IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立建機ティエラの特許一覧

<>
  • 特許-建設機械 図1
  • 特許-建設機械 図2
  • 特許-建設機械 図3
  • 特許-建設機械 図4
  • 特許-建設機械 図5
  • 特許-建設機械 図6
  • 特許-建設機械 図7
  • 特許-建設機械 図8
  • 特許-建設機械 図9
  • 特許-建設機械 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20220106BHJP
   B60J 1/20 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
E02F9/16 A
B60J1/20 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019054893
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020153185
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】里内 弥
(72)【発明者】
【氏名】中谷 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 浩司
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0123428(US,A1)
【文献】特開2012-202027(JP,A)
【文献】特開2010-248718(JP,A)
【文献】米国特許第04647102(US,A)
【文献】実開昭49-035156(JP,U)
【文献】実開昭53-027654(JP,U)
【文献】実開平04-007962(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B60J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前,後方向に走行可能な下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、
前記上部旋回体の前部に設けられた作業装置と、
前記上部旋回体の前部に設けられ前方に前窓を有するキャブと、
前記前窓を覆って前記キャブに設けられた前面ガードと、
を含んで構成された建設機械において、
前記前面ガードは、前記前窓を覆った作業形態と、前記キャブの一方の側部に折畳んで片寄せられた清掃形態とに切換可能な蛇腹構造体として形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記前面ガードは、前記前窓の一方の側部側に位置して前記キャブに取付けられた一体取付枠と、前記前窓の他方の側部側に位置して前記キャブに着脱可能に取付けられた移動枠と、前記一体取付枠と前記移動枠との間に配置され蛇腹状の折畳み構造を形成している複数の折畳みガード部とにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記前面ガードは、当該前面ガードを前記作業形態で保持するための保持梁を備えていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記一体取付枠は、前記キャブに対して水平方向に回動可能に取付けられ、
前記移動枠は、前記キャブに対して締結部材を用いて着脱可能に取付けられていることを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【請求項5】
前記前面ガードの下側には、前記前面ガードを折畳むときに前記前面ガードを前記前窓に沿って左,右方向にガイドするガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、前記前面ガードが前記清掃形態に切換えられたときに、前記前面ガードが前記前窓から離れる方向に回動するのを許すガイド解除部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項6】
前記前面ガードは、前方の視界を確保しつつ前記前窓を保護するための複数の桟を有し、
前記保持梁には、前記各桟の間の隙間に差し込まれて係合する突起部が設けられていることを特徴とする請求項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば土砂の掘削作業を行う作業装置とオペレータが搭乗するキャブとを備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、前,後方向に走行可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体の前部に設けられた作業装置とから構成されている。
【0003】
