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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20220106BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220106BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B01J35/04 301C
F01N3/28 301P
B01J32/00 ZAB
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018062667
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019171294
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】栗本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正悟
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-104952(JP,A)
【文献】特開2011-194320(JP,A)
【文献】特開2010-104955(JP,A)
【文献】特開2003-326162(JP,A)
【文献】特開2009-154148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
F01N 3/28
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部を備え、
複数の前記セルは、前記セルの総個数に対して10~80%の前記セルが、当該セルを取り囲むように配置された前記隔壁の表面から、当該セル内に突出する突起部が形成された部分閉塞セルであり、
前記突起部は、前記部分閉塞セルにおいて、当該部分閉塞セルの延びる方向の一部に形成されており、
それぞれの前記部分閉塞セルは、前記ハニカム構造部の前記第一端面から前記第二端面に延びる方向の投影視において、前記部分閉塞セルの前記突起部を含む全流路面積に対して、前記突起部の占める面積の比率が、5~80%であり、
前記部分閉塞セルを取り囲むように配置された前記隔壁は、最も薄い箇所における厚さが0.038mm以上であり、
前記部分閉塞セルを取り囲むように配置された前記隔壁は、前記突起部が形成された周囲に、前記隔壁の内側に窪んだ窪み部を有する、ハニカム構造体。
【請求項2】
前記隔壁の厚さが、0.038~0.229mmである、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記第一端面から前記第二端面に延びる方向における前記突起部の長さが、0.21~1.36mmである、請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記ハニカム構造部のセル密度が、31~140個/cmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、強度低下を抑制しつつ、浄化性能の向上を図ることが可能なハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、先進国におけるディーゼル車やトラックのNOx規制として更に厳しいものが検討されている。このようなNOx規制に対して、排気ガス中のNOxを処理するための技術が種々提案されている。例えば、このような技術の1つとして、選択的触媒還元触媒(以下、「SCR触媒」ともいう)等を、多孔質の隔壁を有するハニカム構造体に担持し、当該ハニカム構造体によって排気ガス中のNOxを浄化処理する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-052367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したハニカム構造体を用いたNOx処理においては、ハニカム構造体に担持する触媒の量を多くすることで、浄化性能を向上させることができる。一方で、触媒を担持したハニカム構造体を、ディーゼル車等の排気系に設置しNOx処理を行った場合、ハニカム構造体の圧力損失の上昇が問題となる。ハニカム構造体の圧力損失の上昇は、エンジンの出力低下や燃費の悪化を引き起こす原因となる。
【0005】
浄化性能を向上させるため別の方法としては、例えば、ハニカム構造体のセル密度を大きくし、触媒と排ガスとの接触率を増やす方法も考えられる。しかしながら、ハニカム構造体のセル密度を大きくした場合も、ハニカム構造体の圧力損失の上昇が問題となる。
【0006】
