(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】超音波撮像装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2018043272
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2020-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広島 美咲
(72)【発明者】
【氏名】池田 貞一郎
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
(72)【発明者】
【氏名】塩川 淳一
【審査官】宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-132390(JP,A)
【文献】特開2015-061592(JP,A)
【文献】特開2011-143141(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194161(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0185895(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 ー 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体からの超音波を受信した超音波探触子が出力する受信信号を受け取って、前記被検体の断面の画像を時系列に生成する第1処理部と、
前記第1処理部が生成した前記画像が、前記被検体の予め定められた目的断面の画像かどうかを判定するフレーム判定部と、
前記フレーム判定部が、前記第1処理部の生成した画像が前記目的断面の画像であると判定した場合、その画像およびその画像が生成された元の前記受信信号の少なくとも一方に対して、所定の処理を行う第2処理部とを有し、
前記第2処理部は、前記目的断面の画像を処理して、前記目的断面の画像の画質を向上させる撮像条件を求めることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項2】
被検体からの超音波を受信した超音波探触子が出力する受信信号を受け取って、前記被検体の断面の画像を時系列に生成する第1処理部と、
前記第1処理部が生成した前記画像が、前記被検体の予め定められた目的断面の画像かどうかを判定するフレーム判定部と、
前記フレーム判定部が、前記第1処理部の生成した画像が前記目的断面の画像であると判定した場合、その画像およびその画像が生成された元の前記受信信号の少なくとも一方に対して、所定の処理を行う第2処理部とを有し、
前記第1処理部が時系列に生成した画像を保存するメモリをさらに有し、前記フレーム判定部は、前記第1処理部が生成した画像が前記目的断面の画像ではない場合は、前記画像を前記メモリから消去することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項3】
被検体からの超音波を受信した超音波探触子が出力する受信信号を受け取って、前記被検体の断面の画像を時系列に生成する第1処理部と、
前記第1処理部が生成した前記画像が、前記被検体の予め定められた目的断面の画像かどうかを判定するフレーム判定部と、
前記フレーム判定部が、前記第1処理部の生成した画像が前記目的断面の画像であると判定した場合、その画像およびその画像が生成された元の前記受信信号の少なくとも一方に対して、所定の処理を行う第2処理部とを有し、
前記第1処理部は、ユーザが前記被検体上で移動させている前記超音波探触子の現在の位置の前記被検体の断面の画像を生成し、
前記フレーム判定部には、複数の前記目的断面が予め設定され、
前記第1処理部の生成した画像が前記目的断面のうちの一つの断面の画像であると前記フレーム判定部が判定した場合、前記第2処理部は、他の前記目的断面へ前記超音波探触子を移動させるようにユーザに促す表示または音声の出力を、接続されている表示部または音声出力部に実行させることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項4】
被検体からの超音波を受信した超音波探触子が出力する受信信号を受け取って、前記被検体の断面の画像を時系列に生成する第1処理部と、
前記第1処理部が生成した前記画像が、前記被検体の予め定められた目的断面の画像かどうかを判定するフレーム判定部と、
前記フレーム判定部が、前記第1処理部の生成した画像が前記目的断面の画像であると判定した場合、その画像およびその画像が生成された元の前記受信信号の少なくとも一方に対して、所定の処理を行う第2処理部とを有し、
前記第1処理部は、ユーザが前記被検体上で移動させている前記超音波探触子の現在の位置の前記被検体の断面の画像を生成して接続されている表示部にリアルタイムで表示させ、
前記フレーム判定部には、複数の前記目的断面が予め設定され、
前記第1処理部の生成した画像が前記目的断面のうちの一つの断面の画像であると前記フレーム判定部が判定した場合、前記第2処理部は、判定した目的断面の画像について所定の計測処理を実行し、その間、前記第1処理部は、ユーザが前記被検体上で移動させている前記超音波探触子の現在の位置の前記被検体の断面の画像を生成し、前記表示部にリアルタイムで表示させる動作を継続することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項5】
被検体からの超音波を受信した超音波探触子が出力する受信信号を受け取って、前記被検体の断面の画像を時系列に生成する第1処理部と、
前記第1処理部が生成した前記画像が、前記被検体の予め定められた目的断面の画像かどうかを判定するフレーム判定部と、
前記フレーム判定部が、前記第1処理部の生成した画像が前記目的断面の画像であると判定した場合、その画像およびその画像が生成された元の前記受信信号の少なくとも一方に対して、所定の処理を行う第2処理部とを有し、
前記超音波探触子の種類と、前記被検体における撮像対象の部位を受け付けるユーザーインタフェースと、前記超音波探触子の種類と前記撮像対象の部位の組み合わせごとに、前記目的断面と前記第2処理部の前記所定の処理の内容を示すテーブルを予め記憶したメモリ部と、制御部とをさらに有し、
前記制御部は、前記ユーザーインタフェースが受け付けた前記超音波探触子の種類と、前記被検体における撮像対象の部位に対応する前記目的断面と前記所定の処理の内容を、前記フレーム判定部と前記第2処理部にそれぞれ設定することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項6】
被検体からの超音波を受信した超音波探触子が出力する受信信号を受け取って、前記被検体の断面の画像を時系列に生成する第1処理部と、
前記第1処理部が生成した前記画像が、前記被検体の予め定められた目的断面の画像かどうかを判定するフレーム判定部と、
前記フレーム判定部が、前記第1処理部の生成した画像が前記目的断面の画像であると判定した場合、その画像およびその画像が生成された元の前記受信信号の少なくとも一方に対して、所定の処理を行う第2処理部とを有し、
前記第2処理部は、前記第1処理部が生成した前記目的断面の画像を処理して画質評価値を求めるとともに、複数種類の前記撮像条件を変化させた画像を第1処理部の出力するデータを用いてそれぞれ生成して、それぞれについて画質評価値を求め、前記第1処理部が生成した前記目的断面の画像の画質評価値に対して最も画質評価値の向上が大きい撮像条件を、前記第1処理部に設定することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項7】
