33に挿入された中心ノズル45と、昇降フレーム32を昇降させることにより遮断部材33および中心ノズル45を昇降させる遮断部材昇降ユニット31とを含む。昇降フレーム32、遮断部材33、および中心ノズル45は、整流板8の下方に配置されている。
【0059】
遮断部材33は、スピンチャック10の上方に配置された円板部36と、円板部36の外周部から下方に延びる筒状部37とを含む。遮断部材33は、上向きに凹んだカップ状の内面を含む。遮断部材33の内面は、円板部36の下面36Lと筒状部37の内周面37iとを含む。以下では、円板部36の下面36Lを、遮断部材33の下面36Lということがある。
【0060】
円板部36の下面36Lは、基板Wの上面に対向する対向面である。円板部36の下面36Lは、基板Wの上面と平行である。筒状部37の内周面37iは、円板部36の下面36Lの外周縁から下方に延びている。筒状部37の内径は、筒状部37の内周面37iの下端に近づくにしたがって増加している。筒状部37の内周面37iの下端の内径は、基板Wの直径よりも大きい。筒状部37の内周面37iの下端の内径は、スピンベース12の外径より大きくてもよい。遮断部材33が後述する下位置(
図2に示す位置)に配置されると、基板Wは、筒状部37の内周面37iによって取り囲まれる。
【0061】
円板部36の下面36Lは、回転軸線A1を取り囲む円環状である。円板部36の下面36Lの内周縁は、円板部36の下面36Lの中央部で開口する上中央開口38を形成している。遮断部材33の内周面は、上中央開口38から上方に延びる貫通穴を形成している。遮断部材33の貫通穴は、遮断部材33を上下に貫通している。中心ノズル45は、遮断部材33の貫通穴に挿入されている。中心ノズル45の下端の外径は、上中央開口38の直径よりも小さい。
【0062】
遮断部材33の内周面は、中心ノズル45の外周面と同軸である。遮断部材33の内周面は、径方向(回転軸線A1に直交する方向)に間隔をあけて中心ノズル45の外周面を取り囲んでいる。遮断部材33の内周面と中心ノズル45の外周面とは、上下に延びる上筒状通路39を形成している。中心ノズル45は、昇降フレーム32および遮断部材33から上方に突出している。遮断部材33が昇降フレーム32から吊り下げられているとき、中心ノズル45の下端は、円板部36の下面36Lよりも上方に配置されている。薬液やリンス液などの処理液は、中心ノズル45の下端から下方に吐出される。
【0063】
遮断部材33は、円板部36から上方に延びる筒状の接続部35と、接続部35の上端部から外方に延びる環状のフランジ部34とを含む。フランジ部34は、遮断部材33の円板部36および筒状部37よりも上方に配置されている。フランジ部34は、円板部36と平行である。フランジ部34の外径は、筒状部37の外径よりも小さい。フランジ部34は、後述する昇降フレーム32の下プレート32Lに支持されている。
【0064】
昇降フレーム32は、遮断部材33のフランジ部34の上方に位置する上プレート32uと、上プレート32uから下方に延びており、フランジ部34を取り囲むサイドリング32sと、サイドリング32sの下端部から内方に延びており、遮断部材33のフランジ部34の下方に位置する環状の下プレート32Lとを含む。フランジ部34の外周部は、上プレート32uと下プレート32Lとの間に配置されている。フランジ部34の外周部は、上プレート32uと下プレート32Lとの間で上下に移動可能である。
【0065】
昇降フレーム32および遮断部材33は、遮断部材33が昇降フレーム32に支持されている状態で、周方向(回転軸線A1まわりの方向)への昇降フレーム32および遮断部材33の相対移動を規制する位置決め突起41および位置決め穴42を含む。
図2は、複数の位置決め突起41が下プレート32Lに設けられており、複数の位置決め穴42がフランジ部34に設けられている例を示している。位置決め突起41がフランジ部34に設けられ、位置決め穴42が下プレート32Lに設けられてもよい。
【0066】
複数の位置決め突起41は、回転軸線A1上に配置された中心を有する円上に配置されている。同様に、複数の位置決め穴42は、回転軸線A1上に配置された中心を有する円上に配置されている。複数の位置決め穴42は、複数の位置決め突起41と同じ規則性で周方向に配列されている。下プレート32Lの上面から上方に突出する位置決め突起41は、フランジ部34の下面から上方に延びる位置決め穴42に挿入されている。これにより、昇降フレーム32に対する周方向への遮断部材33の移動が規制される。
【0067】
遮断部材33は、遮断部材33の内面から下方に突出する複数の上支持部43を含む。スピンチャック10は、複数の上支持部43をそれぞれ支持する複数の下支持部44を含む。複数の上支持部43は、遮断部材33の筒状部37によって取り囲まれている。上支持部43の下端は、筒状部37の下端よりも上方に配置されている。回転軸線A1から上支持部43までの径方向の距離は、基板Wの半径よりも大きい。同様に、回転軸線A1から下支持部44までの径方向の距離は、基板Wの半径よりも大きい。下支持部44は、スピンベース12の上面12uから上方に突出している。下支持部44は、チャックピン11よりも外側に配置されている。
【0068】
複数の上支持部43は、回転軸線A1上に配置された中心を有する円上に配置されている。同様に、複数の下支持部44は、回転軸線A1上に配置された中心を有する円上に配置されている。複数の下支持部44は、複数の上支持部43と同じ規則性で周方向に配列されている。複数の下支持部44は、スピンベース12とともに回転軸線A1まわりに回転する。スピンベース12の回転角は、スピンモータ14によって変更される。スピンベース12が基準回転角に配置されると、平面視において、複数の上支持部43が、それぞれ、複数の下支持部44に重なる。
【0069】
遮断部材昇降ユニット31は、昇降フレーム32に連結されている。遮断部材33のフランジ部34が昇降フレーム32の下プレート32Lに支持されている状態で、遮断部材昇降ユニット31が昇降フレーム32を下降させると、遮断部材33も下降する。平面視で複数の上支持部43がそれぞれ複数の下支持部44に重なる基準回転角にスピンベース12が配置されている状態で、遮断部材昇降ユニット31が遮断部材33を下降させると、上支持部43の下端部が下支持部44の上端部に接触する。これにより、複数の上支持部43がそれぞれ複数の下支持部44に支持される。
【0070】
遮断部材33の上支持部43がスピンチャック10の下支持部44に接触した後に、遮断部材昇降ユニット31が昇降フレーム32を下降させると、昇降フレーム32の下プレート32Lが遮断部材33のフランジ部34に対して下方に移動する。これにより、下プレート32Lがフランジ部34から離れ、位置決め突起41が位置決め穴42から抜け出る。さらに、昇降フレーム32および中心ノズル45が遮断部材33に対して下方に移動するので、中心ノズル45の下端と遮断部材33の円板部36の下面36Lとの高低差が減少する。このとき、昇降フレーム32は、遮断部材33のフランジ部34が昇降フレーム32の上プレート32uに接触しない高さ(後述する下位置)に配置される。
【0071】
遮断部材昇降ユニット31は、上位置(
図3に示す位置)から下位置(
図2に示す位置)までの任意の位置に昇降フレーム32を位置させる。上位置は、位置決め突起41が位置決め穴42に挿入されており、遮断部材33のフランジ部34が昇降フレーム32の下プレート32Lに接触している位置である。つまり、上位置は、遮断部材33が昇降フレーム32から吊り下げられた位置である。下位置は、下プレート32Lがフランジ部34から離れており、位置決め突起41が位置決め穴42から抜け出た位置である。つまり、下位置は、昇降フレーム32および遮断部材33の連結が解除され、遮断部材33が昇降フレーム32のいずれの部分にも接触しない位置である。
【0072】
昇降フレーム32および遮断部材33を下位置に移動させると、遮断部材33の筒状部37の下端が基板Wの下面よりも下方に配置され、基板Wの上面と遮断部材33の下面36Lとの間の空間が、遮断部材33の筒状部37によって取り囲まれる。そのため、基板Wの上面と遮断部材33の下面36Lとの間の空間は、遮断部材33の上方の雰囲気だけでなく、遮断部材33のまわりの雰囲気からも遮断される。これにより、基板Wの上面と遮断部材33の下面36Lとの間の空間の密閉度を高めることができる。
【0073】