上部旋回体は、支持構造体として形成された旋回フレームと、旋回フレームの前部に設けられ前方を視認するための前窓を有するキャブと、前窓を覆ってキャブに設けられた前面ガードとを含んで構成されている(例えば、特許文献1参照)。この前面ガードは、作業中に前窓に向けて飛来する石等から前窓の窓ガラスを保護する。このために、前面ガードは、金属製の長板または棒体を格子状に組むことにより強度部材として形成され、キャブに対してボルトを用いて取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-63686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の油圧ショベルは、キャブに対してボルトを用いて前面ガードを取付ける構成としている。従って、前窓の窓ガラスを清掃するときには、全てのボルトを緩めなくてはならない上に、取外した前面ガードを邪魔にならない位置まで運ばなくてはならず、清掃作業に手間を要してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、キャブに前面ガードを設けた場合でも、前窓の清掃作業を容易に行うことができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前,後方向に走行可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記上部旋回体の前部に設けられた作業装置と、前記上部旋回体の前部に設けられ前方に前窓を有するキャブと、前記前窓を覆って前記キャブに設けられた前面ガードと、を含んで構成された建設機械において、前記前面ガードは、前記前窓を覆った作業形態と、前記キャブの一方の側部に折畳んで片寄せられた清掃形態とに切換可能な蛇腹構造体として形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャブに前面ガードを設けた場合でも、前窓の清掃作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルを示す正面図である。
図2】上部旋回体を前側から見た左側面図である。
図3】折畳んだ状態の上前面ガードをキャブ、上ガイド部材と一緒に示す要部拡大の斜視図である。
図4】前窓、上前面ガードおよび上ガイド部材を図2中の矢示IV-IV方向から見た断面図である。
図5】上前面ガードを単体で示す正面図である。
図6図5の上前面ガードの底面図である。
図7】前窓、上前面ガード、上ガイド部材、下前面ガードを示す要部拡大の斜視図である。
図8】上前面ガードに対する上保持梁の係合状態を示す要部拡大の斜視断面図である。
図9】上前面ガードを折畳んで清掃形態に切換えた状態を図4と同様位置から見た要部拡大の断面図である。
図10】清掃形態の前面ガードを前窓から離れる方向に回動させた状態を図4と同様位置から見た要部拡大の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、スイング式の作業装置を備えたクローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図10に従って詳細に説明する。なお、本実施の形態では、上部旋回体の前,後方向に対し、この前,後方向に直交した水平方向を左,右方向とし、各機器、部材の構成、配置等について説明する。本実施の形態の建設機械は、前,後方向に走行可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体の前部に設けられた作業装置と、上部旋回体の前部に設けられ前方に前窓を有するキャブと、前窓を覆ってキャブに設けられた前面ガードと、を含んで構成されている。
【0011】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、前,後方向に走行可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に俯仰の動作が可能に設けられたスイング式の作業装置4とにより構成されている。作業装置4は、土砂の掘削作業等を行う。
【0012】
油圧ショベル1は、例えば、路地や建物の内部のような狭い場所での作業に用いられる小型の油圧ショベルとして構成されている。この油圧ショベルは、一般的にミニショベルと呼ばれ、その旋回範囲から後方超小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。この後方超小旋回型の油圧ショベル1は、上部旋回体3を旋回動作したときに後部が周囲の障害物と干渉しないように、後述のカウンタウエイト6が上部旋回体3の旋回中心に近い位置に配置されている。これにより、後方超小旋回型の油圧ショベル1は、旋回したときのカウンタウエイト6の外周面6Aの軌跡が、下部走行体2の幅寸法(左,右方向の寸法)の120%の範囲に収まるようになっている。
【0013】
