IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エヌ・ティ・ティ・データの特許一覧

<>
  • 特許-経路探索装置及び経路探索方法 図1
  • 特許-経路探索装置及び経路探索方法 図2
  • 特許-経路探索装置及び経路探索方法 図3
  • 特許-経路探索装置及び経路探索方法 図4
  • 特許-経路探索装置及び経路探索方法 図5
  • 特許-経路探索装置及び経路探索方法 図6
  • 特許-経路探索装置及び経路探索方法 図7
  • 特許-経路探索装置及び経路探索方法 図8
  • 特許-経路探索装置及び経路探索方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】経路探索装置及び経路探索方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20220106BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019211717
(22)【出願日】2019-11-22
(62)【分割の表示】P 2015234726の分割
【原出願日】2015-12-01
(65)【公開番号】P2020034576
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2019-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000102728
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田端 佑介
(72)【発明者】
【氏名】堤田 恭太
【審査官】菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-076581(JP,A)
【文献】特開2002-206935(JP,A)
【文献】特開2005-017199(JP,A)
【文献】特開2006-308548(JP,A)
【文献】特開2004-301667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0057346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車両以外の他車両が通行する予定の経路を示す経路情報を取得する他車経路情報取得手段と、
前記他車経路情報取得手段により取得された他車両の通行予定の経路情報を考慮して、前記対象車両の目的地までの経路を特定する経路特定手段と、
前記経路特定手段により特定された経路を案内する情報を出力する出力手段とを備え、
前記経路特定手段は、
前記対象車両の目的地までの複数の経路候補を算出する経路候補算出手段と、
前記経路候補算出手段により算出された複数の経路候補について、前記他車経路情報取得手段により取得された経路情報を考慮して、前記対象車両の目的地までの所要時間をシミュレートするシミュレート手段と、
前記シミュレート手段によりシミュレートされた所要時間に基づいて経路を選択する経路選択手段とを備え
前記経路選択手段は、
前記シミュレート手段により前記複数の経路候補の各々についてシミュレートされた所要時間のうち、最小所要時間の経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いという条件を満たすか否かを判定する判定手段を備え、
前記判定手段により前記最小所要時間の経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いという条件を満たさないと判定された場合には、各々の経路候補において前記対象車両の目的地よりもスタート地点に近い所定の位置までの所要時間が短い経路を選択する
ことを特徴とする経路探索装置。
【請求項2】
コンピュータ装置が、対象車両以外の他車両が通行する予定の経路を示す経路情報を取得する他車経路情報取得ステップと、
コンピュータ装置が、前記他車経路情報取得ステップにおいて取得された他車両の通行予定の経路情報を考慮して、前記対象車両の目的地までの経路を特定する経路特定ステップと、
コンピュータ装置が、前記経路特定ステップにおいて特定された経路を案内する情報を出力する出力ステップとを備え、
前記経路特定ステップは、
コンピュータ装置が、前記対象車両の目的地までの複数の経路候補を算出する経路候補算出ステップと、
コンピュータ装置が、前記経路候補算出ステップにおいて算出された複数の経路候補について、前記他車経路情報取得ステップにおいて取得された経路情報を考慮して、前記対象車両の目的地までの所要時間をシミュレートするシミュレートステップと、
