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  • 特許-スープ漉し機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】スープ漉し機
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20220106BHJP
   A47J 19/00 20060101ALI20220106BHJP
   B04B 3/00 20060101ALI20220106BHJP
   B01D 33/06 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A23L23/00
A47J19/00 Z
B04B3/00 E
B01D33/06 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018041621
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019154248
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】518080189
【氏名又は名称】株式会社食の道場
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】秋本 茂克
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-143375(JP,A)
【文献】特開2009-136199(JP,A)
【文献】特開2011-251273(JP,A)
【文献】高濃度豚骨スープ60Lを約5分で濾せる小型スープ濾し機が登場 ベテランも敬遠するスープ濾し負担軽減で人手不足も解消,株式会社大和製作所 プレスリリース,2017年,pp.1-4,retrieved on 2021.11.26, retrieved from the internet,https://www.atpress.ne.jp/news/120624
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 23/00
A47J 19/00
B04B 3/00
B01D 33/06
日経テレコン
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分を含む煮込み液からスープ液を漉し取るスープ漉し機であって、
上方が開口すると共にその周囲に多数の穴が開口された有底円筒状の回転ドラムと、前記回転ドラムをその軸心を回転軸として回転駆動するモーターと、前記回転ドラムの周囲及び底部を覆う容器と、前記煮込み液を収容すべく前記回転ドラム内に収容される漉し袋とを備え、前記容器の底部にスープ液を取り出す取出口を設けたことを特徴とするスープ漉し機。
【請求項2】
請求項1に記載のスープ漉し機において、
前記回転ドラムの開口縁に、前記漉し袋の開口縁を仮止めする係止部を備えたことを特徴とするスープ漉し機。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスープ漉し機において、
前記漉し袋は、巾着状となっていることを特徴とするスープ漉し機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にラーメン店やレストラン等の飲食店において豚骨や鶏ガラなどの動物系材料からラーメン用のスープを作る際に用いられるスープ漉し機に関する。
【背景技術】
【0002】
ラーメン店やレストラン等の飲食店で提供される業務用のラーメンスープの作り方としては、まず下処理をした豚骨や鶏ガラなどの動物系材料を水と共に大きめな寸胴(鍋)に入れ、火力を調節しながら加熱し、さらに玉葱や人参などの香味野菜を加え、アクを取りながら数時間じっくりと煮込む。すると、動物系材料や香味野菜が形崩れしてうま味成分(煮出し汁)が溶け出してくると共に、骨片や髄液片などがばらけて混濁状態になるため、その後、それらの煮込み液を柄杓で金網上に掬い、固形物を分離してスープ液を漉し取ることで得られる。
【0003】
このように業務用のラーメンスープを作るには多くの手間がかかるが、特にこれら一連の作業のなかでも最後のスープを漉し取る作業は、金網の目詰まりを起こさないようにばらけた骨片や髄液片や半固形物などを金網に強く押し付けるように力を入れる作業となることから多くの時間と労力がかかっている。そのため、この最後のスープ漉し作業を機械化することで労力の低減を図ることが検討されている。例えば、以下の特許文献1には、柄杓で掬いとった煮込み液を入れる漉し網を回転駆動モーターで往復円運動させて振動を繰り返し与えることによって目詰まりを回避しながらスープを漉し取るようにした装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-251273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に示す装置は、スープ漉し作業が終了する毎にその漉し網に残った不要な動物系スープ材料やその他の大きな固形物、粘結した塊状の半固形物などを柄杓によって漉し網から掬い出して別の廃棄容器に移し入れた後に、その漉し網の目詰まりをとるための清掃作業が必要があり、その間はスープ漉し作業ができない。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、スープ漉し作業を効率的に行うことができる新規なスープ漉し機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために第1の発明は、固形分を含む煮込み液からスープ液を漉し取るスープ漉し機であって、上方が開口すると共にその周囲に多数の穴が開口された有底円筒状の回転ドラムと、前記回転ドラムをその軸心を回転軸として回転駆動するモーターと、前記回転ドラムの周囲及び底部を覆う容器と、前記煮込み液を収容すべく前記回転ドラム内に収容される漉し袋とを備え、前記容器の底部にスープ液を取り出す取出口を設けたことを特徴とするスープ漉し機である。
