(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】光コネクタ清掃工具
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2018054506
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中根 純一
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/119437(WO,A1)
【文献】特開2010-266675(JP,A)
【文献】特開2012-063506(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0329091(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに対して移動可能に設けられた可動部とを有
し、光コネクタを清掃する光コネクタ清掃工具であって、
前記可動部は、
前記光コネクタに清掃体を押し付けるヘッド部と、前記ヘッド部から送り出された前記清掃体を巻き取る巻取リールとを備えるヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを、前記可動部が前記ハウジングに対して移動する方向に移動可能に収容する可動ハウジングと、
前記ヘッドユニットと前記可動ハウジングとの間に設けられ、前記光コネクタに対して前記ヘッド部を所定の圧力で押圧するための押圧用スプリングと
を備え
、
前記ヘッド部は、
前記光コネクタのフェルールに前記清掃体を押し付けるヘッドと、
前記ヘッドにより前記フェルールに前記清掃体を押し付けた状態で、前記ヘッドの中心軸回りに前記ヘッドを回転させる回転体と
を備え、
前記回転体は、前記押圧用スプリングにより前記ヘッドと共に前記フェルール側に押圧される
ことを特徴とする光コネクタ清掃工具。
【請求項2】
請求項
1に記載の光コネクタ清掃工具であって、
前記押圧用スプリングは、前記光コネクタに前記清掃体を押し付ける側にある端部が前記ヘッドユニットに保持され、他方の端部が前記可動ハウジングに保持されている
ことを特徴とする光コネクタ清掃工具。
【請求項3】
請求項
1に記載の光コネクタ清掃工具であって、
前記押圧用スプリングは、前記光コネクタに前記清掃体を押し付ける側にある端部が前記可動ハウジングに保持され、他方の端部が前記ヘッドユニットに保持されている
ことを特徴とする光コネクタ清掃工具。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載の光コネクタ清掃工具であって、
前記可動ハウジングと前記ハウジングとの間に設けられ、前記可動部と前記ハウジングとの位置関係を復元させる復元用スプリングをさらに有する
ことを特徴とする光コネクタ清掃工具。
【請求項5】
請求項
4に記載の光コネクタ清掃工具であって、
前記押圧用スプリングのばね定数は、前記復元用スプリングのばね定数よりも小さい
ことを特徴とする光コネクタ清掃工具。
【請求項6】
請求項
4又は
5に記載の光コネクタ清掃工具であって、
前記押圧用スプリングが伸縮の限界となる前に、前記復元用スプリングが伸縮し始める
ことを特徴とする光コネクタ清掃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ清掃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
光コネクタの接続は、フェルールの接続端面において光ファイバの端部同士が突き合わされることで実現される。このとき、接続端面に汚れが付着していると、光コネクタの接続の際に接続端面が破損する原因や、伝送損失が増大する原因となることがある。このため、光コネクタ清掃工具を使用して接続端面を清掃することが行われている。
【0003】
このような光コネクタ清掃工具として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、ハウジング(支持体)と、ハウジングに対して移動可能に設けられた可動部分(支持部)とを有する光コネクタ清掃工具が開示されている。また、可動部分には、清掃体の供給リール及び巻取リールが組み込まれ、さらに、清掃体を接続端面に押し付けるヘッド部材が設けられている。この光コネクタ清掃工具によれば、ヘッド部材で清掃体を接続端面に押し付けた状態のまま可動部分がハウジングに対して移動することによって、光コネクタ清掃工具内で清掃体が送られ、接続端面を清掃体で拭き取ることができる。つまり、特許文献1及び特許文献2に開示の光コネクタ清掃工具によれば、ハウジングと可動部分との間の相対移動を利用して巻取リールを回転させることによって、清掃体が巻取リールに巻き取られる。そして、巻取リールに巻き取られる量と同じ量の清掃体が供給リールから供給されると共に、供給された清掃体がヘッド部材上を移動して接続端面の清掃に使用されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4579330号公報
【文献】特許第4779049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示の光コネクタ清掃工具の可動部分において、ヘッド部材は、ヘッド部材の後部に配置されたスプリング(付勢手段)により巻取リールに対して前側に付勢されると共に、巻取リールに対して後退可能となっている。このため、ヘッド部材が、スプリングの付勢力に抗して後退すると、ヘッド部材から巻取リールまでの距離は、巻取リールに対するヘッド部材の移動量の分だけ近接する。この際、ヘッド部材と巻取リールとの間に掛け渡された清掃体が弛んでしまうことがある。そうすると、巻取リールが回転しても、弛んだ清掃体の部分が巻き取られることになる。この結果、ヘッド部材に送られる清掃体の量が減少してしまうことで、清掃体が接続端面に押し付けられた状態でヘッド部材上を移動する清掃体の量も減少し、接続端面を適切に拭き取ることができないことがあった。