また、ハニカム構造体の昇温性の向上、及び触媒担持量の向上を狙って、ハニカム構造体の隔壁を高気孔率化する技術も提案されている。例えば、ハニカム構造体の隔壁を高気孔率化することにより、担持する触媒の量を多くしたとしても、圧力損失の上昇を抑制することができると考えられている。しかしながら、隔壁を高気孔率化した場合には、ハニカム構造体の機械的強度が低下するため、隔壁の高気孔率化には限度があり、現状の技術では、浄化性能の更なる向上を実現することは難しいとされている。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、ハニカム構造体のセル密度を増大させることなく、且つ強度低下を抑制しつつ、浄化性能の向上を図ることが可能なハニカム構造体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0009】
[1] 第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部を備え、
複数の前記セルは、前記セルの総個数に対して10~80%の前記セルが、当該セルを取り囲むように配置された前記隔壁の表面から、当該セル内に突出する突起部が形成された部分閉塞セルであり、
前記突起部は、前記部分閉塞セルにおいて、当該部分閉塞セルの延びる方向の一部に形成されており、
それぞれの前記部分閉塞セルは、前記ハニカム構造部の前記第一端面から前記第二端面に延びる方向の投影視において、前記部分閉塞セルの前記突起部を含む全流路面積に対して、前記突起部の占める面積の比率が、5~80%であり、
前記部分閉塞セルを取り囲むように配置された前記隔壁は、最も薄い箇所における厚さが0.038mm以上であり、
前記部分閉塞セルを取り囲むように配置された前記隔壁は、前記突起部が形成された周囲に、前記隔壁の内側に窪んだ窪み部を有する、ハニカム構造体。
【0010】
[2] 前記隔壁の厚さが、0.038~0.229mmである、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0011】
[3] 前記第一端面から前記第二端面に延びる方向における前記突起部の長さが、0.21~1.36mmである、前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0012】
[4] 前記ハニカム構造部のセル密度が、31~140個/cmである、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハニカム構造体は、排気ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として好適に利用することができ、強度低下を抑制しつつ、浄化性能の向上を図ることができるという効果を奏する。具体的には、多孔質の隔壁によって取り囲まれた複数のセルが、当該セルを取り囲むように配置された隔壁の表面から、セル内に突出する突起部が形成された部分閉塞セルを含むように構成されている。このため、突起部が形成されているセルの閉塞部分を排ガスが通過する際、排ガスの拡散を促し、浄化性能の向上を図ることができる。また、突起部が形成されていることにより、隔壁の表面に担持された触媒と排ガスとの接触面積が増大し、浄化性能の向上を図ることができる。更に、セルの総個数に対する部分閉塞セルの個数比率、及び各部分閉塞セルにおける突起部の占める面積比率を所定の数値範囲とすることで、強度低下を有効に抑制しつつ、上述した浄化性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すハニカム構造体の第一端面側を示す平面図である。
図3図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
図4図2の一部を拡大した拡大平面図であり、セルの流路面積を説明するための図である。
図5図2の一部を拡大した拡大平面図であり、突起部の占める面積を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0017】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の第一実施形態は、図1図3に示すようなハニカム構造体100である。ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すハニカム構造体の第一端面側を示す平面図である。図3は、図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【0018】
図1図3に示すように、本実施形態のハニカム構造体100は、第一端面11及び第二端面12を有する柱状のハニカム構造部4を備えたものである。ハニカム構造部4は、第一端面11から第二端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する。本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム構造部4は、円柱形状となるように構成され、その外周側面に、外周壁3を更に有している。即ち、外周壁3は、格子状に配設された隔壁1を囲繞するように配設されている。なお、本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0019】
