(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】慢性の外陰部および会陰部の痛みならびにそれに関連する症状および状態の処置のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/565 20060101AFI20220106BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220106BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20220106BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220106BHJP
A61P 5/30 20060101ALI20220106BHJP
A61P 7/12 20060101ALI20220106BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20220106BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20220106BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220106BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20220106BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61K31/565
A61K9/06
A61K31/135
A61K45/00
A61P5/30
A61P7/12
A61P13/02
A61P15/02
A61P25/04
A61P29/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018558315
(86)(22)【出願日】2017-05-01
(86)【国際出願番号】 AU2017050398
(87)【国際公開番号】W WO2017190183
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-02-07
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518388063
【氏名又は名称】ティーエー ファーマ ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TA PHARMA PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンカイリ,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ヒューイット,アラン
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0129819(US,A1)
【文献】Journal of Lower Genital Tract Disease,2005年,Vol.9, No.1,pp.40-51
【文献】Journal of Lower Genital Tract Disease,2012年,Vol.16, No.4,pp.394-397
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性の外陰部もしくは会陰部の痛
みの処置のための医薬組成物であって、前記組成物は、エストロゲンおよび三環系抗うつ薬を含み、前記組成物は、局所、経皮、または経粘膜投与用に製剤される
オルガノゲルの形態である、医薬組成物:
ここで、前記エストロゲンはエストリオールであり、かつ、前記三環系抗うつ薬はアミトリプチリンおよびノルトリプチリンから選択される。
【請求項2】
前記三環系抗うつ薬が、アミトリプチリンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物が、局所組成物である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記
慢性の外陰部もしくは会陰部の痛みが、外陰部痛
、陰部神経痛、または
骨盤底緊張性筋肉痛(肛門挙筋筋痛症)に関連す
る、請求項1~
3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記
慢性の外陰部もしくは会陰部の痛みが、外陰前庭炎、
限局性誘発性腟前庭痛(LPV)、感覚異常の外陰部痛、外陰皮膚疾患、または周期的な外陰膣炎
に関連する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記慢性の外陰部または会陰部の痛
みが、尿道炎、頻尿もしくは尿意逼迫、または頻便もしくは便意逼迫
に関連する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
局所的、経皮的、または経粘膜的投与により、慢性の外陰部もしくは会陰部の痛
みを処置するためのエストロゲンおよび三環系抗うつ薬を含む医薬組成物:
ここで、前記エストロゲンはエストリオールであり、かつ、前記三環系抗うつ薬はアミトリプチリンおよびノルトリプチリンから選択され
、
ここで、当該組成物はオルガノゲルの形態である。
【請求項8】
前記
慢性の外陰部または会陰部の痛みが、外陰部痛
、陰部神経痛
、または
骨盤底緊張性筋肉痛(肛門挙筋筋痛症)に関連す
る、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記
慢性の外陰部または会陰部の痛みが、外陰前庭炎、
限局性誘発性腟前庭痛(LPV)、感覚異常の外陰部痛、外陰皮膚疾患、または周期的な外陰膣炎
に関連する、請求項
7または
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記慢性の外陰部または会陰部の痛
みが、尿道炎、頻尿もしくは尿意逼迫、または頻便もしくは便意逼迫
に関連する、請求項
7~
9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、局所組成物である、請求項
7~
10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、慢性の外陰部および会陰部の痛みの処置のための組成物および方法に関する。本発明の組成物は、局所、経皮、または経粘膜送達用に製剤され、エストロゲン、典型的にエストリオールおよび三環系抗うつ薬、典型的にアミトリプチリンを含む。
