(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】アルカリホスファターゼの製造
(51)【国際特許分類】
C12N 9/16 20060101AFI20220106BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220106BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20220106BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220106BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220106BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220106BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220106BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20220106BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220106BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220106BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220106BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220106BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C12N9/16 B ZNA
C12N15/12
C12N15/55
C12P21/02 C
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/47
A61K38/46
A61P43/00 111
A61P19/08
A61P1/02
A61P25/00
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2018508754
(86)(22)【出願日】2016-08-16
(86)【国際出願番号】 US2016047166
(87)【国際公開番号】W WO2017031114
(87)【国際公開日】2017-02-23
【審査請求日】2019-08-16
(32)【優先日】2015-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャルリア,プラティク
(72)【発明者】
【氏名】スイ,シグアン
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-526543(JP,A)
【文献】特表2007-537725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/16
C12N 15/12
C12N 15/55
C12P 21/02
C07K 19/00
C07K 16/00
C07K 14/47
A61K 38/46
A61P 43/00
A61P 19/08
A61P 1/02
A61P 25/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えポリペプチドアスホターゼアルファを作成するための方法であって、
a.i.前記組換えポリペプチドアスホターゼアルファ(配列番号1)を発現可能な細胞、及び
ii.このような発現を行うのに適している培養培地であって、前記培養培地が約25μM~約300μMの亜鉛を含む、前記培養培地、を含む、100L~25,000Lの流加バイオリアクターを提供すること、
b.前記組換えアスホターゼアルファを発現するのに好適な条件下で前記細胞を培養すること、を含み、前記培養培地のpHが約6.7~約7.1であり、ならびに前記培養培地の亜鉛濃度が約25μM~約300μMの亜鉛の濃度で維持されるように亜鉛が前記培養培地内に加えられ、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、前記方法。
【請求項2】
前記培養培地の亜鉛濃度が約25μM~約150μMの亜鉛の濃度で維持され、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養培地の亜鉛濃度が約60μM~約150μMの亜鉛の濃度で維持され、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記培養培地の亜鉛濃度が約28μMの亜鉛の濃度で維持され、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記培養培地のpHが約6.8~約7.0で維持され、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記培養培地のpHが約6.9で維持され、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
亜鉛が、前記培養培地内に少なくとも1つのボーラスで連続的にまたは半連続的に添加される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つ、2つ、3つまたは4つの供給ボーラス(複数可)を、培養中、前記培養培地に加えることを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも4つの供給ボーラスが前記培養培地に添加される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記供給ボーラスが亜鉛、アミノ酸、及びビタミンのうち1以上を含み、ならびに前記供給ボーラスの添加が前記組換えポリペプチドの比活性を改善する、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも約2.5×10
6生細胞の細胞密度に達するまで第1の温度で前記細胞を培養すること、及び組換えポリペプチド発現のため前記第1の温度より低い第2の温度へシフトすることを更に含み、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の温度が約35℃~約37.5℃であり、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の温度が約29℃~約35℃であり、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の温度が約37℃であり、前記第2の温度が約30℃であり、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の温度が約36.5℃であり、前記第2の温度が約33℃であり、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が、CHO、NS0/1、PER.C6、COS-7、ヒト胚腎臓株、BHK、TM4、CVl、VERO-76、HeLa、MDCK、BRL3A、W138、Hep G2、MMT060562、TRI、MRC5、FS4細胞及びHep G2細胞からなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
a.前記細胞がCHO細胞であるか、または
b.前記ヒト胚腎臓株が懸濁培養の増殖のためにサブクローニングした293または293細胞である、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アスホターゼアルファ(配列番号1)の組換えポリペプチド、及び/またはアスホターゼアルファ(配列番号1)の組換えポリペプチドを発現可能な細胞を含む流加バイオリアクターであって、前記バイオリアクターは約25μM~約300μMの亜鉛を含む少なくとも100Lの容量の培養培地を含み、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味し、前記培養培地のpHは6.7~7.1であり、かつ前記組換えポリペプチドが、
(i)620~1250単位/mgの比活性(pNPP)、
(ii)0.9~3.5シアル酸モル/タンパク質モノマーモルの間の総シアル酸含量(TSAC)、又は
(iii)1モノマー当たり1.2~3.0シアル酸モル/モルの平均総シアル酸含量(TSAC)値
を有する、前記バイオリアクター。
【請求項19】
前記組換えポリペプチドが904.0~907.7U/mgの平均比活性(pNPP)を有する、又は前記平均TSAC値が1モノマー当たり1.9~2.7シアル酸モル/モルである、請求項18に記載の流加バイオリアクター。
【請求項20】
前記平均TSAC値が、1モノマー当たり1.85~2.28シアル酸モル/モルである、請求項19に記載の流加バイオリアクター。
【請求項21】
前記培養培地が哺乳動物細胞培養を含み、かつ前記アスホターゼアルファ(配列番号1)の組換えポリペプチドが、
a.約5.2~約6.7の間の等電点電気泳動(IEF)、
b.約88~108kDaの分子量、及び生成された組換えポリペプチドの総量の約85%以上を有する、還元SDS-PAGEの主バンド、
c.約194~約273kDaの分子量、及び生成された組換えポリペプチドの総量の約85%以上を有する、非還元SDS-PAGEの主バンド、
d.サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による、約95.0%以上の組換えポリペプチドの二量体、及び約5.0%以下の凝集物、
e.逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を介した約95.0%以上の純度、
f.アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)を介した約90.0%以上のメインピーク、約6.0%以下の酸性ピーク、及び約4.0%以下の塩基性ピーク、
g.約75~約125%の割合のヒドロキシアパタイト(HA)結合、
h.無機ピロホスフェート(PPi)加水分解アッセイの約13μM~約69μMのK
m、
i.無機ピロホスフェート(PPi)加水分解アッセイの約65s
-1~約165s
-1のK
cat、
j.キャピラリー電気泳動のすべてのピークについて約6.45~約6.95のpI範囲、
k.約0.03~約0.15の組換えポリペプチドの1モル当たりのマグネシウムのモル比、
l.約0.5~約1.5の組換えポリペプチドの1モル当たりのカルシウムのモル比、ならびに
m.約0.5~約3.0の組換えポリペプチドの1モル当たりの亜鉛のモル比
からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有し、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項18~20のいずれか一項に記載の流加バイオリアクター。
【請求項22】
前記アスホターゼアルファが、
a.半分子当たり約0.7~約1.19の遊離システイン、
b.約13.5%~約35.7%の割合のSer93のリン酸化、
c.AEXクロマトグラムの約90.0%以上のメインピーク、約6.0%以下の酸性ピーク、及び約4.0%以下の塩基性ピーク、
d.AEXクロマトグラムの約93.7%以上のメインピーク、約4.9%以下の酸性ピーク、及び約3.4%以下の塩基性ピーク、
e.約0.15未満のマグネシウムのモル比、
f.サイズ排除HPLCにより測定される、少なくとも約95.0%の前記組換えポリペプチドの二量体、及び約5.0%以下のポリペプチド凝集物
g.RP-HPLCで測定される、約95.0%以上の純度、ならびに
h.約75%~約125%の割合の平均ヒドロキシアパタイト(HA)結合
からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有し、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項18~21のいずれか一項に記載の流加バイオリアクター。
【請求項23】
a.マグネシウムのモル比が約0.05~約0.10、もしくは約0.12である、
b.前記組換えポリペプチドが少なくとも約96.8%の二量体及び約3.2%以下のポリペプチド凝集物であるか、もしくは少なくとも約97.6%の二量体及び約2.4%以下の凝集物である、
c.純度がRP-HPLCで測定される場合に約97.6%以上であるか、または
d.平均HA結合が約85%~約97%、もしくは約90%~約91%であり、
ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項22に記載の流加バイオリアクター。
【請求項24】
前記流加バイオリアクターが200L~20,000Lであるか、もしくは2,000L~20,000Lである、請求項18~21のいずれか一項に記載の流加バイオリアクター。
【請求項25】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法により得られた組換えポリペプチドアスホターゼアルファ(配列番号1)の集団であって、前記組換えポリペプチドが、
(i)620~1250単位/mgの比活性(pNPP)、
(ii)0.9~3.5シアル酸モル/タンパク質モノマーモルの間の総シアル酸含量(TSAC)、
(iii)
約5.2~約6.7の
等電点
(pI)、及び
(iv)逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を介した約95.0%以上の純度
を有し、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、前記集団。
【請求項26】
前記組換えポリペプチドが、
a.1モノマー当たり1.2~3.0シアル酸モル/モルの平均総シアル酸含量(TSAC)値、
b.約88~108kDaの分子量、及び生成された組換えポリペプチドの総量の約85%以上を有する、還元SDS-PAGEの主バンド、
c.約194~約273kDaの分子量、及び生成された組換えポリペプチドの総量の約85%以上を有する、非還元SDS-PAGEの主バンド、
d.サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による、約95.0%以上の組換えポリペプチドの二量体、及び約5.0%以下の凝集物、
e.アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)を介した約90.0%以上のメインピーク、約6.0%以下の酸性ピーク、及び約4.0%以下の塩基性ピーク、
f.約75~約125%の割合のヒドロキシアパタイト(HA)結合、
g.無機ピロホスフェート(PPi)加水分解アッセイの約13μM~約69μMのK
m
、
h.無機ピロホスフェート(PPi)加水分解アッセイの約65s
-1
~約165s
-1
のK
cat
、
i.キャピラリー電気泳動のすべてのピークについて約6.45~約6.95のpI範囲、
j.約0.03~約0.15の組換えポリペプチドの1モル当たりのマグネシウムのモル比、
k.約0.5~約1.5の組換えポリペプチドの1モル当たりのカルシウムのモル比、ならびに
l.約0.5~約3.0の組換えポリペプチドの1モル当たりの亜鉛のモル比
からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有し、ここで「約」という用語は示されている数値の±10%の範囲を意味する、請求項25に記載の集団。
【請求項27】
前記組換えポリペプチドが904.0~907.7U/mgの平均比活性(pNPP)を有する、又は前記平均TSAC値が1モノマー当たり1.9~2.7シアル酸モル/モルである、請求項
25又は26に記載の
集団。
【請求項28】
前記平均TSAC値が、1モノマー当たり1.85~2.28シアル酸モル/モルである、請求項
27に記載の
集団。
【請求項29】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤を
含む
、請求項25~
28のいずれか一項に記載の
集団を含む組成物。
【請求項30】
a)対象の無機ピロホスフェート(PPi)の開裂を増加させる、または
b)アルカリホスファターゼ欠乏に関連する病態を患っている対象を治療する
使用のための請求項
29に記載の組成物であって、前記組成物は、アルカリホスファターゼ欠乏に関連する病態を治療するため、治療に有効な量を前記対象に投与するために製剤化されている、前記組成物。
【請求項31】
アルカリホスファターゼ欠乏に関連する前記病態が、低ホスファターゼ血症(HPP)または神経線維腫症I型(NF1)である、請求項
30に記載の使用のための組成物。
【請求項32】
前記低ホスファターゼ血症(HPP)が周産期、乳児、若年性または成人HPPである、請求項
31に記載の使用のための組成物。
【請求項33】
アルカリホスファターゼ欠乏に関連する前記病態が、骨及び歯の非石灰化骨基質及び/または低石灰化によって特徴づけられる、請求項
32に記載の使用のための組成物。
【請求項34】
前記非石灰化骨基質がくる病及び/または骨軟化症を引き起こす、請求項
33に記載の使用のための組成物。
【請求項35】
前記対象がヒトである、請求項29~
34のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
添付の配列表に表示されているアミノ酸配列は、米国特許法施行規則1.822に記載のとおり、アミノ酸用の標準的な3文字コードを使用して示される。配列表は、ASCIIテキストファイル(2016年8月16日作成、ファイル名0351WO_SL.txt及びサイズ6,604バイト)として提出され、それは本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本発明の分野
本開示は組換えポリペプチドを産生する方法に関し、前記方法は、(a)(i)組換えポリペプチドアスホターゼアルファ(配列番号1)を発現可能な細胞及び(ii)このような発現を行うのに適している培養培地であって、前記培養培地が約25μM~約300μMの亜鉛を含む、前記培養培地を含む、100L~25,000Lの流加バイオリアクターを提供すること、(b)組換えアスホターゼアルファを発現するのに好適な条件下で細胞を培養すること、を含み、培養培地のpHは約6.7~約7.1であり、ならびに培養培地の亜鉛濃度が約25μM~約300μMの亜鉛の濃度で維持されるように、亜鉛は前記培養培地内に加えられる。
【背景技術】
【0003】
低ホスファターゼ血症(HPP)は、機能的な組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)を生成しないという結果になる、致命的、遺伝的及び極めてまれな代謝障害である。骨及び歯の低石灰化を特徴とする非石灰化骨基質の蓄積(例えばくる病、骨軟化症)を引き起こす。成長骨が適切に石灰化しないとき、成長への障害は、影響は関節及び骨の外観を損なうという結果である。この結果はそれにより、運動能力、呼吸機能に影響を及ぼして、死に至ることさえあり得る。HPPの異なる形態は、周産期、乳児性、若年性及び成人HPPを含むことが発見された。近年、ほとんどは症状発現の年齢に基づき、周産期、良性出生前、乳児性、若年性、成人及び歯HPPを含む、6つの病型に定義されている。アスホターゼアルファは、不完全な内因性TNSALPレベルに対応するようにデザインされた、承認済みのファースト・イン・クラスの標的化された酵素補充療法である。TNSALPによるHPP治療については、Whyte et al.,2012N Engl J Med.366:904-13を参照のこと。
【0004】
アスホターゼアルファ(STRENSIQ(登録商標)、Alexion Pharmaceuticals,Inc.)は、ヒトTNSALPの触媒ドメイン、ヒト免疫グロブリンG1 Fcドメイン及び骨標的ドメインとして使用したデカアスパラギン酸ペプチド(すなわち、D10)からなる可溶性融合糖タンパク質である。in vitroで、アスホターゼアルファは、デカアスパラギン酸ペプチドを欠く可溶性TNSALPより高い親和性でヒドロキシアパタイトに結合し、したがってアスホターゼアルファのTNSALP部分が、過剰な局所的無機ピロホスフェート(PPi)を効率的に分解させて、正常な石灰化を修復できる。ピロホスフェート加水分解は石灰化を促進し、その効果は非臨床試験で評価される種の間で類似している。最初の有効性試験は、HPPのマウスモデル(Akp2-/-マウス)で実施された。TNSALP遺伝子を不活性化することによって作成された(Narisawa et al.1997Dev Dyn.208:432-46)Akp2-/-マウスモデルは、非石灰化骨基質の蓄積を含む、ヒトの状態の多くの一般的な特徴を共有する。
【発明の概要】
【0005】
特異的な特徴(例えば、特定のグリカン構造、特定の総シアル酸含量(TSAC)値など)を有するアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)の組成物、及びこのような特異的な特徴を有するアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)を作成するために利用される製造工程が、本明細書に開示されている。このようなアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、例えば対象、例えばヒト対象の減少したアルカリホスファターゼタンパク質レベル及び/または機能(例えば、無機ピロホスフェート(PPi)の不十分な開裂)と関連する状態の治療のための療法での使用に適している、
【0006】
一態様で、本開示は、アルカリホスファターゼ機能を有する組換えポリペプチドを作成する方法を提供する。種々の実施形態において、アルカリホスファターゼ機能は、当該技術分野において周知のアルカリホスファターゼの任意の機能(例えば、ホスホエタノールアミン(PEA)、無機ピロホスフェート(PPi)及びピリドキサール5’-ホスフェート(PLP)を含む、天然基質に対する酵素活性)を含み得る。このような組換えポリペプチドは、アスホターゼアルファ(配列番号1)を含むことができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、組換えポリペプチドを作成するために前記培養培地に亜鉛を加えることを更に含む。亜鉛は、組換えポリペプチドの活性及び/または安定性を改善するのに役立つことができる。いくつかの実施形態では、前記培養培地の約1~約300μMの亜鉛濃度を提供するために、亜鉛を加えることができる。一実施形態において、培養培地の約10~約150μM(例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150μM)の亜鉛濃度を提供するために、亜鉛を加えることができる。いくつかの実施形態で、約25μM~約150μMまたは約60μM~約150μMの培養培地の亜鉛濃度を提供するために、亜鉛は加えられる。1つの特定の実施形態で、約30、60または90μMの亜鉛の培養培地の亜鉛濃度を提供するために、亜鉛は加えられる。1つの特定の実施形態で、約28μMの培養培地の亜鉛濃度を提供するために、亜鉛は加えられる。いくつかの実施形態では、亜鉛は前記培養培地内に、ボーラスで、連続的に、または半連続的に加えられる。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示した方法は、組換えポリペプチドを作成するために前記培養培地のpHを管理することを更に含む。例えばpHは、約6.8~約7.0に設定されることができる。1つの特定の実施形態で、pHは約6.9に設定される。
【0009】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている方法は、培養及び/またはポリペプチド生成の間、少なくとも1つの余分な新たな培養培地ボーラス供給を、最初の細胞含有培養培地に加えることを更に含む。新しい培養培地のこのような追加は、生成された組換えポリペプチドの活性(例えば比活性)を改善することができる。一実施形態において、少なくとも1つ、2つ、3つまたは4つの供給ボーラス(複数可)を、培養中、培養培地に加える。1つの特定の実施形態で、少なくとも4つの供給ボーラスを加える。いくつかの実施形態では、供給ボーラスの添加(複数可)は、組換えポリペプチドの比活性を改善する。組換えポリペプチドを生成するために本明細書に開示される細胞は、当該技術分野において周知の任意の細胞(例えば、哺乳動物細胞)であり得る。いくつかの実施形態で、CHO、NSO/1、PER.C6、COS-7、ヒト胚腎臓株(懸濁培養の増殖のためにサブクローニングした293または293細胞)、BHK、TM4、CVl、VERO-76、HeLa、MDCK、BRL3A、W138、Hep G2、MMT060562、TRI、MRC5、FS4細胞及びHep G2細胞を含む群から、細胞は選択される。いくつかの実施形態で、細胞はCHO細胞である。
【0010】
いくつかの実施形態で、細胞は、細胞増殖のために一定時間の第1の温度で増殖し、それからポリペプチド発現のための第2の温度へシフトする。例えばいくつかの実施形態において、少なくとも約2.5×106生細胞の細胞密度に達するまで第1の温度で細胞を培養すること、次いで組換えポリペプチド発現のため第1の温度より低い第2の温度へシフトすることを更に含む、方法が開示されている。例えばいくつかの実施形態では、第1の温度は約35℃~約37.5℃である。いくつかの実施形態において、第2の温度は約29℃~約35℃である。いくつかの実施形態において、第1の温度は約37℃及び第2の温度は約30℃である。いくつかの実施形態において、第1の温度は約36.5℃及び第2の温度は約33℃である。
【0011】
別の態様において、本開示は、本明細書で開示される方法のいずれか一つによって生成される、組換えポリペプチドを提供する。このような生成された組換えポリペプチドは、本明細書に開示される生成方法から生じる、特異的な特徴のうちの少なくとも1つを有することができる。このような特徴は、(a)約0.9~約3.5シアル酸モル/タンパク質モノマーモルの間の総シアル酸含量(TSAC)、(b)約5.2~約6.7の間の等電点電気泳動(IEF)、(c)
図41または
図42で示す主要なグリカン構造、(d)
図38または
図39で示す、2-AB標識化オリゴ糖クロマトグラムプロファイル、(e)
図40または
