(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】抗PD-1抗体、その産生方法及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220106BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220106BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220106BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220106BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220106BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220106BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220106BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220106BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220106BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220106BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220106BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P31/00
A61K39/395 T
A61K39/395 U
(21)【出願番号】P 2018567611
(86)(22)【出願日】2017-07-04
(86)【国際出願番号】 RU2017050056
(87)【国際公開番号】W WO2018013017
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-06
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】516261966
【氏名又は名称】ジョイント・ストック・カンパニー “バイオキャド”
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】エキモヴァ、ヴィクトリーア ミクハイローブナ
(72)【発明者】
【氏名】コルツァーヴィン、ドミトリー ワレリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】チェルニク、ユリア セルゲーブナ
(72)【発明者】
【氏名】ネマンキン、ティモフェイ アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ソロビエフ、ワレリー ウラディミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ウラディミロヴァ、アンナ コンスタンティノーブナ
(72)【発明者】
【氏名】ブランキナ、イリーナ アンドレーブナ
(72)【発明者】
【氏名】ディデュク、セルゲイ ワシリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンチャローヴァ、オルガ ウラディミローブナ
(72)【発明者】
【氏名】エロショヴァ、アンナ ウラディミローブナ
(72)【発明者】
【氏名】ウスティウゴブ、イアコフ イウレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】アルティウコーヴァ、マリナ ウラディミローブナ
(72)【発明者】
【氏名】ウリティン、アンドレイ ボリショヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】イヴァノブ、ローマン アレクセーヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】モロゾフ、ドミトリー ヴァレンティノーヴィチ
【審査官】池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/068801(WO,A1)
【文献】In 2015, pre-clinical trial of the first Russian innovative product for treating skin melanoma will begin,BIOCAD,2014年,[online],[retrieved on 2021-03-02],Retrieved from the Internet: <https://biocad.ru/post/In-2015-pre-clinical-trial-of-the-first-Russian-innovative-product-for-treating-skin-melanoma-will-begin>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12P 21/00-21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトPD-1受容体に結合する能力を有する、抗体又はその抗原結合断片であって、
配列番号1-3のアミノ酸配列を含む重鎖、並びに、
配列番号4の軽鎖CDR1(L-CDR1)アミノ酸配列、配列番号5の軽鎖CDR2(L-CDR2)、及び、アミノ酸配列配列番号6の軽鎖CDR3(L-CDR3)アミノ酸配列、を含む軽鎖
を含む、前記抗体又はその断片
【請求項2】
重鎖が、配列番号7のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項3】
-配列番号7
のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び
-配列番号8
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
を含有することを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項4】
結合ドメインが、ヒト化されていることを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項5】
ヒトアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4のうちの1つに関連することを特徴とする、
請求項1~4のいずれかに記載の抗体又はその断片。
【請求項6】
ヒトPD-1に結合し、
配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を有する、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項7】
ヒトPD-1に結合し、
配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項8】
Fc定常部分が、天然配列と比較して、エフェクター機能ADCC、ADCP又はCDCのいずれかを減少又は消失させる任意の突然変異を含む、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項9】
Fc定常部分が、t
1/2β(時間)又はC
max(μg/ml)等の動物又はヒトの薬物動態パラメータを増加させる変異を含む、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項10】
a)凝集安定性:10mg/ml超の濃度及びT=4℃の貯蔵温度で、溶液中の凝集物含量が初期含量の5%を超える増加が6ヶ月を越える間ない;
b)凝集安定性:10mg/ml超の濃度及び37℃までの温度上昇と共に、溶液中の凝集物含量が初期含量の5%を超える増加が2週間を越える間ない;
c)凝集安定性:10mg/ml超の濃度及び50℃まで温度上昇と共に、溶液中の凝集物含量が初期含量の5%を超える増加が6時間を越える間ない;
d)ヒトPD-1に結合する場合の解離定数K
Dが10
-9(M)以下である;
e)ヒトPD-1に結合する場合の会合速度定数kon(1/Ms)が少なくとも10
5(1/Ms)である;
f)ヒトPD-1に結合する場合の解離速度定数dis(1/s)が10
-4(1/s)以下である
という特性の少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離された核酸分子。
【請求項12】
請求項11に記載の単離された核酸分子のいずれかを含む発現ベクター。
【請求項13】
請求項11に記載の
核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項12に記載の発現ベクターで好適な幹細胞をトランスフェクトするステップを含む、
請求項13に記載の宿主細胞を製造する方法。
【請求項15】
請求項13に記載の宿主細胞を産生するステップと、前記抗体又はその断片を産生するのに十分な条件下で宿主細胞を培養するステップと、前記得られた抗体又はその活性断片を単離及び精製するステップとを含む、
請求項1~10のいずれかに記載の抗体を調製する方法。
【請求項16】
1種以上の薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤又はビヒクルと組み合わせた、
請求項1~10のいずれかに記載の抗体又はその断片を含む医薬組成物。
【請求項17】
PD-1媒介性疾患又は障害の処置のための、
請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
PD-1媒介性疾患又は障害が、腫瘍学的及び感染性疾患である、
請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~10のいずれかに記載の抗体又はその断片の、PD-1媒介性疾患又は障害の処置のための医薬組成物の調製における使用。
【請求項20】
PD-1媒介性疾患又は障害が、腫瘍学的及び感染性疾患である、
請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーに関し、高親和性PD-1に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体、特にヒトモノクローナル抗体を提供する。本発明の抗体は、キメラ、ヒト化又はヒト抗体又はその抗原結合断片であってもよく、腫瘍学及び免疫腫瘍学における医薬として、並びに様々な細胞増殖又は発達障害に関連する疾患を処置するために使用され得る。本発明はまた、前記抗体を産生する方法、及び前記抗体を用いてヒト疾患を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム死1(PD-1)タンパク質は、CD28、CTLA-4、ICOS及びBTLAも含むCD28受容体ファミリーの阻害メンバーである。PD-1は、活性化されたB細胞、T細胞、及び骨髄細胞上に発現する(Agataら、上記;Okazakiら(2002)Curr.Opin.Immunol.14:391779-82;Bennetら(2003)J Immunol 170:711-8)。このファミリーの初期メンバー、CD28及びICOSは、モノクローナル抗体の添加後のT細胞増殖の増加に対する機能的効果によって検出された(Hutloffら(1999)Nature 397:263-266;Hansenら(1980)Immunogenics 10:247-260)。PD-1は、アポトーシス細胞における差次的発現についてスクリーニングすることによって検出された(Ishidaら(1992)EMBO J 11:3887-95)。このファミリーの他のメンバーであるCTLA-4及びBTLAは、それぞれ細胞傷害性Tリンパ球及びTH1細胞における差次的発現についてスクリーニングすることによって検出された。CD28、ICOS及びCTLA-4は全て、それらがホモ二量体化することを可能にする不対システイン残基を有する。対照的に、PD-1は、他のCD28ファミリーメンバーに特徴的な不対システイン残基を欠くモノマーとして存在すると考えられている。
【0003】
PD-1は、Ig遺伝子スーパーファミリーの一部である55kDaのI型膜貫通タンパク質である(Agataら(1996)Int Immunol 8:765-72)。PD-1は、膜近位免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)及び膜遠位チロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)を含む(Thomas,M.L.(1995)J Exp Med 181:1953-6;Vivier,E и Daeron,M(1997)Immunol Today 18:286-91)。PD-1は、CTLA-4と構造的に類似しているが、B7-1及びB7-2結合に重要なMYPPYモチーフを欠いている。PD-1は、PD-1に結合した後にT細胞活性化を負に調節することが示されている2つのリガンドPD-L1及びPD-L2を有することが検出されている(Freemanら(2000)J Exp Med 192:1027-34;Latchmanら(2001)Nat Immunol 2:261-8;Carterら(2002)Eur J Immunol 32:634-43)。PD-L1及びPD-L2は両方とも、PD-1に結合するがCD28ファミリーの他のメンバーには結合しないB7相同体である。
【0004】
1つのPD-1リガンドであるPD-L1は、種々のヒト癌に豊富に存在する(Dongら(2002)Nat.Med.8:787-9)。PD-1とPD-L1との間の相互作用は、腫瘍浸潤性リンパ球の数の減少、T細胞受容体媒介性増殖の減少、及び癌細胞の免疫学的監視からの脱出をもたらす(Dongら(2003)J.Mol.Med.81:281-7;Blankら(2005)Cancer Immunol.Immunother.54:307-314;Konishiら(2004)Clin.Cancer Res.10:5094-100)。PD-L1とPD-1との局所的な相互作用を阻害することによって免疫抑制を逆転させることができ、PD-L2のPD-1との相互作用がブロックされた場合にこの効果が加わる(Iwaiら(2002)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 99:12293-7;Brownら(2003)J.Immunol.170:1257-66)。
【0005】
PD-1は、CD28ファミリーの阻害メンバーであり、活性化されたB細胞、T細胞及び骨髄細胞上に発現する(Agataら、上記;Okazakiら(2002)Curr Opin Immunol 14:391779-82;Bennettら(2003)J Immunol 170:711-8)。PD-1欠損動物は、自己免疫性心疾患を含む様々な自己免疫疾患、並びに関節炎及び腎炎を含むループス様症候群を発症する傾向がある(Nishimuraら(1999)Immunity 11:141-51;Nishimuraら(2001)Science 291:319-22)。さらに、PD-1は、自己免疫性脳脊髄炎、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病(GVHD)、I型糖尿病及び関節リウマチにおいて役割を果たすことが判明した(Salamaら(2003)J Exp Med 198:71-78;Prokunina及びAlarcon-Riquelme(2004)Hum Mol Genet 13:R143;Nielsenら(2004)Lupus 13:510)。ネズミB細胞腫瘍株において、PD-1のITSMは下流のエフェクター分子のBCR媒介性Ca2+フラックス及びチロシンリン酸化をブロックするために必須であることが示された(Okazakiら(2001)PNAS 98:13866-71)。
【0006】
今日では、ニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106又はONO-4538;BMS)、ペンブロリズマブ(Merck)等のいくつかの抗PD-1抗体が存在する。
【0007】
先行技術は、ヒトPD-1に対する高親和性結合等のいくつかの有用な特性を示す、WO2006/121168(ニボルマブ、BMS)によるある特定のアミノ酸配列を含むモノクローナル抗PD-1抗体を開示しているが、これはヒトCD28、CTLA-4又はICOSとの有意な交差反応性を示さない。さらに、これらの抗体は免疫応答を調節することが示されている。したがって、本出願はまた、抗PD-1抗体を用いて免疫応答を調節するための方法を記載する。特に、本発明は、抗PD-1抗体を用いて腫瘍細胞のin vivo成長を阻害するための方法を提供する。
【0008】
先行技術はまた、第1の可変領域及び第2の可変領域を含む、WO2009/114335(ペンブロリズマブ、Merck)に記載の単離されたPD-1結合タンパク質を開示している。第1の可変領域は、様々なCDRを含む重鎖であり、第2の可変領域は、同じく様々なCDRを含む軽鎖である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、PD-1を認識する抗体及びそのような薬剤の使用方法を開発することが重要である。本発明は、PD-1に特異的に結合し、試験アッセイにおいて機能的活性、親和性、特異性及び安定性の有利な特徴を有する抗体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、PD-1に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体に関する。そのような抗体は、腫瘍学的及び感染性疾患の処置に使用することができる。本発明のモノクローナル抗体は、抗体による処置を含む、前記疾患の現在の処置方法と比較して、最良の臨床応答を提供すると考えられる。
【0011】
一態様において、本発明は、ヒトPD-1受容体に結合することができ、配列番号3の配列と少なくとも75%相同であるアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0012】
一実施形態において、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列を含む抗体又はその断片に関する。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、
-配列番号7の配列と少なくとも75%相同である重鎖可変ドメインの配列と、
-配列番号8の配列と少なくとも75%相同である軽鎖可変ドメインの配列と
を含む抗体又はその断片に関する。
【0014】
一実施形態において、本発明は、配列番号1~3のアミノ酸配列を含む抗体又はその断片に関する。
【0015】
いくつかの実施形態において、結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む結合ドメインと同じエピトープに結合するのを競合する、又は結合する。
【0016】
いくつかの実施形態において、結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%相同である。本発明の一実施形態において、結合ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列を含む。本発明の一実施形態において、結合ドメインはヒト化され得る。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4アイソタイプに関連することを特徴とする。
【0018】
いくつかの実施形態において、抗体又はその断片は、配列番号9の配列と少なくとも90%相同である重鎖配列を有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、抗体又はその断片は、配列番号10の配列と少なくとも90%相同である軽鎖配列を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、抗体又はその断片のFc定常領域は、天然配列と比較してエフェクター機能(ADCC、ADCP又はCDC)のいずれかを低減又は排除する任意の突然変異を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、抗体又はその断片のFc定常領域は、t1/2β(時間)又はCmax(μg/ml)等の動物又はヒト薬物動態パラメータを増加させる突然変異を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、
a)凝集安定性:10mg/ml超の濃度及びT=4℃の貯蔵温度で、6ヶ月超の間溶液中の凝集物含量が初期含量の5%を超えて増加しない;
b)凝集安定性:10mg/ml超の濃度及び37℃までの温度上昇と共に、2週間超の間溶液中の凝集物含量が初期含量の5%を超えて増加しない;
c)凝集安定性:10mg/ml超の濃度及び50℃まで温度上昇と共に、6時間超の間溶液中の凝集物含量が初期含量の5%を超えて増加しない;
d)ヒトPD-1に結合する場合の解離定数KDが10-9(M)以下である;
e)ヒトPD-1に結合する場合の会合速度定数kon(1/Ms)が少なくとも105(1/Ms)である;
f)ヒトPD-1に結合する場合の解離速度定数dis(1/s)が10-4(1/s)以下である
という特性の少なくとも1つを有する。
【0023】
一態様において、本発明は、上記のような抗体の任意の抗原結合断片を含む二重特異性抗体に関する。
【0024】
一態様において、本発明は、請求項1~14のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合ドメインをコードする単離された核酸分子に関する。
【0025】
一態様において、本発明は、本明細書に記載の単離された核酸分子のいずれかを含む発現ベクターに関する。
【0026】