さらに、昇降フレーム32および遮断部材33が下位置に配置されると、昇降フレーム32に対して遮断部材33を回転軸線A1まわりに回転させても、遮断部材33は、昇降フレーム32に衝突しない。遮断部材33の上支持部43がスピンチャック10の下支持部44に支持されると、上支持部43および下支持部44が噛み合い、周方向への上支持部43および下支持部44の相対移動が規制される。この状態で、スピンモータ14が回転すると、スピンモータ14のトルクが上支持部43および下支持部44を介して遮断部材33に伝達される。これにより、遮断部材33は、昇降フレーム32および中心ノズル45が静止した状態で、スピンベース12と同じ方向に同じ速度で回転する。
【0074】
中心ノズル45は、液体を吐出する複数の液吐出口と、ガスを吐出するガス吐出口とを含む。複数の液吐出口は、第1薬液を吐出する第1薬液吐出口46と、第2薬液を吐出する第2薬液吐出口47と、リンス液を吐出する上リンス液吐出口48とを含む。ガス吐出口は、不活性ガスを吐出する上ガス吐出口49である。第1薬液吐出口46、第2薬液吐出口47、および上リンス液吐出口48は、中心ノズル45の下端で開口している。上ガス吐出口49は、中心ノズル45の外周面で開口している。
【0075】
第1薬液および第2薬液は、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(例えばTMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、無機アルカリ(例えばNaOH:水酸化ナトリウムなど)、界面活性剤、および腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液である。硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、クエン酸、蓚酸、無機アルカリおよびTMAHは、エッチング液である。
【0076】
第1薬液および第2薬液は、同種の薬液であってもよいし、互いに異なる種類の薬液であってもよい。
図2等は、第1薬液がDHF(希フッ酸)であり、第2薬液がTMAHである例を示している。また、
図2等は、中心ノズル45に供給されるリンス液が純水であり、中心ノズル45に供給される不活性ガスが窒素ガスである例を示している。中心ノズル45に供給されるリンス液は、純水以外のリンス液であってもよい。中心ノズル45に供給される不活性ガスは、窒素ガス以外の不活性ガスであってもよい。
【0077】
基板処理装置1は、中心ノズル45に第1薬液を案内する第1薬液配管50と、第1薬液配管50に介装された第1薬液バルブ51と、中心ノズル45に第2薬液を案内する第2薬液配管52と、第2薬液配管52に介装された第2薬液バルブ53と、中心ノズル45にリンス液を案内する上リンス液配管54と、上リンス液配管54に介装された上リンス液バルブ55とを備えている。基板処理装置1は、さらに、中心ノズル45にガスを案内する上ガス配管56と、上ガス配管56に介装された上ガスバルブ57と、上ガス配管56から中心ノズル45に供給されるガスの流量を変更する上ガス流量調整バルブ58とを備えている。
【0078】
第1薬液バルブ51が開かれると、第1薬液が中心ノズル45に供給され、中心ノズル45の下端で開口する第1薬液吐出口46から下方に吐出される。基板処理装置1は、第2薬液を生成する薬液生成ユニット61を備えている。第2薬液バルブ53が開かれると、薬液生成ユニット61で生成された第2薬液が中心ノズル45に供給され、中心ノズル45の下端で開口する第2薬液吐出口47から下方に吐出される。上リンス液バルブ55が開かれると、リンス液が中心ノズル45に供給され、中心ノズル45の下端で開口する上リンス液吐出口48から下方に吐出される。これにより、薬液またはリンス液が基板Wの上面に供給される。
【0079】
上ガスバルブ57が開かれると、上ガス配管56によって案内された窒素ガスが、上ガス流量調整バルブ58の開度に対応する流量で、中心ノズル45に供給され、中心ノズル45の外周面で開口する上ガス吐出口49から斜め下方に吐出される。その後、窒素ガスは、上筒状通路39内を周方向に流れながら、上筒状通路39内を下方に流れる。上筒状通路39の下端に達した窒素ガスは、上筒状通路39の下端から下方に流れ出る。その後、窒素ガスは、基板Wの上面と遮断部材33の下面36Lとの間の空間をあらゆる方向に放射状に流れる。これにより、基板Wと遮断部材33との間の空間が窒素ガスで満たされ、雰囲気中の酸素濃度が低減される。基板Wと遮断部材33との間の空間の酸素濃度は、上ガスバルブ57および上ガス流量調整バルブ58の開度に応じて変更される。
【0080】
図4は、基板Wに供給される薬液を生成する薬液生成ユニット61と、薬液の溶存酸素濃度を調整する溶存酸素濃度変更ユニット67とを示す模式図である。
薬液生成ユニット61は、基板Wに供給される薬液を貯留するタンク62と、タンク62内の薬液を循環させる環状の循環路を形成する循環配管63とを含む。薬液生成ユニット61は、さらに、タンク62内の薬液を循環配管63に送るポンプ64と、循環路を流れる薬液からパーティクルなどの異物を除去するフィルター66とを含む。薬液生成ユニット61は、これらに加えて、薬液の加熱または冷却によってタンク62内の薬液の温度を変更する温度調節器65を含んでいてもよい。
【0081】
循環配管63の上流端および下流端は、タンク62に接続されている。第2薬液配管52の上流端は、循環配管63に接続されており、第2薬液配管52の下流端は、中心ノズル45に接続されている。ポンプ64、温度調節器65、およびフィルター66は、循環配管63に介装されている。温度調節器65は、室温(例えば20~30℃)よりも高い温度で液体を加熱するヒータであってもよいし、室温よりも低い温度で液体を冷却するクーラーであってもよいし、加熱および冷却の両方の機能を有していてもよい。
【0082】
ポンプ64は、常時、タンク62内の薬液を循環配管63内に送る。薬液は、タンク62から循環配管63の上流端に送られ、循環配管63の下流端からタンク62に戻る。これにより、タンク62内の薬液が循環路を循環する。薬液が循環路を循環している間に、薬液の温度が温度調節器65によって調節される。これにより、タンク62内の薬液は、一定の温度に維持される。第2薬液バルブ53が開かれると、循環配管63内を流れる薬液の一部が、第2薬液配管52を介して中心ノズル45に供給される。
【0083】
基板処理装置1は、薬液の溶存酸素濃度を調整する溶存酸素濃度変更ユニット67を備えている。溶存酸素濃度変更ユニット67は、タンク62内にガスを供給することによりタンク62内の薬液にガスを溶け込ませるガス供給配管68を含む。溶存酸素濃度変更ユニット67は、さらに、不活性ガスをガス供給配管68に供給する不活性ガス配管69と、不活性ガス配管69からガス供給配管68に不活性ガスが流れる開状態と不活性ガスが不活性ガス配管69でせき止められる閉状態との間で開閉する不活性ガスバルブ70と、不活性ガス配管69からガス供給配管68に供給される不活性ガスの流量を変更する不活性ガス流量調整バルブ71とを含む。
【0084】
ガス供給配管68は、タンク62内の薬液中に配置されたガス吐出口68pを含むバブリング配管である。不活性ガスバルブ70が開かれると、つまり、不活性ガスバルブ70が閉状態から開状態に切り替えられると、窒素ガスなどの不活性ガスが、不活性ガス流量調整バルブ71の開度に対応する流量でガス吐出口68pから吐出される。これにより、タンク62内の薬液中に多数の気泡が形成され、不活性ガスがタンク62内の薬液に溶け込む。このとき、溶存酸素が薬液から排出され、薬液の溶存酸素濃度が低下する。タンク62内の薬液の溶存酸素濃度は、ガス吐出口68pから吐出される窒素ガスの流量を変更することにより変更される。
【0085】
溶存酸素濃度変更ユニット67は、不活性ガス配管69等に加えて、クリーンエアーなどの酸素を含む酸素含有ガスをガス供給配管68に供給する酸素含有ガス配管72と、酸素含有ガス配管72からガス供給配管68に酸素含有ガスが流れる開状態と酸素含有ガスが酸素含有ガス配管72でせき止められる閉状態との間で開閉する酸素含有ガスバルブ73と、酸素含有ガス配管72からガス供給配管68に供給される酸素含有ガスの流量を変更する酸素含有ガス流量調整バルブ74とを含んでいてもよい。
【0086】
酸素含有ガスバルブ73が開かれると、酸素含有ガスの一例である空気が、酸素含有ガス流量調整バルブ74の開度に対応する流量でガス吐出口68pから吐出される。これにより、タンク62内の薬液中に多数の気泡が形成され、空気がタンク62内の薬液に溶け込む。空気は、その体積の約21%が酸素であるのに対し、窒素ガスは、酸素を含まないもしくは極微量しか酸素を含まない。したがって、タンク62内に空気を供給しない場合に比べて、短時間でタンク62内の薬液の溶存酸素濃度を上昇させることができる。例えば薬液の溶存酸素濃度が設定値よりも低くなりすぎた場合は、タンク62内の薬液に意図的に空気を溶け込ませてもよい。
