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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】気密材及び建物の気密構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20220106BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
E04B1/684 G
E04B9/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019196375
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070928
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関谷 佳子
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩
(72)【発明者】
【氏名】池田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】林本 秀夫
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-123549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04B 9/00 - 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の梁と天井形成材との間に配されて、建物の気密性を向上させるための気密材であって、
長手方向と、前記長手方向と直交する幅方向とを規定する面材状の基材を含み、
前記基材は、前記長手方向にのびる第1縁部と、前記第1縁部とは反対側の第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部との間の変形容易部とを含み、
前記第1縁部側は、前記梁の下面に固着するための固着部が形成されており、
前記変形容易部は、前記第2縁部が前記第1縁部へ向かう力を受けたときに、前記基材の前記幅方向の寸法を減少させるように変形し、
前記変形容易部は、前記力を受けたときに、前記長手方向に沿って前記基材が折り曲がるように、前記基材の他の部分に比べて、低い剛性を有する部分である、
気密材。
【請求項2】
前記変形容易部は、前記幅方向に間隔を空けて、複数設けられている、請求項1記載の気密材。
【請求項3】
建物の梁と天井形成材との間に配されて、建物の気密性を向上させるための気密材であって、
前記天井形成材は、野縁と、前記野縁の下面に固定される天井仕上材とを含み、
前記気密材は、長手方向と、前記長手方向と直交する幅方向とを規定する面材状の基材を含み、
前記基材は、前記長手方向にのびる第1縁部と、前記第1縁部とは反対側の第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部との間の変形容易部と、前記野縁を前記第2縁部側で貫通させる孔部を形成するための孔部形成部とを含み、
前記第1縁部側は、前記梁の下面に固着するための固着部が形成されており、
前記変形容易部は、前記第2縁部が前記第1縁部へ向かう力を受けたときに、前記基材の前記幅方向の寸法を減少させるように変形する、
気密材。
【請求項4】
前記孔部形成部は、前記基材が前記野縁に向き合う位置に、前記第2縁部から前記第1縁部側に向かう切り込みを形成可能な切込形成部を含み、
前記孔部は、前記基材の厚さ方向に、前記切り込みから前記基材が折り曲げられることによって形成される、請求項3記載の気密材。
【請求項5】
前記固着部は、粘着層を含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の気密材。
【請求項6】
梁と天井形成材との間に気密材が配された建物の気密構造であって、
前記気密材は、長手方向と、前記長手方向と直交する幅方向とを規定する面材状の基材を含み、
前記基材は、前記長手方向にのびる第1縁部と、前記第1縁部とは反対側の第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部との間の変形容易部とを含み、
前記第1縁部側は、前記梁の下面に固着するための固着部が形成されており、
前記固着部は、前記第1縁部が前記建物の屋外側を向くように折り曲げられており、
前記変形容易部は、前記第2縁部が前記第1縁部へ向かう力を受けたときに、前記基材の前記幅方向の寸法を減少させるように変形する、
建物の気密構造。
【請求項7】
梁と天井形成材との間に気密材が配された建物の気密構造であって、
