IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャスビジョン アーペーエスの特許一覧

特許6994027電気生理学的信号を記録するためのフィルタリング装置
<>
  • 特許-電気生理学的信号を記録するためのフィルタリング装置 図1
  • 特許-電気生理学的信号を記録するためのフィルタリング装置 図2
  • 特許-電気生理学的信号を記録するためのフィルタリング装置 図3
  • 特許-電気生理学的信号を記録するためのフィルタリング装置 図4
  • 特許-電気生理学的信号を記録するためのフィルタリング装置 図5
  • 特許-電気生理学的信号を記録するためのフィルタリング装置 図6
  • 特許-電気生理学的信号を記録するためのフィルタリング装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】電気生理学的信号を記録するためのフィルタリング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/33 20210101AFI20220106BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20220106BHJP
   A61B 5/304 20210101ALI20220106BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61B5/33 100
A61B5/367
A61B5/304
A61B18/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019519981
(86)(22)【出願日】2017-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2017076206
(87)【国際公開番号】W WO2018069507
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】16193690.1
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519129126
【氏名又は名称】キャスビジョン アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】マティーセン、マス イミール
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン、シーケ ナイスト
(72)【発明者】
【氏名】シャドボルト、ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】ウォドリンガー、ハロルド
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0166171(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0190625(US,A1)
【文献】特開2012-090986(JP,A)
【文献】特表2016-524480(JP,A)
【文献】特表2014-507175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00- 5/398
A61B 18/00-18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓内電気生理学的信号を記録し、心臓内の位置に高周波アブレーションエネルギーを供給するシステムに使用される切り替え可能なフィルタリング装置であって、前記フィルタリング装置は、
複数の記録チャネルであって、少なくとも1つのアブレーション記録チャネルを含み、それぞれの記録チャネルが、患者インタフェースにおける患者側端子と、記録装置インタフェースにおける対応する記録側端子とを有する複数の記録チャネルと、
を備え、
前記フィルタリング装置は、高周波アブレーション信号を受信し、高周波アブレーション信号が存在することに応じて高周波検出出力を提供するように構成された高周波検出装置をさらに備え、
それぞれの前記記録チャネルは、
第1通過帯域を持つ第1周波数依存伝送特性を有する第1信号経路と、
第1周波数依存伝送特性とは異なり、第1通過帯域に重複する第2通過帯域を持つ第2周波数依存伝送特性を有する第2信号経路と、
前記高周波検出出力に応じて前記第1信号経路と前記第2信号経路との間で切り替わるように動作可能な切替装置と、を備え
前記第2信号経路の回路構成から前記第1信号経路の回路構成への切り替えは、切り替え遅延を伴って行われる、
切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項2】
前記第1通過帯域は、前記第2通過帯域よりも広い、
請求項1に記載の切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項3】
前記第2周波数依存伝送特性の高周波数ロールオフは、前記第1周波数依存伝送特性の高周波数ロールオフよりも急峻であり、および/または、前記第2周波数依存伝送特性の低周波数ロールオフが前記第1周波数依存伝送特性の低周波数ロールオフよりも急峻である、
請求項1または2に記載の切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項4】
前記第1信号経路の前記第1通過帯域の低域遮断周波数は、0.5Hzまたはそれ以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項5】
前記第1信号経路から前記第2信号経路への切り替えが、心臓内の位置に高周波アブレーションエネルギーを提供するための高周波アブレーションサイクルの開始後、100ミリ秒以内に起こる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項6】
前記切り替え遅延が、少なくとも0.1秒よりも長い
請求項1から5のいずれか1項に記載の切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項7】
前記第2信号経路から前記第1信号経路への切り替えが、前記第1信号経路の回路構成に完全に切り替わる前に、前記第2信号経路のハイパスフィルタがフィルタリングされていない信号経路に結合される少なくとも1つのステージを経てから実行される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項8】
前記第2信号経路から前記第1信号経路への切り替えが、前記第1信号経路の前記回路構成に完全に切り替わる前に、少なくとも2つのステージを経てから実行される、切り替え可能なフィルタリング装置であって、前記ステージは、
前記第2信号経路の共通信号接地を基準とするハイパスフィルタを含む初期緩和ステージと、前記初期緩和ステージの後の、前記第2信号経路のフィルタリング前の信号を基準とするハイパスフィルタを含む信号基準ステージとを有する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項9】
前記第2信号経路から前記第1信号経路への切り替えが、前記第1信号経路の前記回路構成に完全に切り替わる前に、少なくとも2つのステージを経てから実行される、切り替え可能なフィルタリング装置であって、前記ステージは、
前記第2信号経路のハイパスフィルタが、フィルタリングされていない信号に結合される、第1ハイパスフィルタの構成を有する第1信号基準ステージと、
前記第1信号基準ステージの後の、前記第1ハイパスフィルタに代えて第2ハイパスフィルタが、フィルタリングされていない信号に結合される、第2ハイパスフィルタの構成を有する第2信号基準ステージと、を有し、
前記第2ハイパスフィルタの構成においては、前記第2ハイパスフィルタが、前記第1ハイパスフィルタの低域遮断周波数よりも高い低域遮断周波数を有する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項10】
前記複数の記録チャネルのサブセットは、少なくともアブレーショングループを形成するためにグループ化され、前記アブレーショングループは、前記少なくとも1つのアブレーション記録チャネルおよびさらなる記録チャネルを含む、
請求項1からのいずれか1項に記載の切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項11】
前記アブレーショングループは、さらに別の記録チャネルを含む、
請求項10に記載の切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項12】
前記複数の記録チャネルの追加のサブセットは、追加グループを形成するためにグループ化され、前記追加グループは、少なくとも2つの記録チャネルを含む、
請求項1から11のいずれか1項に記載の切り替え可能なフィルタリング装置。
【請求項13】
心臓内信号を記録し、心臓内の位置に高周波アブレーションエネルギーを供給するためのシステムであって、前記システムは、
請求項1から12のいずれか1項に記載の切り替え可能なフィルタリング装置と、
高周波アブレーション信号を高周波検出装置に供給するための、切り替え可能なフィルタリング装置に結合された高周波アブレーション装置と、
前記記録チャネルからフィルタリングされた電気生理学的信号を収集するための前記切り替え可能なフィルタリング装置の記録装置インタフェースに結合された差動増幅段であって、信号基準に関して前記記録チャネルからのフィルタリングされた電気生理学的信号を増幅してそれぞれの増幅された電気生理学的信号を取得するように適合された差動増幅段と、
前記増幅された電気生理学的信号に基づいて心臓内データの出力を提供するように適合されたプロセッサ装置と、
を備えるシステム。
【請求項14】
前記システムの前記切り替え可能なフィルタリング装置が、アブレーショングループと追加グループとにグループ化される記録チャネルを有する、
請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気生理学的信号を記録するためのシステムにおいて使用するための、切り替え替え可能なフィルタリング装置に関する。フィルタリング装置は、複数の記録チャネルを含み、記録チャネルは、アブレーション記録チャネルを含む。各記録チャネルは、患者インタフェースにおける患者側端子と、記録装置インタフェースにおける対応する記録側端子とを有する。各記録チャネルは、第1通過帯域を持つ第1周波数依存伝送特性を有する第1信号経路と、第1周波数依存伝送特性とは異なる第2周波数依存伝送特性を有する第2信号経路と、過渡干渉信号を示す制御信号に応じて、第1信号経路と第2信号経路との間で切り替えるように動作可能である切替装置と、を備え、第2周波数依存伝送特性は第1通過帯域に重なる第2通過帯域を有する。好ましくは、第2信号経路から第1信号経路への切り替えは、過渡干渉信号の終了後に、切り替え遅延を伴って実行される。
【背景技術】
【0002】
心臓内電気生理学的測定は、不整脈などの心臓の問題を理解し、治療するための重要なツールと考えられている。心臓内測定値は、心臓内カテーテルを使用する、いわゆる低侵襲的手段で得られる。先進的な機器は、心臓の内部に配置することができる複数の電極を有する複数の電極カテーテルを含む。実施される処置に応じて、そのようなカテーテルは、その先端部に電極のそれぞれの場所で電気生理学的電位を拾い上げる(picking up)ように構成された電極を備えている。電気生理学的電位は、電気導体を介してカテーテルの先端部からカテーテルの近位端にあるコネクタインタフェースに送られ、さらに、心臓内電気生理学的電位を表す信号の増幅、処理、表示、および記憶のための記録機器に送られる。心臓内電気生理学的信号は、時間の関数としての心臓内電気生理学的電位の観察の結果であり、心臓内電気生理学的信号は、第1端子と第2端子との間の電位差を増幅することによって測定され、少なくとも第1端子は心臓内に配置される電極に接続される。得られた心臓内信号は、コンピュータに表示する、および/またはデジタル記憶媒体に記憶するために、さらに増幅/処理および/またはデジタル化されてもよい。
【0003】
心臓の内部に配置された信号電極からの複数の電気生理学的信号を記録/マッピングすることによって、個体における心臓不整脈に関する病態に関する詳細を得ることができ、例えばアブレーション治療などの、適切な治療は改善(develop)され得る。記録された研究用の心臓内信号の態様は、所与の信号における特有な特徴の有無、信号の繰り返しの周期性および規則性、ならびに信号の振幅およびモルフォロジー(morphology)を含む。
【0004】