図44~49で示す、MALDI-ToFグリコペプチドフィンガープリントプロファイル、(f)約88~108kDa及び生成された組換えポリペプチドの総量の約85%以上の分子量を有する、還元SDS-PAGEの主バンド、(g)約194~約273kDa及び生成された組換えポリペプチドの総量の約85%以上の分子量を有する、非還元SDS-PAGEの主バンド、(h)サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による、約95.0%以上の組換えポリペプチドの二量体、及び約5.0%以下の凝集物、(i)逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を介した約95.0%以上の純度、(j)アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)を介した約90.0%以上のメインピーク、約6.0%以下の酸性ピーク、及び約4.0%以下の塩基性ピーク、(k)約75~約125%の割合のヒドロキシアパタイト(HA)結合、(l)約620~約1250単位/mgの生成物の比活性(pNPP)、(m)無機ピロホスフェート(PPi)加水分解アッセイの約13~約69μMのK
m、(n)無機ピロホスフェート(PPi)加水分解アッセイの約65~約165s
-1のK
cat、(o)キャピラリー電気泳動のすべてのピークについて約6.45~約6.95のpI範囲、(p)脱グリコシル後、
図34Aで示すようなMALDI-ToF質量スペクトル上のピーク、(q)還元及び脱グリコシル後、
図34Bで示すようなMALDI-ToF質量スペクトル上のピーク、(r)
図35で示すMALDI-ToF質量スペクトル上のピーク、(s)
図36で示すリン酸化プロファイル、(t)
図37Aで示す、負イオンMALDI-ToF質量スペクトル上のシアル化グリカンプロファイル、(u)
図37Bで示す、正イオンMALDI-ToF質量スペクトル上の中性グリカンプロファイル、(v)約0.03~約0.15の組換えポリペプチドの1モル当たりのマグネシウムのモル比、(w)約0.5~約1.5の組換えポリペプチドの1モル当たりのカルシウムのモル比、及び(x)約0.5~約3.0の組換えポリペプチドの1モル当たりの亜鉛のモル比、を含む群から選択される、少なくとも1つを含むことができる。
【0012】
一実施形態において、作成した組換えタンパク質は、半分子当たり約0.7~約1.19の遊離システインを有する。
【0013】
一実施形態において、作成した組換えタンパク質は、約13.5%~約35.7%の割合でSer93にてリン酸化を有する。
【0014】
一実施形態において、作成した組換えタンパク質は、AEXクロマトグラムで90.0%以上のメインピーク、6.0%以下の酸性ピーク、及び4.0%以下の塩基性ピークを有する。1つの特定の実施形態において、作成した組換えタンパク質は、AEXクロマトグラムで93.7%以上のメインピーク、4.9%以下の酸性ピーク、及び3.4%以下の塩基性ピークを有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、作成した組換えタンパク質は、約0.9~約3.5シアル酸モル/タンパク質モノマーモルの間の総シアル酸含量(TSAC)を有する。一実施形態において、作成した組換えタンパク質は、1モノマー当たり約1.2~約3.0シアル酸モル/モルの平均総シアル酸含量(TSAC)値を有する。一実施形態において、作成した組換えタンパク質は、1モノマー当たり約1.9~約2.7シアル酸モル/モルの平均総シアル酸含量値を有する。1つの特定の実施形態において、作成した組換えタンパク質は、1モノマー当たり約1.85~約2.28シアル酸モル/モルの平均総シアル酸含量値を有する。
【0016】
一実施形態において、作成した組換えタンパク質は、約0.15未満のマグネシウムイオンの結合モル比を有する。いくつかの実施形態において、作成した組換えタンパク質は、約0.05~約0.10のマグネシウムのモル比を有する。1つの特定の実施形態において、作成した組換えタンパク質は、約0.12のマグネシウムイオンの結合モル比を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、生成された組換えタンパク質は、すなわちサイズ排除HPLCで測定されるように、少なくとも約95.0%の組換えポリペプチドの二量体、約5.0%以下のポリペプチド凝集物を含む。一実施形態において、生成された組換えタンパク質は、すなわちサイズ排除HPLCで測定されるように、少なくとも約96.8%の組換えポリペプチドの二量体、及び約3.2%以下のポリペプチド凝集物を含む。1つの特定の実施形態において、生成された組換えタンパク質は、すなわちサイズ排除HPLCで測定されるように、少なくとも約97.6%の組換えポリペプチドの二量体、及び約2.4%以下のポリペプチド凝集物を含む。
【0018】
一実施形態において、生成された組換えタンパク質は、RP-HPLCで測定した際95.0%以上の純度を有する。1つの特定の実施形態において、生成された組換えタンパク質は、RP-HPLCで測定した際97.6%以上の純度を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、生成された組換えタンパク質は、約75~約125%の割合のヒドロキシアパタイト(HA)結合を有する。一実施形態において、作成した組換えタンパク質は、約85%~約97%の平均ヒドロキシアパタイト結合%を有する。1つの特定の実施形態において、作成した組換えタンパク質は、約90%~約91%の平均ヒドロキシアパタイト結合%を有する。
【0020】
一実施形態において、作成した組換えタンパク質は、約620~約1250単位/mgの比活性(pNPP)を有する。1つの特定の実施形態において、作成した組換えタンパク質は、約904.0~約907.7U/mgの平均比活性(pNPP)を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、組換えタンパク質は、配列番号1に記載の配列、または配列番号1に完全に相補的な配列を含む、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる。
【0022】
本明細書に開示した組換えポリペプチドは、工業的または商業的規模の下で作成されることができる。例えばいくつかの実施形態において、流加リアクターは、200L~20,000Lである。いくつかの実施形態において、流加リアクター2,000L~20,000Lである。
【0023】
別の態様において本開示は、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせた、本明細書に開示した組換えポリペプチドを含む組成物を含む、医薬製剤を提供する。
【0024】
別の態様において、本開示は、対象の無機ピロホスフェート(PPi)の開裂を増加させるために、組換えポリペプチドすなわち本明細書で示す医薬製剤の使用方法を提供する。
【0025】
別の態様において、本開示は、アルカリホスファターゼ欠乏に関連する病態を患っている対象に、組換えポリペプチドすなわち本明細書で示す医薬製剤の治療に有効な量を投与することを含む、対象を治療する方法を提供する。このようなアルカリホスファターゼ欠乏に関連する病態は、例えば低ホスファターゼ血症(HPP)及び神経線維腫症I型(NF1)を含む。このような低ホスファターゼ血症(HPP)は、周産期、乳児、若年性、成人HPPの任意の一つであり得る。このような病態は、骨及び歯の非石灰化骨基質及び/または低石灰化によって特徴づけられ得る。例えばこのような非石灰化骨基質は、くる病及び/または骨軟化症に至る可能性がある。
【0026】
いくつかの実施形態で、そのような対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態で、そのような対象はヒトである。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]組換えポリペプチドを作成するための方法であって、
a.i.前記組換えポリペプチドアスホターゼアルファ(配列番号1)を発現可能な細胞、及び
ii.このような発現を行うのに適している培養培地であって、前記培養培地が約25μM~約300μMの亜鉛を含む、前記培養培地、を含む、100L~25,000Lの流加バイオリアクターを提供すること、
b.前記組換えアスホターゼアルファを発現するのに好適な条件下で前記細胞を培養すること、を含み、前記培養培地のpHが約6.7~約7.1であり、ならびに前記培養培地の亜鉛濃度が約25μM~約300μMの亜鉛の濃度で維持されるように亜鉛が前記培養培地内に加えられる、前記方法。
[項目2]前記培養培地の亜鉛濃度が約25μM~約150μMの亜鉛の濃度で維持される、項目1に記載の方法。
[項目3]前記培養培地の亜鉛濃度が約60μM~約150μMの亜鉛の濃度で維持される、項目2に記載の方法。
[項目4]前記培養培地の亜鉛濃度が約28μMの亜鉛の濃度で維持される、項目3に記載の方法。
[項目5]前記培養培地のpHが約6.8~約7.0で維持される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項目6]前記培養培地のpHが約6.9で維持される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
[項目7]亜鉛が、前記培養培地内に少なくとも1つのボーラスで連続的にまたは半連続的に添加される、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項目8]少なくとも1つ、2つ、3つまたは4つの供給ボーラス(複数可)を、培養中、前記培養培地に加えることを更に含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項目9]少なくとも4つの供給ボーラスが前記培養培地に添加される、項目8に記載の方法。
[項目10]前記供給ボーラスの添加が前記組換えポリペプチドの比活性を改善する、項目8または項目9に記載の方法。
[項目11]少なくとも約2.5×10
6
生細胞の細胞密度に達するまで第1の温度で前記細胞を培養すること、及び組換えポリペプチド発現のため前記第1の温度より低い第2の温度へシフトすることを更に含む、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
[項目12]前記第1の温度が約35℃~約37.5℃である、項目11に記載の方法。
[項目13]前記第2の温度が約29℃~約35℃である、項目11または項目12に記載の方法。
[項目14]前記第1の温度が約37℃であり、前記第2の温度が約30℃である、項目11に記載の方法。
[項目15]前記第1の温度が約36.5℃であり、前記第2の温度が約33℃である、項目11に記載の方法。
[項目16]前記細胞が、CHO、NS0/1、PER.C6、COS-7、ヒト胚腎臓株(懸濁培養の増殖のためにサブクローニングした293または293細胞)、BHK、TM4、CVl、VERO-76、HeLa、MDCK、BRL3A、W138、Hep G2、MMT060562、TRI、MRC5、FS4細胞及びHep G2細胞を含む群から選択される、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
[項目17]前記細胞がCHO細胞である、項目16に記載の方法。
[項目18]項目1~17のいずれか一項によって作成される組換えポリペプチド。
[項目19]哺乳動物細胞で作成される組換えポリペプチドであって、前記組換えポリペプチドがアスホターゼアルファ(配列番号1)を含み、及び
a.約0.9~約3.5シアル酸モル/タンパク質モノマーモルの間の総シアル酸含量(TSAC)、
b.約5.2~約6.7の間の等電点電気泳動(IEF)、
c.図41または図42で示す主要なグリカン構造、
d.図38または図39で示す、2-AB標識化オリゴ糖クロマトグラムプロファイル、e.図40または図44~49で示す、MALDI-ToFグリコペプチドフィンガープリントプロファイル、
f.約88~108kDa及び生成された組換えポリペプチドの総量の約85%以上の分子量を有する、還元SDS-PAGEの主バンド、
g.約194~約273kDa及び生成された組換えポリペプチドの総量の約85%以上の分子量を有する、非還元SDS-PAGEの主バンド、
h.サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による、約95.0%以上の組換えポリペプチドの二量体、及び約5.0%以下の凝集物、
i.逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を介した約95.0%以上の純度、
j.アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)を介した約90.0%以上のメインピーク、約6.0%以下の酸性ピーク、及び約4.0%以下の塩基性ピーク、
k.約75~約125%の割合のヒドロキシアパタイト(HA)結合、
l.約620単位/mg~約1250単位/mgの生成物の比活性(pNPP)、
m.無機ピロホスフェート(PPi)加水分解アッセイの約13μM~約69μMのK
m
、
n.無機ピロホスフェート(PPi)加水分解アッセイの約65s
-1
~約165s
-1
のK
cat
、
o.キャピラリー電気泳動のすべてのピークについて約6.45~約6.95のpI範囲、
p.脱グリコシル後、図34Aで示すようなMALDI-ToF質量スペクトル上のピーク、
q.還元及び脱グリコシル後、図34Bで示すようなMALDI-ToF質量スペクトル上のピーク、
r.図35で示すMALDI-ToF質量スペクトル上のピーク、
s.図36で示すリン酸化プロファイル、
t.図37Aで示す、負イオンMALDI-ToF質量スペクトル上のシアル化グリカンプロファイル、
u.図37Bで示す、正イオンMALDI-ToF質量スペクトル上の中性グリカンプロファイル、
v.約0.03~約0.15の組換えポリペプチドの1モル当たりのマグネシウムのモル比、
w.約0.5~約1.5の組換えポリペプチドの1モル当たりのカルシウムのモル比、及び
x.約0.5~約3.0の組換えポリペプチドの1モル当たりの亜鉛のモル比、を含む群から選択される少なくとも1つの特性を有する、前記組換えポリペプチド。
[項目20]半分子当たり約0.7~約1.19の遊離システインを有する、項目18または項目19に記載の組換えポリペプチド。
[項目21]約13.5%~約35.7%の割合でSer93にてリン酸化を有する、項目18、19または20のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
[項目22]AEXクロマトグラムの約90.0%以上のメインピーク、約6.0%以下の酸性ピーク及び約4.0%以下の塩基性ピークを有する、項目14~21のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
[項目23]AEXクロマトグラムの約93.7%以上のメインピーク、約4.9%以下の酸性ピーク及び約3.4%以下の塩基性ピークを有する、項目22に記載の組換えポリペプチド。
[項目24]約0.9~約3.5シアル酸モル/タンパク質モノマーモルの間の総シアル酸含量(TSAC)を有する、項目18~23のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
[項目25]1モノマー当たり約1.2~約3.0シアル酸モル/モルの平均総シアル酸含量(TSAC)を有する、項目24に記載の組換えポリペプチド。
[項目26]1モノマー当たり約1.9~約2.7シアル酸モル/モルの平均総シアル酸含量(TSAC)値を有する、項目25に記載の組換えポリペプチド。
[項目27]1モノマー当たり約1.85~約2.28シアル酸モル/モルの平均総シアル酸含量(TSAC)値を有する、項目26に記載の組換えポリペプチド。
[項目28]約0.15未満のマグネシウムのモル比を有する、項目18~27のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
[項目29]約0.05~約0.10のマグネシウムのモル比を有する、項目28に記載の組換えポリペプチド。
[項目30]約0.12のマグネシウムのモル比を有する、項目28に記載の組換えポリペプチド。
[項目31]サイズ排除HPLCで測定されるように、少なくとも約95.0%の前記組換えポリペプチドの二量体、及び約5.0%以下のポリペプチド凝集物を含む、項目18~30のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
[項目32]特にサイズ排除HPLCで測定されるように、少なくとも約96.8%の前記組換えポリペプチドの二量体、及び約3.2%以下のポリペプチド凝集物を含む、項目31に記載の組換えポリペプチド。
[項目33]特にサイズ排除HPLCで測定されるように、少なくとも約97.6%の前記組換えポリペプチドの二量体、及び約2.4%以下の凝集物を含む、項目32に記載の組換えポリペプチド。
[項目34]特にRP-HPLCで測定されるように、少なくとも約95.0%の純度を含む、項目18~33のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
[項目35]RP-HPLCで測定されるように、少なくとも約97.6%の純度を含む、項目34に記載の組換えポリペプチド。
[項目36]約75~約125%の割合のヒドロキシアパタイト(HA)結合を含む、項目18~35のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
[項目37]約85%~約97%の平均ヒドロキシアパタイト結合%を含む、項目36に記載の組換えポリペプチド。
[項目38]約90%~約91%の平均ヒドロキシアパタイト結合%を有する、項目37に記載の組換えポリペプチド。
[項目39]約620~約1250単位/mgの比活性(pNPP)を有する、項目18~38のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
[項目40]約904.0~約907.7U/mgの平均比活性(pNPP)を有する、項目39に記載の組換えポリペプチド。
[項目41]前記組換えポリペプチドが、配列番号1の配列、または配列番号1に完全に相補的な配列を含む、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる、項目18~40のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
[項目42]前記流加リアクターが200L~20,000Lである、項目18~41のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
[項目43]前記流加リアクターが2,000L~20,000Lである、項目42に記載の組換えポリペプチド。
[項目44]項目18~43のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、組成物を含む、医薬製剤。
[項目45]対象の無機ピロホスフェート(PPi)の開裂を増加させるための、項目18~43のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドまたは項目44に記載の医薬製剤の使用方法。
[項目46]アルカリホスファターゼ欠乏に関連する病態を患っている対象を治療する方法であって、前記方法が、項目18~43のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドまたは項目44に記載の医薬製剤の治療に有効な量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
[項目47]アルカリホスファターゼ欠乏に関連する前記病態が、低ホスファターゼ血症(HPP)または神経線維腫症I型(NF1)である、項目46に記載の方法。
[項目48]前記低ホスファターゼ血症(HPP)が周産期、乳児、若年性または成人HPPである、項目47に記載の方法。
[項目49]アルカリホスファターゼ欠乏に関連する前記病態が、骨及び歯の非石灰化骨基質及び/または低石灰化によって特徴づけられる、項目48に記載の方法。
[項目50]前記非石灰化骨基質がくる病及び/または骨軟化症を引き起こす、項目49に記載の方法。
[項目51]前記対象がヒトである、項目45~50のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】タンパク質生成において温度シフトの有無にかかわらず、代表的な製造工程(#1)の間の細胞増殖(パネルA、左)及び生存度(パネルA、右)、ならびに全体のグルコース(パネルB、左)及びラクテート(パネルB、右)濃度の比較を示すグラフである。対照は、温度シフトのある、2つの実施の平均結果を表す。
【
図2】温度シフトの有無にかかわらず、例示の製造工程(#1)を使用して生成したアスホターゼアルファの結合可能なタンパク質Aの力価(パネルA)、容量活性(パネルB)及び比活性(パネルC)の比較を示すグラフである。対照は、温度シフトのある、2つの実施の平均結果を表す。
【
図3】温度シフトの有無にかかわらず、例示の製造工程(#1)を使用して生成したアスホターゼアルファのAEX(アニオン交換クロマトグラフィー)酸性ピーク(%)(パネルA)及びSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)凝集物(%)(パネルB)測定値の比較を示すグラフである。
【
図4】温度シフトの有無にかかわらず、例示の製造工程(#1)を使用して生成したアスホターゼアルファの非還元LoC(ラボオンチップ、パネルA)、還元LoC(パネルB)及びTSAC(総シアル酸含量、パネルC)の比較を示すグラフである。
【
図5】温度シフトの有無にかかわらず、例示の製造工程(#1)で生成したアスホターゼアルファの中性グリカンプロファイル(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化-飛行時間型すなわちMALDI-TOFによる)を示すグラフである。参照は、以前の20K工程によって生成された標準アスホターゼアルファを表す。
【
図6】生成したアスホターゼアルファの凝集物レベル(パネルA)及びTSAC(パネルB)上のシフトする生成温度の影響を示すグラフである。エラーバーは、各条件下の標準偏差を表す。
【
図7】培養の10日または12日後、例示の工程#2によって生成したアスホターゼアルファのTSAC値上の培養pHの影響を示すグラフである。
【
図8】例示の工程#2のアスホターゼアルファTSACの培地供給添加(グリコース(glc)の異なる濃度で表される、パネルA)、及び供給添加モード(パネルB)の影響を示すグラフである。
【
図9】例示の工程#2のアスホターゼアルファ活性の亜鉛補充の影響(パネルA、9日目に補充した亜鉛)、ならびに細胞増殖(パネルB)及び生存度(パネルC)の亜鉛濃度の影響を示すグラフである。
【
図10】例示の工程#3のアスホターゼアルファTSACのpH及び生成温度(パネルA)、タンパク質A力価(パネルB)ならびに容量活性(パネルC)の影響を示すグラフである。
【
図11】例示の工程#3の容量活性の増殖温度(パネルA)及びアスホターゼアルファの断片化(パネルB、SECで測定)の影響を示すグラフである。
【
図12】例示の工程#3のアスホターゼアルファ凝集物の生成温度及びpH(パネルA、SECで測定)、酸性ピーク%(パネルB、AEXで測定)、アスホターゼアルファの断片化(パネルC、SECで測定)、ならびに塩基性ピーク%(パネルD、AEXで測定)の影響を示すグラフである。
【
図13】容量活性の播種密度及び温度シフトのタイミング(パネルA)、ならびにアスホターゼアルファの断片化(パネルB、SECで測定)の影響を示すグラフである。播種は、例示の工程#3の播種密度を表す。
【
図14A-14B】例示の工程#3のアスホターゼアルファ容量活性の培地供給(量及びタイミング)(パネルA)、凝集物(パネルB、SECで測定)、酸性ピーク%(パネルC、AEXで測定)、塩基性ピーク%(パネルD、AEXで測定)、ならびにTSAC(パネルE)の影響を示すグラフである。
【
図15】例示の工程#4の10日目までの細胞増殖(パネルA)及び生存度(パネルB)の培養培地pHの影響を示すグラフである。
【
図16】例示の工程#4の10日目までの細胞増殖(パネルA)及び生存度(パネルB)の生成温度の影響を示すグラフである。
【
図17】例示の工程#4の10日目までの培養培地のグルコース濃度(パネルA)及びラクテート濃度(パネルB)の培養培地pHの影響を示すグラフである。
【
図18】例示の工程#4の10日目までの培養培地のグルコース濃度(パネルA)及びラクテート濃度(パネルB)の生成温度の影響を示すグラフである。
【
図19】例示の工程#4の10日目までのタンパク質A力価(パネルA)、容量活性(パネルB)、特異的タンパク質A生産性(パネルC)及び比活性(パネルD)の培養培地pHの影響を示すグラフである。
【
図20】例示の工程#4のタンパク質A力価(パネルA)、容量活性(パネルB)、特異的タンパク質A生産性(パネルC)及び比活性(パネルD)の生成温度の種々の影響を示すグラフである。
【
図21】例示の工程#4のアスホターゼアルファTSACの培養培地pH(パネルA)及び生成温度(パネルB)の影響を示すグラフである。
【
図22】例示の工程#4の生成したアスホターゼアルファのAEX酸性ピークの培養培地pH(パネルA)及び生成温度(パネルB)の影響を示すグラフである。
【
図23】例示の工程#4のアスホターゼアルファ凝集物(SECで測定)の培養培地pH(パネルA)及び生成温度(パネルB)の影響を示すグラフである。
【
図24】例示の工程#4の生成したアスホターゼアルファのLoCメインピーク(%、非還元条件)測定値の培養培地pH(パネルA)及び生成温度(パネルB)の種々の影響を示すグラフである。
【
図25】例示の工程#4の生成したアスホターゼアルファ(MALDI-ToFで測定)の中性グリカンプロファイルの培養培地pHの影響を示すグラフである。上パネルは、33℃で10日間、異なる培養培地pHで生成したアスホターゼアルファのすべてのMALDI-ToFピークを示す。各ピーク値は、下パネルで計算して比較した。
【
図26】例示の工程#4の生成したアスホターゼアルファ(MALDI-ToFで測定)の中性グリカンプロファイルの生成温度の影響を示すグラフである。上パネルは、10日間、種々の生成温度のpH6.9で生成したアスホターゼアルファのすべてのMALDI-ToFピークを示す。各ピーク値は、下パネルで計算して比較した。
【
図27】例示の工程#4のアスホターゼアルファ品質のiCE280分析における、キャピラリー等電点電気泳動ピーク%の、培養培地pH(パネルA)及び生成温度(パネルB)の影響を示すグラフである。