被検体からの超音波を受信した超音波探触子が出力する受信信号を受け取って、前記被検体の断面の画像を時系列に生成する第1処理部と、
前記第1処理部が生成した前記画像が、前記被検体の予め定められた目的断面の画像かどうかを判定するフレーム判定部と、
前記フレーム判定部が、前記第1処理部の生成した画像が前記目的断面の画像であると判定した場合、その画像およびその画像が生成された元の前記受信信号の少なくとも一方に対して、所定の処理を行う第2処理部とを有し、
前記第2処理部は、前記撮像条件を変化させた場合のフレームレートを算出し、前記第1処理部のフレームレートが維持できる撮像条件の中で、前記画質評価値が最も大きい撮像条件を、前記第1処理部に設定することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の超音波撮像装置であって、前記フレーム判定部は、前記第1処理部が生成した前記画像の特徴量を抽出し、前記目的断面についての1以上の画像について予め求めておいた特徴量と比較することにより、前記第1処理部が生成した前記画像が前記目的断面の画像かどうかを判定することを特徴とする超音波撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて被検体内の画像を撮像する超音波撮像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波撮像技術とは、超音波(聞くことを意図しない音波、一般的には20kHz以上の高周波数の音波)を用いて人体をはじめとする被検体の内部を非侵襲的に画像化する技術である。
医用超音波撮像装置は,超音波撮像技術を用いて人体の内部を画像化したり計測する機能を備えている。例えば、人体内部の超音波の反射強度を白黒画像として表示するBモード撮像や,超音波のドップラー効果を利用して血管内の血流速度を計測するドップラー計測や,取得したBモード画像から組織の動きをトラッキングし,心臓の収縮拡張能指標を計測するなど,Bモードおよび計測アプリケーションによって生体の形態的または動的な特徴を取得して医師や技師に提示する機能を備えている。これにより、医師による医学的診断を補助することができる。
【0003】
医用超音波撮像装置を使用する医師や技師等のユーザは、この装置の超音波探触子を片手で把持して被検体の体表で移動させながら、装置によってリアルタイムに時系列に生成されるBモード画像やドップラー計測画像等の超音波画像をモニターで観察し,表示されている超音波画像等に基づいてその場で診断を行う。さらに、ユーザは、超音波探触子の移動を所望の位置で停止させ、超音波探触子を把持している手とは逆側の手で操作パネルのフリーズボタンを押し、表示されている超音波画像を静止させて(フリーズモード)、その静止画像を保存したり、静止画像上で被検体の所定部位の計測を行ったり、撮像条件を調整したりする。
【0004】
特許文献1には、ユーザがフリーズボタンを操作してフリーズモードに切り替えて、静止画像を表示している間に、その静止画像の元となった受信データに追加の処理を行って、現在の静止画像よりも、より解像度の高い画像を生成して表示するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように医用超音波撮像装置は,ユーザが片手で超音波探触子を把持して被検体の体表で移動させながら、リアルタイムで時系列にモニターに表示される超音波画像を観察し,その場で診断を行ったり,所望の位置で超音波探触子を静止させ、逆側の手で操作パネルを操作して必要な画像や計測結果を保存したりする。そのためユーザには、超音波探触子を体表で移動させるルートや停止させる位置を決定するための解剖学的な知識や、必要な計測を行うための装置の操作方法の習得や、適した撮像条件の知識等の高度なスキルが要求される。具体的には、例えば胎児超音波検査の場合には、BPD(児頭大横径)、FL(大腿骨長)、AC(腹部周囲長)等の複数の部位のサイズを、それぞれのサイズ計測に適切な断面画像上で計測する必要がある。また、心臓エコー検査の場合には、短軸像、長軸像および心尖部四腔像の撮像や、LAD(左房径)、RVD(右房径)、AOD(大動脈径)、IVC(下大静脈径)、IVST(心室中隔厚)等の多数の部位のサイズが、所定の断面の画像上で計測される。これらの項目を計測する断面の位置や向きは、学会等のガイドラインによって定められているため、ユーザはこれらの多数の計測項目と、その測定断面の位置や向きを把握し、超音波探触子をその位置まで移動させて正確に停止させなければならない。
【0007】
このように、ユーザには、解剖学的な知識、ならびに、超音波撮像装置の操作や撮像条件の設定の習熟が要求されるため、検査時間,画像の質ならびに検査精度がユーザのスキルに左右されるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ユーザのスキルにかかわらず、短時間で精度よく、被検体の所定の断面の画像取得や計測を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の超音波撮像装置では、被検体からの超音波を受信した超音波探触子が出力する受信信号を受け取って、被検体の異なる断面の画像を時系列に生成する第1処理部と、第1処理部の生成した画像が、被検体の予め定められた目的断面の画像かどうかを、時系列に生成された画像ごとに判定するフレーム判定部と、フレーム判定部が、第1処理部の生成した画像が目的断面の画像であると判定した場合、その画像およびその画像が生成された元の受信信号の少なくとも一方に対して、所定の処理を行う第2処理部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザのスキルにかかわらず、短時間で精度よく、被検体の所定の断面の画像取得や計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態の超音波撮像装置のブロック図
【
図2】第1の実施形態の超音波撮像装置の動作を示すフローチャート
【
図3】第2の実施形態の超音波撮像装置のブロック図
【
図4】第2の実施形態のフレーム判定部と第2処理部の動作を示すフローチャート
【
図5】
図4の一部のステップの詳しい動作を示すフローチャート
【
図6】(a)および(b)第2の実施形態の目的断面を例示する図
【
図7】第3の実施形態の超音波撮像装置におけるバックグラウンド計測の動作を例示する図
【
図8】第3の実施形態の超音波撮像装置における設定画面を例示する図
【
図9】
図8の設定画面に対応する目的断面と計測内容を例示する図
【
図10】第3の実施形態の制御部の動作の一部を示すフローチャート
【
図11】第4の実施形態の超音波撮像装置における撮像パラメータの最適化を行う動作を例示する図
【
図12】第4の実施形態において第2処理部が生成するテーブルを例示する図
【
図13】第4の実施形態において第2処理部の撮像パラメータの最適化の動作を例示するフローチャート
【
図14】第4の実施形態において画像に設定されたコントラスト判定部位と、分解能判定部位とを例示する図
【
図15】第4の実施形態において画質改善寄与率の算出動作を例示するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態の超音波撮像装置について説明する。
【0013】
<<第1の実施形態>>
第1の実施形態の超音波撮像装置について、
図1、
図2を用いて説明する。
図1は第1の実施形態における超音波撮像装置100のブロック図である。
図2は、超音波撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【0014】
第1の実施形態の超音波撮像装置100は、