一態様において、本発明は、本明細書に記載の任意のヌクレオチド配列を含む宿主細胞に関する。
【0027】
一態様において、本発明は、好適な幹細胞を発現ベクターでトランスフェクトするステップを含む、宿主細胞を産生するための方法に関する。
【0028】
一態様において、本発明は、宿主細胞の産生、前記抗体又はその断片を産生するのに十分な条件下での宿主細胞の培養、続いて得られた抗体又はその活性断片の単離及び精製を含む、本明細書に記載の任意の抗体の調製のための方法に関する。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明は、1種以上の薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤又は担体と組み合わせた、上述のような抗体又はその断片を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、腫瘍学的及び感染性疾患の処置のために使用されることが意図される。
【0030】
一態様において、本発明は、上述のような任意の抗体の有効量を投与するステップを含む、PD-1の生物学的活性の阻害を必要とする対象におけるPD-1の生物学的活性を阻害するための方法に関する。
【0031】
一態様において、本発明は、本明細書に記載の任意の抗体又は抗原結合断片又は医薬組成物を投与するステップを含む、処置を必要とする患者を処置するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】ヒトの未処理コンビナトリアルライブラリーの合成スキームを示す図である。
【
図2】Fabファージディスプレイライブラリーのクローニングのためのファージミド(A)及びFab産生のための発現プラスミド(B)の図である。
【
図3】還元条件下(3A、12%SDS-PAGE)、非還元条件下(3B、8%SDS-PAGE)でのBCD-100電気泳動図である。
【
図4】BCD-100とPD1及び他の抗原との相互作用の免疫酵素アッセイを示す図である。
【
図5】Jurkat-NFAT-PD1レポーター細胞株における抗PDI抗体によるNFATシグナル伝達の再活性化を示す図である。
【
図6】ブドウ球菌エンテロトキシンの存在下でのヒト全血中の抗PD1抗体によるIL-2産生の促進を示す図である。
【
図7】Jurkat-PD1細胞株に対する抗PD1抗体の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の分析を示す図である。
【
図8】Octet RED 96上のBCD-100候補とFcRn及びFcγ受容体との相互作用の分析を示す図である。
【
図9】BCD-100と異なる生物のPD1受容体との相互作用の免疫酵素アッセイを示す図である。
【
図10】BCD-100とCD28ファミリー受容体との相互作用の免疫酵素アッセイを示す図である。
【
図11】Octet RED96上のBCD-100候補とヒト及びカニクイザルPD1受容体との相互作用の分析を示す図である。
【
図12】BCD-100分子の熱ストレス(50℃、12時間)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義及び一般的方法
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施形態の実践又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。本明細書において言及される全ての刊行物及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含むこの説明が優先する。いくつかの先行技術文献が本明細書において言及されるが、そのような参考文献は、これらの文書のいずれかが当技術分野における共通する一般知識の一部を形成することの認可を構成するものではない。
【0034】
さらに、文脈によって特に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。典型的には、本明細書に記載の細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、有機合成化学、医学及び薬学化学の分類及び方法並びにタンパク質及び核酸のハイブリダイゼーション及び化学は周知であり、当業者によって広く使用されている。酵素反応及び精製方法は、当該技術分野において知られているように、又は本明細書に記載されるように、製造者の指示に従って行われる。
【0035】
本開示及び実施形態の全体にわたって、「からなる(consist)」及び「含む(comprise)」、又はそれらの変化形、例えば「からなる(consists)」又は「からなる(consisting)」、「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」等の用語は、記載された整数又は整数群を含むが、任意の他の整数又は整数群を除外しないことを意味すると理解される。
【0036】
抗体に関する定義
本明細書において使用される場合、「プログラム死1」、「プログラム可能細胞死1」、「PD-1タンパク質」、「PD-1」、「CD279」、「PDCD1」、「hPD-1」及び「hPD-I」という用語は、交換可能であり、ヒトPD-1の任意の変異体、アイソフォーム、種相同体、及びPD-1との少なくとも1つの共通エピトープを含むその類似体を指す。
【0037】
「免疫応答」、「自己免疫応答」及び「自己免疫炎症」という用語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、貪食細胞、顆粒球及び前記細胞又は肝細胞(浸潤性病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌細胞、又は自己免疫若しくは病的炎症の場合には、人体由来の正常細胞又は組織の選択的損傷、破壊又は排除の結果として産生される抗体、サイトカイン及び補体を含む)により産生される可溶性巨大分子の作用を指す。
【0038】
「結合分子」という用語は、本明細書において使用される場合、抗体、免疫グロブリン及び抗体の抗原結合断片を含む。「抗体」(Ab)又は「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において使用される場合、2つの重(H)鎖(約50~70kDa)及び2つの軽(L)鎖(約25kDa)を含む四量体を指すことが意図され、これらはジスルフィド架橋によって連結されている。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(VH)及び重鎖定常領域(CH)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。VH及びVLドメインは、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分化することができる。各VH及びVLは、3つのCDR(本明細書において使用されるH-CDRは重鎖CDRを示し、本明細書において使用されるL-CDRは軽鎖CDRを示す)及び4つのFRで構成され、これらはFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される。各領域へのアミノ酸の帰属は、IMGT(登録商標)(Lefrancら、Dev Comp Immunol 27(1):55-77(2003))による定義に従って、又はKabat、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,MD(1987及び1991));Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.196:901-917(1987);又はChothiaら、Nature 342:878-883(1989)による定義に従って行うことができる。
【0039】
本明細書において使用される場合、「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、交換可能である。
【0040】
抗体の「抗原結合部分」(又は「抗原部分」、「断片」)という用語は、本明細書において使用される場合、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の部分又は断片(例えば、PD1)を指すことを意図する。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のいくつかの断片によって行うことができることが示されている。「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例は、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなる単一ドメイン抗体*dAb)断片;並びに(vi)抗原に特異的に結合することができる単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは個々の遺伝子によってコードされているが、それらは、組換え法を用いて、それらがVL及びVH領域が対合して一価分子を形成する一本鎖タンパク質(一本鎖Fv(scFv)として知られている)として作製されることを可能にする合成リンカーによって連結され得る。本発明はまた、VH及び/又はVLを含む抗原結合分子を提供する。VHの場合、分子はまた、1つ以上のCH1、ヒンジ、CH2又はCH3領域を含み得る。そのような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図されている。二特異性抗体等の一本鎖抗体の他の形態もまた包含される。二特異性抗体は、ドメインVH及びドメインVLが同じポリペプチド鎖(VH-VL)上に発現する、小さな二価及び二特異性抗体である。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと強制的に対合され、2つの抗原結合部位を形成する。Fab及びF(ab’)2断片等の抗体領域は、従来の技術、例えば全抗体のパパイン又はペプシン加水分解を用いて全抗体から調製され得る。さらに、抗体、その一部及び免疫接着分子は、例えば本明細書に記載の標準的な組換えDNA技術を用いて調製され得る。
【0041】
「組換え抗体」という用語は、抗体をコードするヌクレオチド配列を含む細胞又は細胞株から発現される抗体を指すことを意図し、前記ヌクレオチド配列は、天然では細胞と会合しない。
【0042】
本明細書において使用される場合、「変異抗体」という用語は、親抗体の配列と比較して、1つ以上のアミノ酸残基を付加、欠失及び/又は置換することによって、その「親」抗体のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する抗体を指すことを意図する。好ましい実施形態において、変異抗体は、親抗体と比較して、アミノ酸の少なくとも1つ以上の(例えば、1~12個、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個又は9個、10個、11個又は12個、いくつかの実施形態において、変異抗体は1~約10個を含む)付加、欠失、及び/又は置換を含む。いくつかの実施形態において、そのような付加、欠失及び/又は置換は、変異抗体のCDRにおいて行われる。変異抗体の配列に関する同一性又は相同性は、本明細書において、配列を整列させ、配列同一性の最大パーセントを達成するために必要に応じてギャップを導入した後の、親抗体残基と同一である変異抗体配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。変異抗体は、親抗体が結合する同じ抗原及び好ましくはエピトープに結合する能力を保持し;いくつかの実施形態において、少なくとも1つの特性又は生物学的活性が、親抗体のそれよりも優れている。例えば、変異抗体は、親抗体と比較して、例えば、より強い結合親和性、より長い半減期、より低いIC50、又は抗原生物学的活性を阻害する向上した能力を有し得る。本明細書において特に興味深い変異抗体は、親抗体と比較して少なくとも2倍(好ましくは少なくとも5倍、10倍又は20倍)の生物学的活性の向上を示すものである。
【0043】
広義には、「キメラ抗体」という用語は、1つの抗体の1つ以上の領域、及び1つ又は複数の他の抗体の1つ以上の領域を含む抗体、典型的には部分的にヒト及び部分的に非ヒトの抗体、すなわち、マウス、ラット又は同様の害獣等の非ヒト動物、又はラマ及びアルパカ等のラクダ科動物から部分的に誘導された抗体を指すことを意図する。ヒト抗抗体免疫応答、例えばマウス抗体の場合のヒト抗マウス抗体免疫応答のリスクを低減するために、非ヒト抗体よりもキメラ抗体が一般に好ましい。典型的なキメラ抗体の例は、可変領域配列がネズミ配列であり、定常領域配列がヒトであるものである。キメラ抗体の場合、抗体をヒト化するために非ヒト部分をさらに改変に供することができる。
【0044】
「ヒト化」という用語は、抗体が、完全に又は部分的に非ヒト起源、例えばマウス若しくはラマを目的の抗原でそれぞれ免疫化することによって得られるマウス若しくはラマ抗体を有する場合、又はマウス若しくはラマのそのような抗体をベースとしたキメラ抗体である場合、ヒトの免疫応答を回避又は最小限化するために、ある特定のアミノ酸、特に重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域及び定常ドメインを置換することが可能であることを意図する。抗体は、6つの重鎖及び軽鎖CDRに位置するアミノ酸残基を主に介して標的抗原と相互作用する。この理由から、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外のものより個々の抗体間ではるかにより可変である。CDR配列はほとんどの抗体-抗原相互作用を担うため、例えば、異なる抗体からのフレームワーク配列上にグラフトされた特定の抗体からCDR配列を発現する発現ベクターを構築することにより、特定の天然に存在する抗体、又はより一般的には、前記アミノ酸配列を有する任意の特定の抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である。結果として、非ヒト抗体を「ヒト化」することが可能であり、大部分は初期抗体の結合特異性及び親和性を保存することが可能である。免疫原性、及びそれにより特定の抗体のヒト抗抗体反応を正確に予測することは不可能であるが、非ヒト抗体は典型的にはヒト抗体より免疫原性が高い。外来(例えば、害獣又はラクダ科の)定常領域がヒト起源の配列で置換されているキメラ抗体は、完全外来起源のものよりも免疫原性が一般に低いことが示されており、治療抗体の傾向はヒト化抗体又は完全ヒト抗体に向かっている。したがって、キメラ抗体又は非ヒト起源の他の抗体をヒト化して、ヒト抗抗体応答のリスクを低減させることができる。
【0045】
キメラ抗体については、ヒト化は、典型的には、可変領域配列のフレームワーク領域の修飾を含む。相補性決定領域(CDR)の一部であるアミノ酸残基は、ほとんどの場合、ヒト化によって修飾されないが、いくつかの場合において、これはCDRの個々のアミノ酸残基を修飾するために、例えば、グリコシル化部位、脱アミド化部位、アスパラギン酸異性化部位、又は望ましくないシステイン若しくはメチオニン残基を欠失させるために望ましくなり得る。N連結グリコシル化は、トリペプチド配列Asn-X-Ser又はAsn-X-Thr(式中、XはProを除く任意のアミノ酸であってもよい)におけるアスパラギン残基にオリゴ糖鎖を結合させることによって形成される。N-グリコシル化部位の除去は、Asn又はSer/Thr残基のいずれかを異なる残基によって、好ましくは保存的置換によって突然変異させることによって達成され得る。アスパラギン及びグルタミン残基の脱アミド化は、pH及び表面曝露等の要因に依存して生じ得る。アスパラギン残基は、主に配列Asn Glyに存在する場合には脱アミド化されやすく、Asn-Ala等の他のジペプチド配列では脱アミド化されにくい。CDR配列がそのような脱アミド化部位、特にAsn-Glyを含む場合、典型的には保存的置換によりこの部位を除去して、関与する残基の1つを欠失させることが望ましい。
【0046】
抗体配列をヒト化するための多くの方法が当技術分野において知られており、例えば、Almagro&Fransson、Front Biosci.13:1619-1633(2008)の総説を参照されたい。1つの一般的に使用される方法は、例えばマウスキメラ抗体がネズミ可変領域遺伝子に対するヒト生殖系列遺伝子対応物の同定及びこのフレームワークへのネズミCDR配列のグラフトを含む場合、CDRグラフトである。CDRグラフトは、KabatによるCDRの定義に基づいてもよいが、最終版(Magdelaine-Beuzelinら、Crit Rev.Oncol Hematol.64:210 225(2007))は、IMGT(登録商標)(国際ImMunoGeneTics情報システム(登録商標)、www.imgt.org)の定義が、ヒト化の結果を改善し得ることを示唆している(Lefrancら、Dev.Comp Immunol.27:55-77(2003)を参照されたい)。いくつかの場合において、CDRグラフトは、CDRが得られた親抗体と比較して、CDRグラフト非ヒト抗体の結合特異性及び親和性、ひいては生物活性を低減させる可能性がある。復帰突然変異(時折「フレームワーク領域修復」と呼ばれる)が、親抗体の結合特異性及び親和性を回復させるために、典型的にはフレームワーク領域内中のCDRグラフト抗体の選択された位置に導入されてもよい。可能性のある復帰突然変異の位置の同定は、文献及び抗体データベースで入手可能な情報を使用して行うことができる。復帰突然変異の候補であるアミノ酸残基は、典型的には抗体分子の表面に位置するものであるが、埋め込まれているか又は表面曝露の程度が低い残基は通常は変化しない。CDRグラフト及び復帰突然変異に代わる代替のヒト化技術は、非ヒト起源の非表面曝露残基が保持される一方で、表面残基はヒト残基に変更される再表面化である。
【0047】
ある特定の場合において、標的エピトープへの結合親和性を改善するために、1つ以上のCDRアミノ酸残基を変更することも望ましくなり得る。これは「親和性成熟」として知られており、例えば抗体のヒト化が結合特異性又は親和性の低減をもたらし、復帰突然変異のみにより結合特異性又は親和性を十分に改善することができない状況では、ヒト化に関連して任意選択で実行され得る。様々な親和性成熟方法、例えば、Burksら、Proc Natl Acad Sci USA、94:412-417(1997)により説明されているin vitro走査飽和突然変異誘発法、及びWuら、Proc Natl Acad Sci USA 95:6037 6042(1998)による段階的in vitro親和性成熟方法が、当技術分野において知られている。
【0048】
「単離されたタンパク質」、「単離されたポリペプチド」又は「単離された抗体」という用語は、その誘導化の由来又は起源により、(1)その天然状態において付随する天然に会合する構成成分に関連しない、(2)同じ種に由来する他のタンパク質を含まない、(3)異なる種からの細胞によって発現されている、又は(4)自然界に存在しないタンパク質、ポリペプチド又は抗体を意味する。したがって、化学的に合成された、又は天然に由来する細胞とは異なる細胞系において合成されたポリペプチドは、その天然に会合する構成成分から「単離される」。タンパク質はまた、当技術分野において周知のタンパク質精製技術を用いて、単離により天然に会合した構成成分を実質的に含まなくてもよい。
【0049】
本明細書において使用される場合、「胚芽」という用語は、抗体遺伝子及び遺伝子セグメントのヌクレオチド及びアミノ酸配列、並びにこれらが親から胚芽細胞を介して子孫にどのように伝達されるかを指すことを意図する。生殖系列配列は、B細胞の成熟中の組換え及びスーパーミューテーション(supermutation)の結果として変化した成熟B細胞における抗体をコードするヌクレオチド配列とは異なる。特定の生殖系列配列を「利用する」抗体は、任意の他の生殖系列ヌクレオチド又はアミノ酸配列よりも完全に対応する生殖系列ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列に整列したヌクレオチド及びアミノ酸配列を有する。
【0050】
「親和性」という用語は、抗原と結合分子、例えば抗体との間の引力の尺度を指すことを意図する。抗原に対する結合分子を引き付ける固有の能力は、典型的には、特定の結合分子-抗原相互作用の結合親和性平衡定数(KD)として表される。結合分子は、KDが<1mM、好ましくは<100nMである場合に抗原に特異的に結合すると言われる。KD結合親和定数は、例えば表面プラズモン共鳴(BIAcore(商標))又は生体層干渉法によって、例えばProteOn(商標)XPR36 SPR(Bio-Rad)又はOctet(商標)システムを使用して測定することができる。
【0051】
本明細書において使用される「Ka」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すことを意図するが、「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことを意図する。本明細書において使用される用語「Kd」は、解離定数を指し、Kd対Kaの比(すなわちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。抗体のKd値は、当技術分野において十分に確立された方法を用いて決定することができる。
【0052】
抗体のKdを決定するための好ましい方法は、BIAcore(商標)システム等のバイオセンサシステムを使用する表面プラズモン共鳴である。
【0053】
本明細書において使用される場合、IgG抗体に対する「高親和性」という用語は、標的抗原についてKdが10-8M、より好ましくは10-9M以下、さらにより好ましくは10-10M以下である抗体を指すことを意図する。しかしながら、「高親和性」結合は、他の抗原アイソタイプに対して変動し得る。例えば、IgMアイソタイプに対する「高親和性」結合は、KDが10-7M以下、より好ましくは10-8M以下、さらにより好ましくは10-9M以下である抗体を指すことを意図する。