【背景技術】
【0002】
外陰部痛は、外陰部に局所的な慢性の痛みによって特徴付けられる複雑な婦人科の障害である。外陰部痛は、何年間も続き、身体障害、性機能障害、および心理学的障害を引き起こし得る、場合によっては消耗性となる状態である。毎日の活動および生活の質は、長い期間の歩行困難または着座困難、膣領域に触れる衣類に対する敏感性、および灼熱、刺痛、またはかゆみとして典型的に説明される軽度の痛みから激しい痛みを経験している多くの罹患者で著しく損なわれ得る。診断することが困難であることが多いが、一般的に、西洋諸国の成人女性集団の15パーセント超が、彼女らの一生の間のある時期に外陰部痛を経験している可能性があることが推定される。外陰部痛は、妊娠可能年齢の女性に影響を与えることが最も多い。
【0003】
外陰部痛の最もよく見られる形態は、外陰部前庭炎である。外陰部前庭炎を有する女性は、一般的に、前庭に関係し、かつ前庭に限られた痛みを、接触もしくは圧迫の間だけまたは接触もしくは圧迫が加えられた後に経験する。外陰部前庭炎は、痛み、圧痛、前庭の紅斑、かゆみ、腫脹、および尿道炎によって特徴付けられる。痛みは、鋭い、灼熱、またはひりひりする感覚と説明されてもよい。広汎性の外陰部痛は、外陰部、大陰唇、小陰唇、および/または前庭上のまたはそのまわりのびまん性の痛みおよび/または灼熱感によって特徴付けられる。痛みは、絶え間ないまたは間欠性のものとすることができ、症状は、外陰部への接触または圧迫によって必ずしも引き起こされるものではないが、その領域への物理的な接触によって悪化し得る。
【0004】
外陰部痛の病因は、知られていない。しかしながら、ウイルス、真菌、および細菌の攻撃、アレルギー反応、神経障害性のプロセス、ならびに自己免疫性の応答が役割を果たし得ることが仮定されてきた。子宮、膀胱、および直腸を支持する筋肉の炎症(骨盤底筋または肛門挙筋の筋痛症)ならびに陰部神経痛として知られている外陰部組織の神経の炎症は、外陰部痛に関連するさらなる有痛性の症状をもたらす可能性がある。
【0005】
陰部神経痛(慢性の会陰部の痛みとしても知られている)は、陰部神経の分布の範囲内の慢性の痛みを指す用語であり、これには外陰部ならびに大陰唇および肛門のまわりの皮膚ならびに恥丘の一部が含まれる。陰部神経はまた、尿道および肛門の粘膜をも神経支配する。したがって、陰部神経の機能不全は、会陰部の皮膚(外陰部を含む)の感覚機能だけではなく、排尿および排便にも及ぶ。絶え間ない尿意または直腸における異物感などのような症状が、生じ得る。これらの症状は、それ自体は痛みとして分類されないが、それにもかかわらず、個人の能力障害の一因となる。
【0006】
原因が複数ある可能性があるために、陰部神経痛および外陰部痛などのような慢性の痛みは、処置するのが困難になり得る。第一選択療法は、感染症の薬理的な処置ならびに問題の一因となっている可能性がある疑われる刺激物質および治療剤の使用の中止による、疑われる原因の処置を典型的に含む。抗ヒスタミン薬および三環系抗うつ薬などのような経口医薬、クエン酸カルシウムなどのような経口サプリメント、食事の変更、ならびに骨盤底筋の再訓練などのような理学療法は、いくらかの症状の軽減をもたらすかもしれない。より侵襲性の処置は、インターフェロンの病巣内注射、レーザー療法、および外科手術を含むが、これらの選択肢は費用がかかり、血腫などのような合併症、創傷離開、および一様でない治癒に関連するかもしれない。外陰部痛および陰部神経痛などのような慢性痛症候群のための既知の治療法そのものがない。
【0007】
外陰部痛および陰部神経痛などのような状態に関連する慢性の外陰部および会陰部の痛みのための費用対効果が大きく、使用するのが簡単な処置の選択肢を開発する必要が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、慢性の外陰部もしくは会陰部の痛みまたはそれに関連する症状もしくは状態の処置のための、エストロゲンおよび三環系抗うつ薬を含む組成物であって、組成物は、局所、経皮、または経粘膜投与用に製剤される組成物を提供する。
【0009】
特定の実施形態では、組成物は、局所組成物である。
【0010】
組成物は、たとえば、ゲル、クリーム、軟膏、またはローションの形態をしていてもよい。
【0011】
エストロゲンは、天然または合成エストロゲンであってもよい。エストロゲンは、エストリオール、エストロン、17ベータ-エストラジオール、エストラジオール、安息香酸エストラジオール、17ベータ-シピオン酸エストラジオール、エチニルエストラジオール、メストラノール、モクセストロール、ミタトリエンジオール(mytatrienediol)、リン酸ポリエストラジオール、キネストラジオール、キネストロール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0012】
典型的に、エストロゲンは、弱いエストロゲン様の活性を示す。特定の実施形態では、弱いエストロゲンは、エストリオールである。
【0013】
三環系抗うつ薬は、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、およびデシプラミンから選択されてもよい。特定の実施形態では、三環系抗うつ薬は、アミトリプチリンである。アミトリプチリンは、塩酸アミトリプチリンの形態をしていてもよい。
【0014】
例示的な実施形態では、組成物は、ゲル組成物、任意選択でオルガノゲルである。ゲル組成物は、有機相および水相を含む二相系を使用して生成されてもよい。一実施形態では、有機相は、レシチンおよびパルミチン酸イソプロピルの混合物を含む。一実施形態では、水相は、ポロキサマーを含む。
【0015】
典型的に、エストロゲン(より典型的には、エストロゲンはエストリオールである)は、有機相中に溶解しまたは分散し、三環系抗うつ薬(より典型的には、三環系抗うつ薬はアミトリプチリンまたは塩酸アミトリプチリンである)は、水相中に溶解する。
【0016】
任意選択で、組成物または二相ゲル系における少なくとも有機相は、可溶化剤をさらに含む。
【0017】