【
図28】種々の工程での細胞増殖(パネルA)及び生存度(パネルB)を比較するグラフである(青線:1回のボーラス培地供給による対照工程(2つのバイオリアクター槽で実施)、赤線:4回の培地供給による改善された工程(6つのバイオリアクター槽で実施)、灰色の線:標準としてこれまでの20K工程(20のバイオリアクター槽で実施))。灰色の実線は20K工程の平均を表し、点線は平均±1×標準偏差を表す。
【
図29】種々の工程でのグルコース利用(パネルA)及びラクテート作成(パネルB)を比較するグラフである(青線:1回のボーラス培地供給による対照工程(2つのバイオリアクター槽で実施)、赤線:4回の培地供給による改善された工程(6つのバイオリアクター槽で実施)、灰色の線:標準としてこれまでの20K工程(20のバイオリアクター槽で実施))。灰色の実線は20K工程の平均を表し、点線は平均±1×標準偏差を表す。
【
図30】種々の工程で生成したアスホターゼアルファのタンパク質A力価(パネルA)及び比活性(パネルB)を比較するグラフである(青線:1回のボーラス培地供給による対照工程(2つのバイオリアクター槽で実施)、赤線:4回の培地供給による改善された工程(6つのバイオリアクター槽で実施)、灰色の線:標準としてこれまでの20K工程(20のバイオリアクター槽で実施))。灰色の実線は20K工程の平均を表し、点線は平均±1×標準偏差を表す。
【
図31】種々の工程での活性力価(パネルA)及び総容量活性(パネルB)を比較するグラフである(青線:1回のボーラス培地供給による対照工程(2つのバイオリアクター槽で実施)、赤線:4回の培地供給による改善された工程(6つのバイオリアクター槽で実施)、灰色の線:標準としてこれまでの20K工程(20のバイオリアクター槽で実施))。灰色の実線は20K工程の平均を表し、点線は平均±1×標準偏差を表す。
【
図32】対照工程(灰色:1回のボーラス培地供給)及び改善した工程(濃い灰色:4回の培地供給)からのアスホターゼアルファ比活性を比較するグラフである。
【
図33】以前の工程Y(下側の線:更なる亜鉛補給なし)及び更に改善した工程(上側の線:30~90μMの亜鉛補給状態の平均及び14日まで延長した培養時間を示す)からのアスホターゼアルファ比活性を比較するグラフである。
【
図34】脱グリコシル後の生成したアスホターゼアルファ(パネルA)、及び還元かつ脱グリコシルした生成したアスホターゼアルファ(パネルB)のMALDI-ToF質量スペクトルデータを示すグラフである。
【
図35】生成したアスホターゼアルファのMALDI-ToF質量スペクトルを示すグラフである。
図35は出現順にそれぞれ、配列番号1の残基83~105として「TYNTNAQVPDSAGTATAYLCGVK」、配列番号1の残基93~97として「SAGTA」、及び配列番号1の残基99~104として「AYLCGV」を開示する。
【
図36】アスホターゼアルファ上のリン酸化部位のMS/MS定量を示すグラフである。
【
図37】生成したアスホターゼアルファのシアル化グリカンの負イオンMALDI-ToF質量スペクトル(パネルA)、及び中性グリカンの正イオンMALDI-ToF質量スペクトル(パネルB)を示すグラフである。
【
図38】アスホターゼアルファのオリゴ糖の蛍光クロマトグラムを示すグラフである。
【
図39】アスホターゼアルファ標準品の蛍光クロマトグラムを示すグラフである。
【
図40】アスホターゼアルファから生成されるグリコペプチドの質量スペクトルを示すグラフである。
【
図41】アスホターゼアルファの主なグリカンの推定構造の表示である(C7108H11008O2206S56(タンパク質部分二量体)、またはC3554H5506O1103S28(モノマー))。グリカン当たりのNeuAc(FA2G2、FA2G1及びA2G2)の数は、推定数である。
【
図42】アスホターゼアルファのグリコシル化部位上の推定されるグリカン構造の表示である。
【
図43】アスホターゼアルファの代表的なエレクトロフェログラムを示すグラフである。
【
図44】20K及び2Kバッチから生成されるアスホターゼアルファのグリコペプチド質量フィンガープリントを示すグラフである(T15~16のN123)。2Kバッチ番号:#35、#36及び#38、20Kバッチ番号:#40、#42及び#34。
【
図45】20K及び2Kバッチから生成されるアスホターゼアルファのグリコペプチド質量フィンガープリントを示すグラフである(T26~27のN213)。2Kバッチ番号:#35、#36及び#38、20Kバッチ番号:#40、#42及び#34。
【
図46】20K及び2Kバッチから生成されるアスホターゼアルファのグリコペプチド質量フィンガープリントを示すグラフである(T33のN254)。2Kバッチ番号:#35、#36及び#38、20Kバッチ番号:#40、#42及び#34。
【
図47】20K及び2Kバッチから生成されるアスホターゼアルファのグリコペプチド質量フィンガープリントを示すグラフである(T35のN286)。2Kバッチ番号:#35、#36及び#38、20Kバッチ番号:#40、#42及び#34。
【
図48】20K及び2Kバッチから生成されるアスホターゼアルファのグリコペプチド質量フィンガープリントを示すグラフである(T45~46のN413)。2Kバッチ番号:#35、#36及び#38、20Kバッチ番号:#40、#42及び#34。
【
図49】20K及び2Kバッチから生成されるアスホターゼアルファのグリコペプチド質量フィンガープリントを示すグラフである(T55のN564)。2Kバッチ番号:#35、#36及び#38、20Kバッチ番号:#40、#42及び#34。
【
図50】2K及び20Kバッチから生成されるアスホターゼアルファの亜鉛(パネルA)、マグネシウム(パネルB)及びカルシウム(パネルC)のICP金属イオンモル比を比較するグラフである。
【
図51】
図51A:種々のpH条件下で、培養時間を通して生細胞密度(VCD)を比較するグラフである。
図51B:種々のpH条件下で、培養時間を通して細胞生存度を比較するグラフである。
【
図52】
図52A:所要培養時間を通してバイオリアクターのグルコース濃度を示すグラフである。
図52B:所要培養時間を通してバイオリアクターのラクテート濃度を示すグラフである。
【
図53】種々のpH条件下で、比活性プロファイルを比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
「約」「およそ」:本明細書で使用する場合、1つ以上の特定の細胞培養条件に適用される際「約」及び「およそ」という用語は、その培養条件(複数可)について述べた参照値に類似する値の範囲を指す。ある特定の実施形態で、「約」という用語は、その培養条件(複数可)について述べた参照値の25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%以下内に含まれる値の範囲を指す。
【0029】
「アミノ酸」:本明細書で使用する場合「アミノ酸」という用語は、ポリペプチドの形成で通常使用される20の天然起源アミノ酸のいずれか、またはそのアミノ酸の類似体もしくは誘導体を指す。本開示のアミノ酸は、細胞培養に培地で提供されることができる。培地で提供されるアミノ酸は、塩として、または水和物の形態で提供され得る。
【0030】
「バッチ培養」:本明細書で使用する場合「バッチ培養」という用語は、細胞を培養するときに最終的に使用される、培地(以下の「培地」の定義を参照)及び細胞それ自体を含むすべての成分が培養工程の開始時に提供される、細胞の培養方法を意味する。バッチ培養は通常ある時点で停止し、培地中の細胞及び/または成分が採取されて、所望により精製される。
【0031】
「バイオリアクター」:本明細書で使用する場合「バイオリアクター」という用語は、細胞培養(例えば、哺乳動物細胞の培養)の増殖に使用される容器を意味する。バイオリアクターは、細胞の培養に有用であればサイズは問わない。通常バイオリアクターは少なくとも1リットルであり、10、100、250、500、1000、2500、5000、8000、10,000、12,000、20,000L以上、またはその間の任意の容量であってもよい。バイオリアクターの内部条件は、限定されないがpH及び温度が挙げられ、通常培養期間中に制御される。バイオリアクターは、本発明の培養条件下で、培地中に懸濁した哺乳動物または他の細胞培養液を保持するのに好適な任意の材料からなることができ、それはガラス、プラスチックまたは金属を含む。本明細書中で使用する場合「生産用バイオリアクター」という用語は、目的のポリペプチドまたはタンパク質の製造で使用する、最終のバイオリアクターを指す。大規模な細胞培養の生産用バイオリアクターの容量は通常、少なくとも500Lであり、1000、2500、5000、8000、10,000、12,000、20,000L以上、またはその間の容量であってもよい。当業者は本開示を実施する際に使用する適切なバイオリアクターを知っており、それを選択することができるだろう。
【0032】
「細胞密度」:本明細書で使用する場合「細胞密度」という用語は、規定量の培地に存在する細胞の数を意味する。
【0033】
「細胞生存度」:本明細書で使用する場合「細胞生存度」という用語は、所定の培養条件または実験変動下で生存する培養液中の細胞の能力を指す。本明細書で使用する場合、前記用語は、その時点にて培養液中で生存及び死滅する細胞の総数に関して、特定の時間で生きている細胞の部分も指す。
【0034】
「培養」及び「細胞培養」:本明細書で使用する場合、これらの用語は、細胞集団の生存及び/または増殖に適した条件下で、培地(以下の「培地」の定義を参照)中にて懸濁される細胞集団を指す。当業者には明らかであるように、本明細書で使用するこれらの用語は、細胞集団及びその集団が懸濁される培地を含む組み合わせを指し得る。
【0035】
「流加培養」:本明細書で使用する場合「流加培養」という用語は、培養工程の開始後のある時点で追加の成分を培地に与える細胞の培養方法を意味する。提供される成分は通常、培養工程中に枯渇した細胞のための栄養補助剤を含む。一般的に流加培養をある時点で停止し、培地中の細胞及び/または成分を採取して、所望により精製する。流加培養は、対応する流加バイオリアクターで実施することができる。
【0036】
「断片」:本明細書で使用する場合「断片」という用語はポリペプチドを指し、そのポリペプチドに特有または特徴的な所与のポリペプチドの分離した部分として定義される。本明細書で使用する場合、前記用語は、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも一部を保持する所与のポリペプチドの分離したいずれの部分も意味する。いくつかの実施形態において、保持される活性量は、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも10%である。種々の実施形態で、保持される活性の割合は、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である。他の実施形態において、保持される活性の割合は、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも95%、96%、97%、98%または99%である。一実施形態において、保持される活性の割合は、完全長ポリペプチドの活性の100%である。本明細書で使用する場合、前記用語は、完全長ポリペプチドで見いだせる少なくとも既成の配列エレメントを含む、所与のポリペプチドのいずれの部分も指す。いくつかの実施形態において、配列エレメントは、完全長ポリペプチドの少なくとも4~5のアミノ酸に及ぶ。いくつかの実施形態において、配列エレメントは、完全長ポリペプチドの少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50以上のアミノ酸に及ぶ。
【0037】
「積算生細胞密度」:本明細書で使用する場合「積算生細胞密度」という用語は、培養期間にわたる生細胞の平均密度に、培養が行われた経過時間を掛けたものを指す。製造されたポリペプチド及び/またはタンパク質の量の推測は、培養期間にわたって存在する生細胞の数に比例し、積算生細胞密度は、培養期間にわたって製造されたポリペプチド及び/またはタンパク質の量を推定するのに有用なツールである。
【0038】
「培地」「細胞培養培地」及び「培養培地」:本明細書で使用する場合、これらの用語は、増殖する哺乳動物細胞に栄養を与える栄養分を含む溶液を意味する。一般的に、これらの溶液は、必須アミノ酸及び非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、ならびに最小限の増殖及び/または生存に細胞が必要とする微量元素を提供する。溶液は、ホルモン及び成長因子を含む、最小の割合を超える成長及び/または生存を高める成分も含むことができる。溶液は、例えば細胞生存及び増殖に最適なpHならびに塩濃度に調製される。培地は更に、「限定培地」、タンパク質、加水分解物または未知の組成物の成分を含有しない無血清培地であり得る。限定培地は動物由来の成分を含まず、全成分は周知の化学構造を有する。
【0039】
「代謝廃棄物」:本明細書で使用する場合「代謝廃棄物」という用語は、特に望ましい組換えポリペプチドもしくはタンパク質の発現または活性に関係して細胞培養にある程度有害な正常または正常でない代謝プロセスの結果として、細胞培養によって生じる化合物を指す。例えば代謝廃棄物は、細胞培養の増殖もしくは生存度に有害となり得る、製造される組換えポリペプチドもしくはタンパク質の量を減少させ得る、発現されるポリペプチドもしくはタンパク質の折り畳み、安定性、グリコシル化もしくは他の翻訳後修飾を変化させ得る、またはいくつかの他の方法では、細胞及び/または組換えポリペプチドもしくはタンパク質の発現もしくは活性にとって有害になり得る。例示的な代謝廃棄物として、グルコース代謝の結果として産生されるラクテート、及びグルタミン代謝の結果として産生されるアンモニウムが挙げられる。一実施形態において、方法は、細胞培養の代謝廃棄物の産生を緩やかにし、減少させ、または取り除くために選択される。
【0040】
「浸透圧」及び「浸透圧モル濃度」:浸透圧は、水溶液に溶解した溶質粒子の浸透圧の程度である。溶質粒子は、イオン及び非イオン化分子を含む。浸透圧は、1kgの溶液中に溶解した浸透圧的に活性な粒子の濃度(すなわちオスモル)として表される(38℃の1mOsm/kg H2Oは19mmのHgの浸透圧と同等である)。一方「浸透圧モル濃度」は、1リットルの溶液に溶解した溶質粒子の数を指す。本明細書で用いる場合、「mOsm」という略語は、「ミリオスモル/溶液kg」を意味する。
【0041】
「灌流培養」:本明細書で使用する場合「灌流培養」という用語は、培養工程の開始後に、追加の成分が連続的にまたは半連続的に培養に提供される、細胞の培養方法を意味する。提供される成分は通常、培養工程中に枯渇した細胞のための栄養補助剤を含む。培地中の細胞及び/または成分の部分は通常、連続的または半連続的に採取され、所望により精製される。
【0042】
「ポリペプチド」:本明細書で使用する場合「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して結合されたアミノ酸の連続的な鎖を指す。前記用語は任意の長さのアミノ酸鎖を指すために使用されるが、当業者であれば、この用語が長い鎖に限定されるものではなく、ペプチド結合を介して結合される2つのアミノ酸を含む最小の鎖を指すこともできることを理解するであろう。
【0043】
「タンパク質」:本明細書で使用する場合「タンパク質」という用語は、個別単位として機能する1つ以上のポリペプチドを指す。単一のポリペプチドが別個に機能する単位であり、別個の機能する単位を形成するために、他のポリペプチドとの永久的な物理的結合を必要としない場合、本明細書で使用する場合「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は同じ意味で使用される。
【0044】
「組換えで発現したタンパク質」及び「組換えポリペプチド」:本明細書で使用する場合、これらの用語は、そのポリペプチドを発現するように遺伝学的に操作されている宿主細胞から発現されるポリペプチドを意味する。組換えで発現したポリペプチドは、哺乳動物の宿主細胞内で正常に発現したポリペプチドと同一または類似してもよい。組換えで発現したポリペプチドは、宿主細胞に対して外来、すなわち宿主細胞内で正常に発現されるペプチドに対して異種でもあり得る。あるいは、ポリペプチドの部分が哺乳動物の宿主細胞内で正常に発現されるペプチドと同一または類似のアミノ酸配列を含有し、他の部分は宿主細胞に対して外来であるという点で、組換えで発現したポリペプチドはキメラであり得る。
【0045】
「播種する」:本明細書で使用する場合「播種する」という用語は、細胞培養をバイオリアクターまたは別の容器に提供する工程を指す。細胞は、別のバイオリアクターまたは容器で事前に増殖され得る。あるいは細胞は凍結されて、バイオリアクターまたは容器に提供する直前に解凍してもよい。この用語は、単細胞を含有する任意の数の細胞を指す。
【0046】
力価:本明細書で使用する場合「力価」という用語は、所定量の培地容量によって分割された細胞培養によって製造される組換えで発現したポリペプチドまたはタンパク質の総量を指す。力価は通常、1ミリリットルの培地当たりのポリペプチドまたはタンパク質のミリグラムの単位で表される。
【0047】
本明細書で使用する頭字語は、例えば、VCD:生細胞密度、IVCC:生細胞濃度積分、TSAC:総シアル酸含量、HPAE-PAD:パルスアンペロメトリー検出を備えた高速アニオン交換クロマトグラフィー、SEC:サイズ排除クロマトグラフィー、AEX:アニオン交換クロマトグラフィー、LoC:ラボオンチップ、及びMALDI-TOF:マトリックス支援レーザー脱離/イオン化-飛行時間型を含む。
【0048】
本開示は、組換えタンパク質を発現する細胞(例えば限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含む哺乳動物細胞)の培養方法を提供する。本開示は、細胞培養によるアルカリホスファターゼ(例えばアスホターゼアルファ)の作成のための製造システムを提供する。ある特定の実施形態で、細胞増殖、生存度及び/またはタンパク質生成または品質に有害である1つ以上の代謝産物の生成を最小化するシステムが提供される。特定の実施形態において、細胞培養は、バッチ培養、流加培養または連続培養である。本開示の他の実施形態を以下で詳細に説明する。しかし、これらの実施形態の様々な変更が本開示の範囲内に包含されることを、当業者は理解するであろう。
【0049】
タンパク質
本開示は、細胞培養のアルカリホスファターゼ、アスホターゼアルファ、タンパク質の発現に関する。ある特定の実施形態で、このようなアスホターゼアルファは、本明細書で開示される方法により製造された後、アルカリホスファターゼ関連の疾患もしくは障害を治療するまたは予防するために使用することができる。例えばこのようなアスホターゼアルファは、減少した及び/または機能不全の内在性アルカリホスファターゼを有する、または過剰発現する(例えば、正常レベルを超える)アルカリホスファターゼ物質を有する対象に投与し得る。いくつかの実施形態で、本開示のアスホターゼアルファは組換えタンパク質である。いくつかの実施形態で、アスホターゼアルファは融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、本開示のアスホターゼアルファは、細胞型、組織(例えば、結合、筋肉、神経、または上皮組織)または器官(例えば、肝臓、心臓、腎臓、筋肉、骨、軟骨、靭帯、腱など)を特異的に標的とする。アスホターゼアルファは、配列番号1で示すように726のアミノ酸をそれぞれ有する、2つのsTNALP-Fc-D
10ポリペプチドからなる可溶なFc融合タンパク質である。下線を引いたアスパラギン(N)残基は、潜在的なグリコシル化部位(すなわち、N123、213、254、286、413及び564)に対応する。太下線を引いたアミノ酸残基(L
486~K
487&D
715~I
716)は、それぞれsALPとFc、ならびにFcとD
10ドメインの間のリンカーに対応する。
【0050】
各ポリペプチドまたはモノマーは、5つの部分からなる。アミノ酸L1~S485を含有する第1部分(sALP)は、ヒト組織非特異的アルカリホスファターゼ酵素の可溶な部分であり、それは触媒機能を含む。第2部分は、リンカーとしてアミノ酸L486~K487を含む。アミノ酸D488~K714を含有する第3部分(Fc)は、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含む、ヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)のFc部分である。第4部分は、リンカーとしてD715~I716を含む。第5部分はアミノ酸D717~D726(D10)を含み、それは、アスホターゼアルファが骨の鉱物相に結合するのを可能にする、骨を標的とする部分である。更に各ポリペプチド鎖は、6つの潜在的なグリコシル化部位及び11のシステイン(Cys)残基を含む。Cys102は、遊離システインとして存在する。各ポリペプチド鎖は、Cys122とCys184、Cys472とCys480、Cys528とCys588、及びCys634とCys692の間に4つの鎖内ジスルフィド結合を含む。2つのポリペプチド鎖は、両鎖のCys493の間、及び両鎖のCs496の間の2つの鎖内ジスルフィド結合により接続される。これらの共有結合的な構造的特徴に加えて、哺乳動物のアルカリホスファターゼは、亜鉛の2つの部位、マグネシウムの1つの部位及びカルシウムの1つの部位を含む、各ポリペプチド鎖上の4つの金属結合部位を有すると考えられる。
【0051】
アスホターゼアルファ
一実施形態において、アルカリホスファターゼタンパク質(例えば、骨標的化sALP融合タンパク質)は、アスホターゼアルファ(すなわちsTNALP-Fc-D10、配列番号1)である。具体的には、アスホターゼアルファは、726のアミノ酸のポリペプチド長を有する複合可溶性糖タンパク質である。アスホターゼアルファは、3つのドメインからなるFc融合タンパク質である。N末端からC末端まで、アスホターゼアルファは、(1)ヒト組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNSALP)の可溶性触媒ドメイン(UniProtKB/Swiss-Prot受託番号P05186)、(2)ヒト免疫グロブリンG1 Fcドメイン(UniProtKB/Swiss-Prot受託番号P01857)、及び(3)骨標的ドメインとして使用したデカアスパラギン酸ペプチド(D10)(Nishioka et al.2006Mol Genet Metab88:244-255)を含む。タンパク質は、2つのタンパク質一次配列からホモ二量体へと会合する。この融合タンパク質は、6つの確認された複合N-グリコシル化部位を含む。これらのN-グリコシル化部位のうちの5つはsALPドメインに、及び1つはFcドメインにある。アスホターゼアルファに存在する別の重要な翻訳後修飾は、酵素及びFcドメイン構造を安定化するジスルフィド架橋の存在である。合計4つの分子内ジスルフィド架橋は1モノマー当たりに存在し、2つの分子間ジスルフィド架橋は二量体中に存在する。アルカリホスファターゼドメインの1つのシステインは、遊離である。
【0052】
アスホターゼアルファは、低ホスファターゼ血症(HPP)の治療用に酵素補充療法として使うことができる。HPP患者において、TNSALPをコードする遺伝子の機能欠損変異体(複数可)は、TNSALP酵素活性の欠乏の原因となり、それは基質(例えば無機ピロホスフェート(PPi)及びピリドキサール-5’-ホスフェート(PLP))の上昇した循環濃度を引き起こす。HPP患者へのアスホターゼアルファの投与は、PPiを切断して、カルシウムと組み合わさるように無機ホスフェートを放出し、それによってヒドロキシアパタイト結晶形成及び骨石灰化を促進して、正常な骨格表現型を回復させる。アスホターゼアルファ及び治療でのその使用に関する更なる詳細については、PCT出願第WO2005103263号及び同第WO2008138131号を参照し、その教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。別の実施形態で、アスホターゼアルファは、神経線維腫症I型(NF1)の治療のための酵素補充療法として使用できる。アスホターゼアルファ及びNF1の治療のその使用(他のアルカリホスファターゼの使用と共に)に関する更なる詳細については、PCT出願第WO2013/058833号を参照し、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
製造工程
アルカリホスファターゼタンパク質(例えば、アスホターゼアルファ)は、当該技術分野において周知の標準的方法を使用して、哺乳動物または他の細胞によって作成することができる。このような細胞は、培養皿、ガラスフラスコまたはバイオリアクターで増殖させることができる。細胞培養及び組換えタンパク質の作成のための特定の方法は、例えばNelson and Geyer,1991 Bioprocess Technol.13:112-143及びRea et al.,Supplement to BioPharm International March2008,20-25に記載のとおり、当技術分野において周知である。代表的なバイオリアクターは、バッチ、流加及び連続反応器を含む。いくつかの実施形態で、アルカリホスファターゼタンパク質は、流加バイオリアクターで作成される。
【0054】
細胞培養工程の物理化学的環境の潜在的可変性は、例えば、pH、温度、細胞培養培地成分、原材料のロット間変動、培地の濾過材料、バイオリアクターのスケールの違い、ガス処理の方法(空気、酸素及び二酸化炭素)などの変化を含有する。本明細書にて開示するように、製造したアルカリホスファターゼタンパク質のグリコシル化プロファイルは、1つ以上のパラメーターの変更の影響を受ける可能性がある。
【0055】
細胞培養工程の開発
細胞培養の組換えタンパク質生成において、必要な転写調節エレメントを有する組換え遺伝子は、最初に宿主細胞に導入される。通常、レシピエント細胞に選択的優位性を付与する第2遺伝子が導入される。選択剤(通常、遺伝子導入の数日後に適用される)の存在下で、選択遺伝子を発現するそのような細胞だけが生存する。選択において多く使われる2つの遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)(ヌクレオチド代謝に関与する酵素)及びグルタミンシンセターゼ(GS)である。両方の場合で、選択は、非形質転換細胞の増殖を防止する、適切な代謝物質(DHFRについてはヒポキサンチン及びチミジン、GSについてはグルタミン)がない場合、発生する。一般に組換えタンパク質の効果的な発現において、バイオ医薬品がコードする遺伝子及び選択遺伝子が同じプラスミドにあるかどうかは、重要ではない。
