(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】液圧回転機
(51)【国際特許分類】
F04B 1/22 20060101AFI20220106BHJP
F03C 1/253 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F04B1/22
F03C1/253
(21)【出願番号】P 2018183678
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩名地 哲也
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-114990(JP,U)
【文献】実開平1-74380(JP,U)
【文献】特開2017-115749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/22
F03C 1/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧回転機であって、
駆動軸の回転に伴って回転するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックに形成され前記駆動軸の周方向に所定の間隔をもって配置される複数のシリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に挿入され前記シリンダの内部に容積室を区画するピストンと、
前記シリンダブロックの回転に伴って前記容積室を拡縮するように前記ピストンを往復動させる斜板と、
供給される制御圧に応じて前記斜板を付勢する第1付勢機構と、
前記第1付勢機構に抗するように前記斜板を付勢する第2付勢機構と、
前記第1付勢機構に導かれる前記制御圧を前記液圧回転機の自己圧に応じて制御するレギュレータと、を備え、
前記第2付勢機構は、
前記自己圧が導かれる圧力室と、
前記圧力室に導かれた前記自己圧によって前記斜板に向けて付勢される制御ピストンと、を有し、
前記レギュレータは、
前記制御ピストンを前記斜板に向けて付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の付勢力に応じて移動して、前記制御圧を調整する制御スプールと、を有することを特徴とする液圧回転機。
【請求項2】
前記制御ピストンには、前記付勢部材を収容する収容孔が形成されることを特徴とする請求項1に記載の液圧回転機。
【請求項3】
前記制御ピストンには、前記圧力室に導かれた前記自己圧を受圧する受圧面が外周に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の液圧回転機。
【請求項4】
前記第1付勢機構は、
前記制御圧が導かれる制御圧室と、
前記斜板に対して前記制御ピストンとは反対側であって前記駆動軸に対する周方向の位置が前記制御ピストンと一致するように設けられ、前記制御圧室に導かれた前記制御圧によって前記制御ピストンに抗するように前記斜板を付勢する駆動ピストンと、を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の液圧回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧回転機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、出力が略一定になるような定馬力特性で吐出圧と吐出流量を制御する馬力制御レギュレータを備える斜板式ピストンポンプが開示されている。この斜板式ピストンポンプは、斜板の傾転角を変える傾転アクチュエータとして、傾転角が大きくなる方向に駆動する小径ピストンと、斜板を傾転角が小さくなる方向に駆動する大径ピストンと、を備える。また、馬力制御レギュレータは、斜板に追従して変位するフィードバックピンを斜板側に押し付ける外側及び内側制御スプリングと、大径ピストンの圧力室に導かれる油圧を制御する制御スプールと、段付き軸部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のピストンポンプでは、傾転アクチュエータとしての小径ピストン及び大径ピストンによって斜板の傾転角度を制御し、馬力制御レギュレータは、フィードバックピンによって斜板の傾転角度を検出して、馬力制御を行う。このようなピストンポンプでは、小径ピストン、大径ピストン、及び馬力制御レギュレータのフィードバックピンのそれぞれの設置スペースを確保する必要があるため、装置が大型化する。