【0054】
「koff」という用語は、本明細書において使用される場合、特定の結合分子-抗原相互作用の解離速度定数を指すことを意図する。解離速度定数(koff+)は、生体層干渉法を用いて、例えばOctet(商標)システムを用いて測定することができる。
【0055】
「エピトープ」という用語は、本明細書において使用される場合、結合分子(例えば、二重特異性結合分子等の抗体又は関連分子)に特異的に結合する抗原の一部(決定因子)を指すことを意図する。エピトープ決定因子は、通常、アミノ酸又は炭水化物又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面群からなり、典型的には特異的な三次元構造特性及び特異的な電荷特性を含む。エピトープは「線状」又は「立体配座」のいずれであってもよい。線状エピトープでは、タンパク質(例えば、抗原)と相互作用分子(抗体等)との間の相互作用点の全てが、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線的に生じる。立体配座エピトープでは、相互作用点は、一次アミノ酸配列において互いに分離されたタンパク質上のアミノ酸残基にわたって生じる。抗原の所望のエピトープが決定されると、当技術分野において周知の技術を用いてそのエピトープに対する抗体を生成することが可能である。さらに、抗体又は他の結合分子の生成及び特徴付けは、所望のエピトープに関する情報を解明し得る。この情報から、例えば抗原への結合について互いに競合する結合分子を見出すための競合試験を行うことによって、同様又は同一のエピトープへの結合について抗体を競合的にスクリーニングすることが可能である。本明細書において使用される場合、「エピトープ」という用語は、中でも、動物、好ましくはマウス及びヒト等の哺乳動物において抗原性及び/又は免疫原性活性を有するポリペプチド断片を指す。「抗原性エピトープ」という用語は、本明細書において使用される場合、抗体に特異的に結合することができるポリペプチド断片であり、例えば標準的なイムノアッセイ等の先行技術から周知の任意の技術によって検出することができる。抗原エピトープは必ずしも免疫原性ではないが、それらは免疫原性であり得る。「免疫原性エピトープ」は、本明細書において使用される場合、先行技術から公知の任意の方法によって決定されるように、動物において抗体応答を引き起こすポリペプチド断片として定義される。「非線状エピトープ」又は「立体配座エピトープ」は、エピトープ特異的抗体に結合する抗原タンパク質内の隣接しないポリペプチド(又はアミノ酸)を含む。
【0056】
当技術分野において知られている方法を用いて、抗体又は他の結合分子が同じエピトープに結合するか、又は本発明のPD-1結合分子との結合について交差競合するかどうかを決定することができる。一実施形態において、本発明の分子を飽和条件下でPD-1に結合させ、次いで試験抗体が前記標的抗原に結合する能力が測定される。試験抗体が参照結合分子と同時に標的抗原に結合することができる場合、試験抗体は参照結合分子のものとは異なるエピトープに結合する。しかしながら、試験抗体が標的抗原に同時に結合できない場合、試験抗体は、同じエピトープ、重複エピトープ、又は結合分子に結合したエピトープに極めて近接しているエピトープに結合する。この実験は、ELISA、RIA、BIACORE(商標)、生体層干渉法又はフローサイトメトリーを用いて行うことができる。本発明の結合分子が別の結合分子と交差競合するかどうかを試験するために、上述の競合方法を2つの方向で使用することができ、すなわち既知の結合分子が試験結合分子をブロックするか、及びその逆を決定することができる。そのような交差競合実験は、例えば、IBIS MX96 SPR又はOctet(商標)システムを用いて行うことができる。
【0057】
一実施形態において、本発明の結合分子は、モノクローナル抗体である。本明細書において使用される場合、頭字語「mAb」は、モノクローナル抗体、すなわち細胞の別個のクローン集団によって合成及び単離された抗体を指すことを意図している。クローン集団は、不死化細胞のクローン集団であってもよい。いくつかの実施形態において、クローン集団内の不死化細胞は、典型的には、免疫化動物由来の個々のBリンパ球とリンパ球腫瘍由来の個々の細胞との融合によって産生されるハイブリッド細胞ハイブリドーマである。ハイブリドーマは、構築された細胞の一種であり、自然界には存在しない。
【0058】
抗体のクラス(アイソタイプ)及びサブクラスは、当技術分野において知られている任意の方法によって決定することができる。一般に、抗体のクラス及びサブクラスは、抗体のある特定のクラス及びサブクラスに特異的な抗体によって決定することができる。そのような抗体は市販されている。クラス及びサブクラスは、ELISA、ウェスタンブロット分析及び他の方法を使用して決定することができる。別の実施形態において、クラス及びサブクラスは、抗体の重鎖及び/又は軽鎖定常ドメインの全て又は一部を配列決定し、そのアミノ酸配列を免疫グロブリンの様々なクラス及びサブクラスの既知のアミノ酸配列と比較し、抗体のクラス及びサブクラスを決定することにより決定され得る。
【0059】
「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、本明細書において使用される場合、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定の抗原エピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0060】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、フレームワーク及びCDRの両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を含む抗体を含むことを意図する。さらに、前記抗体が定常領域を含む場合、定常領域もまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。
【0061】
本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、ランダム又は部位特異的in vitro突然変異誘発、又はin vivo体細胞突然変異によって導入された突然変異)によってコードされていないアミノ酸残基を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含むことを意図しない。
【0062】
「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、フレームワーク及びCDRの両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を指すことを意図する。一実施形態において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合されたヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0063】
「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、組換え手段によって調製、発現、設計又は単離される全てのヒト抗体、例えば(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子又はそれから調製されたハイブリドーマのトランスジェニック又はトランスクロモソームである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(以下でより詳細に説明される)、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、設計又は単離された抗体等を含む。そのような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域及びCDRがヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態において、そのような組換えヒト抗体は、in vitro突然変異誘発(又は、Ig配列のトランスジェニック動物が使用される場合は体細胞突然変異誘発)に供されてもよく、したがって、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系のVH及びVL配列に由来するか又はそれに関連するが、in vivoのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しなくてもよい配列である。
【0064】
「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書において、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と交換可能に用いられる。
【0065】
抗体「変異体」という用語は、本明細書において使用される場合、そのアミノ酸配列が、親抗体の配列中の1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失及び/又は置換により親配列と異なる分子を指すことを意図する。好ましい実施形態において、変異抗体は、親抗体のCDRにおける少なくとも1個(例えば、1~約10個、好ましくは2、3、4、5、6、7又は8個)のアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換を含む。本出願は、変異抗体の配列に関する同一性又は相同性を、配列を整列させた後、及び必要に応じて最大パーセンテージの同一配列を達成するための切断後の、親抗体中の残基と同一である変異抗体配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義する。変異抗体は、親抗体が結合するものと同じ抗原若しくは好ましくはエピトープに結合する能力を保持するか、又は、好ましくは、親抗体の特性又は生物学的活性を超える少なくとも1つの特性又は生物学的活性を示す。例えば、抗体は、好ましくは、親抗体と比較して、より強い親和性、より長い半減期、より低いIC50又は抗原生物学的活性を阻害する向上した能力を有する。本明細書において特に興味深い変異抗体は、親抗体と比較して少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約5倍、10倍又は20倍の生物学的活性の向上を示すものである。
【0066】
核酸配列の文脈における「同一性」又は「相同性」という用語は、最大限の対応のために整列された場合に同じである2つの配列中の残基を指すことを意図する。配列同一性の比較は、少なくとも約9ヌクレオチド、一般的には少なくとも約18ヌクレオチド、より一般的には少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36、48又はそれを超えるヌクレオチドにわたってもよい。ヌクレオチド配列同一性を測定するために用いることができる当技術分野において知られている多くの様々なアルゴリズムが存在する。例えば、Wisconsin Package Version 10.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WisconsinのプログラムであるFASTA、Gap又はBESTFITを用いてポリヌクレオチド配列を比較することができる。例えばFASTA2及びFASTA3プログラムを含むFASTAは、クエリー配列と検索配列との間の最良重複領域の整列及びパーセント配列同一性を提供する(Pearson、Methods Enzymol.183:63 98(1990);Pearson、Methods Mol.Biol.132:185-219(2000);Pearson、Methods Enzymol.266:227-258(1996);Pearson、J.Mol.Biol.276:71-84(1998))。別段に指定されない限り、特定のプログラム又はアルゴリズムの初期パラメータが使用される。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、初期パラメータ(ワードサイズ6及びスコアリングマトリックスのNOPAM因子)によりFASTAを用いて、又はGCG Version 6.1で提供される初期パラメータによりGapを用いて決定することができる。
【0067】
抗体のポリペプチド配列に関する「相同」という用語は、ポリペプチド配列に対して少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%の配列同一性を示す抗体として解釈されるべきである。核酸配列に関する用語は、核酸配列に対して少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは97%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列として解釈されるべきである。
【0068】
本明細書において使用される場合、「親」抗体は、変異体を得るために使用されるアミノ酸配列によってコードされる抗体である。
【0069】
本発明の抗体は、様々な供給源から得られたDNAのシャッフリングを含む組換え法の使用を含む、様々な設計技術によって調製することができる。
【0070】
「ヒト化抗体」という用語は、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフトされている抗体を指すことを意図する。そのようなヒトフレームワーク配列内に、さらなるフレームワーク領域修飾が行われてもよい。
【0071】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば可変領域配列がネズミ抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を指すことを意図する。
【0072】
「特異的に結合する」という用語は、本明細書において使用される場合、特異的結合対の1つのメンバーがその特異的結合パートナー以外の分子に有意に結合しない状況を指すことを意図する。この用語はまた、例えば、本発明の抗体の抗原結合ドメインがいくつかの抗原によって保持される特定のエピトープに特異的である場合にも適用可能であり、この場合、抗原結合ドメインを含む特異的抗体は、エピトープを保持する種々の抗原に特異的に結合することができる。
【0073】
本明細書中において使用される場合、「ヒトPD-1に特異的に結合する」抗体は、1×10-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、より好ましくは1×10-8M以下、より好ましくは5×10-9M以下のKDでヒトPD-1に結合する抗体を指すことを意図する。
【0074】
「二重特異性抗体」又は「多重特異性抗体」という用語は、2つ以上のエピトープに選択的に結合することができる抗体を含む。二重特異性抗体は、例えば、2つの異なる抗原結合部分を含むことができ、前記抗原結合部分は、異なる分子(例えば抗原)上又は同じ分子上(例えば同じ抗原上)の異なるエピトープに特異的に結合する。二重特異性抗体が2つの異なるエピトープ(第1のエピトープ及び第2のエピトープ)に選択的に結合することができる場合、第1のエピトープに対する第1の抗原結合部分の親和性は、典型的には、第2のエピトープに対する第1の抗原結合部分の親和性よりも少なくとも1~2又は3又は4桁低く、その逆もまた成り立つ。二重特異性抗体によって認識されるエピトープは、同じ又は異なる標的(例えば、同じ又は異なるタンパク質上)であってもよい。二重特異性抗体は、例えば、同じ抗原上の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって調製することができる。例えば、異なるエピトープを認識する可変重鎖配列をコードする核酸配列は、種々の重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合され得、そのような配列は、免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞において発現され得る。典型的な二重特異性抗体は、それぞれ3つの重鎖CDRに続いて(N末端からC末端へ)CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む2つの重鎖、並びに、抗原結合特異性を有さないが重鎖のそれぞれと結合することができる、又は重鎖のそれぞれと結合し、抗原結合重鎖領域によって制限される1つ若しくは複数のエピトープに結合することができる、又は重鎖のそれぞれと結合することができ、一方若しくは両方の重鎖の一方若しくは両方のエピトープへの結合を促進する、免疫グロブリン軽鎖を含む。
【0075】
本発明の抗体に関連する「生物学的特性」又は「生物活性」、「活性」若しくは「生物学的活性」という語句は、本明細書において交換可能に使用され、これらに限定されないが、エピトープ/抗原親和性及び特異性、in vivo又はin vitroでPD-1の活性を中和又はそれに拮抗する能力、IC50、抗体の安定性及びin vivoでの抗体の免疫原性特性を含む。抗体の他の識別可能な生物学的特性は、例えば、交差反応性(すなわち、標的ペプチドの非ヒト相同体、又は一般的には他のタンパク質若しくは組織との)、及び哺乳動物細胞内のタンパク質の高レベル発現を保存する能力を含む。ELISA、競合ELISA、BIACORE若しくはKINEXAを用いた表面プラズモン共鳴による抗原-抗体相互作用、又はForteBioを用いた生体層干渉法、ヒト、霊長類又は任意の他の源を含む様々な源由来の組織切片のサイトカイン若しくは成長因子の受容体結合、産生及び/若しくは分泌、シグナル伝達及び免疫組織化学を含むがこれらに限定されない、in vitro若しくはin vivo中和アッセイを含むがこれらに限定されない、当技術分野において認識されている技術を用いて、観察、測定又は評価され得る。
【0076】
本発明の抗体の活性に関して本明細書において使用される「阻害する」又は「中和する」という用語は、生物学的活性(例えばPD-1の活性)若しくは特性、疾患又は状態を含むがこれに限定されない阻害されているものの進行又は重症度に対して、実質的に拮抗する、阻害する、予防する、抑制する、遅くする、崩壊させる、排除する、停止させる、低減する又は逆転させる能力を指すことを意図する。PD-1に対する本発明の抗体の結合に起因するPD-1の活性の阻害又は中和は、好ましくは、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上である。
【0077】
PD-1結合分子
本発明は、配列番号3の配列と少なくとも75%相同である、例えば配列番号3の配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含有するヒトPD-1受容体に結合する能力を有する結合分子に関する。
【0078】
いくつかの実施形態において、抗PD1抗体の重鎖(HC)は、配列番号1の配列と少なくとも60%同一であり、例えば、配列番号2の配列に対して少なくとも60%、70%又は80%同一である。いくつかの実施形態において、抗PD1抗体の重鎖(HC)は、配列番号7の配列と少なくとも90%同一であり、例えば、配列番号7の配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。特定の実施形態において、HCは、配列番号5のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0079】
いくつかの実施形態において、抗PD1抗体の軽鎖は、配列番号4の軽鎖CDR1(L-CDR1)アミノ酸配列、配列番号5の軽鎖CDR2(L-CDR2)アミノ酸配列、配列番号6の軽鎖CDR3(L-CDR3)アミノ酸配列、又はそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態において、PD1抗体の軽鎖は、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に示されるアミノ酸配列L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む。いくつかの実施形態において、抗PD1抗体の軽鎖は、配列番号8の配列と少なくとも60%同一である、例えば配列番号8の配列と少なくとも60%、70%又は80%同一である軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの実施形態において、抗PD1抗体の軽鎖は、配列番号8の配列と少なくとも90%同一である、例えば配列番号8の配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。特定の実施形態において、VLドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0080】
いくつかの実施形態において、抗PD1抗体の軽鎖(LC)は、配列番号10の配列と少なくとも60%同一であり、例えば配列番号10の配列と少なくとも60%、70%、又は80%同一である。いくつかの実施形態において、PD1抗体の軽鎖(LC)は、配列番号10の配列と少なくとも90%同一であり、例えば、配列番号10の配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96% 97%、98%、又は99%同一である。特定の実施形態において、VLドメインは、配列番号10のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0081】