前記気密材は、長手方向と、前記長手方向と直交する幅方向とを規定する面材状の基材を含み、
前記基材は、前記長手方向にのびる第1縁部と、前記第1縁部とは反対側の第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部との間の変形容易部とを含み、
前記第1縁部側は、前記梁の下面に固着するための固着部が形成されており、
前記第2縁部側は、前記天井形成材の上面に当接可能な当接部が形成されており、
前記当接部は、前記第2縁部が前記建物の屋外側を向くように折り曲げられており、
前記変形容易部は、前記第2縁部が前記第1縁部へ向かう力を受けたときに、前記基材の前記幅方向の寸法を減少させるように変形する、
建物の気密構造。
【請求項8】
梁と天井形成材との間に気密材が配された建物の気密構造であって、
前記天井形成材は、野縁と、前記野縁の下面に固定される天井仕上材とを含み、
前記気密材は、長手方向と、前記長手方向と直交する幅方向とを規定する面材状の基材を含み、
前記基材は、前記長手方向にのびる第1縁部と、前記第1縁部とは反対側の第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部との間の変形容易部とを含み、
前記第1縁部側は、前記梁の下面に固着するための固着部が形成されており、
前記第2縁部側は、前記天井仕上材に当接しており、
前記変形容易部は、前記第2縁部が前記第1縁部へ向かう力を受けたときに、前記基材の前記幅方向の寸法を減少させるように変形し、
前記気密材は、前記野縁を、前記基材の厚さ方向で貫通させている、
建物の気密構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密材及び建物の気密構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業化住宅のみならず、木造住宅においても、高気密化が進んでいる。このような建物は、外気の進入を抑制し、空気調和機(エアコン)の負荷を低減することができる。関連する技術としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-194422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地球温暖化への対策として、建物への省エネルギー化の要求が年々高まっている。これに伴って、建物の気密性のさらなる向上が望まれている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、建物の気密性を高めることが可能な気密材等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物の梁と天井形成材との間に配されて、建物の気密性を向上させるための気密材であって、長手方向と、前記長手方向と直交する幅方向とを規定する面材状の基材を含み、前記基材は、前記長手方向にのびる第1縁部と、前記第1縁部とは反対側の第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部との間の変形容易部とを含み、前記第1縁部側は、前記梁の下面に固着するための固着部が形成されており、前記変形容易部は、前記第2縁部が前記第1縁部へ向かう力を受けたときに、前記基材の前記幅方向の寸法を減少させるように変形することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記気密材において、前記固着部は、粘着層を含んでもよい。
【0008】
本発明に係る前記気密材において、前記変形容易部は、前記力を受けたときに、前記長手方向に沿って前記基材が折り曲がるように、前記基材の他の部分に比べて、低い剛性を有する部分であってもよい。
【0009】
本発明に係る前記気密材において、前記変形容易部は、前記幅方向に間隔を空けて、複数設けられていてもよい。
【0010】
本発明に係る前記気密材において、前記天井形成材は、野縁と、前記野縁の下面に固定される天井仕上材とを含み、前記基材は、前記野縁を前記第2縁部側で貫通させる孔部を形成するための孔部形成部を含んでもよい。
【0011】
本発明に係る前記気密材において、前記孔部形成部は、前記基材が前記野縁に向き合う位置に、前記第2縁部から前記第1縁部側に向かう切り込みを形成可能な切込形成部を含み、前記孔部は、前記基材の厚さ方向に、前記切り込みから前記基材が折り曲げられることによって形成されてもよい。
【0012】
本発明は、建物の気密構造であって、梁と天井形成材との間に、請求項1ないし6のいずれかに記載の気密材が配されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る前記建物の気密構造において、前記固着部は、前記第1縁部が前記建物の屋外側を向くように折り曲げられていてもよい。