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、液圧回転機を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液圧回転機であって、駆動軸の回転に伴って回転するシリンダブロックと、シリンダブロックに形成され駆動軸の周方向に所定の間隔をもって配置される複数のシリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されシリンダの内部に容積室を区画するピストンと、シリンダブロックの回転に伴って容積室を拡縮するようにピストンを往復動させる斜板と、供給される制御圧に応じて斜板を付勢する第1付勢機構と、第1付勢機構に抗するように斜板を付勢する第2付勢機構と、第1付勢機構に導かれる制御圧を液圧回転機の自己圧に応じて制御するレギュレータと、を備え、第2付勢機構は、自己圧が導かれる圧力室と、圧力室に導かれた自己圧によって斜板に向けて付勢される制御ピストンと、を有し、レギュレータは、制御ピストンを斜板に向けて付勢する付勢部材と、付勢部材の付勢力に応じて移動して、制御圧を調整する制御スプールと、を有することを特徴とする。
【0007】
この発明では、制御ピストンは、圧力室の流体圧を受けて斜板を駆動すると共に、レギュレータの付勢部材によって斜板に向けて付勢されて、斜板の傾転に伴い斜板に追従して変位する。よって、制御ピストンが変位すると、付勢部材の付勢力が変化して制御スプールも変位する。このように、制御ピストンは、斜板の傾転角を制御するピストンとしての機能に加え、レギュレータによって流体圧を制御するために斜板の傾転角を検出する機能も発揮するため、傾転角を検出するピンを制御ピストンとは別に設ける必要がない。
【0008】
また、本発明は、制御ピストンには、付勢部材を収容する収容孔が形成されることを特徴とする。
【0009】
この発明では、付勢部材は、制御ピストンに対して軸方向に並んで直列に設けられるものではなく、制御ピストンの内側に設けられる。これにより、付勢部材と制御ピストンが軸方向に並ぶ場合と比較して、省スペース化することができる。
【0010】
また、本発明は、制御ピストンには、圧力室に導かれた自己圧を受圧する受圧面が外周に形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、第1付勢機構は、制御圧が導かれる制御圧室と、斜板に対して制御ピストンとは反対側であって駆動軸に対する周方向の位置が制御ピストンと一致するように設けられ、制御圧室に導かれた制御圧によって制御ピストンに抗するように斜板を付勢する駆動ピストンと、を有することを特徴とする。
【0012】
この発明では、駆動ピストンは、駆動軸の中心軸に対する周方向の位置が制御ピストンと一致するように配置される。これにより、駆動軸の径方向における斜板の大型化を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液圧回転機が小型化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る液圧回転機の断面図である。
【
図2】
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る液圧回転機のレギュレータの構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る液圧回転機100について説明する。
【0016】
液圧回転機100は、外部からの動力によりシャフト(駆動軸)1が回転してピストン5が往復動することで、作動流体としての作動油を供給可能なピストンポンプとして機能し、また外部から供給される作動油の流体圧によりピストン5が往復動してシャフト1が回転することで、回転駆動力を出力可能なピストンモータとして機能する。なお、液圧回転機100は、ピストンポンプとしてのみ機能するものでもよいし、ピストンモータとしてのみ機能するものであってもよい。
【0017】
以下の説明では、液圧回転機100をピストンポンプとして使用した場合について例示し、液圧回転機100を「ピストンポンプ100」と称する。
【0018】
ピストンポンプ100は、例えば駆動対象を駆動する油圧シリンダ等のアクチュエータ(図示省略)に作動油を供給する油圧供給源として使用される。ピストンポンプ100は、
図1に示すように、動力源によって回転するシャフト1と、シャフト1に連結されシャフト1と共に回転するシリンダブロック2と、シリンダブロック2を収容するケース3と、を備える。
【0019】
ケース3は、有底筒状のケース本体(ハウジング)3aと、ケース本体3aの開口端を封止しシャフト1が挿通するカバー3bと、を備える。ケース3の内部は、ドレン通路(図示省略)を通じてタンク(図示省略)に連通する。なお、ケース3の内部は、後述する吸込通路(図示省略)に連通してもよい。
