(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】液晶パネル、及び、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20220106BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G02F1/1335 510
G02F1/1333
(21)【出願番号】P 2018542650
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2017034981
(87)【国際公開番号】W WO2018062282
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2016194894
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 潤枝
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】藤田 昌邦
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152319(JP,A)
【文献】特開2015-064575(JP,A)
【文献】特開2014-195988(JP,A)
【文献】特開2016-011424(JP,A)
【文献】特表2008-517138(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047478(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0104650(US,A1)
【文献】特開2012-185519(JP,A)
【文献】特開2013-016322(JP,A)
【文献】特開2009-209329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335,1/13363,1/1333
C09J 7/02
C09J 133/04
G02B 5/30
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子及び前記偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有する偏光フィルム、及び、前記偏光フィルムの少なくとも片面に粘着剤組成物より形成される粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムを有し、かつ、前記粘着剤層を介して、前記偏光フィルムが、金属を含む透明導電層付液晶セルに貼り合わされている液晶パネルであって、
前記粘着剤組成物が、(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、ヒドロキシル基含有モノマーを含有し、
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、前記ヒドロキシル基含有モノマーを0.01~0.4重量%含有し、
前記透明保護フィルムの40℃×92%RHにおける透湿度が、1000g/(m
2・24h)以下であり、
前記粘着剤組成物が、イオン性化合物を含有し、
前記粘着剤層の下記式で示されるヘイズ値の差が、5.0%以下であることを特徴とする液晶パネル。
式=[(ガラスに貼付し、60℃×95%RHで500時間投入後、室温に取り出して30分経過後のヘイズ値(%))-(初期のヘイズ値(%))]
【請求項2】
前記金属を含む透明導電層が、金属メッシュを含む透明導電層であることを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項3】
前記イオン性化合物の分子量が、290以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶パネル。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマー
、及びアミド基含有モノマーからなる群から選択される1種以上のモノマー、並びに、アルキル(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の液晶パネルを含むことを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層を介して、金属を含む透明導電層付液晶セルが貼り合せられている液晶パネル、及び、前記液晶パネルを含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像表示装置に使用される液晶パネルは、透明導電層付きの液晶セルに粘着剤層を介して偏光フィルムが積層されている。このような液晶パネル等の光学用途の粘着剤層は、高い透明性が要求される。
【0003】
また、画像表示装置において、タッチセンサーの電極等として透明樹脂フィルム上にITO(インジウム・スズ複合酸化物)等の金属酸化物層を形成して得られる透明導電層が多用されている。
【0004】
画像表示装置において用いられる粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤が広く用いられており、例えば、粘着剤層付透明導電層の粘着剤層であって、炭素数2~14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートをモノマー単位として含むアクリル系ポリマーを含有する粘着剤層が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、炭素数4~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含むモノマー成分を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマー及びリン酸エステル系化合物を含む光学フィルム用粘着剤組成物等も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-016908号公報
【文献】特開2015-028138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この様な中、偏光フィルムと透明導電層とを、帯電防止機能が付与された粘着剤層を介して積層すると、透明導電層が腐食する場合があり、特に、湿熱環境下において顕著であった。前記透明導電層は、接触する粘着剤層に含まれる水分と帯電防止機能を付与するための導電剤により、腐食していることが新たに分かった。更に、透明導電層の腐食により、粘着剤層と透明導電層の接触界面において、剥がれなどが生じたり、表面抵抗の悪化などの問題も生じていた。
【0007】
なお、透明導電層として用いられる金属酸化物層のITO等では、水分や導電剤による腐食の問題がほとんど認められないことから、特に水分や導電剤により、腐食の問題が発生しやすい透明導電層としては、金属(単独種)や合金等が考えられる。
【0008】
これは、帯電防止機能を付与するために添加される導電剤により、粘着剤層の吸水率が高くなり、粘着剤層に含まれる水分により、金属を含む透明導電層の腐食が進行することが考えられる。また、粘着剤層と透明導電層との界面付近に導電剤が偏析(偏在)することで、透明導電層の腐食の進行が加速されることが考えられる。
【0009】
特許文献1に記載された粘着剤層は、透明プラスチック基材の透明導電層を有さない面に設けられるものであって、粘着剤層と透明導電層が接触するものではなく、粘着剤層による腐食については何ら検討がなされていないものであった。また、特許文献2においては、透明導電層の腐食について検討がなされているものの、粘着剤層にリン酸エステル系化合物を添加することで腐食を抑制するものであり、特定の導電剤については何ら記載されていないものであった。
【0010】
また、前記粘着剤層を介して偏光フィルムが貼付される透明導電層付きの液晶セルを用いた液晶パネルは、湿熱環境下に曝された後に、室温に戻すと、前記粘着剤層が白濁(白化)する場合がある。この白濁現象は、湿熱環境下で粘着剤層中に吸湿した水分が、室温に戻した際に凝集することにより発生する。
【0011】