本明細書に記載の技術を使用して得られた結合分子のクラスは、別のクラス又はサブクラスと交換することができる。本発明の一態様において、VL又はVHをコードする核酸分子は、CL又はCHをコードする核酸配列を含まないように当技術分野において周知の方法を用いて単離される。VL又はVHをコードする核酸分子は、異なるクラスの免疫グロブリン分子由来のCL又はCHをそれぞれコードする核酸配列に作用可能に連結された。これは、上述のように、CL又はCH鎖を含むベクター又は核酸分子を使用して達成され得る。例えば、もともとIgMであった結合分子はIgGにクラススイッチされてもよい。さらに、1つのIgGサブクラスを別のサブクラスに、例えばIgG1からIgG2に変換するためにクラススイッチを使用することができる。所望のアイソタイプを有する本発明の結合分子を産生するための例示的な方法は、結合分子の重鎖をコードする核酸分子及び結合分子の軽鎖をコードする核酸分子を単離するステップと、重鎖の可変ドメインを得るステップと、重鎖の可変ドメインを所望のアイソタイプの重鎖の定常ドメインとライゲーションするステップと、軽鎖及びライゲーションされた重鎖を細胞中で発現させるステップと、所望のアイソタイプを有する結合分子を得るステップとを含む。
【0082】
本発明の結合分子は、IgG、IgM、IgE、IgA、又はIgD分子であってもよく、典型的にはIgGアイソタイプ、例えばlgGサブクラスのIgG1、lgG2a若しくはb、IgG3、又はIgG4である。一実施形態において、結合分子は、lgGサブクラスのIgG1抗体である。
【0083】
一実施形態において、結合分子は、Fc領域に少なくとも1つの突然変異を含み得る。いくつかの様々なFc突然変異が知られており、これらの突然変異は改変されたエフェクター機能を提供する。例えば、多くの場合、エフェクター機能、例えばリガンド-受容体相互作用が望ましくない場合、又は抗体-薬物複合体の場合には、エフェクター機能を低下又は排除することが望ましいであろう。エフェクター機能を低下させるために有利に突然変異させることができるアミノ酸Fc領域の位置は、228位、233位、234位及び235位の1つ以上を含み、アミノ酸位置はKabat番号付けスキームに従って番号付けされている。いくつかの実施形態において、結合分子は、突然変異のない同じ結合分子と比較して、ADCC及び/又はCDCを低減する少なくとも1つの突然変異のFc領域を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明の結合分子は、抗体又は抗体部分と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有結合又は非共有結合によって形成されるより大きな免疫接着分子の一部であってもよい。そのような免疫接着分子の例は、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanovら、Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101(1995))、並びに二価及びビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanovら、Mol.Immunol.31:1047-1058(1994))を含む。他の例は、抗体由来の1つ以上のCDRが、共有結合又は非共有結合のいずれかで分子内に組み込まれて目的の抗原に特異的に結合するイムノアドヘシンを生成する場合を含む。そのような実施形態において、CDRは、より大きなポリペプチド鎖の一部として組み込まれてもよく、別のポリペプチド鎖に共有結合されてもよく、又は非共有結合的に組み込まれてもよい。
【0085】
さらなる実施形態において、別のポリペプチドに連結された本発明の結合分子の全部又は一部を含む融合抗体又はイムノアドヘシンを生成することができる。いくつかの実施形態において、結合分子の可変領域のみがポリペプチドに連結される。いくつかの実施形態において、結合分子のVHドメインは、第1のポリペプチドに連結され、一方、結合分子のVLドメインは、VH及びVLドメインが互いに相互作用して抗原結合部位を形成し得る様式で第1のポリペプチドと会合する第2のポリペプチドに連結される。別の好ましい実施形態において、VH及びVLドメインが互いに相互作用し得るように、VHドメインがリンカーによってVLドメインから分離される(例えば、一本鎖抗体)。VH-リンカー-VL抗体は、次いで、目的のポリペプチドに連結される。さらに、2つ(又はそれ以上)の一本鎖抗体が互いに連結された融合抗体が作製され得る。これは、単一のポリペプチド鎖上に二価又は多価抗体を設計したい場合、又は多重特異性抗体を設計したい場合に有用である。
【0086】
一本鎖抗体(scFv)を設計するために、VH-及びVLをコードするDNA断片は、VH及びVL配列が柔軟なリンカーによって連結されたVL及びVHドメインを有する連続した一本鎖タンパク質として発現され得るように、柔軟なリンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別の断片に作用可能に連結される。例えば、Birdら、Science 242:423 426(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879 5883(1988);及びMcCaffertyら、Nature 348:552 554(1990)を参照されたい。一本鎖抗体は、単一のVH及びVLドメインのみが使用される場合は一価であってもよく、2つのVH及びVLドメインが使用される場合は二価であってもよく、3つ以上のVH及びVLドメインが使用される場合、多価であってもよい。
【0087】
本発明の結合分子は、別の分子(例えば、別のペプチド又はタンパク質)に誘導体化又は連結され得る。一般に、結合分子(例えば抗体又はその抗原結合部分)は、誘導体化又は標識化によってPD-1結合が有害に影響されないように誘導体化される。したがって、本発明の結合分子は、本明細書に記載の無傷形態及び修飾形態の結合分子の両方を含み得る。例えば、本発明の結合分子は、(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合又は他の方法により)1つ以上の分子実体、例えば別の抗体、検出剤、医薬品、及び/又は結合分子と別の分子(例えば、ストレプトアビジンコア領域若しくはポリヒスチジンタグ)との会合を媒介し得るタンパク質若しくはペプチドに機能的に連結され得る。
【0088】
誘導体化された結合分子の1つの種類は、2つ以上の抗体(同じ種類又は異なる種類の、例えば二重特異性抗体の設計のための)を架橋することによって産生される。好適な架橋剤は、好適なスペーサーにより分離された2つの異なる反応基を有するヘテロ二官能性(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、又はホモ二官能性(例えばジスクシンイミジルスベレート)であるものを含む。
【0089】
本発明の結合分子はまた、ポリエチレングリコール(PEG)、メチル若しくはエチル基、又は炭水化物基等の化学基で誘導体化されてもよい。これらの基は、例えば、血清半減期を増加させるために、結合分子の生物学的特性を改善するために有用となり得る。
【0090】
また、本発明の結合分子は、標識化されてもよい。本明細書において使用される場合、「標識」又は「標識された」という用語は、結合分子内への別の分子の取り込みを指す。一実施形態において、標識は、検出可能なマーカー、例えば、放射性アミノ酸の取り込み又はポリペプチドへのビオチニル断片の結合であり、そのような断片は、標識されたアビジン(例えば、光学的又は比色分析技術によって検出され得る蛍光マーカー又は酵素活性を含むストレプトアビジン)により検出され得る。さらなる実施形態において、標識又はマーカーは、治療薬、例えば薬物コンジュゲート又は毒素であってもよい。ポリペプチド及び糖タンパク質を標識化する様々な方法が当技術分野において知られ、使用され得る。ポリペプチドに対する標識の例は、中でも、放射性同位体又は放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、磁性薬剤、例えばガドリニウムキレート、毒素、例えば百日咳毒素、タキソール、サイトカラシン、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン並びにそれらの類似体又は相同体を含む。いくつかの実施形態において、標識は、潜在的な立体障害を低減するために、様々な長さのスペーサーアームによって付着される。
【0091】
特定の実施形態において、本発明の結合分子は、中性形態(両性イオン形態を含む)又は正若しくは負に帯電した種として存在し得る。いくつかの実施形態において、抗体は、対イオンと複合体化して、薬学的に許容され得る塩を形成し得る。
【0092】
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、1つ以上の結合分子及び1つ以上の対イオンを含む複合体を指すことを意図しており、対イオンは薬学的に許容され得る無機及び有機酸及び塩基から得られる。
【0093】
薬学的に許容され得る無機塩基は、金属イオン、中でも、好適なアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及び許容され得る金属の他の生理学的イオンを含む。無機塩基から得られる塩は、その典型的な価数での、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、コバルト、ニッケル、モリブデン、バナジウム、マンガン、クロム、セレン、スズ、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、カリウム、ルビジウム、ナトリウム及び亜鉛塩を含む。
【0094】
本発明の結合分子の薬学的に許容され得る酸付加塩は、中でも、ギ酸、酢酸、アセトアミド安息香酸、アジピン酸、アスコルビン酸、ホウ酸、プロピオン酸、安息香酸、ショウノウ酸、炭酸、シクラミン酸、デヒドロコール酸、マロン酸、エデト酸(エチレンジアミン四酢酸)、エチル硫酸、フェンジゾイック(fendizoic)酸、メタリン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、タンニン酸、クエン酸、硝酸、グルクロン酸、マレイン酸、葉酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リシン、イソクエン酸、トリフルオロ酢酸、パモ酸、アントラニル酸、メシル酸、オロト酸、シュウ酸、オキサル酢酸、オレイン酸、ステアリン酸、サリチル酸、アミノサリチル酸、シリケート、p-ヒドロキシ安息香酸、ニコチン酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、アンモニウム、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、硫酸、硝酸、亜硝酸、硫酸モノメチルエステル、シクロヘキシルアミノスルホン酸、β-ヒドロキシ酪酸、グリシン、グリシルグリシン、カコジル酸、ジアミノヘキサン酸、カンファースルホン酸、チオシアン酸、オキソグルタル酸、ピリドキサール5-ホスファート、クロロフェノキシ酢酸、ウンデカン酸、N-アセチル-L-アスパラギン酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸を含む酸から調製され得る。
【0095】
薬学的に許容され得る有機塩基は、トリメチルアミン、ジエチルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジベンジルアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、プロカイン、環状アミン、四級アンモニウムカチオン、アルギニン、ベタイン、カフェイン、クレミゾール、2-エチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタンジアミン、ブチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、エチルグルカミン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イミダゾール、イソプロピルアミン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピリジン、ピリドキシン、ネオジム、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、メチルアミン、タウリン、コレート、6-アミノ-2-メチル-2-ヘプタノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸、ストロンチウム、トリシン、ヒドラジン、フェニルシクロヘキシルアミン、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-トリス(ヒドロキシメチル)メタン、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸、1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン、4-モルホリンプロパンスルホン酸、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸、2-[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、4-(N-モルホリノ)ブタンスルホン酸、3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)二水和物、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、N-(2-ヒドロキシエチルピペラジン(hydroxyethyppiperazine)-N’-(4-ブタンスルホン酸)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホン酸、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-4-アミノブタンスルホン酸、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸、4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、並びにトロメタモールを含む。
【0096】
核酸分子及びベクター
本発明はまた、核酸分子、及び本明細書に記載の本発明の結合分子をコードする配列に関する。いくつかの実施形態において、様々な核酸分子が、結合分子のアミノ酸配列の第1のドメイン及び第2のドメインをコードする。第1のドメイン及び/又は第2のドメインが重鎖及び軽鎖を含むいくつかの実施形態において、様々な核酸が、重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をコードする。他の実施形態において、同じ核酸分子が、重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をコードする。ある特定の実施形態において、核酸分子は、第1及び第2ドメインのアミノ酸配列(例えば重鎖及び軽鎖配列)の任意の組合せをコードし得る。特定の実施形態において、核酸分子は、第1の結合ドメインのアミノ酸配列及び第2の結合ドメインの軽鎖アミノ酸配列をコードすることができ、任意選択でそれらを接続するペプチドリンカーの任意の配列を含む。
【0097】
ヌクレオチド配列への言及は、他に特定しない限り、その相補物を包含する。したがって、特定の配列を有する核酸への言及は、その相補的鎖及びその相補的配列を包含するものとして理解されるべきである。「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において使用される場合、少なくとも10塩基長のヌクレオチドのいずれかのポリマー形態、又はリボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチド、又はヌクレオチドのいずれかの種類の修飾形態を意味する。この用語は、一本鎖及び二本鎖の形態を含む。
【0098】
本発明はまた、前記ヌクレオチド配列又は配列番号1~10からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の1つ以上と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%同一であるヌクレオチド配列に関する。ある特定の実施形態において、ヌクレオチド配列は、配列番号4~9からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。核酸配列の文脈における「パーセント配列同一性」という用語は、最大限の対応のために整列された場合に同じである2つの配列における残基を指すことを意図する。配列同一性の比較は、少なくとも約9ヌクレオチド、一般的には少なくとも約18ヌクレオチド、より一般的には少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36、48又はそれを超えるヌクレオチドにわたってもよい。ヌクレオチド配列同一性を測定するために用いることができる当技術分野において知られている多くの様々なアルゴリズムが存在する。例えば、Wisconsin Package Version 10.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WisconsinのプログラムであるFASTA、Gap又はBESTFITを用いてポリヌクレオチド配列を比較することができる。例えば、FASTA2及びFASTA3プログラムを含むFASTAは、クエリー配列と検索配列との間の最良重複領域の整列及びパーセント配列同一性を提供する(参照により本明細書に組み入れられる、Pearson、Methods Enzymol.183:63 98(1990);Pearson、Methods Mol.Biol.132:185-219(2000);Pearson、Methods Enzymol.266:227-258(1996);Pearson、J.Mol.Biol.276:71-84(1998))。別段に指定されない限り、特定のプログラム又はアルゴリズムの初期パラメータが使用される。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、初期パラメータ(ワードサイズ6及びスコアリングマトリックスのNOPAM因子)によりFASTAを用いて、又は参照により本明細書に組み入れられるGCG Version 6.1で提供される初期パラメータによりGapを用いて決定することができる。
【0099】
一態様において、本発明は、配列番号1~10から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。核酸分子はまた、前記ヌクレオチド配列の任意の組合せを含み得る。一実施形態において、核酸分子は、配列番号4をコードするヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態において、核酸分子は、配列番号4及び6をコードするヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態において、核酸分子は、配列番号4、6及び16をコードするヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態において、核酸分子は、配列番号7をコードするヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態において、核酸分子は、配列番号5をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0100】
上記の実施形態のいずれかにおいて、核酸分子は、単離されてもよい。
【0101】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のヌクレオチド配列のいずれかの発現に好適なベクターに関する。「ベクター」という用語は、本明細書において使用される場合、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を意味する。いくつかの実施形態において、ベクターは、プラスミド、すなわち追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNA片である。いくつかの実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律複製することができる(例えば、細菌起源の複製部位及びエピソーム哺乳動物ベクターを有する細菌ベクター)。さらなる実施形態において、ベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよく、それにより宿主遺伝子と共に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが作用可能に連結されている遺伝子の発現を指令することができる。そのようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ばれる。
【0102】
本発明は、本明細書に記載の結合分子又はその一部のアミノ酸配列(例えば、第1及び/又は第2の結合ドメインの重鎖及び/又は軽鎖配列)のいずれかをコードする核酸分子を含むベクターに関する。本発明はさらに、融合タンパク質、修飾された抗体、抗体断片、及びそれらのプローブをコードする核酸分子を含むベクターを提供する。
【0103】
本発明の核酸分子は、結合分子又はその一部を産生する任意の源から単離され得る。ある特定の実施形態において、本発明の核酸分子は、単離されるのではなく、合成され得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明の核酸分子は、任意の源から重鎖定常ドメインをコードするヌクレオチド配列にインフレームで連結された、本発明の結合分子の第1又は第2のドメインからのVHドメインをコードするヌクレオチド配列を含み得る。同様に、本発明の核酸分子は、任意の源から軽鎖定常ドメインをコードするヌクレオチド配列にインフレームで連結された、本発明の結合分子の第1又は第2の領域からのVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0105】
