(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】地上子
(51)【国際特許分類】
B61L 3/12 20060101AFI20220106BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20220106BHJP
H03H 5/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B61L3/12 A
H01F38/14
H03H5/02
(21)【出願番号】P 2018096390
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2020-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】關 淳史
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-325418(JP,A)
【文献】特開2014-222707(JP,A)
【文献】特開昭55-056736(JP,A)
【文献】実開昭58-090713(JP,U)
【文献】特開2011-031816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 3/12
H01F 38/14
H03H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の車上子によって送信される送信信号に対して共振することで、共振周波数が前記車上子によって検知される変周式又は共振式の地上子であって、
第1のコンデンサと、
複数層に形成されたスパイラル導体パターンが前記第1のコンデンサに並列接続されて構成された第1のインダクタと、
第2のコンデンサと、
複数層に形成されたスパイラル導体パターンが前記第2のコンデンサに並列接続されて構成された第2のインダクタと、
を備え、
前記第1のインダクタを構成するスパイラル導体パターンの複数層のうちの第1層と第2層との間に、前記第2のインダクタを構成するスパイラル導体パターンの複数層のうちの第1層が介在して配置され、且つ、平面視において、前記第1のインダクタを構成する複数層のスパイラル導体パターンと、前記第2のインダクタを構成する複数層のスパイラル導体パターンとは、所定の重なり幅で部分的に重ねて配置されており、
前記第1のコンデンサ及び前記第1のインダクタで構成される第1の共振回路は、第1の共振周波数で共振し、
前記第2のコンデンサ及び前記第2のインダクタで構成される第2の共振回路は、第2の共振周波数で共振し、
前記車上子からの前記送信信号に対して前記第1の共振周波数及び前記第2の共振周波数で同時に共振する変周式又は共振式の地上子。
【請求項2】
前記スパイラル導体パターンは、短手方向の長さが80~200mm、長手方向の長さが180~250mmである、
請求項1に記載の地上子。
【請求項3】
前記スパイラル導体パターンは、導体厚みが100~600μmである、
請求項1又は2に記載の地上子。
【請求項4】
前記スパイラル導体パターンは、導体幅が100~600μmである、
請求項1~3の何れか一項に記載の地上子。
【請求項5】
前記スパイラル導体パターンは、巻回回数が15~40である、
請求項1~4の何れか一項に記載の地上子。
【請求項6】
前記所定の重なり幅は、前記送信信号に対する共振時の前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとの間の電磁結合状態が所定の低減状態となる幅である、
請求項
1~5の何れか一項に記載の地上子。
【請求項7】
前記第1のインダクタのスパイラル導体パターンと、前記第2のインダクタのスパイラル導体パターンとは、列車走行方向の交差方向に部分的に重ねて配置された、
請求項
1~6の何れか一項に記載の地上子。
【請求項8】
前記第1のインダクタを構成するスパイラル導体パターンの各層と、前記第2のインダクタを構成するスパイラル導体パターンの各層とが互い違いの層に形成されて、前記第1のインダクタ及び前記第2のインダクタが一体の積層体で構成された、
請求項1~