慢性の外陰部の痛みに関連する状態は、外陰部痛であってもよい。外陰部痛は、局所的なまたは広汎性の外陰部痛であってもよい。状態は、外陰前庭炎、限局性誘発性腟前庭痛(LPV)、感覚異常の外陰部痛、外陰皮膚疾患、周期的な外陰膣炎、または骨盤底緊張性筋肉痛(肛門挙筋筋痛症)から選択されてもよい。慢性の会陰部の痛みに関連する状態は、陰部神経痛であってもよい。症状または関連する状態は、尿道炎、頻尿もしくは尿意逼迫、または頻便もしくは便意逼迫を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の第2の態様は、慢性の外陰部もしくは会陰部の痛みまたはそれに関連する症状もしくは状態の処置のための方法であって、それを必要とする女性の対象にエストロゲンおよび三環系抗うつ薬を含む組成物を局所的に、経皮的に、または経粘膜的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0019】
典型的に、方法は、第1の態様による組成物の投与を含む。
【0020】
本発明の第3の態様は、慢性の外陰部もしくは会陰部の痛みまたはそれに関連する症状もしくは状態の処置のための組成物の製造のためのエストロゲンおよび三環系抗うつ薬の使用であって、組成物は、局所、経皮、または経粘膜投与用に製剤される使用を提供する。
【0021】
本発明の第4の態様は、慢性の外陰部もしくは会陰部の痛みまたはそれに関連する症状もしくは状態の処置のための、エストリオールおよびアミトリプチリンを含む局所組成物を提供する。
【0022】
組成物は、たとえば、ゲル、クリーム、軟膏、またはローションの形態をしていてもよい。
【0023】
例示的な実施形態では、組成物は、ゲル組成物、任意選択でオルガノゲルである。ゲル組成物は、有機相および水相を含む二相系を使用して生成されてもよい。一実施形態では、有機相は、レシチンおよびパルミチン酸イソプロピルの混合物を含む。一実施形態では、水相は、ポロキサマーを含む。
【0024】
典型的に、エストロゲン(より典型的には、エストロゲンはエストリオールである)は、有機相中に溶解しまたは分散し、三環系抗うつ薬(より典型的には、三環系抗うつ薬はアミトリプチリンまたは塩酸アミトリプチリンである)は、水相中に溶解する。
【0025】
任意選択で、組成物または二相ゲル系における少なくとも有機相は、溶解剤をさらに含む。
【0026】
本発明の第5の態様は、慢性の外陰部もしくは会陰部の痛みまたはそれに関連する症状もしくは状態の処置のための方法であって、エストリオールおよびアミトリプチリンを含む組成物を女性の対象に局所的に投与するステップを含む方法を提供する。
【0027】
典型的に、方法は、第4の態様による組成物の投与を含む。
【0028】
本発明の第6の態様は、慢性の外陰部もしくは会陰部の痛みまたはそれに関連する症状もしくは状態の処置のための組成物の製造のためのエストリオールおよびアミトリプチリンの使用であって、組成物は、局所投与用に製剤される使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書に関して、用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、1つのまたは1つを超える(つまり少なくとも1つの)、冠詞の文法上の目的語を指すために本明細書において使用される。例として、「エレメント」は、1つのエレメントまたは1つを超えるエレメントを意味する。
【0030】
本明細書に関して、用語「を含む(comprising)」は、「を主に含むが、必ずしも単独で含むわけではない(including principally but not necessarily solely)」ことを意味する。さらに、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などのような語「含む(comprising)」の変形は、それに応じて意味が変わる。
【0031】
本明細書に関して、用語「約」は、同じ機能または結果を実現することに関して当業者が詳述される値と等価であると見なすであろう値の範囲を指すことが理解される。
【0032】
慢性の外陰部の痛みに関連する状態に関して使用される用語「に関連する」は、根底にある原因として慢性の外陰部の痛みを有し得る状態またはそうでなければ直接もしくは間接的に慢性の外陰部の痛みに関連し得る状態を意味する。
【0033】
本明細書において使用される用語「弱いエストロゲン様の活性」は、17β-エストラジオールなどのような、より強力なエストロゲン化合物と比較して、弱いエストロゲン様の活性を示す化合物が、核内受容体を有効に刺激しないことを意味する。たとえば、エストリオールは、アゴニストだけではなく、ベータエストロゲン受容体のアンタゴニストでもあり、より強力なヒトエストロゲンであるエストラジオールのGタンパク質共役エストロゲン受容体への結合を妨げる。本発明に従って使用するために、弱いエストロゲン様の活性を有する化合物は、典型的に、粘膜に対して刺激性の効果を有するが、核に対する有意な効果はなく、そのため、身体の他の場所、すなわち乳房および子宮ではエストロゲン受容体陽性細胞を最小限しか刺激しないであろう。したがって、エストリオールなどのような弱いエストロゲン活性を有する化合物は、望まれない全身性の影響をそれほど有しておらず、より強力なエストロゲンよりも著しい有利な局所効果を有し、それらを本発明の組成物の特に適した構成成分にし得る。
【0034】
本明細書において使用されるように、用語「処置する」および「処置」は、いかなる方法においても、ある状態または1つ以上の症状を治すまたはそうでなければ、ある状態または1つ以上のその症状の進行を妨害する、遅らせる、または逆転させるありとあらゆる使用を指す。したがって、用語「処置する」およびその他同種のものは、最も広い意味で考えられるべきである。たとえば、処置は、患者が完全に回復するまで処置されることを必ずしも意味するものではない。
【0035】
本発明は、慢性の外陰部および会陰部の痛みならびにそのような痛みに関連する症状および状態を処置するための組成物ならびに方法を提供する。より詳細には、エストロゲンおよび三環系抗うつ薬を含む組成物であって、組成物は、局所、経皮、または経粘膜投与用に製剤される組成物が本明細書において提供される。局所、経皮、または経粘膜投与によって、エストロゲンおよび三環系抗うつ薬の組み合わせを用いる、本明細書において記載される痛みならびに関連する症状および状態の処置のための方法もまた、本明細書において提供される。
【0036】
本発明の方法および組成物は、外陰部痛、陰部神経痛、骨盤底緊張性筋肉痛、絶え間ない尿意または直腸における異物感、尿道炎、およびこれらの状態または症状のいずれかに関連する痛みを含むが、これらに限定されない慢性の外陰部および会陰部の痛みに関連する様々な状態および症状の処置に適用可能である。外陰部痛は、局所的なまたは広汎性の外陰部痛であってもよい。状態は、たとえば、外陰前庭炎、限局性誘発性腟前庭痛(LPV)、感覚異常の外陰部痛、外陰皮膚疾患、または周期的な外陰膣炎から選択されてもよい。