心臓内電気生理学的信号の記録における主な課題は、高感度装置によって拾い上げられる電気雑音源からの干渉である。このような雑音の主な原因の中には、特に、主電源の局部周波数標準(local frequency standard)に応じて、約50Hzまたは約60Hzにおける主電源干渉(mains interference)がある。他の雑音源には、内部増幅器雑音、記録に使用される配線の移動によるアーティファクト、および電極DCオフセットが含まれる。雑音は、すべての信号に共通の雑音成分(同相雑音(common mode noise))と、信号ごとに変化する雑音成分(差動モード雑音(differential mode noise))とを含み得る。
【0005】
例えば、雑音源に対応する周波数でフィルタリングすることによって信号を処理することで、雑音の一部を抑制することができる。しかし、そのようなフィルタリングは、信号の形態に影響を及ぼす傾向があり、したがって、最大限の注意を払って行われなければならない。心臓内カテーテルからの信号を処理するための、特に信号形態を考慮に入れた、有用なシステムおよび方法は、例えば、同時係属中の国際特許出願PCT/EP2016/057783に開示されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
上述したように、心臓内電気生理学的電位の適切な記録は、不可欠ではないにしても、高周波カテーテルアブレーションのような心臓内処置においてアブレーション治療を実行するのに役立つ。高周波カテーテルアブレーションは、心臓の電気伝導システムの一部である組織が、組織に印加される交流から生成される熱を使用して瘢痕化(アブレーション)される処置である。高周波アブレーションのための一般的な周波数は、300kHzを超え、通常、350kHz~600kHzの範囲、または400kHz~500kHzの範囲、または約500kHzである。印加された高周波エネルギーは、心臓不整脈に寄与する心臓組織の異常な電気経路を遮断するために使用される。
【0007】
高周波カテーテルアブレーション処置は、例えば、心房細動、再発性心房粗動、心房頻拍、多病巣性心房頻拍、上室性頻拍、および心室性不整脈のケースに必要とされてもよい。エネルギー放出プローブ(電極)は、心臓内に配置されるカテーテルの先端部に配置される。異常な電気的活動の領域を識別するマッピング動作が、瘢痕化されるべき、関連する心臓内位置を識別してもよい。一旦、関連組織が識別されると、一般的には、切除された組織の1つ以上の瘢痕線を点ごとに「引き上げる」ことを含むアブレーション処置が実行される。したがって、アブレーションの前および実際のアブレーションの最中の両方での心臓内電気生理学的信号の高品質な記録が、治療を成功させるために重要である。さらに、高品質な心臓内電気生理学的信号の記録は、アブレーションが実行された後にも重要であり、正しい治療を確認するためには特に重要である。
【0008】
しかしながら、心臓の組織のアブレーションを達成するためにカテーテルを通して患者に導入される高周波電力は、記録されるべき電気生理学的信号よりも数桁大きい。高周波(RF)アブレーション電力と心臓内電気生理学的信号とでは、振幅が1万倍、またはさらには10万倍異なることがある。さらに、アブレーション電極と組織との間のインタフェースは、一般的にはベースラインドリフトを引き起こし、これは、アブレーション電極からの記録されるべき電気生理学的信号を、増幅器の入力レンジ外に至らし得るものである。したがって、アブレーション中に心臓内電気生理学的信号を記録することができるようにするために、フィルタリングが一般に必要とされる。
【0009】
米国特許第6,027,500号は、アブレーションカテーテルと、高周波アブレーション装置と、心臓内ECG信号を取得するための患者インタフェースと、ペーシング信号を提供するために患者インタフェースに接続された刺激装置とを含む心臓アブレーションシステムを記載している。米国特許第6,027,500号に係るシステムは、RFアブレーションエネルギー信号による心臓内電気生理学的信号への干渉を抑制するために、カテーテルと患者インタフェースとの間に配置されたフィルタをさらに含む。しかしながら、アブレーションエネルギー信号を除去するために最適化されたフィルタを有する解決策は、例えば、RFアブレーションエネルギーフィルタが同相除去に影響を及ぼすため、アブレーションの前後の時間に収集される電気生理学的信号の品質を損なう傾向がある。
【0010】
米国特許第5,357,956号は、アブレーション中に心内膜信号を監視するための装置および方法を開示している。このアプローチでは、タイミング素子が、ナイキストサンプリングレートを実質的に上回るレートで交互する、複数の反復的で重複しないアブレーション期間および静止期間中に、様々な信号経路を選択的に分離、減衰、または相互接続させるために複数のスイッチを動作させる。RFエネルギーは、アブレーション期間中にアブレーション部位に送達され、一方、局所心内膜信号は、静止期間中に測定される。しかし、そのような解決策は、いわゆる静止期間によって中断される、アブレーション期間におけるRFアブレーションエネルギーの送達のための特定のプロトコルを含む。したがって、この解決策は、アブレーション処置に特定の制約を課し、アブレーション装置と記録装置の両方を同期させた特別な制御を必要とし、これにより、セットアップの複雑さが増し、既存のアブレーション装置および電気生理学的監視セットアップとの互換性が損なわれる。
【0011】
したがって、既存のアブレーション機器と互換性があり、または少なくとも容易に適合可能であり、従来技術の上述の問題の少なくともいくつかを克服する、アブレーションの前、最中、および後に低雑音の心臓内信号を記録するためのシステムおよび方法が必要とされている。さらに、心臓処置の始めから終わりまで、すなわち、強い干渉信号が発生して収集された電気生理学的信号の品質が持続的に混乱する可能性がある環境において、低雑音の電気生理学的信号を継続的に記録するためのシステムおよび方法が、より一般に必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本発明の広範な態様によれば、電気生理学的信号を記録するためのシステムにおいて使用される切り替え可能なフィルタリング装置は、複数の記録チャネルを備え、各記録チャネルは、患者インタフェースにおける患者側端末と、記録装置インタフェースにおける対応する記録側端末とを有し、各記録チャネルは、第1通過帯域を持つ第1周波数依存伝送特性を有する第1回路構成と、第1周波数依存伝送特性と異なる第2周波数依存伝送特性を持つ第2回路構成を有する第2信号経路と、を備え、第2周波数依存伝送特性は、第1通過帯域と重複する第2通過帯域を有し、切り替え可能なフィルタリング装置は、過渡干渉信号の状態を示す制御信号に応じて第1信号経路と第2信号経路との間で切り替えるように動作可能な切替装置をさらに備える。
【0013】
それによって、記録されるべき電気生理学的信号より数桁も大きい過渡的干渉信号が存在することによって課される例外的なフィルタリング要件に記録装置を適合させることを可能にするフィルタリング装置が実現され、第1信号経路は、そのような強い過渡的干渉信号が存在しない標準的な記録環境に対処するように適合され、第2信号経路は、過渡的干渉信号が存在することに起因する、強い干渉のある例外的状況に対処するように適合される。心臓内の記録中に生じ得るそのような過渡干渉信号の例には、例として以下でさらに詳述するように、除細動またはアブレーションエネルギーの印加が含まれる。適合は過渡干渉信号の状態を示す制御信号に応じて実行されるので、適合は自動化された方法で実行されてもよい。これは、心臓インターベンションを担当するオペレータによって調査され制御されるべきパラメータの複雑さを低減し、それによって心臓インターベンションの信頼性および安全性を改善する。
【0014】
有利には、制御信号によって示されるステータス情報は過渡干渉信号の「不在」、「発生」、「存在」および/または「終了」を含み、「発生」は「不在」から「存在」への遷移を指し、「終了」は「存在」から「不在」への遷移を指す。代表的な制御信号を生成する目的のために、過渡干渉信号の有無、ならびにこれら2つの間の遷移は、任意の適切な方法で、例えば、入力信号が所定の閾値振幅を超える(存在)か否か(不在)をチェックすることによって決定されてもよい。所与の記録チャネルについて、所定の閾値振幅は、例えば、指定された入力信号振幅範囲として決定されてもよい。例えば、干渉は、少なくともフィルタリングされていない入力信号のDC成分を監視することから、および/または、体表面EKG信号、患者基準信号などの過渡干渉によっても影響を受け、したがって、それを示す、対応する信号を監視することから検出されてもよい。このようなアプローチは、例えば、電気生理学的信号の記録が進行している間に除細動パルスが患者に印加される状況などにおいて、特に有用であり得る。これに代えて、またはこれに加えて、活動信号は、干渉の発生源で過渡信号を生成する装置によって提供されてもよく、したがって、活動信号は、過渡干渉信号の状態を示す制御信号を生成する目的で監視されてもよい。さらに代替的には、または前述のアプローチに加えて、過渡干渉信号の状態を示す制御信号は、干渉の発生源にある過渡信号の直接観測から導出されてもよい。フィルタリングされていない電気生理学的信号から、干渉を引き起こし得る過渡信号から、または干渉を引き起こし得るそのような過渡信号を生成する装置によって提供されるステータス信号から、制御信号を発生させる任意のそのようなアプローチはまた、アブレーション処置中の心臓内電気生理学的信号の記録のためなど、極めてデリケートな記録業務の状況において特に有用である。
【0015】
制御信号によって示される状態情報に応じて、フィルタリング装置の切り替え手段は、以下のように動作することができる。
-過渡干渉信号が存在しない場合に、第1信号経路を通過するように心臓内電気生理学的信号を送信する。
-過渡干渉信号が発生するとすぐに、第1信号経路から第2信号経路に切り替わる。
-過渡干渉信号が存在する間は第2信号経路を通過するように心臓内電気生理学的信号を送信し、過渡干渉信号の終了後は第2信号経路から第1信号経路に切り替える。
【0016】
好ましくは、第2信号経路の回路構成から第1信号経路の回路構成への切り替えは、過渡干渉信号の終了後に切り替え遅延を伴って実行される。切り替え遅延は、制御信号によって示される過渡干渉信号の終了時に開始され、第1信号経路の回路構成が再び確立された時に終了する。切り替え遅延は、強い干渉の結果として心臓内電気生理学的信号に誘起される持続性アーティファクトに対処することを容易にし、さらに、過渡干渉が存在する間に必要とされる厳格なフィルタリングから、過渡干渉がない時のより緩やかなフィルタリングへの切り替えを、切り替えによる非常に有害なアーティファクトを招くことなく可能にする。
【0017】
有利なことに、いくつかの実施形態によれば、本発明は、インターベンションの位置の近傍における心臓内電気生理学的信号の連続的な監視を必要とする心臓内アブレーション処置の状況において特に有用である。したがって、一例として、本発明の有用性は、過渡干渉信号が心臓内の位置に印加される高周波電力に由来するアブレーション処置を参照して以下に説明される。制御信号は、高周波アブレーション信号を監視することで生成されてもよく、また、干渉信号の状態を示す、対応する高周波検出出力を生成することで生成されてもよい。アブレーションを検出する場合、切り替え可能なフィルタリング装置は、高周波アブレーション信号を受信し、高周波アブレーション信号が存在することに応じて高周波検出出力を提供するように構成された高周波検出装置をさらに備えてもよい。相補的な出力は、次いで、高周波アブレーション信号がないことを示してもよい。
【0018】
したがって、本発明の第1の態様は、心臓内電気生理学的信号を記録し、心臓内の位置に高周波アブレーションエネルギーを提供するためのシステムで使用するための切り替え可能なフィルタリング装置に関し、フィルタリング装置は、複数の記録チャネルを備え、記録チャネルは、少なくとも1つのアブレーション記録チャネルを含み、各記録チャネルは、患者インタフェースにおける患者側端末と、記録装置インタフェースにおける対応する記録側端末とを有し、フィルタリング装置は、高周波アブレーション信号を受信し、(検出装置で受信された)高周波アブレーション信号が存在することに応じて高周波検出出力を提供するように構成された高周波検出装置をさらに備え、各記録チャネルは、第1通過帯域を持つ第1周波数依存伝送特性を有する第1信号経路と、第1周波数依存伝送特性とは異なる第2周波数依存伝送特性を有する第2信号経路と、高周波検出出力に応じて、第1信号経路と第2信号経路との間で切り替えるように動作可能である切替装置と、を備え、第2周波数依存伝送特性は第1通過帯域と重複する第2通過帯域を有する。
【0019】
