(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20220127BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220127BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220127BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220127BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220127BHJP
B60L 53/00 20190101ALI20220127BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20220127BHJP
B60L 58/22 20190101ALI20220127BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H02J7/00 P
H01M10/48 P
H01M10/44 P
B60L50/60
B60L53/00
B60L58/13
B60L58/22
(21)【出願番号】P 2018046593
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 春樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明
【審査官】原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/057724(WO,A1)
【文献】特開2014-187735(JP,A)
【文献】特開2017-110969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機により駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプが送出する作動油により駆動される作業装置と、
互いに直列接続された複数のセルにより構成され、前記電動機に電力を供給する第1バッテリと、
前記複数のセルのそれぞれのセル電圧を検出するセル電圧検出器と、
前記複数のセルのセル電圧のばらつきを低減するバランシング制御を行うバランシング制御部と、前記バランシング制御部にバランシング指令を与えるバッテリ制御部と、を有し、第2バッテリに接続されるバッテリコントローラと、
前記電動機を駆動させる駆動位置と前記電動機を停止させる停止位置とを有するキースイッチと、を備えた建設機械において、
前記バッテリ制御部は、
前記キースイッチが駆動位置から停止位置に切り替わったときにバランシング制御が完了するまでに必要な残り時間を演算する第1時間演算部と、
前記第2バッテリの電圧状態に基づいてバランシング制御が可能な時間を演算する第2時間演算部と、
前記第1バッテリの充電率に基づいてバランシング制御が可能な時間を演算する第3時間演算部と、を備え、
前記第1時間演算部が算出した時間と、前記第2時間演算部が算出した時間と、前記第3時間演算部が算出した時間とのうち、最小時間だけ前記バランシング制御部にバランシング制御を実行させ、
前記キースイッチが駆動位置から停止位置に切り替わった後に、前記第2バッテリの電圧が予め決められた所定電圧値以上となり、かつ前記第1バッテリの充電率が予め決められた所定充電率値以上となる時間範囲で、前記バランシング制御部にバランシング制御を実行させることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記バッテリ制御部は、前記キースイッチが駆動位置から停止位置に切り替わった後の経過時間を前記最小時間から減算し、バランシング制御の残り時間をモニタに表示させることを特徴とする請求項
1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記第2バッテリは、互いに並列接続された第1リレーおよび第2リレーを介して、前記バッテリコントローラに接続され、
前記第1リレーは、前記キースイッチが駆動位置となったときに接続状態となり、前記キースイッチが停止位置となったときに遮断状態となり、
前記第2リレーは、前記バッテリ制御部がバランシング指令を出力するときに接続状態になり、前記バランシング指令の出力が開始されてから前記最小時間が経過したときに遮断状態になることを特徴とする請求項
1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等のような建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の駆動源として電動モータを備えた建設機械が知られている。このような建設機械では、電動モータにバッテリユニットから電力を供給している。バッテリユニットは、電力の大容量化を図るために、多数のセルを直列に接続している。バッテリユニットは、電動モータを駆動するときに、充電または放電を行う。このとき、バッテリユニットの性能劣化を防止するために、各セルは、上限電圧と下限電圧の範囲内で使用する必要がある。
【0003】
ここで、バッテリユニット内のセルは、例えば内部抵抗の影響によって少しずつ自然放電している。その放電量は、セル毎にばらつきが生じる。また、時間経過が長くなるに従って、セル毎の放電量のばらつきは大きくなる。セル間の充電率に大きなばらつきがある状態でバッテリユニットの充電または放電を行うと、充電率のばらつきが大きいセルのみが適正範囲外の状態になることがある。即ち、複数のセルのうち最大セル電圧となったものだけが、上限電圧に到達することがある。同様に、複数のセルのうち最小セル電圧となったものだけが、下限電圧に到達することがある。この結果、バッテリユニットの充電および放電が制限されて、バッテリユニットの性能に悪影響を及ぼす虞れがある。
