(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ガラス梱包プロセスにおいて揮発性有機化合物を検出するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/00 20060101AFI20220106BHJP
C03C 17/32 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01N33/00 C
C03C17/32 A
(21)【出願番号】P 2019510439
(86)(22)【出願日】2017-09-01
(86)【国際出願番号】 US2017049930
(87)【国際公開番号】W WO2018045329
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-21
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】バークハルター,ロバート スコット
(72)【発明者】
【氏名】ファディーヴ,アンドレイ ゲナディエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ピーナスカイ,ジョン スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ザウアー,デヴィッド チャールズ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-510288(JP,A)
【文献】特表2016-506348(JP,A)
【文献】特開2004-108967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0016357(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0251260(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0151370(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも200個のコーティング済みガラスコンテナから放出される揮発性有機化合物を測定するための方法であって、
前記方法は:
前記
少なくとも200個のコーティング済みガラスコンテナをオーブンに装入するステップ;
前記オーブンを熱処理温度まで加熱するステップ;
前記オーブンを乾燥清浄空気でパージするステップ;
オーブン排気の少なくとも1つの体積部分を回収するステップ;
前記オーブン排気の前記体積部分から揮発性有機化合物をトラップ内に捕集するステップ;
前記トラップ内に捕集された前記揮発性有機化合物を測定するステップ;及び
前記揮発性有機化合物を単一のコンテナに対して正規化するステップ、
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記少なくとも200個のガラスコンテナは低摩擦コーティングを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低摩擦コーティングは結合剤及びポリマーを含み、
前記結合剤はシランであり、前記ポリマーはポリイミドである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも200個のガラスコンテナを完全なガラスコンテナとして前記オーブンに装入する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記熱処理温度は脱パイロジェン温度である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱処理温度は260℃超である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記トラップを通る前記オーブン排気の前記体積部分の流量は、0.15L/分以上0.35L/分以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
供給ガスは、前記オーブンの入口から、5L/分以上15L/分以下の流量で供給される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記オーブン排気全体と、回収される前記オーブン排気の前記体積部分との分割比は、20:1以上60:1以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも200個のガラスコンテナは10以下の層間剥離係数を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年9月2日出願の米国仮特許出願第62/382,855号「ガラス梱包プロセスにおいて揮発性有機化合物を検出するための方法及び装置(Methods and Apparatus for Detecting Volatile Organic Compounds in Glass Packaging Processes)」に対する優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は、その全体が参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本明細書は広く、ガラス梱包プロセスにおいて揮発性有機化合物を検出することに関する。より具体的には、本明細書は、医薬品用ガラス梱包プロセスにおいて揮発性有機化合物を検出するための方法及び装置を対象とする。
【背景技術】
【0003】
ガラスは歴史的に、その密封性、光学的透明度、及び他の材料に比べて優れた化学的耐久性により、医薬品の梱包のための好ましい材料として使用されてきた。具体的には、医薬品の梱包に使用されるガラスは、その中に内包された医薬品の安定性に影響を及ぼさないよう、十分な化学的耐久性を有していなければならない。好適な化学的耐久性を有するガラスとしては、化学的耐久性に関する証明された履歴を有するASTM規格E438.92「タイプIA」及び「タイプIB」ガラス組成物に含まれるガラス組成物が挙げられる。一般的に言えば、化学的耐久性を有するガラスは、ガラスが長期間にわたってある溶液に曝露された場合に、上記ガラスからその構成成分が溶解しないガラスである。しかしながら、化学的耐久性を有するガラス組成物であっても、医薬品溶液への曝露後に離層する、又はガラス粒子を脱落させる傾向を有する。
【0004】
更に、医薬品の梱包に使用されるガラス組成物をイオン交換することによって、機械的強度を改善してよく、また上記ガラス組成物の外側を、脱パイロジェン条件に耐えることができる熱安定性の滑らかなコーティングでコーティングしてよく、上記コーティングは、ガラス梱包の機械的強度を維持する。脱パイロジェン条件下では、上記コーティングは酸化及び分解を受ける場合があり、揮発性有機化合物(VOC)の放出をもたらす。放出されるVOCの量は、コーティングの化学的性質、コーティングの厚さ、コーティングの表面積、コーティングの堆積加工条件、及び脱パイロジェン温度に左右される。VOCは、上記コーティングと比較すると熱安定性が低く、より加速された速度で熱酸化分解を受けるであろうから、VOCの化学的組成は、脱パイロジェン温度における上記VOCの滞留時間にも左右される。。VOCの放出は、コンテナの内部における望ましくない化合物の存在を引き起こす可能性があり、又は高い嗅覚感受性を有するヒトにおいて知覚可能な臭いの感覚を誘発する可能性がある。
【0005】
いずれの形状のガラス物品のVOCを測定するための従来の方法は、ガラス物品を小片に破壊するステップ、及び上記小片をカラムに装入するステップを伴う。次に上記カラムを加熱し、上記カラムを通してガスを流す。続いて、上記カラムを通って流れた上記ガスを、VOCを単離して回収するトラップ内に回収する。そして、上記トラップから回収されたVOCを、ガスクロマトグラフィ及び質量分析法等の従来の成分測定技法を用いて測定できる。しかしながら、これらの従来の方法は、少なくとも3つの欠点を有する。第1に、VOCの測定のために上記ガラス物品を破壊しなければならず、これにより、試料の汚染及び試料の部分的損失の可能性が生まれる。第2に、上記カラムの容量は限定されており、一度に限られた数のガラス物品しか試験できない。第3に、上記ガラス物品の粉砕によって上記コーティングの表面積も増大し、従ってコーティングの酸化及び分解が増加するため、このような試験の結果は必ずしも正確ではない。VOC分析が実施される典型的な分析設備及び規模は、脱パイロジェン温度におけるVOCの望ましい滞留時間の維持に貢献するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、実際の脱パイロジェン条件下でコーティング済みコンテナから放出されるVOCを識別し、またこのプロセスで利用される上記ガラスコンテナ及び特定の脱パイロジェン設備の特定のサイズ及び形状に関して確立された脱パイロジェンプロセスに基づいてVOCの量及び組成を測定する、装置及びプロセスに対して、需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される実施形態は、コーティング済みガラスコンテナから放出される揮発性有機化合物を測定するための方法を記載する。上記方法は:1つ以上のガラスコンテナをオーブンに装入するステップ;上記オーブンを熱処理温度まで加熱するステップ;上記オーブンを乾燥清浄空気でパージするステップ;オーブン排気の少なくとも1つの体積部分を回収するステップ;上記オーブン排気の上記体積部分から揮発性有機化合物をトラップ内に捕集するステップ;及び上記トラップ内に捕集された上記揮発性有機化合物を測定するステップを含む。上記1つ以上のガラスコンテナは、上記コーティング済みガラスコンテナの上記VOCの測定の間、完全な状態である。
【0008】
本明細書で開示される他の実施形態は、コーティング済みガラスコンテナからの揮発性有機化合物の放出を測定するための装置を記載する。上記装置は:1つ以上の完全なガラスコンテナを保持できる内部容積を有するオーブン;上記オーブンに流体接続された第1のトラップ;上記第1のトラップに流体接続された流量計;及び上記流量計に流体接続されたポンプを備える。オーブン排気ガスのある体積部分は上記第1のトラップへと配向され、上記第1のトラップは、上記オーブン排気ガスの上記体積部分から揮発性有機化合物を回収する。上記ポンプは、上記第1のトラップを通る上記オーブン排気ガスの上記体積部分の流量を制御する。
【0009】
更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、その一部は、当業者には「発明を実施するための形態」から容易に明らかとなるか、又は「発明を実施するための形態」、後続の特許請求の範囲及び添付の図面を含む本明細書に記載された複数の実施形態を実施することによって認識されるだろう。
【0010】
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」の両方は、様々な実施形態を記載し、請求対象の主題の性質及び特徴を理解するための概説又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、上記様々な実施形態の更なる理解を提供するために含まれており、本明細書の一部に組み込まれて本明細書の一部を構成する。図面は本明細書に記載の上記様々な実施形態を図示し、本説明と併せて、請求対象の主題の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本明細書に記載の1つ以上の実施形態によるガラスコンテナ、具体的にはガラスバイアルの概略断面図
【
図2】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、内部表面層の除去前の
図1のガラスコンテナの側壁の一部分の概略図
【
図3】本明細書に記載の1つ以上の実施形態によるVOC測定装置の概略図
【
図4】本明細書に記載の1つ以上の実施形態によるVOCのGC‐MS質量スペクトル
【
図5】本明細書に記載の1つ以上の実施形態によるVOCのGC‐MS質量スペクトル
【発明を実施するための形態】
【0012】
これより、ガラス梱包プロセスにおいてVOCを検出するための装置及び方法の様々な実施形態を参照する。上記実施形態の複数の例が添付の図面に図示されている。可能な限り、図面全体を通して、同一又は同様の部分を指すために同一の参照番号を使用する。一実施形態では、1つ以上のガラスコンテナから放出された揮発性有機化合物を測定するための方法を開示する。上記方法は:上記1つ以上のガラスコンテナをオーブンに装入するステップ;上記オーブンを熱処理温度まで加熱するステップ;オーブン排気の少なくとも1つの体積部分を回収するステップ;回収された上記オーブン排気の上記体積部分から揮発性有機化合物をトラップ内に捕集するステップ;及び上記トラップ内に捕集された上記揮発性有機化合物を測定するステップを含む。上記1つ以上のガラスコンテナは、完全な状態である。別の実施形態は、ガラスコンテナからの揮発性有機化合物の放出を測定するための装置を開示する。上記装置は:1つ以上の完全なガラスコンテナを保持できる内部容積を有するオーブン;上記オーブンに流体接続された第1のトラップ;上記第1のトラップに流体接続された流量計;及び上記流量計に流体接続されたポンプを備える。上記装置は、オーブン排気ガスのある体積部分を上記第1のトラップへと配向し、上記第1のトラップは、上記オーブン排気ガスの上記体積部分から揮発性有機化合物を回収し、上記ポンプは、上記第1のトラップを通る上記オーブン排気ガスの上記体積部分の流量を制御する。
【0013】
本明細書中で使用される場合、用語「化学的耐久性(chemical durability)」は、ガラス組成物の、指定された化学的条件への曝露時に分解に耐える能力を指す。具体的には、本明細書に記載のガラス組成物の化学的耐久性は、3つの確立された材料試験規格:2001年3月付のDIN12116「ガラスの試験‐塩酸の沸騰水溶液による攻撃に対する耐性‐試験方法及び分類(Testing of glass‐Resistance to attack by a boiling aqueous solution of hydrochloric acid‐Method of test and classification);ISO695:1991「ガラス‐混合アルカリの沸騰水溶液による攻撃に対する耐性‐試験方法及び分類(Glass‐Resistance to attack by a boiling aqueous solution of mixed alkali‐Method of test and classification)」;及びISO719:1985「ガラス‐98℃におけるガラス粒子の加水分解耐性‐試験方法及び分類(Glass‐Hydrolytic resistance of glass grains at 98 degrees C‐Method of test and classification)」に従って評価した。各規格、及び各規格内での分類については、本明細書中で詳述する。あるいはガラス組成物の化学的耐久性は、ガラスの表面の耐久性を評価する米国薬局方660「表面ガラス試験(Surface Glass Test)」及び/又は欧州薬局方3.2.1「医薬用途のためのガラスコンテナ(Glass Containers For Pharmaceutical Use)」に従って評価してもよい。
