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特許6994028低コスト高性能材料のための添加剤被覆粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】低コスト高性能材料のための添加剤被覆粒子
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
C08J3/12 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019521076
(86)(22)【出願日】2017-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 US2017058512
(87)【国際公開番号】W WO2018081413
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2019-06-20
(31)【優先権主張番号】62/413,072
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515234141
【氏名又は名称】ガーマー インク.
【氏名又は名称原語表記】GARMOR, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】レストレポ デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】マッキニス マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ストルツ リチャード エー.
(72)【発明者】
【氏名】バリントン ジェフ
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-138557(JP,A)
【文献】特開昭61-069853(JP,A)
【文献】特開2004-095031(JP,A)
【文献】特開2002-338846(JP,A)
【文献】特開平06-145365(JP,A)
【文献】特開平06-287601(JP,A)
【文献】特開2005-326846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料特性を向上させるために複合材料を作製するための添加剤被覆ホストポリマー粒子を作製する方法であって、
粉末化ホストポリマーを用意するステップ、
前記粉末化ホストポリマーの融解点よりも高い軟化又は融解温度を有する粉末化添加剤を用意するステップ、
前記粉末化ホストポリマー及び前記粉末化添加剤をボールミルに投入するステップ
記粉末化ホストポリマー及び前記粉末化添加剤をミル処理して添加剤被覆ホストポリマー粒子を得るステップであって、前記粉末化ホストポリマー及び前記粉末化添加剤を十分混合するが前記添加剤被覆ホストポリマー粒子を融解させないようにミル処理をするステップ、並びに
ニートポリマー粉末をドライブレンドして、前記添加剤被覆ホストポリマー粒子の流動性及び加工性を向上させるステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
ホストポリマーが樹脂由来の粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
添加剤が、熱、電気、光学又は機械的特性を含む物理特性を変更するための粉末である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
添加剤がカーボンブラックである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ミル処理がボールミルにおいてであり、前記ボールミルでは、各々少なくとも1gの重さのステンレス鋼ボールが使用される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ミル処理が、密閉チャンバー中、1,000RPM以下で10~100分間である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ミル処理が、100~1000のrpmでのサンド、ビーズ及び横型ミルである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ミル処理が、媒体を直接かき混ぜて粉砕を実現するアトリションミルにおいてである、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ニートポリマー粉末が、アトリションミル処理されるポリマーと同じポリマーである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ニートポリマー粉末が、アトリションミル処理されるポリマーとは異なるポリマーである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ニートポリマー粉末が非流動性PTFEであり、希釈粉末がPVDFである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
材料特性の向上した複合材料を作製するためにホストポリマー粒子を被覆する方法であって、
粉末化ホストポリマーを用意するステップ、
前記粉末化ホストポリマーの融解点よりも高い軟化又は融解温度を有する粉末化添加剤を用意するステップ、
前記粉末化ホストポリマー及び前記粉末化添加剤をミルに投入するステップ、前記ミルにおいて前記粉末化ホストポリマーを前記粉末化添加剤で被覆して添加剤被覆ホストポリマー粒子を得るステップであって、前記粉末化ホストポリマー及び前記粉末化添加剤を十分混合するが前記添加剤被覆ホストポリマー粒子を溶解させないようにミル処理をするステップであり、