7の何れか一項に記載の地上子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変周式又は共振式の地上子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、変周式の地上子を地上側に設置し、車上側で地上子を検知することで列車の停止制御や速度制御を行う技術が知られている。車上側では、車上子が地上子と接近したときに当該地上子と電磁結合して車上子の共振周波数が変化することを利用して、地上側からの情報を受信する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変周式の地上子は、車上子と電磁結合するインダクタを有するが、このインダクタは、性能として規定周波数で共振し、且つ、高いQ値が生じることが求められる。従来、地上子のインダクタは、銅線を手巻きすることで作成されていた。しかし、銅線を巻く作業に工数がかかること、巻き方のばらつきによってインダクタンス値にばらつきが生じるため、所望の共振周波数が得られるように共振コンデンサを調整する必要があること、から、地上子の製造に大きな手間とコストを要していた。
【0005】
なお、変周式の応用方式として共振式が知られている。変周式が車上子の共振周波数を変化させる方式であるのに対して、共振式は、車上子から送信された複数の周波数のうちの共振周波数の振幅を大きくさせる方式(例えば、スペクトラム拡散方式や、新変周式とも称される方式)である。共振式は変周式の応用方式であり、広義においては共振式も変周式に含めることができると考えられるが、変周式を狭義に解釈される場合のために、念のため本明細書では別用語として記載する。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高いQ値とばらつきの少ない共振周波数を有し、且つ、製造が容易な、変周式又は共振式の地上子を実現することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、
コンデンサと、
複数層に形成されたスパイラル導体パターンが前記コンデンサに並列接続されて構成されたインダクタと、
を備え、車上子からの送信信号に対して所定の共振周波数で共振する変周式又は共振式の地上子である。
【0008】
第1の発明によれば、複数層に形成されたスパイラル導体パターンによってインダクタが構成されるため、いわゆる電子部品を実装していないプリント基板(一般的には生基板あるいはベアボードという)でインダクタを実現することが可能となる。これにより、インダクタンス値のばらつきが理論上無くなり、高いQ値とばらつきの少ない共振周波数を有する地上子を容易に製造することが可能となる。また、複数層に形成されたスパイラル導体パターンをコンデンサに並列接続してインダクタを構成することで、電流経路を増加させ、例えば導体幅や導体厚みが600μm以下の銅箔でスパイラル導体パターンを形成したとしても、抵抗値を小さい値に抑えることができるので、一層高いQ値を実現することが可能となる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の地上子であって、
前記スパイラル導体パターンは、短手方向の長さが80~200mm、長手方向の長さが180~250mmである、
記載の地上子である。
【0010】
第2の発明によれば、インダクタを構成するスパイラル導体パターンが、短手方向の長さを80~200mm、長手方向の長さを180~250mm、のサイズに形成される。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明の地上子であって、
前記インダクタは、平面視において、同じ巻回方向で、且つ、重なったスパイラル形状に形成された多層のスパイラル導体パターンが、前記並列接続されて構成された、
地上子である。
【0012】
第3の発明によれば、平面視において、巻回方向が同じであり、且つ、重なるように形成された多層のスパイラル導体パターンがコンデンサに並列接続されて構成されることで、インダクタを必要最小限のサイズで構成することができる。例えば、プリント基板の両面にスパイラル導体パターンを実装してインダクタを構成することができる。
【0013】
第4の発明は、第1~第3の何れかの発明の地上子であって、
前記スパイラル導体パターンは、導体厚みが100~600μmである、
地上子である。
【0014】