【0008】
このような構成によれば、回転ドラム内の漉し袋に固形分を含む煮込み液を入れた後、その回転ドラムをモーターで回転駆動すると、遠心力によって固形分を含む煮込み液から固形分を除くスープ液がその漉し袋から濾過分離され、これが回転ドラムを通過してその外側の容器に溜まってその底部の取出口から取り出されることになる。これによって素早く短時間でスープ液を漉し取ることができると共に、分離した固形分は漉し袋内に残ってその漉し袋だけを取り換えるだけでよいため、スープ漉し作業を効率的に行うことができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記回転ドラムの開口縁に、前記漉し袋の開口縁を仮止めする係止部を備えたことを特徴とするスープ漉し機である。このような構成によれば、回転ドラムに漉し袋を簡単に取り付けることができるため、その漉し袋内への煮込み液の投入作業が容易になる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記漉し袋は、巾着状となっていることを特徴とするスープ漉し機である。このような構成によれば、遠心分離によるスープ漉し作業を終えた後に、その漉し袋の開口部の紐を引っ張ることで簡単にその開口部を閉じることができるため、分離作業中や作業後にその漉し袋内に残った固形分が交換作業時に回転ドラム内やその周囲にこぼれ落ちたりすることなく、確実に交換作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転ドラム内に取り付けた漉し袋内に煮込み液を入れてその回転ドラムを回転させてスープ液を遠心分離するようにしたことから、素早く短時間でスープ液を漉し取ることができる。また、分離した固形分は漉し袋内に残ってその漉し袋だけを取り換えるだけでよいため、スープ漉し作業を効率的に行うことができるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るスープ漉し機100の実施の一形態を示す斜視図である。
図2】本発明に係るスープ漉し機100の実施の一形態を示す縦断面図である。
図3】本発明に係るスープ漉し機100によるスープ漉し作業の流れを示す工程図である。
図4】(A)は回転ドラム10に漉し袋40を取り付ける状態を示す説明図、(B)は回転ドラム10に取り付けた漉し袋40内に煮込み液を投入した状態を示す説明図である。
図5】(A)は回転ドラム10を回転駆動してスープ液を遠心分離している状態を示す説明図、(B)は遠心分離後に回転ドラム10から漉し袋40を取り出した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本発明に係るスープ漉し機100の実施の一形態を示したものである。図示するようにこのスープ漉し機100は、円筒状の回転ドラム10と、この回転ドラム10を覆う円筒状容器20と、回転ドラム10を回転駆動するモーター30と、回転ドラム10内に収容される漉し袋40(図2)とから主に構成されている。
【0014】
回転ドラム10は、上方が開口した有底円筒状となっており、ステンレススチールなどのような金属板から構成されている。そして、その周壁を構成する側板10aには、図1に示すように例えば大きさが約1~3mm程度の穴11が多数穿孔されて網状またはパンチングメタル状になっていると共に、その底板10bの中心にはモーター30の回転軸31が連結されている。なお、この回転ドラム10の大きさとしては特に限定するものではないが、例えば直径約500mm×高さ約500mm程度の大きさとなっている。
【0015】
また、この回転ドラム10の上部開口部には、漉し袋40の開口縁を仮止めする係止部12が設けられている。この係止部12は、具体的には回転ドラム10の側板10aの上端から径方向外方に延びるピン12aから構成されており、本実施の形態では、このピン12aが回転ドラム10の軸を中心として放射状に6本等間隔に配置されている。
【0016】
円筒状容器20は、この回転ドラム10とほぼ同軸上にこれを囲繞してその周囲を覆うように設けられており、本発明に係るスープ漉し機100のケーシングの一部として上外板を兼用している。この円筒状容器20もステンレススチールなどのような金属板から構成されており、その大きさとしては特に限定するものではないが、例えば直径約600mm×高さ約600mm程度の大きさとなっている。また、この円筒状容器20の底板20aには、スープ液を取り出すための取出口21が開口されていると共に、その取出口21には外部へ延びる取出管22が接続されている。
【0017】
また、この円筒状容器20の上部開口部には、これを開閉する蓋部23が設けられており、ヒンジ24によって円筒状容器20に一体的に取り付けられると共に、このヒンジ24を軸として上下に開閉動作するようになっている。また、この蓋部23にはこれを手で持つための握り玉25が設けられている。
【0018】
モーター30は、この円筒状容器20の下方に連続的に位置する円筒状の下外板32内に収容されており、上記のようにその回転軸31が回転ドラム10の底板10bの中心に連結されている。また、このモーター30の回転軸31には、ブレーキドラム33が設けられており、ハンドブレーキ34の操作によって回転軸31を制動できるようになっている。下外板32の底部には、円形のベース板36が付設されており、円筒状容器20などを安定的に支持するようになっている。