複数のセル2は、セル2の総個数に対して10~80%のセル2が、以下のように構成された部分閉塞セル2aである。部分閉塞セル2aとは、この部分閉塞セル2aを取り囲むように配置された隔壁1の表面から、当該部分閉塞セル2a内に突出する突起部5が形成されたセル2のことをいう。なお、この突起部5は、部分閉塞セル2aにおいて、この部分閉塞セル2aの延びる方向の一部に形成されている。それぞれの部分閉塞セル2aは、ハニカム構造部4の第一端面11から第二端面12に延びる方向の投影視において、部分閉塞セル2aの突起部5を含む流路面積S0に対して、突起部5の占める面積S1の比率が5~80%である(例えば、図4及び図5参照)。図4に示すように、部分閉塞セル2aの突起部5を含む流路面積S0とは、上記した投影視における、部分閉塞セル2aの全流路面積のことである。なお、1つの部分閉塞セル2aの投影視において、部分閉塞セル2a内に、2つ以上の突起部5を有する場合には、突起部5の占める面積S1は、各突起部5の面積の合計値とする。以下、部分閉塞セル2aの突起部5を含む流路面積S0に対する、突起部5の占める面積S1の比率を、単に、「突起部5の占める面積比率」ということがある。
【0020】
部分閉塞セル2aの突起部5を含む流路面積S0、及び突起部5の占める面積S1は、ハニカム構造体100の端面及び断面についての撮像を行い、撮像した画像を画像解析することにより測定ことができる。例えば、突起部5の占める面積S1は、以下の方法で測定することができる。まず、ハニカム構造体100の一方の端面側(例えば、第一端面11側)から光を当てて、ハニカム構造体100の各セル2内に、突起部5が存在するか否かの確認を行う。セル2内に突起部5が存在していることが確認された場合には、突起部5が存在する箇所にて、ハニカム構造体100をセル2の延びる方向に直交する面で切断する。次に、切断したハニカム構造体100の切断面のセル2を、例えば、キーエンス社のデジタルマイクロスコープ(商品名)を用いて撮像し、撮像した画像を画像解析して、部分閉塞セル2aの突起部5の占める面積S1を求める。また、この画像において、部分閉塞セル2aの実質的な流路の面積を求め、その面積に、突起部5の占める面積S1を加算することによって、部分閉塞セル2aの突起部5を含む流路面積S0を求めることができる。
【0021】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル2の総個数に対する、上記のように構成された部分閉塞セル2aの個数の比率が10~80%である。なお、ハニカム構造部4の最外周には、隔壁1と外周壁3とによって囲われた不完全な形状のセル2が存在する。セル2の総個数、及び部分閉塞セル2aの個数を計測する際には、このような最外周に存在する不完全な形状のセル2の個数については、それぞれの個数に含めないこととする。以下、セル2の総個数に対する、部分閉塞セル2aの個数の比率を、単に、「部分閉塞セル2aの個数比率」ということがある。
【0022】
更に、本実施形態のハニカム構造体100において、部分閉塞セル2aを取り囲むように配置された隔壁1は、最も薄い箇所における厚さが0.038mm以上である。即ち、部分閉塞セル2aは、ハニカム構造部4の第一端面11から第二端面12までの全域に亘って、多孔質の隔壁1によって連続的に取り囲まれることにより、流体の流路となる空間を形成している。
【0023】
本実施形態のハニカム構造体100は、排気ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として好適に利用することができ、浄化性能の向上を図ることができるという効果を奏する。具体的には、多孔質の隔壁1によって取り囲まれた複数のセル2が、上述した部分閉塞セル2aを含むように構成されている。このため、突起部5が形成されている部分閉塞セル2aの閉塞部分を排ガスが通過する際、排ガスの拡散を促し、浄化性能の向上を図ることができる。また、突起部5が形成されていることにより、隔壁1の表面に担持された触媒と排ガスとの接触面積が増大し、浄化性能の向上を図ることができる。更に、部分閉塞セル2aの個数比率、及び各部分閉塞セル2aにおける突起部5の占める面積比率を、上述した数値範囲とすることで、上述した浄化性能の向上を図ることができる。
【0024】
突起部5の占める面積比率が5%未満であると、排ガスの拡散が十分に促すことができず、十分な浄化性能の向上を図ることが困難となる。一方、突起部5の占める面積比率が80%を超えると、セル2内のガス流れが阻害されることにより、浄化性能が低下してしまうことがある。突起部5の占める面積比率は、7~63%であることが好ましく、12~60%であることが更に好ましい。また、部分閉塞セル2aの突起部5の占める面積比率の平均値としては、7~63%であることが好ましく、12~60%であることが更に好ましい。
【0025】
部分閉塞セル2aの個数比率が10%未満であると、部分閉塞セル2aの個数が少なすぎて、浄化性能を向上する効果が十分に得られなくなる。部分閉塞セル2aの個数比率が80%を超えると、部分閉塞セル2aの個数が多すぎて、浄化性能が低下してしまう。
【0026】