コンピュータ装置が、前記シミュレートステップにおいてシミュレートされた所要時間に基づいて経路を選択する経路選択ステップとを備え、
前記経路選択ステップは、
コンピュータ装置が、前記シミュレートステップにおいて前記複数の経路候補の各々についてシミュレートされた所要時間のうち、最小所要時間の経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いという条件を満たすか否かを判定する判定ステップを備え、
前記判定ステップにおいて前記最小所要時間の経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いという条件を満たさないと判定された場合には、コンピュータ装置が、各々の経路候補において前記対象車両の目的地よりもスタート地点に近い所定の位置までの所要時間が短い経路を選択する
ことを特徴とする経路探索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地までの最適な経路を探索するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
経路探索においては、各々の道路に対して例えば道路長や道幅、信号機、混雑度などのなんらかのコストを付与し、そのコストが最小となるような道路を選択する、という手法が採用されている。例えば特許文献1には、信号機の点灯状況を加味して経路探索を行う仕組みが開示されている。また、特許文献2には、複数の車両について算出された最短経路に対してノイズを付与することで、各車両の経路が重ならないように分散させる仕組みが開示されている。また、特許文献3には、緊急車両を優先的に通行させるような信号機制御を前提として、緊急車両の最短経路を算出する仕組みが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5142228号公報
【文献】特許第5466327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路には同時に複数の車両が通行するため、最適な経路を探索するためには、経路探索の対象車両以外の他車両による影響を考慮することが望ましい。特許文献2では、特定の道路に多数の車両が集中することを避けるためにノイズを付与しているが、このノイズは現実の道路におけるリアルタイムの混雑状況を反映したものではないから、所要時間の短い経路が探索できるわけではない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、対象車両以外の他車両の影響を考慮した経路探索を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、対象車両以外の他車両が通行する予定の経路を示す経路情報を取得する他車経路情報取得手段と、前記他車経路情報取得手段により取得された他車両の通行予定の経路情報を考慮して、前記対象車両の目的地までの経路を特定する経路特定手段と、前記経路特定手段により特定された経路を案内する情報を出力する出力手段とを備え、前記経路特定手段は、前記対象車両の目的地までの複数の経路候補を算出する経路候補算出手段と、前記経路候補算出手段により算出された複数の経路候補について、前記他車経路情報取得手段により取得された経路情報を考慮して、前記対象車両の目的地までの所要時間をシミュレートするシミュレート手段と、前記シミュレート手段によりシミュレートされた所要時間に基づいて経路を選択する経路選択手段とを備え、前記経路選択手段は、前記シミュレート手段により前記複数の経路候補の各々についてシミュレートされた所要時間のうち、最小所要時間の経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いという条件を満たすか否かを判定する判定手段を備え、前記判定手段により前記最小所要時間の経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いという条件を満たさないと判定された場合には、各々の経路候補において前記対象車両の目的地よりもスタート地点に近い所定の位置までの所要時間が短い経路を選択することを特徴とする経路探索装置を提供する。
【0008】