【0020】
カバー3bの挿通孔3cを通じて外部に突出するシャフト1の一方の端部1aには、エンジン等の動力源(図示省略)が連結される。シャフト1の端部1aは、軸受4aを介してカバー3bの挿通孔3cに回転自在に支持される。シャフト1の他方の端部1bは、ケース本体3aの底部に設けられるシャフト収容孔3dに収容され、軸受4bを介して回転自在に支持される。シャフト1の他方の端部1bには、ピストンポンプ100と共に動力源によって駆動されるギアポンプ等の他の油圧ポンプ(図示省略)の回転軸(図示省略)が、シャフト1と共に回転するように同軸的に連結される。
【0021】
シリンダブロック2は、シャフト1が貫通する貫通孔2aを有し、貫通孔2aを介してシャフト1とスプライン結合される。これにより、シリンダブロック2はシャフト1の回転に伴って回転する。
【0022】
シリンダブロック2には、一方の端面に開口部を有する複数のシリンダ2bがシャフト1と平行に形成される。複数のシリンダ2bは、シリンダブロック2の周方向に所定の間隔を持って形成される。シリンダ2bには、容積室6を区画する円柱状のピストン5が往復動自在に挿入される。ピストン5の先端側はシリンダ2bの開口部から突出し、その先端部には球面座5aが形成される。
【0023】
ピストンポンプ100は、ピストン5の球面座5aに回転自在に連結され球面座5aに摺接するシュー7と、シリンダブロック2の回転に伴ってシュー7が摺接する斜板8と、シリンダブロック2とケース本体3aの底部との間に設けられるバルブプレート9と、をさらに備える。
【0024】
シュー7は、各ピストン5の先端に形成される球面座5aを受容する受容部7aと、斜板8の摺接面8aに摺接する円形の平板部7bと、を備える。受容部7aの内面は球面状に形成され、受容した球面座5aの外面と摺接する。これにより、シュー7は球面座5aに対してあらゆる方向に角度変位可能である。
【0025】
斜板8は、ピストンポンプ100の吐出量を可変とするため、カバー3bに傾転可能に支持される。シュー7の平板部7bは、摺接面8aに対して面接触する。
【0026】
バルブプレート9は、シリンダブロック2の基端面が摺接する円板部材であり、ケース本体3aの底部に固定される。図示は省略するが、バルブプレート9には、シリンダブロック2に形成された吸込通路と容積室6とを接続する吸込ポートと、シリンダブロック2に形成された吐出通路と容積室6とを接続する吐出ポートと、が形成される。
【0027】
ピストンポンプ100は、
図1から
図3に示すように、流体圧に応じて斜板8を傾転させる傾転機構20と、傾転機構20に導かれる流体圧を斜板8の傾転角に応じて制御するレギュレータ50と、をさらに備える。
【0028】
傾転機構20は、傾転角が小さくなる方向に斜板8を付勢する第1付勢機構30と、傾転角が大きくなる方向に斜板8を付勢する第2付勢機構40と、を有する。つまり、第2付勢機構40は、第1付勢機構30に抗するように斜板8を付勢する。
【0029】
第1付勢機構30は、
図1に示すように、カバー3bに形成される第1ピストン収容孔31に摺動自在に挿入され斜板8に当接する駆動ピストンとしての大径ピストン32と、大径ピストン32によって第1ピストン収容孔31内に区画される制御圧室33と、を有する。
【0030】
制御圧室33には、レギュレータ50によって調整される流体圧(以下、「制御圧」と称する。)が導かれる。大径ピストン32は、制御圧室33に導かれた制御圧によって、傾転角が小さくなる方向に斜板8を付勢する。
【0031】
第2付勢機構40は、ケース本体3aに形成される第2ピストン収容孔41に摺動自在に挿入され斜板8に当接する制御ピストンとしての小径ピストン42と、小径ピストン42によって第2ピストン収容孔41内に区画される圧力室43と、を有する。
【0032】
小径ピストン42は、
図2に示すように、第1摺動部42aと、第1摺動部42aよりも外径が小さい第2摺動部42bと、第1摺動部42aと第2摺動部42bの外径差によって形成される段差面42cと、を有する。
【0033】
第2ピストン収容孔41は、小径ピストン42の第1摺動部42aが摺動する第1収容部41aと、第1収容部41aよりも内径が小さく第2摺動部42bが摺動する第2収容部41bと、第1収容部41aと第2収容部41bとの内径差によって形成される段差面41cと、を有する。第1収容部41aは、ケース3の内部に開口する。小径ピストン42の第2摺動部42bの外周面及び段差面42cと、第2ピストン収容孔41の第1収容部41aの内周面及び段差面41cと、によって圧力室43が区画される。つまり、圧力室43は、小径ピストン42の外周に形成される環状の空間である。
【0034】