【0037】
組成物中に存在するエストロゲンは、天然または合成エストロゲンであってもよい。エストロゲンは、たとえば、エストリオール、エストロン、17ベータ-エストラジオール、エストラジオール、安息香酸エストラジオール、17ベータ-シピオン酸エストラジオール、エチニルエストラジオール、メストラノール、モクセストロール、ミタトリエンジオール、リン酸ポリエストラジオール、キネストラジオール、キネストロール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。典型的に、エストロゲンは、弱いエストロゲン様の活性を示すであろう。したがって、本発明の特定の例示的な実施形態では、エストロゲンは、エストリオールである。当業者らは、エストロゲン様の活性、典型的に弱いエストロゲン様の活性を有する他の活性化合物が、代替物としてまたはそれに加えて使用されてもよいことを十分に理解するであろう。エストリオールは、胎盤および胎児肝臓によって妊娠の間に顕著に生成される、いわゆる弱いエストロゲンである。エストリオールは、アゴニストだけではなく、ベータエストロゲン受容体のアンタゴニストでもあり、より強力なヒトエストロゲンであるエストラジオールのGタンパク質共役エストロゲン受容体への結合を妨げる。エストリオールは、粘膜の組織に対して優れた刺激性の効果を有するが、核に対する有意な効果はない。したがって、エストリオールを使用すると、望まれない全身性の影響がそれほどなく、より強力なエストロゲンよりも有益な局所効果が増強される。
【0038】
組成物中に存在する三環系抗うつ薬は、たとえば、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、およびデシプラミンからなる群から選択されてもよい。本発明の特定の例示的な実施形態では、三環系抗うつ薬は、アミトリプチリンである。アミトリプチリンは、塩酸アミトリプチリンなどのように、局所、経粘膜、または経皮投与に適した任意の形態をしていてもよい。当業者らは、他の三環系抗うつ薬が、代替物としてまたはそれに加えて使用されてもよいことを十分に理解するであろう。アミトリプチリン(または等価物)は、上皮(皮膚、粘膜)に直接適用された場合、局所麻酔薬として作用し、接触に対する上皮の敏感性を低下させる。これは、分子が胃腸管を介して導入される場合に得られるものと異なる薬理学的効果である。
【0039】
エストロゲンおよび三環系抗うつ薬は、それぞれ、約0.0005%(w/w)および約20%(w/w)の間、約0.0005%(w/w)および約10%(w/w)の間の、約0.005%(w/w)および約5%(w/w)の間、約0.005%(w/w)および約3%(w/w)の間、約0.005%(w/w)および約1%(w/w)の間、または約0.005%(w/w)および約0.5%(w/w)の間の量で組成物中に存在してもよい。
【0040】
三環系抗うつ薬がアミトリプチリンである実施形態では、アミトリプチリンは、たとえば約0.05%(w/w)、0.1%(w/w)、0.2%(w/w)、0.3%(w/w)、0.4%(w/w)、0.5%(w/w)、0.6%(w/w)、0.7%(w/w)、0.8%(w/w)、0.9%(w/w)、1%(w/w)、1.1%(w/w)、1.2%(w/w)、1.3%(w/w)、1.4%(w/w)、1.5%(w/w)、1.6%(w/w)、1.7%(w/w)、1.8%(w/w)、1.9%(w/w)、2%(w/w)、2.1%(w/w)、2.2%(w/w)、2.3%(w/w)、2.4%(w/w)、2.5%(w/w)、2.6%(w/w)、2.7%(w/w)、2.8%(w/w)、2.9%(w/w)、3%(w/w)、3.2%(w/w)、3.4%(w/w)、3.6%、3.8%(w/w)、または4%(w/w)で存在してもよい。当業者は、アミトリプチリン(または他の三環系抗うつ薬)の量が、たとえば処置される対象(年齢、罹患している他の状態、全身の健康状態、および快適さなど)ならびに処置される痛みまたは状態の性質および重症度を含む様々な因子に依存して変動してもよいことを十分に理解するであろう。そのような変動は、当業者の能力の範囲内に十分にあり、過度の負担を伴うことなくなされ得る。
【0041】
エストロゲンがエストリオールである実施形態では、エストリオールは、たとえば約0.01%(w/w)、0.02%(w/w)、0.03%(w/w)、0.04%(w/w)、0.05%(w/w)、0.06%(w/w)、0.07%(w/w)、0.08%(w/w)、0.09%(w/w)、0.1%(w/w)、0.2%(w/w)、0.3%(w/w)、0.4%(w/w)、0.5%(w/w)、0.6%(w/w)、0.7%(w/w)、0.8%(w/w)、0.9%(w/w)、1%(w/w)、1.2%(w/w)、1.4%(w/w)、1.6%(w/w)、1.8%(w/w)、または2%(w/w)で存在してもよい。その代わりに、エストリオールは、たとえば、組成物の重量に基づいて約100μg/gmおよび約500μg/gmの間で存在してもよい。たとえば、エストリオールは、組成物の重量に基づいて約100μg/gm、125μg/gm、150μg/gm、175μg/gm、200μg/gm、225μg/gm、250μg/gm、275μg/gm、300μg/gm、325μg/gm、350μg/gm、375μg/gm、400μg/gm、425μg/gm、450μg/gm、475μg/gm、または500μg/gmで存在してもよい。当業者は、エストリオール(または他のエストロゲン)の量が、たとえば処置される対象(年齢、罹患している他の状態、全身の健康状態、および快適さなど)ならびに処置される痛みまたは状態の性質および重症度を含む様々な因子に依存して変動してもよいことを十分に理解するであろう。そのような変動は、当業者の能力の範囲内に十分にあり、過度の負担を伴うことなくなされ得る。
【0042】
例示的な実施形態では、本発明の組成物は、組成物の重量に基づいて約0.5%(w/w)のアミトリプチリンおよび約300μg/gmのエストリオールを含む。
【0043】
本発明の組成物は、抗炎症剤、酸化防止剤、抗紅斑活性剤、抗菌剤、精油、ハーブエキス、ビタミン、およびその他同種などのような1つ以上のさらなる薬剤または化合物をさらに含んでいてもよい。
【0044】
