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  • 特許-紙葉類取扱装置及び紙葉類取扱方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】紙葉類取扱装置及び紙葉類取扱方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/08 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
B65H3/08 320
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018145552
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020019641
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 亨
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀 盛豊
(72)【発明者】
【氏名】玉本 淳一
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/039045(WO,A1)
【文献】特開2002-252441(JP,A)
【文献】特開2010-47334(JP,A)
【文献】特開平3-23127(JP,A)
【文献】米国特許第5083763(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を取り扱う紙葉類取扱装置であって、紙葉類の表面を吸着する吸着機構を少なくとも2つ以上備え、負圧を発生させず或いは比較的に低い負圧となるように前記吸着機構を前記紙葉類に接触させ、前記接触した状態で接触部分の相対距離を近づけるように操作し、前記操作の後に前記紙葉類との間に負圧を発生或いは大きくすることを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項2】
請求項1において、前記の2つ以上の吸着機構が、持ち上げようとする紙葉類の湾曲にそうように傾いた状態で取り付けられていることを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項3】
請求項1において、前記の2つ以上の吸着機構が、紙葉類を吸着したタイミングを検知することのできる吸着タイミング検知手段を備え、前記吸着タイミング検知手段により、重ねられた紙葉類束の高さ検知および紙葉類の吸着確認を行うことを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項4】
請求項1において、前記の2つ以上の吸着機構の間に、紙葉類を持ち上げた後に、姿勢を保持することを補助するための紙葉類姿勢補助部材を有することを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項5】
請求項1において、前記吸着機構を動作させた状態で紙葉類に近づけ、前記吸着機構の圧力状態を検知することで、前記吸着機構が前記紙葉類に接触したと検知することを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項6】
請求項5において、前記吸着機構が前記紙葉類に接触したことが検知されると、前記紙葉類に近づける動作を停止することを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項7】
請求項6において、前記吸着機構が前記紙葉類に接触したことが検知されると、前記吸着機構の圧力吸引を弱くするか或いはゼロにすることを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項8】
少なくとも2の紙葉類吸着機構のそれぞれを積層された紙葉類のうちの上部の紙葉類に負圧を発生させず或いは比較的に低い負圧で接触させ、前記接触した状態で接触部分の相対距離を近づけるように操作し、前記操作の後に前記紙葉類との間に負圧を発生或いは大きくし、前記上部の紙葉類を他の紙葉類から分離する紙葉類取扱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類取扱装置及び紙葉類取扱方法に係り、特に、紙葉類を適切に取り扱うことができる紙葉類取扱装置及び紙葉類取扱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類取扱装置は、収納庫内に整列した状態で重ねられた紙葉類の束から、一枚を分離するものである。このような紙葉類取扱装置として、銀行等の金融機関で使用されている自動取引装置やプリンタなどが知られており、一方、ロボットハンドなどが用いられる生活空間内においては、資料やパンフレットなどの紙葉類は、搬送ガイドや収納庫といった機構がなく机上や床などに重ねられた状態で置かれる場合が多い。
【0003】