【0087】
溶存酸素濃度変更ユニット67は、さらに、薬液の溶存酸素濃度を測定する酸素濃度計75を含んでいてもよい。
図4は、酸素濃度計75が測定配管76に介装されている例を示している。酸素濃度計75は、循環配管63に介装されていてもよい。測定配管76の上流端は、フィルター66に接続されており、測定配管76の下流端は、タンク62に接続されている。測定配管76の上流端は、循環配管63に接続されていてもよい。循環配管63内の薬液の一部は、測定配管76に流れ込み、タンク62に戻る。酸素濃度計75は、測定配管76内に流入した薬液の溶存酸素濃度を測定する。不活性ガスバルブ70、不活性ガス流量調整バルブ71、酸素含有ガスバルブ73、および酸素含有ガス流量調整バルブ74の少なくとも一つの開度は、酸素濃度計75の測定値に応じて変更される。
【0088】
図5は、制御装置3のハードウェアを示すブロック図である。
制御装置3は、コンピュータ本体81と、コンピュータ本体81に接続された周辺装置84とを含む、コンピュータである。コンピュータ本体81は、各種の命令を実行するCPU82(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶する主記憶装置83とを含む。周辺装置84は、プログラムP等の情報を記憶する補助記憶装置85と、リムーバブルメディアMから情報を読み取る読取装置86と、ホストコンピュータ等の他の装置と通信する通信装置87とを含む。
【0089】
制御装置3は、入力装置88および表示装置89に接続されている。入力装置88は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置89の画面に表示される。入力装置88は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置88および表示装置89を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられていてもよい。
【0090】
CPU82は、補助記憶装置85に記憶されたプログラムPを実行する。補助記憶装置85内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、読取装置86を通じてリムーバブルメディアMから補助記憶装置85に送られたものであってもよいし、ホストコンピュータなどの外部装置から通信装置87を通じて補助記憶装置85に送られたものであってもよい。
【0091】
補助記憶装置85およびリムーバブルメディアMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。補助記憶装置85は、例えば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアMは、例えば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアMは、プログラムPが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。
【0092】
補助記憶装置85は、複数のレシピを記憶している。補助記憶装置85は、さらに、後述する溶存酸素濃度決定データおよび雰囲気酸素濃度決定データを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。制御装置3は、ホストコンピュータによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。以下の各工程は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、制御装置3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
【0093】
図6は、基板処理装置1によって実行される基板Wの処理の一例について説明するための工程図である。以下では、
図1、
図2、
図3および
図6を参照する。
基板Wの処理の具体例は、ポリシリコン膜が露出した基板W(シリコンウエハ)の表面にエッチング液の一例であるTMAHを供給して、ポリシリコン膜をエッチングするエッチング処理である。エッチングされる対象は、ポリシリコン膜以外の薄膜や基板W自体(シリコンウエハ)であってもよい。また、エッチング以外の処理が実行されてもよい。
【0094】
基板処理装置1によって基板Wが処理されるときは、チャンバー4内に基板Wを搬入する搬入工程が行われる(
図6のステップS1)。
具体的には、昇降フレーム32および遮断部材33が上位置に位置しており、全てのガード25が下位置に位置している状態で、センターロボットCRが、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をチャンバー4内に進入させる。そして、センターロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンドH1上の基板Wを複数のチャックピン11の上に置く。その後、複数のチャックピン11が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが把持される。センターロボットCRは、基板Wをスピンチャック10の上に置いた後、ハンドH1をチャンバー4の内部から退避させる。
【0095】
次に、上ガスバルブ57および下ガスバルブ21が開かれ、遮断部材33の上中央開口38およびスピンベース12の下中央開口18が窒素ガスの吐出を開始する。これにより、基板Wに接する雰囲気中の酸素濃度が低減される。さらに、遮断部材昇降ユニット31が昇降フレーム32を上位置から下位置に下降させ、ガード昇降ユニット27がいずれかのガード25を下位置から上位置に上昇させる。このとき、スピンベース12は、平面視で複数の上支持部43がそれぞれ複数の下支持部44に重なる基準回転角に保持されている。したがって、遮断部材33の上支持部43がスピンベース12の下支持部44に支持され、遮断部材33が昇降フレーム32から離れる。その後、スピンモータ14が駆動され、基板Wの回転が開始される(
図6のステップS2)。
【0096】
次に、第1薬液の一例であるDHFを基板Wの上面に供給する第1薬液供給工程が行われる(
図6のステップS3)。
具体的には、遮断部材33が下位置に位置している状態で第1薬液バルブ51が開かれ、中心ノズル45がDHFの吐出を開始する。中心ノズル45から吐出されたDHFは、基板Wの上面中央部に着液した後、回転している基板Wの上面に沿って外方に流れる。これにより、基板Wの上面全域を覆うDHFの液膜が形成され、基板Wの上面全域にDHFが供給される。第1薬液バルブ51が開かれてから所定時間が経過すると、第1薬液バルブ51が閉じられ、DHFの吐出が停止される。
【0097】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給する第1リンス液供給工程が行われる(
図6のステップS4)。
具体的には、遮断部材33が下位置に位置している状態で上リンス液バルブ55が開かれ、中心ノズル45が純水の吐出を開始する。基板Wの上面中央部に着液した純水は、回転している基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のDHFは、中心ノズル45から吐出された純水によって洗い流される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。上リンス液バルブ55が開かれてから所定時間が経過すると、上リンス液バルブ55が閉じられ、純水の吐出が停止される。
【0098】
次に、第2薬液の一例であるTMAHを基板Wの上面に供給する第2薬液供給工程が行われる(
図6のステップS5)。
具体的には、遮断部材33が下位置に位置している状態で第2薬液バルブ53が開かれ、中心ノズル45がTMAHの吐出を開始する。TMAHの吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード25を切り替えるために、少なくとも一つのガード25を鉛直に移動させてもよい。基板Wの上面中央部に着液したTMAHは、回転している基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の純水は、中心ノズル45から吐出されたTMAHに置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆うTMAHの液膜が形成される。第2薬液バルブ53が開かれてから所定時間が経過すると、第2薬液バルブ53が閉じられ、TMAHの吐出が停止される。
【0099】