圧力室43には、ケース本体3aに形成される吐出圧通路10を通じて、ピストンポンプ100の吐出圧(自己圧)が常時導かれる。小径ピストン42は、圧力室43に導かれた吐出圧を受けて、傾転角が大きくなる方向に斜板8を付勢する。小径ピストン42の外周に形成される段差面42cが、圧力室43に導かれた吐出圧を受圧する小径ピストン42の受圧面である。
【0035】
また、小径ピストン42には、後述する外側スプリング51a及び内側スプリング51bの一端部を収容するばね収容孔(収容孔)44aが、斜板8とは反対側の端部に形成される。さらに、小径ピストン42には、ばね収容孔44aとケース3の内部とを連通する連通孔44bが形成される(
図1参照)。よって、ばね収容孔44a及び第2ピストン収容孔41の内部は、連通孔44bを通じてタンクと連通する。
【0036】
大径ピストン32は、小径ピストン42よりも制御圧の受圧面積が大きく形成される。大径ピストン32は、
図1に示すように、斜板8に対して小径ピストン42とは反対側に設けられる。つまり、大径ピストン32は、シャフト1の中心軸に対する周方向の位置が小径ピストン42と略一致するように配置される。
【0037】
レギュレータ50は、ピストンポンプ100の吐出圧に応じて制御圧室33に導かれる制御圧を調整し、ピストンポンプ100の馬力(出力)を制御する。レギュレータ50は、本実施形態における構成に限らず、公知の構成を採用することができる。
【0038】
レギュレータ50は、小径ピストン42を斜板8に向けて付勢する付勢部材としての外側スプリング51a及び内側スプリング51bと、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力に応じて移動して、制御圧を調整する制御スプール52と、制御スプール52を収容するスプール収容孔65を有し、ケース本体3aに形成される取付孔67に取り付けられるスリーブ60と、スリーブ60におけるスプール収容孔65を封止するプラグ70と、プラグ70に設けられ制御スプール52に挿入される軸部71と、を有する。
【0039】
外側スプリング51a及び内側スプリング51bは、それぞれコイルスプリングである。内側スプリング51bは、外側スプリング51aよりも巻き径が小さく、外側スプリング51aの内側に設けられる。外側スプリング51a及び内側スプリング51bの一端部は、小径ピストン42のばね収容孔44aに収容され、ばね座72を介してばね収容孔44aの底部に着座する。外側スプリング51a及び内側スプリング51bの他端部は、ばね座73を介して制御スプール52の端面に着座する。一方のばね座72は、小径ピストン42と共に移動し、他方のばね座73は、制御スプール52と共に移動する。
【0040】
外側スプリング51aの自然長(自由長)は、内側スプリング51bの自然長より長い。斜板8の傾転角が最大となる状態(
図1に示す状態)では、外側スプリング51aはばね座72によって圧縮された状態となる一方、内側スプリング51bはいずれかの端部がばね座(
図1ではばね座72)から離れて浮いた状態(自然長となる状態)となる。つまり、斜板8の傾転角が最大の状態から小さくなる際、初めのうちは外側スプリング51aのみが圧縮され、外側スプリング51aの長さが内側スプリング51bの自然長を超えて圧縮されると、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの両方が圧縮される。これにより、小径ピストン42を介して斜板8に付与される外側スプリング51a及び内側スプリング51bからの弾性力が段階的に高まるように構成される。
【0041】
スリーブ60が取り付けられる取付孔67は、小径ピストン42を収容する第2ピストン収容孔41と同軸に形成され、第2ピストン収容孔41に連通して設けられる。
【0042】
スリーブ60のスプール収容孔65には、制御スプール52が摺動自在に挿入される。スプール収容孔65は、
図2及び
図3に示すように、第1孔部65aと、第1孔部65aよりも内径が大きい第2孔部65bと、第2孔部65bよりも内径が大きい第3孔部65cと、を有する。第1孔部65aは、小径ピストン42を収容する第2ピストン収容孔41に開口する。第3孔部65cは、プラグ70により封止される。
【0043】
スリーブ60の外周には、第1ポート60a、第2ポート60b、及び第3ポート60cが、それぞれ環状の溝として形成される。また、スリーブ60には、第1ポート60a、第2ポート60b、及び第3ポート60cにそれぞれ連通する第1連通孔61a、第2連通孔61b、及び第3連通孔61cが、それぞれ径方向に延びてスプール収容孔65を通過する貫通孔として形成される。第1連通孔61a、第2連通孔61b、及び第3連通孔61cは、それぞれスプール収容孔65の第1孔部65aに開口する。