用いられてもよい例示的な抗炎症剤は、局所投与に適したものなどのようなステロイド性および非ステロイド性化合物を含む。適したステロイド性化合物は、プロピオン酸クロベタゾール、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ハロベタゾールプロプリオネート(halobetasol proprionate)、酢酸ジフロラゾン、フルオシノニド、ハルシノニド、アムシノニド、デスオキシメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フロ酸モメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、フルオシノロンアセトニド、吉草酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、フルランドレノロン、トリアムシノロンアセトニド、フロ酸モメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸フルチカゾン、デソニド、フルオシノロンアセトニド、吉草酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート、トリアムシノロンアセトニド、デソニド、ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、およびプレドニカルベートを含む。適した非ステロイド性抗炎症化合物は、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ジクロフェナク、イブプロフェン、ピロキシカム、ベンジダミン、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラック、ケトロラク、ジクロフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、フィロコキシブおよびリコフェロン、半合成グリコサミノグリコサン(glycosaminoglycosan)エーテル、フラバノール、フラボノイド、イソフラボン、ならびに誘導体を含む。他の適した抗炎症剤は、たとえば亜鉛クリームまたは亜鉛ローションおよびビタミンEオイル、ビタミンEクリーム、またはビタミンEローションを含む。
【0045】
酸化防止剤の例は、スルフヒドリル化合物ならびにそれらの誘導体(たとえばメタ重亜硫酸ナトリウムおよびN-アセチル-システイン)、リポ酸およびジヒドロリポ酸、リスベラトロールおよびラクトフェリンなどのような水溶性の酸化防止剤を含むが、これらに限定されない。油溶性の酸化防止剤は、ブチルヒドロキシトルエン、レチノイド、トコフェロール、カロテノイド、ユビキノン、ジメチルメトキシクロマノール、およびイソケルセチンを含むが、これらに限定されない。
【0046】
抗紅斑活性剤の例は、カモミール(Matricaria recutita)抽出物、ローマカミツレ(Anthemis nobilis)抽出物、ツボクサ(Centella asiatica)抽出物、クリスマム・マリチマム(Crithmum maritimum)抽出物、イチョウ(Gingko biloba)抽出物、セントーレア・シアネウス(Centaurea cyaneus)抽出物、およびコゴメグサ(Euphrasia)属種由来の抽出物を含むが、これらに限定されない。
【0047】
例示的な抗菌剤は、抗細菌、抗ウイルス、抗真菌、および抗原生動物化合物を含む。抗細菌化合物の例は、エリスロマイシン、スピラマイシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、およびトレチノインなどのような抗生物質を含むが、これらに限定されない。抗ウイルス化合物の例は、アシクロビル、アマンタジン、バラシクロビル、およびリマンタジンを含むが、これらに限定されない。抗真菌化合物の例は、クロルフェネシン、クリオキノール、ハロプロジン、ウンデシレン酸、トルナフタート、フルコナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、テルコナゾール、およびチオコナゾールを含むが、これらに限定されない。抗原生動物化合物の例は、抗マラリア薬、スピラマイシン、およびクリオキノールを含むが、これらに限定されない。
【0048】
精油は、組成物の軟化特性および浸透特性を増強してもよい。例示的な精油は、レモングラス油、チャノキ油、タイム油、およびラベンダー油を含むが、これらに限定されない。
【0049】
適したビタミンは、ビタミンA、プロビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB4、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンD2、ビタミンD3、トコフェロール(ビタミンE)、ビタミンF、およびビタミンK1を含むが、これらに限定されない。
【0050】
組成物は、1つ以上の薬学的に許容され得る保湿剤、皮膚軟化剤、または保存剤を含んでいてもよい。保湿剤および皮膚軟化剤の包含は、皮膚に繰り返し適用された場合に、局所組成物に対して加湿効果を提供し、それによって、膣のまわりなどのような敏感な膜に適用された場合に組成物が与えるかもしれない、いかなる乾燥の影響をも最小限にする。
【0051】
種々様々の適した皮膚軟化剤は、当業者らに知られている。たとえばthe International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,Eds.Wenninger and McEwen,The Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Assoc.,Washington,D.C.,7th Edition,1997を参照されたい。本発明に有用な皮膚軟化剤は、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、パルミチン酸ソルビタン、ラノリン、ラノリン誘導体、ポリエチレングリコール(たとえばPEG300)、アロエベラ(aloe vera)、glucamate DOE 120、アラントイン、アルギナート、スルホサクシネートのモノエステル塩、セラミド、およびその混合物を含むが、これらに限定されない。さらなる例示的なモイスチャライザーは、パルミチン酸セチル、ヒマシ油、ホホバ種子油、ブドウ種子油、ヒマワリ種子油、ベニバナ種子油、ジグリセリン、オレイン酸、ジメチコンコポリオール、デキストリン、ホホバエステル、パンテノール、スクワレン、ヤシ油、カカオバター、ハチミツ、水添レシチン、イソステアリン酸イソプロピル水添植物油、ジステアリン酸グリセリン、海洋エキソポリサッカライド、ポリフルクトール(polyfructol)、ヒアルロン酸、加水分解ヒアルロン酸、オニサルビア(Salvia sclarea)およびシトラス・アウランティアカ(Citrus aurantiaca)由来のフラボノイド、エリトリトール、タマリンド(Tamarindus indica)由来の種子抽出物、ならびにインディアン・フィグ(Opuntia ficus-indica)抽出物を含むが、これらに限定されない。