部分閉塞セル2aを取り囲むように配置された隔壁1の最も薄い箇所における厚さが0.038mm未満であると、ハニカム構造体100の機械的強度が低下してしまう。なお、部分閉塞セル2aを取り囲むように配置された隔壁1の厚さは、0.038~0.229mmであることが好ましく、0.064~0.132mmであることが更に好ましい。
【0027】
本実施形態のハニカム構造体100において、部分閉塞セル2aを取り囲むように配置された隔壁1は、突起部5が形成された周囲に、隔壁1の内側に窪んだ窪み部(図示せず)を有してい。例えば、突起部5により増大する隔壁1の容積を、窪み部によって相殺(埋め合わせ)することができ、ハニカム構造体100全体で容積の過度な増大を抑制することができる。このため、ハニカム構造体100の熱容量を、突起部5を有していない従来のハニカム構造体と同様のものとすることができ、ライトオフ性能(Light-off performance)が悪化するというデメリットを無くすことができる。突起部5が形成された周囲の窪み部は、突起部5と相補的な容積を有するものであることが好ましく、例えば、窪み部に存在するはずの隔壁1の材料が、部分閉塞セル2aの内側に向かって捲れ上がることによって、それぞれの突起部5が形成されていることがより好ましい。
【0028】
部分閉塞セル2aを取り囲むように配置された隔壁1の最も薄い箇所における厚さは、以下の方法で測定することができる。まず、コンピュータ断層診断装置(CT;Computed Tomography)によって、ハニカム構造体100の撮影を行う。このようにして、ハニカム構造体100の全体を観察し、隔壁1の最も薄い箇所を特定する。撮影結果より、隔壁1の最も薄い箇所の厚さが測定できる場合には、その厚さを測定する。また、必要に応じて、隔壁1の最も薄い箇所を特定した後、ハニカム構造体100を所定箇所にて切断し、適宜、マイクロスコープ等によって隔壁1の厚さを測定してもよい。
【0029】
第一端面11から第二端面12に延びる方向における突起部5の長さについては特に制限はない。例えば、この突起部5の長さとしては、例えば、0.21~1.36mmであることが好ましく、0.30~0.80mmであることが更に好ましく、0.40~0.70mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体100全体で容積の過度な増大を抑制することができ、ライトオフ性能(Light-off performance)が悪化するというデメリットを少なくすることができる。
【0030】
隔壁1の厚さは、0.038~0.229mmであることが好ましく、0.064~0.144mmであることが更に好ましく、0.069~0.132mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体100の十分な機械的強度を確保できる。
【0031】
隔壁1によって区画形成されるセル2のセル密度は、31~140個/cmであることが好ましく、47~116個/cmであることが更に好ましく、62~93個/cmであることが特に好ましい。このように構成することによって、本実施形態のハニカム構造体100を、自動車のエンジンから排出される排気ガスを浄化するための浄化部材(例えば、触媒担体)として好適に利用することができる。
【0032】
隔壁1の気孔率は、25~55%であることが好ましく、28~50%であることが更に好ましい。このように構成することによって、排気ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として好適に用いることができる。なお、隔壁1の気孔率は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の気孔率の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。気孔率の測定は、ハニカム構造体100から隔壁1の一部を切り出して試験片とし、このようにして得られた試験片を用いて行うことができる。
【0033】
ハニカム構造部4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。また、セル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと、八角形のセルとが混在したものであってもよい。また、セル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。なお、上述したセル2の形状については、セル2内に突出する突起部5の形状を含めないものとする。
【0034】
ハニカム構造部4の外周壁3は、隔壁1と一体的に構成されたものであってもよいし、隔壁1を囲繞するように外周コート材を塗工することによって形成した外周コート層であってもよい。図示は省略するが、外周コート層は、製造時において、隔壁と外周壁とを一体的に形成した後、形成された外周壁を、研削加工等の公知の方法によって除去した後、隔壁の外周側に設けることができる。
【0035】