作業装置4は、後述する旋回フレーム5の支持部5Aにスイング(揺動)可能に取付けられたスイングポスト4Aと、スイングポスト4Aに俯仰の動作が可能に取付けられたブーム4Bと、ブーム4Bの先端部に回動可能に取付けられたアーム4Cと、アーム4Cの先端部に回動可能に取付けられたバケット4Dと、ブーム4Bを動作させるブームシリンダ4Eと、アーム4Cを動作させるアームシリンダ4Fと、バケット4Dを動作させるバケットシリンダ4Gとによって構成されている。また、スイングポスト4Aと旋回フレーム5との間には、スイングポスト4Aをスイングさせるスイングシリンダ(図示せず)が設けられている。
【0014】
ここで、小型の油圧ショベル1は、上部旋回体3(旋回フレーム5上)の大部分が後述のキャブ7で占拠されている。このために、作業装置4は、キャブ7の前側に配置されるから、ブーム4Bを仰動させたときには、当該ブーム4Bがキャブ7の前窓8に接近した状態となる。
【0015】
上部旋回体3は、支持構造体として形成された旋回フレーム5と、旋回フレーム5の前部に設けられ前方を視認するための前窓8を有するキャブ7と、前窓8を覆ってキャブ7に設けられた上前面ガード9、下前面ガード19とを含んで構成されている。旋回フレーム5の前部には、キャブ7の前側に位置して支持部5Aが設けられている。この支持部5Aには、作業装置4のスイングポスト4Aがスイング(揺動)可能に取付けられている。
【0016】
また、上部旋回体3は、旋回フレーム5の後部に位置してカウンタウエイト6を有している。このカウンタウエイト6は、作業装置4との重量バランスをとるための重量物として形成され、旋回フレーム5の後部に取付けられている。カウンタウエイト6は、左,右方向の中間部が後方に突出した円弧形状に形成され、上部旋回体3の旋回中心に近付けて配置されている。これにより、カウンタウエイト6の外周面6Aの軌跡は、下部走行体2の幅寸法(左,右方向の寸法)の120%の範囲に収まっている。
【0017】
カウンタウエイト6の前側となる旋回フレーム5の後部には、エンジンが左,右方向に延在する横置き状態で設けられている。このエンジンは、油圧ポンプ(いずれも図示せず)を駆動する。エンジンの上側は、キャブ7の運転席台座7Fによって覆われ、この運転席台座7F上には、後述の運転席22が設けられている。
【0018】
図1図2に示すように、キャブ7は、旋回フレーム5の前部左側に位置して設けられている。キャブ7は、オペレータが乗り込むもので、前面部7A、後面部7B、左面部7C、右面部7Dおよび天面部7Eによってボックス状に形成されている。また、キャブ7の下側には、底面部を構成する運転席台座7Fが設けられている。さらに、左面部7Cには、前側寄りに位置して乗降口を開閉するドア7Gが設けられている。
【0019】
ここで、キャブ7の前面部7Aは、前方を視認するための前窓8となっている。この前窓8は、上枠部8A、下枠部8B、左枠部8Cおよび右枠部8Dによって上,下方向に長尺な長方形状の角枠をなしている。この上で、前窓8は、各枠部8A~8Dからなる角枠内に長方形状の窓ガラス8Eを有している。
【0020】
なお、前窓8には、後述する上前面ガード9、下前面ガード19およびそれぞれに対応する部材が設けられている。この場合、前窓8のうち、上前面ガード9が設けられる範囲は、上,下方向の中間部から上側の3分の2程度となっている(以下、この範囲を上側範囲という)。一方、前窓8のうち、下前面ガード19が設けられる範囲は、下側の3分の1程度となっている(以下、この範囲を下側範囲という)。
【0021】
図3に示すように、前窓8の一方の側部側となる左枠部8Cの上側範囲には、上,下方向に間隔をもって2個のガード取付座8Fが設けられている。各ガード取付座8Fには、上前面ガード9の一部をなす一体取付枠10がヒンジ10G、ボルト11を介して回動可能に取付けられている。一方、前窓8の他方の側部側となる右枠部8Dの上側範囲には、上,下方向に間隔をもって2個のガード固定座8Gが設けられている。各ガード固定座8Gには、上前面ガード9の一部をなす移動枠12がボルト11を介して着脱可能に固定される。
【0022】
さらに、左枠部8Cの各ガード取付座8F間および右枠部8Dの各ガード固定座8G間には、それぞれ保持梁固定座8Hが設けられている。各保持梁固定座8Hには、後述する上保持梁17の両端部がボルト18を介して着脱可能に固定される。
【0023】
次に、本実施の形態の特徴部分となる前面ガードとしての上前面ガード9と下前面ガード19の構成について説明する。なお、上前面ガード9と下前面ガード19は、上,下方向の長さ寸法が異なる以外は同じ構成となっている。そこで、上前面ガード9の構成および動作について説明し、下前面ガード19の構成および動作の説明は省略する。
【0024】
また、本実施の形態では、前面ガードを上前面ガード9と下前面ガード19とによって構成しているから、キャブ7の前面部7A(前窓8)の湾曲形状に対応するように、上前面ガード9と下前面ガード19の取付角度を調整することで、上前面ガード9と下前面ガード19は、前面部7Aの全体を覆うことができる。一方で、キャブの前面部(前窓)が平らな場合には、1枚の前面ガードだけで前面部7Aの全体を覆うことができる。
【0025】