【0044】
第1ポート60aは、ケース本体3aに形成され大径ピストン32の制御圧室33に制御圧を導く制御圧通路11に連通する。制御圧通路11は、カバー3bに形成されるカバー側通路12を通じて制御圧室33に連通する。第2ポート60bは、ピストンポンプ100の吐出圧が導かれる吐出圧通路10に連通する。第3ポート60cは、ピストンポンプ100と共に動力源によって駆動される他のポンプから吐出されたポンプ油圧(以下、「外部ポンプ圧」と称する。)が導かれる外部圧通路13に連通する。吐出圧通路10には、ピストンポンプ100の吐出圧が常時導かれている。外部圧通路13への外部ポンプ圧の供給・遮断の制御や、外部圧通路13へ導かれる外部ポンプ圧の大きさの調整により、ピストンポンプ100の負荷の変化に対する斜板8の傾転角の制御特性(言い換えれば馬力制御特性)を調整することができる。
【0045】
制御スプール52は、
図3に示すように、スプール収容孔65の第1孔部65aを摺動する本体部53と、本体部53の一端部に設けられ本体部53よりも外径が大きく形成される大径部54と、大径部54とは反対側の他端部に設けらればね座73に挿入される突出部55と、を有する。大径部54は、スプール収容孔65の第2孔部65bを摺動し、本体部53との外径差によって、段差面54aを形成する。突出部55は、本体部53より外径が小さく形成される。本体部53と突出部55の外径差により生じる段差面55aは、ばね座73に当接する。
【0046】
制御スプール52の外周には、第1制御ポート56a、第2制御ポート56b、及び第3制御ポート56cが、それぞれ環状の溝として形成される。また、制御スプール52には、第1制御ポート56a及び第2制御ポート56bにそれぞれ連通する第1制御通路57a及び第2制御通路57bが、それぞれ径方向に制御スプール52を貫通するように形成される。
【0047】
制御スプール52には、プラグ70側の端部から形成されプラグ70に設けられた軸部71が挿入される軸部挿入孔58aと、ばね座73に形成さればね収容孔44a(第2ピストン収容孔41)に連通する接続通路73aと第1制御通路57aとを連通する軸方向通路58bと、がさらに形成される。
【0048】
軸部挿入孔58aは、第2制御通路57bに連通し、軸部挿入孔58aには、制御スプール52に対して摺動可能に軸部71が挿入される。よって、第2制御通路57bに導かれる吐出圧は、制御スプール52における軸部71に対向する第2制御通路57bの内壁部に作用する。制御スプール52は、軸部71(軸部挿入孔58a)の断面積分に相当する受圧面積によって吐出圧を受け、吐出圧によって外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮する方向に付勢される。
【0049】
第1制御通路57aは、
図1及び
図3に示すように、軸方向通路58b、ばね座73の接続通路73a、小径ピストン42のばね収容孔44a及び連通孔44bを通じてケース3の内部と連通する。よって、第1制御通路57a内の圧力は、タンク圧となる。
【0050】
制御スプール52の第3制御ポート56cには、スリーブ60の第3ポート60c及び第3連通孔61cを通じて、外部ポンプ圧が導かれる。第3制御ポート56cに導かれた外部ポンプ圧は、制御スプール52における本体部53と大径部54との間の段差面54aに作用する(
図3参照)。これにより、制御スプール52は、外部ポンプ圧によって外側スプリング51a及び内側スプリング51bを伸長させる方向、言い換えれば、斜板8から離れる方向に付勢される。
【0051】
このように、制御スプール52は、外側スプリング51a及び内側スプリング51bによる付勢力と、外部ポンプ圧による付勢力と、によって斜板8から離れる方向(図中左方向)に付勢される。また、制御スプール52は、吐出圧によって斜板8に近づく方向に付勢される。制御スプール52は、外側スプリング51a及び内側スプリング51b、外部ポンプ圧、及び吐出圧による付勢力が釣り合うように、移動する。
【0052】
具体的には、制御スプール52は、第1ポジションと第2ポジションとの2つのポジションの間で移動する。
図1から3は、制御スプール52が第2ポジションである状態を示している。制御スプール52は、
図1から3に示す第2ポジションから、図中右方向へ移動するのに伴い、第1ポジションに切り換わる。
【0053】
第1ポジションは、斜板8の傾転角を小さくしてピストンポンプ100の吐出容量を減少させるポジションである。第1ポジションでは、スリーブ60の第1連通孔61aと第2連通孔61bとが制御スプール52の第2制御ポート56bを通じて連通し、制御スプール52の第1制御通路57aと第1連通孔61aとは連通が遮断される。よって、第1ポジションでは、第1付勢機構30の制御圧室33には、ピストンポンプ100の吐出圧が導かれる。