ハニカム構造部4の形状については特に制限はない。ハニカム構造部4の形状としては、第一端面11及び第二端面12の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状を挙げることができる。
【0036】
ハニカム構造部4の大きさ、例えば、第一端面11から第二端面12までの長さや、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。本実施形態のハニカム構造体100を、排気ガス浄化用の浄化部材として用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。例えば、ハニカム構造部4の第一端面11から第二端面12までの長さは、76.2~228.6mmであることが好ましく、91.4~203.2mmであることが更に好ましい。また、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面の面積は、8107.3~99314.7mmであることが好ましく、16240.5~85633.6mmであることが更に好ましい。
【0037】
隔壁1の材料が、炭化珪素、コージェライト、珪素-炭化珪素複合材料、コージェライト-炭化珪素複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ及びチタン酸アルミニウムから構成される群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。隔壁1を構成する材料は、上記群に列挙された材料を、30質量%以上含む材料であることが好ましく、40質量%以上含む材料であることが更に好ましく、50質量%以上含む材料であることが特に好ましい。なお、珪素-炭化珪素複合材料とは、炭化珪素を骨材とし、珪素を結合材として形成された複合材料である。また、コージェライト-炭化珪素複合材料とは、炭化珪素を骨材とし、コージェライトを結合材として形成された複合材料である。本実施形態のハニカム構造体100において、隔壁1を構成する材料は、特に、コージェライトが好ましい。
【0038】
本実施形態のハニカム構造体100においては、複数のセル2を区画形成する隔壁1に、排気ガス浄化用の触媒が担持されていてもよい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁1に形成された細孔内に、触媒が担持されることをいう。特に、本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1に形成された細孔内に担持される触媒の量を多くすることができるため、排気ガス浄化用の触媒の担持後における、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0039】
ハニカム構造部4の隔壁1に担持される触媒の単位体積当たりの担持量については、使用する触媒の種類に応じて適宜決定することができる。例えば、本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁1に形成された細孔の総容積に対して、触媒の充填率を80%以上とすることができる。触媒の担持方法としては、例えば、ハニカム構造部4に対して、触媒成分を含む触媒スラリーをウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等を挙げることができる。
【0040】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体を製造する方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法を挙げることができる。まず、ハニカム構造部を作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカム構造部を作製するための坏土は、原料粉末として、前述のハニカム構造部の好適な材料の中から選ばれた材料に、適宜、バインダや界面活性剤等の添加剤、造孔材、及び水を添加することによって調製することができる。
【0041】
坏土の調製においては、坏土に加える水分量(例えば、水及び界面活性剤の量)を調節することにより、従来のハニカム構造体の製造方法に比して、水分量を若干少な目にすることが好ましい。このように構成することによって、後述する坏土を押出成形する工程において、坏土の粘度が不足し、ハニカム成形体の隔壁の表面が、ささくれた状態となる。そして、この隔壁の表面のささくれた状態が、セル内部に向かって突出する突起部となる。水分量の調節を適宜行うことにより、突起部の大きさ及び発生頻度を調整することができる。
【0042】
次に、得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁を囲繞するように配設された外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を作製する。上記したように坏土の水分量の調節を行うことにより、隔壁の表面に所望の突起部を形成することができる。
【0043】