従って、本発明は、特定の透湿度を有する透明保護フィルムを含む偏光フィルムと、透明導電層付液晶セルとを、導電剤であるイオン性化合物を含む粘着剤層を介して積層した場合であっても、粘着剤層の加湿(湿熱)による白濁現象を抑え、粘着剤層の耐久性(発泡・剥がれの抑制)を向上し、粘着剤層表面の表面抵抗の上昇を抑え、ひいては、金属を含む透明導電層の表面抵抗の上昇を抑え、更に、透明導電層の腐食を抑えることができる液晶パネル、及び、前記液晶パネルを含む画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、下記液晶パネルを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の液晶パネルは、偏光子及び前記偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有する偏光フィルム、及び、前記偏光フィルムの少なくとも片面に粘着剤組成物より形成される粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムを有し、かつ、前記粘着剤層を介して、前記偏光フィルムが、金属を含む透明導電層付液晶セルに貼り合わされている液晶パネルであって、前記透明保護フィルムの40℃×92%RHにおける透湿度が、1000g/(m2・24h)以下であり、前記粘着剤組成物が、イオン性化合物を含有し、前記粘着剤層の下記式で示されるヘイズ値の差が、5.0%以下であることを特徴とする。
式=[(ガラスに貼付し、60℃×95%RHで120時間投入後、室温に取り出して30分経過後のヘイズ値(%))-(初期のヘイズ値(%))]
【0014】
本発明の液晶パネルは、前記金属を含む透明導電層が、金属メッシュを含む透明導電層であることが好ましい。
【0015】
本発明の液晶パネルは、前記イオン性化合物の分子量が、290以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の液晶パネルは、前記粘着剤組成物が、(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー及びアミド基含有モノマーからなる群から選択される1種以上のモノマー、並びに、アルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0017】
本発明の画像表示装置は、前記液晶パネルを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液晶パネルは、特定の透湿度を有する透明保護フィルムを有する偏光フィルム、及び、導電剤であるイオン性化合物を含有し、特定条件下でのヘイズ値が湿熱環境下に曝された場合であっても大きく変化しない粘着剤層を用いた粘着剤層付偏光フィルムが、前記粘着剤層を介して、金属を含む透明導電層付液晶セルに貼り合わされていることで、湿熱環境下であっても、粘着剤層の加湿(湿熱)による白濁現象を抑え、粘着剤層の耐久性(発泡・剥がれの抑制)を向上し、粘着剤層表面の表面抵抗の上昇を抑え、ひいては、金属(特に、金属(単独種)や合金から構成される金属メッシュ)を含む透明導電層の表面抵抗の上昇を抑え、更に、透明導電層の腐食を抑えた液晶パネル、及び、前記液晶パネルを含む画像表示装置を提供することができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の粘着剤層付偏光フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.粘着剤組成物
本発明で用いられる粘着剤組成物は、金属を含む透明導電層付液晶セルに貼り合わされて用いられる粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物であり、導電剤として、イオン性化合物を含有することを特徴とする。
【0021】
本発明で用いられる粘着剤層は、ベースポリマー及び架橋剤を含む粘着剤組成物から形成されることが好ましい。前記粘着剤組成物としては、アクリル系、合成ゴム系、ゴム系、シリコーン系等の粘着剤等とすることができるが、透明性、耐熱性などの観点から、(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0022】
(1)(メタ)アクリル系ポリマー
前記粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマーを含むことが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0023】
(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等を例示できる。これらは単独で、又は組み合わせて使用することができる。特に炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、より親水性であるため、湿熱下で粘着剤(層)中に侵入する水分を粘着剤(層)中に分散させる働きがあり、腐食の抑制および白濁抑制、さらに耐久性に効果的である。一方、炭素数が5以上の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートになると、より疎水性を示すため、湿熱下で粘着剤(層)中に侵入してきた水分が、粘着剤層と被着体との界面に偏析しやすく、腐食、白濁、および耐久性が悪化しやすい。
【0024】
前記アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中の主成分とするものである。ここで、主成分とは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、アルキル(メタ)アクリレートが70重量%以上であることをいい、80~99.9重量%が好ましく、90~99.8重量%がより好ましい。
【0025】
また、本発明においては、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー及びアミド基含有モノマーからなる群から選択される1種以上のモノマーを含有することが、透明導電層の腐食抑制の観点から好ましい。前記カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマーは、これらの中のいずれか一つを用いてもよく、これらを併用して用いてもよいが、耐腐食性の観点からは、アミド基含有モノマーを含むことが最も好ましく、ヒドロキシル基含有モノマーを含むことが次に好ましく、カルボキシル基含有モノマーを含むことがその次に好ましい。特に、アミド基含有モノマーの中でも、N-ビニル基含有ラクタム系モノマーを添加することで、粘着剤中の導電剤が偏析するのを抑制する効果が高いため、粘着剤の表面抵抗値の上昇性を抑える上、耐腐食性が良好となる。
【0026】
カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて使用できる。イタコン酸、マレイン酸はこれらの無水物を用いることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。一般的に、カルボキシル基含有モノマーをモノマー単位として含むポリマーを含む粘着剤層を、金属(特に、金属(単独種)や合金から構成される金属メッシュ)を含む透明導電層等の金属を含む層に用いた場合、カルボキシル基に起因する金属層の腐食を発生させる場合がある。従って、通常、カルボキシル基含有モノマーは、耐腐食性を目的とする粘着剤には用いられないものである。本発明においては、粘着剤組成物に、カルボキシル基含有モノマー、後述する、ヒドロキシル基含有モノマー及び/又はアミド基含有モノマーを含むことにより、導電剤の分散性を向上することができる。導電剤の分散性が向上した粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、導電剤が偏析(偏在)することがなく、より高い透明導電層の腐食抑制効果が得られるため、好ましい。
【0027】
前記カルボキシル基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、5重量%以下であることが好ましく、0.1~3重量%がより好ましく、0.1~1重量%がさらに好ましい。カルボキシル基含有モノマーの割合が5重量%を超えると、粘着剤の架橋が促進され粘着物性が著しく硬くなり(貯蔵弾性率が高くなり)、耐久性試験でハガレ等の不具合を引き起こすため、好ましくない。また、本発明においては、前記カルボキシル基含有モノマーを5重量%以下程度の微量含むことで、より高い腐食抑制効果が得られるため、好ましい。
【0028】
前記ヒドロキシル基含有モノマーは、その構造中にヒドロキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。具体的には、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート等が挙げられる。前記ヒドロキシル基含有モノマーの中でも、耐久性や導電剤であるイオン性化合物の均一な分散性、腐食抑制の効果の観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特に4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