【0014】
本発明に係る前記建物の気密構造において、前記第2縁部側は、前記天井形成材の上面に当接可能な当接部が形成されており、前記当接部は、前記第2縁部が前記建物の屋外側を向くように折り曲げられていてもよい。
【0015】
本発明に係る前記建物の気密構造において、前記天井形成材は、野縁と、前記野縁の下面に固定される天井仕上材とを含み、前記第2縁部側は、前記天井仕上材に当接しており、前記気密材は、前記野縁を、前記基材の厚さ方向で貫通させていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の気密材は、上記の構成を備えることにより、前記建物の前記梁と前記天井形成材との間の隙間を低減し、気密性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の気密材が配された建物の気密構造の一例を示す部分断面図である。
図2】気密材の一例を示す部分斜視図である。
図3】(a)~(c)は、建物の気密構造の施工方法の一例を示す部分断面図である。
図4】本発明の他の実施形態の気密構造の一例を示す断面図である。
図5】本発明の他の実施形態の気密材の一例を示す部分斜視図である。
図6図4に示した建物の気密構造の施工方法の一例を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。なお、各図面は、発明の内容の理解を高めるためのものである。したがって、各図面には、誇張された表示が含まれる他、各図面間において、縮尺等は厳密に一致していない点が予め指摘される。
【0019】
図1は、本実施形態の気密材1が配された建物2の気密構造(以下、単に「気密構造」ということがある。)3の一例を示す部分断面図である。建物2は、例えば、住宅やビル等である場合が例示される。本実施形態の建物2は、上階部分(例えば、二階部分)4に対して、下階部分(例えば、一階部分)5が屋外側6に突出しており、いわゆる部分平屋である場合が例示されるが、このような態様に限定されない。建物2は、例えば、上階部分4と下階部分5とが、建物2の水平方向(図1のz軸方向)で同一の位置に設けられるものでもよい。
【0020】
建物2は、梁7と天井形成材8とを含んで構成されている。
【0021】
本実施形態の梁7は、屋根梁7Aと、床梁7Bとを含んで構成されている。屋根梁7A及び床梁7Bは、ウエブ7a、上フランジ7b及び下フランジ7cを含むH形鋼として構成されているが、このような態様に限定されない。また、本実施形態では、下階部分5の屋根梁7Aと、上階部分4の床梁7Bとが、建物2の垂直方向(図1のy軸方向)において、略同一の位置に設けられているが、互いに位置ずれしていてもよい。屋根梁7Aと床梁7Bとの間には、天井形成材8の上部に、断熱材9が配されている。
【0022】
天井形成材8は、野縁11と、天井仕上材12とを含んで構成されている。
【0023】
野縁11は、例えば、断面略矩形状に形成されているが、このような態様に限定されない。本実施形態の野縁11は、床梁7Bの長手方向(図1の奥行方向(x軸方向))に沿って延びており、床梁7Bと直交する方向(屋内側から屋外側6に向かう方向(図1のz軸方向))において、間隔を空けて複数設けられている。一方、天井仕上材12は、例えば、石膏ボードなどの面材として構成されている。
【0024】
野縁11及び天井仕上材12は、建物2の施工時において、梁7(床梁7B)側に持ち上げられる。そして、野縁11は、図示しない固定部材を介して、梁7(床梁7B)に固定される。一方、天井仕上材12は、野縁11の下面11tに固定される。これらの固定時において、床梁7B及び天井形成材8は、垂直方向(図1のy軸方向)において互いに離間している(すなわち、隙間22が形成される)。
【0025】
本実施形態の気密構造3では、梁7と天井形成材8(本例では、天井仕上材12)との間に、気密材1が配されている。図2は、気密材1の一例を示す部分斜視図である。
【0026】
本実施形態の気密材1は、面材状に形成された基材14を含んで構成されている。この基材14は、長尺状に形成されている。このような基材14は、長手方向と、この長手方向と直交する幅方向とが規定されている。なお、本明細書において、基材14の長手方向がx軸方向とされ、幅方向がy軸方向とされ、厚さ方向がz軸方向とされている。
【0027】
基材14は、気密性を有するもので形成されている。本実施形態の基材14は、プラスチックダンボール(例えば、ポリプロピレン製)で構成されているが、例えば、耐水ダンボール、スチレンフォーム、又は、発泡ポリエチレンなどで形成された板部材等で構成されてもよい。
【0028】