次に、得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥する。次に、ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム構造体を製造する。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。以上のようにして、本発明のハニカム構造体を製造することができる。但し、本発明のハニカム構造体を製造する方法は、これまでに説明した製造方法に限定されるものではない。
【実施例
【0044】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
コージェライト化原料100質量部に、造孔材を10質量部、有機バインダを1質量部、分散媒を30質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。造孔材としては、中空樹脂粒子を使用した。有機バインダとしては、メチルセルロース(Methylcellulose)を使用した。分散媒としては、水を使用した。
【0046】
次に、ハニカム成形体作製用の口金を用いて坏土を押出成形し、全体形状が円柱形状のハニカム成形体を得た。ハニカム成形体のセルの形状は、四角形とした。
【0047】
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。次に、乾燥したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、実施例1のハニカム構造体を製造した。
【0048】
実施例1のハニカム構造体は、第一端面及び第二端面の形状が円形の、円柱形状のものであった。第一端面及び第二端面の直径の大きさは、266.7mmであった。また、ハニカム構造体のセルの延びる方向の長さは、152.4mmであった。実施例1のハニカム構造体は、後述する窪み部が形成された部位以外の隔壁の厚さが0.114mmであり、セル密度が62個/cmであった。また、ハニカム構造体の嵩密度は、0.31g/ccであった。表1に、各結果を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例1のハニカム構造体は、複数のセルのうちの一部のセルにおいて、隔壁の表面から当該セル内に突出する突起部が形成されたものであった。そして、セル内に突出する突起部が形成されたセル(部分閉塞セル)について、以下の方法で、突起部の占める面積比率(%)、及び部分閉塞セルの個数比率(%)を求めた。部分閉塞セルの個数比率(%)の値を、表1の「部分閉塞セルの個数比率(%)」の欄に示す。また、求められた部分閉塞セルの突起部の占める面積比率(%)について、その平均値を算出した。結果を、表1の「突起部の占める面積比率(平均)(%)」の欄に示す。
【0051】
[突起部の占める面積比率(%)]
ハニカム構造体の端面及び断面を、マイクロスコープを使用して画像解析して、部分閉塞セルの突起部を含む流路面積S0、及び突起部の占める面積S1を測定した。そして、突起部の占める面積S1を、流路面積S0で除算した値に、更に100を乗じた値を、「突起部の占める面積比率(%)」とした。なお、各セル内に突起部が存在するか否かの確認は、ハニカム構造体の第一端面側から光を当てて、セル内を通過する光を第二端面側にて確認することによって行った。
【0052】
[部分閉塞セルの個数比率(%)]
ハニカム構造体に形成されたセルの総個数と、突起部の占める面積比率(%)が5~80%となる部分閉塞セルの個数と、をそれぞれ計測した。そして、部分閉塞セルの個数を、セルの総個数で除算した値に、更に100を乗じた値を、「部分閉塞セルの個数比率(%)」とした。
【0053】
また、実施例1のハニカム構造体は、突起部が形成された隔壁の周囲に、隔壁の内側に窪んだ窪み部を有するものであった。この窪み部の深さ(mm)、ハニカム構造体の第一端面から第二端面に延びる方向の長さ(mm)、及びハニカム構造体の第一端面から第二端面に延びる方向に直交する方向の幅(mm)、以下の方法で測定した。結果を表1に示す。なお、表1に示す、窪み部の深さ(mm)、長さ(mm)、及び幅(mm)は、各値の平均値である。
【0054】
[窪み部の深さ(mm)、長さ(mm)、及び幅(mm)の測定]
まず、コンピュータ断層診断装置によって、ハニカム構造体の撮影を行い、ハニカム構造体の全体を観察して、隔壁の最も薄い箇所を特定した。隔壁の最も薄い箇所を特定した後、隔壁の最も薄い箇所にてハニカム構造体を切断し、マイクロスコープを使用して画像解析して、窪み部の深さ(mm)、長さ(mm)、及び幅(mm)を測定した。
【0055】
実施例1のハニカム構造体について、以下の方法で、「NOx浄化率(%)」、「アイソスタティック強度(MPa)」、及び「圧縮強度(MPa)」の測定を行った。結果を、表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
[NOx浄化率(%)]