図1に示すように、第1処理部1と、フレーム判定部3と、第2処理部2とを備えている。第1処理部1には、超音波探触子4が接続されている。超音波探触子4は、被検体5に超音波を照射し、被検体5から戻る反射波や透過波や散乱波等の超音波を受信する。
【0015】
超音波撮像装置100の各部の動作を
図2のフローチャートを用いて説明する。
【0016】
まず、第1処理部1は、被検体5からの超音波を受信した超音波探触子4が出力する受信信号を受け取って、被検体5の断面の画像を時系列に生成する(ステップ201)。
【0017】
つぎに、フレーム判定部3は、第1処理部1の生成した画像(フレーム)が、被検体5の予め定められた目的断面の画像かどうかを判定する(ステップ202)。目的断面は、学会等のガイドラインにのっとって解剖学的に予め定められた断面等である。例えば、フレーム判定部3は、第1処理部1が時系列に生成した画像ごとに、目的断面の画像かどうかを判定してもよいし、所定数の画像(例えば、5画像)ごとに1つの画像を選択して、目的断面の画像かどうかを判定してもよい。
【0018】
フレーム判定部3が、第1処理部1の生成した画像が目的断面の画像であると判定した場合、第2処理部2は、その画像およびその画像の元となった受信信号の少なくとも一方に対して、所定の処理を行う(ステップ203)。
【0019】
第2処理部が行う所定の処理は、どのような処理であってもよい。例えば、目的断面の画像において、その目的断面に応じて予め定めておいた被検体5の部位のサイズや面積等を計測する処理や、第1処理部1が生成した目的断面の画像よりも高解像度の画像を生成する処理や、目的断面の画像の画質(例えば、コントラストや分解能等)を向上させるための撮像条件を求める処理を第2処理部2において行うことができる。
【0020】
第2処理部2の処理は、第1処理部1の画像生成処理と並列して行うことも可能であるし、第1処理部1の画像生成処理を停止させて行うことも可能である。第2処理部1による処理を第1処理部による画像生成処理と並列させて行った場合には、第1処理部1が生成する時系列な画像を表示部6に表示させながら第2処理部2による処理を行うことができる。これにより、ユーザは、被検体5の表面で超音波探触子4の移動させる動作を継続することができるため、第1処理部1により時系列に生成される画像の観察を続けながら、バックグラウンドで第2処理部2による処理を実行させ、処理結果を取得することができる。
【0021】
一方、第1処理部1の画像処理を停止させて第2処理部2の処理を行う場合には、ユーザは超音波探触子3の移動を停止させて、静止画像を観察しながら所望の処理を選択する等ができ、ユーザの指示に従って第2処理部2に処理を実行させることが可能である。
【0022】
フレーム判定部3は、第1処理部1が生成した画像が目的断面の画像かどうかを判定するために、例えば、フレーム判定部3が第1処理部1が生成した画像の特徴量を抽出し、予め定めておいた特徴量、または、目的断面の画像について予め求めておいた特徴量と比較する構成とすることができる。
【0023】
本実施形態の超音波撮像装置では、生成した画像が目的断面の画像かどうかをフレーム判定部が判定するため、ユーザの解剖学的知識やスキルに依らず、被検体の所定の断面について、超音波画像の取得や計測を行うことができる。
【0024】
具体的には、例えばユーザが超音波探触子4の操作を行っている間に,ユーザがボタン操作などを通じて画像調整や計測を行うことなく,バックグラウンドで目的断面について、好ましい撮像条件に調整された画像を取得したり,必要な計測を行うことが可能になる。また、バックグラウンドではなく、ユーザの指示に従って、目的断面における静止画像の取得や計測を行うことも可能である。よって、ユーザの操作の負担と検査時間を大幅に改善することが可能になる。
【0025】
しかも、このとき第1処理部1と第2処理部2が並行で画像生成や信号処理を行うことが可能であるため、ユーザは、常にリアルタイムに撮像断面を表示部で確認して超音波探触子4の操作を継続することができる。
【0026】
以下、本実施形態の超音波撮像装置の具体的な実施形態について説明する。
【0027】
<<第2の実施形態>>
第2の実施形態の超音波撮像装置について説明する。この超音波撮像装置は、第1処理部1が時系列に画像生成処理を行うのに並行して,第2処理部2がフレーム判定結果に基づいて自動で計測処理を実行する。その際、第2処理部2は、表示部6における表示等により、計測結果をユーザに知らせる。
【0028】
第2の実施形態の超音波撮像装置は、第1の実施形態の
図1の超音波撮像装置と同様の第1処理部1とフレーム判定部3と第2処理部に加えて、メモリ17をさらに備えている。以下、これら各部の具体的な構成について説明する。
【0029】
<第1処理部1>
まず第1処理部1について、その構成及び処理内容を
図3を用いて説明する。第1処理部1は、
図3のように送信ビームフォーマー11と、受信部12と、受信ビームフォーマー13と、信号処理部14と、バックエンド処理部15と、送受切替部18と、全体を制御する制御部16と、ユーザーインタフェース19と、制御部16を備えている。第1処理部1の構成および動作は、公知の超音波撮像装置と同様であるので、ここでは簡単に以下説明する。
【0030】
送信ビームフォーマー11は、ユーザーインタフェース19を介してユーザから受け付けた送信焦点等を定める所定の撮像条件にしたがって、送信信号(電気信号)を生成し、送受切り替え部16を介して超音波探触子4の各超音波素子に出力する。超音波探触子4の各超音波素子は、送信信号を超音波に変換して出力する。これにより、超音波探触子4から、被検体5の撮像領域に対して、超音波ビームが送信される。
【0031】
次に、超音波ビームの送信を受けた撮像領域からは超音波(エコーや散乱波等)が超音波探触子4に戻る。超音波探触子4の各超音波素子は、これを受信して、受信信号(電気信号)に変換する。受信信号は、受信部12に送られる。
【0032】
受信部12は、超音波素子の受信電圧を、アナログ/デジタル変換(ADC:Analog Digital Converter)により一定のサンプリング周期をもったデジタル信号に変換する。さらに受信部12は、データインタフェースを有し、デジタル信号を受信ビームフォーマーに送るための伝送規格に変換し、タイミングを制御する等する。これにより、受信部12は、各超音波素子の受信信号をデジタルの受信チャンネルデータに変換して、受信ビームフォーマー13やメモリ部17に伝送する。
【0033】
受信ビームフォーマー13は、受信チャンネルデータを処理することにより、撮像条件にしたがって、撮像領域に設定された複数の受信焦点について、結像データを生成する。一般に受信焦点は、送信ビームの照射範囲ごとに、1本または複数本のラインに沿って密に配置される。ラインにおける複数の受信焦点の配置間隔(周期)は、受信サンプリング間隔と同様の、または数倍に間引いた間隔である。このような1送信あたり、1本以上のラインに生成される結像データを受信ラインデータなどと呼ぶ。
【0034】
受信チャンネルデータから受信ラインデータを生成する処理方法としては、どのような方法を用いてもよいが、例えば遅延加算法を用いることができる。遅延加算法は、超音波素子ごとの受信チャンネルデータを遅延させ位相を整えた後、受信チャンネル信号同士を加算する方法である。超音波素子ごとの受信チャンネルデータの遅延量は、撮像領域における受信焦点の位置の組織で反射された超音波エコーが、同位相で各超音波素子に到達するのに要する時間の、超音波素子ごとの時間差と等しくなるように予め設定されている。遅延量は、受信焦点ごとに異なり、受信焦点ごとに各受信チャンネルデータの遅延および加算の処理を繰り返す。このため、各受信チャンネルデータに与える遅延量は、受信焦点のサンプリング周期で経時的に変化させる。このように受信ラインに沿って経時的に受信焦点を変化させながら、遅延および加算の処理を繰り返して、結像データを生成することをダイナミックフォーカスという。ダイナミックフォーカスにより、撮像領域の浅部から深部まで、仮想的に所定のビーム幅の均質な受信ビーム(受信ラインデータ)が形成される。