前記ヒドロキシル基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、0.01~10重量%が好ましく、0.03~5重量%がより好ましく、0.05~3重量%がさらに好ましい。
【0030】
前記アミド基含有モノマーは、その構造中にアミド基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。アミド基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカアプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン等のN-アクリロイル複素環モノマー;N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム等のN-ビニル基含有ラクタム系モノマー等が挙げられる。これらの中でも、N-ビニル基含有ラクタム系モノマーが好ましい。
【0031】
前記アミド基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、0.01~10重量%が好ましく、0.03~7重量%がより好ましく、0.05~5重量%が特に好ましい。本発明においては、前記アミド基含有モノマーを10重量%以下程度含むことで、ヒドロキシル基含有モノマーやカルボキシル基含有モノマーを添加した場合と同様に、より高い腐食抑制効果が得られるため、好ましい。
【0032】
前記(メタ)アクリル系ポリマー中には、前記アルキル(メタ)アクリレートや、カルボキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、上記モノマー以外の共重合モノマーを導入することができる。その配合割合は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中10重量%以下程度であることが好ましい。
【0033】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量が50万~300万の範囲のものが用いられる。なお、得られる粘着剤層の耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は70万~270万であるものを用いることが好ましい。さらには80万~250万であることが好ましい。重量平均分子量が50万よりも小さいと、架橋剤量を増やす必要があり架橋の柔軟性が失われるため、偏光フィルムの収縮による応力を緩和できず、耐久性でハガレが発生するため、好ましくない。また、重量平均分子量が300万よりも大きくなると、塗工するための粘度に調整するために多量の希釈溶剤が必要となり、コストアップとなることから好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0034】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合等の公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれでもよい。
【0035】
前記溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。具体的な溶液重合例としては、窒素等の不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50~70℃程度で、5~30時間程度の反応条件で行われる。
【0036】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0037】
重合開始剤としては、例えば、2,2´-アゾビスイソブチロニトリル、2,2´-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´-アゾビス(N,N´-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2´-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(商品名:VA-057、和光純薬工業(株)製)等のアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ等の過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー100重量部に対して、0.005~1重量部程度であることが好ましく、0.02~0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0039】
なお、重合開始剤として、例えば、2,2´-アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを製造するには、重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー100重量部に対して、0.06~0.2重量部程度とするのが好ましく、0.08~0.175重量部程度とするのがより好ましい。
【0040】
また、連鎖移動剤、乳化重合する場合に用いる乳化剤又は反応性乳化剤を用いる場合、これらは従来公知のものを適宜用いることができるものである。また、これらの使用量としては、本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定することができる。
【0041】
(2)イオン性化合物(導電剤)
前記粘着剤組成物は、イオン性化合物(導電剤)を含有することを特徴とする。前記イオン性化合物を使用することにより、粘着剤層の帯電防止機能を確保できる。なお、粘着剤層中にイオン性化合物を含有することで、前記粘着剤層を接触する金属(特に、金属(単独種)や合金から構成される金属メッシュ)を含む透明導電層が腐食する恐れがあり、特に湿熱環境下では、粘着剤層中のイオン性化合物が金属を含む透明導電層と接触側に偏析(偏在)し、腐食される恐れがある。このため、イオン性化合物としては、分子量(モル分子量)が、290以上のものが好ましく、380以上のものを用いることが好ましく、400以上がより好ましく、500以上がさらに好ましく、600以上が特に好ましい。分子量が290以上のイオン性化合物を使用することで、透明導電層の腐食を抑制することができ、かつ、粘着剤層表面の表面抵抗の上昇を抑え、ひいては、金属を含む透明導電層の表面抵抗上昇などを抑制できる。イオン性化合物の分子量が大きいほど、イオン性化合物を含む粘着剤層の吸水率が低くなり、かつ、粘着剤層と透明導電層が接触する界面での前記イオン性化合物の偏析が起こりにくいため、透明導電層の腐食を抑制できる。また、イオン性化合物の分子量の上限値としては特に限定されるものではないが、2000以下であることが粘着剤層の帯電防止機能を確保し、耐久性との両立を図る点から好ましい。
【0042】
また、イオン性化合物(導電剤)の分子量が290未満であると、粘着剤層の吸水率が高くなり、粘着剤層に含まれる水分により透明導電層の腐食が進行すると考えられる。また、イオン性化合物の分子量が290未満であると、分子量が小さいため、イオン性化合物が粘着剤層中において、透明導電層との界面付近に移動しやすくなるため、偏析(偏在)してしまい、前記界面付近のイオン性化合物により、腐食を引き起こしてしまうと考えられる。イオン性化合物が粘着剤層中において、透明導電層との界面付近に多く偏析する傾向があり、前記界面付近のイオン性化合物により腐食の進行が加速されると考えられる。これらの現象は、透明導電層において顕著である。また、湿熱環境下においても特に顕著である。本発明においては、分子量が290以上のイオン性化合物を用いることで、分子量が大きいため、湿熱環境下においても、イオン性化合物が粘着剤層中において移動しにくく、偏析しにくいため、イオン性化合物が均一に分散した状態を保持しやすいため、結果として、透明導電層の腐食を抑制できると考えられる。
【0043】
前記イオン性化合物(導電剤)は、アニオン成分及びカチオン成分を有するイオン性化合物であることが好ましい。前記カチオン成分、アニオン成分について説明する。
【0044】
(イオン性化合物のアニオン成分)