【0052】
保湿剤の例は、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、モノマーおよびオリゴマーの糖、キラヤなどのような天然抽出物、乳酸、ならびに尿素を含むが、これらに限定されない。
【0053】
保存剤の例は、ベンジルアルコールおよびパラベンを含むが、これらに限定されない。
【0054】
本発明の組成物は、局所、経皮、または経粘膜投与用に製剤されてもよい。典型的に、組成物は、局所投与用に製剤される。局所組成物に適した、適した薬学的に許容され得るキャリヤ、希釈剤、賦形剤、および補助剤は、脱イオン水または蒸留水;生理食塩水;ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、とうもろこし油、ゴマ油、落花生油、またはヤシ油などのような植物ベースの油;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、およびメチルフェニルポリソルポキサン(polysolpoxane)などのようなポリシロキサンを含むシリコーン油;揮発性シリコーン;流動パラフィン、軟パラフィン、またはスクアランなどのような鉱油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのようなセルロース誘導体;低級アルカノール、たとえばエタノールまたはイソプロパノール;低級アラルカノール(aralkanol);低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、またはグリセリン;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、またはオレイン酸エチルなどのような脂肪酸エステル;ポリビニルピリドン(polyvinylpyrridone);寒天;カラギナン;トラガカントゴムまたはアラビアゴム、ならびに石油ゼリーを含む。典型的に、キャリヤは、組成物の10重量%~99.9重量%を構成するであろう。
【0055】
本発明の組成物は、局所、経皮、または経粘膜投与に適した任意の形態をしていてもよい。たとえば、組成物は、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、パスタ、溶液、スプレー、およびその他同種のものの形態をしていてもよい。組成物は、リポソーム、ミセル、および/またはマイクロスフェアを含有するように調製されてもよい。
【0056】
当技術分野においてよく知られている軟膏は、ペトロラタムまたは他のペトロラタム誘導体を典型的にベースとする半固体調製物である。使用される特定の軟膏ベースは、当業者らによって十分に理解されるように、最適の薬剤送達をもたらし、好ましくは、加えて、他の所望される特徴、たとえば軟化またはその他同種のものをもたらすものである。適した軟膏ベースは、4つのクラスに典型的に分類される:油性ベース;乳化性ベース;エマルションベース;および水溶性ベース。油性軟膏ベースは、たとえば植物油、動物から得られる脂肪、および石油から得られる半固体炭化水素を含む。乳化性軟膏ベースは、水をほとんどまたはまったく含有せず、たとえばヒドロキシステアリンサルフェート(hydroxystearin sulfate)、脱水ラノリン、および親水ワセリンを含む。エマルション軟膏ベースは、油中水型(W/O)エマルションまたは水中油型(O/W)エマルションのいずれかであり、たとえばセチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ラノリン、およびステアリン酸を含む。水溶性軟膏ベースは、様々な分子量のポリエチレングリコールから調製される。
【0057】
当技術分野においてもよく知られているクリームは、水中油型または油中水型のいずれかの強粘液または半固体エマルションである。クリームベースは、典型的に、水洗い可能であり、油相、乳化剤、および水相を含有する。油相は、ペトロラタムおよびセチルアルコールまたはステアリルアルコールなどのような脂肪アルコールで構成されてもよい。水相は、容量の点で油相を上回ってもよく、一般に、湿潤剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は、一般に、非イオン性、アニオン、カチオン、または両性界面活性剤である。
【0058】
適した軟膏およびクリームの調製のための方法は、たとえば、当技術分野においてよく知られている多数の教科書のいずれか1つ(Remington:The Science and Practice of Pharmacyなど)を参照すると、ローション、ゲル、パスタ、溶液、スプレー、およびその他同種のものの調製のための方法のように、当業者らによく知られている。
【0059】
特定の実施形態では、組成物は、水ベースのゲルの形態をしていてもよく、ゲルは、少なくとも1つのゲル化剤、可溶剤、および水を含む。
【0060】
本発明の組成物において使用されてもよいゲル化剤は、藻抽出物、ガム、多糖、デンプン、ペクチン、加水分解タンパク質、セルロース誘導体、ならびにペンダントカルボン酸基またはそのエステルを含むポリマー、ジカルボン酸基のペンダント無水物を含むポリマー、ならびにエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドをベースとするポロキサマーを含むブロック共重合体を含むが、これらに限定されない。
【0061】
使用されてもよい藻抽出物は、アルギナートおよびカラギナンを含むが、これらに限定されない。使用されてもよいセルロース誘導体は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースを含むが、これらに限定されず、これらは、架橋されていても架橋されていなくてもよい。加水分解タンパク質は、ゼラチンを含むが、これらに限定されない。