【0004】
セル間の充電率のばらつきを抑制するために、セル間の充電率を均等化するバランシング制御が知られている(特許文献1)。特許文献1には、複数のセルのセル情報に基づいて、セル間の充電率を均等化するように、充電率の高いセルのみを選択して放電させる構成が開示されている。このような放電は、キースイッチがオンとなり、車体が起動した後からセル間の充電率の均等化が完了するまで実施される。
【0005】
また、キースイッチがオフとなり、車体が停止した後でも、バランシング制御の要否を判定することができる構成も知られている(特許文献2,3)。特許文献2には、予め設定した周期時間毎に電源部へ信号を出してバランシング制御の制御部を立ち上げて、バランシング制御を定期的に実施する構成が開示されている。特許文献3には、バランシング制御の制御部は起動しておいて、バランシング制御の判定部については予め設定した周期時間毎に起動する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-89484号公報
【文献】特許第5980943号公報
【文献】特許第5831376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車体が稼働している間は、バッテリユニットは常にその状態が管理されている。これに加え、建設機械は、バッテリユニットとは別個の電源バッテリを備えている。この電源バッテリは、バランシング制御を実施するためのコントローラに電力を供給している。車体が稼働している間は、電源バッテリも、その状態が管理されている。このため、バランシング制御を実施していても、バッテリユニットおよび電源バッテリは、正常な状態が維持される。しかし、キースイッチがオフとなった後は、従来のバランシング制御では、電源バッテリの残容量低下や、バランシング制御によるバッテリユニットの充電率低下といったことについては考慮されていない。そのため、電源バッテリやバッテリユニットの適正範囲を超えてバランシング制御が実施され、次回の車体起動において影響が出る虞れがある。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、車体の起動に影響が出ないように、セル間の充電率を均等化することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、電動機により駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプが送出する作動油により駆動される作業装置と、互いに直列接続された複数のセルにより構成され、前記電動機に電力を供給する第1バッテリと、前記複数のセルのそれぞれのセル電圧を検出するセル電圧検出器と、前記複数のセルのセル電圧のばらつきを低減するバランシング制御を行うバランシング制御部と、前記バランシング制御部にバランシング指令を与えるバッテリ制御部と、を有し、第2バッテリに接続されるバッテリコントローラと、前記電動機を駆動させる駆動位置と前記電動機を停止させる停止位置とを有するキースイッチと、を備えた建設機械において、前記バッテリ制御部は、前記キースイッチが駆動位置から停止位置に切り替わったときにバランシング制御が完了するまでに必要な残り時間を演算する第1時間演算部と、前記第2バッテリの電圧状態に基づいてバランシング制御が可能な時間を演算する第2時間演算部と、前記第1バッテリの充電率に基づいてバランシング制御が可能な時間を演算する第3時間演算部と、を備え、前記第1時間演算部が算出した時間と、前記第2時間演算部が算出した時間と、前記第3時間演算部が算出した時間とのうち、最小時間だけ前記バランシング制御部にバランシング制御を実行させ、前記キースイッチが駆動位置から停止位置に切り替わった後に、前記第2バッテリの電圧が予め決められた所定電圧値以上となり、かつ前記第1バッテリの充電率が予め決められた所定充電率値以上となる時間範囲で、前記バランシング制御部にバランシング制御を実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車体の起動に影響が出ないように、セル間の充電率を均等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態によるハイブリッド式の油圧ショベルを示す正面図である。
【
図2】
図1中の油圧ショベルの駆動システムを示すブロック図である。
【
図3】
図2中のバッテリユニットの構成を示すブロック図である。
【
図4】バッテリ制御部によるバランシング制御処理を示す流れ図である。
【
図6】鉛バッテリの電圧と蓄電池の充電率とが十分に高い場合について、バランシング所要時間、第1のバランシング制限時間、第
2のバランシング制限時間等の時間変化を示すタイムチャートである。
【
図7】鉛バッテリの電圧が低い場合について、バランシング所要時間、第1のバランシング制限時間、第
2のバランシング制限時間等の時間変化を示すタイムチャートである。
【
図8】蓄電池の充電率が低い場合について、バランシング所要時間、第1のバランシング制限時間、第
2のバランシング制限時間等の時間変化を示すタイムチャートである。
【
図9】変形例による電動式の油圧ショベルの駆動システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態による建設機械としてハイブリッド式の油圧ショベルを例に挙げて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1および
図2は、実施の形態によるハイブリッド式の油圧ショベル1を示している。
図1に示すように、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に設けられ掘削作業等を行う多関節構造の作業装置5とを備えている。下部走行体2および上部旋回体4は、油圧ショベル1の車体を構成している。下部走行体2は、走行動作を行うための油圧モータ2Aを備えている。旋回装置3は、旋回動作を行うための油圧モータ3Aを備えている。なお、下部走行体2としてクローラ式を例示したが、ホイール式でもよい。