本発明においては、特に限定されないが、アニオン成分の総炭素数が6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。また、アニオン成分の総炭素数の上限値は特に限定されるものではないが、16以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。アニオン成分の総炭素数が6以上であることで、イオン性化合物自体の疎水性が高くなるため、粘着剤層中に水分を含みにくくなり、その結果、透明導電層の腐食が抑制できるため好ましい。
【0045】
また、前記アニオン成分は、有機基を有することが好ましく、前記有機基は、炭素数3以上の有機基であることが好ましく、炭素数4以上の有機基であることがより好ましい。
【0046】
前記アニオン成分の分子量としては、特に限定されるものではなく、イオン性化合物としての分子量が290以上であることが好ましいが、100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、300以上であることがさらに好ましい。アニオン成分の分子量が前記範囲になることで、イオン性化合物自体の疎水性が高くなるため、粘着剤層中に水分を含みにくく、その結果、透明導電層の腐食が抑制できるため好ましい。また、アニオン成分の分子量の上限値としては特に限定されるものではないが、1000以下であることが粘着剤層の帯電防止機能を確保し、耐久性との両立を図る点から好ましい。
【0047】
アニオン成分としては、下記一般式(1):
(CnF2n+1SO2)2N- (1)
(一般式(1)中、nは1~10の整数(好ましくはnは3~10の整数))、
下記一般式(2):
CF2(CmF2mSO2)2N- (2)
(一般式(2)中、mは1~10の整数(好ましくはmは2~10の整数))、及び、下記一般式(3):
-O3S(CF2)lSO3
- (3)
(一般式(3)中、lは1~10の整数(好ましくはlは3~10の整数))で表される少なくとも1種のアニオン成分であることが、腐食抑制の観点から好ましい。
【0048】
上記一般式(1)で表されるアニオン成分としては、具体的には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ウンデカフルオロペンタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリデカフルオロヘキサンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンダデカフルオロヘプタンスルホニル)イミドアニオン等が挙げられる。これらの中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオンが好ましく、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオンが特に好ましい。
【0049】
上記一般式(2)で表されるアニオン成分としては、具体的には、シクロ-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ビス(スルホニル)イミドアニオンが挙げられ、好適に使用可能である。
【0050】
上記一般式(3)で表されるアニオン成分としては、具体的には、ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホン酸アニオンが挙げられ、好適に使用可能である。
【0051】
(イオン性化合物のカチオン成分)
本発明においては、カチオン成分としては、有機カチオンが好ましい。カチオンの総炭素数は6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。また、カチオンの総炭素数の上限値は特に限定されないが、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。カチオン成分の総炭素数が6以上であることで、イオン性化合物自体の疎水性が高くなるため、粘着剤層中に水分を含みにくくなり、その結果、透明導電層の腐食が抑制できるため好ましい。
【0052】
また、前記カチオン成分は、有機基を有することが好ましく、前記有機基としては、炭素数3以上の有機基が好ましく、炭素数7以上の有機基がより好ましい。
【0053】
本発明においては、前記有機カチオンを用いることが好ましいが、イオン性化合物としての分子量が290以上となるものが好ましく、カチオン成分として、リチウム、ナトリウム、カリウムのアルカリ金属イオン等を用いることで少量の添加量で表面抵抗値を下げる効果が高いためが好ましい。
【0054】
イオン性化合物のカチオン成分が有機カチオンである場合、上記アニオン成分と共に、イオン性化合物としての有機カチオン-アニオン塩を構成する。有機カチオン-アニオン塩は、イオン性液体、イオン性固体とも言われる。有機カチオンとしては、具体的には、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0055】
有機カチオン-アニオン塩の具体例としては、上記カチオン成分とアニオン成分との組み合わせからなる化合物が適宜選択して用いられ、例えば、ブチルメチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N-ブチル-メチルピリジニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、メチルプロピルピロリジニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムシクロ-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ビス(スルホニル)イミド、ビス(1-ブチル-3-メチルピリジニウム)ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホン酸、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドイミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムシクロ-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ビス(スルホニル)イミド、ビス(1-エチル-3-メチルピリジニウム)ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホン酸、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルトリオクチルアンモニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、ヘキシルメチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチルメチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルプロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ブチルメチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルトリオクチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-デシルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0056】
また、カチオン成分としてアルカリ金属イオンを含むアルカリ金属塩としては、具体的には、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドカリウム、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドカリウム等が挙げられる。
【0057】
本発明の粘着剤組成物におけるイオン性化合物の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.001~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましく、0.3~3重量部がさらに好ましい。前記イオン性化合物が0.001重量部未満では、表面抵抗値を下げる効果が乏しくなる。一方、前記イオン性化合物10重量部より多いと、耐腐食性や耐久性が悪化する場合がある。
【0058】
(3)架橋剤