【0006】
本発明は、光コネクタの清掃時に接続端面を適切に拭き取ることができる光コネクタ清掃工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態は、ハウジングと、前記ハウジングに対して移動可能に設けられた可動部とを有する光コネクタ清掃工具であって、前記可動部は、前記光コネクタに清掃体を押し付けるヘッド部と、前記ヘッド部から送り出された前記清掃体を巻き取る巻取リールとを備えるヘッドユニットと、前記ヘッドユニットを、前記可動部が前記ハウジングに対して移動する方向に移動可能に収容する可動ハウジングと、前記ヘッドユニットと前記可動ハウジングとの間に設けられ、前記光コネクタに対して前記ヘッド部を所定の圧力で押圧するための押圧用スプリングとを備えることを特徴とする光コネクタ清掃工具である。
【0008】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の幾つかの実施形態によれば、光コネクタの清掃時に接続端面を適切に拭き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、本実施形態の光コネクタ清掃工具10の全体斜視図である。
図1Bは、カバー20を外した状態の本実施形態の光コネクタ清掃工具10の斜視図である。
【
図2】
図2Aは、通常状態の光コネクタ清掃工具10の平面図である。
図2Bは、プッシュ状態の光コネクタ清掃工具10の平面図である。
図2Cは、清掃動作の説明図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の光コネクタ清掃工具10の分解斜視図である。
【
図4】
図4Aは、接続端面92に対してヘッド50が押し当てられた時の本実施形態の可動部30の平面図である。
図4Bは、所定の押圧状態の本実施形態の可動部30の平面図である。
図4Cは、プッシュ状態の本実施形態の可動部30の平面図である。
【
図5】
図5Aは、通常状態の比較例の可動部30の平面図である。
図5Bは、所定の押圧状態の比較例の可動部30の平面図である。
【
図6】
図6Aは、通常状態の変形例の可動部30の平面図である。
図6Bは、所定の押圧状態の変形例の可動部30の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
ハウジングと、前記ハウジングに対して移動可能に設けられた可動部とを有する光コネクタ清掃工具であって、前記可動部は、前記光コネクタに清掃体を押し付けるヘッド部と、前記ヘッド部から送り出された前記清掃体を巻き取る巻取リールとを備えるヘッドユニットと、前記ヘッドユニットを、前記可動部が前記ハウジングに対して移動する方向に移動可能に収容する可動ハウジングと、前記ヘッドユニットと前記可動ハウジングとの間に設けられ、前記光コネクタに対して前記ヘッド部を所定の圧力で押圧するための押圧用スプリングとを備えることを特徴とする光コネクタ清掃工具が明らかとなる。このような光コネクタ清掃工具によれば、光コネクタの清掃時に接続端面を適切に拭き取ることができる。
【0013】
前記ヘッド部は、前記光コネクタのフェルールに前記清掃体を押し付けるヘッドと、前記ヘッドにより前記フェルールに前記清掃体を押し付けた状態で、前記ヘッドの中心軸回りに前記ヘッドを回転させる回転体とを備え、前記回転体は、前記押圧用スプリングにより前記ヘッドと共に前記フェルール側に押圧されることが望ましい。これにより、光コネクタの清掃時に接続端面を適切に拭き取ることができる。
【0014】
前記押圧用スプリングは、前記光コネクタに前記清掃体を押し付ける側にある端部が前記ヘッドユニットに保持され、他方の端部が前記可動ハウジングに保持されていることが望ましい。これにより、ヘッドユニットの後退に伴い押圧用スプリングを圧縮させるだけで良いので、ヘッドユニットと可動ハウジングとの間で押圧用スプリングを容易に保持することができる。
【0015】
前記押圧用スプリングは、前記光コネクタに前記清掃体を押し付ける側にある端部が前記可動ハウジングに保持され、他方の端部が前記ヘッドユニットに保持されていることが望ましい。これにより、光コネクタの清掃時に接続端面を適切に拭き取ることができる。
【0016】
前記可動ハウジングと前記ハウジングとの間に設けられ、前記可動部と前記ハウジングとの位置関係を復元させる復元用スプリングをさらに有することが望ましい。これにより、可動部がハウジングに対して移動した後に、容易に元の位置に戻ることができる。
【0017】
前記押圧用スプリングのばね定数は、前記復元用スプリングのばね定数よりも小さいことが望ましい。これにより、押圧用スプリングが所定の押圧力でヘッドに掛け回された清掃体を光コネクタに押し付けている状態になった後に、可動部がハウジングに対して移動することができる。
【0018】
前記押圧用スプリングが伸縮の限界となる前に、前記復元用スプリングが伸縮し始めることが望ましい。これにより、可動部がハウジングに対して移動し始める際に、押圧用スプリングが所定の押圧力でヘッドに掛け回された清掃体を光コネクタに押し付けている状態を維持することができる。
【0019】
===本実施形態===
<光コネクタ清掃工具の概要>
・全体構成
図1Aは、本実施形態の光コネクタ清掃工具10の全体斜視図である。
図1Bは、カバー20を外した状態の本実施形態の光コネクタ清掃工具10の斜視図である。
【0020】
以下の説明では、図に示すように各方向を定義する。すなわち、ハウジング25から可動部30が延び出る方向(又は、ハウジング25に対して可動部30が移動する方向)を「前後方向」とし、ハウジング25から見て可動部30の側を「前」とし、逆側を「後」とする。また、可動部30の中にある巻取リール42の巻取リール支持軸38(