従来、紙葉類を持ち上げる装置としては、吸着ノズルにて持ち上げる装置が提案されている。例えば、持ち上げるために2つ以上の吸引ノズルを有するものが知られている。この装置では、吸引ノズルで最上層のシート材を吸引し、その最上層のシート材を吸引した状態で、吸引ノズル間の距離が小さくなるように移動させ、その後、吸引ノズルで最上層のシート材を持ち上げて他のシート材から分離して取り出している。このような技術は、例えば、WO2016/039045号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2016/039045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の技術では、比較的に薄い紙葉類に適用した場合、紙葉類束に対して、吸着ノズルにて1枚目を吸着させているので、その吸着に伴い多重吸着してしまう。この状態で吸着ノズル(吸着パッド或いは吸着手段)を近接させても、多重吸着した紙葉類は、くっついたまま持ち上げてしまうという問題がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、資料やパンフレットなどの重ねられた状態で置かれた紙葉類束に対して、1枚目のみを確実に持ち上げ、持ち上げた後にその姿勢を維持することが可能な紙葉類取扱装置及び紙葉類取扱方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、紙葉類の表面を吸着する紙葉類吸着機構を少なくとも2つ以上備え、負圧を発生させず或いは比較的に低い負圧となるように前記紙葉類吸着機構を前記紙葉類に接触させ、前記接触した状態で接触部分の相対距離を近づけるように操作し、前記操作の後に前記紙葉類との間に負圧を発生或いは大きくするように構成した。
【0008】
好ましくは、紙葉類を取り扱う紙葉類ハンドリング装置であって、紙葉類の表面を吸着する紙葉類吸着手段を、少なくとも2つ以上備えるとともに、前記2つ以上の吸着手段は、紙葉類面内におけるその相対距離を可変する吸着手段面内駆動手段を備え、前記の2つ以上吸着手段によってハンドリングする紙葉類の表面の複数位置を吸着する際、前記の吸着手段面内駆動手段により、吸着手段の相対位置を近づけることで、紙に湾曲を与えた後、吸着を行い、前記の2つ以上の吸着手段を、持上げるように動作させる。
【0009】
また、好ましくは、前記の2つ以上の吸着手段が、持ち上げようとする紙葉類の湾曲にそうように傾いた状態で取り付けられていることが好ましい。このとき、前記の2つ以上の吸着手段が、紙葉類を吸着したタイミングを検知することのできる吸着タイミング検知手段を備え、前記吸着タイミング検知手段により、重ねられた紙葉類束の高さ検知および紙葉類の吸着確認を行う。
【0010】
また、好ましくは、前記の2つ以上の吸着手段の間に、紙葉類を持ち上げた後に、姿勢を保持することを補助するための紙葉類姿勢補助部材を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、資料やパンフレットなどの重ねられた状態で置かれた紙葉類束に対して、1枚目のみを確実に持ち上げ、持ち上げた後にその姿勢を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1にて重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作の斜視図
図2】重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す動作のフローチャート
図3】実施形態1と実施形態2にて重ねられた紙葉類から1枚目を吸着する際の比較図
図4】実施形態3にて重ねられた紙葉類から1枚目を取り出す一連動作の斜視図
図5】実施形態3にて重ねられた紙葉類から1枚目を吸着する際の図
図6】本発明の紙葉類取扱装置構造の一例
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
(実施形態1)
図6に、本発明の紙葉類取扱装置構造の一例を示す。本構造では、2つの吸着手段101,102を、制御部604にて、吸着手段面内駆動手段601を駆動することにより、その相対距離を可変する。また、2つの吸着手段101,102は、吸着手段上下機構605に接続されており、紙葉類面に対して垂直な方向へ稼動する。
【0015】
また、吸引源として真空ポンプ603を用いており、そのON/OFFを制御部604にて制御することにより、吸着の制御を行う。また、吸着手段101,102と真空ポンプ603の間には、吸着タイミング検知手段として負圧計602が配管されており、その値を制御部604に送信することで、吸着したタイミングを検知する。
【0016】
以上の構成により、制御部604を図2において示したフローチャートに従い動作させることで、安価な構成で積み重ねられた紙葉類より1枚目103のみを持ち上げることが可能となる。
【0017】