本発明の粘着剤組成物には、前記以外にも、架橋剤を含有することできる。架橋剤を使用することで、粘着剤の耐久性に関係する凝集力を付与できるため好ましい。架橋剤としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤等が挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合又は配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合又は配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0059】
本発明の粘着剤組成物における架橋剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、0.03~2重量部がより好ましい。
【0060】
(4)その他
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、各種シランカップリング剤、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのポリエーテル化合物、着色剤、顔料等の粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物等を使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0061】
2.粘着剤層
本発明の粘着剤層は、前記粘着剤組成物から形成されることを特徴とする。
【0062】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレータ等に塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を形成する方法を挙げることができる。また、後述する偏光フィルムに前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を偏光フィルムに形成する方法等により作製することもできる。なお、粘着剤組成物の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0063】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘着剤組成物を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する場合、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を加熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃であり、さらに好ましくは、50℃~180℃であり、特に好ましくは70℃~170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0064】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは、10秒~5分である。
【0065】
前記粘着剤組成物の塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0066】
粘着剤層の厚さ(乾燥後)は、特に制限されず、例えば、1~100μm程度であるが、好ましくは、2~50μm、より好ましくは2~40μmであり、さらに好ましくは、5~35μmである。粘着剤層の厚さが1μm未満では、被着体に対する密着性が乏しくなり、湿熱環境下での耐久性が十分ではない傾向がある。一方、粘着剤層の厚さが100μmを超える場合には、粘着剤層を形成する際の粘着剤組成物の塗布、乾燥時に十分に乾燥しきれず、気泡が残存したり、粘着剤層に厚みムラが発生したりして、外観上の問題が顕在化し易くなる傾向がある。
【0067】
本発明において用いられる粘着剤層は、下記式で示されるヘイズ値の差が、5.0%以下であることを特徴とする。前記粘着剤層のヘイズ値の差(ヘイズ差)が5.0%と小さいことで、湿熱環境下に長時間曝された場合であっても、ヘイズ値の変化が小さい、つまりは、粘着剤層中の水分が少なく、前記粘着剤層に接触する金属(特に、金属(単独種)や合金から構成される金属メッシュ)を含む透明導電層の腐食を抑えられることになり、さらに、粘着剤層の加湿(湿熱)による白濁現象を抑制でき、好ましい態様となる。なお、ヘイズ差としては、好ましくは、4.0%以下であり、より好ましくは、3.0%以下である。ヘイズ差が小さくなることで、より透明導電層の腐食を抑えることができ、有用である。なお、ヘイズ差が5.0%を超えると、視認性(白濁現象の抑制)に劣り、腐食の抑制が困難となる場合があり、好ましくない。
式=[(ガラスに貼付し、60℃×95%RHで500時間投入後、室温に取り出して30分経過後のヘイズ値(%))-(初期のヘイズ値(%))]
【0068】
また、本発明において用いられる粘着剤層(イオン性化合物を含む)としては、導電剤であるイオン性化合物を含まない状態での粘着剤層の水分率(飽和水分率)が、23℃×55%RHで5時間放置後、及び、60℃×90%RHで5時間放置後において、3重量%以下であることが好ましく、その組成は特に限定されるものではない。イオン性化合物を含まない状態の粘着剤層の水分率は、より好ましくは、2重量%以下であり、更に好ましく、1.3重量%以下である。イオン性化合物を含まない状態の粘着剤層の水分率が3重量%を超えると、イオン性化合物を含む状態では、粘着剤層中の水分量が多くなり、耐腐食性が悪化したり、湿熱環境下で発泡する場合があり、耐久性が悪化する傾向がある。
【0069】
3.粘着剤層付偏光フィルム
本発明に用いられる粘着剤層付偏光フィルムは、偏光子及び前記偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有する偏光フィルム、及び、前記偏光フィルムの少なくとも片面に粘着剤組成物より形成される粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムを有することを特徴とする。例えば、
図1に示すように、本発明で用いられる粘着剤層付偏光フィルム3は、偏光フィルム1と粘着剤層2が積層されたものである。また、
図2~4に示すように、本発明で用いられる粘着剤層付偏光フィルム3は、金属を含む透明導電層付きの液晶セル(ガラス基板5+液晶層6+ガラス基板5)の透明導電層4に貼り合わされて用いられる。
【0070】
粘着剤層を形成する方法としては、上述の通りである。
【0071】
本発明に用いられる粘着剤層付偏光フィルムは、粘着剤層を剥離処理したセパレータ上に形成した場合、前記セパレータ上の粘着剤層を偏光フィルムの透明保護フィルム面に転写して粘着剤層付偏光フィルムを形成することができる。また、偏光フィルムに直接前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層付偏光フィルムを形成することもできる。
【0072】
また、前記偏光フィルムの粘着剤組成物を塗布する表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理等の各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0073】
また、粘着剤層付偏光フィルムにおいて粘着剤層が露出する場合には、金属を含む透明導電層に貼り合せるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0074】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、及びこれらのラミネート体等の適宜な薄葉体等を挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0075】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0076】
前記セパレータの厚みは、通常5~200μm、好ましくは5~100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型及び防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0077】
なお、上記の粘着剤層付偏光フィルムの作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着剤層付偏光フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0078】
偏光フィルムは、偏光子及び前記偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有するものが用いられる。