【0054】
第2ポジションは、斜板8の傾転角を大きくしてピストンポンプ100の吐出容量を上昇させるポジションである。第2ポジションでは、第1連通孔61aと制御スプール52の第1制御通路57aとが第1制御ポート56aを通じて連通し、第1連通孔61aと第2連通孔61bとの連通が遮断される。よって、第2ポジションでは、制御圧室33には、タンク圧が導かれる。
【0055】
なお、レギュレータ50において第1ポジションと第2ポジションとの間でポジションが切り換わる際には、スリーブ60の第1連通孔61aが、スリーブ60の第2連通孔61bと制御スプール52の第1制御通路57aとの両方に連通した状態となる。言い換えれば、レギュレータ50は、第1ポジションと第2ポジションとの間でポジションが切り換わる際、第1連通孔61aと他の通路との連通が遮断され第1連通孔61a(制御圧室33)の圧力が閉じこまれないように構成される。
【0056】
次に、ピストンポンプ100の作用について説明する。
【0057】
ピストンポンプ100では、レギュレータ50によってピストンポンプ100の吐出圧を一定に保つように、ピストンポンプ100の吐出容量(斜板8の傾転角)を制御する馬力制御が行われる。
【0058】
レギュレータ50の制御スプール52は、ピストンポンプ100の吐出圧による付勢力によって第1ポジションとなるように付勢されると共に、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力と他のポンプの外部ポンプ圧による付勢力とによって第2ポジションとなるように付勢される。
【0059】
ピストンポンプ100の吐出圧による付勢力が外側スプリング51a及び外部ポンプ圧の付勢力以下に保たれた状態では、レギュレータ50の制御スプール52は第2ポジションに位置し、斜板8の傾転角が最大に保たれる。
【0060】
ピストンポンプ100の吐出圧は、ピストンポンプ100の吐出圧で駆動する油圧シリンダの負荷が上昇するのに伴い上昇する。斜板8の傾転角が最大に保たれた状態から、ピストンポンプ100の吐出圧が上昇すると、吐出圧による付勢力が外側スプリング51a及び外部ポンプ圧による付勢力との合力を上回るようになる。これにより、制御スプール52は、第2ポジションから第1ポジションに切り換わる方向(図中右方向)へ移動する。制御スプール52が第1ポジションまで移動すると、制御圧通路11に吐出圧が導かれるため、制御圧が上昇する。より具体的には、制御スプール52が第1ポジションに移動するにつれて、スリーブ60の第1連通孔61aに対する制御スプール52の第2制御ポート56bの開口面積(流路面積)が増加する。よって、第1ポジションに切り換わる方向(図中右方向)への制御スプール52の移動量が大きくなるについて、制御圧通路11に導かれる制御圧が上昇する。制御圧通路11に導かれる制御圧が上昇することにより、大径ピストン32が斜板8に向けて移動し、傾転角が小さくなる方向に斜板8が傾転する。よって、ピストンポンプ100の吐出容量が減少する。
【0061】
傾転角が小さくなる方向に斜板8が傾転すると、小径ピストン42は、外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮するように、斜板8に追従して図中左方向へ移動する。言い換えれば、傾転角が小さくなる方向に斜板8が傾転すると、小径ピストン42は、第2ポジションに切り換わる方向へ外側スプリング51a(及び内側スプリング51b)を通じて制御スプール52を付勢するように移動する。これにより、制御スプール52が押し戻されて第2ポジションに切り換わる方向へ移動すると、制御圧通路11を通じて制御圧室33へ供給される制御圧が減少する。制御圧の減少に伴い、制御圧により斜板8に付与される付勢力が、外側スプリング51a(及び内側スプリング51b)から斜板8に付与される付勢力と釣り合うと、大径ピストン32の移動(斜板8の傾転)が停止する。このように、ピストンポンプ100の吐出圧が上昇すると、吐出容量が減少する。
【0062】
反対に、ピストンポンプ100の吐出圧は、ピストンポンプ100の吐出圧で駆動する油圧シリンダの負荷が低下するのに伴い低下する。ピストンポンプ100の吐出圧が低下すると、ピストンポンプ100の吐出圧による付勢力が外側スプリング51a及び内側スプリング51bによる付勢力と外部ポンプ圧による付勢力との合力を下回るようになる。これにより、制御スプール52は、第1ポジションから第2ポジションへ切り換わる方向へ移動する。制御スプール52が第2ポジションに移動すると、制御圧通路11がタンク圧である第1制御通路57aに連通するため、制御圧は低下する。制御圧が低下することにより、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力と外部ポンプ圧による付勢力と受ける小径ピストン42によって傾転角が大きくなる方向に斜板8が傾転する。