【0014】
本明細書に記載の方法及び装置は、コーティングを有するいずれのガラスコンテナから放出されたVOCを測定するために使用でき、上記コーティングは有機化合物を含有する。コーティングのタイプは特に限定されない。しかしながら複数の実施形態では、上記コーティングは以下に記載されるような低摩擦コーティングであってよい。
【0015】
ガラスコンテナは、上記コンテナの加工及び充填の際に、衝突による損傷、引っかき傷及び/又は擦過傷といった損傷を受ける場合がある。このような損傷は多くの場合、個々のガラスコンテナ間の接触、又はガラスコンテナと製造設備との間の接触によって引き起こされる。この損傷は一般に、上記コンテナの機械的強度を低下させ、上記コンテナの内容物の完全性を損ない得る貫通クラックにつながり得る。従って本明細書に記載のいくつかの実施形態では、上記ガラスコンテナは、本体の外部表面の少なくとも一部分の周りに位置決めされた低摩擦コーティングを更に含む。いくつかの実施形態では、上記低摩擦コーティングは、上記ガラスコンテナの上記本体の少なくとも上記外部表面上に位置決めしてよく、その一方で、他の実施形態では、例えば上記本体の上記表面に圧縮応力を印加するために無機コーティングを利用する場合等には、上記低摩擦コーティングと上記本体の上記外部表面との間に1つ以上の中間コーティングを位置決めしてよい。上記低摩擦コーティングは、上記コーティングを有する上記本体の上記部分の摩擦係数を低減し、従って上記ガラス本体の上記外部表面に対する擦過傷及び表面損傷の発生を低減する。本質的には、上記コーティングは、上記コンテナが別の対象物(又はコンテナ)に対して「滑動する(slip)」ようにすることによって、上記ガラスに対する表面損傷の可能性を低減できる。更に上記低摩擦コーティングは、上記ガラスコンテナの上記本体に対してクッションとしても機能し、これにより、上記ガラスコンテナに対する鈍い衝突による損傷の影響を軽減する。例示的なコーティングは、2013年11月8日出願の米国公開特許第14/075,630号明細書に開示されており、上記文献はその全体が参照により本出願に援用される。
【0016】
より低い、又は低減された摩擦係数は、ガラスに対する摩擦性損傷を軽減することによって、上記ガラス物品に改善された強度及び耐久性を付与できる。更に上記低摩擦コーティングは、例えば脱パイロジェン、オートクレーブ処理等の、医薬品の梱包において利用される梱包ステップ及び梱包前ステップ中に上記ガラス物品が受けるもの等の昇温及び他の条件に対する曝露後に、上述の改善された強度及び耐久性という特徴を維持できる。従って上記低摩擦コーティング及び上記低摩擦コーティングを有するガラス物品は、熱的に安定している。
【0017】
上記低摩擦コーティングは一般に、シラン等の結合剤、及びポリイミド等のポリマー化学組成物を含んでよい。いくつかの実施形態では、上記結合剤は、上記ガラス物品の上記表面上に位置決めされた結合剤層中に配置してよく、また上記ポリマー化学組成物は、上記結合剤層上に位置決めされたポリマー層中に配置してよい。他の実施形態では、上記結合剤及び上記ポリマー化学組成物を単一の層中で混合してよい。好適なコーティングは、2013年2月28に出願の米国特許出願第13/780,740号に記載されている。
【0018】
上述の実施形態を参照すると、上記シラン化学組成物は芳香族化学組成物であってよい。本明細書中で使用される場合、芳香族化学組成物は、ベンゼン系列に特徴的な1つ以上の6炭素環と、関連する有機部分とを含有する。この芳香族シラン化学組成物は、限定するものではないが、ジアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物若しくはそのオリゴマー、又はトリアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物若しくはそのオリゴマーといった、アルコキシシランであってよい。いくつかの実施形態では、上記芳香族シランはアミン部分を含んでよく、またアミン部分を含むアルコキシシランであってよい。別の実施形態では、上記芳香族シラン化学組成物は、芳香族アルコキシシラン化学組成物、芳香族アシルオキシシラン化学組成物、芳香族ハロゲンシラン化学組成物、又は芳香族アミノシラン化学組成物であってよい。別の実施形態では、上記芳香族シラン化学組成物は、アミノフェニル、3‐(m‐アミノフェノキシ)プロピル、N‐フェニルアミノプロピル、又は(クロロメチル)フェニル置換アルコキシ、アシルオキシ、ハロゲン、又はアミノシランからなる群から選択してよい。例えば上記芳香族アルコキシシランは、アミノフェニルトリメトキシシラン(本明細書中では「APhTMS」と呼ばれる場合もある)、アミノフェニルジメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、アミノフェニルジエトキシシラン、3‐(m‐アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3‐(m‐アミノフェノキシ)プロピルジメトキシシラン、3‐(m‐アミノフェノキシ)プロピルトリエトキシシラン、3‐(m‐アミノフェノキシ)プロピルジエトキシシラン、N‐フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N‐フェニルアミノプロピルジメトキシシラン、N‐フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N‐フェニルアミノプロピルジエトキシシラン、その加水分解物、又はそのオリゴマー化化学組成物であってよいが、これらに限定されない。ある例示的実施形態では、上記芳香族シラン化学組成物はアミノフェニルトリメトキシシランであってよい。
【0019】
上述の実施形態を再び参照すると、上記シラン化学組成物は脂肪族化学組成物であってよい。本明細書中で使用される場合、脂肪族化学組成物は、限定するものではないがアルカン、アルケン及びアルキンといった開鎖構造を有する化学組成物等の、非芳香族である。例えばいくつかの実施形態では、上記結合剤は、アルコキシシランであり、かつ限定するものではないがジアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物若しくはそのオリゴマー、又はトリアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物又はそのオリゴマーといった脂肪族アルコキシシランであってよい、化学組成物を含んでよい。いくつかの実施形態では、上記脂肪族シランはアミン部分を含んでよく、アミン部分を含むアルコキシシラン、例えばアミノアルキルトリアルコキシシランであってよい。一実施形態では、脂肪族シラン化学組成物は、3‐アミノプロピル、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピル、ビニル、メチル、N‐フェニルアミノプロピル、(N‐フェニルアミノ)メチル、N‐(2‐ビニルベンジルアミノエチル)‐3‐アミノプロピル置換アルコキシ、アシルオキシ、ハロゲン、又はアミノシラン、その加水分解物、又はそのオリゴマーからなる群から選択してよい。アミノアルキルトリアルコキシシランとしては、限定するものではないが、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン(本明細書中では「GAPS」と呼ばれる場合もある)、3‐アミノプロピルジメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐アミノプロピルジエトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルジメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルジエトキシシラン、その加水分解物、及びそのオリゴマー化化学組成物が挙げられる。他の実施形態では、上記脂肪族アルコキシシラン化学組成物はアミン部分を含有しなくてよく、例えばアルキルトリアルコキシシラン又はアルキルジアルコキシシランであってよい。このようなアルキルトリアルコキシシラン又はアルキルジアルコキシシランとしては、限定するものではないが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、その加水分解物、又はそのオリゴマー化化学組成物が挙げられる。ある例示的実施形態では、上記脂肪族シラン化学組成物は3‐アミノプロピルトリメトキシシランである。
【0020】
本明細書中で述べられている通り、上記低摩擦コーティングはポリマー化学組成物も含む。上記ポリマー化学組成物は、限定するものではないが、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリフェニル、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリビスチアゾール、並びに有機又は無機充填材を含む及び含まないポリ芳香族複素環ポリマーといった、熱安定性ポリマー又はポリマーの混合物であってよい。上記ポリマー化学組成物は、他の熱安定性ポリマー、例えば250℃、300℃及び350℃を含む200℃~400℃の範囲の温度で分解されないポリマーから形成してよい。これらのポリマーは、結合剤を用いて又は用いずに適用してよい。
【0021】
一実施形態では、上記ポリマー化学組成物はポリイミド化学組成物である。上記低摩擦コーティングがポリイミドを含む場合、上記ポリイミド組成物は、モノマーの重合によって溶液中で形成されるポリアミド酸に由来するものであってよい。1つのこのようなポリアミド酸は、Novastrat(登録商標)800(NeXolveから市販)である。硬化ステップにより、ポリアミド酸がイミド化されてポリイミドが形成される。上記ポリアミド酸は、ジアミン等のジアミンモノマーと、二無水物等の無水物モノマーとの反応から形成できる。本明細書中で使用される場合、ポリイミドモノマーは、ジアミンモノマー及び二無水物モノマーとして記述される。しかしながら、ジアミンモノマーは2つのアミン部分を含むものの、以下の記載では、少なくとも2つのアミン部分を含むいずれのモノマーも、ジアミンモノマーとして好適となり得ることを理解されたい。同様に、二無水物モノマーは2つの無水物部分を含むものの、以下の記載では、少なくとも2つの無水物部分を含むいずれのモノマーも、二無水物モノマーとして好適となり得ることを理解されたい。無水物モノマーの無水物部分とジアミンモノマーのアミン部分との間の反応は、ポリアミド酸を形成する。従って本明細書中で使用される場合、指定されたモノマーの重合から形成されるポリイミド化学組成物とは、これら指定されたモノマーから形成されたポリアミド酸のイミド化に続いて形成されるポリイミドを指す。一般に、無水物モノマーとジアミンモノマーとのモル比は約1:1であってよい。ポリイミドは、2つの別個の化学組成物(1つの無水物モノマー及び1つのジアミンモノマー)のみから形成できるが、少なくとも1つの無水物モノマーを重合させ、かつ少なくとも1つのジアミンモノマーを重合させることによって、ポリイミドを形成してもよい。例えば、1つの無水物モノマーを2つの異なるジアミンモノマーと重合させてよい。いずれの数のモノマー種の組み合わせを使用してよい。更に、ある1つの無水物モノマーと異なる1つの無水物モノマーとの比、又は1つ以上のジアミンモノマーと異なる1つのジアミンモノマーとの比は、いずれの比であってよく、例えば1:0.1~0.1:1、例えば約1:9、1:4、3:7、2:3:、1:1、3:2、7:3、4:1又は1:9であってよい。
【0022】
ジアミンモノマーと共にポリイミドを形成する無水物モノマーは、いずれの無水物モノマーを含んでよい。一実施形態では、無水物モノマーはベンゾフェノン構造を備える。ある例示的実施形態では、ベンゾフェノン‐3,3’,4,4’‐テトラカルボン酸二無水物が、ポリイミドを形成する無水物モノマーのうちの少なくとも1つであってよい。他の実施形態では、ジアミンモノマーは、上述の二無水物の置換バージョンを含む、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、又はペンタセン構造を有してよい。
【0023】
無水物モノマーと共にポリイミドを形成するジアミンモノマーは、いずれのジアミンモノマーを含んでよい。一実施形態では、ジアミンモノマーは、少なくとも1つの芳香族環部分を含む。ジアミンモノマーは、2つの芳香族環部分を一体に接続する1つ以上の炭素分子を有してよい。あるいはジアミンモノマーは、少なくとも1つの炭素分子によって隔てられずに直接接続された、2つの芳香族環部分を有してよい。
【0024】
ジアミンモノマーの2つの異なる化学組成物が、ポリイミドを形成してよい。一実施形態では、第1のジアミンモノマーは、炭素連結分子によって隔てられずに直接接続された、2つの芳香族環部分を含み、また第2のジアミンモノマーは、2つの芳香族環であって、上記2つの芳香族環を接続する少なくとも1つの炭素分子で接続された、2つの芳香族環部分を含む。ある例示的実施形態では、上記第1のジアミンモノマー、上記第2のジアミンモノマー、及び無水物モノマーは、約0.465:0.035:0.5(第1のジアミンモノマー:第2のジアミンモノマー:無水物モノマー)というモル比を有する。しかしながら、上記第1のジアミンモノマーと上記第2のジアミンモノマーとの比は、0.01:0.49~0.40:0.10の範囲で変動してよく、その一方で無水物モノマーの比は約0.5のままである。
【0025】
一実施形態では、上記ポリイミド組成物は、少なくとも1つの第1のジアミンモノマー、第2のジアミンモノマー及び無水物モノマーの重合から形成され、上記第1及び第2のジアミンモノマーは異なる化学組成物である。一実施形態では、上記無水物モノマーはベンゾフェノンであり、上記第1のジアミンモノマーは、一体に直接結合された2つの芳香族環を含み、上記第2のジアミンモノマーは、2つの芳香族環であって、第1の芳香族環及び第2の芳香族環を接続する少なくとも1つの炭素分子によって一体に結合された、2つの芳香族環を含む。上記第1のジアミンモノマー、上記第2のジアミンモノマー、及び上記無水物モノマーは、約0.465:0.035:0.5(第1のジアミンモノマー:第2のジアミンモノマー:無水物モノマー)というモル比を有してよい。
【0026】