第4の発明によれば、スパイラル導体パターンの導体厚みを、100~600μm、としてインダクタが構成されることで、地上子をATS地上子とする場合に、高周波帯で用いられる場合に問題となる渦電流による表皮効果及び近接効果の影響を抑制して高いQ値を実現することができる。
【0015】
第5の発明は、第1~第4の何れかの発明の地上子であって、
前記スパイラル導体パターンは、導体幅が100~600μmである、
地上子である。
【0016】
第5の発明によれば、スパイラル導体パターンの導体幅を、100~600μm、としてインダクタが構成されることで、地上子をATS地上子とする場合に、高周波帯で用いられる場合に問題となる渦電流による表皮効果及び近接効果の影響を抑制して高いQ値を実現することができる。
【0017】
第6の発明は、第1~第5の何れかの発明の地上子であって、
前記スパイラル導体パターンは、巻回回数が15~40である、
地上子である。
【0018】
第6の発明によれば、スパイラル導体パターンの巻回回数を、15~40回、として、インダクタが構成されることで、自己共振周波数の低下を抑制しつつインダクタンス値を大きくして、高いQ値を実現することができる。
【0019】
第7の発明は、第1~第6の何れかの発明の地上子であって、
前記コンデンサ及び前記インダクタの組み合わせとして、第1のコンデンサ及び当該第1のコンデンサに接続された第1のインダクタと、第2のコンデンサ及び当該第2のコンデンサに接続された第2のインダクタと、
を備え、
平面視において、前記第1のインダクタのスパイラル導体パターンと、前記第2のインダクタのスパイラル導体パターンとが、所定の重なり幅で部分的に重ねて配置された、
地上子である。
【0020】
第7の発明によれば、車上子からの送信信号に対して2種類の共振周波数で共振することが可能な地上子であって、上述の第1~第6の何れかの発明の効果を発揮する地上子を実現することができる。この地上子では、第1のコンデンサ及び第1のインダクタでなる第1の共振回路の共振周波数と、第2のコンデンサ及び第2のインダクタでなる第2の共振回路の共振周波数と、の2種類の共振周波数の組み合わせの情報を、地上側から車上側へ伝送することができる。
【0021】
第8の発明は、第7の発明の地上子であって、
前記所定の重なり幅は、前記送信信号に対する共振時の前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとの間の電磁結合状態が所定の低減状態となる幅である、
地上子である。
【0022】
第8の発明によれば、第1のインダクタと第2のインダクタとの間の電磁結合状態が所定の低減状態となる重なり幅で、第1のインダクタ及び第2のインダクタそれぞれのスパイラル導体パターンが重ねて配置されるので、第1のコンデンサ及び第1のインダクタでなる第1の共振回路、及び、第2のコンデンサ及び第2のインダクタでなる第2の共振回路、それぞれの共振周波数特性が互いに影響し合うことを回避することができる。
【0023】
第9の発明は、第7又は第8の発明の地上子であって、
前記第1のインダクタのスパイラル導体パターンと、前記第2のインダクタのスパイラル導体パターンとは、列車走行方向の交差方向に部分的に重ねて配置された、
地上子である。
【0024】
第9の発明によれば、第1のインダクタのスパイラル導体パターンと、第2のインダクタのスパイラル導体パターンとが、列車走行方向の交差方向に部分的に重ねて配置されることで、第1のインダクタ、及び、第2のインダクタが、ほぼ同時に車上子からの送信信号に対して共振することが可能となり、2種類の共振周波数の組み合わせに相当する情報を、1箇所で車上側へ伝送することが可能となる。
【0025】
第10の発明は、第7~第9の何れかの発明の地上子であって、
前記第1のインダクタを構成するスパイラル導体パターンの各層と、前記第2のインダクタを構成するスパイラル導体パターンの各層とが互い違いの層に形成されて、前記第1のインダクタ及び前記第2のインダクタが一体の積層体で構成された、
地上子である。
【0026】
第10の発明によれば、第1のインダクタを構成するスパイラル導体パターンの各層と、第2のインダクタを構成するスパイラル導体パターンの各層が互い違いの層に形成されるので、上方を通過する車上子と、第1のインダクタ、及び、第2のインダクタがほぼ均等に電磁結合することができ、共振周波数の信号強度を同等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0029】