前述のように、TMAHは、溶存酸素濃度が低いエッチング液である。TMAHは、雰囲気の酸素濃度が下げられた状態で基板Wの上面に供給される。したがって、TMAHは、酸素濃度が低い雰囲気に接しながら基板Wの上面に沿って外方に流れる。後述するように、基板Wの上面に供給されたTMAHの溶存酸素濃度の設定値と、TMAHに接する雰囲気中の酸素濃度の設定値とは、エッチング量の分布を制御するために互いに関連付けられている。
【0100】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給する第2リンス液供給工程が行われる(
図6のステップS6)。
具体的には、遮断部材33が下位置に位置している状態で上リンス液バルブ55が開かれ、中心ノズル45が純水の吐出を開始する。基板Wの上面中央部に着液した純水は、回転している基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のTMAHは、中心ノズル45から吐出された純水によって洗い流される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。上リンス液バルブ55が開かれてから所定時間が経過すると、上リンス液バルブ55が閉じられ、純水の吐出が停止される。
【0101】
次に、基板Wの回転によって基板Wを乾燥させる乾燥工程が行われる(
図6のステップS7)。
具体的には、遮断部材33が下位置に位置している状態でスピンモータ14が基板Wを回転方向に加速させ、第1薬液供給工程から第2リンス液供給工程までの期間における基板Wの回転速度よりも大きい高回転速度(例えば数千rpm)で基板Wを回転させる。これにより、液体が基板Wから除去され、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモータ14が回転を停止する。このとき、スピンモータ14は、基準回転角でスピンベース12を停止させる。これにより、基板Wの回転が停止される(
図6のステップS8)。
【0102】
次に、基板Wをチャンバー4から搬出する搬出工程が行われる(
図6のステップS9)。
具体的には、遮断部材昇降ユニット31が昇降フレーム32を上位置まで上昇させ、ガード昇降ユニット27が全てのガード25を下位置まで下降させる。さらに、上ガスバルブ57および下ガスバルブ21が閉じられ、遮断部材33の上中央開口38とスピンベース12の下中央開口18とが窒素ガスの吐出を停止する。その後、センターロボットCRが、ハンドH1をチャンバー4内に進入させる。センターロボットCRは、複数のチャックピン11が基板Wの把持を解除した後、スピンチャック10上の基板WをハンドH1で支持する。その後、センターロボットCRは、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をチャンバー4の内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー4から搬出される。
【0103】
図7は、エッチング液がTMAHなどの有機アルカリである場合において、ポリシリコン膜が露出した基板Wの上面にエッチング液を供給して、ポリシリコン膜をエッチングしたときのエッチングレートの分布を示す概念図である。
図7(a)~
図7(d)は、基板Wの上面の中心と基板Wの上面の外周縁に位置する2点とを通る直線上における基板Wの上面のエッチングレート(単位時間あたりのエッチング量)の分布を示している。エッチングレートは、エッチング速度に相当する。以下の説明において、基準線(
図7(a)~
図7(d)に示す縦軸)は、基板Wの上面の中心を通り、基板Wの上面に直交する直線を意味する。
【0104】
エッチング液の一例であるTMAHなどの有機アルカリを用いたポリシリコン膜のウェットエッチングでは、エッチング液の溶存酸素がポリシリコン膜のエッチングを妨げる傾向にある。したがって、エッチング液の溶存酸素濃度が上昇すると、エッチングレートが低下し、エッチング液の溶存酸素濃度が低下すると、エッチングレートが上昇する。
エッチング液の溶存酸素濃度が低く、雰囲気中の酸素濃度が高いときに、エッチング液を基板Wに供給すると、エッチング液が基板Wの上面に沿って外方に流れる間に、雰囲気中の酸素が基板W上のエッチング液に溶け込み、エッチング液の溶存酸素濃度が基板Wの外周に近づくにしたがって上昇する。つまり、基板Wの上面外周部でのエッチング液の溶存酸素濃度は、基板Wの上面中央部でのエッチング液の溶存酸素濃度よりも高い。そのため、
図7(a)に示すように、エッチングレートは、基準線に関して概ね対称な倒立V字状の分布を示す。この場合、基板Wの上面にわたるエッチング量の分布が円錐状となるように基板Wがエッチングされる。
【0105】
図7(b)に示すように、エッチング液の溶存酸素濃度などの雰囲気中の酸素濃度以外の条件を変えずに、雰囲気中の酸素濃度だけを低下させて、エッチング液を基板Wに供給すると、基板W上のエッチング液に溶け込む酸素の量が減少するので、基板W上のエッチング液は、溶存酸素濃度の上昇が緩和される。そのため、
図7(b)に示すように、基板Wの上面中央部でのエッチングレートは、殆ど変わらないが、基板Wの上面外周部でのエッチングレートは、雰囲気中の酸素濃度を低下させる前と比べて上昇する。そのため、基板Wの上面中央部でのエッチングレートと基板Wの上面外周部でのエッチングレートとの差が減少し、エッチングの均一性が高まる。
【0106】
図7(c)は、
図7(b)に示すエッチングレートの分布が得られたときの処理条件よりも、エッチング液の溶存酸素濃度を上昇させたときのエッチングレートの分布を示している。
図7(c)に示すエッチングレートは、緩やかな倒立V字状の曲線を描いている。エッチング液の溶存酸素濃度を上昇させると、基板Wの上面中央部でのエッチングレートが低下する。さらに、雰囲気中の酸素濃度が低下しているので、基板W上のエッチング液の溶存酸素濃度は殆ど上がらない。そのため、
図7(c)に示すように、エッチングレートの分布は、概ね平らな曲線を描き、エッチングの均一性がさらに高まる。同様の結果は、エッチング液の溶存酸素濃度を上昇させる代わりに、雰囲気中の酸素濃度をさらに低下させた場合にも得られると考えられる。
【0107】
図7(d)は、
図7(c)に示すエッチングレートの分布が得られたときの処理条件よりも、エッチング液の溶存酸素濃度を上昇させたときのエッチングレートの分布を示している。エッチング液の溶存酸素濃度を上昇させると、基板Wの上面中央部でのエッチングレートが低下する。その一方で、雰囲気中の酸素濃度がエッチング液の溶存酸素濃度に対して大幅に低いので、雰囲気中の酸素がエッチング液に溶け込むのではなく、雰囲気中の窒素が基板W上のエッチング液に溶け込み、エッチング液の溶存酸素濃度が低下する。そのため、
図7(d)に示すように、エッチングレートの分布は、基準線に関して概ね対称なV字状の曲線を描く。この場合、基板Wの上面にわたるエッチング量の分布が倒立円錐状となるように基板Wがエッチングされる。
【0108】
このように、エッチングの均一性を高める場合、雰囲気中の酸素濃度は、低ければ低いほど良いわけではなく、基板Wに供給されるエッチング液の溶存酸素濃度に応じて設定する必要がある。同様に、雰囲気中の酸素濃度が一定の場合、エッチング液の溶存酸素濃度が低すぎるまたは高すぎると、エッチングの均一性が低下してしまう。異なる観点で考えると、エッチング液の溶存酸素濃度と雰囲気中の酸素濃度を互いに関連させることにより、基板Wの上面全域におけるエッチングレートの分布を、平らにすることができるし、円錐状または倒立円錐状にすることもできる。
【0109】
上では、エッチング液の溶存酸素濃度が上昇すると、エッチングレートが低下する場合について説明したが、エッチング液の溶存酸素濃度が上昇すると、エッチングレートが減少する場合も同様に考えられる。したがって、エッチング液の溶存酸素濃度および雰囲気中の酸素濃度の両方を可能な限り低下させれば良いわけではなく、エッチング液の溶存酸素濃度および雰囲気中の酸素濃度の差も管理することが、エッチング後の基板Wの上面の断面形状(プロファイル)をコントロールする上で重要である。
【0110】
エッチング前の基板Wの上面が平坦であれば、エッチングレートの分布が平坦になるように基板Wの上面をエッチングすれば、エッチング後の基板Wの上面も平坦になる。エッチング前の基板Wの上面が円錐状であれば、基板Wの上面にわたるエッチング量の分布が円錐状になるように基板Wの上面をエッチングすれば、エッチング後の基板Wの上面の平坦度を高めることができる。同様に、エッチング前の基板Wの上面が倒立円錐状であれば、基板Wの上面にわたるエッチング量の分布が倒立円錐状になるように基板Wの上面をエッチングすれば、エッチング後の基板Wの上面の平坦度を高めることができる。