【0063】
傾転角が大きくなる方向に斜板8が傾転すると、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力を受ける小径ピストン42は、外側スプリング51a及び内側スプリング51bが伸長するように、斜板8に追従して図中右方向へ移動する。これにより、外側スプリング51a及び内側スプリング51bから制御スプール52が受ける付勢力が小さくなる。このため、制御スプール52は、第2制御通路57bに導かれる吐出圧を受けて、外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮する方向へ移動する。つまり、制御スプール52は、小径ピストン42に追従するように、第2ポジションから第1ポジションへと切り換わる方向へ移動する。制御スプール52が再び第1ポジションに位置して制御圧が上昇し、制御圧により斜板8に付与される付勢力が、外側スプリング51a(及び内側スプリング51b)から斜板8に付与される付勢力と釣り合うと、大径ピストン32の移動(斜板8の傾転)が停止する。このように、ピストンポンプ100の吐出圧が低下すると、吐出容量が増加する。
【0064】
以上のように、ピストンポンプ100の吐出圧が上昇することによりピストンポンプ100の吐出容量が減少し、吐出圧が低下することにより吐出容量が増加するように馬力制御が行われる。
【0065】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0066】
ピストンポンプ100では、小径ピストン42が圧力室43に導かれる吐出圧による推力を受けると共に、レギュレータ50の外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力を受けて、斜板8の傾転に追従する。つまり、小径ピストン42は、斜板8の傾転角を制御する(斜板8を駆動する)機能に加え、レギュレータ50によって制御圧を調整するために斜板8の傾転角を検出する機能も発揮する。よって、従来のピストンポンプ100のように傾転角を検出するピンを小径ピストン42とは別に設ける必要がなく、ピストンポンプ100を小型化することができる。
【0067】
また、ピストンポンプ100では、外側スプリング51a及び内側スプリング51bは、小径ピストン42に形成されるばね収容孔44aに収容される。つまり、外側スプリング51a及び内側スプリング51bは、小径ピストン42に対して軸方向に並んで直列に設けられるものではなく、小径ピストン42の内側に設けられる。これにより、外側スプリング51a及び内側スプリング51bと小径ピストン42が軸方向に並ぶ場合と比較して、省スペース化することができ、ピストンポンプ100をさらに小型化することができる。
【0068】
また、ピストンポンプ100では、大径ピストン32は、斜板8に対して小径ピストン42とは反対側であって、シャフト1の中心軸に対する周方向の位置が小径ピストン42と略一致するように配置される。これにより、シャフト1の径方向における斜板8の大型化を防止することができ、ひいては、ピストンポンプ100を小型化することができる。
【0069】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0070】
上記実施形態では、ケース本体3aに形成される第2ピストン収容孔41内に小径ピストン42が設けられ、カバー3bに形成される第1ピストン収容孔31内に大径ピストン32が設けられる。これに対し、小径ピストン42は、ケース本体3a内に設けられる構成に限られない。また、大径ピストン32は、カバー3b内に設けられる構成に限られない。例えば、ケース本体3aとは別体に形成されケース本体3aに取り付けられる部材に第2ピストン収容孔41を形成し、当該第2ピストン収容孔41内に小径ピストン42を設けてもよい。同様に、カバー3bとは別体に形成されカバー3bに取り付けられる部材に第1ピストン収容孔31を形成し、当該第1ピストン収容孔31内に大径ピストン32を設けてもよい。また、ピストンポンプとして、上記実施形態のように斜板8がカバー3bに支持される構成ではなく、斜板8がケース本体3aの底部側に支持される形態のピストンポンプもある。このような場合には、小径ピストン42と大径ピストン32とは、それぞれケース本体3aに形成される収容孔(第1ピストン収容孔31、第2ピストン収容孔41)内に設けられてもよい。少なくとも、小径ピストン42と大径ピストン32とが、斜板8を挟んで対向し、シャフト1の中心軸に対する周方向の位置が互いに略一致するように配置されるかぎり、ピストンポンプ100を小型化できるという効果を発揮することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、液圧回転機100がピストンポンプである場合を説明した。液圧回転機100がピストンモータとして機能する場合には、ピストンモータに供給される供給圧を自己圧として圧力室43に導く構成とすればよい。このように、自己圧とは、液圧回転機100に供給・排出される流体圧のうち、相対的に高圧の流体圧を意味する。