基材14は、第1縁部14a、第2縁部14b、及び、変形容易部15を含んで構成されている。第1縁部14a及び第2縁部14bは、基材14の幅方向yの両側に設けれている。本実施形態において、第1縁部14a側は、図1に示した梁7(床梁7B)の下面7sに固定される。一方、第2縁部14b側は、図1に示した天井形成材8の上面8s(本例では、天井仕上材12の上面12s)に固定される。変形容易部15は、基材14の幅方向yにおいて、第1縁部14aと第2縁部14bとの間に設けられている。
【0029】
基材14の第1縁部14a側には、図1に示した梁7(本例では、床梁7B)の下面7sに固着するための固着部19が形成されている。本実施形態の固着部19は、第1縁部14a側が長手方向xに沿って折り曲げられることにより、基材14の厚さ方向zの一方の面14sを、床梁7Bの下面7sに当接(本例では、粘着層20を介して当接)させることができる。このような固着部19は、床梁7Bの下面7sと面接触することができるため、気密材1を床梁7Bに安定して固定されうる。
【0030】
基材14の第1縁部14a側の折り曲げは、例えば、第1縁部14aと第2縁部14bとの間において、第1縁部14a側に形成された第1折り曲げ可能部17に沿って行うことができる。この第1折り曲げ可能部17は、基材14の長手方向xに沿って延びている。
【0031】
第1折り曲げ可能部17については、基材14を容易に折り曲げることができれば、適宜形成することができる。本実施形態の第1折り曲げ可能部17は、基材14の他の部分(本例では、変形容易部15や、後述の第2折り曲げ可能部18を除く部分)に比べて、低い剛性を有する部分として形成されている。本実施形態において、低い剛性を有する部分は、基材14の厚さが薄く形成された罫線である場合が例示されるが、小さい穴が間隔を空けて並べられたミシン目(図示省略)等であってもよい。
【0032】
固着部19には、図1に示した梁7(本例では、床梁7B)の下面7sに当接する部分(一方の面14s)に、粘着層20が設けられるのが望ましい。これにより、固着部19は、粘着層20を介して、梁7の下面7sに安定して固着されうる。粘着層20は、気密材1の製造段階で設けられるのが望ましい。これにより、建物2の施工現場において、粘着層20の形成する工程(例えば、接着剤等を塗布する工程など)が不要となるため、施工性が向上する。
【0033】
粘着層20の材質としては、図1に示した梁7の下面7sと基材14とを安定して固着できるものであれば、適宜選択することができる。また、粘着層20には、例えば、梁7の下面7s以外への意図しない接着等を防ぐために、図示しない離型紙等が配されるのが望ましい。本実施形態の粘着層20は、両面テープで構成されている。
【0034】
本実施形態の基材14の第2縁部14b側には、図1に示した天井形成材8の上面8s(本例では、天井仕上材12の上面12s)に当接可能な当接部21が形成されている。本実施形態の当接部21は、第2縁部14b側が長手方向xに沿って折り曲げられることにより、基材14の厚さ方向zの一方の面14sを、天井形成材8の上面8sに当接させることができる。このような当接部21は、建物2(図1に示す)の施工時において、天井形成材8が持ち上げられたときに、天井形成材8の上面8sと面接触することができるため、気密材1を天井形成材8に安定して当接されうる。
【0035】
基材14の第2縁部14b側の折り曲げは、例えば、第1縁部14aと第2縁部14bとの間において、第2縁部14b側に形成された第2折り曲げ可能部18に沿って行うことができる。この第2折り曲げ可能部18は、基材14の長手方向xに沿って延びている。
【0036】
第2折り曲げ可能部18については、基材14を容易に折り曲げることができれば、適宜形成することができる。本実施形態の第2折り曲げ可能部18は、上述の第1折り曲げ可能部17と同様に形成することができる。なお、当接部21には、粘着層20が設けられていなくてもよい。これにより、気密材1は、建物2の施工時において、天井形成材8が持ち上げられたときに、天井形成材8の上面8sの意図しない部分に、当接部21が固着されるのを防ぐことができる。
【0037】
変形容易部15は、第2縁部14bが第1縁部14aへ向かう力F(図3(b)に示す)を受けたときに、基材14の幅方向yの寸法(長さL1)を減少させるように、基材14を変形させるためのものである。本実施形態において、上述の力Fは、建物2(図1に示した)の施工時に持ち上げられた天井形成材8から第2縁部14bに与えられる。
【0038】
変形容易部15については、上述のような変形を可能にするものであれば、適宜形成することができる。本実施形態の変形容易部15は、力F(図3(b)に示す)を受けたときに、長手方向xに沿って基材14が折り曲がるように、基材14の他の部分に比べて、低い剛性を有する部分として形成されるのが望ましい。本実施形態において、基材14の他の部分とは、第1折り曲げ可能部17、及び、第2折り曲げ可能部18を除いた部分である。本実施形態の変形容易部15は、上述の第1折り曲げ可能部17と同様に、基材14の厚さが薄く形成された罫線である場合が例示されるが、小さい穴が間隔を空けて並べられたミシン目(図示省略)等であってもよい。