【0111】
基板Wの上面中央部でのエッチング量と基板Wの上面外周部でのエッチング量との差は、エッチング液の溶存酸素濃度および雰囲気中の酸素濃度だけでなく、エッチング液の供給時間、エッチング液の供給流量(単位時間あたりの供給量)、エッチング液の濃度、エッチング液の温度、および、基板Wの回転速度を含む複数の条件に依存する。したがって、これらの条件のうちの少なくとも一つを変化させれば、エッチング後の基板Wの上面の平坦度を高めることができる。もしくは、エッチング後の基板Wの上面を、意図的に、円錐状または倒立円錐状にすることができる。
【0112】
図8は、制御装置3の機能ブロックを示すブロック図である。
以下では、
図5および
図8を参照する。
図8に示す情報取得部91、設定溶存酸素濃度決定部92、設定雰囲気酸素濃度決定部93、溶存酸素濃度変更部94、雰囲気酸素濃度変更部95、および処理実行部96は、制御装置3にインストールされたプログラムPをCPU82が実行することにより実現される機能ブロックである。以下の説明では、エッチング液の溶存酸素濃度および雰囲気中の酸素濃度以外の条件が一定であり、エッチング液の溶存酸素濃度および雰囲気中の酸素濃度の少なくとも一方を変更することにより、基板Wのエッチング量の分布を変更する場合について説明する。
【0113】
図8に示すように、制御装置3は、基板処理装置1に入力された情報を取得する情報取得部91を含む。情報取得部91に取得される情報は、ホストコンピュータなどの外部装置から基板処理装置1に入力されたものであってもよいし、操作者が入力装置88を介して基板処理装置1に入力したものであってもよい。
情報取得部91に入力される情報には、基板Wの上面中央部でのエッチング量の設定値を表す設定中央エッチング量と、基板Wの上面外周部でのエッチング量の設定値を表す設定外周エッチング量とが含まれる。基板Wの上面全域を均一にエッチングする場合、設定中央エッチング量および設定外周エッチング量に代えてもしくは加えて、エッチング量の設定値と、エッチングの均一性の設定値とが、情報取得部91に入力されてもよい。エッチングの均一性は、標準偏差を平均値で割った値である。これらの情報は、基板Wの上面のエッチング量の要求値を表す要求エッチング量に相当する。
【0114】
制御装置3は、エッチング液の溶存酸素濃度の設定値を表す設定溶存酸素濃度を決定する設定溶存酸素濃度決定部92と、雰囲気中の酸素濃度の設定値を表す設定雰囲気酸素濃度を決定する設定雰囲気酸素濃度決定部93とを含む。設定溶存酸素濃度決定部92は、着液位置でのエッチングレートと設定溶存酸素濃度との関係を示す溶存酸素濃度決定データを記憶している。設定雰囲気酸素濃度決定部93は、エッチングレートの傾きと設定雰囲気酸素濃度との関係を示す雰囲気酸素濃度決定データを記憶している。エッチングレートの傾きは、着液位置でのエッチングレートと基板Wの上面内の任意の位置でのエッチングレートとを結ぶ直線の傾きを意味する。
【0115】
溶存酸素濃度決定データは、設定溶存酸素濃度以外の条件を変えずに設定溶存酸素濃度を複数の値に変えたときの着液位置でのエッチングレートの測定値に基づいて作成されている。溶存酸素濃度決定データは、着液位置でのエッチングレートと溶存酸素濃度との関係を示す式または表であってもよいし、これら以外であってもよい。同様に、雰囲気酸素濃度決定データは、設定雰囲気酸素濃度以外の条件を変えずに設定雰囲気酸素濃度を複数の値に変えたときのエッチングレートの傾きの測定値に基づいて作成されている。雰囲気酸素濃度決定データは、エッチングレートの傾きと設定雰囲気酸素濃度との関係を示す式または表であってもよいし、これら以外であってもよい。
【0116】
エッチング液の溶存酸素濃度および雰囲気中の酸素濃度以外の条件が一定である場合、着液位置でのエッチングレートは、主としてエッチング液の溶存酸素濃度に依存する。つまり、エッチング液の溶存酸素濃度が同じであれば、雰囲気中の酸素濃度を変えても、着液位置でのエッチングレートは、変わらないもしくは殆ど変わらない。その一方で、エッチングレートの傾きは、雰囲気中の酸素濃度だけでなく、エッチング液の溶存酸素濃度にも依存する。つまり、雰囲気中の酸素濃度が同じであっても、エッチング液の溶存酸素濃度が変われば、エッチングレートの傾きも変わりうる。
【0117】
エッチング液の溶存酸素濃度および雰囲気中の酸素濃度以外の条件が一定である場合、着液位置でのエッチングレートと、エッチングレートの傾きと、エッチング液の供給時間と、基板Wの直径とが分かれば、中央部および外周部を含む基板Wの上面内の任意の位置でのエッチング量の推定値が分かる。つまり、これらが分かれば、基板Wの上面中央部でのエッチング量の推定値と基板Wの上面外周部でのエッチング量の推定値とを含む基板Wの上面内のエッチング量の分布の推定値が分かる。
【0118】
設定溶存酸素濃度決定部92は、着液位置に相当する基板Wの上面中央部でのエッチング量の推定値が設定中央エッチング量に一致するまたは概ね等しくなる設定溶存酸素濃度の値を溶存酸素濃度決定データを用いて計算または検索し、計算または検索された値を設定溶存酸素濃度として決定する。同様に、設定雰囲気酸素濃度決定部93は、基板Wの上面外周部でのエッチング量の推定値が設定外周エッチング量に一致するまたは概ね等しくなる設定雰囲気酸素濃度の値を雰囲気酸素濃度決定データを用いて計算または検索し、計算または検索された値を設定雰囲気酸素濃度として決定する。
【0119】
エッチング液がTMAHであり、エッチング対象がポリシリコン膜である場合、設定溶存酸素濃度として設定可能な数値範囲は、例えば0.02~6.6ppm(40℃で処理する場合)であり、設定雰囲気酸素濃度として設定可能な数値範囲は、例えば10~140000ppmである。決定された設定溶存酸素濃度は、前述の数値範囲の最小値であってもよいし、それより大きい値であってもよい。決定された設定雰囲気酸素濃度についても同様である。設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の両方が結果的に最小値である場合もありうるが、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度は、あくまで要求エッチング量に基づいて決定される。
【0120】
制御装置3は、エッチング液の実際の溶存酸素濃度が設定溶存酸素濃度決定部92によって決定された設定溶存酸素濃度に一致するまたは近づくように、溶存酸素濃度変更ユニット67にエッチング液の実際の溶存酸素濃度を変更させる溶存酸素濃度変更部94と、雰囲気中の実際の酸素濃度が設定雰囲気酸素濃度決定部93によって決定された設定雰囲気酸素濃度に一致するまたは近づくように、雰囲気酸素濃度変更ユニット97に雰囲気中の実際の酸素濃度を変更させる雰囲気酸素濃度変更部95とを含む。雰囲気酸素濃度変更ユニット97は、下ガスバルブ21、下ガス流量調整バルブ22、上ガスバルブ57、および上ガス流量調整バルブ58(
図2および3参照)を含む。
【0121】
溶存酸素濃度変更部94は、レシピで規定されているエッチング液の溶存酸素濃度を変更してもよいし、レシピを実行する前に溶存酸素濃度変更ユニット67にエッチング液の実際の溶存酸素濃度を変更させてもよい。同様に、雰囲気酸素濃度変更部95は、レシピで規定されている雰囲気中の酸素濃度を変更してもよいし、レシピを実行する前に雰囲気酸素濃度変更ユニット97に雰囲気中の実際の酸素濃度を変更させてもよい。レシピを変更する場合、レシピが実行されると、実際の溶存酸素濃度または実際の雰囲気酸素濃度が変更される。
【0122】
設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度は、1枚の基板Wごとに変更されてもよいし、複数枚の基板Wごとに変更されてもよいし、一定時間ごとに変更されてもよい。つまり、同じ設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度が複数枚の基板Wに適用されてもよい。この場合、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度は、基板Wのロットごとに変更されてもよいし、基板処理装置1以外の装置で行われる基板Wの処理条件が変わるたびに変更されてもよい。
【0123】
制御装置3は、基板処理装置1を制御することによりレシピにしたがって基板処理装置1に基板Wを処理させる処理実行部96を含む。設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の変更が完了すると、溶存酸素濃度変更部94および雰囲気酸素濃度変更部95が変更の完了を処理実行部96に通知する。その後、処理実行部96は、