【0035】
次に、信号処理部14は、撮像・計測モードに応じて必要な様々な信号処理を行う。信号処理としては、例えば、受信ラインデータのSN比(シグナルノイズ比)を向上させるなどの目的で、目的の周波数成分以外を除去するバンドパスフィルター処理やローパスフィルター処理を行う。また受信ラインデータの振幅値は、直交検波処理によって、実部であるI成分と虚部であるQ成分からなるIQデータに変換される。これにより、Bモードで表示する振幅成分や、ドップラー計測で用いる位相成分が検出可能になる。
【0036】
また、信号処理部14は、開口合成撮像(STA:Synthetic Transmit Aperture)を行うことができる。開口合成撮像は、Bモードの撮像手法の一つであり、複数の送信間の受信信号を合成することで、仮想的に送信開口を拡大し、高分解能な画像を得ることができる。すなわち、開口合成撮像では、信号処理部14は、複数の異なる送信でそれぞれ得られた同一の位置の受信ラインデータをコヒーレントに合成する。合成後の受信ラインデータを用いて、1フレームの画像を形成する。
【0037】
また、信号処理部14は、コンパウンド処理により高分解能な画像を得ることもできる。一般に、開口合成を行っていない受信ラインデータで構成される画像は、低分解能画像(LRI:Low Resolution Image)と呼ばれる。コンパウンド処理では、信号処理部14は、異なるN回の送信でそれぞれ生成された低分解能画像を、受信領域が重なり合う同一の受信焦点についてインコヒーレントに加算し、高分解能画像(HRI:High Resolution Image)を生成する。コンパウンド処理は、受信焦点で振幅値を加算するインコヒーレントな合成処理であるため、SN比が合成数Nに対応してN倍に増加する効果が得られる。よって、高SN比、高分解能の画像が得られる。また、コンパウンド処理において、合成効果を均一にするなどの目的で、受信焦点位置に応じた重み(LRI重み)を付与した上で加算を行う場合がある。
【0038】
このように信号処理部14は、複数の送信ビームで生成された受信ラインデータに対し、撮像・計測モードに応じて、フィルタ処理、直交検波処理、コンパウンド処理などの様々な信号処理を行う。
【0039】
バックエンド処理部15は、信号処理部14で生成したIQデータなど用いて、撮像・計測モードごとの画像処理や計測・解析処理を行う。これにより、表示部6に表示するBモード画像や、ドップラー計測の速度スペクトルや、カラーフロー画像や、エラストグラフィーの弾性率などの計測データを生成する。
【0040】
例えばバックエンド処理部15は、Bモード用の画像処理として、受信ライン方向およびライン深度方向に配列されている結像データに対して、内挿処理を行うことにより、撮像断面のX-Z実空間座標に変換する(スキャンコンバージョン処理)。
【0041】
また例えば、ドップラー計測では、バックエンド処理部15は、同じ方向へ複数回に渡って送信ビームを照射して得られた、連続した時相のIQデータを用いて、それらの位相成分の変化を算出し、位相回転量を移動速度に変換する。これにより、バックエンド処理部15は、血流などの速度成分を計測する。
【0042】
バックエンド処理部15で生成されたフレームごとのBモード画像データや、計測データは、シネデータと呼ばれる。表示部6は、複数のシネデータを受け取って、動画として表示する。
【0043】
以上のように、第1処理部1は、超音波の送受信を繰り返し、受信チャンネルデータをリアルタイムに処理することで、超音波断層像または、超音波計測結果を、リアルタイムに表示部に表示させる。
【0044】
<メモリ部17>
メモリ部17は、受信部12でサンプリングされた受信チャンネルデータ、第1処理部1で生成された受信ラインデータ、および、バックエンド処理部15で生成されたシネデータを受け取って記憶し、第2処理部2の第2処理制御部22の制御により、不要なデータは消去する。
【0045】
メモリ部17は、本実施形態では、第1処理部1および第2処理部2の外に配置しているが、第1処理部1または第2処理部2の内部に配置してもよい。例えば、第1処理部1には、メモリとしてRAMを配置し、第2処理部2は、これを構成するプロセッサ(例えばGPU)上にオンチップメモリを配置する構成としてもよい。
【0046】
また、メモリ部17は、メモリサーバー上に配置されていてもよい。この場合、第1処理部1と第2処理部2が、共通のメモリサーバー上のメモリ部17にアクセスする。
【0047】
<フレーム判定部3>
フレーム判定部3は、第1処理部1が時系列に順次出力し、メモリ部17に格納されたシネデータを順次読み出して、フレーム(画像)の撮像断面が目的断面であるかどうかを判定し、目的断面である場合には、第2処理部2において処理を実行させる。目的断面のフレームではない場合には、第2処理部2における処理は実行させない。フレーム判定部3が、メモリ部17に格納されたシネデータを読み出すタイミングは、リアルタイムで判定を行うために、メモリ部17に格納された直後であることが望ましい。ただし、第2処理部2の処理にリアルタイム性が要求されてない処理である場合には、メモリ部17に格納された直後でなくても構わない。なお、フレーム判定部3の動作は、後で詳しく説明する。
【0048】
<第2処理部2>
次に第2処理部2について説明する。第2処理部2は、第2処理制御部22と、計算解析処理部20と、解析部26とを備えている。計算解析処理部20は、受信ビームフォーマー23、信号処理部24、バックエンド処理部25および解析部26の4つを本実施形態では配置しているが、所望の計算解析処理を行う構成が1つ以上配置されていればよい。
【0049】
第2処理制御部22は、フレーム判定部3の結果を受け取って、計算解析処理部20の実行する計算解析処理を制御する。
【0050】
計算解析処理部20は、メモリ部17に保存された、受信チャンネルデータ、受信ラインデータ、シネデータのうち1つ以上のデータを第2処理制御部22を介して受け取って、計算解析処理する。計算解析処理部20による処理は、第1処理部1による処理と平行して実行される。具体的には、計算解析処理部20は、遅延加算処理などの受信ビームフォーミング処理、直交検波や開口合成やコンパウンド処理などの信号処理、および、画像生成や速度計測等の各種バックエンド処理などの処理のうち、少なくとも1つ以上の処理を行う。これにより、例えば、計算解析処理部20の受信ビームフォーマー23、信号処理部24およびバックエンド処理部15は、第1処理部1の生成するBモード画像よりも画質の高いBモード画像の生成や、LRIデータなどBモード画像生成の途中段階の所望のデータや、ドップラーの速度データの生成などを行う。解析部26は、例えば、第1処理部1が生成したBモード画像またはバックエンド処理部25の出力するBモード画像の分解能やコントラストの算出、LRIデータや速度計測データの解析、および、画質改善に寄与する撮像パラメータの算出等の少なくとも1つ以上の評価指標の算出や解析を行い、算出結果や解析結果を、必要に応じて生成した画質の高いBモード画像等とともに第2処理制御部22にフィードバックする。
【0051】
第2処理制御部22は、計算解析処理部20から受け取った画質の改善されたBモード画像や、速度データや、画質改善に寄与する撮像パラメータ等のうち少なくとの1つ以上のデータをメモリ部17に返して記憶させる。また、画質が所望の評価値に達していなかった場合等所定の場合には、第2処理制御部22は、計算解析処理部20に、処理条件を変更してさらにBモード画像の生成等を行わせることも可能である。
【0052】