【0039】
変形容易部15は、基材14の幅方向yにおいて、少なくとも一つ設けられていればよい。本実施形態の変形容易部15は、基材14の幅方向yに間隔を空けて、複数設けられている。本実施形態の変形容易部15は、第1縁部14a側に設けられた第1変形容易部15Aと、第1変形容易部15Aに対して、第2縁部14b側に設けられた第2変形容易部15Bとを含んで構成されている。変形容易部15の個数が多くなるほど、基材14の幅方向yの寸法(長さL1)をより減少させることが可能となる。
【0040】
次に、本実施形態の気密材1を用いた建物2の気密構造3の施工方法の一例が説明される。図3(a)~(c)は、建物2の気密構造3の施工方法の一例を示す部分断面図である。
【0041】
図3(a)に示されるように、本実施形態の施工方法では、先ず、梁7(床梁7B)の下面7sに、気密材1の固着部19が固着される。本実施形態では、床梁7Bの下面7sへの固着に先立ち、固着部19及び当接部21が予め折り曲げられているが、このような態様に限定されない。また、床梁7Bの下面7sへの固着には、気密材1の固着部19に設けられた粘着層20が用いられる。なお、固着部19に粘着層20が設けられていない場合には、床梁7Bの下面7sへの固着に先立ち、図示しない接着剤等が固着部19に塗布される。
【0042】
次に、本実施形態の施工方法では、図3(a)において二点鎖線で示されるように、天井形成材8が、梁7(床梁7B)側に持ち上げられる。これにより、気密材1の当接部21(第2縁部14b)に、天井形成材8の上面8s(本例では、天井仕上材12の上面12s)を当接させることができる。本実施形態の気密材1では、折り曲げられた当接部21が元の状態に戻ろうとする復元力を作用させることにより、当接部21を天井形成材8の上面8sに密着させることが可能となる。
【0043】
図3(b)及び(c)に示されるように、天井形成材8がさらに持ち上げられることにより、第2縁部14bが、天井形成材8(本例では、天井仕上材12)から第1縁部14aへ向かう力Fを受ける。この力Fを受けたときに、本実施形態の変形容易部15は、長手方向xに沿って折り曲がる。これにより、変形容易部15は、基材14の幅方向yの寸法(図2に示した長さL1)を減少させるように変形(座屈)することができる。そして、天井形成材8の上面8sに当接部21を当接させたまま、天井形成材8が梁7(床梁7B)に固定される。これにより、梁7と天井形成材8との間の隙間22を低減させた気密構造3が形成される。
【0044】
このように、実施形態の気密材1(気密構造3)は、梁7と天井形成材8との間の隙間22を低減でき、建物2の気密性を向上させることができる。さらに、本実施形態の気密材1は、梁7と天井形成材8との間の寸法に応じて、基材14の幅方向yの寸法を柔軟に変化させることができる。これにより、本実施形態の気密材1(気密構造3)は、梁7と天井形成材8(本例では、天井仕上材12)との間の隙間22を効果的に低減することができ、建物2の気密性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態の気密材1は、図3(a)の長さL2から図3(c)の長さL3までの間において、基材14の幅方向yの寸法を、梁7と天井形成材8との間の寸法に応じて柔軟に変化させることができる。したがって、本実施形態の気密材1は、梁7と天井形成材8との間の寸法が異なる様々な建物2において、梁7と天井形成材8との間の隙間22を確実に低減することができるため、汎用性を向上させることができる。なお、気密材1は、変形容易部15の個数が多く(例えば、3つ以上に)設定されることで、基材14の幅方向yの寸法をより減少させることができるため、汎用性をさらに向上させることができる。
【0046】
また、梁7と天井形成材8との間の寸法が、図3(a)の長さL2よりも大きい場合には、当接部21の全体を天井仕上材12に当接させずに、第2縁部14bのみを天井仕上材12に当接させてもよい。このような気密構造3も、当接部21を天井仕上材12に当接させた気密構造3と同様に、梁7と天井形成材8との間の隙間22を低減し、気密性を向上させることができる。
【0047】
図3(b)に示されるように、気密構造3では、梁7と天井形成材8(本例では、天井仕上材12)との間に気密材1が配された状態において、第1縁部14aが建物2の屋外側6を向くように、固着部19が折り曲げられるのが望ましい。これにより、気密構造3は、屋外側6から気密材1側に進入した外気A1を、固着部19側に案内することができる。この案内された外気A1により、固着部19が、梁7(床梁7B)の下面7s側に押し付けられる。これにより、気密構造3は、外気A1の進入による固着部19の位置ずれ、及び、固着部19と床梁7Bの下面7sとの間からの外気A1の進入を抑制することができる。