図6に示す処理の一例を処理ユニット2等に実行させる。これにより、エッチング液の実際の溶存酸素濃度が決定された設定溶存酸素濃度に概ね一致しており、雰囲気中の実際の酸素濃度が決定された設定雰囲気酸素濃度に概ね一致した状態で、エッチング液が基板Wの上面に供給される。
【0124】
以上のように第1実施形態では、雰囲気中の酸素濃度を低下させた状態で、TMAHなどの溶存酸素濃度が低いエッチング液を基板Wの上面に供給する。これにより、基板Wに保持されているエッチング液に溶け込む酸素の量をコントロールしながら、基板Wの上面全域にエッチング液を供給できる。基板Wの上面に供給されたエッチング液の実際の溶存酸素濃度は、設定溶存酸素濃度に一致しているもしくは近づけられている。同様に、基板Wの上面に保持されているエッチング液に接する雰囲気中の実際の酸素濃度は、設定雰囲気酸素濃度に一致しているもしくは近づけられている。
【0125】
設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度は、要求エッチング量に基づいてそれぞれ独自に設定されるのではなく、互いに関連付けられる。具体的には、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方は、要求エッチング量に基づいて決定される。そして、決定された値(設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の一方)と要求エッチング量に基づいて、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の他方が決定される。言い換えると、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度だけでなく、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の差もコントロールされる。
【0126】
このように、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度の差をコントロールしながら、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度を低下させるので、基板Wの上面に対するエッチング液の着液位置を移動させることなく、基板Wの上面にわたるエッチング量の分布を変化させることができる。例えば、基板Wの上面全域を一定のエッチング量で均一にエッチングしたり、基板Wの上面にわたるエッチング量の分布が円錐状または倒立円錐状となるように基板Wの上面をエッチングしたりすることができる。したがって、エッチング量の分布をコントロールしながら基板Wの上面をエッチングできる。
【0127】
第1実施形態では、設定溶存酸素濃度または設定雰囲気酸素濃度として設定可能な数値範囲の最小値よりも大きい値が、設定溶存酸素濃度または設定雰囲気酸素濃度として設定される。言い換えると、従来のように、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度を可能な限り低下させるのではなく、両者の差もコントロールする。これにより、エッチング量の分布をコントロールしながら基板Wの上面をエッチングできる。
【0128】
第1実施形態では、エッチング液の着液位置を吐出開始から吐出停止まで基板Wの上面中央部に位置させる。このような場合でも、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃の差をコントロールすることにより、エッチング量の分布をコントロールすることができる。したがって、エッチング量の分布をコントロールするために、基板Wの上面に対するエッチング液の着液位置を移動させたり、基板Wの上面に向けてエッチング液を吐出する複数の液吐出口を設けたりしなくてもよい。
【0129】
第1実施形態では、基板Wの上面にわたるエッチング量の分布が円錐状または倒立円錐状となるように、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度が設定される。エッチング前の基板Wの上面が円錐状であれば、基板Wの上面にわたるエッチング量の分布が円錐状になるように基板Wの上面をエッチングすれば、エッチング後の基板Wの上面の平坦度を高めることができる。同様に、エッチング前の基板Wの上面が倒立円錐状であれば、基板Wの上面にわたるエッチング量の分布が倒立円錐状になるように基板Wの上面をエッチングすれば、エッチング後の基板Wの上面の平坦度を高めることができる。
【0130】
第1実施形態では、設定溶存酸素濃度を決めてから、設定雰囲気酸素濃度を決める。着液位置でのエッチングレートは、エッチング液の溶存酸素濃度に依存する。言い換えると、設定雰囲気酸素濃度は、着液位置でのエッチングレートに大きく影響しない。その代わりに、エッチングレートの傾き、つまり、着液位置でのエッチングレートと基板Wの上面内の任意の位置でのエッチングレートとを結ぶ直線の傾きは、エッチング液の溶存酸素濃度と雰囲気中の酸素濃度とに依存する。したがって、設定溶存酸素濃度を先に決めれば、着液位置でのエッチングレートとエッチングレートの傾きとを比較的に容易に設定できる。
【0131】
これに対して、設定雰囲気酸素濃度が先に決まっている場合は、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度以外の条件も変更する必要が生じうる。例えば、設定雰囲気酸素濃度が先に決まっている場合、意図するエッチングレートの傾きを得るために、設定溶存酸素濃度が大幅に制限される。決定された設定溶存酸素濃度では意図するエッチングレートが得られない場合は、エッチング液の供給時間や濃度などの別の条件も変更する必要が生じうる。したがって、設定溶存酸素濃度を先に決めることにより、着液位置でのエッチングレートとエッチングレートの傾きとを比較的に容易に設定できる。
【0132】
第1実施形態では、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する低酸素ガスの一例である窒素ガスが、対向部材の一例である遮断部材33の下面36Lに設けられた上中央開口38から流れ出て、基板Wの上面と遮断部材33の下面36Lとの間の空間に流入する。これにより、基板Wと遮断部材33との間の空間が窒素ガスで満たされ、雰囲気中の酸素濃度が低下する。したがって、チャンバー4の内部空間の全体で酸素濃度を低下させる場合に比べて、窒素ガスの使用量を減らすことができ、短時間で酸素濃度を変化させることができる。
【0133】
第1実施形態では、雰囲気中の酸素濃度を低下させた状態で、ポリシリコン膜が露出した基板Wの上面に溶存酸素濃度が低いエッチング液を供給する。これにより、基板Wに保持されているエッチング液に溶け込む酸素の量をコントロールしながら、基板Wの上面に形成されたポリシリコン膜をエッチングできる。ポリシリコン膜は、エッチング液の溶存酸素濃度の影響を受ける薄膜の一例である。したがって、設定溶存酸素濃度および設定雰囲気酸素濃度だけでなく、両者の差もコントロールすることにより、エッチング量の分布をコントロールしながらポリシリコン膜をエッチングできる。
【0134】
第2実施形態
第2実施形態が第1実施形態に対して主として異なる点は、遮断部材33の構造が異なることと、ガスを吐出する複数の外側開口101が遮断部材33の下面36Lに設けられていることである。
図9は、本発明の第2実施形態に係る遮断部材33の鉛直断面を示す模式図である。
図10は、本発明の第2実施形態に係る遮断部材33の底面を示す模式図である。
図9~
図10において、前述の
図1~
図8に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0135】
図9に示すように、遮断部材33は、スピンチャック10の上方に配置されている。遮断部材33は、基板Wの直径よりも大きい外径を有する円板部36である。つまり、第1実施形態に係る筒状部37は、第2実施形態に係る遮断部材33に設けられていない。遮断部材33は、水平な姿勢で保持されている。遮断部材33の中心線は、回転軸線A1上に配置されている。遮断部材33の下面36Lの外径は、基板Wの外径よりも大きい。遮断部材33の下面36Lは、基板Wの上面と平行であり、基板Wの上面に対向する。
【0136】
図10に示すように、遮断部材33の下面36Lは、回転軸線A1を取り囲む円環状である。遮断部材33の下面36Lの内周縁は、遮断部材33の下面36Lの中央部で開口する上中央開口38を形成している。遮断部材33の内周面は、上中央開口38から上方に延びる貫通穴を形成している。中心ノズル45は、遮断部材33の貫通穴に挿入されている。遮断部材33を下から見ると、中心ノズル45は、遮断部材33の上中央開口38内に配置されている。