上記課題を解決するため、コンピュータ装置が、対象車両以外の他車両が通行する予定の経路を示す経路情報を取得する他車経路情報取得ステップと、コンピュータ装置が、前記他車経路情報取得ステップにおいて取得された他車両の通行予定の経路情報を考慮して、前記対象車両の目的地までの経路を特定する経路特定ステップと、コンピュータ装置が、前記経路特定ステップにおいて特定された経路を案内する情報を出力する出力ステップとを備え、前記経路特定ステップは、コンピュータ装置が、前記対象車両の目的地までの複数の経路候補を算出する経路候補算出ステップと、コンピュータ装置が、前記経路候補算出ステップにおいて算出された複数の経路候補について、前記他車経路情報取得ステップにおいて取得された経路情報を考慮して、前記対象車両の目的地までの所要時間をシミュレートするシミュレートステップと、コンピュータ装置が、前記シミュレートステップにおいてシミュレートされた所要時間に基づいて経路を選択する経路選択ステップとを備え、前記経路選択ステップは、コンピュータ装置が、前記シミュレートステップにおいて前記複数の経路候補の各々についてシミュレートされた所要時間のうち、最小所要時間の経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いという条件を満たすか否かを判定する判定ステップを備え、前記判定ステップにおいて前記最小所要時間の経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いという条件を満たさないと判定された場合には、コンピュータ装置が、各々の経路候補において前記対象車両の目的地よりもスタート地点に近い所定の位置までの所要時間が短い経路を選択することを特徴とする経路探索方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象車両以外の他車両の影響を考慮した経路探索を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかるシステムの全体構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態にかかるサーバ装置及び車載装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】サーバ装置が記憶している車両データベースの一例を示す図である。
図4】サーバ装置が記憶している信号機データベースの一例を示す図である。
図5】サーバ装置の機能構成を示すブロック図である。
図6】サーバ装置が経路を探索するときの動作を示すフローチャートである。
図7】サーバ装置の動作を示すフローチャートである。
図8】サーバ装置の動作を示すフローチャートである。
図9】サーバ装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
[構成]
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。 図1は、本発明の一実施形態にかかるシステムの全体構成を示すブロック図である。車載装置1は、車両3に搭載された例えばカーナビゲーション装置やスマートフォンなどのコンピュータ装置であり、ユーザ(車両3の運転者)に対して経路案内を行うためのユーザインタフェースを備えている。サーバ装置2は、車両3の現在位置から目的地に至るまでの経路探索を行うコンピュータ装置である。ネットワーク4は、車載装置1及びサーバ装置2に対してデータ通信サービスを提供する通信設備であり、例えば携帯電話網や無線LAN(Local Area Network )などの移動通信網と、インターネットやLANなどの固定通信網とを含んでいる。
【0013】
図2は、車載装置1及びサーバ装置2のハードウェア構成を示した図である。サーバ装置2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含む制御部21と、制御部21により実行される複数のプログラムを記憶するハードディスクなどの記憶部22と、ネットワーク4を介して通信を行う通信回路などの通信部23とを備えている。サーバ装置2において、これらのハードウェアが協働することにより、後述する図5に示す各機能が実現される。
【0014】
記憶部22には、地図DB221と、車両DB222と、交通DB223と、信号機DB224といったデータベースが格納されている。地図DB221は、地図を表す地図情報と交差点及び道路の位置情報(緯度経度)とのほか、例えばその地図上にある道路の長さや形状、車線数などを含む。地図DB221に含まれる情報は、ネットワーク4に接続された図示せぬ大容量の地図データベース装置からサーバ装置2によって取得されて、この記憶部22に記憶される。車両DB222は、各車両の位置や経路に関する情報を含んでおり、詳しくは後述する。交通DB223は、地図DBに含まれる地図情報における各地域で所定のセンシング装置によってセンシングされた交通量に関する交通量情報や、日時等の条件に応じて道路上の車両群がどのような移動をするのかというマクロ的な観点からの統計情報を含んでいる(以下、これらを交通情報と総称する)。信号機DB224は、道路に設置された各信号機の属性情報を含んでおり、図示せぬ信号機管制システムからサーバ装置2によって取得されて、この記憶部22に記憶される。