少なくとも1つのアブレーション記録チャネルの患者側端子は、例えば、アブレーションカテーテルの手段によって、心臓内アブレーション部位に配置されるアブレーション電極に接続されるように適合される。したがって、アブレーション記録チャネルは、実際の高周波カテーテルアブレーション中、すなわち、高周波電力がアブレーション電極に印加されている間にも、アブレーション電極から心臓内電気生理学的信号を収集するように適合される。そのため、作業中、アブレーション記録チャネルは、アブレーションカテーテルのアブレーション電極に接続される。アブレーションエネルギーが検出されると、アブレーション電極からの電気生理学的信号を収集するように接続されるアブレーション記録チャネルを含む、すべての記録チャネルからのアブレーション中に信号を記録することができるように、追加のフィルタが記録チャネルに切り替えられる。アブレーションエネルギーが印加されていないとき、これらのフィルタは、可能な最大の信号忠実度を提供するために、記録チャネルから切り替えられる。
【0020】
高周波アブレーション信号は、アブレーション装置/発生器による高周波アブレーション電力出力が存在することを示し、かつ/または、患者に配置され、心臓内電気生理学的信号を記録するためにフィルタリング装置に接続された心臓内アブレーションカテーテルのアブレーション電極において高周波アブレーション電力出力が存在することを示す。例えば、アブレーション発生器が、患者に高周波アブレーションエネルギーを提供するためにアブレーションカテーテルに接続されたフィルタリング装置の外部にある限り、高周波検出装置は、検出目的のみのために外部アブレーション発生器から直接、高周波アブレーション信号を受信することができる。あるいは、アブレーション記録チャネルに接続されたアブレーション電極からアブレーション信号を直接検出することによって、アブレーション発生器からフィルタリング装置への専用接続の提供を避けることが可能である。
【0021】
高周波検出装置に提供される高周波アブレーション信号は、高周波アブレーション装置/発生器によって提供される実際の高周波電力、またはその一部であってもよい。高周波信号の一部は、検出目的のために、高周波アブレーション装置/発生器によって提供される実際の高周波電力から分岐されてもよい。高周波アブレーション信号は、例えば患者に対する、高周波アブレーション電力の出力に関する高周波アブレーション状態を示すデジタル信号であると考えることもできる。しかしながら、アブレーション電極において高周波アブレーション電力が現れることと、心臓内アブレーション処置の始めから終わりまで十分に連続的な記録を達成するための信号経路の切り替えとの間の過度の遅れを回避するために、このようなデジタル信号が、特にアブレーションが開始された後に、十分に速い反応時間で生成されるように注意が払われなければならない。
【0022】
患者インタフェースにおける患者側端子は、心臓内電気生理学的信号を記録するステップ、心臓に刺激を印加するステップ、および/または、アブレーションによって心臓組織を修正するステップを含む心臓内処置のための1以上のカテーテルに接続されるように適合される。したがって、患者インタフェースにおける患者側端子は、カテーテルの手段によって患者の心臓内の位置に配置された電極から電気生理学的信号の形態の供給電力を収集するためのものである。患者側端子で収集された信号は、記録装置インタフェースの対応する記録側端子で出力として提示される前に、フィルタリングのためにそれぞれの記録チャネルに送られる。患者側端子で収集された電気生理学的信号は、フィルタリングされていない信号とみなされ、記録側端子で出力として提示された電気生理学的信号は、フィルタリングされた信号とみなされる。
【0023】
患者側端子のうちの少なくとも1つは、患者の上または中に配置された不関電極構成から電気生理学的基準の形態で基準入力を収集することができる。したがって、記録チャネルの1つは、電気生理学的基準を提供するための基準チャネルとして動作可能である。患者における心臓内電気生理学的信号のための電気生理学的基準をとるために特に有利な位置は、例えば下大静脈である。
【0024】
患者側端子は、例えば、接続されたカテーテルの心臓内電極を介して心臓を刺激するよう仕向けられた刺激パルスの形態で出力を提供するようにさらに適合されてもよい。高周波アブレーション信号が存在することは、高周波検出装置によって検出される。RF検出装置によって提供されるRF検出出力は、記録側端子を介した心臓内信号が後続の処理/記録のために増幅装置に送信され得る前に、干渉するアブレーション関連のアーティファクトが存在すること(または不在であること)を示し、したがって、より積極的なフィルタリングを適用する必要性(または不要性)を示す。しかしながら、より積極的なフィルタリングを適用することは、信号品質に影響を及ぼし得る。高周波信号がアブレーションチャネル内に存在するか否かを自動的に検出し、この情報を切り替え可能なフィルタリング装置に供給することによって、積極的なフィルタリングは、例えば、アブレーションエネルギーが実際に送達されるときなど、必要なときにのみ用いることができ、そうではない場合(すなわち、アブレーションエネルギーが送達されないとき)には、スイッチオフすることができる。いくつかの実施形態によれば、高周波検出出力は、第1状態と、第1状態に相補的な第2状態とを区別することを可能にするデジタル出力であってもよく、第1状態においては第1信号経路を介して心臓内信号を送り、第2状態においては第2信号経路を介して心臓内信号を送る。切替装置によって適用されるロジックに応じて、第1状態はロジック「LOW」または「OFF」状態であってもよく、相補的な第2状態はロジック「HIGH」または「ON」状態であってもよい。あるいは、第1状態はロジック「HIGH」または「ON」状態であってもよく、相補的な第2の状態はロジック「LOW」または「OFF」状態であってもよい。しかしながら、記録チャネルのス切替装置を制御するように適合された高周波検出出力の異なる態様が考えられ得る。
【0025】
記録チャネルの切替装置は、チャネルの患者側端子で受信された心臓内信号を対応する記録側端子に送るのに、第1信号経路または第2信号経路のどちらを介するのか切り替えを可能にする。アブレーション中にのみ、高周波アブレーションに関連するアーティファクトを抑制するように適合されたフィルタをオンに切り替えることによって、可能な限り最良の信号品質が常に保証される。切り替えは、高周波アブレーション電力の送信が開始した後、迅速に行われる必要がある。速度のために、また使い勝手のために、スイッチは自動的に操作される必要がある。したがって、高周波アブレーションフィルタを非常に速くオンに切り替え、アブレーションが停止した後に、フィルタを再びオフに切り替える検出装置が提供される。切替装置は、高周波検出出力に応じて、以下のように操作することができる。
【0026】
第1信号経路は、高周波アブレーション信号が存在しない場合に心臓内信号を送るためのものであり、切替装置のスイッチは、それに応じて設定される。高周波アブレーション信号の存在を検出すると、高周波検出装置は、高周波検出出力を生成し、切替装置にチャネルのスイッチを設定させて、心臓内信号が第2信号経路を介するように経路を変更する。第2信号経路は、アブレーション電極と治療された組織との間のインタフェースの変化に起因する、送信された高周波アブレーション電力および/またはベースラインドリフトからの干渉のような、干渉するアブレーションに関連するアーティファクトを抑制するように適合されたフィルタを備える。高周波アブレーション電力がオフに切り換えられたことを高周波検出装置が検出すると、スイッチは、心臓内信号を第1信号経路に通すように戻される。
【0027】
第1および第2信号経路は、異なる周波数依存伝送特性を有する。したがって、第1信号経路は、RFアブレーション信号がない場合に最適な信号品質のために構成することができ、一方、第2信号経路は、アブレーション中に監視するために最も有用な心臓内信号を得るために、RFアブレーション関連アーティファクトをフィルタリングして除去するように構成することができる。第1および第2通過帯域は、両方の通過帯域が、少なくとも典型的な心臓内信号の周波数成分の大部分が想定される周波数をカバーするように、重なり合うべきである。
【0028】
第2信号経路は、実際のアブレーション下で、すなわち、高周波アブレーション電力が実際に所与の心臓内の位置に印加されているときに必要とされるような、より積極的なフィルタリング制約を課す。例えば、第2信号経路は、帯域通過を形成するように、ローパスフィルタおよびハイパスフィルタを備えることができる。ローパスフィルタは、心臓内信号を記録するための後続の増幅器回路の飽和を防止するために、最大300Vに達するアブレーション信号を2V未満まで減衰させるように適合されなければならない場合がある。したがって、ローパスフィルタは、RFアブレーション信号の周波数の信号を効果的に遮断するように構成された高域遮断周波数を有する。しかし、これは、典型的には他の雑音源の抑制に関して信号品質にも影響を及ぼす。特に、複数のチャネルから記録する場合、異なる記録チャネルで使用される、名目上のフィルタ部品間のばらつきのために、フィルタ部品の導入は、同相除去の減少を引き起こす可能性がある。このような差異は例えば、最大100μν以上に達するレベルの雑音の増加を引き起こし得る。ハイパスフィルタは、心臓内信号を記録するために、心臓内信号を後続の増幅器回路の入力レンジから外すベースラインドリフトを回避するために必要とされる。例えば、電極-組織インタフェースの変更および/または電荷の蓄積は、ベースラインDCレベルのドリフトを引き起こし得ることが示唆されている。アブレーション中のいずれの場合においても、かなりのベースラインドリフトが典型的に観察され、これは極めて急峻であり得る。したがって、ハイパスフィルタは、ベースラインドリフトを引き起こすだろうが、DC成分を効果的に抑制するように構成された低域遮断周波数を有する。しかしながら、ハイパスフィルタは、特に複数チャネル記録セットアップにおける同相除去に影響を及ぼすことに関して、上述のローパスフィルタと同じ信号品質の低下という問題を有する。さらに、ハイパスフィルタは、刺激および除細動後の心臓内信号を記録するための信号回復時間を増加させることができる。ローパスフィルタおよびハイパスフィルタの両方は、心臓内電極のインピーダンスが高く、互いに異なる場合、入力インピーダンスを低下させるが、これもまた、雑音をもたらす可能性がある。したがって、第2信号経路の低域遮断周波数および高域遮断周波数の選択は、一方では意味のある心臓内信号を収集することと、他方ではベースラインドリフトおよび/または送信された高周波アブレーション電力からの干渉などといった、心臓内の位置で高周波カテーテルアブレーション処置を実行することに起因する望ましくないアーティファクトを抑制することとの折衷案であるべきである。
【0029】
RFアブレーション信号が存在しない場合、第2信号経路の厳しいフィルタリング制約は、信号品質に重大な影響を及ぼす可能性がある。第1通過帯域は、第2通過帯域よりも広いか、および/または、より少ない極を使用することで、より急峻でないフィルタであるかのいずれかであり、したがって、第2通過帯域に対して厳しいフィルタリング制約を取り去る、または少なくとも緩和するものであり、またしたがって、高周波アブレーション電力がない状態で第1信号経路が選択される場合に、信号品質の改善につながるものである。上述のように、第1および第2通過帯域は、典型的な心臓内信号の周波数成分の大部分が位置するか、または少なくとも想定される、心臓内電気生理学的信号に関する関連範囲と少なくとも重なるべきである。
【0030】
有利には、いくつかの実施形態によれば、フィルタリング装置は、高周波アブレーション電力をフィルタリング装置に通すための入力端子と出力端子とを有するアブレーション入力チャネルをさらに備え、高周波アブレーション検出装置は、高周波アブレーション信号をタップオフするか、そうでなければ引き出すためにアブレーションチャネルと通信する。有利には、アブレーション入力チャネルは、アブレーション入力端子からアブレーション出力端子に高周波アブレーション信号を送信するように構成される。さらに有利には、アブレーション出力端子は、患者インタフェースにおいてアブレーション記録チャネルの患者側端子に接続され、そこを通って高周波アブレーション信号を送達する。それによって、アブレーション電力出力とフィルタリング装置の患者インタフェースとの改善された統合が達成される。統合のために、患者側端子の少なくとも1つは、接続されたアブレーションカテーテルのアブレーションチャネルに、高周波アブレーション信号の形態でアブレーションエネルギー出力を送達するように適合される。異なる構成のアブレーションカテーテルは、高周波カテーテルアブレーションの当業者に知られており、フィルタリング装置の患者インタフェースは、そのような既知の構成に調和するように適合されてもよい。アブレーション出力を送達するように適合された患者側端子は、アブレーション入力端子からアブレーション入力チャネルを介して高周波アブレーション信号の形態でアブレーションエネルギーを受け取る。アブレーション入力端子は、アブレーション信号発生器から高周波アブレーション信号を受信するように構成される。異なる構成のアブレーション信号発生器は、高周波カテーテルアブレーションの当業者に知られており、フィルタリング装置のアブレーション入力端子は、そのような既知の構成に調和するように適合されてもよい。