【0137】
図9に示すように、遮断部材昇降ユニット31は、遮断部材33から上方に延びる支軸100を介して遮断部材33に連結されている。中心ノズル45は、遮断部材昇降ユニット31に連結されている。遮断部材昇降ユニット31は、上位置(
図9において実線で示す遮断部材33の位置)と下位置(
図9において二点鎖線で示す遮断部材33の位置)との間で遮断部材33を鉛直に昇降させる。中心ノズル45は、遮断部材33とともに上位置と下位置との間を鉛直に移動する。
【0138】
遮断部材33の上位置は、スキャンノズル(
図11の第1薬液ノズル106および第2薬液ノズル107参照)が基板Wの上面と遮断部材33の下面36Lとの間に進入できるように遮断部材33の下面36Lが基板Wの上面から上方に離れた退避位置である。遮断部材33の下位置は、スキャンノズルが基板Wの上面と遮断部材33の下面36Lとの間に進入できないように遮断部材33の下面36Lが基板Wの上面に近接した近接位置である。遮断部材昇降ユニット31は、下位置から上位置までの任意の位置に遮断部材33を位置させる。
【0139】
第1薬液配管50、第2薬液配管52、および上リンス液配管54は、中心ノズル45に接続されている。上ガス配管56は、中心ノズル45ではなく、遮断部材33の内周面と中心ノズル45の外周面との間に形成された上筒状通路39に接続されている。上ガス配管56から上筒状通路39に供給された窒素ガスは、上筒状通路39内を周方向に流れながら、上筒状通路39内を下方に流れる。そして、遮断部材33の下面36Lの中央部で開口する上中央開口38から下方に流れ出る。遮断部材33が下位置に配置されているとき、上中央開口38から流れ出た窒素ガスが、基板Wの上面と遮断部材33の下面36Lとの間の空間を外方に流れる。これにより、基板Wと遮断部材33との間の空間が窒素ガスで満たされる。
【0140】
遮断部材33は、遮断部材33の下面36Lで開口する複数の外側開口101と、複数の外側開口101にガスを案内する内部通路102とを含む。内部通路102は、遮断部材33の内部に設けられている。各外側開口101は、内部通路102から下方に延びている。外側開口101は、基板Wの上面外周部に対向している。外側開口101は、内部通路102から下方向に鉛直に延びていてもよいし、内部通路102から斜め下に延びていてもよい。
図9は、外側開口101が基板Wの周囲に向かって斜め下に延びている例を示している。
【0141】
図10に示すように、複数の外側開口101は、回転軸線A1上に配置された中心を有する円上に配置されている。内部通路102は、回転軸線A1を取り囲んでいる。遮断部材33を下から見ると、内部通路102は、複数の外側開口101に重なっている。内部通路102は、遮断部材33の上中央開口38を取り囲んでいる。同様に、複数の外側開口101は、遮断部材33の上中央開口38を取り囲んでいる。
【0142】
図9に示すように、基板処理装置1は、内部通路102を介して複数の外側開口101にガスを案内する上ガス配管103と、上ガス配管103に介装された上ガスバルブ104と、上ガス配管103から中心ノズル45に供給されるガスの流量を変更する上ガス流量調整バルブ105とを備えている。上ガス配管103は、遮断部材33の内部通路102に接続されている。
【0143】
上ガスバルブ104が開かれると、不活性ガスの一例である窒素ガスが、上ガス流量調整バルブ105の開度に対応する流量で上ガス配管103から内部通路102に供給され、内部通路102内を周方向に流れる。内部通路102内の窒素ガスは、各外側開口101に供給され、各外側開口101から下方に吐出される。これにより、基板Wと遮断部材33との間の空間に窒素ガスが供給される。上ガスバルブ104および上ガス流量調整バルブ105は、雰囲気酸素濃度変更ユニット97(
図8参照)に含まれる。
【0144】
第2実施形態では、第1実施形態に係る作用効果に加えて、次の作用効果を奏することができる。具体的には、第2実施形態では、上中央開口38と外側開口101とが、遮断部材33の下面36Lに設けられている。上中央開口38は、基板Wの上面中央部に対向している。外側開口101は、上中央開口38の外側に配置されている。上中央開口38から流れ出た窒素ガスは、基板Wと遮断部材33との間の空間を外方に流れる。同様に、外側開口101から流れ出た窒素ガスは、基板Wと遮断部材33との間の空間を外方に流れる。したがって、外側開口101が設けられていない場合に比べて、別のガスが基板Wと遮断部材33との間に流入し難い。これにより、基板Wと遮断部材33との間の空間における酸素濃度をより精密にコントロールできる。
【0145】
第3実施形態
第3実施形態が第1実施形態に対して主として異なる点は、遮断部材33が省略されていることと、不活性ガスがFFU5によってチャンバー4の内部に供給されることである。
図11は、本発明の第3実施形態に係る処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。
図12は、本発明の第3実施形態に係る処理ユニット2の内部を上から見た模式図である。
図11~
図12において、前述の
図1~
図10に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0146】
図11に示すように、処理ユニット2は、基板Wの上面に向けて第1薬液を下方に吐出する第1薬液ノズル106と、基板Wの上面に向けて第2薬液を下方に吐出する第2薬液ノズル107と、基板Wの上面に向けてリンス液を下方に吐出するリンス液ノズル108とを含む。第1薬液配管50、第2薬液配管52、および上リンス液配管54は、それぞれ、第1薬液ノズル106、第2薬液ノズル107、およびリンス液ノズル108に接続されている。
【0147】
リンス液ノズル108は、チャンバー4の隔壁6に対して固定されている。リンス液ノズル108のリンス液吐出口108pから吐出されたリンス液は、基板Wの上面中央部に着液する。リンス液ノズル108は、基板Wに上面に対する液体の着液位置を移動させるスキャンノズルであってもよい。つまり、リンス液ノズル108を水平に移動させるノズル移動ユニットが処理ユニット2に設けられていてもよい。
【0148】
第1薬液ノズル106および第2薬液ノズル107は、スキャンノズルである。
図12に示すように、処理ユニット2は、第1薬液ノズル106の第1薬液吐出口106pから吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と第1薬液ノズル106が平面視で基板Wのまわりに配置される退避位置との間で第1薬液ノズル106を水平に移動させる第1ノズル移動ユニット109を含む。処理ユニット2は、第2薬液ノズル107の第2薬液吐出口107pから吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と第2薬液ノズル107が平面視で基板Wのまわりに配置される退避位置との間で第2薬液ノズル107を水平に移動させる第2ノズル移動ユニット110を含む。
【0149】
第1ノズル移動ユニット109は、平面視で基板Wの中央部を通る円弧状の経路に沿って第1薬液ノズル106を水平に移動させる旋回ユニットであってもよいし、平面視で基板Wの中央部を通る直線状の経路に沿って第1薬液ノズル106を水平に移動させるスライドユニットであってもよい。同様に、第2ノズル移動ユニット110は、旋回ユニットであってもよいし、スライドユニットであってもよい。
図12は、第1ノズル移動ユニット109および第2ノズル移動ユニット110が旋回ユニットである例を示している。
【0150】
不活性ガスの一例である窒素ガスを案内する上ガス配管56は、FFU5に接続されている。上ガスバルブ57が開かれると、窒素ガスが、上ガス流量調整バルブ58の開度に対応する流量で上ガス配管56からFFU5に供給され、FFU5によってチャンバー4内の上空間Suに送られる。上空間Suに供給された窒素ガスは、整流板8に当たって上空間Suを拡散し、整流板8の全域に設けられた複数の貫通孔から下方に流れる。
【0151】
基板Wの上面が整流板8の下面に直接対向しているので、整流板8から下方に流れる窒素ガスは、遮断部材33(
図2参照)に遮られることなく基板Wの上面に向かう。その後、窒素ガスは、処理カップ23内に吸い込まれ、排気ダクト9(
図2参照)を介してチャンバー4から排出される。このようにして、チャンバー4の内部が窒素ガスで満たされ、チャンバー4内の酸素濃度が低下する。チャンバー4内の酸素濃度は、上ガスバルブ57および上ガス流量調整バルブ58の開度に応じて変更される。