【0015】
ここで、図3は、車両DB222の一例を示す図である。車両DB222には、各車両3に搭載された車載装置1を識別する車載装置IDと、その車両3の現在位置と、その車両3についてサーバ装置2により特定された経路を示す経路データと、その車両3の速度(例えば経路案内のスタート位置からの現在位置に至るまでの平均速度)とが対応付けられている。車載装置IDは車両3を識別する情報として使用される。図3に列挙した情報は車載装置1からサーバ装置2に随時通知され、サーバ装置2の記憶部22に車両DB222として格納される。
【0016】
図4は、信号機DB224の一例を示す図である。信号機DB224には、各信号機を識別する信号機IDと、その信号機の位置と、その信号機の種別と、その信号機の現在の状態(現示)と、その信号機における制御内容といった属性情報が対応付けられている。信号機の種別とは、例えば、一定期間単位で点灯色が変わる一般的な固定式信号機、バスや緊急車両などの特定車両が交差点に進入するとその特定車両を優先的に通過させるような点灯制御を行う優先式信号機、交差点における交通量に応じた点灯制御を行う交通量感応式信号機などの種別である。信号機の現在の状態(現示)とは、その信号機における最新の点灯状態であり、例えば、点灯色と、その点灯色に点灯してからの経過時間などである。この信号機の現在の状態(現示)は、ネットワーク4に接続された図示せぬ信号機管制システムから定期的にサーバ装置2によって取得されて、この記憶部22に記憶される。制御内容は、固定式信号機の場合には点灯色とその点灯時刻などの関係を示した規則であり、優先式信号機の場合には特定車両が交差点に進入したときの具体的な点灯制御の内容であり、交通量感応式信号機の場合には交差点の混雑度に応じた具体的な点灯制御の内容である。なお、信号機の現在の状態(現示)は、毎時リアルタイムで取得する必要はなく、例えば1時間に1回程度の時間間隔で信号機管制システムから取得すればよい。この場合、信号機の現在の状態(現示)を取得した時点から、信号機DB224内の制御内容に基づき、後述するシミュレーションにおける信号機の点灯状態を予想すればよい。
【0017】
図2の説明に戻り、車載装置1は、CPU、ROM、RAMなどを含む制御部11と、ネットワーク4を介して通信を行うアンテナや無線通信回路などの無線通信部12と、制御部11により実行される複数のプログラムを記憶するハードディスクなどの記憶部13と、液晶ディスプレイや操作キーやマイクやスピーカなどを含むUI(ユーザインタフェース)部14と、車両3の向きや位置を特定するためのジャイロセンサやGPSユニットなどを含む測位部15とを備えている。制御部11は、UI部14によって受け付けられたユーザの指示に応じた処理を実行し、その実行結果に応じた情報をUI部14から出力する。
【0018】
次に、図5は、サーバ装置2の機能構成を示すブロック図である。他車経路情報取得部201は、制御部21によって実現される機能であり、車両DB222から、対象車両以外の他車両が通行する予定の経路を示す経路情報を取得する。この経路情報は、他車両に搭載された車載装置1の車載装置IDと、他車両の現在位置と、他車両についてサーバ装置2により特定された経路を示す経路データと、他車両の速度とを含む。
【0019】
制限情報取得部202は、制御部21によって実現される機能であり、信号機DB224から、車両の通行を制限する制限情報(ここでは信号機DB224に含まれる信号機の属性情報)を取得する。この信号機情報は、各信号機を識別する信号機IDと、その信号機の位置と、その信号機の種別と、その信号機の現在の状態(現示)と、その信号機における制御内容とを含む。
【0020】
交通情報取得部203は、制御部21によって実現される機能であり、交通DB223から交通情報を取得する。
【0021】
経路特定部20は、制御部21によって実現される機能であり、他車経路情報取得部201により取得された他車両の通行予定の経路情報、制限情報取得部202により取得された制限情報、及び交通情報取得部203により取得された交通情報を考慮して、対象車両の目的地までの経路を特定する。具体的には、経路特定部20は、対象車両の目的地までの複数の経路候補を算出する経路候補算出部204と、算出された複数の経路候補に対し、他車両の経路情報、信号機情報(制限情報)及び交通情報を適用して、これらを考慮した対象車両の目的地までの所要時間をシミュレートするシミュレート部205と、シミュレート部205によるシミュレート結果である所要時間に基づいて、対象車両の運転者に対して案内すべき経路を選択する経路選択部206とを備えている。
【0022】