図3参照、
図1A及び
図1Bでは不図示)の軸方向を「上下方向」とし、巻取リール42から見てピニオン44(
図3参照、
図1A及び
図1Bでは不図示)が設けられている側を「上」とし、逆側を「下」とする。また、「前後方向」及び「上下方向」と直交する方向を「左右方向」とし、前から後を見た時の右側を「右」とし、逆側を「左」とする。また、図示はしていないが、清掃体の送り方向に従って「上流」と「下流」という用語を用いることがある。
【0021】
光コネクタ清掃工具10は、光コネクタのフェルールの接続端面、及びフェルールに保持された光ファイバの端部を清掃するための工具である。なお、以下の説明では、光コネクタ清掃工具を、単に「清掃工具」と呼ぶことがある。清掃工具10は、カバー20と、ハウジング25と、可動部30と、復元用スプリング31とを有する。
【0022】
カバー20は、ハウジング25と、可動部30の一部(後側部分)とを収容する部材である。
図1Bに示すように、カバー20の前側には、開口21が設けられている。そして、カバー20の開口21から可動部30の一部(前側部分)が延び出ている。また、カバー20の後側には、係止孔22が設けられている。そして、カバー20の係止孔22にハウジング25の係止凸部26がラッチされることにより、カバー20に対してハウジング25が係止される。なお、カバー20は、ハウジング25と一体的に形成されても良い。また、カバー20はなくても良い。この際、清掃工具10を用いて光コネクタを清掃するとき、作業者はハウジング25を直接保持することになる。
【0023】
ハウジング25は、可動部30の可動ハウジング32(後述)を後退可能に収容する部材である。ハウジング25には、係止凸部26と、復元用スプリング受け部27と、ラック28と、挿入部29(復元用スプリング受け部27、ラック28及び挿入部29については、
図3参照、
図1A及び
図1Bでは不図示)とが設けられている。
【0024】
係止凸部26は、カバー20の係止孔22にラッチする部位である。前述したように、係止凸部26が係止孔22にラッチすることにより、ハウジング25がカバー20に対して係止する。また、復元用スプリング受け部27は、復元用スプリング31の一端を保持する部位である。復元用スプリング受け部27は、ハウジング25の後側の内壁面に設けられており、復元用スプリング31の一端(後端部)と接触している。また、ラック28は、後述するヘッドユニット40のピニオン44と共にラックアンドピニオン機構を構成する部位である。ラック28は、ハウジング25の上側の内壁面に設けられている。ラック28がピニオン44に対して前後方向に相対的に移動することによって、巻取リール支持軸38回りにピニオン44に回転力を付与する。また、挿入部29は、ヘッドユニット40の回転体51に設けられたカム溝54と共に回転機構を構成する部位である。挿入部29がカム溝54に嵌合したまま回転体51に対して前後方向に相対的に移動することによって、回転体51の中心軸回りに回転力を付与する。
【0025】
可動部30は、ハウジング25に対して前後方向に移動可能な部材である。前述したように、可動部30は、カバー20及びハウジング25に収容されており、可動部30の前側部分がカバー20の開口21から延び出ている。なお、
図1A及び
図1Bに示すように、カバー20の開口21から延び出た可動部30の前側部分は、外側ガイド筒60及び内側ガイド筒61に覆われている。
【0026】
外側ガイド筒60及び内側ガイド筒61は、清掃対象となる光コネクタの挿入口に、清掃体が掛け回された清掃工具のヘッドを挿入する際のガイドとなる部材である。外側ガイド筒60及び内側ガイド筒61は、可動部30の可動ハウジング32(後述)に取り付けられている。本実施形態の清掃工具10は、外側ガイド筒60及び内側ガイド筒61を有することにより、光コネクタプラグ、光コネクタレセプタクル又は光コネクタアダプタ等の様々な清掃対象に対して清掃体を精度良く対向させることができる。なお、外側ガイド筒60及び内側ガイド筒61は、可動部30の可動ハウジング32と一体的に形成されても良い。また、外側ガイド筒60及び内側ガイド筒61は設けられなくても良い。
【0027】
外側ガイド筒60は、内側ガイド筒61を覆う円筒状の部材である。外側ガイド筒60は、中空に形成されており、内側ガイド筒61が前後方向に挿通されている。外側ガイド筒60の前側には、外側端面62が設けられている。本実施形態の清掃工具10では、光コネクタの清掃時に外側端面62が後側に押されると、外側ガイド筒60が取り付けられている可動部30も後側に移動し、これにより、可動部30がハウジング25に対して後方向に移動することになる。また、内側ガイド筒61は、可動部30の前側部分を覆う円筒状の部材である。なお、可動部30の詳細な構成については後述する。
【0028】
復元用スプリング31は、ハウジング25と可動部30との位置関係を復元させるための弾性部材である。復元用スプリング31は、ハウジング25と、可動部30の可動ハウジング32(後述)との間に配置されている。具体的には、復元用スプリング31の前端部は可動ハウジング32の復元用スプリング受け部35に保持されており、復元用スプリング31の後端部はハウジング25の復元用スプリング受け部27に保持されている。光コネクタの清掃時に可動部30がハウジング25に対して後側に移動すると、可動ハウジング32がハウジング25に対して後側に移動し、復元用スプリング31が圧縮変形する。圧縮変形した復元用スプリング31が復元すると、可動ハウジング32がハウジング25に対して前側に移動して元の位置に戻り、可動部30がハウジング25に対して前側に移動して元の位置に戻ることになる。清掃工具10が復元用スプリング31を有することにより、可動部30がハウジング25に対して移動した後に、容易に元の位置に戻ることができる。