[構成]
図1は、本実施形態における地上子10の設置例を示す模式図である。
図1に示すように、地上子10は、一対のレール1の内側であって、レール1を支持するまくらぎ3の上面に設置される。地上子10は、変周式又は共振式のATS地上子であり、上方を通過する列車の車上子からの送信信号に対して、所定の周波数で共振する共振回路を備える。
【0030】
また、地上子10は、受動素子で回路が構成されており、電源を必要とせず、演算回路等のいわゆる電子回路やリレー等を搭載していない。つまり、他装置とのケーブル接続の必要がなく、単体で設置完了となる装置である。また、電源を使用し、演算回路等のいわゆる電子回路やリレー等を搭載している地上子に比べて、故障率を大幅に低減することができる。
【0031】
図2は、地上子10の構成例を示す斜視図である。
図2に示すように、地上子10は、外形形状が平板状をなし、共振回路のインダクタがパターン実装された基板20を有する。基板20には、複数層にスパイラル導体パターンが形成され、共振回路のコンデンサに並列接続されてインダクタが構成されている。本実施形態では、表面(上面)及び裏面(下面)の2層にスパイラル導体パターンがパターン実装されている。また、
図2には、
図3との対比を分かり易くするために、仮の3次元直交座標系の座標軸方向を示した。
【0032】
図3は、基板20のインダクタの配線パターンの概要を説明する図である。
図2に示した座標軸方向と同じ座標軸方向を
図3に示した。
図3に示すように、基板20は表裏の両面2層がプリントパターンとなっており、それぞれに導体パターンを渦巻き状に巻回させたスパイラル導体パターン22a,22b(以下、包括して「スパイラル導体パターン22」という)が形成されている。この2層のスパイラル導体パターン22a,22bがコンデンサ24に並列接続されて、共振回路のインダクタを構成する。
【0033】
コンデンサ24は、共振回路の共振周波数に応じた必要な容量値を有する。或いは、複数種類の共振周波数に対応できるように、これら複数種類の共振周波数それぞれに対応されて予め用意されるコンデンサの中から所望の共振周波数に対応したコンデンサを選択して基板20に搭載することもできる。或いは、複数種類のコンデンサ素子を基板20に搭載しておき、選択或いは組み合わせスイッチを介して、選択的にスパイラル導体パターン22と接続する構成でも良い。
【0034】
図3では、基板20の表面に実装されたスパイラル導体パターン22aは、その表面側から見た形状を示し、裏面に実装されたスパイラル導体パターン22bは、その裏面側から見た形状を示している。つまり、スパイラル導体パターン22a,22bを互いに逆方向から見た形状を示している。
【0035】
スパイラル導体パターン22a,22bは、それぞれの形成面から見たときに、鏡面対称の形状をなしており、同一方向(表面側或いは裏面側)から見たときに重なるように、両面プリント基板20の表面及び裏面に形成されている。つまり、スパイラル導体パターン22は、平面視において、導体パターンの巻回方向、及び、巻回回数が同じであり、且つ、重なるように形成されている。なお、スパイラル導体パターン22の巻回回数は、表面と裏面とで数回程度異なっていても良い。
【0036】
スパイラル導体パターン22の渦巻形状は略矩形状を有しており、その外寸は、長手方向の長さLが180~250mm、短手方向の長さWが80~200mmである。基板20を備える地上子10を、まくらぎ3の上面に設置可能なサイズとなっている。
【0037】
また、
図3ではスパイラル導体パターン22の巻回回数を「3」として概略を図示しているが、実際には「15~40」である。また、内層を追加してスパイラル導体パターンを形成し、追加した内層のスパイラル導体パターンとスパイラル導体パターン22とがコンデンサに対して直列接続になるようにスルーホールにより接続して、追加した内層のスパイラル導体パターンとスパイラル導体パターン22との巻回回数の合計が「15~40」となるように構成しても良い。
【0038】
また、スパイラル導体パターン22は、導体厚み(高さ方向Zの長さ)が100~600μmで形成されている。半導体ICの接続パターンの導体厚みが数μm~数+μmであるのに比べて大きな厚みを有している。また、スパイラル導体パターン22の導体幅(導体配線方向に直交する方向の長さ)は100~600μmである。これも半導体ICの接続パターンに比べて大きな導体幅となっている。