前記被覆が前記粉末化ホストポリマーにおいて浸透性回路網を達成するのに必要とされる添加剤を劇的に減少させるステップ、並びに
ニートポリマー粉末をドライブレンドして、前記添加剤被覆ホストポリマー粒子の流動性及び加工性を向上させるステップ、
を含む、前記方法。
【請求項13】
ホストポリマーが樹脂粉末である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
添加剤が、熱、電気、光学又は機械的特性から選択される少なくとも1つの物理特性を変更するように選択される粉末である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
添加剤がカーボンブラックである、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ミル処理がボールミル中においてであり、前記ボールミルでは、各々少なくとも1gの重さのステンレス鋼ボールが使用される、請求項12~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ミル処理が、密閉チャンバー中、1,000RPM以下で10~100分間である、請求項12~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ミル処理が、100~1000のrpmでのサンド、ビーズ及び横型ミルである、請求項12~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
ミルが、媒体を直接かき混ぜて粉砕を実現するアトリションミルである、請求項12~18のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の範囲を限定することなく、その背景が添加剤との関連で記載される。
【0002】
カーボンブラックは、添加剤として使用される場合、ホストの機械的特性、化学的特性、熱特性、ガスバリア性、電気特性、難燃性及び他の特性を向上させることが示されている。ホストの物理化学的特性の改善は、1)カーボンブラックの均一な分布及び同伴、2)カーボンブラックとホストマトリックスとの間の界面結合の最適化、3)加工の間にホストに同伴されるガスの除去、4)添加剤の本来の特性の最適化、例えば、表面の機能化、5)ホストにおける添加剤の添加量の最適化に依存する。
【0003】
本発明の範囲を限定することなく、その背景が複合材料との関連で記載される。カーボンブラックは、ホストの強度、導電性及び熱伝導性を向上させるために使用される一般的な添加剤である。低コストのカーボンブラックが多数存在することから、炭素充填複合体のための電気的、熱的及び機械的基準仕様が推進されている。
【0004】
カーボンブラックをホストに配合する従来の方法は、押出機における溶融混合である。押出複合体は、次いで、ペレットに切断される。これらのペレットは、一般に長さ5mm未満×幅4mm未満×厚さ1mm未満である。これらのペレットは、射出成形、粉体塗装のために又はマスターバッチとしてさらに使用することができる。マスターバッチは、ホストに彩色又は他の特性を付与するために使用される固体又は液体添加剤である。マスターバッチは、加熱又は押出工程の間にホスト樹脂に封入された添加剤の濃縮混合物であり、これは、次いで、冷却され、ペレットに切断され、次いで、粒状に粉砕/機械加工される。マスターバッチ化は、製造工程の間に添加剤を保存し、次いで、ホストに送達する経済的な方法である。
【0005】
マスターバッチ調製工程により、粉体被覆膜としてホスト樹脂に対して約3質量%~4質量%の最終カーボンブラック添加量で約100kΩcm~200kΩcmの抵抗率を有する配合複合体が得られる。マスターバッチ化加工技術は、保存及び配合のためにコスト効果の高い材料を製造するために設計されており、ホストにおいて添加剤の性能を最適化するためには設計されていない。この分散/配合工程は、カーボンブラックをホストの体積全体にわたって均一に分散させて、所与の用途のための浸透閾値又は適切な導電性を達成するために必要な添加量を不自然に増加させる。或いは、カーボンフィラーのポリマーマトリックスにおけるランダムではない分布が、一方向又は織物炭素繊維複合体に例示されるような多くの用途について理想的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
世界中で原材料のコストが増加していることにより、ほぼすべての工程において材料利用の最適化への要求が生じている。エレクトロニクス及びRF市場でのEMIシールディング及びESD保護の両方への要求の高まりは、高伝導性のために機能化された、特殊カーボンブラックへの大きな要求を有し、提起している。従来の分散/配合では、マスターバッチペレット又は粉体粒子の体積にわたって均一にカーボンブラックが同伴される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の方法は、その用途において使用される添加剤の質量を最小にする一方、性能を最適化するような、カーボンブラック又は任意の添加剤のホストへの分散/配合を可能にする。ホスト材料の粒子は、ミル処理工程を使用して、フィラー添加剤で被覆される。これらの粒子は、熱間プレス、スタンピング、押出成形、射出成形されてもよく、粉体被覆に使用されてもよい。被覆表面により、最終複合構造体の体積を通る連結通路がもたらされる。連結構造は、複合構造体の体積内に独自のパターンを形成し、カーボンブラックの広範なよく連結された浸透回路網がホスト材料の空腔(vacuole)を取り囲み、空腔中にはカーボンブラックは同伴されない。
【0008】