【0029】
・プッシュ動作及びプル動作
図2Aは、通常状態の光コネクタ清掃工具10の平面図である。
図2Bは、プッシュ状態の光コネクタ清掃工具10の平面図である。
図2Cは、清掃動作の説明図である。
【0030】
前述したように、可動部30は、ハウジング25に対して前後方向に移動可能に設けられている。さらに、可動部30は、ハウジング25が係止されたカバー20に対して前後方向に伸縮する。なお、以下の説明では、ハウジング25に対する可動部30の前後方向の移動を言う場合、ハウジング25が係止されたカバー20に対する可動部30の前後方向の移動を含むことがある。
【0031】
図2Aに示すように、ハウジング25に対して可動部30が後方向に移動していない状態を「通常状態」と呼ぶことがある。なお、ハウジング25に対して可動部30が後方向に移動した後、圧縮変形した復元用スプリング31が復元し、可動部30がハウジング25に対して前側に移動して元の位置に戻った状態も「通常状態」となる。また、
図2Bに示すように、ハウジング25に対して可動部30が後方向に移動した状態のことを、「プッシュ状態」と呼ぶことがある。
【0032】
プッシュ状態では、通常状態よりも可動部30がハウジング25の内部へ引っ込んでいる。
図2Bでは、可動部30が後側に向かって移動するように描かれているが、実際の清掃動作では、
図2Cに示すように、ハウジング25が可動部30に向かって前側に移動することがある。但し、清掃工具10の構成や動作の説明を簡便化するために、
図2Bに示すように、可動部30を後側に向かって移動させて説明をすることがある。
【0033】
図2Cに示すように、本実施形態の清掃工具10を用いて光コネクタ90を清掃するとき、作業者は、カバー20越しにハウジング25を保持し、可動部30のヘッド50を光コネクタ90に挿入して、光コネクタ90内のフェルール91の接続端面92に対して、ヘッド50に掛け回された清掃体を押し付け、その状態でカバー20(ハウジング25)を光コネクタ90側に向かって移動させる(プッシュ動作)。これにより、清掃工具10は、
図2Aの通常状態から
図2Bや
図2Cのプッシュ状態になる。更に、作業者は、光コネクタ90に挿入されているヘッド50を引き出して清掃工具10を取り出すために、保持しているカバー20(ハウジング25)を後側に移動させる(プル動作)。これにより、清掃工具10は、
図2Bや
図2Cのプッシュ状態から
図2Aの通常状態に戻る。
【0034】
このように、作業者は、1回の清掃動作の中で、プッシュ動作とプル動作とを行うことになる。プッシュ動作では、カバー20(ハウジング25)が可動部30に対して前側に移動することになる(カバー20(ハウジング25)側から見れば、可動部30がカバー20(ハウジング25)に近づくように移動することになる)。プル動作では、カバー20(ハウジング25)が可動部30に対して後側に移動することになる(カバー20(ハウジング25)側から見れば、可動部30がカバー20(ハウジング25)から離れるように移動することになる)。
【0035】
作業者の行うプッシュ動作及びプル動作によって、カバー20(ハウジング25)と可動部30とが前後方向に相対移動する。本実施形態の清掃工具10は、カバー20(ハウジング25)と可動部30との間の相対移動(直線運動)を利用して、未使用の清掃体の供給と、使用済みの清掃体の巻き取りを行っている。
【0036】
<可動部>
・詳細構成
図3は、本実施形態の光コネクタ清掃工具10の分解斜視図である。
【0037】
前述したように、可動部30は、ハウジング25に対して前後方向に移動可能に設けられている。可動部30は、可動ハウジング32と、収容体33と、押圧用スプリング34と、ヘッドユニット40とを有する。
【0038】
可動ハウジング32は、収容体33を後退可能に収容する部材である。可動ハウジング32の前端部には、外側ガイド筒60が取り付けられている。可動ハウジング32には、復元用スプリング受け部35と、押圧用スプリング受け部36とが設けられている。復元用スプリング受け部35は、可動ハウジング32の後側の外壁面に設けられており、復元用スプリング31の一端(前端部)と接触している。押圧用スプリング受け部36は、可動ハウジング32の後側の内壁面に設けられており、押圧用スプリング34の一端(後端部)と接触している。
【0039】
収容体33は、ヘッドユニット40の一部(巻取リール42、供給リール43及び回転体51の回転筒部53)を収容する部材である。収容体33には、押圧用スプリング受け部37と、巻取リール支持軸38と、供給リール支持軸39とが設けられている。押圧用スプリング受け部37は、収容体33の後側の外壁面に設けられており、押圧用スプリング34の一端(前端部)と接触している。巻取リール支持軸38は、巻取リール42及びピニオン44を回転可能に支持する部位である。供給リール支持軸39は、供給リール43を回転可能に支持する部位である。巻取リール支持軸38及び供給リール支持軸39は、収容体33において、巻取リール支持軸38が後側、供給リール支持軸39が前側に設けられているが、巻取リール支持軸38が前側、供給リール支持軸39が後側に設けられていても良い。また、巻取リール支持軸38及び供給リール支持軸39は、それ以外の配置で設けられていても良い。なお、収容体33はなくても良い。この際、押圧用スプリング34の一端(前端部)は、ヘッドユニット40に直接保持されることになる。
【0040】