【0014】
作業装置5は、フロントアクチュエータ機構である。作業装置5は、例えばブーム5A、アーム5B、バケット5Cと、これらを駆動するブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fとによって構成されている。作業装置5は、上部旋回体4の旋回フレーム6に取付けられている。作業装置5は、油圧ポンプ8が送出する作動油により駆動される。なお、作業装置5は、バケット5Cを備えたものに限らず、例えばグラップル等を備えたものでもよい。
【0015】
上部旋回体4は、例えばディーゼルエンジンのような内燃機関であるエンジン7と、エンジン7によって駆動される油圧ポンプ8(メインポンプ)とを備えている。また、エンジン7には、アシスト発電モータ10が機械的に接続されている。このため、油圧ポンプ8は、アシスト発電モータ10によっても駆動される。油圧ポンプ8は、作動油を送出する。この作動油によって、下部走行体2と、上部旋回体4と、作業装置5とがそれぞれ独立して動作する。
【0016】
具体的には、下部走行体2は、走行用の油圧モータ2Aに油圧ポンプ8から作動油が供給されることによって、一対のクローラ2B(
図1は片側のみ図示)を走行駆動する。上部旋回体4は、旋回用の油圧モータ3Aに油圧ポンプ8から作動油が供給されることによって、旋回駆動する。また、シリンダ5D~5Fは、油圧ポンプ8から供給される作動油によって、伸長または縮小する。これにより、作業装置5は、俯仰の動作を行い、掘削、整地等の作業を行う。また、上部旋回体4は、キャブ9を備えている。オペレータは、キャブ9に搭乗して、油圧ショベル1を操作する。
【0017】
次に、油圧ショベル1の電動系の駆動システムについて、
図2を参照して説明する。
図2において、アシスト発電モータ10は、エンジン7に機械的に結合されている。アシスト発電モータ10およびエンジン7は、油圧発生機である油圧ポンプ8を駆動する。このため、アシスト発電モータ10は、油圧ポンプ8を駆動する電動機を構成している。油圧ポンプ8から送出される作動油は、オペレータによる操作に基づいて、コントロールバルブ11で分配される。これにより、ブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5F、走行用の油圧モータ2A、および旋回用の油圧モータ3Aは、油圧ポンプ8から供給される作動油によって駆動する。
【0018】
アシスト発電モータ10は、エンジン7を動力源に発電機として働きリチウムイオンバッテリユニット20(以下、バッテリユニット20という)への電力供給を行う発電と、バッテリユニット20からの電力を動力源にモータとして働きエンジン7および油圧ポンプ8の駆動をアシストする力行との2通りの役割を果たす。従って、アシスト発電モータ10がモータとして駆動するときは、アシスト発電モータ10は、バッテリユニット20の電力により駆動される。
【0019】
アシスト発電モータ10は、電力変換器となる第1のインバータ12を介して、正極側と負極側とで一対の直流母線13A,13B(DCケーブル)に接続されている。第1のインバータ12は、例えばトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のようなスイッチング素子を複数用いて構成されている。アシスト発電モータ10の発電時には、第1のインバータ12は、アシスト発電モータ10からの交流電力を直流電力に変換してバッテリユニット20に供給する。アシスト発電モータ10の力行時には、第1のインバータ12は、直流母線13A,13Bの直流電力を交流電力に変換してアシスト発電モータ10に供給する。
【0020】
旋回電動モータ14は、アシスト発電モータ10またはバッテリユニット20からの電力によって駆動される。旋回電動モータ14は、例えば三相誘導電動機によって構成され、油圧モータ3Aと共に上部旋回体4に設けられている。旋回電動モータ14は、油圧モータ3Aと協働して旋回装置3を駆動する。
【0021】
旋回電動モータ14は、第2のインバータ15を介して直流母線13A,13Bに接続されている。旋回電動モータ14は、バッテリユニット20やアシスト発電モータ10からの電力を受けて回転駆動する力行と、旋回制動時の余分なトルクで発電してバッテリユニット20を蓄電する回生との2通りの役割を果たす。第2のインバータ15は、第1のインバータ12と同様に、複数のスイッチング素子を用いて構成されている。
【0022】
キースイッチ16は、アシスト発電モータ10を駆動させる駆動位置(ON)とアシスト発電モータ10を停止させる停止位置(OFF)とを有している。キースイッチ16は、ONとなったときに、車体起動信号を車体コントローラ17とバッテリユニット20に通知する。
【0023】
車体コントローラ17は、第1のインバータ12と第2のインバータ15とにトルク指令を出力する。車体コントローラ17は、バッテリユニット20の状態をモニタ18に表示させる。アシスト発電モータ10は、第1のインバータ12を介してバッテリユニット20に接続されている。アシスト発電モータ10は、車体コントローラ17の出力するトルク指令に従って、油圧ポンプ8のアシスト、およびバッテリユニット20への充電を行う。旋回電動モータ14は、第2のインバータ15を介してバッテリユニット20に接続されている。旋回電動モータ14は、車体コントローラ17の出力するトルク指令に従って、上部旋回体4の旋回動作時に油圧モータ3Aのアシスト、および回生制動によるバッテリユニット20への充電を行う。
【0024】
次に、バッテリユニット20の具体的な構成について、
図3を参照して説明する。ここでは、バッテリユニット20が複数のセル22A~22Nを備えた場合を例に挙げて説明する。但し、セルの個数は、2個でもよく、3個以上の任意の個数でもよい。