【0056】
選択の後、生存する細胞は、単細胞として第2の培養容器に移されることができ、培養液はクローン集団を作成するために増殖する。最終的に個々のクローンは、組換えタンパク質発現について評価され、最高の産生株が更なる培養及び分析のために保持される。これらの候補から、適切な成長及び生成特性を有する1つの細胞株が、組換えタンパク質を生成するために選択される。それから生成ニーズによって決定された培養工程が確立される。
【0057】
細胞
ポリペプチドを作成するために培養され得る、任意の哺乳動物細胞または非哺乳動物細胞型は、本開示に従って利用できる。使用し得る哺乳動物細胞の非限定例としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞+/-DHFR(CHO,Urlaub and Chasin,1980Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216)、BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/1、ECACC受託番号85110503)、ヒト網膜芽細胞(PER.C6(CruCell,Leiden,The Netherlands)、SV40により形質転換されたサル腎臓CVl株(COS-7、ATCC CRL1651)、ヒト胚腎臓株(293細胞または懸濁培養の増殖のためにサブクローニングした293細胞、Graham et al.,1977J.Gen Virol.,36:59)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL10)、マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243-251(1980))、サル腎臓細胞(CVl ATCC CCL70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-I587)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34)、バッファローラット肝細胞(BRL3A、ATCC CRL1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065)、マウス乳房腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al.,1982,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68)、MRC5細胞、FS4細胞、及びヒト肝細胞癌株(Hep G2)が含まれる。特定の実施形態で、ポリペプチド及びタンパク質の培養ならびに発現は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株から生じる。
【0058】
更に、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する任意の数の市販及び非市販の組換え細胞株は、本開示に従って利用できる。当業者は、組換え細胞株が異なる栄養必要量を有し得る及び/または最適な増殖及びポリペプチドもしくはタンパク質の発現について異なる培養条件を有し得ることを十分に理解するであろうし、必要に応じて条件を変更することができるであろう。
【0059】
上述のとおり、多くの場合、細胞は、高レベルのタンパク質もしくはポリペプチドを作成するために選択される、または操作される。多くの場合、例えば目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子の導入によって、及び/または目的のポリペプチドをコードする遺伝子(内因性または導入された)の発現を制御する制御エレメントの導入によって、細胞は高レベルのタンパク質を作成するために遺伝子操作される。
【0060】
温度シフト
細胞培養工程、特に非連続工程(例えば、バイオリアクターの流加培養工程)の実施時間は、実施中に通常低下する細胞の残留する生存度によって通常制限される。したがって細胞生存度の時間を延長することは、組換えタンパク質作成を改善するために求められている。細胞死が培養上清にシアリダーゼを放出することができ、それは発現したタンパク質のシアル酸含量を低減することができるので、生成物の品質上の懸念は、生細胞密度の減少を最小化して、高い細胞生存度を維持することへの動機づけも提供する。タンパク質精製の懸念は、生細胞密度の減少を最小化して、高い細胞生存度を維持することに対して、更に別の動機づけを提供する。細胞片及び培養液中の死細胞含量は、培養実行終了後、タンパク質生成物を分離して及び/または精製するその能力にマイナスの影響を与えることができる。したがって細胞を培養液中により長時間生存可能に保つことによって、細胞によって作成される所望の糖タンパク質の質の劣化及び最終的な減少の原因となり得る、細胞タンパク質及び酵素(例えば、細胞プロテアーゼ及びシアリダーゼ)による培養培地の汚染の減少がある。
【0061】
多くの方法は、細胞培養液中の高い細胞生存度を得るために適用されることができる。1つは、標準温度で最初の培養後、培養温度を下げることを含有する。例えば、Ressler et al.,1996,Enzyme and Microbial Technology18:423-427を参照のこと。一般的に、目的のタンパク質を発現することが可能な哺乳動物または他の種類の細胞は、標準温度下で最初に増殖して、細胞数を増加させる。各細胞型におけるこのような「標準」温度は、通常、約37℃(例えば、例えば35.0℃、35.5℃、36.0℃、36.5℃、37.0℃、37.5℃、38.0℃、38.5℃及び/または39.0℃を含む、約35℃~約39℃)である。1つの特定の実施形態で、アスホターゼアルファを作成する温度は、最初は約37℃に設定される。適度に高い細胞密度に達するとき、細胞培養液全体の培養温度はそれからタンパク質作成を促進するためにシフトされる(例えば、下げられる)。ほとんどの場合、温度を下げることは、細胞周期の非増殖G1部分に向けて細胞をシフトし、前の高い温度環境と比べると、それは細胞密度及び生存度を増加させることができる。更に低温は、細胞タンパク質生成率を増加させて、タンパク質翻訳後修飾(例えばグリコシル化)を容易にして、新しく生成されたタンパク質の分裂または凝集を減少させて、タンパク質折り畳み及び3D構造の形成を促進して(したがって活性を維持する)、及び/または新しく生成されたタンパク質の分解を減少させることで、組換えタンパク質生成も促進することができる。いくつかの実施形態では、低温は、約30℃~約35℃(例えば、30.0℃、30.5℃、31.0℃、31.5℃、32.0℃、32.5℃、33.0℃、33.5℃、34.0℃、34.5℃及び/または35.0℃)である。他の実施形態において、アスホターゼアルファを作成するための温度は、最初に約35.0℃~約39.0℃に設定されて、それから約30.0℃~約35.0℃にシフトする。一実施形態において、アスホターゼアルファを作成する温度は、最初は約37.0℃に設定されて、それから約30℃にシフトする。別の実施形態では、アスホターゼアルファを作成する温度は、最初は約36.5℃に設定されて、それから約33℃にシフトする。更に別の実施形態では、アスホターゼアルファを作成する温度は、最初は約37.0℃に設定されて、それから約33℃にシフトする。そのうえ更なる実施形態において、アスホターゼアルファを作成する温度は、最初は約36.5℃に設定されて、それから約30℃にシフトする。他の実施形態において、温度をシフトする複数(例えば、1つ以上)のステップを適用できる。例えば温度は、約37℃から最初は33℃に、それから更に30℃まで下げられ得る。
【0062】
異なる温度にシフトする前に、培養液を特定温度に維持するための時間は、細胞生存度及び目的のタンパク質を作成する能力を維持しつつ、十分な(または所望の)細胞密度を得るために決定されることができる。いくつかの実施形態で、細胞培養は、異なる温度にシフトする前に、生細胞密度が約105細胞/mL~約107細胞/mL(例えば、1×105、1.5×105、2.0×105、2.5×105、3.0×105、3.5×105、4.0×105、4.5×105、5.0×105、5.5×105、6.0×105、6.5×105、7.0×105、7.5×105、8.0×105、8.5×105、9.0×105、9.5×105、1.0×106、1.5×106、2.0×106、2.5×106、3.0×106、3.5×106、4.0×106、4.5×106、5.0×106、5.5×106、6.0×106、6.5×106、7.0×106、7.5×106、8.0×106、8.5×106、9.0×106、9.5×106、1×107細胞/mL以上)に達するまで、最初の温度で増殖する。一実施形態において、細胞培養は、異なる温度にシフトする前に、生細胞密度が約2.5~約3.4×106細胞/mLに達するまで、最初の温度で増殖する。別の実施形態では、細胞培養は、異なる温度にシフトする前に、生細胞密度が約2.5~約3.2×106細胞/mLに達するまで、最初の温度で増殖する。更に別の実施形態では、細胞培養は、異なる温度にシフトする前に、生細胞密度が約2.5~約2.8×106細胞/mLに達するまで、最初の温度で増殖する。
【0063】
いくつかの実施形態において、細胞培養は、タンパク質作成のため30℃にシフトする前に、生細胞密度が約2.5~2.8×106細胞/mLに達するまで、37℃で増殖する。他の実施形態において、細胞培養は、タンパク質作成のため30℃にシフトする前に、生細胞密度が約2.5~3.4×106細胞/mLに達するまで、37℃で増殖する。
【0064】
pH
細胞培養の増殖培地のpHの変更は、細胞タンパク質分解活性、分泌及びタンパク質作成レベルに影響を及ぼすことができる。細胞株の大部分は、pH約7~8でよく増殖する。細胞増殖の最適pHは種々の細胞株で比較的ほとんど変化しないが、いくつかの通常の線維芽細胞株はpH7.0~7.7で最も機能し、形質転換細胞は通常7.0~7.4で最も機能する(Eagle,1973The effect of environmental pH on the growth of normal and malignant cells.J Cell Physiol82:1-8)。いくつかの実施形態では、アスホターゼアルファを作成するための培養培地のpHは、pH約6.5~7.7(例えば、6.50、6.55、6.60、6.65、6.70、6.75、6.80、6.85、6.90、6.95、7,00、7,05、7、10、7、15、7,20、7,25、7.30、7.35、7.39、7.40、7.45、7.50、7.55、7.60、7.65及び7.70)である。いくつかの実施形態において、アスホターゼアルファを作成するための培養培地のpHは、pH約7.20~7.60である。他の実施形態において、アスホターゼアルファを作成するための培養培地のpHは、pH約6.9~7.1である。1つの特定の実施形態において、アスホターゼアルファを作成するための培養培地のpHは、pH約6.9である。別の実施形態では、アスホターゼアルファを作成するための培養培地のpHは、pH約7.30である。更に別の実施形態では、アスホターゼアルファを作成するための培養培地のpHは、pH約7.39である。
【0065】
本明細書に引用したすべて文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
本開示は、理解の明瞭化のために図解及び例を用いてある程度詳しく記載されているが、一定の小さな変更及び改変が実施されることは、当業者にとって明らかである。したがって記載及び例は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0067】
実施例1.アスホターゼアルファの一般的な製造工程
本明細書に記載されるように、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ(sTNALP-Fc-D10)を作成する製造工程が開発された。
【表1】
【0068】
アスホターゼアルファを発現する安定的なCHO細胞株は、GS遺伝子発現系を使用して増殖された。二次クローンは限界希釈クローニングの一過程の高生成の一次クローンに由来し、最終的な細胞株が選択された。
【0069】
代表的な製造工程(工程X)を本明細書に記載する。マスターセルバンクのバイアルを解凍し、バイアルのすべての量を再懸濁した。すべての量は、増殖のための250mLの振とうフラスコへ移された。試料は、毎日計数及び生存度試験のために(その後すべての増殖ステップのためにも)とられた。細胞は複数のステップにより増殖して、1,000Lのシードバイオリアクター(N-3低レベル)、1,000Lのシードバイオリアクター(N-2高レベル)及び4,000Lのシードバイオリアクター(N-1)、それから20,000Lの生産用バイオリアクターに接種された。アスホターゼアルファの作成後、採取精製工程を用いて、滅菌濾過によって無傷細胞及び細胞片を除去した。それから採取を、濃縮及び緩衝剤希釈のために限外濾過した(Post Harvest UF)。更なる工程は、例えば、ウイルス不活性化(化学的にウイルス粒子を不活性化するため)、MabSelect SuReクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、ポストHIC UF/DF(UF/DF2)、capto adhereミックスモードクロマトグラフィー、ウイルス濾過(サイズ排除によって)、製剤(UF/DF3)及びバルクフィルを含んだ。例えば2,000L規模の工程、及びその後20,000Lの生産規模にスケールアップしたものを含む、複数の製造工程を実施した。2,000L(2K)と20,000L(20K)の工程の典型的な違いを表2及び表3にまとめる。2,000L(2K)規模の工程は、より顕著な誘導期及びより変化する後期生存度を有した(データは示さず)。
【表2】
【表3】
【0070】
2K工程及び20K工程の総収率、ならびに対応する生成したアスホターゼアルファの特性を比較した。製品特性を比較するために用いる分析法は、例えばSEC-HPLC、RP-HPLC及び他の方法を含み、生成したアスホターゼアルファの比活性、タンパク質濃度、pH及び総シアル酸含量(TSAC)を測定する。更に、例えば残留DNA、残留タンパク質A、宿主細胞タンパク質、バイオバーデン、及び異なる工程から作成されたアスホターゼアルファのエンドトキシンを測定するために、不純物及び安全性試験も実施した。2K及び20K規模のバッチからの薬物原料を比較するために、3つの追加の試験(すなわち、等電点電気泳動(IEF)、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及びオリゴ糖類マッピング)も実施した。これらの3つの試験結果は、これらのバッチについて同等なプロファイルを示した。結論として、2,000Lと20,000L規模間のアスホターゼアルファの質は、バッチ全体で同等だった。
【0071】
実施例2.アスホターゼアルファの生産性及び品質の温度シフトの影響
sTNALP-Fc-D10を作成するために採用されて実施される異なる製造工程の中で、温度シフトは一般的に、生産性及び最終的なアスホターゼアルファの品質に影響を及ぼすことがわかる。増殖温度(比較的高温)から生成温度(比較的低温)への温度シフトを、すべての工程で実施した。
【0072】
温度シフト対シフトなしの効果を比較するために、生産バイオリアクターが走らせる二連のsTNALP-Fe-D
10生産用バイオリアクター実施を実行し、そこで温度シフトはあった、またはなかった。ザルトリウス2L及び10Lバイオリアクターが、異なる製造工程に使用された。この例示の工程において、表4にまとめたように、生産用バイオリアクターで使用する原料は、例えば生産培地、10%の炭酸ナトリウム、CHO供給及びグルタミン原液を含有した。SFM4CHOとは、CHOの無血清培地を意味する。
【表4】
【0073】
方法
細胞培養実験デザイン
例示の工程においてアスホターゼアルファ生産性及び品質特性上の温度シフトの影響を評価するために、2ブロックの実験を行った。表5に示すように、2つのバイオリアクターの実施(すなわち#1及び#2)は温度シフト(37℃から30℃)と共に実施されて、2つの他の実施(すなわち#3及び#4)は37度からの温度シフトなしで行われた。
【表5】
【0074】
細胞密度及び生存度は、細胞カウンター(すなわち、ViCell VR、Beckman Coulter)を使用して計数した。pH及びオフラインガスはpHOxを使用して測定され、グルコース及びラクテートを含む主要な代謝物はセンサー(Nova Profile100,Nova Biomedical,Waltham,MA)を使用して測定された。酵素活性は、酵素活性測定の前に、3回の代わりに、各試料を1度だけ希釈する変形版による標準方法を使用して測定された。
【0075】
採取及び精製法
10日目(240±4時間)の50マイクロリットルの試料を、注射器を使用してすべてのバイオリアクターから採取した。遠心分離(3000×g、5分)による細胞除去の後、上清を、0.22μmボトルの上面フィルターを使用して浄化して、精製前に-80℃で保存した。ハイスループットタンパク質A精製の単回ステップを、この実験で適用した。試料は、分析的及びタンパク質特性評価分析の前に、低塩濃度緩衝液(5mMのNa3PO4、pH7.4)に緩衝液交換した。
【0076】
分析的及びタンパク質特性評価方法
本実験で分析する品質特性は、アスホターゼアルファ凝集物、断片化、電荷分布、総シアル酸含量(TSAC)及び中性グリカン種レベルを含んだ。凝集物レベルは、SECで定量化した総タンパク質に対する凝集物ピークの割合により推定した。断片レベルは、LoCで定量化した総タンパク質に対する断片の割合により推定した。電荷分布は、AEXでそれぞれ定量化した総タンパク質に対する塩基性ピーク、メインピーク及び酸性ピークの割合により推定した。総シアル酸含量(TSAC)はHPAE-PADによって定量化された。中性グリカン種の検出はMALDI-TOF質量分析によって実施された。
【0077】
結果
細胞培養の実施
工程#1で、温度設定値は、生細胞密度(VCD)が25~32×10
5細胞/mLに達した後、5時間以内に37℃から30℃へシフトした。温度シフトなしで、細胞培養はより高いピークVCDに達するが、より急速な生存度低下が起こった(
図1A)。より高い全体のグルコース消費が、同様に温度シフトなしの条件下で観察された(
図1B)。グルコースのボーラス添加を、本工程の説明に従って、温度シフトなし条件下で5日目及び8日目に適用した。興味深いことに、温度シフト条件より、温度シフトなしでかなり低い比率で、ラクテートはやはり消費された(
図1B)。
【0078】
温度シフトなし条件下のより高いピークVCDは、結合可能タンパク質A力価の早めの生成をもたらした(
図2A)。温度シフトなし条件下のより急速な生存度低下と共に、類似の結合可能タンパク質A力価は、両方の条件下で10日目に得られた。結合可能な特異的タンパク質A生産性全体は、温度シフト条件において6.4pg/細胞/日であり、温度シフトなし条件において6.7pg/細胞/日だった。興味深いことに、同様の結合可能タンパク質A力価は両方の条件下で観察されたが、温度シフトなし条件下の容量活性は温度シフト条件よりかなり低かった(
図2B)。更に、温度シフトなし条件下の比活性は、培養期間の全体を通して温度シフト条件より著しく低かった(
図2C)。37℃から33℃への温度シフトが工程#1の比活性を維持するために最適であることを、このデータは示す。工程#1で定量化されるすべての品質特性を、表6にまとめる。
【表6】
【0079】
酸性種の生成が、温度シフト条件と比較して、温度シフトなしでは少なかったことを、AEXの結果は示した(
図3A)。しかし温度シフトなしの条件下で、より著しく高い凝集物がSECの結果によって定量化された(
図3B)。温度シフトなしの条件下で、非還元LoC平均ピークの割合はより高く(
図4A、更に表6の「LoC(メイン%、NR)」列)、その一方で、還元LoC平均ピークの割合は低かった(
図4B、更に表6の「LoC(メイン%、R)」列)。
【0080】
シアリル化は、温度シフトなしの条件下で、約1倍著しく増加した(
図4C)。
【0081】
MALDI-TOFによる中性グリカンの分析は、温度シフトなしの条件下で検出される高次のマンノース種または非定型グリカン種がないことを示した(
図5)。しかし温度シフトなしの条件は、より少量のA2(温度シフトのある対照条件下で優勢な非フコシル化されたグリカン種)、より高いフコシル化(FA2対A2のより高い比)及びFA3G3、FA4G3、FA4G1L1及びFA4G4L1を含む高次グリカンの増加をもたらした(
図5)。
【0082】
工程#1のアスホターゼアルファ生産性及び品質で温度シフトのないことの影響を、表7にまとめる。温度シフトなしで、生成されたアスホターゼアルファは、非常に低い比活性を有した。一方、温度シフトなしの条件下で、より生成温度は、より高いシアリル化及びより高いフコシル化をもたらした。
【表7】
【0083】
実施例3.代表的な工程#2の最初の上流工程パラメーターの評価
この実施例は、代表的なアスホターゼアルファ製造工程#2の上流の製造工程パラメーターの最初の評価、及び生成されたアスホターゼアルファの重要な品質特性に影響を与えるその可能性についてまとめる。いくつかの上流の工程パラメーターは、凝集物%、断片化%、シアリル化、グリコシル化、電荷分布及び比活性を含む。
【0084】
細胞培養
この実験で参照されるすべての製造工程は、振とうフラスコまたはバイオリアクターで実施された。解凍後、細胞は、生産バイオリアクターの接種前に、一連の振とうフラスコ及びスピナーフラスコによって増殖した。生産用バイオリアクター(2L、5L、10Lまたは200L)は、特に指示がない限り、容積当たりの一定の電力、及び分当たり液体体積当たりの散布ガス容積(VVM)を使用して、評価された。生産用バイオリアクターの温度は、36.5℃にて0~約120時間制御されて、特に指示がない限り、約120時間で33.0℃にシフトした。溶存酸素の設定値は、30%に維持された。培養を10日目(240時間±6時間)に採取する場合、1ボーラス当たりのCPN供給の約2.7%(v/v)を96時間(hr)、144時間及び192時間に加えて、一方で培養を10日目より後に採取する場合、追加のボーラス供給は240時間に付与された。
【0085】
採取及び精製
生産用バイオリアクターから採取した試料を、5分間の3000×gでの遠心分離後、0.22μmの濾過によって浄化した。浄化して濾過した採取物の精製を実施して、精製の程度は本実験及び試料試験基準によって決定した。1つのクロマトグラフィーステップ(タンパク質A)または2つの連続的なクロマトグラフィーステップ(タンパク質A、その後の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC))の精製を、試験したほとんどの試料で実施した。更に試料は、分析試験の前に低塩濃度緩衝液(5mMのNa3PO4、pH7.4)に緩衝液交換した。
【0086】
分析的特性評価
本実験で参照される品質特性は、より広範な品質測定基準(例えば純度、効力及び構造)のサブセットと同定された。記載されている品質サブセットは、凝集物%、断片化%、電荷分布、総シアル酸含量(TSAC)、中性グリカンのプロファイル及び比活性を含む。凝集物及び断片レベルの両方は、ゲル透過HPLC(GP-HPLC)を使用して定量化される相対的ピーク面積で測定された。更に断片レベルは、SDS-PAGEまたラボオンチップ(LoC)キャピラリー電気泳動を使用して測定された。電荷分布は、アニオン交換(AEX)クロマトグラフィーを使用して推定した。TSACは、パルスアンペロメトリー検出を備えた高速アニオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)によって定量化された。中性グリカン種の検出は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量分析により実施した。比活性は、パラニトロフェニルホスフェート(pNPP)系アルカリホスファターゼ酵素アッセイに従って測定した。
【0087】
結果
1.増殖及び生成温度
生成物断片化の温度の影響が説明されてきた。36.5℃で増殖した選択した細胞クローンによって作成されるアスホターゼアルファについて、アスホターゼアルファの主バンドは、SDS-PAGEで測定した95.9%であり、ほぼ4%は断片として算出された。温度が5日目に36.5℃から33.0℃にシフトするとき、同じクローンはアスホターゼアルファ断片をほとんど生成しなかった(計算した主バンド>99%)。他の二次クローンは、36.5℃から33.0℃の温度シフトを介して、断片減少の非常に類似した傾向を示したが、すべての二次クローンが、断片レベルを1%未満に低下させることができたわけではない。したがって増殖温度及び生成温度は、断片化に影響を与えることができる。更に温度シフトを行うことに関連するタイミングは、アスホターゼアルファの品質にも影響を与え得る。
【0088】
GP-HPLCにより検出されるより高い凝集物レベルは、2Lのバイオリアクターの二次クローンのスクリーニング中、より低い生成温度下で観察された。温度をシフトしない(すなわち、36.5℃で維持する)とき、10の二次クローンによって生成される物質と比較して、温度が33℃にシフトするとき、6の二次クローンによって生成されるアスホターゼアルファの凝集物レベルを、
図6Aは示した。36.5℃から33.0℃への温度シフトが凝集物レベルの増加を引き起こし得ることを、これらのデータは示唆する。
【0089】
更にTSACの温度シフトの影響は、一次クローンの選択及び最初の工程の開発中に検討された(
図6B)。一次クローンは、2Lのバイオリアクターのシアリル化またはTSACの生成温度の影響(5日目以降)を調べるために用いた。この実験で、生成温度は、条件1の下で5日目に36.5℃から30.0℃に、条件2の下で5日目に36.5℃から33.0℃にシフトし、対照は温度シフトなしで実施した。生存度が60%と80%oの間のとき試料を採取して、その培養は生存度に応じて採取前に11~18日間実施された。
図6Bに示すように、温度シフトを実施することは、類似の生存度下で一定温度下の対照と比較して、より低いTSACをもたらし、低温にシフトすることはより低いTSACに一致した。本明細書で所望の最低のTSAC値は、1.8である。シアリル化(またはTSAC)が生成物の電荷プロファイルを変えて、中性グリカンを負に帯電したグリカンに変換するので、これらの3つの品質特性(生成温度、凝集物及びTSAC)は密接に関係していると見なされる。