【0031】
好ましくは、いくつかの実施形態によれば、第1通過帯域は第2通過帯域よりも広い。有利には、いくつかの実施形態によれば、第1通過帯域は第2通過帯域よりも広く、第1通過帯域の第1低域遮断周波数は第2通過帯域の第2低域遮断周波数よりも小さい。さらに有利には、いくつかの実施形態によれば、第1通過帯域は第2通過帯域よりも広く、第1通過帯域の第1高域遮断周波数は第2通過帯域の第2高域遮断周波数よりも大きい。
【0032】
さらに有利には、いくつかの実施形態によれば、第1通過帯域は第2通過帯域を含む。これにより、第1通過帯域の遮断周波数の少なくとも1つ、好ましくは両方の遮断周波数が、第2通過帯域の対応する遮断周波数よりも、心臓内電気生理学的信号の関連範囲からさらに離れている構成が達成される。
【0033】
さらに、いくつかの実施形態によれば、ローパスフィルタ部品は、第2信号経路にのみ設けられる。さらに、いくつかの実施形態によれば、ハイパスフィルタ部品は、第2信号経路にのみ設けられる。好ましくは、ローパスフィルタ部品とハイパスフィルタ部品の両方が、第2信号経路にのみ設けられる。例えば、第1信号経路は、伝送線路として、または単一利得バッファを有する伝送線路として構成されてもよい。そのような実施形態では、第1信号経路と第2信号経路との間の切り替えは、本質的に、第2信号経路のそれぞれのフィルタ部品をオンまたはオフに切り替えることになる。
【0034】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、第2周波数依存伝送特性の高周波数ロールオフは、第1周波数依存伝送特性の高周波数ロールオフよりも急峻であり、および/または、第2周波数依存伝送特性の低周波数ロールオフは、第1周波数依存伝送特性の低周波数ロールオフよりも急峻である。第1周波数依存伝送特性は、第1通過帯域からの第1高周波数ロールオフを有し、第2周波数依存伝送特性は、第2通過帯域からの第2高周波数ロールオフを有し、第2通過帯域からの第2高周波数ロールオフは、第1通過帯域からの第1高周波数ロールオフよりも急峻である。これにより、第1通過帯域の少なくとも1つの遮断周波数、好ましくは両方の遮断周波数は、電源周波数においてより少ない影響を及ぼすものであり、したがって、第2通過帯域の対応する遮断周波数よりも同相除去の劣化がより少ない構成が達成される。
【0035】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、第2信号経路における高周波遮断周波数は、5kHzから50kHzの間、または5kHzから30kHzの間、または6kHzから20kHzの間、または7kHzから15kHzの間である。高域遮断周波数の値は、周波数が増加することにつれて、減衰が-3db以下に低下する点について定義される。第2信号経路におけるローパスフィルタリングのための高域遮断周波数のこの選択により、典型的には300kHzを超える周波数、通常は400kHzから600kHzの範囲、または約500kHzで生じる高周波アブレーション信号は、記録された心臓内信号に過度に影響を及ぼすことなく、また特に、複数の記録チャネルから記録された心臓内電気生理学的信号における効率的な同相除去(例えば、主電源干渉の抑制)を損なうことなく、効果的に遮断することができる。
【0036】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、ローパスフィルタは、-30dbから-60dbの間、好ましくは-40dbから-50dbの間に、上述のような典型的なアブレーション周波数を減衰させるように設計される。これは、高域遮断周波数およびロールオフの峻度の適切な組み合わせを選択することによって、いくつかの異なるフィルタ構成を用いて達成することができる。400kHzから600kHz、または約500kHzの範囲のアブレーション周波数を考慮すると、一例では、ロールオフが10倍ごとに40dBとすることができ、高域遮断周波数は6kHz~15kHz、好ましくは12kHz~15kHz、または約14kHzとすることができる。また、ロールオフは、10倍ごとに60dB以上であってもよく、そうなると、遮断周波数は上述したものよりも高くなる。好ましくは、高域遮断周波数は、5kHz以上、または50kHzを超える範囲であって、下限は、フィルタが信号品質に影響を及ぼすことを回避するためのものであり、上限は、所与のロールオフ峻度に対して記録チャネル内の高周波アブレーション信号の必要な減衰量によって決定される。所与のアブレーション周波数における所与の必要な減衰量に対して、より大きな高域遮断周波数は、必要な減衰量を達成するために、より急峻なロールオフを必要とする。しかし、そのような急峻なロールオフは、回路の複雑さを増大させるという問題を伴うことがあり、これは、関連する回路のより大きな設置面積を必要とすることがあり、より多くの電子部品が含まれるために、製造するのにより高価であり、および/またはさらなる雑音源/信号変動を誘発することがある。
【0037】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、低域遮断周波数は、0.5Hz以下、好ましくは0.1Hz以下、最も好ましくは0.05Hz以下である。低域遮断周波数の値は、周波数が減少することにつれて、減衰が-3db以下に低下する位置として定義される。第2信号経路におけるハイパスフィルタリングのための高域遮断周波数のこの選択により、ベースラインドリフトを引き起こすDC成分は、記録された心臓内信号に過度に影響を及ぼすことなく、また特に、複数の記録チャネルから記録された心臓内電気生理学的信号における、例えば、主電源干渉の抑制のための、その後の効率的な同相除去を損なうことなく、効果的に抑制することができる。
【0038】
上述したように、高周波検出出力に応じた第1信号経路と第2信号経路との切り替えは、検出出力を制御信号として受信する切替装置の手段によって行われる。切替装置は以下に説明するように、有利な実施形態に係り、動作可能であるように構成することができる。
【0039】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、第1信号経路から第2信号経路への切り替えは、心臓内の位置に高周波アブレーションエネルギーを提供するための高周波アブレーションサイクルの開始後、100ミリ秒以内、好ましくは10ミリ秒以内、またより好ましくは1ミリ秒以内に行われる。それによって、第1信号経路から第2信号経路への切り替えは、高周波アブレーション信号がアブレーション入力端子に印加された後のアブレーション開始反応時間内に迅速に行われることが必要とされ、アブレーション開始反応時間は、100ミリ秒の上限を超えるものではなく、あるいは50ミリ秒、好ましくは10ミリ秒、あるいは5ミリ秒、または最も好ましくは1ミリ秒である。短い反応時間は、上述のアブレーション関連アーティファクトの原因となるアブレーションのための高周波電力の投入と、アブレーション中の心臓活動の監視に有用な心臓内電気生理学的信号の入手との間に、ユーザが許容できない遅れを経験することを回避するために望ましい。100ミリ秒を超える反応時間によって引き起こされる遅れは、ユーザに受け入れられないと考えられる。100ミリ秒未満の反応時間は、許容可能な遅れをもたらすと考えられる。しかしながら、高周波アブレーションパルスを開始するときに心臓内信号の十分に安定した観察を提供するためには、10ミリ秒未満の応答時間が好ましい。最も好ましくは、アブレーションなしの期間における心臓内信号の監視/記録から、アブレーションを伴う期間における監視/記録へ本質的に乱れることなく移行するために、1ミリ秒以下の反応時間が提供される。
【0040】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、第2信号経路の回路構成から第1信号経路の回路構成への切り替えは、スイッチオフ遅延で実行される。スイッチオフ遅延は、アブレーション入力端子に印加された高周波アブレーション信号の終了から、第1信号経路の回路構成への切り替えの完成までの期間である。
【0041】
高周波アブレーションの間、心臓内の位置から収集され、患者側端子に提供される心臓内電気生理学的信号は、増大した(正または負の)DCオフセットにドリフトする傾向がある。これは特に、アブレーション部位のすぐ近傍をプロービングするアブレーション電極および電極から収集された心臓内電気生理学的信号に当てはまる。それぞれの心臓内信号は、影響を受けた記録チャネルの第2信号経路内のハイパスフィルタの手段によって、後続の増幅回路のダイナミックレンジ内に保持される。アブレーションが終了した後、それぞれの心臓内信号が後続の増幅/記録装置の範囲内に戻るまでに、いくらかの時間がかかる。この緩和(relaxation)に対処するために、記録チャネルを第2信号経路の回路構成から第1信号経路の回路構成に切り替えるための制御信号は、遅延されたままである。好ましくは、第2信号経路の回路構成から第1信号経路の回路構成への移行を完了するための最小遅延は、特にアブレーション中に高周波アブレーション信号を抑制するためのハイパスフィルタが完全にスイッチオフされる前に観測されるべきである。
【0042】
有利には、いくつかの実施形態によれば、第2信号経路の回路構成から第1信号経路の回路構成への切り替えは、アブレーション入力端子に印加される高周波アブレーション信号の終了後、少なくとも0.1秒、少なくとも0.2秒、少なくとも0.5秒、または少なくとも1秒、または少なくとも2秒、または少なくとも5秒のスイッチオフ遅延で完了する。
【0043】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、切り替え遅延は、アブレーション入力端子に印加される高周波アブレーション信号の終了後、少なくとも0.1秒、少なくとも0.2秒、少なくとも0.5秒、または少なくとも1秒、または少なくとも2秒、または少なくとも5秒である。アブレーション後の心臓内電気生理学的信号が範囲内にある場合であっても、第2信号経路のハイパスフィルタリングが急激にオフに切り替えられた場合には、自然なオフセットへの急激なDCジャンプが生じる可能性がある。これは、高周波アブレーション信号の終了後に、第2信号経路の回路構成から第1信号経路の回路構成への段階的な移行を、例えば特定の、最小遅延期間にわたって実行することを必要とすることによって回避される。
【0044】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、第2信号経路から第1信号経路への切り替えは、第1信号経路の回路構成に完全に切り替える前に、少なくとも1つの中間ステージを介して実行される。少なくとも1つの中間ステージの間、第2信号経路のハイパスフィルタは、アブレーション中のように共通信号接地を基準とする代わりに、フィルタリングされていない信号経路に結合される。好ましくは、少なくとも1つのハイパスフィルタ構成は、第2信号経路のハイパスフィルタがアブレーション中のように共通信号接地を基準とする代わりにフィルタリングされていない信号に結合される、少なくとも1つの中間ステージを介して切り替えられる。切り替え遅延が終了すると、それぞれの記録チャネルの回路構成は、完全に第1信号経路に切り替えられる。それによって、フィルタリングされた心臓内電気生理学的信号のオフセットは、フィルタリングされていない心臓内電気生理学的信号のオフセット、すなわち、それぞれの記録チャネルの患者側端子でフィルタリングすることなく直接観察されるオフセットに至らしめられ、したがって、ハイパスフィルタの急激な切り替えに起因して、それぞれの記録チャネルの記録側端子で観察され得るような、フィルタリングされた心臓内信号におけるアーティファクトを回避するか、または少なくとも実質的に低減する。
【0045】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、第2信号経路から第1信号経路への切り替えは、第1信号経路の回路構成に完全に切り替える前に、少なくとも2つのステージを介して実行される。
i)共通信号接地を基準とする第2信号経路のハイパスフィルタを有し、アブレーション中のようにハイパス構成を維持する初期緩和ステージ。
ii)緩和ステージの後の、上述のように、フィルタリングされていない信号に結合される第2信号経路のハイパスフィルタを有する信号基準ステージ。