なお、第2処理部2は、第1処理部1と同様に超音波撮像装置本体に内蔵されていてもよいし,外付けされていてもよい。また本体とは別のサーバー上に第2の処理部2を配置し、ネットワークを通して、本体とデータの授受を行う構成としてもよい。
【0053】
また、第1処理部1、フレーム判定部3および第2処理部2は、その機能をソフトウエアによって実現することも可能であるし、その一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。ソフトウエアによって実現する場合、第1処理部1、フレーム判定部3および第2処理部は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを内蔵するコンピュータシステムで構成され、CPU等が、メモリ16に予め格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、各部の機能を実現する。また、ハードウエアによって実現する場合には、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて第1処理部1、フレーム判定部3および第2処理部2を構成し、その動作を実現するように回路設計を行えばよい。
【0054】
このように本実施形態では,第1処理部1と第2処理部2が並行でビームフォーミングや信号処理を行うことができる。また、フレーム判定部3は,第2処理部2で画像調整や計測等の処理を行う目的断面のフレームであるかどうかを判定するため、ユーザの解剖学的知識やスキルに左右されず、予め定めた目的断面の画像をフレーム判定部3が選択して、計測等を実行することができる。
【0055】
また、ユーザは、第1処理部1が生成した画像をリアルタイムに表示部6において観察して撮像断面を確認しながら超音波探触子4の操作を継続し,その間に、フレーム判定部3が目的断面であると判定したフレームについて、第2処理部2において画像調整や計測を自動で実行することが可能になる。
【0056】
<フレーム判定部3および第2処理部の具体的な動作の例>
本実施形態のフレーム判定部3および第2処理部2の動作の例について具体的に説明する。
図4は、フレーム判定部3および第2処理部2の動作を示すフローチャート、
図5は、フレーム判定部3の動作の詳細を示すフローチャート、
図6(a)は、フレーム判定部3の目的断面が胎児における所定断面である例を、
図6(b)は、目的的断面が心臓の所定断面である例をそれぞれ示す図である。
【0057】
なお、目的断面の例とは、例えば
図6(a)に示すような胎児エコー診断において観察される胎児頭部断面や腹部断面や大腿骨断面、ならびに、
図6(b)に示すような心エコー診断において観察される心尖四腔断面、心尖二腔断面、短軸像僧帽弁レベルなどがある。超音波診断において観察または計測すべき断面は、学会のガイドライン等によって解剖学的に定められている。
【0058】
ユーザが超音波探触子4を被検体5の表面で移動させ、それに伴い第1処理部1が画像(シネデータ)をリアルタイムで時系列に生成し、生成されたシネデータは、メモリ部17に順次格納される。
【0059】
図4のステップ401において、フレーム判定部3は,メモリ部17に格納されたシネデータのn番目のフレームを読み込む。そして、読み込んだフレームnが目的断面の画像であるかどうかを判定する(ステップ402、403)。リアルタイムに第2処理部2の処理を行うためには、フレームnが第1処理部1によってメモリ部17に格納された直後に、フレーム判定部3が読み出すことが望ましい。
【0060】
ステップ402、403の詳しい処理を
図5を用いて説明する。ここでは、フレーム判定部3は、特徴量分析により判定を行う例について説明する。すなわち、目的断面Xについて予め用意された1以上の画像について求めておいた特徴量と、フレームnとの特徴量との一致の度合により、フレームnが目的断面であるか否かを判定する。予め用意された1以上の画像は、同一被検体5のものであっても、異なる被検体のものであってもよい。特徴量には、例えば、輝度分布の分析やエッジ形状の分析など、人為的に設定された特徴量や、機械学習手法により、予め用意された1以上の目的断面Xの画像から抽出された抽象的な特徴量などを用いる。予め用意された1以上の目的断面の画像について、所定の複数の特徴量(例えば、輝度分布、エッジ形状、抽象的な特徴量)について分析を行い、予め特徴量マップを得ておく。
【0061】
目的断面が
図6(a)または
図6(b)のように、複数ある場合には、それぞれの目的断面X,Y,Zごとに特徴量マップを得ておく。
【0062】
フレーム判定部3は、フレームnについて上述の所定の複数の特徴量を分析し、特徴量マップを生成する(
図5のステップ501)。つぎに、生成したフレームnの特徴マップを予め用意しておいた目的断面の画像の特徴量マップと照合し、一致率を算出する。一致率の算出には相互相関値を用いる方法などを用いる(ステップ502)。一致率が予め設定した閾値を上回るとき、フレームnは目的断面であると判定し、閾値を下回るときは目的断面ではないと判定する(ステップ403)。複数の目的断面X、Y,Zがある場合には、目的断面X,Y、Zごとに一致率を算出し、フレームnが目的断面X、Y、Zのいずれかであるかどうかを判定する。
【0063】
フレーム判定部3は、ステップ403においてフレームnが目的断面X,Y,Zのいずれでもないと判定した場合は、ステップ404に進み、メモリ部17からフレームnのチャンネルデータ、受信ラインデータ、シネデータを消去する(ステップ404)。そして、次のn+1番目のフレームについて、ステップ401~403の判定を繰り返す(ステップ405)。ただし、目的断面の前後の複数フレームを用いて計測を行うことを可能にするために、連続するフレームを一定の期間一時的にメモリ部17に記憶させてもよい。
【0064】
フレーム判定部3は、ステップ403においてフレームnが目的断面X,Y,Zのいずかであると判定した場合は、ステップ406に進み、フレームnのメモリ部17からフレームnのチャンネルデータ、受信ラインデータ、シネデータをそのままメモリ部17に保存しておくとともに、第2処理部2の第2処理制御部22に判定結果を出力する。
【0065】
第2処理制御部22は、フレーム判定部3から判定結果を受け取ったならば、判定結果の示す、フレームnが一致する目的断面を判定し、目的断面応じた実行処理内容(プログラム)を制御部16から読み込む(ステップ407)。例えば、目的断面Xが胎児頭部断面である場合、実行処理は児頭大横径(BPD)の計測であり、目的断面Yが胎児腹部断面である場合、実行処理は腹部周囲長(AC)の計測であり、目的断面Zが大腿部断面である場合、実行処理は大腿骨長(FL)の計測である。第2処理制御部22は、フレームnが一致する目的断面X,Y、Zに応じて読み込んだプログラムを実行することにより、計算解析処理部20の各部を動作させて、計測を実行させる(ステップ408~413)。これにより、第2処理制御部22は、第1処理部1を介して計測結果を表示部6に表示する等する。なお、
図4は、図示の都合上、目的断面XおよびYのみについて実行処理を示している。
【0066】
第2処理制御部22は、目的断面に応じた計算解析処理が終了したならば、フレームnについて保存されたデータをメモリ部17から消去する(ステップ410)。ただし、目的断面の前後の複数フレームを用いて計測を行うことを可能にするために、連続するフレームを一定の期間一時的にメモリ部17に記憶させてもよい。
【0067】
そして、次のフレームに対して処理を行うため、ステップ401に戻る(ステップ415)。
【0068】
このように本実施形態では,第1処理部1と第2処理部2が並行でビームフォーミングや信号処理を行うことができるため、ユーザは常にリアルタイムで表示部6で撮像断面を観察および確認して超音波探触子4の操作を継続することができる。
【0069】