【0025】
図3にバッテリユニット20の構成を示す。バッテリユニット20は、蓄電池21、セルバランシング回路23A~23N、セル電圧検出器24A~24N、総電圧検出器25、電流検出器26、バッテリコントローラ27を備えている。
【0026】
蓄電池21は、電動機であるアシスト発電モータ10に電力を供給する第1バッテリを構成している。蓄電池21は、旋回電動モータ14にも電力を供給する。蓄電池21は、互いに直列接続された複数のセル22A~22Nにより構成されている。蓄電池21は、例えばリチウムイオン二次電池であり、複数のセル22A~22Nによって構成された組電池である。複数のセル22A~22Nは、電荷を保持する。蓄電池21の正極側の端子21Aは、リレー(図示せず)を介して、正極側の直流母線13Aに接続されている。蓄電池21の負極側の端子21Bは、リレー(図示せず)を介して、負極側の直流母線13Bに接続されている。
【0027】
セル22Aには、セルバランシング回路23Aが並列接続されている。セルバランシング回路23Aは、バランシング制御部28の信号に応じて、セル22Aの充電率を調整する。セルバランシング回路23Aは、互いに直列接続されたスイッチおよび放電抵抗(いずれも図示せず)を備えている。セルバランシング回路23Aのスイッチは、通常はOFF(開成)となっている。セルバランシング回路23Aは、バランシング制御部28の指令に基づいて、スイッチSWをON(閉成)させる。これにより、セルバランシング回路23Aは、放電抵抗に電流を流し、セル22Aを放電させる。また、セル22Aには、セル電圧検出器24Aが接続されている。セル電圧検出器24Aは、セル22Aの両端に作用するセル電圧VcAを測定する。
【0028】
セル22B~22Nについても、セル22Aと同様に、セルバランシング回路23B~23Nおよびセル電圧検出器24B~24Nが接続されている。セル電圧検出器24A~24Nは、複数のセル22A~22Nのそれぞれのセル電圧VcA~VcNを検出する。
【0029】
総電圧検出器25は、蓄電池21の両端に接続されている。総電圧検出器25は、直列接続されたセル22A~22Nの総電圧値Vtを検出する。このとき、総電圧値Vtは、全てのセル電圧VcA~VcNの加算値になっている。総電圧検出器25は、検出した総電圧値Vtをバッテリコントローラ27の充電率演算部30に出力する。
【0030】
電流検出器26は、セル22A~22Nに流れる電流値Iを検出する。電流検出器26は、検出した電流値Iをバッテリコントローラ27の充電率演算部30に出力する。
【0031】
バッテリコントローラ27は、セル電圧VcA~VcNを制御する。バッテリコントローラ27は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。バッテリコントローラ27は、バランシング制御部28、バッテリ制御部29、充電率演算部30を備えている。バッテリコントローラ27の記憶部(図示せず)には、
図4および
図5に示すバランシング制御処理のプログラムが格納されている。
【0032】
バランシング制御部28は、セル電圧検出器24A~24Nで検出した各セル電圧VcA~VcNに基づき、セル電圧の高いセルを放電し、セル電圧が均等化するようにセルバランシング回路23A~23Nを制御する。具体的には、バランシング制御部28からバランシング指令が出力されている間は、バランシング制御部28は、セル電圧VcA~VcNのうち最大セル電圧と、セル電圧VcA~VcNのうち最小セル電圧との差電圧が、予め決められたしきい値電圧よりも増加すると、バランシング制御を実行する。これにより、差電圧は、しきい値電圧よりも小さい値に抑制される。
【0033】
バランシング制御部28は、バッテリ制御部29からのバランシング指令を受けてセル電圧検出器24A~24Nのセル電圧VcA~VcNに基づいて、バランシング所要時間Tb0を算出する。バランシング制御部28は、セルバランシング回路23A~23Nを制御し、バランシング所要時間Tb0に応じてバランシング制御を実施する。
【0034】
バッテリ制御部29は、バランシング制御部28にバランシング指令を出力して、バランシング制御部28によるバランシング制御の開始と停止を制御する。バッテリ制御部29の入力側には、バランシング制御部28、キースイッチ16、充電率演算部30、鉛バッテリ監視部34が接続されている。バッテリ制御部29の出力側には、バランシング制御部28、第2リレー33、車体コントローラ17が接続されている。バッテリ制御部29は、
図4および
図5に示すバランシング制御処理のプログラムを実行する。バッテリ制御部29は、キースイッチ16がOFFからONに切り替わると、バランシング指令を出力する。これにより、バッテリ制御部29は、バランシング制御を開始させる。バッテリ制御部29は、キースイッチ16がONからOFFに切り替わっても、バランシング指令の出力を継続して、バランシング制御を継続させる。その後、バッテリ制御部29は、バランシング制御部28によって算出されたバランシング所要時間Tb0と、充電率演算部30によって算出された蓄電池21の充電率と、鉛バッテリ監視部34によって検出された鉛バッテリ31の電圧状態とに基づいて、バランシング制御を停止させる。
【0035】
バッテリ制御部29は、キースイッチ16がON(駆動位置)からOFF(停止位置)に切り替わった後に、鉛バッテリ31の電圧が予め決められた所定電圧値V1以上となり、かつ蓄電池21の充電率が予め決められた所定充電率値SOC1以上となる時間範囲で、バランシング制御部28にバランシング制御を実行させる。
【0036】