一実施形態では、本発明は、材料特性を向上させるために複合材料を作製するための添加剤被覆ホスト粒子を作製する方法であって、粉末化ホストを用意するステップ、前記粉末化ホストの融解点よりも高い軟化又は融解温度を有する粉末化添加剤を用意するステップ、前記粉末化ホスト及び前記粉末化添加剤をボールミルに投入するステップ、並びにホスト粒子を十分混合するが融解させないミル処理時間、前記粉末化ホスト及び前記粉末化添加剤をミル処理するステップを含む、方法を含む。一態様では、方法は、ニートポリマー粉末をドライブレンドして、粉末の流動性及び加工性を向上させるステップをさらに含む。別の態様では、ホストは樹脂由来の粉末である。別の態様では、ホストは金属由来の粉末である。別の態様では、ホストはセラミックス由来の粉末である。別の態様では、添加剤は、熱、電気、光学又は機械的特性を含む物理特性を変更する粉末である。別の態様では、添加剤はカーボンブラックである。別の態様では、ミル処理はボールミルにおいてであり、ボールミルでは、各々少なくとも1gの重さのステンレス鋼ボールが使用される。別の態様では、ミル処理は、密閉チャンバー中、1,000RPM以下で10~100分間である。別の態様では、ミル処理は、100~1000のrpmでのサンド、ビーズ及び横型ミルである。別の態様では、ミル処理は、媒体を直接かき混ぜて粉砕を実現するアトリションミルにおいてである。別の態様では、乾燥ニートポリマー粉末は、アトリションミル処理されるポリマーと同じポリマーである。別の態様では、乾燥ニートポリマー粉末は、アトリションミル処理されるポリマーとは異なるポリマーである。別の態様では、乾燥ニートポリマー粉末は非流動性であり(例えば、PTFE)、希釈粉末はPVDFである。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、材料特性の向上した複合材料を作製するためにホスト粒子を被覆する方法であって、粉末化ホストを用意するステップ、前記粉末化ホストの融解点よりも高い軟化又は融解温度を有する粉末化添加剤を用意するステップ、前記粉末化ホスト及び前記粉末化添加剤をミルに投入するステップ、並びにホスト粒子を十分混合するが融解させないミル処理時間、ミルにおいて前記粉末化ホストを前記粉末化添加剤で被覆するステップであり、前記被覆が前記ホストにおいて浸透性回路網を達成するのに必要とされる添加剤を劇的に減少させる、ステップを含む、方法を含む。一態様では、ホストは樹脂粉末である。一態様では、ホストは金属粉末である。一態様では、ホストはセラミックス粉末である。一態様では、添加剤は、熱、電気、光学又は機械的特性から選択される少なくとも1つの物理特性を変更するように選択される粉末である。一態様では、添加剤はカーボンブラックである。一態様では、ミル処理はボールミルにおいてであり、ボールミルでは、各々少なくとも1gの重さのステンレス鋼ボールが使用される。一態様では、ミル処理は、密閉チャンバー中、1,000RPM以下で10~100分間である。一態様では、ミル処理は、100~1000のrpmでのサンド、ビーズ及び横型ミルである。一態様では、ミルは、媒体を直接かき混ぜて粉砕を実現するアトリションミルである。一態様では、方法は、ニートポリマー粉末をドライブレンドして、粉末の流動性及び加工性を向上させるステップをさらに含む。別の態様では、乾燥ニートポリマー粉末は、アトリションミル処理されるポリマーと同じポリマーである。別の態様では、乾燥ニートポリマー粉末は、アトリションミル処理されるポリマーとは異なるポリマーである。別の態様では、乾燥ニートポリマー粉末は非流動性であり(例えば、PTFE)、希釈粉末はPVDFである。
【0010】
一実施形態では、本発明は、材料特性を向上させるために複合材料を作製するための添加剤被覆ホスト粒子を作製する方法であって、粉末化ホストを用意するステップ、前記粉末化ホストの融解点よりも高い軟化又は融解温度を有する粉末化添加剤を用意するステップ、前記粉末化ホスト及び前記粉末化添加剤をボールミルに投入するステップ、ホスト粒子を十分混合するが融解させないミル処理時間、前記粉末化ホスト及び前記粉末化添加剤をミル処理するステップ、並びにニートポリマー粉末をドライブレンドして、粉末の流動性及び加工性を向上させるステップを含む、方法を含む。別の態様では、乾燥ニートポリマー粉末は、アトリションミル処理されるポリマーと同じポリマーである。別の態様では、乾燥ニートポリマー粉末は、アトリションミル処理されるポリマーとは異なるポリマーである。別の態様では、乾燥ニートポリマー粉末は非流動性であり(例えば、PTFE)、希釈粉末はPVDFである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用について、以下で詳細に議論するが、本発明は、多種多様な具体的な状況において実施することができる多くの適用可能な発明の概念を提供することが認識されるべきである。本明細書で議論される具体的な実施形態は、本発明を作製し使用するための具体的な方法の例示に過ぎず、本発明の範囲を限定しない。
【0012】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書で定義される用語は、本発明と関連する領域の当業者に通常理解される通りの意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」などの用語は、単一の実態のみを指すことを意図されず、例示のためにその具体例が使用され得る一般的な種類を含む。本明細書の用語法は、本発明の具体的な実施形態を記載するために使用されるが、それらの利用は特許請求の範囲おいて概説される通りのものを除き、本発明の範囲を限定しない。
【0013】