【0079】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好ましく、ヨウ素及び/又はヨウ素イオンを含有するヨウ素系偏光子がより好ましい。また、これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5~80μm程度である。
【0080】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウム等の水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラ等の不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0081】
また、本発明においては、厚みが10μm以下の薄型偏光子も用いることができる。薄型化の観点から言えば、厚みは1~7μmであるものが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため耐久性に優れ、さらには偏光フィルムとしての厚みも薄型化が図れる点が好ましい。
【0082】
薄型の偏光子としては、代表的には、特開昭51-069644号公報や特開2000-338329号公報や、国際公開第2010/100917号パンフレット、国際公開第2010/100917号パンフレット、又は特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法により得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断等の不具合なく延伸することが可能となる。
【0083】
前記薄型偏光膜としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることができる点で、国際公開第2010/100917号パンフレット、国際公開第2010/100917号パンフレット、又は特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。
【0084】
本発明において用いられる透明保護フィルムの40℃×92%RHにおける透湿度は、1000g/(m2・24h)以下であることを特徴とする。前記透明保護フィルムとしては、前記範囲の透湿度を有するものであれば、特に制限なく使用できる。前記透明保護フィルムの透湿度を前記範囲内に調整することで、前記透明保護フィルムと接触する前記粘着剤層への水分の浸入を防ぐことができ、より白濁現象の抑制、ひいては、前記粘着剤層と接触する金属(特に、金属(単独種)や合金から構成される金属メッシュ)を含む透明導電層の腐食を防止でき、有用となる。透明保護フィルムの透湿度は、好ましくは、600g/(m2・24h)以下であり、より好ましく、300g/(m2・24h)以下、さらに好ましくは200g/(m2・24h)以下、特に好ましくは100g/(m2・24h)以下である。透明保護フィルムの透湿度が1000g/(m2・24h)を超えると、粘着剤層に侵入する水分量が多くなり、透明導電層が腐食する場合があり、液晶パネル自体の耐久性が悪化する場合があり、好ましくない。透明保護フィルムの透湿度が高くなることで、透明保護フィルム自体の湿熱環境下における寸法変化率が大きくなり、加湿耐久性の観点からも好ましくない。また、透明保護フィルムの透湿度が低いほど、透明保護フィルムと接触する粘着剤層表面の表面抵抗値の上昇を抑えることができる。例えば、加湿(湿熱)環境下において、粘着剤層中に侵入してきた水が循環する際に、透明保護フィルムを含む偏光フィルム側から、水が揮発すると考えられ、この際に粘着剤層中の導電剤成分(イオン性化合物)の一部が偏光フィルム側へ移動することで、偏光フィルムと接触する粘着剤層表面の導電剤成分が減少し、粘着剤層表面の表面抵抗値が上昇する。一方、偏光フィルムを構成する透明保護フィルムの透湿度が低ければ、粘着剤層への水の侵入を防ぐことができるため、粘着剤層表面の表面抵抗値の上昇が抑制でき、ひいては、粘着剤層表面と接触している金属(特に、金属(単独種)や合金から構成される金属メッシュ)を含む透明導電層表面の表面抵抗値をも抑えることができるものと推測される。なお、金属酸化物層のITOなどは、粘着剤層中に含まれるイオン性化合物による影響(腐食)を受けにくい傾向にあるが、細線化やパターン形成の容易性の観点からITOなどの使用ではなく、前記金属を含む透明導電層を用いることが、より好ましい態様である。
【0085】
透明保護フィルムを構成する材料としては、前記透湿度に加えて、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等が挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0086】
前記偏光子の少なくとも片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされる。偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5~60重量%の固形分を含有してなる。上記の他、偏光子と透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。電子線硬化型偏光フィルム用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。また本発明で用いる接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。
【0087】
本発明に用いられる粘着剤層付偏光フィルムは、例えば、金属(特に、金属(単独種)や合金から構成される金属メッシュ)を含む透明導電層付液晶セルの透明導電層に前記粘着剤層を貼り合せて用いるものである。透明導電層に用いられる金属の形状は、空隙の無い平面板状、空隙を有するパターン状、細線でパターン化された金属メッシュなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。例えば、金属メッシュを含む透明導電層とは、金属細線が格子状のパターンに形成されてなる金属メッシュを形成して得られるものであり、特に腐食しやすい金属細線を用いた金属メッシュに対して、本発明による耐腐食性の効果が顕著である。
【0088】
前記金属メッシュを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いることができる。上記金属メッシュを構成する金属としては、金、白金、銀、アルミニウム、及び銅からなる群より選ばれた1種以上の金属が好ましく、導電性の観点からは、アルミニウム、銀、銅、又は金であることが好ましい。特に、金属としてアルミニウムを含む構成において、耐腐食性の効果が顕著であり、好ましい。
【0089】
金属メッシュを含む透明導電層は、任意の適切な方法により形成させることができる。該透明導電層は、例えば、銀塩を含む感光性組成物(透明導電層形成用組成物)を離型フィルム等の被着体上に塗布し、その後、露光処理及び現像処理を行い、金属細線を所定のパターンに形成することにより得ることができる。金属細線の線幅や形状は特に限定されるものではないが、線幅としては、10μm以下のものが好ましい。また、該透明導電層は、金属微粒子を含むペースト(透明導電層形成用組成物)を所定のパターンに印刷して得ることもできる。このような透明導電層及びその形成方法の詳細は、例えば、特開2012-18634号公報に記載されており、その記載は本明細書に参考として援用される。また、金属メッシュを含む(金属メッシュから構成される)透明導電層及びその形成方法の別の例としては、特開2003-331654号公報に記載の透明導電層及びその形成方法が挙げられる。金属メッシュはスパッタリング法やインクジェット法等により形成してもよく、特にスパッタリング法を用いることが好ましい。
【0090】
透明導電層の厚みは、0.01~10μm程度であることが好ましく、0.05~3μm程度であることがより好ましく、0.1~1μmであることがさらに好ましい。
【0091】
また、前記透明導電層上には、オーバーコート(OC)層(不図示)を有してもよい。
【0092】
オーバーコート層としては、本分野において通常用いられているものを特に制限なく用いることができるが、例えば、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート樹脂等から形成される層を挙げることができる。オーバーコート層の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、0.1~10μmであることが好ましい。
【0093】
4.液晶パネル