バッテリ制御部29は、キースイッチ16がONからOFFに切り替わったときにバランシング制御が完了するまでに必要な残り時間(第1のバランシング残時間Tb3)を演算する第1時間演算部29Aと、鉛バッテリ31の電圧状態に基づいてバランシング制御が可能な時間(第1のバランシング可能時間Tb4)を演算する第2時間演算部29Bと、蓄電池21の充電率に基づいてバランシング制御が可能な時間(第2のバランシング可能時間Tb6)を演算する第3時間演算部29Cと、を備えている。バッテリ制御部29は、第1時間演算部29Aが算出した時間と、第2時間演算部29Bが算出した時間と、第3時間演算部29Cが算出した時間とのうち、最小時間(第2のバランシング制限時間Tb7)だけバランシング制御部28にバランシング制御を実行させる。
【0037】
バッテリ制御部29は、キースイッチ16がONからOFFに切り替わった後の経過時間(継続時間Tb8)を最小時間(第2のバランシング制限時間Tb7)から減算し、第2のバランシング残時間Tb9を算出する。バッテリ制御部29は、第2のバランシング残時間Tb9を車体コントローラ17に出力する。車体コントローラ17は、第2のバランシング残時間Tb9をモニタ18に出力する。これにより、バッテリ制御部29は、バランシング制御の残り時間である第2のバランシング残時間Tb9をモニタ18に表示させる。
【0038】
図3に示すように、充電率演算部30の入力側は、総電圧検出器25および電流検出器26に接続されている。充電率演算部30の出力側は、バッテリ制御部29に接続されている。充電率演算部30は、総電圧検出器25が検出した総電圧値Vtと電流検出器26が検出した電流値Iとに基づいて、蓄電池21の充電率を算出する。充電率演算部30は、蓄電池21の充電率をバッテリ制御部29に出力する。
【0039】
鉛バッテリ31は、バッテリコントローラ27に駆動用の電力を供給する第2バッテリを構成している。鉛バッテリ31は、蓄電池21よりも低い電圧を供給する。鉛バッテリ31は、互いに並列接続された第1リレー32および第2リレー33を介して、バッテリコントローラ27に接続されている。
【0040】
第1リレー32は、キースイッチ16からの信号に基づいて、ON(接続状態)とOFF(遮断状態)が切り替わる。第1リレー32は、キースイッチ16がON(駆動位置)となったときにONとなる。第1リレー32は、キースイッチ16がOFF(停止位置)となったときにOFFとなる。
【0041】
第2リレー33は、バッテリ制御部29からの信号(バランシング指令)によりON(接続状態)とOFF(遮断状態)が切り替わる。第2リレー33は、バッテリ制御部29がバランシング指令を出力するときに、ONとなる。第2リレー33は、バッテリ制御部29がバランシング指令の出力を停止したときに、OFFとなる。このとき、第2リレー33は、バランシング指令の出力が開始されてから最小時間(第2のバランシング制限時間Tb7)が経過すると、ONからOFFに切り替わる。
【0042】
鉛バッテリ監視部34の入力側は、鉛バッテリ31の両端に接続されている。鉛バッテリ監視部34の出力側は、バッテリ制御部29に接続されている。鉛バッテリ監視部34は、鉛バッテリ31の電圧を検出する。鉛バッテリ監視部34は、検出した鉛バッテリ31の電圧値を、バッテリ制御部29に出力する。
【0043】
車体コントローラ17の入力側は、バッテリ制御部29に接続されている。車体コントローラ17の出力側は、モニタ18に接続されている。車体コントローラ17には、バッテリ制御部29からバランシング制御の時間情報が入力される。具体的には、車体コントローラ17には、キースイッチ16がOFFに切り替わった後のバランシング制御の残り時間として、第2のバランシング残時間Tb9が入力される。車体コントローラ17は、第2のバランシング残時間Tb9をモニタ18に出力する。これにより、モニタ18は、第2のバランシング残時間Tb9を表示する。
【0044】
次に、バッテリ制御部29によるバランシング制御処理について、
図4および
図5を用いて説明する。
【0045】
キースイッチ16をONすると、第1リレー32がONし、バッテリコントローラ27が起動する。バッテリコントローラ27が起動すると、バッテリ制御部29は、
図4および
図5に示すバランシング制御処理を実行する。
【0046】
まず、ステップS1では、第2リレー33をONする。続くステップS2では、バランシング指令をONにして、バランシング制御部28へ出力する。これにより、バランシング制御部28は、バランシング所要時間Tb0を算出し、バランシング制御を開始する。この時点では、バランシング所要時間Tb0は、バランシング制御によって各セル22A~22Nの充電率のばらつきが許容範囲内まで低減されるのに必要な時間の最大値Tb1である。続くステップS3では、バッテリ制御部29は、バランシング制御部28からバランシング所要時間Tb0の最大値Tb1を取得する。
【0047】
ステップS4では、キースイッチ16をONした後のバランシング継続時間Tb2を計測する。続くステップS5では、キースイッチ16の信号を判断して、キースイッチ16がONの間はステップS4に戻る。
【0048】
キースイッチ16がONからOFFに切り替わると、第1リレー32がONからOFFに切り替わる。このとき、ステップS5からステップS6に移行する。ステップS6では、バランシング所要時間Tb0の最大値Tb1からバランシング継続時間Tb2を差し引いて、第1のバランシング残時間Tb3(Tb3=Tb1-Tb2)を算出する。続くステップS7では、バッテリ制御部29は、第1のバランシング残時間Tb3を判断する。第1のバランシング残時間Tb3が0以下の場合(Tb3≦0)は、ステップS7で「YES」と判定し、ステップS16に移行する。
【0049】
一方、第1のバランシング残時間Tb3が0より大きい場合(Tb3>0)は、ステップS7で「NO」と判定し、ステップS8に移行する。ステップS8では、鉛バッテリ監視部34から鉛バッテリ31の電圧状態を取得し、鉛バッテリ31の電圧状態に基づいて第1のバランシング可能時間Tb4を算出する。このとき、第1のバランシング可能時間Tb4は、キースイッチ16がOFFの状態でバランシング制御を継続しても鉛バッテリ31の電圧が所定電圧値V1以上に保つことができる時間である。なお、所定電圧値V1は、例えば次回キースイッチ16をONに切り替えたときに、鉛バッテリ31を用いてエンジン7の起動が可能な電圧である。即ち、所定電圧値V1は、例えば鉛バッテリ31を用いてエンジン7のスタータモータ(図示せず)の駆動が可能な電圧である。