出力部は、制御部21及び通信部23によって実現される機能であり、経路特定部20により特定された経路を案内する情報を例えば車載装置1に対して出力する。
【0023】
[動作]
[最初の経路探索]
次に本実施形態の動作を説明する。図6は、サーバ装置2が対象車両の経路を探索するときの動作を示すフローチャートである。図6において、対象車両の車載装置1の制御部11は、UI部14においてユーザから目的地の指定とナビゲーション開始の指示を受け付けると、車載装置IDと、指定された目的地と、測位部15によって測位された現在位置とをサーバ装置2に送信する。サーバ装置2の制御部21は、これらの情報を取得すると(ステップS101)、地図DB221を参照して、通知された現在位置から目的地に至るまでの複数の経路候補を例えばA*(A-Star)アルゴリズムなどの所定のアルゴリズムに従って算出する(ステップS102)。このときの経路候補算出においては一定の冗長性を持たせることで、計算上最短となる1つの経路候補だけではなく、複数の経路候補が算出される。
【0024】
次に、制御部21は、算出した経路候補に関係する他車両の経路情報、交通情報及び信号機情報をそれぞれ車両DB222、交通DB223及び信号機DB224から取得する(ステップS103)。そして、制御部21は、経路候補ごとに、他車両の経路情報、交通情報及び信号機情報を考慮して、対象車両が現在位置から目的地に到達するまでの所要時間をそれぞれ算出する(ステップS104)。このとき、制御部21は、例えば特開2014-115877号公報に開示された技術等を併用して所要時間を算出する。具体的には、例えば、信号機に関しては、交通情報及び信号機情報から推定される各交差点の混雑状況から交通量感応式信号機の点灯制御タイミングを予測したり、特定車両の測位結果或いはセンシング結果から推定される各交差点の進入タイミング及び信号機情報から優先式信号機の点灯制御タイミングを予測したりする。また、制御部21は、サーバ装置2によって経路を案内していない車両(つまり、車両DB222に登録されていない車両)については、各地域で所定のセンシング装置によってセンシングされた交通量に関する交通量情報や、日時等の条件に応じて道路上の車両群がどのような移動をするのかというマクロ的な観点からの統計情報に基づいて、各経路候補における所要時間を算出する。
【0025】
次に、制御部21は、それぞれの経路候補について算出した所要時間を比較し、所要時間が最小となる経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いか否かを判断する(ステップS105)。最小所要時間の経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いという条件を満たす場合には(ステップS105;YES)、制御部21は、その最小所要時間の経路候補を選択し(ステップS106)、選択した経路候補を案内する情報を車載装置1に送信する(ステップS108)。車載装置1の制御部11は、UI部14にその経路候補を表示するなどしてユーザに経路を案内する。
【0026】
一方、最小所要時間の経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いという条件を満たさない場合には(ステップS105;NO)、制御部21は、各々の経路候補において目的地よりもスタート地点(対象車両の現在位置)に近い所定の位置までの所要時間がより短い経路候補を選択する。ここでいう、目的地よりもスタート地点に近い所定の位置とは、例えば、経路候補の全長の所定の割合の位置(例えば経路長の半分に相当する位置)や、対象車両の現在位置から所定の距離以内にある所定の幹線主要道路の位置などである。これは、経路候補の全長が長くなるほど、その経路候補の全長に亘る所要時間の計算精度は低くなるから、その全長よりも短い所定の位置までの所要時間に基づいて、その所要時間が短いほうの経路候補を選択するという考え方である。制御部21は、このようにして経路候補を選択すると(ステップS107)、選択した経路候補を案内する情報を車載装置1に送信する(ステップS108)。車載装置1の制御部11は、UI部14において、その経路候補を表示するなどしてユーザに経路を案内する。
【0027】
[経路の再探索]