ハニカム構造体に、圧力差を利用し触媒を吸引させる方法にて、銅ゼオライト触媒を担持して、ハニカム触媒体を作製した。作製したハニカム触媒体に、NOxを含む試験用ガスを流し、ハニカム触媒体から排出された排出ガス中のNOx量を、ガス分析計(HORIBA社製:MEXA9100EGR(商品名))にて測定した。そして、試験用ガス中のNOx量、及び排出ガス中のNOx量から、NOx浄化率(%)を算出した。なお、ハニカム触媒体に流入させる試験用ガスの温度は、200℃とした。ハニカム触媒体及び試験用ガスは、ヒーターにより温度調整した。ヒーターは、赤外線イメージ炉(Infrared image furnace)を用いた。試験用ガスは、窒素に、二酸化炭素5体積%、酸素14体積%、一酸化窒素350ppm(体積基準)、アンモニア350ppm(体積基準)及び水10体積%を混合させたガスを用いた。この試験用ガスに関しては、水と、その他のガスを混合した混合ガスとを別々に準備しておき、試験を行う時に配管中でこれらを混合させて用いた。試験用ガスがハニカム触媒体に流入するときの空間速度は、100,000(時間-1)とした。「NOx浄化率(%)」は、試験用ガスのNOx量から、ハニカム触媒体から排出されたガス中のNOx量を差し引いた値を、試験用ガスのNOx量で除算し、100倍した値(単位:%)である。
【0058】
[アイソスタティック強度(MPa)]
アイソスタティック強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)のM505-87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器に、ハニカム構造体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。アイソスタティック破壊強度試験によって測定されるアイソスタティック強度は、ハニカム構造体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。
【0059】
[圧縮強度(MPa)]
圧縮強度の測定は、ハニカム構造体から圧縮強度測定用の試験片を刳り貫いて作製し、作製した試験片に対して、A軸、B軸、C軸のそれぞれに圧縮荷重を負荷したときの破壊強度を測定することによって求めた。なお、A軸は、柱状のハニカム構造体の第一端面から第二端面に向かう方向のことをいう。B軸は、A軸方向及びセルを取り囲む隔壁の表面に対し垂直な方向のことを意味する。C軸は、B軸に対して45°方向のことを意味する。
【0060】
(実施例2~9、比較例1~8)
表1に示すように、ハニカム構造体の各構成を変更した以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。なお、突起部の占める面積比率、及び部分閉塞セルの個数比率については、坏土を調製する際の水分量を65質量部以下の範囲でそれぞれ変更し、押出成形時における、ハニカム成形体の隔壁表面の成形状態を変化させることによって調節した。
【0061】
実施例2~9及比較例1~8のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、「NOx浄化率(%)」、「アイソスタティック強度(MPa)」、及び「圧縮強度(MPa)」の測定を行った。結果を、表2に示す。
【0062】
(結果)
実施例1~9のハニカム構造体は、比較例1のハニカム構造体と比較して、NOx浄化性能の向上を図ることができた。また、実施例1~9のハニカム構造体のアイソスタティック強度は、いずれも合格レベルであり、浄化性能の向上効果を考慮した場合、十分な強度の低下抑制効果が確認できた。
【0063】
比較例2のハニカム構造体は、突起部の占める面積比率が2%であり、NOx浄化性能についての向上が見られなかった。
比較例3のハニカム構造体は、突起部の占める面積比率が85%であり、NOx浄化性能が低下していた。
比較例4のハニカム構造体は、部分閉塞セルの個数比率が5%であり、NOx浄化性能についての向上が見られなかった。
比較例5のハニカム構造体は、部分閉塞セルの個数比率が85%であり、NOx浄化性能が低下していた。
比較例6のハニカム構造体は、隔壁の最も薄い部分の厚さが0.032mmであり、アイソスタティック強度及び圧縮強度が低下していた。
比較例7のハニカム構造体は、隔壁の一部が欠損しており、アイソスタティック強度及び圧縮強度が著しく低下していた。
比較例8のハニカム構造体は、セルの延びる方向の全長方向にわたって突起部が連続的に形成されるように構成されたハニカム構造体である。即ち、比較例8のハニカム構造体においては、部分閉塞セルの延びる方向の全域に突起部が形成されていた。この比較例8のハニカム構造体は、嵩密度が増大することにより、NOx浄化性能が低下していた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のハニカム構造体は、排気ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1:隔壁、2:セル、2a:部分閉塞セル2a、3:外周壁、4:ハニカム構造部、11:第一端面、12:第二端面、100:ハニカム構造体、S0:流路面積(部分閉塞セルの突起部を含む流路面積)、S1:面積(突起部の占める面積)。
図1
図2
図3
図4
図5