【0050】
続くステップS9では、第1のバランシング可能時間Tb4と第1のバランシング残時間Tb3とを比較し、短い方を第1のバランシング制限時間Tb5とする。このため、第1のバランシング可能時間Tb4が第1のバランシング残時間Tb3よりも短い(Tb4<Tb3)ときには、第1のバランシング可能時間Tb4が第1のバランシング制限時間Tb5となる(Tb5=Tb4)。第1のバランシング残時間Tb3が第1のバランシング可能時間Tb4よりも短い(Tb3<Tb4)ときには、第1のバランシング残時間Tb3が第1のバランシング制限時間Tb5となる(Tb5=Tb3)。
【0051】
ステップS10では、充電率演算部30から蓄電池21の充電率を取得し、蓄電池21の充電率に基づいて第2のバランシング可能時間Tb6を算出する。このとき、第2のバランシング可能時間Tb6は、キースイッチ16がOFFの状態でバランシング制御を継続しても蓄電池21の充電率が所定充電率値SOC1以上を保つことができる時間である。なお、充電率が所定充電率値SOC1は、例えば充電率の適正使用範囲(例えば70%~30%)の下限値(例えば30%程度)である。
【0052】
続くステップS11では、第2のバランシング可能時間Tb6と第1のバランシング制限時間Tb5とを比較し、短い方を第2のバランシング制限時間Tb7とする。このため、第2のバランシング可能時間Tb6が第1のバランシング制限時間Tb5よりも短い(Tb6<Tb5)ときには、第2のバランシング可能時間Tb6が第2のバランシング制限時間Tb7となる(Tb7=Tb6)。第1のバランシング制限時間Tb5が第2のバランシング可能時間Tb6よりも短い(Tb5<Tb6)ときには、第1のバランシング制限時間Tb5が第2のバランシング制限時間Tb7となる(Tb7=Tb5)。
【0053】
ステップS12では、キースイッチ16をONからOFFに切り替えた後のバランシング継続時間Tb8を計測する。このとき、バランシング継続時間Tb8は、キースイッチ16をONからOFFに切り替えた後に、バランシング制御を継続した時間である。続くステップS13では、第2のバランシング制限時間Tb7からバランシング継続時間Tb8を差し引いて、第2のバランシング残時間Tb9(Tb9=Tb7-Tb8)を算出する。ステップS14では、バッテリ制御部29は、第2のバランシング残時間Tb9を、車体コントローラ17へ出力する。これにより、車体コントローラ17は、第2のバランシング残時間Tb9をモニタ18に表示させる。
【0054】
ステップS15では、バッテリ制御部29は、第2のバランシング残時間Tb9を判断する。第2のバランシング残時間Tb9が0より大きい場合(Tb9>0)は、ステップS15で「NO」と判定し、ステップS12へ戻る。一方、第2のバランシング残時間Tb9が0以下の場合(Tb9≦0)は、ステップS15で「YES」と判定し、ステップS16に移行する。
【0055】
ステップS16では、ステップS2から出力しているバランシング指令をOFFにする。ステップS17では、第2リレー33をOFFし、バッテリコントローラ27を停止させる。
【0056】
次に、
図6ないし
図8を用いて、本実施の形態によるバランシング制御の具体的な動作を説明する。
図6ないし
図8は、キースイッチ16、第1リレー32、第2リレー33、バランシング指令、鉛バッテリ31の電圧、蓄電池21の充電率、バランシング所要時間、第1のバランシング制限時間、第2のバランシング制限時間の時間変化を示している。
【0057】
まず、
図6を参照して、鉛バッテリ31の電圧と蓄電池21の充電率とが十分に高い状態で、キースイッチがOFFに切り替わった場合について、バランシング制御の動作の一例を説明する。
【0058】
時刻t11では、キースイッチ16がOFFからONに切り替わり、第1リレー32がONになる。これにより、鉛バッテリ31からバッテリコントローラ27に電力が供給され、バッテリコントローラ27が起動する。
【0059】
時刻t12では、バッテリ制御部29は、第2リレー33へ信号を出力して、第2リレー33をONにする。これに加えて、バッテリ制御部29は、バランシング制御部28にON状態のバランシング指令を出力する。このとき、バランシング制御部28は、バランシング所要時間Tb0を算出してバッテリ制御部29に最大値Tb1となったバランシング所要時間Tb0を送信する。この後、セル22A~22Nのバランシング制御が実施され、キースイッチ16がONに保持される間のバランシング継続時間Tb2を計測する。
【0060】
時刻t13では、キースイッチ16がONからOFFに切り替わったことにより、第1リレー32がOFFになる。一方、第2リレー33がONであるため、バッテリコントローラ27は起動を継続する。このとき、バッテリ制御部29は、バランシング所要時間Tb0の最大値Tb1からバランシング継続時間Tb2を減算して第1のバランシング残時間Tb3を算出する。バッテリ制御部29は、第1のバランシング残時間Tb3が0以下か否かを判定する。時刻t13では、第1のバランシング残時間Tb3は0よりも大きい。
【0061】
また、バッテリ制御部29は、鉛バッテリ31の電圧状態から第1のバランシング可能時間Tb4を算出する。このとき、鉛バッテリ31の電圧が所定電圧値V1に比べて十分に高いため、第1のバランシング可能時間Tb4は長くなる。時刻t13で、第1のバランシング可能時間Tb4と第1のバランシング残時間Tb3とを比較すると、第1のバランシング残時間Tb3の方が短い。このため、第1のバランシング制限時間Tb5は、第1のバランシング残時間Tb3になる。
【0062】