ある例示的実施形態では、上記第1のジアミンモノマーはオルト‐トリジンであり、上記第2のジアミンモノマーは4,4’‐メチレン‐ビス(2‐メチルアニリン)であり、上記無水物モノマーはベンゾフェノン‐3,3’,4,4’‐テトラカルボン酸二無水物である。上記第1のジアミンモノマー、上記第2のジアミンモノマー、及び上記無水物モノマーは、約0.465:0.035:0.5(第1のジアミンモノマー:第2のジアミンモノマー:無水物モノマー)というモル比を有してよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記ポリイミドは:ビシクロ[2.2.1]ヘプタン‐2,3,5,6‐テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン‐1,2,3,4‐テトラカルボン酸1,2;3,4‐二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン‐2,3,5,6‐テトラカルボン酸二無水物、4arH,8acH)‐デカヒドロ‐1t,4t:5c,8c‐ジメタノナフタレン‐2t,3t,6c,7c‐テトラカルボン酸2,3:6,7‐二無水物、2c,3c,6c,7c‐テトラカルボン酸2,3:6,7‐二無水物、5‐endo‐カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]‐ヘプタン‐2‐exo,3‐exo,5‐exo‐トリカルボン酸2,3:5,5‐二無水物、5‐(2,5‐ジオキソテトラヒドロ‐3‐フラニル)‐3‐メチル‐3‐シクロヘキセン‐1,2‐ジカルボン酸無水物、ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの異性体、又は4,4’‐メチレンビス(2‐メチルシクロヘキシルアミン)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)3,3’,4,4’‐ビフェニル二無水物(4,4’‐BPDA)、3,3’,4,4’‐ベンゾフェノン二無水物(4,4’‐BTDA)、3,3’,4,4’‐オキシジフタル酸無水物(4,4’‐ODPA)、1,4‐ビス(3,4‐ジカルボキシル‐フェノキシ)ベンゼン二無水物(4,4’‐HQDPA)、1,3‐ビス(2,3‐ジカルボキシル‐フェノキシ)ベンゼン二無水物(3,3’‐HQDPA)、4,4’‐ビス(3,4‐ジカルボキシルフェノキシフェニル)‐イソプロピリデン二無水物(4,4’‐BPADA)、4,4’‐(2,2,2‐トリフルオロ‐1‐ペンタフルオロフェニルエチリデン)ジフタル酸二無水物(3FDA)、4,4’‐オキシジアニリン(ODA)、m‐フェニレンジアミン(MPD)、p‐フェニレンジアミン(PPD)、m‐トルエンジアミン(TDA)、1,4‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン(1,4,4‐APB)、3,3’‐(m‐フェニレンビス(オキシ))ジアニリン(APB)、4,4’‐ジアミノ‐3,3’‐ジメチルジフェニルメタン(DMMDA)、2,2’‐ビス(4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)、1,4‐シクロヘキサンジアミン2,2’‐ビス[4‐(4‐アミノ‐フェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン(4‐BDAF)、6‐アミノ‐1‐(4’‐アミノフェニル)‐1,3,3‐トリメチルインダン(DAPI)、マレイン酸無水物(MA)、シトラコン酸無水物(CA)、ナド酸無水物(NA)、4‐(フェニルエチニル)‐1,2‐ベンゼンジカルボン酸無水物(PEPA)、4,4’‐ジアミノベンズアニリド(DABA)、4,4’‐(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジ‐フタル酸無水物(6‐FDA)、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン‐3,3’,4,4’‐テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’‐(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ペリレン‐3,4,9,10‐テトラカルボン酸二無水物、4,4’‐オキシジフタル酸無水物、4,4’‐(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’‐(4,4’‐イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、1,4,5,8‐ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7‐ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、並びに米国特許第7,619,042号明細書、米国特許第8,053,492号明細書、米国特許第4,880,895号明細書、米国特許第6,232,428号明細書、米国特許第4,595,548号、国際公開第2007/016516号、米国公開特許第2008/0214777号明細書、米国特許第6,444,783号明細書、米国特許第6,277,950号明細書、及び米国特許第4,680,373号明細書(これらの文献はその全体が参照により本出願に援用される)に記載されている材料のうちの1つ以上の重合から形成してよい。別の実施形態では、ポリイミドを形成するポリアミド酸溶液は、ポリ(ピロメリット酸二無水物‐コ‐4,4’‐オキシジアニリン)アミド酸(Aldrich社から市販)を含んでよい。
【0028】
上述のように、コーティングは低い摩擦係数を有してよい。コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する部分の摩擦係数(μ)は、同一のガラス組成物から形成された未コーティングガラスコンテナの表面より低い摩擦係数であってよい。摩擦係数(μ)は、2つの表面の間の摩擦の定量的測定値であり、表面粗度を含む第1及び第2の表面の機械的及び化学的特性、並びに温度及び湿度を含むがこれらに限定されない環境条件に左右される。本明細書中で使用される場合、コーティング済みガラスコンテナに関する摩擦係数の測定値は、第1のガラスコンテナの外部表面と、第1のガラスコンテナと同一である第2ガラスコンテナの外部表面との間の摩擦係数として報告され、ここで上記第1及び第2のガラスコンテナは、同一の本体及び(コーティングが適用されている場合は)同一のコーティング組成物を有し、また製作前、製作中及び製作後に同一の環境に曝露されたものである。本明細書中で特段の記載がない限り、摩擦係数は、バイアル・オン・バイアル(vial‐on‐vial)試験用治具上で測定される30Nの垂直な荷重を用いて測定された、最大摩擦係数を指す。しかしながら、ある特定の荷重の印加時にある最大摩擦係数を示すコーティング済みガラスコンテナは、より小さい荷重において、同一の又はより良好な(即ちより低い)最大摩擦係数も示すことになることを理解されたい。例えば、あるコーティング済みガラスコンテナが、50Nの荷重の印加において0.5以下の最大摩擦係数を示す場合、上記コーティング済みガラスコンテナは、25Nの荷重の印加において、0.5以下の最大摩擦係数も示すことになる。
【0029】
本明細書に記載の実施形態では、ガラスコンテナ(コーティング済み及び未コーティング両方)の摩擦係数は、バイアル・オン・バイアル試験用治具を用いて測定される。この測定技法及び対応するデバイスは、2013年2月28日出願の米国公開特許第13/780,740号明細書に記載されており、上記文献はその全体が参照により本出願に援用される。
【0030】
本明細書に記載の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分は、バイアル・オン・バイアル試験用治具を用いて決定した場合に、同様のコーティングを施されたガラスコンテナに対して0.7以下の摩擦係数を有する。他の実施形態では、上記摩擦係数は0.6以下、又は0.5以下でさえあってよい。いくつかの実施形態では上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分は、0.4以下、又は0.3以下でさえある摩擦係数を有する。0.7以下の摩擦係数を有するコーティング済みガラスコンテナは一般に、摩擦による損傷に対する耐性が改善され、その結果、機械的特性が改善される。例えば(低摩擦コーティングを有しない)従来のガラスコンテナは、0.7を超える摩擦係数を有し得る。
【0031】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、同一のガラス組成物から形成された未コーティングガラスの表面の摩擦係数より少なくとも20%低い。例えば、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、同一のガラス組成物から形成された未コーティングガラスの表面の摩擦係数より、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%も低くなり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分は、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度に30分間曝露した後に、0.7以下の摩擦係数を有してよい。他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分は、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度に30分の期間にわたって曝露した後に、0.7以下の(即ち0.6以下、0.5以下、0.4以下、又は0.3以下もの)摩擦係数を有してよい。いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分は、約260℃の温度に30分の期間にわたって曝露した後に、約30%を超えて上昇しないものであってよい。他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度に30分の期間にわたって曝露した後に、約30%を超えて(即ち約25%、約20%、約15%、又は更には約10%を超えて)上昇しないものであってよい。他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度に30分の期間にわたって曝露した後に、約0.5を超えて(即ち約0.45、約.04、約0.35、約0.3、約0.25、約0.2、約0.15、約0.1、又は更には約0.5を超えて)上昇しないものであってよい。いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度に30分の期間にわたって曝露した後に、全く上昇しないものであってよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分は、約70℃の温度の水浴中に10分間浸漬した後に、0.7以下の摩擦係数を有してよい。他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分は、約70℃の温度の水浴中に5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、又は更には1時間浸漬した後に、0.7以下(即ち0.6以下、0.5以下、0.4以下、又は更には0.3以下)の摩擦係数を有してよい。いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、約70℃の温度の水浴中に10分間浸漬した後に、30%を超えて上昇しないものであってよい。他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、約70℃の温度の水浴中に5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、又は更には1時間浸漬した後に、30%を超えて(即ち約25%、約20%、約15%、又は更には約10%を超えて)上昇しないものであってよい。いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、約70℃の温度の水浴中に5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、又は更には1時間浸漬した後に、全く上昇しないものであってよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分は、凍結乾燥条件への曝露後に、0.7以下の摩擦係数を有してよい。他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分は、凍結乾燥条件への曝露後に、0.7以下(即ち0.6以下、0.5以下、0.4以下、又は更には0.3以下)の摩擦係数を有してよい。いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に、30%を超えて上昇しないものであってよい。他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に、30%を超えて(即ち約25%、約20%、約15%、又は更には約10%を超えて)上昇しないものであってよい。いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に、全く上昇しないものであってよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分は、オートクレーブ条件への曝露後に、0.7以下の摩擦係数を有してよい。他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分は、オートクレーブ条件への曝露後に、0.7以下(即ち0.6以下、0.5以下、0.4以下、又は更には0.3以下)の摩擦係数を有してよい。いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への曝露後に、30%を超えて上昇しないものであってよい。他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への曝露後に、30%を超えて(即ち約25%、約20%、約15%、又は更には約10%を超えて)上昇しないものであってよい。いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの、上記低摩擦コーティングを有する上記部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への曝露後に、全く上昇しないものであってよい。
【0036】
本明細書に記載のコーティング済みガラスコンテナは、水平圧縮強度(horizontal compression strength)を有する。水平圧縮強度は、2013年2月28日出願の米国公開特許第13/780,740号明細書に記載されているように測定され、上記文献はその全体が参照により本出願に援用される。水平圧縮強度の測定値は、選択された垂直な圧縮荷重における破損蓋然性として与えることができる。本明細書中で使用される場合、破損は、ガラスコンテナが水平圧縮下において、試料の少なくとも50%破壊された場合に発生する。いくつかの実施形態では、コーティング済みガラスコンテナは、未コーティングバイアルより少なくとも10%、20%、又は30%大きい水平圧縮強度を有してよい。
【0037】
水平圧縮強度の測定は、摩耗させたガラスコンテナに対して実施してもよい。具体的には、試験用治具の動作により、コーティング済みガラスコンテナの外部表面上に、上記コーティング済みガラスコンテナの強度を弱める引っかき傷又は擦過傷等の損傷を生成してよい。次にガラスコンテナを水平圧縮手順に供し、ここでは上記コンテナを、2つの圧板の間に、上記引っかき傷が上記圧板に対して平行に外向きとなるように、配置する。バイアル・オン・バイアル治具によって印加される、選択された垂直な圧力と、引っかき傷の長さとによって、上記引っかき傷を特性決定できる。特に断りのない限り、上記水平圧縮手順のために摩耗させたガラスコンテナに関する引っかき傷は、30Nの垂直な荷重によって生成された20mmの引っかき傷長さを特徴とする。
【0038】