次に、最初の経路探索を行ったのちに、再度、経路探索を行う場合の動作について説明する。図7は、経路を再探索するときの車載装置1の制御部11の動作を示すフローチャートである。図7において、対象車両の車載装置1の制御部11は、例えばVICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)などの交通情報提供システムから提供される情報に基づいて、自車両に対して案内された経路のうち、未走行の経路(つまり現在位置から目的地に至る経路)における渋滞情報等の交通量の指標となる情報を取得する(ステップS201)。制御部11は、取得した交通量が閾値以上(例えば渋滞している距離を当該渋滞に係る距離の所要時間で除した値が所定値以下)であれば(ステップS202;YES)、サーバ装置2に対して車載装置IDと目的地と現在位置とを送信して、再度のシミュレーションを依頼する(ステップS203)。サーバ装置2の制御部21は、この依頼に応じて図6で説明したような手順で最適な経路を特定し、車載装置1に送信する(ステップS204)。新たな経路が特定された場合には車載装置1の制御部11はUI部14に、その経路を表示する。一方、従来の経路のままで変更が無ければ、車載装置1の制御部11はUI部14に再探索の結果、経路に変更はない旨などを表示する。なお、経路の再探索処理はサーバ装置2が行ってもよいし、車載装置1にその機能があれば車載装置1が行ってもよい。
【0028】
また、図8に示すように、サーバ装置2が能動的に経路の再探索を行ってもよい。図8において、サーバ装置2の制御部21は、交通DB223を参照し、渋滞情報等の交通量の指標となる情報を取得し、交通量が閾値以上(例えば渋滞している距離を所要時間で除した値が所定値以下)の道路が発生したか否かを判断する(ステップS301)。そのような道路が発生した場合には(ステップS302;YES)、サーバ装置2の制御部21は、図6で説明したような手順で該当渋滞エリアを含む経路を車両DB222から抽出し、各経路について、再度、図6の手順と同じようなシミュレーションを行う(ステップS302)。これにより、新たな経路が特定された場合には制御部21は、該当する対象車両の車載装置1に対して、その経路を案内する情報を送信する(ステップS303)。車載装置1の制御部11はUI部14にその経路候補を表示するなどしてユーザに経路を案内する。一方、従来の経路のまま変更が無ければ、車載装置1の制御部11は、UI部14において、再探索の結果として経路に変更はない旨などを表示する。
【0029】
このように、サーバ装置2において、出力部207により出力された経路を対象車両が通行している期間において、経路情報取得部201が対象車両以外の他車両が通行する予定の経路を示す経路情報を取得し、制限情報取得部202が経路における対象車両の通行を制限する制限情報を取得する。そして、経路特定部20が、出力部207により出力された経路を対象車両が通行している期間に他車経路情報取得部201により取得された経路情報及び制限情報取得部202により取得された制限情報を考慮して、対象車両の目的地までの経路を特定する。そして、出力部207は、対象車両が経路を通行開始する前にシミュレートされた所要時間よりも当該経路を通行している期間に特定された経路の所要時間のほうが閾値以上短い場合には、当該経路を通行している期間に特定された経路を案内する情報を出力する。これにより、既に経路を案内している車両に対して、案内開始後に変化した交通状況に即した適切な経路を案内することが可能となる。
【0030】
[複数の車両に対して同時に行う経路探索]
図9は、サーバ装置2が複数の対象車両の経路を探索するときの動作を示すフローチャートである。図9において、複数の対象車両の車載装置1の制御部11はそれぞれ、UI部14においてユーザから目的地の指定とナビゲーション開始の指示を受け付けると、車載装置IDと、指定された目的地と、測位部15によって測位された現在位置とをサーバ装置2に送信する。サーバ装置2の制御部21は、複数の車載装置1からこれらの情報を取得する(ステップS401)。制御部21は、同じ現在位置及び目的地となる対象車両群を1のグループに分類し、1のグループについて地図DB221を参照し、現在位置から目的地に至るまでの複数の経路候補をA*(A-Star)アルゴリズムなどの所定のアルゴリズムに従って算出する(ステップS402)。制御部21は、このときの経路候補算出には冗長性を持たせることで、最短となる1つの経路候補だけではなく、複数の経路候補を算出する。
【0031】
次に、制御部21は、算出した経路候補に対して対象車両群を所定の配分で(例えば10台の対象車両で経路候補が2つの場合には、1の経路候補に対して対象車両を5台ずつ)配分する(ステップS403)。そして、制御部21は、各経路上に関係する他車両の経路情報、交通情報及び信号機情報を、それぞれ車両DB222、交通DB223及び信号機DB224から取得する(ステップS404)。そして、制御部21は、経路候補ごとに、他車両の経路情報、交通情報及び信号機情報を考慮して、対象車両が現在位置から目的地に到達するまでの所要時間を算出する(ステップS405)。
【0032】