同様に、バッテリ制御部29は、蓄電池21の充電率から第2のバランシング可能時間Tb6を算出する。このとき、蓄電池21の充電率が所定充電率値SOC1に比べて十分に高いため、第2のバランシング可能時間Tb6は長くなる。時刻t13で、第2のバランシング可能時間Tb6と第1のバランシング制限時間Tb5とを比較すると、第1のバランシング制限時間Tb5の方が短い。このため、第2のバランシング制限時間Tb7は、第1のバランシング制限時間Tb5になる。これにより、第2のバランシング制限時間Tb7は、第1のバランシング残時間Tb3と同じ値になる。
【0063】
この後、バッテリ制御部29は、第2のバランシング制限時間Tb7からキースイッチ16がOFFになった後のバランシング継続時間Tb8を減算して第2のバランシング残時間Tb9を算出する。バッテリ制御部29は、第2のバランシング残時間Tb9が0になるまでの間、セル22A~22Nのバランシング制御を実施する。
【0064】
時刻t14では、第2のバランシング残時間Tb9が0になる。このとき、バッテリ制御部29は、バランシング指令をOFFにする。これに加えて、バッテリ制御部29は、第2リレー33をOFFにする。これにより、バッテリコントローラ27は停止する。
【0065】
以上により、バランシング所要時間Tb0が0になる前にキースイッチ16がOFFになった場合でも、セル22A~22Nのバランシング制御が完了するまで実施される。これにより、蓄電池21のセル22A~22N間の充電率を均等化することが可能となる。
【0066】
次に、
図7を参照して、鉛バッテリ31の電圧が低い状態で、キースイッチがOFFに切り替わった場合について、バランシング制御の動作の一例を説明する。
【0067】
図7中の時刻t21~t23における基本的な動作は、
図6に示す時刻t11~t13における動作と同様である。但し、鉛バッテリ31の電圧が低い状態であるため、鉛バッテリ31の電圧に基づく第1のバランシング可能時間Tb4は短くなっている。このため、時刻t23で第1のバランシング残時間Tb3と第1のバランシング可能時間Tb4とを比較すると、第1のバランシング可能時間Tb4の方が短い。従って、第1のバランシング制限時間Tb5は、第1のバランシング残時間Tb3ではなく第1のバランシング可能時間Tb4になる。
【0068】
また、バッテリ制御部29は、蓄電池21の充電率に基づいて第2のバランシング可能時間Tb6を算出する。このとき、蓄電池21の充電率は十分に高い状態となっているから、第2のバランシング可能時間Tb6は、第1のバランシング可能時間Tb4よりも長い。従って、第2のバランシング可能時間Tb6と第1のバランシング制限時間Tb5とを比較すると、第1のバランシング制限時間Tb5の方が短い。このため、第2のバランシング制限時間Tb7は、第1のバランシング制限時間Tb5となる。これにより、第2のバランシング制限時間Tb7は、第1のバランシング可能時間Tb4と同じ値になる。
【0069】
その結果、時刻t24では、第2のバランシング残時間Tb9が0になると共に、第1のバランシング可能時間Tb4は0になる。即ち、キースイッチ16がOFFの状態でバランシング制御を継続しても鉛バッテリ31の電圧が所定電圧値V1以上に保つことができる、上限の時間分だけバランシング制御が実行される。
【0070】
以上のより、鉛バッテリ31の電圧低下が次回の車体起動時に影響が出ない範囲で、キースイッチ16がOFFになった後でも、バランシング制御を実施することが可能になる。
【0071】
次に、
図8を参照して、蓄電池21の充電率が低い状態で、キースイッチがOFFに切り替わった場合について、バランシング制御の動作の一例を説明する。
【0072】
図8中の時刻t31~t33における基本的な動作は、
図6に示す時刻t11~t13における動作と同様である。但し、蓄電池21の充電率が低い状態であるため、蓄電池21の充電率に基づく第2のバランシング可能時間Tb6は短くなっている。このため、時刻t33で第1のバランシング制限時間Tb5と第2のバランシング可能時間Tb6とを比較すると、第2のバランシング可能時間Tb6の方が短い。従って、第2のバランシング制限時間Tb7は、第2のバランシング可能時間Tb6になる。
【0073】
その結果、時刻t34では、第2のバランシング残時間Tb9が0になると共に、第2のバランシング可能時間Tb6は0になる。即ち、キースイッチ16がOFFの状態でバランシング制御を継続しても、蓄電池21の充電率は所定充電率値SOC1以上に保つことができる、上限の時間分だけバランシング制御が実行される。
【0074】
以上により、蓄電池21の充電率の低下が次回の車体起動時に影響が出ない範囲で、キースイッチ16がOFFになった後でも、バランシング制御を実施することが可能になる。
【0075】
かくして、実施の形態によれば、バッテリ制御部29は、キースイッチ16がON(駆動位置)からOFF(停止位置)に切り替わった後に、鉛バッテリ31の電圧が予め決められた所定電圧値V1以上となり、かつ蓄電池21の充電率が予め決められた所定充電率値SOC1以上となる時間範囲で、バランシング制御部28にバランシング制御を実行させる。
【0076】
このとき、バッテリ制御部29は、キースイッチ16がONからOFFに切り替わったときにバランシング制御が完了するまでに必要な残り時間(第1のバランシング残時間Tb3)を演算する第1時間演算部29Aと、鉛バッテリ31の電圧状態に基づいてバランシング制御が可能な時間(第1のバランシング可能時間Tb4)を演算する第2時間演算部29Bと、蓄電池21の充電率に基づいてバランシング制御が可能な時間(第2のバランシング可能時間Tb6)を演算する第3時間演算部29Cと、を備えている。そして、バッテリ制御部29は、第1時間演算部29Aが算出した第1のバランシング残時間Tb3と、第2時間演算部29Bが算出した第1のバランシング可能時間Tb4と、第3時間演算部29Cが算出した第2のバランシング可能時間Tb6とのうち、最小時間(第2のバランシング制限時間Tb7)だけバランシング制御部28にバランシング制御を実行させる。