【0152】
第1薬液供給工程(
図6のステップS3)を行うときは、第1ノズル移動ユニット109が第1薬液ノズル106を待機位置から処理位置に移動させる。その後、第1薬液バルブ51を開いて、第1薬液ノズル106に第1薬液の吐出を開始させる。第1薬液ノズル106が第1薬液を吐出しているとき、第1ノズル移動ユニット109は、第1薬液の着液位置が基板Wの上面中央部を通る経路に沿って基板Wの上面内で移動するように第1薬液ノズル106を移動させてもよいし、第1薬液の着液位置が基板Wの上面中央部に位置するように第1薬液ノズル106を静止させてもよい。
【0153】
第2薬液供給工程(
図6のステップS5)では、第1薬液ノズル106、第1薬液バルブ51、および第1ノズル移動ユニット109の代わりに、第2薬液ノズル107、第2薬液バルブ53、および第2ノズル移動ユニット110が用いられる。第1リンス液供給工程(
図6のステップS4)および第2リンス液供給工程(
図6のステップS6)では、上リンス液バルブ55が開閉され、リンス液が基板Wの上面中央部に向けてリンス液ノズル108から吐出される。
【0154】
第3実施形態では、第1実施形態に係る作用効果に加えて、次の作用効果を奏することができる。具体的には、第3実施形態では、低酸素ガスの一例である窒素ガスが、チャンバー4の上端部からチャンバー4の内部に流入する。チャンバー4内に流入した窒素ガスは、チャンバー4の下端部に向かって流れ、チャンバー4の下端部からチャンバー4の外に排出される。これにより、チャンバー4の内部が窒素ガスで満たされ、雰囲気中の酸素濃度が低下する。したがって、遮断部材33などの基板Wの上方に配置される部材を設けることなく、雰囲気中の酸素濃度を低下させることができる。これにより、チャンバー4を小型化できる。
【0155】
第4実施形態
第4実施形態が第1実施形態に対して主として異なる点は、同じ処理ユニット2に対応する複数組の薬液生成ユニット61および溶存酸素濃度変更ユニット67が設けられていることである。
図13は、2組の薬液生成ユニット61および溶存酸素濃度変更ユニット67が設けられている例を示している。
【0156】
図13は、第4実施形態に係る薬液生成ユニット61および溶存酸素濃度変更ユニット67を示す模式図である。
図13において、前述の
図1~
図12に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
以下の説明では、
図13中の左側に配置された構成の先頭に「第1」を付け、
図13中の右側に配置された構成の先頭に「第2」を付ける場合がある。例えば、
図13中の左側のタンク62を「第1タンク62」といい、
図13中の右側のタンク62を「第2タンク62」という場合がある。
【0157】
薬液生成ユニット61は、循環配管63内の薬液を第2薬液配管52に案内する中継配管111と、中継配管111に介装された中継バルブ112とを含む。
図13に示す例の場合、2つの中継バルブ112に代えて、三方弁を用いてもよい。第1中継バルブ112(左側の中継バルブ112)が開かれると、第1タンク62(左側のタンク62)内の薬液が、第2薬液配管52を介して中心ノズル45に供給される。第2中継バルブ112(右側の中継バルブ112)が開かれると、第2タンク62(右側のタンク62)内の薬液が、第2薬液配管52を介して中心ノズル45に供給される。
【0158】
第1タンク62内の薬液と第2タンク62内の薬液は、互いに異なる溶存酸素濃度を有している。つまり、このように薬液の溶存酸素濃度が調節されている。基板Wの上面に供給される薬液の溶存酸素濃度の設定値、つまり、設定溶存酸素濃度が決定されると、制御装置3は、決定された設定溶存酸素濃度に近い方の溶存酸素濃度を有する薬液を貯留しているタンクを、第1タンク62および第2タンク62のうちから選択する。そして、制御装置3は、第2薬液供給工程(
図6のステップS)において、選択されたタンク内の薬液を中心ノズル45に吐出させる。例えば第1タンク62が選択された場合は、第1中継バルブ112と第2薬液バルブ53とが開かれ、第1タンク62内の薬液が中心ノズル45から基板Wの上面に向けて吐出される。
【0159】
第4実施形態では、第1実施形態に係る作用効果に加えて、次の作用効果を奏することができる。具体的には、溶存酸素濃度が互いに異なるエッチング液が、第1タンク62および第2タンク62に貯留されている。決定された設定溶存酸素濃度は、第1タンク62内のエッチング液の溶存酸素濃度を表す第1溶存酸素濃度および第2タンク62内のエッチング液の溶存酸素濃度を表す第2溶存酸素濃度と比較される。第1タンク62内のエッチング液の溶存酸素濃度が、決定された設定溶存酸素濃度に一致しているまたは近い場合は、第1タンク62内のエッチング液が基板Wの上面に供給される。その一方で、第2タンク62内のエッチング液の溶存酸素濃度が、決定された設定溶存酸素濃度に一致しているまたは近い場合は、第2タンク62内のエッチング液が基板Wの上面に供給される。
【0160】
エッチング液の溶存酸素濃度は直ぐには変わり難い。したがって、同じタンク62内のエッチング液の溶存酸素濃度を変える場合は、ある程度の時間がかかる。これに対して、溶存酸素濃度が互いに異なるエッチング液を第1タンク62および第2タンク62に貯留しておけば、基板Wの上面に供給されるエッチング液の溶存酸素濃度を即座に変えることができる。これにより、基板処理装置1のダウンタイム(基板Wの処理を実行できない時間)を短縮でき、基板処理装置1のスループット(単位時間あたりの基板Wの処理枚数)の減少量を減らすことができる。
【0161】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、TMAHなどのエッチング液を、基板Wの上面ではなく、基板Wの下面に供給してもよい。もしくは、基板Wの上面および下面の両方にエッチング液を供給してもよい。これらの場合、下面ノズル15にエッチング液を吐出させればよい。
【0162】
制御装置3は、複数の液吐出口に基板Wの径方向に離れた複数の位置に向けて同時に処理液を吐出させることにより基板Wの上面または下面に処理液を供給してもよい。この場合、吐出される薬液の流量、温度、および濃度の少なくとも一つを、液吐出口ごとに変化させてもよい。
同様に、制御装置3は、複数のガス吐出口に基板Wの径方向に離れた複数の位置に向けて同時にガスを吐出させることにより基板Wの上面または下面にガスを供給してもよい。例えば、下中央開口18を含む複数のガス吐出口がスピンベース12の上面12uに設けられていてもよい。
【0163】
制御装置3は、設定溶存酸素濃度を先に決定するのではなく、設定雰囲気酸素濃度を先に決定してもよい。
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
前述の全ての構成の2つ以上が組み合わされてもよい。前述の全ての工程の2つ以上が組み合わされてもよい。
【0164】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0165】
1 :基板処理装置
3 :制御装置
4 :チャンバー
5 :FFU(ファンユニット)
9 :排気ダクト
10 :スピンチャック(基板保持手段)
12 :スピンベース(対向部材)
12u :スピンベースの上面(対向面)
15 :下面ノズル(エッチング液供給手段)
15p :液吐出口
18 :下中央開口
19 :下筒状通路(低酸素ガス供給手段)
20 :下ガス配管(低酸素ガス供給手段)
21 :下ガスバルブ(雰囲気酸素濃度変更手段)
22 :下ガス流量調整バルブ(雰囲気酸素濃度変更手段)
33 :遮断部材(対向部材)
36L :遮断部材の円板部の下面(対向面)
38 :上中央開口
39 :上筒状通路(低酸素ガス供給手段)
45 :中心ノズル(エッチング液供給手段)
46 :第1薬液吐出口
47 :第2薬液吐出口
48 :上リンス液吐出口
49 :上ガス吐出口
56 :上ガス配管(低酸素ガス供給手段)
57 :上ガスバルブ(雰囲気酸素濃度変更手段)
58 :上ガス流量調整バルブ(雰囲気酸素濃度変更手段)
61 :薬液生成ユニット
62 :タンク(第1タンク、第2タンク)
67 :溶存酸素濃度変更ユニット(溶存酸素濃度変更手段)
75 :酸素濃度計
97 :雰囲気酸素濃度変更ユニット(雰囲気酸素濃度変更手段)
101 :外側開口
103 :上ガス配管(低酸素ガス供給手段)
104 :上ガスバルブ(雰囲気酸素濃度変更手段)
105 :上ガス流量調整バルブ(雰囲気酸素濃度変更手段)
107 :第2薬液ノズル(エッチング液供給手段)
107p :第2薬液吐出口
W :基板