本発明の液晶パネルは、偏光子及び前記偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有する偏光フィルム、及び、前記偏光フィルムの少なくとも片面に粘着剤組成物より形成される粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムを有し、かつ、前記粘着剤層を介して、前記偏光フィルムが、金属(特に、金属(単独種)や合金から構成される金属メッシュ)を含む透明導電層付液晶セルに貼り合わされていることを特徴とする。なお、その他の構成については特に限定されるものではない。本発明においては、偏光フィルムを構成する透明保護フィルムの透湿度、粘着剤層のヘイズ差などを適切な範囲とすることで、液晶パネル全体としての白濁現象の抑制や、耐久性の向上などを図ることができる。
【0094】
5.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、前記液晶パネルを含むことが好ましい。以下、一例として、液晶表示装置について説明するが、本発明は、液晶パネルを必要とするあらゆる表示装置に適用され得るものである。
【0095】
本発明の液晶パネルが適用可能な画像表示装置の具体例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:FieldEmission Display)等を挙げることができる。
【0096】
本発明の画像表示装置は、本発明の液晶パネルを含むものであればよく、その他の構成は、従来の画像表示装置と同様である。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は、全て23℃×55%RHである。
【0098】
製造例1(アクリル系ポリマー(A-1)の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート95.5部、N-ビニルピロリドン4部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル0.4部、及び、アクリル酸0.1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度16%に調整した、重量平均分子量180万のアクリル系ポリマー(A-1)の溶液を調製した。
【0099】
製造例2(アクリル系ポリマー(A-2)の調製)
製造例1において、モノマー混合物として、ブチルアクリレート96.9部、アクリル酸3部、及びアクリル酸ヒドロキシエチル0.1部を含有するモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量200万のアクリル系ポリマー(A-2)の溶液を調製した。
【0100】
製造例3(アクリル系ポリマー(A-3)の調製)
製造例1において、モノマー混合物として、ブチルアクリレート98部、及び、アクリル酸4-ヒドロキシブチル2部を含有するモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量170万のアクリル系ポリマー(A-3)の溶液を調製した。
【0101】
製造例4(アクリル系ポリマー(A-4)の調製)
製造例1において、モノマー混合物として、アクリル酸2-エチルへキシル99.8部、及び、アクリル酸ヒドロキエチル0.2部を含有するモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量160万のアクリル系ポリマー(A-4)の溶液を調製した。
【0102】
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、以下の方法により測定した。
<(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量の測定>
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0103】
製造例5(偏光フィルムの作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍になるように延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、厚さ20μmの偏光子を得た。当該偏光子の両面に、実施例、及び、比較例で使用する表1中に記載の各透明保護フィルムを、それぞれ、ポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光フィルムを作製した。
【0104】
製造例6(アクリル系ポリマー(A-1)を用いた粘着剤組成物の調製)
製造例1で得られたアクリル系ポリマー(A-1)溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(商品:タケネートD160N、トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート、三井化学(株)製)0.15部、ベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT、日本油脂(株)製)0.3部、及び、γーグリシドキシプロピルメトキシシラン(商品名:KBM-403、信越化学工業(株)製)0.2部を配合して、粘着剤組成物を調製した。
【0105】
製造例7(アクリル系ポリマー(A-2)を用いた粘着剤組成物の調製)
製造例2で得られたアクリル系ポリマー(A-2)溶液から調製する粘着剤組成物は、イソシアネート架橋剤(商品:コロネートL、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業(株)製)0.5部へ変更し、ベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT、日本油脂(株)製)0.2部へ変更した以外は、製造例6と同様に、粘着剤組成物を調製した。
【0106】
製造例8(アクリル系ポリマー(A-3)を用いた粘着剤組成物の調製)
製造例3で得られたアクリル系ポリマー(A-3)溶液から調製する粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤(商品名:タケネートD110N、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート、三井化学(株)製)0.1部へ変更した以外は、製造例6と同様に、粘着剤組成物を調製した。
【0107】
製造例9(アクリル系ポリマー(A-4)を用いた粘着剤組成物の調製)
製造例4で得られたアクリル系ポリマー(A-4)溶液から調製する粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤(商品名:タケネートD110N、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート、三井化学(株)製)0.15部へ変更した以外は、製造例6と同様に、粘着剤組成物を調製した。
【0108】
<実施例1>
(粘着剤組成物の調製)
上記製造例6の粘着剤組成物に、更に、イオン性化合物(導電剤)として、リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(商品名:EF-N445、三菱マテリアル(株)製)1部を配合して、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0109】
(粘着剤層付偏光フィルムの作製)
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、表1に記載の透明保護フィルムを使用し、製造例5に沿って作製した偏光フィルムに、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0110】
<実施例2~13、比較例1~5>
実施例2~13、及び、比較例1~5において、上記製造例6~9において得られた粘着剤組成物に、表1に記載のイオン性化合物を実施例1と同じモル濃度となる量で配合してアクリル系粘着剤溶液を調製した。また、偏光フィルム、及び、粘着剤層付偏光フィルムについては、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
【0111】
上記実施例及び比較例で使用する透明保護フィルム、粘着剤層(イオン性化合物を含まない状態)、粘着剤層付偏光フィルムについて、以下の評価を行い、評価結果を表2に示す。また、透明導電層付液晶セルに相当する導電性ガラスに粘着剤層付偏光フィルムを貼り合わせたサンプルについての評価も表2に示す。