上前面ガード9は、前窓8の上側範囲を覆ってキャブ7に設けられた前面ガードを構成している。上前面ガード9は、左,右方向の一方となる左側に折畳み可能な蛇腹構造体として形成されている。これにより、上前面ガード9は、左,右方向に延びて前窓8を覆った作業形態(図2図4に示す形態)と、キャブ7の一方の側部側となる左側に折畳んで片寄せられた清掃形態(図3図9に示す形態)とに切換可能となっている。上前面ガード9は、後述の一体取付枠10、移動枠12、折畳みガード部13を含んで構成されている。
【0026】
一体取付枠10は、前窓8の一方の側部側となる左枠部8C側に位置してキャブ7に取付けられている。一体取付枠10は、短尺な上枠10Aおよび下枠10B、長尺な左枠10Cおよび右枠10Dにより上,下方向に延びた縦長な枠体として形成されている。この上で、一体取付枠10は、左枠10Cと右枠10Dとの間に1本または複数本、例えば2本の桟10Eを有している。各桟10Eは、前方の視界を確保できるように、左,右方向に薄肉で上,下方向に延びた板体として形成されている。そして、各桟10Eは、上端部が上枠10Aに固着され、下端部が下枠10Bに固着されている。また、一体取付枠10の上,下方向の中間位置には、左,右方向に延びて補強軸10Fが設けられている。この補強軸10Fは、左枠10C、右枠10Dおよび各桟10Eに固着され、これらを一定の間隔で固定している。これにより、一体取付枠10は、前窓8に向けて飛来する石等を跳ね返すことができる強度を有している。
【0027】
左枠10Cには、前窓8の各ガード取付座8Fに対応する2箇所にヒンジ10Gの一方の回動片が取付けられている。また、各ヒンジ10Gの他方の回動片は、締結部材としてのボルト11を用いてガード取付座8Fに一体的に取付けられている。これにより、一体取付枠10は、キャブ7に対して水平方向に回動可能に取付けられている。なお、この場合の水平方向とは、水平を含み、水平に近い方向を示している。
【0028】
移動枠12は、前窓8の他方の側部側となる右枠部8D側に位置してキャブ7に着脱可能に取付けられている。移動枠12は、一体取付枠10とほぼ同様に、上枠12A、下枠12B、左枠12C、右枠12D、桟12Eおよび補強軸12Fにより縦長な枠体として形成されている。右枠12Dには、前窓8の各ガード固定座8Gに対応する2箇所にボルト挿通孔12Gが設けられている。右枠12Dは、各ボルト挿通孔12Gに挿通したボルト11を前窓8の各ガード固定座8Gに螺着することにより、ガード固定座8Gに着脱可能に固定することができる。
【0029】
折畳みガード部13は、一体取付枠10と移動枠12との間に複数枚、例えば、6枚配置されることにより、蛇腹状の折畳み構造を形成している。各折畳みガード部13は、一体取付枠10、移動枠12とほぼ同様に、上枠13A、下枠13B、左枠13C、右枠13D、桟13Eおよび補強軸13Fにより縦長な枠体として形成されている。
【0030】
図4に示すように、一体取付枠10、移動枠12および各折畳みガード部13は、前窓8に沿うように並べられた状態で、各ヒンジ14によって折畳み可能に連結されている。具体的には、一体取付枠10の上枠10Aと隣り合う1番目の折畳みガード部13の上枠13Aとが前窓8側となる裏側に配置されたヒンジ14によって回動可能に連結されている。同様に、一体取付枠10の下枠10Bと隣り合う1番目の折畳みガード部13の下枠13Bとが裏側に配置されたヒンジ14によって回動可能に連結されている。
【0031】
続いて、1番目の折畳みガード部13の上枠13Aと隣り合う2番目の折畳みガード部13の上枠13Aとが前窓8と反対側となる表側に配置されたヒンジ14によって回動可能に連結されている。同様に、1番目の折畳みガード部13の下枠13Bと隣り合う2番目の折畳みガード部13の下枠13Bとが表側に配置されたヒンジ14によって回動可能に連結されている。
【0032】
そして、一体取付枠10、移動枠12および各折畳みガード部13は、裏側と表側とに交互に配置されたヒンジ14によって6番目の折畳みガード部13と移動枠12との間まで回動可能に連結されている。これにより、一体取付枠10、移動枠12および各折畳みガード部13は、移動枠12を左側に移動させ、山折り、谷折りを交互に繰り返して左側に片寄せることにより、図3図9に示すように、蛇腹状に折畳むことができる。この一体取付枠10、移動枠12および各折畳みガード部13を蛇腹状に折畳んだ状態が、窓ガラス8Eの清掃が可能な清掃形態となる。
【0033】
図5図6に示すように、移動枠12の下枠12Bおよび各折畳みガード部13の下枠13Bの何れかには、下向きに突出して複数個の係合突起15が設けられている。係合突起15は、移動枠12の下枠12Bの右端部、6番目、4番目、2番目に位置する折畳みガード部13の下枠13Bの左端部にそれぞれ設けられている。そして、各係合突起15は、後述する上ガイド部材16のガイド溝16Aに係合する。
【0034】