【0077】
このため、蓄電池21のセル22A~22Nの電圧にばらつきが残存した状態でキースイッチ16がOFFに切り替わっても、バランシング制御を継続することができる。このとき、キースイッチ16がOFFの状態でバランシング制御を実行しても、鉛バッテリ31の電圧は、次回の車体の起動に必要な所定電圧値V1以上に保持される。これに加えて、キースイッチ16がOFFの状態でバランシング制御を実行しても、蓄電池21の充電率は、次回の車体の起動に必要な所定充電率値SOC1以上に保持される。この結果、車体の起動に影響が出ないように、蓄電池21および鉛バッテリ31の状態を考慮して、セル22A~22N間の充電率を均等化することができる。
【0078】
また、バッテリ制御部29は、キースイッチ16がON(駆動位置)からOFF(停止位置)に切り替わった後の経過時間(バランシング継続時間Tb8)を、バランシング制御が実行される最小時間(第2のバランシング制限時間Tb7)から減算し、バランシング制御の残り時間(第2のバランシング残時間Tb9)をモニタ18に表示させる。このため、オペレータは、モニタ18を目視することによって、キースイッチ16がOFFになった後にバランシング制御が実行されるときの残り時間を把握することができる。
【0079】
また、鉛バッテリ31は、互いに並列接続された第1リレー32および第2リレー33を介して、バッテリコントローラ27に接続されている。このとき、第1リレー32は、キースイッチ16がON(駆動位置)となったときにON(接続状態)となり、キースイッチ16がOFF(停止位置)となったときにOFF(遮断状態)となる。また、第2リレー33は、バッテリ制御部29がバランシング指令を出力するときにON(接続状態)になり、バランシング指令の出力が開始されてからバランシング制御が実行される最小時間(第2のバランシング制限時間Tb7)が経過したときにOFF(遮断状態)になる。このため、キースイッチ16がOFFになった後でも、バッテリ制御部29がバランシング指令を出力している間は、第2リレー33を通じて鉛バッテリ31からの電力がバッテリコントローラ27に供給される。これにより、バッテリ制御部29は、キースイッチ16がOFFになった後でも、バランシング制御部28にバランシング制御を継続させることができる。
【0080】
なお、前記実施の形態では、バッテリユニット20は、セル22A~22Nを直列接続した単一の直列回路を備えた場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、例えば、蓄電装置は、複数のセルが直列接続された直列回路を複数備え、これらの直列回路が並列接続された構成でもよい。
【0081】
前記実施の形態では、エンジン7、アシスト発電モータ10およびバッテリユニット20を備えたハイブリッド式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、
図9に示す変形例のように、電動式の油圧ショベル41に適用してもよい。この場合、油圧ショベル41は、エンジンが省かれると共に、バッテリユニット20を外部から充電するための充電器42を備えている。充電器42は、直流母線13A,13Bに接続されている。充電器42は、例えば商用電源のような外部電源に接続するための外部電源接続端子43を有している。充電器42は、外部電源接続端子43から供給される電力をバッテリユニット20に供給し、バッテリユニット20の蓄電池21を充電する。
【0082】
このとき、バッテリコントローラ27のバッテリ制御部29は、鉛バッテリ31の電圧に基づいて第1のバランシング可能時間Tb4を算出する。第1のバランシング可能時間Tb4は、キースイッチ16がOFFの状態でバランシング制御を継続しても鉛バッテリ31の電圧が所定電圧値V1以上に保つことができる時間である。この場合、所定電圧値V1は、例えば次回キースイッチ16をONに切り替えたときに、鉛バッテリ31を用いてバッテリコントローラ27の起動が可能な電圧である。
【0083】
前記実施の形態では、第1バッテリとしてリチウムイオン二次電池からなる蓄電池21を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、第1バッテリは、他の材料からなる二次電池でもよく、キャパシタでもよい。また、前記実施の形態では、第2バッテリとして鉛バッテリを例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、第2バッテリは、リチウムイオン二次電池でもよく、他の材料からなる二次電池でもよい。
【0084】
前記実施の形態では、アシスト発電モータ10および旋回電動モータ14はバッテリユニット20に接続されるものとした。本発明はこれに限らず、旋回電動モータ14を省いて、アシスト発電モータ10のみがバッテリユニット20に接続されてもよい。
【0085】
前記実施の形態では、建設機械として油圧ショベル1を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、例えばホイールローダのような各種の建設機械に適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1,41 油圧ショベル(建設機械)
5 作業装置
8 油圧ポンプ
10 アシスト発電モータ(電動機)
14 旋回電動モータ
16 キースイッチ
17 車体コントローラ
18 モニタ
20 バッテリユニット
21 蓄電池(第1バッテリ)
22A~22N セル
24A~24N セル電圧検出器
25 総電圧検出器
26 電流検出器
27 バッテリコントローラ
28 バランシング制御部
29 バッテリ制御部
30 充電率演算部
31 鉛バッテリ(第2バッテリ)
32 第1リレー
33 第2リレー
34 鉛バッテリ監視部