本発明のさらなる態様において、第1又は第2の結合ドメインの重(VH)及び/又は軽(VL)鎖の可変ドメインをコードする核酸分子は、抗体遺伝子の全長にわたって「変換」され得る。一実施形態において、VH又はVLドメインをコードする核酸分子は、VHセグメントがベクター内のCHセグメントに作用可能に連結され、及び/又はVLセグメントがベクター内のCLセグメントに作用可能に連結されるように、重鎖定常(CH)ドメイン又は軽鎖定常(CL)ドメインをそれぞれ既にコードする発現ベクターに挿入することによって、全長に沿って抗体遺伝子に変換される。別の実施形態において、VHドメイン及び/又はVLドメインをコードする核酸分子は、標準的な分子生物学的技術を使用して、VH及び/又はVLドメインをコードする核酸分子を、CH及び/又はCLドメインをコードする核酸分子に連結、例えばライゲーションすることにより、全長にわたって抗体遺伝子に変換される。次いで、全長にわたり重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子を、それらが導入された細胞から発現させることができる。
【0106】
核酸分子を用いて、大量の組換え結合分子を発現させてもよい。本明細書に記載のように、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、一本鎖抗体、イムノアドヘシン、二特異性抗体、突然変異抗体及び抗体誘導体を産生するために核酸分子が使用されてもよい。
【0107】
別の実施形態において、本発明の核酸分子は、特異的抗体配列のためのプローブ又はPCRプライマーとして使用される。例えば、核酸は、診断技術におけるプローブとして、又は例えば結合分子領域(例えば可変ドメイン)をコードするさらなる核酸分子を単離するために使用され得るDNAの領域を増幅するためのPCRプライマーとして使用され得る。いくつかの実施形態において、核酸分子は、オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、結合分子の高度に可変なドメイン由来である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載の本発明の結合分子の1つ以上のCDRの全部又は一部をコードする。
【0108】
別の実施形態において、突然変異結合分子を作製するために、核酸分子及びベクターが使用されてもよい。抗体は、例えば、結合分子の結合特性を改変するために、第1及び/又は第2の結合ドメインの重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインにおいて突然変異されてもよい。例えば、結合分子のKDを増加又は減少させる、koffを増加又は減少させる、又はPD-1に対する抗体の結合特異性を改変するために、CDRの1つ以上に突然変異が形成されてもよい。別の実施形態において、本発明の結合分子の第1又は第2の結合ドメインに対応する抗体の生殖系列と比較して変化することが知られているアミノ酸残基において、1つ以上の突然変異が形成される。そのような突然変異は、可変ドメインのCDR若しくはフレームワーク領域において、又は定常ドメインにおいて形成されてもよい。好ましい実施形態において、突然変異は、可変ドメイン内に形成される。別の実施形態において、本発明の結合分子の可変ドメインのCDR又はフレームワーク領域内の生殖系列と比較して変化することが知られているアミノ酸残基において、1つ以上の突然変異が形成される。
【0109】
別の実施形態において、フレームワーク領域は、結果として得られるフレームワーク領域が対応する生殖系列遺伝子のアミノ酸配列を有するように突然変異される。そのような突然変異は、結合分子の半減期を増加させるために、フレームワーク領域又は定常ドメイン内で形成され得る。例えば、WO00/09560を参照されたい。フレームワーク領域又は定常ドメインにおける突然変異はまた、結合分子の免疫原性を改変するため、及び/又は別の分子への共有結合若しくは非共有結合のための部位を提供するために形成され得る。本発明によれば、結合分子は、可変ドメインのCDR若しくはフレームワーク領域のいずれか1つ以上において、又は定常ドメイン内に突然変異を有し得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、本発明の結合分子は、遺伝子が必要な発現制御配列、例えば、転写制御配列及び翻訳制御配列に作用可能に連結されるように、上述のように得られる第1又は第2の結合ドメインの配列(例えば、結合ドメインが軽鎖及び重鎖配列を含む場合、軽鎖及び重鎖配列)を部分的に又は完全にコードするDNAを発現ベクターに挿入することにより発現される。発現ベクターは、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス、例えばカリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソーム等を含む。DNA分子は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が、DNAの転写及び翻訳を調節するそれらの意図された機能を果たすように、ベクターにライゲーションされ得る。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合可能であるように選択され得る。第1及び第2の結合ドメインの配列(例えば、結合ドメインが重鎖及び軽鎖配列を含む場合、重鎖及び軽鎖配列)を部分的又は完全にコードするDNA分子は、個々のベクターに導入され得る。一実施形態において、前記DNA分子の任意の組合せが、同じ発現ベクターに導入される。DNA分子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクター上の相補的制限部位のライゲーション、又は制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに導入され得る。
【0111】
好適なベクターは、機能的に完全なヒトCH又はCL免疫グロブリン配列をコードし、適切な制限部位工学を用いて、任意のVH又はVL配列を上述のように容易に挿入及び発現させるベクターである。そのようなベクター内のHC及びLCコード遺伝子は、対応するmRNAを安定化することによって全体的な抗体タンパク質収量の向上をもたらすイントロン配列を含有し得る。イントロン配列は、RNAスプライシングが生じる場所を決定するスプライスドナー及びスプライスアクセプター部位に隣接している。イントロン配列の位置は、抗体鎖の可変領域若しくは定常領域のいずれか、又は複数のイントロンが使用される場合は可変領域及び定常領域の両方にあってもよい。ポリアデニル化及び転写終結は、コード領域の下流の天然染色体部位で生じ得る。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。シグナルペプチドが免疫グロブリン鎖のアミノ末端にインフレームで連結されるように、抗体鎖遺伝子をベクター内にクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であってもよい。
【0112】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換えベクター発現は、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保持し得る。当業者には、調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等の因子に依存し得ることが理解されるであろう。哺乳動物における発現宿主細胞の好ましい制御配列は、レトロウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサー等)、サルウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサー等)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマウイルス、並びに天然免疫グロブリン及びアクチンプロモーター等の強力な哺乳動物プロモーターから得られるプロモーター及び/又はエンハンサー等の哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を確実にするウイルスエレメントを含む。ウイルス制御エレメント及びその配列のさらなる説明については、例えば、米国特許第5,168,062号、第4,510,245号及び第4,968,615号を参照されたい。プロモーター及びベクターの説明、並びに植物の形質転換を含む、植物における抗体等の結合分子を発現させるための方法は、当技術分野において知られている。例えば、米国特許第6,517,529号を参照されたい。細菌細胞又は真菌細胞、例えば酵母細胞中でポリペプチドを発現させるための方法もまた、当技術分野において周知である。
【0113】
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)及び選択マーカー遺伝子等のさらなる配列を保持してもよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号及び第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサート等の薬剤に対する耐性を、ベクターが導入された宿主細胞に付与する。例えば、選択マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅中のdhfr宿主細胞における使用)、neo遺伝子(G418選択用)、及びグルタミン酸合成酵素遺伝子を含む。
【0114】
「発現制御配列」という用語は、本明細書において使用される場合、それらがライゲーションされるコード配列の発現及びプロセシングに影響を及ぼすために必要なポリヌクレオチド配列を指すことを意図している。発現制御配列は、適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列;スプライシング及びポリアデニル化シグナル等の効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強する配列;所望の場合、タンパク質分泌を増強する配列を含む。そのような制御配列の性質は、宿主生物によって異なり、原核生物では、そのような制御配列は、一般に、リボソーム結合部位のプロモーター、及び転写終結配列を含み、真核生物では、典型的には、そのような制御配列は、プロモーター及び転写終結配列を含む。「制御配列」という用語は、その存在が発現及びプロセシングのために必須である少なくとも全ての構成成分を含むことを意図し、その存在が有利である追加の構成成分、例えばリーダー配列及び融合パートナー配列も含み得る。
【0115】
宿主細胞及び結合分子を産生するための方法
本発明のさらなる態様は、本発明の結合分子を産生するための方法に関する。本発明の一実施形態は、本明細書において定義されるような結合分子を産生するための方法であって、結合分子を発現することができる組換え宿主細胞を導入することと、結合分子の発現に好適な条件下で前記宿主細胞を培養することと、得られた結合分子を単離することとを含む方法に関する。そのような組換え宿主細胞におけるそのような発現によって産生された結合分子は、本明細書において「組換え結合分子」と呼ばれる。結合分子が抗体である場合、それらは「組換え抗体」と呼ばれる。本発明はまた、そのような宿主細胞からの細胞の子孫及び類似して得られる結合分子に関する。
【0116】
「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という用語は、本明細書において使用される場合、組換え発現ベクターが導入された細胞を指すことを意図する。本発明は、例えば、上述の本発明のベクターを含み得る宿主細胞に関する。本発明はまた、例えば、本発明の結合分子の第1の結合ドメイン及び/又は第2の結合ドメインの、その重鎖若しくはその抗原結合部分、軽鎖コードヌクレオチド配列若しくはその抗原結合部分、又はその両方をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞に関する。「組換え宿主細胞」及び「宿主細胞」は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことが意図されることを理解されたい。突然変異又は環境の影響のために次の世代に改質が生じ得るため、そのような子孫は実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、そのような細胞はまだ、本明細書において使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0117】
本発明の結合分子をコードする核酸分子及びこれらの核酸分子を含むベクターは、好適な哺乳動物、植物、細菌又は酵母宿主細胞のトランスフェクションに使用され得る。形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の知られている技術によって行うことができる。哺乳動物細胞への異種ポリヌクレオチドの導入方法は、当技術分野において周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、ポリヌクレオチドのリポソームへのカプセル化、及び核へのDNAの直接マイクロインジェクションを含む。さらに、核酸分子は、ウイルスベクターによって哺乳動物細胞内に導入され得る。細胞を形質転換するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号及び第4,959,455号を参照されたい。植物細胞を形質転換する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、アグロバクテリウム媒介形質転換、バイオリスティック形質転換、直接注射、エレクトロポレーション及びウイルス形質転換を含む。細菌細胞及び酵母細胞を形質転換する方法もまた、当技術分野において周知である。
【0118】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野において周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な複数の不死化細胞株を含む。これらは、中でも、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO細胞、SP2細胞、HEK-293T細胞、FreeStyle 293細胞(Invitrogen)、NIH-3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、A549細胞、及びいくつかの他の細胞株を含む。特に好ましい細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有するかを決定することによって選択される。使用され得る他の細胞株は、昆虫細胞株、例えばSf9又はSf21細胞である。結合分子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞内に導入される場合、宿主細胞における結合分子の発現、又はより好ましくは宿主細胞が成長される培養培地への結合分子の分泌を可能にするのに十分な期間宿主細胞を培養することにより、結合分子が産生される。結合分子は、標準的なタンパク質精製技術を用いて培養培地から再構成され得る。植物宿主細胞は、例えば、ニコチアナ(Nicotiana)、シロイヌナズナ、ウキクサ、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモ等を含む。細菌宿主細胞は、大腸菌及びストレプトマイセス種を含む。酵母宿主細胞は、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びピチア・パストリス(Pichia pastoris)を含む。
【0119】
さらに、産生細胞株からの本発明の結合分子の発現は、いくつかの知られている技術を用いて増強することができる。例えば、グルタミン合成酵素遺伝子発現系(GS系)は、ある特定の条件下で発現を増強するための一般的なアプローチである。GSシステムは、欧州特許第0216846号、第0256055号、第0323997号及び第0338841号に関連して全体的又は部分的に議論されている。
【0120】
異なる細胞株により、又はトランスジェニック動物において発現される結合分子は、互いに比較して異なるグリコシル化プロファイルを有する可能性がある。しかし、本明細書に記載の核酸分子によりコードされる、又は本明細書において提供されるアミノ酸配列を含む全ての結合分子が、結合分子のグリコシル化にかかわらず、及び一般的には翻訳後修飾の存在又は非存在にかかわらず、本発明の一部である。
【0121】
結合分子は、複数の方法を用いて産生され得る。例えば、PD1結合ドメインは、(例えば化学的タンパク質合成、組換え発現技術、ハイブリドーマ技術等を使用して)別個に調製し、次いで互いに直接又はリンカーを介して化学的に結合させることができる。分子(例えば、抗体又はその抗原結合部分)の化学的コンジュゲーションのための手段は、当技術分野において周知である。ポリペプチドは、典型的には、対応するポリペプチド又はリンカーの好適な官能基と反応することができるカルボン酸(COOH)又は遊離アミン(-NH2)基等の様々な官能基を含有する。抗体はまた、追加の反応性官能基を露出又は付加するように誘導体化され得、Pierce Chemical Company、Rockford、111から入手可能なもの等のいくつかのリンカー分子のいずれかの付加を含み得る。本発明の結合分子において使用されるリンカーは、当技術分野において知られている好適なリンカーのいずれであってもよい。
【0122】
いくつかの実施形態において、PD1へのドメインの結合は、宿主細胞における組換え抗体又はその抗原結合部分の発現によって産生される。結合ドメインの任意の組合せをコードする配列が(直接的に又はリンカーを介して)連結され得る。PD-1に結合するドメインをコードする得られた核酸分子は、発現ベクターに挿入され、宿主細胞内に導入される。次いで、得られた結合分子が発現され、発現系から単離及び精製される。
【0123】
いくつかの実施形態において、結合分子の結合ドメインは、結合分子のタンパク質分解に対する保護を目的とする革新的なリンカー分子によって互いに結合され得る。そのようなリンカーは、典型的には、タンパク質分解切断部位を欠いている。
【0124】
本明細書において使用される場合、「細胞」、「宿主細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」、「プロデューサーとしての細胞株」という表現は、交換可能に使用され、本発明の任意の単離されたポリヌクレオチド又は本発明のHCVR、LCVR若しくはモノクローナル抗体をコードする配列を含む任意の組換えベクター(複数の任意の組換えベクター)の受容体である個々の細胞又は細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含み、子孫は、自然の、偶然の、又は意図的な突然変異及び/又は改変に起因して、元の親細胞と必ずしも完全に同一でなくてもよい(形態学又は全DNA相補性において)。宿主細胞は、組換えベクター、或いは本発明のポリヌクレオチド又はその軽鎖若しくは重鎖を発現するモノクローナル抗体で形質転換、形質導入又は感染させた細胞を含む。本発明の組換えベクター(宿主染色体に安定に組み込まれている、又はいない)を含む宿主細胞はまた、「組換え宿主細胞」と呼ぶことができる。本発明における使用に好ましい宿主細胞は、CHO細胞(例えばATCC CRL-9096)、NS0細胞、SP2/0細胞、COS細胞(ATCC、例えばCRL-1650、CRL-1651)、及びHeLa(ATCC CCL-2)である。本発明における使用のためのさらなる宿主細胞は、植物細胞、酵母細胞、他の哺乳動物細胞及び原核細胞を含む。
【0125】
医薬組成物
「医薬組成物」という用語は、治療有効量の本発明の抗体並びに賦形剤(希釈剤、ビヒクル、溶媒及び他の賦形剤)を含有する製剤及び/又は組成物を指すことを意図する。
【0126】
「賦形剤」という用語は、本明細書において、本発明の化合物以外の任意の成分を説明するために使用される。賦形剤の選択は、主に、特定の投与技法、溶解性及び安定性に対する賦形剤の効果、並びに剤形の性質等の因子に依存する。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容され得る賦形剤」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、並びに同様の生理学的に適合する物質を含む。前記薬学的に許容され得る賦形剤の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、デキストロース、グリセロール、エタノール等、及びそれらの組合せである。組成物に等張剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール若しくはソルビトール、又は塩化ナトリウムを添加することがしばしば好ましい。薬学的に許容され得る賦形剤のさらなる例は、湿潤剤、又は抗体の貯蔵期間及び効率を増加させる保湿剤及び乳化剤、保存剤若しくは緩衝剤等の少量の補助物質である。
【0127】
本発明の抗体は、患者への投与に好適な医薬組成物に組み込むことができる(例17を参照されたい)。本発明の抗体は、単回投与又は複数回投与で、単独で、又は薬学的に許容され得る担体、希釈剤及び/若しくは賦形剤と組み合わせて投与することができる。投与のための医薬組成物は、選択された投与様式に適切となるように設計され、薬学的に許容され得る希釈剤、担体及び/又は賦形剤、例えば分散剤、緩衝剤、界面活性剤、保存剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤等が必要に応じて使用される(例17を参照されたい)。前記組成物は、当業者に一般的に知られているように、組成物を得るための様々な技術を提供する、例えばRemington、The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA 1995にあるような従来の技術に従って設計される。