【0112】
<透明保護フィルムの透湿度の測定>
水蒸気透過率測定装置(PERMATRAN-W、MOCON社製)を用いて、40℃×92%RH雰囲気下において24時間測定し、偏光フィルムを構成する透明保護フィルムの水蒸気透過度(透湿度)(g/(m2・24h)を測定した。測定は、JIS K7129Bに準じて行った。
【0113】
<イオン性化合物を含まない状態の粘着剤層の水分率(飽和水分率)の測定方法>
実施例及び比較例において作製した粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層に対して、導電剤であるイオン性化合物を添加していない状態の粘着剤層を製造例6~9で調製した粘着剤組成物を用いて、上記粘着剤層付偏光フィルムの作製方法と同様の条件にて、粘着剤層を調製し、前記粘着剤層から、約50mgのサンプルを採取した。当該サンプルを、水分吸脱着測定装置(IGA-Sorp、Hiden社製)を用いて、100℃で1時間の条件にて完全に水分を除去した状態の重量(W1)を測定し、次いで、23℃、55%RHで5時間、60℃、90%RHで5時間放置し、重量変化を観察した。サンプルの重量変化がなくなった時点(飽和した状態)において、その重量(W2)を測定した。以下式より、水分率(飽和水分率)(重量%)を測定した。
【0114】
<ヘイズ差(加湿白濁試験)>
実施例、比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを50mm×50mmのサイズに切断し、セパレータフィルムを剥がした後、アルカリガラス(松浪硝子社製、厚みは1.1mm)に粘着剤層表面を貼り合せた後、50℃、5atmで15分間オートクレーブにかけたものを白濁試験用の測定サンプルとし、室温放置条件にて、30分間放置した後、初期値のヘイズ値を測定した(測定結果:0.7%)。続いて、前記測定用サンプルを60℃×95%RHの環境に500時間投入した後、室温下に取り出して10分後のヘイズ値(%)を測定(加熱白濁後)した。ヘイズ値は、村上色彩技術研究所社製のヘイズメーターHM150を用いて測定した。なお、表2中のヘイズ差(%)は、下記式で示されるヘイズ値の差から求めた。
式=[(ガラスに貼付し、60℃×95%RHで500時間投入後、室温に取り出して30分経過後のヘイズ値(%))-(初期のヘイズ値(%))]
【0115】
<表面抵抗値>
実施例、比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムのセパレータフィルムを剥がし、室温放置条件にて、1分間放置した後、粘着剤層表面の表面抵抗値を測定し、これを初期値の表面抵抗値(Ω/□)とし、続いて、60℃×95%RHの加湿環境下に500時間投入し、さらに40℃で1時間乾燥させた後の粘着剤層表面の表面抵抗値を、(株)三菱化学アナリテック製、MCP-HT450を用いて測定した。この測定結果を湿熱後の表面抵抗値(Ω/□)とした。なお、表面抵抗値は、3.0×1012Ω/□未満(3.0E+12Ω/□未満)であることが好ましく、1.0×1012Ω/□未満であるのがより好ましい。
【0116】
<耐久性試験>
実施例、比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを15インチサイズに切断したものをサンプルとした。当該サンプルからセパレータフィルムを剥がした後、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製、EG-XG)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、上記サンプルを完全に無アクリルガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルに、60℃×95%RHの各雰囲気下で500時間処理を施した後(加湿試験)、偏光フィルムとガラスの間の外観を下記基準で目視にて評価した。
(評価基準)
◎:剥がれ等の外観上の変化が全くなし。
○:わずかながら端部に剥がれがあるが、実用上問題なし。
△:端部に剥がれがあるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0117】
<腐食試験>
ガラス(無アルカリガラス)表面に、スパッタリング法にて形成された厚さ0.1μmのアルミニウム系金属層を形成した導電性ガラスに、実施例及び比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを15mm×15mmに切断し、セパレータフィルムを剥がして貼り合わせた後、50℃、5atmで15分間オートクレーブにかけたものを耐腐食性の測定サンプル(透明導電層付液晶セルに相当する導電性ガラスに粘着剤層付偏光フィルムを貼り合わせたサンプル)とした。得られた測定用サンプルを60℃×95%RHの環境下に、500時間投入した後(湿熱後)に、目視及び光学顕微鏡にてアルミニウム系金属層の外観を評価した。なお、欠陥の大きさは、欠陥の一番長い部分を測定した。
また、実施例13においては、上記導電性ガラスに代えて、非結晶性ITO(無アルカリガラスの一方の面に、スパッタリング法によりITO膜(ジオマテック社製、50nm厚み、非結晶性ITO薄膜のSn比率は、3重量%))を使用して、耐腐食性を評価した。
(評価基準)
5:欠陥なし。
4:周辺の一部に僅かに欠陥(欠陥の大きさは0.5mm未満)あるが、内部には欠陥がなく、実用上問題なし。
3:周辺部に断続的な欠陥(欠陥の大きさは0.5mm以上、1mm未満)があるが、内部には欠陥がなく、実用上問題なし。
2:周辺部に断続的な欠陥(欠陥の大きさは1mm以上、2mm未満)があるが、内部には欠陥がなく、実用上問題なし。
1:周辺部に連続的な欠陥(欠陥の大きさは2mm以上)があるか、又は内部に欠陥があり、実用上問題あり。
【0118】
【0119】
表1中の略語を以下に示す。
<イオン性化合物(導電剤)>
MTOA-NFSI:メチルトリオクチルアンモニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド
MTOA-FSI:メチルトリオクチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド
Li-NFSI:リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド
Li-TFSI:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
Dcpy-TFSI:1-デシルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
EMI-FSI:エチルメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド
EMI-TFSI:エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
<透明保護フィルム>
COP:厚み25μmの環状ポリオレフィン(シクロオレフィンポリマー)フィルム(日本ゼオン社製、ZEONOR、透湿度6.5g/m2/24h)にコロナ処理を施して用いた。
アクリル(40):厚み40μmのラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂(透湿度110g/m2/24h)にコロナ処理を施して用いた。
アクリル(25):厚み25μmのラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂(透湿度240g/m2/24h)にコロナ処理を施して用いた。
TAC(40):厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、透湿度1100g/m2/24h)を、ケン化処理を施して用いた。
【0120】
【0121】
表2の評価結果より、全ての実施例において、透明性(白濁現象の抑制)、帯電防止性、耐腐食性、耐久性のいずれの評価においても、良好となることが確認できた。一方、全ての比較例において、耐腐食性に劣り、比較例1~3及び5はヘイズ値の差が5.0%を超え、耐腐食性だけでなく、視認性(白濁現象の抑制)に劣り、特に、比較例4では、透明保護フィルムの透湿度が1100g/m2/24hのTACフィルムを用いたため、耐腐食性が実施例よりも劣ることが確認できた。
【符号の説明】
【0122】
1 偏光フィルム
2 粘着剤層
3 粘着剤層付偏光フィルム
4 金属を含む透明導電層
5 ガラス基板
6 液晶層
7 駆動電極
8 粘着剤層
9 偏光フィルム
10 駆動電極兼センサー層
11 センサー層