押圧用スプリング34は、収容体33に収容されたヘッドユニット40を前側に押圧するための弾性部材である。押圧用スプリング34は、収容体33に収容されたヘッドユニット40と、可動ハウジング32との間に配置されている。具体的には、押圧用スプリング34の前端部は収容体33の押圧用スプリング受け部37に保持されており、押圧用スプリング34の後端部は可動ハウジング32の押圧用スプリング受け部36に保持されている。光コネクタの清掃時に押圧用スプリング34が弾性変形することにより、所定の押圧力でヘッド50に掛け回された清掃体を光コネクタのフェルールの接続端面に押し付けることができる。
【0041】
押圧用スプリング34は、光コネクタのフェルールの接続端面に清掃体を押し付ける側(
図3では前側)にある端部がヘッドユニット40側(収容体33の押圧用スプリング受け部37)に保持され、他方(
図3では後側)の端部が可動ハウジング32に保持されている。これにより、光コネクタの清掃時にヘッドユニット40の後退に伴い(後述)、押圧用スプリング34が圧縮変形する。後述する
図6A及び
図6Bに示すように、押圧用スプリング34の配置を変えて、引張力による弾性力を利用することで所定の押圧力でヘッド50に掛け回された清掃体を光コネクタのフェルールの接続端面に押し付けることもできる。しかし、本実施形態では、押圧用スプリング34を圧縮変形させるように設けることで、引張の場合と比べて押圧用スプリング34を保持する部品形状を簡素化することができる。つまり、ヘッドユニット40(収容体33の押圧用スプリング受け部37)と可動ハウジング32との間で押圧用スプリングを容易に保持することができる。
【0042】
ヘッドユニット40は、光コネクタのフェルールの接続端面に清掃体を押し付けると共に、清掃体を供給・回収する部材である。ヘッドユニット40は、ヘッド部41と、巻取リール42と、供給リール43とを備える。
【0043】
ヘッド部41は、光コネクタのフェルールの接続端面に清掃体を押し付ける部材である。ヘッド部41は、ヘッド50と、回転体51とを有する。
【0044】
ヘッド50は、清掃対象となる光コネクタのフェルールの接続端面に清掃体を押し付ける部位である。ヘッド50は、内側ガイド筒61の内部に収容されている。ヘッド50は、ヘッド部41の前側に設けられており、後側で回転体51のヘッド支持部52(後述)に接続している。ヘッド50の前側の端部は、清掃対象に清掃体を押し当てるための押圧面が設けられている。そして、ヘッド50の押圧面には、供給リール43から供給された清掃体が掛け回されている。なお、ヘッド50の押圧面に掛け回された清掃体は、巻取リール42に巻き取られる。
【0045】
回転体51は、前後方向を軸に揺動回転(往復回転)する部位であり、ヘッド50を回転させる部位である。すなわち、回転体51は、ヘッド50の中心軸回りにヘッド50を回転させる部位である。回転体51は、ヘッド支持部52と、回転筒部53とを備えている。
【0046】
ヘッド支持部52は、ヘッド50を支持する部位である。ヘッド支持部52は、回転体51の前側に設けられており、後側で回転筒部53に接続している。ヘッド支持部52は、収容体33から前側に延び出るように設けられている。ヘッド支持部52は、内側ガイド筒61の内部に収容されている。また、ヘッド支持部52は、清掃体を光コネクタに押し付けたときにヘッド50が後退できるように、ヘッド50を支持している。さらに、ヘッド支持部52は、光コネクタの清掃時に押圧用スプリング34が弾性変形することにより、所定の押圧力でヘッド50と共に光コネクタのフェルールの接続端面側に押圧される。また、ヘッド支持部52は、ヘッド支持部52とヘッド50との間で回転方向に相対移動しないように、回転方向の相対移動を規制(制限)しながらヘッド50を支持している。これにより、回転体51が前後方向を軸に回転すると、ヘッド50も回転体51とともに回転する。
【0047】
回転筒部53は、前後方向を軸に揺動回転(往復回転)する円筒状の部位である。回転筒部53は、収容体33の内部において前後方向を軸に揺動回転可能に収容されている。また、回転筒部53は、収容体33の内部において前後方向の移動を規制されるように収容されている。回転筒部53には、外周面に螺旋状のカム溝54が設けられている。カム溝54は、挿入部29と共に回転機構を構成する。カム溝54に嵌合した挿入部29が回転筒部53に対して前後方向に相対的に移動する際に、カム溝54が挿入部29から前後方向を軸に回転する回転力を受けることによって、回転筒部53(回転体51)が回転する。なお、回転筒部53は、中空に形成されており、供給リール43からヘッド50に供給される未使用の清掃体が前後方向に挿通されているとともに、ヘッド50から巻取リール42に回収される使用済みの清掃体が前後方向に挿通されている。
【0048】
巻取リール42は、使用済みの清掃体を巻き取って回収するリールである。なお、巻取リール42には、巻取リール42に回転運動を伝達するピニオン44が取り付けられている。ピニオン44は、ハウジング25のラック28と共にラックアンドピニオン機構を構成する円形歯車である。ラック28がピニオン44に対して前後方向に相対的に移動する際に、ピニオン44がラック28から回転力を受けることによって、ピニオン44が取り付けられている巻取リール42も回転する。また、供給リール43は、未使用の清掃体を供給するリールである。供給リール43には、未使用の清掃体が巻き回されている。
【0049】
・押圧動作
図4Aは、接続端面92に対してヘッド50が押し当てられた時の本実施形態の可動部30の平面図である。
図4Bは、所定の押圧状態の本実施形態の可動部30の平面図である。
図4Cは、プッシュ状態の本実施形態の可動部30の平面図である。
【0050】
以下の説明では、可動部30の押圧用スプリング34が弾性変形することにより、所定の押圧力でヘッド50に掛け回された清掃体を光コネクタのフェルールの接続端面に押し付けている状態を「所定の押圧状態」と呼ぶことがある。本実施形態の清掃工具10を用いて光コネクタ90を清掃するとき、作業者は、まずカバー20越しにハウジング25を保持し、