【0128】
本発明の抗PD-1モノクローナル抗体を含む組成物は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、頬側、舌下又は坐剤投与等の標準的な投与技術を用いて、本明細書に記載の有害な発達又は病状のリスクを示す患者に投与することができる。
【0129】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、「治療有効量」の本発明の抗体を含むか、又は「治療有効量」の本発明の抗体である。「治療有効量」という用語は、所望の治療結果を達成するのに必要な投与量及び期間で効果的である量を指すことを意図する。抗体の治療有効量は、対象の疾患状態、年齢、性別及び体重、並びに対象において所望の応答を誘発する抗体又はその一部の能力等の因子によって変動し得る。治療有効量はまた、抗体の任意の毒性又は有害な効果よりも治療的に有益な効果が勝る量である。「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するために必要な投与量及び期間で効果的な量を指すことを意図する。予防的用量は、疾患の前又は初期段階において個体に処方されるため、典型的には、予防有効量は、治療有効量未満であってもよい。
【0130】
治療有効量又は予防有効量は、活性薬剤の毒性用量未満である少なくとも最低限の治療上有益な用量である。一方、本発明の抗体の治療有効量は、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるPD-1の生物学的活性を低減する量である。
【0131】
本発明の抗体の投与経路は、経口、非経口、吸入又は局所であってもよい。好ましくは、本発明の抗体は、非経口投与に許容され得る医薬組成物に関与し得る。「非経口」という用語は、本明細書において使用される場合、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣又は腹腔内投与を含む。静脈内、腹腔内又は皮下注射が好ましい投与経路である。そのような注射のための許容され得る医薬担体は、先行技術から周知である。
【0132】
適切なガイドラインに記載されているように、医薬組成物は、例えば密閉されたバイアル(アンプル)又はシリンジによって提供される容器内での貯蔵及び製造の条件下で無菌及び安定でなければならない。したがって、医薬組成物は、組成物を調製した後に濾過滅菌に供されてもよく、又は任意の他の技術によって微生物学的に適切とされてもよい。静脈内注入のための典型的な組成物は、滅菌リンゲル液、生理食塩水、デキストロース溶液又はハンクス塩溶液等の250~1000mlの流体と、治療有効用量(例えば、1~100mg/ml以上)の抗体濃縮物とを含み得る。用量は、疾患の種類及び重症度に応じて変動し得る。患者に対する用量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与されるべき特定の化合物、性別、投与期間及び投与経路、一般的な健康状態、並びに他の同時に投与される医薬を含む複数の因子に依存することは、最新の医学技術から周知である。典型的な用量は、例えば、0.001~1000μgの範囲内であり得るが、特に上述のパラメータを考慮すると、この例示的な範囲よりも低い及び高い用量が予想される。1日の非経口投薬計画は、1日当たり0.1μg/kg~100μg/kg全体重、好ましくは0.3μg/kg~10μg/kg、より好ましくは1μg/kg~1μg/kg、さらにより好ましくは0.5~10μg/kg体重であり得る。処置プロセスは、患者の健康状態の定期的な評価によって監視することができる。患者の状態に応じて、数日間又はそれ以上の反復投与のために、疾患の所望の応答又は症状の抑制まで処置が繰り返される。しかしながら、本明細書に記載されていない別の投薬計画もまた適用され得る。所望の用量は、単回ボーラス投与若しくは複数ボーラス投与によって、又は開業医が望む薬物動態学的分解に応じて抗体の連続注入を用いて投与され得る。
【0133】
前記抗体の想定される特性は、主に医師の決定に依存する。意図される効果は、適切な用量及び投薬計画を選択するための重要な因子である。本明細書において考慮される因子は、処置されるべきある特定の疾患、処置を受けるある特定の哺乳動物、ある特定の患者の臨床状態、障害の原因、抗体投与部位、特定の抗体型、投与経路、投与計画、及び医学技術分野において周知の他の因子を含む。
【0134】
本発明の治療剤は、凍結又は凍結乾燥され、投与前に適切な滅菌担体中に再構成され得る。フリーズドライ及び再構成は、抗体の活性をいくらか失う可能性がある。用量を調整してこの損失を補うことができる。一般に、6~8の医薬組成物のpH値が好ましい。
【0135】
本発明の結合分子の治療的使用
一態様において、本発明の結合分子は、PD1活性に関連する障害の処置に有用である。
【0136】
「処置する(treat)」、「処置する(treating)」及び「処置(treatment)」は、生物学的障害及び/又はその付随する症状の少なくとも1つを緩和又は無効化する方法を指す。本明細書において使用される場合、疾患、障害又は状態を「軽減する」とは、疾患、障害又は状態の症状の重症度及び/又は発生頻度を低減することを意味する。さらに、本明細書における「処置」への言及は、治癒的、緩和的及び予防的処置への言及を含む。
【0137】
一態様において、対象は、哺乳動物、好ましくはヒト対象である。前記対象は、任意の年齢の男性又は女性のいずれかであってもよい。
【0138】
「治療有効量」は、処置されている障害の症状の1つ以上をある程度緩和する、投与されている治療剤の量を指すことを意図する。
【0139】
本発明の結合分子は、単独で、或いは1種以上の他の調製物若しくは抗体(又はそれらの任意の組合せ)と組み合わせて投与されてもよい。したがって、本発明の医薬組成物、方法及び使用はまた、以下に記載する他の活性薬剤との組合せ(同時投与)の実施形態を包含する。
【0140】
本明細書において使用される場合、結合分子及び1種以上の他の治療剤に言及する「同時投与」、「同時投与される」及び「と組み合わせて」という用語は、以下を意味する、指す、又は含むことを想定している:
処置を必要とする患者への本発明の結合分子及び治療剤のそのような組合せの同時の投与であって、そのような構成成分が、前記患者に実質的に同じ時間に前記構成成分を放出する単一剤形に一緒に製剤化される場合、
処置を必要とする患者への本発明の結合分子及び治療剤のそのような組合せの実質的に同時の投与であって、そのような構成成分が、前記患者によって実質的に同じ時間に摂取される別個の剤形に、互いに別々に製剤化され、その後前記構成成分が実質的に同じ時間に前記患者に放出される場合、
処置を必要とする患者への本発明の結合分子及び治療剤のそのような組合せの逐次投与であって、そのような構成成分が、前記患者によって各投与間に著しい時間間隔をおいて逐次摂取される別個の剤形に、互いに別々に製剤化され、その後前記構成成分が実質的に異なる時間に前記患者に放出される場合、並びに
処置を必要とする患者への本発明の結合分子及び治療剤のそのような組合せの逐次投与であって、そのような構成成分が、制御された様式で前記構成成分を放出する単一剤形に一緒に製剤化され、その後それらが同時に、逐次、又は合わせて、同じ及び/又は異なる時間に前記患者に放出され、各部分は、同じ又は異なる経路により投与され得る場合。
【0141】
本発明の結合分子は、さらなる治療処置なしで、すなわち独立した治療として投与され得る。さらに、本発明の結合分子による治療は、少なくとも1つのさらなる治療的処置(併用療法)を含み得る。いくつかの実施形態において、結合分子は、自己免疫疾患又は炎症性疾患の処置のために、合わせて投与されてもよく、又は別の医薬/調製物と共に製剤化されてもよい。
【0142】
本発明の結合分子及び少なくとも1種の他の薬剤(例えば、免疫抑制剤又は抗炎症剤)を含む医薬調製物は、炎症性及び自己免疫疾患の処置において、同時、独立又は逐次投与の併用療法として使用されてもよい。
【0143】
これは、本発明の結合分子が、上述のような処置の方法において使用され得、上述のような処置において使用され得、及び/又は上述のような処置のための医薬の製造において使用され得ることを意味する。
【0144】
用量及び投与経路
当技術分野において許容されるペプチド、タンパク質又は抗体を投与するための任意の方法が、本発明の結合分子に対して好適に使用され得る。
【0145】
本発明の医薬組成物は、典型的には、非経口投与に好適である。本明細書において使用される場合、医薬組成物の「非経口投与」は、対象の組織の物理的な破損及び組織の破損を通した医薬組成物の投与によって特徴付けられる任意の投与経路を含み、したがって一般に血流、筋肉、又は内臓内への直接投与をもたらす。したがって、非経口投与は、中でも、組成物の注射、外科的切開による組成物の投与、組織浸透性の非外科的創傷を通しての組成物の適用等による医薬組成物の投与を含む。特に、非経口投与は、中でも、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、髄腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内、滑液嚢内注射又は注入、及び腎臓透析注入技術を含むことを意図する。腫瘍内送達、例えば腫瘍内注射もまた有用となり得る。局所灌流もまた提供される。好ましい実施形態は、静脈及び皮下経路を含む。
【0146】
非経口投与に好適な医薬組成物の剤形は、典型的には、滅菌水又は滅菌等張性生理食塩水等の薬学的に許容され得る担体と組み合わせた活性成分を含む。そのような剤形は、ボーラス投与又は連続投与に好適な形態で調製、包装又は販売され得る。注射用製剤は、一般的な剤形、例えば、アンプル又は防腐剤を含む複数回用量の容器で調製、包装又は販売され得る。非経口投与のための製剤は、中でも、懸濁液、溶液、油性又は水性基剤中のエマルジョン、ペースト等を含む。そのような剤形は、中でも、懸濁剤、安定化剤又は分散剤を含む1つ以上の追加の成分をさらに含んでもよい。一実施形態において、非経口投与のための組成物は、再構成組成物の非経口投与の前に好適な基剤(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)で再構成するための乾燥(すなわち粉末又は顆粒)形態で提供される活性成分を含む。非経口剤形はまた、塩、炭水化物及び緩衝剤(好ましくはpH3~9まで)等の賦形剤を含んでもよい水溶液を含むが、いくつかの用途においては、それらは滅菌された非水溶液として、又は好適な基剤、例えば発熱物質を含まない滅菌水と併せて使用される乾燥形態としてより好適に製剤化され得る。非経口投与のための例示的な形態は、滅菌水溶液、例えば水性プロピレングリコール又はデキストロース溶液中の溶液又は懸濁液を含む。そのような剤形は、必要に応じて緩衝化されてもよい。非経口投与のための他の好適な剤形は、微結晶形態又はリポソーム調製物中に活性成分を含むものを含み得る。非経口投与用の剤形は、即時及び/又は改良放出を有するように製剤化されてもよい。改良放出剤形は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出及びプログラム放出を含む。
【0147】
例えば、一態様において、滅菌注射溶液は、必要に応じて、上に列挙した1つの成分又は成分の組合せを有する適切な溶媒中に、必要量の少なくとも1つの結合分子を組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。分散液は、典型的には、活性化合物を、基本的な分散媒体及び上に列挙したものからの他の必要な成分を含有する滅菌溶媒に組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、事前に滅菌濾過したその溶液から有効成分及び任意の追加の所望の成分の粉末を生じるフリーズドライ(凍結乾燥)である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアレート及びゼラチンの組成物への組込みによって、並びに/又は改良放出コーティング(例えば徐放コーティング)によってもたらされ得る。
【0148】
また、本発明の結合分子は、典型的には乾燥粉末の形態で(単独で、混合物として、又は混合構成成分を含む粒子として、例えば好適な薬学的に許容され得る賦形剤と混合して)、乾燥粉末吸入器、例えば加圧エアロゾル容器、ポンプ、スプレー、噴霧器(好ましくは電気流体力学を用いて微細ミストを生成する噴霧器)、又は適切な噴射剤が使用される、若しくは使用されないネブライザーから、或いは点鼻薬として、鼻腔内又は吸入によって投与され得る。
【0149】
加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器、又はネブライザーは、典型的には、活性物質の分散、再構成又は放出延長のための好適な薬剤、溶媒としての噴射剤を含む、本発明の結合分子の溶液又は懸濁液を含有する。
【0150】
乾燥粉末又は懸濁液として使用する前に、医薬調製物は、典型的には、吸入による送達に好適なサイズ(典型的には5ミクロン未満)に微粉化される。これは、螺旋ジェットミリング、流動床ジェットミリング、ナノ粒子を形成するための超臨界流体処理、高圧均質化、又は噴霧乾燥等の任意の適切な粉砕技術により達成され得る。
【0151】
吸入器又は注入器で使用するためのカプセル、ブリスター及びカートリッジは、本発明の化合物、好適な粉末基剤及び性能改良剤の粉末混合物を含有するように配合することができる。
【0152】
微細ミストを生成するために電気流体力学を使用する噴霧器で使用するための好適な溶液製剤は、作動当たり本発明の結合分子の好適な用量を含有し得、作動体積は、例えば1μlから100μlまで変動し得る。
【0153】
メントール及びレボメントール等の適切な香味料、又はサッカリン若しくはサッカリンナトリウム等の甘味料が、吸入/鼻腔内投与を意図する本発明の剤形に添加されてもよい。
【0154】
非経口投与のための剤形は、即時放出及び/又は改良放出用に製剤化され得る。改良放出剤形は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出及びプログラム放出を含む。
【0155】
乾燥粉末吸入器及びエアロゾルの場合、投与量単位は、定量された量を送達する弁によって決定される。本発明による単位は、典型的には、本発明の結合分子の定量された用量又は「吐出量」を投与するように構成される。全体的な1日の用量は、典型的には、1回の用量で、又はより頻繁には1日を通して分割用量として投与される。
【0156】
本発明の結合分子はまた、経口投与用の剤形として製剤化され得る。経口投与は、化合物が胃腸管に入るように嚥下すること、及び/又は化合物が口から直接血流に入る頬側、舌側又は舌下投与を含み得る。
【0157】
経口投与に好適な剤形は、錠剤等の固体、半固体及び液体系;複数粒子若しくはナノ粒子、液体又は粉末を含む軟質又は硬質のカプセル;トローチ剤(液体充填を含む);咀嚼剤;ゲル;迅速分散剤形;フィルム;膣坐剤;スプレー;及び頬側/粘膜接着パッチを含む。
【0158】
液体剤形は、懸濁液、溶液、シロップ及びエリキシルを含む。そのような剤形は、軟質又は硬質カプセル(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース製)内の賦形剤として使用されてもよく、典型的には担体、例えば水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース又は好適な油、及び1種以上の乳化剤及び/又は懸濁化剤を含む。液体剤形はまた、例えば、サシェから固体物質を再構成することによって調製することもできる。
【0159】
本発明の結合分子は、問題の状態の処置に有効な量、すなわち所望の結果を達成するのに必要な用量及び期間で投与される。治療有効量は、処置されるべき特定の状態、患者の年齢、性別及び体重、並びに結合分子が単独で、又は1種以上の追加の抗自己免疫若しくは抗炎症処置技術と組み合わせて投与されるかどうか等の因子によって変動し得る。
【0160】
投薬計画は、最適応答を提供するように調節されてもよい。例えば、単一のボーラスが投与されてもよく、いくつかの分割用量が経時的に投与されてもよく、又は治療状況の緊急性によって示されるように用量が比例して減少若しくは増加されてもよい。投与の容易性及び投与量の均一性のために、単位剤形の非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書において使用される単位剤形は、処置される患者/対象のための単位投与量として適した物理的に別個の単位を指すことを意図し、各単位は、所望の薬学的担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、典型的には、(a)化学療法剤の特有の特性、及び達成すべき特定の治療的又は予防的効果、並びに(b)対象の感受性を処置するためのそのような活性化合物の調合分野おいて固有の制限により決定付けられ、またそれらに直接依存する。
【0161】
したがって、当業者は、本明細書において提供される開示に基づいて、用量及び投薬計画が、治療技術分野において周知の方法に従って調整されることを理解するであろう。すなわち、患者に検出可能な治療効果を提供するために各薬剤を投与するための一時的な必要条件と同様に、最大許容用量を容易に確立することができ、患者に検出可能な治療効果を提供する有効量を決定することもできる。したがって、ある特定の用量及び投与計画が本明細書において例示されているが、これらの例は、本発明の実施形態を実行する際に患者に提供され得る用量及び投与計画を決して制限しない。
【0162】
投与量値は、緩和されるべき状態の種類及び重症度によって変動し得、単回又は複数回用量を含み得ることに留意されたい。さらに、任意の特定の対象に対して、個々の必要性及び組成物を投与又は投与を監督する医療従事者の判断に従って、特定の投薬計画が経時的に調整されるべきであり、本明細書に記載される投与量範囲は、例示のみであり、請求される組成物の範囲又は実践を限定することを意図しないことを理解されたい。さらに、本発明の組成物を含む投薬計画は、疾患の種類、年齢、体重、性別、患者の健康状態、状態の重症度、投与経路及び使用される特定の結合分子を含む様々な因子に基づくことができる。したがって、投薬計画は広範に変動し得るが、標準的な技術を用いて定期的に決定することができる。例えば、毒性作用及び/又は実験室値等の臨床効果を含み得る薬物動態パラメータ又は薬力学的パラメータに基づいて用量が調節されてもよい。したがって、本発明は、当業者により決定される個々の用量漸増を包含する。適切な投与量及び投薬計画を決定するための方法は当技術分野において周知であり、当業者には本明細書において開示された考え方が提供されれば理解されるであろう。
【0163】
好適な投与方法の例は上に記載されている。
【0164】
本発明の結合分子の好適な用量は、0.1~100mg/kg、例えば約0.5~50mg/kg、例えば約1~20mg/kgの範囲内にあると考えられる。結合分子は、例えば、少なくとも0.25mg/kg、例えば少なくとも0.5mg/kg、例えば少なくとも1mg/kg、例えば少なくとも1,5mg/kg、例えば少なくとも2mg/kg、例えば少なくとも3mg/kg、例えば少なくとも4mg/kg、例えば少なくとも5mg/kg、及び例えば最大50mg/kgまで、例えば最大30mg/kgまで、例えば最大20mg/kgまで、例えば最大15mg/kgまでの用量で投与されてもよい。投与は、典型的には、適切な時間間隔、例えば1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回又は4週間に1回、及び担当医師によって適切であるとみなされる期間繰り返され、担当医師は、いくつかの場合において、必要に応じて用量を増減し得る。
【0165】
自己免疫障害又は炎症性障害の処置のための有効量は、疾患の進行を安定化する能力及び/又は患者の症状を改善する能力、並びに好ましくは疾患発現を逆転させる能力によって測定することができる。本発明の結合分子が自己免疫障害又は炎症性障害を抑制する能力は、例えば所与の例に記載されているようなin vitroアッセイ及びそのような障害における有効性を予測する好適な動物モデルにおいて評価することができる。好適な投薬計画は、ある特定の状況、例えば単一ボーラス投与、又はそれぞれの場合の緊急性によって示されるような用量の可能な調節を加えた連続注入において、最適な治療応答を提供するように選択される。
【0166】
診断用途及び組成物
本発明の結合分子はまた、診断プロセス(例えば、in vitro、ex vivo)においても使用される。例えば、それらは、患者から得られた試料(例えば、組織試料、又は炎症性滲出液、血液、血清、腸液、唾液若しくは尿等の体液試料)中のPD-1のレベルを検出又は測定するために使用することができる。検出及び測定のための好適な方法は、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、化学発光アッセイ、ラジオイムノアッセイ及び免疫組織学等のイムノアッセイを含む。
【0167】
製造品
別の実施形態において、上述の障害及び状態の処置又は予防に有用な材料を含有する製造品が提供される。
【0168】
製造品は、ラベルを有する抗体含有医薬組成物を含む容器、及び場合によっては添付文書を含む。好適な容器は、例えば、バイアル、アンプル、シリンジ及び分析管を含む。容器は、ガラス又はポリマー材料等の複数の材料で作製され得る。容器は、PD-1媒介性疾患又は障害の処置に有効である本発明の組成物を含み、滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能な栓を有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。本発明の抗PD-1抗体は、組成物の活性薬剤である。容器上に位置するラベル又はそれに取り付けられた添付文書は、組成物が所望の疾患を処置するために使用されることを示す。製造品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液等の薬学的に許容され得る緩衝液を含む第2の容器をさらに備えてもよい。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ及び添付文書を含む商業的及び消費者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0169】