まず、図1により、紙葉類取扱機構の基本的動作として、重ねられた紙葉類110から1枚目103を取り出す一連動作の斜視図を用いて説明する。図1の(a)に示すように、本発明では少なくとも2つ以上の吸着手段を有する。図中では、最小構成である2つの吸着手段101,102の場合を示している。
【0018】
図1の(b)は、1枚目103を持ち上げるために吸着手段101,102を吸着手段上下機構にて矢印方向105に下降させ、1枚目103と接触させている状態を示している。本発明では、この状態では、吸着手段101,102をOFF状態にしておき、1枚目103と吸着手段101,102を接触させるだけにとどめる。
【0019】
図1の(c)は、接触させていた2つの吸着手段101,102の相対距離を近づけることで、1枚目103を変形させる様子を示している。この際の変形は、吸着手段101,102による摩擦力によるものであるため、吸着手段101,102の先端は、吸着力と摩擦力の確保の観点より、ゴムパッドのような弾性摩擦材であることが望ましい。
【0020】
これにより、紙葉類を変形させる際は、1枚目103には、弾性摩擦材 (吸着手段101,102)と紙葉類(1枚目103)の摩擦力が加わり、2枚目には、紙葉類(1枚目103)と紙(2枚目)の摩擦力がそれぞれ加わり、変形させるため、1枚目103と2枚目に加わる力に大きな差が生じる。そのため、1枚目103に対して2枚目が完全に密着したまま、変形する可能性は小さい。その結果、1枚目103と2枚目に隙間が生じるので、多重吸着を防ぐことができる。
【0021】
この動作により、図中に示すように持ち上げようとする1枚目103と2枚目以降の紙葉類との間に隙間が生じる。この隙間が生じることによって、吸着手段101,102によって吸着力を発生させた際に、2枚目以降の紙葉類へ吸着力が伝わることを防ぐことができる。その後、吸着手段101,102をON状態とし、1枚目103を吸着させる。
【0022】
図1の(d)は、吸着手段101,102にて吸着したのち、1枚目103を吸着手段上下機構にて矢印方向108に持ち上げている様子を示している。図に示すように、紙に湾曲を与えることで、矢印方向109に対する剛性を向上させることができる。これにより、1枚目103を持ち上げた際に、重力に負けて垂れ下がることがなく、まっすぐな姿勢を保ったまま持ち上げることができる。このように姿勢を保つことで、紙葉類の取り扱いが容易になり、例えば、収納庫への格納や人への配布といった動作をこの状態のまま行うことが可能となる。
【0023】
図2を用いて、図1(a)~(d)の基本的動作を更に具体的に、重ねられた紙葉類110から1枚目103を取り出す動作のフローチャートで説明する。フローチャートでは、あらかじめ紙葉類の吸着点上に、本発明の紙葉類取扱機構を移動させた後の動作であることに注意されたい。実際の制御では、まず吸着手段101,102の吸着をONにする(S201)。
【0024】
また、これらの吸着手段101,102は、吸引源である真空ポンプ602につながれており、例えば、制御部604による真空ポンプ603のON/OFF制御(或いは吸引源までの配管途中に電磁弁)を設け、ON/OFF制御することで、吸着のON/OFFを制御することができる。このように、吸着手段101,102の吸着ON動作は、真空ポンプ603のONによって実行される。すなわち、真空ポンプ603のON動作によって、吸着手段101,102から真空ポンプ603に空気が吸引される。S201は、図1(a)に相当する。
【0025】
真空ポンプ603と吸着手段101、102の間に、1枚目103を吸着したタイミングを検知することのできる吸着タイミング検知手段(例えば、流量計や負圧計など)である負圧計602を設けている。
【0026】
次に、紙葉類に対してアプローチするために吸着手段101,102を下降させる(S202)。吸着手段101,102の吸着ONの状態を維持したまま下降させる。2つの吸着手段101,102は、吸着手段上下機構605に接続されており、紙葉類面に対して垂直な方向へ稼動することができる。
【0027】
さらに下降して、吸着手段101,102が紙葉類103に接触すると負圧計602が計測する負圧値が大きくなる。紙葉類に対する下降は、吸着タイミング検知手段として構成される負圧計602により、吸着手段101,102と紙葉類103の接触が検知されるまで行い(S203)、検知された状態で、吸着手段101,102の吸引および下降を停止させる(S204)。すなわち、真空ポンプ603をOFFすることで、吸着手段101,102をOFFの状態にする。
【0028】
なお、本実施形態では、吸着タイミング検知手段により、吸着手段の下降停止タイミングを決定するが、重ねられた紙葉類110の正確な高さを別の手段(例えば、カメラやレーザなど)により検知できる場合は、その高さに合わせた下降距離をあらかじめ決めておき、S201~S204までの工程を省いてもよい。S202~S204は、図1(b)に相当する。
【0029】
S204までの工程を終えると、図1の(b)に示す状態となっているため、次に相対距離移動手段を用いて、2つの吸着手段101,102を近づける(S205)。吸着手段101,102は、吸着手段面内駆動手段601により、紙葉類面内におけるその相対距離を可変することができる。S205は、図1(c)に相当する。