図4Aに示すように可動部30のヘッド50を光コネクタ90に挿入する。そして、光コネクタ90内のフェルール91の接続端面92に対して、ヘッド50に掛け回された清掃体を押し付ける向きに清掃工具10を移動させる。なお、
図4Aに示す状態では、ヘッド50を光コネクタ90に挿入し始めた段階であり、清掃工具10のヘッド50に掛け回された清掃体は、光コネクタ90内のフェルール91の接続端面92に対して当接していない状態である。さらに、清掃工具10は、ハウジング25に対して可動部30が後方向に移動していない状態(前述の
図2Aに示す通常状態)である。
【0051】
作業者は、
図4Aに示す状態から、清掃工具10をさらに光コネクタ90側に向かって移動させる。そうすると、清掃工具10のヘッド50が光コネクタ90のフェルール91に向かって移動し、清掃工具10のヘッド50に掛け回された清掃体は、光コネクタ90内のフェルール91の接続端面92に対して当接する。作業者が清掃工具10をさらに光コネクタ90側に向かって移動させると、ヘッド50と回転体51とを有するヘッド部41全体が、当接するフェルール91から後方に力を受けることになる。前述したように、ヘッド部41の回転筒部53は、収容体33に収容されることにより、収容体33に対する前後方向の移動を規制されている。したがって、ヘッド50の前側端面がフェルール91から後方に力を受けることにより、ヘッドユニット40を含む収容体33全体が後方に力を受けることになる。収容体33の後部には、押圧用スプリング34が保持されており、ヘッドユニット40を含む収容体33全体が後方に力を受けることにより、収容体33の後部に位置する押圧用スプリング34が圧縮変形する。
【0052】
本実施形態の清掃工具10では、押圧用スプリング34が圧縮変形することにより、ヘッドユニット40を含む収容体33全体を前側に付勢する。そして、作業者が清掃工具10を光コネクタ90側に向かって移動させ、押圧用スプリング34が所定の圧縮量に達した時に、所定の押圧状態となる。このとき、押圧用スプリング34の長さは、
図4Aに示すD1から、
図4Bに示すD2まで圧縮している。なお、
図4Bでは、押圧用スプリング34が所定の圧縮量(D1とD2との差分)に達した状態を示しており、所定の押圧力でヘッド50に掛け回された清掃体を光コネクタ90のフェルール91の接続端面92に押し付ける所定の押圧状態を示している。
【0053】
本実施形態では、
図4Aに示す状態(通常状態)から
図4Bに示す状態(所定の押圧状態)に移行する際に、ヘッドユニット40を含む収容体33全体が可動ハウジング32に対して後方に移動する。このとき、ヘッドユニット40を構成するヘッド部41、巻取リール42及び供給リール43は、収容体33に収容されたままであるので、互いに前後方向の位置関係を変えずに可動ハウジング32に対して一緒に後方に移動する。特に、収容体33が可動ハウジング32に対して後方に移動する際、供給リール43からヘッド50(ヘッド部41)までの距離や、ヘッド50(ヘッド部41)から巻取リール42までの距離は変わらない。これにより、
図4Aに示す状態(通常状態)から
図4Bに示す状態(所定の押圧状態)に移行する際において、供給リール43とヘッド50(ヘッド部41)との間、及び、ヘッド50(ヘッド部41)と巻取リール42との間に掛け渡された清掃体の張力は低下せず、所定の張力に維持されている。したがって、このように掛け渡された清掃体が弛んでしまうことを抑制することができる。
【0054】
作業者は、
図4Bに示す状態から、清掃工具10をさらに光コネクタ90側に向かって移動させる。そうすると、清掃工具10の外側ガイド筒60の外側端面62が、光コネクタ90に対して当接する。作業者が清掃工具10をさらに光コネクタ90側に向かって移動させると、外側ガイド筒60に取り付けられた可動部30が、光コネクタ90から後方に力を受けることになる。したがって、可動部30が光コネクタ90から後方に力を受けることにより、可動部30がハウジング25に対して後方向に移動することになる。そうすると、前述したラックアンドピニオン機構によって、ハウジング25に対する可動部30の直線運動が、ピニオン44を介した巻取リール42の巻取方向の回転運動に変換される。これにより、清掃体が巻取リール42に巻き取られる。
【0055】
図4Cでは、可動部30がハウジング25に対して後方向に移動したプッシュ状態を示している。このとき、復元用スプリング31の長さは、
図4Bに示すD3から、
図4Cに示すD4まで圧縮している。また、復元用スプリング31の圧縮量(D3とD4との差分)の分だけ可動部30がハウジング25に対して近接していることになる。この可動部30がハウジング25に対して近接する分(D3とD4との差分)だけ、ラックアンドピニオン機構によって、ピニオン44を介した巻取リール42の巻取方向の回転運動に変換されることになる。
【0056】
前述したように、
図4Aに示す状態(通常状態)から
図4Bに示す状態(所定の押圧状態)に移行する際には、ヘッド部41が当接するフェルール91から後方に力を受けることにより、ヘッドユニット40を含む収容体33全体が可動ハウジング32に対して後方に移動する。一方、
図4Bに示す状態(所定の押圧状態)から
図4Cに示す状態(プッシュ状態)に移行する際には、外側ガイド筒60に取り付けられた可動ハウジング32が、光コネクタ90から後方に力を受けており、可動ハウジング32の内部に収容された収容体33(ヘッドユニット40)単独では可動ハウジング32に対してさらに後方に移動する向きに力を受けることはない。
図4Bに示す状態(所定の押圧状態)から
図4Cに示す状態(プッシュ状態)に移行する際においても、所定の押圧状態は維持されたままである。また、
図4Bに示す状態(所定の押圧状態)から