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
配列番号3と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含むヒトPD-1受容体に結合する能力を有する、抗体又はその抗原結合断片。
[態様2]
結合ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様3]
-配列番号7と少なくとも75%同一である重鎖可変ドメインの配列、及び
-配列番号8と少なくとも75%同一である軽鎖可変ドメインの配列、
を含有することを特徴とする、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様4]
結合ドメインが、配列番号1~3のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様5]
結合ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含む結合ドメインと同じエピトープに結合するのを競合する、又は結合することを特徴とする、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様6]
結合ドメインが、配列番号7と少なくとも90%同一であることを特徴とする、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様7]
結合ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様8]
結合ドメインが、ヒト化されていることを特徴とする、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様9]
ヒトアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4のうちの1つに関連することを特徴とする、態様1~8のいずれかに記載の抗体又はその断片。
[態様10]
ヒトPD-1に結合し、配列番号9と少なくとも90%同一である重鎖配列を有する、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様11]
ヒトPD-1に結合し、配列番号10と少なくとも90%同一である軽鎖配列を有する、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様12]
Fc定常部分が、天然配列と比較して、エフェクター機能ADCC、ADCP又はCDCのいずれかを減少又は消失させる任意の突然変異を含む、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様13]
Fc定常部分が、t1/2β(時間)又はCmax(μg/ml)等の動物又はヒトの薬物動態パラメータを増加させる変異を含む、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様14]
a)凝集安定性:10mg/ml超の濃度及びT=4℃の貯蔵温度で、溶液中の凝集物含量が初期含量の5%を超える増加が6ヶ月を越える間ない;
b)凝集安定性:10mg/ml超の濃度及び37℃までの温度上昇と共に、溶液中の凝集物含量が初期含量の5%を超える増加が2週間を越える間ない;
c)凝集安定性:10mg/ml超の濃度及び50℃まで温度上昇と共に、溶液中の凝集物含量が初期含量の5%を超える増加が6時間を越える間ない;
d)ヒトPD-1に結合する場合の解離定数KDが10-9(M)以下である;
e)ヒトPD-1に結合する場合の会合速度定数kon(1/Ms)が少なくとも105(1/Ms)である;
f)ヒトPD-1に結合する場合の解離速度定数dis(1/s)が10-4(1/s)以下である
という特性の少なくとも1つを有することを特徴とする、態様1に記載の抗体又はその断片。
[態様15]
態様1~14のいずれかに記載の抗体の抗原結合断片を含む二重特異性抗体。
[態様16]
態様1~14のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離された核酸分子。
[態様17]
態様16に記載の単離された核酸分子のいずれかを含む発現ベクター。
[態様18]
態様16に記載のヌクレオチド配列を含む宿主細胞。
[態様19]
態様17に記載の発現ベクターで好適な幹細胞をトランスフェクトするステップを含む、態様18に記載の宿主細胞を製造する方法。
[態様20]
態様18に記載の宿主細胞を産生するステップと、前記抗体又はその断片を産生するのに十分な条件下で宿主細胞を培養するステップと、前記得られた抗体又はその活性断片を単離及び精製するステップとを含む、態様1~14のいずれかに記載の抗体を調製する方法。
[態様21]
1種以上の薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤又はビヒクルと組み合わせた、態様1~15のいずれかに記載の抗体又はその断片を含む医薬組成物。
[態様22]
腫瘍学的及び感染性疾患の処置に使用されることが意図された、態様21に記載の医薬組成物。
[態様23]
態様1~14のいずれかに記載の抗体の有効量を投与することを含む、PD-1の生物学的活性の阻害を必要とする対象におけるPD-1の生物学的活性を阻害する方法。
[態様24]
態様1~14のいずれかに記載の任意の抗体若しくは断片、又は態様21若しくは態様22に記載の医薬組成物を投与することを含む、処置を必要とする患者を処置するための方法。
以下の例は、本発明をよりよく理解するために提供される。これらの例は、説明の目的でのみ提示されており、決して本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0170】
例
例1
未処理ヒト抗体FabライブラリーMeganLib(商標)の設計
提示されたプロトコル(QIAGEN)に従って、RNeasy Mini Kitを用いて1,000を超える個人のヒトドナーの血液試料からBリンパ球の全RNAを単離した。Nanovueキット(GE Healthcare)を用いてRNA濃度アッセイを実施した。単離されたRNAの品質を、1.5%アガロースゲル電気泳動により試験した。
【0171】
MMuLV逆転写酵素及びランダムヘキサマーオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた推奨プロトコルに従って、MMLV RTキット(Evrogen)を用いて逆転写反応を行った。
【0172】
逆転写産物を、2段階のポリメラーゼ連鎖反応においてマトリックスとして用い、制限部位に隣接する可変ドメインの遺伝子を得た。この反応は、オリゴヌクレオチドキット及び[J Biol Chem.1999 Jun 25;274(26):18218-30]によるプロトコルを用いて行った。
【0173】
得られたDNA調製物VL-CK-VH(
図1)をNheI/Eco91I制限エンドヌクレアーゼで処理し、元のファージミドpH5にライゲーションした(
図2A)。ライゲーション産物を、プロトコル[Methods Enzymol.2000;328:333-63]に従って調製したSS320エレクトロコンピテント細胞に形質転換した。コンビナトリアルファージFabディスプレイライブラリーMeganLib(商標)のレパートリーは、10
11個の形質転換体であった。ファージFabライブラリーの調製物を、以前に記載された手順[J Mol Biol.1991 Dec 5;222(3):581-97]に従って調製した。
【0174】
例2
ファージ抗体のFabライブラリーの選択
特異的抗PD-1ファージFab抗体を、MeganLib(商標)のコンビナトリアルライブラリーファージFabディスプレイライブラリーから単離した。選択は、以前に説明された条件下(J Biol Chem.1999 Jun 25;274(26):18218-30;Nat Biotechnol.1996 Mar;14(3):309-14;J Mol Biol.1991 Dec 5;222(3):581-97))でパンニングしながら、組換えヒトPD-1を使用して行った。パニング法による選択プロセスを実行するために、50mM炭酸緩衝液(pH9.5)中のヒトPD-1を4℃で一晩、HighSorb管(Nunc)の表面上に吸着させた。さらに、管をPBS(pH7.4)で洗浄し、次いでPBS(pH7.4)-脱脂乳(0.5%重量/体積)を含有する溶液で1時間ブロックした。次いで、PBS(pH7.4)-脱脂乳(0.5%w/vol)中の2~4mlのファージ溶液(10
13ファージ粒子/ml)を抗原と共に管に移し、系を撹拌しながら1時間インキュベートした。未結合ファージを、PBS(pH 7.4)-Tween 20(0.1%vol./vol.)での一連の洗浄サイクルによって除去した。洗浄サイクルの回数は、1回目から3回目まで、それぞれ20-30-40回に増加させた。結合したままのファージ粒子を、100mMのGly-HCl溶液(pH2.5)で15分間撹拌しながら溶出し、次いで1Mトリス-HCl(pH7.6)で中和した。大腸菌TG1細菌に得られたファージを感染させ、さらに、ファージを単離し、次の選択サイクルで使用した。2回目及び3回目の選択の後、DNA(ファージミド)を単離し、抗体可変ドメインの遺伝子を大腸菌細胞内のFabの産生のための発現ベクター(
図2B)にクローニングした。
【0175】
例3
ヒトPD-1に対するFab特異的結合の分析
ELISAを用いて、試験Fab断片のヒトPD-1への結合を測定した。公開されたニボルマブ配列を有するFab(Bristol-Myers Squibb)を陽性対照として用いた。特異的結合を分析するために、ELISAプレートウェル(Greiner bio oneからの培地結合)を50μl(1×コーティング炭酸緩衝液中0.5μg/ml、pH 9.5)のPD1-H6Fでコーティングし、密閉し、4℃で一晩インキュベートした。全てのさらなる段階は、Genetix Qpix2xt(Molecular Devices)及びTecan Freedom EVO 200(Tecan)等のロボットシステムに基づく高性能自動化プラットフォームを用いた標準ELISAプロトコルに従って行った。ブロッキング緩衝液BB(PBS中0.5%無脂肪ミルク200μl)を添加することによって、非特異的結合をブロックした。プレートをシェーカー上で室温で1時間インキュベートした。PBS-Tweenで洗浄した後、等量のBBと混合した50μlの試験Fab含有細胞上清で各セルをコーティングした。プレートをシェーカー上で室温で1時間インキュベートし、さらに、各プレートウェルをPBS-Tween緩衝液で3回洗浄した。洗浄後、PBS-Tween中の抗ヒトFab HRPコンジュゲート二次抗体(Pierce-ThermoScientific)(1:5000)で各ウェルをコーティングした(50μl/ウェル)。プレートを回転シェーカー(室温で50分間)に移し、次いで上述のようにPBS-Tween緩衝液で3回洗浄した。飽和(平均3~5分)するまでTMB(50μl/ウェル)を加えることにより比色シグナルを得、さらに、停止溶液(30μl/ウェル、10%硫酸)を添加することによりさらなる発色をブロックした。適切なTecan-Sunriseプレートリーダー(Tecan)を用いて、吸光度を450nmで測定した。抗体結合は、生成されたシグナルに比例していた。
【0176】
例4
PDL1リガンドとPD-1受容体との相互作用をブロックする競合的ELISA
競合的ELISA技術を用いて、以前に選択された抗PD-1特異的Fabの拮抗能力を試験した。公開されたニボルマブ配列を有するFab(Bristol-Myers Squibb)を陽性拮抗対照として用いた。ELISAウェルプレート(培地結合、Greiner bio one)を50μl/ウェルのPD1-H6F受容体(1×コーティングカーボネート緩衝液pH9.5中1μg/ml溶液)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。全てのさらなる段階は、Genetix Qpix2xt(Molecular Devices)及びTecan Freedom EVO 200(Tecan)等のロボットシステムに基づく高性能自動化プラットフォームを用いた標準ELISAプロトコルに従って行った。ブロッキング緩衝液BB(PBS中0.5%無脂肪ミルク200μl)を添加することによって、非特異的結合をブロックした。プレートをシェーカー上で室温で1時間インキュベートした。
【0177】
PD1受容体を含むプレートをBB溶液で洗浄した後、それを試験Fab含有細胞上清でコーティングし、室温で45分間500rpmで振盪しながらインキュベートした。次いで、それを50μlのPDL1-Fcと1μg/mlの最終濃度で混合し、同じ条件下で45分間インキュベートし、さらに各プレートウェルをPBS-Tween緩衝液で3回洗浄した。さらに、50μl/ウェルのヤギ抗ヒトIgG(Fc)HRPコンジュゲート二次抗体(Sigma)をPBS-Tween(1:5000)に添加した。プレートを回転シェーカー上で室温で45分間インキュベートし、上述のようにPBS-Tweenで5回洗浄した。飽和するまで(平均3~5分)TMB(50μl/ウェル)を添加することにより比色シグナルを得、停止溶液(30μl/ウェル、10%硫酸)を添加することにより、さらなる発色をブロックした。適切なTecan-Sunriseプレートリーダー(Tecan)を用いて、吸光度を450nmで測定した。Fab結合は、生成された色シグナルに反比例した。
【0178】
例5
抗PD1 Fabヒト候補の比較koffスクリーニング
Pall Forte Bio Octet Red96を用いてkoffスクリーニングを行った。抗FabCH1バイオセンサを、10mM PBS(pH7.2~7.4)、0.1%Tween-20及び0.1%BSAを含む作業緩衝液中で30分間再水和させた。大腸菌上清の試料を1×最終濃度まで試験するために、10×作業緩衝液を添加した。次いで、抗FABCH1バイオセンサを、候補抗体のFab断片を含有する大腸菌上清中に浸漬し、4℃の温度で12時間インキュベートした。次いで、センサを検体溶液(PD-1、30μg/ml)でウェルに移し、抗原-抗体会合(300秒)を達成した。その後、さらなる解離(300秒)のために作業緩衝液を用いてセンサをウェルに戻した。使用したセンサは、各試験後に再生に供した。それらを再生緩衝液(Gly-HCl、pH1.7)中に3回置くと、さらなる実験に使用することができた。得られた曲線を、1:1相互作用モデルを用いて標準的手順に従ってOctet Data Analysis(バージョン7.0)を用いて分析した。
【0179】
例6
懸濁哺乳動物細胞培養における組換え抗原及び抗体の生成
公開されたプロトコルに従って、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-K1)から得られた確立された細胞株で抗体及び抗原を生成した[Biotechnol Bioeng.2005 Sep 20;91(6):670-677、Liao Metal.、2004;Biotechnol Lett.2006 Jun;28(11):843-848;Biotechnol Bioeng.2003 Nov 5;84(3):332-342]。EBNA1タンパク質の遺伝子を構成的に発現する細胞(エプスタイン-バールウイルス核抗原1)を用いた。Life Technologies Corporationからの無血清培地を使用し、製造者のガイドラインに従って、オービタルシェーカー上のフラスコ中で懸濁培養を行った。一過性発現のために、2×106/mlの濃度の細胞を線状ポリエチレンイミン(PEI MAX、Polysciences)を用いてトランスフェクトした。DNA/PEI比は、1:3~1:10であった。トランスフェクションの5~7日後、細胞培養物を2000gで20分間遠心分離し、0.22μmフィルタで濾過した。標的タンパク質を、アフィンHPLCによって培養液から単離した。
【0180】
Profinity IMAC Ni-荷電樹脂(Bio-Rad)上の培養液から、C末端領域に6個のHisアミノ酸を含む組換えPD-1タンパク質を単離し、精製した。精製手順の前に、NiCl2を1mMの濃度まで培養液に添加した。次いで、5mlのProfinity IMAC Ni-荷電を培養液に添加し、シェーカーで室温で1時間混合した。吸着剤を5mlのThermo scientificポリプロピレンカラムに移し、5カラム容量のPBSで洗浄して、非特異的に結合した構成成分を除去した。結合した抗原を0.3Mイミダゾール(pH8)及び150mM NaClで溶出した。次いで、タンパク質をSnakeSkin透析管法によりPBS(pH7.4)に透析し、濾過し(0.22μm)、管内に移して-70℃で保存した。
【0181】
組換えPD1-Fc及びPDL1-Fcタンパク質をアフィンHPLC用のプロテインAカラム上の細胞培養物から単離及び精製した。清澄化した培養液を、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)で平衡化した5mlのHiTrap rProtein A Sepharose FFカラム(GE Healthcare)に通した。次いで、カラムを5倍量のPBSで洗浄して非特異的結合構成成分を除去した。結合した抗原を0.1Mグリシン緩衝液(pH8)で溶出した。主要タンパク質溶出ピークを収集し、1Mトリス緩衝液(pH8)で中性pHにした。全ての段階は110cm/hの流速で行った。次いで、タンパク質をSnakeSkin透析管法によりPBS(pH7.4)に透析し、濾過し(0.22μm)、管内に移して-70℃で保存した。
【0182】
IgG1抗体を、上述のPD1-Fc抗原に対する手順に従って、1mlのHi Trap rProteinA FFカラム(GE Healthcare)上で精製した。得られたタンパク質の純度をSDS-PAGEにより評価した(
図3A及び3B)。
【0183】
例7
Jurkat-NFAT-PD1レポーター細胞株における抗PDI抗体によるNFATシグナル伝達の再活性化
Jurkat起源のヒトT細胞株の設計を、そのゲノムに2つの遺伝子コンストラクトを導入することによって行った。1つのコンストラクトは、ヒトPD1受容体遺伝子をコードする。第2のコンストラクトは、NFAT感受性遺伝子エレメントの制御下でluc2Pルシフェラーゼ遺伝子をコードする。その結果、表面膜上にPD1受容体を発現し、luc2Pルシフェラーゼ遺伝子の転写を指令するNFAT依存性プロモーターを含むレポーター細胞株Jurkat-PD1-NFAT-Luc2が得られた。この株の細胞におけるルシフェラーゼ酵素の合成は、NFAT活性のレベルに比例し、一方NFAT活性のレベルは、細胞活性化の全体レベルを反映する。
【0184】
PDL1とPD1との相互作用は、TCR受容体からNFAT-プロモーターへのシグナル伝達を阻害する。抗PDI抗体がPDL1-PD1相互作用を脱結合させると、細胞内シグナル伝達の再活性化が生じる。
【0185】
実験用のプレートを、分析の1日前に以下のように調製した:PBS中の抗CD3抗体の溶液(1μg/mlと5μg/ml PDL1-Fc)を、不透明プラスチック製の96ウェル不透明プレートに導入した。PDL1を含まない抗CD3抗体の溶液を、活性化の陽性対照として使用した。次いで、+4℃で一晩放置した。
【0186】
次いで、10点曲線に適合させるために試験抗体を細胞増殖培地で11μg/mlから3倍希釈を用いて希釈し、抗体希釈した細胞を室温で20分間インキュベートし、次いで抗体を含む細胞を調製したプレートに導入した。増殖培地中の抗CD28抗体の溶液を0.25μg/mlの最終濃度となるように全てのウェルに添加した。次いで、CO2インキュベータ内に6時間放置した。
【0187】
プロトコルに従って予め調製されたBio-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)からのルシフェラーゼ基質を-70℃から解凍し、V細胞/V基質の速度で添加した。Fluoroscan Ascentを用いてルミネッセンスを測定した(
図5)。抗PD1抗体は、Jurkat-PD1-NFATレポーター系統においてルミネッセンスレベルを再活性化し、したがって受容体に結合してPDL1/PD1相互作用を阻害する。BCD-100が最良の結果を示し、有効用量(ED50)は114.6ng/μLであった。
【0188】
例8
ブドウ球菌エンテロトキシン存在下でのヒト全血中の抗PD1抗体によるIL-2産生の刺激
SEB細胞毒素(ブドウ球菌エンテロトキシン)等のスーパー抗原は、抗原提示細胞上のクラスII MHC分子をTCR受容体Vβエレメントに結合させることによってT細胞を活性化し、IL2自己分泌増殖因子を含むサイトカインの産生をもたらす。
【0189】
この試験は、進行した固形腫瘍患者(Clin Cancer Res、2015年5月14日OnlineFirst発行)における記事(MK-3475;抗PD-1モノクローナル抗体)の記述に基づく。
【0190】
簡潔に述べると、全血をSEB又はSEB及び抗PD1抗体と共にインキュベートし、次いでIL-2濃度を測定した。
【0191】
ドナーからのヘパリン化全血を増殖培地(10%ウシ胎仔血清を含むRPMI)中で1:5倍希釈した。SEBを希釈血液に添加して最終濃度を1μg/mlにした。抗PD1抗体を増殖培地中で50μg/mlから3の増分で希釈し、計8回希釈した。増殖培地(体積/体積)中の血液及びSEBの溶液を、希釈した抗体に添加した。プレートをCO
2インキュベータ中、37℃で3日間インキュベートした。さらに、市販のキット(R&D SystemsのHuman IL-2 Quantikine ELISA Kit)プロトコルに従って、ELISA法(