コーティング済みガラスコンテナを、熱処理後の水平圧縮強度に関して評価できる。この熱処理は、30分の期間にわたる、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の温度への曝露であってよい。いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの水平圧縮強度は、上述のもの等の熱処理に曝露してから摩耗させた後で、約20%を超えて、30%を超えて、又は更には40%を超えて低下しない。一実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナの水平圧縮強度は、約30分の期間にわたる約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、又は約400℃の熱処理に曝露してから摩耗させた後で、約20%を超えて低下しない。
【0039】
本明細書に記載のコーティング済みガラス物品は、30分の期間にわたって少なくとも260℃の温度に加熱した後に、熱的に安定していてよい。本明細書中で使用される場合、句「熱的に安定している(thermally stable)」は、ガラス物品に適用された低摩擦コーティングが、昇温への曝露後に、上記ガラス物品の表面上において略完全な状態のままであり、従って曝露後に、上記コーティング済みガラス物品の機械的特性、具体的には摩擦係数及び水平圧縮強度が、影響を受けるにしても最小限しか影響を受けないことを意味している。これは、上記低摩擦コーティングが、昇温への曝露後にガラスの表面に付着したままであり、ガラス物品を擦過傷、衝突等の機械的損傷から保護し続けることを示す。
【0040】
実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは熱的に安定していてよい。本明細書に記載されているように、上記コーティング済みガラスコンテナは、上記コーティング済みガラスコンテナを約30分の期間にわたって少なくとも約260℃の温度に曝露した後に、摩擦係数基準及び水平圧縮強度基準が満たされていれば(即ち上記コーティング済みガラスコンテナが、少なくとも約260℃において約30分の期間にわたって熱的に安定であれば)、熱的に安定していると見なされる。熱安定性は、260℃から400℃までの温度で評価してもよい。例えばいくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、約30分の期間にわたって少なくとも270℃、又は約280℃もの温度において上記基準が満たされていれば、熱的に安定していると見なされる。更に他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、約30分の期間にわたって少なくとも290℃、又は約300℃もの温度において上記基準が満たされていれば、熱的に安定していると見なされる。更なる実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、約30分の期間にわたって少なくとも310℃、又は約320℃もの温度において上記基準が満たされていれば、熱的に安定していると見なされる。更に他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、約30分の期間にわたって少なくとも330℃、又は約340℃もの温度において上記基準が満たされていれば、熱的に安定していると見なされる。また他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、約30分の期間にわたって少なくとも350℃、又は約360℃もの温度において上記基準が満たされていれば、熱的に安定していると見なされる。他のいくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、約30分の期間にわたって少なくとも370℃、又は約380℃もの温度において上記基準が満たされていれば、熱的に安定していると見なされる。更に他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、約30分の期間にわたって少なくとも390℃、又は約400℃もの温度において上記基準が満たされていれば、熱的に安定していると見なされる。
【0041】
本明細書で開示されるコーティング済みガラスコンテナはまた、ある範囲の温度にわたって熱的に安定していてもよく、即ち上記コーティング済みガラスコンテナは、上記範囲内の各温度において、摩擦係数基準及び水平圧縮強度基準を満たすことにより、熱的に安定している。例えば本明細書に記載の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、少なくとも260℃から、400℃以下の温度までにおいて、熱的に安定していてよい。いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、少なくとも260℃から350℃までにおいて、熱的に安定していてよい。他のいくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、少なくとも280℃から、350℃以下の温度までにおいて、熱的に安定していてよい。更に他の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、少なくとも290℃から340℃までにおいて、熱的に安定していてよい。別の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、300℃~380℃の温度範囲において、熱的に安定していてよい。別の実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、320℃~360℃の温度範囲において、熱的に安定していてよい。
【0042】
熱的に安定したコーティング済みガラスコンテナは、260℃超、例えば320℃~335℃、又は360℃~375℃もの温度を許容する。これらの昇温は、ガラスコンテナ内の、可能性のあるいずれのDNA又は望ましくない有機化合物を破壊し、ガラスコンテナを滅菌する。しかしながらこれらの高温では、潤滑性コーティング中の有機化合物等の有機化合物は、少なくともある程度の酸化分解を受け、VOCの放出をもたらす。脱パイロジェン等の熱処理中に放出されるVOCの量及びタイプは、コーティングの化学的性質、コーティング堆積プロセス及び条件、並びに上記熱処理の温度及び持続時間に左右される。脱パイロジェン又は他のいずれの熱処理中のVOCの放出は、作業員をこのVOCに曝露することによる、製造設備における安全性の問題をもたらす場合があり、又はコンテナ若しくは医薬品に関する安全性の問題を引き起こす場合がある。
【0043】
脱パイロジェン等の熱処理中の、コーティング済みガラスコンテナからのVOCの放出に関して、脱パイロジェン等の熱処理中にVOCの放出を迅速かつ正確に測定するための方法及び装置が提供される。
【0044】
ここで
図3を参照して、VOC測定システム300の実施形態について説明する。VOC測定システム300は、オーブン310、第1のトラップ320、流量計330、第2のトラップ340、ポンプ350、及び流れ調節器360を備え、これらは全て流体接続され、これにより、オーブン310から出るガス状排気流が、第1のトラップ320、流量計330、第2のトラップ340、ポンプ350、及び流れ調節器360を通って流れる。
図3に示されているこれらの構成部品の相対的なサイズ及び位置決めは単なる例であること、並びにVOCを測定するための装置の他の構成も想定されることを理解されたい。これより、
図3に示されている各構成部品について説明する。
【0045】
実施形態では、オーブン310は、脱パイロジェンプロセスの温度等の熱処理温度と一致する温度までその内部を加熱できる、高温オーブンである。実施形態では、オーブン310は、260℃超、例えば320℃超、又は360℃超もの平均温度まで、その内部の雰囲気を加熱できる。いくつかの実施形態では、オーブン310は、320℃以上335℃以下の平均温度まで、その内部の雰囲気を加熱できる。他の実施形態では、オーブン310は、360℃以上375℃以下の平均温度まで、その内部の雰囲気を加熱できる。実施形態では、オーブンの内部雰囲気の平均温度は、オーブンの壁又は上部からオーブンの内部容積の幾何学的中心まで延在する、温度プローブによって測定される。
【0046】
実施形態では、オーブン310の内部はステンレス鋼であり、多数の完全なガラスコンテナを収容できる容積を有する。本明細書中で使用される場合、「完全なガラスコンテナ(in‐tact glass container)」は、破壊されておらず、かつ最終使用時のガラスコンテナと同一の幾何学的構成及び容積を有する、ガラスコンテナを指す。いくつかの実施形態では、オーブン310の内部容積は、少なくとも50L、例えば少なくとも55Lである。いくつかの実施形態では、上記オーブンの内部容積は、少なくとも60L、例えば少なくとも65Lである。実施形態では、オーブン310の内部は、少なくとも200個の完全なガラスコンテナ、例えば少なくとも250個の完全なガラスコンテナを収容できる。いくつかの実施形態では、上記オーブンの内部は、少なくとも300個の完全なガラスコンテナ、例えば少なくとも350個の完全なガラスコンテナを収容できる。実施形態では、オーブン310は、オーブン310の内部の均一な加熱を促進するために、オーブン310の内部に存在するガスを循環させる、ファンを備える。実施形態において使用してよい例示的な、ただし非限定的なオーブンは、Carbolite製のLHT4/60高温オーブンである。しかしながら、実施形態において同様のオーブンを使用してもよいことを理解されたい。
【0047】
実施形態では、オーブン310は、入口ガス源(図示せず)に流体接続された入り口311を備える。いくつかの実施形態では、上記入口ガス源は環境空気であり、入口311は、環境空気がオーブン310の内部に流れ込むのを可能とする通気口である。いくつかの実施形態では、上記入口ガス源は、水蒸気及び有機物(油、炭化水素、酸、塩基、有機物)を実質的に含まない空気である清浄乾燥空気を生成するように処理される。これらの化合物は、上記トラップ内に過剰な量で蓄積されて、GC‐MS分析を妨害する恐れがあり、又はオーブン環境内で熱酸化を受けて、全体のVOCレベルに寄与する場合がある。入り口ガス源が清浄乾燥空気である場合、入口311は、入口ガス源ライン(図示せず)によって、上記入口ガス源に流体接続され得る。実施形態では、上記ガラス源において、清浄乾燥空気は、一連のフィルタ及び吸着剤を通して環境空気を処理して、粒子、湿気及び油の霧を除去することによって、調製される。実施形態では、様々な構成の霧分離器、空気乾燥器、及び粒子フィルタを用いてよい。実施形態では、上記フィルタ及び吸着剤は、霧分離器、微小霧分離器、膜状空気乾燥器、超微小霧分離器、及び臭気除去フィルタをこの順で含む。清浄乾燥空気を生成するためのフィルタ及び吸着剤の例示的なシステムは、限定するものではないが、AFM30‐N03‐Z‐A霧分離器、AFD30‐N03‐Z‐A微小霧分離器、IDG10‐N03膜状空気乾燥器、AME250C‐N03超微小霧分離器、及びAMF250C‐N03臭気除去フィルタ(全てSMC Corporation製)を含む。
【0048】
実施形態では、例えば清浄乾燥空気である入口ガス源は、5L/分以上15L/分以下、例えば7L/分以上12L/分以下の流量で入口311に供給される。いくつかの実施形態では、上記入口ガス源は、8L/分以上11L/分以下、例えば10L/分の流量で入口311に供給される。入口供給ガスの流量は、例えばSMC Corporation製のAR30‐N03E‐Z調節器等の調節器(図示せず)を用いて制御してよい。
【0049】
実施形態では、オーブン310は出口312も備える。実施形態では、出口312はオーブン310の上部のオリフィスである。出口312により、高温ガスを排気ガスとしてオーブン310から出すことができる。排気ガスのある体積部分を回収して、上記排気ガス中に存在するVOCを測定及び分析してよい。実施形態では、出口312にマニホルドを挿入して、上記排気ガスのある体積部分を回収してよい。上記マニホルドのサイズは、上記排気ガスの典型的な試料を回収するために十分なものであるが、出口312を通る上記排気ガスの流れを妨げない。実施形態では、上記マニホルドは、ガラス製マニホルド又はステンレス鋼製マニホルドであってよい。
【0050】
オーブン310の出口312に存在する上記マニホルドは、第1のトラップ320に流体接続される。実施形態では、第1のトラップ320は、VOCを捕捉する吸着剤を含む。実施形態では、上記第1のトラップは、Sigma Aldrich製のCarbotrap300等の熱的脱着チューブであり、これは黒鉛化炭素を含有し、炭素分子が吸着剤をふるい分ける。回収されるVOCの性質に応じて、他のVOC捕集用吸着剤を用いてよいことを理解されたい。実施形態では、上記マニホルドによって捕捉される排気ガスは、0.15L/分以上0.35L/分以下、例えば0.20L/分以上0.30L/分以下の流量で、第1のトラップ320を通して移動させられる。いくつかの実施形態では、上記マニホルドによって捕捉される上記ガスは約0.25L/分の流量で、第1のトラップ320を通して移動させられる。実施形態では、上記流量は、所望の試料採取時間、分析機器の感度、性質及びVOCの量によって決定される。
【0051】
実施形態では、第1のトラップ320の下流には、第1のトラップ320に流体接続され、第1のトラップ320を通る上記排気ガスの流量を測定するよう位置決めされた、流量計330が存在する。流量計330から読み取られた流量を用いて、第1のトラップ320を通るガス流量を決定する。上記排気ガスは、上記マニホルドから、オーブン310の出口312内に、ポンプ350によって移動させられ、このポンプ350は、流量計330及び第1のトラップ320の両方から下流にあり、これら両方に流体接続されている。ポンプ350のタイプは特に限定されないが、実施形態では、ポンプ350はダイヤフラムポンプであってよい。しかしながら例えばベロー又は真空ポンプ等の他のいずれの好適なポンプを使用してよい。実施形態では、上記ポンプの流量は、第1のトラップ320を通る排気ガスの流量を制御する調節器360によって修正してよい。いくつかの実施形態では、調節器360は、ニードルバルブを備えたロータメータであってよく、この場合上記ニードルバルブは、VOC測定システム300を出る排気ガスの体積を調節することによって、VOC測定システム300を通る排気ガスの流れを修正するために使用される。いくつかの実施形態では、VOC測定システム300を通るガス流量は、上記ポンプを調整することによって調節される。
【0052】
いくつかの実施形態では、第2のトラップ340が任意に、流量計330とポンプ350との間に位置決めされる。第2のトラップ340は、第1のトラップ320と同一であっても異なっていてもよく、流量計330を通る排気ガスの流量に影響を及ぼすことによって、上記ポンプからのパルス形成を防止する。このようにして、流量計330での安定した読み取りを達成できる。
【0053】
上に記載されかつ