【0062】
ペンダントカルボン酸基を含むポリマーは、アクリル酸主鎖を含むホモポリマー、コポリマー、またはインターポリマー、たとえばカルボマーであってもよい。一実施形態では、ゲル化剤は、ポリアルケニルエーテルまたはジビニルグリコールと架橋されたアクリル酸のポリマーである。代替の実施形態では、ゲル化剤は、ポリアルケニルエーテル、たとえばアリルペンタエリトリトールと架橋されたアクリル酸および長鎖アクリル酸アルキルのコポリマーである。
【0063】
本発明において使用するのに適したカルボマーは、商標Carbopol(登録商標)(Lubrizol Advanced Materials,Inc.)、Pemulen(登録商標)(Lubrizol Advanced Materials,Inc.)、Noveon(登録商標)(Lubrizol Advanced Materials,Inc.)、Synthalen(登録商標)(3V Sigma)、およびHivis Wako(登録商標)(Wako Pure Chemicals Co.)の下で市販で入手可能なものを含むが、これらに限定されない。本発明において使用されるカルボマーは、25℃で約40,000~70,000mPa.sの範囲のブルックフィールド粘度を有するカルボマーであってもよい。一実施形態では、カルボマーは、Carbopol(登録商標)980であってもよい。
【0064】
本発明において使用するのに適したエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドをベースとするブロック共重合体は、商標Pluronic(登録商標)の下で市販で入手可能なものを含む。
【0065】
組成物中に存在するゲル化剤の量は、使用されている特定のゲル化剤に依存するであろう。典型的に、組成物中に存在するゲル化剤の量は、約0.01%(w/w)および約50%(w/w)の間または約0.05%(w/w)および約40%(w/w)の間または約0.05%(w/w)および約30%(w/w)の間または約0.05%(w/w)および約20%(w/w)の間または約0.05%(w/w)および約10%(w/w)の間または約0.05%(w/w)および約5%(w/w)の間または約0.05%(w/w)および約3%(w/w)の間または約0.1%(w/w)および約2%(w/w)の間である。商標Carbopol(登録商標)の下で販売されているゲル化剤が用いられる場合、使用される量は、約0.05%(w/w)および約5%(w/w)の間の範囲にあってもよい。商標Pluronic(登録商標)の下で販売されているゲル化剤が用いられる場合、使用される量は、約1%(w/w)および約30%(w/w)の間の範囲にあってもよい。
【0066】
例示的な実施形態では、組成物は、ゲル組成物、任意選択でオルガノゲルである。ゲル組成物は、有機相および水相を含む二相系を使用して生成されてもよい。典型的に、当業者らによって理解されるように、有機相および水相のブレンドまたは混合は、剪断力が高くなるまで、オルガノゲルを産生するために必要とされてもよい。有機相対水相の比は、約1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、または5:1などのように、約1:5および約5:1の間であってもよい。例示的な実施形態では、有機相および水相の比は、約1:2であってもよい。
【0067】
一実施形態では、有機相は、レシチンおよびパルミチン酸イソプロピルの混合物を含む。有機相におけるレシチン対パルミチン酸イソプロピルの比は、約1:5および5:1の間、1:4および4:1の間、1:3~3:1の間、1:2および2:1の間、または約1:1であってもよい。一実施形態では、水相は、たとえばPluronic(登録商標)F-127などのようなポロキサマーを含む。当業者らは、一連の他のポロキサマーが、本発明の範囲から逸脱することなく使用されてもよいことを十分に理解するであろう。有機相および水相の適切な構成要素は、実験を伴うことなく、当業者らによって決定することができる。
【0068】
したがって、例示的な二相系は、Pluronic(登録商標)レシチンオルガノゲル(PLO)系である。
【0069】
例示的な実施形態では、エストリオールは、典型的に、レシチン/パルミチン酸イソプロピル混合物などのような有機相の追加に先立って、最初に溶解される(完全に溶解されるもしくは少なくとも部分的に溶解される)またはプロピレングリコールなどのような適した溶媒中に分散される。プロピレングリコール対レシチン/パルミチン酸イソプロピル混合物の比は、約1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1などのように、約1:10および約10:1の間であってもよい。例示的な実施形態では、プロピレングリコール対レシチン/パルミチン酸イソプロピル混合物の比は、約4:10であってもよい。
【0070】
そのような二相系において、典型的に、エストロゲン(より典型的には、エストロゲンはエストリオールである)は、有機相中に溶解しまたは分散し、三環系抗うつ薬(より典型的には、三環系抗うつ薬はアミトリプチリンまたは塩酸アミトリプチリンである)は、水相中に溶解する。
【0071】
したがって、エストロゲンおよび三環系抗うつ薬、任意選択で、エストリオールおよびアミトリプチリンを含む組成物を産生するための方法であって、有機相にエストロゲン、任意選択でエストリオールを組み込むステップであって、有機相が、任意選択で、レシチンおよびパルミチン酸イソプロピルの混合物を含むステップ;水相に三環系抗うつ薬、任意選択でアミトリプチリンを組み込むステップであって、水相が、任意選択で、Pluronic(登録商標)ポロキサマーなどのようなポロキサマーを含むステップ、ならびにゲル組成物を産生するために、任意選択で高い剪断力の条件下で有機相および水相を混合するステップを含む方法もまた、本明細書において提供される。
【0072】
任意選択で、組成物または二相ゲル系における少なくとも有機相は、可溶化剤をさらに含む。
【0073】