図4Cに示す状態(プッシュ状態)に移行する際においても、供給リール43とヘッド50(ヘッド部41)との間、及び、ヘッド50(ヘッド部41)と巻取リール42との間に掛け渡された清掃体の張力は低下せず、所定の張力に維持されている。本実施形態では、所定の張力に維持されたままの清掃体を巻き取ることができることにより、清掃体が接続端面に押し付けられた状態でヘッド50(ヘッド部41)上を移動する清掃体の量が減少してしまうことを抑制し、光コネクタ90のフェルール91の接続端面92を適切に拭き取ることができる。
【0057】
なお、本実施形態の清掃工具10では、押圧用スプリング34のばね定数は、復元用スプリング31のばね定数よりも小さい。これにより、先に押圧用スプリング34が圧縮変形し所定の押圧状態となってから、続いて復元用スプリング31が圧縮変形し、可動部30がハウジング25に対して後方向に移動するプッシュ動作を開始させることができる。つまり、所定の押圧状態に達してから、プッシュ状態に移行することができる。これにより、光コネクタ90のフェルール91の接続端面92に所定の押圧力で清掃体を押し付け、適切に拭き取ることができる。
【0058】
本実施形態の清掃工具10では、押圧用スプリング34の伸縮の限界となる前に、復元用スプリング31が伸縮し始める。具体的には、
図4Bに示す状態(所定の押圧状態)から
図4Cに示す状態(プッシュ状態)に移行する間に、押圧用スプリング34は弾性の比例限界に達することなく、弾性変形をする状態を保ったままである。本実施形態では、所定の押圧状態となってから、押圧用スプリング34が弾性の比例限界に達する前に、外側ガイド筒60に取り付けられた可動ハウジング32が、光コネクタ90から後方に力を受け始める。これにより、可動部30がハウジング25に対して移動し始める際に、押圧用スプリング34が所定の押圧力でヘッド50に掛け回された清掃体を光コネクタに押し付けている状態を維持することができる。
【0059】
・送り機構
前述したように、ハウジング25のラック28とヘッドユニット40のピニオン44とで構成されるラックアンドピニオン機構と、巻取リール42と、供給リール43とは、送り機構を構成する。送り機構は、清掃時のハウジング25と可動部30との相対移動を利用して、ヘッド50に未使用の清掃体を供給するとともに、使用済みの清掃体を回収している。但し、送り機構は、他の方法で清掃体を供給・回収しても良い。例えば、円盤状のダイヤルを設け、作業者がダイヤルを回して清掃体が供給・回収されるようにしても良い。このような送り機構を備えた清掃工具10であれば、ハウジング25と可動部30とを前後方向に相対移動させなくても良い。
【0060】
・回転機構
前述したように、ハウジング25に設けられた挿入部29と、ヘッドユニット40の回転体51に設けられたカム溝54とは、回転機構を構成する。回転機構は、清掃時のハウジング25と可動部30との相対移動を利用して、ヘッド50の中心軸回りにヘッド50を回転させる。回転機構の回転によって、ヘッド50の中心軸回りにヘッド50が回転するため、ヘッド50に掛け回された清掃体は光コネクタ90のフェルール91の接続端面92に押し付けられた状態のまま、ヘッド50の中心軸回りに回転し、接続端面92が拭き取られることになる。但し、回転機構は、他の方法でヘッド50を回転させても良い。また、清掃工具10において回転機構(回転体51及びハウジング25の挿入部29)は設けられなくてもよい。
【0061】
<比較例>
図5Aは、通常状態の比較例の可動部30の平面図である。
図5Bは、所定の押圧状態の比較例の可動部30の平面図である。
【0062】
前述の本実施形態の清掃工具10では、収容体33は、可動ハウジング32内に後退可能に収容されていた。そして、巻取リール42及び供給リール43は、収容体33に設けられた巻取リール支持軸38及び供給リール支持軸39にそれぞれ回転可能に支持されており、巻取リール42及び供給リール43も可動ハウジング32に対して後退可能となっていた。これに対し、本比較例の清掃工具10では、巻取リール42及び供給リール43は、可動ハウジング32に設けられた巻取リール支持軸38及び供給リール支持軸39にそれぞれ回転可能に支持されている。このため、本比較例では、巻取リール42及び供給リール43は、可動ハウジング32に対して後退することはできない。すなわち、巻取リール42及び供給リール43は、可動ハウジング32に対して固定されていることになる。
【0063】
また、前述の本実施形態の清掃工具10では、押圧用スプリング34は、可動ハウジング32内において収容体33に収容されたヘッド50を前側に押圧していた。これに対し、本比較例の清掃工具10では、押圧用スプリング34は、ヘッド50と、可動ハウジング32との間に配置されている。具体的には、押圧用スプリング34の前端部はヘッド50のフランジ部分に保持されており、押圧用スプリング34の後端部は可動ハウジング32の押圧用スプリング受け部36に保持されている。
【0064】
本比較例では、
図5Aに示す通常状態の清掃工具10から、ヘッド50を前側(光コネクタ90のフェルール91側)に押圧することによって、押圧用スプリング34が圧縮変形する。これにより、
図5Bに示す所定の押圧力でヘッド50に掛け回された清掃体1を光コネクタ90のフェルール91の接続端面92に押し付けることができる。
【0065】
ところで、清掃工具10の内部においては、清掃体1が供給リール43から供給され、ヘッド50に掛け回された後に、巻取リール42に巻き取られている。本比較例では、巻取リール42と、ヘッド50の間に位置している押圧用スプリング34が伸縮することにより、供給リール43からヘッド50までの距離や、ヘッド50から巻取リール42までの距離も伸縮することになる。具体的には、通常状態における押圧用スプリング34の前後方向の長さ(
図5Aに示すD5)と、所定の押圧状態における押圧用スプリング34の前後方向の長さ(