上ガイド部材16は、ガイド部材を構成している。上ガイド部材16は、上前面ガード9の下側に近接して設けられている。上ガイド部材16は、上前面ガード9を折畳むときに上前面ガード9、即ち、一体取付枠10、移動枠12および各折畳みガード部13を前窓8に沿って左,右方向にガイドする。上ガイド部材16は、左,右方向に延び、その両端部が前窓8の左枠部8C、右枠部8Dに取付けられている。上ガイド部材16の上面には、上側に開口して左,右方向に延びた凹溝状のガイド溝16Aが形成されている。このガイド溝16Aには、上前面ガード9の各係合突起15が摺動(移動)可能に係合している。
【0035】
図7に示すように、上ガイド部材16には、上前面ガード9が折畳まれる左側に位置してガイド解除部16Bが形成されている。ガイド解除部16Bは、ガイド溝16Aの左側部分を前方に開放する切欠として形成されている。図9に示すように、ガイド解除部16Bは、上前面ガード9を折畳んで清掃形態とした状態で、移動枠12の係合突起15よりも右側まで切り欠かれている。
【0036】
これにより、図10に示すように、ガイド解除部16Bは、上前面ガード9が清掃形態に切換えられたときに、上前面ガード9が前窓8から離れる方向(矢示方向)に回動するのを許すことができる。このように上前面ガード9が前窓8から離れた退避状態では、窓ガラス8Eの左隅まで容易に清掃することができる。
【0037】
図2に示すように、上保持梁17は、保持梁を構成している。上保持梁17は、上前面ガード9を作業形態で保持する。図8に示すように、上保持梁17は、上前面ガード9に前側から当接して左,右方向に延びた板部17Aと、板部17Aから上前面ガード9に向けて突出した複数の突起部17Bとにより構成されている。各突起部17Bは、例えば折畳みガード部13の補強軸13Fを挟むように二又状に形成されている。しかも、各突起部17Bは、各桟13Eの間の隙間に差し込まれて任意の桟13Eと係合している。
【0038】
上保持梁17は、ボルト18を用いて板部17Aの両端部を前窓8の保持梁固定座8Hに固定される。この固定状態では、板部17Aは、一体取付枠10、移動枠12および各折畳みガード部13を前側から押圧して前,後方向に保持することができる。また、各突起部17Bは、一体取付枠10、移動枠12および各折畳みガード部13を上,下方向と左,右方向に保持することができる。これにより、上保持梁17は、上前面ガード9の振動(ガタツキ)を抑制することができる。また、上前面ガード9が不用意に折畳まれるような事態を防止することができる。
【0039】
下前面ガード19は、前窓8の下側範囲を覆ってキャブ7に設けられた前面ガードを構成している。下前面ガード19は、上前面ガード9と同様に、左,右方向の一方となる左側に折畳み可能な蛇腹構造体として形成されている。これにより、下前面ガード19は、左,右方向に延びて前窓8を覆った作業形態と、左側に折畳んで片寄せられた清掃形態とに切換えることができる。下前面ガード19には、ガイド部材をなす下ガイド部材20、保持梁をなす下保持梁21が設けられている。
【0040】
図1図2に示すように、運転席22は、キャブ7内に位置して運転席台座7F上に設けられている。運転席22には、オペレータが着座する。運転席22の前方には、走行用の操作レバー23が設けられ、運転席22の左,右両側には、作業用の操作レバー24が設けられている。
【0041】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0042】
まず、オペレータは、キャブ7に乗り込んで運転席22に着座し、走行用の操作レバー23を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、作業用の操作レバー24を操作することにより、作業装置4のブーム4B、アーム4C、バケット4D等を動作させて土砂の掘削作業等を行なうことができる。
【0043】
ここで、作業装置4によって土砂の掘削作業等を行なっているときには、石等が飛散し、その一部がキャブ7の前窓8に向けて飛んでくる。しかし、キャブ7には、前窓8を覆うように上前面ガード9と下前面ガード19を設けている。これにより、各前面ガード9,19は、飛来する石等を弾き飛ばすことができ、石等から窓ガラス8Eを保護することができる。
【0044】
油圧ショベル1が作業を行う現場では、砂埃が舞い上がり、雨水が降り掛かる。このために、前窓8の窓ガラス8Eが汚れてしまう。そこで、前窓8には、窓ガラス8Eに付着した汚れを拭き取るワイパ装置(図示せず)が設けられている。しかし、ワイパ装置によって拭き取られるのは、窓ガラス8Eの一部だけであり、窓ガラス8Eに汚れが残ってしまう。このために、油圧ショベル1の稼働時には、定期的に手作業で前窓8の窓ガラス8Eを清掃する作業が必要になる。
【0045】
一方、小型の油圧ショベル1は、路地や建物の内部のような狭い場所での作業に用いられるから、停車時に作業装置4を延ばす、即ち、ブーム4Bを前側に倒すためのスペースを確保するのが難しい。このために、小型の油圧ショベル1は、ブーム4Bを立ち上げた状態で停車させる場合がある。しかし、立ち上げたブーム4Bは、キャブ7の前側に配置されることになる。
【0046】
ここで、特許文献1のように、キャブに対してボルトを用いて前面ガードを取付ける構成では、立ち上げたブームがボルトを外すときに邪魔になってしまう。特に、左,右両側のボルトを外すためには、作業途中で作業装置を回り込まなくてはならない。しかも、取外した前面ガードを運ぶ場合にも、ブームが邪魔になる。