【0039】
[作用効果]
本実施形態の地上子10によれば、車上子と電磁結合するためのインダクタを、基板20の複数層(本実施形態の両面)に実装したスパイラル導体パターン22として構成することで、従来の銅線を手巻きしてインダクタを形成する場合に比較して、インダクタの製造が容易となるとともに、インダクタンス値のばらつきが小さくなることから、所望の共振周波数を得るための共振コンデンサの調整の手間を低減することができる。これにより、地上子の製造に要する手間とコストを低減し、製造ばらつきの小さい高品質な地上子を容易に製造することが可能となる。
【0040】
また、形成した複数のスパイラル導体パターン22をコンデンサ24に並列接続することで、高いQ値を実現することができる。スパイラル導体パターン22を並列接続することで、電流経路を増加させ、例えば導体厚みや導体幅が600μm以下の銅箔でスパイラル導体パターン22を形成した場合であっても、抵抗値を小さい値に抑えることができるため、高いQ値を実現することが可能となるのである。電流経路の増加は、50~100kHz程度の高周波帯で用いる場合であっても、渦電流に起因する表皮効果と近接効果の影響を低減することができる。
【0041】
また、一般的に、導体パターンの巻回回数を多くすることでインダクタンス値を大きくすることができるが、その一方で、巻回回数が過剰となると、インダクタの自己共振周波数が低下する。このため、本実施形態のように、2層のスパイラル導体パターン22を並列接続する場合は、その巻回回数を15~40回とすることで、適切な自己共振周波数と高いQ値との両立を図ることができる。
【0042】
更に、平面視において、巻回方向及び巻回回数が同じである2層のスパイラル導体パターン22を重なるように形成することで、地上子10の上方を通過する車上子との間で生じる電磁誘導作用が、各スパイラル導体パターン22で同時且つ同等に発生させることができるため、複数のスパイラル導体パターン22でありながら、単一のスパイラル導体パターンであるかのような作用効果を期待できる。
【0043】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0044】
(A)複数層
例えば、上述の実施形態では、2層のスパイラル導体パターン22がコンデンサに並列接続されて1つのインダクタを構成する例を説明したが、3層以上のスパイラル導体パターンがコンデンサに並列接続されて1つのインダクタを構成するようにしても良い。
【0045】
(B)複数の共振回路
また、上述の実施形態では、1つの共振回路を備える(つまり、1種類の共振周波数を有する)地上子10について説明したが、複数の共振回路を備える(つまり、複数種類の共振周波数を有する)地上子に本発明を適用することも可能である。
【0046】
例えば、第1の共振周波数で共振する第1の共振回路と、第2の共振周波数で共振する第2の共振回路と、を備える地上子を構成することができる。第1の共振回路は、第1のインダクタ及び第1のコンデンサを有し、第2の共振回路は、第2のインダクタ及び第2のコンデンサを有するように構成する。第1のインダクタ、及び、第2のインダクタのそれぞれは、例えば、
図4、
図5に示すような積層構造の基板30によって一体の積層体で構成することができる。
図4は、基板30の概略形状を示す図であり、
図5は、基板30の各層を分解して示す図である。
【0047】
基板30はL1~L4の4層で構成され、第1のインダクタをL1層とL3層に形成されたスパイラル導体パターン22-1a,22-1bで構成し、第2のインダクタをL2層とL4層に形成されたスパイラル導体パターン22-2a,22-2bで構成した構造となっている。
【0048】
第1のインダクタを構成するスパイラル導体パターン22-1a,22-1bは、第1のコンデンサ24-1に並列に接続されて構成される。この第1のインダクタのみに着目した構成は、上述した実施形態のインダクタと同様であり、スパイラル導体パターン22-1a,22-1bが、スパイラル導体パターン22a,22bに相当する。
【0049】