【0030】
S205にて、1枚目103に変形を与えた後、吸着手段101,102の吸引を再びON状態とする(S206)。すなわち、真空ポンプ603のONによって、吸着手段101,102をONとする。
【0031】
このとき、吸着タイミング検知手段にて正しく1枚目103を吸着できているか確認する(S208)。もし、正しく吸着できていない場合は、1枚目103との接触が弱すぎる場合が考えられるので、吸着手段101,102の相対位置を相対距離移動手段にて元の位置へと戻し(S207)、ふたたび、吸着手段101,102を下降させるS202ステップへ戻る。吸着タイミング検知手段にて正しく吸着ができていることを確認できれば、吸着手段101,102を紙面の垂直方向へ持ち上げることで(S209)、その姿勢を維持したまま持ち上げ動作を完了する。S206~S209は、図1(d)に相当する。
【0032】
なお、この実施例では、吸着手段101,102と紙葉類103の接触が検知されると、真空ポンプ603をOFFとしたが、その代わりに、真空ポンプ603をわずかに動作させておいても良い。
【0033】
(実施形態2)
図3は、実施形態2を示す。実施形態2は実施形態1の変形例である。実施形態2では実施形態1と異なる部分を説明する。よって説明が省略されて部分は実施形態1と同様である。実施形態2にて重ねられた紙葉類110から1枚目103を吸着する際の様子を実施形態1と比較した図を示している。実施形態2では、図中の(a’)に示すようにあらかじめ吸着手段を紙葉類の変形に沿うように傾けた吸着手段302、303を有する。実施形態1では、1枚目103を吸着する際、図3(a)、(b)に示すように紙葉類を変形させ、1枚目103と2枚目301の間に隙間を生じさせていたが、実施形態2では、より確実に吸着手段の下の紙面で隙間を生じさせるように傾けた吸着手段302、303を有する。図中の(a’)では、吸着手段302、303を下降させた後の状態を示している。ただし、実施形態2では、吸着手段302、303を紙面に対して傾けているため、下降停止タイミングに吸着タイミング検知手段を用いることができない。言い換えると、図2のS202において、吸着手段302、303を傾けた状態で下降させる。
【0034】
そのため、図2のS203において、重ねられた紙葉類110の正確な高さを別の手段(例えば、カメラやレーザなど)により検知し、その高さに合わせた下降距離をあらかじめ決めておくことで、(a’)に示す状態まで紙に対してアプローチする。その後、実施形態1のときと同様にして相対距離移動手段にて傾けた吸着手段302、303を近づけることで、1枚目103を変形させる。このとき、実施形態1とは異なり、あらかじめ湾曲方向へ傾けていた効果により、図中の(b’)に示す状態となる。この状態では、持ち上げようとする1枚目103と2枚目301の間に確実に隙間が生じているため、多重吸着をより確実に防ぐことが可能となる。また、紙の変形曲率も大きくなるため、変形させたときの1枚目103に対するダメージを低減させることができる。なお、記載していないその他の動作や機構構成は実施形態1のときと同様である。
【0035】
(実施形態3)
図4は、実施形態3を示す。実施例3では前述の実施形態と異なる部分を説明する。実施形態3にて重ねられた紙葉類110から1枚目103を取り出す一連動作の斜視図を示している。図4の(a)に示すように、実施形態3では、実施形態1の基本構成に加えて、吸着手段101,102の間に、1枚目103を持ち上げた後に、姿勢を保持することを補助するための紙葉類姿勢補助部材402を有する。紙葉類姿勢補助部材402は図示しない移動機構を介して制御部604によって移動される。
【0036】
図4の紙葉類姿勢補助部材402は、弾性体401に接続され、吸着面よりも下に押し込むように取り付けられている。ただし、機構を安価に済ませるために、弾性体401に接続せず、吸着面まで抑えるように固定されていてもよい。
【0037】
図4の(b)は、1枚目103を持ち上げるために吸着手段101,102を下降させ、1枚目103と接触させている状態を示している。このとき、吸着面よりも押し込まれていた紙葉類姿勢補助部材402は、接続された弾性体401が縮むことにより、吸着面まで押し戻される。
【0038】
図4の(c)は、接触させていた2つの吸着手段101,102の相対距離を近づけることで、1枚目103を変形させる様子を示している。1枚目103の変形は、実施形態1とは異なり、2つの吸着手段101,102の間が、紙葉類姿勢補助部材402で押さえられているため、図中に示すような2つの山ができる。なお、この状態においても、実施形態1のときと同様に、持ち上げようとする1枚目103と2枚目以降の紙葉類の間に隙間が生じるため多重吸着防止性能が低下することはない。
【0039】