図3に図示された装置を用いてVOCを測定するための方法を提供する。実施形態では、第1のトラップ320として使用してよい1つ以上のトラップを、VOC測定システム300の第1のトラップ320として使用する前に、整備及び適格性検査を行う。実施形態によると、上記整備には、上記1つ以上のトラップを、上記トラップを通してパージガスを流しながら、チューブ整備器内で加熱することを含む。実施形態では、上記トラップを、325℃以上375℃以下、例えば335℃以上365℃以下の温度まで加熱する。いくつかの実施形態では、上記トラップを、345℃以上355℃以下の温度、例えば約350℃の温度まで加熱する。上記整備のための加熱の持続時間は、9時間以上15時間以下、例えば約12時間であってよい。実施形態では、上記パージガスは、ヘリウム、窒素、アルゴン、水素又はこれらの混合物であってよい。上記整備ステップ中の上記パージガスの流量は、実施形態では、75ml/分以上125ml/分以下、例えば90ml/分以上110ml/分以下であってよい。いくつかの実施形態では、上記整備ステップにおける上記パージガスの流量は、95ml/分以上105ml/分以下、例えば約100ml/分であってよい。上記トラップの加熱後、上記パージガスの流れを持続させたまま、上記トラップを冷却する。例示的な、ただし非限定的な整備装置は、Gerstel製のTC‐2チューブ整備器である。
【0054】
上記整備ステップの後、上記トラップの適格性を検査する前に、上記トラップを室温まで冷却する。実施形態では、適格性検査は、1つ以上の整備済みトラップを、ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC‐MS)に連結された熱的脱着システム(TDS)に装入することによって実施される。上記適格性検査は、VOC試料採取に関して後で記載するものと同一の温度及び同一の持続時間で実施される。GC‐MSにおいて有機物を示さない各トラップは、適格であると見なされ、VOC測定システム300の第1のトラップ320として使用するために保管される。例示的な、ただし非限定的なTDS3は、Gerstel製である。
【0055】
上記トラップの上記適格性検査の後、オーブン310をオンにし、設定点温度を動作温度(例えば脱パイロジェン温度)に設定し、供給ガスの流量をその動作流量に調整する。適格であるとされたトラップを、第1のトラップ320としてVOC測定システム300に挿入し、オーブン310からの、第1のトラップ320を通る排気ガスの流量を、動作流量に調整する。オーブン310内のVOCのバックグラウンドレベルを取得するために、空のオーブン310を用いてオーブン排気ガスを試料採取する。実施形態では、このバックグラウンド試料採取の持続時間は、45分以上75分以下、例えば55分以上65分以下である。実施形態では、このバックグラウンド試料採取の持続時間は約60分である。バックグラウンド試料採取中、第1のトラップ320を通る排気ガスの流量を、動作流量のままとなるように監視する。バックグラウンド試料採取の持続時間が完了した後、第1のトラップ320をVOC測定システム300から取り外してTDSに装入し、ここでGC‐MSによってVOC含有量を測定する。次にVOCのバックグラウンド量を、後で比較するために記録する。
【0056】
バックグラウンドVOCの測定後、適格であるとされた別のトラップを第1のトラップ320としてVOC測定システム300に挿入する。次にコーティング済みガラスコンテナをオーブン310の内部に装入する。ガラスコンテナはいずれの方法及びいずれの構成でオーブンに装入してよいが、実施形態では、ガラスコンテナを倒立位置で収容するためのピンを有する1つ以上の熱分解処理済みPyrexラック上にガラスコンテナを配置する。上記Pyrexラックは、少なくとも10個のピン、例えば少なくとも16個のピン、又は少なくとも20個ものピンを有してよい。続いて、ガラスコンテナを保持した複数のPyrexラックを、熱分解処理済みステンレス鋼トレイ上に装入してよく、これらのステンレス鋼トレイをオーブン310に装入する。実施形態では、少なくとも200個のガラスコンテナを1つ以上のPyrexラックに装入してオーブン310に挿入する。例えば少なくとも250個のガラスコンテナを1つ以上のPyrexラックに装入してオーブン310に挿入する。Pyrexラック及びトレイは、300℃以上の高温オーブンに15分以上装入することによって、熱分解され、表面有機物が清掃されている。
【0057】
オーブン310にコーティング済みガラスコンテナを装入した後、オーブン310を、脱パイロジェン温度付近の温度、例えば260℃超、例えば320℃超、又は360℃超もの温度まで加熱する。実施形態では、VOCは、40分以上80分以下、例えば50分以上70分以下の持続時間にわたって、第1のトラップ320上で回収される。いくつかの実施形態では、VOCは、55分以上65分以下、例えば約60分の持続時間にわたって、第1のトラップ320上で回収される。VOCの回収中、実施形態によると、ポンプ350を調節器360によって操作及び制御して、第1のトラップ320を通る排気ガスの流れを、0.15L/分以上0.35L/分以下、例えば0.20L/分以上0.30L/分以下、又は更には約0.25L/分の速度に維持する。
【0058】
所望の持続時間にわたってVOCを第1のトラップ320中に回収した後、ポンプ350をオフにし、第1のトラップ320を取り外す。Pyrexラック及びガラスコンテナを保持するトレイをオーブン310から取り外す。続いて、VOCの捕捉に用いた第1のトラップ320を、GC‐MSに連結されたTDSに入れて分析し、試料採取中に放出されたVOCの量を決定する。
【0059】
試料の分析のために、捕捉したVOCを含むトラップを内包したTDSを、初期温度から保持温度まで、50℃/分以上70℃/分以下、例えば約60℃/分の加熱速度で加熱する。実施形態では、上記初期温度は、35℃以上45℃以下、例えば約40℃であり、上記保持温度は、340℃以上360℃以下、例えば約350℃である。次にTDSを、5分以上15分以下、例えば約10分の期間にわたって上記保持温度で保持する。いくつかの実施形態では、上記分析中、トラップを、流動ヘリウム、窒素、アルゴン、水素及びこれらの混合物を40ml/分以上60ml/分以下、例えば約50ml/分の流量で流すことによって、継続的にパージした。実施形態によると、脱着揮発性及び半揮発性種を、クライオフォーカスし、その後フラッシュ蒸発させて、GCカラムに移した。
【0060】
実施形態では、GCカラムに試料を装入した後、GCカラム温度を、35℃以上45℃以下、例えば約40℃の温度に、2分以上7分以下、例えば約5分の期間にわたって維持する。次にGCカラムの温度を、310℃以上330℃以下、例えば約320℃の保持温度まで、5℃/分以上15℃/分以下、例えば約10℃/分の加熱速度で上昇させる。GCカラムの温度を、2分以上7分以下、例えば5分以上の期間にわたって上記保持温度に保持することにより、揮発性及び半揮発性有機物種の分離及び精製を提供する。実施形態では、GCカラムから精製された溶出物を、従来の電子衝突イオン化質量分析プロトコルによって分析してよい。
【0061】
測定されたスペクトルからの各ピークに関するピーク面積を、既知の基準に対して定量化して、試料中のVOC種の量を決定する。試料からのVOCの量を測定した後、VOCの量を、オーブン排気の分割比に対して正規化する。本明細書に記載されているように、オーブン排気の分割比は、全排気ガスと、試料のために捕捉された排気ガスとの比である。実施形態では、上記分割比は20:1以上60:1以下、例えば30:1以上50:1以下であってよい。いくつかの実施形態では、上記分割比は35:1以上45:1以下、例えば40:1であってよい。従って、VOCを上記分割比に対して正規化するために、VOCの測定量を上記比に従って修正する。その後、実施形態では、上記分割比に対して正規化されたVOCの量を、試料採取したコンテナの数で割ることによって、VOCの量をコンテナ1個に対して正規化する。
【0062】
本明細書に記載の装置及び方法を用いて、コーティング済みガラスコンテナから放出されるVOCを、ガラスコンテナを破壊することなく正確に測定でき、また1回の試料採取中に複数のガラスコンテナを測定できる。更に、VOCの放出が、実際の熱処理温度に近い条件で測定されることを少なくとも1つの理由として、VOC測定値は比較的正確なものとなる。
【0063】
実施形態の方法によると、実施形態による装置の使用により、コーティング済みガラスコンテナが放出するVOCの量を測定できる。実施形態の方法及び装置により、コンテナを損傷することなく、このような測定を1回に複数のコンテナに対して実施できる。更に、実施形態に従って得られるVOC測定値は、脱パイロジェン条件に極めて近い条件で、完全なコンテナから得られることを少なくとも1つの理由として、比較的高い信頼性を有する。
【0064】
ガラスコンテナのVOCを測定するための上述の方法及び装置は、いずれのコーティング済みガラスコンテナと共に使用してよいが、いくつかの実施形態では、上記コーティング済みガラスコンテナは、以下で詳述される、医薬組成物を内包するためのガラスコンテナ又はパッケージであってよい。
【0065】
医薬組成物を内包するための従来のガラスコンテナ又はガラスパッケージは一般に、化学的耐久性及び低い熱膨張率を示すガラス組成物、例えばタイプIBアルカリボロシリケートガラスから形成される。アルカリボロシリケートガラスは良好な化学的耐久性を示すが、コンテナ製造元は、富シリカガラスフレークがガラスコンテナに内包された溶液中に分散されることを観察している。本明細書中ではこの現象を「層間剥離(delamination)」と呼ぶ。層間剥離は特に、上記溶液を、長期間(数ヶ月~数年)にわたってガラス表面に直接接触させたまま保管した場合に発生する。従って、良好な化学的耐久性を示すガラスは、層間剥離に対する耐性を必ずしも有するわけではない場合がある。従って、ガラス梱包のためのガラス組成物、及び層間剥離を低減又は排除するガラス梱包を作製するためのプロセスは、例えば米国公開特許第2014/0151370号明細書及び米国公開特許第2013/0327740号明細書に開示されており、これらの文献はその全体が参照により本出願に援用される。
【0066】
層間剥離は、浸出、腐食及び/又は風化反応後に、ガラスの表面からガラス粒子が放出される現象を指す。一般に上記ガラス粒子は、コンテナ内に内包された溶液への修飾イオンの浸出の結果としてコンテナの内部表面から発生した、ガラスの富シリカフレークである。これらのフレークは一般に、厚さ1nm~2μm及び幅約50μm超であってよい。これらのフレークは主にシリカからなるため、上記フレークは一般に、ガラスの表面から放出された後に更に分解されることはない。
【0067】
これまで、層間剥離は、アルカリボロシリケートガラスが、ガラスをコンテナ形状に再成形するために使用される昇温に曝露されたときに、上記ガラスにおいて発生する相分離によるものであるという仮説が唱えられてきた。しかしながら現在では、ガラスコンテナの内部表面からの富シリカガラスフレークの層間剥離は、ガラスコンテナの成形時条件における上記ガラスコンテナの組成的特徴によるものであると考えられている。具体的には、アルカリボロシリケートガラスの高いシリカ含有量により、ガラスは比較的高い融点及び成形温度を有する。しかしながら、ガラス組成物中のアルカリ及びホウ酸塩は、はるかに低い温度で溶融及び/又は蒸発する。特にガラス中のホウ酸塩種は高い揮発性を有し、ガラスの成形及び再成形に必要な高温においてガラスの表面から蒸発する。
【0068】
具体的には、ガラスチューブ等のガラス原料を、高温において、かつ直接の火炎中で、ガラスコンテナに再成形する。比較的高い設備速度において必要とされる高温は、揮発性が比較的高い上記ホウ酸塩種を、ガラスの表面の複数の部分から蒸発させる。この蒸発がガラスコンテナの内部容積内で発生すると、揮発したホウ酸塩種が、ガラスコンテナ表面の他の領域に再堆積して、特にガラスコンテナの内部の表面付近領域(即ちガラスコンテナの内部表面の又は内部表面の直近の領域)に対するガラスコンテナ表面内の組成の不均質性を引き起こす。
【0069】
例えば
図1を参照すると、医薬組成物を保管するためのガラスコンテナ等のガラスコンテナが概略断面図で示されている。ガラスコンテナ100は一般に、ガラス本体102を有するガラス物品を含む。ガラス本体102は内部表面104と外部表面106との間に延在し、内部容積108を概ね取り囲む。
図1に示すガラスコンテナ100の実施形態では、ガラス本体102は一般に、壁部分110及び床部分112を備える。壁部分110及び床部分112は一般に、0.5mm~3.0mmの厚さを有してよい。壁部分110は下縁部分114を通して床部分112に遷移する。内部表面104及び床部分112はコーティングされていない(即ちこれらは、いずれの無機コーティング又は有機コーティングを含有せず、従ってガラスコンテナ100の内部容積108に保管された内容物は、ガラスコンテナ100を形成するガラスに直接接触する。
図1ではガラスコンテナ100は、特定の成形形状(即ちバイアル)を有するものとして図示されているが、ガラスコンテナ100は、バキュテナー、カートリッジ、シリンジ、シリンジバレル、アンプル、ボトル、フラスコ、薬瓶、チューブ、ビーカー等を含むがこれらに限定されない他の成形形状を有してよいことを理解されたい。
【0070】
本明細書に記載されているように、ガラスコンテナ100は、ガラスチューブをコンテナ状に変換することによって形成してよい。例えば、ガラスチューブの一端を加熱してガラスチューブを閉鎖し、コンテナ100の底部又は床部分112を形成する際、ホウ酸塩種及び/又はアルカリ種等の比較的揮発性が高い種が、チューブの底部から蒸発して、チューブ内の他の場所に再堆積し得る。コンテナの下縁部分及び床部分からの材料の蒸発は、コンテナのこれらの領域が最も大規模な再成形を受け、従って最も高い温度に曝露されるため、特に顕著なものとなる。その結果、比較的高い温度に曝露されるコンテナの領域、例えば床部分112は、富シリカ表面を有し得る。コンテナの内部表面104の、揮発種の堆積を受け得る他の領域、例えば壁部分110は、上記揮発種の凝縮によって形成された内部表面層105(
図2に概略図で示す)を有し得、従って上記表面はシリカに乏しい。例えばホウ酸塩種の場合、ガラス組成物のアニール点より高いもののガラスが再成形中に曝露される最高温度より低い温度である、ホウ素の堆積を受け得る領域は、ガラスの表面におけるホウ素の組み込みにつながり得る。
【0071】
ここで
図1及び2を参照すると、
図2に示す実施形態は、堆積した揮発種を含む内部表面層105を含むガラスコンテナ100の一部分の内部表面104を概略図で示す。内部表面層105の組成は、壁部分の比較的深い場所、例えば壁部分110の中点MPにおけるガラスの組成とは異なる。具体的には、
図2は、
図1のガラスコンテナ100の壁部分110の概略部分断面図を示す。ガラスコンテナ100のガラス本体102は、ガラスコンテナ100の内部表面104から、上記ガラスコンテナの内部表面104から深さD
SLまで、壁部分110の厚さ内に延在する、内部表面層105を含む。内部表面層105内のガラス組成は、上記壁部分の中点MPのガラスに対して、持続的な層不均質性を有し、従って、内部表面層105のガラスの組成が壁部分110の中点MPにおけるガラスとは異なることを理解されたい。いくつかの実施形態では、上記内部表面層の厚さT
SLは少なくとも30nmである。いくつかの実施形態では、上記内部表面層の厚さT
SLは少なくとも50nmである。いくつかの実施形態では、上記内部表面層の厚さT
SLは少なくとも100nmである。いくつかの実施形態では、上記内部表面層の厚さT
SLは少なくとも150nmである。他のいくつかの実施形態では、上記内部表面層の厚さT
SLは、少なくとも200nm、又は約250nmもの厚さである。他のいくつかの実施形態では、上記内部表面層の厚さT