それによって、フィルタリングされていない心臓内電気生理学的信号のベースラインオフセットは、上述のようにフィルタリングされた心臓内電気生理学的信号のオフセットがフィルタリングされていない心臓内電気生理学的信号のオフセットに能動的に至らしめられる前に、高周波アブレーション信号がスイッチオフされた後で緩和および/または安定することが可能になる。それによって、信号経路切り替えに関連するアーティファクトの抑制は、例えば、高周波アブレーション電力をオフに切り替える際に観察されるような、より広い範囲のベースラインオフセット電圧に対して、より確実に動作することによって、さらに改善され得る。
【0046】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、第2信号経路から第1信号経路への切り替えは、第1信号経路の回路構成に完全に切り替える前に、少なくとも2つのステージを介して実行される。
i)フィルタリングされていない信号に結合される第2信号経路のハイパスフィルタを有する第1信号基準ステージ。
ii)第1信号基準ステージの後の、フィルタリングされていない信号にも結合されるが、第1信号基準ステージの低域遮断周波数より上の低域遮断周波数を有する第2ハイパスフィルタ構成を有する第2信号基準ステージ。
フィルタリングされていない信号に結合される第2信号経路の低域遮断周波数と比較して大きな低域遮断周波数を有する追加ステージを導入することによって、ベースラインオフセットをその自然のオフセットに至らしめる上述のプロセスを、さらに改善することができる。例えば、第1信号経路に完全に切り替える前に、そのプロセスを加速すること、および/または、フィルタリングされていない心臓内電気生理学的信号のオフセットに記録チャネル内のフィルタリングされた心臓内信号のオフセットを近づけることによりさらに改善することができる。
【0047】
有利には、いくつかの実施形態によれば、第2信号経路から第1信号経路への切り替え時の漸進的な移行は、第1信号経路の回路構成に完全に切り替える前に、少なくとも3つのステージを介して実行される。
i)共通信号接地を基準とする第2信号経路のハイパスフィルタを有し、アブレーション中のようにハイパス構成を維持する初期緩和ステージ。
ii)緩和ステージの後の、フィルタリングされていない信号に結合される第2信号経路のハイパスフィルタを有する第1信号基準ステージ。
iii)第1信号結合ステージの後の、フィルタリングされていない信号に結合される第2ハイパスフィルタ構成を有し、第2ハイパスフィルタは第1信号結合ステージの低域遮断周波数より上の低域遮断周波数を有する第2信号基準ステージ。
この特定のシーケンスにおいて少なくとも2つのステージを使用する上述の実施形態を結合することによって、切り替えの前に、記録チャネル内のフィルタリングされた心臓内信号のオフセットをフィルタリングされていない信号のオフセットに近づけるという利点は、相乗的に組み合わされて、信号経路の切り替えに関連するアーティファクトのさらに改善された抑制を達成する。
【0048】
段階的な切り替えのステージは、スイッチオフ遅延全体に及ぶべきである。例えば、初期ステージはアブレーション終了後0~1秒の間の期間に及ぶことができ、さらなるステージはアブレーション終了後1秒~2秒の間の期間に及ぶことができ、さらなるステージは、アブレーション終了後2秒~5秒の間の期間に及ぶことができる。アブレーション終了後、第2信号経路から第1信号経路に戻るプロセスには、スイッチオフ遅延が終了する前、すなわち第1信号への切り替えが完了する前に、これらの中間ステージがフィルタリングされた信号をフィルタリングされていない信号に近づけるように適合されている限り、より多くのステージを導入することができる。
【0049】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、複数の記録チャネルのサブセットは少なくともアブレーショングループを形成するようにグループ化され、アブレーション記録グループはアブレーション記録チャネルおよび少なくともさらなる記録チャネルを含む。
【0050】
好ましくは、アブレーショングループ内のすべての記録チャネルにおける第1および第2信号経路のフィルタ構成は、名目上同一である。名目上同一という用語は、フィルタ構成がそれぞれのフィルタリング回路の構成要素の公差によって決定される公差内で同一であるものと理解されたい。さらに好ましくは、アブレーショングループの記録チャネルの切替装置が高周波検出装置によって提供される高周波検出出力に応じて同期動作するように構成される。
【0051】
アブレーション記録チャネルの患者側端子は、例えばアブレーションカテーテルの手段によって心臓内アブレーション部位に配置されるアブレーション電極に接続されるように適合される。少なくとも1つのさらなる記録チャネルの患者側端子は、一般的には電気生理学的基準を提供するために、患者上の、または好ましくは患者内の位置に配置される不関電極に接続されるように適合され、確保される。これは、上述のように、アブレーション依存フィルタリングによる信号品質の改善を伴って、アブレーション電極からの単極心臓内電気生理学的信号の観察/構築を可能にする。あるいは、アブレーショングループのさらなる記録チャネルが、アブレーション部位に隣接する心臓内の位置に配置される心臓内電極に接続されるように適合されてもよい。典型的には、そのような心臓内電極がアブレーション電極と同じカテーテル上に、かつアブレーション電極に隣接して配置される。これは、上述のように、アブレーション依存フィルタリングによる信号品質の改善を伴って、アブレーション電極からの双極心臓内電気生理学的信号の観察/構築を可能にする。アブレーション記録グループの全ての記録チャネルにおける名目上同一のフィルタ構成は、効率的な同相雑音低減を可能にする。
【0052】
上述のように、高周波アブレーション信号がアブレーション記録チャネルの心臓内端末を介して送達されるか否かに応じて、全ての記録チャネルにおけるフィルタ構成は、それぞれ第1および第2周波数依存伝送特性を有する第1および第2信号経路の間で切り替え可能である。全てのチャネルにおける異なる信号経路間の同期的な切り替えは、記録チャネルが切り替えの最初から最後にわたって本質的に常に同じそれぞれのフィルタ構成を有することを確実にする。
【0053】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、アブレーショングループは、さらに別の記録チャネルを備え、それによって、双極信号の構築/観察を可能にする。さらに別の記録チャネルの患者側端子は、心臓内アブレーション電極に隣接する心臓内電極に接続されるように適合される。さらに別の記録チャネルは、不関電極の電気生理学的基準に接続可能なさらなる記録チャネルと呼ぶことができ、これにより、上述のように、アブレーション依存フィルタリングによる信号品質の同じ改善を伴って、さらに別の電極からのさらなる単極心臓内電気生理学的信号の観察/構築が可能になる。さらに、双極信号はアブレーション記録チャネルおよびさらに別の記録チャネルを互いに参照することによって観察されてもよく、または双極信号はそれぞれの単極電気生理学的信号から構築されてもよい。
【0054】
さらに、フィルタリング装置のいくつかの実施形態によれば、複数の記録チャネルの追加サブセットは追加グループを形成するためにグループ化され、追加記録グループは少なくとも2つの記録チャネルを含む。好ましくは、追加グループ内のすべての記録チャネルにおける第1および第2信号経路のフィルタ構成は、名目上同一/同一である。名目上同一という用語は、フィルタ構成がそれぞれのフィルタリング回路の構成要素の公差によって決定される公差内で同一であるものと理解されたい。さらに好ましくは、追加グループの記録チャネルの切替装置が高周波検出装置によって提供される高周波検出出力に応じて同期動作するように構成される。
【0055】
追加グループは、好ましくは少なくとも2つの記録チャネル、さらに好ましくは多数の記録チャネルを含む。これにより、同相雑音を抑制することにより、主電源干渉除去の改善を達成することができる。
【0056】
アブレーショングループにおけるように、名目上同一のフィルタ構成が好ましくは追加グループのすべての記録チャネルに備えられ、異なるそれぞれの信号経路間の切り替えが、さらに好ましくは、同期して実行される。同期された切り替えは、第1信号経路の実際のフィルタ構成、また特に第2信号経路の実際のフィルタ構成に応じて動作することができる。追加グループの記録チャネルの第1信号経路は高周波アブレーション信号がない場合に心臓内信号を通過させるためのものであり、第2信号経路はアブレーション中に心臓内信号を通過させるためのものである。典型的には、第1信号経路から第2信号経路への切り替え(すなわち、アブレーションフィルタリングを「ON」にする)は、アブレーショングループと同期して、または少なくとも同じ時間枠内、すなわち、アブレーション入力チャネル内の検出装置が高周波アブレーション信号を検出次第、可能な限り速やかに、実行される。しかしながら、アブレーションの終了後に、追加グループの記録チャネルを第2信号経路から第1信号経路に切り替えて戻す場合(すなわち、アブレーションフィルタを「OFF」にする)、ハイパスフィルタがない場合は、通常、アブレーショングループの場合と同じスイッチオフ遅延を維持する必要はない。
【0057】
追加グループの記録チャネルは、アブレーショングループを形成する記録チャネルのサブセットの一部ではない。さらに、追加グループは、アブレーション記録チャネルを含まない。したがって、追加記録グループ内の記録チャネルは、典型的には、アブレーション記録グループ内の記録チャネルとは異なる、電気生理学的雑音およびベースラインオフセット環境から心臓内電気生理学的信号を受信する。したがって、追加記録グループ内の記録チャネルのフィルタ構成は、通常、アブレーション記録グループのものとは異なるように選択される。
【0058】
追加グループの記録チャネルは、典型的にはベースラインドリフトの同じレベルを示さず、したがって、アブレーショングループの記録チャネルと同じレベルのハイパスフィルタリングを必要としないことが分かる。実際には、ハイパスフィルタリングが追加グループの記録チャネルのために省略されてもよい。したがって、記録チャネルをアブレーショングループと追加グループとにグループ化することにより、実際の雑音環境に応じて最適化された、差別化された信号フィルタリング手法が可能になる。これは、アブレーション中にアブレーション部位およびそのすぐ近くの環境から収集された信号ほど重大な影響を受けずに、少なくともそれらの心臓内電気生理学的信号に対する効率的な同相除去を損なうことなく達成することができる。アブレーショングループ記録チャネルは、アブレーション処置に関与する電極またはアブレーション処置に隣接する電極に特有の、アブレーション中の高周波関連アーティファクトを最適に処理するように構成することができ、一方、追加グループの記録チャネルは、これらのアブレーション電極特有の制約を考慮に入れる必要なしに、心臓内電気生理学的信号を監視するように最適化することができる。それによって、改善されたフィルタリングされた心臓内電気生理学的信号が、記録インタフェースにおける出力として提供され得る。
【0059】
典型的には、追加記録チャネルが心臓内位置の電極から心臓内電気生理学的信号を収集するように適合される。しかし、記録チャネルの少なくとも1つは、一般的には、患者の上の、または好ましくは患者の中に位置する不関電極に接続されるように適合される。不関電極は、患者の電気生理学的基準を提供するためのものである。追加記録グループの記録チャネルの患者側端子は、心臓内カテーテルに接続されるように適合され、心臓内カテーテルは、心臓内位置に電極を配置するように適合される。追加記録グループに接続される心臓内電極は、アブレーション記録グループに接続される心臓内電極と同じカテーテル上に配置されてもよいし、異なるカテーテル上に配置されてもよい。アブレーショングループと同様に、追加グループの記録チャネルの1つは、一般的には、電気生理学的基準を提供するために、患者の上の、または好ましくは患者の中の場所に配置される不関電極に接続されるように確保/適合される。好ましくは、同じ電気生理学的基準がアブレーショングループおよび追加グループの両方に使用される。その目的のために、電気生理学的基準は、患者インタフェースで受信され、分割されて、アブレーショングループおよび追加グループのそれぞれの記録チャネルに供給されてもよい。
【0060】