【0090】
2.pH
6.90~7.00のpH設定値を変えることが増加したTSACをもたらすことを、予備結果は示した(
図7)。選択した二次クローンを用いて、pH設定値がそれぞれ6.90及び7.00の2つの2Lバイオリアクターを、アスホターゼアルファシアリル化のpHの影響を調べるために使用した。試料は、それぞれ10日目及び12日目にバイオリアクターから採取された。pH6.90条件下で、TSACが10日目の1.9から12日目の1.4へ下がることが観察された。TSAC値が低下する同じ傾向がpH7.00条件下で観察されたが、両日(10日目2.6及び12日目2.1)のpH7.00未満でのTSAC値は、より低いpH条件下のものより高かった。TSACが培養期間によって低下し、より低いpH設定値がより低いTSAC値をもたらすことを、これらのデータは示唆した。
【0091】
3.培地供給添加
最初のボーラス添加を遅らせること、または培地のグルコース濃度を上昇させることが、対照条件と比較してより著しく高いTSACをもたらし得ることを、予備データは示した(
図8A)。
【0092】
更に、培地供給がどのように送達されるか(連続的またはボーラス添加)も、TSACに影響を及ぼした。連続的添加モードと比較して、供給がボーラスモードで加えられるとき、より著しく高いTSACが観察されたことを、2L及び10L規模の両方からのデータは示した(
図8B)。したがってCPN供給は、ボーラスとして補充されたと確定される。上部滴加で、または表面下(浸漬)添加によって加えられるときに、TSACへの影響は観察されなかった。
【0093】
4.硫酸亜鉛の添加
構造及び活性を維持するのを助けるので、亜鉛イオンがアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)安定性にとって必須であることは、周知である。例えば、2つの亜鉛原子は1つの胎盤アルカリホスファターゼ分子と結合する(Helene Le Du et al.2001J.Biol.Chem.276:9158-9165)。この比率に基づいて、小規模モデルで開発した代表的な製造工程によって作成した1g/Lのアスホターゼアルファの力価において、約20μMの亜鉛はアスホターゼアルファの活性に必要である。
【0094】
細胞培養が経過すると、結合可能なタンパク質Aアスホターゼアルファが連続的に作成されたことが観察されたが、対応する容量活性はタンパク質A力価と一致せず、それは作成されたタンパク質が不活性であることを示した(
図9A)。更に、容量活性は5日目~9日目に減少するが、タンパク質活性は9日目の硫酸亜鉛補充に応じて直ちに回復した。このデータは、亜鉛が生産培地に補充される必要があることを示唆した。この実験で、硫酸亜鉛濃度は、9日目のボーラス添加により25μM増加した。タンパク質A力価が9日目に約1000mg/Lであることを考慮すると、この亜鉛ボーラス添加は、少なくとも2:1だけ亜鉛イオン対アスホターゼアルファの比を増大させた。
【0095】
以下の実験で、細胞増殖及び生存度の硫酸亜鉛の細胞毒性濃度は、バッチモードのミニバイオリアクターシステムを使用して調べられ、異なる濃度の硫酸亜鉛を0日目に培養培地に加えた。硫酸亜鉛濃度が300μM未満のとき、増殖または生存度への影響はほとんど観察されなかった(
図9B及び
図17C)。しかし、亜鉛濃度が500μM以上の条件で、増殖及び生存度は劇的に影響を受けた。したがって総亜鉛補充の最適濃度は、500μM未満であった。したがって0日目に補充される最適亜鉛濃度が、約25μMと約300μMの間であり得ると推定された(細胞増殖/生存度及びタンパク質機能問題両方を考慮する)。事実、150μMの亜鉛濃度は300μMより更に良好であり得て、それは前者が5日目後により少ない細胞増殖阻害をもたらすからである(
図9A)。20μMの亜鉛が機能的なアスホターゼアルファを生成するのに理論的に十分である(すなわち、活性酵素当たりの2つの亜鉛イオン)が、実際の亜鉛補充がアルカリホスフェート(例えば、アスホターゼアルファ、TNALP、PALP、GCALP、IAPまたはその融合/変異型タンパク質)製造工程で著しくより高い亜鉛濃度(例えば150μM)を必要とし得ることも予想外である。
【0096】
5.播種密度
一般的に、より高い播種密度はより高いピークの生細胞密度をもたらし、それは主に生産培地のある特定の栄養成分制約が原因である。供給及び温度シフトが培養期間に基づく際、他の上流工程パラメーター(特に温度シフトのタイミング)とともに播種密度は、アスホターゼアルファの品質に場合により影響を与えることができる。
【0097】
6.採取のタイミング
本例示の工程の採取のタイミングは240±6時間だった。TSACの採取タイミングの影響が示されている(例えば
図7を参照)。更に採取タイミングは生存度(例えば
図14を参照)と関連していると考えられており、培養の最後近くでの生存度低下は、採取タイミングがアスホターゼアルファの品質に場合により影響を与えることを示す。
【0098】
播種密度の管理、温度、pH、DO、ガス処理の方法、撹拌、CPN供給、グルコース添加、ガラクトース添加、亜鉛添加及び採取タイミングを含む、種々の上流工程パラメーターが評価された。凝集物%、断片化%、シアリル化、グリコシル化、電荷分布及び比活性を含む、更なる上流の工程パラメーターは、例えば以下で論じるとおり、評価された。
【0099】
温度は、凝集物、断片化及びシアリル化に強い影響を及ぼした。pHもアスホターゼアルファのシアリル化に影響を与えた。ガス処理の方法または/及び撹拌は、生存度に影響を与えると思われた。CPN供給添加は、シアリル化に影響を及ぼすと思われた。亜鉛添加は酵素活性を維持するのに重要であることを示し、亜鉛添加の量(150μM)は示した実験に基づいて決定された。採取のタイミングは、生存度及び培養終了時に近づくと低下するTSACと関連することがわかった。
【0100】
実施例4.代表的な工程#3の更なる上流工程パラメーターの評価
本実施例は、生産用バイオリアクター工程パラメーターのスクリーニングのために実施した、上流工程の更なる特性決定についてまとめる。最初の評価において、生成培養のpH、温度、播種密度、ガス処理の方法、撹拌、CPN供給、グルコース添加、ガラクトース添加及び採取タイミングを含む、上流工程パラメーターのリストを、本例示の工程で試験した。
【0101】
頭字語
CPP:重要な工程パラメーター、重要な品質特性に影響を及ぼし、したがって工程が所望の品質を作成するのを確実にするために、モニタされて制御される工程パラメーター(工程入力)
CQA:重要な品質特性
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
LoQ:定量限界
P/V:容積当たりの電力
【0102】
材料及び方法
最初の実験で影響の可能性があると示された工程パラメーターを、更に調べた。6ブロックのバイオリアクターを、以下の工程特性決定試験で行った(表8)。各工程パラメーターの3レベルは、製造及び工程パラメーター範囲試験の制御能力を考慮した現在の設定値(対照)として中央値レベルで試験した。ブロック1~5において、2つの複製対照を有する3レベル完全実施計画を実施した。ブロック6で、高度P/V及び散布VVMプラス2つの対照の4つの組み合わせを行った。
【表8】
【0103】
細胞培養
本実験で参照されるすべての製造工程は、2Lまたは10Lバイオリアクターで実施された。解凍後、細胞を、生産用バイオリアクターの接種前に、一連の振とうフラスコ及びスピナーフラスコによって増殖させた。生産用バイオリアクター(2Lまたは10L)は、特に指示がない限り、P/V及び散布VVMを使用して評価された。対照条件下で、細胞培養工程のパラメーターは以下のとおりである。培養pH設定値は、0.05の不感帯を有する6.90だった。温度は、36.5℃にて0~120時間制御されて、120時間で33℃にシフトした。溶存酸素の設定値は、30%に維持された。最初のP/Vは17W/m3(0~96時間)であり、96時間の第1のボーラス供給添加の前に81W/m3にシフトした。ボーラス当たり2.67%(v/v)のCPN供給は、96時間、168時間及び192時間に添加された。グルコースを≦2g/Lで維持した。グルコースが2g/Lを下回る場合.毎日のボーラス添加は、グルコース濃度を1.8~2.0g/Lの範囲に上昇させるために適用された。ガラクトースは、培養の全体にわたって、0日目及び4日目2.0g/L、ならびに5日目~9日目は毎日1.0g/L補充された。培養の一部を10日目(240±4時間)及び11日目(264±4時間)に採取した。
【0104】
採取及び精製
生産用バイオリアクターから採取した試料を、5分間の3000×gでの遠心分離後、0.22μmのフィルターによって浄化した。浄化して濾過した採取物の精製を実施した。精製の程度は本実験及び試料試験基準によって決定した。一ステップ(タンパク質A)または2つの連続ステップ(タンパク質A及びHIC)の精製を実施した。更に試料は、分析試験の前に低塩含有緩衝液(5mMのNa3PO4、pH7.4)に緩衝液交換した。
【0105】
分析的特性評価
本実験で参照する品質特性は、凝集物%、断片化%、電荷分布、総シアル酸含量(TSAC)及び中性グリカン種レベルを含む。凝集物及び断片レベルの両方は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して定量化される相対的ピーク面積により決定した。更にアスホターゼアルファの純度(メインピーク)も、ラボオンチップ(LoC)キャピラリー電気泳動を使用して測定した。電荷分布は、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)を使用して推定した。TSACは、パルスアンペロメトリー検出を備えた高速アニオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)によって定量化された。中性グリカン種の検出は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化-飛行時間(MALDI-TOF)質量分析によって実施された。容量活性は、パラニトロフェニルホスフェート(pNPP)系アルカリホスファターゼ酵素アッセイに従って測定した。
【0106】
統計解析及びデータの可視化
生産性及び各品質特性に影響を与える試験した工程パラメーターの可能性は、統計ソフトウェアパッケージJMP(Cary,NC)を使用して評価した。3つの連続パラメーター(2つの試験工程パラメーターにおいてそれぞれ3レベル、採取において2レベル)を分析した。両側t検定によって計算した個々p値が報告され、0.05が有意閾値に選ばれた。JMPによって生成された等高線図は、試験したパラメーターの各品質特性への潜在的影響を可視化するために使用した。
【0107】
結果
本例示の工程の各CQAにおける許容可能な範囲がまだ調査中だったので、例示の実験範囲が作成されて、比較のために使用した(表9)。10日目の結果全てから生じたデータソースは、本実験で得た。SECによる断片及び凝集物ならびにAEXによる塩基性及び酸性ピークを含む不純物測定において、平均プラス標準偏差の2倍を、上の閾値として使用した。SECで測定した断片及びAEXで測定した塩基性ピークにおける計算した上の閾値が、SEC及びAEXアッセイのLoQ(1%)より低い場合、上の閾値は両方の特性について1%に設定された。TSACについて、平均±標準偏差の2倍を実験範囲として使用した。
【表9】
【0108】
各CQAの各工程パラメーターの直接の影響の意義を表10にまとめる。P/V及び散布VVM影響のp値は、検出力の不足のため計算されなかった。p値≦0.05は、統計的に有意であると考えられている。
【表10】
【0109】
表11は、試験した工程パラメーター最小最大レベルで得た平均の品質特性値についてまとめている。例えばグルコース及びガラクトース添加実験で、3つのバイオリアクターはグルコース添加閾値として1.5g/Lを使用し、各々は異なるガラクトース添加レベルを有した。グルコース閾値条件1.5g/LのCQA値は、その3つのバイオリアクターから平均を使用して計算した。以下の項で、特に言及されない限り、10日目のデータを品質の考察のために使用する。
【表11】
【0110】
1.pH
生成されたアスホターゼアルファのTSACに影響を与えるpHを、従来の結果は示した。アスホターゼアルファの生産性及び品質の培養pHならびに生成温度の影響の可能性を、2Lのバイオリアクターで更に調べた。3つの培養pHレベル(6.75、6.90及び7.10)及び3つの生成温度レベル(30.0℃、33.0℃及び35.0℃)を含む完全実施計画を行い、すべての条件からの試料を、240±4時間及び264±4時間でそれぞれ採取した。二ステップ精製(ProA+HIC)は分析的解析の前に行った。
【0111】
試験した範囲6.75~7.10の培養pH設定値は、試験したすべてのCQAが表9で指定した小規模実験範囲内にあったという点で、重要な工程パラメーター(CPP)であるとは考えられなかった。しかしpHは、いくつかの試験した品質特性に著しく影響を及ぼすことが示された。6.75~7.10のpH設定値の上昇は、33℃の対照生成温度シフト後に1.9から2.7に増加するTSACをもたらした(
図10A)。pHは、SECで測定した断片化及びAEXで測定した塩基性ピークにも著しい影響を及ぼした(表10)が、その影響は0.2%以下であり(表11)、それはHPLCによるアッセイ偏差の0.5%未満だった。更に対照条件下(pH6.90及び生成温度33.0℃)で、タンパク質A力価及び容量活性の両方の観点から最高の生産性が得られた(
図10B及び
図10C)。
【0112】
CQAで6.75~7.10の範囲のpH設定値の影響が、実験範囲内にすべてあることを、データは示し、それは生成培養pHがCPPである可能性が低いことを示唆した。種々の実施形態では、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、6.65、6.70、6.75、6.80、6.85、6.90、6.95、7.00、7.05、7.10、7.15、7.2またはそれより高いpH設定値で生成される。
【0113】
2.温度
温度が、凝集物、断片化及びTSACを含む、いくつかのパラメーターに強い影響を及ぼすことを、従来の結果は示した。以前の工程は120時間で36.5℃から33.0℃の温度シフトを使用したので、温度の影響調査は、3つのパラメーター、増殖温度(0~120時間)、生成温度(採取までの120時間)及び温度シフトのタイミングで分析した。この3つの温度関連のパラメーターは別に更に調べられて、以下にまとめた。
【0114】
2.1増殖温度
増殖温度の影響は、2LのバイオリアクターのDO設定値と共に検討した。3レベルの増殖温度(35.0℃、36.5℃及び37.5℃)を異なる試験条件下で0~120時間維持して、続いて120時間に33.0℃に温度シフトした。すべての条件からの試料は、240±4時間及び264±4時間に採取した。一ステップ精製(ProA)を分析的解析の前に行った。増殖温度は、増殖速度及び生存度に影響を与える。より高い増殖温度は初期段階のより速い増殖率に相関して、温度シフト後に迅速な増殖率の低下が続き、それは下のピークのVCDをもたらした。更に、より高い増殖温度による培養は、採取日に2~4%低い最終的な生存度も有した。興味深いことに、増殖温度は著しく生産性に影響を与えて、容量活性は36.5℃の増殖温度でピーク値を得た(
図11A)。
【0115】
アスホターゼアルファの品質への影響としては、増殖温度は、SECの測定で断片化のみに重要な影響を及ぼすことが示された(
図11B)。35.0℃から37.5℃に増殖温度を上昇させることは、0.3%から0.8%に上昇した断片レベルをもたらした。このような測定値がすべてSECアッセイのLoQ(1%)未満であったことに注意する。
【0116】
増殖温度によるCQAの影響がすべて実験範囲内だったので(表9及び表11)、35.0℃~37.5℃の範囲内の増殖温度はCPPである可能性が低い。種々の実施形態では、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、33.0℃、33.5℃、34.0℃、34.5℃、35.0℃、35.5℃、36.0℃、36.5℃、37.0℃、37.5℃、38.0℃または38.5℃の増殖温度で作成される。1つの特定の実施形態で、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、35.0℃、36.5℃、37.0℃または37.5℃の増殖温度で作成される。
【0117】
2.2生成温度
CQAの生成温度の影響(30.0℃、33.0℃及び35.0℃)は、2Lのバイオリアクターの培養pH設定値と共に検討した。一ステップ精製(ProA)を分析的解析の前に行った。
【0118】
生成温度は、CQAに、特にSECで測定したTSAC、凝集物及び断片化ならびにAEXで測定した酸性ピークに著しい影響を与える(表10及び表11)。30.0℃から35.0℃に生成温度を上昇させることは、1.6から2.7への平均TSACの増加をもたらし(
図10A)、その一方で35.0℃~30.0℃の生成温度を低下させることは、3.8%から8.2%のSECで測定した凝集物の大幅な増加をもたらした(
図12A)。更にAEXで測定される酸性ピークは、生成温度を低下させると共に3.7%から8.5%に増加した(
図12B)。30.0℃より高い生成温度が、低TSACのリスクを低下させて、増加した凝集物/酸性ピークを防ぐために、おそらく有益であることを、このデータは示唆した。一方で、SECで測定した生成温度及び断片化(
図12C)、ならびにAEXで測定した塩基性ピーク(
図12D)の間に極めて微妙な正相関があるように見える。35℃より低い生成温度がアスホターゼアルファの断片化のリスクを低下させるために好ましい可能性があることを、このデータは示唆した。
【0119】
生産性への影響の観点から、生成温度は、タンパク質A力価及び容量活性に最大の影響を及ぼすように見える(
図10B及び
図10C)。30.0℃~35.0℃の範囲で、生成温度を上昇させることは、生産性を増加させることと関連している。しかし、pH7.10未満で、生成温度はpHと相互作用して生産性に影響を与え、そこで最高容積生産性は33.0℃の生成温度で生じる。容量活性及びタンパク質A力価の両方に関するピーク生産性は、33.0℃以上の生成温度下で、pH6.90にて観察された。生成温度がいくつかのCQAに重要な影響を及ぼす(表10)ことが示されたが、その影響は依然として実験範囲内だった(表9及び表11)。したがって30.0℃~35.0℃の範囲の生成温度は、CPPである可能性が低い。種々の実施形態では、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、29.0℃、29.5℃、30.0℃、30.5℃、31.0℃、31.5℃、32.0℃、32.5℃、33.0℃、33.5℃、34.0℃、34.5℃、35.0℃、35.5℃、36℃またはそれより高い温度の生成温度で作成される。1つの特定の実施形態で、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、30.0℃、30.5℃または35.0℃の生成温度で作成される。
【0120】
3.温度シフトのタイミング
CQAの温度シフトのタイミングの影響は、2Lのバイオリアクターの播種密度と共に検討した。3つの温度シフト時間(108時間、120時間及び132時間)を試験し、すべての条件からの試料は、240±4時間及び264±4時間に採取した。一ステップ精製(タンパク質A)を分析的解析の前に行った。
【0121】
温度シフトのタイミングは、容量活性に微妙な影響を及ぼした(
図13A)。高い播種密度で、108時間から132時間まで温度シフトのタイミングを遅延させることは、容量活性を減少させると思われる。しかし、低い播種密度で、最大の容量活性は、その後の温度シフト条件下で観察される。
【0122】
アスホターゼアルファの品質に関して、温度シフトのタイミングは、SECで測定されるように、断片化にだけ著しい影響を与えることを示した(
図13B)。最新の温度シフト条件(132時間)下で、平均断片レベルは0.8%であり、断片化の小規模な実験範囲(<1.0%)に近かった。したがって、より狭い温度シフトの時間ウインドウは、断片化のリスクを低下させるために、おそらく有益である。
【0123】
温度シフトのタイミングによるCQAの影響がすべて実験範囲内だったので(表9及び表11)、108時間から132時間の範囲の温度シフトのタイミングはCPPである可能性が低い。
【0124】
種々の実施形態では、増殖(例えば、接種)の出発点後、温度シフトが約100時間、105時間、108時間、110時間、115時間、120時間、125時間、130時間、132時間、135時間、140時間、145時間または150時間に生じる工程によって、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は作成される。1つの特定の実施形態で、温度シフトが約108時間、120時間または132時間に生じる工程によって、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は作成される。種々の実施形態では、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、約200時間、210時間、220時間、230時間、240時間、250時間、260時間、264時間、270時間、280時間、288時間(すなわち、12日)または12日以上の時点で採取される。1つの特定の実施形態で、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、約240、264または288時間の時点で採取される。
【0125】
4.培地供給
以前の結果は、培地供給の添加がシアリル化に影響を与えることを示した。この例示の工程の対照として、培地の3つのボーラスを4日目、6日目及び8日目の生成用バイオリアクターに加え、総量は最初の培養液量の8%(v/v)に等しかった。ボーラス数は変更せずに、3つの供給量は、67%、100%(対照)及び133%で試験した。ボーラス添加のタイミングに関して、3つの方法、(1)3日目、5日目及び7日目、(2)4日目、6日目及び8日目(対照)、(3)5日目、7日目及び9日目を調べた。すべてのバイオリアクターは、2Lのバイオリアクターで行われ、すべての条件からの試料は、240±4時間及び264±4時間に採取した。一ステップ精製(タンパク質A)を分析的解析の前に行った。
【0126】
培地供給量及び開始タイミングは生産性に直接影響を与えなかったが、それらの相互作用は、容量活性に微妙な影響を及ぼすと思われた(
図14A)。対照条件下で、最大の容量活性が得られた。33%少ない供給が提供されるとき、供給開始を遅延させることは低い容量活性をもたらした。
【0127】
より多く(133%)及びより早い(3日目の第1ボーラス)供給条件下で観察した上昇した酸性ピーク(10.1%)ならびに凝集物(9.5%)は、小規模の実験範囲(酸性ピークは10.2%及び凝集物は9.6%、表9)に近く、少なくとも1つのパラメーターが、大規模で、例えばボーラス当たりの培地供給量の15%の変化及び/または比較的短い添加時間ウインドウ(96±3時間、144±3時間及び192±3時間))で、より強力に制御されることを必要とすることを示す。培地供給の添加によるCQAの影響がすべて実験範囲内だったので(表9及び表11)、67%~133%の範囲の培地供給量及び供給のタイミング(96±24時間、144±24時間及び192±24時間)はCPPである可能性が低い。
【0128】
種々の実施形態では、培養培地の余分なボーラスが生産用バイオリアクターに加えられる工程によって、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は生成される。例えば培養培地の1、2、3、4、5、6以上のボーラスを加えることができる。1つの特定の実施形態で、培養培地の3つのボーラスを添加する。種々の実施形態で、培養培地のこのような余分のボーラスは、様々な量で加えることができる。例えば培養培地のこのようなボーラスは、生産用バイオリアクターの培養培地の最初の量の約20%、25%、30%、33%、40%、45%、50%、60%、67%、70%、75%、80%、90%、100%、110%、120%、125%、130%、133%、140%、150%、160%、167%、170%、175%、180%、190%、200%以上の量で加えることができる。1つの特定の実施形態で、培養培地のこのようなボーラスは、最初の量の約33%、67%、100%または133%の量で加えることができる。種々の実施形態では、余分なボーラスのこのような添加は、細胞増殖またはタンパク質生成期間中の様々な時間に生じることができる。例えばボーラスは、本工程の1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目またはそれ以降に加えることができる。1つの特定の実施形態において、培養培地のこのようなボーラスは、2日に1回(例えば、(1)3日目、5日目及び7日目に、(2)4日目、6日目及び8日目に、または(3)5日目、7日目及び9日目に)添加することができる。実際には、培養培地のボーラス補充の頻度、量、時点及び他のパラメーターは、上記の制限に従って自由に組み合わされて、実験実施で測定されることができる。
【0129】
5.播種密度
本実験で、CQAの播種密度の影響は、2Lのバイオリアクターの温度シフトのタイミングと共に検討した。3つの播種密度(4.0×105細胞/mL、5.5×105細胞/mL及び8.0×105細胞/mL)を試験し、すべての条件からの試料は、240±4時間及び264±4時間に採取した。一ステップ精製(タンパク質A)を分析的解析の前に行った。
【0130】
温度シフトのタイミングは、生産性に非常に強い影響を及ぼす。
図13Aに示すように、播種密度を4.0×10
5細胞/mLから8.0×10
5細胞/mLに増加することは、平均で806U/mLから1012U/mLに容量活性を増加することに至った。
【0131】
アスホターゼアルファの品質に関して、播種密度は、SECで測定されるように、断片化に著しい影響を与えることを示しただけであった(
図13B)。最高の播種密度条件(8.0×10
5細胞/mL)下で、平均断片レベルは0.8%であり、断片化の小規模な実験範囲(<1.0%)に近かった。したがってより狭い播種密度範囲は、大規模で断片生成のリスクを低下させるために有益であり得る。
【0132】