【0048】
さらに、気密構造3では、梁7と天井形成材8(本例では、天井仕上材12)との間に気密材1が配された状態において、第2縁部14bが建物2の屋外側6を向くように、当接部21が折り曲げられるのが望ましい。これにより、気密構造3は、固着部19と同様に、屋外側6から進入する外気A1を当接部21側に案内することができる。したがって、気密構造3は、外気A1の進入による当接部21の位置ずれ、及び、当接部21と天井形成材8との間からの外気A1の進入を抑制することができる。
【0049】
本実施形態の気密材1(気密構造3)は、当接部21を、天井仕上材12の上面12sに当接させる態様が例示されたが、このような態様に限定されない。
【0050】
気密材1の当接部21(あるいは、床梁7B)の下方に、床梁7Bの長手方向(図1のx軸方向)に沿って延びる野縁11が存在する場合には、当接部21を野縁11の上面11sに当接させてもよい。これにより、この本実施形態の気密材1(気密構造3)は、梁7と野縁11(即ち、野縁11及び天井仕上材12を含む天井形成材8)との間の隙間22を低減することができ、建物2の気密性を向上させることができる。
【0051】
これまでの実施形態の天井形成材8は、床梁7Bの長手方向(図1のx軸方向)に沿って延びる野縁11を含む態様が例示されたが、このような態様に限定されない。例えば、天井形成材8には、床梁7Bと直交する方向(図1において、屋内側から屋外側6に向かう方向(z軸方向))に延びる野縁11が含まれてもよい。図4は、本発明の他の実施形態の気密構造3の一例を示す断面図である。この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0052】
この実施形態の野縁11を含む建物2において、図2に示した気密材1が配されると、気密材1の当接部21が、野縁11の上面11sのみに当接する。このため、床梁7Bの長手方向(図4のx軸方向)で隣り合う野縁11、11間において、当接部21と天井仕上材12との間に隙間が生じるため、これまでの実施形態のような気密性を維持することが困難となる。したがって、気密材1は、基材14の厚さ方向zで野縁11を貫通させて、第2縁部14b側(当接部21)を、天井仕上材12に当接させるのが望ましい。図5は、本発明の他の実施形態の気密材1の一例を示す部分斜視図である。
【0053】
この実施形態の気密材1には、基材14に、孔部形成部23が形成されている。この孔部形成部23は、野縁11(図4に示す)を第2縁部14b側で貫通させる孔部24を形成するためのものである。
【0054】
孔部形成部23の構成については、野縁11(図4に示す)を貫通可能な孔部24が形成可能であれば、特に限定されない。本実施形態の孔部形成部23は、基材14が野縁11に向き合う位置に、第2縁部14bから第1縁部14a側に向かう切り込み25を形成可能な切込形成部26を含んでいる。
【0055】
本実施形態の切込形成部26は、第1切込形成部27と、一対の第2切込形成部28、28とを含んで構成されている。第1切込形成部27、及び、一対の第2切込形成部28、28は、施工現場において容易に切断可能なミシン目である場合が例示されるが、切り込み25の位置を示した線であってもよい。
【0056】
第1切込形成部27は、第2縁部14bから第1縁部14aに向かって延び、かつ、第1縁部14aに至ることなく終端している。本実施形態の第1切込形成部27は、基材14の幅方向yに沿って延びている。第1切込形成部27の第1縁部14a側の端部は、第2変形容易部15Bと、第2折り曲げ可能部18との間に設けられている。
【0057】
一対の第2切込形成部28、28は、第1切込形成部27から第1縁部14aに向かって延び、かつ、第1縁部14aに至ることなく終端している。一対の第2切込形成部28は、基材14の長手方向xにおいて、第1切込形成部27から互いに離間する方向にのびている。一対の第2切込形成部28、28の第1縁部14a側の端部は、第2変形容易部15Bと、第2折り曲げ可能部18との間に設けられている。
【0058】
第1切込形成部27と、一対の第2切込形成部28、28とにより、切込形成部26は、Y字状の切り込み25を形成することが可能となる。そして、基材14の厚さ方向zにおいて、切り込み25から基材14が折り曲げられることによって、孔部24が形成される。切り込み25からの基材14の折り曲げは、例えば、第3折り曲げ可能部36に沿って行われる。第3折り曲げ可能部36は、孔部24の輪郭に沿って形成されている。第3折り曲げ可能部36は、上述の第1折り曲げ可能部17及び第2折り曲げ可能部18と同様に形成することができる。