本発明の第2の態様は、心臓内信号を記録し、心臓内の位置に高周波アブレーションエネルギーを提供するためのシステムであって、システムは、先の請求項のいずれかに記載の切り替え可能なフィルタリング装置と、高周波アブレーション信号をアブレーション入力チャネルに供給するためのアブレーション入力端子に結合されたアブレーション装置と、記録チャネルからフィルタリングされた電気生理学的信号を収集するための、切り替え可能なフィルタリング装置の記録装置インタフェースに結合された差動増幅段であって、記録チャネルからのフィルタリングされた電気生理学的信号を、それぞれの増幅された電気生理学的信号を取得するための信号基準に対して増幅するように適合された差動増幅段と、増幅された電気生理学的信号に基づいて心臓内データの(リアルタイム)出力を提供するように適合されたプロセッサ装置と、を備える。最も好ましくは、治療中の心臓の現在の状態に対して即座にフィードバックを提供させるように、出力がリアルタイム出力として心臓内処置を行うユーザに提供される。
【0061】
このシステムは、改善されたフィルタリングを用いて心臓内高周波アブレーション処置中の心臓内電気生理学的信号の記録を可能にする。これは、高周波アブレーション信号の有無、および本明細書に記載の、結果として生じる雑音状態に従って自動的に調整される再構成可能なフィルタ設計によって達成される。改善されたフィルタリングは卓越した信号品質を常に保証するものであり、常にとは高周波アブレーション信号が心臓内の位置でアブレーション電極を通して実際に印加されるとき、また高周波アブレーション信号が切られた後を含む。これは、連続的な心臓内電気生理学的監視を可能にし、観察の識別可能な遅滞および/またはデッドタイムなしに、高周波カテーテルアブレーション処置の最初から最後まで、医師/ユーザに即座にフィードバックを提供する。それによって、アブレーション装置と組み合わせた切り替え可能なフィルタリング装置、および心臓内電気生理学的信号のリアルタイムプレゼンテーションに適合された増幅/記録のための装置は、システムの応答性および使用の容易さを相乗的に改善し、したがって、このようにしてリアルタイムプレゼンテーションに適合されるようなシステムを用いて実行される心臓内高周波アブレーション処置の精度および品質を相乗的に改善する。
【0062】
さらに、システムのいくつかの実施形態によれば、切り替え可能なフィルタリング装置は、上述したように、アブレーショングループと追加グループにグループ化される記録チャネルを有する。それによって、上述のようなグループ化された記録チャネルを有するフィルタリング装置の利点は、システムを使用して実行される心臓内高周波アブレーション処置の改善のために利用される。
【0063】
有利には、プロセッサ装置が、同相信号を増幅された電気生理学的信号の平均として決定するように適合され、増幅された電気生理学的信号は同相信号を基準にして参照される。さらに有利には、差動増幅段は平均基準増幅段であり、増幅された電気生理学的信号の平均は増幅された電気生理学的信号を同相信号に基準化するように、信号基準として差動増幅段の入力側にフィードバックされる。それによって、増幅され提示された信号の品質がさらに向上し、それによって、システムを使用して実行される心臓内高周波アブレーション処置の改善がさらに拡大される。
【0064】
心臓内電気生理学的信号を記録するように適合された特に有利な構成において平均基準増幅段を使用することのさらなる詳細、およびそれによって達成される利点、特に同相信号基準に心臓内信号および不関信号の両方を含めることによって達成される利点は、本発明者の同時係属特許出願PCT/EP2016/057783に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
さらに別の態様によれば、心臓内電気生理学的信号をフィルタリングする方法は、特許請求の範囲に詳述され、さらに本明細書に開示されるような有利な実施形態を備えて提供される。これにより、切替装置及び対応する記録装置の実施形態の文脈で既に説明したものと同様に、少なくとも類似の利点が達成される。
【0066】
切り替え可能なフィルタリング装置を用いて心臓内電気生理学的信号をフィルタリングする方法であって、方法は、第1回路構成を有し、第1通過帯域を有する第1周波数依存伝送特性を有する第1信号経路を介して心臓内電気生理学的信号を通過させることと、過渡干渉信号を監視することと、過渡干渉信号の発生時に、第1信号経路から、第2回路構成を有し、第1周波数依存伝送特性とは異なり、第1通過帯域に重なる第2通過帯域を有する第2周波数依存伝送特性を有する第2信号経路に切り替えることと、過渡干渉信号の終了時に、第2信号経路から第1信号経路に切り替えることと、を有し、第2信号経路から第1信号経路への切り替えは、過渡干渉信号の終了後に切り替え遅延を伴って実行される。
【0067】
心臓内電気生理学的信号は、フィルタリングされていない入力として、切り替え可能なフィルタリング装置の患者側インタフェースで受信され、フィルタリング装置を通して処理され、次いで、フィルタリングされた出力として、切り替え可能なフィルタリング装置の記録側インタフェースで提供される。患者側インタフェースと記録側インタフェースとの間で、心臓内電気生理学的信号は第1回路構成を有し、第1通過帯域を持つ第1周波数依存伝送特性を有する第1信号経路を通過する。監視手段は、過渡干渉信号を監視し、過渡干渉信号の状態を示す制御信号を生成するために提供される。上述のように、状態とは、過渡干渉信号の「不在」、「発生」、「存在」、および「終了」のうちの1つ以上を含む。制御信号は、受信され、切替装置を動作させるために使用される。過渡干渉信号の発生を示す制御信号に応じて、切替装置は、第1信号経路から第2回路構成を有する第2信号経路に切り替えるように動作する。第2信号経路は、第1周波数依存伝送特性とは異なり、第1通過帯域と重なる第2通過帯域を有する第2周波数依存伝送特性を有する。したがって、心臓内電気生理学的信号は、第2信号経路を通って送られ、そこで、強い干渉が存在することによって課される要件に従ってフィルタリングされる。監視手段が過渡干渉信号の終了を検出すると、対応する制御信号が生成される。過渡干渉信号の終了を示す制御信号に応じて、切り替え手段は、第2信号経路から第1信号経路に切り替えるように動作する。最も好ましくは、第2信号経路の回路構成から第1信号経路の回路構成への切り替えは、制御信号によって示される過渡干渉信号の終了後に切り替え遅延を伴って実行される。
【0068】
さらに、本方法のいくつかの実施形態によれば、第1信号経路から第2信号経路への切り替えは、過渡干渉信号の発生後、100ミリ秒以内、好ましくは10ミリ秒以内、さらにより好ましくは1ミリ秒以内に行われる。
【0069】
さらに、本方式のいくつかの実施形態によれば、切り替え遅延は、少なくとも0.1秒、または少なくとも0.2秒、または少なくとも0.5秒、または少なくとも1秒、または少なくとも2秒、または少なくとも5秒である。
【0070】
さらに、本方式のいくつかの実施形態によれば、第2信号経路から第1信号経路への切り替えは、第1信号経路の回路構成に完全に切り替える前に、第2信号経路のハイパスフィルタがフィルタリングされていない信号経路に結合される少なくとも1つのステージを介して実行される。
【0071】
好ましくは、少なくとも1つのハイパスフィルタ構成は、第2信号経路のハイパスフィルタがアブレーション中のように共通信号接地を基準とする代わりにフィルタリングされていない信号に結合される、少なくとも1つの中間ステージを介して切り替えられる。切り替え遅延が終了すると、回路構成は完全に第1信号経路に切り換えられる。それによって、フィルタリングされた心臓内電気生理学的信号のオフセットは、フィルタリングされていない心臓内電気生理学的信号のオフセット、すなわち、それぞれの記録チャネルの患者側端子でフィルタリングすることなく直接観察されるオフセットに至らしめられ、したがって、ハイパスフィルタの急激な切り替えに起因して、それぞれの記録チャネルの記録側端子で観察され得るような、フィルタリングされた心臓内信号におけるアーティファクトを回避するか、または少なくとも実質的に低減する。
【0072】
さらに、本方式のいくつかの実施形態によれば、第2信号経路から第1信号経路への切り替えは、第1信号経路の回路構成に完全に切り替える前に、少なくとも2つのステージを介して実行され、ステージは、共通信号接地を基準とする第2信号経路のハイパスフィルタを有する初期緩和ステージと、緩和ステージの後の、フィルタリングされていない信号に結合される第2信号経路のハイパスフィルタを有する信号基準ステージと、を備える。
【0073】
さらに、本方法のいくつかの実施形態によれば、第2信号経路から第1信号経路への切り替えは第1信号経路の回路構成に完全に切り替える前に、少なくとも2つのステージを介して実行され、ステージは、
i)第2信号経路のハイパスフィルタがフィルタリングされていない信号に結合される、第1ハイパスフィルタ構成を有する第1信号基準ステージと、
ii)第1信号基準ステージの後の、第2ハイパスフィルタ構成を有する第2信号基準ステージと、
を備え、第1ハイパスフィルタに代えて第2ハイパスフィルタはフィルタリングされていない信号に結合され、第2ハイパスフィルタは第1ハイパスフィルタの低域遮断周波数より上の低域遮断周波数を有する。
【0074】
さらに、本方式のいくつかの実施形態によれば、第1通過帯域は、第2通過帯域よりも広い。
【0075】
さらに、本方式のいくつかの実施形態によれば、第2周波数依存伝送特性の高周波数ロールオフは、第1周波数依存伝送特性の高周波数ロールオフよりも急峻であり、および/または、第2周波数依存伝送特性の低周波数ロールオフは、第1周波数依存伝送特性の低周波数ロールオフよりも急峻である。
【0076】
さらに、本方式のいくつかの実施形態によれば、低周波数カットオフは、0.5Hz以下、好ましくは0.1Hz以下、または0.05Hzである。
【0077】
さらに、本方式のいくつかの実施形態によれば、第2信号経路の低周波遮断周波数は、第1信号経路の低周波遮断周波数より上である。
【0078】
さらに、本方式のいくつかの実施形態によれば、第2信号経路の低周波遮断周波数は、10Hzから50Hzの間、または20Hzから40Hzの間、または25Hzから35Hzの間、または30Hzである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明の好ましい実施形態は、添付の概略的な図面に関連してより詳細に説明される。
【0080】
図1】一実施形態に係る切り替え可能なフィルタリング装置。
図2】別の実施形態に係る切り替え可能なフィルタリング装置。
図3】一実施形態に係る自動アブレーション検出装置。
図4】心臓内信号を記録し、心臓内の位置に高周波アブレーションエネルギーを供給するためのシステム。
図5】中間ステージを介した高周波アブレーションの終了時にハイパスフィルタリングをオフに切り替えるときの、フィルタリングされていない信号およびフィルタリングされた信号のシミュレーション。
図6】一実施形態に係る切り替え可能なフィルタリング装置の記録チャネル内のそれぞれの信号経路を表す2つの回路構成、および制御信号に応じて異なる信号経路間で切り替えるシーケンス。
図7】一実施形態に係るフィルタリング方法における切り替えシーケンスの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1は、一実施形態に係る、心臓内電気生理学的信号を記録し、心臓内の位置に高周波アブレーションエネルギーを提供するためのシステムで使用するための、切り替え可能なフィルタリング装置100を概略的に示す。切り替え可能なフィルタリング装置100は、複数の記録チャネル110a~110eを含む。各記録チャネル110a~110eは、患者インタフェース111における患者側端子111a~111eと、記録装置インタフェース112における対応する記録側端子112a~112eとを有する。
【0082】
複数の記録チャネルは、アブレーション記録チャネル110aを含み、アブレーション記録チャネル110aは、アブレーション記録チャネル110aの患者側端子1aがアブレーション入力チャンネル101に接続されている点で、他のチャンネル110b~110eとは異なる。アブレーション入力チャネル101は、アブレーション入力端子102およびアブレーション出力端子103を有し、アブレーション入力チャネル101は「アブレーションエネルギー」と表示された矢印に示されるように、アブレーション入力端子102からアブレーション出力端子103に高周波アブレーション信号を送信するように構成される。アブレーションチャネル101のアブレーション出力端子103は、患者インタフェース111において、アブレーション記録チャネル110aの患者側端子111aに接続され、図4に概略的に示される多電極カテーテル3などのアブレーションカテーテルのアブレーションチャネルを介して、患者側端子111aを通し、患者の心臓のアブレーション部位に高周波アブレーション信号を送達する。アブレーション入力チャネル101は、アブレーション入力チャネル101内の高周波アブレーション信号が存在することに応じて、高周波検出出力を提供するように構成された高周波検出装置104を備える。