図5Bに示すD6)の差分だけ、供給リール43からヘッド50までの距離や、ヘッド50から巻取リール42までの距離は、通常状態(
図5Aに示すD7)から所定の押圧状態(
図5Bに示すD8)へと短くなってしまう。
【0066】
なお、清掃工具10が再び通常状態に戻る前までは、ヘッド50の清掃体1はヘッド50と光コネクタ90のフェルール91との間に挟まれており、ヘッド50の下流側の清掃体1がヘッド50の上流側に逆送りされ難い状態になっている。一方、通常状態から所定の押圧状態となった時の清掃工具10では、可動部30は、ハウジング25に対して移動していない。このため、ピニオン44も回転しておらず、巻取リール42にも回転運動が伝達されていない。したがって、巻取リール42は清掃体1を巻き取ることができない状態になっている。
【0067】
このため、
図5Bに示すように、清掃体1は、ヘッド50と巻取リール42とが近接した分(
図5Aに示すD7と
図5Bに示すD8との差分)だけ、すなわち、押圧用スプリング34が圧縮変形した分(
図5Aに示すD5と
図5Bに示すD6との差分)だけ、清掃体1が弛んでしまうことになる。
【0068】
図5Bに示す状態から、可動部30をハウジング25対してさらに移動させると、清掃工具10はプッシュ状態に移行し、巻取リール42において清掃体1が巻き取られる。ところが、比較例の清掃工具10では、ヘッド50の下流側にある弛んだ状態の清掃体1を巻き取ることになる。この結果、清掃体が接続端面に押し付けられた状態でヘッド50に送られる清掃体1の量が減少してしまうことで、ヘッド50上を移動する清掃体1の量も減少し、接続端面を適切に拭き取ることができなくなってしまう。
【0069】
しかし、前述した本実施形態では、押圧用スプリング34が収容体33(ヘッドユニット40)の後側に設けられ、ヘッドユニット40を含む収容体33全体が可動ハウジング32に対して後方に移動することで、供給リール43からヘッド50(ヘッド部41)までの距離や、ヘッド50(ヘッド部41)から巻取リール42までの距離は変わらない。これにより、掛け渡された清掃体が弛んでしまうことを抑制することができる。そして、清掃体が接続端面に押し付けられた状態でヘッド50(ヘッド部41)に送られる清掃体の量が減少してしまうことを抑制し、光コネクタ90のフェルール91の接続端面92を適切に拭き取ることができる。
【0070】
<変形例>
図6Aは、所定の押圧状態の変形例の可動部30の平面図である。
図6Bは、プッシュ状態の変形例の可動部30の平面図である。前述した本実施形態の清掃工具10では、押圧用スプリング34が、光コネクタのフェルールの接続端面に清掃体を押し付ける側(
図3では前側)にある端部がヘッドユニット40側(収容体33の押圧用スプリング受け部37)に保持され、他方(
図3では後側)の端部が可動ハウジング32に保持されていた。つまり、押圧用スプリング34が、ヘッドユニット40の後側に設けられていた。しかし、本変形例の清掃工具10では、押圧用スプリング34が、光コネクタのフェルールの接続端面に清掃体を押し付ける側(
図6A及び
図6Bでは前側)にある端部が可動ハウジング32に保持され、他方(
図6A及び
図6Bでは後側)の端部がヘッドユニット40側(収容体33の押圧用スプリング受け部37)に保持されている。つまり、押圧用スプリング34が、ヘッドユニット40の前側に設けられている。このように押圧用スプリング34がヘッドユニット40の前側に設けられることで、光コネクタの清掃時にヘッドユニット40の後退に伴い、押圧用スプリング34が引張変形する(
図5A参照)。これにより、引張力による弾性力を利用することで所定の押圧力でヘッド50に掛け回された清掃体を光コネクタのフェルールの接続端面に押し付けることもできる。
【0071】
なお、本変形例においても、ヘッドユニット40を含む収容体33全体が可動ハウジング32に対して後方に移動することで、供給リール43からヘッド50(ヘッド部41)までの距離や、ヘッド50(ヘッド部41)から巻取リール42までの距離は変わらない。これにより、掛け渡された清掃体が弛んでしまうことを抑制することができる。そして、清掃体が接続端面に押し付けられた状態でヘッド50(ヘッド部41)上を移動する清掃体の量が減少してしまうことを抑制し、光コネクタ90のフェルール91の接続端面92を適切に拭き取ることができる。但し、押圧用スプリング34が引張変形するために、圧縮の場合と比べて押圧用スプリング34の端部を保持する部品を別途設ける必要がある。また、圧縮の場合と比べて、引張変形する押圧用スプリング34の場合、押圧用スプリング34の伸び量の分だけ可動ハウジング32の長さが長くなってしまう。
【0072】
===その他===
前述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1 清掃体、10 光コネクタ清掃工具、
20 カバー、21 開口、22 係止孔、25 ハウジング、26 係止凸部、
27 復元用スプリング受け部、28 ラック(送り機構)(ラックアンドピニオン機構)、
29 挿入部(回転機構)、30 可動部、31 復元用スプリング、
32 可動ハウジング、33 収容体、34 押圧用スプリング、
35 復元用スプリング受け部、36 押圧用スプリング受け部、
37 押圧用スプリング受け部、38 巻取リール支持軸、39 供給リール支持軸、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド部、42 巻取リール(送り機構)、
43 供給リール(送り機構)、44 ピニオン(送り機構)(ラックアンドピニオン機構)、
50 ヘッド、51 回転体、52 ヘッド支持部、53 回転筒部、
54 カム溝(回転機構)、60 外側ガイド筒、61 内側ガイド筒、
62 外側端面、90 光コネクタ、91 フェルール、92 接続端面