「ホスト」又は「ホスト材料」という用語は、本発明に関して使用される場合交換可能に使用され、これらの非限定例には、例えば、金属、セラミックス、樹脂、普通ポルトランドセメント、ポリプロピレン(PP,polypropylene)、ポリエチレン(PE,polyethylene)、ポリカーボネート(PC,Polycarbonate)、セラミックス粉末、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、シリカ、二酸化ケイ素若しくはこれらの組合せ、金属粉末、チタン、水素化チタン、タンタル、コバルトクロム、ニオブ、ステンレス鋼、ニッケル、銅、アルミニウム若しくはこれらの組合せの金属粉末、多結晶材料、フッ化ポリビニリデン(PVF,polyvinylidene fluoride)若しくは二フッ化ポリビニリデン(PVDF,polyvinylidene difluoride)、ポリウレタン、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ナイロン11、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリオレフィン、周期表の第2a、3a、4a及び4b族の元素の酸化物、炭酸塩若しくはケイ酸塩、ポリ(塩化ビニル)(PVC,poly(vinyl chloride))、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート/ナイロンアロイ、ポリカーボネート/ポリエステルアロイ、ABS、ABS/ナイロンアロイ、ABS/PVCアロイ、アクリル系コポリマー、ポリスルホン、ポリスルホン/ABSアロイ、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリアリーレート、フルオロポリマー、ポリフェニレンオキシド/ポリスチレンブレンド、又はポリ(フェニレンスルフィド)が含まれる。
【0014】
カーボンブラック及びホスト粒子は、一般に「ボールミル」と称される機械化学加工にかけることができる。ボールミルにおいて粉砕する場合、ボール(媒体)がそれらのランダムな動きで互いに及び容器に対して回転して、カーボンブラック及びホスト由来の粒子にせん断力が働く。得られたホスト粒子は、ミル処理工程によって、外側が被覆され得るが、融解しておらず、サイズが20%を超えて減少したホスト粒子も存在しない。
【0015】
結晶性グラファイトとカーボンブラックとの間のコスト格差のために、後者が、添加剤として広く採用されている。炭素粉末の他の形態が、カーボンブラックとともに、又はカーボンブラックの代替物として使用され得る。
【0016】
粉砕モーメント荷重を記述する有用でシンプルな方程式は、m×v(質量×速度)であり、これにより、使用者はどのようにアトリションミルがミルの一群に適合しているかを知ることが可能になる。例えば、2リットルボールミルでは、6lbs(又は約2600個のステンレス鋼ボール)の、各々1gの重さの0.25’’直径のステンレス鋼ボールが使用される。ミル処理又は混合は、ホスト粒子を被覆するために、密閉チャンバー中、1,000RPM以下で10~100分で達成することができる。サンド、ビーズ及び横型などの他のミルでは、0.3mm~2mmのより小さな媒体が使用されるが、非常に高いrpm(およそ100~1000)で運転される。媒体を用いない高速分散機は、さらに速いrpm(1000~4000)で運転される。アトリションミルでは、媒体が直接かき混ぜて粉砕を実現する。
【0017】
効率的に微粉砕するために、打撃動作及びせん断力の両方が一般に必要とされる。粉砕媒体のランダムな動き及び異なる回転エネルギーでの回転により、カーボンブラック及びホスト粒子にせん断力及び衝撃力が働く。ミル処理/混合時間は、5~60分の範囲であり得る。ミル処理/混合速度、媒体の大きさ及びミル処理/混合時間の組合せにより、添加剤で被覆されたホスト粒子の製造が可能になる。ホスト粒子を包むこの添加剤により、添加剤の使用の効力が改善される。カーボンブラックの場合、このミル処理/混合工程及び得られた添加剤被覆ホスト粒子は、複合材料の抵抗率を、同じ添加量の場合の2,000分の1に低減することができ、新しい用途を開き、又は現在の用途で必要とされる添加量を減少させる。GO/ポリマーマスターバッチは、インビンタンブルミルにおいてニートポリマー粉末と乾式混合されて、濃度が半分又は任意の希釈に低減する。乾燥ニート粉末は、流動性及び加工性を向上させるための元々の粉末以外のポリマーであり得、GO/ポリマーと合わせる場合、結果は高度に電気的に高強度の伝導性複合体となる。
【0018】
ポリマーの機械的特性に応じて、ミル処理工程は、ポリマーを損傷し得る。この損傷は、圧縮成形又は押出成形ポリマー部分で低い物理特性に転化され、さらに配合GO/ポリマーマスターバッチ粉末の流動性を低減させる。この問題に対処するために、GO/ポリマーマスターバッチの添加量がより多くされ、例として、ポリマー中GOの5%添加量を達成するために、上記の通りのミル処理工程を使用してポリマー中のGOの10%添加量が製造される。10%GO/ポリマー粉末は、次いで、ニートポリマー粉末と乾式混合されて、濃度が半分に低減する。乾燥粉末は、インビンタンブルミル又は追加のニートポリマーを損傷しない他のブレンド工程においてブレンドされ得る。さらに、乾燥ニート粉末は、流動性及び加工性を向上させるための元々の粉末以外のポリマーであり得る。例として、フッ化ポリビニリデン(PVF)又は二フッ化ポリビニリデン(PVDF)は押出成形可能ポリマーであり、一方、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE,Polytetrafluoroethylene)は、流動せず、一般にブロックに圧縮成形され、次いで最終製品に機械加工されるポリマーである。GOは、PVDFとともにボールミル処理され、次いでPTFEとともに乾式混合されて、押出成形可能複合体ポリマーが製造され得る。PTFEがブレンド粉末の少なくとも20%である限り、得られる複合体はバルクPTFEの物理特性を有することになる。GOと合わせる場合、結果は、高度に導電性の複合体となる。
【0019】
本明細書において議論される任意の実施形態は、本発明の任意の方法、キット、試薬又は組成物に関して実施することができ、逆も同様であることが企図される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0020】