SLは、少なくとも300nm、又は約350nmもの厚さである。更に他の実施形態では、上記内部表面層の厚さT
SLは少なくとも500nmである。いくつかの実施形態では、上記内部表面層は、少なくとも1μm、又は少なくとも2μmもの厚さT
SLまで延在してよい。
【0072】
本明細書に記載の実施形態では、句「持続的な層不均質性(persistent layer heterogeneity)」は、内部表面層105中のガラス組成物の構成成分(例えばSiO2、Al2O3、Na2O等)の濃度が、ガラス本体の厚さの中点における(即ち内部表面104と外部表面106との間でガラス本体を二等分する中点線MPに沿ったある点における)同一の構成成分の濃度から、ガラスコンテナ内に内包された溶液への長期間の曝露後にガラス本体の層間剥離をもたらす量だけ、変動していることを意味する。本明細書に記載の実施形態では、ガラス本体の内部表面層における持続的な層不均質性は、内部表面層105中のガラス組成物の各構成成分の層濃度の極値(即ち最大値又は最小値)が、ガラスコンテナ100が成形時条件にあるときのガラス本体の厚さの中点における同一の構成成分の92%未満又は108%超であるというものである。他の実施形態では、ガラス本体の内部表面層105における持続的な層不均質性は、内部表面層105中のガラス組成物の各構成成分の層濃度の極値が、ガラスコンテナ100が成形時条件にあるときのガラス本体の厚さの中点における同一の構成成分の90%未満又は110%超であるというものである。更に他の実施形態では、ガラス本体の内部表面層105における持続的な層不均質性は、内部表面層105中のガラス組成物の各構成成分の層濃度の極値が、ガラスコンテナ100が成形時条件にあるときのガラス本体の厚さの中点における同一の構成成分の80%未満又は120%超であるというものである。いくつかの実施形態では、持続的な層不均質性は、2モル%未満の量で存在するガラス組成物の構成成分を除く。持続的な層不均質性はまた、ガラス組成物中に存在し得るいずれの水を除く。
【0073】
本明細書に記載の実施形態では、句「持続的な層均質性(persistent layer homogeneity)」は、内部領域中のガラス組成物の構成成分(例えばSiO2、Al2O3、Na2O等)の濃度が、ガラス本体の厚さの中点における(即ち改質された内部表面104と外部表面106との間ガラス本体を二等分する中点線MPに沿ったある点における)同一の構成成分の濃度から、ガラスコンテナ内に内包された溶液への長期間の曝露後にガラス本体の層間剥離をもたらす量だけ、変動してないことを意味する。本明細書に記載の実施形態では、ガラス本体の内部領域における持続的な層均質性は、内部領域120中のガラス組成物の各構成成分の層濃度の極値(即ち最大値又は最小値)が、持続的な層不均質性を有する内部表面層をガラスコンテナから除去した後のガラス本体の厚さの中点における同一の構成成分の80%以上120%以下であるというものである。他の実施形態では、ガラス本体の内部領域における持続的な層均質性は、内部領域120中のガラス組成物の各構成成分の層濃度の極値が、持続的な層不均質性を有する内部表面層をガラスコンテナから除去した後のガラス本体の厚さの中点における同一の構成成分の90%以上110%以下であるというものである。更に他の実施形態では、ガラス本体の内部領域における持続的な層均質性は、内部領域120中のガラス組成物の各構成成分の層濃度の極値が、持続的な層不均質性を有する内部表面層をガラスコンテナから除去した後のガラス本体の厚さの中点における同一の構成成分の92%以上108%以下であるというものである。いくつかの実施形態では、持続的な層均質性は、2モル%未満の量で存在するガラス組成物の構成成分を除く。持続的な層均質性はまた、ガラス組成物中に存在し得るいずれの水を除く。
【0074】
本明細書中で使用される場合、用語「成形時条件(as‐formed condition)」は、ガラスコンテナをガラス原料から成形した後であるものの、イオン交換強化、硫酸アンモニウム処理、酸エッチング及び/又は他のいずれの表面改質といったいずれの追加の加工ステップに上記コンテナを曝露する前の、ガラスコンテナ100の組成を指す。本明細書に記載の実施形態では、ガラス組成物中の構成成分の層濃度は、動的二次イオン質量分析法(「D‐sims」)を用いて、関心対象の領域においてガラス本体の厚さを通して組成物を回収することによって決定される。本明細書に記載の実施形態では、組成プロファイルは、ガラス本体102の内部表面104の複数の領域から試料採取される。試料採取される領域は、1mm2の最大面積を有する。この技法により、ガラス中の種の組成プロファイルが、試料採取された領域に関するガラス本体の内部表面からの深さの関数として得られる。
【0075】
ガラスコンテナがボロシリケートガラス組成物(例えばタイプIBガラス組成物)から形成される場合、堆積した揮発性種を含有する内部表面層105の存在を、定性的に確認してもよい。具体的には、ガラスコンテナ100にメチレンブルー染料の溶液を充填してよい。メチレンブルー染料は、ガラス表面の富ホウ素領域と反応してこれと化学的に結合し、上記領域を、視認できるように青色に染色する。好適なメチレンブルー染料としては、限定するものではないが、水中の1%メチレンブルー溶液が挙げられる。
【0076】
このような堆積した揮発種の内部表面層105が内部表面104上に残っている場合、コンテナ内に内包された溶液は、上記堆積した揮発種を、内部表面層105から浸出させる場合がある。これらの揮発種がガラスから浸出する際、高シリカガラスネットワーク(ゲル)は内部表面104上にあるままであり、これは水和中に膨潤して緊張状態となり、最終的に上記表面から剥がれ(即ちガラスコンテナ100の内部表面104が層間剥離し)、ガラスコンテナ内に内包された溶液中に粒子状物質を導入する可能性がある。
【0077】
層間剥離に対する1つの従来の解決策は、ガラスコンテナの本体の内部表面をSiO2等の無機コーティングでコーティングすることである。このコーティングは、100nm~200nmの厚さを有してよく、コンテナの内容物が本体の内部表面に接触して層間剥離を引き起こすのを防止する。しかしながらこのようなコーティングの適用は困難な場合があり、また追加の製造及び/又は点検ステップを必要とする場合があり、従ってコンテナ製造のコストを増大させる。更に、例えば上記コーティングの不連続部分を通る等して、コンテナの内容物が上記コーティングに侵入し、本体の内部表面に接触すると、結果としてもたらされるガラス本体の層間剥離により、上記コーティングの複数の部分が上記本体の内部表面から引き離される場合がある。
【0078】
いくつかの実施形態では、エッチングによって内部表面層105をガラスコンテナの壁部分110から除去することにより、内部表面層105が層間剥離する傾向を低減する。例えば水性処理媒体を内部容積108に導入し、この薄型内部表面層105を除去するために十分な時間にわたって上記内部容積内に留まらせてよい。好適な水性処理媒体は、薄型内部表面層105を均一に溶解させる。具体的には、ガラスコンテナ100は一般に、一次ネットワーク形成因子としてのシリカ(SiO2)と、シリカネットワーク中に存在する追加の構成成分(例えばB2O3、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物等)とを含む、ガラス組成物から形成される。しかしながら、上記シリカ及び上記構成成分は必ずしも、同一の溶液中で可溶性ではなく、又はある溶液中で同一の速度で溶解しない。従って上記水性処理媒体は、内部表面層105が含有するガラスネットワーク及び追加の構成成分の均一な溶解を促進するために、フッ化物イオン及び/又は1つ以上の酸を含有してよい。好適なエッチング液は、例えば2015年11月23日出願の米国特許出願第14/949,320号明細書に開示されており、上記特許出願はその全体が本出願に援用される。
【0079】
持続的な層不均質性を有する又は持続的な層均質性を有する内部表面層の薄層を除去することにより、一般に、層間剥離に対するガラスコンテナの耐性が改善される。具体的には、内部表面層の表面から揮発種を除去することにより、ガラスコンテナの使用時に内部表面層から分離し得るこれらの揮発種の量が低減される。
【0080】
上述のように、層間剥離は、ガラスコンテナ内に内包される溶液への長期間の曝露後の、上記溶液中への富シリカガラスフレークの放出をもたらし得る。従って層間剥離に対する耐性は、ガラスコンテナ内に内包される溶液への、特定の条件下での曝露後の、上記溶液中に存在するガラス微粒子の数によって特性決定できる。層間剥離に対するガラスコンテナの長期耐性を評価するために、加速層間剥離試験を利用した。この試験を、イオン交換済みガラスコンテナ及び非イオン交換済みガラスコンテナの両方に対して実施した。この試験は、ガラスコンテナを室温で1分間洗浄するステップ、及び上記コンテナを約320℃で1分間、脱パイロジェン処理するステップからなっていた。その後、pH10の20mMグリシンの水溶液をガラスコンテナに入れて80~90%充填し、ガラスコンテナを閉鎖して100℃まで急速に加熱した後、100℃から121℃まで、2気圧の圧力下において1℃/分の傾斜率で加熱する。ガラスコンテナ及び溶液をこの温度で60分間保持し、0.5℃/分の速度で室温まで冷却し、この加熱サイクル及び保持を繰り返す。次にガラスコンテナを50℃まで加熱し、昇温での調質のために10日以上保持する。加熱後、ガラスコンテナを、少なくとも18インチ(45.72cm)の距離から、積層タイル床等のしっかりした表面上に落下させ、ガラスコンテナの内部表面に緩く付着したいずれのフレーク又は粒子を除去する。上記落下の上記距離は、比較的大型のサイズのバイアルが衝突によって破断するのを防止するように適切に調整してよい。
【0081】
その後、ガラスコンテナ内に内包された溶液を分析して、溶液1リットルあたりに存在するガラス粒子の数を決定する。具体的には、ガラスコンテナからの溶液を、Millipore Isoporeメンブレンフィルタ(部品#AP1002500及び#M000025A0との組立体内に保持されたMillipore #ATTP02500)の中央に直接注ぎ、上記フィルタは、上記溶液を5mLに対して10~15秒以内に上記フィルタを通して引き込むために、真空吸引に取り付けられる。その後、更に5mLの水をリンスとして用いて、フィルタ媒体から緩衝液残渣を除去した。続いて微粒子状フレークを、「微分干渉(DIC)顕微鏡法及び変調コントラスト顕微鏡法(Differential interference contrast (DIC) microscopy and modulation contrast microscopy)」(Fundamentals of light microscopy and digital imaging. New York: Wiley‐Liss、pp 153‐168)に記載されているように、微分干渉(Differential interference contrast:DIC)顕微鏡法によって計数する。視野をおよそ1.5mm×1.5mmに設定し、50μmを超える粒子を手動で計数する。画像間に重複が存在しない3×3パターンの各フィルタ膜の中央においてこのような測定を9回実施する。ろ過媒体の更に大きな領域を分析する場合、結果を同等の面積(即ち20.25mm2)に対して正規化できる。光学顕微鏡から収集した画像を、画像分析プログラム(Media Cybernetics ImagePro Plus version 6.1)で検査して、存在するガラスフレークの数を測定及び計数する。これは以下のようにして達成された:単純なグレースケールセグメンテーションによって背景より暗く見える画像内の全ての特徴部分をハイライトした;次に、25マイクロメートル以上の長さを有するハイライトされた全ての特徴部分の、長さ、幅、面積及び周囲長を測定する;次に、明らかにガラスではないいずれの粒子をデータから除去する;次に、測定データをスプレッドシートにエクスポートする。続いて、25マイクロメートル超の長さを有する、背景より明るい全ての特徴部分を抽出して測定し;25マイクロメートル超の長さを有するハイライトされた全ての特徴部分の、長さ、幅、面積、周囲長及びX‐Yアスペクト比を測定し;明らかにガラスではないいずれの粒子をデータから除去し;この測定データを、既にスプレッドシートにエクスポートしたデータに付加する。次に、スプレッドシート内のデータを特徴部分の長さによってソートし、サイズに応じて複数のビンに分割する。報告される結果は、長さ50マイクロメートル超の特徴部分に関するものである。次にこれらのグループそれぞれを計数して、各試料に関して計数を報告した。
【0082】
最低でも100mLの溶液を試験する。従って複数の小型コンテナからの溶液をプールして、溶液の総量を100mLとしてよい。10mLを超える容積を有するコンテナに関して、同一の加工条件下で同一のガラス組成物から形成された10個のコンテナの試験のために試験を繰り返し、上記10個のコンテナに関して粒子計数の結果を平均して、平均粒子計数を決定する。あるいは小型コンテナの場合、10個のバイアルの試験のために試験を繰り返し、各バイアルを分析し、粒子計数を複数回の試験にわたって平均して、1回の試験あたりの平均粒子計数を決定する。粒子計数を複数のコンテナにわたって平均するには、個々のコンテナの層間剥離挙動における潜在的なばらつきを考慮する。表1は、試験のためのコンテナの試料容積及び数のいくつかの非限定的な例をまとめたものである。
【0083】
【0084】
上述の試験を用いて、成形プロセスに由来してコンテナ内に存在する微量の粒子、又はガラスコンテナ中に閉じ込められた溶液から、上記溶液とガラスとの間の反応の結果として沈殿した粒子ではなく、層間剥離によってガラスコンテナの1つ以上の内壁から剥がれた粒子を識別することを理解されたい。具体的には、層間剥離粒子は、微量のガラス粒子から、粒子のアスペクト比(即ち粒子の厚さに対する粒子の最大長さの比、又は最大寸法と最小寸法との比)に基づいて区別できる。層間剥離は、微粒子フレーク又は薄片を生成し、これらは不規則な形状であり、典型的には、50μm超、ただし多くの場合は200μm超である、最大長さを有する。フレークの厚さは通常100nm超であり、約1μmもの大きさであってよい。よって、フレークの最大アスペクト比は典型的には50超である。上記アスペクト比は、100超、場合によっては1000超であってよい。対照的に、微量ガラス粒子は一般に、3未満という低いアスペクト比を有することになる。従って層間剥離によってもたらされる粒子は、顕微鏡での観察中に、アスペクト比に基づいて微量粒子から区別できる。他の一般的な非ガラス粒子としては、毛髪、繊維、金属粒子、プラスチック粒子及び他の汚染物質が挙げられ、従ってこれらは点検中に排除される。結果の検証は、試験されたコンテナの内部領域を評価することによって達成できる。観察後、「微分干渉顕微鏡法を用いたガラスバイアル内側表面形態の非破壊検査(Nondestructive Detection of Glass Vial Inner Surface Morphology with Differential Interference Contrast Microscopy)」(Journal of Pharmaceutical Sciences 101(4), 2012, pages 1378‐1384)に記載されているような皮膜腐食/点食/フレーク除去のエビデンスが認められる。
【0085】