また、フレーム判定部3は,第2処理部2で画像調整や計測等の処理を行う目的断面のフレームであるかどうかを判定するため、ユーザの解剖学的知識やスキルに左右されず、予め定めた目的断面の画像をフレーム判定部3が選択して、計測等を実行することができる。よって、ユーザは、フリーズボタンを操作する必要がなく、胎児健診のように複数の計測項目を計測したい場合にも、短時間で正確に計測を行うことが可能になる。
【0070】
また、一般的な超音波診断装置では、20~60fps程度で撮像が行われるため、そのデータ量は、受信チャンネルデータで最大8GB/s程度のデータ量を有し、撮像中の全ての受信チャンネルデータを保存するためには、メモリ部17に大きなメモリ容量を必要とする。本実施形態では、ステップ404およびステップ410においてフレーム判定部3および第2処理制御部22が目的断面ではないフレームのデータを削除するため、メモリ部17に大きなメモリ容量が不要であり、メモリ容量が小さく、小型な装置の提供が可能になる。
【0071】
なお、第2処理部2の計算解析処理が終了した後,予め設定したメモリ容量の閾値までメモリ部17にデータを保持し,ユーザが計測結果を確認して計測結果が満足するものであった場合には、そのユーザーフィードバックを受けて、第2処理制御部22がメモリ部17の全データを消去してもよい。また、ユーザが計測結果の修正を求めた場合には、保存されたデータを再生することで,第2処理部2の処理する画像を変更したり、画像のゲイン調整や、Mモードやパルスドップラーの計測点など、第2処理部の処理内容について、手動の修正を加えられるようにしてもよい。
【0072】
これらの構成によって,連続的に保存するフレーム毎のデータを,処理に必要な時間だけ保存するように管理し,限られたメモリ容量で第2処理部の計算解析処理を実行することができる。
【0073】
<<第3の実施形態>>
第3の実施形態の超音波撮像装置について、
図7~
図10を用いて説明する。
図7は、本実施形態の超音波撮像装置におけるバックグラウンド計測の動作を例示する図、
図8は、本実施形態の超音波探触子4の種類と撮像対象の部位と検査項目の種類を設定するための設定画面を例示する図、
図9は、検査項目に対応する目的断面と計測内容を例示する図、
図10は、制御部16の動作の一部を示すフローである。
【0074】
第3の実施形態の超音波撮像装置は、第1および第2の実施形態の超音波診断装置と同様の構成であり、第1処理部1の撮像処理中に,第2処理部2がそれと並行してフレーム判定部3の判定結果に基づいて自動で計測処理を実行する。第3の実施形態では、その際にユーザーインタフェースを通して、ユーザに対して計測処理の実施状況の伝達を行う点が第1及び第2の実施形態とは異なっている。これにより、ユーザによる所定の計測の実行を支援する。
【0075】
ここでいう所定の計測とは、すでに説明したように、例えば胎児エコー診断において胎児の頭部,手足の長さを測定するような形態的な計測や、心エコー診断において心臓の収縮・拡張機能を診断するために心壁の変位を計測するMモードや、超音波のドップラー効果を利用して心臓や血管内の血流速度を計測するドップラー計測などである。これらは,診断に必要な基本観察断面や計測項目・計測位置がガイドライン等に規定されているため、その規定にそってユーザは計測を行う必要がある。
【0076】
一般に超音波検査は、医師や技師であるユーザが超音波探触子4を動かし、リアルタイムに表示部6に表示される断面を観察しながら,診断に必要な観察断面の画像が描出される位置まで超音波探触子4を正確に移動させる。望ましい断面の画像が描出されたら、片手で超音波探触子4の位置を保持したまま、もう一方の手でユーザーインタフェース19のモニターやボタン操作などを行い、画像の調整や保存、計測を行う。この操作を多数回繰り返す。そのためユーザには解剖学的知見や経験といった,高度なスキルが要求され,ユーザのスキルに依存して検査時間が長くかかったり、最適な断面が描出されなかったり、十分な画質調整が行われなかったりと、検査時間や,画像の質,検査精度が左右される。
【0077】
第1及び第2の実施形態で述べたように、本実施形態の超音波装置では、
図7に示すように、超音波探触子4がユーザによって操作されている間、第1処理部1は、デフォルトモードとしてBモード撮像用の送受信を行う。第1処理部1で生成されたBモード画像が表示部6に表示される。一方、第2処理部2では、第2の実施形態で詳しく述べたように、フレーム判定および計測処理が行われる。
【0078】
第3の実施形態では、フレーム判定部3がフレーム判定を行う目的断面および第2処理部2の実行する計測処理の内容は、ユーザが、
図2のステップ201の検査開始の前に、
図10のフローに示したように、表示部6の表示画面上で、ユーザーインタフェース19を介して、超音波探触子4の種類、撮像対象の部位、検査項目の種類選択することで設定することができる。
【0079】
まず、制御部16は、例えば、
図8に示すように、超音波探触子4の種類、撮像対象の部位、検査項目の種類を示す画面を表示部6に表示する。
図10のように、ユーザが、ユーザーインタフェース19を介してこれらを選択すると制御部16はこれを受け付け(ステップ101)、選択結果に基づき、内蔵するメモリに格納されている診断ワークフローを参照し、目的断面および計測内容を設定する(ステップ102)。例えば、ユーザが、超音波探触子4の種類として、例えば、コンベックス超音波探触子4を選択し、撮像対象として産婦人科を選択し、検査項目として胎児スクリーニング01を選択したならば、ユーザの選択結果に基づき、制御部16は、内蔵するメモリに格納されているテーブルを参照し、
図9に示すような目的断面と計測内容を設定する。具体的には、検査項目1にCRL(頭臀長)が設定され、目的断面として胎児矢状断面が設定され、この目的断面に対して実施する計測内容として頭部から臀部直線距離計測が設定される。同様に検査項目2,3についても、
図9に示すような目的断面および計測内容が設定される。このようにして目的断面が順に設定され、目的断面が撮像されたフレーム判定部3が判定した時には、第2処理部2により、所定の計測が実行される。
【0080】
また、第3の実施形態では、第2処理部2の第2処理制御部22は、
図7に示したように、計測処理の実施状況に関するアラートをユーザに対して知らせるアラート機能を有する。具体的には、ステップ411の児頭大横径(BPD)計測処理の開始時に「BPD計測を実施中です。」とユーザに報知する表示を表示部6に表示させたり、不図示のスピーカーから音声出力させたりする。また、ステップ413の児頭大横径(BPD)計測処理の終了時には、「BPD計測が終了しました。次はAC断面へ超音波探触子4を操作してください。」などを表示や音声出力する。これにより、ユーザに計測状況を伝えることができる。
【0081】
さらに、第2処理制御部22は、制御部16に設定された一連の計測が終了した場合には、「全ての計測が終了しました。超音波探触子の操作を終了してください。」などと表示し,撮像・計測結果のレポートを出力することもできる。
【0082】
また、フレーム判定部3において、目的断面が一定時間以上描出されない場合には,第2処理制御部22は、「頸動脈の長軸断面が描出されません」などと、描出不良を伝えるアラートを表示部6に表示して,ユーザに対して超音波探触子4の操作に関する示唆を与えることも可能である。
【0083】
さらに、制御部16に設定された計測内容が,一定時間超音波探触子4を停止したまま保持したり、被検体5に一時的に息止めを指示したりする必要がある計測の場合には,第2処理制御部22は、ステップ408や411において不図示のスピーカーから停止音を発生させるなどの方法で、ユーザにすばやく指示を与えるためのアラートを出すことも可能である。また、第2処理制御部22ではなく、フレーム判定部3が直接これらの指示をスピーカー等から出力させる構成にしてもよい。