本明細書に記載される特定の実施形態は、例示として示され、本発明の限定として示されるわけではないことが理解されるであろう。本発明の基本的な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態において用いられ得る。当業者であれば、日常的な実験だけを使用して、本明細書に記載される具体的な手順の数多くの等価物が確認されることを認識し、又はそれらを確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲に包含される。
【0021】
本明細書において言及されるすべての出版物及び特許出願は、本発明が属する分野の当業者のレベルを示す。すべての出版物及び特許出願は、それぞれ個々の出版物又は特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれると示されるのと同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語の使用は、特許請求の範囲及び/又は本明細書において「含むこと」という用語と合わせて使用される場合、「1」を意味することもあるが、「1又は2以上」、「少なくとも1」及び「1又は1よりも多い」の意味とも両立する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、選択肢のみを指すと明示されているか、本開示は選択肢のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持しているが選択肢が互いに排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用される。本出願全体を通して、「約」という用語は、値が、値を決定するために用いられているデバイス、方法についての固有の誤差変動又は研究対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「含むこと(comprising)」(並びに、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの含むことの任意の形態)、「有すること」(並びに、「有する(have)」及び「有する(has)」などの有することの任意の形態)、「含むこと(including)」(並びに、「含む(includes)」及び「含む(include)」などの含むことの任意の形態)、又は「含有すること」(並びに、「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの含有することの任意の形態)という語は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書で提供される組成物及び方法のうち任意のものの実施形態では、「含むこと」は「から本質的になる」又は「からなる」で置き換えることができる。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という語句は、示された整数(複数可)又はステップ、並びに特許請求される発明の性質又は機能に実質的に影響しないものを必要とする。本明細書で使用される場合、「からなる」という用語は、列挙された整数(例えば、特徴、要素、特質、特性、方法/工程ステップ若しくは限定)又は整数の群(例えば、特徴(複数可)、要素(複数可)、特質(複数可)、特性(複数可)、方法/工程ステップ若しくは限定(複数可))のみの存在を示すために使用される。
【0024】
「又はこれらの組合せ」という用語は、本明細書で使用される場合、用語の前に列挙された項目のすべての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C又はこれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC又はABC、及び特定の文脈において順序が重要である場合はまた、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABのうちの少なくとも1つを含むことが意図される。この例に続けて、1又は2以上の項目又は用語の繰り返しを含有する組合せ、例えば、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどが明示的に含まれる。当業者であれば、典型的には、文脈から明らかでない限り、任意の組合せにおける項目又は用語の数に制限はないことを理解するであろう。
【0025】
本明細書で使用される場合、限定なしに「約」、「実質的な」又は「実質的に」などの近似の語は、状態が、そのように修飾された場合、必ずしも絶対又は完全ではないと理解さるが、当業者が状態が存在していると示すことを正当とするのに十分近いと考えられる状態を指す。記載が変動し得る程度は、どれくらい大きな変化が起こり、改変された特徴が改変されていない特徴の必要とされる特質及び可能性をなお有していると当業者になお認識させ得るかに依存することになる。一般にではあるが、先行する議論に従って、本明細書の「約」などの近似の語で修飾された数値は、述べられた値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%変動し得る。
【0026】
本明細書で開示され、特許請求される組成物及び/又は方法のすべては、本開示に照らして過度の実験なしに作製及び実行することができる。本発明の組成及び方法を、好ましい実施形態に関して記載しているが、変形例が、本発明の概念、趣旨及び範囲から逸脱することなく本明細書に記載される組成物及び/又は方法、並びに方法のステップ若しくは一連のステップに適用され得ることが当業者には明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような類似の代替物及び改変は、添付の特許請求の範囲で定義される通りの本発明の趣旨、範囲及び概念のうちであるとみなされる。