本明細書に記載の実施形態では、加速層間剥離試験後に存在する粒子の数を利用して、試験されたバイアルのセットに関する層間剥離係数を確立してよい。本明細書に記載の実施形態では、加速層間剥離後に、1回の試験あたり10個未満の、最小長さ約50μm及びアスペクト比約50超のガラス粒子を平均する、ガラスコンテナの試験は、層間剥離係数10を有すると見なされる。本明細書に記載の実施形態では、1回の試験あたり9個未満の、最小長さ約50μm及びアスペクト比約50超のガラス粒子を平均する、ガラスコンテナの試験は、層間剥離係数9を有すると見なされる。本明細書に記載の実施形態では、1回の試験あたり8個未満の、最小長さ約50μm及びアスペクト比約50超のガラス粒子を平均する、ガラスコンテナの試験は、層間剥離係数8を有すると見なされる。本明細書に記載の実施形態では、1回の試験あたり7個未満の、最小長さ約50μm及びアスペクト比約50超のガラス粒子を平均する、ガラスコンテナの試験は、層間剥離係数7を有すると見なされる。本明細書に記載の実施形態では、1回の試験あたり6個未満の、最小長さ約50μm及びアスペクト比約50超のガラス粒子を平均する、ガラスコンテナの試験は、層間剥離係数6を有すると見なされる。本明細書に記載の実施形態では、1回の試験あたり5個未満の、最小長さ約50μm及びアスペクト比約50超のガラス粒子を平均する、ガラスコンテナの試験は、層間剥離係数5を有すると見なされる。本明細書に記載の実施形態では、1回の試験あたり4個未満の、最小長さ約50μm及びアスペクト比約50超のガラス粒子を平均する、ガラスコンテナの試験は、層間剥離係数4を有すると見なされる。本明細書に記載の実施形態では、1回の試験あたり3個未満の、最小長さ約50μm及びアスペクト比約50超のガラス粒子を平均する、ガラスコンテナの試験は、層間剥離係数3を有すると見なされる。本明細書に記載の実施形態では、1回の試験あたり2個未満の、最小長さ約50μm及びアスペクト比約50超のガラス粒子を平均する、ガラスコンテナの試験は、層間剥離係数2を有すると見なされる。本明細書に記載の実施形態では、1回の試験あたり1個未満の、最小長さ約50μm及びアスペクト比約50超のガラス粒子を平均する、ガラスコンテナの試験は、層間剥離係数1を有すると見なされる。本明細書に記載の実施形態では、1回の試験あたり0個の、最小長さ約50μm及びアスペクト比約50超のガラス粒子を有するガラスコンテナの試験は、層間剥離係数0を有すると見なされる。従って、層間剥離係数が低いほど、層間剥離に対するガラスコンテナの耐性が良好であることを理解されたい。本明細書に記載の実施形態では、ガラスコンテナは、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層をガラスコンテナから除去した後、10以下の層間剥離係数(即ち3、2、1又は0という層間剥離係数)を有する。
【0086】
本明細書に記載の実施形態では、ガラスコンテナは、ASTM規格E438‐92(2011年)「研究室装置内のガラスに関する標準仕様(Standard Specification for Glasses in Laboratory Apparatus)」におけるタイプIクラスA(タイプIA)、又はタイプIクラスB(タイプIB)ガラスに関する基準を満たすガラス組成物から形成してよい。ボロシリケートガラスは、タイプI(A又はB)の基準を満たし、医薬品の梱包に日常的に使用される。ボロシリケートガラスの例としては、限定するものではないが、Corning(登録商標)Pyrex(登録商標)7740、7800、Wheaton 180、200及び400、Schott Duran(登録商標)、Schott Fiolax(登録商標)、KIMAX(登録商標) N‐51A、Gerresheimer GX‐51 Flint、並びにその他が挙げられる。
【0087】
ガラスコンテナを形成するガラス組成物は、ISO720規格によって決定されるような、化学的耐久性及び分解に対する耐性を有する。ISO720規格は、蒸留水中での分解に対するガラスの耐性(即ちガラスの耐加水分解性)の尺度である。簡潔に述べると、ISO720規格のプロトコルは、オートクレーブ条件(121℃、2気圧)下において18MΩの水に30分間接触させた、粉砕したガラスの粒を利用する。次にこの溶液を、希HClを用いて中性pHまで比色滴定する。続いて、中性溶液への滴定に必要なHClの量を、ガラスから抽出されるNa2Oの当量に変換し、ガラスのμgで報告するが、この値が小さいことが、耐久性が高いことの指標となる。ISO720「ガラスの試験‐塩酸の沸騰水溶液による攻撃に対する耐性‐試験方法及び分類(Testing of glass‐Resistance to attack by a boiling aqueous solution of hydrochloric acid‐Method of test and classification)」;ISO695:1991「ガラス‐混合アルカリの沸騰水溶液による攻撃に対する耐性‐試験方法及び分類(Glass‐Resistance to attack by a boiling aqueous solution of mixed alkali‐Method of test and classification)」;ISO720:1985「ガラス‐121℃におけるガラス粒子の耐加水分解性‐試験方法及び分類(Glass‐Hydrolytic resistance of glass grains at 121 degrees C‐Method of test and classification)」;並びにISO719:1985「ガラス‐98℃におけるガラス粒子の耐加水分解性‐試験方法及び分類(Glass‐Hydrolytic resistance of glass grains at 98 degrees C‐Method of test and classification)」。各規格及び分類基準は、個々のタイプに分割される。タイプHGA1は、62μgまでのNa2Oの抽出当量の指標であり;タイプHGA2は、62μg超かつ527μgまでのNa2Oの抽出当量の指標であり;またタイプHGA3は、527μg超かつ930μgまでのNa2Oの抽出当量の指標である。本明細書に記載のガラスコンテナは、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラスコンテナから除去された後、ISO720タイプHGA1の耐加水分解性を有する。
【0088】
ガラスコンテナを形成するガラス組成物は、ISO719規格によって決定されるような、化学的耐久性及び分解に対する耐性も有する。ISO719規格は、蒸留水中での分解に対するガラスの耐性(即ちガラスの耐加水分解性)の尺度である。簡潔に述べると、ISO719規格のプロトコルは、2気圧及び98℃において18MΩの水に60分間接触させた、粉砕したガラスの粒を利用する。次にこの溶液を、希HClを用いて中性pHまで比色滴定する。続いて、中性溶液への滴定に必要なHClの量を、ガラスから抽出されるNa2Oの当量に変換し、ガラスのμgで報告するが、この値が小さいことが、耐久性が高いことの指標となる。上記ISO規格は、個々のタイプに分割される。タイプHGB1は、31μgまでのNa2Oの抽出当量の指標であり;タイプHGB2は、31μg超かつ62μgまでのNa2Oの抽出当量の指標であり;タイプHGB3は、62μg超かつ264μgまでのNa2Oの抽出当量の指標であり;タイプHGB4は、264μg超かつ620μgまでのNa2Oの抽出当量の指標であり;またタイプHGB5は、620μg超かつ1085μgまでのNa2Oの抽出当量の指標である。本明細書に記載のガラスコンテナは、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラスコンテナから除去された後、ISO719タイプHGB1の耐加水分解性を有する。
【0089】
米国薬局方660の試験及び/又は欧州薬局方3.2.1の試験に関して、本明細書に記載のガラスコンテナは、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラスコンテナから除去された後、タイプIの化学的耐久性を有する。上述のように、米国薬局方660及び欧州薬局方3.2.1の試験は、粉砕したガラスの粒ではなく完全なガラスコンテナに対して実施されるため、米国薬局方660及び欧州薬局方3.2.1の試験を用いて、ガラスコンテナの内部表面の化学的耐久性を直接評価できる。
【0090】
ガラスコンテナを形成するガラス組成物は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラスコンテナから除去された後、DIN12116規格によって決定されるような、酸性溶液中での化学的耐久性及び分解に対する耐性を有する。簡潔に述べると、DIN12116規格は、既知の表面積を有する研磨済みガラス試料を利用し、上記ガラス試料は計量された後、6時間にわたって、これに釣り合う量の沸騰した6Mの塩酸に接触させて位置決めされる。続いてこの試料を溶液から取り出し、乾燥させて再び計量する。酸性溶液への曝露中に失われたガラス質量は、試料の酸耐久性の尺度であり、この数が小さいことが、耐久性が高いことの指標となる。上記試験の結果は、表面積あたりの半質量、具体的にはmg/dm2を単位として報告される。DIN12116規格は個々のクラスに分割される。クラスS1は、0.7mg/dm2までの重量損失の指標であり;クラスS2は、0.7mg/dm2から1.5mg/dm2までの重量損失の指標であり;クラスS3は、1.5mg/dm2から15mg/dm2までの重量損失の指標であり;またクラスS4は15mg/dm2超の重量損失を示す。本明細書に記載のガラスコンテナは、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラスコンテナから除去された後、DIN12116クラスS2以上の耐酸性を有する。
【0091】
ガラスコンテナを形成するガラス組成物は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラスコンテナから除去された後、ISO695規格によって決定されるような、塩基性溶液中での化学的耐久性及び分解に対する耐性を有する。簡潔に述べると、ISO695規格は、研磨済みガラス試料を利用し、上記ガラス試料は計量された後、3時間にわたって、沸騰した1MのNaOH+0.5MのNa2CO3に接触させて位置決めされる。続いてこの試料を溶液から取り出し、乾燥させて再び計量する。塩基性溶液への曝露中に失われたガラス質量は、試料の塩基耐久性の尺度であり、この数が小さいことが、耐久性が高いことの指標となる。DIN12116規格と同様、ISO695規格の結果は、表面積あたりの質量、具体的にはmg/dm2を単位として報告される。ISO695規格は個々のクラスに分割される。クラスA1は、75mg/dm2までの重量損失の指標であり;クラスA2は、75mg/dm2から175mg/dm2までの重量損失の指標であり;またクラスA3は175mg/dm2超の重量損失を示す。本明細書に記載のガラスコンテナは、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラスコンテナから除去された後、クラスA2以上のISO695耐塩基性を有する。
【0092】
ISO695、ISO719、ISO720又はDIN12116による上述の分類に言及する場合、明記された分類「以上(or better)」を有するガラス組成物又はガラスコンテナとは、該ガラス組成物の性能が、この明記された分類と同等又はそれ以上に良好であることを意味することを理解されたい。例えば、「クラスA2」以上のISO695耐塩基性を有するガラスコンテナは、クラスA2又はA1のISO695分類を有してよい。
【0093】
これより、本明細書に記載の方法及び装置の実施形態を、様々な態様において定義する。以下の態様は例示的なものであり、本明細書において開示及び記載された他の実施形態を限定するものではない。以下に記載の態様のうちのいずれを、1つ以上の他の態様と組み合わせてよいことを理解されたい。
【0094】
第1の態様では、1つ以上のコーティング済みガラスコンテナから放出される揮発性有機化合物を測定するための方法は:上記1つ以上のコーティング済みガラスコンテナをオーブンに装入するステップ;上記オーブンを熱処理温度まで加熱するステップ;上記オーブンを乾燥清浄空気でパージするステップ;オーブン排気の少なくとも1つの体積部分を回収するステップ;上記オーブン排気の上記体積部分から揮発性有機化合物をトラップ内に捕集するステップ;及び上記トラップ内に捕集された上記揮発性有機化合物を測定するステップを含み、上記1つ以上のガラスコンテナは、完全な状態である。
【0095】
第2の態様は、上記1つ以上のガラスコンテナが低摩擦コーティングを備える、第1の態様による方法を含む。
【0096】
第3の態様は、上記低摩擦コーティングが熱的に安定している、第1及び第2の態様による方法を含む。
【0097】
第4の態様は、上記低摩擦コーティングが結合剤及びポリマーを含む、第1~3の態様による方法を含む。
【0098】
第5の態様は、上記結合剤がシランであり、上記ポリマーがポリイミドである、第4の態様による方法を含む。
【0099】
第6の態様は、少なくとも200個の完全な上記ガラスコンテナを上記オーブンに装入する、第1~5の態様による方法を含む。
【0100】
第7の態様は、上記熱処理温度が脱パイロジェン温度である、第1~6の態様による方法を含む。
【0101】
第8の態様は、上記熱処理温度が260℃超である、第1~7の態様による方法を含む。
【0102】
第9の態様は、上記熱処理温度が320℃以上335℃以下である、第1~8の態様による方法を含む。
【0103】
第10の態様は、上記熱処理温度が360℃以上375℃以下である、第1~8の態様による方法を含む。
【0104】
第11の態様は、上記トラップを通る上記オーブン排気の上記体積部分の流量が、0.15L/分以上0.35L/分以下である、第1~10の態様による方法を含む。
【0105】
第12の態様は、供給ガスが上記オーブンの入口から、5L/分以上15L/分以下の流量で供給される、第1~10の態様による方法を含む。
【0106】
第13の態様は、上記オーブン排気全体と、回収される上記オーブン排気の上記体積部分との分割比が、20:1以上60:1以下である、第1~12の態様による方法を含む。
【0107】
第14の態様は、上記1つ以上のガラスコンテナが10以下の層間剥離係数を有する、第1~13の態様による方法を含む。
【0108】
第15の態様は、上記1つ以上のガラスコンテナが5以下の層間剥離係数を有する、第1~14の態様による方法を含む。
【0109】
第16の態様は、上記オーブンが、上記オーブン内のVOCに関する所望の滞留時間を達成する期間にわたって、乾燥清浄空気でパージされる、第1~15の態様による方法を含む。
【0110】
第17の態様は、コーティング済みガラスコンテナからの揮発性有機化合物の放出を測定するための装置を含み、上記装置は:1つ以上の完全な上記ガラスコンテナを保持できる内部容積を有するオーブン;上記オーブンに流体接続された第1のトラップ;上記第1のトラップに流体接続された流量計;及び上記流量計に流体接続されたポンプを備え、オーブン排気ガスのある体積部分は上記第1のトラップへと配向され、上記第1のトラップは、上記オーブン排気ガスの上記体積部分から揮発性有機化合物を回収し、上記ポンプは、上記第1のトラップを通る上記オーブン排気ガスの上記体積部分の流量を制御する。
【0111】
第18の態様は、上記流量計及び上記ポンプに流体接続された第2のトラップを更に備える、第17の態様による装置を含む。