可溶剤は、ピロリドンまたはその誘導体、ヒマシ油、ポリエトキシ化ヒマシ油、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、カプリル酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、中鎖グリセリド、2-メタクリルオキシエチルホスホニルコリン、シクロデキストリンおよびその誘導体、レシチン、ポリソルベート、PEG-リン脂質、リン脂質、コレステロール-PEG、飽和ポリグリコライズド(polyglycolised)C8~C10グリセリドからなる群から選択されてもよい。例示的な一実施形態では、可溶剤は、非アルコール性可溶剤、たとえばピロリドンまたはその誘導体である。本明細書において使用されるように、非アルコール性可溶剤は、多価アルコールを含むアルコールがないまたは実質的にない薬剤を意味する。「実質的にない」は、約0.01%未満または約0.005%未満または約0.001%未満の詳述される構成成分を意味することが理解されるであろう。別の例示的な実施形態では、可溶剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルである。
【0074】
可溶剤は、約1%(w/w)および約30%(w/w)の間または約1%(w/w)および約20%(w/w)の間または約1%(w/w)および約15%(w/w)の間または約1%(w/w)および約10%(w/w)の間の量で存在してもよい。当業者らは、ルーチン的な治験および実験によって、活性薬剤を溶解するまたは実質的に可溶化するために必要とされる可溶剤の量を決定することができる。
【0075】
組成物は、約50%(w/w)および約90%(w/w)の間または約60%(w/w)および約80%(w/w)の間の量の水を含んでいてもよい。
【0076】
多数の変形および/または修飾が、広く記載されるように、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明に対してなされてもよいことが当業者らによって十分に理解されるであろう。本発明の実施形態は、そのため、すべての点において、例証であり、限定的でないものとして見なされるべきである。
【0077】
本発明は、ここで、以下の実施例に関して、例証のみの目的のために、より詳細に記載される。実施例は、本発明を例証する役割を果たすことが意図され、本明細書の全体にわたる説明の開示の一般性を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0078】
実施例1-エストリオールおよびアミトリプチリンを含む例示的な組成物
例示的な組成物は、以下の成分を含有する:
アミトリプチリン
エストリオール
ステアリン酸エチルヘキシル
乳化ろう
酢酸トコフェロール
アロエ・バーバデンシス(Aloe barbadensis)の葉汁
EDTA二ナトリウム
ソルビトール
シクロペンタシロキサン
メチルクロロイソチアゾリノン(および)メチルイソチアゾリノン
水
【0079】
アミトリプチリンおよびエストリオールは、残りの成分を含むベース製剤と混合された粉末の形態で提供されてもよい。
【0080】
実施例2-エストリオールおよびアミトリプチリンを含む高生物学的利用率ゲル組成物の調製
エストリオールは、本質的に水に不溶性であり(1リットル当たり27mg)、アルコールにわずかに可溶性であり(エタノール中10mg/ml)、ピリジンに可溶性である(50mg/ml)。アミトリプチリンHCLは、水に可溶性であるが、pHが増加するとともに溶解度は減少する(pH6.8で0.9mg/mlおよびpH1.2で1000mg/ml)。
【0081】
エストリオールおよびアミトリプチリンを含むゲル組成物を産生するために、本発明者らは、ゲル化剤としてCarbopol(登録商標)ポリマーを選択した。Carbopol(登録商標)980を追加する前に、水溶液(第1の溶液)中にエストリオールを保持するのに十分なアルコール/溶解剤ミックス(n-ブタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルを含む)にエストリオールを溶解した。第2の溶液は、pHを5.7にコントロールするために、薄いリン酸バッファー中にアミトリプチリンHCLを含有した。両方の溶液は調製に成功したが、混合した場合、ゲルは形成されなかった。カルボマー種のゲル形成は、塩分によって影響を与えられ、Carbopol(登録商標)Ultrez 21は、Carbopol(登録商標)980よりも塩に対して抵抗性である。しかしながら、この置き換えは、ゲル形成をもたらさなかった。最終的に、塩分を低下させるためにリン酸バッファーを除去し、中和するためにトリエタノールアミンを使用したが、これもまた、ゲル形成をもたらさなかった。
【0082】
Pluronic(登録商標)F-127は、第一級水酸基で終結する二官能性ブロック共重合体界面活性剤である。高濃度(20%+)では、それは、低温(約5℃)で非常に流動性であるが、約30℃まで温められると、非流動性の透明なゲルになる。アミトリプチリンがPluronic(登録商標)F-127のゲル化特性を低下させることが決定されたので、二相有機/水ゲル系、詳細にはプルロニックレシチンオルガノゲル(PLO)系が適切であるという結論を下した。PLO系は、水相としてPluronic溶液を、有機相としてレシチン/パルミチン酸イソプロピル(LIP;1:1の比)を使用する。これらの2つの相は、比較的高い剪断力下でブレンドされた場合に、オルガノゲルを産生する。
【0083】
有機相については、エストリオールを、プロピレングリコール中に溶解し/分散し(透明な溶液を産生しなかった)、次いで、LIPと混合した。プロピレングリコール対LIPの比は、4:10とした。水相については、アミトリプチリンHCLを水中に溶解し、次いで、Pluronic(登録商標)F-127を追加し、20% Pluronic溶液がもたらされた。二相は、比較的高い剪断力による混合をもたらすシリンジからシリンジへ移動させる方法を使用して混合した。有機相対水相の比は、1:2とした。これは、安定したオルガノゲルを産生し、最終濃度は300mcg/gエストリオールおよび0.5%w/wアミトリプチリンであった。安定性は、ソルビン酸カリウムの追加によって増加させてもよい。
【0084】
有機相におけるエストリオールの溶解を増加させ、それによって生物学的利用率を改善するために、溶解剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)およびプロピレングリコールの組み合わせを用いた。ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびプロピレングリコールの50/50ミックスは、エストリオールの完全溶解をもたらした。これを、次いで、LIPとブレンドし、有機相がもたらされた。水相と有機相との混合は、再び、安定したオルガノゲルをもたらした。