図6)によって選択した試料でIL-2濃度を測定した。BCD-100は、対照抗体よりも大きな機能的活性のために最良の結果を示した。
【0192】
例9
Jurkat-PD1細胞株における抗PD1抗体の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の分析
定量試験での使用を意図した成長Jurkat-PD1細胞培養物をバイアルから回収し、200gで5分間遠心分離した。上清を排水し、定量試験のために培地で再度洗浄した。
【0193】
細胞ペレットを定量試験のために5mlの培地に懸濁し、生存率及び細胞数を決定した。白色96ウェル培養プレートを3×105細胞/mlで播種するために細胞懸濁液を調製した。
【0194】
試験試料の希釈液を96ウェルプレートのウェルに添加した。試験試料を含むウェルにJurkat-PD1細胞懸濁液を添加し、プレートをCO2インキュベータ内で15~30分間インキュベートした。
【0195】
7.5×106細胞/mlの濃度のPBMC細胞懸濁液を調製し、試験試料を含むウェルに添加した。プレートをCO2インキュベータ内で37℃で4時間インキュベートした。
【0196】
アッセイ緩衝液及びCytoToX-Glotm Cytotoxicity AssayキットのAAF-Glo(商標)基質を混合し、試験試料を含む各ウェルに添加した。プレートを室温で15分間インキュベートした。Fluoroscan Ascent FLを用いてルミネッセンスを測定した(
図7)。この方法の原理は、細胞内プロテアーゼの活性を測定することに基づいており、得られるルミネッセンスシグナルは溶解した細胞の数に比例する。抗PD1抗体は、検出可能な抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を有さない。
【0197】
例10
抗PD1抗体とPD1及び他の抗原との相互作用の免疫酵素学的分析
ELISAを用いて、PD1及び他の抗原に対する抗体の相対的親和性を測定した。ELISAプレートウェル(Greiner bio oneからの培地結合)を用いて結合を測定した。ELISAプレートウェルを、50μlのPD1-Fc、IL6R-Fc、CD38-Fc、HER3-Fc、IGFR-Fc、CD3-Fc、IL23-Fc(PD1に対しては1μg/ml及び1×コーティングカーボネート緩衝液中の他の抗原に対しては5μg/ml)でコーティングし、密閉して、4℃で一晩インキュベートした。全てのさらなる段階は、標準的なELISAプロトコルに従って行った。ブロッキング緩衝液BB(PBS中0.5%無脂肪ミルク200μl)を添加することによって、非特異的結合をブロックした。プレートをシェーカー上で室温で1時間インキュベートした。PBS-Tweenで洗浄した後、50μl/ウェルの試験抗体をPBS-Tween中に5μg/mlの濃度で添加した。プレートを振とうしながら室温で1時間再びインキュベートした後、各プレートウェルをPBS-Twin緩衝液で3回洗浄した。洗浄後、PBS-Tween中の抗ヒトFab HRPコンジュゲート二次抗体(Pierce-ThermoScientific)(1:5000)で各ウェルをコーティングした(50μl/ウェル)。プレートを回転シェーカー(室温で50分間)に移し、次いで上述のようにPBS-Tween緩衝液で3回洗浄した。飽和するまで(平均3~5分)TMB(50μl/ウェル)を添加することにより比色シグナルを得、停止溶液(30μl/ウェル、10%硫酸)を添加することにより、さらなる発色をブロックした。適切なTecan-Sunriseプレートリーダー(Tecan)を用いて、吸光度を450nmで測定した。抗体結合は、生成されたシグナルに比例していた(
図4)。抗PD1抗体は、PD1に特異的に結合し、問題の他の抗原には結合しない。
【0198】
例11
抗PD1抗体と異なる生物のPD1受容体との相互作用の免疫酵素学的分析
ELISAを用いて、異なる生物のPD1受容体に対する抗体の相対的親和性を測定した。ELISAプレートウェル(Greiner bio oneからの培地結合)を用いて結合を測定した。ELISAプレートウェルを50μlのヒト及びジャワモンキーPD1-Fc、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、モルモット(1×コーティングカーボネート緩衝液中0.5μg/ml、pH9.5)のPD1でコーティングし、密閉して、4℃で一晩インキュベートした。全てのさらなる段階は、標準的なELISAプロトコルに従って行った。抗PD1抗体は、ヒト及びカニクイザルPD1に特異的に結合し、他の試験受容体には結合しない(
図9)。
【0199】
例12
抗PD1抗体とCD28ファミリー受容体との相互作用の免疫酵素的分析
ELISAを用いて、CD28ファミリー受容体に対する抗体の相対的親和性を測定した。ELISAプレートウェル(Greiner bio oneからの培地結合)を用いて結合を測定した。ELISAプレートウェルを50μlのヒトPD1-Fc、CD28、CTLA-4及びICOS-Fc(1×コーティングカーボネート緩衝液中0.5μg/ml、pH9.5)でコーティングし、密閉して、4℃で一晩インキュベートした。全てのさらなる段階は、標準的なELISAプロトコルに従って行った。抗PD1抗体は、PD1にのみ結合し、他のCD28ファミリーメンバーには結合しない(
図10)。
【0200】
例13
Octet RED96上の抗PD1抗体とヒト及びカニクイザルPD1受容体との相互作用の分析
ヒト及びカニクイザルPD-1に結合する抗体の親和定数を、OctetRed 96(ForteBio)で調べた。AR2Gセンサの調製及び固定化に関する製造者のマニュアルに記載された標準プロトコルに従って、BCD100抗体を、アミン反応性第2世代センサ(ForteBio、Pall)の表面上に、非特異的に固定化した。0.1%Tween-20及び0.1%BSAを作業緩衝液として含むPBSを用いて30℃で分析を行った。ヒト及びカニクイザルPD-1を、126nM~2nMの濃度から2の増分で作業緩衝液で滴定した。
【0201】
参照シグナルを差し引いた後の結合曲線を、標準的手順に従って、1:1相互作用モデルを用い、Octet Data Analysisソフトウェア(バージョン7.0)を使用して分析した。抗PD1抗体は、ヒト及びカニクイザルPD1抗原に特異的に結合する(
図11)。
【0202】
例14
Octet RED96を用いた抗PD1抗体とFcRn受容体及びFcγ受容体との相互作用の分析
Forte bio Octet RED96及びストレプトアビジン(SA)バイオセンサを用いて、FcgRIIIaV、FcgRIIaH、FcgRIIb、FcgRIa、FcRnとの抗体の相互作用を分析した。
【0203】
実験の過程で、ビオチン標識化受容体を、ストレプトアビジンでコーティングされたセンサの表面上に配向的に固定化した。抗体を500μg/mlの濃度から2×7点の増分で連続希釈し、96ウェルプレート内のウェルに入れた。次いで、様々な濃度の抗体溶液中にセンサを浸漬することによって会合段階を実行し、さらにセンサを作業緩衝液に浸漬することによって解離段階を実行した。
【0204】
作業緩衝液pH7.4を用いて、FcgRIIIaV、FcgRIIaH、FcgRIIb、FcgRIaに対する抗体親和性を分析し、作業緩衝液pH6.0を用いてFcRnに対する親和性を分析した。
【0205】
参照シグナルを差し引いた後に得られた曲線を、標準的手順に従って、2:1相互作用モデル(異種リガンド)を用いてSteadyStateにより分析した。結果を
図8に示す。Fcg受容体に対する親和性の分析は、修飾されたIgG1のエフェクター機能が低下し、IgG4とほぼ同等であることを示している。FcRn受容体への親和性の分析に基づいて、抗PD1抗体の薬物動態はニボルマブ抗体のものと同一であると推定することができる。
【0206】
例15
熱ストレス下での抗PD1抗体の凝集安定性の決定
PBS緩衝液中の9mg/mlのBCD100抗体調製物を、50℃の温度で12時間加熱した。熱ストレス後の凝集を、高性能ゲル濾過クロマトグラフィーにより測定した。クロマトグラフィーは、HPLCシステム(Agilent)上で、プレカラムTosoh TSKgel Guard SWXL、6.0mm×4.0cm、粒径7μm、注文番号08543を有する、カラムTosoh TSK-Gel G3000SWXL、7.8mm×30cm、注文番号08541で行った。溶出は、アイソクラティックモード、移動相:50mM NaFb、0.3M NaCl、pH7.0で、流速0.5ml/分で行った。検出は、波長214nm及び280nmで行った。抗体の試料を約1mg/mlの濃度までFSB緩衝液、pH7.5で希釈した。注入量は10マイクロリットルであった。較正混合物ゲル濾過標準(Bio-Rad)、注文番号151-1901のクロマトグラフィーを事前に行った。
図12は、赤-無傷、青-50°Cで12時間のインキュベート後の複合クロマトグラムを示す。抗PD-1抗体は、熱ストレス下で安定したままである(熱ストレス前後の溶液中の凝集物含量の差異は5%未満であった)。
【0207】
例16
安定した細胞株の設計、抗PD1抗体の産生及び精製
BCD-100モノクローナル抗体を産生する安定な細胞株は、Neon Transfection System(Life Technologies)を使用したエレクトロポレーションにより、最適な比率の抗体軽鎖及び重鎖を含むベクターコンストラクトで親懸濁液CHO-S細胞系をトランスフェクトすることによって得られた。ClonePixロボットプラットフォーム(Molecular Devices)、及び異なる培養フォーマットで抗生物質を使用する予備的ミニプール選択段階を使用して、高レベルのクローン系統(1g/l超)を得た。選択されたクローンの生産性をBiomek FXロボティクス自動化システム(Beckman Coulter)により分析し、生産性をOctet RED96分析システム(Pall Life Sciences)により分析した。Biomek FXロボティクス自動化システム(Beckman Coulter)を用いて、基本的な環境及び培養スキームを選択するためのDOEを実行した。プロデューサーは、無血清培地及び動物由来タンパク質を含有しない供給物で培養した。
【0208】
培養液をZeta Plus Maximizer 60M02>>(3M)デプスフィルタで濾過した。抗体の一次精製は、プロテインA親和性吸着剤で行った。標的タンパク質は、酸性条件下でグリシン緩衝液pH3.3~3.8で特異的に溶出された。回収された溶出液をウイルス不活性化のために30~60分間酸性pHに曝露し、次いで1Mトリス-OH溶液でpH6.8~7.2に中和した。残留DNA、プロデューサー細胞タンパク質、放出されたアフィン吸着剤のリガンド、凝集体及び抗体断片を除去するための最終クロマトグラフィー精製を、フロースルーモードでCaptoAdhere吸着剤(GE HealthCare LifeSciences)を使用して実行した。したがって、タンパク質溶液は、低い伝導率(<2msec/cm2)下で、調製した吸着剤pH6.8-7.2を通過した。次いで精製したタンパク質をViresolve PROフィルタキット(Millipore)を用いてウイルス除去濾過し、ヒスチジン緩衝液(pH6.0~6.5)、Tween80及びトレハロースを含有する最終緩衝液に対して濃縮及び透析濾過を行った。タンパク質濃度は、50mg/ml以上であった。
【0209】
例17
本発明の抗PD-1抗体を含む医薬組成物の入手
PD1(BCD-100)に対する抗体濃度-25mg/ml、酢酸ナトリウムt/g-0.436mg、マンニトール-50mg、Kolliphor(ポロキサマー)P188-0.2mg、氷酢酸pH5.15 Osm 300±20mOsm pH5.0まで
【0210】
例18
正常凍結ヒト組織における抗PD1抗体の交差反応性の試験
抗PD1調製物の交差反応性の試験を、正常凍結ヒト組織(剖検材料)に対して行った。以下の33のヒト組織を分析に使用した:下垂体、網膜、胃、末梢血細胞、大脳皮質、皮膚、肺、リンパ節、子宮、扁桃、小脳、乳腺、膀胱、尿管、副腎、末梢神経、耳下腺、肝臓、膵臓、横紋筋、腎臓、前立腺、脾臓、心臓、脊髄、大腸、小腸、卵管、甲状腺及び副甲状腺、血管内皮、精巣、卵巣。PD1膜抗原を含むJurkat-PD1細胞の凍結懸濁液を陽性対照として用いた。
【0211】
器官組織片からの製造凍結組織ブロックを、Tissue-Tec(Sacura)組織充填及び凍結媒体に包埋し、液体窒素蒸気中で凍結し、-70℃で保存した。PD1を発現するJurkat-PD1細胞の沈殿した懸濁液を陽性対照として使用し、1×106細胞/mlを1mlのTissue-Tec(Sacura)組織充填及び凍結培地に再懸濁し、得られた懸濁液を液体窒素蒸気中で凍結し、-70℃で保存した。
【0212】
Thermo HM525Uクライオスタット上で5μm切片を調製した。さらに切片を冷アセトンで10分間固定し、室温で空気中で2~24時間乾燥させた。固定した切片を暗所で-70℃で保存した。
【0213】
FluoReporter FITC Protein Labeling Kit(Invitrogen)を製造者の指示に従って用い、抗PD1調製物(JSC Biokad、ロシア)をFITCで標識化した。
【0214】
内因性ペルオキシダーゼをブロックした。切片をPBS(0.05%Tween20)で2回洗浄し、内因性ペルオキシダーゼを室温で10分間Hydrogen Peroxide Block(Thermo)を用いてブロックし、さらにPBSで2回洗浄した。
【0215】
染色手順の前に以下のように非特異的染色をブロックした:切片を室温で10分間Protein Block Serum-Free(Dako)で処理した。一次抗体を洗浄せずに適用した。一次抗体を洗浄せずに適用した。
【0216】
切片を0.2μg/mlの作用濃度の一次抗体(FITCで標識化された抗PD1抗体、0.2μg/mlの濃度のヒトIgG1アイソタイプ抗体)でコーティングし、室温で1時間インキュベートし、次いで毎回PBSで5分間2回洗浄した。
【0217】
ペルオキシダーゼにコンジュゲートしたマウスモノクローナル抗FITC抗体の溶液(作用希釈1/1000)を室温で30分間インキュベートし、次いで毎回5分間PBSで2回洗浄した。切片をDAB染色溶液で10分間処理し、次いで脱イオン水で2回洗浄した。
【0218】
核をヘマトキシリンで10分間軽く染色し、次いで脱イオン水で2回洗浄した。切片を1%HCl溶液で1秒間処理し、次いで脱イオン水で3回洗浄した。核を飽和炭酸リチウム溶液(青色)で45秒間染色した。染色されたら、切片を脱イオン水で2回洗浄し、アルコール濃度を増加させながら(70%、80%、96%)アルコール溶液で脱水し、キシレン交換器内で清澄化し、封入剤に包埋し、次いでClearVue(Thermo)を使用してカバースリップを置いた。
【0219】
陽性染色の半定量的細胞毒性測定を行った。Leica DM 6000B光学顕微鏡を使用して調製物のスクリーニングを行い、デジタル画像をLeica DFC 420ビデオカメラを介してコンピュータモニターに伝送し、付属のLeica Application Suite(バージョン2.5.0.R1)を使用してハードディスクに記録した。スクリーニングのために、40×レンズを使用し、ミクロ調製照明の具体的な調整(デジタル設定)標準レベルを用いた。画像における染色強度は、標識化された物質の相対濃度に比例し、この場合、それは抗PD1である。細胞型及び構造の免疫陽性染色の視覚的評価に加えて、ImageJデジタル画像解析ソフトウェアを使用して、選択された領域における免疫陽性染色のレベルを測定した。染色強度及び染色構造の総数に依存して、0~3点スケールを用いて評価を行った。対照アイソタイプ抗体でコーティングされた組織の染色強度を考慮して、最終免疫陽性染色を評価した。
【0220】
例19
抗PD1抗体のin vivo有効性の評価
ヒト黒色腫細胞株A2058を皮下注射したヒト化PBMCマウス(The Jackson Laboratory)により、有効性を評価した。群内の各動物は、2.5×106個の腫瘍細胞を受けた。投与前に細胞をMatrigel(登録商標)(1:1)と混合した。得られた混合物を皮下投与した。BCD-100調製物、Keytruda(登録商標)参照調製物(陽性対照)、及び静脈内投与用の正常ヒト免疫グロブリン調製物(陰性対照)(表1)の3つの用量を用いて有効性を評価した。
【0221】
【0222】
実験の過程で、動物における体重(注射前、次いで週に2回)及び腫瘍節の体積を以下の式を用いて評価した:
【数1】
式中、W-腫瘍節の幅、L-腫瘍節の長さである。
【0223】
実験の37日目に動物を安楽死させた。安楽死させる前に、動物の血液を採取して、以下の亜集団の循環ヒト血液リンパ球のレベルを評価した:
【表2】
【0224】
例20
抗PD1抗体の毒物動態学的評価
3つのBCD-100投与量レベルを用いて、以下の毒物動態学的試験をカニクイザルに対して行った。実験群のスキームを以下の表2に示す。
【0225】
【0226】
試験中に以下のパラメータを評価した:
-臨床検査の結果;
-動物の体重(投与前及び実験の4、8、22、42日目);
-体温(投与前及び投与から1、2、4、6、24時間後、実験の4、8、22、42日目);
-尿検査(投与前及び実験の4、8、22、42日目);
-以下のパラメータに関する全血分析:赤血球数、白血球数、ヘモグロビン濃度(投与前及び実験の4、8、22、42日目);
-以下のパラメータに関する血清の生化学分析:乳酸デヒドロゲナーゼ、総ビリルビン、総タンパク質、グルコース、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ(投与前及び実験の4、8、22、42日目);
-霊長類の血清中の調製物濃度の検査(投与から5分、15分及び0.5時間、1時間、3時間、6時間、24時間、30時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、168時間、192時間、264時間、336時間、408時間、576時間、888時間、984時間後)。
【0227】
例21
カニクイザルに対して、3ヶ月間の複数回皮下投与に続き3ヶ月間の回復期間を設けた場合の、毒性の評価
関連動物-カニクイザルに対して、3ヶ月間の複数回皮下投与に続き3ヶ月間の回復期間を設けた場合の、毒性の検査を行った。実験には3つの投与量レベルを用いた。実験群のスキームを以下の表3に示す。
【0228】
表3.複数回皮下投与の場合の毒性の評価のためのスキーム
【表4】
【0229】
試験中に以下のパラメータを評価した:
-臨床検査の結果;
-動物の体重(投与前及びその後1、3、5、7、9、11、13週目);
-体温(投与前、次いで実験終了時まで毎週);
-Poly-Spectrum心電図により評価された心臓の生体電気活性に基づく心血管系への影響;投与前、次いで実験の5、9、13、18、22、26週目に評価を行った;
-尿検査(投与前及び実験の1、3、5、7、9、11、13週目);
-以下のパラメータに関する全血分析:赤血球数、白血球数、ヘモグロビン濃度、リンパ球数、単球数、好中球数、好酸球数、好塩基球数、血小板数(投与前、次いで実験の第1週から開始して週1回);
-以下のパラメータに関する血液凝固系への影響の評価:活性化部分トロンボプラスチン時間、フィブリノゲン濃度、プロトロンビン時間(投与前、次いで投与期間中の2週間に1回、実験の第2週から開始して実験の15週目、20週目、及び25週目の回復期間);
-以下のパラメータに関する血清の生化学分析:ナトリウム、カリウム、クレアチニン、尿素、アルカリホスファターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、総ビリルビン、総タンパク質、グルコース、トリグリセリド、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、総コレステロール(投与前、及び実験の4、8、12、15、20週目);
-投与期間の終わりに、サテライト群3*の動物を安楽死させ、続いてその病理形態検査を行い;試験の最後に、群3及び対照群の動物を安楽死させ、続いてその病理形態検査を行った;
-毒性試験の一環として、調製物の局所刺激作用も評価し、それに伴い注射部位の近くにある軟組織を選択し、組織学的に検査した。
【0230】
例22
抗PD1抗体調製物の免疫毒性評価
関連動物-カニクイザルに対して、3ヶ月間の複数回皮下投与に続き3ヶ月間の回復期間を設けた場合の、免疫毒性の検査を行った。実験には3つの投与量レベルを用いた。実験群のスキームを以下の表4に示す。
【0231】
表4.複数回皮下投与の場合の免疫毒性の評価のためのスキーム
【表5】
【0232】
試験中に以下のパラメータを評価した:
-調製物投与前、次いで実験の3、7、13、21及び26週目に評価されたリンパ球の亜集団組成;
-投与前及び実験の4、8、12、20、25週目に免疫グロブリンクラスの比率を評価した;
-投与前及び実験の3、7、13、21、26週目に食作用に対する影響を評価した;
-調製物の投与前、次いで実験の5、13、21、26週目に、リンパ球の芽球化現象の反応を測定した。
【0233】
例23
抗PD-1抗体の複数回皮下投与を行った場合の薬物動態及び免疫原性の評価
関連動物-カニクイザルに対して、3ヶ月間の複数回皮下投与に続き3ヶ月間の回復期間を設けた場合の、薬物動態及び免疫毒性の検査を行った。実験には3つの投与量レベルを用いた。実験群のスキームを以下の表5に示す。
【0234】
表5.複数回皮下投与の場合の毒性の評価のためのスキーム
【表6】
【0235】
調製物濃度の動態を評価し、その後薬物動態パラメータを計算するために、動物の血清を、調製物の投与前、次いで実験の1、2、8、9、15、16、22、23、29、30、36、37、43、44、50、51、57、58、64、65、71、72、78、79、85、86、92、99、106、113、120、127、134、148、162、176日目に採取した。
【0236】
結合抗体のレベルによって免疫原性を評価したが、この目的のために、調製物の投与前、次いで実験の4、8、12、20、26週目に血液を採取して血清を分離した。
【配列表フリーテキスト】
【0237】
配列表1~10 <223>合成
【配列表】