播種密度によるCQAの影響が実験範囲だったので(表9及び表11)、4.0×105細胞/mLから8.0×105細胞/mLの範囲の播種密度はCPPである可能性が低い。種々の実施形態で、細胞が約1.0×105細胞/mL、1.5×105細胞/mL、2.0×105細胞/mL、2.5×105細胞/mL、3.0×105細胞/mL、3.5×105細胞/mL、4.0×105細胞/mL、4.5×105細胞/mL、5.0×105細胞/mL、5.5×105細胞/mL、6.0×105細胞/mL、6.5×105細胞/mL、7.0×105細胞/mL、7.5×105細胞/mL、8.0×105セル/mL、8.5×105細胞/mL、9.0×105細胞/mL、9.5×105細胞/mL、1.0×106細胞/mL、1.5×106細胞/mL、2.0×106細胞/mLまたはそれより高い密度で播種される工程によって、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は作成される。1つの特定の実施形態において、このような工程で、細胞は、約4.0×105細胞/mL、5.5×105細胞/mLまたは8.0×105細胞/mLの密度で播種される。
【0133】
6.採取のタイミング
採取のタイミングを遅延させることが生存度及びTSACの低下と関連していることを、従来のデータは示したので、採取のタイミングは他のCQAに影響を及ぼす可能性がある。すべての工程の特性決定の実験において、試料は、すべてのバイオリアクターから10日目(240±4時間)及び11日目(264±4時間)に採取された。10の2Lバイオリアクターは、工程の特性決定の実験の複数のブロックの対照条件としての役割を果たした。すべてが現在の工程パラメーター設定による同じ条件下で実行されたので、それらにより、アスホターゼアルファ生産性及び品質に関する採取タイミングの調査が可能になった。その10の2Lバイオリアクターからの分析結果を、表12に表示する。2つのバイオリアクター(#18及び#19)からの試料が二ステップ精製(ProA+HIC)によって精製されて、他の8つのバイオリアクターから(#10~#17)のものはProAだけによって精製された。TSACに影響を与えずに、HICが試料の純度を増加させることができるという点に留意すべきである。
【表12】
【0134】
各個別の実験で、採取のタイミングが統計解析の第3のパラメーターとして扱われた。個々の研究に示すように、採取を10日から11日に遅延させることは、約10~15%の増加したタンパク質A力価及び容量活性をもたらした。
【0135】
TSACの採取のタイミングの著しい影響は、すべての5つの個別の実験で観察された。採取を1日遅延させることは、平均でタンパク質のモル当たり約0.3~0.4モルのシアル酸のTSAC低下をもたらしたが、両方の条件下のTSACは、表9に示すように小規模の実験範囲(1.5~2.9)内のままだった。TSACへの採取タイミングの重要な影響の理由から、早めの採取は、TSACを増加させるために実行され得る。
【0136】
SECで測定した凝集物及びAEXで測定される酸性ピークに関しては、採取タイミングは5つの実験中3つで統計学的に有意な影響を及ぼすことが示された(表13)。
【0137】
しかしいずれのCQAに対する影響の規模も、各個別の実験の対照条件と比較して1%未満であり、重要なものではなかった。更にすべての値は、表9で明記された小規模の実験範囲に入った(凝集物≦9.6%及び酸性ピーク≦10.2%)。
【0138】
断片レベルは、5つの実験研究中1つで採取タイミングに影響を受けた(表13に示す)。しかし、採取を1日遅延することは、2つの対照条件下でわずかに0.1~0.2%高い断片をもたらし、11日目の断片レベルはSECアッセイのLoQ(1%)未満のままだった。同様に塩基性ピークのレベルは、p値0.03で、10日目の0.2~0.3%から11日目の0.4%に上昇した(表13)。しかし両方の値は、AEXアッセイのLoQ(1%)よりはるかに下方のままだった。したがって10日目(240±4時間)~11日目(264±4時間)の範囲の採取タイミングは、CPPである可能性が低い。
【表13】
【0139】
結論
この実験で試験した工程パラメーターは、培養pH設定値、温度、播種密度、培地供給及びタイミング、グルコース添加、ガラクトース添加及び採取タイミングを含む。表14は、工程パラメーターで使用したそれぞれについてまとめている。
【表14】
【0140】
実施例5.例示の工程#4におけるアスホターゼアルファ品質特性のpH及び生成温度の影響の高解像度調査
以前の評価に関して、例示の製造工程のアスホターゼアルファ生産性及び品質特性への培養pH及び生成温度(≧120時間)の影響の高解像度試験を、この実験は提供する。試験したシナリオは、1)異なるpHレベル(すなわち、6.70、6.80、6.90、7.00及び7.10)及び33℃の同じ生成温度、ならびに2)異なる生成温度(すなわち、31.0℃、32.0℃、33.0℃、34.0℃及び35.0℃)及び6.90の同じpH設定値を、含む。すべての条件からの試料は240±4時間で採取され、タンパク質A精製材料を、いくつかの品質特性(例えば、断片化%、凝集物%、電荷分布、総シアル酸含量(TSAC)及び中性グリカン範囲)について試験した。6.70~7.10の範囲のpH設定値及び31.0℃~35.0℃の範囲の生成温度で実施する本工程がすべてのCQAを維持することを、本実験は確認した。
【0141】
細胞培養
本実験で行われるすべての試験は、Mobius3Lの使い捨てバイオリアクター(CR0003L200、EMD Millipore)を使用した。本実験で使用した工程パラメーターのリストを、表15に示す。更に4つの追加の培養pH条件を対照生成温度(33.0℃)で試験し、4つの追加の温度を対照培養pH(6.90)で試験した(表16)。
【表15】
【表16】
【0142】
細胞密度及び生存度は、ViCell VRを使用して計数した。pH及びオフラインガスはpHOxを使用して測定され、グルコース及びラクテートを含む主要な代謝物はNova Profile100(Nova Biomedical,Waltham,MA)を使用して測定された。酵素活性は、酵素活性測定の前に、3回の代わりに、各試料を1度だけ希釈する変形版による標準方法を使用して測定された。
【0143】
採取及び精製
10日目(240±4時間)の50マイクロリットルの試料を、注射器を使用してすべてのバイオリアクターから採取した。遠心分離(3000×g、5分)による細胞除去の後、上清を、0.22μmボトルの上面フィルターを使用して浄化して、精製前に-80℃で保存した。ハイスループットプレートベース精製(タンパク質A)の単回ステップを、この実験で適用した。試料は、分析的及びタンパク質特性評価分析の前に、低塩濃度緩衝液(5mMのNa3PO4、pH7.4)に緩衝液交換した。
【0144】
分析的及びタンパク質特性評価
本実験で分析する重要な品質特性は、凝集物%、断片化%、電荷分布、TSAC及び中性グリカン分布を含んだ。凝集物レベルは、SECで定量化した総タンパク質に対する凝集物ピークの割合により推定した。断片レベルは、SEC及びLoCで定量化した総タンパク質に対する断片の割合により推定した。電荷分布は、AEXでそれぞれ定量化した総タンパク質に対する塩基性ピーク、メインピーク及び酸性ピークの割合により推定した。シアリル化レベル(またはTSAC)はHPAE-PADによって定量化された。中性グリカン種の検出はMALDI-TOF質量分析によって実施された。等電点電気泳動はiCE280システムを使用して実施した。
【0145】
結果
細胞培養の実施
前述のように、培養pH及び生成温度の両方は、細胞培養の実施に影響を及ぼす。低pH条件(pH=6.70)は最低の増殖率及び最低の最大VCDをもたらし、採取日(10日目)に11.1×10
6細胞/mL(
図15A)の最大濃度に達する。より高いpH条件(pH=7.00及び7.10)は、10日目に他の条件より1~2%低い生存度になった(
図15B)。
【0146】
より高い生成温度は、増加した増殖(
図16A)及び、培養終了時に近づくとより迅速に低下する生存度とも関係していた(
図16B)。より低い生成温度は下方ピークVCDを生じさせたが、33.0℃の対照設定値に相当する生存度を生じさせた。
【0147】
培養pHを増加させることは、グルコースのより迅速な消費も引き起こし(
図17A)、ならびに(温度シフトの前に)培養の初期中のラクテートのより多い生成及び培養期間全体にわたるラクテートのより多い全体の蓄積の両方を引き起こした(
図17B)。
【0148】
培養細胞を、増殖温度を生成温度へシフトする前に、5日間(120時間)増殖させた。グルコース及びラクテート両方のプロファイルは、0日目と5日目の間にかなり一致していた(
図18A及び
図18B)。温度シフトの後、より高い生成温度は、グルコースのより高い消費と関係していた。ラクテートの最大濃度のわずかな低下は、他の条件と比較して、33.0℃の生成温度条件下で観察された。更に35.0℃の生成温度は、他のすべての条件と比較して、培養の9日目及び10日目の間、著しく減少したラクテート消費を示した。
【0149】
30.0℃と35.0℃の間の生成温度及び6.75と7.10の間の培養pHの範囲において、生成温度が、タンパク質A力価及び比活性の両方に対し、培養pHより劇的な効果を有することが、以前に観察された。しかし本実験の低pH条件(6.70)は、対照条件(pH=6.90)と比較して、35%の低下をもたらすタンパク質A力価への劇的な影響(
図19A)、及び他のすべての試験したpH条件と比較して非常に低い容量活性(
図19B)を有するように思われた。培養pHは、特異的タンパク質A生産性に影響を及ぼすように見えなかった(
図19C)。しかし、低pH条件は最高の比活性を生成して(
図19D)、培養pHを減少させることと比活性を増加させることの間の一般的な傾向が観察された。
【0150】
低い生成温度条件(31.0℃及び32.0℃)は、対照条件と比較して、タンパク質A力価の大幅な低下(それぞれ26%及び21%)を引き起こした(
図20A)。更に上昇した生成温度は、より高い容量活性(
図20B)及びわずかに増加した特異的タンパク質A生産性(
図20C)と関連した。生成温度を変えることから比活性への影響は観察されなかった(
図20D)。
【0151】
培養pH及び生成温度の影響を調べた本実験及び以前の作業からのすべての品質特性を、表17にまとめる。
【表17】
【0152】
以前の実験の場合、TSACは、培養pH及び生成温度の影響を受けた(
図21)。TSACの小規模な実験範囲は1.5~2.9であり、より高いTSACはこの範囲内でより望ましかった。培養pHまたは生成温度を上昇させることは、生成物のTSACを増加させることを示した。一方で、6.70から7.10に培養pH設定値を上昇させることは、およそ1.5から2.6~2.8までのTSAC増加をもたらし、それは小規模の実験範囲内だった。他方で、30.0℃から35.0℃に生成温度を上昇させることは、およそ1.4から2.6~2.8までのTSAC増加をもたらした。30.0℃の生成温度下のTSAC値(1.4)が小規模実験範囲の下限(1.5)より低かったので、30.0℃の生成温度は、生産用バイオリアクターで回避されることが望ましい。TSACが、培養pHまたは生成温度を上昇させることによって、またはその両方を上昇させることによって増加できることをこのデータは示す。
【0153】
不純物のレベルは、AEXを使用する酸性ピークの割合で現在測定されるように、
図22に示される。生成温度を上昇させることは、生成物の酸性ピークの割合を低下させた。培養pHは、AEX酸性のピークで測定される不純物と相関するように見えなかった。生成温度がAEX酸性ピークの割合への影響を示したが、すべての値は精製で許容可能な限度の範囲内だった(≦10.2%)。AEX塩基性ピークは一貫して、実験したすべての条件でアッセイのLoQについて1%未満だった。
【0154】
以前の実験は、SECで測定されるように、AEX酸性ピークと凝集物割合の間の強い相関を示した。
図23に示すように、この傾向は本実験でも維持された。より高い生成温度は、より低い凝集物割合をもたらした。すべての凝集物割合は、小規模の実験範囲内であった(≦9.6%)。培養pHは、凝集物割合に強い影響を及ぼさない。SECで測定されるアスホターゼアルファの断片は、すべての条件において、アッセイのLoQについて1%未満だった。
【0155】
LoCで測定したメインピーク割合は、生成温度によって著しく影響を受けることが以前確認された。増加する生成温度と非還元メインピーク割合の間の正相関が見いだされた(
図24B)。LoCメインピーク割合(非還元)に対する培養pHの明白な影響は見いだせなかった(
図24A)。還元LoC分析は、すべての条件について100%メインピークを確認した。
【0156】
実施例2の例示の工程で記載したBDS材料と比較すると、新しい中性種はいずれの条件でも観察されなかった。しかし、プロファイルのシフトは、低pH条件とより高いpHの間で見られ、より高次のグリコフォームは、より高い培養pHで生成される物質から観察された(
図25)。より高い生成温度(34.0℃及び35.0℃)で生成される物質に存在するより高次のグリコフォームを有する生成温度で、類似の傾向が観察された(
図26)。
【0157】
iCE280クロマトグラムからのピーク測定は、ピーク6として最高の塩基性ピークを同定すること、及び逆の番号順にピーク5~2として次の4つのピークを同定することによって実施した。次に、ピーク1が、ピーク2の後の次のピークのpI未満で同定されたすべてのピーク割合からなっていた。確認されたピークの得られたpI値を表18に示す。培養培地pH及び生成温度の両方は、キャピラリー等電点電気泳動結果に影響を及ぼすように見える(
図27)。培養pHまたは生成温度を上昇させることは、ピーク1として同定した低いpIピークの割合の増加をもたらした。更に、高いpIピーク(ピーク5及び6)の関連する割合は、培養pHまたは生成温度の増加と共に低下した。これらの因子は、pHまたは生成温度の増加と関連するより酸性の種への一般的なシフトを示した。このシフトは、増加したpH及び生成温度と関連した増大したシアリル化に関連し得て、それは酸性種のより大きな割合をもたらす。
【表18】
【0158】
結論
以前特定したように、測定されたすべてのCQAが小規模範囲内にあったという点で、培養pH(6.70~7.10)及び生成温度(31.0~35.0℃)がCPPである可能性が低いことを示す以前の結果を、この実験は確認する。培養pH及び生成温度の両方は、多くの細胞培養性能パラメーター及び品質特性に影響を与える。特に培養pHまたは生成温度を上昇させることは、増加した最大VCDをもたらすが、培養の後期の生存度の急速な低下も引き起こす。
【0159】
培養pH及び生成温度の両方は、タンパク質A力価及び容量活性に関して生産性に影響を与えることができる。6.70の培養pHは、低タンパク質A力価及び容量活性をもたらした。培養pH設定値を上昇させることは、減少した比活性をもたらした。したがって培養pHがタンパク質A力価への好ましい影響を及ぼすが、6.80~7.10の範囲のpH下の容量活性に関しては違いがほとんどなかった。更に生成温度を上昇させることは、増加したタンパク質A力価及び容量活性をもたらすが、比活性に影響を及ぼさなかった。
【0160】
培養pHまたは生成温度を上昇させることは、より高いTSAC値ももたらした。後者のパラメーターを増加させることは、凝集物及び酸性ピークの形成も減少させた。最後に培養pH及び生成温度の両方は、生成物の等電点電気泳動プロファイルをシフトするように見える。6.70~7.10の範囲のpH及び31.0℃~35.0℃の範囲の生成温度が許容可能であり、両方の工程パラメーターの厳格なコントロールは、大型化(例えば、10,000Lの大型化した工程)の際に工程の耐性及び整合性を維持するために推奨される。
【0161】
実施例6.余分な供給補充によって、活性アスホターゼアルファ力価を改善すること
これまで実施例で説明したように、アスホターゼアルファ(sTNALP-Fc-D10)を作成するための以前の例示の工程は、採取時に約0.1g/Lの活性アスホターゼアルファ力価を有する低生成工程であった。代わりの製造工程を、工程改善のために本明細書で例示する。上流及び下流の両方の工程を評価した。
【0162】
上流の細胞培養工程パラメーターによるアスホターゼアルファの性質及び生産性への影響の可能性は、以前の実験で評価した。他の任意の重要な品質特性(CQA)に影響を与えずに力価及び/または容量活性を改善するために、金属補充(Zn2+/Mg2+/Ca2+)、温度シフトのタイミング、CHO供給量及び採取のタイミングを含む、細胞培養パラメーターが評価された。金属補充が対照条件より著しく低いTSACをもたらすことを以前の実験からのデータが示し、したがって更なる評価で除外された。54時間から78時間に温度シフトのタイミングを遅延させることは、より低い比活性及びより高いタンパク質A力価をもたらした。その結果、後の温度シフト条件下の全体の容量活性は、同一のままだった。1×(2日目の5ml/L)から4×(2、4、6及び8日目の5ml/L)にCHO供給ボーラス投与量を増やすことは、他の試験した品質特性(例えば、TSAC、電荷分布及び中性グリカン分布)への悪影響を及ぼさずに、容量活性の著しい増加をもたらした。10日目から12日目に採取日を遅延させることは、より高い生産性(例えば、容量活性、タンパク質A力価及び比活性)ならびにわずかにより低いTSACと関連していた。このデータに基づいて、CHO供給量の増加は、10L規模の更なる評価のための本実験で選択された。
【0163】
材料及び方法
アスホターゼアルファ(sTNALP-Fc-D10)生成のための上流工程は、以下のシードトレイン及び細胞培養工程:5×105細胞/mLの標的播種密度の細胞の接種材料解凍、3.5×105細胞/mLの標的播種密度の接種材料増殖(フラスコ/ローラー期)、3.5×105細胞/mLの標的播種密度の接種材料増殖(細胞バッグ期)、3.5×105細胞/mLの標的播種密度の接種材料増殖(100L-低レベル)、3.5×105細胞/mLの標的播種密度の接種材料増殖(100L-高レベル)、3.5×105細胞/mLの標的播種密度の1000Lシードバイオリアクター(N3-低レベル)、3.5×105細胞/mLの標的播種密度の1000Lシードバイオリアクター(N2-高レベル)、3.5×105細胞/mLの標的播種密度の4000Lシードバイオリアクター(N1)、5.5×105細胞/mLの標的播種密度の20000L生産用バイオリアクター(N1)、によって実施した。本実験で、対照及び改善したバイオリアクター工程におけるバイオリアクターの接種材料として使用する、小規模シードトレイン工程は、接種材料解凍、継代1(1×100mL振とうフラスコ、5×105細胞/mLの標的播種)、継代2(2×100mL振とうフラスコ、3.5×105細胞/mLの標的播種)、継代3(2×1Lスピナー、3.5×105細胞/mLの標的播種)、継代4(2×15Lスピナー、3.5×105細胞/mLの標的播種)、8×10Lのバイオリアクター、5.5×105細胞/mLの標的播種を含む。本実験で使用した10Lバイオリアクターは、Sartorius BIOSTAT(登録商標)B-DCU IIバイオリアクターシステム(Sartorius Stedim Biotech)及びMFCS/win3.0Module Shell3.0(レベル32)データ収集ソフトウェア(Sartorius Stedim Biotech)だった。生産用バイオリアクターで使用する原材料のリストは、CM69増殖培地、100μMのMTX(メトトレキサート)、200mMのL-グルタミン、CM70培養培地、Sigma CHO供給、10%の炭酸ナトリウム及びFoamAway AOF(Gibco)を含んだ。
【0164】
アスホターゼアルファ(sTNALP-Fc-D
10)クローン(細胞株X)の開発ワーキングセルバンクからの細胞バイアルは解凍されて、N-1段階によるシードトレインによって継代培養した(以前使用した20,000L工程の4000Lの播種バイオリアクターに等しい)。N-1培養は、15Lの作業体積を有する2つの15Lスピナーで実施した。両方のN-1培養液が接種に使用された。撹拌は、20L/時間の総ガス流による200rpmに設定した。酸素及び炭酸ガスの発生は、測定した溶存酸素及びpHに従って調節した。8つの10Lのバイオリアクターは接種されて、10日目に採取した。2つのバイオリアクターは対照供給方法(1つの供給)を使用して供給され、一方で、6つの他のものは、改善した供給方法(2、4、6及び8日目の複数の供給)を使用して供給された。表19は、これらのバイオリアクターで使用する細胞培養工程パラメーターについてまとめる。
【表19】
【0165】
20,000L規模の製造工程は、VCDベース供給方法を使用する(約25.0~32.0×105細胞/mLのVCDでの単回ボーラス、通常培養の2日目頃)。この実験で、接種後58時間に行われて、20Kのバイオリアクターで製造データから算出した平均倍増時間24.5時間に基づいてVCD基準(25.0~32.0×105細胞/mL)を満たすように、温度シフトのタイミングはプログラムされた。工程を単純化して、供給のタイミングのより厳格な管理を許容するために、この変化を実施した。
【0166】
結果
すべてのバイオリアクターの細胞培養性能を、
図28~
図31にまとめる。
【0167】
現在の改良された工程の増殖力学及び生存度を、対照及び以前の20,000L工程と比較した。培養中にVCDは、対照及び20,000L工程と類似していた(
図28A、エラーバーは±1×標準偏差を表す)。対照工程及び改善した工程#4下の細胞生存度は、同程度の比率で低下し、それは以前の20,000L規模工程下の比率より急速である(
図28B)。最終的な生存度は、対照及び改善した工程でそれぞれ73%及び70%であり、一方で20,000L工程は通常約80%のままである。これは、おそらく振動速度による、10Lシステムに伴うスケーリング問題であるように見える。これは、第2の材料生成ブロックで試験されて、その実施データは、生存度低下が、撹拌速度と、一般的CHO細胞型に設定されているViCell細胞計数器の設定の組み合わせが原因の可能性が高いことを示し、それは、以前の工程の細胞型(11~30μM)より幅広く許容可能な細胞直径範囲(5~50μM)を有した。
【0168】
グルコース利用及びラクテートの消費プロファイルを、
図29に示す。改善した工程は、対照に類似するグルコース利用及びラクテートプロファイルを示した。
【0169】
培養全体にわたるアスホターゼアルファのタンパク質A力価及び比活性を、
図30に示す。対照及び改善工程両方のタンパク質A力価は、同等だった。しかし、それらは両方とも、通常20,000L工程で見られる力価より低かった。本実験で使用した電力対容積比が、製造で使用するものより30%高いことがわかったので、これは、生存度によって見られる規模の違いにある程度起因している可能性がある(製造規模で使用したP/V比のサブシーケンス受理により確認)。改善工程の比活性(単位/タンパク質mg)は、対照より平均17%高かった(532U/mg対456U/mg)。同じ量のタンパク質の量が各工程で生成される一方で、培養が更に供給されるとき、生成されるタンパク質がより活性だったことを、タンパク質A力価データと一緒にとったこれらのデータは示す。
【0170】
活性力価及び総容量活性(
図31に示す)は、改善工程が10L規模の対照工程よりおよそ22~24%多くの活性を生成することを示す。改善工程は、20,000L規模で見られるものとほぼ同じ活性力価を生成したが、対照工程は約19%低かった。
【0171】
結論
実験は、改善された製造工程(10L規模)の細胞培養性能を明らかにし、それは、約22~24%の活性力価の増加をもたらしつつ、生成物のタンパク質A力価を維持する、増加した供給量を利用する。対照と改善工程の間のアスホターゼアルファ比活性の比較を、
図32に示す。明らかに、6つのすべての反復した改善工程条件(それぞれ、3つの余分な供給を添加)は、対照より高い比活性を示した。
【0172】
約9μMの塩化亜鉛だけを含む基礎培地と比較して、各ボーラス供給は1.2mMの塩化亜鉛を含んだ。したがって、各ボーラス供給は、全培養の約6μMの亜鉛濃度(0.5v/v)の増加をもたらした。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、余分の供給補充による比活性の増加が少なくとも部分的に亜鉛補充によると推察される。
【0173】
実施例7.亜鉛補充によるアスホターゼアルファ活性の更なる改善
これまでの実施例で開示した製造工程に基づいて、新規の実験は、上流工程のパラメーターを更に最適化するために実施した。例示の工程Z及びZ’は、表20に要約されて比較される。
【表20】
【0174】
更なる最適化は、以前の工程Yに基づいて実施された。例えば、新しい工程Z’は、培養培地内に約30~90μMの硫酸亜鉛を補充して、約240時間(すなわち、10日)から約288時間(すなわち、12日)全体の培養時間を増やすことを含んだ。小規模の振とうフラスコ実験は、工程Z’の3つの変異型を試験するために行われた(それぞれ30、60または90μM亜鉛を補充する)。30μMの補充は、培養培地内にフロントローディングによってなされた。60及び90μMの補充は、2及び6日目に2つの等しいボーラス(60μM条件)または2、6及び10日目に3つの等しいボーラス(90μM条件)で亜鉛を補充することを含んだ。
図33に示すように、亜鉛補充(赤い線、異なる亜鉛濃度の3つの実験の平均を示す)は、対照工程Y(青い線)と比較すると、アスホターゼアルファ比活性を効果的に改善した。この増加は、288時間(すなわち、12日)の時間枠頃にそのピークに到達して、その後減少した。
【0175】
実施例8.製造したアスホターゼアルファの特性決定
複数の直交分析法による製造したアスホターゼアルファの代表的な特性決定を、本明細書に例示する。生成されたアスホターゼアルファの同一性、純度、サイズ、構造、グリコシル化及び電荷プロファイルを評価するために、これらの方法を使用した。いくつかの方法は、ロット間の整合性を確実にするためにも用いた。更に生成物関連の物質及び生成物関連の不純物も特性決定した。
【0176】
アスホターゼアルファの構造解明
オリゴ糖の除去後の分子量のマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)分析
オリゴ糖の除去後のアスホターゼアルファのMALDI-TOF質量分析の解析を、アスホターゼアルファの同一性を確立するために用いた。更に、アスホターゼアルファの理論上の分子量と実質的に異なる分子量の翻訳後の改変の任意の有意なレベルの存在も、この方法によっても検出される。オリゴ糖の除去は、ジスルフィド結合の還元の有無にかかわらず、PNGaseFを用いたアスホターゼアルファの消化によって達成された。試料を脱塩して、アセトニトリル及びトリフルオロ酢酸中の2,5-ジヒドロキシ安息香酸と2-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸の90:10の混合物と混合した。試料を空気乾燥し、それからMALDI-TOF質量分光計を用いて分析した。質量スペクトルは正イオンモードで得られた。計器は、ウシ血清アルブミン(BSA)を使用して外部から調整した。脱グリコシル後のアスホターゼアルファの質量スペクトルを