【0083】
記録チャネル110a~110eの各々は、第1通過帯域を持つ周波数依存伝送特性を有するそれぞれの第1信号経路115a~115eと、第1通過帯域と重複し、第1通過帯域よりも狭い第2通過帯域を持つ第2周波数依存伝送特性を有する、および/または第1周波数依存伝送特性よりも大きなロールオフを有する、それぞれの第2信号経路116a~116eと、RF検出装置104のRF検出出力に応じて第1信号経路115a~115eと第2信号経路116a~116eとを切り替えるように動作可能なそれぞれの切替装置113a~113e、切替装置114a~114eとを備える。それによって、切替装置113a~113eおよび切替装置114a~114eは、それぞれ、高周波アブレーション信号の有無に応じて、第1信号経路115a~115eまたは第2信号経路116a~116eを選択するようにアブレーション制御される。第2信号経路116a~116eの第2通過帯域は、ハイパスフィルタ素子HPFおよびローパスフィルタ素子LPFによって示されるように、低域遮断周波数および高域遮断周波数を有する。第1信号経路115a~115eそれぞれは、単純な伝送線路として構成されてもよい。第1信号経路115a~115eと第2信号経路116a~116eとの間の切り替えは、つまり本質的に、第2信号経路116a~116eのアグレッシブ・アブレーション・フィルタリングをオンおよびオフに切り替えることに相当する。
【0084】
好ましくは、フィルタ構成は、構成要素の公差によるばらつきを除いて、すべての記録チャネル110a~110eにおいて名目上同一である。全ての記録チャネル110a~110eにおける名目上同一のフィルタ構成は、例えば、上述の国際特許出願PCT/EP2016/057783に記載されているような平均基準増幅器を用いて効率的な同相雑音の低減を達成するために、異なる記録チャネルの信号を結合することを可能にする。さらに好ましくは、記録チャネル110a~10eの切替装置113a~113eおよび114a~114eは、高周波検出装置104により提供される高周波検出出力に応じて同期動作するように構成される。
【0085】
記録チャネルのうちの1つ、ここでは記録チャネル110eは、一般的には患者の上または中の不関電極に接続されて、信頼性のある電気生理学的基準(REF)を提供し、これに対して残りの記録チャネル110a~110dのいずれかで収集された心臓内電気生理学的信号を参照して、診断目的に最も有用であるように、同相除去および形態に関して改善された単極信号を提供することができる。
【0086】
図1に概略的に示される切り替え可能なフィルタリング装置100は、共通接地(GND)端子117をさらに備え、この共通接地(GND)端子117は患者インタフェースにおいて、切り替え可能なフィルタリング装置100の回路が結合され得る共通接地(GND)を提供するために、患者接地端子に接続されてもよい。共通接地端子117はさらに、図4に概略的に示される増幅器40およびプロセッサ50などの後続の増幅および記録装置に対する回路基準として共通接地(GND)を提供するために、記録インタフェース112に接続されてもよい。代表的な電気生理学的セットアップにおけるように、患者接地(GND)は、アースから電気的に絶縁される。
【0087】
図2は、別の実施形態に係る、心臓内の電気生理学的信号を記録し、心臓内の位置に高周波アブレーションエネルギーを提供するためのシステムで使用するための、切り替え可能なフィルタリング装置200を概略的に示す。切り替え可能なフィルタリング装置200は、複数の記録チャネル210a~210fを備える。各記録チャネル210a~210fは、患者インタフェース211における各患者側端子211a~211fと、記録装置インタフェース212における対応する記録側端子212a~212fとを有する。
【0088】
複数の記録チャネルは、アブレーション記録チャネル210aを含み、アブレーション記録チャネル210aは、アブレーション記録チャネル210aの患者側端子211aがアブレーション入力チャネル201に接続されている点で、他のチャネル210b~210fとは異なる。アブレーション入力チャネル201は、アブレーション入力端子202およびアブレーション出力端子203を有し、アブレーション入力チャネル201は、アブレーション入力端子202からアブレーション出力端子203に高周波アブレーション信号を送信するように構成される。アブレーションチャネル201のアブレーション出力端子203は、患者インタフェース211において、アブレーション記録チャネル210aの患者側端子211aに接続され、図4に概略的に示される多電極カテーテル3などのアブレーションカテーテルのアブレーションチャネルを介して、患者側端子211aを通し、患者の心臓のアブレーション部位に高周波アブレーション信号を送達する。アブレーション入力チャネル201は、アブレーション入力チャネル201内の高周波アブレーション信号が存在することに応じて、高周波検出出力を提供するように構成された高周波検出装置204を備える。
【0089】
記録チャネル210a~210fの各々は、第1通過帯域を持つ周波数依存伝送特性を有するそれぞれの第1信号経路215a~215fと、第1通過帯域と重複し、第1通過帯域よりも狭い第2通過帯域を持つ第2周波数依存伝送特性を有する、および/または第1周波数依存伝送特性よりも大きなロールオフを有する、それぞれの第2信号経路216a~216fと、RF検出装置204のRF検出出力に応じて第1信号経路215a~215fと第2信号経路216a~216fとを切り替えるように動作可能なそれぞれの切替装置213a~f、切替装置214a~214fとを備える。それによって、切替装置213a~213fおよび切替装置214a~214fは、それぞれ、高周波アブレーション信号の有無に応じて、第1信号経路215a~215fまたは第2信号経路216a~216fを選択するようにアブレーション制御される。第2信号経路216a~216fの第2通過帯域は、ハイパスフィルタ素子HPFおよびローパスフィルタ素子LPF1、LPF2によって示されるように、低域遮断周波数および高域遮断周波数を有する。第1信号経路215a~215fそれぞれは、単純な伝送線路として構成されてもよい。第1信号経路215a~215fと第2信号経路216a~216fとの間の切り替えは、つまり本質的に、第2信号経路216a~216fのアグレッシブ・アブレーション・フィルタリングをオンおよびオフに切り替えることに相当する。
【0090】
図2の実施形態は、記録チャネル210a~210fのサブセットが、2つのグループ、すなわち、アブレーショングループ221と、追加グループ222とを含むようにグループ化されている点で、図1の実施形態とは異なる。アブレーショングループ221は、アブレーション記録チャネル210aと、2つのさらなる記録チャネル210b~210cとを備え、追加グループ222は、アブレーションチャネルを含まない残りの記録チャネルを備える。追加グループ222は、高周波カテーテルアブレーション中にアブレーション電極に接続される記録チャネルを含まないので、記録チャネルは幾分異なる電気生理学的雑音およびアーティファクト環境を有する電気生理学的信号を受信し、アブレーション中であっても、非常に小さなベースラインのドリフトを被ることがあり、送信される高周波アブレーション信号に対してあまり敏感でないことがある。したがって、追加グループ222の記録チャネル210d~210fは、ここに示すように、第2信号経路216d~216f内のハイパスフィルタを省略することもでき、アブレーショングループ221の記録チャネル210a~210cのローパスフィルタLPF1とは異なるローパスフィルタLPF2をさらに取り付けることができる。
【0091】
アブレーショングループ221および任意の追加グループ222は、以下に記載されるような共通の電気生理学的基準の場合を除いて、一般的には互いに独立している。好ましくは、既知のグループ221、222内で、フィルタ構成は、構成要素の公差によるばらつきを除いて、所与のグループ221、222内のすべての記録チャネル210a~210c、記録チャネル210d~210fにおいて名目上同一である。すべての記録チャネル210a~210c、記録チャネル210d~210fにおける名目上同一のフィルタ構成は、同じグループから生じるフィルタリングされた電気生理学的信号を容易に結合し、処理することを可能にする。例えば、アブレーショングループ221では、アブレーション電極から収集され、アブレーション記録チャネル210aを通してフィルタリングされた信号は、二極性心臓内電気生理学的信号を得るために、隣接する心臓内電極から収集された信号と結合され、さらなる記録チャネル210bを通してフィルタリングされてもよい。あるいは、アブレーショングループ221では、アブレーション電極から収集され、アブレーション記録チャネル210aを通してフィルタリングされた信号は、患者上または患者内の電気生理学的基準と呼ばれる単極心臓内電気生理学的信号を得るために、不関電極配置から収集され、さらに別の記録チャネル210cを通してフィルタリングされた信号と結合されてもよい。
【0092】
既知のグループ221、222内のすべての記録チャネル210a~210c、記録チャネル210d~210fに対して同じフィルタ構成を必要とすることも、効率的な同相雑音抑制を容易にする。特に、追加グループ221が、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれ以上の数の記録チャネルといった多数の記録チャネル210d~210fを含む場合、効率的な同相雑音低減は、例えば、上述の国際特許出願PCT/EP2016/057783に記載されるような平均基準増幅器を使用することによって達成され得る。
【0093】
さらに好ましくは、記録チャネル210a~210fの切替装置213a~213fおよび切替装置214a~214fの高周波検出装置204によって提供される高周波検出出力に応答する動作は、少なくとも記録チャネル210a~210c、記録チャネル210d~210fの既知のグループ221および222内で同期される。異なるフィルタ構成がアブレーショングループおよび追加グループで使用される場合、スイッチ動作は、グループ間で異なってもよい。例えば、ハイパスフィルタHPFがアブレーショングループに存在するが、追加グループには存在しない場合、スイッチオフ遅延が、アブレーショングループ221の第2信号経路から第1信号経路に切り替えるために適用されてもよいが、追加グループ222には適用されなくてもよい。
【0094】
各グループ221、222における記録チャネルのうちの1つ、ここでは記録チャネル210cおよび210fは、一般的には信頼性のある電気生理学的基準(REF)を提供するために、患者の上または中の不関電極に接続され、電気生理学的基準に対して残りの記録チャネル110a~110dのいずれかで収集された心臓内電気生理学的信号を参照して、診断目的に最も有用であるように、同相除去および形態に関して改善された単極信号を提供することができる。最も好ましくは、図2に示されるように、電気生理学的基準(REF)は、単一の端末において患者インタフェース211で受信され、次いで、例えば任意選択のバッファを介するなどして、記録チャネルグループ221および222の間で共有される。
【0095】
図2に概略的に示される切り替え可能なフィルタリング装置200は、共通接地(GND)端子217をさらに備え、共通接地(GND)端子217は患者インタフェースにおいて、切り替え可能なフィルタリング装置200の回路が結合され得る共通接地(GND)を提供するために、患者接地端子に接続されてもよい。共通接地端子217はさらに、図4に概略的に示される増幅器40およびプロセッサ50などの後続の増幅および記録装置に対する回路基準として共通接地(GND)を提供するために、記録インタフェース212に接続されてもよい。代表的な電気生理学的セットアップにおけるように、患者接地(GND)は、アースから電気的に絶縁される。
【0096】