同様に、第2のインダクタを構成するスパイラル導体パターン22-2a,22-2bは、第2のコンデンサ24-2に並列に接続されて構成される。この第2のインダクタのみに着目した構成は、上述した実施形態のインダクタと同様であり、スパイラル導体パターン22-2a,22-2bが、スパイラル導体パターン22a,22bに相当する。
【0050】
そして、第1のインダクタを構成するスパイラル導体パターン22-1a,22-1bと、第2のインダクタを構成するスパイラル導体パターン22-2a,22-2bとは、平面視において、列車走行方向(X方向)の交差方向(Y方向)に所定の重なり幅W1で部分的に重なるように形成される。この重なり幅W1は、車上子からの送信信号に対する共振時の第1のインダクタと第2のインダクタとの間の電磁結合状態が所定の低減状態となる幅とされる。低減状態とは、当該共振時の第1のインダクタンスと第2のインダクタンスとの間の電磁結合状態が、無視できる程度に充分小さい状態という。
【0051】
当該共振時における第1のインダクタと第2のインダクタとの電磁結合の度合は、重なり幅W1によって増減する。例えば、当該共振時に第1のインダクタに生じる磁束に着目すると、この第1のインダクタに生じる磁束の第2のインダクタを貫く向きが、第2のインダクタの内側領域のうちの第1のインダクタと重なった部分23aと、第1のインダクタと重なっていない部分23bとで逆になり、各部分23a,23bの磁束が打ち消し合ってその総和が変動するためである。当該共振時に第2のインダクタに生じた磁束の第1のインダクタを貫く向きについても同様のことがいえる。従って、各部分23a,23bの磁束の総和がゼロになる(或いは、ゼロ相当になる)ように、換言すると各部分23a,23bで磁束が等しくなるように重なり幅を設定すれば、当該共振時の第1のインダクタと第2のインダクタとの電磁結合をほぼゼロの状態(ゼロ相当状態)とすることができる。
【0052】
そこで、事前に電磁界解析を行い、電磁結合状態をゼロ相当状態とする重なり幅を設計幅として規定しておく。そして、設計幅に対して5mm以下の誤差範囲に収まる重なり幅W1で、第1のインダクタを構成するスパイラル導体パターン22-1a,22-1bと、第2のインダクタを構成するスパイラル導体パターン22-2a,22-2bとを、部分的に重なるように形成することにより、電磁結合状態の低減状態を実現する。本実施形態のように、基板にスパイラル導体パターンを形成することでインダクタンスを構成することで、重なり幅W1に関する地上子の製造ばらつきを、設計幅に対して5mm以下の誤差範囲に抑えることができる。これによれば、車上子からの送信信号に対する共振時に、第1のインダクタと第2のインダクタとが電磁結合し、各共振回路の共振周波数特性に影響し合う事態を抑制できる。よって、共振周波数の組み合わせの情報を、車上側へ正確に伝送することが可能となる。
【0053】
また、基板30において、第1のインダクタを構成するスパイラル導体パターン22-1a,22-1bと、第2のインダクタを構成するスパイラル導体パターン22-2a,22-2bとは、列車走行方向(X方向)の交差方向(Y方向)に部分的に重なるように形成される。このため、地上子は、上方を車上子が通過したときに、当該車上子からの送信信号に対して、第1の共振周波数及び第2の共振周波数の2種類の共振周波数で同時に共振する。上述のように、第1のインダクタと第2のインダクタとの重なり幅W1は、第1の共振回路と第2の共振回路との共振周波数特性に影響し合うことがない幅とされているため、車上装置においては、送信信号に対する地上子の共振時に車上子に生じた周波数信号を解析することで、2種類の共振周波数をほぼ同時に一度に検出することができる。
【0054】
また、第1のインダクタを構成するスパイラル導体パターン22と第2のインダクタを構成するスパイラル導体パターン22とが、列車走行方向(X方向)の交差方向(Y方向)に部分的に重なるように形成することにしたが、列車走行方向(X方向)に部分的に重なるように形成するようにしても良い。
【0055】
更に、第1のインダクタ、及び、第2のインダクタを、3層以上のスパイラル導体パターン22をコンデンサに並列接続して構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0056】
10…地上子
20…基板
22(22a,22b)…スパイラル導体パターン
24…コンデンサ
1…レール
3…まくらぎ