図34Aに示す。m/zが161,140、80,571及び53,748のピークは、それぞれ単独で、二重にまたは三重に荷電した分子に対応する。161,140Daの測定された分子量は、器具の1%の精度限界の範囲内で計算上の分子量(161,135.2Da)と一致した。還元及びオリゴ糖の除去後のアスホターゼアルファの質量スペクトルを
図34Bに示す。m/zが80,545、40,267及び26,808のピークは、それぞれ単独で、二重にまたは三重に荷電した分子に対応する。80,545Daの測定された分子量は、器具の1%の精度限界の範囲内で計算上の分子量80,577.7Daと一致した。結果は、アスホターゼアルファの同一性を確認して、グリコシル化以外の翻訳後修飾の有意なレベルの欠如を示した。
【0177】
分析用超遠心法(AUC)
アスホターゼアルファの凝集物、二量体及び存在する場合断片、ならびに純度の割合を測定するために、AUCを用いた。更にアスホターゼアルファ二量体の分子量を測定し、それは独特なアミノ酸配列及び翻訳後修飾のため、分子の特徴である。それは、サイズ除外クロマトグラフィー(SEC)に対する直交法であると考えられる。アスホターゼアルファ試料は、約25mMのリン酸塩、150mMのNaCl、pH7.4を用いて、約1mg/mLに希釈された。分析用超遠心分離器は、沈降速度分析を行うために用いた。石英窓を備えるダブルセクターセルが使われた。ローターは20℃の真空下で平衡させ、約1時間後、ローターは36,000RPMまで加速した。280nmの吸光スキャンを、ほぼ6時間4.5分間隔で得た。データを最初に分析して、DCDTを使用して見かけの分子量を決定して、c(s)方法(SEDFITソフトウェア)を使用して二量体、高分子量及び低分子量種の割合を決定した。アスホターゼアルファの分子量は211kDaであり、純度は代表バッチで96.8%だった。
【0178】
完全分子量のMALDI-TOF
アスホターゼアルファの分子量のMALDI-TOF測定は、すべての翻訳後修飾、主にグリコシル化を含む、分子サイズを測定する。アスホターゼアルファ試料を脱塩して、2,5-ジヒドロキシ安息香酸と2-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸の90:10の混合物から作成した基質と混合した。試料を空気乾燥し、それからMALDI-TOF質量分光計を用いて分析した。質量スペクトルは正イオンモードで得られた。計器は、ウシ血清アルブミン(BSA)を使用して外部から調整した。アスホターゼアルファの質量スペクトルを
図35に示す。m/zが180,157、90,223及び60,540のピークは、それぞれ単独で、二重にまたは三重に荷電した分子に対応する。厳格な計器設定によって生じる断片化のため、他の低い大量のピークが形成された。180,157Daの測定された分子量は、周知のアミノ酸配列に基づく161,135.2Daの計算上の分子量より著しく高い。この結果は、アスホターゼアルファの広範な翻訳後修飾、主にグリコシル化を示し、その理由は、脱グリコシルしたアスホターゼアルファのMALDI-TOF及びESI-TOF分析が改変の有意なレベルを検出しなかったからである。
【0179】
サイズ排除クロマトグラフィー多角度光散乱(SEC-MALS)
SEC-MALSはサイズに基づいてタンパク質を分離し、それから各ピークの分子量を決定するために用いる。アスホターゼアルファは、SEC-MALSにより分析された(データは示さず)。7.0~8.2分の保持時間ウインドウのピークの計算上の分子量は194.1Daであり、それは、周知のアミノ酸配列及び広範囲なグリコシル化に基づくアスホターゼアルファの計算上の分子量と一致し、更にMALDI-TOFにより観察される分子量とも一致する。
【0180】
金属分析
誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)は亜鉛及びマグネシウムの含量を決定するために使用し、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)はカルシウムの濃度を決定するために使用した。アスホターゼアルファ試料は、最初に濃硝酸の添加による、次に過酸化水素の添加による熱によるマイクロ波加熱分解を使用して消化された。それから試料は、亜鉛及びマグネシウムについてはICP-MS計器及びカルシウムについてはICP-AES計器を使用して分析した。確定したモル比(イオンのモル/アスホターゼアルファモノマーのモル)は、亜鉛で2.27、カルシウムで0.97及びマグネシウムで0.12だった。亜鉛及びカルシウムの比率は、文献(Stec et al.2000J Mol Biol299:1303-1311及びMornet et al.,2001J Biol Chem276:31171-31178)での報告された比率と一致した。Mometら(2001)は、カルシウムがTNALPのマグネシウム結合部位を占拠し得ることを教示し、したがってアスホターゼアルファ分子のマグネシウムの比率が1未満であり得ることを示唆する。しかし、0.12のマグネシウムの試験した比率は依然として驚くほど低い。
【0181】
リン酸化部位の決定
UPLC-MS
eは、リン酸化の部位及び割合を決定するために用いた。最終濃度0.5mg/mLのアスホターゼアルファは、pH8.6にて0.2Mのトリス中の6Mの塩酸グアニジンの存在下で、1時間37℃にて40mMのDTTを使用して、変性して還元した。還元した試料は、ヨード酢酸の添加によってアルキル化して最終濃度50mMになり、室温にて30分間インキュベーションした。それから試料を、透析チューブを使用して、分画分子量10kDaで、50mMの重炭酸アンモニウムに緩衝液交換した。試料を、37℃にて24時間、トリプシン:タンパク質の最終比(w:w)1:50で、トリプシンを使用して消化した。逆相C18カラム及びQ-TOF質量分光計を備えるUPLCシステムを、消化した試料を分析するために使用した。Ser93を含有するトリプシンペプチドは、リン酸化及び非リン酸化の両方が確認された。
図36に示すようにMS/MSスペクトルは、y12及びy13イオンによって観察したように、+80Da、リン酸化により添加したリン酸塩の質量によって、S93がシフトされることを証明した。リン酸化の相対的な割合は、抽出イオンクロマトグラム(EIC)ピーク面積を使用して33.9%として決定された。
【0182】
遊離グリカンのMALDI分析
遊離グリカンのMALDI-TOF分析を使用して、オリゴ糖種及びその相対的な割合を決定した。オリゴ糖は、FNGaseF消化によってアスホターゼアルファ標準品から放出された。放出されたグリカンは、先端炭素逆相カラムを使用して精製された。放出されたグリカンはsDHB基質と1:1で混合されて、それからMALDI-TOFで分析した。分析は、シアル酸を有するグリカンについて負イオンモードで、次に中性グリカンについて正イオンモードで実施した。負イオンモードを使用して得た質量スペクトルを
図37Aに示す。正イオンモードを使用して得た質量スペクトルを
図37Bに示す。観察された分子量を一般に周知のオリゴ糖の理論上の分子量と適合させることによって、オリゴ糖種は決定される。すべてのグリカンの総ピーク強度で、個々のピーク強度を分割することによって、相対的な割合は決定された。主要なオリゴ糖を表21及び表22にまとめる。分子量に基づいて、シアル酸の構造は、N-アセチルノイラミン酸(Neu5AcまたはNANA)であると決定された。
【表21】
【表22】
【0183】
2-アミノベンズアミド(2-AB)標識化したオリゴ糖のプロファイリング
アスホターゼアルファから放出されたオリゴ糖は、2-アミノベンズアミド(2-AB)によって標識化され、それから蛍光検出を有する順相HPLCにより分析されて、種々のオリゴ糖の種類及び相対的な割合を決定した。アスホターゼアルファ試料は、1時間37℃にてジチオスレイトール(DTT)を使用して還元されて、それから一晩37℃にてPNGaseFを用いて消化し、N-結合オリゴ糖を放出した。消化した試料からのタンパク質は沈殿し、低温エタノール及び遠心分離によって放出されたグリカンから分離された。放出されたグリカンを含有する上清は、真空遠心分離器を用いて乾燥して、1%のギ酸を使用して再構成されて、室温にて40分間インキュベートして、それから再び乾燥した。それから、製造業者の指示事項(Ludger,Oxfordshire,UK)に従うことによって、2-AB標識化試薬を使用して試料を標識化した。標識化したグリカンは、グリカンSカートリッジ(Prozyme,Hayward、CA)を使用して除去されて、それから330nmの励起波長及び420nmの発光波長による蛍光検出を備えるHPLCを使用して分析された。アスホターゼアルファの分析からの蛍光クロマトグラムを
図38に示す。分画収集、分子量の質量分析及び前記分子量を一般に周知のオリゴ糖構造の分子量と適合させることによって、ピークの同一性を確定した。2-AB標識化により識別されるオリゴ糖を表23にまとめる。アスホターゼアルファ標準品の分析から得られるクロマトグラムを、
図39に示す。
【表23】
【0184】
グリコペプチドのプロファイリング
グリコペプチドのプロファイルは、部位特異的オリゴ糖分布を決定するために使用した。最終濃度0.5mg/mLのアスホターゼアルファ試料を、pH8.6にて0.2Mのトリス中の6Mの塩酸グアニジンの存在下で、1時間37℃にて40mMのDTTを使用して、変性して還元した。還元した試料は、ヨード酢酸の添加によってアルキル化して最終濃度50mMになり、室温にて30分間インキュベーションした。それから試料を、透析チューブを使用して、分画分子量10kDaで、50mMの重炭酸アンモニウムに緩衝液交換した。試料を、37℃にて24時間、トリプシン:タンパク質の最終比(w:w)1:50で、トリプシンを使用して消化した。逆相C18カラム及びQ-TOF質量分光計を備えるUPLCシステムを、消化した試料を分析するために使用した。データを正イオンモードで得た。溶出時間ウインドウにわたる質量スペクトルは、各グリコペプチドで平均した。6つのグリコペプチドは、アスホターゼアルファのモノマー当たりの6つのグリコシル化部位に対応する、アスホターゼアルファのトリプシン消化から生成した。ペプチド部分が保持時間を決定する主要因子なので、グリコペプチドはその独自のアミノ酸配列に基づき分離され、したがって部位特異的オリゴ糖分布を得ることができる。グリコペプチドの質量スペクトルを、
図40に示す。各グリコシル化部位と関連するオリゴ糖種を、表24にまとめる。
【表24】
【0185】
観察した分子量及び他の分析結果(例えば、質量スペクトルデータ、及び2-アミノベンズアミド(2-AB)標識化オリゴ糖プロファイリングデータ)に基づき、アスホターゼアルファの主要なグリカン(相対量≧4%)の構造は、
図41及び
図42で決定した。
【0186】
キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)
cIEFはその等電点に基づいてタンパク質を分離して、アスホターゼアルファの電荷変異体を監視するために使用した。尿素、メチルセルロース、スクロース、pharmalyte及びpIマーカーを含有する緩衝液中の最終濃度0.5mg/mLのアスホターゼアルファ試料を、キャピラリー電気泳動システムを使用して分析した。試料を1500Vで0.1分間、それから3000Vで14分間集束した。分離したタンパク質変異体を280nmのUV吸収を使用して検出した。アスホターゼアルファの代表バッチからのエレクトロフェログラムを
図43に示す。6つのピークをcIEFで観察した。一般的にピーク1は、幅広いpI範囲を有する。追加の肩をピーク4及び5で観察した。アスホターゼアルファが電荷に関して不均質性が高いことを、本結果は証明して、それは、各部位で種々の数及び濃度のシアル酸を有する複数のグリコシル化部位の存在のため、予想された。代表バッチのアスホターゼアルファの各ピークのpI及びその相対的な割合を、表25にまとめる。
【表25】
【0187】
生成物関連物質
翻訳後修飾に起因するアスホターゼアルファの構造的不均一性は、CHO細胞株にて発現されるため、予想される。上述のとおりに、アスホターゼアルファの不均一性は電荷変異体として得られ、cIEFにより分析されるとき、6つのピークが観察される。アスホターゼアルファの電荷プロファイルの均一パターンは、臨床及びPVバッチで示されている。代表的な材料を使用して、AUG、SDS-PAGE、SEC及びAEXにより決定されるように、アスホターゼアルファは最低96%の純度であり、cIEFにより観察される複数のピークが、生成されたアスホターゼアルファを十分に代表して、すべてのピークが生成物関連の物質であることを示唆する。
【0188】
生成物関連不純物
生成物関連の不純物は、活性、有効性及び安全性に関して所望のアスホターゼアルファと同等の特性を有しない分子変異体である(Guidance for Industry,Q6B specifications:test procedures and acceptance criteria for biotechnological/biological products,August 1999,ICH)。生成物関連の不純物は3つのアッセイにより観察されており、各不純物の特性を表26にまとめる。
【表26】
【0189】
SDS-PAGEバンドの特性決定
アスホターゼアルファは、非還元性及び還元性の両方のSDS-PAGEによって分析された。SDS-PAGE分析の結果は、バンド1が未変化アスホターゼアルファに対応し、バンド2が1つの酵素アームだけを有する未変化アスホターゼアルファに対応し、バンド3がアスホターゼアルファの還元体(モノマー)に対応することを示唆する(データは示さず)。
【0190】
予想どおり、酵素部分及びIgG1-Fc部分の両方からのペプチドは、還元SDS-PAGEのバンドから観察された。この結果は、還元SDS-PAGEのバンドの見かけの分子量に加えて、主バンドが還元体のアスホターゼアルファに対応することを示す。バンド特性決定を、表27にまとめる。
【表27】
【0191】
SECピークの特性決定
SEC-HPLCは、高分子量種(凝集物)、アスホターゼアルファ二量体及び低分子量種を分離することによる純度アッセイとして使用した。通常のSECクロマトグラムで、最も大量のピークは、アスホターゼアルファホモ二量体に相当する。メインピークの前に溶出したピークは、高分子量種に相当する。メインピーク後で溶出したピークは、低分子量種に相当する。高分子量種及びメインピークに相当する分画を収集して、SDS-PAGE、続いてインゲル消化及び質量分析によって分析した。周知のアミノ酸配列に由来する理論上の分子量と観察されたペプチド分子量を適合させることは、メインピークの86.6%及び高分子量種の70.7%の配列包括度を明らかした。したがって高分子量種が生成物関連の不純物を表すと結論づけられる。
【0192】
特性決定AEXピーク
AEXを使用してアスホターゼアルファの電荷変異体を監視した。出発原料と共に5つのAEX分画は、GP-HPLCによって、ならびに非還元及び還元SDS-PAGEによって分析された(データは示さず)。AEX塩基性ピークが、主にアスホターゼアルファ及びおそらく少ない割合の高分子量種を含むことを、データは示唆する。AEX酸性ピークは、アスホターゼアルファ高分子量種を含む。塩基性及び酸性種は、MALDI-TOF分析によるペプチドフィンガープリント法によって確認されるように、生成物に関連する。
【0193】
アスホターゼアルファは、複数の分析技術を使用して十分に特性決定されてきた。その同一性は、N末端配列決定、アミノ酸分析、ならびにMALDI-TOF及びESI-MSによる分子量分析により確認された。生成されたアスホターゼアルファの純度は、AUG、SDS-PAGE、GP-HPLC及びAEXによって監視された。アスホターゼアルファのサイズは、オリゴ糖による分子のMALDI-TOF及びSEC-MALS分析によって評価された。更にアスホターゼアルファの分子量分析は、AUC及びSDS-PAGEによっても実施された。アスホターゼアルファの均一な高分子量はこのような直交法によって観察されており、複数部位で分子の広範囲なグリコシル化を示唆し、それはグリコシル化の分析によって確認された。アスホターゼアルファの高次構造は、遠UV及び近UV CDの両方によって決定した。分子の流体力学的サイズはAUC及びSEC-MALSの両方の分析から決定されることもでき、アスホターゼアルファが共有結合二量体として存在することを、それは更に確認した。少量の凝集物が、SEC、AUC及びSEC-MALSにより検出された。天然型ジスルフィド結合構造及び102の遊離システインの位置は、非還元ペプチドマップのLC-MS分析により確認された。1つのみの主要な遊離システインの存在は、遊離スルフヒドリルの総量の評価によって更に確認された。LC-MS分析は、活性部位セリン残基が部分的にリン酸化されることを証明した。文献で報告されるように、亜鉛、カルシウム及びマグネシウムを含む3つの金属は、アスホターゼアルファ薬物原料で検出された。MALDI-TOFを使用する遊離グリカン分析、2-AB標識化オリゴ糖の順相HPLC分析、グリコペプチドのLC-MS分析及び総シアル酸測定によって、アスホターゼアルファのグリコシル化は広範囲に分析した。アスホターゼアルファのモノマー当たりの6つすべてのグリコシル化部位が、オリゴ糖の不均一母集団と関連することがわかった。電荷プロファイル、シアル酸の存在下で主に生じる不均一性は、cIEFによって分析され、6つのピークが観察された。生成物関連の物質は、cIEFによって6つのピークを観察することにより得られる。低レベルの生成物関連不純物を、SEC、AEX及びSDS-PAGEで検出した。
【0194】
実施例9.2,000L(2K)及び20,000L(20K)規模で製造したアスホターゼアルファの比較性
本実施例で、アスホターゼアルファ薬物原料は、2,000L(2K)及び20,000L(20K)工程を使用して製造された。異なる規模で生成されるアスホターゼアルファ間の比較を示すために、2K(#35、#36及び#38)工程を使用して生成したアスホターゼアルファの3つのバッチ、及び20K工程(#40、#42及び#34)を使用して生成したアスホターゼアルファの3つのバッチは、表28に記載の方法を用いて、可能な場合並行してその物理化学的特性を分析した。2K及び20Kの特定のバッチは臨床使用に基づいて選択され、以前試験したバッチは、2K及び20Kバッチすべてのバッチ間の整合性を証明した。
【0195】
試験した物理化学的特性は、アスホターゼアルファ純度、電荷変異体、サイズ、同一性、構造、グリコシル化及び活性を確定した。試験結果は表29にまとめられている。製造比較は、並行での強制分解実験を使用して更に評価され、上述した2K及び20Kのバッチの分解経路及び動力学を比較した。試料は40℃にて0、14、24及び48時間インキュベートされて、表30に表示されている方法によって分析された。温度強制分解実験の試験結果を、表31にまとめる。
【0196】
すべての結果は、2K及び20K工程を使用して製造されたアスホターゼアルファは類似点があることを示す。
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【0197】
純度
分析用超遠心法(AUC)
分析用超遠心分離で測定されるモノマー濃度%は、2Kと20Kバッチの間で同等だった。すべての値は、20K平均96.8%及び2K平均95.6%で94.5%~97.6%の範囲だった。以前IgG1抗体の分析で示されるように(Pekar and Sukumar2007Quantitation of aggregates in therapeutic proteins using sedimentation velocity analytical ultracentrifugation: Practical considerations that affect precision and accuracy.Analytical Biochemistry,367:225-237を参照)、差はAUCのアッセイ変動性内であり、それは同程度の分子量を有する糖タンパク質でもある。GP-HPLCデータ(下に示す)は、モノマーの同等な%を示し、それは更に、AUCにより検出されるバッチ中のわずかな違いがアッセイ内変動性(例えば器具細胞間の差)に起因したことを更に示す。2.5(秒)の小さい追加のピークは例示の工程#35から生成されるアスホターゼアルファで検出されて、それはc(s)分析の人為的産物だった。アスホターゼアルファの二量体に相当する、#35ピークのシフト(約11(秒))は、方法の誤差限界内で考慮される。アスホターゼアルファAUCデータは、University of Connecticut,Analytical Ultracentrifugation Facility,Biotechnology Bioservices Centerによって得た。この方法は、アスホターゼアルファモノマーと、二量体または大きな種、及び連続沈降係数分布に基づくその相対%からなる凝集物を区別する。
【0198】
SDS-PAGE/LoC(ラボオンチップ)
非還元及び還元の両方についてSDS-PAGE:LABCHIP(登録商標)(PerkinElmer)GXIIタンパク質Aアッセイで測定した主バンド%は、2Kバッチと20Kバッチの間で同等だった。表29にまとめるように、平均主バンド%は、3つ2Kバッチで100.0%(非還元)及び99.8%(還元)、20Kバッチで100.0%(非還元)及び99.8%(還元)だった。更に非還元及び還元分析のエレクトロフェログラムで示されるように、同等のバンドパターンは2K及び20Kバッチで観察された。本試験はその分子量に基づいてタンパク質を分離して、主バンドパーセントとして表される未変化タンパク質の純度の分析を提供する。アッセイは、LabChip GXII Protein Assay Quick Guide,HT Protein Express LabChip Kit,Version2(2010年3月改定)に従って実施した。
【0199】
SDS-PAGE
3つの2Kバッチ及び3つの20Kバッチは、SDS-PAGEを使用して並行して分析した。デンシトメトリーによる分析で、非還元及び還元の両方のSDS-PAGEですべてのバッチについて100%を占める主バンドを得た。主バンドに加えて、アスホターゼアルファ二量体より高い見かけの分子量を有する定量下限未満のかすかなバンドを、すべてのバッチで観察した。1つのバンドだけが、還元SDS-PAGEによってすべてのバッチで観察された。本試験はその分子量に基づいてタンパク質を分離して、主バンドパーセントとして表される未変化タンパク質の純度の分析を提供する。タンパク質試料は、ゲル上に分離されて、可視化のためのクーマシーブルー染色で染色して、脱染して、デンシトメトリーによって分析した。アスホターゼアルファ、分解生成物及び工程関連不純物の分子量は、周知の分子量標準との比較によって推定された。分離したタンパク質の定量的測定は、走査及び濃度測定分析による分析によって実施した。
【0200】
GP-HPLC
アスホターゼアルファの純度は、GP-HPLCによって並行して分析した。2K平均(96.5%)及び20K平均(98.6%)を、表29に示す。20Kバッチのアスホターゼアルファ%は、2Kバッチよりわずかに高い。しかし、バッチデータは類似の二量体%を示し、主に材齢などの試料履歴の違いに起因する、2Kバッチのわずか低い二量体%を示唆する。GP-HPLCクロマトグラムも、2K及び20Kバッチからの同等の生成物を示した。同じ保持時間の同じピークは、同じ種が観察されたことを示す。本方法は、アスホターゼアルファとより大きな種及びより小さい断片を識別する。
【0201】
アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)
すべての2Kバッチ及び20KバッチのAEXによるメインピーク%は、表29に示すように93.62%~96.84%の狭い範囲内だった。メインピーク面積の2K平均は94.17%、20K平均は96.38%だった。わずかに高いメインピーク%は、後半の抽出ピークの減少により、20Kバッチで観察された。20Kバッチのメインピークでわずかに高レベルは、生成物のより高い純度を示す。AEXクロマトグラムは、同じ保持時間で2K及び20Kバッチの重なるピークを示し、すべてのバッチからの生成物が同じ種を有したことを示唆した。本方法は、純表面アニオン荷電が上昇する順序に、タンパク質を分離する。分離したタンパク質は、280nmの紫外線吸光度により検出されて、それからピーク面積%として定量化される。
【0202】
電荷プロファイル
キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)
アスホターゼアルファがcIEFで分析されるとき、2K及び20Kバッチの各ピークのピークプロファイル及び相対%は同等だった。すべての試料は、等電点(pI)約6.57~約6.85の範囲の6つの突出ピークを示し、これらのピークは左から右にピーク1、2、3、4、5及び6と呼ばれる。各荷電変異種について2K及び20Kバッチで検出されるピーク面積は、表29に示すように同等である。2K及び20KバッチのcIEFピーク%間の比較は、表32に示すように、すべてのバッチのT検定分析を使用して確認した(すべてのp値>0.05であり、観察したロット間の差は有意ではないことを示す)。2K及び20KバッチのcIEFエレクトロフェログラムは、同じpI範囲の相似ピークプロファイルを示した。cIEFは、タンパク質アイソフォームpIに基づいて荷電変異種の半定量分離を提供する。分離したタンパク質を280nmでの吸光度で検出した。
【表32】
【0203】
分子サイズ
サイズ排除クロマトグラフィー-多角度光散乱(SEC-MALS)
2K及び20KのバッチのSEC-MALSで測定されるアスホターゼアルファの分子量は、同等だった。表29に示すように、2Kバッチの平均分子量は189.2kDaであり、20Kバッチの平均分子量は189.2kDaである。類似のピークプロファイルは、UVクロマトグラムのすべてのバッチで観察された(バッチ#36からの試料はその利用可能性のために後日実施されて、他の試料によるピークプロファイルとの不完全一致をもたらした)。SEC-MALS法はSECカラムを合わせて、MALS計器を用いてサイズによってタンパク質種を分離して、ピークの分子量を決定する。光散乱信号及び屈折率(RI)によって決定されるような、高分子量種の分子量の高い変化(表29に表示)は、少量の種の決定方法のより高い変化による。UVクロマトグラムに基づいて、アスホターゼアルファに対する高分子量種の相対保持時間は、6つのバッチのすべてで類似しており、それは高分子量種の分子量も同程度であることを示す。