【0047】
然るに、本実施の形態によれば、前窓8を覆ってキャブ7に設けられた前面ガードとしての上前面ガード9と下前面ガード19は、左方向に折畳み可能な蛇腹構造体として形成されている。従って、上前面ガード9と下前面ガード19は、左,右方向に延びて前窓8を覆った作業形態と、キャブ7の一方の側部となる左側に折畳んで片寄せられた清掃形態とに切換えることができる。
【0048】
これにより、前窓8の窓ガラス8Eを清掃する場合には、各前面ガード9,19は、左方向に折畳んで清掃形態とすることにより、当該各前面ガード9,19取外すことなく前窓8の窓ガラス8Eを清掃することができる。この結果、キャブ7に各前面ガード9,19を設けた場合でも、前窓8(窓ガラス8E)の清掃作業を容易に行うことができる。
【0049】
しかも、各前面ガード9,19は、蛇腹状に折畳むことができるから、立ち上げたブーム4Bがキャブ7の前側に配置された場合でも、各前面ガード9,19を清掃形態に切換えることができ、前窓8の清掃作業を行うことができる。
【0050】
上前面ガード9は、前窓8の左枠部8C側に位置してキャブ7に取付けられた一体取付枠10と、前窓8の右枠部8D側に位置してキャブ7に着脱可能に取付けられた移動枠12と、一体取付枠10と移動枠12との間に配置され蛇腹状の折畳み構造を形成している複数の折畳みガード部13とにより構成されている。これにより、一体取付枠10、移動枠12および各折畳みガード部13は、山折り、谷折りを交互に繰り返して左側に片寄せることにより、蛇腹状に折畳むことができる。下前面ガード19についても同様の効果を得ることができる。
【0051】
上前面ガード9は、当該上前面ガード9を作業形態で保持するための上保持梁17を備えている。これにより、上保持梁17は、上前面ガード9がガタついたり、不用意に折畳まれたりするのを防止することができる。下保持梁21についても、下前面ガード19に対して同様の効果を得ることができる。
【0052】
上前面ガード9の一体取付枠10は、キャブ7に対して水平方向に回動可能に取付けられている。また、移動枠12は、キャブ7に対して締結部材としてのボルト11を用いて着脱可能に取付けられている。従って、ボルト11を緩めて移動枠12を前窓8の左側に移動させることにより、上前面ガード9を折畳んで清掃形態に切換えることができる。この上前面ガード9の清掃形態では、前窓8から離れる方向に一体取付枠10を回動させることにより、上前面ガード9を前窓8から離れた退避位置に配置することができ、窓ガラス8Eの左隅まで容易に清掃することができる。下前面ガード19についても同様の効果を得ることができる。
【0053】
さらに、上前面ガード9は、前方の視界を確保しつつ前窓8を保護するための複数の桟10E,12E,13Eを有している。この上で、上保持梁17には、各桟10E,12E,13Eの間の隙間に差し込まれて係合する突起部17Bが設けられている。これにより、上保持梁17は、各突起部17Bを一体取付枠10、移動枠12および各折畳みガード部13の各桟10E,12E,13Eに係合させることができる。この結果、上保持梁17は、上前面ガード9の振動(ガタツキ)を抑制することができる。下保持梁21についても、下前面ガード19に対して同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、実施の形態では、上前面ガード9、下前面ガード19は、左,右方向の左側に折畳む構成とした場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、上前面ガード、下前面ガードは、左,右方向の右側に折畳む構成としてもよい。
【0055】
実施の形態では、スイング式の作業装置4を備えた後方超小旋回型の油圧ショベル1に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、超小旋回型の油圧ショベル等の他の形態の油圧ショベルに適用してもよい。また、スイング式以外にもオフセット式、モノブーム式の作業装置を備えた油圧ショベルに適用してもよい。
【0056】
さらに、実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、ホイール式の油圧ショベル等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業装置
5 旋回フレーム
7 キャブ
8 前窓
9 上前面ガード(前面ガード)
10 一体取付枠
10E,12E,13E 桟
11 ボルト(締結部材)
12 移動枠
13 折畳みガード部
16 上ガイド部材(ガイド部材)
16B ガイド解除部
17 上保持梁(保持梁)
17B 突起部
19 下前面ガード(前面ガード)
20 下ガイド部材(ガイド部材)
21 下保持梁(保持梁)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10