図3は、例として、自動高周波検出装置104、204で使用するためのアブレーション検出回路300を示す。図3は、高周波アブレーション信号の存在を検出し、この情報をフィルタスイッチに信号で伝えるために使用される回路を概略的に示す。略図では、高周波アブレーション信号が左側のV1によって表される。高周波アブレーション信号は、部分的に患者(図示せず)に送られ、部分的に分圧器を通り、さらに検出回路を通る。検出回路は、1MΩの抵抗器を介して高周波アブレーション信号に結合する。これは、1/5への分割を行うために、250KΩの抵抗器と組み合わせて使用される。この場合、最小15Vの信号は、3Vにまで分割される。1MΩ抵抗器は、320Vで行われるアブレーション中に引き出される電流を、0.32mA未満に制限する。D1およびD2は、高周波信号を+/-3.2Vにとどめるダイオードであり、これらの後には、単一利得バッファ(U3)が続く。高周波信号は、300Ω抵抗器および500pFコンデンサを使用して、1MHzのコーナー周波数に同調されたローパスフィルタを通過する。次いで、信号は、1nFコンデンサおよび1KΩ抵抗器を使用して、160KHzに同調されたハイパスフィルタを通過する。フィルタリングの後、信号はバッファされ、第2演算増幅器(U4)によって2の利得で増幅される。バッファされた信号は、半波整流器(D3)を通過する。整流された信号は、0.1uFのコンデンサを充電し、このコンデンサは、1KΩの抵抗器によって排出される。非反転シュミットトリガ(U5)は、純粋なデジタル信号を生成するために使用される。このデジタル信号は、アブレーション信号の開始後の最小遅延と、高周波アブレーション信号の終了後のスイッチオフ遅延とを提供するように、コンデンサを迅速に充電し、それを3つのステージでゆっくりと放電するように意図された回路に入る。
【0097】
アブレーション中、フィルタリングされていない電気生理学的信号は、より高い(正または負の)DCオフセットにドリフトしている。フィルタリングされた電気生理学的信号は、第2フィルタ経路のハイパスフィルタの手段によって、後続の増幅段および/または信号処理ステージのダイナミックレンジ内に維持される。アブレーションが終了した後、フィルタリングされていない電気生理学的信号がレンジ内に戻るまでに時間がかかり、これが、信号経路を第1信号経路に切り替えて戻すための制御信号が遅延されたままである理由である。しかし、たとえフィルタリングされていない信号が後続のステージのダイナミックレンジ内に戻っても、ハイパスフィルタHPFが急激にオフに切り替えられる場合、自然のオフセットへの急激なDCジャンプが依然として存在する。代わりに、ハイパスフィルタHPFは好ましくは、高周波アブレーション信号の終了が検出された後の3つのステージなどの、1以上の中間ステージを通過する。例えば、以下のプログラムは、5秒の合計スイッチオフ遅延の間に適用されてもよい。
【0098】
ステージ0、アブレーションオン:GNDに結合された0.05Hzハイパスフィルタ(信号を0に至らしめる)。
【0099】
ステージI、アブレーション終了後0~1秒:GNDに結合された0.05Hzハイパスフィルタ(任意、ステージ0と同じ)。
【0100】
ステージII、アブレーション終了後1~2秒:フィルタリングされていない電気生理学的信号に結合された0.05Hzフィルタ(信号をフィルタリングされていない信号のオフセットに至らしめる)。
【0101】
ステージIII,アブレーション終了後2~5秒:フィルタリングされていない信号に結合された0.3Hzフィルタ(任意、信号をステージIIよりも速くフィルタリングされていない信号のオフセットに至らしめる)。
【0102】
フィルタがフィルタリングされていない信号に結合されている場合、信号は、フィルタがステージIの後にスイッチオフされた場合に起こるであろう急激なジャンプの代わりに、フィルタリングされていない信号の自然のオフセットにゆっくりと至らしめられる。
【0103】
図4は、本発明の一実施形態による、心臓内信号を記録し、個人99の心臓内位置に高周波アブレーションエネルギーを提供するためのシステムを含むセットアップを概略的に示す。
【0104】
このシステムは、切り替え可能なフィルタリング装置30の患者インタフェース31に複数の患者側端子10a~10dを備える。患者側端子10a~10dは、カテーテル3の近位端のインタフェース5を介して、多電極カテーテル3の先端部のそれぞれの心臓内電極1a~1dに接続される。心臓内電極1a~1dは、システムの患者側端末10aを介して送達される高周波アブレーション信号を使用する、高周波アブレーションのために構成されるアブレーション電極1aを備える。システムはさらに、患者99内の不関電極2に接続された不関端子20を含む。あるいは、患者99の身体の表面上に不関電極配置を配置してもよい。患者99の中の不関電極2は、カテーテル4の近位端のインタフェース6を介して、カテーテル4の先端部の心血管内不関電極2に接続することができる。あるいは、患者の中の不関電極2が多電極カテーテル3を誘導するために使用されるシース上に配置することができる。不関電極2は、患者からシステムへの電気生理学的基準を提供するためのものである。患者側端子10a~10d、20によって受信された電気生理学的信号はフィルタリングされ、切り替え可能なフィルタ装置30の記録インタフェース32の記録側端子を介して、電気生理学的信号を信号基準を基準にして増幅する差動増幅段40に送られる。増幅段40から得られた増幅された電気生理学的信号は、プロセッサ装置50に送られる。プロセッサ装置50は、出力インタフェースにおいて心臓内データの出力を生成する。心臓内データ出力は少なくとも心臓内電気生理学的信号に基づいており、心臓内信号は、同相信号に関して有利に基準とすることができる。高周波アブレーション信号は、アブレーション発生器60によって発生され、切り替え可能なフィルタリング装置30のアブレーション入力端子33に送られる。
【0105】
典型的なセットアップは、3Dマッピングカテーテルプローブのため、個人を監視するため、心臓の刺激のため、および/または除細動を適用するためなどの、さらなる装置を備えてもよい。このようなさらなる装置は、明確な図示のために、図4では省略されている。システムはさらに、リンクを介して互いに通信する差動増幅段40およびプロセッサ装置50を備える。
【0106】
記録の前に、電極1a~1dは既知の方法で、例えば、複数の電極1a~1dを担持するカテーテル3の手段による低侵襲処置で、心臓内の位置に配置されている。心臓内電極は、監視される同じ心腔内に配置され、心臓内電極のそれぞれの心臓内位置で心臓内電気生理学的電位を調べる(probe)。さらに、電極2は、カテーテル4の手段によって、心臓内位置、例えば、下大静脈に配置され、心臓内電気生理学的電位に関して無関係であると考えられる電気生理学的電位を調べる(probe)。上述したように、患者99の不関電極2は、多電極カテーテル3を誘導するために使用されるシース上に配置することもできる。あるいは、不関電極2が表面電極を用いて身体の表面上に配置されてもよい。不関電極2は、患者99からシステムへの電気生理学的基準を提供するためのものである。電極1a~1dおよび2からの調べられた(probe)電気生理学的電位は、それぞれのリード線を介してカテーテル3、4の近位端のインタフェース5、6に伝達される。有利には、心臓内電極1a~1dおよびそれらのそれぞれのリード線が、単一のカテーテル3に束ねられ、一方、不関電極2は別個のカテーテル4上に配置される。しかし、例えば、心臓内電極1a~1dおよび不関電極2が1つのカテーテル上にグループ化されるセットアップ、または例えば、それぞれの場所で心臓内電位を同時に調べる(probe)ための心臓内電極の複数のグループを含む複数のカテーテルを備えるセットアップといった異なる束の組み合わせを発想することもできる。さらに、図4に示される4つの心臓内電極の数は一例とみなされるべきであって、5、6、7、8、9、10、20、50、100、またはそれ以上などの異なる数の心臓内電極が考えられてもよい。心臓内電極1a~1dからの心臓内電位は、インタフェース5にてそれぞれの心臓内端末10a~10dによって収集される。したがって、不関電極2からの不関電位は、インタフェース6にて不関端子20によって収集される。また、図4に示す構成では、インタフェース6にて提供される不関電位は単一の電極2によって規定されるが、不関端子20によって収集される不関電位は複数の電極によって調べられる(probe)電位の組合せとして規定されることも考えられる。
【0107】
好ましくは、信号基準が全ての増幅段チャネルに対して共通である。特に有利な実施形態では、増幅段が平均基準増幅段構成を有し、すべての増幅段出力信号の平均は増幅段の入力側にフィードバックされ、信号基準として使用される。これにより、同相雑音としての主電源干渉の良好な第1レベル抑制が、差動増幅段において既に達成されている。あるいは、増幅段が共通の基準増幅段構成を有し、すべての増幅段チャネルの共通の基準として、不関電位を使用することができる。
【0108】
図5は、シミュレーション例として、高周波アブレーション信号の終了が検出された後に、複数のステージで信号経路を切り替えることを示している。図5に示されるグラフは、シミュレートされたフィルタリングされていない信号500についてのベースライン変化を示し、それと比較して、フィルタリングされた信号510についての対応するベースライン変化を、t=1.2s(秒)での高周波アブレーション信号の終了後の時間の関数として示す。目的とする信号は常に100mVのオフセットを有すると推定され、アブレーション中には、DCオフセットは200mVに増加すると推定される。したがって、フィルタリングされていない信号500は、200mVのオフセットに上昇することが示され、アブレーション信号の終了後に徐々に減少する。フィルタリングされた信号510は、フィルタリング回路構成の3つのステージ511、512、513を通過する。全ての場合において、33uFのコンデンサが信号経路内に保持される。アブレーション検出回路からの制御信号はアナログスイッチを制御するために使用され、アナログスイッチは適切なサイズの抵抗器を適切な基準点に接続する。
【0109】
したがって、フィルタリングされた信号は、以下のように展開する。
【0110】
0.2s(秒):アブレーションは、絶縁回路接地(GND)にスイッチオン(第1信号経路から第2信号経路への切り替え)された0.05Hzの低域遮断周波数のハイパスフィルタから始められる。ここで、ADG1636スイッチは100KΩ抵抗器を絶縁回路接地に接続する。
【0111】
1.2s(秒):アブレーションが停止し、0.05Hzの低域遮断周波数が、共通接地(GND)に結合されたものからフィルタリングされていない信号に結合されたものに切り替えられる。ここで、第2のADG1636スイッチは、100KΩ抵抗器をフィルタなし信号経路バッファの出力に接続する。
【0112】
3.2s(秒):低域遮断周波数が0.05Hzから0.3Hzに切り換えられ、ハイパスフィルタはフィルタリングされていない信号に結合された状態に維持される。ここで、第3のADG1636スイッチが15KΩ抵抗器をフィルタされていない信号経路バッファの出力に接続する。
【0113】
6.2s(秒):すべてのフィルタがオフに切り替えられる(第1信号経路に戻る)。
【0114】
それによって、アブレーションの終了後、フィルタリングされた信号510のオフセットは、ハイパスフィルタを完全にオフに切り替える前に、フィルタリングされていない信号500のオフセットに可能な限り近づけられる。これは、フィルタリングされていない信号が後続の増幅器/処理回路のダイナミックレンジ内に戻る前に、スイッチングアーティファクトを回避するために、開始時によりゆっくりと実行される。レンジ内に入ると、この処理は、第1信号経路の回路構成に完全に切り替える前に、より高い低域遮断周波数に切り替えることによって加速される。
【0115】
図6(a)および図6(b)は、コンデンサCおよび抵抗Rによって示されるようなハイパスフィルタを有する一実施形態に係る切り替え可能なフィルタリング装置の記録チャネルを概略的に示している。記録チャネルは、患者側端子601および記録側端子602を有する。記録チャネルの構成は、(ここでは図示しない制御信号に応じて)切り替え手段Sにより切り替え可能である。図6(a)は第1信号経路を示す第1回路構成600を示し、ここで、ハイパスフィルタは、端子601においてフィルタリングされていない信号に結合される。図6(b)は第2信号経路を示す第2回路構成610を示し、ここで、ハイパスフィルタは、共通接地端子GNDを基準とする。
【0116】
図7は、本発明の一実施形態に係るフィルタリング方法における切り替えシーケンスの概略図を示す。電気生理学的信号は、矢印によって示されるシーケンスの順序で、第1回路構成を有する第1信号経路700を通過する。過渡干渉信号を監視することによって、過渡干渉信号の発生が特定され、対応する制御信号状態「O」によって示される。制御信号によって示されるように過渡干渉信号の「O」が発生すると、第1信号経路700から第2回路構成を有する第2信号経路710への切り替えが直ちに実行される。過渡干渉信号がさらに監視され、過渡干渉信号の終了が特定されて、対応する制御信号状態「T」によって示される。制御信号によって示されるように過渡干渉信号の終了「T」の後、第2信号経路710から第1信号経路700に戻る切り替えが、過渡干渉信号の終了「T」の後、切り替え遅延720で実行される。第2信号経路710から第1信号経路700への切り替えは、既に詳細に上述したように、複数の中間ステージ720a~720cを介して実行することができる。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7