【0059】
本実施形態の気密材1は、上記のような孔部24の形成により、基材14には、厚さ方向zに突出する一対の第1折り曲げ片31、31と、第2折り曲げ片32とが形成される。一対の第1折り曲げ片31、31は、第1切込形成部27及び一対の第2切込形成部28、28の切り込み25によって形成される。第2折り曲げ片32は、一対の第2切込形成部28、28の切り込み25によって形成される。
【0060】
なお、この実施形態において、当接部21を折り曲げる場合には、一対の第1折り曲げ片31、31の第3折り曲げ可能部36のうち、第2縁部14bから第2折り曲げ可能部18までを幅方向yに沿って延びる部分に、第3切込形成部37が設けられてもよい。この第3切込形成部37は、第1切込形成部27や、一対の第2切込形成部28と同様に形成することができる。図6は、図4に示した建物2の気密構造3の施工方法の一例を示す部分斜視図である。
【0061】
第3切込形成部37での切り込みにより、一対の第1折り曲げ片31、31は、第2折り曲げ可能部18で折り曲げることが可能となる。これにより、気密材1は、当接部21を折り曲げることができる。
【0062】
この実施形態の気密材1の施工方法では、梁7の下面7sへの固着に先立ち、図5に示した固着部19、当接部21及び孔部形成部23が折り曲げられる。この孔部形成部23の折り曲げにより、気密材1に、野縁11を第2縁部14b側で貫通させる孔部24が形成される。そして、天井形成材8が、梁7(床梁7B)側に持ち上げられることにより、第2縁部14b側から孔部24に、野縁11を配置することができるため、野縁11を貫通させることができる。さらに、野縁11の貫通により、当接部21を、天井仕上材12に当接させることができる。そして、天井形成材8がさらに持ち上げられることにより、基材14の幅方向yの寸法(図2に示した長さL1)を減少させるように、変形容易部15を変形(座屈)させることができる。これにより、これまでの実施形態と同様に、気密構造3が形成される。
【0063】
このように、この実施形態の気密材1(気密構造3)は、図4に示されるように、床梁7Bと直交する方向(図1のz軸方向)に延びる野縁11を、基材14の厚さ方向zで貫通させることができる。これにより、この実施形態の気密材1(気密構造3)は、第2縁部14b側(当接部21)を、天井仕上材12に当接させることができるため、梁7と天井形成材8(本例では、天井仕上材12)との間の隙間22を低減することができる。したがって、この実施形態の気密材1(気密構造3)は、建物2の気密性を向上させることができる。
【0064】
また、この実施形態の気密材1は、折り曲げられた一対の第1折り曲げ片31、31及び第2折り曲げ片32が元の状態に戻ろうとする復元力を作用させることにより、これらの折り曲げ片31、31及び32を、野縁11に密着させることが可能となる。これにより、梁7と天井形成材8(本例では、天井仕上材12)との間の隙間22を効果的に低減することができる。
【0065】
図6に示されるように、一対の第1折り曲げ片31、31及び第2折り曲げ片32は、第1切込形成部27、及び、一対の第2切込形成部28、28の切り込み25(図5に示す)で形成される縁部34が、屋外側6を向くように折り曲げられるのが望ましい。これにより、気密構造3は、図3(b)に示した固着部19及び当接部21と同様に、外気A1の進入による一対の第1折り曲げ片31、31及び第2折り曲げ片32の位置ずれを抑制することができる。さらに、気密構造3は、一対の第1折り曲げ片31、31及び第2折り曲げ片32と野縁11との間からの外気A1の進入を抑制することができる。
【0066】
この実施形態の気密材1は、孔部形成部23を除いて、図2に示した気密材1と同一の構成を有している。このため、この実施形態の気密材1は、孔部24が形成されないことにより、図1に示した床梁7Bの長手方向(図1のx軸方向)にのびる野縁11を含む天井形成材8にも用いることができるため、汎用性を高めることができる。
【0067】
この実施形態の気密材1は、図5に示されるように、孔部形成部23の切り込み25から基材14が折り曲げられることによって、孔部24が形成されたが、このような態様に限定されない。気密材1は、例えば、基材14が野縁11に向き合う位置に、孔部24が予め形成されていてもよい。
【0068】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0069】
1 気密材
14 基材
14a 第1縁部
14b 第2縁部
15 変形容易部
19 固着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6