次に、制御部21は、それぞれの経路候補について算出した所要時間を比較し、互いに閾値以上の差があるか否かを判断する(ステップS406)。閾値以上の差が無ければ(ステップS406;NO)、制御部21は、現在の配分での経路候補を選択し(ステップS407)、その経路候補を案内する情報をそれぞれの車載装置1に送信する(ステップS409)。各車載装置1の制御部11は、UI部14において、その経路候補を表示するなどしてユーザに経路を案内する。
【0033】
一方、閾値以上の差があれば(ステップS406;YES)、制御部21は、各経路候補に対する対象車両群の配分の割合を変えて(例えば10台の対象車両で経路候補が2つの場合には、一方の経路候補に対して対象車両4台、他方の経路候補に対して対象車両6台)(ステップS408)、再度、ステップS405からの処理を繰り返す。
【0034】
このように、対象車両が複数である場合に、シミュレート部205は、経路候補算出部204により算出された複数の経路候補の各々に対して対象車両群を所定の割合で配分し、他車経路情報取得部201により取得された経路情報及び制限情報取得部202により取得された制限情報を考慮して、各々の対象車両の目的地までの所要時間をシミュレートし、そのシミュレートした結果に基づいて配分の割合を変えながら、そのシミュレートを繰り返す。これにより、経路候補に対して車両の配分を決める場合に、例えば、経路候補ごとの配分の差が大きいケースからシミュレーションを開始する場合(例えば10台の対象車両で経路候補が2つの場合に、一方の経路候補に対して1台、他方の経路候補に対して9台を配分する場合)に比べて、適切な車両の配分を或る程度早く決めることが可能となる。
【0035】
[変形例]
実施形態において、車両の通行の制限に関する制限情報は、信号機による車両の通行の制限を示す情報であって、信号機の種別ごとに異なるルールで通行を制限するものであったが、必ずしもこの例に限定されず、経路における通行の制限に関する情報であればどのようなものでもあってもよい。
【0036】
実施形態において、最小所要時間の経路候補がそれ以外の経路候補の所要時間よりも閾値以上短いという条件を満たさない場合には(図6のステップS105;NO)、制御部21は、各々の経路候補において目的地よりもスタート地点に近い所定の位置までの所要時間がより短い経路候補を選択していた(ステップS107)。このステップS107の処理に代えて、制御部21は、各々の経路候補において所定の時間が経過したときの車両の走行距離を比較し、その走行距離が最も長い経路候補を選択するようにしてもよい。例えば、制御部21は、各経路候補におけるスタート地点から目的地に至るまでの総所要時間の半分の時間が経過する時点における車両の位置を特定し、その位置に至るまでのスタート地点からの走行距離が最も長い経路候補を選択する。
【0037】
本発明は、例えばサーバ装置2のような経路探索装置のほか、サーバ装置23が行う経路探索方法や、サーバ装置2によって実行されるプログラムとして実施されてもよい。
本発明に係る経路探索方法は、対象車両以外の他車両が通行する予定の経路を示す経路情報を取得する他車経路情報取得ステップと、前記他車経路情報取得ステップにおいて取得された他車両の通行予定の経路情報を考慮して、前記対象車両の目的地までの経路を特定する経路特定ステップと、前記経路特定ステップにおいて特定された経路を案内する情報を出力する出力ステップとを備えることを特徴とする。
【0038】
サーバ装置2の制御部21によって実行されるプログラムは、磁気テープ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光記録媒体、光磁気記録媒体、CD(Compact Disk)-ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、RAMなどの記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、インターネットのようなネットワーク経由でサーバ装置2にダウンロードさせることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 車載装置、2 サーバ装置、3 車両、4 ネットワーク、11 制御部、12 無線通信部、13 記憶部、14 UI部、15 測位部、20 経路特定部、21 制御部、22 記憶部、23 通信部、201 他車経路情報取得部、202 制限情報取得部、203 交通情報取得部、204 経路候補算出部、205 シミュレート部、206 経路選択部、207 出力部、221 地図DB、222 車両DB、223 交通DB、224 信号機DB。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9