【0019】
また、このモーター30にはスイッチおよび電源部を兼用するインバーター35が設けられており、このインバーター35によってロータの回転位置に合わせて駆動電流の位相と周波数を変化させることで高い駆動効率と振動が少ない滑らかな回転を低速から高速まで任意に制御できるようになっている。
【0020】
漉し袋40は、図4(A)に示すように布製の袋体40aからなっていると共に、その開口部にはこれに沿って紐体40bが張り巡らされて巾着状となっている。この袋体40aを構成する布の材質としては、スープ液の成分などに悪影響を与えずかつスープ液のみを通過(濾過)できるものであれば特に限定されるものでなく、例えば綿や麻などの天然繊維の他にナイロンやポリウレタン、ポリエステルなどの合成繊維からなるものを用いることができる。また、その大きさとしては、高さが回転ドラム10の高さよりも約10cm程度高く、かつその円周方向の長さが回転ドラム10の内周よりも大きいものであることが望ましい。
【0021】
次に、このような構成をした本発明に係るスープ漉し機100の作用を説明する。先ず、図3のステップS100および図4(A)に示すように円筒状容器20の蓋部23を開いてその開口部から回転ドラム10内に漉し袋40を入れて、その漉し袋40の開口部を回転ドラム10の縁部に仮止めする。具体的には、図4(b)に示すように漉し袋40の紐体40bがとおっている部分を裏返しにするように回転ドラム10の縁部を覆った後、その紐体40bを軽く引っ張ると、その漉し袋40の開口縁部がピン12aに引っかかるため、手を離しても脱落することなくしっかりと仮止めすることができる。
【0022】
このようにして回転ドラム10に漉し袋40を取り付けたならば、図3のステップS102および図4(B)に示すように柄杓などを使って寸胴(鍋)内の煮込み液をその漉し袋40内に投入する。そして、その投入量が回転ドラム10の高さの半分程度になったなら仮止めしておいた漉し袋40の開口縁部をピン12aから取り外し、その紐体40bを引っ張って漉し袋40の開口縁部を巾着状に縛るようにして閉じた後、蓋部23を閉じてモーター30を駆動する。
【0023】
すると、図5(A)に示すように回転ドラム10がその軸心部を軸として高速回転することに伴って漉し袋40内の煮込み液に遠心力が加わってその煮込み液中から固形分を除くスープ液が漉し袋40および回転ドラム10の穴11を通過して遠心分離されることになる(ステップS104)。なお、ここでこの回転ドラム10の回転数としては特に限定するものではないが、1分当たり約700~720回転程度が望ましい。700回転以下では、遠心分離に時間を要し、反対に720回転を超えると、スープ液としては適さない半固形分が強制的に分離されてスープ液中に混入してしまうからである。
【0024】
遠心分離されたスープ液は、円筒状容器20の壁面を伝ってその底板20aに流れ、取出口21から取出管22を通過して取り出されることになる。ここで、スープ液の分離時間としては、例えば30Lの煮出し液の場合、従来の手作業では1~2時間程度かかっていたものが、本発明のスープ漉し機100を用いれば約5~15分程度で完了するため、大幅に時間を短縮することができる。しかも、実作業は寸胴内の煮込み液を回転ドラム10内に移し替えるだけであるため、その肉体的労力も大幅に削減することができる。また、この遠心分離中は、漉し袋40の開口部が紐体40bによってしっかりと閉じられているため、その遠心力によって勝手に開いて中身が飛び出すようなこともない。
【0025】
そして、このようにしてスープ液を遠心分離した後は、図3のステップS106および図5(B)に示すように、モーター30のスイッチを切って回転ドラム10が完全に停止した後、蓋部23を開いてその漉し袋40を取り出す。この回転ドラム10内には、スー液が分離された豚骨や鶏ガラなどの固形物が残っているが、この漉し袋40を回転ドラム10から取り出すだけで、そのすべてをほぼ完全に取り出すことができる。このため、回転ドラム10内は殆ど汚れが残らないきれいな状態となるため、その後の清掃も極めて簡単になる。
【0026】
また、引き続き同種のスープ漉しを行う場合は、清掃作業を省略して図3のステップS100に示すようにそのまますぐに新しい漉し袋40を回転ドラム10に取り付けて同様な作業を繰り返すことにより、効率的なスープ漉し作業を行うことができる。なお、急いでいる場合はハンドブレーキ34を作動させれば惰性で回転している回転ドラム10を瞬時に停止することができる。
【0027】
このように本発明のスープ漉し機100は、回転ドラム10内に取り付けた漉し袋40内に煮込み液を入れてその回転ドラム10を回転させてスープ液を遠心分離するようにしたことから、素早く短時間でスープ液を漉し取ることができる。また、分離した固形分は漉し袋40内に残ってその漉し袋だけを取り換えるだけでよいため、スープ漉し作業を極めて効率的に行うことができる。なお、本実施の形態では、回転ドラム10の上部開口部に漉し袋40の開口縁を仮止めするための係止部12を設けたが、漉し袋40の開口部の紐体40bを締めることでも仮止めできるため、この係止部12を省略しても良い。
【符号の説明】
【0028】
100…スープ漉し機
10…回転ドラム
10a…側板
10b…底板
11…穴
12…係止部
12a…ピン
20…円筒状容器
20a…底板
21…取出口
22…取出管
23…蓋部
24…ヒンジ
25…握り玉
30…モーター
31…回転軸
32…下外板
33…ブレーキドラム
34…ハンドブレーキ
35…インバーター
36…ベース板
40…漉し袋
40a…袋体
40b…紐体
図1
図2
図3
図4
図5