【0112】
第19の態様は、上記ポンプに流体接続された調節器を更に備え、上記調節器は上記装置を出るガスの量を制御する、第17及び18の態様による装置を含む。
【0113】
第20の態様は、上記第1のトラップを通る上記オーブン排気の上記体積部分の流量が、0.15L/分以上0.35L/分以下である、第17~19の態様による装置を含む。
【0114】
第21の態様は、上記オーブンの上記内部容積が、少なくとも200個の完全な上記ガラスコンテナを保持できる、第17~第20の態様による装置を含む。
【0115】
第22の態様は、上記オーブンが、上記オーブン内のVOCに関する所望の滞留時間を達成するように、乾燥清浄空気でパージされる、第17~21の態様による装置を含む。
【実施例】
【0116】
ガラスコンテナのVOCを測定するための以下の実施例によって、実施形態を更に明らかにする。
【0117】
まず、Carbotrap 300を、Gerstel TC‐2チューブ整備器を用いて整備した。12個のトラップをチューブ整備器に装入した。次に、上記トラップを通る100ml/分のヘリウムガスパージを用いて、350℃で12時間にわたって上記トラップを整備した。続いて、ヘリウムガスの流れを維持したまま、上記トラップを上記チューブ整備器内で室温まで冷却した。
【0118】
整備後、上記トラップを、GC‐MSに連結されたGerstel TDSを用いて適格性検査した。TDSを加熱速度60℃/分で40℃から350℃まで加熱し、この温度に10分間保持した。トラップを、ヘリウムを50mL/分の流量で流すことによって継続的にパージした。脱着揮発性及び半揮発性種を、クライオフォーカスし、その後フラッシュ蒸発させて、GCカラムに移した。GCカラムの温度を40℃に5分間維持した後、10℃/分の速度で320℃まで上昇させ、320℃に5分間保持することによって、揮発性及び半揮発性有機物種の分離及び精製を提供した。トラップは、VOCを含まない清浄で平坦なベースラインを示す場合に、適格であるとした。
【0119】
続いて、適格であるとされたトラップをVOC測定システムに装入した。次にオーブンを320℃まで加熱することによって、オーブン内のVOCバックグラウンドを測定した。清浄乾燥空気の流れを10L/分に設定し、トラップを通る流量を0.25L/分に設定した。流量を0.25L/分に維持するために、トラップを通る流量を周期的に調整しながら、オーブンの排気を60分間試料採取した。トラップからの熱脱着を、GC‐MSシステムに連結されたGerstel TDSを用いて実施した。
【0120】
バックグラウンド試料の収集後、バックグラウンド試料に使用したトラップを、事前に適格性検査された別のトラップに交換した。オーブンに、それぞれ20個のピンを有する10個のPyrexラック上に倒立位置で配置された200個のコーティング済みガラスコンテナを装入した。次に、ガラスコンテナを保持しているPyrexラックをステンレス鋼製トレイ上に置き、オーブンに装入した。オーブンを320℃で動作させ、オーブンからの排気ガスを60分間回収し、トラップを通る流量は0.25L/分であった。
【0121】
60分の回収時間の後、ポンプをオフにし、トラップを取り外してGerstel TDSに移した。ガラスコンテナをオーブンから取り出し、環境温度で冷却した。次に、上記トレイ及びラックをオーブン内に装入したまま、オーブンを400℃で一晩ベイクアウトした。
【0122】
上記回収からのトラップを含むTDSを、加熱速度60℃/分で40℃から350℃まで加熱し、この温度に10分間保持した。トラップを、ヘリウムを50mL/分で流すことによって継続的にパージした。脱着揮発性及び半揮発性種を、クライオフォーカスし、その後フラッシュ蒸発させて、GCカラムに移した。GCカラムの温度を40℃に5分間維持した後、10℃/分の速度で320℃まで上昇させた。次にGCカラムを320℃に5分間保持することによって、揮発性及び半揮発性有機物種の分離及び精製を提供した。異なる複数の有機物種の分離の機序は気化熱をベースとしているため、これによって蒸留クロマトグラムが得られた。GCカラムからの精製済み溶出物を、従来の電子衝突イオン化質量分析プロトコルによって分析した。標準化条件下で動作させることにより、得られた質量スペクトルを、スペクトルのマッチング又は成分同定を目的として、既存の質量スペクトルライブラリデータベースと比較できる。質量スペクトルは、41~550原子質量単位の質量範囲を用いて走査した。
【0123】
測定されたスペクトルからの各ピークに関するピーク面積を、既知の基準に対して定量化した。以下の3つの較正用化合物を使用した:ヘキサデカン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びベンズアルデヒドを用いて、アルカン/脂肪族化合物、シロキサン、及び芳香族化合物を表した。較正量はそれぞれ100ngであり、各較正用化合物に関して4回の反復を平均した。
【0124】
抽出されたイオンモード入力質量53a.m.u.を使用し、また質量50~54a.m.u.を含むよう、質量範囲をプラス1a.m.u~マイナス3a.m.u.に設定し、全イオンクロマトグラムを0.0分から5.0分まで積分して、共溶出したCO2、2‐プロペンニトリルピークから、選択した質量のみを抽出した。抽出した質量に関して得られたピークを、積分事象法「PN oven.e」を用いて積分して、ピーク下の総面積を得た。
【0125】
2‐プロペンニトリル(400ng)に関する標準濃度をCarbotrap300にスパイクし、試料に関して上述したものと同一の条件を用いて実行した。そして、400ng標準に関して得られたピーク面積を応答係数として使用した。試料の2‐プロペンニトリル濃度を、上記ピーク面積を標準ピーク面積応答係数で割り、400(400ngの標準濃度)を掛け、40(オーブンの分割比40:1)を掛け、200(コンテナの数)で割って単一のコンテナへと正規化することにより、計算した。較正の結果を表2に示す。
【0126】
【0127】
Agilent ChemStation並びにNiST自動質量スペクトルデコンボリューション及び同定ソフトウェア(Automated Mass Spectral Deconvolution and Identification Software:AMDIS)に埋め込まれたマクロを、各クロマトグラムに関して2つの標準化積分を用いて実施した。2.6分の保持時間の後、全イオンクロマトグラムを、以下の設定点を用いて、積分パラメータによって積分した:
初期面積リジェクト 1
初期ピーク幅 0.2
ショルダー検出 オフ
初期閾値 16
積分器オフ 0
積分器オン 2.6
0~2.6分の保持時間を、クロマトグラムがm/zを53Daに設定された(これは2‐プロペンニトリルに関するベースピーク及び分子イオンである)抽出イオンクロマトグラムモードであること以外は同一のパラメータを用いて積分した。400ng/マイクロリットル標準の2‐プロペンニトリルを分析し、抽出イオンクロマトグラム動作モードを用いて量を定量化した。これは、定量化のための上記検出基準を超えた、クロマトグラフィのピークの総面積の計数及び個々の面積の計数を決定した。続いて、85%又はAMDISで850の確率に基づく最良の一致を満たす上位30個以下の豊富なピークを同定して報告した。これらの基準を満たさないものは不明として報告した。
【0128】
このようなマクロを使用する際に通常行われるように、上記マクロがピーク下の総ピーク面積を十分に反映しているかどうかを決定するために、上記マクロを手動で確認した。即ちベースラインの補間が良好でないと、結果が歪む場合がある。良好でないフィッティングベースラインの例を
図4に示す。
【0129】
図4では、16である閾値が、ビーク‐バレーベースラインを有する水平線を示しており、上記ベースラインはVOCに関係ない追加のピークを組み込んでいる。これはVOCに関する不正確なピークを反映している。より典型的なベースラインフィットを行うために、初期閾値を調整でき、又はクロマトグラム全体を手動でフィットさせてよい。閾値に対する調整の例を
図5に示すが、ここでは閾値を(
図4に示されている)16から17に調整した。
【0130】
閾値を17に調整した場合、バレー‐バレーベースラインはVOCに関する正確なピーク面積を反映する。マクロを適切な閾値に調整することによって、このスペクトルに関して報告されるVOCは、68ng/コンテナから46ng/コンテナに減少する。
【0131】
上で概説したプロセスを2つの試料に関して実施した(各試料は200個のコンテナを試験した)。試料1に関する合計VOCは267ng/コンテナであり、試料2に関する合計VOCは278ng/コンテナであった。オーブンのバックグラウンドも2回測定し、1回は試料1及び2の試験前、もう1回は試料1及び2の試験後であった。試料試験前のバックグラウンド測定は、26ng/コンテナの合計VOCを示し、試料試験後のバックグラウンド測定は、46ng/コンテナの合計VOCを示した。バックグラウンド試料中のVOCの種分類は、これらがコーティング又はコンテナからのVOCではなく測定のアーティファクトである環状シロキサン種において高かったことを示す。従ってこれらの値をVOCの計算において考慮した。測定の詳細な結果を以下の表に示す。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
以上の表では、当該種のピークが位置する(
図5に示すスペクトル等の)スペクトルのx軸上に時間が表され、面積は、イオン電流によるピーク測定の下の面積であり;測定されたVOCは、Carbotrap300で捕捉されたVOCの、ナノグラムを単位とする量であり;分割比に対して正規化されたVOCは、Carbotrap300で補足されたVOCの量に、捕捉されたオーブン排気と捕捉されなかったオーブン排気との比を掛けたものであり;1つのコンテナに対して正規化されたVOCは、分割比に対して正規化されたVOCを、試料採取したコンテナの数で割ったものであった。従ってこの実施例では、分割比に対して正規化されたVOCは、測定されたVOCに40を掛けたものであり(捕捉されたオーブン排気と捕捉されなかったオーブン排気との比は40:1であった)、1つのコンテナに対して正規化されたVOCは、分割比に対して正規化されたVOCを、試料採取した200個のコンテナで割ったものであった。
【0137】
請求対象の主題の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載した実施形態に、様々な修正例及び変形例を行うことができることは、当業者には明らかであろう。従って、本明細書は、上記修正例及び変形例が添付の請求の範囲及びその均等物の範囲内にある場合、本明細書に記載される様々な実施形態の修正例及び変形例を包含することが意図されている。
【0138】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0139】
実施形態1
1つ以上のコーティング済みガラスコンテナから放出される揮発性有機化合物を測定するための方法であって、
上記方法は:
上記1つ以上のコーティング済みガラスコンテナをオーブンに装入するステップ;
上記オーブンを熱処理温度まで加熱するステップ;
上記オーブンを乾燥清浄空気でパージするステップ;
オーブン排気の少なくとも1つの体積部分を回収するステップ;
上記オーブン排気の上記体積部分から揮発性有機化合物をトラップ内に捕集するステップ;及び
上記トラップ内に捕集された上記揮発性有機化合物を測定するステップ
を含み、
上記1つ以上のガラスコンテナは、完全な状態である、方法。
【0140】
実施形態2
上記1つ以上のガラスコンテナは低摩擦コーティングを備える、実施形態1に記載の方法。
【0141】
実施形態3
上記低摩擦コーティングは熱的に安定している、実施形態2に記載の方法。
【0142】
実施形態4
上記低摩擦コーティングは結合剤及びポリマーを含む、実施形態2に記載の方法。
【0143】
実施形態5
上記結合剤はシランであり、上記ポリマーはポリイミドである、実施形態4に記載の方法。
【0144】
実施形態6
少なくとも200個の完全な上記ガラスコンテナを上記オーブンに装入する、実施形態1に記載の方法。
【0145】
実施形態7
上記熱処理温度は脱パイロジェン温度である、実施形態1に記載の方法。
【0146】
実施形態8
上記熱処理温度は260℃超である、実施形態1に記載の方法。
【0147】
実施形態9
上記熱処理温度は320℃以上335℃以下である、実施形態1に記載の方法。
【0148】
実施形態10
上記熱処理温度は360℃以上375℃以下である、実施形態1に記載の方法。
【0149】
実施形態11
上記トラップを通る上記オーブン排気の上記体積部分の流量は、0.15L/分以上0.35L/分以下である、実施形態1に記載の方法。
【0150】
実施形態12
供給ガスは、上記オーブンの入口から、5L/分以上15L/分以下の流量で供給される、実施形態1に記載の方法。
【0151】
実施形態13
上記オーブン排気全体と、回収される上記オーブン排気の上記体積部分との分割比は、20:1以上60:1以下である、実施形態1に記載の方法。
【0152】
実施形態14
上記1つ以上のガラスコンテナは10以下の層間剥離係数を有する、実施形態1に記載の方法。
【0153】
実施形態15
上記1つ以上のガラスコンテナは5以下の層間剥離係数を有する、実施形態14に記載の方法。
【0154】
実施形態16
上記オーブンは、上記オーブン内のVOCに関する所望の滞留時間を達成する期間にわたって、乾燥清浄空気でパージされる、実施形態1に記載の方法。
【0155】
実施形態17
コーティング済みガラスコンテナからの揮発性有機化合物の放出を測定するための装置であって、
上記装置は:
1つ以上の完全な上記ガラスコンテナを保持できる内部容積を有するオーブン;
上記オーブンに流体接続された第1のトラップ;
上記第1のトラップに流体接続された流量計;及び
上記流量計に流体接続されたポンプ
を備え、
オーブン排気ガスのある体積部分は上記第1のトラップへと配向され、
上記第1のトラップは、上記オーブン排気ガスの上記体積部分から揮発性有機化合物を回収し、
上記ポンプは、上記第1のトラップを通る上記オーブン排気ガスの上記体積部分の流量を制御する、装置。
【0156】
実施形態18
上記流量計及び上記ポンプに流体接続された第2のトラップを更に備える、実施形態17に記載の装置。
【0157】
実施形態19
上記ポンプに流体接続された調節器を更に備え、
上記調節器は上記装置を出るガスの量を制御する、実施形態17に記載の装置。
【0158】
実施形態20
上記第1のトラップを通る上記オーブン排気の上記体積部分の流量は、0.15L/分以上0.35L/分以下である、実施形態17に記載の装置。
【0159】
実施形態21
上記オーブンの上記内部容積は、少なくとも200個の完全な上記ガラスコンテナを保持できる、実施形態17に記載の装置。
【0160】
実施形態22
上記オーブンは、上記オーブン内のVOCに関する所望の滞留時間を達成するように、乾燥清浄空気でパージされる、実施形態17に記載の装置。
符号の説明
100 ガラスコンテナ
102 ガラス本体
104 内部表面
105 内部表面層
106 外部表面
108 内部容積
110 壁部分
112 床部分
114 下縁部分
120 内部領域
300 VOC測定システム
310 オーブン
311 入口
312 出口
320 第1のトラップ
330 流量計
340 第2のトラップ
350 ポンプ
360 流れ調節器