【0084】
また第2処理部2で計測を開始するときに,第2の実施形態で述べたように、メモリ部17に保存された該当フレームの保存データを使う構成の他に、予め設定しておいた送受信条件(例えば、送信強度、送信波形、送信スキャンのシーケンス、および受信部のフィルタ設定など)を、第2処理部2の第2処理制御部22が、第1処理部1の制御部16へ設定し、チャンネルデータ,ラインデータ,シネデータのうち1つ以上について再取得させてもよい。
【0085】
これらの実施形態によって、ユーザー(医師や技師)は、ガイドラインに定められた操作手順で超音波探触子4を順に動かすのみで、その間に基本断面の取得、検査に必要な計測の全てを、ユーザーインタフェース19のボタン操作等の負担なくバックグラウンドで行うことができ、短時間での検査が可能になる。
【0086】
またフレーム判定部が目的断面を判定し、かつ目的断面が得られない場合にユーザにアラートを出すことによって、ユーザに依存せずに検査に適したアングルでの計測を行うことが可能になる。
【0087】
<<第4の実施形態>>
第4の実施形態の超音波撮像装置について、
図11~
図15を用いて説明する。
図11は、本実施形態の超音波撮像装置における撮像パラメータの最適化を行う動作を説明する図である。
【0088】
第4の実施形態の超音波撮像装置は、第1および第2の実施形態の超音波診断装置と同様の構成であるが、
図11に示すように、フレーム判定部3が目的断面のフレームを判定した場合には、第2処理部2の計算解析処理として、撮像パラメータの最適化解析を行い,求めた最適パラメータを第1処理部1へフィードバックする。
【0089】
一般に超音波撮像では撮像条件や撮像対象の動きの有無等により、コントラストの低下、分解能の低下、フレームレートの低下や虚像の発生などの画像劣化が生じるため、撮像対象の部位の特性(構造・組織特性・動き)や撮像目的(診断項目、計測項目)に応じて、撮像条件を調整することが望ましい。しかしながら、調整が必要な撮像パラメータ(送受信条件)は、送信の複数のプロセスおよび受信の複数のプロセスごとにそれぞれ複数があるため、ユーザが良好な画像を得るための適切なパラメータ値を設定することは容易ではない。
【0090】
具体的には、ユーザが設定可能な撮像パラメータには、例えば、送信ビームのフォーカス深度、送受信のスキャンライン密度、DAS(遅延加算)撮像/開口合成などの撮像モードの選択、撮像範囲(画角)、ダイナミックゲインなどがある。またユーザが直接設定可能なパラメータやモードの他に、装置内部に予め設定される撮像パラメータが多数ある。例えば、受信部12ではサンプリング周波数やバンドパス周波数を決めるフィルタ係数、チャンネルアポダイゼーションの重み値、受信ビームフォーマーでは遅延値の算出に用いる音速値、開口合成撮像における受信ライン数、LRIの合成数、LRIに付与する重み値などがある。これらのパラメータの中には、複数の処理プロセスにおいて設定されるものもあり、ある処理プロセスにおいて変化させた場合と、別の処理プロセスで変化させた場合とで画質は異なる。このため、適切なパラメータ値を適切な処理プロセスにおいて設定するのは容易ではない。
【0091】
本実施形態では、制御部16は、第1の実施形態と同様に、最初に、初期設定パラメータによって第1処理部1において撮像を実施させる(
図2のステップ201)。
そしてフレーム判定部3において、目的断面のフレームであると判定がされた場合(ステップ202)、第2処理部2の第2処理制御部22は、撮像されたフレームの画質を向上させる最適なパラメータを算出するための計算解析処理を計算解析処理部20に実行させ、最適なパラメータ値を算出する。第2処理制御部22は、算出した最適パラメータを第1処理部1の制御部16にフィードバックする(ステップ203)。これにより、第1処理部1は、初期設定値を用いた撮像から、最適パラメータを用いた撮像に切り替わり、表示部6には初期の画像よりも画質が改善されたBモード画像が表示される。
【0092】
このように、目的断面として基本断面を設定しておき、基本断面のフレームがフレーム判定部3によって判定された場合に、最適な撮像パラメータが、第2処理部2により算出される構成にすることにより、基本断面が表示部6に表示されている間に、最適パラメータがフィードバック設定され、画質を改善したBモード画像を表示することができる。
【0093】
または、超音波探触子4がユーザによって操作され、撮像断面が一定距離以上変化した場合には、最適な撮像パラメータを第2処理部2が算出して第1処理部1に設定する構成とすることも可能である。この場合、フレーム判定部3が判定した撮像断面の位置が、所定の断面から一定距離以上変化したと判定されるたびに、第2処理部2でパラメータ最適化が実行されるように構成する。撮像断面の移動量は、例えばフレーム間で画像の相互相関を算出する処理を行い、相互相関値のピーク値の位置から移動量を算出する方法によって検出することができる。
【0094】
第2処理部2のパラメータ最適化処理は、第1処理部1のBモード撮像と平行して行われるため、パラメータ最適化に要する時間が複数フレームの撮像に跨る場合でも、表示部6によるリアルタイムな画像表示を中断することがない。
【0095】
第2処理部2が行うパラメータ最適化の処理の具体例について
図12および
図13を用いて説明する。
図12は、第2処理部2が生成するテーブルである。このテーブルは、複数の撮像プロセスにおいて撮像パラメータを変化させた場合の画像の画質させる評価指標(画質改善評価指標)を示している。
図13は、第2処理部2のパラメータ最適化処理の動作を示すフローチャートである。
【0096】
まず、第2処理部2は、最適な撮像パラメータを求めるため、第1処理部1の予め定めた複数のプロセスA,B,C・・(例:送信ビームフォーマー11の送信ビームフォーミング(送信信号生成)プロセス、受信ビームフォーマー13の受信ビームフォーミングプロセス、信号処理部14の信号処理プロセス等)と、各プロセスで用いるパラメータα,β,γ・・(フォーカス深度、スキャンライン密度、DAS(遅延加算)撮像/開口合成などの撮像モードの選択等)の組合せについて、パラメータ値を変化させた場合の画質改善評価指標をそれぞれ算出する(ステップ131、132)。これにより、画質改善評価指標を示すテーブルを、
図12のように生成する(ステップ133)。
図12のテーブルを参照することにより、とくに画質改善効果の高いパラメータを、第1処理部1へフィードバックする(ステップ134~137)。以下、詳しく説明する。
【0097】
まず、ステップ131において、第2処理部2は、各プロセスにおけるパラメータの画質改善評価指標を求めるために、メモリ部17に保存されたチャンネルデータまたは受信ラインデータまたはシネデータを読み込み、パラメータ値を予め定めた範囲で変化させて、信号解析処理部20の受信ビームフォーマー23および信号処理部24によってBモード画像の画像生成を行う。そして、ステップ132において、解析部26によって、得られた画像の画質を評価することにより、そのパラメータの画質改善評価指標を算出する。
【0098】
なお、第2処理部2は、送信ビームフォーミングを行うプロセスや、受信チャンネルデータの生成以前の処理プロセスにおけるパラメータの画質改善効果を求める際には、第1処理部の制御部16に各プロセスのパラメータ値を指示し、制御部16を介して、第1処理部1から送受信を行わせる。これにより、第2処理部2は、チャンネルデータ、受信ラインデータ、シネデータのうち1つ以上のデータを第1処理部1によって再取得させる。そして、第2処理部2は、再取得したデータを、信号解析処理部20の受信ビームフォーマー23および信号処理部24によってBモード画像の画像生成を行う(ステップ131)。さらに、解析部26によって、得られた画像の画質を評価することにより、そのパラメータの画質改善評価指標を算出する(ステップ132)。