図4の(d)は、吸着手段101,102にて吸着したのち、1枚目103を持ち上げている様子を示している。図に示すように、持ち上げた後は、紙葉類姿勢補助部材402により、2つの吸着手段101,102の間が押し込まれるため、実施形態1とは異なり、紙葉類の変形は下に凸の形状となる。このように、下に凸の変形を1枚目103に与えることで、重力方向である矢印方向109に対する安定性を、実施形態1の上に凸形状よりも向上させることができる。また、2つの吸着手段101,102と紙葉類姿勢補助部材402という3点で紙葉類を押さえているため、より紙葉類の姿勢を安定して保持することができる。
【0040】
図5は、実施形態3にて重ねられた紙葉類110から1枚目103を吸着する際の横から見た図を示している。
まず、図5の(a)に示すように、吸着手段101,102を紙に対して接触させたとき、紙葉類姿勢補助部材402に接続された弾性体401が縮み、3点で接触する状態とする。
【0041】
次に、図5の(b)に示すように、接触させていた2つの吸着手段の相対距離を近づけることで、吸着手段101,102と紙葉類姿勢補助部材402の間に、それぞれ凸形状の変形を1枚目103に与える。
【0042】
その後、図5の(c)に示すように、1枚目103を持ち上げると、押し込まれた弾性体401が伸び、2つの吸着手段101,102の間を押し込む。これにより1枚目103が下に凸の形状となる。下に凸形状とすることは、前記したように、重力方向により強い安定性を持たせるだけでなく、人の手渡し動作と同じ形状であるため、違和感なく人との紙の受け渡しを可能とする。なお、記載していないその他の動作や機構構成は実施形態1のときと同様である。
【0043】
以上、説明したように、本実施例の紙葉類ハンドリング方法およびそれを用いた紙葉類取扱装置を用いることで、簡単な方法で、資料やパンフレットなどの机上や床などに重ねられた状態で置かれた紙葉類束に対して、1枚目のみを確実に持ち上げ、持ち上げた後にその姿勢を維持しハンドリングすることが可能となる。
【0044】
また、纏めると、紙葉類の表面を吸着する紙葉類吸着手段を、少なくとも2つ以上備えることで、紙葉類の吸着面方向のみからのアプローチにより紙葉類を持ち上げることができる。
【0045】
また、紙葉類面内におけるその相対距離を可変する吸着手段面内駆動手段を有し、前記の2つ以上吸着手段によってハンドリングする紙葉類の表面の複数位置を吸着する際、前記の吸着手段面内駆動手段により、吸着手段の相対位置を近づけることで、紙葉類に湾曲を与えた後、吸着を行うことによって、重ねられた状態で置かれた紙葉類束に対しても、持ち上げようとする1枚目と2枚目の間に隙間を生じさせることができるため、多重吸着することがなくなる。さらに、湾曲された紙葉類は、その湾曲により剛性を保つことができるため、持ち上げた後も安定した姿勢を有することができる。これにより、例えば、資料やパンフレットなどの机上や床などに重ねられた状態で置かれた紙葉類束から1枚目を取り出して、紙葉類を垂れ下がらずに保持したまま人に見やすい形で配布するといった動作が可能となる。
【0046】
また、前記の2つ以上の吸着手段が、持ち上げようとする紙葉類の湾曲にそうように傾いた状態で取り付けられていることで、より確実に1枚目と2枚目の間に隙間を生じたのちに、吸着することができるようになるため、多重吸着性能を向上させることができる。このとき、前記の2つ以上の吸着手段が、紙葉類を吸着したタイミングを検知することのできる吸着タイミング検知手段を備え、前記吸着タイミング検知手段により、紙葉類の吸着が確認できた後、紙葉類を持ち上げることで、紙葉類を吸着せずに前記の2つ以上の吸着手段を持ち上げることを防止する。また、前記吸着タイミング検知手段により、あらかじめ、前記の吸着手段を稼動させておき、紙葉類に対してアプローチを行い、吸着タイミング検知手段により吸着を検知することで、積み上げられた紙葉類の高さを検知することができる。
【0047】
また、前記の2つ以上の吸着手段の間に、紙葉類を持ち上げた後に、姿勢を保持することを補助するための紙葉類姿勢補助部材を有することで、前記の2つ以上の吸着手段とあわせて確実に3点以上にて紙葉類と接触するため、より紙葉類の姿勢を安定させることができる。
【0048】
本発明の範囲はこれらに限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲内において種々変更することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
101、102・・・実施形態1における吸着手段
103・・・積み重ねられた紙葉類の1枚目
104・・・紙葉類束のおかれた床
105・・・吸着手段のアプローチ方向
106、107・・・吸着手段の相対距離移動方向
108・・・吸着手段の持ち上げ方向
109・・・矢印
110・・・積み重ねられた紙葉類
301、302・・・実施形態2における吸着手段
303・・・積み重ねられた紙葉類の2枚目
401・・・弾性体
402・・・紙葉類姿勢補助部材
601・・・吸着手段面内駆動手段
602・・・負圧計
603・・・真空ポンプ
605・・・吸着手段上下機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6