【0204】
完全分子量分析(MALDI-ToF-MS)
表29に示すように、2Kバッチの平均分子量は180,902Daであり、20Kバッチの平均分子量は180,019Daであった。20Kバッチ及び2Kバッチの分子量は、外部から較正したMALDI-ToFの1%の質量精度内であり、したがって同等である。2K分子量のわずかに高い傾向は、わずかに多い量の大きなオリゴ糖(例えばシアル酸を有するオリゴ糖)の存在に起因すると思われる。アスホターゼアルファの2K及び20KバッチについてのMALDI-ToF完全分子量(IMW)スペクトルも、同じピークプロファイルを検出した。バッチ#36は、異なる器具較正を使用して別個の機会に分析されたが、比較の完全性のために含まれた。スペクトルに存在する付加質量は、アッセイにより誘発された断片化及び/または複数の荷電イオンに起因する。同定した種で観察される強度の違いは、マトリックス結晶化及びレーザー効果の結果である。本方法は、分子量を基準にして分子を同定する。試験試料は固相抽出されて、sDHBマトリックス液と混合して、MALDI標的に共沈した。本乾燥試料は、ToF質量分析計にレーザーでイオン化された。m/zスペクトルは各試料から収集され、未変化m/zは分子量に変換された。
【0205】
同一性
脱グリコシル/還元&脱グリコシル分子量分析(MALDI-ToF-MS)
NIST分子量及び10のジスルフィド結合を形成する20のシステインを有する同位体割合を使用して、726のアミノ酸の2つの同一のポリペプチドアミノ酸配列の一次アミノ酸配列から、脱グリコシルしたアスホターゼアルファの分子量は計算された。脱グリコシルしたアスホターゼアルファの分子量は、161,135.20Daであると計算された。
【0206】
20Kバッチから及び2Kバッチからの脱グリコシルしたアスホターゼアルファの分子量はすべて、表29に示すように計算した脱グリコシルした分子量(外部から較正されたMALDI-TOFの質量精度)の1%以内だった。表29に示すように、20Kバッチの平均分子量は160,881Daであり、2Kバッチの平均分子量は161,050Daであった。2K及び20KバッチのMALDI-ToFスペクトルは、類似のピークプロファイルを検出した。スペクトルに存在する付加質量は、アッセイにより誘発された断片化、不完全な脱グリコシル及び/または複数の荷電イオンに起因する。同定した種で観察される強度の違いは、マトリックス結晶化及びレーザー効果の結果である。
【0207】
NIST分子量及び同位体割合を使用して、726のアミノ酸のポリペプチドアミノ酸配列の一次アミノ酸配列から、還元かつ脱グリコシルしたアスホターゼアルファの分子量は計算された。還元かつ脱グリコシルしたアスホターゼアルファの分子量は、80,577.68Daであると計算された。
【0208】
還元かつ脱グリコシルしたアスホターゼアルファの20Kバッチの分子量値を2Kバッチと比較し、すべての値は、表29に示すように計算した還元かつ脱グリコシルした分子量(外部から較正されたMALDI-TOFの質量精度)の1%以内だった。2Kバッチの平均は80,530Daであり、20Kバッチの平均は80,539Daだった。2K及び20KバッチのMALDI-ToFスペクトルは、同等のピークプロファイルを検出した。スペクトルに存在する付加質量は、アッセイにより誘発された断片化及び/または複数の荷電イオンに起因する。同定した種で観察される強度の違いは、マトリックス結晶化及びレーザー効果の結果である。本方法は、分子量を基準にして分子を同定する。試験試料は固相抽出されて、sDHBマトリックス液と混合して、MALDI標的に共沈した。本乾燥試料は、ToF質量分析計にレーザーでイオン化された。m/zスペクトルは各試料から収集され、未変化m/zは分子量に変換された。
【0209】
2K及び20Kバッチ脱グリコシルしたアスホターゼアルファの分子量は同等であり、すべての値は、表29に示すように計算した脱グリコシルした分子量(外部から較正したESI-TOFーMSの質量精度)の100ppm以内だった。2Kバッチの平均分子量は161,137.39Daであり、20Kバッチの平均分子量は161,137.28Daであり、値は、161,135.20Daの計算した脱グリコシルした分子量と一致した。2Kバッチのメインピークについて還元かつ脱グリコシルした分子量値は、20Kバッチと同等であり、すべての値は、表29に示すように計算した還元かつ脱グリコシルした分子量(外部から較正したESI-TOF-MSの質量精度)の100ppm以内だった。2Kバッチの平均分子量は80,575.52Daであり、20Kバッチの平均分子量は80,574.76Daだった。値は、80,577.68Daのアスホターゼアルファの計算した還元かつ脱グリコシルした分子量値と一致する。本方法は、完全分子量を基準にして分子を同定する。試験試料をC4 RP-HPLCカラムに注入し、水:有機溶媒勾配で溶出した。それから溶出液をToF質量分析計にエレクトロスプレーして、クロマトグラフピークの上半分からのスペクトルは、完全分子量を提供するためにデコンボリュートした。
【0210】
3つの20K及び3つの2Kバッチの誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって決定した亜鉛とマグネシウムイオンのモル比は、表29に示すように同等だった。20K及び2Kバッチの誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP-AES)によって決定したカルシウムイオンのモル比は、表29に示すように同等だった。亜鉛とカルシウムのイオンモル比は文献とも一致し、2つの亜鉛と1つのカルシウムは、各アルカリホスファターゼ酵素モノマーと関連していた(E.Mornet et al.2001“Structural evidence for a functional role of human tissue non-specific alkaline phosphatase in bone mineralization.”JBC,276:31171-31178、及びB.Stec,KM.Holtz and ER.Kantrowitz.2000“A revised mechanism for the alkaline phosphatase reaction involving three metal ions.”JMB,299:1303-1311を参照)。すべてのバッチのマグネシウムイオンモル比は、驚くべきことに文献に報告されている期待値より低かった。ICP-MSのカルシウム同位体で観測されるアルゴンポリ原子干渉からICP-AESは損害を受けないので、ICP-AESがカルシウム分析のために選択された。アスホターゼアルファICPデータは市販のものを得た。本方法はマグネシウム、亜鉛及びカルシウムの量(μg/mL)を決定し、そこからアスホターゼアルファについてモルイオン比が計算された。
【0211】
UPLC-MSeを介したリン酸化部位同定及び定量
リン酸化の部位及び相対的な割合は、UPLC-MSトリプシンペプチドマッピングによって測定された。アルカリホスファターゼは、セリン-ホスフェート中間体を形成できる活性部位のセリン残基を含むことが周知である(pp28-29of Millan,Jose Luis.2006“Mammalian Alkaline Phosphatases.”Wiley-VCHを参照)。同じセリン残基93が、表29に示すように、35.7%~31.2%の範囲の割合ですべてのバッチでリン酸化されるとわかった。リン酸化の割合が、アスホターゼアルファ比活性(pNPP)、HA結合、K
m及びK
cat(データは示さず)と相互に関連していないことがわかった。相関の欠如に基づいて、リン酸化された中間体は、アスホターゼアルファの活性の律速ステップではない。アスホターゼアルファのS93のリン酸化部位の確認及び識別は、UPLC-MSeペプチドマッピングを介して確認した。アスホターゼアルファの理論上の配列及び予測されたトリプシン裂開が、分析のために使用された。得られたLC-MS
eデータは、Waters Biopharmalynx v.1.2を使用して収集して処理された。Biopharmalynxソフトウェア(Waters)は、一次配列から13番目のトリプシンペプチドを確認し(T13)、それはS93、acで末端保護されたCys102を有する場合分子の酵素部分からの活性部位セリンを含有し、S93はリン酸化及び非リン酸化の両方として存在する。ペプチドマップの一部として同定されると、抽出イオンクロマトグラム(EIC)は、これらのペプチドのそれぞれについて実施されて、除去されて、組み込まれた。得られたEICピーク面積から、リン酸化ペプチドピーク面積と総ピーク面積の比は、S93でのリン酸化の相対的な割合をもたらす。リン酸化セリン側鎖に関連する+80Daの確認は、
図36に示すように、推定したリン酸化T13ペプチドにおいて生成するMS
e断片化パターンを調べることによって行われた。yl2及びy13イオンによって観察したように、S93が、+80Da(リン酸化の質量)によってシフトされることを、この断片化パターンは確認した。アスホターゼアルファの各バッチは還元され、アルキル化して、それからトリプシンで消化処理された。Waters Acquity UPLC及びSynapt Q-ToF質量分析計を使用して、正イオンエレクトロスプレーモードで実施するESI-Q-ToF-MSによって、検出を実行した。
【0212】
グリコシル化
N-結合オリゴ糖の質量プロファイリング(MALDI-ToF-MS)
3つの2Kのバッチ及び3つの20Kのバッチから放出されたオリゴ糖をMALDI-ToFで分析し、結果を表29に示す。同程度の相対的な割合の同じグリカン種は、20Kバッチ及び2Kバッチで観察された。本方法は、分子量によって薬物原料と関連するグリカンを確認する。グリカンは、PNGase-F消化及び次の酸性化を使用して薬物原料から酵素的に開裂した。それからグリカンを固相抽出して、スーパー3,4-ジヒドロキシ安息香酸マトリックス液と混合して、MALDI標的に共沈した。本乾燥試料は、ToF質量分析計にレーザーでイオン化された。m/z(M+Na)+スペクトルを収集した。
【0213】
2-AB標識化N-結合オリゴ糖プロファイリング(HPLC)
グリコフォームの種類及び各グリコフォームの相対的な割合は、2-AB標識化及びHPLC分析によって分析した。結果を表29に示す。同じ保持時間及び同じ相対的な割合のピークが、すべてのバッチで観察されて(データは示さず)、オリゴ糖の同じ種類及び同じレベルを示唆する。バッチ#36試料を後日実施した。例えば主なグリコフォームFA2の割合は、酵素活性に対してプロットされた。FA2パーセント、ならびに比活性(pNPP)、HA結合、Km及びKcat(データは示さず)の間に、相関は観察されなかった。
【0214】
本アッセイは、蛍光標識した遊離オリゴ糖の保持時間及びピーク面積を基準にして薬物分子と関連するオリゴ糖を決定することによって、グリコシル化パターンを特性決定した。薬物原料からの遊離オリゴ糖は酵素的に放出されて、還元的アミノ化によって2-アミノベンズアミド(2-AB)をタグ付加した。それから試料をLugerカラムを備えるHPLCシステムに注入して、2AB標識化オリゴ糖を分離して、励起330nm励起、発光420nmの蛍光検出器で検出した。各バッチのクロマトグラムを比較して、各分解されたピークのピーク面積は各バッチからのオリゴ糖の相対量を決定するために使用した。
【0215】
UPLC-QToF-MSによるグリコペプチドプロファイル
各グリコシル化部位のオリゴ糖プロファイルは、UPLC-MSによるグリコペプチドの分析によって評価した。組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)は、5つのN-グリコシル化部位を有する(pp54-55of Millan,2006Wiley-VCHを参照)。アスホターゼアルファは、モノマー当たり合計6つのN-グリコシル化部位を提供するFc領域の追加のN-グリコシル化を含有する。
図44~
図49は、T15-16のN123、T26-27のN213、T33のN254、T35のN286、T45-46のN413及びT55のN564のグリコペプチドフィンガープリントプロファイルを示す。合計したN-結合オリゴ糖のUPLC-Q-ToF-MSグリコペプチドフィンガープリントは、N-グリコシル化の詳細な特性決定を提供した。質量分析によるグリコペプチド種の同定及び各種の相対的定量化は、未加工のグリコペプチド質量フィンガープリントスペクトルで観察される複数の荷電状態を、各部位の1つだけ荷電して脱同位体化したスペクトルに変換することによって実施した。これらの形質転換の結果を表29に示す。それは、グリコフォーム、及び各観察したN-結合オリゴ糖部位の総グリコフォームに対してグリコフォーム相対%≧5%に関与することについて観察される、すべての質量を示す。本アッセイで、アスホターゼアルファは還元され、アルキル化して、それからトリプシンで消化処理された。Waters Acquity UPLC及びSynapt Q-ToF質量分析計を使用して、正イオンエレクトロスプレーモードで実施するESI-Q-ToF-MSによって、検出を実行した。アスホターゼアルファの理論上の配列及び予測されたトリプシン裂開が、分析のために使用された。理論上のグリコペプチドの分子量は、NIST分子量及び同位体割合を使用して計算した。グリコペプチドは、密接に関連した溶出時間による関連するグリコフォームの収集として観察されて、したがって完全なグリコペプチドの特定部位への補充が確実に観察されるようにするためのスペクトル総数を必要とする。部位特異的合計スペクトル(グリコペプチド質量フィンガープリント)は、試験した各バッチのアスホターゼアルファのN-結合オリゴ糖部位のそれぞれを含有する最も大量のペプチド種のそれぞれにおいて得られた。
【0216】
総シアル酸含量(TSAC)
総シアル酸含量をHPAE-PADで測定した。表29に示すように、各バッチのシアル酸含量は、モノマー1モル当たり0.9~3.5モルのシアル酸の規格内である。その比較的低量のためシアル酸含量の変化を考慮して、2Kバッチ及び20Kバッチは同等だった。TSAC値、ならびに比活性(pNPP)、HA結合,Km及びKcatの間に、相関は観察されなかった。
【0217】
活性
比活性(pNPP)
アスホターゼアルファの比活性を、3つの2Kバッチ及び3つの20Kバッチで測定した。20Kバッチの平均比活性は981.7U/mgであり、3つの2Kバッチは861.7U/mgだった。すべてのバッチの比活性は、620~1250U/mgの規格内であり、20K及び2Kバッチは同等だった。本方法は、基質としてpNPPを使用してアスホターゼアルファ酵素活性の決定のために使用する。アスホターゼアルファは、ヒト組織非特異的アルカリホスファターゼ酵素からの1つのドメインを有する組換えタンパク質である。このドメインは触媒的活性であり、リン酸エステルを加水分解する。アッセイは、測定の持続時間の間、Vmaxに到達して、それを維持するために、酵素飽和で実施される。pNPPは、黄色の着色生成物に加水分解される(405nmで最大限吸光度)。反応速度は、酵素活性に正比例する。1単位(U)は、使用する方法の条件下で、1分当たりに形成されるpNPPの1μモルに相当する。pNPPによる比活性(タンパク質mg当たりの酵素活性)は、酵素活性及びA280によるタンパク質濃度から計算した。結果を表29に示す。
【0218】
ヒドロキシアパタイト結合
アスホターゼアルファ2KバッチのHA結合アッセイによって測定したヒドロキシアパタイト結合%は、すべての値が85~97%の範囲で20Kバッチと同等だった。HA結合平均%は、20K及び2Kバッチの両方とも91%だった(表29)。HA結合アッセイは、ヒドロキシアパタイトに結合するとき、pNPPのアスホターゼアルファ複合体の酵素活性を測定する。アスホターゼアルファによって加水分解されるとき、合成基質、パラ-ニトロフェニルリン酸塩(pNPP)は、吸光度405nmによって定量化できる黄色着色生成物を生じる。本アッセイは、反応の持続時間中に、Vmaxに達して、それを維持するために、基質飽和で実施した。
【0219】
生理的関連物質を使用した動力学的PPi酵素アッセイ
動力学的パラメーターKm及びKcatは、PPi動力学的アッセイによって決定した。試料は、参照標準によって何回も一対一で測定した。比較のために、試料試験時点で測定した参照基準値のパーセントとしてKm及びKcatをグラフで示す(表29)。すべてのKm値は、並行測定した参照基準値の30%以内であり、同等と見なされる。すべてのKcat値は、並行測定した参照標準の20%以内であり、同等と見なされる。2Kバッチの参照のKm%及び参照のKcat%は、20Kバッチと同等だった。PPi動力学的アッセイは、PPi、天然アルカリホスファターゼ基質を使用して精製したアスホターゼアルファの効力(酵素活性)を測定して、生理的条件(37℃、pH7.4)下で、PPi加水分解の動力学的定数Km及びKcatを測定する。
【0220】
温度強制分解
更に2K及び20Kバッチの比較性を確実にするために、並行強制分解実験が、分解経路及び動力学を比較するために実施された。表33で詳述される3つの2Kバッチ(#35、#36及び#38)及び3つの20Kバッチ(#40、#42及び#34)が実験に使用された。いくつかのバッチは、限定的なBDS試料利用可能性のため、製剤(DP)材料の使用を必要とした。
【0221】
バッチ#35、#36、#40、#42及び#34は、バッチ#38のタンパク質濃度に適合させるために、アスホターゼアルファ製剤緩衝液(25mMのリン酸ナトリウム及び150mMの塩化ナトリウム、pH7.4)を使用して40mg/mLまで希釈された。分解の実質的レベルを得て、分解動力学を確立するために、強制分解条件は、事前の強制分解条件スクリーニングに基づいて選ばれた。各試験アッセイの各時点(0、14、24及び48時間)のためにアリコート(200μL)を作成した。TOアリコートを試験まで5℃で保持した。試料アリコートの残りを40℃にて14、24及び48時間インキュベートした。類似点を決定するために、表30に示されているSDS-PAGE、GP-HPLC、AEX、RP-HPLC、ペプチドマッピング及び効力によって、試料を分析した。温度強制分解実験の試験結果を、3つの20Kバッチ及び3つの2Kバッチについて表31に示す。
【表33】
【0222】
SDS-PAGE(非還元及び還元)
T0及びT48時間試料は、純度についてSDS-PAGE(非還元及び還元)によって分析された。非還元SDS-PAGEによる主バンド%は、表31に示すように、T=0のすべてのバッチで100%であり、20Kバッチで平均97.3%及び2Kバッチで平均96.8%に減少した。分解の傾向は、20K及び2Kバッチで同等だった。高分子量種は、6つのすべてのバッチについてT48時間試料で検出された。この種は、還元の際に消失した。ジスルフィド結合関連の凝集物の形成がすべてのバッチで分解経路だったことを、この結果は示唆する。余分のバンドはT=0及びT=48時間で20K及び2Kバッチの両方について還元SDS-PAGEによって観察されず、ペプチド結合の分解を示さなかった。本試験はその分子量に基づいてタンパク質を分離して、主バンドパーセントとして表される未変化タンパク質の純度の分析を提供する。タンパク質試料は、ゲル上に分離されて、可視化のためのクーマシーブルー染色で染色して、脱染して、デンシトメトリーによって分析した。アスホターゼアルファ、分解生成物及び工程関連不純物の分子量は、周知の分子量標準との比較によって推定した。分離したタンパク質の定量的測定は、走査及び濃度測定分析による分析によって実施した。
【0223】
GP-HPLC
熱応力によって生じる凝集物及び断片を形成するための分解を、GP-HPLCによって監視して、結果を表31に示す。T=0のすべてのバッチのピークプロファイルは、同じ種の存在を示唆して類似していた。熱応力は、大きな凝集物に相当する、およそ6分でピークが現れて、それは時間とともに増加した。T=14時間、T=24時間及びT=48時間ですべてのバッチのピークプロファイルは類似しており、それは類似の分解経路を示す。すべてのバッチの長期にわたるメインピークの減少の傾斜は、使用する材料が異なる年数だったという事実を考慮して同程度だった。同程度の傾斜は、類似の分解動力学を示す。
【0224】
アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)
アスホターゼアルファの分解はAEXによっても監視されて、それは電荷に基づいてタンパク質を分離する。同じピークプロファイルはT=0ですべてのバッチについて観察され、すべてのバッチに同じ種を示唆した。熱応力は、およそ22~26分の保持時間ウインドウのピークの増加をもたらした。すべてのバッチの同等のピークプロファイルは、T=14時間、T=24時間及びT=48時間ですべてのバッチで観察されて、それは熱分解による同じ種の形成を示す。メインピークの減少によって監視される、分解の類似の傾斜は、T=0(以前に開示されたように)でのわずかな差及び異なるバッチの年数差を考慮に入れて、すべてのバッチで観察された。
【0225】
RP-HPLC
RP-HPLCによって分析されるとき、およそ21.2~21.3分の保持時間ウインドウの平均ピークが、すべてのバッチで観察されて、すべてのバッチの同じ種を示した。メインピークは、T=0ですべてのバッチで観察される唯一の主要なピークだった。熱応力は、メインピーク直後のピーク溶出の増加をもたらした。T=14、T=24及びT=48時間ですべてのバッチで観察される熱分解からの同じピークは、同じ分解経路を示唆する。メインピークの減少によってモニタされる分解動力学は、すべてのバッチの同程度の傾斜によって明示されるように、すべてのバッチで同等だった。
【0226】
ペプチドマッピング
20K及び2KバッチのT0、T24及びT48時間試料は、化学的分解の可能性について評価するためペプチドマッピングにより分析された。すべての時点(T=0時間及びT=48時間)で20Kと2K間の観察された有意差はなかった。本方法は、塩酸グアニジン、ジチオスレイトール及びヨード酢酸によって、タンパク質を変性させ、還元して、アルキル化して、プロテアーゼトリプシンによる消化が続く。生じたペプチド断片は、勾配逆相HPLCによって分離され、210nmで検出される。
【0227】
比活性(pNPP)
アスホターゼアルファ20Kバッチ及び2Kバッチの比活性活動(pNPP)は、各時点(T0、T14、T24及びT48)で、40℃のインキュベーション後、酵素アッセイで測定した。20Kバッチの活性は、各時点で2Kバッチと同等だった。熱応力によって生じる活性の減少は、時間とともにすべてのバッチの類似した傾斜に続く。タンパク質ホスファターゼ、酵素は、タンパク質分子からリン酸塩(PO4
3-)基の除去を制御する。pNPPホスファターゼアッセイは、ホスファターゼ活性を検出して、20K及び2Kバッチを比較するために使用した。本方法は、基質としてpNPPを使用してアスホターゼアルファ酵素活性の決定のために使用した。アスホターゼアルファは、ヒト組織非特異的アルカリホスファターゼ酵素からの1つのドメインを有する組換えタンパク質である。このドメインは触媒的活性であり、リン酸エステルを加水分解する。アッセイは、測定の持続時間の間、Vmaxに到達して、それを維持するために、酵素飽和で実施される。pNPPは、黄色の着色生成物に加水分解される(405nmで最大限吸光度)。反応速度は、酵素活性に正比例する。1単位(U)は、使用する方法の条件下で、1分当たりに形成されるpNPPの1μモルに相当する。pNPPによる比活性(タンパク質mg当たりの酵素活性)は、酵素活性及びA280によるタンパク質濃度から計算する。
【0228】
20K規模で製造したアスホターゼアルファ及び2K規模で製造したアスホターゼアルファの比較性を確立した。各規模からの3つのバッチは、物理化学的な方法を使用して、可能ならば並行して分析されて、アスホターゼアルファ純度、不純物、電荷変異体、サイズ、構造、グリコシル化、ジスルフィド結合、遊離チオール及び活性を評価した。更に並行強制分解実験は、分解経路及び動力学を評価するために実施された。20K及び2K規模で製造された生成物が同等だったことを、結果は実証する。
【0229】
バッチの純度は、分析用超遠心分離法、SDS-PAGE/LoC、SDS-PAGE、GP-HPLC及びAEXにより評価された。結果は、すべてのバッチで同等の純度を示した。同程度にかなり少ない同じ種類の凝集物は、AUC、SDS-PAGE及びGP-HPLCによってすべてのバッチで検出された。
【0230】
組換えタンパク質では一般的な電荷変異体は、cIEFにより評価された。同程度の同じ種はすべてのバッチで観察されて、翻訳後修飾の均一なレベルを示唆した。
【0231】
バッチの分子サイズは、SEC-MALS及び完全MALDI-ToF分子量により評価された。同一性は、脱グリコシルした/還元及び脱グリコシルしたMALDI-ToF分子量、ならびに脱グリコシルした/還元及び脱グリコシルしたESI-ToF分子量により確認された。構造は、CD、ジスルフィド結合及び遊離チオール(LC/MS)、総遊離チオール分析、金属含量分析(ICP-MS/ICP-AES)ならびにリン酸化部位占拠によっても評価された。同等の分子量及び同等の流体力学サイズをすべてのバッチで得て、すべてのバッチのアスホターゼアルファの類似改変及び類似配座を示す。
【0232】
アスホターゼアルファのグリコシル化は、MALDI-ToF遊離グリカン、2AB標識化オリゴ糖fHPLC、LC-MSグリコペプチド分析及び総シアル酸含量により評価された。同程度の同じオリゴ糖種は、すべてのバッチで得られた。
【0233】
薬物原料の活性は、比活性(pNPP)、HA結合及びPPi活性により評価された。アスホターゼアルファの20Kバッチがアスホターゼアルファの2Kバッチと同等であることを、結果は示した。
【0234】
最後に、20K及び2Kバッチの同じ分解経路ならびに類似の分解動力学は、熱応力を使用して並行強制分解実験により観察された。
【0235】
要約すると、複数の直交法及び並行強制分解実験を使用して広範囲の特性決定により示されるように、アスホターゼアルファの20Kバッチ及び2Kバッチは同等である。したがって20Kバッチからの材料は、2Kバッチからの材料と同等に安全性及び効率を有する。
【0236】
実施例10.2,000L(2K)及び20,000L(20K)規模で製造したアスホターゼアルファの追加の比較
アスホターゼアルファの7つのバッチが20,000L規模で生成されて、アスホターゼアルファの追加の5つのバッチが2,000L規模を使用して生成された。両方の規模の生成物が分析されて、同等とわかった(データは示さず)。
【配列表】