【0072】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0073】
ピストンポンプ100は、シャフト1の回転に伴って回転するシリンダブロック2と、シリンダブロック2に形成されシャフト1の周方向に所定の間隔をもって配置される複数のシリンダ2bと、シリンダ2b内に摺動自在に挿入されシリンダ2bの内部に容積室6を区画するピストン5と、シリンダブロック2の回転に伴って容積室6を拡縮するようにピストン5を往復動させる斜板8と、供給される制御圧に応じて斜板8を付勢する第1付勢機構30と、第1付勢機構30に抗するように斜板8を付勢する第2付勢機構40と、第1付勢機構30に導かれる制御圧をピストンポンプ100の吐出圧に応じて制御するレギュレータ50と、を備え、第2付勢機構40は、吐出圧が導かれる圧力室43と、圧力室43に導かれた吐出圧によって斜板8に向けて付勢される小径ピストン42と、を有し、レギュレータ50は、小径ピストン42を斜板8に向けて付勢する付勢部材(外側スプリング51a,内側スプリング51b)と、付勢部材(外側スプリング51a,内側スプリング51b)の付勢力に応じて移動して、制御圧を調整する制御スプール52と、を有する。
【0074】
この構成では、小径ピストン42は、圧力室43の圧力を受けて斜板8を駆動すると共に、レギュレータ50の付勢部材(外側スプリング51a,内側スプリング51b)によって斜板8に向けて付勢されて、斜板8の傾転に伴い斜板8に追従して変位する。よって、小径ピストン42が変位すると、付勢部材(外側スプリング51a,内側スプリング51b)の付勢力が変化して制御スプール52も変位する。このように、小径ピストン42は、斜板8の傾転角を制御する機能に加え、レギュレータ50によって制御圧を調整するために斜板8の傾転角を検出する機能も発揮するため、傾転角を検出するピンを小径ピストン42とは別に設ける必要がない。したがって、ピストンポンプ100を小型化することができる。
【0075】
また、ピストンポンプ100では、小径ピストン42には、付勢部材(外側スプリング51a,内側スプリング51b)を収容するばね収容孔44aが形成される。
【0076】
この構成では、付勢部材(外側スプリング51a,内側スプリング51b)は、小径ピストン42に対して軸方向に並んで直列に設けられるものではなく、小径ピストン42の内側に設けられる。これにより、付勢部材(外側スプリング51a,内側スプリング51b)と小径ピストン42が軸方向に並ぶ場合と比較して、省スペース化することができ、ピストンポンプ100をさらに小型化することができる。
【0077】
また、ピストンポンプ100では、小径ピストン42は、圧力室43に導かれた吐出圧を受圧する段差面42cが外周に形成される。
【0078】
また、ピストンポンプ100では、第1付勢機構30は、制御圧が導かれる制御圧室33と、斜板8に対して小径ピストン42とは反対側であってシャフト1に対する周方向の位置が小径ピストン42と一致するように設けられ、制御圧室33に導かれた制御圧によって小径ピストン42に抗するように斜板8を付勢する大径ピストン32と、を有する。
【0079】
この構成では、大径ピストン32は、シャフト1の中心軸に対する周方向の位置が小径ピストン42と略一致するように配置される。これにより、シャフト1の径方向における斜板8の大型化を防止することができ、ピストンポンプ100を小型化することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0081】
1…シャフト(駆動軸)、2…シリンダブロック、2b…シリンダ、3a…ケース本体(ハウジング)、3b…カバー、5…ピストン、8…斜板、30…第1付勢機構、32…大径ピストン(駆動ピストン)、33…制御圧室、40…第2付勢機構、42…小径ピストン(制御ピストン)、43…圧力室、44a…ばね収容孔(収容孔)、50…レギュレータ、51a…外側スプリング(付勢部材)、51b…内側スプリング(付勢部材)、52…制御スプール、100…ピストンポンプ(液圧回転機)