【0099】
なお、画質改善評価指標として、第2処理部2の解析部26は、ここでは画質改善寄与率とフレームレート保持判定の2つを算出する。
【0100】
画質改善寄与率とは、該当フレームの初期画像と、例えば処理プロセスAのパラメータαを初期値α0からα1に変化させたときの画像とを比較した場合の画像の改善の度合いを意味する。一方、フレームレート保持判定とは、処理プロセスAのパラメータαを初期値α0からα1に変化させた後の、第1処理部1における送受信に要する時間を求め、初期のフレームレートと同じフレームレートが保持されるか、フレームレートが低下するかを判定することである。画質改善寄与率の算出方法と、フレームレート保持の判定方法については、後で詳しく説明する。
【0101】
第2処理部2は、上述のように各パラメータを変化させ、画質改善寄与率とフレームレート保持判定を画質改善評価指標として求め、
図12のテーブルを生成する(ステップ133)。
【0102】
つぎに、第2処理部2は、ユーザがフレームレート優先モードの設定をユーザーインタフェース19を介して設定しているかどうかを読み込み、ユーザがフレームレート優先モードを設定しているかどうかを判定する(ステップ134)。フレームレート優先モードが設定されている場合、ステップ135へ進み、
図12のテーブルの中から、フレームレート保持判定結果が「フレームレート保持可能」である処理プロセスとパラメータの組み合わせを選択し、さらにその中で画質改善寄与率が高い組み合わせ(
図12の処理プロセスBのパラメータγ)を選択する。一方、フレームレート優先モードがオフ(フレームレートよりも画質を優先)の場合には、ステップ136へ進み、最も画質改善寄与率が高い処理プロセスとパラメータの組み合わせ(
図12の処理プロセスAのパラメータα)を選択する。
【0103】
そして、第2処理部2は、選択した処理プロセスとパラメータの値(ステップ131のパラメータ値)を、第1処理部1の制御部16に出力し、撮像に適用するように指示する(ステップ137)。これにより、第1処理部1は、設定されたパラメータ値を処理プロセスに適用し、撮像を行う。
【0104】
なお、上述のフレームレート優先モードは、上述したようにユーザが任意に設定できる構成であってもよいし、フレーム判定部3で判定したフレームの目的断面の部位や臓器に応じて、第2処理部2の第2処理制御部22が、フレームレート優先モードを設定する構成にしてもよい。例えば、目的断面が含まれる対象臓器が、心臓である場合には、高いフレームレートが望ましいために、第2処理部2の第2処理制御部22は、フレームレート優先モードをオンにし、対象臓器が肝臓である場合には必ずしも高いフレームレートが必要ないためフレームレート優先モードをオフにする。
【0105】
このように、本実施形態では、画質改善寄与率とフレームレート保持判定の2つの評価指標を用いることにより、必要なフレームレートの確保と、画質の向上とを両立することが可能になる。
【0106】
ここで、画質改善寄与率やフレームレートの算出方法について、具体的に説明する。これらの算出は、第2処理部2の解析部26が行う。まず、画質改善寄与率の算出方法の具体例を、
図14、
図15を用いて説明する。
図14は、画像の評価部位を説明する図であり、
図15は、画質改善寄与率の算出動作を示すフローチャートである。
【0107】
本実施形態では、画像のコントラストおよび分解能等の複数の画像の評価指標のうち、一つ以上を用いて画質改善寄与率を算出する。
【0108】
解析部26は、
図14に示すように、目的断面のフレーム(初期画像)と、ステップ131で撮像パラメータ値を変化させて生成した画像に対して、画像評価部位を設定する(ステップ151)。例えばコントラスト判定部位としては、画像中の比較的高輝度な部位(より白く表示される部位)と比較的低輝度な部位(より黒く表示される部位)の2つを抽出して設定する。また分解能(シャープネス)の評価部位として、比較的高輝度で微細な構造が描出されている部位を抽出して設定する。例えば、微細な血管の断面や壁構造、石灰部などが好適である。
【0109】
つぎに、解析部26は、一対のコントラスト判定部位のそれぞれの輝度の平均値(単位デシベル(dB))の差分をコントラストの指標として算出する。また、解析部26は、抽出した分解能評価部位(構造)を横切る輝度プロファイルを求め、輝度プロファイルにおける輝度値ピークを示す位置から、一定輝度値だけ輝度値が低下する位置までの距離(構造体の幅)を求め、これを分解能の指標とする(ステップ152)。本実施形態では、初期の画質に対する相対的な改善度合いが算出できればよいため、このような方法で算出した構造体の幅を、分解能(シャープネス)として定義する。
【0110】
解析部26は、初期画像に対する撮像パラメータ変化後の画像のコントラストまたは分解能の比を画質改善寄与率して算出する(ステップ153)。
【0111】
次に、解析部26によるフレームレートの算出方法について説明する。
【0112】
超音波のフレームレートは一般に、超音波が生体中を往復するのに要する伝搬時間と、受信ビームフォーマーや信号処理部などの処理プロセスにおける処理時間との2つが律速となる。
【0113】
超音波の伝搬時間は、式(1)のように、1フレームに必要なビーム送信回数(N)、最大撮像深度(d)、生体の音速(c)から求められる。
【0114】
τ=N×2d/c ・・・(1)
ただし、τ:1フレームに要する伝搬時間、N:1フレームのビーム送信回数、d:最大撮像深度、c:生体の音速である。
【0115】
上記処理時間は、パラメータ値ごとの比例定数を予め計測したり、演算量から計算したりする方法で、算出することが可能である。例えば一般に受信ビームフォーマー13の処理時間は、受信ライン数に比例し、その比例定数は、第1処理部1の演算性能(処理クロック数やパラレル処理数、データ転送速度)などによって決まる。
【0116】
よって、解析部26は、式(1)により、撮像パラメータ変化後の伝搬時間を算出するとともに、撮像パラメータ変化後の処理時間を撮像パラメータごとに予め求めておいた比例定数を用いて算出することにより、フレームレートが維持できるかどうか判定することができる。
【0117】
上述してきた第4の実施形態では、第1処理部1の撮像処理中に,第2処理部2がそれと並行して撮像パラメータの最適化解析を行い,最適パラメータを第1処理部1へフィードバックすることができる。よって、ユーザがボタン操作などによって画像調整をすることなく、撮像対象ごとに最適なパラメータによって改善した画像を表示し、かつ、必要なフレームレートを担保することが可能になる。
【0118】
上述の第1から第4の実施形態では、第1処理部1とメモリ部17とフレーム判定部3と第2処理部2とにより一つの超音波撮像装置を構成する例について説明したが、第1処理部1として既存の超音波撮像装置を用い、フレーム判定部3および第2処理部2から構成される超音波画像処理システムを既存の超音波撮像装置に接続する構成としてもよい。この場合、メモリ部17は、既存の超音波撮像装置に内蔵されているメモリを用いてもよいし、超音波画像処理システム内にメモリ部17を配置してよい。また、超音波画像処理システムと既存の超音波撮像装置とをネットワークを介して接続してもよい。
【符号の説明】
【0119】
1…第1処理部、2…第2処理部、3…フレーム判定部、4…超音波探触子、5…被検体、11…送信ビームフォーマー、12…受信部、13…受信ビームフォーマー、14…信号処理部、15…バックエンド部、16…制御部、17…メモリ部、18…送受切替部、19…ユーザーインタフェース、20…計算解析処理部、22…第2処理制御部、23…受信ビームフォーマー、24…信号処理部、25…バックエンド処理部、26…解析部。